説明

組立ロボットとその制御方法

【課題】画像センサを用いずに、ワークと中間部材の嵌合状態を判断することができる組立ロボットとその制御方法を提供する。
【解決手段】外力を計測する力センサを有しワークを把持するロボットハンドと(S1)、ロボットハンドを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能なロボットアームと、ロボットアームを制御しワークに嵌合された中間部材を対象物に嵌合させる組立作業を実行するロボット制御装置とを備える(S2)。ロボット制御装置により、組立作業中のワークの位置と計測された外力から組立作業の成功又は失敗を判断し(S3)、組立作業が失敗であるときに、ワークを組立作業前の位置へ戻し(S4)、次いで、中間部材が嵌合不能な固定部材5に対して固定部材を仮想的に対象物とみなして組立作業を再実行し(S5)、再実行中のワークの位置と計測された外力からワークと中間部材の嵌合状態を判断する(S6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間部材を介してワークを対象物に組み付ける組立ロボットとその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの手先に取り付けた力覚センサ、あるいはロボット関節のトルクから作業にかかる力やモーメントを計測し、これに応じて手先の位置や速度を変化させるのが「力制御」である。
力制御は、例えば精密部品の嵌め合い作業などに用いられる。力制御における調整パラメータは、仮想ばね、仮想ダンパ、仮想マスなどである。
【0003】
ロボットによりワークを対象物に組み付ける際に力制御を用いることは、例えば、特許文献1〜6に開示されている。
【0004】
特許文献1は、作業中にかかる力などから失敗を検知するものである。
特許文献2は、作業に失敗した仕掛部品を画像センサで認識し、撤去することで稼動を停止することなく動作を継続するものである。
特許文献3は、失敗後に、画像センサを用いた部品の位置・姿勢の認識結果に基づき、作業手順を再計画し直すものである。
【0005】
特許文献4は、複数の工程で使われる物品の対応を記憶し、各行程において物品と関連付けて自動処理を実行するものである。
特許文献5は、内力管理制御により、強度が弱い部材であっても把持力を最適化して破損や変形を防ぎ、他の部材に組付けするものである。
特許文献6は、ワークをそのワーク座標の原点が目標粗位置まで移動するように各アクチュエータを位置制御した後、作業座標系をもとに組み付け位置にワークをローリング、ピッチング、ヨーイング方向に位置・力制御しながらワークを組み立てるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3366248号公報、「ロボットの制御方法および装置」
【特許文献2】特開2009−782号公報、「ロボット制御システムおよびロボットハンド」
【特許文献3】特開平7−152420号公報、「ロボットによる組み立て装置」
【特許文献4】特許第2547899号公報、「自動装置の制御方法及び制御装置」
【特許文献5】特開2009−279678号公報、「自動組立装置、自動組立方法、ならびに表示装置」
【特許文献6】特開平9−128023号公報、「ワークの組立方法及びその装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3は、失敗後に再度作業そのものを試みる手段を提案しているが、それ以外の特許文献1及び特許文献2は、失敗後の再試行に関してなんら開示していない。
【0008】
特許文献3の手段では、各部品の目標状態や組立作業中の所定時点での部品のあるべき位置姿勢、作業手順などをすべて洗い出して記憶しておくことで、作業手順を計画し直して組立作業を継続できる。
しかし、この手段は、事前に準備しておくべき情報が非常に多く、複雑である。特に、力制御を要するほど精密な組立作業においては、微小な状況の異なりをすべて別の事象と判断する必要があり、作業に影響がある微小な部品の状態や位置姿勢を正確に判断するには高分解能・高精度な計測が可能な画像センサと画像認識処理が必要となる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、画像センサを用いて画像認識処理をすることなく、中間部材を介してワークを対象物に組み付ける組立作業を実行し、該組立作業の成功又は失敗を判断し、該組立作業が失敗であるときに、ワークと中間部材の嵌合状態を判断することができる組立ロボットとその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、外力を計測する力センサを有しワークを把持するロボットハンドと、
該ロボットハンドを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能なロボットアームと、
前記ロボットアームを制御し、中間部材を介して前記ワークを対象物に組み付ける組立作業を実行するロボット制御装置とを備え、
該ロボット制御装置により、前記組立作業中のワークの位置と計測された外力から前記組立作業の成功又は失敗を判断し、
前記組立作業が失敗であるときに、前記ワークを前記組立作業前の位置へ戻し、
次いで、前記中間部材が嵌合不能な固定部材に対して、該固定部材を仮想的に前記対象物とみなして前記組立作業を再実行し、
該再実行中のワークの位置と計測された外力から、前記ワークと中間部材の嵌合状態を判断する、ことを特徴とする組立ロボットが提供される。
【0011】
また本発明によれば、外力を計測する力センサを有しワークを把持するロボットハンドと、
該ロボットハンドを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能なロボットアームと、を備え、
(A)前記ロボットアームを制御し、中間部材を介して前記ワークを対象物に組み付ける組立作業を実行し、
(B)前記組立作業中のワークの位置と計測された外力から前記組立作業の成功又は失敗を判断し、
(C)前記組立作業が失敗であるときに、前記ワークを前記組立作業前の位置へ戻し、
(D)次いで、前記中間部材が嵌合不能な固定部材に対して、該固定部材を仮想的に前記対象物とみなして前記組立作業を再実行し、
(E)該再実行中のワークの位置と計測された外力から、前記ワークと中間部材の嵌合状態を判断する、ことを特徴とする組立ロボットの制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の装置及び方法によれば、力センサを有するロボットハンド、ロボットアーム、及びロボット制御装置により、ワーク又は対象物に予め嵌合されている中間部材を介してワークを対象物に組み付ける組立作業を実行することができる。
また、組立作業中のワークの位置と計測された外力から組立作業の成功又は失敗を判断することができる。
【0013】
さらに、組立作業が失敗であるとき、すなわち異常検出時に、ロボットハンドが把持するワークを組立作業前の位置へ戻し、別の場所で前記中間部材が嵌合不能な固定部材に力制御で組立作業を再実行することで、再実行中のワークの位置と計測された外力から、中間部材の嵌合状態、すなわちワークから外れうる中間部材の有無を判断することができる。
【0014】
また、この組立動作中に、ワークに中間部材が正しく嵌合された場合は中間部材が再度理想的な位置(正規の位置)に戻っているため、そのまま組立作業を再試行できる。また、中間部材がワークに正しく嵌合されなかった場合は、中間部材を理想的な位置(正規の位置)に戻せないので、前記ワークを用いた組立作業の継続は困難と判断し、中間部材が正しく嵌合された新しいワークを用いて組立作業が行なえる。
【0015】
従ってこの判断により、組立失敗時の(1)中間部材の有無検出、(2)中間部材の健全性のチェックとその健全化、(3)中間部材の健全化失敗時の新しい部品利用の判断と動作、(4)装置の稼動停止防止、等ができる効果が得られる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による組立ロボットの実施形態図である。
【図2】組立対象物品の例を示す図である。
【図3】本発明による制御方法のフローチャートである。
【図4】正常にワークが組み立てられた状態を示す図である。
【図5】組立中に異常を検出して停止した状態を示す図である。
【図6】ワークから外れかかった中間部材を、中間部材が嵌合不能な固定部材によりワークに嵌合させる動作の説明図である。
【図7】固定部材を用いて中間部材がワークから外れていることを検出する動作の説明図である。
【図8】ワークと固定部材との相対位置と、ワークと中間部材の嵌合状態との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明による組立ロボットの実施形態図である。
この図において、組立ロボット10は、中間部材3を介してワーク1を対象物2に組み付ける自動装置であり、ロボットハンド12、ロボットアーム16、及びロボット制御装置20を備える。
【0019】
この例において、中間部材3は、ワーク1に予め嵌合されており、中間部材3を対象物2に嵌合させてワーク1を対象物2に組み付けるようになっている。
なお、本発明はこれに限定されず、中間部材3を対象物2に予め嵌合させて、中間部材3をワーク1に嵌合させてワーク1を対象物2に組み付けてもよい。
以下、中間部材3が、ワーク1に予め嵌合されている場合を説明する。
【0020】
中間部材3は、後述する実施形態では、円筒形部材であり、その上端にワーク1が嵌合され、このワーク1をロボットハンド12が把持するようになっている。
【0021】
ロボットハンド12は、外力を計測する力センサ14を有し、ワーク1を把持する。
【0022】
力センサ14は、ワーク1に作用する外力を検出するセンサである。
この例において、力センサ14は直交3軸方向の力(Fx,Fy,Fz)と各軸まわりのトルク(Tx,Ty,Tz)を計測可能な6軸センサであり、3次元的に移動可能なロボットアーム16に取り付けられ、これに作用する6自由度の外力(3方向の力Fx,Fy,Fzと、3軸まわりのトルクTx,Ty,Tz)を検出するようになっている。
なお、本発明はこれに限定されず、ワーク1に作用する外力が検出できる限りで、その他の力センサであってもよい。
【0023】
ロボットアーム16は、手先にロボットハンド12を取付け、これを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能に構成されている。
ロボットアーム16は、この例では、多関節ロボットのロボットアームであるが、本発明はこれに限定されず、その他のロボットであってもよい。
【0024】
ロボット制御装置20は、記憶装置21に各動作におけるワーク1の動作条件を記憶し、ロボットアーム16を制御する。
ロボット制御装置20は、例えば数値制御装置であり、指令信号によりロボットアーム16を6自由度(3次元位置と3軸まわりの回転)に制御するようになっている。
【0025】
記憶装置21に記憶された各動作におけるワーク1の動作条件は、前提条件、成功条件及び失敗条件からなる。
また、記憶装置21は、各動作にそれぞれ対応する動作条件と制御方法を記憶する。
制御方法は、位置制御、速度制御、又は力制御であり、力制御は、インピーダンス制御又はダンピング制御であるが、本発明はこれに限定されず、その他の力制御方法であってもよい。
【0026】
記憶装置21は、さらに各動作における軌道データテーブルを記憶する。軌道データテーブルは、ロボットハンド12のTCPの目標位置(X,Y,Z)と、押付け方向ベクトルからなる。
【0027】
図2は、本発明が対象とする組立対象物品の例を示す図である。
本発明は、中間部材3を介してワーク1を対象物2に組み付ける組立作業を対象とする。
図2(A)において、中間部材3は円筒形部材であり、ワーク1はその下面に中間部材3の上部と嵌合する孔1aを有し、対象物2はその上部に中間部材3の下部と嵌合する孔2aを有する。
図2(B)において、中間部材3は鍔3aを有する円筒形部材であり、ワーク1はその下面に中間部材3の上部と嵌合する孔1aを有し、対象物2はその上部に中間部材3の下部と嵌合する孔2aを有する。
【0028】
図2(A)の例では、孔1aの上端は閉じており、中間部材3の上面が孔1aの上面と当接した位置が正規の初期位置である。
また、図2(B)の例では、孔1aは貫通しており、鍔3aの上面がワーク1の下面と当接した位置が正規の初期位置である。
【0029】
その他の構成は、図2(A)と図2(B)で同一である。以下、組立対象物品が図2(A)の場合を説明する。
【0030】
ワーク1の孔1aは、円筒形孔であり、その内径は、中間部材3の直径よりわずかに大きく、中間部材3の上部が上述した初期位置に達するまで、同心を維持したまま挿入できるようになっている。
円筒形孔1aの内径と中間部材3の直径の差は、例えば、0.01mmである。
【0031】
図2(A)において、対象物2は作業台4(図1参照)に移動しないように固定されている。
対象物2の孔2aは、円筒形孔であり、その内径は、中間部材3の直径よりわずかに大きく、中間部材3の下部が円筒形孔2aの所定位置に達するまで、同心を維持したまま挿入できるようになっている。
円筒形孔2aの内径と中間部材3の直径の差は、例えば、0.01mmである。
【0032】
ロボット制御装置20は、ロボットアーム16を制御し、ワーク1に嵌合された中間部材3を対象物2に嵌合させる組立作業を実行する。
この組立作業は、例えば、以下の3つの動作(1)〜(3)からなる。
動作(1)は、中間部材3の下端を円筒形孔2aの上部に挿入するまでの近接動作である。この動作では、挿入の成否を判定する必要がある。
動作(2)は、はめあい開始直後の動作である。この動作では、円筒形孔1a、2aが一致するように、ワーク1の位置と姿勢のずれを修正する必要がある。
動作(3)は、はめあい中の挿入動作である。この動作では、円筒形孔1a、2aが一致するように、ワーク1の位置のずれを修正しつつ中間部材3を挿入する必要がある。
従って、動作(2)(3)では、対象物2の円筒形孔2aの軸線に沿って、ワーク1を対象物2に向けて移動する。
【0033】
図3は、本発明による制御方法のフローチャートである。この図において、本発明の方法は、S1〜S8の各ステップ(工程)からなる。
【0034】
S1ステップ(ワーク把持ステップ)では、上述した正規の初期位置に中間部材3が嵌合されたワーク1(中間部材3付きワーク1)をロボットハンド12で把持する。
S2ステップ(組立ステップ)では、ロボットアーム16を制御し、ワーク1に嵌合された中間部材3を対象物2に嵌合させる組立作業を実行する。
【0035】
S3ステップ(組立判断ステップ)では、組立作業中のワーク1の位置と計測された外力から組立作業の成功又は失敗を判断する。
例えば、上述した3つの動作(1)〜(3)において、各動作範囲における力センサ14で検出される外力が予め設定した閾値を超える場合に失敗と判断し、外力が閾値以下であれば成功と判断する。
S3ステップで、成功(Yes)であれば、組立作業を終了する。
【0036】
図4は、3つの動作(1)〜(3)により、正常にワークが組み立てられた状態を示す図である。
この例では、中間部材3の上面が孔1aの上面と当接した初期位置に位置したまま、中間部材3のワーク1より下方に突出した部分(中間部分から下方部分)が、対象物2の円筒形孔2aに同心を維持したまま挿入されている。
従って、この状態により中間部材3を介してワーク1を対象物2に位置決めすることができる。
なお、中間部材3は1つに限定されず、2以上であってもよい。2以上の中間部材3を用いることにより、対象物2に対するワーク1の相対位置及び姿勢を正確に位置決めすることができる。
【0037】
図5は、組立中に異常を検出して停止した状態を示す図である。
例えば、動作(1)(2)において、組立中にかじりや挿入失敗などが発生すると、ワーク1を対象物2に向けて移動する挿入方向の抵抗が過大となり、これを力センサ14で検出することで異常を検出し、装置を停止させることができる。
【0038】
図3のS3ステップで、失敗(No)であれば、S4ステップ(戻しステップ)でワーク1を組立作業前の位置へ戻す。すなわち、この動作では、対象物2の円筒形孔2aの軸線に沿って、ワーク1を対象物2から離れる方向に移動する。
【0039】
次いで、S5ステップ(再組立ステップ)で、中間部材3が嵌合不能な固定部材5に対して、固定部材5を仮想的に対象物2とみなして組立作業を再実行する。
中間部材3が嵌合不能な固定部材5とは、中間部材3が嵌合する孔2aがない部材であり、後述する例では上面が水平な固定平板であるが、孔2aのない対象物2であってもよい。
この固定部材5は、対象物2と異なる位置で作業台4(図1参照)に移動しないように固定されている。
【0040】
S6ステップ(嵌合判断ステップ)では、再実行中のワーク1の位置と計測された外力から、ワーク1と中間部材3の嵌合状態を判断する。
【0041】
図6は、ワーク1から外れかかった中間部材3を、固定部材5によりワーク1に嵌合させる動作の説明図である。
この図において、(A)はS4ステップによりワーク1を組立作業前の位置へ戻した状態、(B)は、S5ステップにより組立作業の再実行中の状態、(C)は再実行後の状態を示す模式図である。
図6(B)の組立作業の再実行は、中間部材3が嵌合不能な固定部材5に対して、固定部材5を仮想的に対象物2とみなして組立作業を再実行する。
【0042】
図6に示すように、本発明の方法では、組立作業が失敗(S3ステップでNo)であるときに、挿入しかけた中間部材3付きワーク1を対象物2から離れる方向に後退させて中間部材3を対象物2から抜き、ワーク1を組立作業前の位置へ戻し(A)、予め準備した中間部材3が嵌合不能な固定部材5の場所へ移動する(S4ステップ)。
次いで、中間部材3が嵌合不能な固定部材5に対して、固定部材5を仮想的に対象物2とみなして組立作業(動作(1)〜(3))を再実行する(B)(C)。この組立作業により、中間部材3が外れていなければ、ワーク1を対象物2に向けて移動する押付動作によって外れかかっている中間部材3はワーク1に再度取り付けられる(図6(C))。
【0043】
ここで、中間部材3がワーク1に理想的に組み付いた時に押付制御(再組立作業)が完了するワーク1の上面位置を「理想位置a」、S2ステップにおける組立作業に支障がない程度に中間部材3がワーク1に組み付いたときに押付制御が完了するワーク1の上面範囲を「許容範囲b」とする。
理想位置aでは、中間部材3は図2(A)の正規の初期位置に位置する。
また、許容範囲bでは、中間部材3は初期位置ではないが、組立作業中に図2(A)の初期位置に位置決めされ得る範囲に位置する。
【0044】
図3のS6ステップで、S5ステップによる組立作業の再実行完了時のワーク1の位置が、上述した理想位置a又は許容範囲bである場合には、中間部材3が許容位置にあるので、中間部材3付きワーク1をそのまま再使用することができる。
従ってこの場合には、S2ステップに戻り、ワーク1に嵌合された中間部材3を対象物2に嵌合させる組立作業を実行する。
【0045】
図7は、固定部材5を用いて中間部材3がワーク1から外れていることを検出する動作の説明図である。
この図において、(A)は中間部材3がワーク1から外れている状態、(B)は、次いで、組立作業の再実行の初期状態、(C)は組立作業の再実行中に中間部材3が外れていなければ押付けが完了する位置、(D)は(C)の位置からさらに所定の閾値以上押付け動作が進行した状態を示す模式図である。
【0046】
中間部材3がワーク1から外れていれば、図7(C)(D)に示すように、組立作業の再実行(S5ステップ)により押付動作を行なったとき、ワーク1の上面位置が理想位置aよりも進んだ位置まで力制御によってワーク1が移動する。
従って、理想位置aを超えて、かつ許容範囲bを超えても押付が完了しない(押付力を検出しない)場合、中間部材3がないものとして、S7ステップ(払い出しステップ)において把持するワーク1を失敗部品として払い出し、S1に戻り、新たな中間部材3付きワーク1を把持して動作を継続する。
【0047】
また、中間部材3が外れてかかっており、かつ押付動作をしても中間部材3が理想的な位置まで組み付けられない場合は、理想位置a及び許容範囲bに入らないため、許容範囲bに進行する前に、検出される外力が閾値を超える異常を検出することになる。
従って、許容範囲bに入る前に外力が閾値を超える異常を検出した場合は、S8ステップ(払い出しステップ)において中間部材3がワーク1に組み付かないものとして、把持するワーク1を失敗部品として払い出し、S1ステップに戻り、新たな中間部材3付きワーク1を把持して動作を継続する。
【0048】
図8は、ワーク1と固定部材5との相対位置と、ワーク1と中間部材3の嵌合状態との関係を示す図である。
この図において、aは上述した理想位置、bは上述した許容範囲である。
また、cは許容範囲bを超えても押付が完了しない異常位置、dは許容範囲bに入る前に外力が閾値を超える異常位置である。
【0049】
ワーク1を固定部材5に向けて移動する押付動作の完了位置において、ワーク1の上面が正常に理想位置a又は許容範囲bに位置する場合は、上述したように、中間部材3が許容位置にあると判断できる。
また、ワーク1の上面が異常位置cに位置する場合は、上述したように、中間部材3がないものと判断できる。
さらに、ワーク1の上面が異常位置dに位置する場合は、上述したように、中間部材3がワーク1に組み付かないものと判断できる。
従って、把持しているワーク1での再試行の可否と中間部材3の様子の判断を、図8のようにワーク1を固定部材5に向けて移動する押付動作の完了位置で判断することができる。
【0050】
なお上述した例では、ワーク1の孔1aに中間部材3が予め嵌合されたもの(中間部材3付きワーク1)を対象としているが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、中間部材3がワーク1に取り付けられた中間部材3付きワーク1ではなく、対象物2に中間部材3が取り付けてある「中間部材3付き対象物2」にワーク1を組み付ける場合であってもよい。この場合、中間部材3が誤ってワーク1に取り付いていることを検出するため、上述した押付動作と同じように押付動作によって中間部材3の存在を検出することが可能である。
【0051】
また上述した例では、ワーク1と対象物2に嵌合孔1a、2aがあり、中間部材3が円筒形部材(棒又はピン形状)であり、嵌合孔1a、2aに中間部材3が嵌め合わされるようになっているが、孔と円筒形部材の関係は反対であってもよい。
【0052】
上述したように本発明の装置及び方法によれば、力センサ14を有するロボットハンド12、ロボットアーム16、及びロボット制御装置20により、ワーク1又は対象物2に予め嵌合されている中間部材3を介してワーク1を対象物2に組み付ける組立作業を実行することができる。
また、組立作業中のワーク1の位置と計測された外力から組立作業の成功又は失敗を判断することができる。
【0053】
さらに、組立作業が失敗であるとき、すなわち異常検出時に、ロボットハンド12が把持するワーク1を組立作業前の位置へ戻し、別の場所で中間部材3が嵌合不能な固定部材5に力制御で組立作業を再実行することで、再実行中のワーク1の位置と計測された外力から、中間部材3の嵌合状態、すなわちワーク1から外れうる中間部材3の有無を判断することができる。
【0054】
また、この組立動作中に、ワーク1に中間部材3が正しく嵌合された場合は中間部材3が再度理想的な位置(正規の位置)に戻っているため、そのまま組立作業を再試行できる。また、中間部材3がワーク1に正しく嵌合されなかった場合は、中間部材3を理想的な位置(正規の位置)に戻せないので、ワーク1を用いた組立作業の継続は困難と判断し、中間部材3が正しく嵌合された新しいワーク1を用いて組立作業が行なえる。
【0055】
従ってこの判断により、組立失敗時の(1)中間部材の有無検出、(2)中間部材の健全性のチェックとその健全化、(3)中間部材の健全化失敗時の新しい部品利用の判断と動作、(4)装置の稼動停止防止、等ができる効果が得られる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載により示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
1 ワーク、2 対象物、3 中間部材、
4 作業台、5 固定部材、
10 組立ロボット、12 ロボットハンド、14 力センサ、
16 ロボットアーム、20 ロボット制御装置、
21 記憶装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力を計測する力センサを有しワークを把持するロボットハンドと、
該ロボットハンドを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能なロボットアームと、
前記ロボットアームを制御し、中間部材を介して前記ワークを対象物に組み付ける組立作業を実行するロボット制御装置とを備え、
該ロボット制御装置により、前記組立作業中のワークの位置と計測された外力から前記組立作業の成功又は失敗を判断し、
前記組立作業が失敗であるときに、前記ワークを前記組立作業前の位置へ戻し、
次いで、前記中間部材が嵌合不能な固定部材に対して、該固定部材を仮想的に前記対象物とみなして前記組立作業を再実行し、
該再実行中のワークの位置と計測された外力から、前記ワークと中間部材の嵌合状態を判断する、ことを特徴とする組立ロボット。
【請求項2】
前記中間部材は、前記ワーク又は対象物に予め嵌合されており、該中間部材をワークと対象物に嵌合させて前記ワークを対象物に組み付ける、ことを特徴とする請求項1に記載の組立ロボット。
【請求項3】
外力を計測する力センサを有しワークを把持するロボットハンドと、
該ロボットハンドを3次元空間内で位置と姿勢を移動可能なロボットアームと、を備え、
(A)前記ロボットアームを制御し、中間部材を介して前記ワークを対象物に組み付ける組立作業を実行し、
(B)前記組立作業中のワークの位置と計測された外力から前記組立作業の成功又は失敗を判断し、
(C)前記組立作業が失敗であるときに、前記ワークを前記組立作業前の位置へ戻し、
(D)次いで、前記中間部材が嵌合不能な固定部材に対して、該固定部材を仮想的に前記対象物とみなして前記組立作業を再実行し、
(E)該再実行中のワークの位置と計測された外力から、前記ワークと中間部材の嵌合状態を判断する、ことを特徴とする組立ロボットの制御方法。
【請求項4】
前記(E)において、前記中間部材の有無及びワークとの嵌合の健全性を判断する、ことを特徴とする請求項3に記載の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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