説明

細胞画像取得および遠隔モニタリングシステム

本発明は、インキュベータ内部の培養容器内に配置される担体上および/または液体内に配置される細胞培養および細胞の複数の、カラーの静止画および/または動画を取得するための1つまたは複数のカメラを有するイメージングセンサポッドを含む細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムを提供する。画像は、可変倍率で、担体上または容器内の異なる位置から24時間休みなしに撮られうる。取得されたデータおよび画像は、研究者が調査し、解析して、細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態を判定するために、管理制御ユニット、および/またはPDAなどの無線で接続され遠隔に配置された別のデータ伝送装置に無線で送信される。本明細書で教示される画像取得および遠隔モニタリングシステムは、研究者が、試料の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態を視覚的に確認し、解析するために、生物試料が物理的に存在する場所にいる必要性を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態を遠隔でモニタリングするシステムに関する。より詳細には、本発明は、1つまたは複数のセンサポッドを使用して、細胞画像および細胞培養データを取得し、送信し、それにより、細胞が物理的に存在しない場所でも細胞の健康状態および生存率を遠隔で視覚的に判定することができるようにする、細胞画像および細胞培養データに遠隔でアクセスするための、細胞培養データおよび細胞画像の取得およびモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養が、生命科学、ならびに生物製剤の研究および製造で長年利用されてきた。細胞は、典型的には、使い捨てのプラスチック容器、たとえば皿またはフラスコで成長させられ、COインキュベータ内に置かれる。よくあることだが、これらの容器は、細胞を増殖させるまたは維持するため、および/あるいはインキュベータの外側で行われるアッセイ用に細胞を準備するために使用される。結局、これらの細胞培養法は、特に多数の研究が行われる必要があるとき、非常に多くの人手を必要とし、非常に多くの時間を必要とする。
【0003】
細胞培養システムは、細胞の維持、成長、増殖、および試験については制御された環境に依存する。汚染など、たとえば真菌または細菌の汚染の大発生を避けるために厳格な手段がしばしばとられるにもかかわらず、そのような大発生は依然として起こり、何週間のもの研究を損ない、何日もまたは何週もの間、作業を停止させるという影響を伴うことがしばしばある。最低限でも、細胞培養アッセイの結果が、基になる細胞培養の矛盾による、細胞生理学における意図しない変化によりゆがめられうる。研究者は、特定の培養に伴う問題の前兆となることがある、細胞の形態、成長パターン、および成長速度の微妙な変化を視覚的に観察することにより、細胞の健康状態をモニタし、評価する際に絶えず警戒を怠ってはならない。
【0004】
哺乳類細胞を成長させる研究者は、細胞培養の維持が非常に時間のかかる仕事であるとしばしばわかっている。顕微鏡下で細胞形態を判定することにより細胞の健康状態を視覚的に評価する、培地(餌)の入替え、細胞(培養密度)の回復、汚染の処理、代謝産物または細胞相互作用のモニタリング、ならびに別の問題などの措置が注意深く対処されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0129900号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現代の研究所環境では、培養された細胞の適切なモニタリングの障害が多くある。たとえば、細胞培養を(たとえば2時間〜4時間ごとに)24時間休みなしに手作業で調べることは実行不可能であり、法外な費用がかかることがある。さらに、24時間休みなしに細胞培養を手作業でモニタすることは、研究者にしばしば物理的かつ精神的な打撃を与え、生活の質が全体的に低下し、過度の疲労による観察誤りの可能性を高めることになる。さらに、完全自動化細胞培養モニタリングシステムは、極端に扱いにくく、複雑であり、多額の金の投資を必要とする。
【0007】
さらに、細胞の単なる可視検査では主観評価しか提供せず、永続する視覚的記録またはアーカイブを伴わない。細胞および細胞培養の問題の徴候が見落とされる可能性があり、細胞ベースアッセイにより作成されたデータの質への深刻で有害な影響につながる。健康な生きた細胞培養を供給する能力は、今日の競争の激しい多国籍の生物産業および生物製剤産業ではますます大きな問題になっている。
【0008】
したがって、バイオプロセス産業、研究所、医薬品発見会社の中には、細胞の健康状態および生存率を視覚的に評価するために、細胞培養が存在する現場にエンドユーザが物理的にいる必要なしに、研究者が生物試料および細胞培養を遠隔で観察し、修正し、維持することができるようにする細胞画像取得および遠隔モニタリングシステムが必要であることが理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
必要とされているものは、任意の位置から細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態を遠隔で確認する能力を提供する、細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムである。本明細書で教示されるシステムは、研究および細胞産生の質および効率を改善するだけでなく、細胞が物理的に存在する現場に研究者がいる必要なしに、細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態に関するリアルタイムの情報を提供する、費用効率が高く、融通がきき、使いやすく、時間のかからない遠隔細胞画像取得およびモニタリングシステムを提供する。
【0010】
本発明は、細胞培養データを遠隔で見て、モニタし、解析し、報告し、記憶するための細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムを提供する。本明細書で教示される取得および遠隔モニタリングシステムにより、研究者が、細胞培養状態、および細胞の健康状態を視覚的に評価するために、細胞が物理的に存在する現場にいる必要なしに、培養容器内の担体上および/または溶液内に配置される細胞の健康状態および生存率を判定することができるようになる。
【0011】
別の実施形態では、本発明による細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムは、充電式電池により電力を供給され、中に1つまたは複数の画像センサ、たとえば、複数のカラー画像を取得することができるカメラなどのようなイメージング技術を有する、1つまたは複数の防水イメージングセンサポッドを含む。好ましくは、イメージング技術は、培養容器内部または担体上の少なくとも2つの別個の位置から撮られた2つ以上の、デジタルカラーの静止画および/または動画を取得する。
【0012】
一部の実地形態では、本発明によるデータおよび画像取得および遠隔モニタリングシステムは、約10倍から約250倍までの最小の画像拡大機能、および任意選択のユーザマニュアル焦点制御を備える自動焦点機能を有するイメージングセンサを含む。イメージングセンサは、複数の固定カメラ、および/または駆動機構位置決めシステムを有するポッド上の1つまたは複数の可動カメラを含む。1つまたは複数のイメージングセンサはまた、顕微鏡および/または倒立顕微鏡と組み合わせて使用される1つまたは複数のカメラを含む。
【0013】
一実施形態では、取得および遠隔モニタリングシステムは、インキュベータ内に配置される培養容器に結合される1つまたは複数のイメージングセンサポッドを含む。あるいは、ポッドは、インキュベータに、またはインキュベータと培養容器の両方に結合させられうる、またはドッキングされうる。細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムは、(1)ポッドにアドレスして、細胞の健康状態および生存率、ならびに細胞培養の状態に関する画像、データ、および情報をアップロードおよびダウンロードする、(2)細胞の静止画および/または動画、ならびに細胞培養データを記憶および解析する、(3)測定結果および必要な詳細を提供して、意思決定を容易にする、(4)ポッド、培養容器、担体、およびインキュベータに対する動作制御を提供して、自動的にまたはユーザの介入で命令を実行する、すなわち、細胞の健康状態および生存率ならびに細胞培養を維持するために必要な、推奨される細胞培養処理操作を実行するためのコンピュータおよびソフトウェアを含むデータベース管理システムを含む。
【0014】
別の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、警告、静止画、および/または動画をデータ伝送装置、コンピュータ、移動通信装置または任意の別のそのような装置、あるいはWebベースのシステムおよび/またはサーバに送るための無線接続性を提供する。
【0015】
本発明の別の目的は、培養容器を点検するためにインキュベータを開けるたびに発生する、インキュベータ状態の変動を低減するだけでなく、細胞の健康状態および生存率を調べるために培養容器を顕微鏡まで移動させるときに発生する可能性がある、細胞の望ましくない擾乱を低減することにより、インキュベータ内に置かれた培養容器内の細胞の健康状態および生存率を助長することである。培養容器内の細胞がインキュベータを離れるたびに、汚染の危険性が増す。
【0016】
一部の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、自動的に、(1)適切な細胞培養環境を維持するためにどの措置がとられ、その中の細胞の健康状態および生存率を助長する必要があるかを判断し、(2)情報、命令、およびとられる必要がある必要な措置を、権限を与えられたエンドユーザのデータ伝送装置、コンピュータ、またはWebベースのシステムおよび/またはサーバに自動的に送信する。
【0017】
別の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、インキュベータ内に配置される培養容器または担体に結合された1つまたは複数の防水イメージングセンサポッドを含む。ポッドは、好ましくは、コンピュータまたは別のデータ伝送装置に無線フォーマットで接続され、コンピュータ、別のデータ伝送装置は、(1)各ポッドを個別にアドレスし、(2)作動可能なコマンドを各ポッドにダウンロードし、(3)静止画、動画、細胞画像および細胞画像、ならびに/またはセンサデータを各ポッドからアップロードすることができる。コンピュータ、またはWebベースのソフトウェアツールにより、たとえば、pH変化の指標として色を比較するためのソフトウェアを使って画像から情報を得ることにより、または標準的なマシンビジョンツール、たとえばブロブ解析または端部検出を使って画像から情報を得て、全体的成長または培養密度の指標として成長の状態を調べることにより、および/または細胞の健康状態の指標として細胞の形態を評価することにより、画像は処理されうる。
【0018】
イメージングツール、たとえばブロブ解析および端部検出は、相対関係を画素レベルとして比較するために使用される。ブロブツールが、画像画素をバイナリフォーマットで運ぶ。運ばれると、定義されたブロブの形状が、形状、領域の形状中心などを解析されうる。端部検出は、画素強度の変化を使用して、境界端部を画定する。通常、強度の急な変化が使用されるが、ユーザは端部検出のために利得を調節することができる。端部が見つけられると、この場合も形状が解析されうる。別の呼び出された形状に対してであれ、または期待される形状に対してであれ、または形状のライブラリに対してであれ、形状比較が行われうる。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、インキュベータの温度、圧力、および湿度と、ポッドの電池レベルの状態と、pHレベルと、窒素、酸素、および二酸化炭素などの溶存ガスのレベルと、グルコースレベルと、グルタミンレベルと、乳酸レベルと、アンモニアレベルと、代謝産物の存在および質と、分光と、それらの組合せとを検出するためのセンサを含むが、それに限定されない追加センサを含む。任意選択で、これらのセンサは、イメージングセンサにより読み取られるまたは画像を撮られ、それにより、画像は、解析および記憶のためにローカルコンピュータ、別のデータ伝送装置、またはWebベースのサーバに送信される、および/あるいはリアルタイム画像の取出し、調査、および解析のために研究者または権限を与えられた別のエンドユーザに直接送信される。
【0020】
一部の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、インキュベータからローカルコンピュータ、データ伝送装置、またはWebベースのサーバへの無線接続性に加えて、無線機能を維持しながら、インキュベータ、および/あるいはローカルコンピュータ、データ伝送装置、またはWebベースのサーバからの、任意選択の有線接続を有する1つまたは複数のイメージングセンサポッドを含む。
【0021】
別の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、内蔵光源、たとえばカメラレンズの周囲のリングライト、および/または任意選択で、培養容器内または担体上の細胞にバックライトを当てるための別個の照明源を有するイメージングセンサポッドを含む。
【0022】
さまざまな実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、カラー静止画取得、ならびに/またはカラー動画取得およびストリーミングにより、細胞培養の状態、ならびに細胞の健康状態および生存率をリアルタイムで確認するために、ポッドを遠隔で制御することを含む、1つまたは複数の画像取得センサポッドへの遠隔アクセス可能性を研究者に提供する。
【0023】
ある種の実施形態では、本発明による取得および遠隔モニタリングシステムは、RFIDチップを読み出して、真正の製品が使用されていること、たとえば真正の認可された培養容器または担体がポッドに結合されていることを保証する画像取得センサポッドを提供する。真正ではない、かつ認可されていない培養容器などがポッドに結合されているとき、ソフトウェアがシステムの機能を制限することができる。
【0024】
本発明の別の特徴および有利な点が以下の詳細な説明で述べられるであろう。当業者に明らかなように、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明の多くの修正および変形が行われうる。前述の一般的な説明も、以下の詳細な説明、特許請求の範囲だけでなく添付図面も、例示的および説明のためでしかなく、本教示のさまざまな実施形態の説明を提供するものであることが理解されるべきである。本明細書で説明される特定の実施形態は、例としてのみ提供され、決して限定しているものではない。
【0025】
一般に、図のそれぞれが、本発明の実施形態および本発明の構成要素の概略的表現の例示を提供する。対象の相対的位置形状および/またはサイズは、本明細書での議論および表現を容易にするために誇張されている、および/または簡略化されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の態様による代表的な細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムの概略図を示す。
【図2】本発明の態様による別のデータおよび画像取得および遠隔モニタリングシステムの概略図を示す。
【図3】本発明の態様による別のデータおよび画像取得および遠隔モニタリングシステムの概略図を示す。
【図4】本発明の別の実施形態の斜視図を示す。
【図5】本発明による画像取得および遠隔モニタリングシステムの別の態様の概略図を示す。
【図6】本発明による画像取得および遠隔モニタリングシステムの別の態様の概略図を示す。
【図7】本発明による画像取得および遠隔モニタリングシステムの別の態様の概略図を示す。
【図8】本発明による画像取得および遠隔モニタリングシステムの別の態様の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
他にそうではないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に定められる数値パラメータは、本発明により得られるように努められる所望の特性に応じて変わりうる近似値である。最低限でも、特許請求の範囲の均等論の適用を制限する意図としてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に照らして、通常の丸め技法を適用することにより、解釈されるべきである。本発明の広い範囲を述べる数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例で述べられる数値は、できるだけ正確に報告される。
【0028】
本明細書および特許請求の範囲の目的では、別の方法で示されない限り、成分の量、材料のパーセンテージまたは割合、反応条件、ならびに本明細書および特許請求の範囲で使用される別の数値を表すすべての数値が、すべての実例で用語「約」により修飾されるものと理解されるべきである。
【0029】
本発明をさらに詳細に説明する前に、いくつかの用語が定義される。これらの用語の使用は、本発明の範囲を限定するのではなく、ただ本発明の説明を容易にするのに役立つだけである。
【0030】
本明細書で使用されるとき、状況が別の場合を明白に規定しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の指示対象を含む。
【0031】
本明細書で使用されるとき、語句「生物試料」は、1つまたは複数の有機体、細胞、および/またはウイルスから得られる、あるいはそれらに対応する任意の粒子、物質、抽出物、混合物、および/または集合体を意味するが、それらに限定されない。自動細胞管理システムで培養されうる細胞が、動物細胞、昆虫細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、遺伝子導入細胞、遺伝子組換細胞、形質転換細胞、細胞系、植物細胞、足場依存性細胞、足場非依存性細胞、および当技術分野で公知のようなインビトロで培養されうる別の細胞を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の細胞型を含むことが当業者には明らかであろう。生物試料はまた、解析を容易にする追加成分を、たとえば流体(たとえば水)、緩衝液、培養栄養分、塩、別の試薬、色素などを含んでもよい。したがって、生物試料は、培養培地および/または別の適切な流体培地内に配置された1つまたは複数の細胞を含んでもよい。
【0032】
本明細書で使用されるとき、表現「培養密度」は、細胞培養容器、皿、またはフラスコを覆う細胞数の測定値(すなわちパーセント)を指す。培養密度のパーセント(%)は以下の関係式により決定されうる。
【0033】
%培養密度=[(細胞により覆われる、画像を撮られた領域)/(画像を撮られた全領域)]×100。
【0034】
本明細書で使用されるとき、語句「培養容器(culture vessel)」または「容器(container)」は、任意のペトリ皿、マルチウェルプレート、マイクロタイタープレート、ローラーボトル、タンク、バイオリアクタ、バッグ、および参照により本明細書に完全に組み込まれる、Layered Flask Cell Culture Systemと題する米国特許出願公開第2010/0129900号明細書で教示されるような、1つまたは複数の層の細胞成長表面を有するフラスコのようなねじ口フラスコを含むフラスコを意味するが、それらに限定されない。典型的には、そのような培養容器は1回使用のものであり、高分子材料から、たとえば典型的には無菌で供給され使い捨てのフッ素重合体、高密度ポリプロピレン(HDPE)、および特別に処理されたポリスチレンプラスチックから製造される。
【0035】
本明細書で使用されるとき、語句「細胞培養」は、細胞、組織、または組織の生成物の成長、維持、トランスフェクション、または増殖を意味するが、それらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用されるとき、本明細書で使用されるような語句「培養培地」は、生きた細胞(または組織内の生きた細胞)を維持しそれらの成長を支援するために、栄養分(たとえばビタミン、アミノ酸、必須栄養素、塩など)および特性(たとえば類似度、緩衝作用)を与えるために使用される溶液を意味する。市販の組織培養培地が当業者に公知である。語句「細胞培養培地」は、本明細書で使用されるとき、細胞培養を形成する際に培養された細胞と共にインキュベートされた組織培養培地を意味し、より好ましくは、培養された細胞により分泌された、排出された、または放出された物質、あるいは組織培養培地が存在する場所で細胞を培養することに起因する、培地内で発生する別の組成上のおよび/または物理的な変化をさらに含む組織培養培地を指す。
【0037】
本明細書で使用されるとき、語句「細胞培養処理操作」は、得られた画像および/またはデータからの、細胞の培養状態の判定に基づき、細胞培養に対して行われる操作を含むが、それに限定されない。そのような操作の例は、i)培養装置内の培地および栄養分の分量、濃度、および組成のレベルを制御すること、ii)培養装置から細胞を試料採取すること、取り上げること、および回復させること、ならびにiii)追加培養装置に細胞を分割すること、および培養基で培養することを含む。
【0038】
本明細書で使用されるとき、用語「取り上げること」は、細胞を培養装置表面から分離し、細胞を収集する処理を指す。取り上げる一般的方法が、酵素を使用して、付着タンパク質を消化し、それにより、細胞が成長し付着している表面から、細胞を取り除くことを含む。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「分割すること」は、培養装置から収集された細胞を取り、細胞を希釈し、希釈された細胞を異なるフラスコまたは容器の中に移す処理である。細胞を散布する密度は、典型的には、培養密度5%〜50%となり、たいていは、初期培養密度は10倍により近い。
【0040】
本明細書で使用されるとき、語句「データベース管理および制御システム」は、各ポッドのセンサのデータおよび画像を受け取り、処理し、解析し、記憶して、細胞および細胞培養の検出されたパラメータが所望の基準の範囲内かどうかを判定し、検出されたパラメータの偏差または異常を検出し、検出されたパラメータの解析、あるいは細胞および細胞培養の評価に必要なデータの任意の別の解析および処理に応答して措置モードを決定するためのコンピュータソフトウェアベースの管理システムを意味するが、それに限定されない。処理されたデータに応答して、適切な制御命令が物理的ハードコピーにより、たとえばCD、DVD、磁気テープ、または紙さえにもより、あるいは無線、有線、またはコンピュータベースの通信手段、ネットワーク、または別のシステム手段により、ポッド、インキュベータ、培養容器、権限を与えられたパーソナルデータ伝送装置、コンピュータ、および/またはWebベースのシステムに戻して送信されてもよい。データベース管理および制御システムは、無線伝送、および/または有線接続により運ばれる伝送を介して通信を送信および/または受信することができる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、語句「データ伝送装置」は、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ページャ、無線および/または有線の機能を有するコンピュータ、あるいは情報または命令を無線および/または有線でデータ送信または受信することができる任意の別の装置を意味するが、それらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用されるとき、語句「データおよび画像取得システム」は、フィルムベースの方法を使用する技術、デジタル的方法を使用する技術、ならびにデータおよび画像取得のために任意の別の方法を使用する技術を意味するが、それらに限定されない。細胞培養データおよび画像取得システムは、データおよび画像を1組の電子信号として記録する方法をさらに含む。そのような画像は、たとえばコンピュータシステム内に存在しうる。しかしながら、細胞培養データおよび細胞画像は、同様に、フィルム上で、ビデオとして磁気テープ上で、またはデジタルフォーマットで取得されうる。アナログ技術を使用して取得された細胞培養データおよび細胞画像は、デジタル信号に変換され、デジタルフォーマットで取得されうる。細胞画像は、取得されると、写真処理ソフトウェアを使用してさらに処理されうる。一度取得された画像が、紙、CD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、別のディスク記憶システム、またはインターネット上でのWebベースを含むさまざまな媒体を使用して、権限を与えられたエンドユーザに表示されうる。用語「記録する」は、本明細書で使用されるとき、恒久的であれ一時的であれ、任意のデータおよび画像の取得を指す。データおよび画像取得システムは、フィルムベースの方法、ビデオテープ、デジタル的方法、または動画を取得するための別のいかなる方法を使用するにせよ、動画を記録する技術をさらに含む。細胞培養データおよび画像取得システムは、動画から静止画の習得を可能にする技術をさらに含む。画像は、この用語が本明細書で使用されるとき、2つ以上の画像を含むことができる。ビデオは、データ伝送装置上で、またはWebベースのネットワーク上で、リアルタイムで見ることができるように、ストリーミングビデオフォーマットでデータベース管理および制御システム装置に即座に送信されうる。
【0043】
本明細書で使用されるとき、用語「インキュベータ」は、研究所、製造設備、またはインキュベーションによる細胞培養が望まれる任意の臨床または別の環境に配置されたインキュベーティング装置を意味するが、それに限定されない。本明細書の教示を考慮して、任意の環境が特定の最終用途適用に応じて当業者により使用され、選択されてよいが、インキュベータは、約5%のCOから約20%のOまで制御された環境、および制御された温度を維持することが好ましい。インキュベータ環境は、別個に制御されても、自動的に、あるいはポッド、研究者、および/または権限を与えられた別のエンドユーザにより与えられるコマンドに応答して外部PCまたは別のコントローラ装置により制御されてもよい。
【0044】
本明細書で使用されるとき、語句「遠隔に配置される」は、物理的に存在しないこと、たとえば対象の生物試料、および/あるいは培養装置または担体の場所に配置されないことを意味する。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「センサ」は、情報、たとえば生理学的に関係のある情報(たとえば温度、湿度、圧力、pH、生化学物質、生体分子、COなどの気体および別の化学的パラメータ、酵素ベースのパラメータ、放射、磁気および別の物理的パラメータ)、あるいは分光器などの別の情報またはパラメータを測定する機械的、電気的、または光学的な検出装置を意味するが、それらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用されるとき、用語「無線」は、情報を送信および受信するための、無線周波数、音響、または光学的な手段を意味するが、それらに限定されない。無線接続はまた、Bluetooth(登録商標)型無線接続などの、数フィートのオーダーでの短距離無線接続、またはWIFI(TM)接続などの、約100フィート(約30.48メートル)のオーダーでの中距離無線接続を含む。
【0047】
本発明は、細胞培養データおよび細胞画像を取得し、それを画像およびデータの受信および管理制御ユニット、ならびに画像およびデータの受信および表示制御ユニットに送信するためのイメージングセンサポッドを有する細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムを包含する。ポッド、管理制御ユニット、および表示制御ユニットはそれぞれ、好ましくは、無線送信/受信通信機能を有する。本明細書で教示される別の実施形態では、細胞および細胞培養は、インキュベータ内に配置される基質上および/または培養容器内に配置される。ポッドは、好ましくは、同様に、基質、培養容器、およびインキュベータへの無線送信/受信通信機能を有する。イメージングセンサポッドは、好ましくは、CCDまたはCMOSのカメラ、CCDまたはCMOSのビデオカメラ、あるいはそれらの組合せなどのイメージング技術、およびpHセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、グルタミンセンサ、乳酸センサ、アンモニアセンサ、窒素センサ、分光センサ、およびそれらの組合せを含むが、それらに限定されない1つまたは複数のセンサを含む。表示制御ユニットは、モニタ、LCDスクリーン、またはユーザが一部のデータを入力することができるインタフェースを含むことができる同種のものとすることができる。ポッドは、当技術分野で公知のさまざまな電力配送および電源により、たとえば電池電力、USB(Universal Serial Bus)電力、ライン電力、または配線による電力、およびそれらの組合せにより電力を供給されうる。あるいは、ポッドデータ送信および管理制御ユニットだけでなく画像およびデータの受信および表示制御ユニットも、それぞれインキュベータ、または任意の別の環境を制御されたチャンバ管理制御ユニットと一体化することができる。
【0048】
本明細書で教示される細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムにより、人が、細胞および細胞培養が物理的に存在する場所にいる必要なしに、培養容器内の担体上および/または溶液内に配置され、インキュベータ内に存在する細胞培養の状態、ならびに細胞の健康状態および生存率を視覚的に判定することができるようになる。
【0049】
図1〜図8は、代表的な細胞培養データおよび細胞のイメージングおよびモニタリングシステム30の概略表現を示す。本発明は、上部または最上部の担体表面45を有する1つまたは複数のイメージングおよびデータセンサポッド20を有する、遠隔でアクセス可能な細胞培養データおよび細胞画像の取得およびモニタリングシステム30、ならびに自動的でも、権限を与えられたエンドユーザにより与えられる命令に従っても、ポッド20を動作させるコンピュータ(PC)などのデータベース管理制御ニット58を教示する。
【0050】
ポッド20は、環境を制御されたチャンバ内で、たとえば生物試料培養インキュベータ38内部で動作するように構成される。したがって、ポッド20は、好ましくは、自分の画像サンプリングおよび別のセンサ機能を維持しながら、自分のサイズを最小にするコンパクト設計を有する。このコンパクト設計は、一定範囲の倍率を有する自己調節式のオペレータ制御光検出機構を有する光検出機構24などのさまざまな機構により促進されうる。
【0051】
イメージングおよびデータセンサポッド20は、生物試料が培養容器40内、またはポッド20の最上部または上部の担体表面45上に配置されることが好ましい担体43上にあるときなどに、担体上または培養容器40内部の生物試料42から情報を取得する。ポッド20も、生物試料42を含む培養容器40または担体も、インキュベータ38などの中に置かれる。培養装置または容器40が配置され画像を撮られる、ポッド20の上部または最上部の担体表面45は、澄んだ透明なガラスまたはプラスチックであることが好ましい。
【0052】
あるいは、細胞培養装置または容器40は、光検出機構24またはカメラが、ポッド20のガラスまたはプラスチックの上部担体表面45がゆがむ可能性がまったくなく、培養装置または容器40の中の画像を直接撮っているように、オープンフレームのポッド(図示せず)により支えられうる。オープンフレームはまた、細胞集団または別の生物学的試料の進展をモニタするために、時間をかけて同じ細胞培養領域の画像が得られるように、細胞培養装置を正確に配置するための整列機構を含むことができる。
【0053】
図7に提供されそこに描かれる本発明の実施形態では、正確なイメージングおよびデータ収集のために所定のx−y軸位置にポッド20の最上部担体表面45上に容器が配置されるように、ポッド20の最上部または上部の表面担体45は、調節できるように分割され、生物試料42を含む培養容器40を収容するように適切なサイズに作られた、浮き出した端部または隆起部を含む。
【0054】
図6〜図8に描かれるように、培養容器40はフラスコ、たとえば最上部または上側51を有する、米国特許出願公開第2010/0129900号明細書で教示されるフラスコである。
【0055】
ある種の実施形態では、データベース管理制御ユニット50は、ネットワーク(ローカルエリアネットワーク(LAN)または広域ネットワーク(WAN)など)に対して無線データ信号で通信状態にある、および/または任意選択で有線接続ケーブル39などで通信状態にあることが好ましく、その結果、権限を与えられたユーザが、グラフィカルインタフェースなどのインタフェースを通して、および/または無線62接続されたデータ伝送装置60から、遠隔でデータベース管理制御ユニット58と対話することができる。表示ユニットは、ユーザがデータを入力し、取得された画像およびデータなどを操作することができるインタフェースを含むモニタ50でもよい。
【0056】
本明細書で教示される細胞イメージングシステム30は、細胞培養をモニタする際に研究者が物理的に存在する必要性を軽減する一方で、インキュベータ内に含まれる細胞および細胞培養のインサイチュでのリアルタイムの観察および解析を遠隔でアクセス可能にすることによるなど、現在の細胞培養観察技術に対していくつかの有利な点および改善を提供する。
【0057】
培養容器40内で成長する細胞42、たとえば図1〜図8に描かれる細胞は、細胞培養および細胞成長の状態、健康状態、および生存率を決定するため、および細胞がほぼ集密的になり、それにより、研究者が、アッセイ、スクリーンなどで使用するために細胞を培養容器から取り外すとき、あるいは新しい細胞培養システムを再び散布して細胞系を拡大し続けるためなど、どのステップがとられるべきかを判断するために、研究者により日常的にアクセスされる必要がある。100%密集する前に細胞を回復することが重要である。
【0058】
本明細書で教示される細胞画像取得システム30により、研究者は、イメージングセンサを通して、たとえばズームレンズ拡大機能を有するカメラ24、および/または培養容器40を移動させることなく、細胞42の成長および培養状態を調査するために、顕微鏡を通して、無人の細胞培養を遠隔で見ることができるようになる。細胞型の必要性だけでなく研究者の作業スケジュールも満たす必要がある適切な量の培地および添加物で培養装置を満たすことができることが望ましい。本発明で教示される細胞イメージングシステム30の有利な点が、細胞イメージングシステム30は、培養容器40または担体を顕微鏡まで運ぶ必要なしに、細胞42の画像を遠隔で見ることができるようにすることである。
【0059】
ポッド20は、培養容器40内に収容された生物試料42を観察するための1つまたは複数のカメラ24を含み、ポッド20は、好ましくは、試料42の下に配置され、その結果、カメラ24は試料42の画像54を撮る。イメージングセンサポッド20はまた、図1に描かれるように、生物試料42の上に配置されてもよい。
【0060】
取得された細胞画像54がカラーの静止画または動画であり、好ましくは、データベース管理制御ユニット58に無線35で送信される、または有線接続39により送信されるように、カメラ24は機能する。カメラ24は、複数のカラー画像を、好ましくは培養容器内部の少なくとも3つの位置から撮られた3つ以上の、カラーの静止画または動画を取得することができるCCD(電荷結合デバイス)カメラなどのCCD画像センサ、またはCMOS(相補型金属酸化膜半導体)カメラなどのCMOS画像センサであることが好ましい。さらに、カメラ24は、容器または担体全体の画像を取得することができる。
【0061】
CCDまたはCMOSのカメラは、約10倍から約250倍までの倍率により複数の異なる位置からフラスコ内の細胞成長の複数の静止画または動画をさらに取得し、好ましい倍率範囲は約10倍から約100倍だけでなく、約40倍から約100倍である。
【0062】
データ伝送装置58は、好ましくは、i)カメラ24により取得された細胞培養データおよび細胞画像を解析するための画像処理ソフトウェア、ii)CCDまたはCMOSのカメラにより取得された細胞の画像から、細胞の培養状態(細胞の増殖性能および増殖能力)を判定し、取得された細胞培養データおよび細胞画像を解析した結果としてデータ伝送装置58により行われた判定に基づき、適切な培養処理操作が行われるように命令を与えるための動作制御ソフトウェアを含む。
【0063】
イメージングセンサポッド20はまた、好ましくは、取得され記録された細胞画像が、権限を与えられたユーザにより決定される、またはデータ伝送装置58により自動的に決定されるように、前面、背面、または両方から適切に照らされるように、フラスコ内部または担体上に光を投射する装置を含む。
【0064】
カメラ24は、好ましくは、約10倍から約250倍までの画像拡大機能を有し、好ましい最小倍率10倍〜約100倍を有するレンズ25、および任意選択の遠隔ユーザ制御を備える自動焦点機能を有する。イメージングセンサポッド20は、好ましくは、複数の固定カメラ24、および/または駆動機構位置決めシステム上に配置された1つの可動カメラを含む。イメージングセンサポッド20はまた、顕微鏡と組み合わせて使用されるカメラを含むことができる(図示せず)。
【0065】
図7および図8に描かれているように、本明細書で提供される本発明の一実施形態が、単なる例として、X軸およびY軸レール、ならびにポッドの2つの幅広の側端(66a、68a)の下に収容される駆動モータを有する駆動機構位置決めシステムを促進するために、対向する側端(66b、68b)よりも幅広の2つの側端(66a、68a)を有するポッド20を含む。
【0066】
細胞試料の観察は、細胞試料42を照らし、細胞培養データおよび細胞画像54の取得の助けとなるように、光をイメージングセンサポッド20上に配置された光源26から容器40の中に投射することを含む。細胞培養データおよび画像は、画像認識および解析ソフトウェアを使うなど、リアルタイムで解析されることが好ましい。たとえば、そのような情報は、培養容器40内部の1つまたは複数の処理条件を制御するために使用されうる。本明細書で提供されるような好ましい一実施形態では、カメラ24および照明源26は、一緒に移動する、またはポッド内部で一緒に移動することができる。
【0067】
図6は、本明細書で提供されるような本発明の別の実施形態を描いており、カメラの拡大レンズ25はLED26により囲まれ、好ましくは、LEDのアレイ23として配置される。図6に描かれているように、LEDアレイ23は、容器40内の細胞試料42を十分に照らすことができる光源を提供するために、レンズ25を囲む。LED26およびLEDアレイ23は、好ましくは、「アドレス可能」であり、電力、輝度、照度、彩度、色、および減光に関して調節可能である。本明細書で使用されるとき、用語「アドレス可能」は、LEDアレイ23により提供される光のパターンが調節されうる、またはアドレスされうることを意味する。たとえば、LEDアレイ23は、アレイの特定のLED26だけがオンであり、それにより、容器40内の細胞試料42の右側または右端だけが照らされ、一方では、容器40内の細胞試料42の左側または左端が、陰影効果を提供するように、別の方法ではこの所望の陰影効果なしに可視化され得ない、容器40内の細胞試料42の端部詳細または表面特徴を強調するために暗く保たれるように、調節されうる。
【0068】
イメージングセンサポッド20は、標準的細胞培養インキュベータ30の内側に合うように設計された全自動化イメージングシステムであることが好ましい。この配置により、制御された環境から培養容器または担体を取り除くことなく細胞培養および細胞の24時間休みなしのイメージングを可能にし、ポッド20が連続して時間経過した画像を収集することができるようになる。さらに、ソフトウェアインタフェースの使用により、デジタルの静止画および/または動画、ならびに画像メトリックスを遠隔で見ることが可能になる。
【0069】
好ましくは、遠隔でアクセス可能なセンサポッド20は、ユーザがポッド20をプログラムして、ネットワークアクセス可能なグラフィカルユーザインタフェースを介して異なる空間位置および時点に静止画および/または動画を得るように設計され、その結果、カメラは各空間位置に自動的に焦点を合わせ、連続した画像を自動的に24時間休みなしに得る。静止画および/または動画が収集されると、カスタムの画像処理および認識ソフトウェアが、たとえば、細胞のサイズ、細胞のサイズ対容積、細胞の平均直径、表面領域粒子、細胞の流量、細胞の流れのパターン、細胞の集団分布、細胞の生存率、集塊物またはクランピングの存在、細胞の色変化、処理液の温度および粘度などを含むさまざまな応用ベースの画像メトリックスを計算し、グラフで表す。この情報は、処理操作パラメータの変更をリアルタイムで実現するための制御ツールとして使用されうる。
【0070】
遠隔でアクセス可能なセンサポッド20は、自動的に、またはユーザのガイダンスに応答して、ある範囲のパラメータの画像を撮るのに有用である。ポッドは、細胞培養データおよび細胞画像の自動収集で使用されることが可能であり、細胞成長および形態をリアルタイムにデジタル方式で取得し、アーカイブするための方法を提供する。
【0071】
好ましくは、細胞の静止画および/または動画を記録するカメラは、密閉封止された保護覆い内部に収容される。画像取得センサポッド20は、画像がカメラ24により記録される1つまたは複数のレンズまたは窓を含み、カメラにより記録される画像が前面を照らされる、背面を照らされる、または両方照らされるように、容器内部に光を照射するための手段を持っている。ポッド20は、記録された画像のカメラ24の情報をデータ伝送装置のコンピュータ58に、または画像認識ソフトウェアがロードされる類似のプロセッサに送信する。一実施形態では、画像は、データ伝送装置58により、たとえばJPEG(Joint Photographic Experts Group)規格フォーマットに圧縮される。画像用の別のファイルフォーマットも、たとえば例としてTIFF(Tagged Image File Format)、BMP(Windows(登録商標) Bitmap Image File)、DIB(Device Independent Bitmap)ファイルフォーマット、GIF(Graphics Interchange Format)、PNG(Portable Network Graphics)画像フォーマット、または当技術分野で公知の別のデジタル画像ファイルおよびフォーマットも使用されうる。
【0072】
細胞培養および細胞画像取得センサポッド20は、好ましくは、細胞培養装置内の細胞培養および細胞の画像を撮るためのCCDまたはCMOSのカメラを含む。CCDまたはCMOSのカメラ機構はまた、カメラが顕微鏡機構を通して細胞の画像を撮るように、顕微鏡機構に接続されうる。CCDまたはCMOSのカメラ機構は、コンピュータに接続される。
【0073】
一実施形態では、本発明は、研究者が、データ転送処理量を使用してCCDまたはCMOSのイメージング技術をリアルタイム(約1Gbps)で、遠隔でアクセスし制御することを可能にすることを対象とする。遠隔制御のCCDまたはCMOSのイメージング技術は、研究者がソフトウェアをサポートする任意のWebブラウザを使用してソフトウェアにアクセスすることができるように、ローカルサーバに接続されうる。権限を与えられた任意のインターネットユーザが、CCDまたはCMOSのイメージング技術を制御することができる。図1に描かれるように、遠隔ユーザが、CCDまたはCMOSのイメージング技術のX−Y軸の動き、および光放出を制御し、Z軸での焦点およびまたは倍率を制御し、これらの画像を処理することができる。
【0074】
さらに、顕微鏡ベースのライブビデオストリーミングシステム(細胞観察)が、細胞画像の表示、解析、および命令を可能にするように実現されうる。
【0075】
イメージング機構は、記録された画像の情報をコンピュータ、または画像認識ソフトウェアがロードされる類似のプロセッサに転送する。画像はまた、画像認識および解析ソフトウェアを使ってリアルタイムで解析されうる。たとえば、ソフトウェアは、平均直径、表面細胞生存率、色変化、温度、粘度などを測定する。そのような情報は、1つまたは複数の封止された容器内の処理条件を遠隔で制御するために使用されうる。画像は、画像取得装置から共有記憶装置の位置までダウンロードされる。本明細書では、「画像」は静止画または動画を指す。
【0076】
さらに、イメージング機構は、カメラにより記録された画像が、前面を照らされる、背面を照らされる、または両方照らされるように、容器内部に光源を、たとえばLED(発光ダイオード)照射器を投射するための手段を持っている。イメージング機構は、記録された画像の情報をコンピュータ、または画像認識ソフトウェアがロードされるWebベースのネットワークに転送する。画像はまた、画像認識および解析ソフトウェアを使ってリアルタイムで解析されうる。たとえば、ソフトウェアは、平均直径、表面領域、流量、流れのパターン、集団分布、細胞の生存率、集塊物またはクランピング、色変化、温度、粘度などを測定する。そのような情報は、1つまたは複数の封止された容器内の処理条件を遠隔で制御するために使用されうる。
【0077】
培地および細胞培養のpHが可視的に判定され、イメージング機構により取得されうる1つの方法が、pH指標が存在する場所で培地および細胞培養の色を判定することによる。本発明の好ましい一実施形態では、培地は、培地のpHの指標として使用するためのフェノールレッド(フェノールスルホンフタレインまたはPSPとして知られる)の溶液を含む。フェノールレッドは、培地のpH値が減少する(すなわちより酸性になる)につれ、赤色から黄色に変化する。フェノールレッドは、pHの範囲約8.2から約6.8までにわたり赤色から黄色への漸進的変化を示す。培地のpHがpH8.2よりも高いとき、フェノールレッドは明るいピンク色に変わる。
【0078】
図5は、ポッド20の上部担体表面45上に配置された2つの細胞培養フラスコ40を概略的に描く。ポッドのイメージングシステム24が、まずフラスコ40の表面をスキャンして、許可コード情報72を識別する。各細胞培養容器40に対する許可コード情報72は、各細胞培養容器のサイズ、形状、容積などの寸法パラメータだけでなく、各容器特有の特定の追跡識別指標も含む。パターンツールを使用して、イメージングシステム24は、解析されるべき各フラスコ40内部の培養領域を画定するX座標およびY座標を定義する。
【0079】
図7はポッド20の上部担体表面45上に配置された2つの細胞培養フラスコを概略的に描く。図7はまた、ポッドの下に提供されるレベル出し脚部78の高さを調節することによるなど、ポッドをレベル出しするためのレベル出し制御ユニット76も描いている。図7はまた、「ホーム」、「電源オン」、および「パーク」のボタンまたは画像(94、95、96)などの、ポッドに組み入れられうるローカル制御の例も描いている。
【0080】
本明細書で教示されるような、インキュベータなどの内部に配置される無人の培養容器または担体から細胞画像を遠隔で取り出すための細胞画像取得およびモニタリングシステムは、とりわけ、改善された試料処理、リアルタイム遠隔アクセスによるインサイチュでの観察、試料モニタリングの遠隔制御、試料データへの遠隔アクセス、および/または非侵襲検査を提供する。さらに、本明細書で教示される細胞画像取得およびモニタリングシステムは、制御された環境(インキュベータ)から試料を取り除く必要なしに、および/または人が介在する必要なしに、より長い期間(数時間から数日まで)にわたり複数の生物試料の顕微鏡画像を作成するための便利な手法を提供することができる。
【0081】
前述の開示は、独立した有用性を備える複数の別個の発明を包含することができる。これらの発明のそれぞれが、その好ましい形態で開示されたが、本明細書で開示され例示されたこれらの発明の特定の実施形態は、数多くの変形形態が可能なので、限定する意味で考慮されるべきではない。本発明の主題は、本明細書で開示されたさまざまな要素、特徴、機能、および/または特性のすべての新規かつ非自明な組合せおよび副組合せを含む。以下の特許請求の範囲は、新規かつ非自明と認められるある種の組合せおよび副組合せを特に示す。特徴、機能、要素、および/または特性の組合せおよび副組合せで具体化される本発明は、本出願または関連出願による優先権を主張する出願で請求されてもよい。そのような特許請求の範囲はまた、異なる発明を対象としても、同じ発明を対象としても、および元の特許請求の範囲に対して範囲がより広くても、より狭くても、同じでも、異なっても、本開示の本発明の主題の中に含まれるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステムであって、
a)細胞データおよび細胞画像を取得し、送信するように適合されたイメージングセンサポッドと、
b)送信された細胞データおよび細胞画像を受信するように適合された管理制御ユニットと、
c)細胞データおよび細胞画像を見るための表示制御ユニットと
を含む細胞培養データおよび細胞画像の取得および遠隔モニタリングシステム。
【請求項2】
細胞が、培養容器内部に配置される担体上または溶液内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ポッドおよび培養容器がインキュベーションユニット内に位置する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
ポッドが、細胞データおよび細胞画像を無線で送信するようにさらに適合され、管理制御ユニットが、送信されたデータおよび画像を無線で受信するようにさらに適合された、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
管理制御ユニットが、送信された細胞データおよび細胞画像を記憶し、解析するようにさらに適合された、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ポッドが、細胞画像を取得するためのカメラを含み、ポッドは、カメラが担体上または培養容器内の2つ以上の別個の領域から細胞画像を取得するように、カメラを移動させるように適合された、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
担体上または培養容器内の別個の領域からカラー静止画、カラー動画、およびそれらの組合せを取得するように適合されたカメラをそれぞれ有する2つ以上のポッドを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
ポッドが、pHセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、グルタミンセンサ、乳酸センサ、アンモニアセンサ、窒素センサ、分光センサ、およびそれらの組合せからなるグループからのセンサをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
ポッドが光源をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
光源がLEDアレイである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
光源が、LEDのアレイであって、アレイ内の各LEDの色、照度、輝度、彩度、および減光が選択的に制御される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
ポッドが、担体上または培養容器内の別個の領域から、倍率約10倍から約250倍までを有するカラー画像を取得するように適合された、請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
ポッドが、担体上または培養容器内の別個の領域から、倍率約40倍から約100倍までを有するカラー画像を取得するように適合された、請求項2に記載のシステム。
【請求項14】
カメラが、CCDカメラ、CMOSカメラ、CCDビデオカメラ、CMOSビデオカメラ、およびそれらの組合せからなるグループから選択され、カメラは、自動焦点機能、ユーザ制御の電気的焦点、ユーザ制御のマニュアル機能、およびそれらの組合せを含むグループからの焦点機能に適合された、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
ポッドが、インキュベータ、培養容器、担体表面、追加ポッド、追加制御ユニット、およびそれらの組合せから選択される装置にポッドを取り付けるための結合機構をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項16】
インキュベータが、ポッドを収容するための結合機構をさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項17】
制御ユニットが、無線機能、有線機能、およびそれらの組合せを有するデータ転送装置である、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
管理制御ユニットが、細胞培養処理操作を、取得された画像からの細胞培養状態の判定に基づき行わせるように適合された、請求項3に記載のシステム。
【請求項19】
細胞培養処理操作が、
i)培養装置内の培地および栄養分のレベルを制御すること、
ii)培養装置から細胞を試料採取すること、取り上げること、および回復させること、
iii)細胞を追加培養装置の中に分割すること、および培養すること
のうちの1つまたは複数を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
細胞培養処理操作が、pH、乳酸、グルコース、酸素、窒素、グルタミン、二酸化炭素、アンモニア、温度、圧力、湿度、およびそれらの組合せから選択される細胞培養処理条件のレベルを制御することを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
管理制御ユニットが、カメラにより取得された画像から細胞の培養状態をリアルタイムで判定するように適合された、請求項5に記載のシステム。
【請求項22】
管理制御ユニットが、pHセンサ、温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、グルコースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、グルタミンセンサ、乳酸センサ、アンモニアセンサ、窒素センサ、分光センサ、およびそれらの組合せからなるグループからのセンサにより取得されたデータから細胞の培養状態をリアルタイムで判定するように適合された、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−516999(P2013−516999A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550013(P2012−550013)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2011/000111
【国際公開番号】WO2011/090792
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(504115013)イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン (33)
【Fターム(参考)】