説明

細胞遊走調節化合物

ここに記載される発明は、化合物(I)に関するものであり、これらの化合物は、細胞の遊走を調節し、また例えば創傷治癒、癌の伝播および血管新生における用途が見出される。式(I)における全ての定義は、請求項1と同様である。
【化1】


(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞の遊走を調節し、また例えば創傷治癒、癌の進行および血管新生における用途が見出される、化合物に係るものである。
【背景技術】
【0002】
遊走刺激因子(MSF)は、胎児性皮膚および共通ヒト腫瘍における、上皮およびストローマ細胞によって発現される、ストレス-応答分子の一つである。MSFは、通常は健常な成人の皮膚には存在しないが、一時的に創傷治癒の際に再-発現される。ヒト組換えMSFは、細胞遊走の刺激(ターゲット:癌細胞、角質細胞、皮膚線維芽細胞または内皮細胞)、線維芽細胞によるヒアルロナン合成の刺激、およびインビボおよびインビトロにおける血管新生に関連して、多数の有力な生物活性を示す(S. L. Schor, I. R. Ellis, S. J. Jones, R. Baillie, K. Seneviratne, J. Clausen, K. Montegi, B. Vojtesek, K. Kankova, E. Furrie, M. J. Sales, A. M. Schor, R. A. Kay. Cancer Res., 2003, 63, 8827;およびS. L. Schor, A. M. Schor, R. P. Keatch, J. J. F. Belch., 創傷治癒マニュアル、マグロウヒル(The Wound Healing Manual McGraw Hill), N.Y., 2005, pp. 109-121)。
【0003】
MSFは、エキソンIII-1aおよび-1bを分離するイントロンの読み過ごしを含む、正常な交互スプライシングのバイパスによって、一次フィブロネクチン遺伝子転写産物から製造される、フィブロネクチンの切頭イソ型である。イントロンの保留は、固有の30bpコード配列の封入を結果する。MSFタンパク質は、結果としてフィブロネクチンの70kDaなるN-末端と同一であり、9つのI型および2つのII型モジュールを含み、またモジュールIII-1aによってコードされる配列およびあらゆる以前に記載された「完全な長さの」フィブロネクチンのイソ型には存在しない、固有のデカマーで終端している。
IGD(イソロイシン、グリシン、アスパラギン酸塩)トリペプチドモチーフ、即ち該フィブロネクチンI型モジュールの高度に保存された特徴は、MSFの第三、第五、第七および第九構成I型モジュール内に存在する(図1) (R. Hynes, 'フィブロネクチンズ(Fibronectins)', スプリンガーフェアラーグ(Springer-Verlag), N.Y., 1990)。興味深いことに、該IGDモチーフを含む、合成トリマーおよびテトラマーペプチドは、MSFによって示される生物活性と同様な生物活性を呈する(S. L. Schor, I. Ellis, J. Banyard, & A. M. Schor, Journal of Cell Science, 1999, 112, 3879)。更に、インビトロでの突然変異誘発およびIGD-組換え構築物の分析は、ターゲットフィブロネクチンに及ぼすMSFのモトゲン性(細胞遊走促進)(motogenic)活性が、該IGD配列によって媒介されることを明らかにした。
【0004】
研究は、関連するRGDアミノ酸モチーフ(第10のIII型反復モジュール内に位置する)と、負のフィブロネクチンおよびその細胞-結合ドメイン両者の、細胞遊走刺激効果の仲介とを関連付けた。重大なことに、小さなRGD-含有合成ペプチドは、細胞の遊走を刺激しなかった。事実、これらのペプチドは、レセプタの連結に対して競合することにより、該RGDモチーフを含む大きなタンパク質ドメインの、接着および遊走刺激活性を阻害した。
WO 99/02674として公開された国際特許出願は、該IGDモチーフを含有するペプチドおよび細胞遊走調節体としてのその使用に関する。
MSF/IGD生物活性を発現し、また該IGDトリペプチドと比較して、改善された安定性を示す分子を提供する必要性がある。このような分子は、障害を受けた創傷治癒性、および細胞遊走および血管新生を刺激する必要がある、他の病理的状態を持つ患者を管理するための、治療薬として有用であり得る。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的の一つは、MSFおよび/またはIGDの生物活性、例えば刺激および/または阻害活性を持つIGD模擬分子を提供することにある。
本発明の第一の局面によれば、以下の式(I)で表される化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体を提供する:
【0006】
【化1】

(I)
【0007】
ここで、R1は、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、R5に結合した、カルボン酸またはそのカルボキシレートエステル(その等配電子体を含む)であり;
R3は、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から選択され、R3は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から選択される基を介して、R7と結合することができ;
R4およびR6は、夫々存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)m-からなる群から、独立に選択され;
R5は、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R7は、存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R8は、O、S、Se、NR9またはCR10R11からなる群から選択され;
【0008】
R9は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から、独立に選択され;
R10およびR11は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、シアノ基、カルバモイル基、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ケトン基、-S(O)NR12R13または-S(O)R14からなる群から、独立に選択され、ここでR12、R13およびR14は、各々独立に、上記R3について与えられたものと、同一の定義を有し;
nは、1〜25であり;
mは、1〜4であり;および
Xは、ヘテロ原子であり;
但し、上記環Aは、6-員以上の環であることを条件とする。
【0009】
式(I)において、例えばR1のアリール基は、5-または6-員の単環式アリールまたはへテロアリール環構造、または他の多環式アリールまたはへテロアリール基であり得る。
フェニル基が、6-員のアリール基の一例である。
典型的には、該へテロアリール構造におけるヘテロ原子は、酸素または窒素原子から選択される。
フリルおよびピロリル基は、夫々酸素または窒素へテロ原子を含む、5-員のヘテロアリール基の例である。
ピリジニルおよびピリミジニル基は、夫々酸素または窒素へテロ原子を含む、6-員のヘテロアリール基の例である。
ナフチル基は、2つの縮合6-員環として形成された、10個の炭素原子を含む骨格を持つ、多環式アリール基の一例である。
【0010】
上記のように、該R1基は、1またはそれ以上の位置において置換されていてもよく、また適当な置換基は、各置換位置において、R10およびR11を定義した置換基から、独立に選択できる。
これらの置換基は、R1基と、直接または-O-、-S-、-N-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、結合することができる。ここで、n、R10およびR11は、前に定義したこれらと同一の定義を有する。
上記の如く、R2は、カルボキシエステルの等配電子体(またはアイソスター)(isosteres)を含み、その一例はアミドである。等配電子体は、同一数の全電子または価電子を、同一の配列で持つ結果として、別の異なる化合物と類似する諸特性を呈する化合物、また異なる原子からなり、かつ必ずしも同一数の原子を含む必要のない化合物として定義できる。
該アミドの窒素原子は、置換または未置換であり得、例えば典型的な置換基は、R9を定義する置換基から選択できる。
場合により、nは、また1〜10なる範囲の値、あるいはまた1〜4なる範囲の値をとることができる。
Xが選択することのできる適当なヘテロ原子は、任意のO、S、P、Se、SiまたはAsを包含する。
【0011】
環Aが、6-員以下の環であることによって、我々は、例えばR4が存在しない場合において、R6およびR7が存在しなければならないことを意味する。あるいはまた、R4およびR6が存在せず、かつR7が、-(CR10)m-基である場合、mは、少なくとも2なる値をとるべきであり、このことは該環Aが6-員環であることを保証する。
好ましくは、環Aは、7-員環である。
式(I)の好ましい化合物は以下の式(II)を持つもの、またはこれらの生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体である:
【0012】
【化2】

(II)
【0013】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、上で定義した通りであり、
R15は、-O-、-S-または-NR9-から選択され、ここでR9は、前に本明細書で定義した通りであり、
R16は、独立に、R9を規定するものから選択される。
好ましくは、式(II)における環Aは、7-員環である。
式(I)または(II)において、好ましくは、および独立に、即ち単独でまたは組み合わせとして、
R1は、フェニル基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CH2)n-から独立に選択される基を介して、R5と結合した、カルボン酸アルキルエステルであり;
R3およびR16は、独立に、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基から選択され;
【0014】
R4は、-O-または-NR9-であり、ここでR9はHまたは分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R5は、-(CR10)m-基であり、ここでR10は、前に定義したとおりであり;
R6はCH2であり;
R7は、前に定義した通りであり;
R8はOまたはSであり;
R15は、前に定義した通りである。
好ましくは、R2は、-(CH2)n-を介して、R5と結合しており、R4およびR7は、各々-NR9-であり、ここでR9は、Hまたは分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり、R15は-O-である。
従って、本発明の好ましい化合物は、以下の式(III)で表されるもの、またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体である:
【0015】
【化3】

(III)
【0016】
ここで、R17およびR20は、各々独立に、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基から選択され;
R18は、Hまたは分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;
R19は、CO2R21であり;
R21は、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;および
nは、前に定義した通りである。
【0017】
理論に拘泥しようとは思わないが、本明細書に記載した化合物の有用性は、本明細書において言及する、遊走刺激因子(MSF)において見出された、IGDトリペプチドモチーフを模倣する、該分子の能力に関連しているものと考えられる。該文字I、GおよびDは、標準的なペプチド命名法に関連しており、従って夫々イソロイシン、グリシンおよびアスパラギン酸を意味し、従ってIGDは、トリペプチド:Ile-Gly-Aspを表す。
fnI-5およびfnI-7モジュール(これらは、図1に示されている)に関して入手できるNMRによる構造上の情報の、注意深い検討は、該所定のIGDモチーフが、緊密に構造化したペプチド屈曲部(turn)(図2)として存在する。結果的に該関連する細胞レセプタによって認識されるものは、この高度に保存された構造であると考えられる(M. Baron, D. Norman, A. Willis, & I. D. Campbell, Nature, 1990, 345, 642; M. J. Williams, I. Phan, T. S. Harvey, A. Rostagno, L. I. Gold, & I. D. Campbell, Journal of Molecular Biology, 1994, 235, 1302;およびA. D. Becke, Journal of Chemical Physics, 1993, 98, 1372)。
【0018】
fnI-5およびfnI-7における該IGD含有ループが、(殆ど構造化されていない、また可撓性の、公知のRGD含有ループの大部分とは違って)厳密に規定されるという観測は、該fnI構造において観測されたものと類似する、幾何学的および立体-電子的な配列を示し、また結果的に該MSF (IGD)レセプタによって認識され得る、小分子IGDペプチド模擬体を開発するための、適切な基礎を与える。上首尾のレセプタ認識は、IGDペプチドのドーズ-応答曲線と類似する、ドーズ-応答曲線に、完全なMSFのものにまで拡張することによって、翻訳することができる。
MSFは、細胞遊走の刺激、線維芽細胞によるヒアルロナン合成の刺激、血管新生(新規な血管の形成)および腫瘍成長に関連する生物活性を示し、結果として本発明の化合物は、医薬において有用である。
従って、本発明の第二の局面によれば、医薬で使用するための、本発明の第一の局面による化合物、例えば上記した式(I)、(II)または(III)で表される化合物が提供される。
【0019】
特に、如何なる特定の理論にも拘泥するつもりはないが、MSFのアゴニストは、緩慢に治癒する創傷の治癒過程を処置しおよび/または促進するのを補助するものと予想される。MSFのアンタゴニストは、多くの腫瘍が脈管化を促進するためにMSFを利用しているので、腫瘍の成長を阻止しまたは遅らせるために有用であり得る。
従って、本発明は、結果としてMSFのアゴニストまたはアンタゴニストとしての、前に定義されたような化合物を含む。
成熟した哺乳動物において、MSFは、病理的な状況以外において殆ど検出されないので、MSFのアンタゴニストは、腫瘍の脈管化、成長および転移を、選択的に、即ち該哺乳動物の正常な成長メカニズムに影響を及ぼすことなしに、遮断することができるものと考えられる。
本発明の第三の局面によれば、本発明の第一の局面による化合物、例えば上記した式(I)、(II)または(III)で表される化合物を、製薬上許容されるその担体と共に含有する薬理組成物が提供される。
【0020】
損なわれた細胞遊走は、しばしば、創傷の治癒が最適でない、臨床的な状態の一特長となり、またこれらの状態の下での細胞遊走の刺激が、有利であることを立証し得る。逆に、高いまたは適当でない細胞遊走は、腫瘍の侵襲、病理的な血管新生、炎症および線維症を包含する、幾つかの病理的な状態の特長の一つである。IGD生物活性の阻害剤が、これらの状態の治療において有用であることを立証することができる。
本発明の第四の局面によれば、創傷治癒のための、あるいは細胞遊走の変調を要する他の病理的状態において使用するための、医薬の製造における、本発明の第一の局面による化合物、例えば上記したような式(I)、(II)または(III)で表される化合物の使用法が提供される。
例えば、本発明の化合物は、手当を必要とする状況にとって適した、該IGD生物活性を促進しまたは阻害するのに利用することができる。
【0021】
それ故に、該化合物は、細胞遊走および/または血管新生の刺激、特に創傷治癒または歯周組織の再生、または腫瘍の侵襲および転移の阻害等における細胞遊走の阻害、病理的な血管新生、炎症および線維症の阻害のために使用できる。
創傷治癒の促進は、糖尿病に罹った、および年長の患者等における、慢性で治療に対して抵抗性を持つ恐れのある潰瘍、例えば脚部の潰瘍および床ずれの治療において、特に有利である。
本発明の化合物は、また角膜創傷の治療においても使用することができる。
本発明の第五の局面によれば、細胞遊走を調節する方法が提供され、該方法は、細胞遊走を調節することが望ましい部位に、有効量の、本発明の第一の局面による化合物、例えば上記したような式(I)、(II)または(III)で表される化合物を適用することを含む。
【0022】
本発明の第五の局面による方法に従って、生体外、即ちインビトロにて、例えば細胞培養において、細胞遊走を調節することができ、あるいは細胞遊走は、インビボにて調節することも可能である。
遊走は、癌細胞、角質細胞、皮膚線維芽細胞または内皮細胞から選択される細胞内で調節することができる。
線維芽細胞の遊走を調節することが好ましい。
本明細書に記載した化合物の一般式において、アルキル基は、独立にC1-C22アルキル基、好ましくはC1-C10アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル基であり得る。
アルケニル基は、独立にC2-C22アルケニル基、好ましくはC2-C10アルケニル基、好ましくはC2-C4アルケニル基であり得る。
アルキニル基は、独立にC2-C22アルキニル基、好ましくはC2-C10アルキニル基、好ましくはC2-C4アルキニル基であり得る。
【0023】
該アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換のものであり得る。例えば、典型的な分岐アルキルは、イソ-プロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、3-メチルブチル、3,3-ジメチルブチルおよびその変形、およびこれらの異性体を含む。
本明細書に記載するような、該アルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、置換されていてもよく、また該置換基は、任意の化学的な部分、例えばヒドロキシル、置換または未置換のアミノ基、置換または未置換のアミド基、ハロゲン原子(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード)、アルコキシ基、チオ基、ニトロ基、カルボキシ基、エステル基、シアノ基、またはアリール基(例えば、フェニル、ナフチル(naphyl)およびピリジル基)であり得る。
該アルケニル基中の二重結合の幾何学的形状は、cis-またはtrans-形状であり得る。
【0024】
本発明による化合物の製薬上許容される塩の例は、有機カルボン酸、例えば酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、ピルビン酸、シュウ酸、フマール酸、オキサロ酢酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸および琥珀酸;有機スルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸;および無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸およびスルファミン酸との酸付加塩類を含む。
本発明の化合物の生理的に機能性の誘導体は、体内でその親化合物に転化することのできる誘導体である。また、このような生理的に機能性の誘導体は、「プロ-ドラッグ」または「バイオプリカーサ」とも呼ぶことができる。本発明の化合物の生理的に機能性の誘導体は、インビボで加水分解可能なエステルを含む。
【0025】
本発明の化合物は、様々な立体異性体形状で存在することができ、また上において定義した如き本発明の化合物は、エナンショマーおよびラセミ混合物を含む、全ての立体異性体形状およびその混合物を包含するものであることが理解されるであろう。本発明は、その範囲内に、式(I)、(II)または(III)で表される化合物の個々のエナンショマー、並びにこのようなエナンショマーの完全なまたは部分的なラセミ混合物を含む、任意のこのような立体異性体形または立体異性体形の混合物の使用をも含む。
一般式(III)で表される本発明の化合物の好ましい配置は、以下の式(IIIA)によって表される:
【0026】
【化4】

(IIIA)
【0027】
ここで、R17、R18、R19、R20は、上記定義通りである。
本発明の好ましい化合物は、以下の式(IV)を持つ:
【0028】
【化5】

(IV)
【0029】
式(IV)で表されるこの化合物は、新規化合物であると考えられ、それ故にこれは本発明の更なる特徴を構成する。
好ましくは、位置2において示した炭素原子に関する立体化学は、S-配置により規定される。
本発明の化合物は、当分野においてまた以下において説明するように、容易に利用できる試薬および技術を利用して製造することができる。本発明の化合物を製造するための合成経路における、新規な中間体は、本発明の分子を製造するための一般的適用にとって、重要な分子であり得る。従って、本発明を、これら新規な中間体化合物をも含むように拡張する。
本発明は、更に本明細書において提唱する疾患、病状または状態の治療または予防法をも提供するものであり、該方法は、本明細書に詳述した化合物を、その投与を必要とする患者に投与する工程を含む。
【0030】
該患者は、典型的には動物、例えば哺乳動物、特にヒトである。
本発明に従って使用するために、本明細書において記載される本発明の化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体は、薬理処方物として与えることができ、該処方物は、該化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体を、1種またはそれ以上の、製薬上許容されるその担体、および場合により他の治療用または予防用の成分と共に含有する。該担体は、該処方物中の他の成分と相溶性であり、またそのレシピエントに対して無害である、という意味で許容されるものである必要がある。
薬理処方物は、経口、局所(皮膚、バッカル、および舌下投与を含む)、直腸または腸管外(皮下、皮内、筋肉内および静脈内投与を含む)、例えば吸入による経鼻および経肺投与に適したものを包含する。該処方物は、適当な場合には、バラバラの投与単位として有利に与えることができ、また薬学の分野において周知の方法の何れかによって、製造することができる。全ての方法は、活性化合物と、液状担体あるいは微粉砕した固体担体またはこれら両者とを結合し、次いで必要ならば該生成物を所望の処方に成型する工程を含む。
【0031】
該担体が固体である、経口投与に適した薬理処方物は、最も好ましくは単位用量処方物、例えば各々所定量の活性化合物を含有する、大型丸剤、カプセル剤または錠剤として与えられる。錠剤は、場合により1種またはそれ以上の副成分と共に、打錠または成型によって作ることができる。圧縮錠剤は、適当な装置内で、場合によりバインダ、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑化薬剤、界面活性剤または分散助剤と混合した、粉末または顆粒等の自由流動状態にある活性化合物を、打錠することによって製造できる。成型錠剤は、活性化合物と、不活性液状希釈剤とを成型することによって作ることができる。錠剤は、場合により被覆することができ、また未被覆の場合には、場合によって刻み目を付することが可能である。カプセル剤は、活性化合物を単独で、または1種またはそれ以上の副成分と共に、カプセルシェル内に充填し、次いでこれらを通常の方法で封止することにより製造できる。カシェ剤は、カプセル剤と同様であり、ここで活性化合物は、任意の副成分と共に、ライスペーパー製の包囲体内に封入される。活性化合物は、また例えば投与前に水に懸濁し、あるいは食品に散布することのできる、分散性の顆粒剤としても処方できる。該顆粒剤は、例えばサシェット(sachet)中に包装することができる。担体が液体である、経口投与に適した処方物は、水性または非水性液体中に分散させた溶液または懸濁液として、あるいは水中油型の液状エマルションとして与えることも可能である。
【0032】
経口投与用の処方物は、制御放出型投与剤系、例えば錠剤を含み、そこでは、活性化合物は、適当な放出-制御マトリックス中に処方されており、あるいはフィルムで被覆されている。このような処方物は、予防的利用にとって、特に有利である。
該担体が固体である、直腸投与に適した薬理処方物は、最も好ましくは単位投与用の坐剤として与えられる。適当な担体は、ココアバター、および当業界で通常利用されている他の材料を含む。該坐剤は、活性成分と柔軟化させたまたは溶融した該担体とを混合し、次いで金型内で冷却または成型することにより作ることができる。
腸管外投与に適した薬理処方物は、水性または油性の賦形剤中に、活性化合物を分散させた、無菌溶液または懸濁液を含む。
【0033】
注射用製剤は、ボーラス注射または連続的輸注に適したものであり得る。このような製剤は、該処方物を導入した後に、使用に供するまで、封止されている、単位用量または複数回の用量を含む容器で与えることができる。あるいはまた、活性化合物は、使用に先立って、適当な賦形剤、例えば無菌、発熱物質を含まない水で再生される。
活性化合物は、また長期作用性のデポー製剤として処方でき、これは筋肉内注射により、または移植、例えば皮下または筋肉内移植により投与することができる。デポー製剤は、例えば適当なポリマーまたは疎水性材料、またはイオン-交換樹脂を含むことができる。このような長期作用性の処方物は、予防的な利用にとって特に有利である。
口腔を介する肺投与に適した処方物は、活性化合物を含み、また望ましくは0.5〜7μmなる範囲の径を持つ粒子が、そのレシピエントの気管支樹内に送達されるように与えられる。
【0034】
一つの可能性として、このような処方物は、細かく砕いた粉末形状にあり、これらは、有利には吸入デバイスにおいて使用するための、例えば適当にはゼラチン等の貫通性のカプセル剤として、あるいはまた活性化合物、適当な液体またはガス噴射剤および場合によっては界面活性剤および/または固体希釈剤等の他の成分を含む、自己推進性処方物として与えることができる。適当な液体噴射剤は、プロパンおよびクロロフルオロカーボンを含み、および適当なガス噴射剤は、二酸化炭素を含む。また、自己推進性処方物は、活性化合物が、溶液または懸濁液の液滴として分配される場合において、使用することもできる。
【0035】
かかる自己推進性処方物は、当分野において公知のものと類似しており、確立された手順により製造できる。これらは、適当には、所定の噴霧特性を持つ手動にてまたは機械的に動作するバルブを備えた容器内に収容して与えられ、有利には、該バルブは、一定体積、例えば25〜100μLを、その各動作中に、放出する計量型のものであり得る。
更なる可能性として、活性化合物は、アトマイザーまたはネブライザーにおいて使用するための、溶液または懸濁液の形状をとることができ、それにより加速された気流または超音波攪拌を利用して、吸入用の微細な液滴のミストを製造することができる。
【0036】
経鼻投与に適した処方物は、経肺投与に関連して上で説明したものと、一般的に類似する製剤を含む。分配に際して、このような処方物は、鼻腔内に留まることができるように、望ましくは10〜200μmなる範囲の粒子径を持つべきであり、これは、相応しくは、適当な粒子径を持つ粉末を使用するか、あるいは適当なバルブを選択することにより達成できる。他の適当な処方物は、鼻の通路を介して、該鼻に近接して維持された容器からの、迅速な吸入によって投与するために、20〜500μmなる範囲の粒径を持つ粗い粉末を含み、また該経鼻液滴は、水性または油性溶液または懸濁液中に、0.2〜5%(w/v)なる範囲の量の活性化合物を含む。
上記担体成分に加えて、上に説明した薬理処方物は、適当な1種またはそれ以上の追加の担体成分、例えば希釈剤、バッファー、矯味剤、バインダ、界面活性剤、増量剤、潤滑剤、保存剤(酸化防止剤を含む)等、および該処方物を、該意図されたレシピエントの血液に対して等張性とするために含められる物質を含むことができる。
【0037】
製薬上許容される担体は、当業者には周知であり、また0.1Mおよび好ましくは0.05Mのリン酸バッファーまたは0.8%生理塩水を含むが、これらに限定されない。更に、このような製薬上許容される担体は、水性または非水性溶液、懸濁液またはエマルションであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、食用油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばエチルオレエートである。水性担体は、生理塩水および緩衝媒体を包含する、水、アルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液を含む。腸管外賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルズデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳汁含有リンゲルズまたは固定油を含む。保存剤および他の添加剤も、存在しても良く、例えば抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガス等であり得る。
局所投与用の処方に適した処方物は、例えばゲル、クリームまたは軟膏剤として与えることができる。このような製剤は、例えば創傷または潰瘍部分の表面に直接塗るか、または治療すべき領域に適用することができる包帯、ガーゼ、メッシュ等の適当な支持体上に担持させることによって、該創傷または潰瘍に適用可能である。
【0038】
液体または粉末処方物を与えることも可能であり、これは治療すべき部位、例えば創傷または潰瘍部分上に直接噴霧または散布することができる。あるいはまた、包帯、ガーゼ、メッシュ等の適当な支持体を、該処方物で噴霧または散布し、次いで治療すべき部位に適用することも可能である。
獣医学的用途用の治療処方物は、有利には粉末または液状濃縮物形状であり得る。標準的な獣医学的処方物の実務においては、公知の水溶性賦形剤、例えばラクトースまたはスクロースを、該粉末に配合して、その物理的諸特性を改善することができる。従って、本発明の特に適した粉末は、50〜100%(w/w)なる範囲および好ましくは60〜80%(w/w)なる範囲の活性成分、および0〜50%(w/w)なる範囲および好ましくは20〜40%(w/w)なる範囲の公知の獣医学的賦形剤を含む。これらの粉末は、動物用の飼料に、例えば中間的なプレミックスとして、あるいは動物用の飲料水で希釈することによって、添加することができる。
本発明の液状濃縮物は、本発明の化合物または誘導体あるいはその塩を含むことが適当であり、また場合によっては、獣医学的に許容される水-混和性の溶媒、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、グリセロールフォルマール、または30%(v/v)までのエタノールと混合したこのような溶媒をも含むことができる。この液状濃縮物は、動物用の飲料水に投与することができる。
【実施例】
【0039】
本発明を、以下の非-限定的な実施例を参照しつつ説明する。
詳細な説明
化合物の合成
本明細書に記載したような化合物(IV)を、反応式1および2を参照しつつ、以下のような方法によって、製造した。
反応式1を参照すると、市販品として入手できるニトロセルロース3は、ラジカル条件下で正確にアルキル化され、次いでブロム化されて、ベンジリックブロミド(benzylic bromide)4を、少量の望ましからぬジブロミド5と共に、化合物の、分離できない混合物として生成した(D. D. Tanner, C. P. Meintzer, E. C. TsaiおよびH. Oumarmahamat, Journal of the American Chemical Society, 1990, 112, 7369; M. E. Krolski, A. F. Renaldo, D. E. RudisillおよびJ. K. Stille, Journal of Organic Chemistry, 1988, 53, 1170)。
【0040】
メチルアミンのベンジリックブロミド4および5への、効率的なSN2求核置換が、次に進行して、正確に夫々所定のベンジルアミン6および7を与える(B. C. Soderberg, S. R. RectorおよびS. N. O'Neil, Tetrahedron Letters, 1999, 40, 3657)。従って、新たに導入されたベンジリックアミンのBOC保護基は、ニトロベンゼン単位8および9を生成し、これらはパラジウム水素化条件下で、該ニトロ基および末端ブロミド官能基両者を還元して、遊離アミン単位10を、単一化合物として生成した(W. H. Miller, K. A. Newlander, D. S. EgglestonおよびR. C. Haltiwanger, Tetrahedron Letters, 1995, 36, 373)。
反応式2を参照すると、アニリン10の、ジメチルアセチレンジカルボキシレートによる縮合は、正確に進行して、予想されるジメチルジエステル11を生成した(W. E. Bondinell, W. H. Miller, F. E. Ali, A. C. Allen, C. W. DeBrosse, D. S. Eggleston, K. F. Erhard, R. C. Hatiwanger, W. F. Huffman, S.-M. Hwang, D. R. Jakas, P. F. Koster, T. W. Ku, C. P. Lee, A. J. Nichols, S. T. Ross, J. M. Samanen, R. E. Valocik, J. A. Vasko-Moser, J. W. Venlavsky, A. S. Wong, C.-K. Yuan., Bioorg. Med. Chem, 1994, 2, 897)。該アルケン二重結合の還元を含むパラジウム水素化は、次にラセミ混合物として、所定のジエステル12を与えた:
【0041】
【化6】

【0042】
最後に、該BOC保護基の効率的な除去は、優れた収率にて、遊離のベンジリックメチルアミン13を与えたが、このものは次に選択的に、隣接するメチルエステルと環化されて、化合物IVを生成した。
【0043】
【化7】

【0044】
化合物IVのNMR分析は、以下のデータを与えた:
1H NMR ( 300 MHz, CDCl3) δH 6.64 (1H, dd, J = 7.0, 2.4 Hz), 6.54-6.46 (2H, m), 5.41 (1H, d, J = 16.3 Hz), 5.03-4.97 (1H, m), 4.34 (1H, d, J = 4.2 Hz), 3.94-3.86 (2H, m), 3.66 (3H, s), 3.64 (1H, d, J = 16.2 Hz), 2.99 (3H, s), 2.98 (1H, dd, J = 15.8, 7.4 Hz), 2.61 (1H, dd, J = 15.8, 6.3 Hz), 1.76-1.69 (1H, m), 1.61 (2H, q, J = 6.6 Hz), 0.89。
【0045】
生物学的な評価
上記IGD模擬物質(IV)の効力および効能を、IGD合成ペプチドのモトゲン性(細胞遊走促進)(motogenic)活性を明らかにするために、以前使用された如き、3Dコラーゲンゲルアッセイにおいて、ヒト皮膚線維芽細胞の遊走についてテストした(S. L. Schor, I. Ellis, J. BanyardおよびA. M. Schor, Journal of Cell Science, 1999, 112, 3879)。
これらの結果をプロットし、また図3に示すグラフで表し、この図3においては、化合物(IV)はBDP 1と称されている。これらのデータは、テスト化合物の不在下での、コントロール線維芽細胞に対する、刺激率(fold-stimulation)として表されている。ベースライン(コントロール)遊走の範囲は、水平方向の点線によって示されている。重要なことに、該IGDペプチド模擬体(IV)は、同様なアッセイ条件下における、IGDSのものと類似する効力およびプロフィールで、ベル-型の用量-応答性を伴って、ターゲット細胞遊走を刺激した。コントロールの逆ペプチド(SDGI)は、このアッセイにおいて、生物活性を完全に欠いていた。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】フィブロネクチンI型のモジュール(fnI)の第一乃至第九構成モジュールを模式的に示す図である。該フィブロネクチン/MSF I型モジュールの一次配列が、太字で示された該IGD配列と共に、図示されており、また保存システイン位置は、明灰色のハイライトによって示されている。
【図2】該IGDモチーフの空間充填表示部分を含む、fnI-7骨格の構造を3-次元表示した図である。
【図3】化合物(IV)(BDP 1)および該合成ペプチドIGDSおよびSDGIの、線維芽細胞の遊走に及ぼす効果を示す、グラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬において使用するための、以下の式(I)で表される化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化1】

(I)
ここで、R1は、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、R5に結合した、カルボン酸またはそのカルボキシレートエステル(その等配電子体(isoteres)を含む)であり;
R3は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から選択される基を介して、R7に結合した、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から選択され;
R4およびR6は、夫々存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)m-からなる群から、独立に選択され;
R5は、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R7は、存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R8は、O、S、Se、NR9またはCR10R11からなる群から選択され;
R9は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から、独立に選択され;
R10およびR11は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、シアノ基、カルバモイル基、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ケトン基、-S(O)NR12R13または-S(O)R14からなる群から、独立に選択され、ここでR12、R13およびR14は、各々独立に、上記R3について与えられたものと、同一の定義を有し;
nは、1〜25であり;
mは、1〜4であり;および
Xは、ヘテロ原子であり;
但し、上記環Aは、6-員以上の環であることを条件とする。
【請求項2】
医薬において使用するための、以下の式(II)で表される請求項1記載の、化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化2】

(II)
ここで、R1は、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、R5に結合した、カルボン酸またはそのカルボキシレートエステル(その等配電子体を含む)であり;
R3は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から選択される基を介して、R7に結合した、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から選択され;
R4およびR6は、夫々存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)m-からなる群から、独立に選択され;
R5は、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R7は、存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R8は、O、S、Se、NR9またはCR10R11からなる群から選択され;
R9は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から、独立に選択され;
R10およびR11は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、シアノ基、カルバモイル基、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ケトン基、-S(O)NR12R13または-S(O)R14からなる群から、独立に選択され、ここでR12、R13およびR14は、各々独立に、上記R3について与えられたものと、同様な定義を有し;
nは、1〜25であり;
mは、1〜4であり;
Xは、ヘテロ原子であり;
R15は、-O-、-S-または-NR9-から選択され、ここでR9は、前にここで定義した通りであり、
R16は、独立に、R9を規定するものから選択され;
但し、上記環Aは、6-員以上の環であることを条件とする。
【請求項3】
医薬において使用するための、以下の式(III)で表される、請求項1または2記載の、化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化3】

(III)
ここで、R17およびR20は、各々独立に、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基から選択され;
R18は、Hまたは分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;
R19は、CO2R21であり;
R21は、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;および
nは、1〜25である。
【請求項4】
医薬において使用するための、以下の式(IIIA)で表される、請求項3記載の化合物:
【化4】

(IIIA)
ここで、R17、R18、R19およびR20は、請求項3において定義した通りである。
【請求項4】
医薬において使用するための、以下の式(IV)で表される化合物:
【化5】

(IV)
【請求項5】
創傷の治癒、潰瘍の治癒、腫瘍成長の阻害、病理的な血管新生の阻害、炎症の阻害または線維症の阻害において使用するための、請求項1〜4に記載の、式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物。
【請求項6】
細胞の遊走を調節する方法であって、該方法が、細胞遊走の調節が望まれる部位に、有効量の式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物を適用する工程を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項7】
該細胞遊走方法が、インビボまたはインビトロにて行われる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該方法を、癌細胞、角質細胞、皮膚の線維芽細胞または内皮細胞から選択される細胞に適用する、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の式(I)で表される化合物、またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化6】

(I)
ここで、R1は、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、R5に結合した、カルボン酸またはそのカルボキシレートエステル(その等配電子体を含む)であり;
R3は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から選択される基を介して、R7に結合した、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から選択され;
R4およびR6は、夫々存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)m-からなる群から、独立に選択され;
R5は、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R7は、存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R8は、O、S、Se、NR9またはCR10R11からなる群から選択され;
R9は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から、独立に選択され;
R10およびR11は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、シアノ基、カルバモイル基、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ケトン基、-S(O)NR12R13または-S(O)R14からなる群から、独立に選択され、ここでR12、R13およびR14は、各々独立に、上記R3について与えられたものと、同様な定義を有し;
nは、1〜25であり;
mは、1〜4であり;および
Xは、ヘテロ原子であり;
但し、上記環Aは、6-員以上の環であることを条件とする。
【請求項10】
以下の式(II)で表される、請求項9記載の化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化7】

(II)
ここで、R1は、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基であり;
R2は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から独立に選択される基を介して、R5に結合した、カルボン酸またはそのカルボキシレートエステル(その等配電子体を含む)であり;
R3は、直接または-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)n-から選択される基を介して、R7に結合した、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から選択され;
R4およびR6は、夫々存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-O-、-S-、-NR9-または-(CR10R11)m-からなる群から、独立に選択され;
R5は、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R7は、存在しても、存在しなくても良く、また存在する場合には、-N-、-(CR10)m-または-X-からなる群から選択され;
R8は、O、S、Se、NR9またはCR10R11からなる群から選択され;
R9は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基からなる群から、独立に選択され;
R10およびR11は、該基が現れる各場合において、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルケニル基、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキニル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基、カルボキシ基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、ホルミル基、シアノ基、カルバモイル基、ハロ(例えば、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ケトン基、-S(O)NR12R13または-S(O)R14からなる群から、独立に選択され、ここでR12、R13およびR14は、各々独立に、上記R3について与えられたものと、同様な定義を有し;
nは、1〜25であり;
mは、1〜4であり;
Xは、ヘテロ原子であり;
R15は、-O-、-S-または-NR9-から選択され、ここでR9は、前にここで定義した通りであり、
R16は、独立に、R9を規定するものから選択され;
但し、上記環Aは、6-員以上の環であることを条件とする。
【請求項11】
以下の式(III)で表される、請求項9または請求項10に記載の、化合物またはその生理的に許容される塩、エステル、または他の生理的に機能性のその誘導体:
【化8】

(III)
ここで、R17およびR20は、各々独立に、H、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基、または置換または未置換の単環式または多環式アリール基またはへテロアリール基から選択され;
R18は、Hまたは分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;
R19は、CO2R21であり;
R21は、分岐したまたは分岐していない、置換または未置換の直鎖または環式アルキル基であり;および
nは、1〜25である。
【請求項12】
以下の式(IIIA)で表される、請求項11記載の化合物:
【化9】

(IIIA)
ここで、R17、R18、R19およびR20は、請求項11において定義した通りである。
【請求項13】
以下の式(IV)で表される化合物:
【化10】

(IV)
【請求項14】
請求項9〜13に記載の式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物を、製薬上許容されるその担体と共に含むことを特徴とする、薬理組成物。
【請求項15】
創傷を治癒し、潰瘍を治癒し、腫瘍成長を阻害し、病理的な血管新生を阻害し、炎症を阻害し、または線維症を阻害する、医薬を製造するための、請求項9〜13に記載の、式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物の使用。
【請求項16】
遊走刺激因子(MSF)のアゴニストまたはアンタゴニストとして使用する、医薬を製造するための、請求項9〜13に記載の、式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物の使用。
【請求項17】
有効量の、請求項9〜13に記載の式(I)、(II)、(III)、(IIIA)または(IV)で表される化合物を、製薬上許容されるその担体と共に、その投与を必要とする患者に、投与する工程を含むことを特徴とする、創傷を治癒し、潰瘍を治癒し、腫瘍成長を阻害し、病理的な血管新生を阻害し、炎症を阻害しまたは線維症を阻害する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506017(P2009−506017A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527505(P2008−527505)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003140
【国際公開番号】WO2007/023273
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(507419839)ザ ユニヴァーシティー コート オブ ザ ユニヴァーシティー オブ ダンディー (8)
【Fターム(参考)】