説明

細菌を同定するための方法および装置

サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に同定するための方法が開示される。かかる方法は、サンプルを調製する工程(a)と検出および/または評価を行う工程(b)とを含んで成る。工程(a)では、少なくとも1つの蛍光標識を用いてサンプル中に含まれる少なくとも一部の細菌をラベリングする。工程(b)では、蛍光反射測光を用いて定量的および/もしくは定性的な検出ならびに/または評価を行う。なお、かかる方法を実施するための対応する装置も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、細菌を定量的および/または定性的に測定する請求項1に記載の方法に関する。更に、本発明は、細菌を定量的および/または定性的に測定する請求項27に記載の装置に関しており、特に上述の方法を実施するための装置に関する。また、本発明は、かかる装置の使用に関しており、特に、好ましく自動化された製造および/または品質管理を行うための装置の使用にも関する。
【0002】
工業分野、商業分野、家庭用分野、健康分野および食品分野などの種々の分野においては、多くの物質、原料および製品が微生物の点で安全となっていることが求められている。
【0003】
従って、例えばバリテリアおよび菌類等の種々の細菌の性質および数のモニタリングは、限られた狭い領域で行われる必要がある。
【0004】
最近では、品質保証のために、定量的な微生物学的分析法が用いられている。かかる手法は、調べられる材料に存在する個々の細菌を、縞またはコロニーとして肉眼で確認できるように増殖させることに基づいている。そのために、標準的には、固体栄養基材または液体栄養溶液(もしくは液体栄養媒体)で細菌を増殖させる培養法を用いている。常套的な培養法では、かかる手法および細菌の種類にもよるが、バリテリアおよび菌類の検出に数日もの日数を要してしまう。
【0005】
現在用いられているインキュベーション法では、一般的に、サンプルを栄養媒体(典型的には寒天ベースの栄養媒体を含んだ培養ざら)に植菌して、一週間までの期間において、個々の細菌に適した温度(一般的的には高い温度)で培養している(例えば、インキュベーター・キャビネットを用いて培養を行う)。当業者にとって、サンプル中に存在するバクテリアの性質および存在程度(または広がり)の推定は、得られる培養物の生育状態および形態に基づいて行うことができる。
【0006】
このような技術では、サンプルに含まれた非定量な細菌を培養しなければならず、関連する情報は一週間待たなければ得ることができない点で非常に不利益である。
【0007】
そのような問題を解決するために、微生物検出を迅速化して、感度を高めた一連の方法が既に開発されている。その方法には、細菌に対して選択的または非選択的に染みをつけた後、かかる細菌を検出する微視的手法が含まれているだけでなく、細菌の遺伝子物質を増幅させた後で、それをゲル電気泳動によって検出するイムノアッセイ法および直接的な分子生物学法に基づく手法が含まれている。
【0008】
最近では、いわゆる新しい「迅速検出法(fast detection method)」を用いて、検出時間を数日から数時間(またはそれ以下の時間)に短縮する試みがなされている。「迅速検出法」は既に一部(インピーダンス、生物発光など)で用いられているものの、より迅速かつより直接的に行う方法が望まれている。なぜなら、既に確立された「迅速検出法」では、時間に依存した生物材料の濃縮に基づいているために、分析に際しては依然24時間〜48時間程度の時間がかかってしまうからである。
【0009】
ごく最近では、常套的な「迅速検出法」および培養プロセスに代わって、光学的蛍光法がますます用いられつつある。例えば、直接エピ蛍光フィルター法(DEFT)は、「生きている/死んでいる」細菌を1時間以内に定量的に測定することができる直接的な方法である。この非特異的な光学的蛍光法は、定性手法として学問的な研究分野で、25年以上も前から知られている(例えば、ペティファー(Pettipher)らの「App.Environ.Microbiol.44(4):809−13、1982」を参照のこと)。そのような光学的蛍光法は、1990年代初頭以来からは、定量的な研究手法として工学的用途(例えば、酒造業、酪農業、食品工業などにおける用途)に用いられることが増えてきた(ハーミダ(Hermida)らの「J.AOAC Int.83(6):1345−1348、2000」およびニッツシェ(Nitzsche)らの「Brauwelt、No.5、177−178、2000」)。欧州の明細書(EN13783:2001:「エピ蛍光フィルター技術/好気性中温菌計数(DEFT/APC)スクリーニング法を用いた食品照射検出法(Detection of irradiation of foods using epifluorescence filter technology/aerobic mesophilic germ count (DEFT/APC) screening method)」)には、DEFTスクリーニング法を用いて、照射された食品を調べることが記載されている。
【0010】
選択的に作用する蛍光染料は、インビボ検出(in vivo detection)用の実験キットとして種々のメーカー(例えば、Molecular ProbesおよびEasyProof Laborbedarf GmbH)から市販されている。幾つかの供給業者(例えば、ケムネックス社(Chemunex Company))からは、機器システムが販売されている。例えばケムネックス社から市販されているシステムは、少ない細菌レベルの測定に際して24時間の濃縮段階を必要とするフローサイトメトリー法の原理(L.Philippe、SOEFW Journal 126、28−31、2000)に基づいているか、または、「生きている菌と死んでいる菌」とが判別されない微視的なフィルター法(ワルナー(Wallner)らの「PDA J.Pharm.Sci.Technol.53(2):70―74、1999」)に基づいている。
【0011】
いわゆる膜フィルターミクロコロニー蛍光法(MMCF)(例えば、ジェイ・バウムガート(J.Baumgart)の「Microbiological investigation of foods、Berh’s...Verlag 1993、3rd edition、pp.98ff.」参照))では、膜フィルター上において、サンプルの調製またはサンプル中に存在する細菌の調製が行われている。かかる手法の不利益な点を挙げれば、まず、時間のかかる細菌の予備濃縮というものを行わなければならず、また、引き続いてエピ蛍光顕微鏡法を実施するために膜フィルターの前処理(特別な媒体で湿らせた後、必要な大きさにして、乾燥させる処理)を行う必要があることである。更に、エピ蛍光顕微鏡またはUVランプの下、蛍光ラベリングされたコロニーをカウントして、細菌数を求めなければならないことも不利益な点である。
【0012】
上述した手法の幾つかは、数時間以内に結果が得られるものの、必要な検出機器およびユーザーに必要とされる知識の点では一般的に非常に複雑であるため、今のところ、通常の用途に対しては十分なものではない。また、同定および感度の点で個々の方法は制限されている。更に、上述した手法の幾つかは、細菌検出限界が高すぎるので、検出前の培養が通常必須とされる。
【0013】
更に、常套の培養法および「迅速検出法(対応する濃縮工程を含んでいる)」の操作原理に対しては、以下で説明するような根本的に不利益な点がある。
【0014】
栄養媒体の選択は、増殖が可能となる微生物の種類の点で非常に重要となる。選択的な栄養媒体は、優れた効果を発揮するものの、生理学的性能を有する微生物しか増殖することができない点で制約がある。最近の研究結果によると、わずか5%の微生物しか培養できないことが判明している。それゆえ、常套的な手法では、サンプル内に細菌が実際に含まれているにもかかわらず、しばしば偽陰性結果が得られることになる。
【0015】
更に、分析手法の情報供給能力というものは、情報が得られる時間の点で制約がある。濃縮が完了した後では、全ての細菌が、目視できる程度に増殖している必要がある。好ましくないサンプリング条件または生育条件に起因して成長が遅くなると、誤ってマイナスの結果がもたらされてしまう。それゆえ、バクテリアおよび菌類を検出する常套的な培養法では、しばしば、数日かかってしまう。そのため、微生物的な結果を得るのが遅くなり、製造プロセスが影響を受けてしまう。
【0016】
細菌の培養に基づいた検出方法では、増殖可能な生きている細菌だけが検出できることになる。しばしば、既存の製品保存剤(または防腐剤)は、汚染要因物を死滅させる。その場合、製品に存在する「死んでいる」細菌は検出できないので、製品またはパッケージングの衛生面の問題を発見できなくなるか、または、そのような衛生面の問題が悪影響の生じた場合(即ち、保存効果もしくは防腐効果が発揮できなくなった場合)にのみ検出されることになる。
【0017】
それゆえ、本発明では、細菌の定量的測定および定性的測定にとって適当な方法であって、上述の不利益な点を少なくとも部分的に解消した方法が供される。また、本発明では、かかる方法を実施するための装置も供される。
【0018】
それゆえ、本発明の対象は、
サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定する方法であって、
(a)サンプルを調製する工程、および
(b)検出(もしくは検知)および/または評価を行う工程
を含んで成り、
工程(a)では、少なくとも1つの蛍光標識(または蛍光ラベル、fluorescent label)を用いることによって、サンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングし、
工程(b)では、定量的および/または定性的な検出および/または評価を行い、また
工程(b)で行う検出および/または評価は蛍光反射分光法または蛍光反射測光(fluorescence reflection photometry)によって行う方法である。なお、本明細書において、「蛍光反射分光法」および「蛍光反射測光」という2つの用語は同じ意味で用いている。それらの原理については以下で更に詳細に説明する。
【0019】
本発明の最も重要なコンセプトは、サンプル中に存在する細菌をまず蛍光ラベリングした後、蛍光反射測光によって定量的および/または定性的な評価または検出を行っていることである。以下で更に詳細に説明するが、蛍光反射測光を用いることによって、複雑な操作をほとんど要することなく比較的簡単に検出または評価することができるという大きな利点がもたらされる。なぜなら、蛍光ラベリングした細菌は実質的に更に調製する必要がないからである。特に、細菌の濃縮(予備濃縮)といった時間を要して手間のかかる工程が省かれており、蛍光反射測光を用いた本発明の検出または評価によって、「真の」細菌数またはサンプル中に存在する細菌数を直接的に得ることができる。
【0020】
それゆえ、本発明の方法の特別な態様では、適当な蛍光標識を用いて細菌(特に微生物)を蛍光ラベリングすることと、引き続いて簡単な検出法または評価法を用いて(即ち、蛍光反射測光によって)蛍光ラベリングされた細菌を検出することとが組み合わされている。なお、対応する装置も本発明の特別な態様に含まれる。蛍光反射測光法においてはサンプルは僅かに照射されるだけなので、蛍光標識の脱色が防止され、従って、測定結果のずれが効果的に防止されることになる。
【0021】
蛍光反射分光法または蛍光反射測光による検出または評価では、対応する波長で照射した際に、蛍光ラベリングされた細菌に起因して放出(または放射)される光または放出される光の強度が検知されることになる。なお、放出される光は、サンプル中に存在する細菌数と相関関係を有している。反射分光法および反射測光についての更に詳細な情報は、例えば、「Roempp, Chemical dictionary, Thieme Verlag, 10th edition」のタイトル「レフレクション(Reflection)」および「レフレクション・スペクトロスコピー(Reflection spectroscopy)」(Vol.5、pp.3756−3757)、タイトル「フォロメトリー(Photometry)」(Vo.4、pp.3312−3314)、ならびに引用されている文献が参照される。なお、かかる文献の全内容は、引用することにより本明細書に組み込まれる。比較的手間のかかるコロニーのカウント(または計数測定)、およびカウントに先立って行われる細菌濃縮というものは、例えば膜フィルターミクロコロニー蛍光法(MMCF)の際に用いられるエピ蛍光顕微鏡法を実施する場合には依然必要とされるものであるが、本発明では、そのようなカウントおよび細菌濃縮が回避されている。
【0022】
本発明の方法に用いるのに適した蛍光反射測光または蛍光反射分光法は、当業者にとっては、かかる方法に対して通常使用される市販のパーツを用いることによって容易に設計することができる。
【0023】
「サンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングし、…」というフレーズは、特に、サンプル中に存在する特定の細菌もしくは細菌の種類のみが測定される場合、サンプル中に存在する特定の細菌のみが制御されてラベリングされる(一般的に細菌に特異的な蛍光標識を用いてラベリングされる)ことを意味しており、その一方で、サンプル中に存在する全ての細菌が測定される場合では、サンプル中に存在する全ての細菌がラベリングされる(細菌に非特異的な蛍光標識または細菌に特異的な種々の蛍光標識の混合物を一般的に用いてラベリングされる)ことを意味する。
【0024】
本発明の方法では、適当なキャリブレーション(または検量)を用いることによって、蛍光反射測光によって得られた測定値に基づいてサンプル中に存在する細菌の数を決定することができる。なお、サンプル中に存在する全ての細菌が蛍光ラベリングされる場合では、その蛍光ラベリングされた全ての細菌の数を決定することができ、特定の細菌のみが蛍光ラベリングされる場合では、その蛍光ラベリングされた特定の細菌の数を決定することができる。以下で更に説明を行うが、細菌に特異的な蛍光標識を使用することによって、サンプル中に存在する特定の細菌に関して定性的な情報を得ることが可能となる。
【0025】
一般的に、工程(a)で行われるサンプル調製に際しては、蛍光ラベリングされた細菌が膜フィルター(例えば、ポリカーボネート膜フィルター)に適用されるが、かかる膜フィルターは多孔質であることが好ましい。一般的に、細菌が保持されるように及び/または細菌に対して不透過性を有するように膜フィルターを構成する必要がある。そのため、膜フィルターの孔サイズを、サンプル中に存在する細菌よりも小さくなるように選択する必要がある。以下で更に説明するが、各々のサンプルの参照用として用いられる内部キャリブレーションまたは標準化が得られるように、膜フィルターの一部または領域、一般的には膜フィルターの周縁では細菌が存在(または生息)していないことが必要とされる。ポリカーボネートの他に適当な膜フィルター材料は、PTFE、ポリエステル、セルロース、セルロース誘導体(例えば、酢酸セルロース、再生セルロース、ニトロセルロース、または、セルロースが混ぜられたエステル)である。本発明に適当な膜フィルターは、例えば、Macherey−Nagel社から市販されている膜フィルター(例えば、「ポラフィル(PORAFIL(登録商標))」シリーズ)である。
【0026】
膜を使用すると、蛍光反射測光による検出および/または評価が、サンプルのハンドリング、調製または移送(または移動)等を特に行うことなく(即ち、特に予備濃縮等を行うことなく)、膜フィルターに対して直接的に行うことができるので利点が大きい。
【0027】
本発明の方法の特に好ましい態様では、工程(a)で行われるサンプル調製に際して、蛍光ラベリングされた細菌をシリコン・マイクロシーブ上に適用する。シリコン・マイクロシーブは、特に滑らかで平らな表面を有しており、そのシリコン・マイクロシーブ上に存在する細菌をより容易に検出することができる点で特に有利である。更に、かかるマイクロシーブは比較的容易に洗浄することができ、繰り返し使用することができる。更に、シリコン・マイクロシーブは、良好な生体適合性(または生体親和性)および良好な反射性(または反射率)を有している。マイクロシーブの更なる利点は、剛構造を有しているので、ハンドリングの点で好都合となっていることである。特に孔サイズが均一であると、フィルターの選択的処理の精度が更に増すために更なる利点が供されることになる。本発明の方法に使用されるマイクロシーブの孔サイズは、有利には約0.1〜2μmとなっている必要がある。0.45μm〜1.2μmの孔サイズを有するマイクロシーブが特に好ましい。なお、かかる孔サイズに限らず、測定される細菌のサイズに応じて、それとは異なる孔サイズを有するシーブを当然に用いることができ、例えば、0.1μmよりも小さい孔サイズまたは2μmよりも大きい孔サイズを用いることができる。
【0028】
本発明の範囲において膜フィルターが用いられる場合では、それに代えてシリコン・マイクロシーブを用いることができる。つまり、膜フィルターが用いられる本発明の方法の有利な態様または本発明の装置の有利な態様においては、膜フィルターに代えてシリコン・マイクロシーブを用いて実施することができるようになっている。
【0029】
有利には、本発明の方法で用いられる蛍光標識は、工程(a)で行うサンプル調製に用いられる膜フィルターに対して膜透過性を有するように選択される。そのように選択されると、蛍光反射測光による検出または評価に際して、余分な蛍光標識に起因したバックグランドノイズ(background noise)および干渉信号が生じないという利点がもたらされ、また、好ましい信号対バックグランド比(S/B比)または信号対雑音比(S/N比)が得られるという利点がもたらされることになる。
【0030】
工程(a)で行われるサンプル中に存在する細菌の蛍光ラベリングは、実質的に既知の方法でもって行われる。その方法は、当業者にとっては常識である。なお、この場合、例えば、存在する細菌に対して過剰に存在する蛍光標識の溶液または分散物に対して、ラベリングすべき細菌を接触させる。なお、(蛍光標識の選択、例えば、サンプル中に存在する全ての細菌、または、1種類以上の細菌の全てに応じて、)工程(a)でラベリングすべき細菌の全てを完全に蛍光ラベリングするために十分な接触時間をもうけなければならない。蛍光ラベリングを実際に行った後では、蛍光ラベリングされた細菌から余分な蛍光標識を除去または分離する。そのために、例えば、蛍光標識に対して膜透過性を有するものの、細菌に対して不透過性を有する多孔質膜フィルターが用いられる。多孔質膜フィルターが用いられる場合では、膜フィルター上に最終的に残存するものは、蛍光ラベリングされた細菌(可能であるならば、故意にラベリングされなかった細菌も含む)であり、多孔質膜フィルターを介して余分な蛍光標識の溶液または分散物が除去(例えば、過圧または真空圧を用いて除去)されることになる。なお、場合によっては、水、バッファー溶液または他の流体を用いてすすぎ処理(リンス処理)を行ってもよい。以上の操作によって、本発明の工程(b)にて蛍光反射測光よる検出または評価ができるようになる。
【0031】
妥当な場合、サンプル調製を行う工程(a)には、サンプル中に存在し得る、細菌の活性を抑制するおよび/または細菌を死滅させる物質または成分(例えば、保存剤または界面活性剤)を不活性化および/または除去する操作が含まれてもよい。そのように操作すると、測定結果のずれが防止されることになる。なお、かかる「測定結果のずれ」というものは、サンプル調製またはサンプル測定の間で、細菌活性抑制剤(もしくは細菌活性抑制成分)または細菌死滅剤(もしくは細菌死滅成分)によってある程度の細菌が死滅または不活性化するために、細菌数が誤って低く測定されるということに起因するものである。従って、本発明では、細菌活性抑制剤(もしくは細菌活性抑制成分)または細菌死滅剤(もしくは細菌死滅成分)、例えば、保存剤または界面活性剤を有するサンプルであっても細菌数の測定を実施することができる。つまり、例えば界面活性剤製品または分散剤(または分散物)製品に対して本発明の方法を実施することができる。
【0032】
サンプル中に含まれ得る細菌活性抑制剤(もしくは細菌活性抑制成分)または細菌死滅剤(もしくは細菌死滅成分)を不活性化または死滅させる工程(サンプルの種類に応じて行われる工程)は、蛍光ラベリングに先立って行うことが有利となり、好ましくはサンプリングの直後に又は本発明の方法の工程(a)で行われるサンプル調製のごく初期段階で行うことが有利となる。これによって、細菌活性抑制させるような又は細菌を死滅させるような物質、成分および含有物等が存在していた場合であっても、サンプルに元々存在する細菌の数というものが実質的に変化しなくなる。あまり好ましくないものの、蛍光ラベリング後に、サンプル中に存在し得る細菌活性抑させる若しくは細菌を死滅させる物質または成分を不活性化または除去することも等しく可能である。また、蛍光ラベリングと、細菌活性抑制させる若しくは細菌を死滅させる物質または成分の不活性化または除去とを同時に実施することも同様に可能である。
【0033】
サンプル中に存在し得る細菌活性抑制させる若しくは細菌を死滅させる物質または成分を不活性化または除去することは、サンプルの種類に応じて、実質的に既知の方法でもって行われる。例えば、「「HY−PRO 2001、Hygienische Produktionstechnologie/Hygienic Production Technology」第2回国際会議および国際展示会、Wiesbaden、May 15−17、2001」の会議の議事録の第317頁〜第323頁に記載されているストゥンペ(Stumpe)らの寄稿「ケモルミネッセンス−ベースド−ダイレクト・ティテクション・オブ・マイクロオーガニズムス(Chemoluminescence−based direct detection of microorganisms):ア・リポート・オン・エクスペリエンス・イン・ザ・フード・アンド・コスメティックス・インダストリー(a report on experience in the food and cosmetics industry)」並びにかかる寄稿に示されている文献が参照される。なお、かかる寄稿および文献の全内容は、引用することにより本明細書に組み込まれる。そのような不活性化または除去は、測定されるサンプルを、適当な不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する溶液と接触させることによって行う。かかる不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する溶液は、当業者にとっては、実質的に既知であり、例えば、水溶性TLH[トゥイーン(Tween)/レシチン(Lecithin)/ヒスチジン(Histidine)]コンディショニング溶液が挙げられる。本発明にとって適当な不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する水溶液には、例えば、THL(例えば、ポリソルベート80(トゥイーン80)、大豆レシチンおよびL−ヒスチジン)に加えて、バッファー物質(例えば、リン酸水素およびリン二酸水素等に基づいたリン酸塩バッファー)、塩(例えば、塩化ナトリウムおよび/またはチオ硫酸ナトリウム)、ならびに、トリプトン(カゼインに由来するペプトン)が含まれていてもよい。
【0034】
本発明にとって特に適当な不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する溶液は、次の組成を有している:
− トリプトン 1.0g
− 塩化ナトリウム 8.5g
− チオ硫酸ナトリウム五水和物 5.0g
− 0.05Mリン酸塩バッファー溶液 10ml
− TLHを含んだ水 1000ml
【0035】
また、本発明に使用できる「TLHを含んだ水」は、特に次の組成を含んでいる:
− ポリソルベート80(トゥイーン80) 30.0g
− 大豆レシチン 3.0g
− L−ヒスチジン 1.0g
− 脱イオン水 1000ml
【0036】
本発明に使用できるリン酸塩バッファー溶液は、特に、次の組成を含んでいる:
− リン酸二水素カリウム 6.8045g
− リン酸水素二カリウム 8.709g
− 脱イオン水 1000ml
【0037】
蛍光標識の選択はあまり重要ではない。本発明の方法の範囲内での使用に適しているものであれば、用途および細菌の種類に応じて、実質的に既知である既存の蛍光標識を用いることができる。
【0038】
「蛍光標識」という用語は、本発明の範囲内において非常に広く解釈されるものであり、特に、細菌と相互作用するように、例えば、細菌に結合するように、特に細菌の細胞壁(細胞膜)および/もしくは核酸に結合するように、ならびに/または、蛍光標識が細菌に取り込まれるように、特に代謝される及び/または酵素的に変換されるように蛍光標識が選択されることが意図される。
【0039】
用いられる蛍光標識は、例えば、細菌に非特異的な蛍光標識、または、細菌に非特異的な種々の蛍光標識の混合物である。この場合、サンプル中に存在する細菌の全ての蛍光ラベリングを比較的経済的に行うことができ、従って、サンプルに含まれる全ての細菌数の計数測定を比較的迅速に行うことが可能となる。
【0040】
特に、選択的な手法で特定の細菌だけを定量的および定性的に検知する場合では、細菌に特異的な蛍光標識、または、細菌に特異的な種々の蛍光標識の混合物を蛍光標識として用いることができる。
【0041】
同様に、細菌に非特異的な蛍光標識と細菌に特異的な蛍光標識との混合物も蛍光標識として用いることができる。
【0042】
なお、例えば、「生きている細菌」と相互作用する蛍光標識を本発明の蛍光標識として用いることができる。同様に、「死んでいる細菌」と相互作用する蛍光標識も本発明の蛍光標識として用いることができる。
【0043】
同様に、生きている細菌と相互作用する蛍光標識と死んでいる細菌と相互作用する蛍光標識との混合物も本発明の蛍光標識として用いることができる。従って、サンプル中に存在する細菌に対して生きている細菌と死んでいる細菌とを判別(または区別)することができる。そのような混合物は、従来技術として実質的に既知となっている(例えば、ストゥンペらの「loc.cit.」およびそこで引用されているEasyProof Laborbedarf社(Voerde)のシステムを参照のこと)。
【0044】
EasyProof Laborbedarf社の上述のラベリング・システムは、酒造業に対して元々導入されたものである(エガーズ(Eggers)らのBrauindustrie 6、34−35、2001)。このシステムでは、損なわれていない(または手が付けられていない)微細菌細胞に対して蛍光標識の非蛍光予備段階が実施されており(即ち、前駆体に対して処理を行っており)、細胞(細胞質)内の触媒活性(エステラーゼ)に起因して蛍光化合物に変換される(緑色は「生きている」との検出に結びつく)。そのような処理を行うには、膜電位を有した損なわれていない細胞膜が存在することが必要とされる。「死んでいる」細胞の検出は、特定の蛍光染料を細胞のDNAに導入することによって行われる。従って、このような導入は、問題のある細胞膜を有する細胞においてのみ行うことができる(赤色は「死んでいる」との検出に結びつく)。上述のような2つの反応は異なる原理に基づいているので、得られる結果は相互に独立したものとなる。このようなラベリング手法では、細胞が損なわれることがないので、評価に際してサンプルの実態が測定されることになる。
【0045】
例えば、エピ蛍光顕微鏡法(epifluorescence microscopy)、または直接エピ蛍光フィルター法(DEFT:direct epifluorescence filter technique)、膜フィルターミクロコロニー蛍光法(MMCF:membrane filter microcolony fluorescence)で一般的に使用される蛍光標識を本発明の方法の蛍光標識として用いることができる。
【0046】
更に、例えば、蛍光染料、またはかかる染料の前駆体(特に代謝および/または酵素的変換等の細菌との相互作用によって染料を生じる前駆体)も本発明の蛍光標識として用いることができる。
【0047】
例えば、国際公開(WO)第86/05206号および欧州特許(EP−A2)第0443700号には、蛍光染料の前駆体の例が記載されている。それらで開示されている内容の全ては、引用することにより本明細書に組み込まれる(例えば、酵素的にフルオレセインに変換することが可能な非蛍光ジアセチルフルオレセインが挙げられる)。
【0048】
本発明に使用可能な蛍光染料の例は、特に制限はないものの、例えば、3,6−ビス[ジメチルアミノ]アクリジン(アクリジン・オレンジ)、4’,6−ジアミド−2−フェニルインドール(DAPI)、3,8−ジアミノ−5−エチル−6−フェニルフェナントリジニウムブロマイド(エチジウムブロマイド)、3,8−ジアミノ−5−[3−(ジエチルメチルアンモニオ)プロピル]−6−フェニルフェナントリジニウムジイオダイド(プロピジウムイオダイド)、ローダミンBおよびスルホローダミンB等のローダミン、ならびに、フルオレセインイソチオシアネート等が挙げられる。更なる例は、欧州特許(EP−A1)第0940472号または「モレキュラー・プローブス・ハンドブック・オブ・フロオレセント・プローブス・アンド・リサーチ・ケミカルズ(Molecular Probes’ Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals)」5th edition, Molecular Probes Inc.、 Eugene、Oregon(P.R.Haugland、editor、1992)が参照される。なお、そこで開示されている内容の全ては、引用することにより本明細書に組み込まれる。また、関連する化学物質カタログも参照できる(例えば、ライフサイエンス研究用の生化学品および試薬のカタログ「フルオレセント・ラベリング・リーゲンツ(Fluorescent Labeling Reagents)」(シグマアルドリッチ社)2002/2003年度版)。
【0049】
なお、本発明の方法の蛍光標識として、例えば、核酸プローブ(例えば細菌に特異的な核酸プローブ)も用いることができ、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いることによって蛍光ラベリングされた核酸プローブを用いることができる。蛍光基または蛍光分子は、例えば、核酸プローブに共有結合することが可能であり、または、それとは異なる態様で核酸プローブに結合することが可能である。蛍光標識として本発明に従って用いられる核酸は、例えば、蛍光ラベリングされた核酸オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドであってよく、または、蛍光ラベリングされたDNAプローブまたはRNAプローブであってもよい。安定性の理由から、本発明ではDNAプローブを用いることが一般的に好ましい。
【0050】
蛍光標識として本発明で使用できる核酸プローブは、例えば、国際公開(WO−A2)第01/85340号、同01/07649号および国際公開(WO−A1)第97/14816号に記載されている核酸プローブである。なお、そこで開示されている内容の全ては、引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0051】
例えば、核酸プローブとして、ラベリング(DNAまたはRNAラベリング)のための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH:fluorescent in−situ hybridization)において通常使用される核酸プローブを用いることができる。それについての詳細な説明は、「Roempp Dictionary of biotechnology and genetic engineering、2nd edition、Georg Thieme Verlag Stuttgart, pp.285−286」のタイトル「FISH」、および、国際公開(WO)第01/07649号、ならびにそれらにて引用されている文献が参照される。
【0052】
同様に、蛍光標識として、細菌に特異的な抗体を用いることができ、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いて蛍光ラベリングされた、細菌に特異的な抗体を用いることができる。なお、特に、蛍光基または蛍光分子は、抗体に共有結合できるようになっているか、または、それとは異なる態様で抗体に結合できるようになっている。
【0053】
用いられる蛍光標識の量または濃度は、当業者によって、個々のケースの特定の状況に対して適合するように処理される。そのような処理は、当業者にとっては常套的である。サンプル中に存在する細菌に関して「生きている細菌」と「死んでいる細菌」とに判別する操作では、一方の細菌が良好に染色(または汚染)されると共に他方の細菌が薄く染色されるように「生きている細胞用の染料」と「死んでいる細胞用の染料」とが適当な混合比となるようにしなければならない。なお、個々のケースでの混合比の選択は、当業者の専門能力の範囲内である。
【0054】
本発明の方法では、測定される細菌に対する検出限界は、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が100以下であり、好ましくは、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が10以下である。それゆえ、本発明の方法では、濃縮を予め行う必要はない(即ち、予備濃縮なしでも実施できる)。あるガイドラインまたは仕様に見合うようにするためには、低い検出限界が極めて重要である。例えば、化粧品原料に対するCTFAガイドラインによれば、細菌数計測限界がより高いこと(例えば、10〜10CFUs/ml)が求められており、ある問題を引き起こす細菌(即ち、病原菌)の存在に対して時間を要してコストのかかる試験を行う必要があった。
【0055】
本発明の方法では、1ミリリットルのサンプル体積当たり約10CFUsの細菌数(またはそれ未満)〜1ミリリットルのサンプル体積当たり約10CFUsの細菌数を測定することが一般的に可能となる。細菌数がある値よりも多くなる場合(一般的に、1ミリリットルのサンプル体積当たりCFUsが約10よりも多い場合)、定量的な評価を行うに際して、サンプルを適当にまず希釈しなければならない。
【0056】
本発明の方法は、原則、あらゆる細菌の測定、特にあらゆる種類の病原菌(例えば、あらゆる種類の微生物、特に、バクテリアおよび菌類(例えば酵母またはかび)等の単細胞の微生物)の測定に対して適している。
【0057】
本発明の方法は、原則、例えば、媒体およびマトリックス(または基質もしくは充填材)、溶液等のあらゆる物についての細菌の定量的ならびに/または定性的な測定に適当である。好ましくは、本発明の方法は、濾過することができる特に液体および/または流体に対する細菌の定量的ならびに/または定性的な測定に適当である。固体物(もしくは固形物)または濾過できないものに対しては、サンプル調製の間にて本発明の方法に利用しやすい形態に変える必要がある。そのように利用しやすい形態に変えるためには、例えば、溶液または分散物(もしくは分散液)に変える処理、粉砕または抽出(extraction)等の実質的に既知の方法が用いられることになる。
【0058】
本発明の方法は、例えば、食材、洗剤および清浄剤等の界面活性剤含有物、表面処理剤、分散物(または分散液、dispersion product)、化粧品、衛生用品、パーソナルケア品(personal care product)、医薬品、接着剤、クーラント用潤滑剤(coolant lubricant)、塗料(もしくは塗膜)、(塗料の)凝固物、ならびに、それらの原料および出発材料における細菌の定量的ならびに/または定性的な測定に対して適当である。
【0059】
それゆえ、本発明の方法は、種々の分野で考えられ得る種々の原材料、中間物および最終生成物、例えば、食品(または食材)、ブランド物、化粧品、接着剤、およびクーラント用潤滑剤(例えば、油性のクーラント潤滑剤エマルジョン)等に対して実施することが適当となる。また、工業システムのプロセス流体も適当であるが、それに対しては、濾過処理または沈殿処理などの分離手法を用いて、検出される細菌を分離する必要がある。なお、測定対象が固形状か液状であるかは重要ではない。
【0060】
本発明の工程は比較的簡単に実施できるものであり、また、本発明の複数の工程を組み合わせることができるので、本発明の方法は自動化して実施するのに特に適している(例えば、製造および/または品質管理との関連で自動化して実施される)。製造および/または品質管理(例えば、液体界面活性剤生成物、分散物および保存物などのパッケージング)に加えて、本発明の方法は、例えば、機能不良(または故障もしくは異常)または汚染の調査に際して細菌状態を測定するのに適当であり、または、製品(もしくは生成物)の殺菌手段の評価に対して適当である。更に、本発明の方法は、例えば定置洗浄(CIP洗浄)プロセスおよび定置殺菌(SIP殺菌)プロセスに関連した設備(例えば、保存物を製造する設備)の洗浄機能の最適化または検査に対しても適当である。
【0061】
本発明の方法は、以下に示すように通常実施される。定量的および/または定性的な測定に付すべき細菌が含まれたサンプルを適当なサンプル・ベッセルに導入する。サンプル・ベッセルは、無菌状態で封止可能なベッセルであり、底部に略円形の膜が設けられているベッセルである。膜フィルターは、その外側周縁領域がサンプル・ベッセルに載せられるために、外側の同心の環状周縁領域には細菌が存在していない。保存剤または界面活性剤等の細菌活性抑制剤(もしくは細菌活性抑制成分)または細菌死滅剤(もしくは細菌死滅成分)が調べられた場合では、まず、それらを不活性化および/または除去する。その場合、適当な不活性化溶液および/またはコンディショニング溶液にサンプルを接触させることになるが、特に、細菌活性抑制剤(もしくは細菌活性抑制成分)または細菌死滅剤(もしくは細菌死滅成分)を不活性化および/または除去するのに十分な時間接触させる必要がある。その後、過圧下または真空下で膜フィルターを介して不活性化溶液および/またはコンディショニング溶液を除去する。余分な残存する不活性化溶液および/またはコンディショニング溶液は、必要に応じて、膜フィルターを介して水で1回またはそれ以上洗浄することによって除去する(通常、過圧下または真空下で行う)。なお、洗浄に用いた水は簡単に除去することができる。引き続いて、少なくとも1つの蛍光標識を用いることによって、サンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングする。ラベリングに際しては、例えば、蛍光標識の溶液または分散物に細菌を接触させるが、その際、細菌がラベリングされるのに十分な時間接触させる必要がある。その後、余分な蛍光標識の溶液または分散物は、過圧下または真空下で膜フィルターを介して除去する。妥当な場合、余分な蛍光標識を除去するために、水、バッファー溶液またはその他の液体を用いて1回または複数の回数のすすぎ処理を最後に行ってもよい。過圧下または真空下で膜フィルターを介して水を除いた後、最終的には、サンプル・ベッセルから膜フィルターを取り外す。なお、膜フィルターには蛍光ラベリングされた細菌が存在しているが、膜フィルターの外側周縁領域には細菌が存在していない。そのように膜フィルターを取り外した後すぐに(即ち、一般的にサンプルまたはフィルターの更なる調製または処理を行うことなく)、蛍光反射測光を実施する。蛍光反射測光よる測定では、蛍光ラベリングされた細菌が存在する膜フィルターに適当な波長の光を照射する。つまり、膜フィルターに対して走査(またはスキャン)する。得られた測定値は、膜フィルター上またはサンプル中の細菌数と相関関係を有している。本発明の装置を用いることによって、以下の種々の粘度を有した洗剤品について試験を行った。
【0062】
【表1】

【0063】
自動化された本発明の方法の一連の典型的な工程には、所定のサンプル・ベッセル(無菌状態で封止されているベッセルであって、コンディショニング媒体または不活性化媒体を含んでおり、出口には膜フィルターが設けられているベッセル)に対して所定量(例えば1ml)のサンプルが供給される。測定プログラムを作動させると、サンプルが振とうに付され、細菌の種類に応じて適当な温度(例えば37℃)になるように自動調節される。所定時間が経過した後、媒体が膜フィルターで濾過される。引き続いて、無菌状態の水、バッファー溶液または他の液体によって1回以上の洗浄工程が自動的に行われるので、サンプル中に存在する物質が洗い流されることになる。洗浄工程後では、蛍光標識を用いたラベリングが行われる。条件によるが、サンプル中に存在する全ての細菌(例えば、ヌクレオチドフラグメント)に対して結合するような細菌に非特異的な蛍光標識、または、DEFT法を用いる標識を用いてラベリングが行われることによって、生きている微生物と死んでいる微生物とが判別されることになる。なお、FISH法に基づいた蛍光標識を用いた場合では、遺伝子がラベリングされた蛍光プローブを用いて個々の微生物が選択的に染色されることになる。このようなラベリング工程に引き続いて、余分なラベリング溶液が水で自動的に洗浄されることになるので、かかる自動的な手法が終了した後では、膜フィルター上に蛍光ラベリングされた微生物が存在することになる。個々の蛍光の強度、従って、微生物の数は、蛍光反射分光法または蛍光反射測光を用いて自動的に測定される。その際、適当な波長の光によって、蛍光ラベリングされた細菌が存在する膜フィルターが照射されることになる。そして、ラベリングされた微生物から放出される蛍光は、波長が分解されて検出される。引き続いて行われる評価では、膜の周縁領域(微生物が存在していない周縁領域)の強度と、ラベリングされた微生物が存在する領域の強度とが比較されることによって、保存されていたキャリブレーション(または検量データ)に基づいて、サンプル中に存在する細菌の数が計算される。
【0064】
本発明の方法には幾つかの利点あるが、重要な利点を以下にて例示的に説明する。
【0065】
本発明の方法の1つの利点は、自動化して実施できることである。全工程を完全に自動化すると、より容易に、より迅速に、より再現性よく、本発明の方法を実施することができる。これは、コスト的な観点、作業者に求められる要件、および感度の点で利点がある。測定試験を実施する際に再現性が良いことも同様に非常に有利となる。
【0066】
本発明の更なる利点は、エピ蛍光顕微鏡を必要としないことである。従来技術で用いていたエピ蛍光顕微鏡が、より簡易な評価法および評価システム(即ち、蛍光反射測光を用いた評価法および評価システム)に置き換えられることによって、作業および設備投資の点でユーザーに必要とされるコストが減じられることになり、また、サンプル評価の全体的な自動化が可能となる(例えば、対応するアルゴリズムを用いることによって自動化できる)。なお、放射線の影響も減じられる。
【0067】
本発明の更なる利点は、標準化された又は常套的な要素を用いることができることである。標準化された又は常套的な複数の要素(例えば、ベッセル、媒体およびフィルターなど)を用いることによって、本発明を実施するのに必要とされるシステムを全体的に一体化させることができる。従って、オペレーターの作業が減じられるので信頼性が向上することになる。
【0068】
本発明の方法の別の利点は、検出および評価を簡易に実施できることである。本発明の方法は、例えば、適当な簡易なベッセルにおいて実施できるので、ラベリングされた細菌が適当な膜フィルター上で調製されることになる。適当な膜サイズ(例えば8mmの直径)を選択して、細菌が存在していない同心の環状周縁領域を設けることによって、各サンプルに対して、参照用に用いる内標準が可能となる。
【0069】
本発明の方法の更なる別の利点は、本発明の方法を実施するのに要する時間が短いことである。細菌の種類および細菌の性質にもよるが、本発明の方法では、細菌数の測定を、数分(約3〜5分)で行うことができる。なお、常套的な培養法は数日かかってしまう。
【0070】
感度が高いことも本発明の方法の特に有利な点である。本発明の方法では、希釈の程度が高い場合であっても、細菌を測定することができる。迅速化された培養法であっても、1ミリリットルのサンプル体積当たり10CFUsとなる検出限界に対しては十分な感度を得ることができない。
【0071】
本発明の更なる利点は、蛍光反射測光によって測定値を比較的迅速に得ることができるので、比較的短い時間で蛍光ラベリングされた細菌の照射が実施されることである。そのため、蛍光標識の「脱色」を防ぐことができるので、測定結果のずれを、ほぼ完全に防ぐことができる。従って、生きている細菌の死滅が防止され、生きている細菌と死んでいる細菌とを判別する際に特に重要な利点がもたらされる。
【0072】
本発明を実施する際または蛍光反射測光を行う際のサンプルの「走査(scanning)」(より正確に言うと、蛍光ラベリングされた細菌が存在する膜フィルターに対する走査)では、更なる利点が供される。大きい面積に対して走査を行うことができる一方、検知領域が限られた常套の蛍光顕微鏡と比較して、大きいシングルポイント励起強度(single−point excitation intensity)が得られる。
【0073】
また、走査される結果、サンプルへの照射が均一となる点が、強度測定に際しては特に重要な利点となる。
【0074】
最後に、本発明の方法の更なる利点は、ユーザーにとって使いやすくなっていること(即ち、ユーザーフレンドリーであること)である。自動化されている場合、サンプルの細菌量を測定する全工程を実施するには、サンプルを単に供してシーケンス(または一連の工程)をスタートさせればよく、これによって、最終的には、細菌量に関する数値をユーザーが得ることができる。サンプル調製および測定に関連する労力は最小限度になっている。従って、理想的には、品質(または質)をモニタリング、確認およびプリントアウトするプロセス・システムを構築することができる。
【0075】
本願の第2の更なる要旨において、本発明は、請求項28に記載されているように、サンプル調製した後に検出および/評価を実施し、少なくとも1つの蛍光標識を用いてサンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングする方法に従って、サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定するための装置に関しており、特に請求項1〜27のいずれかに記載の方法を実施するための装置に関している。
【0076】
本発明の装置の有利な態様は、従属形式の請求項29〜36に記載されている。本発明の方法に関する説明は、本発明の装置に対しても適用することができる。
【0077】
次に図面に関して説明する。図1は、サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定する方法を実施するのに用いる装置を模式的に示している。装置には、サンプル・レセプタクル容器1が不可欠である。このサンプル・レセプタクル容器1は、模式的に図示されているように、種々のライン2を介して排出手段4のための制御バルブ3、圧縮空気5のための制御バルブ3に接続されており、更に、ポンプ6を介して染料(「蛍光標識」)7のためのコネクター、すすぎ溶液8のためのコネクターに接続されている。
【0078】
図1は、上述の関連事項を模式的に表している。かかる装置の操作方法は、論理的には、本発明の方法に関連して説明した手法に従って行われることになる。
【0079】
例示的に表される好ましい態様では、サンプル・レセプタクル容器(1)の出口、特にサンプル・レセプタクル容器(1)の底部において、膜フィルター9(シンプルな円形ディスクとして例示的に表されている)が配置されている。膜フィルター9は、検出される細菌が保持されるように及び/または検出される細菌に対して不透過性を有するように構成される。また、蛍光反射測光によって測定が実施できるように構成された検出システム10が設けられている。なお、検出システム10は、膜フィルター9を有するサンプル・レセプタクル容器(好ましくはサンプル・レセプタクル容器1から取り外された膜フィルター9)に対して検出および/または評価が実施できるように配置できるようになっている。例示的に表される好ましい態様において、蛍光反射測光検出システムを用いて細菌が存在する膜9に対して行う分析が、図2に簡略的に表されているが、かかる分析は、図1に関して説明したコンピューターで制御されたコントローラーおよび/または評価デバイス11を用いて行われる。
【0080】
図1では、サンプル・レセプタクル容器1の底部に膜フィルター9が設けられることが示唆されている。なお、図1に表される例示的な態様では、サンプル・レセプタクル容器1の下側から膜フィルターを取り外して、検出システム10に供すことができることが示されている。具体的な配置構成は、当業者に任せられるものである。
【0081】
膜フィルター9として、孔を有する膜フィルター(特にポリカーボネート膜フィルター)を用いる場合が有利であり、特に、膜フィルター9の孔サイズが、測定される細菌(サンプル中に存在している細菌または存在していると予想される細菌)のサイズよりも小さい場合が特に有利となる。
【0082】
膜フィルター9の代わりに、シリコン・マイクロシーブを用いる場合が特に好ましい。なお、シリコン・マイクロシーブの使用によってもたらされる利点に関しては、既に上述している。この場合、膜フィルターの代わりにシリコン・マイクロシーブを本発明の装置に対して一般的に用いることができることは言うまでもないであろう。
【0083】
サンプル・レセプタクル容器1内の配置の観点と、ラベリングされた細菌の検出に際してサンプル・レセプタクル容器1から膜フィルター9を取り外す観点の双方から、各サンプルに対して個々に標準化できるような参照面を用いることが望ましい。そのため、好ましい態様では、サンプル調製の間で細菌が存在できない又は実質的に存在できない領域12、特にエッジ領域であって、検出および/または評価する際に参照面として機能する領域12、特にエッジ領域がサンプル・レセプタクル容器1に設けられている。ラベリングされた細菌が存在できない領域または周縁領域12によって、膜フィルター9上のサンプルの内標準(internal standardization)が可能となる。
【0084】
膜フィルター9の寸法およびサンプル・レセプタクル容器1の寸法に関しては、膜フィルター9が、濾過に関する有効直径となる、約5mm〜約25mmの直径、特に約6mm〜約12mmの直径、好ましくは約8mm〜約10mmの直径を有していることが望ましい。
【0085】
既に示唆したことであるが、膜フィルター9は細菌を保持する機能を有しており、蛍光標識でラベリングされた細菌が、膜フィルター9の上側に残されるように保持されることになる。従って、検出システム10で好ましいS/N比が得られるように、膜フィルター9に対して膜透過性を有する蛍光標識を選択することが望まれる。サンプル・レセプタクル容器1でサンプルをハンドリングするために、膜フィルター9上に存在する蛍光ラベリングされた(「蛍光標識で印を付けられた」)細菌を単離する必要がある。そのような観点から、サンプル流体を滴下し及び回収するための、ならびに/または、蛍光標識のための流体を受容するための、ならびに/または、膜フィルター9上に存在する流体を洗い流すための(即ち、すすぎ処理を行うための)、滴下デバイス、吸引デバイス(真空吸引デバイス)ならびに/または排出デバイス(expulsion device)が設けられていることが望まれる。図1の例示的な態様では、圧縮空気5を用いて排出を行うデバイスが示されている。
【0086】
なお、図1では、サンプル・レセプタクル容器1の温度を自動調節するためのサーモスタットデバイス13を有して成る装置が示されている。図1に示されるように、サーモスタットデバイス13が全部で4つのレセプタクル開口部を有しているため、4つのサンプル・レセプタクル容器1の温度を同時に自動調節して、通常望まれる温度にすることができる。なお、通常望まれる温度は、対象となる細菌に依存するが、例えば、37℃である。
【0087】
図2は、本発明で用いられる蛍光反射測光検出システム10の基本構造を表している。評価デバイス11は、中央コントローラー14を制御している。かかる中央コントローラー14によって、測定パラメーターが、励起光学システム16用の電気制御システム15および位置決めステージ17に送られることになる。測定される試験品(即ち、ラベリングされた細菌が存在する膜フィルター9)は、位置決めステージ17に配置される。励起光学システム16から測定される試験品18に向かって発せられる励起光は、結果的には、蛍光として検出光学システム19に向かって反射されることになる。検出された信号は、コントローラー14につながった電子測定システム20に送られる。複雑なエピ蛍光顕微鏡の代わりに、簡略化された蛍光反射測光検出システム10を使用することによって、ユーザーの設備投資が減じられることになる。
【0088】
更に、本願の第2の更なる要旨において、請求項37〜39に記載されているように、本発明は上述した本発明の装置の使用にも関している。
【0089】
本発明の更なる態様、変更、修正および利点は、当業者とっては、本発明の範囲を逸脱しないことを条件に、本明細書から容易に理解されるものであり、実施することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、サンプル・レセプタクル容器1の温度を自動調節するためのサーモスタットデバイス13を有して成る装置を示している。
【図2】図2は、本発明で用いられる蛍光反射測光検出システム10の基本構造を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定する方法であって、
(a)サンプルを調製する工程、および
(b)検出および/または評価を行う工程
を含んで成り、
工程(a)では、少なくとも1つの蛍光標識を用いることによって、サンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングし、
工程(b)では、定量的および/または定性的な検出および/または評価を行い、また
工程(b)で行う検出および/または評価を蛍光反射測光によって行う、方法。
【請求項2】
特に適当なキャリブレーションを用いることによって、蛍光反射測光で得られた測定値に基づいて、サンプル中に存在する細菌の数を決定することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で行うサンプル調製において、細菌が保持されるように及び/または細菌に対して不透過性を有するように構成されたシリコン・マイクロシーブの上に、蛍光ラベリングされた細菌を適用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で行うサンプル調製において、細菌が保持されるように及び/または細菌に対して不透過性を有するように構成された多孔質膜フィルター、特にポリカーボネート膜フィルターの上に、蛍光ラベリングされた細菌を適用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
膜フィルターまたはシリコン・マイクロシーブの孔サイズは、サンプル中に存在する細菌よりも小さくなるように選択されている、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
特にサンプルのハンドリング、調製または移送を更に行うことなく、膜フィルターまたはマイクロシーブに対して蛍光反射測光による検出および/または評価を直接的に行う、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で行うサンプル調製に用いられる膜フィルターに対して膜透過性を有するように、または、用いられるシリコン・マイクロシーブに対してフィルター透過性を有するように蛍光標識が選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サンプルを調製する工程(a)には、サンプル中に存在し得る、細菌の活性を抑制する及び/もしくは細菌を死滅させる物質または成分、特に保存剤または界面活性剤を不活性化および/または除去することが含まれており、
特に、不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する適当な溶液とサンプルとを接触させることによって、サンプル中に存在し得る、細菌の活性を抑制する及び/もしくは細菌を死滅させる物質または成分を不活性化および/または除去する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
細菌と相互作用するように、特に、細菌に結合するように、特に細菌の細胞壁(細胞膜)および/もしくは核酸に結合するように蛍光標識が選択される、ならびに/または、
蛍光標識が細菌に取り込まれるように、特に代謝される及び/もしくは酵素的に変換されるように蛍光標識が選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
蛍光標識として、細菌に非特異的な蛍光標識、または、細菌に非特異的な蛍光標識の混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
蛍光標識として、細菌に特異的な蛍光標識、または、細菌に特異的な種々の蛍光標識の混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
蛍光標識として、細菌に非特異的な蛍光標識と細菌に特異的な蛍光標識との混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
蛍光標識として、生きている細菌と相互作用する蛍光標識を用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
蛍光標識として、死んでいる細菌と相互作用する蛍光標識を用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
蛍光標識として、生きている細菌と相互作用する蛍光標識と死んでいる細菌と相互作用する蛍光標識との混合物を用い、それによって、サンプル中に存在する細菌に対して生きている細菌と死んでいる細菌とを判別する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
蛍光標識として、エピ蛍光顕微鏡法、直接エピ蛍光フィルター法(DEFT)または膜フィルターミクロコロニー蛍光法(MMCF)で細菌をラベリングするのに通常使用される蛍光標識を用いる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
蛍光標識として、蛍光染料、または、特に代謝および/または酵素的変化に起因した細菌との相互作用によって蛍光染料を生じる蛍光染料前駆体を用いる、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
蛍光染料は、3,6−ビス[ジメチルアミノ]アクリジン(アクリジン・オレンジ)、4’,6−ジアミド−2−フェニルインドール(DAPI)、3,8−ジアミノ−5−エチル−6−フェニルフェナントリジニウムブロマイド(エチジウムブロマイド)、3,8−ジアミノ−5−[3−(ジエチルメチルアンモニオ)プロピル]−6−フェニルフェナントリジニウムジイオダイド(プロピジウムイオダイド)、ローダミンBおよびスルホローダミンB等のローダミン、ならびに、フルオレセインイソチオシアネートから成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
蛍光標識として、特に、細菌に特異的な核酸プローブを用い、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いることによって核酸プローブが蛍光ラベリングされ、
特に、蛍光基または蛍光分子は、核酸プローブに共有結合すること又は異なる態様で核酸プローブに結合することができ、および/または
特に、核酸プローブは、蛍光ラベリングされたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを含んでおり、および/または
特に、核酸プローブが、蛍光ラベリングされたDNAプローブまたはRNAプローブである、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
核酸プローブとして、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)でラベリングするのに通常使用される核酸プローブを用いる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
蛍光標識として、特に、細菌に特異的な抗体を用いており、従って、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いることによって抗体が蛍光ラベリングされ、
特に、蛍光基または蛍光分子は、抗体に共有結合すること又は異なる態様で抗体に結合することができる、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
細菌に対する検出限界は、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が100以下であり、好ましくは、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が10以下である、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
測定される細菌はあらゆる種類の病原菌であり、特にあらゆる種類の微生物であり、特に、バクテリアおよび菌類(例えば酵母またはかび)等の単細胞の微生物である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
食材、洗剤および清浄剤等の界面活性剤含有物、表面処理剤、分散物、化粧品、衛生用品、パーソナルケア品、医薬品、接着剤、クーラント用潤滑剤、塗料、(塗料の)凝固物、ならびに、それらの原料および出発材料に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
濾過することができる、特に液体および/または流体に対して細菌を定量的および/または定性的に測定する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
自動化された、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
製品のモニタリングおよび/または品質管理において実施される、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
サンプル調製した後に検出および/評価を実施し、少なくとも1つの蛍光標識を用いてサンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングする方法に従って、サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定するための装置であって、特に請求項1〜27のいずれかに記載の方法を実施するための装置であり、
− サンプル・レセプタクル容器(1);
− 検出される細菌が保持されるように及び/または検出される細菌に対して不透過性を有するように構成されており、サンプル・レセプタクル容器(1)の出口、特にサンプル・レセプタクル容器(1)の底部に配置されているシリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9);ならびに
− 蛍光反射測光によって測定が行われるように構成された検出システム(10)であって、シリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9)を有するサンプル・レセプタクル容器(1)に対して検出および/または評価が実施されるように配置でき、好ましくはサンプル・レセプタクル容器(1)から取り外されたシリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9)に対して検出および/または評価が実施されるように配置できる検出システム(10)
によって特徴付けられている装置。
【請求項29】
コンピューター制御されたコントローラーおよび/または評価デバイス(11)が、検出システム(10)の一部を成すように設けられている、又は、検出システム(10)を制御するように設けられている、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
膜フィルター(9)の代わりにシリコン・マイクロシーブを有して成る、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
膜フィルター(9)は、孔を有する膜フィルターであり、特にポリカーボネート膜フィルターである、請求項28または29に記載の装置。
【請求項32】
膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブの孔サイズは、サンプル中に存在する及び/または存在すると予想される測定すべき細菌のサイズよりも小さい、請求項30または31に記載の装置。
【請求項33】
サンプル・レセプタクル容器(1)に配置された膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブには、サンプル調製の間で細菌が存在することができず又は実質的に存在することができず、検出および/または評価を行う際に参照面として機能する領域(12)、特にエッジ領域が設けられている、請求項28〜32のいずれかに記載の装置。
【請求項34】
膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブは、濾過に関する有効直径となる、約5mm〜約25mmの直径、特に約6mm〜約12mmの直径、好ましくは約8mm〜約10mmの直径を有している、請求項28〜33のいずれかに記載の装置。
【請求項35】
サンプル流体を滴下、吸引および/もしくは排出するために設けられる、ならびに/または、蛍光標識のための流体を受容するために設けられる、ならびに/または、膜フィルター(9)もしくはシリコン・マイクロシーブの上に存在する流体を洗い流すために設けられる滴下デバイス、吸引デバイスならびに/または排出デバイスがサンプル・レセプタクル容器(1)に含まれている、請求項28〜34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
サンプル・レセプタクル容器(1)の温度を自動調節するためのサーモスタットデバイス(13)を有して成る、請求項28〜35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
食材、洗剤および清浄剤等の界面活性剤含有物、表面処理剤、分散物、化粧品、衛生用品、パーソナルケア品、医薬品、接着剤、クーラント用潤滑剤、塗料、塗料の凝固物、ならびに、それらの原料および出発材料に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定するための請求項28〜36のいずれかに記載の装置の使用。
【請求項38】
濾過することができる、 特に液状物および/または流体、特に、媒体、溶液、液体およびマトリックス等に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定するための請求項28〜36のいずれかに記載の装置の使用。
【請求項39】
好ましく自動化された製造および/または品質管理のための請求項28〜36のいずれかに記載の装置の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定する方法であって、
(a)サンプルを調製する工程、および
(b)検出および/または評価を行う工程
を含んで成り、
工程(a)では、少なくとも1つの蛍光標識を用いることによって、サンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングし、
工程(b)では、蛍光反射測光によって定量的および/または定性的な検出および/または評価を行い、また
工程(a)で行うサンプル調製に際して、排出デバイスを用いて蛍光ラベリングされた細菌を膜フィルター上に設ける、方法。
【請求項2】
特に適当なキャリブレーションを用いることによって、蛍光反射測光で得られた測定値に基づいて、サンプル中に存在する細菌の数を決定することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)で行うサンプル調製において、細菌が保持されるように及び/または細菌に対して不透過性を有するように構成されたシリコン・マイクロシーブの上に、蛍光ラベリングされた細菌を適用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で行うサンプル調製において、細菌が保持されるように及び/または細菌に対して不透過性を有するように構成された多孔質膜フィルター、特にポリカーボネート膜フィルターの上に、蛍光ラベリングされた細菌を適用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
膜フィルターまたはシリコン・マイクロシーブの孔サイズは、サンプル中に存在する細菌よりも小さくなるように選択されている、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
特にサンプルのハンドリング、調製または移送を更に行うことなく、膜フィルターまたはマイクロシーブに対して蛍光反射測光による検出および/または評価を直接的に行う、請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で行うサンプル調製に用いられる膜フィルターに対して膜透過性を有するように、または、用いられるシリコン・マイクロシーブに対してフィルター透過性を有するように蛍光標識が選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
サンプルを調製する工程(a)には、サンプル中に存在し得る、細菌の活性を抑制する及び/もしくは細菌を死滅させる物質または成分、特に保存剤または界面活性剤を不活性化および/または除去することが含まれており、
特に、不活性化作用および/またはコンディショニング作用を有する適当な溶液とサンプルとを接触させることによって、サンプル中に存在し得る、細菌の活性を抑制する及び/もしくは細菌を死滅させる物質または成分を不活性化および/または除去する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
細菌と相互作用するように、特に、細菌に結合するように、特に細菌の細胞壁(細胞膜)および/もしくは核酸に結合するように蛍光標識が選択される、ならびに/または、
蛍光標識が細菌に取り込まれるように、特に代謝される及び/もしくは酵素的に変換されるように蛍光標識が選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
蛍光標識として、細菌に非特異的な蛍光標識、または、細菌に非特異的な蛍光標識の混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
蛍光標識として、細菌に特異的な蛍光標識、または、細菌に特異的な種々の蛍光標識の混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
蛍光標識として、細菌に非特異的な蛍光標識と細菌に特異的な蛍光標識との混合物を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
蛍光標識として、生きている細菌と相互作用する蛍光標識を用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
蛍光標識として、死んでいる細菌と相互作用する蛍光標識を用いる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
蛍光標識として、生きている細菌と相互作用する蛍光標識と死んでいる細菌と相互作用する蛍光標識との混合物を用い、それによって、サンプル中に存在する細菌に対して生きている細菌と死んでいる細菌とを判別する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
蛍光標識として、エピ蛍光顕微鏡法、直接エピ蛍光フィルター法(DEFT)または膜フィルターミクロコロニー蛍光法(MMCF)で細菌をラベリングするのに通常使用される蛍光標識を用いる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
蛍光標識として、蛍光染料、または、特に代謝および/または酵素的変化に起因した細菌との相互作用によって蛍光染料を生じる蛍光染料前駆体を用いる、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
蛍光染料は、3,6−ビス[ジメチルアミノ]アクリジン(アクリジン・オレンジ)、4’,6−ジアミド−2−フェニルインドール(DAPI)、3,8−ジアミノ−5−エチル−6−フェニルフェナントリジニウムブロマイド(エチジウムブロマイド)、3,8−ジアミノ−5−[3−(ジエチルメチルアンモニオ)プロピル]−6−フェニルフェナントリジニウムジイオダイド(プロピジウムイオダイド)、ローダミンBおよびスルホローダミンB等のローダミン、ならびに、フルオレセインイソチオシアネートから成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
蛍光標識として、特に、細菌に特異的な核酸プローブを用い、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いることによって核酸プローブが蛍光ラベリングされ、
特に、蛍光基または蛍光分子は、核酸プローブに共有結合すること又は異なる態様で核酸プローブに結合することができ、および/または
特に、核酸プローブは、蛍光ラベリングされたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを含んでおり、および/または
特に、核酸プローブが、蛍光ラベリングされたDNAプローブまたはRNAプローブである、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
核酸プローブとして、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)でラベリングするのに通常使用される核酸プローブを用いる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
蛍光標識として、特に、細菌に特異的な抗体を用いており、従って、特に蛍光基もしくは蛍光分子を用いることによって抗体が蛍光ラベリングされ、
特に、蛍光基または蛍光分子は、抗体に共有結合すること又は異なる態様で抗体に結合することができる、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
細菌に対する検出限界は、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が100以下であり、好ましくは、1ミリリットルのサンプル体積当たりのコロニー形成単位(CFUs)が10以下である、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
測定される細菌はあらゆる種類の病原菌であり、特にあらゆる種類の微生物であり、特に、バクテリアおよび菌類(例えば酵母またはかび)等の単細胞の微生物である、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
食材、洗剤および清浄剤等の界面活性剤含有物、表面処理剤、分散物、化粧品、衛生用品、パーソナルケア品、医薬品、接着剤、クーラント用潤滑剤、塗料、(塗料の)凝固物、ならびに、それらの原料および出発材料に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定する、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
濾過することができる、特に液体および/または流体に対して細菌を定量的および/または定性的に測定する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
自動化された、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
製品のモニタリングおよび/または品質管理において実施される、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
サンプル調製した後に検出および/評価を実施し、少なくとも1つの蛍光標識を用いてサンプル中に存在する少なくとも一部の細菌をラベリングする方法に従って、サンプル中の細菌を定量的および/または定性的に測定するための装置であって、特に請求項1〜27のいずれかに記載の方法を実施するための装置であり、
− サンプル流体を排出するために設けられる、および/または、蛍光標識のための流体を受容するために設けられる、および/または、膜フィルター(9)もしくはシリコン・マイクロシーブの上に存在する流体を洗い流すために設けられる排出デバイスを有して成るサンプル・レセプタクル容器(1);
− 検出される細菌が保持されるように及び/または検出される細菌に対して不透過性を有するように構成されており、サンプル・レセプタクル容器(1)の出口、特にサンプル・レセプタクル容器(1)の底部に配置されているシリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9);ならびに
− 蛍光反射測光によって測定が行われるように構成された検出システム(10)であって、シリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9)を有するサンプル・レセプタクル容器(1)に対して検出および/または評価が実施されるように配置でき、好ましくはサンプル・レセプタクル容器(1)から取り外されたシリコン・マイクロシーブまたは膜フィルター(9)に対して検出および/または評価が実施されるように配置できる検出システム(10)
によって特徴付けられている装置。
【請求項29】
コンピューター制御されたコントローラーおよび/または評価デバイス(11)が、検出システム(10)の一部を成すように設けられている、又は、検出システム(10)を制御するように設けられている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
膜フィルター(9)の代わりにシリコン・マイクロシーブを有して成る、請求項28または29に記載の装置。
【請求項31】
膜フィルター(9)は、孔を有する膜フィルターであり、特にポリカーボネート膜フィルターである、請求項28または29に記載の装置。
【請求項32】
膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブの孔サイズは、サンプル中に存在する及び/または存在すると予想される測定すべき細菌のサイズよりも小さい、請求項30または31に記載の装置。
【請求項33】
サンプル・レセプタクル容器(1)に配置された膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブには、サンプル調製の間で細菌が存在することができず又は実質的に存在することができず、検出および/または評価を行う際に参照面として機能する領域(12)、特にエッジ領域が設けられている、請求項28〜32のいずれかに記載の装置。
【請求項34】
膜フィルター(9)またはシリコン・マイクロシーブは、濾過に関する有効直径となる、約5mm〜約25mmの直径、特に約6mm〜約12mmの直径、好ましくは約8mm〜約10mmの直径を有している、請求項28〜33のいずれかに記載の装置。
【請求項35】
サンプル・レセプタクル容器(1)の温度を自動調節するためのサーモスタットデバイス(13)を有して成る、請求項28〜34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
食材、洗剤および清浄剤等の界面活性剤含有物、表面処理剤、分散物、化粧品、衛生用品、パーソナルケア品、医薬品、接着剤、クーラント用潤滑剤、塗料、塗料の凝固物、ならびに、それらの原料および出発材料に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定するための請求項28〜35のいずれかに記載の装置の使用。
【請求項37】
濾過することができる、特に液状物および/または流体、特に、媒体、溶液、液体およびマトリックス等に対して細菌を定量的ならびに/または定性的に測定するための請求項28〜35のいずれかに記載の装置の使用。
【請求項38】
好ましく自動化された製造および/または品質管理のための請求項28〜35のいずれかに記載の装置の使用。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−509514(P2006−509514A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559741(P2004−559741)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013567
【国際公開番号】WO2004/055203
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(391008825)ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL KOMMANDITGESELLSCHAFT AUF AKTIEN
【住所又は居所原語表記】40191 Dusseldorf,Henkelstrasse 67,Germany
【Fターム(参考)】