説明

細胞透過性ペプチドとして使用できるペプチド

本発明は、ヒトのラクトフェリンタンパク質の又はウシのラクトフェリンタンパク質の少なくとも8つの連続したアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有するペプチドであって、前記ペプチドが細胞透過性ペプチドとして作用するために適している、ペプチドに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞透過性ペプチド(cell-penetrating peptide)としての使用のために適したペプチド、前記ペプチドを含有する複合体及びその使用に関する。
【0002】
細胞透過性ペプチド(CPPs)、例えばアンテナペディア由来のペネトラチン(penetratin)(Derossi et al., , J. Biol. Chem., 269, 10444-10450, 1994)、及び、Tatペプチド(Vives et al., J. Biol. Chem., 272, 16010-16017, 1997)は、カーゴ分子(cargo molecule)、例えばペプチド、タンパク質及びオリゴヌクレオチド(Fischer et al., Bioconjug. Chem., 12, 825-841, 2001)の細胞中への輸送のために幅広く使用される道具である。適用範囲は、純粋な細胞生物学から生物医学的研究にまで及ぶ(Dietz and Baehr, MoI. Cell., Neurosci, 27, 85-131, 2004)。初期には、細胞による取り込みは、形質膜の直接的な浸透により生じると信じられていた(Prochiantz, Curr. Opin. Cell Biol., 12, 400-406, 2000)。過去数年間には、複数のCPPsのためにエンドサイトーシスが、複数のCPPsのための細胞取り込みに少なくとも顕著に寄与することの証拠が蓄積されてきた(参考のために、Fotin-Mleczek et al., Curr. Pharm. Design, 11, 3613-3628, 2005を参照のこと)。この最近の結果に基づけば、CPPとしてのペプチドの列挙は従って、特定の細胞輸入機構を示唆せず、むしろ、カーゴにコンジュゲートされた場合(共有結合又は非共有結合により)に、カーゴ分子の細胞取り込みを促進する、とのペプチドとしての機能を示す。
【0003】
これらのCPPsが、原則的にはペプチド、タンパク質及びオリゴヌクレオチドの、細胞中への輸送のために適していることが証明されてきたが、カーゴ分子(cargo molecule)としてのこのような分子の輸送を可能にする更なるCPPsを提供することがいまだに必要である。特に、(i)エンドリソソーム経路からのカーゴ分子の迅速な放出を可能にし、かつ、(ii)ヒトに適用した場合に免疫学的反応を回避するCPPsのための必要性が存在する。
【0004】
本発明の根底をなす課題は、第1の観点において、ヒトのラクトフェリンタンパク質の又はウシのラクトフェリンタンパク質の少なくとも8つの連続したアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有するペプチドであって、前記ペプチドが細胞透過性ペプチドとして作用するために適している、ペプチドにより解決される。
【0005】
この最初の観点の一実施態様において、ペプチドは、少なくとも4つのカチオン性アミノ酸を含有する。
【0006】
この第1の観点の一実施態様において、ヒトのラクトフェリンタンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を、そしてウシのラクトフェリンタンパク質が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する。
【0007】
この最初の観点の一実施態様において、ペプチドは、少なくとも2つのCys残基又はその類似体を含有する。
【0008】
この最初の観点の有利な一実施態様において、ペプチドは、2つのCys残基により作出されるジスルフィド結合又はシステイン類似体により形成される類似の結合を含有する。
【0009】
この第1の観点の一実施態様において、ペプチドは、約12〜20アミノ酸長さのαヘリックスコンフォーメーションを有する残基、及び、約8〜12アミノ酸長さのβ−シートコンフォーメーションを有する残基を含有する。
【0010】
この最初の観点の一実施態様において、前記ペプチドは約8〜約60アミノ酸残基を含有する。
【0011】
この最初の観点の有利な一実施態様において、前記ペプチドは約20〜約45アミノ酸残基を含有する。
【0012】
この最初の観点の一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜64に相当するアミノ酸配列を有する。
【0013】
この第1の観点の一実施態様において、前記ペプチドは、アミノ酸配列を有し、その際前記ペプチドのN末端は、配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜64に相当するアミノ酸である。
【0014】
この第1の観点の一実施態様において、前記ペプチドは、
【表1】

を含有する群から選択されている。
【0015】
本発明の有利な一実施態様において、細胞透過性ペプチドは、配列番号3、配列番号4、配列番号29又は配列番号30に記載のアミノ酸配列、又は前記配列と少なくとも40%。有利には少なくとも50%、特に有利には少なくとも75%、又は少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含有する。
【0016】
少なくとも40%の同一性を有する配列番号3、配列番号4、配列番号29又は配列番号30を含有するペプチドは、それぞれ配列番号3又は配列番号29の1〜13アミノ酸の、配列番号4又は配列番号30の1〜10アミノ酸の置換又は欠失により有利に特徴付けられる。その際、ホモログアミノ酸での1つ以上のアミノ酸の置換を有する配列が、ますます興味を持たれる。
【0017】
配列番号3、配列番号4、配列番号29又は配列番号30に記載のアミノ酸配列又は少なくとも40%の同一性を有する配列を含有するペプチドは、少なくとも8アミノ酸(配列番号4又は配列番号30に由来するペプチド)、それぞれ9アミノ酸(配列番号3又は配列番号29に由来するペプチド)を含有する。前記ペプチドは、好ましくは10〜45の間のアミノ酸及び好ましくは14〜25の間のアミノ酸を有する。
【0018】
配列番号3、配列番号4、配列番号29又は配列番号30に記載のアミノ酸配列を含有する有利なペプチドは、カチオン性チャージを所有し、特に配列番号3、配列番号4、配列番号29又は配列番号30中に存在する少なくとも4つのカチオン性アミノ酸のカチオン性チャージを含有する。前記ペプチドの更に有利な特徴部は、少なくとも2つのシステイン又はシステイン類似体の存在であり、これは、ジスルフィド架橋又は類似の架橋を形成する可能性がある。システイン又はその類似体の両者は、少なくとも6アミノ酸、有利には12〜43アミノ酸を包含する。
【0019】
この第1の観点の有利な一実施態様において、前記ペプチドは、配列番号2〜5に記載のいずれか1つのペプチドの誘導体であり、その際メチオニン残基が、バリン、イソロイシン、ノルバリン、ロイシン及びノルロイシンを含有する群から選択されたアミノ酸により置換されている。
【0020】
この第1の観点のより有利な実施態様において、前記ペプチドは、
【表2】

を含有する群から選択されたアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0021】
前記の第1の観点の一実施態様において、前記誘導体は、連結基、有利には、チオエーテルを含有する群から選択された連結基を有し、その際前記連結基は、これらのCys残基により形成されるジスルフィド結合を置換する。
【0022】
この第1の観点の一実施態様において、前記ペプチドは放射性ラベル化されていて、有利には放射性ラベル化されたアミノ酸を組み込んで有することにより放射性ラベル化されていて、その際より有利には、この放射性ラベル化されたアミノ酸が、トリチウムラベル化されたアミノ酸である。
【0023】
この第1の観点の一実施態様において、ペプチドは、検出のための方法を用いる検出に適した残基を更に含有し、その際このような残基が有利には、フルオロフォア、放射性トレーサー及びハプテンを含有する群から選択されていて、その際有利にはハプテンはビオチンである。
【0024】
本発明の根底をなす課題はまた、第2の観点において、第1の観点によるペプチドを含有する群から選択されるペプチド、ヒトのラクトフェリン及びウシのラクトフェリン、及び、カーゴ分子を含有する複合体によっても解決されている。
【0025】
第2の観点の一実施態様において、前記カーゴ分子は、前記ペプチドに共有結合により又は共有結合によらないで結合している。
【0026】
第2の観点の一実施態様において、前記カーゴ分子が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質及び小分子、及び、これらの任意の分子の混合物を含有する群から選択されている。
【0027】
この第2の観点の一実施態様において、前記カーゴ分子は、自体で又は部分で又は構造的に存在し、その際この構造は、ナノ粒子、マイクロ粒子、リポソーム及びミセルを含有する群から選択されている。
【0028】
この第2の観点の有利な一実施態様において、核酸分子は、DNA分子、RNA分子、PNA分子、siRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム、アプタマー、シュピーゲルマー及びデコイ分子を含有する群から選択された核酸分子である。
【0029】
この第2の観点の別の有利な一実施態様において、前記ペプチドは、ワクチン接種のためのペプチドを含有する群から選択されている。
【0030】
この第2の観点の更なる別の有利な一実施態様において、前記核酸は、核酸ベースのワクチンである。
【0031】
この第2の観点のまた更なる別の有利な一実施態様において、前記ナノ粒子及び/又はマイクロ粒子は、医薬的に活性のある化合物を含有するか又はこれからなる。
【0032】
本発明の根底をなす課題はまた、第3の観点において、第1の観点によるペプチドを含有する群から選択された少なくとも1つのペプチド、ヒトのラクトフェリン及びウシのラクトフェリン、及びカーゴ分子を含有する組成物により解決されている。
【0033】
本発明の根底をなす課題はまた、第4の観点において、第2の観点による複合体を含有する組成物により解決されている。
【0034】
本発明の根底をなす課題はまた、第5の観点において、第1の観点によるペプチドをコードする核酸、有利には配列番号26又は配列番号27に記載の核酸配列を有する核酸により解決されている。
【0035】
本発明の根底をなす課題はまた、第6の観点において、第5の観点による核酸及びカーゴ分子を含有する組成物により解決されている。
【0036】
第6の観点の有利な一実施態様において、前記カーゴ分子は、核酸、より有利には、ワクチン接種に適したRNAである。
【0037】
第6の観点の有利な一実施態様において、前記カーゴ分子は、ペプチドをコードする核酸である。
【0038】
第6の観点の有利な一実施態様において、第5の観点による核酸は、ペプチドをコードする核酸に、使用可能に連結されている。
【0039】
第6の観点のより有利な一実施態様において、第5の観点による核酸及びペプチドをコードする核酸は、インフレームに連結されている。
【0040】
第6の観点の一実施態様において、前記ペプチドは、医薬的に活性のある剤である。
【0041】
本発明の根底をなす課題はまた、第7の観点において、細胞透過性ペプチドとしての、第1の観点によるペプチドの使用により解決されている。
【0042】
本発明の根底をなす課題はまた、第8の観点において、細胞透過性ペプチドとしての、ヒトのラクトフェリン又はその機能的誘導体、又は、ウシのラクトフェリン又はその機能的誘導体の使用により解決されている。
【0043】
第8の観点の一実施態様において、ヒトのラクトフェリンが、配列番号1記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜711を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体、かつ/又はウシのラクトフェリンが、配列番号2記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜708を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体を有する。
【0044】
本発明の根底をなす課題はまた、第9の観点において、トランスフェクション剤としての、第1の観点によるペプチドの使用により解決されている。
【0045】
本発明の根底をなす課題はまた、第10の観点において、トランスフェクション剤としての、ヒトのラクトフェリン又はその機能的誘導体、又は、ウシのラクトフェリン又はその機能的な誘導体の使用により解決されている。
【0046】
第10の観点の一実施態様において、ヒトのラクトフェリンが、配列番号1記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜711を含有するアミノ酸配列、かつ/又は、ウシのラクトフェリンが、配列番号2記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜708を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体を有する。
【0047】
本発明の根底をなす課題はまた、第11の観点において、医薬品の製造のための、第3、第4、及び第6の観点による組成物の使用により解決されている。
【0048】
第11の観点の一実施態様において、前記カーゴ分子は、医薬的に活性のある剤である。
【0049】
本発明の根底をなす課題はまた、第12の観点において、診断薬の製造のための、第3、第4、及び第6の観点による組成物の使用により解決されている。
【0050】
第12の観点の一実施態様において、前記カーゴ分子は、診断マーカーである。
【0051】
本発明者らは意外にも、ヒトの及びウシのラクトフェリン、より特異的にはそのペプチド(これらは、本明細書において、本発明のペプチドとも呼ばれる)が、細胞透過性ペプチド(CPP)として作用するために適していること、かつ従って、細胞の細胞質へカーゴ分子を輸送してよいことを見出した。CPPは有利には、細胞膜、より有利には哺乳類の細胞の細胞膜を貫通するのに適した任意のペプチド又はタンパク質である。しかしながら、有利には、CPPとの用語は、特定の細胞輸送機構を意味しないことが理解されるべきである。より特異的には、本発明者らは、ヒトのラクトフェリン由来の特定のペプチドが、エンドリソソーム区画から高い効率で放出され、次いで、高い効率の任意のカーゴ分子の放出が一緒に進行することに気づいた。このカーゴ分子が、細胞質中で使用可能であると、このカーゴ分子は、これと関連した任意の効果を発揮してよい。この範囲において、本発明によるポリペプチドは、研究また同様に治療及び診断適用の両方のために使用されることができる生物学的機構及び細胞の経路に影響を及ぼすための効率的な手段を提供する。本明細書中で使用される場合には、逆のことが示されていない限りは、本発明によるペプチドとの用語は、有利には、本明細書中で有利に定義されるとおり、ヒトの及びウシのラクトフェリンをも包含する。
【0052】
本発明によるペプチドは、原則的には、ヒト又はウシのラクトフェリン、又はその誘導体の断片である。この起源のために、本発明によるペプチドは、カーゴ分子を細胞質に輸送するために適していることの他に有益な免疫学的特性を示し、この点でそれぞれのペプチドは、本発明によるそれぞれのペプチドに曝されたヒト又はウシ宿主中で免疫反応を導かない。
【0053】
ヒトのラクトフェリン(hLF)は、77kDaの、692アミノ酸の鉄結合糖タンパク質であり、これは、ヒトの母乳中に含有されるタンパク質の量の15%を構成し、かつまた、血漿中で低濃度でも見出されることができる(Nemet and Simonovits, Haematologia (Budap. ) 18, 3-121985)。ウシホモログ(bLF)は688アミノ酸からなり、かつ、hLFとのアミノ酸同一性68%を共有する(Crichton, Adv. Protein Chem. 40, 281-363, 1990)。しかしながら、ウシの乳タンパク質の0.5〜1%のみがbLFである。両方のタンパク質について、抗細菌性(Orsi, Biometals 17, 189-196, 2004; Ward and Conneely, Biometals 17, 203-208, 2004)、抗真菌性、LPS結合(Vogel et al., Biochem. Cell Biol. 80, 49-63, 2002)及び抗ウィルス性の特性(Berkhout et al., Biometals 17, 291-294, 2004)が報告され、また同様にいくつかの酵素活性、例えばDNase、RNase、ATPase及びホスファターゼ活性が報告されている(Kanyshkova et al., Eur. J. Biochem. 270, 3353-3361, 2003)。ラクトフェリン(LF)タンパク質はまた、転写因子としても作用し(He and Furmanski, Nature 373, 721-724, 1995)、かつ、インターロイキンの分泌を促すことによる免疫調節にも影響を有する(Sorimachi et al., Biochem. MoI. Biol. Int. 43, 79-87, 1997; Vogel et al., 2002)。
【0054】
本発明によるペプチドは、有利には、ヒト又はウシのラクトフェリンのN末端領域の断片である。更に、個々で又は任意の組み合わせにおいて、本発明によるペプチドにより実現化されてよい更なる構造的特徴が、以下に開示される。
【0055】
有利には、このような断片及び従って、本発明によるペプチドは、少なくとも4つのカチオン性アミノ酸残基を含有する。より有利には、前記断片は、カチオン性であり、即ち、これらは、全体として正の電荷を、生理学的なpH値で有する。
【0056】
本発明によるペプチドは、二次構造、例えばαヘリックス及びβシートの組み合わせを共有してよい。特に、このようなヘリックス及びこのようなシートは、前記ペプチドの個々の残基を形成する。最も有利には、このペプチドは、ヘリックス−ターン−シート構造を含有する。このような残基の長さは、典型的には、αヘリックス及びβシートコンフォーメーションを有する残基に関してそれぞれ、12〜20アミノ酸、及び、8〜20アミノ酸の長さの範囲内にある。
【0057】
本発明によるペプチドの有利な実施態様に固有な更なる特徴は、少なくとも2つのCys残基の存在である。このようなCys残基は、幾つかの断続的なアミノ酸により、相互に隔てられている。有利には、このような断続的なアミノ酸の数は、8〜20アミノ酸、有利には14〜18、そして最も有利には16の範囲内にある。また更なる一実施態様において、この2つのCys残基は、本発明によるペプチドのN末端に、かつ、C末端に位置する。それぞれのCys残基が、個々に又は組み合わせて、前記ペプチドの末端に又はその近傍に存在し、即ち、前記ペプチドのN末端及びC末端を形成することは、本発明の範囲内である。又は、前記Cys末端の1つ又は両方は、前記ペプチドのそれぞれの末端を形成しないが、前記ペプチドは更に、N末端の場合にはそれぞれのCys残基の上流に、そしてC末端の場合にはそれぞれのCys残基の下流にさらなるアミノ酸残基を含有する。更なるより有利な一実施態様において、前記の2つのCys残基は、分子内ジスルフィド結合を形成し、その際このようなジスルフィド結合は有利には、本発明によるペプチドをCPPsとして適用又は使用する場合に存在する条件下で存在する。当業者には、このようなジスルフィド結合を、このそれぞれのペプチドの合成の際に又は合成の間に作成する方法が公知である。別の一実施態様において、この2つのCys残基は、分子内ジスルフィド結合を形成する。
【0058】
また更なる一実施態様において、前記ジスルフィド結合は、存在する場合には、構造的に及び機能的に前記ジスルフィド結合を置換する残基により置換されていて、しかしながら、これは、還元による分解を受けない。このような残基は、メチレン基(JACS ,1985, 107, 2986-2987, Bioorg. Med. Chem Letter 1999, 9, 1767-1772, J.Med. Chem, 2002, 45, 1767-1777)、チオエーテル架橋(Yu et al. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 6633-6636)、カルボニル架橋(Pawlak et al. J. Pept. Sci. 2001, 7, 128-140)、及び、より長鎖の脂肪族鎖(Tetrahedron Lett. 2001, 42,5804-5804)により例示されているが、これらに限定されず、その際これらの残基の各々は、ジスルフィド結合を置換する。2つのアミノ酸残基を連結するために使用した特定のプロトコル及び残基に依存して、他の構造ブロック、例えばホモセリンによるシステイン残基の置換が必要とされるかもしれず(Yu et al. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 6633-6636)、これは当業者により認識されているとおりである。有利には、このより長鎖の脂肪族鎖の長さは、約2〜約10C原子であり、その際、この範囲は、この間の任意の整数の長さを包含する。
【0059】
本発明によるペプチドの長さは、有利には約8アミノ酸残基から約60アミノ酸残基の範囲に及ぶ。より有利には、この長さは、15〜45アミノ酸残基、より有利には18〜22アミノ酸残基の範囲に及ぶ。しかしながら、当業者には、このペプチドの長さは、前記長さに必ずしも限定されず、かつ、この誘導体が、当業者により、この中に提供された技術的な情報を用いて作成できることが認識される。CPPsとして作用するか又はCPPsとして作用することができるペプチドをまだ提供する、この点での任意の改変は本発明の範囲内である。
【0060】
更なる有利な一実施態様において、本発明によるペプチドは、ヒトの又はウシのラクトフェリンの断片である。有利には、ヒトのラクトフェリンは、配列番号1に記載のアミノ酸を有し、ウシのラクトフェリンは配列番号2に記載のアミノ酸を有する。より有利には、本発明によるペプチドは、そのアミノ酸配列において、配列番号1の配列又は配列番号2の配列のアミノ酸位置20〜64に含有されるか又はこれにより定義されるアミノ酸の配列に相当する。しかしながら、本発明によるペプチドの一部のみが、ヒト又はウシのラクトフェリンのアミノ酸配列の上記で定義した範囲内に配置されていることもまた、本発明の範囲内である。
【0061】
より有利な一実施態様において、本発明によるペプチドは、前段落で規定されたとおりヒトの又はウシのラクトフェリン由来であり、かつ、1つ又は複数の、有利には全ての、この中で開示される更なる構造的特徴を共有する。
【0062】
更なる一実施態様において、本発明によるペプチドは、この中で説明される、特に前段落中で開示される、本発明による任意のペプチドの誘導体である。当業者は、前記ペプチドのアミノ酸配列が、前記ペプチドが、CPPとして機能的であるという特性を失うこと無しに変更されてよいことを認識するものである。有利なこのような変更は、アミノ酸配列に対して為される。より有利には、このような変更は、独特なカテゴリーのアミノ酸の、同じカテゴリーの別のアミノ酸による置換を含む。このようなカテゴリーは、有利には、中性アミノ酸、疎水性アミノ酸(特に、脂肪族のアミノ酸を含む)、カチオン性アミノ酸、アニオン性アミノ酸、チオールを含有するアミノ酸、芳香族アミノ酸及び複素環式アミノ酸である。疎水性アミノ酸(脂肪族のアミノ酸を含む)は、有利には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択され、芳香族アミノ酸は有利には、フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択され、イオン性アミノ酸は、有利には、カチオン性アミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン及びアニオン性アミノ酸、例えばアスパルタート及びグルタマートの群から、中性アミノ酸は有利には、セリン、トリオニン、アスパラギン、グルタミン及びメチオニンの群から選択され、チオールを含有するアミノ酸は有利には、システイン及びメチオニン、そして複素環式アミノ酸は有利にはプロリン及びヒスチジンである。特に、46位にあるメチオニン残基は、脂肪族残基、例えば、バリン、ノルバリン、ロイシン又はノルバリンにより交換されてよく、しかしこれらに限定されない。ペプチドは、有機合成のプロトコルにより得られてよいので、アミノ酸置換は、これらのタンパク質性アミノ酸に限定されない。非タンパク質性アミノ酸及びβ−アミノ酸を含むがこれらに限定されない、適した化学的手法により組み込まれてよい任意の構造ブロックがペプチド中に含有されてよい。
【0063】
本発明による特に有利なペプチドは、配列番号3及び配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するペプチド及びこのそれぞれの誘導体である。
【0064】
本発明によるペプチドが、ヒト又はウシのラクトフェリンである場合には、このようなペプチドが、有利な一実施態様において、完全長のヒトの又はウシのラクトフェリンタンパク質の断片も含有することは本発明の範囲内である。このような断片は、有利には機能的に活性のある断片である。この中で使用される場合には、ヒトの又はウシのラクトフェリンの機能的に活性のある断片は、配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列であるか、又はこれらの一部を含有し、但し、このような断片は、CPP活性、有利にはこの中で定義したとおりのCPP活性を有するという条件付きである。有利には、このようなペプチドの、CPPとしての活性又はCPP活性は、このそれぞれのペプチドの、フルオロクロム又はハプテンへのコンジュゲートにより決定されてよく、これらはこの場合には、レポーター基及びカーゴ分子の両者として機能し、かつ、当業者に公知の方法による細胞取り込みの検出及び定量化を可能にする。このような方法は、(i)レポーター基として機能するフルオロフォアのためのフローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡、又は(ii)細胞の固定及び透過化、その後のレポーター基として機能するハプテンのための検出に適した剤を用いたインキュベーションを含むが、これらに限定されない。又は、CPPは、放射線によりラベル化されていてよく、例えば、放射線によりラベル化されたアミノ酸の取り込みによりラベル化されていてよく、かつ細胞取り込みがX線撮影により決定される。後者の方法は、ペプチド単独に関する取り込み及び分布の検出を、カーゴ無しに可能にする。取り込み及び分布はまた、組織及び全体的な生物に関して決定及び定量化されてもよい程度に前記方法は可能にすることが理解されたい。又は、この取り込みは、CPPにコンジュゲートされたカーゴ分子の生物学的な活性を用いて直接的でなく決定されてよく、その際前記カーゴ分子は、その生物学的活性を、この分子が細胞に入り、かつ、特定の副次的な細胞配置、例えば細胞質又は核に達した場合に発揮する。
【0065】
更なる一実施態様において、本発明によるペプチドは、更に、検出に適した残基を含有する。より特異的には、このような残基は、ペプチドの検出を可能にする。この残基は、このような目的に適した任意の基であってよい。それぞれの残基は、この分野の当業者に公知であり、しかしながら、フルオロフォア、例えばカルボキシフルオレセイン、又はビオチンを含むがこれらに限定されない。有利には、この検出は、蛍光により生じる。又は、この検出は、放射線により生じてよく、例えば当業者に公知のプロトコルによる125ヨウ素の取り込み後に生じてよい。検出は、個々の細胞、組織、器官又は動物のレベルで生じてよい。有利には、動物は哺乳類であり、より有利には、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、ウシ、ウマ、及びヒトを含有する群から選択される。
【0066】
本発明の更なる観点において、本発明によるペプチドは、カーゴ分子と共に複合体を形成する。このようなカーゴ分子は、この中で定義される任意のカーゴ分子であってよい。この複合体は、本発明によるペプチド少なくとも1つ及びカーゴ分子少なくとも1つを含有する共役又は非共役的な複合体である。前記複合体は、1つより多い本発明によるペプチドを含有し、即ち、複数のこのようなペプチドを含有し、その際複数のペプチドは、複数の同じか又は異なるペプチドを含有してよいことも本発明の範囲内である。また、本発明による複合体は、1つより多いカーゴ分子を含有してもよく、その際複数のカーゴ分子は、複数の同じか又は異なるカーゴ分子を含有してよい。
【0067】
一実施態様において、本発明によるペプチドとカーゴ分子との複合体は、共有結合により形成される。このような共有結合は有利には、前記ペプチドと、前記カーゴの適した反応性の基との間で、より有利には、本発明によるペプチドとカーゴ分子の末端の間で形成される。化学的性質又はカーゴ分子に依存して、このような共有結合を形成する残基、基、又はラジカルは変動し、かつ、これはこのような結合を作成するための当業者の技術の範囲内である。一実施態様において、共有結合は、本発明によるペプチドのC末端のアミノ酸のカルボキシ基と、カーゴ分子を構成するペプチドのN末端のアミノ酸のα−アミノ基との間で形成されるアミド結合であってよい。又は、前記複合体は、非共有結合に基づいて形成されることができる。このような非共有結合は、イオン結合、水素結合又は疎水性相互作用又はこれらの結合の組み合わせであることができる。一実施態様において、このような非共有結合は、リシン残基の広がりにより形成されてよく、これは、本発明によるペプチド及びオリゴヌクレオチドのホスファート骨格に共有結合により取り付けられている。有利には、リシンの広がりは、約5〜15リシン残基からなる。
【0068】
カーゴ分子は、原則的に、サイズ、化学的性質及び/又は機能に関して限定されない。これに一致して、前記カーゴ分子は、核酸、ペプチド、分子、脂質、炭化水素、ナノ−及びマイクロ粒子及びこれらの組み合わせを含有する群から選択されてよい。有利な一実施態様において。前記カーゴ分子は、細胞生物学又は治療適用における適用により設定される結合の範囲内にある。
【0069】
一実施態様において、核酸分子は、共有により連結された、少なくとも2個のヌクレオチドからなる任意のポリマーである。一実施態様において、核酸は、DNA分子又はRNA分子又はこれらの混合物であることができる。核酸が、L−ヌクレオチド、D−ヌクレオチド又はこれらの混合物からなることも本発明の範囲内である。更なる一実施態様において、個々のヌクレオチドの塩基残基、糖残基及び/又はホスファート残基は、個々に、かつ、独立して、核酸又はこのそれぞれの類似体を形成するヌクレオチドのそれぞれ全てのものに関して改変されていることができる。特に有利な改変された糖残基は、メチル、メトキシ、エチル又はエトキシ基を、糖残基の2′原子に有する残基である。特に有利な改変されたホスファート残基は、ホスホチオアートである。別の有利な実施態様において、ペプチド核酸が使用される。
【0070】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は、アミノ酸であり、これはL−又はD−アミノ酸の群から派生する。このアミノ酸は、天然に生じるか又は天然には生じない、任意のアミノ酸であってよい。
【0071】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は、共有結合した、有利にはペプチド結合により共有結合した、少なくとも2つのアミノ酸からなるペプチドである。一実施態様において、ペプチドは、L−アミノ酸、D−アミノ酸又はこれらの混合物からなる。アミノ酸は、天然に生じるか又は天然には生じない、任意のアミノ酸であってよい。有利な一実施態様において、ペプチド、との用語はこの分野で一般的に理解されるペプチド及びタンパク質も包含する。ペプチド又はタンパク質は、当業者に公知のプロトコルにより、天然の供給源から精製されるか、有機合成により得られるか、又は合成のアミノ酸又はペプチドの、天然の供給源から得られるペプチド又はタンパク質へのコンジュゲートにより得られ、かつ、天然の化学的なライゲーションが例として挙げられるが、これに限定されない。有利には、ペプチドは、2〜40アミノ酸、より有利には2〜20アミノ酸、最も有利には4〜15アミノ酸の長さを有する。この中で使用される場合に、タンパク質、との用語は、有利には、二次構造、より有利には三次構造を含有するポリペプチドを指す。
【0072】
他の有利な実施態様において、カーゴ分子は小分子であり、その際小分子は有利には、1000D以下の分子量を有する、より有利には薬剤又は薬剤候補である分子である。特定の有利なクラスの小分子は、複素環式小分子である。
【0073】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は、脂質、又は、脂質の副次的な構造、例えばその残基である。有利には、このクラスの分子は、細胞膜内部又は細胞膜中で、細胞に対して作用する際に特定の機能を発揮する。前者の例は、ジアクシルグリセロールである。この例は、このような特定の機能を発揮する脂質は、有利には、細胞内メッセンジャーを含む群から選択されることを説明する。後者のための例であり、かつ従って可能性のあるカーゴ分子を示す化合物は、リポペプチド、有利には、S−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2RS)−プロピル]−N−パルミトイル−(R)−システニル−(S)−セリル−テトラ−(S)−リシン残基を有するリポペプチドであり、最も有利には、Toll様受容体のアゴニスト又はアンタゴニストとして作用するS−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)−(2RS)−プロピル]−N−パルミトイル−(R)−システニル−(S)−セリル−テトラ−(S)−リシン残基を有するペプチドである。
【0074】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は、炭水化物である。
【0075】
別の有利な実施態様において、カーゴは、磁気共鳴画像のために使用される造影剤である。このような造影剤は、例えば、ガドリニウム(III)−DTPA(ジエチレントリアミン−五酢酸)又はガドリニウム−(III)−DOTA(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−三酢酸)であるが、これらに限定されない。
【0076】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は粒子である。粒子は、例えば、架橋したポリスチレン、架橋したN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、架橋したデキストラン、リポソーム、又はミセルからなるポリマー粒子であってよい。有利には、粒子は、機能的な分子のためのキャリア又は容器として機能する。この機能的な分子は、細胞内で機能を発揮する任意の分子であってよく、例えば化学治療剤及びオリゴヌクレオチド、有利には、本発明によるペプチドのためのカーゴ分子としても働く分子であってよい。一般的に、機能的な分子の粒子へのカップリングは、それぞれ機能的な分子の粒子中への負荷は、機能的な分子のファーマコキネティクス特性を、例えば、本発明によるペプチドの生物中への循環を長引かせることにより改善させることが意図され、一方で本発明によるペプチドのカップリングは、これらの機能的な分子の細胞中への輸送を媒介する。本発明によるペプチドに加えて、粒子は更に、特定の細胞に対する粒子の標的化を媒介する残基又は分子により改変されていてよい。このような標的化の一例は、ガン細胞の表面上で濃縮化されたタンパク質に対して指向された抗体である。一実施態様において、前記粒子は、強磁性核を有してよい。このような粒子は、適用において、例えば磁性流体ハイパーサミアとして使用されてよい(Jordan et al., Int J Hyperthermia, 12, 705〜722, 1996)。
【0077】
別の有利な実施態様において、カーゴ分子は、量子ドットである。本発明によるペプチドを量子ドットにカップリングすることは、共有結合により、例えば、ペプチド上の適した官能性と量子ドット間でのアミド結合形成による共有結合により、又は、非共有的な相互作用、例えばビオチン残基と量子ドットにカップリングされたストレプトアビジン分子との間での非共有的な相互作用により達成されてよい。一例において、細胞透過性ペプチドは、システイン残基を有する細胞透過性ペプチドの伸長及びヘテロ二官能性リンカーを用いたアミノ官能化された量子ドットに対するカップリングにより量子ドットに共有的に連結されている(S. Santra et al., ChemComm, 2005, 3144-3146)。
【0078】
更なる実施態様において、カーゴ分子は、機能的な用語において定義されることができる。
【0079】
特定の一実施態様において、カーゴ分子はsiRNA分子である。
【0080】
siRNA分子は、標的核酸、有利にはmRNAであって、標的分子をコードするものに指向した干渉性の小さいRNAsである。siRNAは、典型的には約21〜約23ヌクレオチドの長さを有する二重鎖RNAである。この2つのRNA鎖の1つの配列は、分解されるべき標的核酸の配列に相当する。言い換えると、標的分子の核酸配列、有利にはmRNA配列を知っていると、二本鎖RNAが、標的分子の残基mRNAに相補的である前記の2つの鎖の1つを用いて設計されてよく、前記siRNAの、標的分子をコードする遺伝子、ゲノム性DNA、hnRNA又はmRNAを含有する系への適用の際に、このそれぞれの相応する標的核酸は分解され、かつ従って、それぞれのタンパク質のレベルは減少化されるものである。前記siRNAの設計、構築及び医薬品及び診断薬としての使用の基本的な原則は、それぞれ、とりわけ、国際特許出願WO 00/44895及びWO 01/75164中に説明されている。
【0081】
特定の一実施態様において、カーゴ分子はリボザイムである。
【0082】
リボザイムは、触媒活性のある核酸であり、これは有利には、基本的に2つの残基を含有するRNAからなる。この最初の残基は、触媒活性を示す一方で、この第2の残基は、標的核酸分子との特定の相互作用を担う。標的核酸とリボザイムの第2の残基との間の、典型的にはハイブリダイゼーション及び2つのハイブリダイズする鎖上の塩基の実質的に相補的な広がりのワトソンクリック塩基対による相互作用の際には典型的には、この触媒的に活性のある残基は、活性になる可能性があり、このことは、前記残基が、分子内又は分子間で、このリボザイムの触媒活性が、ホスホジエステラーゼ活性である場合には、標的分子を触媒作用することを意味する。引き続き、最終的に標的核酸、また同様に前記標的分子由来のタンパク質の分解の結果となる標的分子の更なる分解が、この標的核酸に相当する新規に合成されたタンパク質及び前に存在するそれぞれのタンパク質のターンオーバーの欠如のために起こる可能性がある。リボザイム、これの使用及び設計原理については当業者に公知であり、かつ、例えばDoherty and Doudna(Ribozym structures and mechanism. Annu ref. Biophys. Biomolstruct. 2001 ; 30 :457-75)及びLewin and Hauswirth(Ribozyme Gene Therapy: Applications for molecular medicine. 2001 7: 221-8)中に説明されている。
【0083】
特定の一実施態様において、カーゴ分子はアンチセンス分子である。
【0084】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの、医薬品の製造のための及び診断薬としての使用は、それぞれ、siRNA分子及びリボザイムの1つとしての作用の類似の様式に基づく。基本的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、塩基相補性に基づいて、標的RNA、有利にはmRNAとハイブリダイズし、これによりRNアーゼHを活性化させる。RNアーゼHは、ホスホジエステル及びホスホロチオアートにカップリングしたDNA両者により活性化される。ホスホジエステルにカップリングしたDNAはしかしながら、細胞ヌクレアーゼにより迅速に分解され、例外は、ホスホロチオアートにカップリングしたDNAである。これらの、耐性のある、天然に生じないDNA分子誘導体は、RNAとのハイブリダイゼーションの際にRNアーゼH活性を抑制しない。言い換えると、アンチセンスポリヌクレオチドは、DNA、RNAハイブリッド複合体としてのみ有効である。この種のアンチセンスポリヌクレオチドのための例は、特に、US公報US 5,849,902及びUS 5,989,912中に説明されている。言い換えると、それぞれの標的分子の核酸配列に基づいてそれぞれの核酸配列が原則的に導かれることができる標的タンパク質から、又は、この核酸配列、特にmRNAを知ることにより、適したアンチセンスポリヌクレオチドが、塩基相補性の原則に基づいて設計されてよい。
【0085】
特に有利なのは、短い広がり(3〜9塩基)のホスホロチオアートDNAを有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。最低で3DNA塩基が、細菌RNアーゼHの活性化のために、そして最低で5塩基が、哺乳類のRNアーゼH活性化のために必要とされる。これらのキメラのオリゴヌクレオチド中には、RNアーゼHのための基質を形成しない改変されたヌクレオチドからなる「アーム」をハイブリダイズすることにより隣接されるRNアーゼHのための基質を形成する中心領域が存在する。このキメラのオリゴヌクレオチド中のハイブリダイズするアームは、例えば、2′−O−メチル又は2′−フルオロにより改変されてよい。他のアプローチは、メチルホスホナート又はホスホロアミダート連結を前記アーム中で使用した。本発明の実施において使用できるアンチセンスヌクレオチドの更なる実施態様は、P−メトキシオリゴヌクレオチド、部分的なP−メトキシオリゴデオキシリボヌクレオチド又はP−メトキシオリゴヌクレオチドである。
【0086】
特定の一実施態様において、カーゴ分子は、アプタマー又はシュピーゲルマーである。
【0087】
アプタマーは、一本鎖又は二本鎖であり、かつ、標的分子と特異的に相互作用するD−核酸である。このアプタマーの製造又は選択は、例えば、ヨーロッパ特許EP 0 533 838中に説明されている。基本的に以下の工程が実現される。最初に、核酸の混合物、つまり、可能性のあるアプタマーが提供され、その際それぞれの核酸は典型的には、複数の、有利には少なくとも8つの連続したランダム化されたヌクレオチド断片を含む。この混合物は引き続き、標的分子と接触され、その際この核酸は、標的分子に、例えば、この候補混合物と比較して、この標的に対する増加した親和性に基づいて、又は、これに対する、より大きな力により結合する。この結合する核酸は、引き続き、この混合物の残りから分離される。選択的に、このようにして得られる核酸は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅される。これらの工程は、複数回繰り返されてよく、最終的には、標的に特異的に結合する核酸の増加した割合を有する混合物を生じ、ここから、選択的に、最終的に結合する核酸が選択される。これらの特異的に結合する核酸は、アプタマーと呼ばれる。アプタマーの産生又は同定のための方法の任意の段階で、この個々の核酸の混合物のサンプルを取り出し、標準的な技術を用いてこの配列を決定してよい。前記アプタマーが、例えば、アプタマーを産生する分野において当業者に公知である特定の化学基を導入することにより、安定化されてよいことは本発明の範囲内である。このような改変は、例えば、このヌクレオチドの糖残基の2′−位のアミノ基の導入において存在してよい。アプタマーは、治療剤として現在使用される。しかしながら、このように選択又は産生されたアプタマーが、標的ハリデーションのために使用されてよいことも、本発明の範囲内である。
【0088】
シュピーゲルマーの産生又は製造は、これは、標的分子に対して指向して本発明により使用又は産生されてよいが、同様の原則に基づく。このシュピーゲルマーの製造は、国際特許出願WO 98/08856中に説明されている。シュピーゲルマーは、L−核酸であり、これは、シュピーゲルマーが、アプタマーのように、D−ヌクレオチドからなるのではなく、L−ヌクレオチドからなることを意味する。シュピーゲルマーは、これらが、生物学的な系中で極めて高い安定性を有し、かつ、アプタマーと比較可能に、これらが指向される標的分子と特異的に相互作用するという事実により特徴付けられる。シュピーゲルマーの産生の目的において、ヘテロゴニーのD−核酸集団が作成され、かつこの集団が、標的分子の光学的対掌体、即ち、天然に生じる、標的分子のL−エナンチオマーのD−エナンチオマーと接触される。引き続き、標的分子の光学的対掌体と相互作用しないD−核酸が分離される。しかしながら、標的分子の光学的対掌体と相互作用するD−核酸は分離され、場合により決定され、かつ/又は、配列決定され、引き続き、この相応するL−核酸がD−核酸から得られる核酸配列情報に基づいて合成される。これらのL−核酸は、標的分子の光学的対掌体と相互作用する前述のD−核酸と、配列の点で同一であり、この光学的対掌体とよりはむしろ、天然に生じる標的分子と特異的に相互作用する。アプタマーの産生のための方法と同様に、この様々な工程を複数回繰り返し、かつこうして、この標的分子の光学的対掌体と特異的に相互作用する核酸を濃縮化することも可能である。
【0089】
特定の一実施態様において、カーゴ分子は、細胞内部で転写因子に特異的に結合することにより、デコイ分子として作用する短い二本鎖のオリゴデスオキシヌクレオチドである。これらのデコイ分子は、特異的なキャリアの必要無しに、細胞により効率的に取り込まれると言われている。効率及び細胞質輸送は、更に、本発明によるCPPに対するコンジュゲートにより促進されてよいことが期待される。
【0090】
特定の一実施態様において、カーゴ分子は抗体である。
【0091】
抗体の製造は、当業者に公知であり、かつ、例えばHarlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY,(1988)中に説明されている。有利には、モノクローナル抗体が、本発明との関連において使用されてよく、これは、Koehler and Milsteinのプロトコール及びこのプロトコールに基づいた更なる開発に応じて製造されてよい。この中で使用される抗体は、完全抗体、抗体断片又は誘導体、例えばFab断片、Fc断片及び一本鎖抗体を含むが、これらが、適当であり、かつ、タンパク質キナーゼNベータに結合できる限りは、これに限定されない。モノクローナル抗体とは別に、ポリクローナル抗体が、使用及び/又は産生されてもよい。ポリクローナル抗体の産生は、当業者に公知であり、例えば、Harlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, (1988)中に説明されている。有利には、治療目的のために使用される抗体は、前述のとおりヒト化されているか又はヒト抗体である。
【0092】
本発明により使用されてよい抗体は、1つ又は複数のマーカー又はラベルを有してよい。このようなマーカー又はラベルは、抗体をその診断適用又はその治療適用において検出するために使用可能であってよい。有利には、このマーカー及びラベルは、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、金、及びフルオレセインを含む群から選択され、かつ、例えば、ELISA方法中で使用される。これらの及び更なるマーカーまた同様に方法は、例えば、Harlow, E., and Lane, D., "Antibodies: A Laboratory Manual," Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1988)中に説明されている。
【0093】
ラベル又はマーカーが、検出の他の更なる機能、例えば、他の分子との相互作用を示すことも、本発明の範囲内である。このような相互作用は、例えば、他の化合物との特異的な相互作用であってよい。これらの他の化合物は、抗体が使用される系、例えばヒト又は動物の体に、又は、それぞれの抗体を使用して分析される試料に固有のもであってよい。適したマーカーは、例えば、この特異的な相互作用パートナー、例えばアビジン及びストレプトアビジンを有するビオチン又はフルオセイン、及び、これらのマーキング化又はラベル化された抗体と相互作用するこのそれぞれの化合物又は構造上に存在する類似物であってよい。
【0094】
特定の一実施態様において、カーゴ分子は、標的特異的に結合するペプチドである。
【0095】
このようなペプチドは、技術水準に応じた方法、例えばファージディスプレイを使用して産生されてよい。基本的に、ペプチドのライブラリーは、例えば、ファージの形で産生され、かつ、この種類のライブラリーは、それぞれの標的分子と接触される。標的分子に結合するこれらのペプチドは引き続き除去され、有利には、標的分子を有する複合体として、このそれぞれの反応から除去される。当業者には、この結合特性が、少なくともある程度、特に実現される実験的な手法、例えば、塩濃度及び類似物に依存することが公知である。より高い親和性又はより大きい力で標的分子に結合するペプチドの、このライブラリーの非結合種からの分離後に、及び、場合により、この標的分子の、この標的分子とペプチドとの複合体からの除去後にも、このそれぞれのペプチドは、引き続き特性決定されてよい。この特性決定の前に、場合により、増幅工程が、例えば、ファージをコードするペプチドを伝播することにより実現される。この特性決定は有利には、この標的に結合するペプチドの配列決定を含む。基本的に、ペプチドはその長さにおいて限定されないが、有利には、約8〜20アミノ酸の長さを有するペプチドが、有利にはそれぞれの方法において得られる。このライブラリーのサイズは、約102〜1018、有利には108〜1015の異なるペプチドであってよく、しかしながらこれに限定されない。
【0096】
標的に結合するペプチドの特定の形態は、いわゆる「アンチカリン(anticaline)」であり、これは、特に、ドイツ国特許出願DE 197 42 706中に説明されている。
【0097】
更なる一観点において、本発明は、本発明によるペプチドをコードする核酸に関する。このような核酸は、ペプチドのアミノ酸配列及び遺伝子暗号に基づいて、当業者により容易に導かれることができる。宿主生物に依存して、特定の配列が、それぞれの宿主生物のコドンの使用に対して適合されることができることが理解される。本発明による最も有利なペプチドのための核酸配列は、配列番号26及び配列番号27から得ることができる。
【0098】
更なる一観点において、本発明はペプチドをコードする核酸に関し、その際、このようなペプチドは、本発明によるペプチド、及び更なるペプチド又はタンパク質からなり、かつその際、前記タンパク質は、一般的には融合ペプチド/タンパク質と呼ばれる。当業者に公知のプロトコルによれば、前記核酸は、部分的に本発明によるペプチドを一部として含有する組み換えタンパク質の発現及び精製に役立ち、又は、適したキャリアと組み合わせて、一般的に遺伝子療法と呼ばれる治療上の戦略において使用されてよい。有利な一実施態様において、本発明によるペプチドをコードする核酸に融合された更なるペプチドをコードする核酸は、ワクチン化のためのペプチドとして役立つペプチドをコードする。別の有利な一実施態様において、核酸はペプチドをコードし、その際このペプチドは有利には、細胞内部での分子相互作用の競合的阻害剤として作用する。別の有利な実施態様において、核酸はペプチドをコードし、その際このペプチドは、有利には、細胞内部での酵素反応のための基質として作用する。別の有利な実施態様において、核酸はタンパク質のドメインをコードし、その際このドメインは有利には、細胞内部での分子相互作用の競合的阻害剤として作用する。別の有利な実施態様において、核酸は酵素をコードし、その際酵素は有利には、ヒドロラーゼの群からである。
【0099】
また更なる一観点においては、本発明は、この中で定義された融合タンパク質、より有利には、本発明と一致した融合タンパク質をコードする核酸により符号化された融合タンパク質に関する。
【0100】
更なる一観点において、本発明は、本発明による複合体を含有する組成物、本発明によるペプチドを含有する組成物、本発明によるペプチドをコードする核酸を含有する組成物、本発明によるペプチド及びカーゴ分子を含有する組成物、本発明による融合タンパク質を含有する組成物、このような融合タンパク質をコードする核酸を含有する組成物、及び、ヒトのラクトフェリン及びカーゴ分子を含有する組成物に関する。本発明によるこのような組成物が、本発明によるペプチド1つ又は複数、本発明による核酸1つ又は複数、及び/又はカーゴ分子の1つ又は複数を含有してよいことが、この一分野の技術の範囲内である。これとの関連において、「複数」との用語は、それぞれの化合物又は分子の複数の異なる種を意味することが有利である。当業者には、この組成物が典型的には、多数の個々の種の、本発明のペプチド、このようなペプチドをコードする核酸及び/又はカーゴ分子を含有することが十分認識されるものである。これとの関連において、この中で説明されるカーゴ分子の任意のものが使用できることが理解されるべきである。
【0101】
更なる一観点において、本発明は、この中で説明される任意の組成物又はその構成要素の、トランスフェクション剤としての、医薬品としての、診断薬としての使用に関する。前記組成物が、医薬品として又は薬理学的組成物として使用される場合には、有利にはカーゴ分子は薬理学的に活性のある剤である。このような薬理学的に活性のある剤は、化学療法剤、例えば、ダウノルビシン又は細胞内部の分子相互作用に干渉するペプチド、又は、この中でカーゴ分子として説明された任意の分子であってよく、その際有利には前記カーゴ分子は、薬理学的に活性があるか、又はこのような薬理学的に活性のある分子の前形態である。この組成物が診断薬として使用される場合には、有利にはこのカーゴ分子は診断マーカーである。このような診断マーカーは、病理学的に関連のあるプロテアーゼ活性を検出するための蛍光原基質であってよく、前記プロテアーゼは例えば、細胞内部でのアポトーシスの開始及び実行に関連するカスパーゼである。
【0102】
本発明によるペプチドが有利には、特定の細胞又はこのような特定の種類の細胞を含有する組織又は器官に輸送されることは、本発明の範囲内である。有利な一実施態様において、このような特定の輸送は、標的残基又は標的分子を介して媒介され、前記残基又は分子は、その全体において、この中で、標的実体とも呼ばれる。
【0103】
より有利な一実施態様において、このような標的残基は、本発明によるペプチドの一部又はカーゴ分子の一部である。選択的に、又は、付加的に、このような標的残基は、本発明による複合体又は組成物の一部である。
【0104】
この標的実体は有利には、ペプチド、タンパク質(抗体を含む)、抗体断片、一本鎖抗体、アプタマー、シュピーゲルマー及びリガンドに結合する細胞表面レセプターを含有する群から選択される。当業者には、原則的に、標的を、標的実体として提供する、相互作用パートナーの任意の組み合わせのパートナー残基又は分子が使用できることが認識される。これは、異なる細胞種類の上に発現、特に過剰発現しているレセプターに対するリガンド、又は、異なる細胞種類の上に発現、特に過剰発現しているリガンド又は分子の使用を含む。後者の場合には、標的実体として作用する、特に目立った、この相互作用パートナーは、抗体、アプタマー、シュピーゲルマー、高度に特異的に結合するペプチド、及びアンチカリンを含む群から選択される。この種の相互作用パートナー及び、細胞の特定の種類のためのその特異性は、当業者に公知である。特に、ErbB2タンパク質は、乳癌細胞のために特異的である。これに応じて、これに対して指向される抗体は、適した標的実体である。
【0105】
有利な一実施態様において、この標的残基は、この中で説明される粒子中又は上に含まれ、これは、カーゴ分子として使用されてよい。このような粒子のサイズのために、より嵩張った標的実体、例えば抗体の使用は、このような実施態様との関連において有利である。
【0106】
別の有利な一実施態様において、CPP、即ち、本発明によるペプチドは、分子内でこのCPPをマスク化し、かつ、CPPがCPPとして作用することを妨げる残基にカップリングされている。酵素により切断可能な結合は、CPPとマスク化する残基との間に組み込まれている。このような分子内のマスク化するアプローチは、CPPノナアルギニンに対してコンジュゲートされたフルオロフォアの標的化のために説明されている。このノナアルギニンCPPは、ヘキサグルタミン酸広がりに、マトリックスであるメタロプロティナーゼ2及び9のための切断部位に相当するペプチドリンカーを介して連結している。これらのプロテアーゼは、腫瘍細胞により高い濃度で分泌されている。プロテアーゼの分泌は、CPPマスク構造体を、腫瘍細胞の付近で選択的に切断し、これにより、CPPカーゴ構造体の、腫瘍細胞中への効率的な取り込みを可能にする(T. Jiang et al., Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 101, 17867-17872, 2004)。この限りで、この実施態様は、腫瘍特異的な標的化及び/又は輸送のための効率的な標的化又は輸送手段を提示する。
【0107】
本発明の医薬組成物は、この分野でよく知られている方法により製造されてよく、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣(dragee)製造、粉砕、乳化、カプセル化、閉じこめ又は凍結乾燥方法により製造されてよい。
【0108】
本発明と一致して使用される薬理学的な組成物は従って、慣用の様式で、賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容性のキャリアを用いて処方されてよく、前記キャリアは、活性化合物の、医薬的に使用できる調製物への処理を容易化する。適当な処方は、選択される投与経路に依存する。
【0109】
注射のためには、本発明の化合物は、水溶液中で、有利には、生理学的に相容性の緩衝液、例えばハンクス液、リンガー液、又は、生理学的食塩緩衝液中で処方されてよい。経粘膜投与のためには、浸透すべきバリアに対して適した貫通物が、この処方物中で使用される。このような貫通物は、この分野で一般的に公知である。
【0110】
表皮の侵入を促進する処方物は、薬理学において公知であり、かつ、多くの皮膚状態、例えば、乾癬及び真菌性感染(これらに限定されない)の治療において使用されることができる。表皮及び皮膚の下にある層の侵入を促進する処方物もまた公知であり、かつ、本発明の組成物を、例えば、下にある筋肉又は関節に適用するために使用されることができる。いくつかの有利な治療的な実施態様において、リウマチ又は変形性関節症の緩和のための化合物を輸送する本発明の組成物を含有する処方物は、クリーム、軟膏又はゲルを、問題のある関節の上にある皮膚上に塗布することにより投与されることができる。
【0111】
前記ペプチド及び/又は複合体が、消化管の厳しいタンパク質分解性環境をしのぐべく十分に安定にされている場合には、経口及び消化管投与が使用されてよい。この場合には、本発明の組成物は、活性化合物を、この分野で十分に公知の医薬的に許容性のキャリアと一緒に組み合わせることにより容易に処方されることができる。このようなキャリアは、治療されるべき患者による経口摂取のために、本発明の化合物がタブレット、ピル、糖衣剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液及び類似物として処方されることを可能にする。経口使用のための薬理学的な調整は、固形の賦形剤を使用して、場合により、この生じる混合物を粉砕、及び、顆粒の混合物を処理(所望の場合には、糖衣剤コアのタブレットを得るために、適した助剤が添加された後に)してなされることができる。適した賦形剤は、特に、充填剤、例えば砂糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトール又はソルビトール、セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)である。所望の場合には、崩壊剤、例えば架橋されたポリビニルピロリドン、寒天又はアルギン酸、又はこの塩、例えばアルギン酸ナトリウムが添加されてよい。
【0112】
糖衣剤コアには、適したコーティングが提供される。この目的のために、濃縮化された糖溶液が使用されてよく、これは、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、carbopolゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適した有機溶媒又は溶媒混合物を含有してよい。染料又は顔料が、活性化合物用量の異なる組み合わせを同定又は特徴付けるために、タブレット又は糖衣剤コーティングに添加されてよい。
【0113】
経口に使用されることができる医薬組成物は、ゼラチンからなる押しはめ(push-fit)カプセル、また同様に、ゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールからなる、軟質の、封止されたカプセルを含む。この押しはめカプセルは、活性化合物を、充填剤、例えばラクトース、バインダー、例えばデンプン、及び/又は滑剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム、及び、場合により安定剤と混合して含有することができる。軟質カプセル中で、活性化合物が、適した液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体のポリエチレングリコール中で溶解又は懸濁されてよい。更に、安定剤が添加されてよい。経口投与のための全ての処方は、このような投与のために適している用量にあるべきである。
【0114】
バッカル投与のためには、この組成物は、慣用の様式において処方されたタブレット又は口内錠の形態で摂取されてよい。本発明の小さいペプチド及び複合体のためには、これは有利であることが判明してよい。
【0115】
吸引による投与のためには、本発明による組成物は、圧力をかけられたパック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、適した推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ−テトラフルオエタン、二酸化炭素又は他の適したガスを使用して簡便に配送される。圧力をかけられたエアロゾルの場合には、この用量単位は、計量供給された量を配送するためのバルブを供給することにより決定されてよい。吸引器又は注入器における使用のための、カプセル及びカートリッジ(例えばゼラチンからなる)は、前記化合物及び適した粉体ベース、例えばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有して処方されてよい。
【0116】
本発明による組成物は、注射、例えばボーラス注射又は連続的な輸液による消化管投与のために処方されてよい。このようにして、特定の臓器、組織、腫瘍部位、炎症部位その他を標的化することも可能である。感染のための処方は、単位用量の形で、例えばアンプル又は複数用量容器中で、添加された保存剤と共に提示されてよい。この組成物は、形態、例えば懸濁液、溶液又はエマルションの形態を、油性又は水性ビヒクル中でとってよく、かつ、配合剤、例えば、懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤を含有してよい。
【0117】
消化管投与のための医薬組成物は、水中に溶解性の形態にある組成物の水溶液を含む。更に、前記組成物の懸濁液は、適した油性注射懸濁液として調製されてよい。適した親油性溶媒又はビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油、又は合成の脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド、又はリポソームを含む。水性の注射懸濁液は、この懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含んでよい。選択的に、前記懸濁液はまた、適した安定剤又は、この組成物の溶解性を高度に濃縮化された溶液の調製を可能にすべく増加させる剤を含有してもよい。
【0118】
又は、前記組成物の1つ以上の成分は、使用前に、適したビヒクル、例えば滅菌した熱分解無しの水を用いた構成のために粉末の形態にあってよい。
【0119】
この組成物はまた、直腸組成物、例えば、坐剤又は保持浣腸(retention enema)であって、例えば慣用の坐剤ベース、例えばカカオバター又は他のグリセリドを含有する坐剤又は保持浣腸において処方されてもよい。
【0120】
前に説明した処方物の他に、本発明による組成物はまた、デポー調製物として処方されてもよい。このように長期間作用する処方物は、埋没(例えば、皮下に又は筋肉内に)、又は、筋肉注射により投与されてよい。従って、例えば、前記組成物は、適したポリマー状又は疎水性の材料(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)と一緒に、又は、固形の又は半固形の埋没体の一部として処方されてよく、これらは、体中で自動的に分解するか又は分解せず、又は、イオン交換樹脂、又は、前記組成物の1種以上の成分が、あまり溶解性でない誘導体、例えばあまり溶解性でない塩として処方されてよい。
【0121】
この医薬組成物は、適した固形又はゲル相キャリア又は賦形剤を含有してもよい。このようなキャリア又は賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリマー、例えばポリエチレングリコールを含むが、これらに限定されない。
【0122】
本発明における使用に適した医薬組成物は、活性成分が、意図される目的を達成すべく有効量で含有されている組成物を含む。より特異的には、治療的に有効な量とは、疾病症状を予防、緩和又は改善するか、又は、治療される被験体の生存を延長させるために有効な化合物の量を意味する。
【0123】
治療的に有効な量の決定は、当業者の能力の範囲内であり、特に、この中に提供された詳細な開示に基づけば、当業者の能力の範囲内である。
【0124】
本発明の方法において使用される任意の化合物のためには、この治療的に有効な量又は用量は、細胞培養アッセイから最初に測定されることができる。例えば、用量は、動物モデル中で、細胞培養中で測定されたIC50を含む循環濃度範囲を達成するために処方されることができる(ここでは阻害剤分子が問題となる)。このような情報は、ヒト中での使用可能な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
【0125】
本発明の組成物の毒性及び治療的な有効性は、細胞培養又は実験動物中で標準的な医薬的手法により決定されることができ、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準的な医薬的手法により決定されることができる。毒性の及び治療的な効果の間での用量比は、治療指数であり、かつ、これは、LD50とED50との間での比として表現されることができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータは、ヒト中での使用のための用量の範囲を処方することにおいて使用されることができる。この用量は、使用された投与形態及び利用された投与経路に依存した範囲内で変動してよい。この正確な処方物、投与経路及び用量は、個々の医師により、患者の状態の観点において選択されることができる。(例えば、Fingl, et al., 1975, "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p. 1を参照のこと)。
【0126】
投与される組成物の量は、無論、治療される被験体、被験体の重量、この病気の深刻度、投与の様式及び、処方する医師の判断に依存するものである。
【0127】
本発明による組成物のペプチドを含有する医薬組成物は、ペプチド及びカーゴ分子1種以上を、同じ容器中で、溶液、懸濁液又は粉末の形態中にあるように供給されることができる。本発明によるペプチドはまた、1種以上のカーゴ分子とは別個に供給されることもでき、かつ、1種以上のカーゴ分子が投与前に混合されることができる。特に、投与の経路及び機構に依存した、様々な包装の選択肢が可能であり、かつ、当業者に公知である。例えば、本発明によるペプチドが、1種以上のカーゴ分子とは別個に供給され、この組成物は、所望される場合には、1つより多い室を有するパック中に提示され、かつ、この中では、本発明によるペプチドをカーゴ分子と混合することを提供するために、バリヤが破裂、引裂、又は溶融されることができる。選択的に、2つの別個に供給された要素が、別個の容器中で混合されることができ、場合により、1種以上の他のキャリア、溶液その他に対する添加と共に混合されることができる。カーゴ分子を含有する1つ以上の単位用量形態は、パック中に供給されることができる。このパック又はディスペンサー装置は、投与のための指示が伴われてよい。相容性の医薬キャリア中で処方される本発明の化合物を含有する組成物は、調製、適した容器中に配置、そして適応症の治療のためにラベル化されてもよい。ラベル上に示された、適した状態は、本発明による組成物を使用して治療、予防又は診断されてよい任意の疾病を含んでよい。特に、本発明は、理想的には遺伝子療法に適している。
【0128】
更なる一観点において、本発明は、本発明の組成物の投与を含む患者の治療又は予防のための方法に関する。
【0129】
更なる一観点において、本発明は、本発明による組成物の投与又は使用を含む患者の診断方法に関する。
【0130】
本発明によるペプチドをコードする核酸が、ワクチンとして又はワクチンの一部として使用できることは本発明の範囲内である。有利には、前記ワクチンは、核酸、より有利にはRNAであって、宿主生物中での免疫応答を引き起こすために適した抗原をコードするものを含有し、その際本発明によるペプチドをコードする核酸及びこのような抗原をコードする核酸は、前記宿主生物に投与される。このような投与は、別個に又は組み合わされた様式でなされてよい。更なる一実施態様において、それぞれの核酸は、ベクター中に含有又は包含されてよく、より有利には前記宿主生物中での核酸の発現を可能にする発現ベクター中に含有又は包含されてよい。このようなベクター、特にこのような発現ベクターの更なる要素は、当業者に公知であり、かつ、特に、以下の要素:プロモーター、エンハンサー及びターミネーターの1種以上を含有する。前記抗原は有利には、本発明によるワクチンにより治療又は予防されるべき疾病に関連した抗原である。更に、ワクチンは、いわゆるアジュバント作用を発揮し、かつ、Tヘルパー細胞応答のイニシエーターとして機能する構成要素を含有してもよい。
【0131】
まだ更なる一実施態様において、本発明は、疾病の治療及び/又は予防のための、本発明による組成物を、及び、場合により、を含む群から選択される1つ又は複数の要素を含有する、トランスフェクションのためのキットに関する。
【0132】
本発明は、以下の図及び実施例を参照して更に説明されるものであり、ここから更なる特徴、実施態様及び利点が取り出されてよい。特に、
図1は、N末端でカルボキシフルオレセインラベル化された様々のCPPの濃度依存性取り込みを示す図を示し、細胞に関連した蛍光の程度として表現されている;hLF−ペプチドは、配列番号1に記載の38〜59アミノ酸からなるペプチドを指し、bLF−ペプチドは、配列番号2に記載の33〜50アミノ酸からなるペプチドを指す;細胞に関連した蛍光は、フローサイトメトリーにより決定した;
図2は、共焦点レーザー走査顕微鏡により得られる顕微鏡写真の系列を示し、これは、様々な濃度でのヒトのラクトフェリン由来のペプチド及びウシのラクトフェリン由来のペプチド(図1参照)の細胞内分布の濃度依存性を示す;
図3Aは、フルオレセインラベル化したhLF−ペプチド(図1に応じたペプチド配列)の取り込みに対する様々なエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す図であり、フルオレセイン−hLF濃度は5μMである(EIPA、5−(N−エチル−N−イソプロピル)アミロリド;MβCD、メチル−β−シクロデキストリン;CPZ、クロロプロマジン);この取り込みは、フローサイトメトリーにより決定した。エラーバーは、トリプリケイトの標準偏差を示す;
図3Bは、フルオレセインラベル化hLF−ペプチド(図1に応じたペプチド配列)の取り込みの際の様々なエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す図であり、hLF濃度は20μMである;
図4は、HeLa細胞中への、2又は20μMのペプチド濃度でのフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの取り込みに対するエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す、共焦点レーザー走査顕微鏡により得られる写真を示す;
図5は、配列番号1に記載のアミノ酸38〜59に相当するフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの取り込みの程度を、この切断型と比較して示す図であり、これは、配列番号1に記載のアミノ酸40〜55(LF1ペプチド)及び配列番号1に記載のアミノ酸40〜50(LF2ペプチド)に相当する構造−活性の関係を示す図である;及び
図6は、異なるインキュベーション時間の間インキュベートされた、HeLa細胞のためのフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの様々な濃度での細胞生存率(%で)として示されるhLFペプチドの細胞毒性を示す図である;それぞれ対の棒については、第1の棒が、6時間ペプチドでインキュベートされた細胞を、そして第2の棒は、0.5時間ペプチドでインキュベートされた細胞を示す。
【0133】
実施例1:実験的手法
細胞及び試薬.ヒトの子宮頸癌の細胞系列HeLaを、American Type Culture Collection (Manassas, VA)から得た。HeLa細胞を、RPMI1640培地中に維持し、前記培地は安定化されたグルタミン及び2.0g/LのNaHCO3(PAN Biotech, Aidenbach, Germany)を有し、10%のウシ胎児血清(PAN Biotech)で補給されていた。クロロプロマジンをCalbiochem(Bad Soden, Germany)から、5−(N−エチル−N−イソプロピル)アミロリド(EIPA)、メチル−β−シクロデキストリン(MβCD)及びMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]を、Sigma (Deisenhofen, Germany)から得た。
【0134】
ペプチド合成.ペプチドをEMC microcollections (Tuebingen, Germany)から購入した。全てのペプチドの純度を分析HPLCにより決定した。このペプチドの同一性を、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより確認した。85%よりも少ない純度を有するペプチドを、予備的HPLCにより精製した。使用した全てのペプチドの純度は、>95%(214nm、HPLC)であった。このペプチドは、説明したとおり、カルボキシフルオレセインでN末端でラベル化されていた(Fischer et al., Bioconjugate Chem. 14, 653-660, 2003)。
【0135】
ペプチドストック溶液.ペプチドをDMSO中に、10mMの濃度に溶解した。このストック溶液を更にPBS又は培地中で希釈した。DMSOストック溶液のペプチド濃度を、0.1M Tris/HCl緩衝液(pH8.8)中の1:100希釈の、UV/VIS分光器を用いたカルボキシフルオレセインの吸収に基づいて、492nmで測定した吸収を用いて決定し、75000L/(mol・cm)のカルボキシフルオレセインのモル吸光係数が推定される。
【0136】
フローサイトメトリー.ペプチド負荷の効率を決定するために、HeLa細胞を24ウェルプレート(Sarstedt, Nuembrecht, Germany)中でウェルにつき50000の密度で、RPMI1640を含有する血清中に播種した。1日後に、この細胞を培地で洗浄し、適した濃度でペプチドを含有するRPMI 1640 300μl中に30分間インキュベートした。それぞれの条件をトリプリケイトで試験した。インキュベーション後に、細胞を培地で洗浄し、5分間のトリプシン処理により剥離させ、0.1%(w/v)BSAを含有する氷冷したPBS中に懸濁させ、フローサイトメトリーにより直ぐに測定した(BD FACS Calibur System, Becton Dickinson, Heidelberg, Germany)。それぞれの場合において、7000の生細胞の蛍光が得られた。生細胞を、側方又は前方の散乱に基づきゲート制御した。
【0137】
実施例2:ヒトの及びウシのラクトフェリン由来のペプチドの取り込み効率
ヒトの及びウシのラクトフェリン由来ペプチドを、固相ペプチド合成により合成した。生細胞中での取り込み及び細胞下の分布を検出するために、両者のペプチドを、N末端でカルボキシフルオレセインラベル化した。細胞透過性ペプチドとしての活性を前記ラクトフェリン由来のペプチドが有するかを決定するために、細胞に関連した蛍光を、bLF−ペプチド又はhLF−ペプチドでインキュベートしたHeLa細胞中で、フローサイトメトリーにより決定した。Antp又はTatペプチドを、比較のために十分に確立されたCPPとして選択した。
【0138】
全ての4種のペプチドに対して、細胞の蛍光を、フローサイトメトリーにより測定し、この蛍光は、図1中に示されるとおりペプチド濃度と共に増加した。
【0139】
実施例3:構造−活性関係
22アミノ酸を用いた場合に、hLFペプチドは、中間の長さのCPPである。ノナアルギニンは、9つのアミノ酸のみを有し、主たるCPPトランスポータン(transportan)27である。7つのカチオン性アミノ酸のうち4つ、そして、芳香族アミノ酸が、システイン残基内で入れ子状態にされた配列中で配置している。完全長のタンパク質中で、これらのシステイン残基は、ループコンフォーメーション中へのドメインを制約するジスルフィド架橋を形成する。更に、末端システイン残基が欠失している切断されたペプチド(LF1及びLF2、表1)の細胞取り込みを試験し、かつ、システイン残基を含有するペプチドと比較した。
【0140】
表1.本研究において使用されるペプチドの一次構造全てのペプチドはペプチドアミドとして合成した。Fluoは、5(6)−カルボキシフルオレセイン、CONH2は、ペプチドのアミド化されたC末端を示す。
【表3】

【0141】
結果を図5中に示す。
【0142】
システインを欠失する両方のペプチドの取り込みは、2つのシステイン残基を含有するhLFペプチドの取り込みの約1/10のみであった。
【0143】
実施例4:hLFペプチドの細胞毒性
40μMまでのhLF−ペプチドの濃度範囲を用いた、以上に説明した実験において、細胞毒性作用は観察されることができなかった。しかしながらペプチド取り込みの生細胞顕微鏡のために、大抵は、1時間よりも少ない短いインキュベーション時間を使用した。
【0144】
従って、より長いインキュベーション時間及びより高い濃度について、ペプチドが細胞生存率に影響を及ぼすかも試験した。HeLa細胞を、1.25μM〜160μMの範囲内の濃度でのhLFペプチドを用いて、6又は0.5時間インキュベーションした。その後で、MTT試験を用いて細胞生存率を決定した。この結果を図6中に示す。
【0145】
細胞が30分間のみペプチドでインキュベーションされる場合には、40μMまでの濃度について細胞毒性が観察されなかった。6時間後に、細胞生存率は、5μMよりも高いペプチド濃度についてわずかに減少された。40μMよりも高い濃度では全ての細胞が死滅した。
【0146】
本明細書、配列表、特許請求の範囲及び/又は図面中に開示される本発明の特徴は、別個でもその任意の組み合わせにおいても、その様々な形態において本発明を実現するための材料であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】図1は、N末端でカルボキシフルオレセインラベル化された様々のCPPの取り込みに依存した濃度を示す図である。
【図2】図2は、共焦点レーザー走査顕微鏡により得られる顕微鏡写真の系列を示す図である。
【図3A】図3Aは、フルオレセインラベル化したhLF−ペプチド(図1に応じたペプチド配列)の取り込みに対する様々なエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す図である。
【図3B】図3Bは、フルオレセインラベル化hLF−ペプチド(図1に応じたペプチド配列)の取り込みの際の様々なエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す図である。
【図4】図4は、HeLa細胞中への、2又は20μmのペプチド濃度でのフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの取り込みの際の様々なエンドサイトーシス阻害剤の影響を示す、共焦点レーザー走査顕微鏡により得られる写真を示す図である。
【図5】図5は、配列番号1に記載のアミノ酸38〜59に相当するフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの取り込みの程度を、この切断型と比較して示す図である。
【図6】図6は、異なるインキュベーション時間の間インキュベートされた、HeLa細胞のためのフルオレセインラベル化hLF−ペプチドの様々な濃度での細胞生存率として示されるhLFペプチドの細胞毒性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトのラクトフェリンタンパク質の又はウシのラクトフェリンタンパク質の少なくとも8つの連続したアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有するペプチドであって、前記ペプチドが細胞透過性ペプチドとして作用するために適しているペプチド。
【請求項2】
少なくとも4つのカチオン性アミノ酸を含有する、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
ヒトのラクトフェリンタンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を、そしてウシのラクトフェリンタンパク質が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項1又は2記載のペプチド。
【請求項4】
少なくとも2つのCys残基又はその類似体を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項5】
2つのCys残基により作出されるジスルフィド結合又はシステイン類似体により形成される類似の結合を含有する、請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
約12〜20アミノ酸長さのαヘリックスコンフォーメーションを有する残基、及び、約8〜12アミノ酸長さのβ−シートコンフォーメーションを有する残基を含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項7】
約8〜約60アミノ酸残基を含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項8】
約20〜約45アミノ酸残基を含有する、請求項7記載のペプチド。
【請求項9】
配列番号1記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜64に相当するアミノ酸配列を有する、請求項1から8までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項10】
ペプチドがアミノ酸配列を有し、その際前記ペプチドのN末端が、配列番号1又は配列番号2に記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜64に相当するアミノ酸である、請求項1から9までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項11】
【表1】

を含有する群から選択される、請求項1から10までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項12】
配列番号3、配列番号4、配列番号29、配列番号30に記載の配列又は、少なくとも40%の配列同一性を有する前記配列の誘導体を含有する、請求項11記載のペプチド。
【請求項13】
配列番号2から5までの任意のペプチドの誘導体であり、その際、メチオニン残基が、バリン、イソロイシン、ノルバリン、ロイシン及びノルロイシンを含有する群から選択されるアミノ酸により置換されている、請求項11又は12記載のペプチド。
【請求項14】
【表2】

を含有する群から選択されたアミノ酸配列を有するペプチドである、請求項13記載のペプチド。
【請求項15】
前記誘導体が、連結基を有し、有利には、前記連結基は、チオエーテルを含有する群から選択されていて、前記連結基は、これらのCys残基により形成されるジスルフィド結合を置換する、請求項11から14までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが放射性ラベル化されていて、有利には放射性ラベル化されたアミノ酸を組み込んで有することにより放射性ラベル化されていて、その際より有利には、この放射性ラベル化されたアミノ酸が、トリチウムラベル化されたアミノ酸である、請求項1から15までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項17】
検出のための方法を用いる検出に適した残基を更に含有し、その際このような残基が有利には、フルオロフォア、放射性トレーサー及びハプテンを含有する群から選択されていて、その際有利にはハプテンがビオチンである、請求項1から16までのいずれか1項記載のペプチド。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載のペプチドを含有する群から選択されたペプチド、ヒトのラクトフェリン及びウシのラクトフェリン、及び、カーゴ分子を含有する、複合体。
【請求項19】
カーゴ分子が、前記ペプチドに共有結合により又は共有結合によらないで結合している、請求項18記載の複合体。
【請求項20】
カーゴ分子が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質及び小分子、及び、これらの任意の分子の混合物を含有する群から選択されている、請求項18又は19記載の複合体。
【請求項21】
カーゴ分子が、自体で又は部分で又は構造的に存在し、その際この構造は、ナノ粒子、マイクロ粒子、リポソーム及びミセルを含有する群から選択されている、請求項18から20までのいずれか1項記載の複合体。
【請求項22】
核酸が、DNA分子、RNA分子、PNA分子、siRNA分子、アンチセンス分子、リボザイム、アプタマー、シュピーゲルマー及びデコイ分子を含有する群から選択された核酸である、請求項20記載の複合体。
【請求項23】
ペプチドが、ワクチン接種のためのペプチドを含有する群から選択されている、請求項20記載の複合体。
【請求項24】
核酸が、核酸ベースのワクチンである、請求項20記載の複合体。
【請求項25】
ナノ粒子及び/又はマイクロ粒子が、医薬的に活性のある化合物を含有するか又はこれからなる、請求項20記載の複合体。
【請求項26】
請求項1から17までのいずれか1項記載のペプチドを含有する群から選択されたペプチド少なくとも1種、ヒトのラクトフェリン及びウシのラクトフェリン、及び、カーゴ分子を含有する、組成物。
【請求項27】
請求項18から25までのいずれか1項記載の複合体を含有する組成物。
【請求項28】
請求項1から17までのいずれか1項記載のペプチドをコードする核酸であって、有利には配列番号26又は配列番号27に記載の核酸配列を有する、核酸。
【請求項29】
請求項28記載の核酸分子及びカーゴ分子を含有する、組成物。
【請求項30】
カーゴ分子が、核酸であり、特に有利には、ワクチン接種に適したRNAである、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
カーゴ分子が、ペプチドをコードする核酸である、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
請求項28記載の核酸が、ペプチドをコードする核酸に、使用可能に連結している、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
請求項28記載の核酸と、ペプチドをコードする核酸とが、インフレームに連結している、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
ペプチドが、医薬的に活性のある剤である、請求項31から33までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項35】
細胞透過性ペプチドとしての、請求項1から17までのいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項36】
ヒトのラクトフェリン又はこの機能的な誘導体又はウシのラクトフェリン又はこの機能的な誘導体の、細胞透過性ペプチドとしての使用。
【請求項37】
ヒトのラクトフェリンが、配列番号1記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜711を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体を、かつ/又はウシのラクトフェリンが、配列番号2記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜708を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体を有する、請求項36記載の使用。
【請求項38】
トランスフェクション剤としての、請求項1から17までのいずれか1項記載のペプチドの使用。
【請求項39】
ヒトのラクトフェリン又はこの機能的な誘導体又はウシのラクトフェリン又はこの機能的な誘導体の、トランスフェクション剤としての使用。
【請求項40】
ヒトのラクトフェリンが、配列番号1記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜711を含有するアミノ酸配列を、かつ/又は、ウシのラクトフェリンが、配列番号2記載のアミノ酸配列のアミノ酸位置20〜708を含有するアミノ酸配列又はその機能的な誘導体を有する、請求項39記載の使用。
【請求項41】
医薬品の製造のための、請求項26から34までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項42】
カーゴ分子が、医薬的に活性のある剤である、請求項41記載の使用。
【請求項43】
診断剤の製造のための、請求項26から34までのいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項44】
カーゴ分子が、診断マーカーである、請求項43記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−521908(P2009−521908A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547861(P2008−547861)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010271
【国際公開番号】WO2007/076904
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】