説明

細胞治療学、細胞治療単位、およびそれらを利用した治療法

【解決手段】 本発明は、事前に決定された数の選択されたタイプの分化能を持つ細胞を有する、細胞治療単位を提供する。そのような細胞の性質と同一性の保証は、前記数と同一性のアッセイおよび証明により達成される。治療方法も提供される。アッセイされ、好ましくは証明された集団を用いた細胞製剤ライブラリは好ましく、特定の患者または疾患状態に合わせた細胞製剤提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞治療製剤を利用した治療法の改善に関するものである。細胞治療法は、疾患状態を緩和、改善、または治癒するために、未熟細胞、特に幹細胞を患者に導入することを含む。本発明はまた、改良された細胞治療剤、それらを生産する方法、そのような薬剤の単位投与剤形、および治療を必要とする患者に細胞治療単位を投与する新規パラダイムにも関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、治療目標を達成するために、ヒトおよび動物に特定タイプの幹細胞を投与する方法が知られてきた。このほとんどが、例えば特定の癌を治療するための積極的な化学療法や放射線療法に伴う、特に数が減少した骨間隙を再増殖させるために、成人骨髄細胞で見られるような成人由来の幹細胞を用いて行われていた。実際、そのような細胞療法は比較的広く普及しており、細胞数および細胞の種類について標準化されていないなどの制限があるにもかかわらず、一定レベルの成功を達成してきた。
【0003】
これらの治療法の多くは、骨髄など、比較的成熟した細胞標品(preparation)を利用している。これらは一定レベルの治療ポテンシャルがあると考えられるが、そのような細胞はかなり多くの表面抗原を有し、免疫抑制剤を併用して投与する必要がある。さらに、成人骨髄細胞から抽出したほとんどの細胞は、分化することができる細胞の種類が限られている。成人骨髄から単離されたほとんどの幹細胞は、血液細胞にのみ分化することができると示した報告が多数ある。これは、白血病などの血液関連疾患の治療に有用であるが、これらの細胞は、特異的な種類の組織または器官に局在する、他の種類の疾患の治療にはあまり有用ではない。骨髄製剤のさらなる問題は、骨髄を抽出する工程がひどい痛みを伴うことが多い点であり、潜在的ドナーは同定されうるが、痛みや不快感が考えられるため、多くはこの処置に同意しない。
【0004】
最近、例えば新生児の臍帯血に見られる細胞など、未成熟幹細胞を用いた細胞療法で一部成功が認められた。しかし、新生児の臍帯血を含むほとんどの供給源から得られる幹細胞製剤は、効果的な治療のため、様々な可能性を持った多様な細胞集団を含み、特に、例えば白血病に対する移植を受ける平均的なサイズの成人などでは、最適な治療用量に十分な数の細胞を含まないことが多い。様々な科学グループおよび医学グループが、おそらく同一または類似のプロトコールに従っていたとしても、様々な特徴を持った異なる製剤を達成する可能性が高いと考えられる。現在、最も独立した製剤は、同じ個体から調整されたものでも、未確定の成分の細部で異なる成分を有する可能性がある。つまり、単位ごとの再現性はまったくなく、移植に使用される細胞単位はほとんど標準化されていない。
【0005】
先行の慣例では、様々な研究および医療施設から矛盾した治療結果を生じる可能性があり、細胞治療法の正確な統計学的分析は達成が困難であるか、不可能である。したがって、改善された細胞治療の物質および方法、つまり再現性のある結果や科学的分析を受け入れられる物質および方法が、長い間切望されていた。細胞治療法の特異性を改善し、効率と結果の改善に影響を及ぼすことも望まれる。重要なことに、細胞療法に当てられている医療分野を進歩させるために、十分なデータの回収能力を推し進め、単位ごとの再現性に対する要求もある。本発明は、これらの要求、および他の長い間の切実な要求に対して、解決法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで用いるとおり、「細胞治療単位(cytotherapeutic unit)」とは、少なくとも1つの細胞タイプを特定の患者または特定の疾患状態に対して調製した、複数の分化能を持つ細胞を有する細胞製剤を指す。前記調製は、前記細胞タイプの最小数を有するか、または代わりに前記細胞タイプの一部またはすべての除去を含んでもよい。
【0007】
細胞または細胞タイプについて「分化能を持つ(potent)」とは、前記細胞または細胞タイプが少なくとも1種類の細胞に分化できることを意味する。
【0008】
細胞または細胞タイプについて「多分化能を持つ(Pluripotent)」とは、前記細胞または細胞タイプが少なくとも2種類の細胞に分化できることを意味する。
【0009】
「抗原決定基」とは、細胞表面にある抗原領域のセットを指す。
【0010】
「因子」とは、その抗原決定基を参照した細胞タイプを指す。典型的な因子はCD34、CD8、CD10、などを含む。細胞または細胞製剤は、特定の細胞または細胞タイプがその特定の因子の特徴を示しているか否かを参照することで、特定の因子について陽性か陰性かが考慮されてもよい。
【0011】
本発明は、複数の分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位(cytotherapeutic unit)を提供し、その内容については、少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞の同一性と数について既知である。少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞の同一性と数が正確であることを確認するため、少なくとも1つのアッセイが実施される。いくつかの好適な実施形態では、単位の提供者が前記アッセイの精度を証明する。他の実施形態において、前記同一性と数について既知である、前記分化能を持つ細胞は、多分化能を持つ細胞である。前記分化能を持つ細胞の同一性は、好ましくは前記細胞の少なくとも1つの抗原決定基の有無を反映する。いくつかの実施形態では、前記細胞治療単位は、例えばCD34、CD8、CD10、OCT4、CD38、CXCR4、またはCD117を示す、少なくともいくつかの分化能を持つ細胞を有する。いくつかの実施形態では、前記細胞の一部がCD33も示すこともできる。いくつかの好適な実施形態では、前記細胞治療単位が、特定の抗原決定基がない細胞を有する。他の実施形態では、1つの供給源に由来する、少なくとも1つの同定された分化能を持つ細胞が、前記細胞製剤から特異的に除外または除去される。
【0012】
本発明の1実施形態では、一部またはすべての細胞は、CD10+、CD29+、CD34−、CD38−、CD44+、CD45−、CD54+、CD90+、SH2+、SH3+、SH4+、SSEA3−、SSEA4−、OCT−4+、およびABC−p+の細胞表面マーカーの1若しくはそれ以上の存在によって特徴付けられるものである。
【0013】
前記分化能を持つ細胞は、胎児の臍帯血または他の胎児組織から入手されてもよい。いくつかの実施形態では、分化能を持つ細胞が、代謝的に支持され育った胎盤、特に分娩後の胎盤から入手される。分化能を持つ細胞は、好ましくは分娩後の胎盤灌流液から入手される。また本発明は細胞治療単位を提供し、前記分化能を持つ細胞は複数の供給源に由来する。いくつかの実施形態では、前記分化能を持つ細胞が少なくとも2個体、少なくとも5個体、または少なくとも10個体に由来する。いくつかの実施形態では、前記単位が少なくとも1つの自己性の細胞を有する。いくつかの他の実施形態では、前記単位が少なくとも1つの外来性の細胞を有する。いくつかの実施形態では、前記単位は、自己性の細胞と同種細胞のキメラを有する。別の実施形態では、少なくともいくつかの前記細胞が遺伝子改変されている。
【0014】
他の実施形態では、適応される疾患状態または病状の治療および/または病状の重症度に適した単位を与えるため、複数の分化能を持つ細胞が選択される。いくつかの好適な実施形態では、前記細胞治療単位は、最小数の事前に選択された分化能を持つ細胞タイプを有し、例えば、前記特定患者の体重またはその患者の医学的状態などに基づくものである。いくつかの好適な実施形態では、その事前に選択された分化能を持つ細胞タイプの内容の精度を確認するため、前記細胞治療単位がアッセイされる。いくつかの好適な実施形態では、前記細胞治療単位中の事前に選択された分化能を持つ細胞の内容は証明されているものである。他の実施形態では、前記細胞治療単位を実質的に同一の単位グループの1つとすることができ、必要であれば前記患者に事前に移植された単位と同一の単位を投与することができるように、今後の移植のために前記追加単位が保存される。代わりに、前記追加類似単位は、その同一患者の今後の移植を最適化するために変更されてもよい。
【0015】
他の実施形態では、少なくとも1つの細胞タイプが、事前に選択された分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位から除外される。前記細胞治療単位は、好ましくは、前記事前に選択された分化能を持つ細胞の内容、および除外される細胞タイプの非存在について証明されるものである。他の実施形態では、適応される疾患状態または病状の治療に適した前記細胞治療単位を与えるように選択された、複数の分化能を持つ細胞の同一性と数が証明されるものである。いくつかの実施形態では、前記証明は、好ましくは複数の分化能を持つ細胞に対するもので、選択および除外された前記複数の細胞および複数の細胞の数のそれぞれによって、適応される疾患状態または病状の治療に適した細胞治療単位が与えられる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明が疾患状態または病状を有することが疑われる人を治療するためのキットを提供する。前記キットは、好ましくは、複数の分化能を持つ細胞を有している細胞治療単位を有するものである。いくつかの実施形態では、前記キットは細胞治療単位を有し、少なくとも1タイプの細胞が前記細胞治療単位から除外されているものである。いくつかの好適な実施形態では、前記キットは分化能を持つ細胞を有しており、それらのうち少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞が同定、計測された。いくつかの実施形態では、前記キットは、前記分化能を持つ細胞の同一性および数の精度を確認するためにアッセイされた単位を有する。前記キットに関するいくつかのさらに好適な実施形態では、前記アッセイの精度は証明されているものである。
【0017】
本発明は、疾患状態または病状を有することが疑われる人を治療するためのキットを提供し、最小数の同定された分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位と、前記分化能を持つ細胞の組成に関する証明とを有する。前記キットは、前記患者に前記単位を投与する装置または器具、前記投与をモニタリングする物質、および他の付随する物を含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明が臍帯血、胎盤、またはその混合物に由来する細胞を有する細胞治療単位を提供し、少なくとも1タイプの細胞が前記単位から除去されている。いくつかの実施形態では、複数の細胞タイプが前記単位から除去されている。
【0019】
本発明は、臍帯血、胎盤、その混合物に由来する細胞を有する細胞治療単位を提供し、前記細胞は複数の異なるタイプを有するものである。いくつかの実施形態では、少なくともいくつか異なるタイプの細胞が構成成分に分離されている。他の実施形態では、前記構成成分は前記単位に再結合される。本発明のいくつかの観点では、細胞治療単位に特定の分化能を持つ細胞タイプを補充するため、成分を利用することが好まれる。前記分離された構成成分は個別に凍結されるか、そうでない場合は再結合まで保存されてもよい。いくつかの他の実施形態では、前記細胞治療単位自体が凍結状態であった。さらにいくつかの実施形態では、前記分離された細胞のタイプは同定および/または計算されているものである。
【0020】
本発明は、哺乳類の疾患を治療する方法を提供し、この方法は、細胞治療単位を有する組成物の治療有効量を前記哺乳類に投与する工程を有するものである。前記疾患状態または病状を治療するために用いられる単位は複数の分化能を持つ細胞を有し、前記単位の内容物については、前記同一性と数について既知である。前記単位中の少なくともいくつかの細胞は、前記分化能を持つ細胞の同一性と数の精度を確認するため、アッセイされる。いくつかの好適な実施形態では、前記細胞治療単位が複数回投与される。他の場合では、様々な個体または供給源に由来する前記細胞治療単位について、複数回投与が実施されてもよい。前記方法は、1個体に由来する前記細胞治療単位を複数回投与する工程を有する。
【0021】
本発明では、複数の分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位を提供し、これは少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞の同一性と数について既知である前記治療単位の内容物を有するものである。
【0022】
前記細胞治療単位中の前記分化能を持つ細胞の同一性は本発明の観点であり、利用される単位の信頼性および質のためにも重要である。前記分化能を持つ細胞は、あらゆる数の方法で同定されてもよく、通常の技術を有する人が有用であると考えるすべての基準セットに基づくことができる。そのような方法の1つは、前記細胞表面の抗原決定基の有無をもとに、前記分化能を持つ細胞を同定する工程である。抗原決定基は、抗体によって認識されうるどのような分子でもよい。抗原決定基のいくつかの例には、ポリペプチド、脂質、糖タンパク質、糖などを含む。さらに前記細胞は、CD10+、CD29+、CD34−、CD38−、CD44+、CD45−、CD54+、CD90+、SH2+、SH3+、SH4+、SSEA3−、SSEA4−、OCT−4+、およびABC−p+の細胞表面マーカーの1若しくはそれ以上の存在によって特徴付けられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
いくつかの分化能を持つ細胞は、抗原決定基の有無または特定の発現因子で同定されうるが、前記細胞にない抗原決定基は何かをもとに細胞を同定することも、同様に重要である可能性がある。例えば、特定の決定基があることで治療成功の可能性が低くなりうることも知られているため、前記細胞治療単位を利用する人は、利用される単位に特定の抗原決定基がないことも知りたいと思うであろう。さらに、抗原因子の有無が、特定の細胞または細胞タイプの成熟度決定に役立つ可能性もある。あまり成熟していない細胞は幅広い分化能を有する可能性があるため、より有用と考えられる。前記細胞治療単位の利用によっては、様々な分化レベルの細胞が必要となりうる。前記細胞の一部を同定することで単位を入手することができ、これを利用すれば、臨床結果が改善する。
【0024】
細胞表面または細胞内の抗原因子の有無を決定する方法は、当該分野で周知である。これらの方法には、蛍光標示式細胞分取器(FACS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)などを含む。前記分化能を持つ細胞を同定するため、正確な方法を用いることは重要ではない。
【0025】
細胞を同定する他の基準は、前記細胞の遺伝子構造に基づくこともできる。遺伝子は、細胞で発生するすべてのものに重要な役割を果たしている。この事実のため、当該分野で通常の技術を持った者が、その遺伝子をもとに分化能を持つ細胞を同定することができる。より具体的には、当該分野で通常の技術を持つ者は、遺伝子が野生型か、変異型か、発現されたか、発現されていないか、遺伝子多型を含むか、またはその組み合わせの遺伝子であるかに基づいて、細胞を同定することができる。ここで用いるとおり、「発現された」という用語は、前記遺伝子がRNAに転写されるか否か、または蛋白質が最終的にその遺伝子によって産生されるか否かを意味する。
【0026】
細胞の遺伝的特性を決定する方法は、当該分野で通常の技術を持った者に周知である。利用されるすべての方法は十分であるが、細胞の遺伝子構造を決定するために利用されうる方法または技術の実施例には、これだけに限られないが、PCR、RT−PCR、ノーザンブロット、サザンブロット、一塩基遺伝子多型(SNP)分析、遺伝子チップ発現分析、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、ヌクレオチド配列決定、FACS、in situハイブリダイゼーションなどを含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、上述の基準、すなわち抗原決定基、遺伝子構造、その組み合わせのいずれかにより細胞が同定される可能性があり、または細胞は、別の基準セットに基づき同定される可能性がある。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも0.1%、1%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%が同定される。
【0028】
細胞の同定法と細胞数の決定法は当該分野で周知であり、光学顕微鏡または共焦点顕微鏡を用いた細胞形態の検討、またはPCRや遺伝子発現鑑定など、当該分野で周知の技術を用いた遺伝子発現変化の測定により、フローサイトメトリー、細胞選別、免疫細胞化学(例えば組織特異的または細胞マーカー特異的抗体による染色)、FACS、磁気標示化細胞分取器(MACS)などの標準的な細胞検出法の使用を含むが、それだけに限られない。さらに、関連する決定は、光学的および電気光学的性質、形態画像法、オプトフォレシス(www.genoptix.com)マイクロ波分光法(Signature Bioscience www.signaturebio.com)および光ピンセットなどの方法により実施されうるが、これだけに限らない。他の方法も利用可能である。
【0029】
特定の細胞タイプもしくは特定の抗原決定基を持つ細胞は、細胞治療の成功率に有害作用を有する可能性があることが知られている。したがって、本発明は、除外される少なくとも1つの細胞タイプを有する細胞治療単位を提供する。除外される細胞タイプは、必ずしも同じではない。いくつかの実施形態では、すべてのCD34陽性細胞が除外される。いくつかの他の実施例では、すべてのCD8陽性細胞が除外される。いくつかの他の実施例では、複数の細胞タイプが除外される。いくつかの応用では、治療成功を改善するため、特定の細胞タイプを除去するのではなく、減少させることが受け入れられ、便利である可能性がある。したがって、この文脈で用いられる「除外」または「除去」という用語は、好ましくは、細胞調製において、特定の細胞タイプの数が少なくとも約75%減少することを意味する。好ましくは、少なくとも約90%の減少が達成され、少なくとも約95%の減少がさらに好ましい。基本的には、当然、完全な除去が最も望ましいが、いくつかのケースではこれが達成可能である。前記割合の低下は、適切なアッセイを用いてそのような細胞の最初の集団と比べた、細胞数に関連している。
【0030】
細胞タイプは、自然では細胞を含まない(または多くの細胞を含まない)細胞含有単位を選択するか、もしくは特定の細胞タイプを特異的に除去する工程を採用することで、除外または減少されうる。前記細胞治療単位のために計画された治療法と一致しない、抗原決定基を有する細胞タイプを除外することが好ましい。例えば、制限するわけではないが、Tリンパ球と成熟した樹状細胞は、移植片対宿主病の可能性を低下させるため、除外されうる。副腎白血球異形成症(adrenal leukodysplasia)の治療では、一部またはすべてのCD8陽性細胞を除去することが望ましいと考えられる。
【0031】
「自然に」除外されるとは、1つの供給源に由来する細胞製剤が、さらなる操作を行わずとも特定の細胞タイプを含まないか、そのようなタイプを非常に少量含むことを意味する。代わりに、前記細胞が供給源から抽出される前後に利用される工程により、細胞タイプが除外されることも可能である。特定の細胞タイプを除外するために用いられる工程または方法は、当業者に周知である。工程または方法の実施例は、FACS、遠心分離、免疫クロマトグラフィーなどを含む。
【0032】
1つの実施例では、前記細胞がFACSを用いて分類されてもよい。FACSは、粒子の蛍光特性に基づき、細胞を含む粒子を分離する、周知の方法である(Kamrach,1987,Methods Enzymol,151:150〜165)。前記個々の粒子で蛍光を発する部分をレーザー励起すると、わずかに荷電し、混合物から陽性粒子と陰性分子を電磁的に分離することができる。1つの実施形態では、細胞表面マーカー特異的抗体またはリガンドが、異なる蛍光標識で標識される。細胞は前記の細胞ソーターで処理され、使用された抗体に対する結合力をもとに細胞を分離することができる。FACSソーターの粒子は、96ウェルまたは384ウェルプレートの個々のウェルに直接沈着され、分離とクローニングを促進することができる。例えばBecton Dickinson and Cell Pro Inc.など様々な供給業者から、細胞表面マーカー用試薬またはクラスター指定試薬が入手できる。
【0033】
利用できる試薬には、CDla、CD2、CD3、CD4、CD4(マルチクローン)、CD4 v4、CD5、CD7、CD8(Leu−2a)、CD8(Leu−2b)、CD10(抗CALLA抗体)、CD11a(抗LFA−1α抗体)、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16(Leu−11a、11b、11c)、CD18(抗LFA−1β抗体)、CD19(Leu−12)、CD19(SJ25Cl)、CD20、CD2l(抗CR抗体)、CD22、CD23、CD25(抗IL−2R抗体)、CD26、CD27、CD28、CD31(抗PECAM−1抗体)、CD33、CD34(抗HPCA−1&2抗体)、CD38、CD42a(抗gpIX抗体)、CD44、CD45(抗Hle−1抗体)、CD45RA、CD45RO、CD49d(抗VLA−α4抗体)、CD54、CD56(MY31)、CD56(NCAM16.2)、CD57、CD58(抗LFA−3抗体)、CD61、CD62P、CD62L(Leu−8)、CD69、CD71、CD80(抗BB1/B7抗体)、CD95、CD117、CD122(抗IL−2Rp75抗体)、CD123(抗IL−3Rα抗体)、CD134(Ox40)、CD154(CD40L)、CD158a、CD161、Lineage Cocktail 1(lin1)FITC、他の現在知られているか、その後発見されたマーカーを同定する試薬が含まれるが、これだけに限らない。
【0034】
非クラスター指定試薬には、抗BrdU抗体、抗サイトケラチン抗体(CAM 5.2)、抗HER−2/ν抗体、抗HLA−DP抗体、抗HLA−DQ抗体、抗HLA−DR抗体、抗Hu KIR抗体(NKB1)、抗IgA抗体、抗IgD抗体、抗IgG抗体、抗IgM抗体(Ig重鎖)、抗κ抗体(Ig軽鎖)、抗κF(ab’)抗体、抗λ抗体(Ig軽鎖)、抗λF(ab’)抗体、抗P−糖タンパク抗体(P−gp)、抗TCR a/P−1抗体(WT31)、抗TCRγ/δ−1抗体、PAC−1、Lineage Cocktail 1(lin1)FITCを含む。熟練した職人は、望みの細胞治療単位を最適化するか、特定の患者または使用に合わせるため、特定の必要性に求められるこれらの試薬を使用する。
【0035】
別の実施形態では、細胞を分離するため、磁気ビーズが利用されてもよい。前記細胞は、磁気ビーズ(直径0.5〜100μm)への結合力に基づき、粒子を分離する方法のMACS法を用いて分類されてもよい。細胞固相表面分子、またはヘプテンを特異的に認識する抗体の共有付加など、磁気微粒子に様々な有用な変更が行われてもよい。次に磁界がかけられ、前記選択ビーズを物理的に操作する。前記ビーズは前記細胞と混合され、結合させる。次に細胞が磁界を通され、細胞表面マーカーを有する細胞を分離する。次にこれらの細胞は単離され、さらなる細胞表面マーカーに対する抗体が結合した磁界ビーズと再度混合される。前記細胞は再び磁界を通され、2つの抗体と結合した細胞が分離される。次にそのような細胞は、望ましい場合はクローン単離用のマイクロタイタープレートなどの分離皿に希釈されてもよい。
【0036】
前記細胞治療単位の組成を知ることは、信頼でき、保証された細胞治療単位の長い間の必要性を満たすのに役立つ。前記単位の組成に加え、前記細胞治療単位の少なくとも一部の細胞数を知ることは役に立つ可能性がある。いくつかの実施形態では、細胞数のみが知られており、前記細胞すべての具体的な同一性は知られない。他のいくつかの実施形態では、前記細胞数が知られているが、前記同定細胞の数も知られていない。全体として前記細胞数を決定することは、当該分野で通常の技術を持った者に周知である。細胞の計数に利用できる装置の実施例は、FACSまたはフローサイトメトリーを行う機械、またはさらに単純な装置の一部である血球計である。前記細胞数は、前記同一性が決定されるのと同時に決定されることが多いが、前記数は、一部の分化能を持つ細胞の同一性を決定する前後に決定されてもよい。細胞治療単位中に存在する前記細胞数を知ることで、前記単位を使用する人は何が投与されているかを知ることができ、これは現在の細胞治療では非常に欠けているものである。
【0037】
細胞治療単位中の総細胞数と特定の細胞タイプの数に関する知識は、前記単位中に最小数の細胞または最小数の特定細胞タイプが存在できるように、前記単位に追加細胞または細胞タイプを補充するために用いられてもよい。細胞療法に見られる多様な反応は、一部、今日使用されている細胞調整法を用いて、供給源から様々な数の細胞が回収されることによるものと考えられる。
【0038】
前記細胞を同定し、計数することで、細胞製剤中の特定の細胞タイプの重要性について、治療の成功に何が必要か、また徹底的で完全な分析を実施できるかを、より徹底的に分析することができる。
【0039】
現在、最小数の事前に選択された細胞を有する細胞治療単位が調製されることが可能である。また、現在、確実に他の細胞タイプが前記単位から除外されるようにすることも可能である。いくつかの実施形態では、前記細胞治療単位は、少なくとも約100個の選択された分化能を持つ細胞を有する。そのような細胞を少なくとも約1,000個を有するような単位が好ましく、少なくとも約10,000個がさらに好ましい。特に前記単位が複数回、同一または異なる個体に投与される場合は、選択された細胞数はまだ多い方が好ましい。したがって、約100,000個またさらには約500,000個以上の選択された細胞集団も有用である可能性がある。前記単位中の細胞の一部またはすべてがアッセイによって同定され、そのような存在の証明にそれらが反映されることが好ましい。この証明は、均一で効果的な治療応用を保証する。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、前記細胞治療単位が最小数の異なる特定の細胞タイプを有する。最小数の異なる特定の細胞タイプを有する利点は、前記細胞治療単位の効果を改善する可能性があることである。例えば、前記細胞治療単位はアッセイされ、既知量の他の好ましい細胞タイプを含むか含まない、少なくとも約1,000個のOCT4陽性細胞を有することができる。他の実施形態では、前記単位が特定の割合のCD34陽性細胞を有するようになっており、前記製剤中のすべての有核細胞を参照して測定されてもよい。したがって、そのような製剤は少なくも0.01%、0.1%、1%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または他の割合のCD34陽性細胞を有することができる。同様に、他の抗原決定基または特定の因子を有する、既知の割合の細胞がさらに作られてもよい。
【0041】
本発明の他の実施形態は、少なくとも1つの供給源に由来した細胞を有する細胞治療単位を提供し、前記供給源の細胞は成分に分離されている。ここで用いるとおり、前記「成分」という用語は、細胞タイプ、同定された細胞などと同義である。当業者に周知の、細胞製剤を成分に分離する方法は、FACS、遠心分離、クロマトグラフィー、HPLC、FPLCなどを含むが、これだけに限らない。
【0042】
したがって、細胞治療単位は再結合された成分を有することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの成分が細胞治療単位で利用されている。いくつかの他の実施例では、少なくとも2種類、少なくとも4種類、少なくとも5種類、少なくとも10種類、少なくとも100種類の成分が再結合され、前記細胞単位を作っている。各供給源の成分の同一性と相対数が知られていることが好ましく、いくつかの細胞タイプは前記成分の一部またはすべてから除外されることが好ましい。前記異なる成分は、例えば凍結するなど、個別に保存されてもよく、これは組成の同一性と量が既知の「医薬品」または「ライブラリ」を細胞治療単位の組み合わせに形成してもよいことが分かっていると考えられる。前記それぞれの細胞製剤を成分に分離することで、存在する細胞および除外された細胞タイプ両方について、特定の組成を有する細胞治療単位が作られる。さらに、これにより既存の細胞治療単位が、特定の治療法に適応となるように、特定の細胞タイプまたは成分で補充されることが可能である。
【0043】
したがって、本発明の細胞治療単位は、1つの供給源または多くの供給源に由来する細胞を有すると見ることができる。一般的な習慣とは対照的に、複数の供給源から細胞を提供する利益は大きく、治療の利益と効果はそこから来ていると考えられる。いくつかの実施例では、前記細胞が複数の供給源に由来し、そのような供給源では複数の臓器から来ている可能性がある。ここで用いるとおり、前記「供給源」という用語は、細胞が由来するか、抽出されたすべての有機体、組織、または臓器を指す。いくつかの実施例では、前記供給源が胎児臍帯血、胎児組織、胎盤、分娩後の胎盤、分娩後の胎盤灌流液、またはそれら混合物である。異なる組織または臓器から細胞を抽出する方法は、通常の技術を持った者に周知である。胎児臍帯血から細胞を抽出する方法は、例えば1994年12月13日に発行された、表題「胎盤血採血のための方法と装置」の米国特許第5,372,581号公報や、1995年5月16日に発行された、Hesselら(表題「臍帯クランピング、切除、採血の装置と方法」)の米国特許第5,415,665号公報に見出される。通常は臍静脈に前記針またはカニューレが挿入され、前記胎盤が優しくマッサージされ、前記胎盤からの臍帯血の排出を助ける。胎盤、分娩後の胎盤、または分娩後の胎盤灌流液からの細胞抽出法は、例えば国際公開公報第WO02/46373号および第WO02/064755号に見られ、それぞれ、その全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。
【0044】
別の実施形態では、例えばエリスロポエチン、サイトカイン、リンホカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン、ケモカイン、インターロイキン、リガンドを含む組み替え型ヒト造血成長因子、幹細胞因子、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、または他の成長因子を投与することで、前記細胞が増殖するように刺激される。
【0045】
別の実施形態では、通常、例えばアデノウイルスまたはレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて、またはリポソームまたは化学物質を介したDNAの取り込みなどの機械的方法を用いることにより、細胞が設計される。
【0046】
導入遺伝子を含むベクターは、例えばトランスフェクション、形質転換、形質導入、電気穿孔法、感染、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム、LIPOFECTIN(登録商標)、リソソーム融解、合成カチオン脂質、遺伝子銃またはDNAベクタートランスポーターの利用など、当該分野で周知の方法により対象の細胞に導入されてもよく、前記導入遺伝子は、例えば娘胚性幹細胞(daughter embryonic−like stem cells)または胚性幹細胞の分裂で生成する前駆細胞などの娘細胞に伝達されるようにする。哺乳類細胞の様々な形質転換法またはトランスフェクション法については、Keown et al,1990,Methods Enzymol.185:527〜37、Sambrook et al,2001,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,N.Y.を参照のこと。
【0047】
前記細胞治療単位は、好ましくは最小数の事前に選択された分化能を持つ細胞タイプを有し、そのように分類される。ここで用いるとおり、「事前に選択された」とは、投与される前に前記細胞治療単位に入れられる、分化能を持つ細胞タイプを選択する工程を指す。細胞治療単位中に最小量のこれらの細胞を有する、分化能を持つ細胞タイプを事前に選択することで、前記細胞治療単位を、個体または個体クラスにおいて特定の治療結果を達成するために望ましい組成に合わせることができる。同様に、他の事前に選択された細胞タイプがないことに関する証明が、同様の理由で好ましい。
【0048】
本発明の前記細胞治療単位中に存在する複数の分化能を持つ細胞および細胞タイプは、適応となる疾患状態または病状の治療に適した単位を与えるように選択される。ここで用いられる「与えるように選択される」という語句は、複数の分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位が治療に適していると判断する工程を指す。この判断は、前記細胞治療単位に存在する分化能を持つ細胞数をもとに行うことができる。以上に考察したとおり、前記細胞数は、細胞療法を行う個体または患者の治療成功率に重要であるようにみえる。したがって、必ずしもすべての細胞治療単位が、適応となる疾患状態または病状の治療に適しているわけではないと考えられる。さらに、前記分化能を持つ細胞タイプも、細胞治療単位が治療に適しているか否かの判断工程に役立つ。特定のタイプの分化能を持つ細胞は、特定の疾患状態または病状の治療に有害または有益となりうる。したがって、前記単位中に存在する細胞タイプは、治療に適した単位の選択に用いられる別の因子となりうる。治療に適した単位の選択に利用される基準は、前記の基準に固有のものではない。細胞治療単位に存在する複数の分化能を持つ細胞が、適応となる疾患状態または病状の治療に適した単位を与えるために選択されるか否かを判断するため、すべての基準セットが利用されうる。
【0049】
本発明は細胞治療単位を提供するものであり、前記単位中に存在する前記分化能を持つ細胞の少なくとも一部が同定または計算される。しかし、科学的研究で信頼され、細胞治療に利用される単位については、前記同一性および数の精度を確認するため、好ましくは前記単位の内容物がアッセイされる必要がある。前記アッセイは、前記細胞治療単位中の少なくとも一部の前記分化能を持つ細胞の同一性と数を決定した、同一のグループ、個体、または機械によって実施されてもよい。しかし、前記アッセイは、一部の前記分化能を持つ細胞の同一性と数を決定した、異なる個体、グループ、または機械によって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、前記同一性と前記数の精度を保証するため、1つのアッセイのみが実施される必要がある。いくつかの他の実施例では、前記分化能を持つ細胞の前記同一性と前記数の精度を保証するため、少なくとも2回、少なくとも5回、または少なくとも10回アッセイが実施される。実施される前記アッセイタイプは、これまで前記数と前記同一性を決定するために利用されたアッセイと同一の可能性もある。いくつかの他の実施形態では、一部の前記分化能を持つ細胞の数と同一性の精度を保証するため、異なるアッセイが利用される。前記精度を保証するために利用できるいくつかのアッセイは、ELISA、FACS、ウエスタンブロットなどを含むが、これだけに限らない。
【0050】
いくつかの他の実施形態では、前記単位の提供者が前記アッセイの精度を証明する。ここで用いるとおり、「提供者」という用語は、前記細胞治療単位を前記単位を使用する個人に提供する、個人、事業、または施設を指す。いくつかの実施例では、前記証明が、前記アッセイが正しく実施され、前記結果が正しいことを示した書面を有する。いくつかの他の実施例では、前記証明が、前記アッセイが適切に機能していたことを示す、陽性対照について実施されたアッセイの結果を有する。いくつかの他の実施例では、前記証明が、前記陽性対照の結果と前記アッセイが適切に機能していたという書面の両方を有する。さらにいくつかの実施形態では、前記証明が、前記細胞治療単位から除外された、前記分化能を持つ細胞タイプのリストを有する。さらにいくつかの実施例では、前記証明が、前記細胞治療単位に含まれる、少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞タイプのリストを有する。いくつかの実施形態では、前記証明がすべての細胞の数を有する。いくつかの実施例では、前記証明がさらに、少なくともいくつかの前記特定細胞タイプの量を有する。いくつかの他の実施形態では、前記証明が、前記分化能を持つ細胞を補充するために前記単位に追加された少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞タイプのリストを有し、前記単位が最小数の分化能を持つ細胞を有するようにする。
【0051】
本発明は、複数の分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位を有し、前記単位の内容物を有する少なくともいくつかの前記分化能を持つ細胞の同一性と数について既知である、疾患状態または病状を有することが疑われる人を治療するためのキットも提供する。さらに、前記分化能を持つ細胞の同一性と数の精度を保証するため、前記細胞治療単位がアッセイされる。前記キットはさらに、前記アッセイの精度についての証明を有する。いくつかの実施例では、前記キットが、最小数の同定された分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位と、前記単位の分化能を持つ細胞の組成に関する証明を有する。他のいくつかの実施形態では、前記キットが、少なくとも1つの除外された細胞タイプを有する細胞治療単位を有する。
【0052】
本発明は、哺乳類の疾患状態または病状を治療するための方法も有する。前記方法は、前記哺乳類に、分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位を有する、組成の治療有効量を投与する工程を有し、前記分化能を持つ細胞の一部はその同一性と数について既知である。前記単位も、前記同一性と前記数の精度を保証するためにアッセイされる。いくつかの他の実施形態では、前記細胞治療単位が最小数の事前に選択された分化能を持つ細胞タイプを有する。
【0053】
哺乳類に対する治療有効量は異なる可能性があるが、例えば約0.01細胞治療単位/kg〜100単位/kgである可能性がある。前記細胞治療単位は、前記哺乳類に急速にまたはゆっくりと投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前記細胞治療単位が約0.01μl/分の速度で投与され、他の実施形態では、前記単位が約100,000ml/分の速度で投与される。前記単位は、例えば静脈内、皮下、筋肉内、経口、または直腸に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前記単位が前記哺乳類に異なる時点で複数回投与される。いくつかの他の実施形態では、異なる供給源または異なる個体に由来する細胞治療単位が前記哺乳類に投与される。
【0054】
細胞治療単位の考えられる利用法は無限であるが、細胞治療単位が治療に利用されうる疾患状態または病状のいくつかの実施例は、癌、急性白血病、慢性白血病、および現在骨髄移植または臍帯血細胞移植で治療されている他の癌、骨髄異形成症候群、幹細胞疾患、骨髄増殖性疾患、リンパ増殖性疾患、食細胞疾患、リポソーム貯蔵疾患、組織球疾患、遺伝性赤血球異常、先天性(遺伝性)免疫系疾患、遺伝性血小板異常、形質細胞疾患、レッシュ・ナイハン症候群、軟骨毛髪形成不全症、グランツマン血小板無力症、骨粗鬆症、乳癌、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、腎細胞癌、肺癌、アルツハイマー病、肝疾患、肝炎、パーキンソン病、失明、記憶喪失などを含む。
【0055】
前記細胞治療単位は、これだけに限らないが、テイ・サックス病、ニーマン・ピック病、ファブリ病、ゴーシュ病、ハンター症候群、フルラー症候群などのリソソーム蓄積症、また他のガングリオシドーシス、ムコ多糖症、糖原病を含む特定の疾患または病状を治療する酵素補充療法において最適化されうる。この場合の前記細胞治療単位は、前記細胞がアッセイされ、前記必要酵素を産生することができる細胞を望ましい数を含むことが証明されてもよい。前記単位は、前記望ましい酵素の機能的内因性遺伝子を含む同種細胞、前記望ましい遺伝子の外因性コピーを有する自己細胞、またはその両方の組み合わせを有してもよい。
【0056】
他の実施形態では、前記細胞が遺伝子療法において自己または異種の導入遺伝子キャリアとして利用されてもよく、副腎白質ジストロフィー、嚢胞性線維症、糖原病、甲状腺機能低下症、鎌状赤血球貧血、ピアソン症候群、ポンペ病、フェニルケトン尿症(PIU)、テイ・サックス病、ポルフィリン症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ムコ多糖症、慢性肉芽腫症、およびチロシン血症などの先天性の代謝異常を矯正するか、癌、腫瘍、その他の病状を治療する。
【0057】
すべての公開文献の引用は、出願日前に公表されていたものであり、本発明が先行発明に基づいてそのような公開文献を先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0058】
本発明は、ここに述べられた特定の実施形態によって、範囲が限られるものではない。実際、ここに述べられたものに加え、前記の記述から、本発明の様々な修正が当業者に明らかになるだろう。そのような修正は、添付の請求項の範囲内であることを意味している。
【0059】
ここに引用されるすべての参考文献は、ここに全文が参考文献として、すべての目的で、各個別の公開文献、特許、特許出願が特異的かつ個別にすべての目的でその全てがこの参照により本明細書に組み込まれることが示唆されたのと同程度に組み込まれている。
【実施例1】
【0060】
急性骨髄性白血病(AML)を有する成人は、細胞移植法により血液再構成を行う必要がある。前記患者は従来の化学療法を受けた後、前記患者の医療提供者が判断した移植を行うため、従来の準備をするが、これには障害のある骨髄を破壊することを含む。前記患者の体重が測定される。従来の方法で適切なHLAタイピングが行われた。治療される疾患、前記患者の体重、HLAの照合を含むこれらのパラメーターに基づき、前記移植者が依頼し、複数の分化能を持つ有核細胞を有する細胞治療単位、前記複数細胞の少なくとも一部で同一性と数が既知の前記単位の内容物、前記同一性と数の精度を確認するためにアッセイされる単位が提供され、これは証明される。特に、前記単位は、前記患者の体重1キログラムあたり約1.4×10個の有核細胞を含むことが証明されている。証明される追加情報には、HLAに関する情報を含む。前記患者はAMLに罹患しているため、前記細胞治療単位はCD34+を有核細胞全体の1%以上、CD8+細胞を2.5%以上含み、移植片対腫瘍効果を最小限にする。この場合、前記移植者は移植に必要な細胞総数の2倍を依頼する(1.4×10個の有核細胞×患者の体重(kg)×2)。前記移植者は、この移植に適した細胞数を有するため、前記移植直前に1倍の量を依頼する。前記細胞の残り半分は、2回目の移植が必要となった場合に輸送される。したがって、2回目の細胞治療単位は1回目の移植で使用されたものと同一である。代わりに、前記移植者は、前記患者の体重変化、疾患の重症度、または推奨治療の変更に基づき、2回目の細胞治療単位が適切に変更され(CD34陽性細胞数の増加など)、保証されるように依頼してもよい。前記移植は、前記移植者が従来利用してきた方法と同一の方法で行われる。
【実施例2】
【0061】
鎌状赤血球貧血を有する小児は細胞移植が必要である。前記小児の体重1キログラムあたり1.7×10個の有核細胞が必要であると定められる。従来の方法で適切なHLAタイピングが行われる。前記細胞治療単位は、前記総有核細胞中、CD34+細胞を1%以上有する必要がある、と定められている。前記CD34+細胞は、さらにCD34+/CD33+:CD34+/CD33−の比が2:1で表される。これらのパラメーターを有する細胞治療単位が提供される。この単位は、例えば国際公開公報第WO02/064755号で記載されたような臍帯血由来細胞および多能性胎盤細胞を有し、これは国際公開公報第WO02/064755号で説明された方法で引き出される。CD34+/CD33+:CD34+/CD33−細胞の比は2:1であり、アッセイで確認され、正確であることが証明された事実である。前記証明された細胞はFACSで判定され、前記粒子の蛍光特性に基づき、細胞表面のマーカー特異的抗体またはリガンドが異なる蛍光標識で標識される。細胞は前記細胞ソーターを通って処理され、使用された抗体に対する結合力をもとに細胞を分離することができる。細胞表面マーカー特異的な抗体は、例えばBecton Dickinsonを含む試薬などを販売する企業から購入されてもよい。前記移植は、前記移植者が従来利用してきた方法と同一の方法で行われる。
【実施例3】
【0062】
小児が副腎白血球異形成症に罹患している。細胞移植が適切であると判断される。前記小児の体重1キログラムあたり2×10個の(従来の方法で臍帯血から取り出した)有核細胞が必要であると判断される。従来の方法で適切なHLAタイピングが行われる。これらのパラメーターを有する細胞治療単位が提供される。特に、前記単位は0.25%以下のCD34+/CD38−細胞と、総有核細胞の0.5%以下で減少したCD8+細胞を含むことが証明されている。前記移植は、前記移植者が従来利用してきた方法と同一の方法で行われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞治療単位であって、複数の分化能を持つ細胞と、少なくとも一部の前記複数の分化能を持つ細胞において同一性及び数について既知である前記単位の内容物と、前記同一性及び数の精度を確認するためにアッセイされる単位とを有する、細胞治療単位。
【請求項2】
請求項1の細胞治療単位において、前記アッセイの精度は、前記単位の提供者によって証明されるものである。
【請求項3】
請求項1の細胞治療単位において、前記同一性及び数が既知の分化能を持つ細胞は、多分化能を持つ細胞である。
【請求項4】
請求項1の細胞治療単位において、前記同一性は、同定された細胞の少なくとも1つの抗原決定基の有無を反映しているものである。
【請求項5】
請求項1の細胞治療単位において、前記分化能を持つ細胞は、胎児の臍帯血または他の胎児組織から入手されるものである。
【請求項6】
請求項1の細胞治療単位において、前記分化能を持つ細胞は、胎児の臍帯血から入手されるものである。
【請求項7】
請求項1の細胞治療単位において、前記分化能を持つ細胞は、胎盤から入手されるものである。
【請求項8】
請求項1の細胞治療単位において、前記分化能を持つ細胞は、分娩後の胎盤から入手されるものである。
【請求項9】
請求項1の細胞治療単位において、前記分化能を持つ細胞は、分娩後の胎盤灌流液から入手されるものである。
【請求項10】
請求項1の細胞治療単位において、前記同一性及び数が既知の分化能を持つ細胞は、CD34、CD8、CD10、OCT4を示す細胞の少なくともいくつかを有するものである。
【請求項11】
請求項1の細胞治療単位において、分化能を持つ細胞は、複数の供給源に由来するものである。
【請求項12】
請求項1の細胞治療単位において、分化能を持つ細胞は、少なくとも2個体に由来するものである。
【請求項13】
請求項1の細胞治療単位において、分化能を持つ細胞は、少なくとも5個体に由来するものである。
【請求項14】
請求項1の細胞治療単位において、分化能を持つ細胞は、遺伝子改変されているものである。
【請求項15】
請求項1の細胞治療単位において、少なくとも1タイプの細胞は、前記単位から除外されるものである。
【請求項16】
請求項1の細胞治療単位において、前記複数の分化能を持つ細胞は、適応される疾患状態または病状の治療に適した細胞治療単位を与えるように選択されるものである。
【請求項17】
請求項16の細胞治療単位において、前記少なくとも1タイプの細胞は、前記単位から除外されるものである。
【請求項18】
細胞治療単位であって、最小数の事前に選択されたタイプの分化能を持つ細胞を有する、細胞治療単位。
【請求項19】
事前に選択されたタイプの分化能を持つ細胞のその内容物の精度を確認するためにアッセイされている、請求項18の細胞治療単位。
【請求項20】
請求項18の細胞治療単位において、前記事前に選択された分化能を持つ細胞の内容物は、証明されている(certified)ものである。
【請求項21】
請求項18の細胞治療単位において、少なくとも1タイプの細胞は、前記単位から除外されるものである。
【請求項22】
請求項21の細胞治療単位において、前記事前に選択された分化能を持つ細胞の内容物と、前記除外される細胞タイプの非存在とは、証明されているものである。
【請求項23】
請求項18の細胞治療単位において、前記証明は、複数の分化能を持つ細胞タイプに関するものであり、前記複数の細胞および前記複数の細胞のそれぞれの数は、適応される疾患状態または病状の治療に適した細胞治療単位を与えるように選択されるものである。
【請求項24】
請求項23の細胞治療単位において、前記証明は、複数の分化能を持つ細胞タイプに関するものであり、前記選択された複数の細胞および複数の細胞のそれぞれの数は、除外された細胞のタイプと同様に、適応される疾患状態または病状の治療に適した細胞治療単位を与えるものである。
【請求項25】
請求項18の細胞治療単位において、少なくともいくつかの分化能を持つ細胞は、遺伝子改変されているものである。
【請求項26】
疾患状態または病状を有することが疑われる人を治療するためのキットであって、複数の分化能を持つ細胞を有する治療単位と、前記複数の分化能を持つ細胞の少なくともいくつかの同一性と数について既知である前記単位の内容物と、前記同一性と数の精度を確認するためにアッセイされる単位と、アッセイの精度の証明とを有する、キット。
【請求項27】
請求項26のキットにおいて、少なくとも1タイプの細胞は、細胞治療単位から除外されるものである。
【請求項28】
疾患状態または病状を有することが疑われる人を治療するためのキットであって、最小数の同定された分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位と、前記単位の分化能を持つ細胞の組成証明とを有する、キット。
【請求項29】
請求項28のキットにおいて、少なくとも1タイプの細胞は、細胞治療単位から除外されるものである。
【請求項30】
請求項28のキットにおいて、少なくともいくつかの細胞は、遺伝子改変されているものである。
【請求項31】
細胞治療単位であって、臍帯血、胎盤、またはその組み合わせに由来する細胞を有し、少なくとも1タイプの細胞は前記単位から除外されるものである、細胞治療単位。
【請求項32】
請求項31の細胞治療単位において、複数の細胞タイプは、前記単位から除外されるものである。
【請求項33】
請求項31の細胞治療単位において、前記単位の少なくともいくつかの細胞は、遺伝子改変されているものである。
【請求項34】
細胞治療単位であって、臍帯血、胎盤、またはその組み合わせに由来する細胞を有するものであり、前記細胞は複数の様々なタイプを有し、少なくともいくつかの異なるタイプは、構成成分に分離され前記単位に再結合されたものである、細胞治療単位。
【請求項35】
請求項34の細胞治療単位において、前記分離された細胞タイプは、個別に凍結されているものである。
【請求項36】
凍結状態の、請求項34の細胞治療単位。
【請求項37】
請求項34の細胞治療単位において、前記分離された細胞タイプは特徴が決定されているものである。
【請求項38】
請求項34の細胞治療単位において、前記分離された細胞タイプは遺伝子改変されているものである。
【請求項39】
哺乳類の疾患を治療する方法であって、
複数の分化能を持つ細胞を有する細胞治療単位と、少なくとも一部の前記複数の分化能を持つ細胞において同一性及び数について既知である前記単位の内容物と、前記同一性及び数の精度を確認するためにアッセイされる単位とを有する組成物の治療有効量を前記哺乳類に投与する工程を有する、方法。
【請求項40】
請求項39の方法において、前記細胞治療単位は、最小数の事前に選択されたタイプの分化能を持つ細胞を有するものである。
【請求項41】
請求項39の方法において、前記同一性と数の精度は、証明されているものである。
【請求項42】
請求項39の方法において、前記細胞治療単位は、分娩後の胎盤に由来するものである。
【請求項43】
請求項39の方法において、前記細胞治療単位は、分娩後の胎盤灌流液に由来するものである。
【請求項44】
請求項39の方法において、前記単位は、少なくとも1つの自己性の細胞を有するものである。
【請求項45】
請求項39の方法において、前記単位は、少なくとも1つの外因性の細胞を有するものである。
【請求項46】
請求項39の方法において、前記単位は、複数回投与されるものである。
【請求項47】
請求項39の方法において、前記方法はさらに、異なる個体に由来する前記単位を複数回投与する工程を有するものである。
【請求項48】
請求項39の方法において、前記方法はさらに、異なる供給源に由来する前記単位を複数回投与する工程を有するものである。
【請求項49】
請求項39の方法において、前記方法はさらに、遺伝子改変された複数単位を投与する工程を有するものである。
【請求項50】
細胞治療単位のライブラリであって、前記ライブラリの各単位構成要素は、複数の分化能を持つ細胞と、前記単位を有する少なくともいくつかの複数の分化能を持つ細胞の同一性と数について既知である前記単位それぞれの内容物と、前記同一性と数の精度を確認するためにアッセイされる各単位とを有する、ライブラリ。
【請求項51】
細胞治療を必要とする患者を治療するための方法であって、細胞治療単位のライブラリから前記ライブラリの少なくとも2つの単位構成要素を選択する工程と、治療単位を形成するために前記単位構成要素からの一定量を混合する工程と、患者に前記治療単位を投与する工程とを有する、方法。
【請求項52】
請求項51の方法において、ライブラリの前記単位構成要素のそれぞれは、前記単位構成要素に存在する分化能を持つ細胞の同一性及び数を決定するためにアッセイされるものである。
【請求項53】
請求項51の方法において、ライブラリの前記単位構成要素の少なくとも1つは、少なくとも1つの選択された細胞集団中で減少されたものである。

【公開番号】特開2011−225606(P2011−225606A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−160949(P2011−160949)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2004−555819(P2004−555819)の分割
【原出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(505195085)アンソロジェネシス コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】