説明

組成物、カラーフィルタ、及びカラーフィルタの製造方法

【課題】カラーフィルタ等の着色層を有する光学部材の作製に有用な新規な組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、円盤状化合物と、顔料とを少なくとも含有することを特徴とする組成物である。式中、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ2価の連結基を表し;Xはn+2価の連結基を表し;R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ環残基を表し、nは1〜4の整数を表し、n個のL4及びR1は互いに同一でも異なっていてもよく;MGはメソゲン基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカラーフィルタ等、着色層を有する光学部材の製造に有用な組成物、ならびに位相差を示す着色層を有するカラーフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置(以下LCDと記す)には、通常、カラーフィルタが用いられ、それによってカラー表示が可能になっている。カラーフィルタは、通常、遮光性のブラックマトリックス(BM)と、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の着色層とを有する。カラーLCDでは、R、G及びB各着色層を通過する光の量を、液晶層及び偏光板によって制御することで、カラー表示が行われている。ところで、カラーフィルタの製造方法には、染色法、顔料分散法(レジスト法)、印刷法、及び電着法などが種々知られているが、近年は顔料分散法(レジスト法)が主流である。
【0003】
また、LCDには、通常、位相差フィルムも用いられる。この位相差フィルムは、LCDの視野角特性を改善するために用いられ、これを用いることにより、正面方向(表示面に対して法線方向)のみならず、斜め方向からも、画像を観察することができる。より具体的には、位相差フィルムには、黒表示時に、斜め方向に生じる光漏れを解消し、斜め方向におけるコントラストの低下や反転が生じるのを抑制する機能がある。特に、テレビ用途のLCDは、通常、複数の観察者によって様々な方向から観察されるので、この位相差フィルムの役割が重要である。
【0004】
例えば、垂直配向モード(一般にVA方式と呼ばれるもの)LCDでは、光軸が基板に垂直で負の複屈折性を有する位相差層(負のCプレート)と、光軸が基板に平行で正の複屈折性を有する位相差層(正のAプレート)とを組み合わせた方式が提案されている。これらの位相差層は延伸処理をした透明高分子フィルムや重合性基を有する液晶性化合物の配向を固定化したフィルムが用いられてきた。しかしながら、LCDがテレビに用いられ、大画面化するにつれて、表示特性に対する要求も高まり、より高品位であることが求められる。特に、斜めから観察した際の色味変化を軽減することが強く求められている。LCDでは、ある観察角度において、可視光領域全体にわたって理想的な光学補償を行うためには、波長ごとに光学補償に必要な位相差量に調整する必要がある。一方、光学補償に利用する位相差フィルムのレターデーションの波長依存性は、そのフィルムを構成する材料の特性によって決定されるが、LCDの理想的な光学補償において要求される位相差量の波長依存性と、位相差フィルムのレターデーションの波長依存性が、必ずしも一致せずに、異なる場合が少なくない。そのような場合は、通常は視感度の高い緑色(G)を基準として光学設計、即ち、Gで理想的な光学補償が達成できるように光学設計、をする場合が多い。そのような場合は、赤色(R)及び青色(B)では正確な光学補償を達成できず、黒表示時には、視野角が大きくなると、R及びBの光モレ量が多くなり、赤紫の画面として観察されることがある。
【0005】
例えば、特許文献1には、カラーフィルタの各着色層上に位相差制御層が積層されたカラーフィルタが開示されている。位相差制御層の厚みを着色層毎に変化させることで、各色の光毎の光学補償を理想に近づけることができるが、一方、着色層と位相差制御層との2層の積層体を、微細な領域に形成するのは困難であり、製造工程が煩雑になる。
単層で、着色層及び位相差層として機能する層が得られれば、製造を簡略化することができるが、顔料の分散組成物中に位相差を発現させる化合物を添加すると、顔料の分散安定性が損なわれたり、及び/又は添加剤の位相差発現能が損なわれることがある。
なお、画像形成材料の分散剤として、液晶性メソゲン基を有する分散剤が、特許文献2に開示されているが、当該特許文献には、位相差発現能のある化合物と当該分散剤との併用については記載されていない。
【特許文献1】特開2006−64858号公報
【特許文献2】特開2002−292264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、カラーフィルタ等の着色層を有する光学部材の作製に有用な新規な組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、着色した位相差層の形成に有用な新規な組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、位相差のある着色層を有するカラーフィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、円盤状化合物と、顔料とを少なくとも含有することを特徴とする組成物:
【化1】

式(1)中、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ2価の連結基を表し;Xはn+2価の連結基を表し;R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ環残基を表し、nは1〜4の整数を表し、n個のL4及びR1は互いに同一でも異なっていてもよく;MGはメソゲン基を表す。
【0008】
[2] 前記式(1)中、R1が炭素原子数3以上20未満のアルキル鎖、アルケニル鎖、又はアルキニル鎖を含むことを特徴とする[1]の組成物。
[3] 前記式(1)中、Xが下記式で表される3価の基であることを特徴とする[1]又は[2]の組成物:
【化2】

式中、X1は炭素原子数3以上20未満のアルキレン基であり、X2は酸素原子又は硫黄原子であり、*はL4との結合部位である。
【0009】
[4] 前記式(1)中、L1、L2、L3及びL4がそれぞれ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基、−CO−、−NH−、酸素原子、硫黄原子及びこれらを組み合わせてなる2価の基から選択されるいずれかであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの組成物。
[5] 前記式(1)中、L1が−CO−L11−又は−NH−L11−を表し、L3が−L31−NH−又は−L31−CO−を表し、L2が−L21−CONH−L22−又は−L21−NHCO−L22−を表し、L11、L31、L21、及びL22はそれぞれ、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基を表すことを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの組成物。
[6] 前記式(1)中、MGが下記式のいずれかで表されるメソゲン基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの組成物:
【化3】

前記式中、Lは置換基であり、rは0〜4の整数を表し、rは0、1又は2が好ましい。rが2のとき、2つのLは同じでも異なっていてもよい。
【0010】
[7] 前記円盤状化合物と前記式(1)中のMGが、等しい部分構造を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの組成物。
[8] 前記円盤状化合物が下記式(10)で表される化合物であり、及び前記式(1)中のMGが、下記式(1a)で表される基又は下記式(1a)を部分構造として含む基であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの組成物:
【化4】

式(10)中、R11、R12及びR13はそれぞれ置換基を表し、n11、n12及びn13はそれぞれ1〜4のいずれかの整数を表し、n11、n12及びn13個のR11、R12及びR13はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;
【化5】

式(1a)中、R2は置換基を表し、n2は0〜4の整数を表し、n2が2以上の場合は、R2は同一でも異なっていてもよく;*は、L2もしくはL3に結合する部位、又はMG中の他の部分構造と結合する部位を意味する。
【0011】
[9] 前記顔料が、カラーフィルタ用有機顔料であることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかの組成物からなる少なくとも一色の着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
[11] 前記着色層が、位相差を示すことを特徴とする[10]のカラーフィルタ。
[12] [1]〜[9]のいずれかの組成物を表面に塗布して塗膜とすること、該塗膜を乾燥して円盤状化合物の分子を配向させること、重合反応を進行させて該配向状態を固定すること、を含むカラーフィルタの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
1. 組成物
本発明は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、円盤状化合物と、顔料とを少なくとも含有することを特徴とする組成物に関する。下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを組成物中に添加することにより、円盤状化合物と顔料とを組成物中に併存させても、円盤状化合物の分子の配向性を損なうことなく、また顔料の分散性も良好に維持できる。本発明の組成物は、カラーフィルタ等の着色層を有する光学部材の製造に有用であり、さらに、円盤状化合物として固有複屈折が所望の波長分散性の材料を選択することにより、及び/又は、着色層の厚みを調整することにより、三原色のR、G及びBのそれぞれの光に対して、理想的な光学補償を達成可能なカラーフィルタを提供することができる。
以下、本発明の組成物に用いられる、各成分について説明する。
【0013】
1.−1 ポリマー
本発明の組成物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを含有する。該ポリマーは、顔料の分散剤として機能するとともに、円盤状化合物の分子の配向促進剤としても機能する。
【化6】

【0014】
前記式(1)中、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ2価の連結基を表し;Xはn+2価の連結基を表し;R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ環残基を表し、nは1〜4の整数を表し、n個のL4及びR1は互いに同一でも異なっていてもよく;MGはメソゲン基を表す。
【0015】
前記式(1)中、L1、L2、及びL3のそれぞれの例には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基、−CO−、−NH−、酸素原子、硫黄原子及びこれらを組み合わせてなる2価の基が含まれる。
1の好ましい例には、−CO−L11−及び−NH−L11−が含まれる。
3の好ましい例には、−L31−NH−及び−L31−CO−が含まれる。
2の好ましい例には、−L21−CONH−L22−及び−L21−NHCO−L22−が含まれる。
1、L2及びL3の好ましい組合せは、L1が−CO−L11−、L3が−L31−NH−及びL2が−L21−CONH−L22−;又は、L1が−NH−L11−、L3が−L31−CO−、及びL2が−L21−NHCO−L22−である。
【0016】
ここで、L11、L31、L21、及びL22はそれぞれ、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、又は置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基を表す。当該置換基の例には、以下の置換基が含まれる。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜30の直鎖、分岐の置換もしくは無置換のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換又は無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素原子数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素原子数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)、
【0017】
アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換又は無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素原子数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビシクロアルケニル基(置換又は無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素原子数5〜30の置換又は無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)、アルキニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基)、
【0018】
アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリール基、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは5又は6員の置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素原子数3〜30の5又は6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、
【0019】
シリルオキシ基(好ましくは、炭素原子数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0020】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアニリノ基、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基)、
【0021】
スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素原子数0〜30の置換又は無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、
【0022】
スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜30の置換又は無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のアルキルスルホニル基、炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、
【0023】
アシル基(好ましくはホルミル基、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイルベンゾイル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換又は無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、
【0024】
アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換又は無置換のアリールアゾ基、炭素原子数3〜30の置換又は無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換又は無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換又は無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)。
【0025】
上記の置換基の中で水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その具体例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0026】
11、L31、L21、及びL22がそれぞれ、置換アルキレン基を表す場合、当該置換基の好ましい例には、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が含まれる。また、L11、L31、L21、及びL22がそれぞれ、置換アリーレン基を表す場合、当該置換基の好ましい例には、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が含まれる。
また、L11、L31、L21、及びL22がそれぞれ、置換へテロ環残基を表す場合、当該置換基の好ましい例には、カルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基が含まれる。
【0027】
前記式(1)中、L4は2価の連結基を表し、好ましくはアルキレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環残基、−CO−、−NH−、酸素原子、硫黄原子及びこれらを組み合わせてなる基を表す。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基としてはL11などの置換基と同義である。L4の好ましい例には、−O−C(=O)−及び−C(=O)O−が含まれる。
【0028】
前記式(1)中、Xはn+2価の連結基を表し、3価又は4価の連結基が好ましく、より好ましくは3価の連結基である。3価の連結基としては以下の基が挙げられる。
【0029】
【化7】

【0030】
前記式中、炭素原子数3以上20未満のアルキレン基であり、X2は酸素原子又は硫黄原子であり、*印はL4との結合部位を表す。X1は炭素原子数4以上10未満のアルキレン基であるのが好ましい。
【0031】
前記式(1)中、R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ環残基を表す。置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、又はアリール基が好ましい。これらの基は置換基を有していてもよく、置換基の例には、L11などの置換基の例が含まれる。R1は、炭素原子数3以上20未満のアルキル鎖、アルケニル鎖、又はアルキニル鎖を含んでいるのが好ましい。例えば、R1が炭素原子数4以上16未満のアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基であるのが好ましく、及び炭素原子数4以上16未満のアルコキシ基(又はアルケニルオキシ基もしくはアルキニルオキシ基)、炭素原子数4以上16未満のアルコキシカルボニル基(又はアルケニルオキシカルボニル基もしくはアルキニルオキシ基)、又は炭素原子数4以上16未満のアルキルカルボニル基(又はアルケニルカルボニル基もしくはアルキニルカルボニル基)等で置換されたアリール基もしくはヘテロ環残基が好ましい。
【0032】
前記式(1)中、MGはメソゲン基を表す。「メソゲン」とは、液晶の基本骨格である。通常、液晶分子は硬い(rigid)部分構造と1以上の柔軟な(flexible)部分構造とからなる。この硬い部分構造が分子を配向させ、一方、柔軟な部分構造は液晶に流動性を与える。この硬い部分構造であって、液晶に不可欠な部分構造を「メソゲン」という。前記式(I)中のメソゲン基については特に制限はなく、種々の構造が利用できる。併用する円盤状化合物の構造に応じて、種々のメソゲン基から選択されるであろう。
前記メソゲン基の例には、以下のMG−Iで表されるメソゲン基が含まれる。
MG−I: −(A1−Z1m−A2−(Z3−A3l
式中、A1及びA3はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−フェニレン基の1個もしくは2個以上のCH基がNにより置き換えられたヘテロ環基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基の1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基がO及び/又はSにより置き換えられていてもよいへテロ環基、1,4−シクロヘキセニレン基、又はナフタレン−2,6−ジイル基である。
式中、A2はフェニレン基、フェニレン基の1個もしくは2個以上のCH基がNにより置き換えられたヘテロ環基、シクロヘキシレン基、シクロヘキシレン基の1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基がO及び/又はSにより置き換えられていてもよいへテロ環基、窒素原子を含んでなる五員環のヘテロ環基、シクロヘキセニレン基、又はナフタレンジイル基である。これらの基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、L11等の置換基の例と同様である。
【0033】
1及びZ3はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、2価の五員環ヘテロ環残基、又は単結合であり、m及びlは、0、1又は2であり、1又は2が好ましく、より好ましくは1である。
1及びZ2が、−COO−、−OCO−、−CH2−CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、2価の五員環ヘテロ環残基、又は単結合である化合物が特に好ましい。
【0034】
MG−Iで表わされるメソゲン基の例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
前記式中、rは0〜4の整数を表し、rは0、1又は2が好ましい。rが2のとき、2つのLは同じでも異なっていてもよい。
前記式中、Lは置換基である。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、炭素原子数が1〜5のアルキル基、炭素原子数が1〜5のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜5のアルコキシ基、炭素原子数が1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数が1〜5のアシル基、炭素原子数が2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル、炭素原子数が2〜6のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数が2〜6のアミド基が含まれる。より好ましくはハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜3のアルキル基、炭素原子数が1〜3のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基、炭素原子数が2〜4のアシルオキシ基である。
Lは好ましくは、F、Cl、Br、CN、NO2、CH3、C25、OCH3、OC25、COCH3、COC25、CF3、OCF3、OCHF2、及びOC25;より好ましくは、F、Br、Cl、CN、CH3、C25、OCH3、COCH3及びOCF3;よりさらに好ましくは、F、Br、CH3、OCH3及びCOCH3である。
【0038】
rは0〜4の整数を表し、rは0、1又は2が好ましい。rが2のとき、2つのLは同じでも異なっていてもよい。
【0039】
また、前記メソゲン基の例には、下記式(1a)で表される部分構造を含むメソゲン基が含まれる。下記式(1a)で表される部分構造を含むメソゲン基を有するポリマーは、後述する一般式(10)で表される円盤状化合物と併用するのが好ましい。
【化10】

【0040】
式(1a)中、R2は置換基を表し、n2は0〜4の整数を表し、n2が2以上の場合は、R2は同一でも異なっていてもよく;*は、L2もしくはL3に結合する部位、又はMG中の他の部分構造と結合する部位を意味する。
【0041】
2で表される置換基の例は、上記したL11の置換基の例と同様である。中でも、n2が0で無置換であるか、又はn2が1または2で、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜3のアルキル基、炭素原子数が1〜3のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基、炭素原子数が2〜4のアシルオキシ基から選択される置換基で置換されているのが好ましい。
【0042】
前記一般式(1a)で表される部分構造を有するメソゲン基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記式中の記号については、式(1a)中のそれぞれと同義である。
【化11】

【0043】
前記ポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても、前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。重合度については特に制限はないが、顔料に対して分散剤として機能するとともに、円盤状化合物の配向を促進させるためには、平均分子量が5000以上10万以下のポリマーであるのが好ましい。重合度は、GPCでの保持時間を測定し標準物質を用いてポリスチレン換算で算出することができる。
【0044】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、既知の方法で製造することができる。
【0045】
1.−2 円盤状化合物
本発明の組成物は、円盤状化合物の少なくとも1種を含有する。円盤状化合物は液晶性化合物であるのが好ましい。円盤状液晶化合物について特に制限はない。種々の円盤状化合物、好ましくは円盤状液晶化合物から選択することができる。円盤状液晶化合物の例には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物が含まれる。円盤状液晶化合物の例には、前記置換基を有するトリフェニレン化合物、三置換ベンゼン化合物、6置換ベンセン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
【0046】
本発明の組成物から形成される着色層の一例は、負のCプレートとして機能する着色層である。負のCプレートは、面内レターデーションReがおおよそ0nmであり、厚み方向のレターデーションRthが0〜350nm程度である。かかる特性の着色層の形成には、下記式(10)で表される円盤状化合物を利用するのが、少量で所望の光学特性を発現する点で好ましい。上記した通り、下記式(10)で表される円盤状化合物は、上記式(1a)で表される部分構造をメソゲン基MG中に有するポリマーと併用するのが好ましい。
【0047】
【化12】

【0048】
式(10)中、R11、R12及びR13はそれぞれ置換基を表し、n11、n12及びn13はそれぞれ1〜4のいずれかの整数を表し、n11、n12及びn13個のR11、R12及びR13はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0049】
11、R12及びR13がそれぞれ表す置換基の例は、上記L11等の置換基の例と同様である。置換基の例には、下記式で表される置換基が含まれる。
*−Ra−Rb−Rc
式中、*はフェニル基に結合する部位である。
aは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−又は−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−又は−CH2−である。
【0050】
bは、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの2個以上を連結して形成される基から選択される2価の連結基である。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、他の置換基に置き換えられていてもよい。他の置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキル基で置換されたカルバモイル基及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が含まれる。特に、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0051】
bは、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群から選ばれる基であることが好ましい。Rbは、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、Rbは−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがより好ましい。
【0052】
cは重合性基又は水素原子である。Rcが重合性基であると、位相差の大きさが熱により変化しないので好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0053】
【化13】

【0054】
【化14】

【0055】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基又は開環重合性基が好ましい。
【0056】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0057】
【化15】

【0058】
式(M−3)、式(M−4)中、Rは水素原子又はアルキル基を表す。Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。上記(M−1)〜(M−6)の中でも、(M−1)又は(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0059】
開環重合性基として好ましいのは、環状エーテル基であり、中でもエポキシ基又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が最も好ましい。
【0060】
以下に、前記一般式(10)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0061】
【化16】

【0062】
【化17】

【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

【0065】
1.−3 顔料
本発明の組成物は、顔料の少なくとも1種を含有する。有機顔料であっても無機顔料であってもよい。カラーフィルタの製造に用いられる組成物の調製には、カラーフィルタ用有機顔料が用いられるであろう。カラーフィルタ用有機顔料の例には、特開2004−339368号公報の段落番号[0071]から段落番号[0073]に記載の顔料が含まれる。
【0066】
1.−4 組成物の調製
本発明の組成物は、前記ポリマー、円盤状化合物、及び顔料をそれぞれ、有機溶媒に分散及び/又は溶解して、液状の組成物として調製することができる。一例は、顔料が有機溶媒中に分散している顔料分散液に、円盤状化合物及びポリマーが溶解している液状組成物である。この態様の組成物を表面に塗布して、乾燥により溶媒を除去すると、円盤状化合物の分子は、所定の配向状態になる。その配向状態を重合反応などを利用して固定することで、位相差のある着色層を形成することができる。前記組成物(但し、溶媒を除いた固形分)中、ポリマーの含有量は、5〜20質量%程度が好ましく、円盤状化合物の含有量は5〜20質量%程度が好ましく、顔料は5〜30質量%程度であるのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0067】
有機溶媒中に顔料を分散させて顔料分散組成物を調製するためには、サンドミル等を利用して、分散処理を施すのが好ましい。
【0068】
前記組成物の調製に利用可能な有機溶媒については特に制限はない。種々の有機溶剤から選択することができる。具体的には、以下に示すような各有機溶剤であって、含水率の少ないものが好適に用いられる。その例には、シクロヘキサン、酢酸ブチル、酢酸エチル、2−ブタノン(MEK)、MIBK、トルエン、キシレン、メトキシブチルアセテート(MBA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが含まれる。特に、インクジェット方式を利用して着色層を形成する態様では、ヘッドからの吐出性を向上させるために、沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で、且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下、特に0.1mmHg以下の溶剤成分を主溶剤として用いることが好ましい。主溶剤の表面張力は29dyn/cm以上であることが好ましく、かかる溶剤を有機溶剤全量の85質量%以上用いることが好ましい。
【0069】
1.−5 その他の添加剤
本発明の組成物は円盤状化合物の分子を配向させた後、重合反応によってその配向を固定化するために必要な添加剤を含有していてもよい。即ち、円盤状化合物の配向に必要な添加剤、重合反応によって配向を固定化するために必要な添加剤を適宜添加してよい。また、顔料を分散するために必要な添加剤も適宜添加してよい。以下にこれらの添加剤について説明する。
・ 円盤状化合物の配向に寄与する添加剤
円盤状化合物は、必要とされる位相差に応じて、所望の配向状態に配向させる。例えば、VAモードLCDの光学補償には、光軸が層面に対して垂直で、負の複屈折性を有する位相差層(負のCプレート)と、光軸が層面に対して平行で正の複屈折性を有する位相差層(正のAプレート)とを組み合わせた方式が提案されている。例えば、本発明の組成物を利用して、負のCプレートとして機能する着色層を有するカラーフィルタを作製する態様では、円盤状化合物の分子をホメオトロピック配向させるのが好ましい。円盤状化合物の分子の配向を促進する添加剤は、空気界面あるいは配向膜界面においてその排除体積効果や静電気的な効果によって液晶性化合物の分子を配向させるのに寄与する。特開2002−20363号公報、特開2002−129162号公報に記載されている化合物を用いることができる。また、特開2004−53981号明細書の段落番号[0072]〜[0075]、特開2004−4688号明細書の段落番号[0071]〜[0078]、特開2004−139015号明細書の段落番号[0052]〜[0054]、[0065]〜[0066]、[0092]〜[0094]に記載される事項も本発明に適宜適用することができる。
配向を促進する添加剤の組成物中における含有量は、円盤状化合物に対し0.01〜10質量%程度であるのが好ましく、0.05〜5質量%程度であるのがより好ましく、0.05〜4質量%程度であるのが更に好ましい。
【0070】
・ 重合反応の進行に寄与する添加剤
位相差の発現のために組成物中の円盤状化合物の分子を配向させた後、その配向状態を固定するのが好ましい。配向状態の固定には、重合反応を利用することができる。重合反応としては光照射による光重合系と熱による熱重合系があるが、初期配向を固定化するためには光重合を利用するのが好ましい。例えば、カラーフィルタの作製では、ベーク処理が施されるのが一般的であるが、このベーク処理時に熱による重合も進行するであろう。重合反応の進行に寄与する添加剤としては以下のものが挙げられる。
光重合開始剤:
使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、組成物の固形分の0.01〜50質量%であることが好ましく、0.5〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0071】
中でも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、及び、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、少量でも活性エネルギー線の照射による重合反応を開始し促進するので、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。これらは市販品にも存在し、例えば、チバスペシャルティケミカルズ(株)のイルガキュアー(Irgacure)184、369、819、907等を用いることができる。
【0072】
連鎖移動剤:
本発明の組成物中には、連鎖移動剤を添加してもよい。組成物中における連鎖移動剤の含有量は、円盤状化合物に対し、0.01〜10質量%程度であるのが好ましく、0.05〜5質量%程度であるのがより好ましく、0.05〜4質量%程度であるのが更に好ましい。具体的な連鎖移動剤としては一般に知られているものが用いることができるが、好ましくはメルカプト基を有する化合物(チオール化合物、例えばドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトプロピオネート)など)やジスルフィド化合物(例えばジフェニルジスルフィドなど)である。
円盤状化合物との相溶性も必要であり、円盤状化合物が液晶性化合物である場合は、相溶性の観点から液晶性を示すチオール化合物がより好ましい。液晶性を示すチオール化合物としては、米国特許6096241号に記載の化合物などが挙げられる。
【0073】
重合性モノマー:
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性もしくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の円盤状化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、円盤状化合物に対して一般に1〜50質量%程度の範囲にあり、1〜30質量%程度の範囲にあることが好ましい。
【0074】
・ 顔料の分散安定性に寄与する添加剤
本発明の組成物には、顔料の分散安定性に寄与する添加剤を添加してもよい。当該添加剤の例には、各種界面活性剤が含まれる。更に、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用すると分散安定性をさらに向上させることができる。界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類;ポリエチレンイミン類を挙げることができる。
【0075】
界面活性剤の商品名としては、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(以上、旭硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0076】
また、本発明の目的と効果を損なわない質的及び量的範囲内で、他の顔料分散剤を添加してもよい。
使用可能な分散剤として具体例には、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0077】
さらに、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0078】
また、分散剤の市販品として、シゲノックス−105(商品名、ハッコールケミカル社製)Disperbyk−101、同−130、同−140、同−160、同−161、同−162、同−163、同−164、同−165、同−166、同−170、同−171、同−182、同−2001(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、EFKA−47、同−47EA、同−48、同−49、同−100、同−400、同−450(以上、EFKA CHEMICALS社製)、ソルスパース 12000、同13240、同13940、同17000、同20000、同24000GR、同24000SC、同27000、同28000、同33500(以上、ゼネカ(株)製)、PB711、同821、同822(以上、味の素(株)製)等を挙げることができる。
【0079】
・ その他の添加剤
本発明の組成物には、界面活性剤、ポリマー等を、塗工膜の均一性、膜の強度、円盤状化合物の配向性の向上等を目的として添加してもよい。これらの材料は、併用する円盤状化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。また、顔料の分散性を損なわないことが好ましい。
【0080】
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0081】
円盤状化合物とともに使用するポリマー(ここでは、前記式(1)の繰り返し単位を有するポリマー以外のポリマーをいう)は、塗布液を増粘できることが好ましい。ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。円盤状化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、円盤状化合物に対して0.1〜10質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%程度の範囲にあることがより好ましい。
【0082】
本発明の組成物は、さらに必要に応じて、紫外線遮断剤、紫外線吸収剤、表面調整剤(レベリング剤)、或いは、その他の成分を含有していてもよい。
【0083】
2. カラーフィルタ
本発明は、本発明の組成物からなる少なくとも一色の着色層を有することを特徴とするカラーフィルタにも関する。カラーフィルタは、通常、基板上に、遮光性のブラックマトリックス、及び当該ブラックマトリックスで隔てられた微細の領域に、赤色(R)層、緑色(G)層、及び青色(B)層を有する。本発明のカラーフィルタは、R、G雄及びB層のいずれか一色の着色層が、本発明の組成物からなる着色層であればよい。勿論、R、G及びB層のいずれも、本発明の組成物からなる着色層であってもよい。本発明の組成物には、所定のポリマーが添加されているので、顔料の分散性が良好であるとともに、円盤状化合物の分子の配向性も良好である。円盤状化合物の分子の配向を利用することで所望の光学特性を示すとともに、コントラストの高い着色層となる。本発明の組成物を利用することで、コントラストが1000以上の着色層を形成できる。
【0084】
本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態は、本発明の組成物を表面に塗布して塗膜とすること、該塗膜を乾燥して円盤状化合物の分子を配向させること、重合反応を進行させて該配向状態を固定すること、を含む製造方法である。以下に、インクジェットを利用した本実施形態の製造方法について説明する。
【0085】
まず、本発明の組成物を顔料分散組成物として調製する。
次に、カラーフィルタ基板を準備する。このカラーフィルタ基板は、透明基板であるのが好ましく、従来カラーフィルタ基板として用いられているものはいずれも利用することができる。例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可とう性のない透明なリジット材;及び透明ポリマーフィルム、光学用樹脂板等の可とう性を有する透明なフレキシブル材;を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性及び高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。また、通常、透明基板が用いられるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止やガスバリア性付与その他の目的で表面処理を施したものを用いてもよい。
【0086】
次に、基板の一面側の画素部間の境界となる領域に、ブラックマトリックス層を形成する。ブラックマトリックス層は、スパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成することができる。このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0087】
また、ブラックマトリックス層は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた層であってもよい。用いられる樹脂バインダーとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種又は2種以上混合したものや、光硬化性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製ブラックマトリックス層の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このような樹脂製ブラックマトリックス層のパターニングの方法としては、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0088】
なお、円盤状化合物の分子を配向させるために、配向膜が必要な場合もある。当該配向膜は、ブラックマトリックス形成後に基板上に形成してもよいし、ブラックマトリックス形成前に基板上に形成してもよい。配向膜の材料としては特に限定はないが、カラーフィルタ形成工程での耐熱性の点からポリイミドを用いるのが好ましい。円盤状化合物の分子の配向方式によっては、ラビングあるいは光照射などによる配向処理を施してもよい。配向膜は特にパターニングの必要がなければスピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法又はロールコーティング法など通常の塗布方式を利用して形成することができる。
【0089】
なお、顔料分散組成物をインクジェット方式により、基板面に吹き付けて着色層を形成するが、正確に吐出を行うために、特開2001−350012号公報、特開2005−266629号公報、特開2006−64858号公報等の各公報に記載の方法を利用することができる。
【0090】
次に、R、G又はBの顔料が配合された各色の顔料分散組成物(少なくとも1色の組成物は本発明の組成物である)を用意する。そして、基板の表面に、ブラックマトリックス層のパターンにより隔てられているR、G及びBの各色の画素部形成領域に、対応する色の顔料分散物であるインクをインクジェット方式により吹き付けて、R、G及びBの着色層をそれぞれ形成する。例えば、モザイク型、ストライプ型、トライアングル型、4画素配置型等の所望の形態で配列されたR、G及びBの着色層が形成される。この工程において、本発明の顔料分散組成物からなるインクは、ヘッドの先端部で粘度増大を起こし難く、良好な吐出性を維持し続けることができる。従って、所定の画素部形成領域内に、対応する色のインクを正確に、且つ、均一に付着させることができ、正確なパターンで色ムラや色抜けのない画素部を形成することができる。また、各色の画素部形成用インクを、複数のヘッドを使って同時に基板上に吹き付けることもできるので、印刷等の方法で各色ごとに画素部を形成する場合と比べて作業効率を向上させることができる。さらに、本発明に係る顔料分散組成物を用いたインクの安定性は上述のように高いので、一旦使用に供して残ったインクの残液は、短時間の作業ではまだ劣化していない。従って、そのような残液を回収したり或いは新鮮なインクを注ぎ足すなどして再使用することが可能であり、経済的である。
【0091】
次に、各色のインク層、R層、G層、及びB層のそれぞれ、を乾燥し必要に応じてプリベークした後、加熱することにより液晶性化合物を配向させる。配向が完了した後に光照射して配向を固定化する。ついでインク層を加熱すると、残存する重合性基が反応してインク層が硬化する。画素部の厚さは、光学特性等を考慮して、通常は0.1〜2.0μm程度とする。
【0092】
液晶化合物の配向は液晶相を示す温度で行うことが必要である。一般的には温度の高いほうが配向しやすいとされているが、本発明では配向状態を固定化するために重合性基を有する液晶性化合物を好適に用いるため、あまり高い温度では熱的に重合反応が進行してしまい、均一な配向状態で固定化できなくなってしまう。顔料分散組成物から溶媒が揮発した状態において、180℃以下で液晶相を示すことが好ましく、更には160℃以下がより好ましい。均一な配向状態を得るためには、一定の温度で保持したり、あるいはある温度から下げたり、あるいはある温度から上げたりと顔料分散組成物に応じて適宜選択して実施することが好ましい。
液晶化合物の重合による配向固定化のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、100〜10J/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、適宜増感剤を用いても良い。配向状態を固定化する目的で行うので、配向状態を維持できる温度で光照射を行うことが好ましい。
【0093】
次に、透明基板の画素部、R画素、G画素、及びB画素を形成した側に、保護膜を形成する。保護膜の厚みは、使用される材料の光透過率、カラーフィルタの表面状態等を考慮して設定することができ、例えば、0.1〜2.0μmの範囲で設定することができる。保護膜は、例えば、公知の透明光硬化性樹脂、二液硬化型透明樹脂等の中から、透明保護膜として要求される光透過率等を有するものを用いて保護膜用塗工液を調製し、スピンコーターにより500〜1500回転/分の範囲内で塗工することにより形成できる。
【0094】
保護膜上の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)等、及びそれらの合金等を用いて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法等の一般的な方法により形成され、必要に応じてフォトレジストを用いたエッチング又は治具の使用により所定のパターンとしたものである。この透明電極の厚みは20〜500nm程度、好ましくは100〜300nm程度とすることできる。
【0095】
透明電極上に柱状スペーサーを形成する場合には、上記顔料分散法を用いた場合と同様に形成することができる。
【0096】
このようにして、本発明に係る顔料分散組成物を用いてインクジェット方式によりカラーフィルタが製造される。
【0097】
本発明の構成要件で作製されたカラーフィルタは位相差を有するが、LCDの駆動方式や使用するほかの位相差板によってカラーフィルタでの最適な位相差は変わってくる。また、R、G、Bによっても最適な位相差は変わってくる。したがって、本発明のカラーフィルタでは使用する状況に応じて、液晶性化合物の種類を変えたり、添加量を変えたり、組成を変えることで発現する位相差を任意に制御することが出来る。
【実施例】
【0098】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[実施例1 ポリマーの合成]
1. ポリマー1の合成
以下の合成ルートで、下記ポリマー1を合成した。
【0099】
【化20】

【0100】
【化21】

【0101】
上記合成ルートにより、既知の反応を利用して1Aを出発原料として、1Cを得た。
また、上記合成ルートにより、既知の反応を利用して1Dを出発原料として、1Gを得た。
攪拌機、窒素導入口、温度計、および原料導入口を供えた100mLの4つ口フラスコに、1G 15.8g(40mmol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)52gに溶解した。ここに、1C 10g(20mmol)を加え、6時間攪拌した。この溶液中の重合体の重量平均分子量をポリスチレン標準のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(カラム:Shodex GF−7MHQ、溶媒:DMF、流量:0.5ml/min、測定温度:50℃)で測定したところ、5.7万であった。
【0102】
2. ポリマー2の合成
ポリマー1と同様な方法にて、下記のポリマー2を合成した。
【化22】

【0103】
この重合体の重量平均分子量は4.6万であった。
【0104】
[実施例2:緑色着色層の作製]
1. 緑色着色層形成層用組成物1の調製
以下の組成の、緑色着色層形成用組成物1を調製した。
・液晶化合物:下記構造の液晶化合物A 20質量部
・ポリマー:実施例1で合成したポリマー1 30質量部
・第1重合開始剤:Irg907(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)および第2重合開始剤:Irg306(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)
10質量部
・増感剤:ハイキュアABP(川口薬品(株)製) 0.6質量部
・顔料:PG36/PG7/PY138の分散液(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、固形分30%) 200質量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 350質量部
【0105】
【化23】

【0106】
2.着色層の形成
透明基板として、厚さ0.63mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)上に、上記緑色着色層形成用組成物1を塗布し、ホットプレートで加熱し、乾燥させた。その後、露光した後、現像し、焼成して緑色着色層を形成した。得られた着色層のサンプルのレターデーションを、波長545nmで測定したところ、Re(545)はほぼ0nmであり、Rth(545)は35nmであった。
また、この着色層のコントラストは2500であった。
【0107】
[実施例3:着色層の作製]
1. 分散液Aの調製
微細顔料化されたFASTOGEN GREEN 2YK(大日本インキ株式会社製)の100質量部に、実施例1で合成したポリマー2の40質量部、及び溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを326質量部配合し、0.4mmφジルコニアビーズを充填率20%で用いてペイントシェーカーにて3時間の分散処理を行い、分散液Aを466質量部調製した。
【0108】
2. 緑色着色層形成用組成物2の調製
以下の組成の緑色着色層形成用組成物2を調製した。
・液晶化合物:上記液晶化合物A 20質量部
・ポリマー:実施例1で合成したポリマー2 13質量部
・第1重合開始剤:Irg907(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)および第2重合開始剤:Irg306(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)
10質量部
・増感剤:ハイキュアABP(川口薬品(株)製) 0.6質量部
・顔料:上記調製した分散液A(溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、固形分30%) 200質量部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 350質量部
【0109】
3.着色層の形成
透明基板として、厚さ0.63mmのガラス基板(コーニング社製1737ガラス)上に、上記緑色着色層形成用組成物2を塗布し、ホットプレートで加熱し、乾燥させた。その後、露光した後、現像し、焼成して緑色着色層を形成した。得られたサンプルのレターデーションを、波長545nmで測定したところ、Re(545)はほぼ0であり、Rth(545)は49nmであった。
また、この着色層のコントラストは3000であった。
【0110】
[比較例1:着色層の作製]
1. 分散剤の合成
特開平10−339949号公報の段落番号[0054]〜[0055]に記載の方法に従って、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリルアミドと末端にメタクリロイル基を有するポリメタクリレートを合成し、これを分散剤として用いた。
【0111】
2. 分散液Bの調製
実施例3において、実施例1で合成したポリマー2の代わりに、上記合成したポリマーを用いた以外は、実施例3の分散液Aの調製方法と同様にして、分散液Bを調製した。
【0112】
3. 緑色着色層形成用組成物3の調製
実施例3の緑色着色層形成用組成物2の調製において、分散液Aの代わりに、上記調製した分散液Bを使用し、及び実施例1で合成したポリマー2の代わりに、上記合成したポリマーを用いた以外は、緑色着色層形成用組成物2の調製方法と同様にして、緑色着色層形成用組成物3を調製した。
【0113】
4. 着色層の形成
実施例3において使用した緑色着色層形成用組成物2の代わりに、上記調製した緑色着色層形成用組成物3を使用した以外は、実施例3と同様にして、塗膜を形成した。次いで、温度90℃で加熱しながら、この塗膜を偏光顕微鏡下で観察したところ、塗膜中の液晶分子は均一な配向をせずに、シュリーレンは消失しなかった。次いで露光して着色層を得た。
得られた着色層のサンプルのコントラストは100程度であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、円盤状化合物と、顔料とを少なくとも含有することを特徴とする組成物:
【化1】

式(1)中、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ2価の連結基を表し;Xはn+2価の連結基を表し;R1は置換もしくは無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、又はヘテロ環残基を表し、nは1〜4の整数を表し、n個のL4及びR1は互いに同一でも異なっていてもよく;MGはメソゲン基を表す。
【請求項2】
前記式(1)中、R1が炭素原子数3以上20未満のアルキル鎖、アルケニル鎖、又はアルキニル鎖を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、Xが下記式で表される3価の基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物:
【化2】

式中、X1は炭素原子数3以上20未満のアルキレン基であり、X2は酸素原子又は硫黄原子であり、*はL4との結合部位である。
【請求項4】
前記式(1)中、L1、L2、L3及びL4がそれぞれ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基、−CO−、−NH−、酸素原子、硫黄原子及びこれらを組み合わせてなる2価の基から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(1)中、L1が−CO−L11−又は−NH−L11−を表し、L3が−L31−NH−又は−L31−CO−を表し、L2が−L21−CONH−L22−又は−L21−NHCO−L22−を表し、L11、L31、L21、及びL22はそれぞれ、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の2価のヘテロ環残基を表すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(1)中、MGが下記式のいずれかで表されるメソゲン基であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物:
【化3】

前記式中、Lは置換基であり、rは0〜4の整数を表し、rは0、1又は2が好ましい。rが2のとき、2つのLは同じでも異なっていてもよい。
【請求項7】
前記円盤状化合物と前記式(1)中のMGが、等しい部分構造を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記円盤状化合物が下記式(10)で表される化合物であり、及び前記式(1)中のMGが、下記式(1a)で表される基又は下記式(1a)を部分構造として含む基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物:
【化4】

式(10)中、R11、R12及びR13はそれぞれ置換基を表し、n11、n12及びn13はそれぞれ1〜4のいずれかの整数を表し、n11、n12及びn13個のR11、R12及びR13はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;
【化5】

式(1a)中、R2は置換基を表し、n2は0〜4の整数を表し、n2が2以上の場合は、R2は同一でも異なっていてもよく;*は、L2もしくはL3に結合する部位、又はMG中の他の部分構造と結合する部位を意味する。
【請求項9】
前記顔料が、カラーフィルタ用有機顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物からなる少なくとも一色の着色層を有することを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項11】
前記着色層が、位相差を示すことを特徴とする請求項10に記載のカラーフィルタ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物を表面に塗布して塗膜とすること、該塗膜を乾燥して円盤状化合物の分子を配向させること、重合反応を進行させて該配向状態を固定すること、を含むカラーフィルタの製造方法。

【公開番号】特開2010−70709(P2010−70709A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242218(P2008−242218)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】