説明

組み合わせのインターロイキン−2ムテイン

新規のヒトインターロイキン−2(IL−2)ムテインまたはその改変体、ならびに核酸分子およびその改変体が、提供される。これらのムテインを作製するための方法、ならびに動物の免疫系を刺激するための方法もまた、開示される。さらに、本発明は、本発明の核酸分子を含む組換え発現ベクターおよびその発現ベクターが導入されている宿主細胞も提供する。治療有効量の本発明のヒトIL−2ムテインおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物が、包含される。上記IL−2ムテインは、天然のIL−2またはプロロイキン(登録商標)IL−2よりも低毒性である一方で、NK細胞媒介性効果を維持または増強し、そして上記IL−2ムテインは、癌を処置する際、および免疫応答を刺激する際に使用するため薬学的組成物において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、改善された治療効能を有するヒトインターロイキン−2(IL−2)のムテインに関する。また、癌を処置するため、および哺乳動物の免疫系を刺激するために利用され得る新規の分子および薬学的処方物の製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターロイキン−2(IL−2)は、ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞の増殖および機能の強力な刺激物質である(非特許文献1)。この天然に存在するリンホカインは、単独でか、またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞もしくは腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と組み合わせた場合のいずれも、種々の悪性疾患に対して抗腫瘍活性を有することが示されている(例えば、非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;および非特許文献6を参照のこと)。しかしながら、腫瘍成長に関して明確な治療結果を達成するために使用される高用量のIL−2は、重度の副作用(例えば、発熱および悪寒、低血圧および毛細管漏出(血管漏出症候群(vascular leak syndrome)、すなわちVLS)および神経学的変化)をしばしば引き起こす(例えば、非特許文献7;非特許文献8;および非特許文献9を参照のこと)。
【0003】
IL−2誘導性毒性およびVLSの根拠となる正確な機構は明らかではないが、蓄積されたデータによれば、IL−2誘導性ナチュラルキラー(NK)細胞が、IFN−α、IFN−γ、TNF−α、TNF−β、IL−1βおよびIL−6を含む炎症誘発性サイトカインの過剰生産の結果としての用量制限性の毒性(DLT)を誘発することが示唆されている。これらのサイトカインは、単球/マクロファージを活性化し、一酸化窒素生産を誘導し、その後の内皮細胞の損傷をもたらす(非特許文献10;非特許文献11)。これらの観察により、高親和性IL−2レセプター(IL−2R)がT細胞上で選択的に発現されるという仮説に基づいてNK細胞ではなくT細胞に対して優先的な選択性を示すIL−2ムテインの開発に導かれる人々が存在する(例えば、BAY50−4798、特許文献1に開示される成熟ヒトIL−2のN88R IL−2ムテインおよび非特許文献12を参照のこと)。
【0004】
天然(NK)、LAKおよび抗体依存性(ADCC)細胞溶解殺傷、サイトカイン生産および増殖のような多様なNKのエフェクター機能は、異なるNK細胞内シグナル伝達経路における特定の中間体の活性化に依存している。重要なことに、IL−2−IL−2R相互作用の選択的モジュレーションが、多様な下流のNK細胞媒介性およびT細胞媒介性のエフェクター機能(例えば、増殖、サイトカイン生産および細胞溶解殺傷)に影響し得るという証拠が存在する(非特許文献13;非特許文献14;非特許文献15)。
【0005】
プロロイキン(Proleukin)(登録商標)IL−2(組換えヒトIL−2ムテインアルデスロイキンを含む;Chiron Corporation,Emeryville,California)は、転移性の黒色腫および腎臓癌の処置のためにFDAによって認可されており、非ホジキンリンパ腫、HIVおよび乳癌を含む他の臨床適応に関して研究されている。しかしながら、IL−2に関連する毒性の副作用に起因して、このインターロイキンのより多くの治療用途を可能にするより毒性の低いIL−2ムテインについての必要が存在する。改善された耐容性および/または増強されたIL−2媒介性のNK細胞またはT細胞のエフェクター機能を有するIL−2ムテインは、より広範な用途を有しており、そして癌治療のため、および免疫応答を調節するために特に有益である。
【特許文献1】国際公開第99/60128号パンフレット
【非特許文献1】Morganら、「Science」1976年、第193巻:1007−1011
【非特許文献2】Rosenbergら、「N.Engl.J.Med.」1987年、第316巻:889−897
【非特許文献3】Rosenberg、「Ann.Surg.」1988年、第208巻:121−135
【非特許文献4】Topalianら、「J.Clin.Oncol.」1988年、第6巻:839−853
【非特許文献5】Rosenbergら、「N.Engl.J.Med.」1988年、第319巻:1676−1680
【非特許文献6】Weberら、「J.Clin.Oncol.」1992年、第10巻:33−40
【非特許文献7】Dugganら、「J.Immunotherapy」1992年、第12巻:115−122
【非特許文献8】Gisselbrechtら、「Blood」1994年、第83巻:2081−2085
【非特許文献9】SznolおよびParkinson、「Blood」1994年、第83巻:2020−2022
【非特許文献10】Dubinettら、「Cell Immunol.」1994年、第157巻:170−180
【非特許文献11】Samlowskiら、「J.Immunother.Emphasis Tumor Immunol.」1995年、第18巻:166−178
【非特許文献12】Shanafeltら、「Nat.Biotechnol.」2000年、第18巻:1197−202
【非特許文献13】Sauveら、「Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.」1991年、第88巻:4636−4640
【非特許文献14】Heatonら、「Cancer Res.」1993年、第53巻:2597−2602
【非特許文献15】Eckenbergら、「J.Exp.Med.」2000年、第191巻:529−540
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、低減された毒性であることが予測される改善された機能プロファイルを有するインターロイキン−2(IL−2)のムテインに関する。ヒトIL−2のムテインをコードする単離された核酸分子およびこれらのムテインを含む単離されたポリペプチドが、提供される。このムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2ムテインと比較して、NK細胞の増殖を維持または増大させ、NK細胞媒介性のNK、LAKおよびADCC細胞溶解機能を維持し、そしてT細胞増殖機能を維持しながら、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導する。癌を処置する際および免疫応答を調節する際のこれらの改善されたヒトIL−2ムテインの臨床使用もまた、記載される。
【0007】
1つの局面において、本発明は、ヒトIL−2のムテインをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。特定の実施形態において、上記核酸分子は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ヒトIL−2のムテインをコードする。
【0008】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69および71に示されるヌクレオチド配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、ヒトIL−2のムテインをコードする単離された核酸分子を包含する。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIL−2のムテインをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を包含し、このムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択される配列の残基2〜133を含むアミノ酸配列を有する。
【0010】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69および71からなる群より選択される配列のヌクレオチド4〜399を含むヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を包含する。
【0011】
特定の実施形態において、本明細書に記載される核酸分子は、さらに置換を含み得、ここで配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71のヌクレオチド373〜375は、アラニンをコードするトリプレットコドンで置き換えられている。
【0012】
特定の実施形態において、本明細書に記載される核酸分子は、さらに置換を含み得、ここで配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71のヌクレオチド373〜375は、システインをコードするトリプレットコドンで置き換えられている。
【0013】
特定の実施形態において、本明細書に記載された核酸分子は、発現を最適化するためにさらに改変される。このような核酸は、ムテインをコードする1以上のコドンが目的の宿主細胞内での発現に関して最適化されているヌクレオチド配列を含む。最適化コドンを含有する例示的な核酸としては、配列番号73、配列番号73のヌクレオチド4〜399、配列番号74および配列番号74のヌクレオチド4〜399からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む核酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明は、選択された宿主細胞における使用のための発現ベクターをさらに包含し、ここでこの発現ベクターは、本発明の1以上の核酸を含む。このような発現ベクターにおいて、上記核酸配列は、選択された宿主細胞内での発現と適合性のある制御エレメントに作動可能に連結される。多くの発現制御エレメントが当該分野で公知であり、これらとしては、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終止シグナル、ポリアデニル化配列、翻訳開始の最適化のための配列および翻訳終止配列が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な転写プロモーターとしては、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
別の局面において、本発明は、本発明の発現ベクターを含む細胞を提供し、ここで核酸配列(例えば、ヒトIL−2のムテインをコードする配列)は、選択された細胞内の発現と適合性のある制御エレメントに作動可能に連結される。1つの実施形態において、そのような細胞は、哺乳動物細胞である。例示的な哺乳動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施において有用であり得る他の細胞、細胞型、組織型などとしては、以下にから得られるものが挙げられるが、これらに限定されない:昆虫(例えば、Trichoplusia ni(Tn5)およびSf9)、細菌、酵母、植物、抗原提示細胞(例えば、マクロファージ、単球、樹状細胞、B細胞、T細胞、幹細胞およびその先祖細胞)、初代細胞、不死化細胞、腫瘍誘導細胞。
【0016】
別の局面において、本発明は、ヒトIL−2ムテインの組換え生産のための本発明の発現ベクターおよび宿主細胞のいずれ含む組成物を提供する。このような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアを含み得る。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、ヒトIL−2のムテインを含む単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、本発明は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを包含する。
【0018】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列のアミノ酸残基2〜133を含む単離されたポリペプチドを包含する。
【0019】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるポリペプチドは、さらに置換を含み得、ここでアラニン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0020】
特定の実施形態において、本明細書中に記載されるポリペプチドは、さらに置換を含み得、ここでシステイン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0021】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIL−2ムテインを含む単離されたポリペプチドを包含し、ここで上記ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび配列番号4内の少なくとも2つのさらなるアミノ酸の置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここで上記ムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量と比較して、1)ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を維持または増強し、そして2)NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産の低減されたレベルを誘導する。例示的な組み合わせ置換としては、19D40D、19D81K、36D42R、36D61R、36D65L、40D36D、40D61R、40D65Y、40D72N、40D80K、40G36D、40G65Y、80K36D、80K65Y、81K36D、81K42E 81K61R、81K65Y、81K72N、81K88D、81K91D、81K107H、81L107H、91N95G、107H36D、107H42E、107H65Y、107R36D、107R72N、40D81K107H、40G81K107Hおよび91N94Y95Gが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、このムテインは、配列番号4の1位のアラニンの欠失をさらに含む。
【0022】
ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖の増加およびNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のレベルの低減は、NK−92バイオアッセイを使用して検出され得る。NK細胞の増殖およびNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産に対する本明細書中に記載されたポリペプチドの効果は、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量の効果と比較される。特定の実施形態において、NK−92バイオアッセイを使用して、本明細書中に記載されるポリペプチドが、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量で観察されるレベルと比較して炎症誘発性サイトカインTNF−αを低減されたレベルで誘導することを示す。
【0023】
特定の実施形態において、NK3.3細胞毒性バイオアッセイを使用して、本明細書中に記載されるポリペプチドが、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2の同様の量で観察される細胞毒性と比較して、ヒトNK細胞媒介性ナチュラルキラー細胞毒性、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞毒性またはADCC媒介性細胞毒性を維持または改善することを示す。
【0024】
特定の実施形態において、ムテインにより誘導されるNK細胞増殖は、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される増殖の150%超である。
【0025】
特定の実施形態において、ムテインにより誘導されるNK細胞増殖は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖の170%超である。
【0026】
特定の実施形態において、ムテインにより誘導されるNK細胞の増殖は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖の約200%〜約250%である。
【0027】
特定の実施形態において、上記ムテインにより誘導されるNK細胞の増殖は、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される増殖よりも少なくとも10%増大している。
【0028】
特定の実施形態において、上記ムテインにより誘導されるNK細胞の増殖は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖よりも少なくとも15%増大している。
【0029】
特定の実施形態において、上記ムテインにより誘導される炎症誘発性サイトカイン生産は、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される産生の100%未満である。
【0030】
特定の実施形態において、上記ムテインにより誘導される炎症誘発性サイトカイン生産は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される産生の70%未満である。
【0031】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIL−2のムテインを含む単離されたポリペプチドを包含し、上記ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび配列番号4内の少なくとも2つのさらなるアミノ酸の置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここで上記ムテインのIL−2誘導性TNF−α生産に対するIL−2誘導性NK細胞の増殖の比は、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインの同様の量で観察されるものよりも少なくとも1.5倍高く、ここで0.1nMムテインにおけるNK細胞増殖および1.0nMムテインにおけるTNF−α生産は、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる。特定の実施形態において、上記比は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察されるものよりも少なくとも2.5倍高い。他の実施形態において、上記比は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察されるものよりも少なくとも3.0倍高い。
【0032】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトIL−2のムテインについてのアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドを包含し、ここで上記ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここでさらなる置換は、19位、36位、40位、42位、61位、65位、72位、80位、81位、88位、91位、95位および107位からなる群より選択される配列番号4の位置に存在する。例示的な組み合わせ置換としては、19D40D、19D81K、36D42R、36D61R、36D65L、40D36D、40D61R、40D65Y、40D72N、40D80K、40G36D、40G65Y、80K36D、80K65Y、81K36D、81K42E 81K61R、81K65Y、81K72N、81K88D、81K91D、81K107H、81L107H、91N95G、107H36D、107H42E、107H65Y、107R36D、107R72N、40D81K107H、40G81K107Hおよび91N94Y95Gが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記ポリペプチドは、配列番号4の1位にアラニンの欠失をさらに含む。
【0033】
別の局面において、本発明は、ヒトインターロイキン−2(IL−2)のムテインを産生する方法を提供し、この方法は、本明細書中に記載される任意の核酸分子を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する工程;ポリペプチドとしてのその核酸分子の発現を可能にする条件下で細胞培養培地において上記宿主細胞を培養する工程;およびそのポリペプチドを単離する工程を包含する。特定の実施形態において、ヒトインターロイキン−2(IL−2)のムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125ヒトIL−2から選択される参照ヒトIL−2ムテインの同様の量と比較して、NK細胞の増殖を維持または増強し得、そしてまたNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導し、ここでNK細胞の増殖および炎症誘発性サイトカイン生産は、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる。
【0034】
別の局面において、本発明は、ヒトIL−2のムテインを含む本明細書中に記載される1以上のポリペプチドの治療有効量を含む組成物を提供する。そのような組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み得る。
【0035】
別の局面において、本発明は、哺乳動物の免疫系を刺激するための方法を提供する。この方法は、哺乳動物に治療有効量のヒトIL−2ムテインを投与する工程を包含し、ここで、上記ムテインは、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2ムテインの同様の量と比較して、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここでNK細胞の増殖および炎症誘発性サイトカイン生産は、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる。特定の実施形態において、上記哺乳動物はヒトである。
【0036】
特定の実施形態において、免疫系を刺激するために使用されるヒトIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
特定の実施形態において、免疫系を刺激するために使用されるヒトIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列の残基2〜133を含むアミノ酸配列を含む。
【0038】
特定の実施形態において、免疫系を刺激するために使用されるヒトIL−2ムテインは、さらに置換を含み得、ここでアラニン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されている。
【0039】
特定の実施形態において、免疫系を刺激するために使用されるヒトIL−2ムテインは、置換をさらに含み得、ここでシステイン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0040】
別の局面において、本発明は、哺乳動物において癌を処置するための方法を提供し、この方法は、上記哺乳動物に治療有効量のヒトIL−2ムテインを投与する工程を包含し、ここで上記ムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2ムテインの同様の濃度と比較してNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここで上記NK細胞の増殖および上記炎症誘発性サイトカイン生産は、NK−92バイオアッセイを使用してアッセイされる。特定の実施形態において、上記哺乳動物はヒトである。
【0041】
特定の実施形態において、癌を処置するために使用されるヒトIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み得る。
【0042】
特定の実施形態において、癌を処置するために使用されるヒトIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列を含み得る。
【0043】
特定の実施形態において、癌を処置するために使用されるヒトIL−2ムテインは、置換をさらに含み得、ここでアラニン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0044】
特定の実施形態において、癌を処置するために使用されるヒトIL−2ムテインは、置換をさらに含み得、ここでシステイン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0045】
別の局面において、本発明は、処置プロトコルとしてインターロイキン−2(IL−2)投与を受けている被験体においてIL−2誘導性毒性症状を低減するための方法を提供する。処置の方法は、IL−2ムテインとしてIL−2を投与する工程を包含する。
【0046】
特定の実施形態において、処置に使用されるIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0047】
特定の実施形態において、処置に使用されるIL−2ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72からなる群より選択されるアミノ酸配列の残基2〜133を含む。
【0048】
特定の実施形態において、処置に使用されるIL−2ムテインは、置換をさらに含み、ここでアラニン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【0049】
特定の実施形態において、処置に使用されるIL−2ムテインは、置換をさらに含み、ここでシステイン残基は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
本発明は、低減した毒性および/または改善されたNK細胞またはT細胞のエフェクター機能に起因して、改善された治療効能を有するヒトインターロイキン−2(hIL−2)のムテインに関する。本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインおよび生物学的に活性なその改変体は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインと比較して、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖は維持または増大させながら低減した炎症誘発性サイトカイン生産を誘発する。「炎症誘発性サイトカイン」によって、免疫系を刺激し得るサイトカインが意図される。このようなサイトカインとしては、IFN−α、IFN−γ、TNF−α、TNF−β、IL−1βおよびIL−6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
用語「ムテイン」は、アミノ酸の欠失、置換または両方により、天然に存在するタンパク質についてのアミノ酸配列とは異なる変異アミノ酸配列を含むタンパク質をいう。本発明のヒトIL−2ムテインは、成熟ヒトIL−2配列の125位のシステイン残基に対して置換されたセリン残基(すなわち、C125S)および少なくとも1つの他のアミノ酸置換を有することによって成熟ヒトIL−2配列とは異なるアミノ酸配列を含み、そして、成熟ヒトIL−2配列と比較して1以上のアミノ酸欠失(例えば、成熟ヒトIL−2タンパク質の1位におけるN末端アラニン(Ala)の欠失)をさらに含み得る。代替的な実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインは、成熟ヒトIL−2配列の125位のシステイン残基を保持しているが、少なくとも1つの他のアミノ酸置換を有しており、そして、成熟ヒトIL−2配列と比較して1以上のアミノ酸欠失(例えば、成熟ヒトIL−2タンパク質の1位におけるN末端アラニン(Ala)の欠失)をさらに含み得る。これらのヒトIL−2ムテインは、その製造において使用される宿主発現系に応じて、グリコシル化または非グリコシル化され得る。本明細書中で開示される特定の置換は、本明細書中に記載されるNK−92細胞アッセイを使用して、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインと比較した場合に、低減した炎症誘発性サイトカイン生産を誘発する所望の活性を保持する一方でNK細胞の増殖を維持または増強するヒトIL−2の改変体を生じる。低減した毒性および/または改善されたNK細胞増殖を有するIL−2改変体を生じるヒトIL−2配列内の位置およびそれらの位置における関連する置換を同定すると、ヒトIL−2配列内の他の残基を変化させることによりこれらの所望の活性もまた保持する、本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインの改変体を得ることは当業者の知るとおりである。本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインのこのような変異体もまた、本発明により包含されることが意図され、そして以下にさらに規定される。
【0052】
ヒトIL−2は、配列番号2に示される前駆体ポリペプチドとしてまず翻訳される。この前駆体ポリペプチドは、例えば、配列番号1に示されるようなヌクレオチド配列によってコードされる。この前駆体ポリペプチドは、配列番号2の残基1〜20におけるシグナル配列を含む。用語「成熟ヒトIL−2」は、例えば、配列番号3に示されるようなヌクレオチド配列によってコードされる配列番号4に示されるアミノ酸配列を指す。用語「C125SヒトIL−2ムテイン」または「C125SヒトIL−2」は、成熟ヒトIL−2配列の1位に存在するN末端アラニンを保持し、そして成熟ヒトIL−2配列の125位のシステインに対するセリンの置換を有する成熟ヒトIL−2のムテインを指す。C125SヒトIL−2ムテインは、配列番号5に示されるようなヌクレオチド配列によってコードされる配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する。用語「デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2」および「デス−アラニル−1,セリン−125ヒトIL−2」は、成熟ヒトIL−2配列のアミノ酸125位のシステインに対するセリンの置換を有し、そして成熟ヒトIL−2配列の1位(すなわち、配列番号4の1位)に存在するN末端アラニンを欠いている成熟ヒトIL−2のムテインを指す。デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2は、配列番号7に示されるようなヌクレオチド配列によってコードされる配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する。「アルデスロイキン」と称されているE.coli組換え生産デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインは、商標プロロイキン(Proleukin)(登録商標)IL−2(Chiron Corporation,Emeryville,California)の下に市販されている処方物として利用可能である。本発明の目的のためには、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2ムテインは、本発明のヒトIL−2ムテインにより示されるべき所望の活性を決定するための参照IL−2ムテインとして機能する。すなわち、本発明の適切なヒトIL−2ムテインにおけるNK細胞による低減したIL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産(特に、TNF−α生産)の所望の活性は、同様のアッセイ条件下におけるデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインの等しい量により誘導されるNK細胞の炎症誘発性サイトカイン生産の量と比較して測定される。同様に、本発明の適切なヒトIL−2ムテインにおいてIL−2誘導性NK細胞増殖を維持または増大する所望の活性は、同様のアッセイ条件下におけるデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインの等しい量により誘導されるNK細胞増殖の量と比較して測定される。
【0053】
少なくとも2つのさらなる置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含み、これらの2種の参照IL−2ムテインと比較した場合にNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導する一方でNK細胞増殖を維持または増大させるような、ヒトIL−2ムテインをコードする単離された核酸分子およびその生物学的に活性な変異体が、提供される。本発明の核酸分子によりコードされる単離されたポリペプチドもまた、提供される。
【0054】
本発明のヒトIL−2ムテインは、本明細書中においては、「偶数の配列番号10〜72に示される配列」とも称される、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72に示されるムテインを包含する。本発明はまた、これらのムテインをコードする任意のヌクレオチド配列(例えば、それぞれ、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69および71に示されるコード配列)を提供する。これらのコード配列はまた、本明細書において「奇数の配列番号9〜71に示される配列」とも称される。これらの前述のアミノ酸配列に示されるムテインは、少なくとも2つのさらなる置換を有するC125SヒトIL−2アミノ酸配列を含み、ここでこれらのさらなる置換は、以下の表1に示される組み合わせ置換によって表される。「組み合わせ置換」によって、ヒトIL−2ムテイン配列内に存在する2以上の残基の置換の群が意図される。従って、例えば、「19D40D」として設計される組み合わせ置換は、本発明のヒトIL−2ムテインが、成熟ヒトIL−2(配列番号4に示される)の19位に対応する位置におけるロイシン残基に対するアスパラギン酸残基(すなわち、D)の置換と、成熟ヒトIL−2(配列番号4に示される)の40位に対応する位置におけるロイシン残基に対するアスパラギン酸残基(すなわち、D)の置換との両方を含むことを意味することが意図される。同様に、「40D81K107H」として設計される組み合わせ置換は、本発明のヒトIL−2ムテインが、以下の置換の3つ全てを含むことを意味することが意図される:成熟ヒトIL−2の40位に対応する位置におけるロイシン残基に対するアスパラギン酸残基(すなわち、D)の置換、成熟ヒトIL−2の81位に対応する位置におけるアルギニン残基に対するリジン残基(すなわち、K)の置換、および成熟ヒトIL−2の107位に対応する位置におけるチロシン残基に対するヒスチジン残基(すなわち、H)の置換。代替的な実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインは、欠失されたこれらのアミノ酸の1位の元のアラニン残基を有し、従って、少なくとも2つのさらなる置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2アミノ酸配列を含み、ここでこれらのさらなる置換は、以下の表1に示される組み合わせ置換によって表される。従って、これらのムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示される配列の残基2〜133を含むアミノ酸配列を有する。本発明はまた、これらのムテインをコードする任意のヌクレオチド配列(例えば、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69および71に示される配列のヌクレオチド4〜399に示されるコード配列)を提供する。
【0055】
本明細書中に記載される所望のヒトIL−2ムテイン機能プロファイルを有する、本発明のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体、そのフラグメントおよび切断型もまた、提供される。例えば、開示されるヒトIL−2ムテインのフラグメントまたは切断型は、当該分野で周知であり、本明細書中の他の箇所で記載される組換えDNA技術を用いて、完全長ヒトIL−2ムテインアミノ酸配列からアミノ酸残基を除去することによって作製され得る。本発明のヒトIL−2ムテインの適切な改変体は、新規のヒトIL−2ムテイン自身により示される活性と同様の生物学的活性を有しており、すなわち、これらは、本明細書中の他の箇所に開示されるバイオアッセイを用いて参照IL−2分子(すなわち、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2)と比較した場合に、新規のヒトIL−2ムテインの低い毒性(すなわち、低いかまたは低減された炎症誘発性サイトカイン生産)、ならびにNK細胞増殖を維持または増大させる能力を有する。本明細書において同定される任意の所定の新規のヒトIL−2ムテインの改変体は、それが低減された毒性を有するという所望の生物学的プロファイルを保持している限り、すなわち、参照ヒトIL−2ムテインと比較してNK細胞による低いレベルの炎症誘発性サイトカイン生産および/または増大したNK細胞増殖を誘導する限り、本発明の新規のヒトIL−2ムテインで観察されるものと比較してある特定の生物学的活性の異なる絶対レベルを有し得ることが認識される。
【0056】
(表1.少なくとも2つのさらなる置換を有するC125SヒトIL−2(配列番号6)またはデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、本発明のヒトIL−2ムテインの例であって、ここでさらなる置換は、以下に示される組み合わせ置換より選択される。残基の位置は、配列番号4に示される成熟ヒトIL−2配列内の位置に関連している。これらの位置はまた、配列番号6に示されるC125SヒトIL−2配列内の位置に対応する。各残基の位置は、その位置において天然に存在する残基に対して置換されているアミノ酸についての1文字略語の後にくる。)
【0057】
【表1】

本発明の組成物は、本発明のヒトIL−2ムテインまたはその生物学的に活性な改変体の組換え生産のためのベクターおよび宿主細胞をさらに含む。さらに、本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインまたはその生物学的に活性な改変体の治療有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含有する薬学的組成物もまた、提供される。
【0058】
参照IL−2ムテインで観察されるものと比較してより低いレベルのNK細胞による炎症誘発性生産を誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増大させるヒトIL−2のムテインの製造方法は、本発明によって包含される。これらの方法は、本発明の新規のヒトIL−2ムテインをコードするか、またはその生物学的に活性な改変体をコードする核酸分子を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する工程、コードされたポリペプチドの発現を可能にする条件下において細胞培養用の培地中で宿主細胞を培養する工程、およびこのポリペプチド産物を単離する工程を包含する。
【0059】
また、動物の免疫系を刺激するためか、または哺乳動物において癌を処置するための方法も提供され、この方法は、本発明のヒトIL−2ムテインまたはその生物学的に活性な改変体の治療有効量を動物に投与する工程を包含し、ここでIL−2ムテインまたはその改変体は、本明細書中の以下に開示されるバイオアッセイを用いて決定される場合、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2と比較して、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導し、そしてNK細胞増殖を維持または増大させる。
【0060】
本発明はまた、処置プロトコルとしてIL−2投与を受けている被験体におけるインターロイキン−2(IL−2)誘導性毒性症状を低減するための方法を提供する。この方法は、本発明のIL−2ムテイン(すなわち、本明細書中の以下に開示されるバイオアッセイを用いて決定した場合、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較して、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産をより低いレベルで誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増大させるムテイン)を投与する工程を包含する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「核酸分子」は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)およびヌクレオチドアナログを用いて作製される上記DNAまたはRNAのアナログを包含することが意図される。核酸分子は、1本鎖であっても2本鎖であってもよいが、好ましくは2本鎖DNAである。本発明は、単離された核酸もしくはタンパク質組成物、または実質的に精製された核酸もしくはタンパク質組成物を包含する。「単離された」もしくは「精製された」核酸分子またはタンパク質またはその生物学的に活性な部分は、その天然に存在する環境中で見出される場合に、その核酸分子もしくはタンパク質に通常伴っているか、またはそれらと相互作用する成分を、実質的または本質的に含有しない。従って、単離もしくは精製された核酸分子またはタンパク質は、組換え技術により製造された場合、他の細胞物質または培養培地を実質的に含有しないか、あるいは化学合成された場合、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しない。好ましくは、「単離された」核酸は、その核酸が由来する生物のゲノムDNA内の核酸に天然に隣接する核酸(すなわち、その核酸の5’末端および3’末端に位置する配列)(好ましくは、タンパク質コード配列)を含有しない。例えば、種々の実施形態において、単離された核酸分子は、その核酸が由来する細胞のゲノムDNA内の核酸分子に天然に隣接するヌクレオチド配列の約5kb、約4kb、約3kb、約2kb、約1kb、約0.5kbまたは約0.1kb未満を含み得る。細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、夾雑タンパク質の約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量による)未満を有するタンパク質の調製物を含む。本発明のタンパク質またはその生物学的に活性な改変体が組換え生産される場合、好ましくは、培養培地は、化学前駆体または目的の非タンパク質化学物質の約30%、20%、10%、5%または1%(乾燥重量による)未満を表す。
【0062】
(新規のヒトIL−2ムテインの生物学的活性)
本発明の新規のヒトIL−2ムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインと比較して、またはC125SヒトIL−2ムテインと比較して、高値の治療指数を有する。本発明のムテインを分類するために、同様のタンパク質濃度および類似のアッセイ条件を用いていずれかの所定の比較がなされる場合、後者の2つのムテインは、本発明の新規のムテインの生物学的プロファイルがこれら2つの前もって特徴付けられたヒトIL−2ムテインの生物学的プロファイルと比較されることから、本明細書において「参照IL−2ムテイン」と称される。本発明のムテインの高値の治療指数は、これら2つの参照IL−2ムテインのいずれかの毒性プロファイルならびにNK細胞および/またはT細胞のエフェクター機能と比較される場合、これらのムテインの改善された毒性プロファイル(すなわち、ムテインはNK細胞による炎症誘発性サイトカインの生産をより低いレベルで誘導する)、毒性の上昇を伴わないNK細胞および/もしくはT細胞のエフェクター機能の増大、または改善された毒性プロファイルおよびNK細胞および/もしくはT細胞のエフェクター機能の増大の両方において反映される。
【0063】
3つの機能的終点を使用して、上昇した治療指数を有するムテインを選択した:(1)デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較してNK細胞によるIL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産を低減する能力;(2)デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較してNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産の増大を伴うことなく、NK細胞およびT細胞のIL−2誘導性増殖を維持または増大させる能力;ならびに(3)デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較してNK媒介性細胞溶解細胞殺傷を維持または改善(すなわち、増大)する能力。NK媒介性細胞溶解細胞殺傷は、NK媒介性、リンホカイン活性化キラー(LAK)媒介性および抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)媒介性の細胞溶解殺傷を包含する。
【0064】
治療指数において最大の改善を示す本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテインは、改善された臨床的利益を予測する3種の機能的なクラスに属する。特記すべきは、これらのムテインの全てが、維持または増大されたT細胞増殖活性およびNK媒介性細胞溶解活性を示すことである。ムテインの第1の機能クラスは、IL−2誘導性NK細胞増殖を維持しつつ、参照IL−2ムテイン(すなわち、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較してNK細胞によるIL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産を低減する有益な変異を有することによって特徴付けられる。ムテインの第2の機能クラスは、参照IL−2ムテインの何れかにより誘導されるものと比較して、炎症誘発性サイトカイン生産にマイナスの影響を与える(すなわち、増大する)ことなく、参照IL−2ムテインの何れかにより誘導されるものと比較してIL−2誘導性NK細胞増殖を増大させる。ムテインの第3の機能クラスは、これら2つの参照IL−2ムテインの何れにより誘導されるこれらの活性のレベルと比較した場合、それらがIL−2誘導性NK細胞増殖を増大させながら、NK細胞によるIL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産を低減することができるという点において「二官能性」であるムテインを含む。
【0065】
新しく単離されたNK細胞によるIL−2誘導性NK細胞増殖および炎症誘発性サイトカイン生産を測定するためのアッセイは、当該分野で周知である。例えば、Perussia(1996)Methods 9:370およびBaumeら(1992)Eur.J.Immunol.22:1−6を参照のこと。NK−92細胞株は、IL−2の存在下での増殖を含む、NK細胞の表現型および機能的特性を有する(Gongら(1994)Leukemia 8:652)が、IL−2の存在下のTNF−αの生産は殆どまたは全く無いことが以前に報告されている(Nagashimaら(1998)Blood 91:3850)。ヒトNK細胞およびT細胞の機能的活性化をスクリーニングするために開発されたIL−2バイオアッセイは、本明細書中および以下の実験の節において開示される。他のアッセイを使用してNK細胞増殖およびNK細胞の炎症誘発性サイトカイン生産、およびT細胞エフェクター機能を測定し得るが、好ましくは、本明細書中に開示されるIL−2バイオアッセイを用いて目的のIL−2ムテインをスクリーニングし、それらが本明細書中に開示されるムテインの所望の特性を保持しているか否かを決定する。特に興味深いものは、NK細胞によるTNF−α生産の誘導の低減である。すなわち、1つの実施形態において、IL−2誘導性NK細胞増殖およびTNF−α生産は、ヒトNK−92細胞株(ATCC CRL−2407、CMCC ID#1925)に関して以下に記載されるIL−2バイオアッセイを使用して測定される。NK−92細胞株に関する説明については、Gongら(1994)Leukemia 8(4):652−658を参照のこと。本発明の目的のために、このバイオアッセイは、「NK−92バイオアッセイ」と称される。
【0066】
「低減する」または「低減された」炎症誘発性サイトカイン産生によって、特にNK細胞によるTNFα生産の誘導に関して、本発明のヒトIL−2ムテインが、参照IL−2ムテイン(すなわち、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2ムテイン)により誘導されるものと比較して低減した、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のレベルを誘導することが意図される。本発明のヒトIL−2ムテインは、類似のアッセイ条件下においてデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導されるものの少なくとも20%であるNK細胞によるTNF−α生産の最小レベルを誘導するが、本発明のムテインにより誘導され得るNK細胞によるTNF−α生産の最大レベルは、ムテインが分類される機能クラスに依存する。
【0067】
従って、例えば、いくつかの実施形態において、上記ムテインは、NK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産に対する負の影響を有することなくNK細胞増殖の大きく増強された誘導のために選択されている(すなわち、ムテインの第2の機能クラス)。これらの実施態様において、本発明のヒトIL−2ムテインは、参照IL−2ムテインにより誘導されるものと同様(すなわち、±10%)、または好ましくは参照IL−2ムテインにより誘導されるものの90%未満のNK細胞によるTNF−α生産のレベルを誘導し、ここでTNF−α生産は、ヒトNK−92細胞株(ATCC CRL−2407、CMCC ID#11925)を用いて(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)、そしてそれぞれのヒトIL−2ムテインの1.0nMまたは100pM(すなわち、0.1nM)濃度を用いてアッセイされる。本発明の他の実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインは、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導されるTNF−α生産の90%未満、好ましくは85%未満、更に好ましくは80%未満であるNK細胞によるTNF−α生産のレベルを誘導し、ここでTNF−α生産は、ヒトNK−92細胞株を用いて(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)、そしてそれぞれのヒトIL−2ムテインの1.0nM濃度を用いてアッセイされる。いくつかの実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導されるTNF−α生産の少なくとも20%であるが60%未満を誘導し、ここでTNF−α生産は、ヒトNK−92細胞株を用いて(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)、そしてそれぞれのヒトIL−2ムテインの1.0nM濃度を用いてアッセイされる。参照IL−2ムテインと比較してIL−2誘導性NK細胞増殖も維持または増大するこのようなムテインは、IL−2ムテインの第1の機能クラスに属する。
【0068】
「維持する」によって、本発明のヒトIL−2ムテインが、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量で観察される活性のレベルに対して、所望の生物学的活性の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも85%〜100%まで(すなわち、同等の値)を誘導することが意図される。従って、所望の生物学的活性がNK細胞増殖の誘導である場合は、本発明の適切なIL−2ムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導されるNK細胞増殖活性の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、そして最も好ましくは少なくとも85%、90%、95%〜100%まで(±5%)のNK細胞増殖のレベルを誘導し、ここでNK細胞増殖は、同じバイオアッセイ(すなわち、本明細書中で開示されるNK−92バイオアッセイ)および同様の量のこれらIL−2ムテインを用いる類似の条件下でアッセイされる。
【0069】
「増強する」または「増大させる」または「改善する」によって、ヒトIL−2ムテインが、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量で観察されるものと比較して増大しているレベルの所望の生物学的活性を誘導することが意図される。従って、所望の生物学的活性がNK細胞増殖の誘導である場合は、本発明の適切なIL−2ムテインは、同じNK細胞増殖アッセイ(例えば、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイ)を使用してデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量で観察されるNK細胞増殖活性の少なくとも105%、110%、115%、より好ましくは少なくとも120%、更により好ましくは少なくとも125%、そして最も好ましくは少なくとも130%、140%または150%であるNK細胞増殖のレベルを誘導する。
【0070】
NK細胞増殖を測定するアッセイは、当該分野で周知である(例えば、Baumeら(1992)Eur.J.Immuno.22:1−6、Gongら(1994)Leukemia 8(4):652−658および本明細書中で記載されるNK−92バイオアッセイを参照のこと)。好ましくは、NK−92細胞を用いて、IL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産(特に、TNF−α生産)およびNK細胞増殖を測定する(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイ)。NK細胞増殖アッセイにおいて使用するのに適切なヒトIL−2ムテイン濃度は、約0.005nM(5pM)〜約1.0nM(1000pM)、(0.005nM、0.02nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、1.0nMおよび他の約0.005nMと約1.0nMの間のこのような値が挙げられる)を包含する。本明細書中の以下に記載される好ましい実施形態において、NK細胞増殖アッセイは、NK−92細胞および約0.1nMまたは約1.0nMのヒトIL−2ムテインの濃度を用いて実施される。
【0071】
炎症誘発性サイトカイン生産の低減された誘導および維持または増強されたIL−2誘導性NK細胞増殖の結果として、本発明のヒトIL−2ムテインは、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の何れかよりも、より好ましいIL−2誘導性NK細胞増殖:NK細胞によるIL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産の比を有し、ここでこれらの活性は、各ムテインについて類似のタンパク質濃度およびバイオアッセイ条件を用いて測定される。測定される炎症誘発性サイトカインがTNF−αである場合、本発明の適切なヒトIL−2ムテインは、同様のバイオアッセイ条件およびタンパク質濃度の下でのデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で得られるものの少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも1.75倍、2.0倍、2.25倍、更に好ましくは参照IL−2ムテインで得られるものの少なくとも2.75倍、3.0倍または3.25倍である、0.1nMムテインにおけるIL−2誘導性NK細胞増殖:1.0nMムテインにおけるNK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産の比を有する。いくつかの実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインは、同様のバイオアッセイ条件およびタンパク質濃度の下でのデス−アラニル−1,ヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で得られるものの少なくとも3.5倍、3.75倍、4.0倍、4.5倍、または更には5.0倍である、0.1nMムテインにおけるIL−2誘導性NK細胞増殖:1.0nMムテインにおけるNK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産の比を有する。
【0072】
本発明のムテインはまた、同様のバイオアッセイ条件およびタンパク質濃度の下でのデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察されるものと比較して、NK細胞生存を増強(すなわち、増大)する。NK細胞生存は、本明細書中に記載されるアッセイを含む当該分野で公知の任意のアッセイを用いて決定され得る。従って、例えば、目的のIL−2ムテインの存在下のNK細胞の生存は、NK細胞においてグルココルチコステロイドのプログラムされた細胞死をブロックし、そしてBCL−2発現を誘導するIL−2ムテインの能力を測定することによって、決定され得る(例えば、Armantら(1995)Immunology 85:331を参照のこと)。
【0073】
本発明は、NK細胞生存に対するIL−2の効果をモニタリングするためのアッセイを提供する。従って、1つの実施形態において、目的のヒトIL−2ムテインの存在下でのNK細胞の生存は、pAKT ELISAを用いたNK3.3細胞(CMCC ID#12022;Kornbluth(1982)J.Immunol.129(6):2831−2837を参照のこと)における細胞生存シグナル伝達カスケードを誘導するムテインの能力を測定することによって決定される。この様式において、目的のIL−2ムテインによるNK細胞におけるAKTのリン酸化のアップレギュレーションは、NK細胞生存の指標として使用される。
【0074】
本発明の方法において使用するためのIL−2ムテインは、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化および/または増やして、リンホカイン活性化キラー(LAK)活性および抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を媒介する。休止(非活性化)NK細胞は、ヒト赤白血病K562細胞株のような「NK細胞感受性」標的と称される特定の細胞標的に対する、自発的または天然の細胞毒性を媒介する。IL−2による活性化の後、NK細胞は、LAK活性を獲得する。このようなLAK活性は、例えば、種々の腫瘍細胞および他の「LAK感受性/NK非感受性」標的(例えば、休止(すなわち、非活性化)NK細胞による溶解に通常は耐性であるDaudi B細胞リンパ腫株)を殺傷するIL−2活性化NK細胞の能力を測定することによりアッセイされ得る。同様に、ADCC活性は、「LAK感受性/NK非感受性」の標的細胞(例えば、Daudi B細胞リンパ腫株)、または関連する腫瘍細胞に特異的な抗体の最適濃度の存在下で休止(すなわち、非活性化)NK細胞により容易に溶解されない他の標的細胞を溶解する、IL−2活性化NK細胞の能力を測定することによってアッセイされ得る。NK/LAK細胞の細胞毒性活性およびADCCを発生させて測定するための方法は、当該分野で公知である。例えば、Current Protocols in Immunology:Immunologic Studies in Humans,Supplement 17,Unit 7.7,7.18および7.27(John Wiley & Sons,Inc.,1996)を参照のこと。1つの実施形態において、本発明のIL−2ムテインのADCC活性は、末梢血NK細胞の表現型および機能的特徴を示すNK3.3細胞株を用いて測定される。本発明の目的のために、このアッセイは、本明細書において「NK3.3細胞毒性バイオアッセイ」と称される。
【0075】
本発明のヒトIL−2ムテインはまた、同様のバイオアッセイ条件およびタンパク質濃度の下でデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察されるものと比較して、IL−2誘導性T細胞増殖を維持または増強し得る。T細胞増殖アッセイは、当該分野で周知である。1つの実施形態において、ヒトT細胞株Kit225(CMCC ID#11234;Horiら(1987)Blood 70(4):1069−1072)を使用して、本明細書の以下に記載されるアッセイに従ってT細胞増殖を測定する。
【0076】
上記した通り、本明細書において同定された主要なヒトIL−2ムテイン候補(すなわち、最も改善された治療指数を有する新規のムテイン)は、3つの機能クラスに分類される。第1の機能クラスは、1.0nMのタンパク質濃度において同様の条件下で全ムテインをアッセイした場合に、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導されるものの約60%以下のNK細胞によるTNF−α生産のより低値のレベルを誘導し、そしてデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較してNK細胞の増殖を維持または増強するムテインを含む。これらのムテインは、以下の2つのサブクラスにさらに分けられる:(1)これらのムテインが約1.0nMのタンパク質濃度において同様の条件下でアッセイされる場合に、参照ヒトIL−2ムテインで観察されるものと比較してIL−2誘導性NK細胞増殖を増強(すなわち、100%超)するが、約0.1nM以下の濃度の参照ヒトIL−2ムテインで観察されるものと比較して低減された(すなわち、100%未満の)NK細胞増殖活性を有するヒトIL−2ムテイン;および(2)これらのムテインが約1.0nM〜約0.05nM(すなわち約50pM)のタンパク質濃度において同様の条件下でアッセイされる場合に、参照ヒトIL−2ムテインで観察されるものと比較してIL−2誘導性NK細胞増殖を増強(すなわち、100%超)または維持(すなわち、少なくとも約70%〜約100%)するヒトIL−2ムテイン。1つの実施形態において、IL−2誘導性NK増殖およびTNF−α生産は、NK−92細胞を用いて(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)測定され、この測定において、NK細胞増殖は、市販のMTT色素還元キット(CellTiter 96(登録商標)非放射活性細胞増殖アッセイキット;Promega Corp.,Madison,Wisconsinより入手可能))を用いて決定され、そして刺激指数は、比色読み取り値に基づいて計算され、そしてTNF−αは、市販のTNF−α ELISAキット(BioSource CytoscreenTM ヒトTNF−α ELISAキット;Camarillo,California)を用いて定量される。この第1の機能クラスのサブクラス(1)に属するヒトIL−2ムテインとしては、19D40D、36D61R、36D65L、40D61R、40D65Y、40G65Y、81K91Dからなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせ置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含むムテインが挙げられ、ここで残基の位置(すなわち、19、36、40、61、65、81または91)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)ものである。本明細書中の以下の実施例2および表3を参照のこと。第1の機能クラスのサブクラス(2)に属するヒトIL−2ムテインとしては、40D72N、80K65Y、81K88D、81K42E、81K72N、107H65Y、107R72Nからなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせ置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含むムテインが挙げられ、ここで残基の位置(すなわち、40、42、65、72、80、81、88または107)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)ものである。本明細書中の以下の実施例2および表4を参照のこと。
【0077】
第2の機能クラスのヒトIL−2ムテインとしては、NK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産に対して有害な影響を及ぼすことなくNK細胞増殖を強力に増大させるムテインが挙げられる。この機能グループに属するムテインは、以下の3つの選択基準を満たす:(1)0.005nM(すなわち、5pM)、0.02nM(すなわち、20pM)、0.05nM(すなわち、50pM)、0.1nM(すなわち、100pM)または1.0nM(すなわち、1000pM)からなる群より選択されるヒトIL−2ムテインの1以上の濃度において、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導されるレベルの約200%超であるIL−2誘導性NK細胞増殖のレベル;(2)0.005nM(すなわち、5pM)、0.02nM(すなわち、20pM)、0.05nM(すなわち、50pM)、0.1nM(すなわち、100pM)または1.0nM(すなわち、1000pM)からなる群より選択されるヒトIL−2ムテインの少なくとも2つの濃度について測定される場合に、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導されるレベルの約150%超であるIL−2誘導性NK細胞増殖のレベル;ならびに(3)TNF−α生産が1.0nM(すなわち、1000pM)または0.1nM(すなわち、100pM)のムテイン濃度でアッセイされる場合に、参照IL−2ムテインにより誘導されるものと同様(すなわち、±10%)、または好ましくは参照IL−2ムテインにより誘導されるものの90%未満であるNK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産のレベル。1つの実施形態において、NK細胞によるIL−2誘導性TNF−α生産およびIL−2誘導性NK細胞増殖は、NK−92細胞を用いて(すなわち、本明細書中で開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)決定され、ここでTNF−α生産はELISAを用いて測定され、そしてNK細胞増殖は上記したMTTアッセイにより測定される。この第2の機能クラスに属するヒトIL−2ムテインとしては、19D81K、40G36Dおよび81K36Dからなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせ置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含むムテインが挙げられ、ここで残基の位置(すなわち、19、36、40または81)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)ものである。本明細書中の以下の実施例3および表5を参照のこと。
【0078】
第3の機能クラスのヒトIL−2ムテインとしては、それらが、参照IL−2ムテインと比較してNK細胞増殖の増大およびNK細胞によるTNF−α生産の低減を誘導する点において「二官能性」であるムテインが挙げられる。この第3の機能クラスに属するムテインは、以下の基準を満たす:(1)0.005nM(すなわち、5pM)、0.02nM(すなわち、20pM)、0.05nM(すなわち、50pM)、0.1nM(すなわち、100pM)または1.0nM(すなわち、1000pM)からなる群より選択されるいずれか1つのムテイン濃度についてアッセイされる場合に、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2について観察されるレベルの少なくとも約150%であるNK細胞増殖のレベルを誘導すること;および(2)約1.0nMのムテイン濃度においてアッセイされる場合にデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導されるレベルの約75%未満であるNK細胞によるTNF−α生産のレベルを誘導すること。1つの実施形態において、IL−2誘導性TNF−α生産およびIL−2誘導性NK細胞増殖は、NK−92細胞を用いて(すなわち、本明細書中に開示されるNK−92バイオアッセイを用いて)決定され、ここでIL−2誘導性TNF−α生産は、ELISAを用いて測定され、そしてIL−2誘導性NK細胞増殖は、上記したMTT試験によって測定される。この第3の機能クラスに属するヒトIL−2ムテインとしては、36D42R、36D80K、40D80K、81K61R、91N95G、107H36D、107R36Dおよび91N94Y95Gからなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせ置換を有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含むムテインが挙げられ、ここで残基の位置(すなわち、36、40、42、61、80、81、91、94、95または107)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)ものである。本明細書中の以下の実施例4および表6を参照のこと。
【0079】
本発明はまた、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2に関して観察されるものと比較して改善された治療指数に寄与する他の選択基準を満たすヒトIL−2ムテインを提供する。従って、例えば、別の実施形態において、本発明は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2について観察されるものより少なくとも1.25倍、1.5倍、1.75倍高く、好ましくは少なくとも2.0倍、2.5倍、3.0倍高く、より好ましくは少なくとも3.5倍、3.75倍、4.0倍、4.5倍〜5倍高い、1.0nMムテインにおけるNK細胞によるIL−2誘導性TNF−α産生に対する0.1nMムテインにおけるIL−2誘導性NK細胞増殖の比もまた示すヒトIL−2ムテインを提供する。これらの基準を満たすムテインとしては、表1に示されるすべてのムテインが挙げられるが、19D40D組み合わせ置換を含むヒトIL−2ムテインは除く。この指数の上昇は、増強されたNK細胞エフェクター機能および低減された毒性の有益な効果を考慮して改善された臨床的な利益を予測する。
【0080】
(新規のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体)
本発明はまた、参照IL−2分子と比較してこれらの改善された特性もまた有する本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体を提供する。すなわち、この生物学的に活性な改変体は、本明細書中の他の箇所に開示されるバイオアッセイを使用して、参照IL−2分子(すなわち、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2)と比較した場合、NK細胞による炎症誘発性サイトカインの低い生産または低減された産生を誘導し、そしてNK細胞増殖を維持または増大させる。前述の通り、本明細書において同定される何れかの所定の新規のヒトIL−2ムテインの改変体は、それが参照IL−2分子と比較して所望の特性(すなわち、本明細書の他の箇所に開示されるバイオアッセイを使用して参照IL−2分子と比較した場合に、炎症誘発性サイトカイン生産が低減し、そして/またはNK細胞増殖が増大するという、低減された毒性)を有する限り、本発明の新規のヒトIL−2ムテインで観察されるものと比較して特定の生物学的活性の異なる絶対的レベルを有し得ることが認識される。
【0081】
「改変体」によって、実質的に同様の配列が意図される。本明細書中に記載される新規のヒトIL−2ムテインの改変体は、天然に存在する核酸配列またはアミノ酸配列に由来してもよいし(例えば、IL−2遺伝子座に存在する対立遺伝子改変体)、組換え生産された核酸配列またはアミノ酸配列に由来してもよい(例えば、ムテイン)。ポリペプチド改変体は、本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテインのフラグメントであってもよいし、または、それらは、上記変異体ポリペプチドが本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテイン内に存在する目的の特定のアミノ酸置換を保持している限り、1以上のさらなるアミノ酸の置換もしくは欠失、またはアミノ酸挿入を有することによって新規のヒトIL−2ムテインと異なっていてもよい。従って、適切なポリペプチド改変体としては、成熟ヒトIL−2配列(すなわち、配列番号4)の125位に対応するC125S置換、本発明の新規のヒトIL−2ムテインの改善された治療指数に寄与するものとして本明細書中で同定された組み合わせ置換のうちの1つ(すなわち、上記表1に示される組み合わせ置換)を有し、そして1以上のさらなるアミノ酸の置換もしくは欠失、またはアミノ酸挿入を有するものが挙げられる。従って、例えば、上記新規のヒトIL−2ムテインが、表1に示される組み合わせ置換のうちの1つを有するデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)またはC125SヒトIL−2(配列番号6)のアミノ酸配列を含む場合、これらの新規のヒトIL−2ムテインの適切な生物学的に活性な改変体はまた、C125S置換ならびに表1に示される組み合わせ置換を含むが、上記改変体ポリペプチドが参照IL−2分子(すなわち、参照IL−2ムテインC125SヒトIL−2またはデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2)と比較して所望の特性を有し、従って、参照ヒトIL−2分子(すなわち、C125SヒトIL−2またはデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2)と比較した場合に炎症誘発性サイトカイン生産が低減し、そして/またはNK細胞増殖が増大するという、低減された毒性を有する限り、上記の生物学的に活性な改変体は、1以上のさらなる置換、挿入または欠失を有する点においてそれぞれの新規のヒトIL−2ムテインとは異なり得る。このような改変体は、それぞれの新規のヒトIL−2ムテイン(例えば、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示される新規ヒトIL−2ムテイン)のアミノ酸配列と少なくとも70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、90%同一であり、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を有し、ここで配列同一性の割合は、本明細書中の以下で記述するとおりに決定される。
【0082】
他の実施形態において、上記生物学的に活性な改変体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、90%同一であり、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を有し、ここで配列同一性の割合は、本明細書中の以下で記述するとおりに決定される。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体は、ヒトIL−2ムテインの所望の機能特性に影響しない、アラニンのような別の中性のアミノ酸で置き換えられたC125S置換を有する。従って、例えば、このような改変体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位におけるセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含むアミノ酸配列を有する。さらに他の実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテイン生物学的に活性な改変体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むが、例外として、これらの配列の125位においてセリン残基に対して置換されたアラニン残基を有する。
【0084】
本発明の代替的な実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72のアミノ酸配列を含むが、例外として、これらの配列の125位においてセリン残基に対して置換されたシステイン残基を有する。さらに他の実施形態において、本発明のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むが、例外として、これらの配列の125位においてセリン残基に対して置換されたシステイン残基を有する。
【0085】
核酸「改変体」によって、本発明の新規のヒトIL−2ムテインをコードするが、そのヌクレオチド配列が、遺伝子コードの縮重に起因して本明細書中に開示される新規のムテイン配列とは異なるポリヌクレオチドが意図される。天然に存在するアミノ酸についてのコドンは当該分野で周知であり、これらとしては、組換えタンパク質を発現するために使用される特定の宿主生物において最も頻繁に使用されているコドンが挙げられる。本明細書中に開示されるIL−2ムテインをコードするヌクレオチド配列は、添付する配列表に示されるもの、ならびに遺伝子コードの縮重により開示される配列とは異なるヌクレオチド配列を包含する。
【0086】
従って、例えば、本発明のIL−2ムテインがアスパラギン酸(すなわち、D)の置換を含む場合(例えば、19D40D、19D81K、36D42R、36D61R、36D65L、40D36D、40D61R、40D65Y、40D72N、40D80K、40G36D、80K36D、81K36D、81K88D、81K91D、107H36D、107R36Dまたは40D81K107Hの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたアスパラギン酸残基をコードするヌクレオチド配列は、アスパラギン酸についての2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、GACおよびGAT)から選択され得る。上記組み合わせ置換が2つの類似の残基の置換を含む場合(例えば、19D40Dまたは40D36Dの組み合わせ置換を含むムテイン)、その置換された残基は、同じ一般的なコドンによってコードされてもよいし(すなわち、両方の置換がGACまたはGATのいずれかによってコードされる)、代替的な一般的コドンによってコードされてもよい(すなわち、一方はGACによってコードされ、もう一方はGATによってコードされる)。同様に、本発明のIL−2ムテインがグリシン(すなわち、G)の置換を含む場合(例えば、40G36D、40G65Y、91N95G、40G81K107Hまたは91N94Y95Gの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたグリシン残基をコードするヌクレオチド配列は、グリシンについての4つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、GGT、GGC、GGAおよびGGG)から選択され得る。
【0087】
本発明のIL−2ムテインがリジン(すなわち、K)の置換を含む場合(例えば、19D81K、40D80K、80K36D、80K65Y、81K36D、81K42E、81K61R、81K65Y、81K72N、81K88D、81K91D、81K107H、40D81K107Hまたは40G81K107Hの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたリジン残基をコードするヌクレオチド配列は、リジンについての2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、AAAおよびAAG)から選択され得る。同様に、本発明のIL−2ムテインがロイシン残基(すなわち、L)の置換を含む場合(例えば、36D65Lまたは81L107Hの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたロイシン残基をコードするヌクレオチド配列は、ロイシンについての6つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、TTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTG)から選択され得る。
【0088】
本発明のIL−2ムテインがアスパラギン(すなわち、N)の置換を含む場合(例えば、40D72N、81K72N、91N95G、107R72Nまたは91N94Y95Gの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたアスパラギン残基をコードするヌクレオチド配列は、アスパラギンについて2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、GATおよびGAC)から選択され得る。同様に、本発明のIL−2ムテインがヒスチジン(すなわち、H)の置換を含む場合(例えば、81K107H、81L107H、107H36D、107H42E、107H65Y、40D81K107Hまたは40G81K107Hの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたヒスチジン残基をコードするヌクレオチド配列は、ヒスチジンについての2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、CATおよびCAC)から選択され得る。
【0089】
本発明のIL−2ムテインがアルギニン(すなわち、R)の置換を含む場合(例えば、36D42R、36D61R、40D61R、81K61R、107R36Dまたは107R72Nの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたアルギニン残基をコードするヌクレオチド配列は、アルギニンについての6つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、CGT、CGC、CGA、CGG、AGAおよびAGG)から選択され得る。同様に、本発明のIL−2ムテインがチロシン(すなわち、Y)の置換を含む場合(例えば、40D65Y、40G65Y、80K65Y、81K65Y、107H65Yまたは91N94Y95Gの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたチロシン残基をコードするヌクレオチド配列は、チロシンについての2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、TATおよびTAC)から選択され得る。本発明のIL−2ムテインがグルタミン酸(すなわち、E)の置換を含む場合(例えば、81K42Eまたは107H42Eの組み合わせ置換を含むC125Sまたはデス−アラニル−1,C125Sムテイン)、置換されたグルタミン酸残基をコードするヌクレオチド配列は、グルタミン酸についての2つの一般的なトリプレットコドン(すなわち、GAAおよびGAG)から選択され得る。
【0090】
前述の核酸改変体のリストは、本明細書において同定される特定の残基の置換をコードするために利用され得る一般的なコドンを列挙しているが、本発明が、遺伝子コードにおける縮重の結果として、本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインをコードする全ての核酸改変体を包含することが認識される。
【0091】
天然のヒトIL−2の天然に存在する対立遺伝子改変体は、周知の分子生物学の技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術)を用いて同定され得、そしてこれらの新規のヒトIL−2ムテインの所望の治療指数に影響することなく本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテイン内に導入され得るさらなる変異への指針として機能し得る。改変体ヌクレオチド配列はまた、例えば部位特異的変異誘発によって作製されているが、以下に議論するように、なお本明細書に開示される新規IL−2ムテインをコードする合成誘導されたヌクレオチド配列に由来するムテインも包含する。一般的に、本発明のヌクレオチド配列改変体は、例えば、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71に示される新規のヒトIL−2ムテインコード配列に関して、そのそれぞれの新規のヒトIL−2ムテインヌクレオチド配列と、少なくとも70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、90%の配列同一性を有し、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有し、ここで配列同一性の割合は、本明細書中の以下に注記するように決定される。他の実施形態において、本発明のヌクレオチド配列改変体は、例えば、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71に示されるコード配列のヌクレオチド4〜399と少なくとも70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、90%の配列同一性を有し、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有し、ここで配列同一性の割合は、本明細書中の以下に注記するように決定される。
【0092】
本明細書中で使用される場合、用語「遺伝子」および「組換え遺伝子」は、本発明のIL−2ムテインをコードするオープンレーディングフレームを含む核酸分子を指す。本明細書中で使用される場合、語句「対立遺伝子改変体」は、IL−2遺伝子座に存在するヌクレオチド配列、またはそのヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを指す。このような天然の対立遺伝子のバリエーションは、代表的にはIL−2遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変化をもたらす。各々このようなヌクレオチドのバリエーションの任意のものおよび全てと、天然の対立遺伝子変異の結果であり、そして本発明の新規のヒトIL−2ムテインの機能活性を変更しないIL−2配列において結果として生じるアミノ酸の多形またはバリエーションとは、本発明に従って変異され得る配列であることが意図され、そして結果として生じる配列の全てが、本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0093】
例えば、本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテインのアミノ酸配列改変体は、その変異が表1に同定される組み合わせ置換を変更しない限り、新規のIL−2ムテインをコードするクローニングされたDNA配列内において変異を作製することによって調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列変更のための方法は、当該分野で周知である。例えば、WalkerおよびGaastra(編)(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York);Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkelら(1987)Methods Enzymol.154:367−382;Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York);米国特許第4,873,192号およびそこに引用されている参考文献を参照のこと。IL−2ムテインの所望の生物学的活性(すなわち、毒性の低減、およびNK細胞増殖の維持または増大を予測するNK細胞による炎症誘発性生産の低減)に影響し得ない適切なアミノ酸置換に関する指針は、Dayhoffら(1978)Atlas of Polypeptide Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見出され得る。
【0094】
本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体を設計する場合、保存的な置換(例えば、1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸に交換すること)が好ましくあり得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野で規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。例えば、Bowieら(1990)Science 247:1306を参照のこと。保存的置換の例としては、Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔GlnおよびPhe⇔Trp⇔Tyrが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、このような置換は、アミノ末端連続システイン残基のような保存されたシステイン残基に対しては行われない。
【0095】
本明細書中で同定される所望の置換以外の残基の置換、欠失または挿入のいずれかを介して改変され得るヒトIL−2タンパク質の領域に関する指針は、当該分野で見出され得る。例えば、Bazan(1992)Science 257:410−412;McKay(1992)Science 257:412;Thezeら(1996)Immunol.Today 17:481−486;BuchliおよびCiardelli(1993)Biochem.Biophys 307:411−415;Collinsら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:7709−7713;Kuzielら(1993)J.Immunol.150:5731;Eckenbergら(1997)Cytokine 9:488−498で考察されている構造/機能の関連および/または結合研究を参照のこと。
【0096】
本発明の新規のヒトIL−2ムテインの改変体の構築において、その改変体をコードするヌクレオチド配列の改変は、その改変体ポリペプチドが所望の活性を保有し続けることが可能なようになされる。明らかに、改変体ポリペプチドをコードするDNA内に作製されるいずれの変異も、リーディングフレームの範囲外にその配列を配置してはならず、そして好ましくは、二次mRNA構造を形成する相補領域を作製しない。ポリペプチドの改変体は、わずか1〜15個のアミノ酸残基(例えば、6〜10個、わずか5個、わずか4個、3個、2個または更には1個のアミノ酸残基)だけ異なり得る。ヌクレオチド配列の改変体は、わずか1〜30個のヌクレオチド(例えば、6〜25個、わずか5個、わずか4個、3個、2個または更には1個のヌクレオチド)だけ異なり得る。
【0097】
本発明のヒトIL−2ムテインの生物学的に活性な改変体は、これらのムテインのフラグメントを含む。「フラグメント」によって、コードヌクレオチド配列の部分またはアミノ酸配列の部分が意図される。コード配列に関して、ヒトIL−2ムテインヌクレオチド配列のフラグメントは、新規のヒトIL−2ムテインの所望の生物学的活性を保持するムテインフラグメントをコードし得る。本明細書中に開示される新規のヒトIL−2ムテインのフラグメントは、新規のヒトIL−2ポリペプチドの15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸、60アミノ酸、65アミノ酸、70アミノ酸、75アミノ酸、80アミノ酸、85アミノ酸、90アミノ酸、95アミノ酸、100アミノ酸、105アミノ酸、110アミノ酸、115アミノ酸、120アミノ酸、125アミノ酸、130アミノ酸であっても、完全長までのものであってもよい。コードヌクレオチド配列のフラグメントは、新規のヒトIL−2ムテインをコードするヌクレオチド配列の少なくとも45ヌクレオチド、60ヌクレオチド、75ヌクレオチド、90ヌクレオチド、105ヌクレオチド、120ヌクレオチド、135ヌクレオチド、150ヌクレオチド、165ヌクレオチド、180ヌクレオチド、195ヌクレオチド、210ヌクレオチド、225ヌクレオチド、240ヌクレオチド、255ヌクレオチド、270ヌクレオチド、285ヌクレオチド、300ヌクレオチド、315ヌクレオチド、330ヌクレオチド、345ヌクレオチド、360ヌクレオチド、375ヌクレオチド、390ヌクレオチドから全ヌクレオチド配列までの範囲であってよい。
【0098】
本明細書中で開示されるヒトIL−2ムテインおよびその生物学的に活性な改変体は、それらが参照IL−2分子と比較して所望の特性を有する限り(すなわち、C125SヒトIL−2またはデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインと比較して低減した毒性および/または増大したNK細胞増殖を有する限り)、さらに改変され得る。さらなる改変としては、リン酸化、非天然アミノ酸アナログの置換などが挙げられるが、これらに限定されない。延長されたインビボ曝露をもたらし得、そしてそれによりIL−2ムテインの薬学的処方物の効能を増大させ得るIL−2ムテインの改変としては、タンパク質分子のグリコシル化またはPEG化が挙げられる。本来グリコシル化されていないタンパク質のグリコシル化は、その分子へN連結型グリコシル化部位を挿入することによって通常は行われる。このアプローチは、IL−2ムテインのようなタンパク質の半減期を延長するために使用され得る。さらに、このアプローチは、免疫原性エピトープを遮蔽し、タンパク質溶解度を上昇させ、凝集を低減し、そして発現および精製の収率を増大させるために使用され得る。
【0099】
本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインの改変体が一旦得られれば、ヒトIL−2ムテイン配列の欠失、挿入および置換が、特定のヒトIL−2ムテインの特徴の劇的な変化を生じることは予測されない。しかしながら、置換、欠失または挿入の正確な効果を、それを実施するよりも前に予測することが困難である場合、当業者は、その効果が慣用的なスクリーニングアッセイによって評価されることを理解する。すなわち、IL−2誘導性のNK細胞増殖またはT細胞増殖の活性は、本明細書中に記載されるアッセイを含む当該分野で公知の標準的な細胞増殖アッセイによって評価され得る。IL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン生産は、サイトカイン特異的ELISA(例えば、本明細書中の他の箇所に記載されるTNF−α特異的ELISA)を用いて測定され得る。NK細胞生存シグナル伝達は、pAKT ELISA(例えば、本明細書中の以下の記載されるアッセイを参照のこと)によって測定され得る。NK細胞媒介性細胞溶解活性(すなわち、細胞毒性)は、当該分野で公知のアッセイ(例えば、本明細書中の他の箇所で記載されるNK媒介性、LAK媒介性またはADCC媒介性の細胞溶解活性の測定)によって測定され得る。
【0100】
本明細書中に開示されるヒトIL−2ムテインおよびその生物学的に活性な改変体は、投薬頻度を低減するか、またはIL−2耐容性をさらに向上させるために、第2のタンパク質に融合されたか、またはポリプロリンもしくは水溶性重合体に共有結合で結合体化されたIL−2ムテイン(または本明細書に定義される、その生物学的に活性な改変体)を含むIL−2融合体または結合体として構築され得る。例えば、ヒトIL−2ムテイン(または本明細書に定義される、その生物学的に活性な改変体)は、当該分野で公知の方法を使用してヒトアルブミンまたはアルブミンフラグメントに融合され得る(例えば、WO 01/79258を参照のこと)。あるいは、ヒトIL−2(または本明細書に定義される、その生物学的に活性な改変体)は、当該分野で公知の方法を使用して、ポリプロリンまたはポリエチレングリコールのホモポリマーおよびポリオキシエチル化ポリオールに共有結合で結合体化され得、その場合ホモポリマーは、未置換であるか、または一端においてアルキル基で置換されており、そしてポリオールは未置換である(例えば、米国特許第4,766,106号、同第5,206,344号および同第4,894,226号を参照のこと)。
【0101】
「配列同一性」によって、上記改変体のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の特定の連続するセグメントが、参照配列のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と整列されて比較される場合に、同じヌクレオチドまたはアミノ酸残基が、改変体配列および参照配列内に見出されることが意図される。配列アライメントおよび配列間の同一性の決定のための方法は、当該分野で周知である。例えば、Ausubelら(編)(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 19(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York);およびALIGNプログラム(Dayhoff(1978),Atlas of Polypeptide Sequence and Structure 5:補遺3(National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.)を参照のこと。2つのヌクレオチド配列の最適なアライメントに関して、改変体ヌクレオチド配列の連続セグメントは、参照ヌクレオチド配列に関して付加されたヌクレオチドまたは欠失したヌクレオチドを有し得る。同様に、2つのアミノ酸配列の最適アライメントの目的のために、改変体アミノ酸配列の連続セグメントは、参照アミノ酸配列に関して付加されたアミノ酸残基または欠失したアミノ酸残基を有し得る。参照ヌクレオチド配列または参照アミノ酸配列との比較のために使用される連続セグメントは、少なくとも20個の連続するヌクレオチド、またはアミノ酸残基を含み、そして30個、40個、50個、100個またはそれより多いヌクレオチドまたはアミノ酸の残基であり得る。改変体のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列にギャップが含まれていることに伴って配列同一性が上昇することに対する補正は、ギャップペナルティーを割り当てることによって行われ得る。配列アライメントの方法は、当該分野で周知である。
【0102】
2つの配列間の同一性の割合の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。本発明の目的のために、アミノ酸配列の配列同一性の割合は、Smith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズムを使用して(ギャップオープンペナルティー12およびギャップエクステンションペナルティー2、BLOSUMマトリックス62でのアファイン6ギャップサーチを使用)決定される。Smith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズムは、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482−489に教示される。あるいは、ヌクレオチド配列の同一性の割合は、ギャップオープンペナルティー25およびギャップエクステンションペナルティー5を用いるSmith−Watermanホモロジーサーチアルゴリズムを使用して決定される。配列同一性のこのような決定は、例えば、TimeLogicのDeCypher Hardware Acceleratorを用いて実施され得る。
【0103】
アミノ酸同一性の割合を考慮する際には、一部のアミノ酸の位置は、ポリヌクレオチド機能の特性に影響しない保存的アミノ酸置換の結果として異なっていてよいことが更に認識される。これらの例において、配列同一性の割合は、保存的に置換されたアミノ酸における類似性を説明するために上方に調節され得る。このような調節は当該分野で周知である。例えば、Meyersら(1988)Computer Applic.Biol.Sci.4:11−17を参照のこと。
【0104】
(組換え発現ベクターおよび宿主細胞)
一般的に、本発明のヒトIL−2ムテインは、ベクター、好ましくは発現ベクターから発現される。ベクターは、宿主細胞内の自律複製のために有用であるか、または、宿主細胞内への導入によりその宿主細胞のゲノム内に組み込まれ得、そしてこれにより、宿主ゲノムとともに複製される(例えば非エピソーム性哺乳動物ベクター)。発現ベクターは、それらが作動可能に連結されているコード配列の発現を指向することができる。一般的に、組換えDNA技術において利用できる発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態である場合が多い。しかしながら、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような発現ベクターの他の形態も包含することを意図している。
【0105】
本発明の発現構築物またはベクターは、宿主細胞内における核酸分子の発現に適する形態の本発明のヒトIL−2ムテインをコードする核酸分子を含む。目的のコード配列は、例えば、Taniguchiら(1983)Nature 302:305−310およびDevos(1983)Nucleic Acids Research 11:4307−4323により記載されている組換えDNA技術によるか、またはWangら(1984)Science 224:1431−1433に記載されている通り変異で変更されたIL−2を用いて、作製できる。奇数配列番号9〜71に示すコード配列は、一般的にはメッセンジャーRNAにおける翻訳開始コドンATGであるメチオニンに対するコドンではなく、配列番号4の成熟ヒトIL−2配列の第1の残基に対するコドン(すなわち、1位のアラニンに対するコドン)で開始することが認識される。これらの開示されたヌクレオチド配列はまた、奇数配列番号9〜71の399位のヌクレオチドの後の翻訳終止コドンを欠いている。これらの配列または奇数配列番号9〜343のヌクレオチド4〜399を含む配列が本発明のヒトIL−2ムテインを発現するために使用される場合は、これらのヒトIL−2ムテインコード配列を含む発現構築物は、さらに翻訳開始コドン、例えばATGコドンを、ヒトIL−2ムテインコード配列の上流および適切なリーディングフレーム内に含むことが認識される。翻訳開始コドンは、ヒトIL−2ムテインコード配列を含む配列内に既に存在する、例えばATGのような翻訳開始コドンを利用することにより、ヒトIL−2ムテインコード配列の開始コドンから上流の位置に提供することができ、またはその他の態様において、発現に使用されるべきプラスミドのような外来の供給源から提供され得る(ただし、ヒトIL−2ムテインコード配列における開始コドンの前に最初に現れる翻訳開始コドンは、ヒトIL−2ムテインコード配列の開始コドンの適切なリーディングフレーム内にある)。同様に、本明細書に開示するヒトIL−2ムテインコード配列は、偶数配列番号10〜72に示す配列の最後のアミノ酸で終了するヒトIL−2ムテインの産生を可能にするためには、例えばTGAのような、1つまたは複数の翻訳終止コドンを後続させている。
【0106】
組換え発現ベクターは、発現すべき核酸配列に作動可能に連結した発現のために使用すべき宿主細胞に基づいて選択される1つまたは複数の調節配列を含む。「作動可能に連結」とは、目的のヌクレオチド配列(すなわち、本発明のヒトIL−2ムテインをコードする配列)がヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(すなわち、インビトロの転写/翻訳系において、または宿主細胞内にベクターを導入する場合は宿主細胞において)調節配列に連結されていることを意味する。「調節配列」は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を包含する。例えば、Goeddel(1990),Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press, San Diego, California)を参照のこと。調節配列は、宿主細胞の多くの型におけるヌクレオチド配列の構成的発現を指向するもの、および特定の宿主細胞のみにおけるヌクレオチドの発現を指向するもの(例えば、組織特異的調節配列)を包含する。当業者の理解するように、発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような要因に依存し得る。本発明の発現構築物を宿主細胞に導入することにより、本明細書に開示したヒトIL−2ムテインを産生すること、または生物学的に活性なその改変体を産生することができる。
【0107】
本発明の発現構築物またはベクターは、原核生物または真核生物の宿主細胞内でヒトIL−2ムテインまたはその改変体を発現させるために設計することができる。原核細胞におけるタンパク質の発現は、最も頻繁には、構成プロモーターまたは誘導プロモーターを含有するベクターを用いてEscherichia coliで行われる。E.coli内の組換えタンパク質発現を最大限にするための方策は、例えば、Gottesman(1990),Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,CA),pp.119−128およびWadaら(1992)Nucleic Acids Res.20:2111−2118に見出され得る。ヒトIL−2ムテインまたはその改変体を増殖させるため、回収するため、破壊するため、または細胞から抽出するためのプロセスは、実質的に、例えば、米国特許第4,604,377号;同第4,738,927号;同第4,656,132号;同第4,569,790号;同第4,748,234号;同第4,530,787号;同第4,572,798号;同第4,748,234号および同第4,931,543号に記載されている。
【0108】
組換えヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体は、酵母またはヒトの細胞のような真核細胞中でも行うことができる。適切な真核生物宿主細胞には、以下が挙げられる:昆虫細胞(培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)中でタンパク質を発現するために使用できるバキュロウイルスベクターの例としては、pAcシリーズ(Smithら(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(LucklowおよびSummers(1989)Virology 170:31−39)が挙げられる);酵母細胞(酵母S.cerenvisiaeでの発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldariら,(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporations,San Diego,CA)およびpPicZ(Invitrogen Corporation,San Diego,California)が挙げられる);または哺乳動物細胞(哺乳動物発現ベクターとしては、pCDM8(Seed(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187;195)が挙げられる)。適当な哺乳動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)またはCOS細胞が挙げられる。哺乳動物細胞において、発現ベクターの制御機能は、ウイルスの調節エレメントにより与えられる場合が多い。例えば、一般的に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両方のための他の適当な発現系は、例えばSambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)の第16章および17章を参照のこと。Goeddel(1990),Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185(Academic Press,San Diego,California)を参照のこと。
【0109】
本発明のヒトIL−2ムテインをコードする配列は、目的の宿主細胞内での発現のために最適化することができる。配列のG−C含量は所定の宿主細胞内で発現される既知遺伝子を参照に計算されるように、その細胞宿主に対して平均的なレベルに調節され得る。コドン最適化の方法は当該分野で周知である。個々のコドンは、最適化され得る(例えば、残基の置換(例えばC125S置換、C125A置換および/または表1に示すさらなる組み合わせ置換)がなされているコドン)。あるいは、コード配列内のコドンの1%、5%、10%、25%、50%、75%または100%までが特定の宿主細胞における発現のために最適化されているように、ヒトIL−2ムテインコード配列内の他のコドンを最適化して、宿主細胞内の発現を増強することができる。例えば、36D61Rおよび107R36Dの組み合わせ置換に関するコドンが、それぞれE.coliでの発現のために最適化されている、配列番号73および74に開示したヒトIL−2ムテイン配列を参照のこと。
【0110】
用語「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書においては、交換可能に使用される。このような用語は、特定の被験体細胞のみならず、そのような細胞の子孫または潜在的子孫も指すものであることが理解される。変異または環境の影響により特定の改変は後続する世代でも起こりえるため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではなくてよく、しかしなお、本明細書において使用される用語の範囲に包含される。
【0111】
ベクターDNAは、従来の形質転換技術またはトランスフェクション技術を介して原核細胞または真核細胞内に導入され得る。本明細書において使用される場合、用語「形質転換」および「トランスフェクション」は、宿主細胞内に外来性核酸(例えばDNA)を導入するための種々の当該分野で知られた技術(リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、粒子銃またはエレクトロポレーションが挙げられる)を指すことが意図される。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための適当な方法は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)および他の標準的な分子生物学の実験マニュアルに見出され得る。
【0112】
本発明のIL−2ムテインおよび生物学的に活性なその改変体を作製するために使用される原核細胞および真核細胞は、Sambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview, New York)に一般的に記載されているもののような、適切な培地中で培養される。
【0113】
(薬学的組成物)
ヒトIL−2ムテインまたはその改変体を作製し、精製した後、これらは、ヒト治療および獣医学的治療における用途(例えば癌の治療、免疫療法および感染症の処置)のための薬学的組成物中に組み込まれ得る。したがって、ヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体は、種々の治療用途のための薬学的処方物として処方され得る。組成物として、ヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体は、当該分野で公知の方法により、被験体に非経口投与される。被験体としては、哺乳動物、例えば霊長類、ヒト、イヌ、ウシ、ウマなどが挙げられる。これらの薬学的組成物は、本発明のヒトIL−2ムテインの有効性を増大させるか、または所望の性質を増強する他の化合物を含有してよい。薬学的組成物は、選択された経路を介した投与に関して安全でなければならず、それらは、滅菌されていなければならず、生物活性を保持していなければならず、そしてヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体を安定に可溶化させなければならない。処方プロセスに応じて、本発明のIL−2ムテイン薬学的組成物は、液体形態において、常温、冷蔵または冷凍して保存され得、または、経口または非経口の投与経路を含む種々の方法のいずれかにより投与される前に、溶液、懸濁液または乳液に再構成され得る凍結乾燥粉末のような乾燥形態で調製される。
【0114】
このような薬学的組成物は、典型的には、少なくとも1つのヒトIL−2ムテイン、生物学的に活性なその改変体、またはその組み合わせ、および、薬学的に受容可能なキャリアを含む。薬学的投与のために本発明のヒトIL−2ムテインを処方するための方法は、当該分野で周知である。例えば、Gennaro(編)(1995)Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第19版,Mack Publishing Company,Easton,PA)を参照のこと。
【0115】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、薬学的投与と適合性のある任意の溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含する。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は当該分野で周知である。いずれかの従来の培地または薬剤が活性化合物と適合性を有さない場合を除き、このような媒体は、本発明のヒトIL−2ムテインの薬学的処方物において使用され得る。補助的な活性化合物もまた上記組成物に組み込まれ得る。
【0116】
本発明のヒトIL−2ムテインまたはその改変体を含むIL−2ムテイン薬学的組成物は、意図される投与経路に適合するように処方される。投与経路は、所望の結果により変動する。IL−2ムテイン薬学的組成物は、ボーラス投薬、連続注入または持続注入(短時間、すなわち、1〜6時間の注入)により投与され得る。IL−2ムテイン薬学的組成物は、経口、鼻内、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内投与など)で、皮内投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与および直腸投与により、または肺吸入により投与され得る。
【0117】
非経口、皮内または経皮的な適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌希釈液、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌剤(例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート形成剤(例えばEDTA);界面活性剤(例えばポリソルベート80);SDS;緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩)、および浸透圧調節剤(例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース)、を含有できる。pHは、酸または塩基(例えば塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調節され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量バイアルに充填され得る。
【0118】
注射用途に適する薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液もしくは分散液の要時調製のための滅菌粉末を包含する。処方プロセスにおいてタンパク質の凝集物の形成を最小限にする場合、静脈内投与用の適当なキャリアとしては、生理食塩水、静菌性の水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany,NJ)またはリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は滅菌されねばならず、容易にシリンジ使用できる程度の流体性を有すべきである。これは、製造および保存の条件下に安定であるべきであり、そして、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。キャリアは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流体性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散液の場合は、所望の粒径を維持することにより、そして、界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。多くの場合において、等張性剤(例えば、糖類)、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを組成物中に含有させることが好ましい。注射用組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含有させることにより実現され得る。
【0119】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて上記した成分の1つまたは組み合わせを用いて適切な溶媒中に必要量の活性化合物(例えば、タンパク質または抗体)を組み込み、その後、濾過滅菌することにより調製され得る。一般的に、分散液は、基剤となる分散媒および上記列挙したものより選ばれる他の必要な成分を含有する滅菌ビヒクル内に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合は、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより活性成分と予め滅菌濾過された溶液に由来する任意のさらなる所望の成分との粉末が得られる。
【0120】
経口用組成物は、一般的に不活性希釈剤または可食キャリアを含有する。これらは、ゼラチンカプセルに封入されてもよいし、錠剤中に圧縮されてもよい。経口投与のためには、薬剤は、胃内を通り抜ける腸溶性形態中に含有され得るか、または、既知の方法によりさらにコーティングまたは混合されて消化管の特定の領域で放出され得る。経口治療用投与の目的のためには、活性化合物は、賦形剤と共に組込まれ、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用され得る。経口用組成物はまた、マウスウォッシュとして使用するための流体キャリアを用いて調製され得、その場合、流体キャリア中の化合物は口内に適用され、含嗽され(swished)、そして吐瀉されるか、嚥下される。薬学的に適合性のある結合剤および/またはアジュバント物質は、組成物の部分として含有され得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、いずれかの以下の成分、または同様の性質の化合物を含有し得る:例えば、結合剤(例えば微結晶セルロース、トラガカントガムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたは乳糖、錠剤崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogelまたはコーンスターチ);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);滑剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);あるいは香味剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー)。
【0121】
全身投与は、経粘膜または経皮的な手段により行うこともできる。経粘膜または経皮的な投与のために、透過すべき障壁に対して適切な浸透剤が、処方物中で使用される。このような浸透剤は、一般的に当該分野で公知であり、そして例えば経粘膜投与のためには、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。
【0122】
1つの実施形態において、活性化合物は、身体からの急速な排出に対抗して化合物を保護するキャリアを用いて調製される(例えば、制御放出処方物(インプラントおよびマイクロカプセル化された送達系が挙げられる)。生分解性、生体適合性の重合体(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸)が使用され得る。このような処方物の調製方法は当業者に明らかある。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入できる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソームを含む)もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているような、当該分野公知の方法に従って調製され得る。
【0123】
投与を容易にし、そして投薬量を均一にするために、経口用組成物または非経口組成物を投薬単位形態に処方することが特に有利である。投薬単位形態とは、本明細書においては、処置すべき被験体に対する単位投薬量として適切な、物理的に個別の単位を指し;各単位は、必要とされる薬学的キャリアと共に所望の治療効果をもたらすために計算された活性化合物の所定量を含有する。本発明の投薬単位形態の詳細は、活性化合物の固有の性質および達成すべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためのそのような活性化合物の混合の、当該分野において固有の制限により影響され、そしてこれに直接左右される。
【0124】
本発明のヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体は、ヒトIL−2の分野で公知の、任意の公知の処方プロセスを用いて処方され得る。本発明の方法において有用である適当な処方は、種々の特許および刊行物に記載されている。例えば、米国特許第4,604,377号は、非IL−2タンパク質および内毒素を実質的に含有しない治療量のIL−2、生理学的に許容可能な水溶性キャリア、およびIL−2を可溶化するための十分な量の界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)を有する、好ましいIL−2処方物を示している。糖類のような他の成分も含有できる。米国特許第4,766,106号は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾IL−2を含む処方物を示している。欧州特許出願公開268,110は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween−80)、ポリエチレングリコールモノステアレートおよびオクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物(Triton X405)からなる群より選択される種々の非イオン系界面活性剤を用いて処方されるIL−2を示す。米国特許第4,992,271号は、ヒト血清アルブミンを含むIL−2処方物を開示しており、そして米国特許第5,078,997号は、ヒト血清アルブミンおよびアミノ酸を含むIL−2処方物を開示している。米国特許第6,525,102号は、ポリペプチドの主要な安定化剤として作用するアミノ酸塩基、および、ポリペプチドの安定性に対して許容できるpH範囲内で溶液を緩衝するための酸および/またはその塩形態を含むIL−2処方物を開示する。同時係属中の米国特許出願10/408,648は、肺送達のために適するIL−2処方物を開示している。
【0125】
(治療用途)
本発明のヒトIL−2ムテインまたはこれらのヒトIL−2ムテインから得られた生物学的に活性な改変体を含む薬学的処方物は、免疫系の刺激および癌(例えば、ネイティブのヒトIL−2またはプロロイキン(Proleukin)(登録商標)IL−2を用いて現在治療されているもの)の処置において有用である。本発明のヒトIL−2ムテインおよび適当な生物学的に活性なその改変体は、炎症誘発性サイトカイン産生が低減しており、より低い毒性を有すると予測されるという利点を有する一方で、NK細胞の増殖、生存、NK媒介性細胞毒性(NK、LAKおよびADCC)ならびにT細胞増殖のような、所望の機能的活性を維持または増強する。
【0126】
その予測される低毒性のため、高用量のIL−2が要求される臨床適応において、本発明のヒトIL−2ムテインおよび生物学的に活性なその改変体は、毒性作用を最低限にしながら、ネイティブのIL−2またはプロロイキン(登録商標)IL−2の投与され得る用量と同等以上の用量で投与され得る。したがって、本発明は、処置プロトコルとしてインターロイキン−2(IL−2)投与を受けている被験体においてIL−2誘導性毒性症状を低減するための方法を提供し、この方法は、本明細書に開示するIL−2ムテインとして、IL−2を投与する工程を含む。さらに、本発明のヒトIL−2ムテインおよび適切な生物学的に活性なその改変体は、より大きい治療効果というさらなる利点を有し、より低用量のこれらのヒトIL−2ムテインは、ネイティブIL−2またはプロロイキン(登録商標)IL−2の同等の用量の治療効果よりも高い治療効果を提供し得る。
【0127】
本発明のIL−2ムテイン薬学的組成物の薬学的有効量が、被験体に投与される。「薬学的有効量」によって、疾患または状態の処置、予防または診断において有用である量が意図される。「被験体」によって、哺乳動物、例えば霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなどが意図される。好ましくは、本発明の薬学的処方物による処置を受けている被験体は、ヒトである。
【0128】
投与が処置の目的のものである場合、投与は、予防または治療の目的のいずれであってもよい。予防的に行う場合は、物質はいずれかの症状よりも先行して提供される。物質の予防的投与は、いずれかの後の症状を防止または減衰させるように働く。治療的に行う場合は、物質は症状の出現のとき(またはその直後)に提供される。物質の治療的投与は、いずれかの実際の症状を減衰させるために働く。
【0129】
したがって、例えば、本発明のヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体を含む本発明の薬学的組成物の有効量を含む処方物は、IL−2を用いた治療に応答する多くの臨床適用症の処置、予防および診断の目的のために使用され得る。本発明のヒトIL−2ムテインおよび生物学的に活性なその改変体を処方して、ネイティブ配列IL−2またはプロロイキン(登録商標)IL−2と同じ治療において使用できる。従って、本発明のヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体を含む本発明の処方物は、以下のために有用である:細菌、ウイルス、寄生虫、原虫および真菌の感染症の診断、予防および処置(局所または全身)のため;細胞媒介細胞毒性の増強のため;リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性を刺激するため;リンパ球の免疫機能の回復を媒介するため;同種抗原応答性を増強するため;放射線療法後、または、骨髄または自己幹細胞移植の後またはそれと並行して、癌患者における免疫回復を促進するため;後天性免疫不全の状態における免疫機能の回復を促進するため;高齢のヒトおよび動物における正常な免疫機能の回復のため;酵素増幅、放射標識、放射線画像化および疾患状態におけるIL−2のレベルをモニタリングするための他の当該分野で公知の方法を用いる方法のような診断アッセイの開発において;治療および診断目的のためのインビトロのT細胞成長の促進のため;リンホカインに対するレセプター部位をブロックするため;および種々の他の治療、診断および研究用途。ヒトIL−2またはその改変体(例えばIL−2ムテイン)の種々の治療および診断用途が、Rosenbergら(1987)N.Engl.J.Med.316:889−897;Rosenberg(1988)Ann.Surg.208:121−135;Topalianら(1988)J.Clin.Oncol.6:839−853;Rosenbergら(1988)N.Engl.J.Med.319:1676−1680;Weberら(1992)J.Clin.Oncol.10:33−40;Grimmら(1982)Cell.Immunol.70(2):248−259;Mazumder(1997)Cancer.J.Sci.Am.3(補遺1):S37−42;MazumderおよびRosenberg(1984)J.Exp.Med.159(2):495−507:およびMazumderら(1983)Cancer Immunol.Immunother.15(1):1−10において検討され、報告されている。本発明のヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体を含む本発明の処方物は、単一の治療活性薬剤として使用してよく、または、他の免疫学的に関連する細胞または他の治療薬と組み合わせて使用してよい。関連する細胞の例は、B細胞またはT細胞、NK細胞、LAK細胞などであり、そしてIL−2またはその改変体と組み合わせて使用され得る例示的治療試薬は、種々のインターフェロン(特に、ガンマインターフェロン)、B細胞成長因子、IL−1、および抗体(例えば、抗HER2抗体(例えばHerceptin(登録商標)(Trastuzumab;Genentech,Inc.,South San Francisco,California))、または抗CD20抗体(例えば、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ;IDEC−C2B8;Biogen IDEC Pharmaceuticals Corp.,San Diego,California))である。
【0130】
投与されるヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体の量は、約0.1〜約15mIU/mの間の範囲であり得る。抗癌モノクローナル抗体と組み合わせたIL−2免疫療法のための治療有効量および特定の処置プロトコルは、当該分野で公知である。例えば、同時係属中の、米国特許出願2003−0185796(発明の名称「Methods of Therapy for Non−Hodgkin’s Lymphoma」)に開示される用量および処置プロトコル、および20030235556(発明の名称「Combination IL−2/Anti−HER2 Antibody Therapy for Cancers Characterized by Overexpression of the HER2 Recepter Protein」)、および2003年7月31日出願の代理人事件番号59516−278、発明の名称「Methods of Therapy for Chronic Lymphocytic Leukemia」である、同時係属中の米国特許出願60/491,371を参照のこと。腎細胞癌および転移性黒色腫のような適応症に関しては、ヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体は、300,000〜800,000IU/kg/8時間の高用量静脈内ボーラスとして投与してよい。B細胞リンパ腫、HER2癌(例えば、乳癌およびCLL)のIL−2免疫療法のための推奨用量については、前述の米国特許出願を参照のこと。
【0131】
HIV感染の処置のためのIL−2免疫療法の使用もまた、当該分野で公知である。この臨床適応症に関する推奨される用量およびプロトコルについては、例えば、米国特許第6,579,521号を参照のこと。
【0132】
したがって、本発明は、被験体における癌を処置するため、または被験体における免疫応答を調節するための方法を提供する。この方法は、本発明のヒトIL−2ムテインまたは生物学的に活性なその改変体の治療有効量を投与する工程を含む。「治療有効量」とは、許容できない毒性効果を誘導することなく所望の生物学的結果を誘導するために十分な用量レベルを指す。投与量は、薬学的組成物中のヒトIL−2ムテインまたはその改変体の濃度、所望の活性、処置すべき哺乳動物の疾患状態、投薬形態、投与方法、および患者の要因(例えば、年齢、性別および疾患の重症度)により変動し得る。治療有効量は、広範な濃度において提供され、そして被験体は、問題となる障害の兆候、症状または原因を低減および/または軽減するためか、または生物学的系の任意の他の所望の変化をもたらすために必要とされる回数の、治療有効量を投与され得る。一般的に、本発明のIL−2ムテイン薬学的組成物は、プロロイキン(登録商標)IL−2について使用されるよりも高い濃度範囲で、ヒトIL−2ムテインまたはその改変体を含む。プロロイキン(登録商標)IL−2に対して用量が増大するに従い、被験体は、毒性副作用が出現するかどうかを判定するために緊密にモニタリングされるべきである。このような臨床的実験的分析は、当業者に周知であり、そして例えば、免疫調節および癌治療において使用するためのプロロイキン(登録商標)IL−2の現在の用量を確立するために使用されている。
【0133】
(ヒトIL−2ムテインの機能的活性をモニタリングするためのバイオアッセイ)
本発明はまた、IL−2誘導性NK細胞増殖およびTNF−α産生、IL−2誘導性NK細胞媒介性細胞毒性、IL−2誘導性T細胞増殖、ならびにIL−2誘導性NK細胞生存をモニタリングするための、新規バイオアッセイを提供する。これらのアッセイは、耐容性を向上させるための低減した炎症誘発性サイトカイン産生(特に、TNF−α)、ならびに改善したNK細胞媒介機能(上記ムテインが、NK細胞および/もしくはT細胞増殖を維持または増大させ、NK媒介性細胞毒性(NK、LAKおよびADCC)を維持または増大させ、そしてNK細胞生存を維持または増大させる能力に反映される)という所望の機能プロフィールに関して、候補IL−2ムテインをスクリーニングするために開発されている。
【0134】
これらのアッセイの最初のものは、本明細書においては、「NK−92バイオアッセイ」と称され、TNF−α産生のIL−2誘導およびIL−2誘導性NK細胞増殖をモニタリングする。このバイオアッセイは、ヒトNK−92細胞株(ATCC CRL−2407、CMCC ID#11925)を利用している。NK−92細胞株(最初にGongら(1994)Leukemia 8(4):652−658により記載された)は、活性化NK細胞の表現型および機能プロフィールを示す。NK−92の増殖は、IL−2依存性であり;細胞は72時間IL−2の非存在下で培養されれば死滅する。細胞株はまた、IL−2への曝露後48〜72時間以内に、検出可能なレベルのTNF−αを産生する。
【0135】
本発明の方法によれば、候補IL−2ムテインは、このNK−92バイオアッセイを用いて、TNF−α産生を誘導し、NK細胞増殖を誘導する相対的な能力についてスクリーニングされ得る。この場合、NK−92細胞は、α−MEM、12%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS),8%熱不活性化ウマ血清、0.02mM葉酸、0.2mMイノシトール、2mM L−グルタミンおよび0.1mM β−メルカプトエタノールよりなる完全培地(NK−92培地)中で培養される。培養物を最小細胞密度1〜3×10細胞/mLで播種し、参照組換えヒトIL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2または参照C125SヒトIL−2ムテインと称される参照IL−2ムテイン)1000IU/mLを補充する。アッセイの調製においては、細胞を新しいNK−92培地中で最低48時間維持した後にアッセイに使用する。アッセイの1日前、NK−92を3回洗浄し、24時間IL−2を補充しないNK−92培地中に維持する。細胞を遠心分離し、NK−92培地(IL−2無添加)中に懸濁し、96ウェル平底プレートに、種々の濃度の参照IL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1 C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2)、またはNK−92培地中に希釈した目的の機能プロフィールについてスクリーニングされる種々の濃度の候補IL−2ムテインとともに、200μl中4×10細胞/ウェルの密度でプレーティングする。37℃、5%COで72時間インキュベートした後、培養上清の100μlアリコートを取り出し、後に行う、市販のTNF−α ELISAキット(例えば、BioSource CytoscreenTMヒトTNF−α ELISAキット;Camarillo,California)を用いたTNF−αの定量のために凍結する。培地中に残存する細胞については、市販のMTT色素還元キット(CellTiter96(登録商標)非放射性細胞増殖アッセイキット(Promega Corp.,Madison,Wisconsin)を用いて増殖を測定し、そして次に比色読み取りに基づいて刺激指数を計算する。
【0136】
本明細書に開示する第2のIL−2バイオアッセイは、候補IL−2ムテインを、それらがナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞毒性を誘導する能力についてスクリーニングするための方法を提供する。このバイオアッセイは、「NK3.3細胞毒性バイオアッセイ」と称され、ヒトNK3.3細胞株を利用している。NK3.3細胞株は、末梢血NK細胞の表現型および機能特性を示し(Kornbluth(1982)J.Immunol.129(6):2831−2837)、そして、Fcレセプター(CD16、FcγRIIIA)を介して、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を媒介し得る。後記する実験のセクションの表2は、このIL−2バイオアッセイで調べたNK3.3細胞の生物学的活性をまとめたものである。
【0137】
本発明の方法によれば、候補IL−2ムテインは、このNK3.3細胞毒性バイオアッセイを用いて、その細胞毒性活性に関してスクリーニングされ得る。この方法によれば、NK3.3細胞を増殖させ、15%熱不活性化ウシ胎仔血清、25mM HEPES、2mM L−グルタミン、およびIL−2供給源として20% ヒトT−StimTMw/PHAを補充したRPMI−1640培地中に維持する。アッセイの調製においては、NK3.3細胞を、24時間、IL−2の非存在下(「飢餓状態」)において培養する。アッセイは、総容量100μlの、種々の濃度の参照IL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2ムテイン)、または種々の濃度の目的の候補IL−2ムテインに曝露した、U底96ウェルプレートにプレーティングされた5×10個の「飢餓状態」NK3.3細胞から構成される。18時間のインキュベートの後、IL−2刺激NK3.3エフェクター細胞を、5×10個のカルセインAM標識標的細胞(K562またはDaudi)または抗体コーティングカルセインAM標識標的(最終濃度2μg/mlのリツキシマブでコーティングされたDaudi)と共インキュベートすることにより、最終的なエフェクター 対 標的の比、10:1を達成する(最終容量200μl)。エフェクター細胞と標的細胞とを4時間共インキュベートした後、96ウェルプレートを短時間遠心分離し;培養上清100μlを取り出して、黒色で清浄な平底96ウェルプレートに入れ、蛍光計によりカルセインAMの放出の定量に付す。定量は、パーセント特異的溶解として表され、以下の式:%特異的溶解=100×[(平均実験値−平均自発的放出)/(平均最大放出−平均自発的放出)]により計算される。ここで、自発的放出は、標識標的を含有し、エフェクターを含有しないウェルから決定され、そして最大放出は、標識標的および1%Triton X−100を含有するウェルから決定される。
【0138】
本明細書に開示した第3のIL−2バイオアッセイは、候補IL−2ムテインを、それらがT細胞増殖を誘導する能力についてスクリーニングするための方法を提供する。この様式においては、T細胞増殖に関するこのIL−2バイオアッセイは、T細胞慢性リンパ性白血病の患者に由来するヒトT細胞株Kit225(CMCC ID#11234)を利用する(Horiら(1987)Blood 70(4):1069−1072)。Kit225細胞は、IL−2レセプター複合体のα、β、γサブユニットを構成的に発現する。Kit225の増殖は、IL−2依存性であり;細胞は長期間IL−2の非存在下で培養すれば死滅する。
【0139】
本発明によれば、アッセイは、24時間IL−2の非存在下でKit225細胞を培養し、その後、種々の濃度の参照IL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2ムテイン)、または種々の濃度の目的の候補IL−2ムテインと共に特定数の細胞をプレーティングすることから構成される。48時間のインキュベーションの後、増殖は、標準的な市販のMTT色素還元キットを用いて判定され、そして刺激指数は、比色読み取り値に基づいて計算される。
【0140】
本発明の第4のIL−2バイオアッセイは、候補IL−2ムテインをそれらがNK細胞生存を促進する能力についてスクリーニングするための方法を提供する。この様式において、候補ムテインは、それらがNK細胞生存シグナル伝達を誘導する能力についてスクリーニングされる。プロロイキン(登録商標)IL−2(すなわち、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインを含む処方物)は、IL−2を予め枯渇させたNK3.3においてAKTのリン酸化(「生存シグナル」と考えられる)を誘導する。このバイオアッセイにおいては、NK3.3細胞を増殖させ、15%熱不活性化ウシ胎仔血清、25mM HEPES、2mM L−グルタミンおよびIL−2供給源として20% ヒトT−StimTMw/PHAを補充したRPMI−1640培地中に維持する。アッセイの調製においては、NK3.3細胞を、24時間、IL−2の非存在下において培養する。細胞生存シグナル伝達の指標として、「飢餓状態」NK3.3細胞(2×10)を、30分間、2nMの参照IL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2)、または2nMの目的の候補IL−2ムテインを添加することにより刺激する。細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄する。細胞ペレットを、プロテアーゼインヒビターを含有する細胞抽出緩衝液50μL中で溶解し、1回の凍結−解凍サイクルに供する。抽出液を、4℃で10分間、13000rpmで遠心分離する。透明な溶解液のアリコートを、AKT[pS473]イムノアッセイキット(BioSource International)のウェルに1:10希釈で添加する。製造元のプロトコルに従って、リン酸化AKTのレベルを定量的ELISAにより検出する。
【0141】
本発明はまた、ヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を用いてIL−2ムテインの機能特性についてそれらをスクリーニングする場合に使用するための、バイオアッセイを提供する。これらのバイオアッセイの第1のものは、増殖/炎症誘発性サイトカイン産生組み合わせバイオアッセイである。IL−2に曝露されると、ヒトPBMCは増殖し、用量依存性様式でサイトカインを分泌する。この組み合わせアッセイは、参照IL−2ムテイン(例えば、デス−アラニル−1,C125SムテインまたはC125Sムテイン)または目的の候補IL−2ムテインで72時間刺激した後に、増殖およびサイトカイン産生のレベルを評価するように設計されている。PBMCは、正常ヒトドナー1人以上から、密度勾配分離(例えば、ACDA Vacutainer CPTチューブを使用する)により単離される。96穴組織培養処理プレートにおいて、ウェル当たり200,000細胞を、37℃、7%COにおいて、完全RPMI培地(RPMI、10%熱不活性化ヒトAB血清、25mM HEPES、2mMグルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン)中で、種々の濃度のIL−2(0.039nM〜10nM)と共に、または陰性対照としてIL−2非存在下で、インキュベートする。66時間のインキュベーションの後、細胞培養上清のアリコートを取り出し、後のサイトカイン検出のために凍結する。細胞を1μCiH−チミジンで6時間パルスし、次に回収して、細胞増殖の尺度としてヌクレオチド取り込みのレベルを測定する(例えば、Wallac Trilux Microbeta Plate Readerを用いる)。次に市販のELISAキット(例えば、BioScource International製)を用いて製造元のガイドラインに従って、細胞培養上清中のTNF−αの濃度を検出し得る。個別のドナーの完全なパネル(例えば、6、8または10ドナー)についてアッセイを繰り返すことにより、「正常集団」におけるIL−2への代表的な増殖応答およびサイトカイン応答の特徴付けが提供される。次いで、データは、図1および後述する実施例10にさらに記載するように分析され得る。
【0142】
第2のPBMCベースのバイオアッセイは、エフェクター細胞の細胞毒性を媒介する候補IL−2ムテインの能力についてスクリーニングするために使用され得る。このアッセイにおいて、ヒトPBMCを密度勾配遠心分離を用いて全血から分離する。PBMCを10nMのIL−2対照または目的のIL−2ムテインの存在下で3日間刺激することにより、現在の技術レベルで一般的に実施されているようにLAK活性を発生させる(例えば、Isolation of Human NK Cells and Generation of LAK activity,Current Protocols in Immunology;1996 John Wiley&Sons,Incを参照のこと)。得られた細胞集団は、「エフェクター」細胞を含む。これはNKまたはLAKに分類され得、そしてそれぞれK562およびDaudiの腫瘍細胞標的を殺傷し得る。これらのエフェクター細胞はまた、ADCCを媒介し、これによりエフェクター細胞は、Daudi標的細胞に結合している特定の抗体のFc部分を認識する。1つの実施形態において、Daudi標的に結合している抗体は、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)である。
【0143】
本発明の方法によれば、目的の候補IL−2ムテインまたは参照IL−2対照により刺激されているヒトPBMC(エフェクター細胞)を、4時間、種々のエフェクター 対 標的細胞(E:T比)で、カルセインAM標識標的細胞と共インキュベートする。細胞毒性活性の量は、培養上清中のカルセインAMの検出に関係している。定量は、自発的放出および最大放出の対照の測定に基づいて、各E:T比における特異的溶解%として表示される。このバイオアッセイは、以下の生物学的活性を調べる:標的がK562細胞である場合、天然/自発的細胞毒性(NK);標的がDaudi細胞である場合、リンホカイン活性化殺傷(LAK);および標的が抗体コーティングDaudi細胞(例えば、Rituxan(登録商標)コーティングDaudi細胞)である場合、抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)。
【0144】
データは蛍光計から得られ、そして相対蛍光単位(rfu)として表示される。このバイオアッセイの対照は、標識標的細胞単独(最小)および100%溶解(最大)の尺度としての標識標的細胞+最終濃度1%Triton X−100を含む。最小 対 最大のパーセントの比は、アッセイの有効性(>30%であればアッセイは無効)の尺度として以下の式を用いて計算する。
【0145】
%最小 対 最大=100×[(平均自発的放出rfu)/(平均最大放出rfu)]
アッセイが有効であることがわかれば、3つのサンプル点の平均および標準偏差を計算し、その後、以下の式を用いて3つの点の平均からパーセント特異的溶解を求める。
【0146】
%溶解=100×[(平均実験rfu−平均自発的放出rfu)/(平均最大放出rfu−平均自発的放出rfu)]
次にデータを%特異的溶解として報告し;さらに、候補IL−2ムテイン 対 関連するIL−2参照対照(例えば、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテイン)を用いて、ヒトPBMCドナーの混合集団において、IL−2参照対照に対して細胞毒性活性が維持されているかどうかを判定し得る。
【0147】
上記したアッセイは、所望の機能的プロフィールに関して候補IL−2ムテインライブラリをスクリーニングするために利用され得、ここで、目的の機能的活性としては、以下の1つまたは複数が挙げられる:IL−2誘導性炎症誘発性サイトカイン産生(特に、TNF−αおよび/またはIFN−γ)、IL−2誘導性NK細胞増殖および/またはT細胞増殖、IL−2誘導性NK媒介性細胞毒性(NK、LAKおよびADCC)、ならびにIL−2誘導性NK細胞生存。
【0148】
以下の実施例は説明のために提供され、限定するためではない。
【実施例】
【0149】
(実験)
IL−2の治療上の利用性は、発熱、悪寒、低血圧および血管漏出症候群を含むその投与に関連する毒性により妨害される。向上した耐容性およびIL−2媒介性NK細胞およびT細胞のエフェクター機能を有するIL−2ムテインは、よりよい耐容性である同様の治療用量、またはより高い治療用量の投与を可能にし、これにより、このタンパク質のより高値の治療効力に対する潜在能力を増大させる。本明細書に提示される作業の全体的戦略は、特殊化された、中等度スループットの、ヒトNK細胞ベースの免疫アッセイスクリーニング系の包括的パネルを用いて、以下の機能プロフィールを示す新規のヒトIL−2ムテインを選択することであった:耐容性を向上させるための低減した炎症誘発性サイトカイン産生(特に、TNF−α)、ならびに向上したNK細胞媒介性機能(上記ムテインがNK細胞増殖および/またはT細胞増殖を維持または増大させ、NK媒介性細胞毒性(NK、LAKおよびADCC)を維持または増大させ、そしてNK細胞生存を維持または増大させる能力において反映される)。
【0150】
所望の治療プロフィールを有する適当なIL−2ムテインを同定する目的のために、候補組換えヒトIL−2ムテインの生物学的活性を、参照IL−2ムテインと称されるデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(以下の実施例においては「Pro」と略記する)およびC125SヒトIL−2(以下の実施例においては「Ala−Pro」と略記する)により示されるこれらの生物学的活性と比較した。アルデスロイキンである組換え的にE.coliにより産生されたデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインは、商品名プロロイキン(登録商標)IL−2(Chiron Corporation,Emeryville,California)として、処方物として市販されている。プロロイキン(登録商標)IL−2は、E.coli中で産生されたムテインの非グリコシル化形態を使用した、特異的な凍結乾燥された処方物であり、後述するバイオアッセイで使用するために、蒸留水中で再構成した。AME哺乳動物発現系のDrectAMETMおよびExpressAMETM(Applied Molecular Evolution,Inc.,San Diego,California)を、最初のスクリーニング実験において使用されるC125SヒトIL−2の組換え産生において利用した。
【0151】
以下に記載するヒトIL−2ムテインを宿主哺乳動物293T細胞中で発現させた。参照IL−2ムテインがC125SヒトIL−2である場合は、宿主細胞を、Pro−1プロモーターに作動可能に連結したC125S変異を有するネイティブのヒトIL−2コード配列を含む発現構築物で形質転換した。コード配列は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(すなわち、配列番号7)に対するコード配列において融合した、真性(authentic)IL−2シグナル配列およびヒトIL−2のN末端アラニンに対するコドン(すなわち、配列番号1のヌクレオチド1〜63)を含んだ。タンパク質を、293T細胞哺乳動物発現系においてGSHisタグ化タンパク質として発現させ、NI−NTAビーズで精製した。
【0152】
(実施例1 ヒトIL−2ムテインの初期スクリーニング)
C125SヒトIL−2分子(本明細書においては実施例中「Ala−Pro」と記載する)の全2,508個の考えられる単一アミノ酸ムテイン改変体を含むライブラリを、コドンベースの変異誘発技術プラットホーム(Applied Molecular Evolution,Inc.,San Diego,California)を用いて構築した。Ala−Proは、C125SヒトIL−2ムテインにおいて保持されている天然に存在する成熟ヒトIL−2配列の1位におけるN末端Ala残基を有することにおいて、市販のプロロイキン(登録商標)IL−2製品において利用されているデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインとは異なる。AME哺乳動物発現系のDirectAMETMおよびExpressAMETM(Applied Molecular Evolution,Inc.San Diego,California)を、Ala−Proムテインの組換え産生において利用した。
【0153】
一次スクリーニングを、炎症誘発性サイトカイン産生(TNF−α)、NK細胞増殖およびNK細胞溶解殺傷(NK、LAKおよびADCC)および細胞生存(pAKT)を、ヒトNK3.3細胞株を使用してアッセイした。選択された一次機能の指標としては、以下が挙げられる:(1)Ala−Pro IL−2(すなわち、C125SヒトIL−2ムテイン)またはプロロイキン(登録商標)IL−2(すなわち、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテイン)で観察されるものと比較してヒトNK−92細胞株により低減した炎症誘発性TNF−α産生;(2)これらの2つの参照IL−2ムテインのいずれかで観察されるものと比較して維持または向上した、ヒトNK−92細胞株増殖;および3)これらの2つの参照IL−2ムテインのいずれかで観察されるものと比較して維持または向上した、ヒトNK3.3細胞株媒介性のNK−、LAK−およびADCC媒介性細胞溶解殺傷。二次的な機能の指標は、以下であった:これらの2つの参照IL−2ムテインのいずれかで観察されるものと比較して維持または向上した、NK3.3細胞株におけるリン酸化AKT(pAKT)の誘導、およびAla−Pro IL−2(すなわち、C125SヒトIL−2ムテイン)またはプロロイキン(登録商標)(すなわち、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインを含む)で観察されるものと比較して維持または向上した、ヒトKit225 T細胞株によるT細胞増殖。
【0154】
初期スクリーニングプロセスは、C125SヒトIL−2ムテイン内の168個の単一アミノ酸置換を同定した(2004年5月5日に出願された、発明の名称「Improved Interleukin−2 Muteins」の同時係属の米国特許出願番号60/550,868(代理人事件番号PP20354.001(035784/261164)を参照のこと)。次いで、これらの置換をC125SヒトIL−2ムテインのこれらの168個の単一アミノ酸改変体の所望の機能プロファイルと合わせるために設計した3つの組み合わせライブラリと組み合わせて、増大した耐容性(すなわち、NK細胞によるTNF−α産生のIL−2誘導の低減)および維持または向上したNK細胞エフェクター機能を有するさらなるIL−2ムテインを見出した。上記組み合わせライブラリは、最小の1個の置換から最も多くて6個の可能なアミノ酸置換までに及ぶ、複数のアミノ酸置換(すなわち、天然に存在する成熟ヒトIL−2配列のC125S置換に加えて)を有する753 IL−2ムテインからなった。
【0155】
これらの3つの組み合わせライブラリから、(デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2と比較して)所望の機能プロファイルを有する32個の組み合わせムテイン(これらのムテインにおける組み合わせ置換について上記される表1を参照のこと)を、IL−2依存性ヒトNK細胞株およびT細胞株の増殖、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン産生(TNF−α)、およびNK媒介性細胞溶解性活性(NK/LAK/ADCC)を定量化するために開発された特殊化されたヒトNK細胞およびT細胞ベースの、中等度スループット免疫アッセイスクリーニング系の包括的パネルを用いて、同定した。全ての32ムテインについてのスクリーニングデータは、本明細書の以下の表7に示される。
【0156】
広域な用量応答範囲におけるこれらのムテインのスクリーニングの後の分析から、以下の実施例2〜4に記載するような、改善された臨床的利益を予測する3つの別個の機能クラスを含む特異的なムテインを同定する。選択した全てのIL−2ムテインは、デス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2ムテインと比較した場合に、NK細胞溶解性機能(NK/LAK/ADCC)を維持する。スクリーニングプロセスにおいて、以下のプロトコルを使用した。
【0157】
(NK細胞増殖/TNF−α産生)
ナチュラルキラー(NK)細胞増殖およびTNF−α産生に関するIL−2バイオアッセイは、ヒトNK−92細胞株(ATCC CRL−2407、CMCC ID#11925)を利用する。NK−92細胞株(最初にGongら(1994)Leukemia 8(4):652−658に記載された)は、活性化NK細胞の表現型および機能特性を示す。NK−92の増殖は、IL−2依存性であり;細胞は、72時間IL−2の非存在下で培養すれば死滅する。細胞株はまた、IL−2への曝露後48〜72時間以内に検出可能なレベルのTNF−αを産生する。
【0158】
NK−92細胞を、α−MEM、12%熱不活性化ウシ胎仔血清(FBS)、8%熱不活性化ウマ血清、0.02mM葉酸、0.2mMイノシトール、2mM L−グルタミンおよび0.1mM β−メルカプトエタノールからなる完全培地(NK−92培地)中で培養した。培養物を、最小密度1〜3×10細胞/mlで播種し、組換えヒトIL−2ムテイン(デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(すなわち、アルデスロイキンまたはプロロイキン(登録商標)IL−2;Chiron Corporation,Emeryville,California)またはC125SヒトIL−2(上記AMEの哺乳動物発現系中で組換え産生)、1000IU/mLを補充した。アッセイの調製において、細胞を、新しいNK−92培地中で最低48時間維持した後にアッセイに使用した。アッセイの1日前、NK−92を3回洗浄し、24時間、IL−2を添加しないNK−92培地中に維持した。細胞を遠心分離し、NK−92培地(IL−2無添加)中に懸濁し、96穴平底プレートに、NK−92培地中に希釈した、種々の濃度の参照IL−2分子としてのデス−アラニル−1,C125SもしくはC125SヒトIL−2、または種々の濃度の本発明のIL−2ムテインと共に、200μl中4×10細胞/ウェルの密度でプレーティングした。37℃、5%COで72時間インキュベートした後、培養上清の100μlアリコートを取り出し、後に行う、市販のTNF−α ELISAキット(BioSource CytoscreenTMヒトTNF−α ELISAキット;Camarillo,California)を用いたTNF−αの定量のために冷凍した。培地中に残存する細胞については、市販のMTT色素還元キット(CellTiter96(登録商標)非放射性細胞増殖アッセイキット(Promega Corp.,Madison,Wisconsin)を用いて増殖を判定し、そして次に比色読み取りに基づいて刺激指数を計算した。
【0159】
(NK細胞媒介性細胞毒性)
ナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞毒性に関するIL−2バイオアッセイは、ヒトNK3.3細胞株を利用している。NK3.3細胞株は、末梢血NK細胞の表現型および機能的特徴を示し(Kornbluth(1982)J.Immunol.129(6):2831−2837)、そして、Fcレセプター(CD16、FcγRIII)を介して抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を媒介することができる。細胞株は、セントルイス大学の限定的使用許可の合意の下にJackie Kornbluth博士より入手し、CMCC(ID12022)に寄託されているものである。
【0160】
表2はこのIL−2バイオアッセイにより調べたNK3.3細胞の生物学的活性を総括したものである。
【0161】
(表2 IL−2バイオアッセイにより調べたNK3.3細胞の生物学的活性)
【0162】
【表2】

NK3.3細胞を増殖させ、15%熱不活性化ウシ胎仔血清、25mM HEPES、2mM L−グルタミンおよびIL−2供給源として20%ヒトT−StimTMw/PHAを補充した、RPMI−1640培地中に維持した。アッセイの調製においては、NK3.3細胞を、24時間IL−2非存在下(「飢餓状態」)において培養した。アッセイは、総容量100μlの、参照IL−2分子としての種々の濃度のデス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2、または、種々の濃度の本発明のIL−2ムテインに曝露した、U底96ウェルプレートにプレーティングした5×10「飢餓状態」NK3.3細胞を用いた。18時間のインキュベートの後、IL−2刺激NK3.3エフェクター細胞を、5×10カルセインAM標識標的細胞(K562またはDaudi)または抗体コーティングカルセインAM標識標的(最終濃度2μg/mLのリツキシマブでコーティングされたDaudi)と共インキュベートすることにより、最終的なエフェクター 対 標的比、10:1を達成した(最終容量200μL)。エフェクター細胞と標的細胞を4時間共インキュベートした後、96ウェルプレートを短時間遠心分離し;培養上清100μLを取り出し、黒色清浄平底96ウェルプレートに入れ、蛍光計によりカルセインAMの放出の定量に供した。定量は、パーセント特異的溶解として表示し、以下の式:%特異的溶解=100×[(平均実験値−平均自発的放出)/(平均最大放出−平均自発的放出)]により計算した。ここで自発的放出は、標識標的を含有しエフェクターを含有しないウェルから求め、そして最大放出は、標識標的および1%Triton X−100を含有するウェルから求めた。
【0163】
(T細胞増殖)
T細胞増殖に関するIL−2バイオアッセイは、T細胞慢性リンパ性白血病の患者に由来するヒトT細胞株Kit225(CMCC ID#11234)を利用する(Horiら(1987)Blood 70(4):1069−1072)。Kit225細胞は、IL−2レセプター複合体のα、β、γサブユニットを構成的に発現する。Kit225の増殖はIL−2依存性であり;細胞は長期間IL−2非存在下で培養すれば死滅する。アッセイは、24時間IL−2の非存在下でKit225細胞を培養し、その後、参照IL−2分子としての種々の濃度のデス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2、または、種々の濃度の本発明のIL−2ムテインと共に、特定数の細胞をプレーティングすることより構成される。48時間のインキュベーションの後、増殖を、標準的な市販のMTT色素還元キットを用いて判定し、そして、刺激指数を、比色読み取り値に基づいて計算した。
【0164】
(NK細胞生存シグナル伝達)
ヒトIL−2ムテインライブラリのサブセットがNK細胞生存シグナル伝達を誘導する能力についてこれらをスクリーニングした。プロロイキン(登録商標)IL−2(すなわち、アルデスロイキン、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインを含む処方物)はIL−2を予め枯渇させたNK3.3細胞においてAKTのリン酸化を誘導する(「生存シグナル」と考えられる)。NK3.3細胞を増殖させ、15%熱不活性化ウシ胎仔児血清、25mM HEPES、2mM L−グルタミンおよびIL−2供給源として20%ヒトT−StimTMw/PHAを添加したRPMI−1640培地中に維持した。アッセイの調製においては、NK3.3細胞を24時間IL−2非存在下において培養した。細胞生存シグナル伝達の指標として、「飢餓状態」NK3.3細胞(2×10)を、30分間、2nMの参照IL−2分子としてのデス−アラニル−1,C125SもしくはC125SヒトIL−2、または2nMの本発明のIL−2ムテインを添加することにより刺激した。細胞をリン酸塩緩衝食塩水(PBS)で2回洗浄した。細胞ペレットを、プロテアーゼインヒビターを含有する細胞抽出緩衝液50μl中で溶解し、1回の凍結−解凍サイクルに供した。抽出液を、4℃で10分間、13,000rpmで遠心分離した。透明な溶解液のアリコートを、AKT[pS473]イムノアッセイキット(BioSource International)のウェルに1:10希釈で添加した。製造元のプロトコルに従って、リン酸化されたAKTのレベルを、定量的ELISAにより検出した。
【0165】
(実施例2:NK細胞によるTNF−α産生を低減する有益な変異の同定)
ムテインの第1の機能クラスは、改善された耐容性を有することが予測された。このことは、1.0nMにおいてアッセイされた場合に、C125SヒトIL−2ムテインで観察したものの<60%である、NK細胞によるTNF−α産生の誘導が減じることによって証明される(本明細書中の以下のデータにおいて「Ala−Pro」と表される)。このクラスのムテインは、2つのカテゴリーに含まれる:
(1)1.0nMのムテイン濃度においてNK細胞によるTNF−αを低く誘導しNK細胞増殖を維持するが、増殖活性はムテインのより低い濃度に下がるムテインであって、これらとしては、19D40D、36D61R、36D65L、40D61R、40D65Y、40G65Yまたは81K91Dの組み合わせ置換をさらに含むデス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2ムテインが挙げられる。この残基の位置(すなわち、19、36、40、61、65、81または91)は、成熟ヒトIL−2配列に関連し(すなわち、配列番号4に関連する)、以下の表3に示す;ならびに
(2)NK細胞によるTNF−α産生を低く誘導し、増殖活性は50pMまで維持されるムテインであって、さらに、NK細胞によるTNF−α産生は、0.05nM(すなわち、50pM)および0.1nM(すなわち、100pM)におけるC125SヒトIL−2の産生の<80%でなければならない。このサブクラスとしては、40D72N、80K65Y、81K88D、81K42E、81K72N、107H65Yまたは107R72Nの組み合わせ置換をさらに含むデス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2ムテインが挙げられる。この残基の位置(すなわち、40、42、65、72、80、81、88または107)は、成熟ヒトIL−2配列に関連し(すなわち、配列番号4に関連する)、以下の表4に示す。
【0166】
(表3.NK細胞によるTNF−α産生の低減された誘導を有するとして同定されたIL−2ムテイン。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞によるTNF−α産生は、C125SヒトIL−2について観察するものの比(:Ala−Pro)として表す。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞増殖(NK92−MTT)は、C125SヒトIL−2について観察されるものの比(:Ala−Pro)として表す)
【0167】
【表3】

(表4.NK細胞によるTNF−α産生の低減された誘導を有するとして同定されたさらなるIL−2ムテイン。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞によるTNF−α産生は、C125SヒトIL−2について観察するものの比(:Ala−Pro)として表す。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞増殖(NK92−MTT)は、C125SヒトIL−2について観察されるものの比(:Ala−Pro)として表す)
【0168】
【表4】

(実施例3:NK細胞増殖を増強する有益なムテインの同定)
ヒトIL−2ムテインの第2のクラスは、TNF−α産生に対して有害な影響を与えることのない(100pMまたは1nMの濃度において参照IL−2ムテインについて観察されるものに対して、<100%のTNF−α産生)試験した1以上の濃度(5pM、20pM、50pM、100pMおよび1000pM)におけるC125SヒトIL−2と比較して、NK細胞増殖を>200%に増強する。さらに、選択基準としては、試験した少なくとも2種の濃度について参照IL−2ムテイン(すなわち、C125SヒトIL−2(Ala−Pro))で観察されるものの150%を超える増殖指数を含む。この機能クラスとしては、19D81K、40G36Dまたは81K36Dの置換をさらに含むデス−アラニル−1,C125SまたはC125SヒトIL−2置換が挙げられ、この残基の位置(すなわち、19、36、40または81)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)。以下の表5を参照のこと。
【0169】
(表5.NK細胞によるTNF−α産生に負の影響を与えることなく、NK細胞増殖の誘導の増強を有すると同定したIL−2ムテイン。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞によるTNF−α産生は、C125SヒトIL−2について観察するものの比(:Ala−Pro)として表す。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞増殖(NK92−MTT)は、C125SヒトIL−2について観察されるものの比(:Ala−Pro)として表す)
【0170】
【表5】

(実施例4:「二官能性」変異の同定)
ヒトIL−2ムテインの第3のクラスは、増殖活性の増大およびNK細胞によるTNF−α産生の低減を示す。ここでTNF−α産生は、1nMにおいて試験した場合、C125SヒトIL−2ムテインについて観察するものの<75%であり、NK細胞の増殖は、試験した任意の1つの濃度(5pM、20pM、50pM、100pMおよび1000pM)におけるC125SヒトIL−2ムテインについて観察されたものの>150%である。この群としては、36D42R、36D80K、40D80K、81K61R、91N95G、107H36D、107R36Dまたは91N94Y95Gの置換をさらに含むデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインが挙げられる。この残基の位置(すなわち、36、40、42、61、80、81、91、94、95または107)は、成熟ヒトIL−2配列に関連する(すなわち、配列番号4に関連する)。以下の表6を参照のこと。
【0171】
(表6.NK細胞増殖の誘導の増強およびNK細胞によるTNF−α産生の誘導の低減を有すると同定した二官能性IL−2ムテイン。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞によるTNF−α産生は、C125SヒトIL−2について観察するものの比(:Ala−Pro)として表す。種々の濃度のIL−2ムテインにおけるNK細胞増殖(NK92−MTT)は、C125SヒトIL−2について観察されるものの比(:Ala−Pro)として表す)
【0172】
【表6】

以下の表7は、このスクリーニングプロセスにおいて同定した32の組み合わせムテインの機能プロファイルを要約する。
【0173】
【表7−1】

【0174】
【表7−2】

(実施例5:正常ヒト末梢血単核細胞における増殖および細胞毒性のレベルを維持または増大しながら炎症誘発性サイトカイン産生を低減する、有益なIL−2変異の同定)
上記32個のIL−2ムテインの組み合わせアミノ酸置換シリーズから、表8に示すように、小規模発現/精製のために18個のIL−2ムテインを選択した。これらのIL−2ムテインを、数人の健常ヒト血液ドナーより単離した末梢血単核細胞(PBMC)における増大した耐容性および維持された活性という同様の機能プロフィールを生じるその能力について、関連するIL−2対照(デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテイン(プロロイキン(登録商標)中に存在)および酵母発現デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテイン(本明細書においては、データ中Y−Proと記載)と比較して、試験した。具体的には、正常ヒトドナーのパネルから誘導したヒトPBMCを刺激し、増殖および炎症誘発性サイトカイン産生(TNF−α)、ならびに天然/自発的細胞毒性(NK)、リンホカイン活性化殺傷(LAK)または抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)により腫瘍細胞標的を殺傷する能力について、アッセイすることによって、精製したIL−2ムテインをスクリーニングした。
【0175】
(表8.以下の組み合わせ置換を有するC125SヒトIL−2(配列番号6)またはデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(配列番号8)のアミノ酸配列を含むヒトIL−2ムテインを、ヒトPBMCにおける活性についてスクリーニングした
【0176】
【表8】

IL−2ムテインの同定は以下による:配列番号4の成熟ヒトIL−2に対するアミノ酸位置、およびその位置におけるアミノ酸置換。
【0177】
以下の一次的な機能の指標を用いた:
1)IL−2ムテインで刺激されたヒトPBMCによる、関連するヒトIL−2ムテイン対照と比較して低減した、炎症誘発性サイトカイン産生(TNF−α);
2)ヒトPBMCにおける、炎症誘発性サイトカイン産生の増大を伴わない、関連するヒトIL−2ムテイン対照と比較して維持されるかまたは向上した、IL−2誘導増殖;および
3)IL−2ムテインによりインビトロ刺激されたヒトPBMCによる、関連するヒトIL−2ムテイン対照と比較して維持されるかまたは向上した、NK、LAKおよびADCC媒介性の細胞毒性殺傷。
【0178】
(アッセイの説明)
(増殖/炎症誘発性サイトカイン産生複合アッセイの手順)
IL−2への曝露により、ヒトPBMCは用量依存的に増殖してサイトカインを分泌する。データアウトプットおよび効力を最大限にするために、参照IL−2ムテインまたは目的のヒトIL−2ムテインで72時間刺激した後で増殖およびサイトカインの産生のレベルを評価するための複合アッセイを設計した。アッセイの設定は、正常ヒトドナー1人以上からの密度勾配分離(ACDA Vacutainer CPTチューブ)によるPBMCの単離を包含する。96穴組織培養処理プレートにおいて、ウェル当たり200,000個の細胞を、37℃、7%COにおいて、完全RPMI培地(RPMI、10%熱不活性化ヒトAB血清、25mM HEPES、2mMグルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン)中で、種々の濃度のIL−2(0.039nM〜10nM)とともに、または陰性対照としてIL−2非存在下で、インキュベートする。66時間のインキュベーションの後、細胞培養上清のアリコートを取り出し、後のサイトカイン検出のために凍結する。細胞を1μCiH−チミジンで6時間パルスし、次に回収して、細胞増殖の尺度としてヌクレオチド取り込みのレベルを決定する(Wallac Trilux Microbeta Plate Reader)。市販のELISAキット(BioScource International)を用いて、製造元のガイドラインに従って、細胞培養上清中のTNF−αのレベルを検出した。個別の6ドナーの完全なパネルについてアッセイを繰り返すことにより、「正常集団」におけるIL−2への代表的な増殖応答およびサイトカイン応答の特徴付けが提供される。
【0179】
(データ分析)
PBMCサンプルを、再現性評価のために個別の試験プレートに2連でプレーティングした。増殖データは、バックグラウンド増殖(PBMC+IL−2なし)を差し引くことにより分析し、そして2連のサンプルの平均を計算した。サイトカインデータを、PBMCを含有するアッセイウェルから採取した細胞培養上清から得、プールして2連の設定における平均のサイトカインレベルを得た。TNF−αレベルを、ELISAキットに含まれる精製されたTNF−αの標準曲線に基づいて、pg/mlで定量した。データを、図1に示す模式図において概説するように、6人の正常ヒトドナーのパネルについてさらに編集した。
【0180】
(細胞毒性アッセイ(NK/LAK/ADCC))
このアッセイにおいては、PBMCを密度勾配遠心分離を用いて全血から分離する。PBMCを、10nMのIL−2対照または目的のIL−2ムテインの存在下で3日間刺激し、現在の技術レベルで一般的に実施されているようにLAK活性を発生させる(例えばIsolation of Human NK Cells and Generation of LAK activity,Current Protocols in Immunology;1996 John Wiley&Sons,Incを参照のこと)。得られた細胞集団は「エフェクター」細胞を含有し、これはNKまたはLAKに分類してよく、そしてそれぞれK562およびDaudiの腫瘍細胞標的を殺傷することができる。これらのエフェクター細胞はまたADCCを媒介し得、これによりエフェクター細胞はDaudi標的細胞に結合している特定の抗体(この場合はRituxan(登録商標))のFc部分を認識する。このアッセイでは、4時間、種々のエフェクター 対 標的細胞(E:T比)での、カルセインAM標識標的細胞とのエフェクター細胞の共インキュベーションを包含する。細胞毒性活性の量は、培養上清中のカルセインAMの検出に関係している。定量は、自発的放出および最大放出の対照の決定に基づいて、各E:T比におけるパーセント特異的溶解として表示される。まとめると、アッセイは以下の生物学的活性を試験する。
【0181】
【表9】

(データ分析)
データは蛍光計から得られ、そして相対的蛍光単位(rfu)として表示される。対照は、標識標的細胞単独(最小)、および100%溶解(最大)の尺度としての標識標的細胞+最終濃度1%のTriton X−100を含む。パーセント最小 対 最大比は、アッセイの有効性(>30%であればアッセイは無効)の尺度として以下の式を用いて計算する:
%最小 対 最大=100x[(平均自発的放出rfu)/(平均最大放出rfu)]
アッセイが有効であることがわかれば、3連のサンプル点の平均および標準偏差を計算し、その後、以下の式を用いて3連の点の平均からパーセント特異的溶解を求める:
%溶解=100x[(平均実験rfu−平均自発的放出rfu)/(平均最大放出rfu−平均自発的放出rfu)]
データは%特異的溶解として報告し;さらに、IL−2ムテインの関連IL−2対照に対する比を用いて、ヒトPBMCドナーの混合集団における対照IL−2に対して細胞毒性活性が維持されたかどうかを決定した。
【0182】
(結果)
正常ヒトPBMCにおける増殖および細胞毒性のレベルを維持または増大させながら炎症誘発性サイトカイン産生を低減する、2種の有益な組み合わせIL−2変異を同定した:40D72Nおよび40D61R。以下に示すデータセットについては、関連する対照(すなわち、同じ酵母系において発現され精製されたデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2(Y−Proと称する))と共にIL−2ムテインを試験した。まずIL−2ムテインを、2連で試験した3つの正常血液ドナーPBMCを各々用いた2つの独立したアッセイ設定において、用量応答曲線(39pM〜10nM)にわたって増殖/炎症誘発性サイトカイン産生複合アッセイにおいて試験した。データ分析は、個々のドナーのプロフィール、平均±標準偏差、内部IL−2対照との差の分析、および、細胞当たり産生されたサイトカインの相対レベルを得るための増殖(cpm)に対するサイトカイン産生(pg/ml)の標準化を含んだ。最後に、IL−2対照からのTNF−α産生の%減少を計算した。10,000pMにおいて25%超のTNF−α産生の減少を示したIL−2ムテインは、増殖のレベルが維持されていれば有益であるとみなされた。表9は、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテイン骨格においてさらなる組み合わせのアミノ酸置換を有していた2種の有益な組み合わせIL−2ムテインに関して観察された、TNF−α産生のパーセント減少をまとめるものである。図2および図3は、ヒトPBMCにおける、それぞれ40D72Nおよび40D61Rのムテインにより媒介される、増殖およびTNF−α産生を示す。
【0183】
(表9.IL−2対照からのTNF−α産生のパーセント減少
【0184】
【表10】

値は、6人の正常ヒトPBMCドナーのパネル由来のY−Pro対照からの平均パーセント減少を示す。サイトカインデータは、増殖に対して標準化した。
【0185】
一旦、2種の有益なIL−2ムテインが同定されれば、IL−2ムテインで刺激されたPBMCが、NK活性、LAK活性およびADCC活性による腫瘍細胞標的を溶解する能力を保持しているかどうかを決定することが重要であった。図4に示す通り、LAK活性およびADCC活性による腫瘍標的を溶解する能力においては、40D72N IL−2ムテインまたは40D61R IL−2ムテインとIL−2ムテインと関連IL−2対照との間に差は観察されなかった。
【0186】
本明細書に示される本発明の多くの変更および他の実施形態は、上記の説明および添付する図面に示した教示の利益を有する本発明が関係する分野の当業者に理解される。したがって、本発明が開示した特定の実施形態に限定されるべきではなく、変更および他の実施形態が本明細書に開示される実施形態の範囲内に包含されることが意図されることが理解されるべきである。本明細書において特定の用語が使用されたが、これらは、一般的かつ説明的な意味においてのみ使用されており、限定する目的で使用されていない。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】図1は、正常ヒトドナーから単離されたIL−2ムテイン刺激のヒトPBMCと共に使用される、組み合わせの増殖/炎症誘発性サイトカイン生産アッセイ手順の複雑な状況についての概略図の概略を述べる。
【図2】図2は、ヒトPBMCにおける40D72N IL−2ムテインにより媒介される増殖およびTNF−α生産を示す。
【図3】図3は、ヒトPBMCにおける40D61R IL−2ムテインにより媒介される増殖およびTNF−α生産を示す。
【図4】図4は、正常ヒトドナーから単離されたIL−2ムテイン刺激のヒトPBMCに関する、ヒトNK媒介性LAKおよびADCC活性の維持を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された核酸分子であって、以下:
a)ヒトIL−2のムテインをコードするヌクレオチド配列であって、該ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、ヌクレオチド配列;
b)配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71に示されるヌクレオチド配列;
c)ヒトIL−2のムテインをコードするヌクレオチド配列であって、該ムテインは、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70および72からなる群より選択される配列の残基2〜133を含むアミノ酸配列を含む、ヌクレオチド配列;
d)配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69および71からなる群より選択される配列のヌクレオチド4〜399を含む、ヌクレオチド配列;
e)a)、b)、c)またはd)のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列であって、ここで該配列は、アラニンをコードするトリプレットコドンによる、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71のヌクレオチド373〜375の置換を含む、ヌクレオチド配列;
f)a)、b)、c)またはd)のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列であって、ここで該配列は、システインをコードするトリプレットコドンによる、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69または71のヌクレオチド373〜375の置換を含む、ヌクレオチド配列;ならびに
g)a)、b)、c)、d)、e)またはf)のヌクレオチド配列であって、ここで該ムテインをコードする1以上のコドンは、目的の宿主細胞における発現について最適化されている、ヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
前記g)のヌクレオチド配列が、配列番号73の配列、配列番号73のヌクレオチド4〜399、配列番号74の配列および配列番号74のヌクレオチド4〜399からなる群より選択される、請求項に1記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項5】
単離されたポリペプチドであって、以下:
a)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列;
c)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含む、アミノ酸配列;および
d)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたシステイン残基を含む、アミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項6】
ヒトIL−2のムテインを含む単離されたポリペプチドであって、ここで該ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび配列番号4内の少なくとも2つのさらなるのアミノ酸の置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここで該ムテインは、類似のアッセイ条件下においてデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量と比較した場合、1)ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を維持または増強し、そして2)NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産の低減されたレベルを誘導し、ここで該NK細胞の増殖および該NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産は、NK−92バイオアッセイを使用してアッセイされる、単離されたポリペプチド。
【請求項7】
前記ムテインが、配列番号4の1位のアラニンの欠失をさらに含む、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項8】
前記配列番号4内のさらなる置換が、19D40D、19D81K、36D42R、36D61R、36D65L、40D36D、40D61R、40D65Y、40D72N、40D80K、40G36D、40G65Y、80K36D、80K65Y、81K36D、81K42E 81K61R、81K65Y、81K72N、81K88D、81K91D、81K107H、81L107H、91N95G、107H36D、107H42E、107H65Y、107R36D、107R72N、40D81K107H、40G81K107Hおよび91N94Y95Gの組み合わせ置換からなる群より選択される、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項9】
前記ムテインが、配列番号4の1位のアラニンの欠失をさらに含む、請求項8に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項10】
前記炎症誘発性サイトカインがTNF−αである、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項11】
前記ムテインが、類似のアッセイ条件下におけるデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2の同様の量について観察されるものと比較して、維持または改善されたヒトNK細胞媒介性ナチュラルキラー細胞毒性、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞毒性、またはADCC媒介性細胞毒性を提供し、ここで該NK細胞媒介性細胞毒性は、NK3.3細胞毒性バイオアッセイを用いてアッセイされる、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項12】
前記ムテインにより誘導された前記NK細胞の増殖が、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される増殖の150%超である、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項13】
前記ムテインにより誘導された前記NK細胞の増殖が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖の170%超である、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
前記ムテインにより誘導された前記NK細胞の増殖が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖の約200%〜約250%である、請求項13に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項15】
前記ムテインにより誘導された前記NK細胞の増殖が、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される増殖より少なくとも10%増大している、請求項6に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項16】
前記ムテインにより誘導された前記NK細胞の増殖が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される増殖より少なくとも15%増大している、請求項15に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項17】
前記ムテインにより誘導された前記炎症誘発性サイトカイン生産が、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2の同様の量により誘導される産生の100%未満である、請求項16に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項18】
前記ムテインにより誘導された前記炎症誘発性サイトカイン生産が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2により誘導される産生の70%未満である、請求項17に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項19】
ヒトIL−2のムテインを含む単離されたポリペプチドであって、ここで該ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび配列番号4内の少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここで、該ムテインのIL−2誘導性TNF−α生産に対するIL−2誘導性NK細胞の増殖の比は、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2ムテインまたはC125SヒトIL−2ムテインの同様の量で観察される比より少なくとも1.5倍高く、ここで0.1nMムテインにおけるNK細胞増殖および1.0nMムテインにおけるTNF−α生産が、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる、ポリペプチド。
【請求項20】
前記比が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察される比より少なくとも2.5倍高い、請求項19に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項21】
前記比が、デス−アラニル−1,C125SヒトIL−2またはC125SヒトIL−2で観察される比より少なくとも3.0倍高い、請求項19に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項22】
前記ムテインが、配列番号4の1位にアラニンの欠失をさらに含む、請求項19に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項23】
ヒトIL−2のムテインに対するアミノ酸配列を含む単離されたポリペプチドであって、ここで該ムテインは、配列番号4の125位のシステインに対して置換されたセリンおよび少なくとも2つのさらなるアミノ酸置換を有する配列番号4に示されるアミノ酸配列を含み、ここで該さらなる置換は、19位、36位、40位、42位、61位、65位、72位、80位、81位、88位、91位、95位および107位からなる群より選択される配列番号4の位置に存在する、ポリペプチド。
【請求項24】
前記ムテインが、配列番号4の1位にアラニンの欠失をさらに含む、請求項23に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項25】
前記配列番号4内のさらなる置換が、19D40D、19D81K、36D42R、36D61R、36D65L、40D36D、40D61R、40D65Y、40D72N、40D80K、40G36D、40G65Y、80K36D、80K65Y、81K36D、81K42E 81K61R、81K65Y、81K72N、81K88D、81K91D、81K107H、81L107H、91N95G、107H36D、107H42E、107H65Y、107R36D、107R72N、40D81K107H、40G81K107Hおよび91N94Y95Gの組み合わせ置換からなる群より選択される、請求項23に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項26】
前記ムテインが、配列番号4の1位のアラニンの欠失をさらに含む、請求項25に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項27】
ヒトインターロイキン−2(IL−2)のムテインを産生する方法であって、該ムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125ヒトIL−2から選択される参照ヒトIL−2ムテインの同様の量と比較した場合、NK細胞の増殖を維持または増強することが可能であり、そしてまたNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる方法であって、該方法は、以下:
a)請求項1に記載の核酸分子を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する工程;
b)ポリペプチドとしての該核酸分子の発現を可能にする条件下で細胞培養培地において該宿主細胞を培養する工程;および
c)該ポリペプチドを単離する工程
を包含する、方法。
【請求項28】
ヒトインターロイキン−2(IL−2)のムテインを産生する方法であって、該ムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照ヒトIL−2ムテインの同様の量と比較した場合、NK細胞の増殖を維持または増強することが可能であり、そしてまたNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、ここで該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる方法であって、該方法は、以下:
a)請求項23に記載のポリペプチドをコードする核酸分子を含む発現ベクターで宿主細胞を形質転換する工程;
b)ポリペプチドとしての該核酸分子の発現を可能にする条件下で細胞培養培地において該宿主細胞を培養する工程;および
c)該ポリペプチドを単離する工程
を包含する、方法。
【請求項29】
請求項5に記載のヒトIL−2ムテインの治療有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項30】
請求項6に記載のヒトIL−2ムテインの治療有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項31】
請求項19に記載のヒトIL−2ムテインの治療有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項32】
請求項23に記載のヒトIL−2ムテインの治療有効量および薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項33】
哺乳動物の免疫系を刺激するための方法であって、該方法は、ヒトIL−2ムテインの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで該ムテインは、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2分子の同様の量と比較した場合、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここで該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを使用してアッセイされる、方法。
【請求項34】
前記哺乳動物がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒトIL−2ムテインが、以下:
a)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列;
c)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含む、アミノ酸配列;および
d)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたシステイン残基を含む、アミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
哺乳動物において癌を処置するための方法であって、該方法は、ヒトIL−2ムテインの治療有効量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、ここで該ムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2ムテインの同様の量と比較した場合、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここで該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる、方法。
【請求項37】
前記哺乳動物がヒトである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒトIL−2ムテインが、以下:
a)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列;
c)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含む、アミノ酸配列;および
d)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたシステイン残基を含む、アミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
処置プロトコルとしてインターロイキン−2(IL−2)投与を受けている被験体においてIL−2誘導性毒性症状を低減するための方法であって、該方法は、IL−2ムテインとして該IL−2を投与する工程を包含し、ここで該IL−2ムテインは、以下:
a)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列;
c)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含む、アミノ酸配列;および
d)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたシステイン残基を含む、アミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項40】
哺乳動物の免疫系を刺激するための方法におけるヒトIL−12ムテインの使用であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量のヒトIL−12ムテインを投与する工程を包含し、ここで該ムテインは、類似のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2ムテインの同様の量と比較してNK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここで該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを使用してアッセイされる、使用。
【請求項41】
哺乳動物において癌を処置するための方法におけるヒトIL−2の使用であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量のヒトIL−2ムテインを投与する工程を包含し、該ムテインは、同様のアッセイ条件下のデス−アラニル−1,C125SヒトIL−2およびC125SヒトIL−2から選択される参照IL−2ムテインの同様の濃度と比較して、NK細胞による炎症誘発性サイトカイン生産のより低いレベルを誘導し、そしてNK細胞の増殖を維持または増強し、ここで該NK細胞の増殖および該炎症誘発性サイトカイン生産が、NK−92バイオアッセイを用いてアッセイされる、使用。
【請求項42】
処置プロトコルとしてインターロイキン−2(IL−2)投与を受けている被験体においてIL−2誘導性毒性症状を低減するための方法におけるヒトIL−2ムテインの使用であって、該方法は、IL−2ムテインとして該IL−2を投与する工程を包含し、ここで該IL−2ムテインは、以下:
a)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72に示されるアミノ酸配列;
b)配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の残基2〜133を含むアミノ酸配列;
c)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたアラニン残基を含む、アミノ酸配列;および
d)a)またはb)のアミノ酸配列であって、ここで該配列は、配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70または72の125位のセリン残基に対して置換されたシステイン残基を含む、アミノ酸配列;
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−509651(P2008−509651A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502073(P2007−502073)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007303
【国際公開番号】WO2005/086751
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506175828)カイロン コーポレーション (7)
【Fターム(参考)】