説明

組織の内視鏡的切除を行うための器具および方法

本発明は、組織の内視鏡的粘膜切除術および内視鏡的粘膜下層切開剥離術を行うための器具および方法を提供する。第1の実施形態では、近位端および遠位端を有するカテーテルならびにカテーテルの遠位端近傍に配置されたバルーンを提供する。カテーテルの遠位端の一部分は、病変を有する粘膜組織の部分の下に挿入するように構成されており、バルーンは、膨張して粘膜組織を上向きの方向に持ち上げ、それにより病変を含む組織の除去を容易にするように構成されている。任意選択で、外科医は、バルーンが膨張した状態で、ニードルナイフをカテーテルに通して進めて粘膜下層組織をさらに切開し得る。所望する場合は、手順中にフラッシング流体を標的部位に供給し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その開示の全体が参考として本明細書中に組み込まれている、2006年4月13日出願、題名「組織の内視鏡的切除を行うための器具および方法」の米国特許仮出願第60/791,668号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、内視鏡による組織の粘膜切除術または粘膜下層切開剥離術を行うための強化された器具および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
診断用および治療用の胃腸管系内視鏡は、一般的に、組織を取り除く目的で消化管に接近するために用いる。生検用に組織を得る技術の1つは、内視鏡的粘膜切除術(「EMR」)としても知られる内視鏡による粘膜切除術の手順である。EMR手順は、外科病理学のために組織検体を提供する有用なツールであり得る。
【0004】
EMR手順は、治癒目的で固着性の良性腫瘍および粘膜内癌を除去するためにも用いてよく、具体的には、EMRはリンパ節転移のない初期の胃癌に十分に認められた治療である。粘膜病変の治癒的除去中、病変の「一括切除」を行うこと、すなわち、1つの塊で除去するこいとが望ましい。病変が断片的な様式で除去された場合、局所的な腫瘍再発率が上昇し得ると考えられている。さらに、断片化した組織の評価は断片化していない組織の評価よりも困難であり得る。
【0005】
EMR手順中、病変が一括の様式で完全に切除されることを保証するために、印を付けた後に病変の周りの組織の一部分を切除することが望ましい場合がある。粘膜組織を除去することに加えて、粘膜下層の一部分も除去し得る。
【0006】
典型的なEMR手順は、内視鏡を用いて粘膜病変を同定することを含む。除去を容易にするために病変の境界に印を付け得る。病変を残りの健康な組織から離して膨隆させることを支援するために、生理食塩水またはヒアルロン酸ナトリウムなどの流体を、病変のすぐ下の粘膜下層内に注射し得る。スネアを用いて病変が含まれる粘膜組織を切除し得る。鉗子またはスネアを用いて、内視鏡によって切除した組織を捉えて除去し得る。
【0007】
慣用のEMR手順に関連する、報告されている欠点の1つは、スネア方法は病変の断片的な切除をもたらす傾向があり、これは病変の組織病理学的評価を損ない得る。さらに、EMR手順は一般に大きな病変、たとえば直径が2cmを超える病変には推奨されない。
【0008】
最近では、内視鏡ナイフなどの切開装置を用いて病変の下の粘膜下層を切開剥離することによって粘膜病変を除去する、内視鏡的粘膜下層切開剥離術(「ESD」)と呼ばれる技術が開発されている。ESD手順は、より大きな病変の切除を容易にし、慣用のEMR手順と比較して改善された一括切除をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の技術の欠点に鑑みて、比較的短い時間で、患者に顕著な外傷を引き起こさずに、粘膜および/または粘膜下層組織を断片化していない一部分で効率的に除去する、EMRまたはESD手順のための器具および方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、EMRおよびESD手順を行うための器具および方法を提供する。第1の実施形態では、器具は、近位端および遠位端を有するカテーテルならびにカテーテルの遠位端に配置されたバルーンを含む。ESD手順中、カテーテルの遠位端の一部分は、病変を有する粘膜組織の一部の下に挿入するように構成されている。バルーンは、膨張して粘膜組織を上向きの方向に持ち上げ、それにより病変を含む組織の除去を容易にするように構成されている。
【0011】
好ましい操作方法では、カテーテルは、内視鏡の作業チャネルを通して標的部位に送達する。ニードルナイフを用いて、組織を切開する前に病変の境界を定義するために組織に印を付け得る。次のステップでは、針を粘膜組織に貫通させて、生理食塩水などの流体を標的組織部位の下の粘膜下層に送達し得る。この流体注射により、病変を有する粘膜組織が外向きに、すなわち固有筋から離れて膨隆することが引き起こされる。次のステップでは、ニードルナイフを用いて、たとえばニードルナイフの遠位先端に電流を流すことによって、除去する組織を切開し得る。
【0012】
一形態によれば、次のステップでは、カテーテルの遠位端上のバルーンを、少なくとも部分的に、除去する粘膜組織の下に配置する。その後、バルーンを膨張させ、切開した組織の除去または剥離を容易にし得る。所望する場合は、外科医は、バルーンが膨張した状態で、ニードルナイフをカテーテルに通して進めて粘膜下層組織をさらに切開し得る。
【0013】
一実施形態では、粘膜下層流体を送達するために用いる針は、カテーテルの遠位端と一体化して形成され得る。実際には、カテーテルの遠位端を進めることにより、針が標的組織を貫通することが引き起こされる。あるいは、針は、カテーテルのルーメンを通して進めるように構成されている別の構成要素であり得る。後者の実施形態では、カテーテルは標準の遠位先端を含んでいてもよく、針をカテーテルとは独立して選択的に進めて、組織を貫通し得る。
【0014】
さらなる代替実施形態では、様々な目的、たとえば、細片を洗い流すため、ニードルナイフを冷却するためなどに、フラッシング流体を標的部位に供給し得る。フラッシング流体は、別のカテーテルのルーメン、またはESD手順と併せて用いる内視鏡の作業チャネルもしくは補助ルーメンなどの、任意の数の経路を通して送達し得る。
【0015】
本発明の他のシステム、方法、特長および利点は、以下の図および詳細な説明を調査した際に、当業者に明らかである、または明らかとなるであろう。そのような追加のシステム、方法、特長および利点はすべて本発明の範囲内にあり、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図する。
【0016】
本発明は、以下の図面および説明を参照することでより良好に理解することができる。図中の構成要素は必ずしも縮尺どおりではなく、その代わりに、本発明の原理を例示することを重要視している。さらに、図中では、同様の参照番号は様々な図の全部を通して対応する部分を指定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本出願では、用語「近位」とは、医療手順中に概して医師に向かう方向をいい、一方で、用語「遠位」とは、医療手順中に概して患者の解剖学内の標的部位に向かう方向をいう。
【0018】
ここで図1A〜1Bを参照し、バルーンカテーテルの第1の実施形態を記載する。図1Aでは、器具20は近位端41および遠位端42を有するカテーテル22を含む。カテーテル22は、好ましくは、1つ以上の半硬質ポリマーから形成され得る柔軟な管状メンバーを含む。たとえば、カテーテル22は、ポリウレタン、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオアルコキル(perfluoalkoxl)、フッ化エチレンプロピレンなどから製造し得る。カテーテルは、慣用の内視鏡70の作業チャネル76を通って伸びるために十分な長さおよび外径を有し得る(図2参照)。たとえば、カテーテル22は、作業チャネル内にはめ込まれるために約2〜2.3mm(約6〜7フレンチ)の外径を含み得る。
【0019】
また、カテーテル22は、その外表面の上に親水性コーティングを有し得る(示さず)。親水性コーティングは、カテーテル22の外表面に塗布した場合、カテーテルに柔軟さおよび捩れ耐性を与える。親水性コーティングはまた、内視鏡70の作業チャネル76を通る動作を容易にするために潤滑にされた表面も提供し得る。
【0020】
さらに図1Aを参照して、器具20は、針24、ニードルナイフ26、およびバルーン28をさらに含む。図1A〜1Bに示すように、バルーン28はカテーテル22の遠位端に配置されている。バルーン28は、当分野で知られている、たとえば、バルーン血管形成術、ステントの送達、または他の介入目的を行うための、任意のバルーン材料および構造体を含み得る。バルーン28は、比較的従順なバルーン材料、たとえばケイ素もしくはラテックスから作られたもの、または比較的従順でないバルーン材料、たとえばナイロンから作られたものを含み得る。バルーン28の寸法には、膨張させた状態で約10mmの長さおよび約10mmの直径が含まれ得る。これらの寸法は参考目的のみであり、限定することを意図せず、また、図中の図面は必ずしも縮尺どおりではない。
【0021】
カテーテル22は第1のルーメン38を含み、これは膨張ルーメンである。第1のルーメン38はカテーテル22の近位端41から開口部39におよび、図1Bに示すように、開口部39はバルーン28の内部体積内に配置されている。したがって、空気または生理食塩水などの流体を第1のルーメン38から供給することにより、バルーン28を選択的に膨張させ得る。所望する場合は、カテーテル22は、1つまたは複数のマーカー要素30aおよび30bを含んでいてもよく、これは、たとえば、以下に記載する目的のためにバルーン28の位置の同定を支援するために用い得る。
【0022】
器具20は、針24をさらに含む。図1A〜1Bの実施形態に示すように、針24は、カテーテル22の遠位端42と連結されて、患者の組織の一部分を通って貫通するように構成される鋭い遠位領域を形成し得る。図1A〜1Bでは、針24は、カテーテル22と一体化した構成要素として、すなわち、カテーテル22の遠位への動作により針24の遠位への進行が引き起こされるように、形成し得る。この実施形態では、カテーテルの遠位端で針状の要素を形成するために、比較的鋭い針先端を、たとえば接着剤を用いてカテーテル22の遠位先端に固定し得る。あるいは、図9の針224など、カテーテル22のルーメンを通して挿入するように構成されている別の針を用い得る(以下に記述)。
【0023】
針24がカテーテル22の遠位端と連結されているか、またはカテーテル22のルーメンを通して配置されるように構成されているかにかかわらず、針は、生理食塩水などの生体適合性のある流体を注射するために用いる。図4Aに関して以下に説明するように、この手順は、標的組織、たとえば粘膜病変が固有筋から持ち上がることを引き起こす。標的組織の持ち上げは、内視鏡的粘膜切除術の手順中に病変の除去を容易にする。異常組織に切り込まずにそれを取り除く能力により、断片化した組織試料の試料採取を行った場合の他の方法で可能となるよりも正確な、組織の評価が可能となる。さらに、早期癌の断片化した切除は、局所的な腫瘍再発をより高い率でもたらし得る。
【0024】
さらに図1A〜1Bを参照して、ニードルナイフ26は、組織の切除を行うための当分野で知られている任意の切断器具を含み得る。組織の粘膜切除および粘膜下層切開剥離術を行うための様々なニードルナイフ構造体が知られている。1つの例示的なニードルナイフは、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている2006年3月31日出願の米国特許出願第60/788,207号に記載されている。
【0025】
図1A〜1Bの実施形態では、ニードルナイフ26は、カテーテル22の第2のルーメンを通して配置される。ニードルナイフ26は、以下に記載する目的のために、ルーメン内でニードルナイフの長手方向の動作を可能にするため、また、第2のルーメン37を通して、すなわちニードルナイフの周りを通って流体の注射を可能にするために、第2のルーメン37の内径よりも小さい外径を有する。
【0026】
ここで図2を参照し、EMRまたはESD手順中に器具20と併せて使用し得る例示的な内視鏡を記載する。内視鏡70は、近位端および遠位端を有する任意の慣用の内視鏡を含み得る。図2では、内視鏡70の遠位端のみを示す。内視鏡70は光学素子73および74を含んでいてもよく、これは、内視鏡に対して遠位の画像を照明して捕らえるために光ファイバー構成要素を用いる。さらに、内視鏡70は、好ましくは、補助ルーメン75および作業チャネル76を含む。上述のように、作業チャネル76は、好ましくは、作業チャネル内にカテーテルを長手方向に進める目的で、それの中にカテーテル22が収容されるような大きさである。1つの補助ルーメン75および1つの作業チャネル76を示すが、当業者には、本発明の目的を達成するために内視鏡70が任意の数のルーメン/チャネルを含み得ることが明らかであろう。
【0027】
ここで図3〜8を参照し、EMRまたはESD手順を行う方法を記載する。第1のステップでは、当分野で知られている内視鏡検査技術を用いて内視鏡70を標的組織部位108に向かって操縦する。たとえば、装置を、患者の口腔内内に、食道および十二指腸を下って標的組織部位108に向かって操縦し得る。標的組織部位108は、たとえば胃癌の指標である、完全にまたは部分的に粘膜組織層M内に限局している病変110を含み得る。図3Aに示すように、粘膜Mの下に粘膜下層Sおよび固有筋MPが存在する。内視鏡70を標的組織部位108へと進める間、カテーテル22を内視鏡70の作業チャネル76内に縮めていてよいことに注意されたい(図2参照)。あるいは、カテーテル22は、それを標的部位へと進める間、まだ内視鏡内に配置されていなくてもよい。
【0028】
内視鏡70が標的組織部位108に隣接して配置された後、標的組織部位108の境界を定義するために切開の印が必要であるかどうかを医師が検査する。標的組織部位108の縁111が容易に識別可能でない場合は、それ自体が内視鏡70の作業チャネル76内に配置されていてもよいニードルナイフ26を、カテーテル22の第2のルーメン37を通して装填し得る。その後、図3Bに示すように、ニードルナイフ26を内視鏡70に対して遠位に進めて、標的組織と係合させて標的組織部位108の縁111の周りに印112を付け得る。高周波電流をニードルナイフの先端に流して印を付け得る。印を付けるそのような方法は当業者に周知である。あるいは、標的組織部位108が切断することを意図しない組織から容易に区別することができる場合は、印112を省略し得る。
【0029】
代替実施形態では、ニードルナイフ26をカテーテル22の第2のルーメン37を通して進める必要はない。たとえば、代わりに、ニードルナイフ26を、内視鏡70の補助ルーメン75を通して進め得る(図2参照)。
【0030】
ここで図4A〜4Bを参照し、次のステップでは、病変110の除去を容易にするために標的粘膜組織を固有筋MPに対して持ち上げ得る。標的組織部位108の膨隆は、生理食塩水またはヒアルロン酸ナトリウムなどの流体を、針24を通して粘膜下層S内に注射することによって達成し得る。上述のように、針24は、カテーテル22の遠位端に配置され、かつそれと一体化して連結していてよい。注射された流体はカテーテル22の第2のルーメン37を通って流れ得る。ニードルナイフ26をカテーテル22内に配置した場合は、流体は、ニードルナイフの周りを流れた後、針24の遠位先端を通って出てもよい。あるいは、上述のように、ニードルナイフ26を補助ルーメン75内に配置してもよく、その場合、注射した流体は、カテーテル22の第2のルーメン37を通って実質的に塞がれずに流れる。
【0031】
図4Aに示すように、流体を粘膜下層S内に注射することで、標的組織部位108が下の固有筋MPから持ち上げられ、それにより流体ポケット118が粘膜下層S内に形成される。流体ポケット118を上面図で図4Bに示す。病変110を有する標的組織部位108を持ち上げることにより、以下にさらに詳述するように、続く病変110の切除が容易となる。
【0032】
ここで図5を参照し、標的組織部位108が十分に持ち上げられた後、粘膜切開を行うプロセスを開始し得る。図5に示すように、針24を内視鏡70の作業チャネル76内に限局するように近位に縮めていてよく、ニードルナイフ26をカテーテル22の第2のルーメン37を通して遠位に進め得る。
【0033】
図5に示すように、粘膜切開は、ニードルナイフ26を用いて病変110の周りの外周で行い得る。組織を切開するために十分な電気エネルギーを供給するために、電気手術発電機(示さず)をニードルナイフ26と連結し得る。切開は、好ましくは、粘膜下層S内に所定の距離で、かつ固有筋MPに対して所定の角度で行う。
【0034】
ニードルナイフ26は、ステンレス鋼を含めた任意の導電性材料から作製し得る。あるいは、これは、上で言及した2006年3月31日出願の米国特許出願第60/788,207号に記載のように、ニチノールなどの形状記憶合金から作製し得る。任意選択で、ニードルナイフ26は、その先端に中空またはセラミック領域などの非導電性の部分を含んでいてもよく、これは、ニードルナイフが組織内に深く切り込みすぎることを防止するために役立つ。他の安全機構は当業者に明らかであろう。
【0035】
ここで図6を参照し、標的組織108を切開した後、ニードルナイフ26を縮めて、ニードルナイフの遠位端を完全にカテーテル22の第2のルーメン37内に引っ込める。あるいは、ニードルナイフ26が補助ルーメン75を通して配置されている場合は、それをそのルーメン内に縮める。
【0036】
次のステップでは、図6に示すように、カテーテル22を遠位方向に、内視鏡70の遠位端を越えて進める。針24は、粘膜Mを通り、粘膜下層S内の流体ポケット118へと貫通する。作業チャネル76を通るカテーテル22の進行を容易にするために、バルーン28はしぼんだ状態であることに注意されたい。この時点で、好ましくは、図6に示すように、バルーン28の一部分が標的組織部位108の一部分の下に配置されるようにカテーテル22を配置する。
【0037】
適切に配置した後、開口部39を通して膨張流体を第1のルーメン38内およびバルーン28の内部の領域内に注入することによって、バルーン28を膨張させる。図7に示すように、膨張した状態では、バルーン28は標的組織部位108をその下から上に持ち上げ、それにより病変110の切除が容易になる。具体的には、膨張したバルーンは、標的組織部位108の粘膜部分を粘膜下層Sから離して押しのけることに役立ち得る。このプロセス中、粘膜下層Sの一部分も固有筋MPから引き離され得る。図7〜8では、膨張したバルーンは病変110の比較的小さな部分の下に配置されているように図示しているが、バルーンを膨張する前に病変のさらに下へと進め得ることは明らかである。
【0038】
ここで図8を参照し、バルーン28が膨張している間、ニードルナイフ26を任意選択で針24の遠位先端を越えて進め、それにより粘膜下層組織の流体ポケット118内からの切除剥離を行い得る。したがって、図5で行った粘膜切除手順に加えて、標的組織部位108の「一括」除去を容易にするために図8で粘膜下層切開剥離術を達成し得る。
【0039】
切開した標的組織がその周りの組織から十分に分離された後、バルーン28をしぼませ、カテーテル22およびニードルナイフ26を引っ込め得る。その後、スネアまたは鉗子などの回収装置(示さず)を、補助ルーメン75または作業ルーメン76を通して進めて、続いて、病変110が含まれる切開した標的組織108を除去し得る。その後、内視鏡を患者から取り出して手順を完了する。
【0040】
有利なことに、ESD手順中にバルーンカテーテルを用いることにより、外科医は切開した粘膜組織を引き離すことを支援するために、標的組織部位108の下からバルーンを選択的に膨張させ得る。さらに、外科医がニードルナイフを用いて粘膜下層組織Sを切除剥離する場合は、バルーン28を膨張させることで、周りの組織を定位置に保つことが支援され得る。最後に、上述のように、本明細書中に記載の粘膜下層切開剥離術技術は、続く病変の病理学的評価を改善するための病変110の「一括」除去を促進し得る。
【0041】
ここで図9〜13を参照し、様々な代替実施形態を示す。図9では、器具220は、近位端および遠位端を有するカテーテル222ならびに遠位端に配置されたバルーン228を含む。器具220は図1A〜1Bの器具20に類似しているが、主な例外は、カテーテル222に対してスライド可能な針224が別の構成要素であることである。針224は、カテーテル222のルーメン、たとえば図10のルーメン250内を長手方向に動くような大きさであり得る。さらに、ニードルナイフ226は、図10に示すように、針224の内部ルーメン254内に配置されるように構成されていてよい。生理食塩水などの針224から注射する流体は、標的部位に達する際にニードルナイフ226の周りを流れ得る。
【0042】
あるいは、カテーテル222は、様々な目的のための別のルーメンを含み得る。たとえば、第1のルーメンは、図1Bのルーメン38と同様の様式でバルーン228を膨張させるために使用し得る。さらに、図10〜11のルーメン250などの第2のルーメンは、針224の進行を可能にするために使用し得る。最後に、図11のルーメン252などの第3のルーメンは、ニードルナイフ226の進行を可能にするために使用し得る。
【0043】
図9の実施形態では、器具220を用いるための好ましい方法ステップは、図3〜8に記載の器具20を用いるための方法ステップに類似している。しかし、カテーテル222の遠位先端は実質的に平坦であることに注意されたい。したがって、図4Aに示す流体の注射ステップ中、カテーテル222の遠位先端は好ましくは内視鏡70の作業チャネル76内に収容されており、一方で、針224は、カテーテル222および内視鏡70の遠位端を越えて進んで、粘膜下層Sと係合して流体をそれ内に注射する。さらに、上記図6〜7に記載のバルーンの配置および膨張ステップ中、針224をカテーテル222の領域内に縮めて、バルーンカテーテルの配置中に平坦な遠位領域を可能にし得る。
【0044】
ここで図12〜13を参照し、本発明のさらなる代替実施形態を記載する。これらの実施形態では、フラッシュ可能なEMRまたはESD手順を行うための器具を提供する。図12では、器具320は、内部にニードルナイフ326が配置された針324を含む。針324は内視鏡370の作業チャネル376内に配置する。針324、ニードルナイフ326および内視鏡370は、実質的に上述の実施形態に従って提供し得る。
【0045】
図12では、作業チャネル376を介して流体380を標的部位に送達し得る、すなわち、作業チャネルを通して、針324の外面の周りの輪状空間中で流体を送達し得る。あるいは、流体は、内視鏡370の補助ルーメン375を通して、単独でまたは作業チャネル376を通した流体の送達と併せて送達し得る。どちらの場合でも、送達する流体は、細片を洗い流すため、ニードルナイフ326の操作中に冷却効果をもたらすためなどに使用し得る。
【0046】
図13を参照して、器具420が作業チャネル476に通して進め得る針424および内視鏡470の補助ルーメン475に通して進め得るニードルナイフ426を含む、図12の実施形態の変形を示す。フラッシング流体は、図13に示すように、補助ルーメン475を通して送達するか、もしくは作業チャネル476だけを通して送達するか、または補助ルーメン475および作業チャネル476をどちらも通して送達し得る。内視鏡上に配置された様々な他の開口またはポートを通してもフラッシング流体を供給し得ることは、明らかであろう。
【0047】
上記図1〜11に記載の実施形態でもフラッシング流体を用い得ることを理解されたい。たとえば、図10を参照して、カテーテル222のルーメン250は針224の送達を可能にし得、一方で、ルーメン252はフラッシング流体を送達するためだけに使用し得る。あるいは、図11に示すように、ニードルナイフ226をルーメン252に通して送達してもよく、フラッシング流体をルーメン252に通して、すなわちニードルナイフの周りを通って送達し得る。図11のさらなる代替実施形態では、フラッシング流体を、ルーメン250を介して、すなわち針224の外表面の周りを通って送達し得る。他の変形が当業者に明らかであろう。
【0048】
本明細書中で上述した器具および方法は、様々な種類の病変、たとえば大きな表在性腫瘍および上皮内新生物を、胃、食道および結腸などの事実上任意の体腔中で治療するために使用し得ることを、理解されたい。
【0049】
本発明の様々な実施形態を記載したが、当業者には、数多くの実施形態および実施が本発明の範囲内で可能であることが明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物に照らした場合以外は、限定されないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1A】本発明の第1の実施形態に従って提供するカテーテルの側面図である。
【図1B】図1Aのカテーテルの遠位端の側断面図である。
【図2】本発明と併せて用い得る内視鏡の遠位端の斜視図である。
【図3A】本発明の原理に従って使用し得る方法ステップの側面図である。
【図3B】本発明の原理に従って使用し得る方法ステップの上面図である。
【図4A】使用し得る別の方法ステップの側面図である。
【図4B】使用し得る別の方法ステップの上面図である。
【図5】使用し得る方法ステップの側面図である。
【図6】使用し得る方法ステップの側面図である。
【図7】使用し得る方法ステップの側面図である。
【図8】使用し得る方法ステップの側面図である。
【図9】代替実施形態に従って提供するカテーテルの遠位端の側面図である。
【図10】図9のA−−Aの線に沿ったカテーテルの遠位端の断面図である。
【図11】図9のA−−Aの線に沿ったカテーテルの遠位端の別の断面図である。
【図12】1つの代替実施形態と併せて使用し得る内視鏡の遠位端および他の構成要素の斜視図である。
【図13】さらなる代替実施形態と併せて使用し得る内視鏡の遠位端および他の構成要素の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を有するカテーテルと;
カテーテルの遠位端近傍に配置されたバルーンと;
バルーンより遠位の位置でカテーテルと連結した組織を穿通する手段とを含み、
カテーテルの遠位端の一部分が、粘膜組織の一部の下に挿入するように構成されており、バルーンが、膨張して組織の標的粘膜層を上向きの方向に持ち上げて組織の除去を容易にするように構成されている、
組織の粘膜切除を行うために適した器具。
【請求項2】
組織を穿通する手段が、粘膜組織を通って貫通して流体を粘膜下層組織に送達するように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
カテーテルの外径が、内視鏡の作業チャネルを通して配置されるように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
カテーテルが、カテーテルの近位端と遠位端との間に配置された第1のルーメンを含み、バルーンを膨張させるための膨張流体を供給するように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項5】
カテーテルが第2のルーメンを含み、ニードルナイフが第2のルーメンを通して挿入するように構成されている、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
ニードルナイフが、内視鏡の補助ルーメンを通して挿入するように構成されている、請求項3に記載の器具。
【請求項7】
フラッシング流体が、内視鏡の作業ルーメンを通して送達するように構成されている、請求項3に記載の器具。
【請求項8】
除去する組織の少なくとも一部分を切開するステップと;
バルーンの少なくとも一部分を切開した組織の一部の下に配置するステップと;
バルーンを膨張させて組織を上向きの方向に持ち上げて、組織の除去を容易にするステップと
を含む方法で用いるように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
使用方法が、組織を切開する前に、ニードルナイフを用いて組織の境界を同定する印を付けることをさらに含む、請求項8に記載の器具。
【請求項10】
使用方法が、バルーンが膨張した状態でニードルナイフを用いて組織を切開することをさらに含む、請求項9に記載の器具。
【請求項11】
組織を穿通する手段を用いて組織の粘膜下層内に流体を注射して、組織の標的粘膜層の一部分を上向きの方向に持ち上げるステップと;
バルーンの少なくとも一部分を組織の標的粘膜層の一部の下に配置するステップと;
バルーンを膨張させて、組織の標的粘膜層を上向きの方向にさらに持ち上げて組織の標的粘膜層の除去を容易にするステップと;
切除手段をカテーテルのルーメンに通して送達し、組織の標的粘膜層を切除するステップと
を含む方法で用いるように構成されている、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
切除手段がニードルナイフを含む、請求項11に記載の器具。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−533150(P2009−533150A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505463(P2009−505463)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/008970
【国際公開番号】WO2007/120727
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(591157154)ウィルソン−クック・メディカル・インコーポレーテッド (135)
【氏名又は名称原語表記】WILSON−COOK MEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】