説明

細胞分離用流路、細胞分離装置および細胞分離方法

【課題】生体組織から生体由来細胞を分離する処理時間を短縮することができる細胞分離用流路、細胞分離装置および細胞分離方法を提供する。
【解決手段】一方から他方へ向けて生体由来細胞Dを含有する生体組織Bを内部に流動させ、内部に生体組織Bを分解する分解酵素Aが固定された流路3を備える細胞分離用流路1を提供する。本発明の細胞分離用流路1を用いることにより、流路3内に生体組織Bを流動させるだけで生体組織Bの分解処理が行われ、さらに、流路3から分解酵素Aが混在しない生体由来細胞Dの細胞懸濁液を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分離用流路、細胞分離装置および細胞分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から採取された脂肪組織から生体由来細胞を分離し、これを再生医療などに用いる研究が行われている(例えば、特許文献1参照。)。脂肪組織を消化酵素で分解すると脂肪組織から生体由来細胞が分離されて細胞懸濁液を得る。その後、遠心分離により消化酵素の含まれた上清と生体由来細胞とに分離して上清のみを排出し、再び洗浄液を注入して遠心分離するという作業を繰り返すことにより消化酵素を除去し、純度の高い生体由来細胞を得ることができる。
【0003】
【特許文献1】特表2007−524396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遠心分離による酵素の洗浄は、洗浄液の注入、遠心分離および排出と多段階で行われ、さらにこれを繰り返して細胞懸濁液に含まれる消化酵素を段階的に除去するため、非常に多くの時間と労力を要するという不都合がある。また、生体由来細胞を得るための全工程において、酵素洗浄に要する時間の割合が大きく、全処理時間を短縮するためには、酵素洗浄に要する時間を短縮することが要求される。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、生体組織から生体由来細胞を分離する処理時間を短縮することができる細胞分離用流路、細胞分離装置および細胞分離方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、一方から他方へ向けて生体由来細胞を含有する生体組織を内部に流動させ、前記内部に前記生体組織を分解する分解酵素が固定された流路を備える細胞分離用流路を提供する。
【0007】
本発明によれば、生体組織を流路内に流動させると、生体組織は流路内の分解酵素と接触して分解されながら流動させられる。そして、細胞が生体組織から分離されて浮遊した細胞懸濁液を得ることができる。この場合に、分解酵素は流路内において固定されているので、細胞懸濁液内に混在することがない。
したがって、本発明によれば、生体組織を流路内に流動させた後に回収するだけで、分解酵素が含まれない細胞懸濁液が得られ、分解酵素を洗浄して除去するための処理が不要となる。これにより、生体組織から細胞を抽出する処理時間を短縮することができる。
【0008】
上記発明においては、前記流路が、チューブをコイル状に巻いて形成されていてもよい。
このようにすることで、流路が直線状に形成される場合と比べ、流路全体の寸法を小さく抑えながら流路を長く形成して生体組織と分解酵素との接触面積を拡大させることができる。また、流路内において乱流が生じやすくなり生体組織が撹拌されながら流動させられる。これにより、生体組織を分解酵素に効率良く接触させて生体組織の分解を促進し、生体組織から得られる生体由来細胞の収率を向上させることができる。
【0009】
また、コイル形状の中心に筒状のヒータを挿入することにより、チューブとヒータとの接触面積が広く確保され、効率良く均一に流路内を加温することができる。また、このようにして流路内を約37℃に加温することにより、分解酵素の活性が高められ、生体組織を効率良く分解させることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記流路が、前記分解酵素が固定された表面を対向させて配置された複数の平板状部材を備えることとしてもよい。
このようにすることで、流路の構造を簡易にし、製造を容易にすることができる。また、複数の平板状部材を厚さ方向に積層することで、全体の寸法を小さく抑えながら複数の流路が形成され、一度に流動させることができる生体組織の量を増加させることができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記流路の両端に他の流路と接続可能なコネクタを備えることとしてもよい。
このようにすることで、本発明に係る細胞分離用流路を他の流路や装置と接続して使用することができる。また、このようにして使用される場合でも、細胞分離用流路のみを取り外して分解酵素の活性が保持される環境、例えば、冷凍で保存することができる。また、細胞分離用流路をディスポーザブルとして使用し、これのみを交換することが可能である。
【0012】
また、本発明は、生体由来細胞を含有する生体組織を収容する収容容器と、該収容容器に一端が接続され、内部に前記生体組織を分解する分解酵素が固定された流路と、該流路の他端に接続された回収容器と、前記収容容器から前記回収容器へ向けて前記流路内に前記生体組織を送液させる送液手段とを備える細胞分離装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、送液手段により収容容器内の生体組織を流路内に送液させると、生体組織は流路内において分解酵素と接触して分解される。ここで回収容器内に得られた、酵素処理された生体組織を含む細胞懸濁液を、所定時間静置させて層分離させた後、さらに別容器へ送液する等により、生体由来細胞を含む細胞懸濁液を、生体組織から分離して得ることができる。この所定時間としては、例えば、10分程度でよい。
この場合に、回収容器内の懸濁液内には分解酵素が混在しないので、分解酵素を洗浄して除去する工程が不要となり、生体由来細胞の分離に要する処理時間を短縮することができる。
【0014】
上記発明においては、前記流路内の温度を制御する温度制御部を備えることとしてもよい。
また、上記発明においては、前記温度制御部が、筒状のヒータであり、前記流路が、前記ヒータの外部にコイル状に巻かれていてもよい。
【0015】
また、本発明は、一方から他方へ向けて生体由来細胞を含有する生体組織を内部に流動させ、前記内部に前記生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路を備える細胞分離用流路を提供する。
上記発明においては、前記流路が、チューブをコイル状に巻いて形成されていてもよく、また、前記流路が、前記吸着剤が固定された表面を対向させて配置された複数の平板状部材を備えていてもよい。
【0016】
更に本発明は、生体由来細胞を含有する生体組織を収容する収容容器と、該収容容器に一端が接続され、内部に前記生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路と、該流路の他端に接続された回収容器と、前記収容容器から前記回収容器へ向けて前記生体組織を前記流路内に送液させる送液手段と、前記流路の途中位置において前記分解酵素を注入する酵素注入部とを備える細胞分離装置を提供する。
【0017】
本発明によれば、酵素注入部から流路内へ分解酵素を注入すると、分解酵素が流路内の吸着剤によって吸着される。そして、そこへ送液された生体組織は分解酵素によって分解され、回収容器には分解酵素が混在しない細胞懸濁液が回収される。このようにすることで、分解酵素の洗浄が不要となり、生体由来細胞を分離するための処理時間を短縮することができる。
【0018】
また、流路内に吸着剤のみを設け、生体組織を送液させる直前に分解酵素を流路内に注入して吸着させる構成にすることで、分解酵素のみを別に保存し、また、交換することが可能となる。これにより、保存期限が短い分解酵素であっても、活性が高い状態の分解酵素を使用することができ、生体組織が分解される効率の低下やばらつきを防ぎ、安定して生体組織を分解させることができる。
上記発明においては、前記流路内の温度を制御する温度制御部を備えることとしてもよく、また、前記温度制御部が筒状のヒータを備え、前記流路が前記ヒータの外部にコイル状に巻かれていることとしてもよい。
【0019】
また、上記発明においては、前記流路内を洗浄する洗浄液を前記流路内へ注入する洗浄液注入部と、該洗浄液注入部から注入され前記流路内を流動した前記洗浄液を排出する排出部とを備えることとしてもよい。
【0020】
流路内に過剰な量の分解酵素が注入されると、吸着剤によって吸着されなかった分解酵素がその後送液される生体組織とともに回収容器に回収されることが予想される。しかし、分解酵素を注入した後に、洗浄液注入部から洗浄液を注入して排出部から排出することにより、流路内が洗浄されて過剰な分解酵素が除去され、細胞懸濁液に分解酵素が混入することを防ぐことができる。
【0021】
また、本発明は、生体由来細胞を含有する生体組織を、該生体組織を分解する分解酵素が固定された流路内に流動させる流動ステップを備える細胞分離方法を提供する。上記発明においては、前記流動ステップの後に、得られた生体由来細胞を含有する細胞懸濁液を回収する回収ステップを備えることとしてもよい。
本発明によれば、流動ステップにおいて生体組織を流動させると、生体組織が分解酵素によって分解される。その後、回収ステップにおいては、得られた酵素処理された生体組織を含む懸濁液を、所定時間静置させて層分離させた後、更に別容器へ送液する等によって、生体由来細胞を含む細胞懸濁液を分離して得ることができる。
【0022】
このようにすることで、分解酵素が混在しない細胞懸濁液が回収されるので、分解酵素を除去するための洗浄工程が不要となり、生体由来細胞を分離する処理時間を短縮することができる。
上記発明においては、前記流動ステップの前に前記分解酵素を加温する加温ステップを備えることとしてもよい。
【0023】
また、本発明は、生体由来細胞を含有する生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路に、前記分解酵素を流動させて前記吸着剤に吸着させる吸着ステップと、該吸着ステップにおいて前記分解酵素が吸着された前記流路を加温する加温ステップと、該加温ステップにおいて加温された前記流路内に前記生体組織を流動させる流動ステップとを備える細胞分離方法を提供する。上記発明においては、前記流動ステップの後に、前記生体由来細胞を含有する懸濁液を回収する回収ステップを備えることとしてもよい。
【0024】
本発明によれば、吸着ステップにおいて分解酵素が内部に吸着された流路内を加温ステップにより加温する。そして、流動ステップにおいて、生体組織が分解酵素と接触して分解されながら流動させられる。その後、回収ステップにおいて、得られた酵素処理された生体組織を含む細胞懸濁液を、所定時間静置させて層分離させた後、更に別容器へ送液する等によって、生体由来細胞を含む細胞懸濁液を、生体組織から分離して得ることができる。このようにすることで、生体由来細胞の分離に要する処理時間を短縮することができる。
【0025】
上記発明においては、前記流動ステップの前に、前記流路内に洗浄液を流動させて洗浄する洗浄ステップを備えることとしてもよい。
このようにすることで、吸着剤によって吸着されなかった過剰な分解酵素を流路内から除去し、分解酵素の細胞懸濁液への混入を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、生体組織から生体由来細胞を分離する処理時間を短縮することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る細胞分離用流路1、これを備えた細胞分離装置2ならびに細胞分離方法について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞分離用流路1は、図1に示されるように、内壁3aに分解酵素Aが固定されたチューブ(流路)3と、該チューブ3の両端に設けられたコネクタ4とを備えている。分解酵素Aは、例えば、包括法や共有結合法など、従来使用されている蛋白質の固定方法を用いて内壁3aに固定されている。
【0028】
本実施形態に係る細胞分離装置2は、図2に示されるように、細胞分離用流路1と、脂肪組織(生体組織)Bを収容する収容容器5と、収容容器5から細胞分離用流路1に脂肪組織Bを送液する送液ポンプ(送液手段)6と、脂肪由来細胞Dを含有する細胞懸濁液を回収する回収容器7と、細胞分離用流路1内を加温するヒータ8とを備えている。
【0029】
細胞分離用流路1は、円筒状のヒータ8の外周に沿ってコイル状に巻きつけられ、コネクタ4を介して収容容器5および回収容器7と接続されている。収容容器5内には、洗浄液Cで懸濁されてほぐされた脂肪組織Bが収容されている。
送液ポンプ6を作動させると、収容容器5内の脂肪組織Bが、分解酵素Aによって分解されながら細胞分離用流路1内を流動させられる。そして、脂肪組織Bから分離された脂肪由来細胞Dを含む細胞懸濁液が回収容器7内に回収されるようになっている。
【0030】
このように構成された細胞分離用流路1および細胞分離装置2を用いた細胞分離方法について、図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞分離方法は、ヒータ8によりチューブ3内を約37℃に加温する加温ステップS1と、加温されたチューブ3内に脂肪組織Bを流動させる流動ステップS2と、流動させられた脂肪組織Bから分離された脂肪由来細胞Dを含む細胞懸濁液を回収する回収ステップS3とを備えている。
【0031】
加温ステップS1において約37℃に加温されたチューブ3内へ、流動ステップS2において収容容器5内の脂肪組織Bが流動させられると、回収ステップS3において回収容器7内に脂肪由来細胞Dおよび分解された脂肪組織Bを含む懸濁液が回収される。そして、例えば、これを静置して脂肪組織Bが分解されて生じた脂肪分の上層と、細胞懸濁液の下層とに層分離させ、下層のみを別容器へ送液する等することにより、分離された脂肪由来細胞Dを含む細胞懸濁液を得ることができる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、分解酵素Aが内壁3aに固定されたチューブ3内に脂肪組織Bを流動させるだけで、分解酵素Aが混在しない脂肪由来細胞Dの懸濁液が得られる。これにより、分解酵素Aを除去するための洗浄工程が不要になるので、従来に比べ短い処理時間で脂肪由来細胞Dを得ることができるという利点がある。
また、分解酵素Aをチューブ3の内壁3aに固定させる構成にすることにより、脂肪組織Bが流動させられる流路の断面積が広く維持され、脂肪組織Bがチューブ3内で詰まるのを防いで円滑に流動させることができる。
【0033】
また、円筒形状のヒータ8にチューブ3を巻きつける構成にすることにより、細胞分離用流路1の寸法を小さく抑えながらチューブ3が長く確保され、また、チューブ3内において乱流が生じやすくなる。これにより、脂肪組織Bがチューブ3内において撹拌されながらより長い時間流動させられるので、脂肪組織Bを効率良く分解酵素Aに接触させて分解させ、より多くの脂肪由来細胞Dを得ることができる。また、ヒータ8とチューブ3との接触面積が広く確保されるので、チューブ3内を均一に効率良く加温して分解酵素Aの活性を高めることができる。
【0034】
また、コネクタ4により細胞分離用流路1を収容容器5および回収容器7と接続する構成にすることで、細胞分離用流路1のみを別に保管することができる。これにより、細胞分離用流路1を使用しないときは分解酵素Aの保存に適した環境で保管し、また、これのみをディスポーザブルとして使用して交換することが可能となる。
【0035】
本発明の第2の実施形態に係る細胞分離用流路1、細胞分離装置2および細胞分離方法について図4〜図6を参照して以下に説明する。
なお、第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る細胞分離用流路1は、図4(a)に示されるように、チューブ3の内壁3aに分解酵素Aを吸着する吸着剤Eが固定されている。
吸着剤Eとしては、例えば、ビオチン、プロテインAまたは分解酵素Aに対する抗体などが用いられる。また、吸着剤Eは、第1の実施形態と同様の方法でチューブ3の内壁3aに固定されている。
【0037】
本実施形態に係る細胞分離装置2は、図5に示されるように、収容容器5とコネクタ4との間に配置された酵素注入部9および洗浄液注入部10と、コネクタ4と回収容器7との間に配置された排出部11とをさらに備えている。酵素注入部9、洗浄液注入部10および排出部11は、それぞれ3方弁12を介して細胞分離用流路1ならびに収容容器5または回収容器7と接続され、流路が切り替えられるようになっている。
【0038】
酵素注入部9は、チューブ3内に分解酵素Aを注入する。
洗浄液注入部10は、チューブ3内を洗浄するための洗浄液C、例えば、LR液をチューブ3内に注入する。また、洗浄液注入部10から注入されてチューブ3内を流動させられた洗浄液Cは排出部11から排出される。
【0039】
このように構成された細胞分離装置2を用いた細胞分離方法について、図6を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る細胞分離方法は、第1の実施形態に係る細胞分離方法の前に、チューブ3内に分解酵素Aを注入して吸着剤Eに吸着させる吸着ステップS21と、分解酵素Aが注入されたチューブ3内を洗浄液Cにより洗浄する洗浄ステップS22とを備えている。
【0040】
吸着ステップS21において酵素注入部9から分解酵素Aが注入されると、図4(b)に示されるように、分解酵素Aが吸着剤Eを介してチューブ3の内壁3aに固定される。そして、洗浄ステップS22を行い、洗浄液注入部10から排出部11へ洗浄液Cを送液すると、吸着剤Eに吸着されなかった過剰な分解酵素Aが排出部11から排出されチューブ3内が洗浄される。以下、第1の実施形態と同様にして加温ステップS1、送液ステップS2および回収ステップS3を行うと、回収容器7内に分解酵素Aが混在しない脂肪由来細胞Dの細胞懸濁液を得ることができる。
【0041】
このように、本実施形態においては、細胞分離用流路1の使用時に分解酵素Aを内壁3aに固定させる構成にすることで、一般に活性が十分に保持される保存期間が短い分解酵素Aであっても、分解酵素Aのみ新しいものに交換して毎回活性の高い状態で使用することができる。また、分解酵素Aと細胞分離用流路1との好適な保管条件が異なることからも、本実施形態のように使用時に分解酵素Aを吸着させるのが好ましい。これにより、より安定した条件で脂肪組織Bを分解させることができる。
また、分解酵素Aが注入されたチューブ3内を洗浄液Cで洗浄することにより、吸着剤Eに吸着されなかった分解酵素Aが細胞懸濁液に混入することを防ぐことができる。
【0042】
上述した第1および第2の実施形態においては、細胞分離用流路が、コイル状に巻かれたチューブを備えることとしたが、これに代えて、図7に示されるように、分解酵素Aまたは吸着剤Eが固定された表面13aを対向させて配置された複数の平板状部材13を備えることとしてもよい。この場合、プレート状のヒータ8が用いられる。
このようにすることで、細胞分離用流路1の構成を簡易にし、製造を容易にすることができる。また、複数の平板状部材13を厚さ方向に積層して流路を複数形成することにより、同時に流動させることができる脂肪組織Bの量を増加させ、処理時間をより短縮することができる。
【0043】
また、上述した第1および第2の実施形態において、脂肪由来細胞Dには、血管内皮細胞、繊維芽細胞、造血幹細胞、血球系の細胞、脂肪由来の幹細胞などが含まれる。ここで、幹細胞は、細胞治療などの目的で脂肪組織から採取される細胞であり、多分化能、自己再生能を有する細胞を指す。また、脂肪組織Bとして、ヒト由来の皮下脂肪組織、内臓脂肪組織、白色脂肪組織、褐色脂肪組織等でよく、ヒト等の脂肪部位をハサミ等の鋭利な器具で採取されたもの、脂肪吸引等の方法によって採取されたものなどであってもよい。
【0044】
また、上述した第1および第2の実施形態のほか、各実施形態等を部分的に組み合わせて形成されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係る細胞分離用流路の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る細胞分離装置を示す全体構成図である。
【図3】図1の細胞分離用流路および図2の細胞分離装置を用いた細胞分離方法を示すフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る細胞分離用流路の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る細胞分離装置を示す全体構成図である。
【図6】図4の細胞分離用流路および図5の細胞分離装置を用いた細胞分離方法を示すフローチャートである。
【図7】図1および図4の細胞分離用流路の変形例である。
【符号の説明】
【0046】
1 細胞分離用流路
2 細胞分離装置
3 チューブ(流路)
3a 内壁
4 コネクタ
5 収容容器
6 送液ポンプ(送液手段)
7 回収容器
8 ヒータ
9 酵素注入部
10 洗浄液注入部
11 排出部
12 3方弁
13 平板状部材
13a 表面
A 分解酵素
B 脂肪組織(生体組織)
C 洗浄液
D 脂肪由来細胞(生体由来細胞)
E 吸着剤
S1 加温ステップ
S2 流動ステップ
S3 回収ステップ
S21 吸着ステップ
S22 洗浄ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方から他方へ向けて生体由来細胞を含有する生体組織を内部に流動させ、前記内部に前記生体組織を分解する分解酵素が固定された流路を備える細胞分離用流路。
【請求項2】
前記流路が、チューブをコイル状に巻いて形成されている請求項1に記載の細胞分離用流路。
【請求項3】
前記流路が、前記分解酵素が固定された表面を対向させて配置された複数の平板状部材を備える請求項1に記載の細胞分離用流路。
【請求項4】
前記流路の両端に他の流路と接続可能なコネクタを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の細胞分離用流路。
【請求項5】
生体由来細胞を含有する生体組織を収容する収容容器と、
該収容容器に一端が接続され、内部に前記生体組織を分解する分解酵素が固定された流路と、
該流路の他端に接続された回収容器と、
前記収容容器から前記回収容器へ向けて前記流路内に前記生体組織を送液させる送液手段とを備える細胞分離装置。
【請求項6】
前記流路内の温度を制御する温度制御部を備える請求項5に記載の細胞分離装置。
【請求項7】
前記温度制御部が、筒状のヒータを備え、
前記流路が、前記ヒータの外部にコイル状に巻かれている請求項6に記載の細胞分離装置。
【請求項8】
一方から他方へ向けて生体由来細胞を含有する生体組織を内部に流動させ、前記内部に前記生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路を備える細胞分離用流路。
【請求項9】
前記流路が、チューブをコイル状に巻いて形成されている請求項8に記載の細胞分離用流路。
【請求項10】
前記流路が、前記吸着剤が固定された表面を対向させて配置された複数の平板状部材を備える請求項8に記載の細胞分離用流路。
【請求項11】
生体由来細胞を含有する生体組織を収容する収容容器と、
一端が前記収容容器に接続され、内部に前記生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路と、
該流路の他端に接続された回収容器と、
前記収容容器から前記回収容器へ向けて前記生体組織を前記流路内に送液させる送液手段と、
前記流路の途中位置において前記分解酵素を注入する酵素注入部とを備える細胞分離装置。
【請求項12】
前記流路内の温度を制御する温度制御部を備える請求項11に記載の細胞分離装置。
【請求項13】
前記温度制御部が、筒状のヒータを備え、
前記流路が、前記ヒータの外部にコイル状に巻かれている請求項12に記載の細胞分離装置。
【請求項14】
前記流路内を洗浄する洗浄液を前記流路内へ注入する洗浄液注入部と、
該洗浄液注入部から注入され前記流路内を流動した前記洗浄液を排出する排出部とを備える請求項11から請求項13のいずれかに記載の細胞分離装置。
【請求項15】
生体由来細胞を含有する生体組織を、該生体組織を分解する分解酵素が固定された流路内に流動させる流動ステップを備える細胞分離方法。
【請求項16】
前記流動ステップの後に、得られた生体由来細胞を含有する懸濁液を回収する回収ステップを備える請求項15に記載の細胞分離方法。
【請求項17】
前記流動ステップの前に前記流路内を加温する加温ステップを備える請求項15または請求項16に記載の細胞分離方法。
【請求項18】
生体由来細胞を含有する生体組織を分解する分解酵素を吸着する吸着剤が固定された流路内に、前記分解酵素を流動させて前記吸着剤に吸着させる吸着ステップと、
該吸着ステップにおいて前記分解酵素が吸着された前記流路内を加温する加温ステップと、
該加温ステップにおいて加温された前記流路内に前記生体組織を流動させる流動ステップとを備える細胞分離方法。
【請求項19】
前記流動ステップの後に、得られた生体由来細胞を含有する懸濁液を回収する回収ステップを備える請求項18に記載の細胞分離方法。
【請求項20】
前記流動ステップの前に、前記流路内に洗浄液を流動させて洗浄する洗浄ステップを備える請求項18または請求項19に記載の細胞分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−104257(P2010−104257A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277070(P2008−277070)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】