説明

細胞内標的を検出するための粒子

結合部で修飾されたナノ粒子の使用を説明する方法が提供される。一つの実施形態において、標的分子の細胞内濃度を決定する方法であって、標的分子のナノ粒子との会合を可能とする条件下で、標的分子をナノ粒子と接触させるステップを含み、ナノ粒子が前記標的分子に特異的な結合部を含み、該結合部がマーカーで標識されており、標的分子およびナノ粒子の会合が、マーカーの検出可能な変化を起こし、検出可能マーカーの変化が、前記標的分子の細胞内濃度に比例する、方法が提供される。別の実施形態において、結合部はポリヌクレオチドであり、さらに別の実施形態では、結合部がポリペプチドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府資金の開示)
本発明は、Cancer Center for Nanotechnology Excellence(NCI/CCNE)により授与された助成金番号IU54−CA119341、およびNIH Director’s Pioneer Awardにより授与された5DPIOD000285、およびNSCEにより授与された助成金番号EEC−0647560の下、政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ナノ粒子を用いて標的分子の細胞内濃度を検出する方法であって、該ナノ粒子が、標的分子と特異的に会合できる結合部を含み、前記会合が、標的分子との会合後に測定できる、検出可能マーカーの変化を起こす方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
標識オリゴヌクレオチドは、核酸、タンパク質などの特定の高分子標的を検出するための使用広範なプローブである。高い特異性で標的に結合する能力のために、それらは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)手順などのインビトロアッセイにおいて有用なものとなっている。しかし、細胞は、核酸の取込みに当然ながら抵抗し、また、こうした外来性の遺伝物質を除去する多様な経路を含有してもいるので、こうしたタイプの標的特異的プローブを生細胞中に送達することは、依然として主要な難題である。したがって、特異的な結合性、蛍光性のシグナル伝達能の双方を保持するように、こうした物質を細胞中に送達する方法は、大変興味深い。
【0004】
オリゴヌクレオチド−ナノ粒子コンジュゲートの発見およびその後の開発は、分子診断(Elghanianら、1997年、Science 277巻、1078〜1081頁;Namら、2003年、Science 308巻、1884〜1886頁)および材料設計(Mirkinら、1996年、Nature 382巻、607〜609頁;Alivisatosら、1996年、Nature 382巻、609〜611頁;Demersら、2003年、Angew. Chem. Int. Ed. 40巻、3071〜3073頁)において、多様な新たな機会を生み出してきた。最近になって、オリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子は、細胞に進入し、遺伝子発現を抑制するためのアンチセンス剤として作用することが実証された(Rosiら、2006年、Science 312巻、1027〜1030頁)。こうした「アンチセンス粒子」は、単なる送達媒体ではなく(Sandhuら、2002年、Bioconjugate Chem. 13巻、3〜6頁;Tkachenkoら、2003年、J. Am. Chem. Soc. 125巻、4700〜4701頁)、むしろ、細胞内取込みを受け、酵素分解に抵抗し、遊離オリゴヌクレオチドより2桁も大きい親和性定数で細胞内標的に結合する、単一構成の調節・トランスフェクション剤である(Lytton−Jean and Mirkin、2005年、J. Am. Chem. Soc. 127巻、12754〜12755頁)。その上、それらの粒子は、ロックド核酸などの強力な、即ち非常に安定な設計物質で容易に修飾することができ(Seferosら、2007年、ChemBioChem 8巻、1230〜1232頁)、遺伝子調節に必要な条件下で無毒である。実際に、溶液中に遊離しているオリゴヌクレオチドとは異なり、オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子は、細胞により容易に多数が取り込まれることが示された。この性質から、オリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子は、DNAの細胞内送達を迅速に行い、更に、協調性に基づいて細胞におけるオリゴヌクレオチドの効力を高める、細胞内遺伝子抑制剤として使用できるという発見に至った。こうしたオリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子は、各種の細胞型に進入することが示されており、高い局所濃度のオリゴヌクレオチドを導入するために使用することができる。
【0005】
DNAで高密度に官能化されている金ナノ粒子は、高度に協調的に相補DNAと結合する結果、金ナノ粒子に付けられていない類似のDNA鎖に対して決定した結合強度より、2桁大きい結合強度を生じることも既に示されていた。この性質から、ナノ粒子は、上記の用途以外に、DNAおよびタンパク質の診断アッセイにも特に有用となっている。
【0006】
注目すべきオリゴヌクレオチドの1部類は、認識配列で特定の標的を検出できるものである。こうしたタイプの構造は、生細胞中に導入された場合、医療診断、創薬、および発生・分子生物学用途にとって特に注目すべきである。しかし、現在の送達/トランスフェクション戦略は、それらの使用に必要とされる1)低毒性、2)高い細胞取込み量、および3)擬陽性シグナルを生む酵素に対する耐性の獲得、などの特質を欠いている。
【0007】
細胞内RNAを可視化し、検出するプローブは、その場染色(Feminoら、Science 280巻、585〜590頁、1998年;Kloostermanら、Nat. Methods 3巻、27〜29頁、2006年)、分子ビーコン(Tyagiら、1996年、Nat. Biotechnol. 14巻、303〜308頁;Sokolら、1998年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95巻、11538〜11543頁;Pengら、2005年、Cancer Res. 65巻、1909〜1917頁;Perletteら、2001年、Anal.Chem. 73巻、5544〜5550頁;Nitinら、2004年、Nucleic Acids Res. 32巻、e58頁)、およびFRET対(Santangeloら、2004年、Nucleic Acids Res. 32巻、e57頁;Bratuら、2003年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100巻、13308〜13313頁)に使用するプローブを含め、各々、外部刺激に応答する生体系における活性を測定し、定量する重要な生物学的ツールである(Santangeloら、2006年、Annals of Biomedical Engineering 34巻、39〜50頁)。しかし、オリゴヌクレオチド系レポーターを細胞媒体および細胞中へ送達することは、細胞内検出にとって主要な難題であることが判明した。オリゴヌクレオチド系プローブの細胞内取込みには、脂質(Zabnerら、1995年、J. Bio. Chem. 270巻、18997〜19007頁)、または有毒なこともあり、もしくは細胞過程を変えるデンドリマー(Kukowska−Latalloら、1996年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93巻、4897〜4902頁)などのトランスフェクション剤が通常必要である。更に、オリゴヌクレオチドは、細胞内で分解を受け易く(Opalinska and Gewirtz、2002年、Nat. Rev. Drug Disc. 1巻、503〜514頁)、蛍光団標識プローブの場合には、これが、真の認識事象と識別不能である高いバックグランドシグナルを生む恐れがある(Liら、2004年、Nucleic Acids Res. 28巻、e52頁;Rizzoら、2002年、Molecular and Cellular Probes 16巻、277〜283頁)。
【0008】
したがって、高度な特異性で標的を認識できるナノ粒子が設計されてきたが、特異的相互作用から生じる陽性効果を検出すること、特に、単一細胞レベルでそのような相互作用を検出する感度で陽性効果を検出することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、当技術分野には、特定の標的と会合するために細胞に進入できる物質、およびその結果起こる細胞内相互作用を検出し、定量化する方法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明では、標的分子の細胞内濃度を決定する方法であって、標的分子のナノ粒子との会合を可能とする条件下で、標的分子をナノ粒子と接触させるステップを含み、ナノ粒子が前記標的分子に特異的な結合部を含み、該結合部がマーカーで標識されており、標的分子およびナノ粒子の会合が、マーカーの検出可能な変化を起こし、検出可能マーカーの変化が、前記標的分子の細胞内濃度に比例する、方法が提供される。
【0011】
該方法の一実施形態では、結合部はポリヌクレオチドであり、別の態様では、結合部がポリペプチドである。結合部がポリヌクレオチドである実施形態では、代替的な態様には、結合部がDNA分子またはRNA分子である態様が含まれる。該方法の他の実施形態では、標的分子はポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。標的分子がポリヌクレオチドである実施形態では、代替的な態様には、結合部がDNA分子またはRNA分子である態様が含まれる。
【0012】
一実施形態では、結合部が、ナノ粒子に共有結合したポリヌクレオチドであり、マーカーが、結合部ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しているポリヌクレオチドに結合した標識であって、結合部ポリヌクレオチドの標的分子との会合が、ハイブリッド形成しているポリヌクレオチドを放出し、マーカーが、放出後に検出可能である方法が提供される。一態様では、マーカーが、ハイブリッド形成しているポリヌクレオチドに付いており、マーカー付きのハイブリッド形成しているポリヌクレオチドが、該結合部とハイブリッド形成している場合に、マーカーが消光される。
【0013】
別の実施形態では、結合部が、ナノ粒子に共有結合したポリペプチドであり、マーカーが、結合部ポリペプチドと会合している作用剤に結合した標識であって、結合部ポリペプチドの標的分子との会合が、会合している作用剤を転位させ、マーカーが、放出後に検出可能である方法が提供される。一態様では、マーカーが、作用剤に付いており、作用剤が、結合部ポリペプチドと会合している場合に、マーカーが消光される。
【0014】
別の実施形態では、結合部がマーカーで標識されており、結合部が標的分子と会合している場合にだけ、マーカーが検出可能である方法が提供される。結合部がポリヌクレオチドである実施形態では、代替的な態様には、結合部がDNA分子またはRNA分子である態様が含まれる。該方法の他の実施形態では、標的分子はポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。標的分子がポリヌクレオチドである実施形態では、代替的な態様には、結合部がDNA分子またはRNA分子である態様が含まれる。
【0015】
一態様では、結合部がポリヌクレオチドであり、ポリヌクレオチド結合部が標的分子と会合していない場合にはマーカーが消光されるように、マーカーが、ポリヌクレオチド結合部に結合している。したがって、ポリヌクレオチド結合部に結合しているマーカーは、ポリヌクレオチド結合部が標的分子と会合している場合にだけ、検出可能である。
【0016】
別の態様では、結合部がポリペプチドであり、ポリペプチド結合部が標的分子と会合していない場合にはマーカーが消光されるように、マーカーが、ポリペプチド結合部に結合している。したがって、ポリペプチド結合部に結合しているマーカーは、ポリペプチド結合部が標的分子と会合している場合にだけ、検出可能である。
【0017】
前記ナノ粒子が、多数の結合部を含む方法も提供される。一態様では、多数の該結合部が1つの標的分子と特異的に会合する方法が提供される。別の態様では、多数の該結合部が複数の標的分子と特異的に会合する。
【0018】
本発明の更なる態様は、以下に示す詳細な説明から明らかになろう。しかし、本発明の趣旨および範囲内における様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明らかになると見込まれるので、本発明の好ましい実施形態を示しながらの以下の詳細な説明および実施例は、例示だけのために示していることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】細胞内標的を検出できる蛍光団含有オリゴヌクレオチドで修飾された金ナノ粒子の概略図である。
【図2】mRNAの検出および定量化用のナノフレアを示す図である。
【図3】サバイビンノックダウンのナノフレアを用いた定量化を表示する図である。(a)siRNA処理SKBR3細胞に関して集めたフローサイトメトリーデータ。(b)siRNA濃度の関数としての平均蛍光量(黒色円)およびサバイビン発現(灰色棒グラフ)のプロット。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本明細書に示す方法は、1つまたは複数の特定の標的部を特異的に認識し、それと会合する、1つまたは複数の結合部を含むように修飾されたナノ粒子の物理的性質および適用を活用する。本明細書では、標的分子の細胞内濃度は、標的分子に特異的である結合部を含むナノ粒子を用いて決定できることが示される。本発明では、該結合部がマーカーで標識され、標的分子とナノ粒子との会合が、マーカーの検出可能な変化を生じ、検出可能マーカーの変化が、前記標的分子の細胞内濃度に比例する。細胞内標的には、標的細胞中に自然に出現するもの、天然の標的であって、細胞中に導入された(しかし、その細胞型には通常見出されない)もの、または自然には出現しないが、標的細胞中に導入された合成標的が含まれることは理解されよう。
【0021】
本発明の別の態様では、所望する標的の細胞内局在化も、本明細書に概説する方法を用いて決定し得る。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「結合部」は、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチド、または対象とする標的と会合できる前記分子のいずれかの他の任意の断片もしくはセグメントを包含するものと理解される。この用語には、対象とする小分子も含まれるが、それだけに限らない。当技術分野で理解されているように、用語「小分子」には、天然化合物、天然化合物の修飾体、または合成化合物のいずれかである、有機および無機の化合物が含まれる。
【0023】
提示した方法は、細胞内標的分子を認識し、それと会合する結合部の使用に特に馴染むが、この場合、結合部はポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドであり、標的分子はポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドである。単純な態様では、ポリヌクレオチド結合部はポリヌクレオチド標的分子と特異的に会合し、またはポリペプチド結合部はポリペプチド標的分子と特異的に会合する。しかし、ポリヌクレオチド結合部がポリペプチド標的分子と特異的に会合し、またはポリペプチド結合部がポリヌクレオチド標的分子と特異的に会合する方法も、想定している。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「特異的に認識する」または「特異的に会合する」とは、他種の全ての標的分子と比較して、結合部が、高い親和性および/またはアビディティで1種の標的分子を識別し、および/またはそれと相互作用することができることを意味する。
【0025】
提示した方法は、結合部が、マーカーで直接的または間接的に標識され、結合部の標的分子との会合の結果、マーカーが検出可能になる、または検出し易くなるという原理の下で機能する。したがって、結合部が標的分子と会合していないとき、マーカーは相対的に検出不可能であるか、または消光される。用語「消光する」または「消光」が蛍光マーカーにしばしば関連していることは、当技術分野で理解されているが、本明細書では、任意のマーカーのシグナルは、相対的に検出不可能であるとき消光されていると想定している。したがって、本説明を通して例示され、蛍光マーカーを使用する方法は、想定する方法の単一の実施形態として示されており、消光できる任意のマーカーを、例示の蛍光マーカーの代用とすることができることを理解されたい。
【0026】
一態様では、マーカーは結合部に直接結合した標識であり、別の態様では、マーカーは、結合部と会合している作用剤に結合した標識であるが、この作用剤は、標的分子と結合部との会合が、作用剤を結合部との会合から転位させるように、結合部に対してより低い結合親和性または結合アビディティを有している。
【0027】
マーカーを結合部に直接結合している場合、マーカーは、結合部が標的分子と会合していないときに相対的に検出不可能であるか、または消光されるように、配置される。例えば、標的分子と会合していないポリヌクレオチド結合部の場合、マーカーは、ポリヌクレオチド結合部内に形成されるいずれかの二次構造を介して、ナノ粒子自体の近傍に位置取りすることができる、または、マーカーが所与の任意の時間にナノ粒子に近接していることができ、しかもそのシグナルは、シグナルが消光されていないナノ粒子から隔たった水性環境中で、消光しもしくは自由に揺動できる(ナノ粒子に依然繋がっているが)ように、マーカーは、水性環境中で自由に揺動することができる。ポリヌクレオチド結合部が標的分子と会合していないときに、ナノ粒子近傍の消光位置にマーカーを保持する二次構造が全くないこの実施形態では、あるレベルのバックグランドシグナルが必然的に検出され、ポリヌクレオチド結合部の標的分子との会合は、消光作用を付与するのに十分なナノ粒子近傍から転位するマーカーが増加するという事実の結果、バックグランドに対してシグナルを強化することになろう。
【0028】
同様に結合部がポリペプチドである場合、結合部上のマーカーは、ポリペプチド結合部が標的分子と会合しているときに起こる高次構造変化が、シグナルが相対的に消光されないように十分にナノ粒子からマーカーを移動させるように、位置取りし得る。
【0029】
マーカーが結合部と間接的に会合している方法の態様では、結合部の標的分子との会合は、ナノ粒子がマーカーに対して消光作用をもはや行使できないように、マーカーの物理的放出を起こす。例えば、ポリヌクレオチド結合部の場合、ナノ粒子が消光作用を行使するのに十分にナノ粒子近傍にマーカーがあるような位置において、ポリヌクレオチド結合部とハイブリッド形成できる第2のポリヌクレオチド上に、マーカーを標識し得る。ポリヌクレオチド結合部が、標的分子を認識し、それと会合すると、ハイブリッド形成され、標識されたポリヌクレオチドは転位され、ナノ粒子の消光作用がなくなる。
【0030】
したがって、例えば一態様では、ポリヌクレオチド結合部を含み、それが順に、蛍光団マーカーで標識された相補ポリヌクレオチドとハイブリッド形成するように修飾された金ナノ粒子を、生細胞中のRNAを可視化し、定量化するためのトランスフェクション剤兼細胞「ナノフレア」として使用できる方法が提供される。ナノフレアは、金の高効率の蛍光消光性(Dubertretら、2001年、Nat. Biotechnol. 19巻、365〜370頁)、トランスフェクション剤を使用しないオリゴヌクレオチドナノ粒子コンジュゲートの細胞内取込み、およびこのようなコンジュゲートの酵素安定性(Rosiら、2006年、Science 312巻、1027〜1030頁)を利用し、その結果、感度良く、有効な細胞内プローブの創製に対する難題の多くを克服している。具体的には、ナノフレアは、高いシグナル伝達を示し、低いバックグランド蛍光を有し、細胞中に存在するRNA転写物の個数変化に敏感である。したがって、本明細書に記載のナノフレアは、特定の細胞内RNAの相対量と直接または間接に相関する細胞内蛍光シグナルを与えるように設計された、オリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子コンジュゲートである。開示した方法で検出することを想定しているRNAは、mRNAおよびhnRNAを包含するが、それだけに限らない。
【0031】
類似の機構がポリペプチド結合部にも作動しているが、この場合、作用剤がマーカーで標識されており、作用剤はポリペプチド結合部と会合することができ、その会合の仕方は、会合によって、作用剤およびマーカーが、マーカーを相対的に消光させるのに十分にナノ粒子に接近するようなものである。ポリペプチド結合部が特定の標識分子と会合すると、作用剤は、上記のナノフレア同様に放出または転位され、ナノ粒子の消光作用は軽減される。
【0032】
結合部の特定の性質に関わらず、蛍光団標識オリゴヌクレオチドまたはポリペプチドで高密度に官能化したナノ粒子を利用することにより、細胞内分子検出に通常伴う幾つかの困難が緩和される。こうした結合部は、細胞に進入するためにマイクロインジェクションまたはトランスフェクション補助試薬を必要とせず、酵素分解に対して高度に耐性であり、試験する条件下で無毒である。
【0033】
ポリヌクレオチド
本明細書で使用する場合、ナノ粒子上で官能化される、または標的分子としての「ポリヌクレオチド」という用語は、オリゴヌクレオチドという用語と互換的に使用される。
【0034】
本明細書で使用する場合の用語「ヌクレオチド」またはその複数形は、本明細書で考察するような修飾型、そうでなければ当技術分野で公知の修飾型と互換可能である。ある種の事例では、当技術分野では、天然ヌクレオチドならびに重合できるヌクレオチド修飾体を包含する用語「核酸塩基」が使用される。
【0035】
配列所定のポリヌクレオチドを作製する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(第2版、1989年)およびF. Eckstein(編)「Oligonucleotides and Analogues」、第1版(Oxford University Press, New York、1991年)を参照されたい。固相合成法は、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド双方にとって好ましい(DNAを合成する周知の方法は、RNAの合成にも有用である)。オリゴリボヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドは、酵素的に調製することもできる。
【0036】
様々な態様では、提示した方法は、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、またはこの2種の組合せであるポリヌクレオチドの使用を含む。オリゴヌクレオチドの修飾型も想定されており、それには、少なくとも1つのヌクレオチド間修飾連結部を有するものが含まれる。修飾されたポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、本明細書の以下に詳細に説明する。
【0037】
修飾オリゴヌクレオチド
オリゴヌクレオチドの具体例には、修飾された骨格または非天然ヌクレオシド間連結部を含有するものが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドは、骨格中にリン原子を保持するもの、および骨格中にリン原子を有していないものを包含する。ヌクレオシド間骨格中にリン原子を有していない修飾オリゴヌクレオチドは、「オリゴヌクレオチド」の意味内に入ると見なされる。
【0038】
リン原子を含有する修飾オリゴヌクレオチド骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含めたメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’−アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含めたホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、3’−5’連結部を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2’−5’連結類縁体、ならびに1つまたは複数のヌクレオチド間連結部が、3’から3’、5’から5’、または2’から2’への連結部である、反転極性を有するものを包含する。末端3’ヌクレオチド間連結部に3’から3’への単一連結部、即ち非塩基性の場合もある単一の反転ヌクレオシド残基(ヌクレオチドが消失しているか、その代わりにヒドロキシ基を有する)を含む、反転極性を有するオリゴヌクレオチドも想定されている。塩、混合塩および遊離酸型も想定されている。上記の含リン連結部の調製を教示する代表的米国特許には、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3687808号、第4469863号、第4476301号、第5023243号、第5177196号、第5188897号、第5264423号、第5276019号、第5278302号、第5286717号、第5321131号、第5399676号、第5405939号、第5453496号、第5455233号、第5466677号、第5476925号、第5519126号、第5536821号、第5541306号、第5550111号、第5563253号、第5571799号、第5587361号、第5194599号、第5565555号、第5527899号、第5721218号、第5672697号および第5625050号が含まれる。
【0039】
リン原子をその中に含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖のアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結部、ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルの混合ヌクレオシド間連結部、または1つもしくは複数の短鎖のヘテロ原子性もしくはヘテロ環性ヌクレオシド間連結部により形成される骨格を有する。こうした骨格には、モルホリノ連結部を有するもの;シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホンの骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;リボアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびにN、O、SおよびCHの混合構成要素部を有する他の骨格が含まれる。例えば、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5034506号、第5166315号、第5185444号、第5214134号、第5216141号、第5235033号、第5264562号、第5264564号、第5405938号、第5434257号、第5466677号、第5470967号、第5489677号、第5541307号、第5561225号、第5596086号、第5602240号、第5610289号、第5602240号、第5608046号、第5610289号、第5618704号、第5623070号、第5663312号、第5633360号、第5677437号、 第5792608号、第5646269号および第5677439号を参照されたい。
【0040】
更に他の実施形態では、ヌクレオチド単位の1つもしくは複数の糖および/または1つもしくは複数のヌクレオチド間連結部が共に、「非天然」基で代替されているオリゴヌクレオチド模倣物質。一態様では、この実施形態はペプチド核酸(PNA)を想定している。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖骨格がアミド含有骨格で代替されている。例えば、開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5539082号、第5714331号および第5719262号、ならびにNielsenら、1991年、Science、254巻、1497〜1500頁を参照されたい。
【0041】
更に他の実施形態では、オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート骨格を備え、オリゴヌクレオシドがヘテロ原子骨格を備えており、米国特許第5489677号および第5602240号に記載の
【0042】
【化1−1】

を含む。米国特許第5034506号に記載のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも、想定されている。
【0043】
様々な形態では、オリゴ中の連続する2モノマー間の連結部は、
【0044】
【化1−2】

から選択される2〜4個、望ましくは3個の基/原子からなり、式中RHは、水素およびC1−4アルキルから選択され、R”はC1−6アルキルおよびフェニルから選択される。このような連結基の例示的な例は、
【0045】
【化1−3】

【0046】
【化2】

(式中RHは、水素およびC1−4アルキルから選択され、R”はC1−6アルキルおよびフェニルから選択される)が想定されている。更なる例示的な例は、Mesmaekerら、1995年、Current Opinion in Structural Biology、5巻、343〜355頁、およびSusan M. Freier and Karl−Heinz Altmann、1997年、Nucleic Acids Research、25巻、4429〜4443頁に示されている。
【0047】
オリゴヌクレオチドの他の更なる修飾型は、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第20040219565号に詳細に記載されている。
【0048】
修飾オリゴヌクレオチドは、1個または複数の置換糖部も含有し得る。ある種の態様では、オリゴヌクレオチドは、2’位に以下のものの1つを含む。即ち、OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル;O−、S−もしくはN−アルケニル;O−、S−もしくはN−アルキニル;またはO−アルキル−O−アルキルであり、式中アルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC〜C10アルキルまたはC〜C10アルケニルおよびアルキニルでもよい。他の実施形態では、O[(CHO]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHCH、O(CHONHおよびO(CHON[(CHCHが含まれ、式中nおよびmは1から約10である。他のオリゴヌクレオチドは、2’位に以下のものの1つを含む。即ち、C〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH、OCN、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、挿入基、オリゴヌクレオチドの薬物動態特性を改善する基、オリゴヌクレオチドの薬物動力学特性を改善する基、および類似の性質を有する他の置換基である。一態様では、修飾部には2’−メトキシエトキシ(2’−O−CHCHOCH、別名2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOE)(Martinら、1995年、Helv. Chim. Acta、78巻、486〜504頁)、即ちアルコキシアルコキシ基が含まれる。他の修飾部には、本明細書の以下の実施例に記載する、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、即ちO(CHON(CH基、別名2’−DMAOE、および本明細書の以下の実施例にやはり記載する、2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野での別名2’−O−ジメチルアミノエトキシエチルまたは2’−DMAEOE)、即ち2’−O−CH−O−CH−N(CHが含まれる。
【0049】
更に他の修飾部には、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCHCHCHNH)、2’−アリル(2’−CH −CH=CH)、2’−O−アリル(2’−O−CH −CH=CH)および2’−フルオロ(2’−F)が含まれる。2’−修飾部は、アラビノ(上向き)位またはリボ(下向き)位にあってもよい。一態様では、2’− アラビノ修飾部は2’−Fである。類似の修飾部をオリゴヌクレオチド上の他の位置、例えば、3’末端ヌクレオチド上または2’−5’連結オリゴヌクレオチド中の糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位に作製してもよい。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部などの糖模倣部を有してもよい。例えば、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4981957号、第5118800号、第5319080号、第5359044号、第5393878号、第5446137号、第5466786号、第5514785号、第5519134号、第5567811号、第5576427号、第5591722号、第5597909号、第5610300号、第5627053号、第5639873号、第5646265号、第5658873号、第5670633号、第5792747号および第5700920号を参照されたい。
【0050】
一態様では、糖の修飾部には、2’−ヒドロキシ基が、糖環の3’または4’炭素原子に連結され、それにより二環性糖部を形成するロックド核酸(LNA)が含まれる。ある種の態様における連結部は、2’酸素原子および4’炭素原子を架橋するメチレン(−CH−)基であり、式中nは1または2である。LNAおよびその調製は、国際公開第98/39352号および国際公開第99/14226号に記載されている。
【0051】
オリゴヌクレオチドは、塩基の修飾または置換も含み得る。本明細書で使用する場合、「非修飾」または「天然」塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾塩基には、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシンならびにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどの他の合成および天然塩基が含まれる。更なる修飾塩基には、フェノキサジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)、フェノチアジンシチジン(1H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾチアジン−2(3H)−オン)、置換フェノキサジンシチジン(例えば、9−(2−アミノエトキシ)−H−ピリミド[5,4−b][1,4]ベンゾオキサジン−2(3H)−オン)などのGクランプ、カルバゾールシチジン(2H−ピリミド[4,5−b]インドール−2−オン)、ピリドインドールシチジン(H−ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3−d]ピリミジン−2−オン)などの三環性ピリミジンが挙げられる。修飾塩基は、プリンまたはピリミジン塩基が他のヘテロ環で代替された塩基、例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジンおよび2−ピリドンも包含し得る。更なる塩基には、米国特許第3687808号に開示されたもの、「The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」、858〜859頁、Kroschwitz, J. I.編、John Wiley & Sons、1990年に開示されたもの、Englischら、1991年、Angewandte Chemie, International Edition、30巻、613頁で開示されたもの、およびSanghvi, Y. S.、15章、「Antisense Research and Applications」、289〜302頁、Crooke, S. T. and Lebleu, B.編、CRC Press、1993年で開示されたものが含まれる。こうした塩基のうち特定のものは、結合親和性の増加に有用であり、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含め、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびにN−2、N−6およびO−6置換プリンを包含する。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃高めることが示されており、ある種の態様では、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせられる。開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3687808号、米国特許第4845205号、第5130302号、第5134066号、第5175273号、第5367066号、第5432272号、第5457187号、第5459255号、第5484908号、第5502177号、第5525711号、第5552540号、第5587469号、第5594121号、第5596091号、第5614617号、第5645985号、第5830653号、第5763588号、第6005096号、第5750692号および第5681941号を参照されたい。
【0052】
「修飾塩基」または類似の他の用語は、天然塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシルおよび/またはチミン)と対を形成できる、および/または非天然塩基と対を形成できる構成物を指す。ある種の態様では、修飾塩基は、15、12、10、8、6、4もしくは2℃、またはそれ未満のTm差を示す。例示的な修飾塩基は、欧州特許第1072679号および国際公開第97/12896号に記載されている。
【0053】
「核酸塩基」とは、天然核酸塩基のアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)、ならびに非天然核酸塩基を意味し、非天然核酸塩基は、キサンチン、ジアミノプリン、8−オキソ−N−メチルアデニン、7−デアザキサンチン、7−デアザグアニン、N,N−エタノシトシン、N’,N’−エタノ−2,6−ジアミノプリン、5−メチルシトシン(mC)、5−(C−C)−アルキニルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、プソイドイソシトシン、2−ヒドロキシ−5−メチル−4−トリアゾロピリジン、イソシトシン、イソグアニン、イノシン、ならびにBennerらの米国特許第5432272号およびSusan M. Freier and Karl−Heinz Altmann、1997年、Nucleic Acids Research、25巻、4429〜4443頁に記載の「非天然」核酸塩基などである。したがって、用語「核酸塩基」は、既知のプリンおよびピリミジンヘテロ環だけでなく、それらのヘテロ環類縁体および互変異性体も包含する。更なる天然および非天然核酸塩基は、米国特許第3687808号(Meriganら)、Sanghvi、「Antisense Research and Application」、S. T. Crooke and B. Lebleu編、CRC Press、1993年の15章、Englischら、1991年、Angewandte Chemie, International Edition、30巻、613〜722頁(特に622および623頁、ならびに各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、J. I. Kroschwitz編、John Wiley & Sons、1990年、858〜859頁、Cook、Anti−Cancer Drug Design、1991年、6巻、585〜607頁を参照されたい)に開示されたものを包含する。更に、用語「ヌクレオシド塩基」または「塩基単位」は、最も古典的な意味ではヌクレオシド塩基でないが、ヌクレオシド塩基として働くことができる一定の「ユニバーサル塩基」を含め、核酸塩基のように働くことができる、ヘテロ環化合物などの化合物を包含することを意図している。ユニバーサル塩基として特に挙げられるものは、3−ニトロピロール、場合により置換されているインドール(例えば、5−ニトロインドール)および場合により置換されているヒポキサンチンである。望ましい他のユニバーサル塩基には、当技術分野で公知のユニバーサル塩基を含めた、ピロール、ジアゾールまたはトリアゾール誘導体が挙げられる。
【0054】
ポリペプチド
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」とは、天然に由来する、合成で生成される、または組換えで産生される、ペプチド、タンパク質、アミノ酸のポリマー、ホルモン、ウィルスおよび抗体を指す。ポリペプチドは、リポタンパク質、および例えばグリコシル化タンパク質などの翻訳後修飾タンパク質、ならびに、構造の一部として、D−アミノ酸、DもしくはL立体配置の修飾した、誘導体化した、もしくは非天然のアミノ酸、および/またはペプト模倣(peptomimetic)単位を有するタンパク質またはタンパク質性物質も包含する。
【0055】
提示した方法での使用を想定したペプチドは、商業的入手源に由来するものを包含する。ライブラリーには、サイズが6〜12アミノ酸に亘る小さなジスルフィド束縛環状ペプチド化合物を含む、構造別ペプチドライブラリーであって、各ライブラリー中の異なるペプチド構造の個数が通常10億個を超えるライブラリー、(ii)20量体ペプチド中の各位置にある19アミノ酸(システインはない)が、ペプチド100億種のライブラリーを創出することを可能にする直鎖ペプチドライブラリー、(iii)13量体ペプチド中の各位置にある19アミノ酸(システインはない)全てが、ペプチド約1億種のライブラリーを創出することを可能にする基質ファージペプチドライブラリーが含まれる。
【0056】
市販のペプチドライブラリーには、Eurogentec s.a.(Belgium)、Dyax Corp.(Cambridge, MA)およびCambridge Peptide(Cambridge, UK)のペプチドライブラリーのものが含まれる。
【0057】
本法の実施に有用なペプチドライブラリーの調製は、当技術分野で周知であり、Jung編、「Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries: A Handbook」およびDevlinら、1990年、Science、249巻、4967号、404〜406頁に記載の通りであり、市販の合成キット、例えばSigma−Genosysキットの使用でもなし得る。
【0058】
提示した方法での使用を想定したタンパク質は、Matsuuraら、2002年、Protein Science、11巻、2631〜2643頁、Ohuchiら、1998年、Nucleic Acids Res. 10月1日、26巻(19号)、4339〜4346頁、国際公開第1999/011655号、国際公開第1998/047343号、米国特許第6844161号および米国特許第6403312号に記載されるような合成タンパク質ライブラリー由来のものを包含する。タンパク質ライブラリーの作製用市販キットも、当技術分野で公知であり、例えばBioCat GmbH(Heidelberg)から入手できる。
【0059】
本法の実施に有用なタンパク質ライブラリーは、例えばDyax Corp.(Cambridge, MA)から商業的に入手することもできる。
【0060】
検出可能マーカー/標識
本明細書で使用する場合の「マーカー」は、「標識」と互換的であり、特定される相互作用化合物の種類に関わりなく、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの複合体形成を観察可能な変化で検出する方法が提供される。一態様では、複合体形成は、裸眼または分光法で観察される色変化を起こす。金ナノ粒子を用いた場合、ナノ粒子の凝集に伴って赤から青への色変化が起こり、しばしば裸眼で検出される。本発明では、凝集は、標的分子の特異的だが異なる部分に対する結合部を各々含有する個別のナノ粒子が、同じ標的分子に結合する結果、起こると想定している。
【0061】
別の態様では、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの複合体形成は、電子顕微鏡または比濁法で観察される凝集形成を生じる。ナノ粒子の凝集一般は、プラズモン共鳴の減少を起こす。更に別の態様では、複合体形成は、裸眼または顕微鏡で観察される凝集ナノ粒子の析出を生じる。
【0062】
裸眼による色変化の観察は、一態様では、対照色のバックグランドに対してなされる。例えば、金ナノ粒子を用いた場合、色変化の観察は、固体白色表面(制限はないが、シリカもしくはアルミナのTLCプレート、ろ紙、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、またはC−18シリカTLCプレート)上にハイブリッド形成溶液の試料をスポットし、そのスポットを乾燥させることにより、促進される。当初のスポットは、ハイブリッド形成していない場合の桃/赤色から、ハイブリッド形成した場合の紫赤/紫色に亘る、ハイブリッド形成溶液の色を保持している。室温または80℃(温度は肝要ではない)で乾燥すると、ナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートが、スポット前のハイブリッド形成により連結されていた場合、青色のスポットが発現する。ハイブリッド形成していない場合は、スポットが桃色である。青色および桃色のスポットは、安定であり、その後の冷却もしくは加熱時、または経時的に変化せず、便利な恒久的試験記録となる。色変化の観察に他のステップ(ナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートのハイブリッド形成部およびハイブリッド未形成部の分離など)は不要である。
【0063】
本法の実施結果を可視化する代替法は、ガラス繊維フィルター(例えば、サイズ13nmの金ナノ粒子に使用する、ホウケイ酸マイクロファイバーフィルター、0.7μ孔径、グレードFG75)上にナノ粒子プローブの試料をスポットし、同時にフィルターを通してその液を抜き取ることである。その後の濯ぎで、フィルターを通して過剰の非ハイブリッド形成プローブを洗い出すと、ナノ粒子プローブのハイブリッド形成により生成した凝集体(こうした凝集体は、フィルターの孔径より大きいため保持されている)を含む観察可能なスポットが残る。この技法では、過剰のナノ粒子プローブを使用できるので感度の向上が可能である。
【0064】
想定しているマーカーが、本明細書に記載の任意の蛍光団ならびに当技術分野で公知の他の検出可能マーカーを包含すると見込まれることは、理解されよう。例えば、マーカーには、それだけに限らないが、レドックス活性プローブ、他のナノ粒子、および量子ドット、ならびに、分光手段を用いて検出できる任意のマーカー、即ち顕微鏡およびサイトメトリーを用いて検出可能なマーカーも含まれる。
【0065】
オリゴヌクレオチドの標識法
蛍光分子でオリゴヌクレオチドを標識し、蛍光を測定する方法は、当技術分野で周知である。適切な蛍光分子も、当技術分野で周知であり、制限はないが、1,8−ANS(1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸)、1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(1,8−ANS)、5(および6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフルオレッセインpH9.0、5−FAM pH9.0、5−ROX(5−カルボキシ−X−ローダミン、トリエチルアンモニウム塩)、5−ROX pH7.0、5−TAMRA、5−TAMRA pH7.0、5−TAMRA−MeOH、6JOE、6,8−ジフルオロ−7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンpH9.0、6−カルボキシローダミン6G pH7.0、6−カルボキシローダミン6G塩酸塩、6−HEX,SE pH9.0、6−TET,SE pH9.0、7−アミノ−4−メチルクマリンpH7.0、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリンpH9.0、Alxa 350、Alxa 405、Alxa 430、Alxa 488、Alxa 532、Alxa 546、Alxa 555、Alxa 568、Alxa 594、Alxa 647、Alxa 660、Alxa 680、Alxa 700、Alxa Fluor 430抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 488抗体コンジュゲートpH8.0、Alxa Fluor 488ヒドラジド−水、Alxa Fluor 532抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 555抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 568抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 610 R−フィコエリトリンストレプトアビジンpH7.2、Alxa Fluor 647抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 647 R−フィコエリトリンストレプトアビジンpH7.2、Alxa Fluor 660抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 680抗体コンジュゲートpH7.2、Alxa Fluor 700抗体コンジュゲートpH7.2、アロフィコシアニンpH7.5、AMCAコンジュゲート、アミノクマリン、APC(アロフィコシアニン)、Atto 647、BCECFpH5.5、BCECFpH9.0、BFP(青色蛍光タンパク質)、BO−PRO−1−DNA、BO−PRO−3−DNA、BOBO−1−DNA、BOBO−3−DNA、BODIPY650/655−X,MeOH、BODIPY FLコンジュゲート、BODIPY FL,MeOH、Bodipy R6G SE、BODIPY R6G,MeOH、BODIPY TMR−X抗体コンジュゲートpH7.2、Bodipy TMR−Xコンジュゲート、BODIPY TMR−X,MeOH、BODIPY TMR−X,SE、BODIPY TR−XファラシジンpH7.0、BODIPY TR−X,MeOH、BODIPY TR−X,SE、BOPRO−1、BOPRO−3、カルセイン、カルセインpH9.0、カルシウムクリムゾン、カルシウムクリムゾンCa2+、カルシウムグリーン、カルシウムグリーン−1Ca2+、カルシウムオレンジ、カルシウムオレンジCa2+、カルボキシナフトフルオレッセインpH10.0、カスケードブルー、カスケードブルーBSApH7.0、カスケードイエロー、カスケードイエロー抗体コンジュゲートpH8.0、CFDA、CFP(シアン蛍光タンパク質)、CI−NERFpH2.5、CI−NERFpH6.0、シトリン、クマリン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、CyQUANT GR−DNA、ダンシルカダベリン、ダンシルカダベリン,MeOH、DAPI、DAPI−DNA、ダポキシル(2−アミノエチル)スルホンアミド、DDAOpH9.0、Di−8 ANEPPS、Di−8−ANEPPS−脂質、DiI、DiO、DM−NERFpH4.0、DM−NERFpH7.0、DsRed、DTAF、dTomato、eCFP(強化シアン蛍光タンパク質)、eGFP(強化緑色蛍光タンパク質)、エオシン、エオシン抗体コンジュゲートpH8.0、エリスロシン−5−イソチオシアネートpH9.0、臭化エチジウム、エチジウムホモ二量体、エチジウムホモ二量体−1−DNA、eYFP(強化黄色蛍光タンパク質)、FDA、FITC、FITC抗体コンジュゲートpH8.0、FlAsh、Fluo−3、Fluo−3Ca2+、Fluo−4、フルオルルビー、フルオレッセイン、フルオレッセイン0.1M NaOH、フルオレッセイン抗体コンジュゲートpH8.0、フルオレッセインデキストランpH8.0、フルオレッセインpH9.0、フルオロエメラルド、FM1−43、FM1−43脂質、FM4−64、FM4−64,2%CHAPS、FuraレッドCa2+、Furaレッド高Ca、Furaレッド低Ca、Fura−2Ca2+、Fura−2高Ca、Fura−2無Ca、GFP(S65T)、HcRed、Hoechst 33258、Hoechst 33258−DNA、Hoechst 33342、Indo−1Ca2+、Indo−1無Ca、Indo−1飽和Ca、JC−1、JC−1pH8.2、リッサミンローダミン、LOLO−1−DNA、Lucifer Yellow, CH、LysoSensor Blue、LysoSensor Blue pH5.0 、LysoSensor Green、LysoSensor Green pH5.0、LysoSensor Yellow pH3.0、LysoSensor Yellow pH9.0、LysoTracker Blue、LysoTracker Green、LysoTracker Red、マグネシウムグリーン、マグネシウムグリーンMg2+、マグネシウムオレンジ、Marina Blue、mBanana、mCherry、mHoneydew、MitoTracker Green、MitoTracker Green FM, MeOH、MitoTracker Orange、MitoTracker Orange, MeOH、MitoTracker Red、MitoTracker Red, MeOH、mOrange、mPlum、mRFP、mStrawberry、mTangerine、NBD−X、NBD−X,MeOH、NeuroTrace 500/525、緑色蛍光ニッスル染色RNA、ナイルブルーEtOH、ナイルレッド、ナイルレッド脂質、ニッスル、オレゴングリーン488、オレゴングリーン488抗体コンジュゲートpH8.0、オレゴングリーン514、オレゴングリーン514抗体コンジュゲートpH8.0、パシフィックブルー、パシフィックブルー抗体コンジュゲートpH8.0、フィコエリトリン、PicoGreen dsDNA定量試薬、PO−PRO−1、PO−PRO−1−DNA、PO−PRO−3、PO−PRO−3−DNA、POPO−1、POPO−1−DNA、POPO−3、ヨウ化プロピジウム、ヨウ化プロピジウム−DNA、R−フィコエリトリンpH7.5、ReAsH、レゾルフィン、レゾルフィンpH9.0、Rhod−2、Rhod−2Ca2+、ローダミン、ローダミン110、ローダミン110pH7.0、ローダミン123,MeOH、ローダミングリーン、ローダミンファロイジンpH7.0、ローダミンレッド−X抗体コンジュゲートpH8.0、ローダミングリーンpH7.0、ロドールグリーン抗体コンジュゲートpH8.0、サファイア、SBFI−Na+、ナトリウムグリーンNa+、スルホローダミン101,EtOH、SYBRグリーンI、SYPROルビー、SYTO13−DNA、SYTO45−DNA、SYTOXブルー−DNA、テトラメチルローダミン抗体コンジュゲートpH8.0、テトラメチルローダミンデキストランpH7.0、テキサスレッド−X抗体コンジュゲートpH7.2、TO−PRO−1−DNA、TO−PRO−3−DNA、TOTO−1−DNA、TOTO−3−DNA、TRITC、X−Rhod−1Ca2+、YO−PRO−1−DNA、YO−PRO−3−DNA、YOYO−1−DNAおよびYOYO−3−DNAを包含する。
【0066】
更に別の実施形態では、異なる2つの粒子に結合した2種の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子が、利用している検出可能マーカーを消光する能力を有する限り、使用することができる。適切な粒子には、ポリマー粒子(制限はないが、ポリスチレン粒子、ポリビニル粒子、アクリレートおよびメタクリレート粒子など)、ガラス粒子、ラテックス粒子、Sepharoseビーズ、および当技術分野で周知の他の類似粒子が挙げられる。オリゴヌクレオチドをこのような粒子に結合させる方法は、当技術分野で周知のことであり、常套的に実施されている。Chriseyら、1996年、Nucleic Acids Research、24巻、3031〜3039頁(ガラス)ならびにCharreyreら、1997年、Langmuir、13巻、3103〜3110頁、Fahyら、1993年、Nucleic Acids Research、21巻、1819〜1826頁、Elaissariら、1998年、J. Colloid Interface Sci.、202巻、251〜260頁、Kolarovaら、1996年、Biotechniques、20巻、196〜198頁およびWolfら、1987年、Nucleic Acids Research、15巻、2911〜2926頁(ポリマー/ラテックス)を参照されたい。
【0067】
ハイブリッド形成時に検出可能シグナルまたは検出可能シグナルの変化を示すと見込まれる、化学発光分子などの蛍光分子以外の他の標識も、使用することができる。
【0068】
ナノ粒子
本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」とは、任意の1つの寸法が10μm未満、好ましくは5μm未満の小さな構造体を指す。一般に、想定しているナノ粒子は、本明細書に記載するようなオリゴヌクレオチドに対して、高い担持能を有する任意の化合物または物質を包含する。本発明の実施に有用なナノ粒子には、ナノ粒子が他の方法で検出可能なマーカーを消光する能力を有する限り、金属(例えば、金、銀、銅および白金)、半導体(例えば、CdSe、CdS、およびZnSで被覆したCdSまたはCdSe)、および磁性(例えば、フェロマグネタイト)コロイド状物質が含まれる。本発明の実施に有用な他のナノ粒子には、ZnS、ZnO、TiO、AgI、AgBr、HgI、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In、InSe、Cd、CdAs、InAsおよびGaAsが挙げられる。ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5nm〜約150nm(平均直径)、より好ましくは約5nm〜約50nm、最も好ましくは約10nm〜約30nmである。ナノ粒子のサイズは、約5〜約10nm、または約5〜約20nm、または約5〜約30nm、または約5〜約40nm、または約5〜約60nm、または約5〜約70nm、または約5〜約80nm、または約5〜約90nm、または約5〜約100nm、または約5〜約110nm、または約5〜約120nm、または約5〜約130nm、または約5〜約140nm、または約10〜約20nm、または約10〜約40nm、または約10〜約50nm、または約10〜約60nm、または約10〜約70nm、または約10〜約80nm、または約10〜約90nm、または約10〜約100nm、または約10〜約110nm、または約10〜約120nm、または約10〜約130nm、または約10〜約140nm、または約10〜約150nmであると想定されている。ナノ粒子はまた、棒状、角柱、または四面体でもよい。
【0069】
したがって、それだけに限らないが、米国特許出願第20030147966号に記載されるような金属、半導体材料またはセラミックスを含めた、多様な無機材料を含むナノ粒子が、本法での使用に想定されている。例えば、金属系ナノ粒子には本明細書に記載のものが含まれる。セラミックナノ粒子材料には、それだけに限らないが、ブラッシュ石、リン酸三カルシウム、アルミナ、シリカおよびジルコニアが挙げられる。ナノ粒子を作製する有機材料には、カーボンが含まれる。ナノ粒子ポリマーには、ポリスチレン、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテルおよびポリエチレンが挙げられる。生分解性の生体高分子(例えば、BSAなどのポリペプチド、多糖類など)、他の生体物質(例えば、炭水化物)、および/またはポリマー化合物も、ナノ粒子の作製に使用することを想定している。
【0070】
実際には、当技術分野で公知の検出アッセイにおける使用に一般にその程度に適しており、ポリヌクレオチドの複合体形成、即ち2本鎖または3本鎖複合体を形成するハイブリッド形成を妨害しない分子をそれに付けた、適切な任意のナノ粒子を用いる方法が提供される。該粒子のサイズ、形状および化学組成は、生成するオリゴヌクレオチド官能化ナノ粒子の性質に寄与する。こうした性質には、例えば、光学的性質、光電子的性質、電気化学的性質、電子的性質、各種溶液中での安定性、磁気的性質、ならびに孔径および流路径の変化が含まれる。サイズ、形状および化学組成が均一なナノ粒子の使用だけでなく、サイズ、形状および/または化学組成が異なる粒子混合物の使用も想定されている。適切な粒子の例には、制限はないが、ナノ粒子、凝集粒子、等方性(球形粒子など)および異方性粒子(非球形の棒、四面体、角柱など)、ならびにコア−シェル粒子であって、開示内容の全体が参照により組み込まれる、2002年12月28日出願の米国特許出願第10/034451号および2002年12月28日出願の国際出願第PCT/US01/50825号に記載のものなどが含まれる。
【0071】
金属、半導体および磁性のナノ粒子を作製する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Schmid, G.編、「Clusters and Colloids」(VCH, Weinheim、1994年);Hayat, M. A.編、「Colloidal Gold: Principles, Methods, and Applications」(Academic Press, San Diego、1991年);Massart, R.、IEEE Transactions On Magnetics、17巻、1247頁(1981年);Ahmadi, T. S.ら、Science、272巻、1924頁(1996年);Henglein, A.ら、J. Phys. Chem.、99巻、14129頁(1995年);Curtis, A. C.ら、Angew. Chem. Int. Ed. Engl.、27巻、1530頁(1988年)を参照されたい。調製されたポリアルキルシアノアクリレートナノ粒子の調製は、Fattalら、J. Controlled Release(1998年)53巻、137〜143頁および米国特許第4489055号に記載されている。ポリ(D−グルカルアミドアミン)を含むナノ粒子を作製する方法は、Liuら、J. Am. Chem. Soc.(2004年)126巻、7422〜7423頁に記載されている。メチルメタクリレート(MMA)重合体を含むナノ粒子の調製は、Tondelliら、Nucl. Acids Res.(1998年)26巻、5425〜5431頁に記載されており、デンドリマーナノ粒子の調製は、例えばKukowska−Latalloら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1996年)93巻、4897〜4902頁(星形ポリアミドアミンデンドリマー)に記載されている。
【0072】
適切なナノ粒子は、例えば、Ted Pella, Inc.(金)、Amersham Corporation(金)およびNanoprobes, Inc.(金)から商業的にも入手できる。
【0073】
米国特許出願第20030147966号にも記載されているように、本明細書に記載の材料を含むナノ粒子は、商業的に入手できる、または溶液中での漸進的核形成(例えば、コロイド反応による)から、もしくはスパッタ堆積などの各種の物理的および化学的気相堆積法により、生成することができる。例えば、HaVashi(1987年)Vac. Sci. Technol.1987年7/8月、A5巻(4号)、1375〜84頁;Hayashi(1987年)Physics Today、1987年12月、44〜60頁;MRS Bulletin、1990年1月、16〜47頁を参照されたい。
【0074】
米国特許出願第20030147966号に更に記載されているように、想定されるナノ粒子は、当技術分野で公知の方法を用いて、HAuClおよびクエン酸塩還元剤を用いて作製される。例えば、Marinakosら、(1999年)Adv. Mater.11巻、34〜37頁;Marinakosら、(1998年)Chem. Mater.10巻、1214〜19頁;Enustun & Turkevich、(1963年)J. Am. Chem. Soc.85巻、3317頁を参照されたい。約140nmの分散凝集体粒径を有する酸化スズナノ粒子は、日本・千葉の真空冶金株式会社から商業的に入手できる。組成およびサイズ範囲が様々な他の市販ナノ粒子は、例えば、Vector Laboratories, Inc. of Burlingame, Calif.から入手できる。
【0075】
構造スイッチング認識配列で官能化されたナノ粒子
他の実施形態では、検出可能変化は、ナノ粒子上でのオリゴヌクレオチドのハイブリッド形成時に検出可能変化を生じる分子(例えば、制限はないが、蛍光性の分子および色素)で、オリゴヌクレオチドを標識することにより創出される。例えば一態様では、ナノ粒子上に官能化されたオリゴヌクレオチドまたはポリペプチドは、ナノ粒子取付末端に対して遠位にある末端に結合したマーカーを有しており、標的と会合していない状態では、マーカーのある遠位末端は、マーカーの蛍光を消光するのに十分に近くナノ粒子近傍に配置している。一態様では、金属および半導体ナノ粒子は、既知の蛍光消光剤であり、その消光作用の大きさは、ナノ粒子と蛍光分子との距離に依存する。したがって、1本鎖状態では、ナノ粒子に結合したオリゴヌクレオチドは、二次構造折畳みを介してオリゴヌクレオチドにより形成される、例えばヘアピン構造によってナノ粒子と相互作用するが、その折畳みのために、蛍光分子は、相当な消光が観察されるようにナノ粒子に近接する。同様に、非結合状態では、ナノ粒子に結合したポリペプチドは、マーカーをナノ粒子に近接させる立体構造を取り、マーカーが消光されることになろう。認識配列を介した標的分子の結合によるポリヌクレオチドまたはポリペプチドの複合体形成時には、蛍光分子がナノ粒子から遠ざかり、蛍光の消光が減衰することになろう(図1)。オリゴヌクレオチドの有用な長さは、実験的に決定することができる。したがって、様々な態様では、蛍光標識したオリゴヌクレオチドまたはポリペプチドを結合させた金属および半導体ナノ粒子は、本明細書に記載するアッセイ方式のいずれにおいても使用される。
【0076】
オリゴヌクレオチドのナノ粒子への取付け
提示した方法に使用するナノ粒子は、長さが約5〜約100ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドまたはその修飾型で官能化される。オリゴヌクレオチドが、長さ約5〜約90ヌクレオチド、長さ約5〜約80ヌクレオチド、長さ約5〜約70ヌクレオチド、長さ約5〜約60ヌクレオチド、長さ約5〜約50ヌクレオチド、長さ約5〜約45ヌクレオチド、長さ約5〜約40ヌクレオチド、長さ約5〜約35ヌクレオチド、長さ約5〜約30ヌクレオチド、長さ約5〜約25ヌクレオチド、長さ約5〜約20ヌクレオチド、長さ約5〜約15ヌクレオチド、長さ約5〜約10ヌクレオチドである方法も想定しており、サイズ長さが中間的な全てのオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが所望の結果を実現できる程度にまで、明確に開示されている。したがって、長さがヌクレオチド個数にして5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100のオリゴヌクレオチドが想定されている。
【0077】
更に他の態様では、オリゴヌクレオチドは約8〜約80ヌクレオチド(即ち、連結されるヌクレオシドが約8〜約80個)を含む。当業者であれば、長さがヌクレオチド個数にして8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80の化合物を方法が利用することを理解されよう。
【0078】
ナノ粒子、オリゴヌクレオチドまたは両者は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させるために官能化される。このような方法は当技術分野で公知である。例えば、3’末端または5’末端でアルカンチオールにより官能化されたオリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子に容易に結合する。Whitesides、1995年、「Proceedings of the Robert A. Welch Foundation 39th Conference On Chemical Research Nanophase Chemistry」、Houston, Tex.、109〜121頁を参照されたい。Mucicら、1996年、Chem. Commun. 555〜557頁も参照されたい(3’チオールDNAを平坦な金表面に結合させる方法を記載しており、この方法は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させるために使用することができる)。このアルカンチオール法は、オリゴヌクレオチドを他の金属、半導体および磁性コロイドに、ならびに前掲した他のナノ粒子に結合させるために使用することもできる。オリゴヌクレオチドを固体表面に結合させるための他の官能基には、ホスホロチオエート基(例えば、オリゴヌクレオチドホスホロチオエートの金表面への結合については米国特許第5472881号を参照されたい)、置換アルキルシロキサン(例えば、オリゴヌクレオチドをシリカおよびガラス表面に結合させるためにはBurwell、1974年、Chemical Technology、4巻、370〜377頁およびMatteucci and Caruthers、1981年、J. Am. Chem. Soc.、103巻、3185〜3191頁、ならびにアミノアルキルシロキサンの結合およびメルカプトアルキルシロキサンの同様な結合についてはGrabarら、1995年、Anal. Chem.、67巻、735〜743頁を参照されたい)が挙げられる。5’チオヌクレオシドまたは3’チオヌクレオシドを末端とするオリゴヌクレオチドも、オリゴヌクレオチドを固体表面に結合させるために使用し得る。以下の参考文献は、オリゴヌクレオチドをナノ粒子に結合させるために使用し得る他の方法を記載している。即ち、Nuzzoら、1987年、J. Am. Chem. Soc.、109巻、2358頁(金上のジスルフィド);Allara and Nuzzo、1985年、Langmuir、1巻、45頁(アルミニウム上のカルボン酸);Allara and Tompkins、1974年、J. Colloid Interface Sci.、49巻、410〜421頁(銅上のカルボン酸);ller、「The Chemistry Of Silica」、6章、(Wiley 1979年)(シリカ上のカルボン酸);Timmons and Zisman、1965年、J. Phys. Chem.、69巻、984〜990頁(白金上のカルボン酸);Soriaga and Hubbard、1982年、J. Am. Chem. Soc.、140巻、3937頁(白金上の芳香環化合物);Hubbard、1980年、Acc. Chem. Res.、13巻、177頁(白金上のスルホラン、スルホキシドおよび他の官能化溶媒);Hickmanら、1989年、J. Am. Chem. Soc.、111巻、7271頁(白金上のイソニトリル);Maoz and Sagiv、1987年、Langmuir、3巻、1045頁(シリカ上のシラン);Maoz and Sagiv、1987年、Langmuir、3巻、1034頁(シリカ上のシラン);Wassermanら、1989年、Langmuir、5巻、1074頁(シリカ上のシラン);Eltekova and Eltekov、1987年、Langmuir、3巻、951頁(二酸化チタンおよびシリカ上の芳香族のカルボン酸、アルデヒド、アルコール、およびメトキシ基);Leeら、1988年、J. Phys. Chem.、92巻、2597頁(金属上の剛直なホスフェート)である。それに加え、オリゴヌクレオチドをナノ粒子表面上に結合させる適切な任意の方法を使用し得る。オリゴヌクレオチドを表面上に結合させる特に好ましい方法は、米国出願第09/344667号(1999年6月25日出願)、第09/603830号(2000年6月26日出願)、第09/760500号(2001年1月12日出願)、第09/820279号(2001年3月28日出願)、第09/927777号(2001年8月10日出願)、および国際公開第PCT/US97/12783号(1997年7月21日)、第PCT/US00/17507号(2000年6月26日)、第PCT/US01/01190号(2001年1月12日)、第PCT/US01/10071号(2001年3月28日)に記載のエージング法に基づくが、以上の開示内容の全体は参照により組み込まれる。このエージング法は、ナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートに予想外に増強された安定性および選択性を付与する。この方法は、ナノ粒子に結合できる官能基を含む部分を、好ましくは共有結合したオリゴヌクレオチドをもたらすことを含む。そうした部分および官能基は、オリゴヌクレオチドのナノ粒子への結合(即ち、化学吸着または共有結合による)を可能とするものである。例えば、アルカンチオール、アルカンジスルフィドまたは環状スルフィドを5’または3’末端に結合したオリゴヌクレオチドは、金ナノ粒子を含めた多様なナノ粒子へオリゴヌクレオチドを結合するために、使用することができる。
【0079】
オリゴヌクレオチドは、官能基によってオリゴヌクレオチドの少なくとも一部をナノ粒子へ結合させるに十分な時間、水中でナノ粒子と接触させる。このような時間は、実験的に決定することができる。例えば、約12〜24時間の時間で良い結果が得られることが判明した。オリゴヌクレオチドの結合にとって適切な他の条件も、実験的に決定することができる。例えば、ナノ粒子約10〜20nMの濃度および室温でのインキュベーションで、良い結果が得られる。
【0080】
次に、少なくとも1種の塩を水に添加して塩溶液を形成する。その塩は適切な任意の水溶塩でよい。例えば、その塩は、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、これらの塩の2種以上の組合せ、またはリン酸緩衝液中のこれらの塩の1種でもよい。好ましくはその塩を濃厚溶液として添加するが、固体として添加することもできよう。この塩は、一度に水へ添加することができる、または徐々に時間をかけて添加される。「徐々に時間をかけて」とは、ある時間を隔てて時々、少なくとも2回に分けてその塩を添加することを意味する。適切な時間間隔は、実験的に決定することができる。
【0081】
塩溶液のイオン強度は、オリゴヌクレオチド相互の静電反発、および負荷電オリゴヌクレオチドの正荷電ナノ粒子に対する静電引力、または負荷電オリゴヌクレオチドの負荷電ナノ粒子に対する静電反発のいずれかを、少なくとも部分的に克服するだけ十分でなければならない。徐々に時間をかけて塩を添加することにより、静電的な引力および反発を漸減させると、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの表面密度が最高になることが判明した。適切なイオン強度は、各塩または塩の組合せについて実験的に決定することができる。リン酸緩衝液中、約0.1M〜約1.0Mの塩化ナトリウムの最終濃度で、好ましくは塩化ナトリウムの濃度を徐々に時間をかけて上げると、良い結果が得られることが判明した。
【0082】
塩の添加後、オリゴヌクレオチドおよびナノ粒子は、十分な追加のオリゴヌクレオチドが、ナノ粒子に結合し、安定なナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートの生成を可能とするに十分な追加の時間の間、塩溶液中でインキュベートする。以下に詳細に述べるように、ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドの表面密度が増加することにより、コンジュゲートが安定化することが判明した。このインキュベーション時間は、実験的に決定することができる。約24〜48時間、好ましくは40時間の全インキュベーション時間で、良い結果が得られることが判明した(これはインキュベーションの全時間であり、前に触れた通り、塩濃度は、この全時間に亘って徐々に増加させることができる)。塩溶液中でのこの第2のインキュベーション期間を、本明細書では「エージング」ステップと称する。この「エージング」ステップに対する適切な他の条件も、実験的に決定することができる。例えば、室温でのインキュベーションおよびpH7.0で、良い結果が得られる。
【0083】
「エージング」ステップの使用で生成するコンジュゲートは、「エージング」ステップなしに生成したものより相当に安定であることが判明した。前に触れた通り、この安定性の増加は、「エージング」ステップにより実現される、ナノ粒子表面上のオリゴヌクレオチドの密度増加による。代替的な「迅速塩エージング」法も、同等のDNA密度および安定性を有する粒子を生成した。界面活性剤、例えば約0.01%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)Tween、またはポリエチレングリコール(PEG)の存在下で塩添加を行うことにより、この塩エージング法は約1時間で行うことができる。
【0084】
「エージング」ステップにより実現される表面密度は、ナノ粒子のサイズおよび種類、ならびにオリゴヌクレオチドの長さ、配列および濃度に依存することになろう。ナノ粒子を安定化させるに十分な表面密度、およびナノ粒子とオリゴヌクレオチドとの所望の組合せに対してその密度を得るに必要な条件は、実験的に決定することができる。一般に、少なくとも10ピコモル/cmの表面密度が、安定なナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートを得るのに十分となろう。好ましくは、表面密度が少なくとも15ピコモル/cmである。表面密度が高過ぎる場合、コンジュゲートのオリゴヌクレオチドが、核酸およびオリゴヌクレオチドの標的とハイブリッド形成する能力を減退させる恐れがあるので、表面密度は、好ましくは約35〜40ピコモル/cm以下である。オリゴヌクレオチドが、少なくとも10pmol/cm、少なくとも15pmol/cm、少なくとも20pmol/cm、少なくとも25pmol/cm、少なくとも30pmol/cm、少なくとも35pmol/cm、少なくとも40pmol/cm、少なくとも45pmol/cm、少なくとも50pmol/cm、または50pmol/cm以上の表面密度でナノ粒子に結合している方法も提供される。
【0085】
本明細書において用語「複合体形成」と互換的に使用される「ハイブリッド形成」とは、ワトソン・クリックのDNA相補性、フーグスティーン結合、または当技術分野で公知である他の配列特異的結合の規則に従う、水素結合による核酸の2本鎖または3本鎖間の相互作用を意味する。あるいは、それは、当技術分野で公知の配列特異的結合性に従った、本明細書に規定するようなポリペプチド間の相互作用を意味することができる。ハイブリッド形成は、当技術分野で公知の異なる厳密性(stringency)条件下で行うことができる。適当な厳密度条件下では、2本の相補鎖間または2種のポリペプチド間のハイブリッド形成は、反応において約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上に達することができよう。
【0086】
様々な態様では、該方法は、相互に100%相補的、即ち完全な適合である、2種または3種のオリゴヌクレオチドまたはポリペプチドの使用を含むが、他の態様では、個々のオリゴヌクレオチドは、各オリゴヌクレオチドの全長または部分長に亘って相互に少なくとも(それ以上を意味する)約95%相補的であり、少なくとも約90%、少なくとも約85%、少なくとも約80%、少なくとも約75%、少なくとも約70%、少なくとも約65%、少なくとも約60%、少なくとも約55%、少なくとも約50%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、少なくとも約35%、少なくとも約30%、少なくとも約25%、少なくとも約20%相互に相補的である。
【0087】
該方法に使用されるオリゴヌクレオチドの配列は、特異的にハイブリッド形成が可能であるために、相互に100%相補的である必要はないことが、当技術分野では理解されている。その上、オリゴヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリッド形成事象に関与しない(例えば、ループ構造またはヘアピン構造)ように、1個または複数のセグメントに亘り相互にハイブリッド形成してもよい。任意の所与のオリゴヌクレオチド間における相補率(%)は、当技術分野で公知のBLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tools)およびPowerBLASTプログラムを用いて常套的に決定することができる(Altschulら、1990年、J. Mol. Biol.、215巻、403〜410頁;Zhang and Madden、1997年、Genome Res.、7巻、649〜656頁)。
【0088】
一態様では、ナノ粒子表面上のオリゴヌクレオチドの充填密度が、ナノ粒子間および単一ナノ粒子上でのポリヌクレオチド鎖間に、協調的挙動を生むに十分である方法が提供される。別の態様では、ナノ粒子間の協調的挙動が、オリゴヌクレオチドの耐分解性を増加させる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「安定な」とは、コンジュゲートを作製してから少なくとも6ヶ月の期間、大多数のオリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合した状態にあり、オリゴヌクレオチドが、核酸を検出する方法およびナノファブリケーションの方法において認められる標準的な条件下で、核酸およびオリゴヌクレオチドの標的とハイブリッド形成することができることを意味する。
【0090】
提示した方法で利用される各ナノ粒子は、複数のオリゴヌクレオチドを結合させている。その結果、各ナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲートは、第1のナノ粒子−オリゴヌクレオチドコンジュゲート上に存在する蛍光団と検出上異なり、第2のナノ粒子上で官能化された蛍光団にコンジュゲートしている第2のオリゴヌクレオチド、および存在する場合、十分に相補的な配列を有する遊離オリゴヌクレオチドとハイブリッド形成する能力を有する。一態様では、各ナノ粒子が同一のオリゴヌクレオチドで官能化されている、即ち、ナノ粒子に結合した各オリゴヌクレオチドが、同じ長さおよび同じ配列を有する方法が提供される。他の態様では、各ナノ粒子は、同一でない2種以上のオリゴヌクレオチドで官能化されている、即ち、結合しているオリゴヌクレオチドの少なくとも1個は、異なる長さおよび/または異なる配列を有するため、結合している他の少なくとも1個のオリゴヌクレオチドと異なる。
【0091】
用語「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」は、単一配列がナノ粒子に結合している、または単一配列の複数コピーが結合しているものを包含する。例えば、様々な態様では、オリゴヌクレオチドは、縦列をなす、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれを超える縦列反復をなす、複数コピーとなって存在する。
【0092】
あるいは、ナノ粒子は、配列の異なる少なくとも2個のオリゴヌクレオチドを含むように官能化されているが、但し、各オリゴヌクレオチドは、検出上異なるマーカーで標識されている。上記の通り、異なるオリゴヌクレオチド配列は、様々な態様では、縦列および/または複数コピーをなして配置されている。あるいは、配列の異なるオリゴヌクレオチドは、ナノ粒子に直接結合されている。配列の異なるオリゴヌクレオチドがナノ粒子に結合している方法では、該方法の態様には、異なるオリゴヌクレオチド配列が、同じポリヌクレオチド上の異なる領域にハイブリッド形成する態様が含まれる。
【0093】
ナノ粒子上のオリゴヌクレオチドは、全て同じ配列を有することもあり、または別のナノ粒子に結合したポリヌクレオチドの異なる部分とハイブリッド形成する、異なる配列を有することもある。異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを使用する場合、各ナノ粒子が異なるオリゴヌクレオチド全てを結合させていることもあり、または異なるオリゴヌクレオチドは異なるナノ粒子に結合している。あるいは、ナノ粒子各々上にあるオリゴヌクレオチドは、複数の異なる配列を有することもあるが、該配列の少なくとも1つは、第2のナノ粒子上にあるポリヌクレオチドの一部分とハイブリッド形成しなければならない。
【0094】
ナノフレア技術
本発明の一態様では、結合部中に認識配列を含有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、本明細書に記載するようにナノ粒子に結合している。本明細書で使用する場合の「認識配列」とは、対象とする標的分子に部分的または完全に相補的である配列を意味すると理解される。
【0095】
結合しているオリゴヌクレオチドに、認識配列を含有する結合部を有するナノ粒子は、始めにレポーター配列と会合する。本明細書で使用する場合、「レポーター配列」とは、結合部およびその認識配列に部分的または完全に相補的であり、したがってそれらにハイブリッド形成できる配列を意味すると理解される。レポーター配列は、本明細書の上記で考察したように標識され、ナノフレアとも呼称される。更に、レポーター配列が、様々な態様において、認識配列より少ない、同数、または多い塩基からなる結果、結合部中にある認識配列の標的分子との結合は、ハイブリッド形成しているレポーター配列の放出を起こし、それによりレポーター配列に結合している標識に検出可能であり、測定可能である変化が起きる(図2)。
【0096】
特定の一態様では、特定の標的mRNAに対する認識配列で官能化されたナノ粒子は、レポーター配列を有する短いCy5標識相補性レポーターポリヌクレオチドとハイブリッド形成しており、Cy5部分の蛍光は、ナノ粒子上の認識配列とハイブリッド形成している際には消光される。このレポーター配列は、標的mRNAにより転位されることもできる。転位すると、Cy5部分は、もはや消光されずに蛍光を発し、蛍光シグナルの検出および定量を可能にするが、このシグナルは、レポーター配列の転位と同時に認識配列にハイブリッド形成する標的配列の量と相関している。
【0097】
ナノフレアは、金ナノ粒子(AuNP)の独特な光学的性質を利用する。AuNPは、分子消光剤より、高い効率で(Dubertretら、2001年、Nat. Biotechnol.、19巻、365〜370頁)、および長い距離に亘って(Dulkeithら、2005年、Nano Lett.、5巻、585〜589頁)蛍光を消光する。同様に、本明細書に記載する他の全種のナノ粒子は、結合している結合部の検出可能マーカーを消光できる限り、使用し得る。
【0098】
当業者は、標的分子の非存在下では認識配列へのレポーター結合を促進する一方、前記標的分子の存在下では前記レポーター配列の転位を起こすと見込まれる、インビトロ試験の場合の相対的融解温度および/またはハイブリッド形成条件を過度の実験をせずに決定することができる。
【0099】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、それらは決して限定することを意図してはいない。
【実施例】
【0100】
(実施例1)
この実施例は、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤が、細胞内分子標的の検出に使用できると実証することを意図している。概念実証として、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子を用いた、2種の細胞型におけるmRNA標的の細胞内検出は、非常に有効であることが示されている。こうした作用剤は、細胞に容易に進入し、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーの双方を用いて容易に読み取ることができる蛍光シグナルを生じる、
具体的には、13nmの金ナノ粒子を、一端はチオール部、他端は蛍光色素を末端とし、構造スイッチング認識配列を含有する異なる数配列で修飾した。標的のない状態では、色素分子は、金ナノ粒子表面に近接しているため、消光され、蛍光シグナルを発しない。標的のある状態では、色素分子は、金ナノ粒子表面から離れており、蛍光シグナルが観察される(図1)。
【0101】
AuNPは、特定のRNA転写物に対する18塩基認識要素を含有するチオール化オリゴヌクレオチド(図1)で、金チオール結合形成により官能化した(Loveら、2005年、Chem. Rev. 105巻、1103〜1169頁)。次いで、オリゴヌクレオチド官能化AuNPを、より長い標的または標的領域により転位された場合には「フレア」として作用できる、短いシアニン(Cy5)色素末端レポーター配列とハイブリッド形成させた(図1)。結合状態では、レポーター鎖のCy5蛍光は、AuNP表面に近接しているために消光される。標的のある状態では、フレア鎖は、標的とオリゴヌクレオチド修飾AuNPとの間でより長く、より安定な二重鎖を形成することにより、AuNPから転位され、遊離される。
【0102】
(実施例2)
細胞に進入し、細胞内標的分子を検出する金ナノ粒子の能力の使用を更に例示するために、インビトロ細胞培養実験を実施した。
【0103】
強化緑色蛍光タンパク質を安定に発現するC166哺乳動物細胞を、10%血清入りダルベッコ改良イーグル培地中、37℃および5%COで維持し、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)mRNAを標的とする、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤を投与した。SKBR3ヒト乳癌(下記参照)およびC166マウス内皮細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手し、10%熱不活化ウシ胎児血清入りのそれぞれマッコイ(McCoy)5A培地およびダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で増殖させ、37℃、5%CO中で維持した。細胞を6または24ウェルのプレート中に播種し、1〜2日間増殖させた後に処置した。処置当日に、細胞はおよそ50%集密していた。培地は、官能化AuNPを含有する新鮮培地で入れ替えた。
【0104】
哺乳動物細胞中には存在しない炭疽病RNAに対するターゲティング領域を含有する粒子を用いて、対照実験を行った。16時間トランスフェクションした後、EGFPターゲティングプローブで処置したこれらのEGFP発現細胞は、対照粒子で認めたシグナルより遥かに大きい、明るい蛍光シグナルを示した。更なる対照実験として、EGFPを発現しない、そのためEGFPのmRNA標的を含有していないC166細胞において、粒子を試験した。これらの実験では、いずれのプローブも、細胞内で1度もシグナル伝達をしないことが判明し、したがって蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤は、特定の細胞内分子標的の検出に使用できることが確認された。
【0105】
細胞内へのプローブ進入は、その取込みを定量し、何らかの配列依存性取込み効果を除外するためにも、誘導結合プラズマ質量分析法を用いて確認した。これらのデータは、通常の実験後、細胞が、金ナノ粒子およそ10万個を含有すること、およびC166細胞は、オリゴヌクレオチド中に含まれる認識配列に関係なく、類似数の金ナノ粒子を取り込むことを確認している。
【0106】
(実施例3)
蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤を、オリゴヌクレオチド担持量および蛍光シグナル伝達能について更に調べた。これらの実験の結果から、各金ナノ粒子は、認識配列を含有するおよそ60個の蛍光オリゴヌクレオチドで官能化されていることが確認される。更に、各種のオリゴヌクレオチド修飾金ナノ粒子剤の1nM溶液をKCN溶液中で分解すると、いずれもほぼ同じ蛍光を示した。まとめると、この特性決定データは、標的のない状態では、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤が、同じ蛍光シグナルを表すことを示しており、したがって、観察された細胞内シグナル伝達が、特定の細胞内結合事象により起こされたことが確認される。
【0107】
内因性遺伝子の検出は、創薬および遺伝子研究にとって特に重要である。そこで、癌遺伝子のサバイビンの存在を感知するために使用できる、金ナノ粒子を調製した。これらの粒子は、対照配列と比較すると、サバイビン発現A549肺癌細胞の内部から明るい蛍光シグナルをやはり表す。こうした結果から、上記の蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤は、自然なmRNA標的の存在を直接読み取るために、使用できることが示される。
【0108】
観察した蛍光シグナルは、別法として、単純な卓上フローサイトメーター計器を用いて、大きな処置細胞集団において検出することができる。これらの実験からも、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤について観察される非常に効率的な取込み効率、および、所与の試料中のほぼ全細胞が強いシグナルを示し、細胞内mRNA標的の存在が示されることが、目立っている。ここでは、Guava Easy Cyteフローサイトメーターおよびその計器用ソフトウェアを用いて、1000細胞カウントを蛍光強度の関数としてプロットした。これらの実験では、サバイビン発現A549細胞集団の蛍光の劇的変化が、該細胞をサバイビンターゲティング用の蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤で処置したとき、対照の炭疽病ターゲティング剤で処置した細胞に比して、見られることが観察された。この結果は、フローサイトメリーと共用すると、蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤は、大きな細胞集団の分取に良く適合することを示している。
【0109】
該粒子の効率は、Lipofectamine 2000製剤で細胞中にトランスフェクトした従来型消光剤−蛍光団オリゴヌクレオチド配列とも比較した。本発明粒子が劇的なシグナル伝達能を示した類似の条件下で、これらの製剤は、無視し得るシグナル伝達能を示す。濃度を10倍上げた場合でも、該製剤は、僅かしかまたは全くシグナルを示さず、したがって、これらの条件下で、該ナノ粒子は、従来型消光剤−蛍光団オリゴヌクレオチドプローブより高性能であることが立証された。
【0110】
要約すると、以上の実施例から次のことが示される。
【0111】
1)金ナノ粒子は、標的を検出できる蛍光団含有オリゴヌクレオチドの細胞内送達を補助する。
【0112】
2)蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾したこうした金ナノ粒子剤は、内因性、外因性双方の細胞内標的を検出するために使用することができる。
【0113】
3)特定のmRNA標的の存在を示す蛍光シグナルは、蛍光顕微鏡、フローサイトメーターのいずれかで読み取ることができる。
【0114】
4)効率的な取込みおよび高いシグナル伝達能により、こうした作用剤は、大きな細胞集団の分取に良く適している。
【0115】
5)こうした作用剤の効率的な取込みおよび高いシグナル伝達能は、試験した条件下で従来型消光剤−蛍光団オリゴヌクレオチドプローブより高性能である。
【0116】
6)当該原理は、核酸アプタマーおよびペプチドなどの他の構造スイッチング認識配列に拡張することができる。
【0117】
アデノシン三リン酸(ATP)分子を標的とする、追加の蛍光標識アプタマー含有粒子プローブも、本発明により想定されている。
【0118】
本発明は、複数の細胞内標的を同時に検出し、それらの細胞内濃度をリアルタイムで定量する能力も想定している。その原理は、高等生物における細胞機能のリアルタイムモニタリングに適用することができる。
【0119】
(実施例4)
13nmのAuNPを用いて、ナノフレアを調製した。このサイズの粒子は、効率的な消光剤であり、オリゴヌクレオチドで高密度に官能化することができ(Mirkinら、1996年、Nature 382巻、607〜609頁)、しかも可視光を効率的に散乱せず、これが、干渉が最小限の光学プローブの設計に重要なためである。
【0120】
AuNPは、特定のRNA転写物に対する認識要素を含有するチオール化オリゴヌクレオチド(図2)で、金チオール結合形成により官能化した(Loveら、2005年、Chem. Rev. 105巻、1103〜1169頁)。オリゴヌクレオチドは、標準的な固相ホスホロアミダイト法を用いてExpedite 8909ヌクレオチド合成システム(ABI)上で合成した。塩基および試薬は、Glen Researchから購入した。オリゴヌクレオチドは、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製した。ナノフレアプローブを調製するために、公表済み手順(Frens, G.、1973年、Nature−Physical Science 241巻、20〜22頁)を用いて、クエン酸塩安定化金ナノ粒子(13±1nm)を調製した。チオール修飾オリゴヌクレオチドを、13±1nmの金コロイドに、10nMコロイド1mL当たりオリゴヌクレオチド3nmolの濃度で添加し、終夜振とうした。12時間後、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液(10%)を混合物に添加し、0.1%SDS濃度を実現した。リン酸緩衝液(0.1M;pH7.4)を混合物に添加し、0.01Mリン酸濃度を実現した後、塩化ナトリウム溶液(2.0M)の6等分量を8時間の期間に亘って混合物に添加し、0.15Mの最終塩化ナトリウム濃度を実現した。混合物を終夜振とうして官能化工程を完了した。官能化粒子を含有する溶液を遠心し(13000rpm、20分)、リン酸緩衝塩水(PBS;137mM NaCl、10mMリン酸、2.7mM KCl、pH7.4、Hyclone)中に3回再懸濁して、その後の全実験に使用する精製AuNPを作製した。粒子の濃度は、524nmの吸光量(ε=2.7×10Lmol−1cm−1)を測定することにより決定した。精製したオリゴヌクレオチド官能化AuNPは、相補的なCy5標識レポーター配列100nMを含有するPBS(PBS;137mM NaCl、10mMリン酸、2.7mM KCl、pH7.4、Hyclone)中で、10nMの濃度に懸濁した。混合物を70℃に加熱し、緩やかに室温に冷却し、暗中で少なくとも12時間保存することにより、ハイブリッド形成を行った。粒子を、0.2μmのアセテートシリンジフィルター(GE Healthcare)を用いて滅菌ろ過した。使用したオリゴヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0121】
【化3】

ナノフレアプローブまたは分子ビーコンを、0.1%Tween 20(Sigma)を含有するPBS中で1nMの濃度に希釈し、相補的な標的(標的濃度1μM)で処理した。蛍光スペクトルは、633nmで励起し、650〜750nmの発光を増分1nmで測定するJobin Yvon Fluorolog FL3−22上で記録した。次いで、オリゴヌクレオチド官能化AuNPを、より長い標的または標的領域により転位された場合には「フレア」として作用できる、短いシアニン(Cy5)色素末端レポーター配列とハイブリッド形成させた。結合状態では、レポーター鎖のCy5蛍光は、AuNP表面に近接しているために消光される。標的のある状態では、フレア鎖は、標的とオリゴヌクレオチド修飾AuNPとの間でより長く、より安定な二重鎖を形成することにより、AuNPから転位され、遊離される。
【0122】
相補的な合成標的を用いてナノフレア設計を試験することにより、該プローブは、標的の認識および結合時に、蛍光シグナルの3.8倍の増加で応答することが示される。対照的に、非相補的な標的の存在下では、シグナルは変化せず、バックグランド蛍光と大きさが同等である。したがって、以上の結果は、ナノフレアが、特定の標的の存在をシグナル伝達する上で効率的であることを示す。
【0123】
(実施例5)
合成標的でナノフレアプローブのシグナル伝達能を確立した後、生細胞に進入し、可視化し、RNA標的を検出するプローブの能力を調べた。サバイビン転写物に対する相補領域を組み込むように、ナノフレアを設計したが、この転写物は、癌の治療剤および診断剤における潜在的な使用のために相当な関心を受けている標的である(Altieriら、2003年、Oncogene 22巻、8581〜8589頁)。多数のサバイビン転写物を発現する(Pengら、2005年、Cancer Res. 65巻、1909〜1917頁)SKBR3細胞系(ヒト乳癌)をモデルとして使用して、サバイビンターゲティングナノフレアを試験した。サバイビンの認識およびレポーター配列は、上記に示す通りである(配列番号1および配列番号2)。対照として、非相補配列を含有する第2のプローブを調製した。この非相補的プローブは、サバイビンプローブと類似のバックグランド蛍光、融解性およびシグナル伝達能を有するように設計され、その通り有すると決定された。サバイビン対照プローブのオリゴヌクレオチド配列は、以下の通りであった。
【0124】
【化4】

細胞を、顕微鏡用ガラス製カバースリップ上で培養し、ナノフレアと共にインキュベートし、走査共焦点顕微鏡を用いて結像させた。具体的には、細胞を、6ウェル組織培養プレートの底部に置いたガラス製カバースリップ上で増殖させた。1日後、ナノフレアを含有する培地(粒子濃度125pM)で、培地を入れ替えた。処置から6時間後、培地を入れ替え、細胞を更に12時間培養した。カバースリップを取り出し、PBSで洗浄し、スライドガラス上に載せたPBS充填チャンバーに固定した。全ての画像は、633nmのHeNeレーザー励起源を用いて倍率63倍のZeiss 510 LSMで得た。
【0125】
サバイビンナノフレアで処置したSKBR3細胞は、非相補的対照で処置した該細胞と比較して、強い蛍光を示した。このシグナル伝達がサバイビンの存在と合致することを更に確認するために、C166細胞系(マウス内皮)がヒトサバイビン転写物を含有していないので、この細胞系を対照として用いた。C166細胞を、サバイビン、対照の両プローブで処置した。この場合には、処置後の細胞の蛍光に、識別可能な差が認められなかった。こうした画像形成の結果は、逆転写酵素PCR(RT−PCR)の測定(下記参照)と一致していた。
【0126】
ナノフレアの細胞内シグナル伝達を定量するために、プローブで処置した細胞を、分析フローサイトメトリーを用いて調べた。それ以外に、フローサイトメトリーによって、大きな細胞集団の蛍光データを収集することが可能になる。この結果、小さな細胞試料の検査しかできない、蛍光画像形成などの技法を用いて観察する恐れのあるばらつきおよび人為的実験結果が除外される。細胞を上記のようにナノフレアで処置した(粒子濃度10nM)。分子ビーコンプローブ(配列番号6および配列番号7)は、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて細胞に送達された。処置後、トリプシンを用いて、細胞を培養フラスコから剥がした。フローサイトメトリーは、635nmで励起したDakoCytomation CyAnを用いて行った。
【0127】
ナノフレアをトランスフェクトした細胞系は、蛍光細胞の均一な単一集団を示したが、これは、アンチセンス粒子をトランスフェクトした際に観察される99%超の細胞透過と合致していた(Rosiら、Science 312巻、1027〜1030頁)。フローサイトメトリーの結果、サバイビンナノフレアで処置したSKBR3細胞は、強い蛍光を示し、非相補的対照で処置した集団より2.5倍強い蛍光を示すことが明らかとなった。比較のために、C166細胞モデルでは、両プローブとも同様な低い蛍光シグナルを生じた。こうしたフローサイトメトリー実験は、共焦点蛍光画像形成と優れた一致を示し、ナノフレアの均一な細胞内取込みおよび細胞内シグナル伝達を実証している。
【0128】
次いで、細胞内検出実験に関するこれらのプローブの独特な性質を理解するために、実験を計画した。先ず、ナノフレアの細胞内性能を、市販トランスフェクション剤のLipofectamineを用いて送達した分子ビーコンレポーターと比較した(Pengら、2005年、Cancer Res. 65巻、1909〜1917頁;Nitinら、2004年、Nucleic Acids Res.、32巻、e58頁)。分子ビーコンおよびナノフレアをSKBR3細胞に導入し(トランスフェクション濃度10pM)、それらのシグナル能力を、フローサイトメトリーを用いて調べた。サバイビンナノフレアで処置した細胞は、同濃度でトランスフェクトしたサバイビン分子ビーコンプローブで処置した細胞より、55倍大きい蛍光シグナルを生じた。細胞培養物外部における蛍光測定から、各ナノフレアプローブは、およそ10個の蛍光団を含有しており、したがって等しいプローブ濃度で、分子ビーコンより10倍大きいシグナルを潜在的に有すると予想できたことを示している。予想より大きな細胞内蛍光は、ナノフレアが、分子ビーコンプローブより迅速に、または多量に取り込まれることを示唆している。
【0129】
次に、ナノフレアで観察された細胞内蛍光シグナルまでそのシグナルを達成するために、分子ビーコンを高濃度(0.5nM)でトランスフェクトした。非相補的プローブが寄与するバックグランド蛍光を比較した(分子ビーコン、ナノフレア共)。非相補的な分子ビーコンプローブの蛍光は、非相補的ナノフレアの蛍光より有意に大きい。バックグランドとシグナルとの差は、正確な標的検出にとって決定的に重要であるので、ナノフレアのより低いバックグランドは、細胞内標的を検出する際に重要な利点となる。
【0130】
酵素的分解が非特異的なシグナル伝達を起こす次第を探るために、ナノフレアをエンドヌクレアーゼDNAseI(0.38mg/L、細胞環境中で見出されると思われる濃度より有意に高い濃度)と共にインキュベートし、分解速度を、時間の関数としての蛍光シグナルの増加をモニターすることにより、測定した。ナノフレアプローブを、PBS(pH7.0)、0.25mM MgClおよび50mg/Lのウシ血清アルブミン(Fischer Scientific)中、2.5nMの濃度に希釈した。ウシ膵臓DNaseI(Unites States Biochemical)を添加後、直ちに読み取った(濃度0.38mg/L)。全ての実験は、620nmでの励起および665nmでの発光を用いて、Photal Otsuka Electronics FluoDia T70上で行った。分子ビーコンを25nMの濃度で同様に試験した。こうした実験条件下での近似的な分解速度を、分解曲線の直線領域の勾配から決定した(Rizzoら、2002年、Molecular and Cellular Probes 16巻、277〜283頁)。
【0131】
このアッセイの結果から、ナノフレアは、こうした条件下で0.275nmol/分の正規化速度で分解する。それに対し、分子ビーコンは、1.25nmol/分の正規化速度、ナノフレアよりおよそ4.5倍速やかに分解する。ヌクレアーゼ活性は、従来型プローブのバックグランド蛍光を増加させるので、ナノフレアのヌクレアーゼ活性減少は、より低いバックグランドシグナルのシステムを生じる。
【0132】
(実施例6)
ナノフレアの細胞進入、向上したシグナル伝達および低いバックグランドが、細胞内RNA量の変化に対する高い感度となる適用例を示すために、siRNAノックダウン実験を行って、SKBR3細胞モデルにおけるサバイビンRNA転写物の量を減少させた。細胞がおよそ50%集密していたとき、ヒトサバイビンに対するsiRNA(Santa Cruz)を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて細胞に送達した(siRNA濃度は、20、40および80nM)。24時間後、培地を、ナノフレアプローブを含有する培地(粒子濃度50pM)と交換した。6時間後、細胞を洗浄し、新鮮な培地を添加した。細胞を更に12時間培養し、フローサイトメトリーを用いて分析した。
【0133】
細胞は、先ず、サバイビンに対するsiRNAで処置し、細胞内RNA量を、ナノフレアおよびフローサイトメトリーを用いて定量した。細胞集団の蛍光のsiRNA濃度依存的変化が、細胞培養物に添加したsiRNAの濃度の関数として観察された(図3a)。siRNA濃度は、ヒストグラムの左側のグラフに示してある。非処置試料では、平均以上の蛍光を示す集団の半分に、灰色の陰影を付けている。処置試料では、平均蛍光を示す細胞集団の分率が縮小していることが示される(灰色の減少、黒色の増加)。この変化が、サバイビン転写物の個数減少に相応していることを確認するために、同濃度のsiRNAで処置した試料に関してRT−PCR測定を行った。細胞は、Guava EasyCyte Mini(Guava Technologies)を用いてカウントした。総RNAを、RNeasy Plus Kit(Qiagen)を用い、製造業者の手順に従って細胞から単離した。細胞溶解ステップ中に、単離および精製中のRNA損失量を明らかにするために、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)RNAを5×10コピー各試料に添加した。qRT−PCR用RNA標準曲線を生成するために、定量すべきRNAの断片を適当な細胞RNAから生成した。PCRとT7プロモーター部位を含有するプライマーとを用いて、その各断片を転写適合性配列に変換した(DNA→RNA)。転写物は、MEGAclear kit(Ambion)用いて製造業者の手順に従って精製した。RNA濃度は、Ribogreen RNA定量キット(Invitrogen)を用いて測定し、ストックRNAの希釈系列を用いて、標準曲線を生成した。プライマーは以下の通りであった。
【0134】
【化5】

定量PCRおよび分析は、LightCycler RNA master SYBR green kit(Roche Applied Sciences)を用い、製造業者の推奨に従って行った。逆転写は、61℃、20分間の後、増幅サイクル(95℃、5秒;54℃、15秒;72℃、20秒)45回で進行させ、標的遺伝子RNAは、生成した標準曲線に従って正規化した。全ての反応は3回行った。
【0135】
細胞集団内の蛍光シグナルの直線的減少は、RT−PCR測定で決定したサバイビンRNAのコピー数の減少と一致していた(図3b)。まとめると、以上の結果は、ナノフレアが、細胞内転写物の個数変化に敏感であることを示す。RT−PCRは3回行っており、上記に示す誤差棒は、測定値の標準偏差である。
【0136】
「ナノフレア」と呼ぶ細胞内プローブの新たな1部類を開発した。ナノフレアは、細胞トランスフェクション、酵素的保護、RNA検出および定量と、mRNAの可視化とを組み合わせる唯一のプローブであるので、新規であり、潜在的に非常に有用である。siRNAノックダウン実験に関して示した用途以外に、ナノフレアは、細胞分取、遺伝子像作成およびリアルタイム薬物試験などの他の領域でも有用であると想定される。最後に、こうした材料に遺伝子調節剤(Rosiら、2006年、Science 312巻、1027〜1030頁;Seferosら、2007年、ChemBioChem 8巻、1230〜1232頁)として作用する能力もあれば、これらのプローブは、同時にトランスフェクトし、遺伝子発現を抑制し、リアルタイムでそれを可視化するように、容易に適合されると想定される。
【0137】
要約すると、以上の結果から次のことが示される。
【0138】
1)金ナノ粒子は、標的を検出できる蛍光団含有オリゴヌクレオチドの細胞内送達を補助する。
【0139】
2)こうした蛍光標識オリゴヌクレオチドで修飾した金ナノ粒子剤は、細胞内標的を検出し、可視化し、定量するために使用することができる。
【0140】
3)特定のmRNA標的の存在および量を示す蛍光シグナルは、読取り可能な尺度に変換することができる。
【0141】
4)効率的な取込み、ならびに高いシグナル伝達能および低い毒性のために、こうした作用剤は、細胞集団の識別に良く適合している。
【0142】
5)こうした作用剤の効率的な取込みおよび高いシグナル伝達能は、試験した条件下で、従来の消光剤−蛍光団オリゴヌクレオチドプローブを凌いでいる。
【0143】
6)当該原理は、核酸アプタマーおよびペプチドなどの他の構造スイッチング認識配列に拡張することができる。
【0144】
本発明は、該プローブの使用が、複数の細胞内標的を同時に検出し、それらの細胞内濃度をリアルタイムで定量する能力を生むものと想定している。該原理は、高等生物における細胞機能のリアルタイムモニタリングに適用され、治療剤を同時に送達する一方で、それらの効力を同時にモニターするために使用されるとも想定している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的分子の細胞内濃度を決定する方法であって、該標的分子のナノ粒子との会合を可能とする条件下で、該標的分子を該ナノ粒子と接触させるステップを含み、該ナノ粒子が該標的分子に特異的な結合部を含み、該結合部がマーカーで標識されており、該標的分子および該ナノ粒子の会合が、該マーカーの検出可能な変化をもたらし、該検出可能マーカーの変化が、該標的分子の細胞内濃度に比例する方法。
【請求項2】
前記結合部が、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合部がDNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結合部がRNAである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記標的分子が、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記結合部が、前記ナノ粒子に共有結合したポリヌクレオチドであり、前記マーカーが、該結合部ポリヌクレオチドとハイブリッド形成しているポリヌクレオチドに結合した標識であって、該結合部ポリヌクレオチドの前記標的分子との会合が、該ハイブリッド形成しているポリヌクレオチドを放出し、該マーカーが、放出後に検出可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドに結合した前記標識は、該標識を有する該ポリヌクレオチドが前記結合部とハイブリッド形成している場合に、消光される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記結合部が、検出可能な標識であるマーカーを含むポリヌクレオチドであり、該マーカーは、該ポリヌクレオチドが前記標的分子と会合している場合にのみ、検出可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記マーカーは、前記結合部が前記標的分子と会合していない場合、消光される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記結合部が、ポリペプチドであり、前記マーカーが、前記ポリペプチド結合部と会合している標識であって、該結合部の前記標的分子との会合が、該標識を放出し、該マーカーが、放出後に検出可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記標識が、前記結合部と会合している場合、消光される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、多数の結合部を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記結合部が、1つの標的分子と特異的に会合する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記結合部が、複数の標的分子と特異的に会合する、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−520990(P2010−520990A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549289(P2009−549289)
【出願日】平成20年2月11日(2008.2.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/053603
【国際公開番号】WO2008/098248
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【Fターム(参考)】