説明

組付装置

【課題】ヘッドパイプの両端に形成されたボールレース部に定量のグリース塗布及び所定数のボール装着を確実に行うことができる組付装置を提供する。
【解決手段】ヘッドパイプの両端に形成されたボールレース部にグリースの塗布とボール4の装着を行う組付装置であって、ヘッドパイプの両端を挟持する上ヘッド部5及び下ヘッド部6と、これらのヘッド部5,6に所定数のボール4を配列して保持するボール供給手段7と、ボールレース部近傍に定量のグリースを各ヘッド部5,6より吐出するグリース圧送手段8と、このグリース圧送手段8により吐出したグリースをボール供給手段7により配列保持されたボール4で押し出すと共に、これらのボール4とグリースをヘッドパイプ両端のボールレース部に装着するボール圧送手段9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状部材の両端に形成された開口周縁部にグリース塗布作業とボール装着作業を行う組付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車のヘッドパイプの両端に形成された開口周縁部(ベアリング用ボールレース部)にグリースを塗布する作業と、グリースが塗布された開口周縁部に所定数のベアリングボールを配列する作業が手作業により行われていることが知られている。
【0003】
また、ワークに対して常に均一にグリースを塗布するために、グリース供給ノズルに対して傾動可能に配設されたノズルヘッドのテーパ面をヘッドパイプの開口端面に直接当接させることによってボールレース部との位置決めを行い、このボールレース部に複数のグリース吐出通路から一時にグリースを吐出させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−265770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、手作業によるボールレース部へのグリース塗布は、作業者の勘などに頼る手作業であるため塗布が片寄って均一にならない場合がある。また、塗布量も不均一でばらつきが発生する場合がある。更に、ヘッドパイプを支持する治具に付着したグリースを拭き取る作業が発生してしまうという問題がある。
また、特許文献1に記載の技術のように、グリース塗布作業を自動化しても、ボールのヘッドパイプへの配列は、作業者の勘などに頼る手作業であるためボールの落下や数不足が発生してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状部材両端に形成された開口周縁部に定量のグリース塗布作業及び所定数のボール装着作業を確実に行うことができる組付装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく本発明は、筒状部材の両端に形成された開口周縁部にグリース塗布とボール装着を行う組付装置であって、筒状部材両端を挟持する上ヘッド部及び下ヘッド部と、これらのヘッド部に所定数のボールを配列して保持するボール供給手段と、筒状部材両端の開口周縁部近傍に定量のグリースを各ヘッド部より吐出するグリース圧送手段と、このグリース圧送手段により吐出したグリースを前記ボール供給手段により配列保持されたボールで押し出すと共にこれらのボールとグリースを筒状部材両端の開口周縁部に装着するボール圧送手段を備えた。
【0008】
また、前記ボール圧送手段によりボールとグリースが筒状部材両端の開口周縁部に装着した後に、グリースに冷風を噴射してグリースを一時的に硬化させるグリース硬化手段を設けることができる。
【0009】
前記上ヘッド部または前記下ヘッド部のいずれか一方を可動にすることができる。
【0010】
前記ボール供給手段は、溝を形成したプレートにより所定数のボールを傾斜状態で保持することができる。
【0011】
前記ボール圧送手段は、前記ボール供給手段により配列保持された所定数のボールを一括圧送することができる。
【0012】
前記筒状部材両端に形成された開口周縁部へのグリース塗布とボール装着を連続して一つの工程で行うようにすることができる。
【0013】
前記筒状部材を自動二輪車のヘッドパイプとして、本発明を自動二輪車のヘッドパイプに適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、筒状部材の両端に形成された開口周縁部に定量のグリース塗布及び所定数のボール装着を確実に行うことができる。また、筒状部材の両端に形成された開口周縁部に対するグリース塗布作業及びボール装着作業のサイクルタイムの短縮が図れる。更に、グリースを筒状部材両端の開口周縁部に的確に定量だけ塗布することができるので、グリース使用量の削減が図れる。
【0015】
グリース硬化手段を設ければ、冷風の噴射によりグリースが一時的に硬化するので、グリースと共に筒状部材両端の開口周縁部に装着したボールが脱落するのを防止することができる。
【0016】
上ヘッド部または下ヘッド部のいずれか一方を可動にすれば、筒状部材の両端を容易且つ確実に挟持することができる。
【0017】
ボール供給手段が溝を形成したプレートにより所定数のボールを傾斜状態で保持すれば、所定数のボールを確実に上ヘッド部と下ヘッド部に供給することができる。
【0018】
ボール圧送手段がボール供給手段により配列保持された所定数のボールを一括圧送すれば、所定数のボールを筒状部材の両端に形成された開口周縁部の所望な位置に短時間でグリースと共に装着することができる。
【0019】
グリース塗布とボール装着を連続して一つの工程で行うようにすれば、筒状部材の両端に形成された開口周縁部に対するグリース塗布作業とボール装着作業を効率よく行うことができる。
【0020】
本発明を自動二輪車のヘッドパイプに適用すれば、自動二輪車のヘッドパイプのボールレース部に対するグリース塗布作業とボール装着作業のサイクルタイムの短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヘッドパイプの断面図
【図2】グリース塗布及びボール装着後のボールレース部の正面図
【図3】本発明に係る組付装置の概要外観図
【図4】本発明に係る組付装置の側面図
【図5】グリース硬化手段を設けた場合の組付装置の側面図
【図6】グリース塗布及びボール装着前の要部断面図
【図7】グリース塗布及びボール装着後の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。自動二輪車のフレームを構成するヘッドパイプ1は、図1に示すように、両端の開口周縁部にボールレース部2を形成している。そして、図2に示すように、ボールレース部2,2に定量のグリース3を塗布すると共に、所定数(例えば、21個)のボール4を装着させるのが本発明に係る組付装置である。
【0023】
本発明に係る組付装置は、図3及び図4に示すように、自動二輪車のヘッドパイプ1の両端を挟持する上ヘッド部5及び下ヘッド部6と、これらのヘッド部5,6に所定数のボール4を配列して保持するボール供給手段7と、ヘッドパイプ1のボールレース部2,2近傍に定量のグリース3を各ヘッド部5,6より吐出するグリース圧送手段8と、このグリース圧送手段8により吐出したグリース3とボール供給手段7により配列保持されたボール4を同時にボールレース部2に装着するボール圧送手段9を備えている。
【0024】
上ヘッド部5と下ヘッド部6は、夫々略円柱形状に形成され、外筒部10と内蔵部11を備えている。上ヘッド部5と下ヘッド部6はほぼ同じ構成で、夫々の先端部にはヘッドパイプ1のボールレース部2の端部2aが嵌合する溝部12が設けられている。上ヘッド部5と下ヘッド部6はハンド部13で連結され、略コの字形状に形成されている。
【0025】
ハンド部13の空洞部13aには、電気配線やエア配管などが通されている。上ヘッド部5はハンド部13に配設されたシリンダ14により昇降自在になっている。また、上ヘッド部5はハンド部13内に縮装されたスプリング15により昇方向に付勢されている。
【0026】
ボール供給手段7は、溝を形成したプレートによって傾斜状態に保持された所定数のボール4をパーツフィーダ(不図示)により、上ヘッド部5と下ヘッド部6に形成されたボール保持部16,16に夫々供給する。外筒部10と内蔵部11の隙間で環状に形成されたボール保持部16,16には、配列保持されたボール4が脱落しないよう環状の弾性ストッパ17,17が配設されている。
【0027】
また、グリース圧送手段8は、ディスペンサ(不図示)によりグリース3を圧送して上ヘッド部5と下ヘッド部6の内蔵部11,11に設けた複数の吐出口18からヘッドパイプ1のボールレース部2,2近傍に定量のグリース3を吐出する。
【0028】
ボール圧送手段9は、上ヘッド部5及び下ヘッド部6に設けられ、これらのヘッド部5,6を構成する外筒部10と内蔵部11の間を摺動自在に進退動する筒状のピストン20を備えている。外筒部10と内蔵部11とピストン20でシリンダを構成することになる。ボール保持部16,16に配列保持されたボール4は、前進するピストン20によりボールレース部2,2に一括圧送される。
【0029】
ピストン20を前進させることにより、ボール保持部16,16に配列保持された所定数のボール4でボールレース部2,2近傍に吐出されたグリース3を押し出すと共に、これらのボール4とグリース3をボールレース部2,2に装着させることができる。
【0030】
また、図5に示すように、ボール圧送手段9によりボール4とグリース3がヘッドパイプ1両端のボールレース部2,2に装着した後に、グリース3に冷風を噴射してグリース3を一時的に硬化させるグリース硬化手段30を設けることもできる。グリース硬化手段30は、グリース3の吐出口18近傍に設けた冷風噴射口31と、冷風噴射口31に冷風を運ぶ配管32と、冷風を冷風噴射口31に供給する冷風供給装置33などからなる。
【0031】
冷風としては、低温なる窒素ガスや低温なる空気などが用いられる。冷風が低温なる窒素ガスの場合には、冷風供給装置33が液体窒素のボンベと液体窒素を気化させる液体窒素気化装置などから構成される。また、冷風が低温なる空気の場合には、冷風供給装置33が超低温の空気を発生させる超低温空気発生装置などから構成される。
【0032】
以上のように構成された本発明に係る組付装置の動作について説明する。先ず、下側のボールレース部2を下ヘッド部6の溝部12に嵌合させ、更にシリンダ14を駆動状態にさせて上ヘッド部5を下降させ上側のボールレース部2に嵌合させる。これにより、ヘッドパイプ1は上ヘッド部5と下ヘッド部6によって安定した状態で挟持される。すると、自動二輪車のフレームを構成するヘッドパイプ1が本装置にセットされる。
【0033】
次いで、ボール供給手段7により所定数(例えば、21個)のボール4を上ヘッド部5と下ヘッド部6に供給する。すると、図6に示すように、上ヘッド部5のボール保持部16と下ヘッド部6のボール保持部16に夫々供給された21個のボール4は、環状に配列保持される。ボール4が上ヘッド部5のボール保持部16に供給されても、環状の弾性ストッパ17により落下することはない。
【0034】
次いで、グリース圧送手段8により、グリース3を圧送して上ヘッド部5と下ヘッド部6の内蔵部11,11に設けた複数の吐出口18からボールレース部2,2近傍で外筒部10と内蔵部11の間に定量のグリース3を吐出する。グリース3は適度の粘性を有するので、垂れたりすることなく吐出した状態を維持することができる。なお、ボール4をボール保持部16に配列するのと、グリース3をボールレース部2,2近傍に吐出するのは、いずれを先にしてもよい。
【0035】
次いで、ボール圧送手段9のピストン20を前進させることにより、ボール保持部16,16に配列保持された所定数のボール4を一括圧送する。すると、図7に示すように、所定数のボール4が弾性ストッパ17,17を乗り越えて、ボールレース部2,2近傍に吐出されていたグリース3を押し出すと同時に、グリース3と共にボールレース部2,2に装着する。
【0036】
更に、グリース硬化手段30によりボールレース部2,2に装着したグリース3に冷風を噴射することもできる。冷風の噴射によりグリース3が一時的に硬化するので、グリース3と共にヘッドパイプ1両端のボールレース部2,2に装着したボール4が脱落するのを防止することができる。特に、下ヘッド部6から圧送されてボールレース部2に装着したボール4の脱落防止には有効である。
【0037】
次いで、シリンダ14の駆動状態を解除する。すると、スプリング15により上ヘッド部5が上昇し、上ヘッド部5が上側のボールレース部2から離れる。更に、ヘッドパイプ1を持ち上げて下側のボールレース部2を下ヘッド部6から離す。下側のボールレース部2に装着されたボール4は、ボールレース部2とボール4の間に配設されたグリース3の吸着力により落下することはない。
【0038】
このようにして、ヘッドパイプ1両端のボールレース部2,2に定量のグリース3を塗布すると共に、所定数(例えば、21個)のボール4を装着させる作業が一つの工程で行われる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、自動二輪車のフレームを構成するヘッドパイプなどの筒状部材の両端に形成された開口周縁部に定量のグリース塗布及び所定数のボール装着を一つの工程で確実に行うことができ、グリース塗布作業及びボール装着作業のサイクルタイムの短縮が図れ、的確に定量だけグリースを塗布することができるので、グリース使用量の削減が図れる。
【符号の説明】
【0040】
1…ヘッドパイプ、2…ボールレース部、3…グリース、4…ボール、5…上ヘッド部、6…下ヘッド部、7…ボール供給手段、8…グリース圧送手段、9…ボール圧送手段、10…外筒部、11…内蔵部、12…溝部、13…ハンド部、14…シリンダ、15…スプリング、16…ボール保持部、17…弾性ストッパ、18…吐出口、20…ピストン、30…グリース硬化手段、31…冷風噴射口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の両端に形成された開口周縁部にグリース塗布とボール装着を行う組付装置であって、筒状部材両端を挟持する上ヘッド部及び下ヘッド部と、これらのヘッド部に所定数のボールを配列して保持するボール供給手段と、筒状部材両端の開口周縁部近傍に定量のグリースを各ヘッド部より吐出するグリース圧送手段と、このグリース圧送手段により吐出したグリースを前記ボール供給手段により配列保持されたボールで押し出すと共にこれらのボールとグリースを筒状部材両端の開口周縁部に装着するボール圧送手段を備えたことを特徴とする組付装置。
【請求項2】
請求項1記載の組付装置において、前記ボール圧送手段によりボールとグリースが筒状部材両端の開口周縁部に装着した後に、グリースに冷風を噴射してグリースを一時的に硬化させるグリース硬化手段を設けたことを特徴とする組付装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の組付装置において、前記上ヘッド部または前記下ヘッド部のいずれか一方を可動にしたことを特徴とする組付装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組付装置において、前記ボール供給手段は溝を形成したプレートにより所定数のボールを傾斜状態で保持することを特徴とする組付装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組付装置において、前記ボール圧送手段は前記ボール供給手段により配列保持された所定数のボールを一括圧送することを特徴とする組付装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の組付装置において、前記筒状部材の両端に形成された開口周縁部へのグリース塗布とボール装着を連続して一つの工程で行うことを特徴とする組付装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の組付装置において、前記筒状部材が自動二輪車のヘッドパイプであることを特徴とする組付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate