説明

組織の病的反応を治療計画に特徴づける方法

組織の病的応答を治療計画に特徴づける方法において:前記組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップであって、各レンダリングが前記治療計画における特定の時点に対応するステップと;前記レンダリングセットに対する前記組織の生物力学的特性の代表値セットを生成するステップであって、各代表値が対応するレンダリングに基づいているステップと;前記代表値セットに基づいて前記生物力学的特性の傾向を決定するステップと;前記生物力学的特性の傾向に基づいて前記治療計画に対する前記組織の応答を予測するステップと;を具える方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
本出願は、2011年2月14日出願の米国特許出願第13/027,036号、及び、2010年2月12日出願の米国暫定特許出願第61/304,256号の利益を主張する。両出願共に、引用によって全体が組み込まれている。
【0002】
本発明は、一般的に、医療分野に関するものであり、特に、組織の病的反応を癌治療の分野における治療計画に特徴づける方法に関する。
【背景技術】
【0003】
癌の一般的治療には、癌に罹った腫瘍組織の患者からの切除、放射線治療、化学療法、あるいはアブレーション介入が含まれるが、最も効果的な治療又は治療の組み合わせは、通常、患者によって異なる。例えば、全ての癌患者が化学療法や放射線治療などのある種の治療に反応するわけではなく、更に、敏感な癌患者全員が、これらの治療で同じように成功するわけではない。患者にとっての治療の成功とは、時には、治療の最後まで、あるいは治療後の観察期間の後までわからないこともある。しかしながら、特に、治療計画の初期に患者が治療に良く反応するかどうかを知ることは、代替療法の実施へ案内するかどうか及び/又はうまくいかなかった治療計画を中止するかどうかを正確に予測することができ、利点がある。治療に対する腫瘍の反応を正確かつ頻繁に評価することによって、医師が、患者の治療計画を最適化することが可能となり、潜在的に反応しない患者を化学療法に誘発された副作用の物理的及び感情的損失といった治療から生じる不必要な副作用から救うことになる。患者の腫瘍組織状態は、理論的には、磁気共鳴撮像(MRI)あるいはコンピュータ断層撮影(PET)を繰り返し使用することによって観察できる。しかしながら、これらの技術はコストが高く、繰り返して使用するため、グループでアクセスすることができず、腫瘍組織の頻繁な評価には不向きである。X線などのその他の技術はイオン化放射を使用しており、頻繁な使用ができない。従って、医療の分野においては、組織の病的反応を治療計画に特徴づける改良された方法を作る必要がある。本発明は、このような改良された方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】図1は、好適な実施例の方法を示す図である。
【図2】図2は、好適な実施例の方法において、組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップ間に使用できるスキャナを示す図である。
【図3】図3A乃至3Dは、好適な実施例の方法における組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップを示す図である。
【図4】図4は、好適な実施例の方法における、代表的な値セットを生成するステップを示す図である。
【図5】図5は、好適な実施例の方法における生物力学的特性の代表的な値セットに基づく、生物力学的特性の傾向を決定する変形例を示す図である。
【図6】図6は、好適な実施例の方法における生物力学的特性の代表的な値セットに基づく、生物力学的特性の傾向を決定する変形例を示す図である。
【図7】図7は、好適な実施例の方法における生物力学的特性の傾向に基づいて治療計画に対する組織の反応を予測する一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の好ましい実施例の以下の説明は、発明をこれらの好ましい実施例に限定するものではなく、むしろ当業者が本発明を製作し、使用できるようにするものである。
【0006】
図1に示すように、好ましい実施例における組織の病的反応を治療計画に特徴づける方法100は:組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップS110であって、各レンダリングが治療計画中の特定のポイントに対応するステップと;このレンダリングセットに関する組織の生物力学的特性を表わす代表値セットを生成するステップS120であって、各代表値が対応するレンダリングに基づくものであるステップと;この代表値セットに基づいて生物力学的特性の傾向を決定するステップS130と;この生物力学的特性の傾向に基づいて治療計画に対する組織の反応を予測するステップS140と;を具える。この方法100は、化学療法又は放射線療法に対する乳癌などの癌の病的反応(又は、治療の副作用)を予測及び/又は観察するのに好適に使用することができるが、追加で、及び/又は代替的に、あらゆる癌又は良性腫瘍の適切な治療に対する反応を予測又は観察するのに使用することもできる。方法100は、追加で、及び/又は代替的に、化学的予防の成功(癌のリスクを低減するための薬理学的なアプローチ)を予測するのに使用することもできる。癌患者が特定の癌治療にどのように応答するかを予測し特徴づけることによって、医師は、治療が成功したように見えない患者から治療が成功したように見える患者を区別することができ、これによって、医師が、代替療法の実施を案内する及び/又は、特定の治療を中止することができる。治療に対する患者の応答に関するこのような知識によって、医師は、例えば、応答のない患者を化学療法又は放射線療法の副作用に苦しみから救い、効果のない治療に対して限界のない財政手段を潜在的に適用しないようにするとともに、治療計画の効果を最適なものに向ける。治療計画の初期における腫瘍の生物力学的特性のうちの変化率などの傾向を用いて、全体の治療応答を予測することが好ましいが、治療計画中のいずれかの段階における生物学的特徴の傾向は、追加で、及び/又は代替的に使用することができる。この方法100は、新規治療薬又は治療法の臨床効果を評価するなど、その他の治療に対する腫瘍の応答の正確かつ頻繁な評価を容易にすることができる。
【0007】
連続形態レンダリングセットを取得するステップS110は、患者からデータを取得するよう機能する。このデータは、組織の応答を癌治療に特徴づけるときの分析の基礎を形成する。この形態レンダリングは、腫瘍組織のレンダリングを含むことが好ましく、追加で、及び/又は代替的に、腫瘍組織を取り囲んでいる組織といった、健康な組織のレンダリングを含んでいても良い。形態レンダリングは、追加で、及び/又は代替的に、骨あるいはあらゆる適切な組織を分割することができる。各レンダリングは、治療計画中に特定のポイントに対応しており、このレンダリングセットが、治療計画中の様々なポイントにおいて組織の連続的な経時スナップショットを表わしていることが好ましい。例えば、レンダリングの取得は、1時間ごとに、1日ごとに、数日ごとに、1乃至3週間ごとに、あるいは適宜の周期で行われるか、あるいは、化学療法などの治療段階に応じて(例えば、治療直前及び/又は治療直後)に行うようにしても良い。レンダリングセットを取得するステップS110は、治療計画の初期段階(例えば、最初の数カ月以内)に行うことが好ましいが、代替的に、治療計画の適宜の期間に行うようにしても良い。レンダリングセットは、治療期間中に適宜一定の時間間隔で行っても良く、不定期の時間間隔で行っても良い(例えば、化学療法の特定スケジュールに応じたタイミングでレンダリングを行うことができる。)好ましい実施例では、レンダリングセットを取得するステップS110は、超音波スキャナで組織をスキャンニングして音響データを取得するステップS112と、音響データで組織の音響パラメータを表わす画像を生成するステップS114と、を具えることが好ましい。組織をスキャンニングするステップと画像を生成するステップは、それぞれ、単一レンダリングを取得するときに少なくとも一度行って、組織をスキャンニングするステップと画像を生成するステップが複数回繰り返されるようにすることが好ましい。レンダリングセットを取得するステップS110は、追加で、及び/又は代替的に、画像セット又はレンダリングセットを、ハードドライブ又はオンラインサーバなどの保存装置から、あるいはハードコピーの患者記録などの適宜のストレージから取得するステップを具える。
【0008】
組織をスキャンニングするステップS112は、組織を通って音響波を送受信するトランスデューサで組織を取り囲むステップを具えることが好ましい。例えば、図2及び3Aに示すように、乳癌患者の胸部組織をリング形状のトランスデューサを有する超音波断層撮影スキャナでスキャンするのに、患者は胸の部分に孔が空いた柔軟なベッドに顔を下に向けて寝る。患者の胸部がこのベッドの孔を通り、水槽内に沈められたトランスデューサの中に位置する。リング型トランスデューサは、構台に固定されていることが好ましく、スキャンニングステップS112を行う間に、縦方向の経路を移動して、腹部から背部にかけた方向の胸壁と乳頭領域との間を通過し、これによって、胸部全体(代替的に、胸部の選択された部分)を撮像することが好ましい。スキャナは、米国特許公開第2008/0275344号、“Method and apparatus for categorizing breast density and assessing cancer risk utilizing acoustic parameters”に記載されたものと同じものが好ましい。この公報は、引用によって全体が組み込まれている。しかし、リング型トランスデューサは、腕、手、脚、あるいは足など、あらゆる適宜の組織をスキャンするのに使用することができる。スキャナは、比較的安価で、速く、患者にとってより心地よく、設置及び操作が簡単であることが好ましい。このスキャンニングステップは、組織からの音響反射、組織内の音響減衰、及び/又は組織内の音響速度を含む音響データを集めることが好ましい。しかしながら、このスキャンニングステップは、追加で、及び/又は代替的に、その他の音響データ又は組織の適宜の生物力学的特性を集めるものでも良い。代替的に、この方法は、磁気共鳴撮像(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、あるいは、組織のレンダリングを生成する適宜の装置を用いて形態レンダリングセットを取得するステップを具えていても良い。例えば、PETを用いて、組織の代謝変化を評価して組織画像を生成するようにしても良い。
【0009】
組織の音響パラメータを表わす画像を生成するステップS114は、スキャンニングステップの間に取得した音響データから一又はそれ以上の二次元(2D)画像を生成するステップを具えることが好ましく、一又はそれ以上の組織の三次元(3D)画像を生成するステップを具えていても良い。好ましい実施例では、図3Cに示すように、一又はそれ以上の2D画像を生成するステップが、組織の複数の2D断面画像(例えば、前頭面、又は適宜の面における「スライス」)を生成するステップS116と、組織の2D断面画像を組織の3D画像に組み込むステップS118を具える。これらの画像は、断層画像であることが好ましく、より好ましくは超音波断層画像であるが、代替的に適宜の断層画像であっても良い。2D画像スタックを3D画像に組み込む一般的な方法は、当業者に知られているが、使用できる方法の一つが米国特許公開第2008/0275344号に記載されている。代替的に、2D及び/又は3D画像を、適宜の方法で生成することができる。図3Dに示すように、連続形態レンダリングセットを取得するステップS110では、組織の連続形態レンダリングセット(好ましくは3D)を取得するまで、スキャンニングステップ及び画像生成ステップを繰り返して、時間t1,t2,t3,・・・tnにおける形態レンダリングを含むセットを取得することが好ましい。画像は、組織からの音響反射、組織内の音響減衰、及び組織内の音響速度のうちの少なくとも一つを表わしていることが好ましい。しかしながら、画像は、追加で、及び/又は代替的に、適宜の組織の生物力学的特性を表わすものでも良い。例えば、画像は、ドップラーレーダを用いた組織又は造影剤と組織の相互作用(流れの取り込み又は速度)を表わすものでも良い。図3Bに示すように、各音響パラメータは、2D画像の分離スタックに画像化して、このスタックの各断面レベルにおいて、音響反射(Ir)、減衰(Ia)、及び/又は音響速度(Is)用の画像を重ね合わせるか、あるいは併合2D画像と組み合わせることが好ましい。
【0010】
生物力学的特性の代表値セットを生成するステップS120は、レンダリングセットの生物力学的特性を定量化する、あるいは特徴づけるよう機能する。図4に示すように、代表値セットを生成するステップS120は、各レンダリングの生物力学的特性の平均値を計算するステップS122を具えており、これによって、組織の生物力学的特性の連続あるいは経時の量的平均値セットを生成することが好ましい。代表値セットを生成するステップS120は、更に、測定データから統計的エラーを取り除くなどのために、代表値セットを標準化するステップを具えることが好ましい。生成したレンダリングセットの代表値は、音響速度に関するものであることが好ましいが、追加で、及び/又は代替的に、音響減衰、音響速度、組織密度、及び/又は、適宜の生物力学的特性を具えることが好ましい。好ましい実施例では、平均値が、患者の原発腫瘍生物力学的特性の容量平均値である。原発腫瘍は、腫瘍が音響反射画像の形態レンダリング上にあらわれている場合に腫瘍塊のアウトラインを見つけることによって規定することが好ましい。この腫瘍アウトラインは、音響減衰及び/又は音響速度形態レンダリング上に再現して、原発腫瘍の境界を示すことができる。量的平均値は、レンダリングによって特徴づけた原発腫瘍の体積内での生物力学的特性の平均値を組み入れることが好ましい。例えば、平均容量音響速度は、米国特許公開第2008/0275344号に記載されているように計算することができる。しかしながら、容量平均は、適宜の方法で計算した原発腫瘍の生物力学的特性の代表的な値である。例えば、容量平均は、追加で、及び/又は代替的に、原発腫瘍全体の生物力学的特性の値の空間分布によって重みづけされたものなど、その他の側面を具えていても良い。別の例では、容量平均が、原発腫瘍全体の複数の異なる生物力学的特性の組み合わせを考慮したものでも良い。
【0011】
一の変形例では、平均値が、複数の腫瘍の複数容量平均の平均値又はその他の統計的平均値、又は複数腫瘍の複数容量平均の最大容量平均値であっても良い。別の変形例では、平均値が、レンダリングした組織の適宜の健康な部分あるいは健康でない部分の平均値又はその他の統計的平均値であっても良い。しかしながら、代替的に、平均値は適宜の平均値であっても良い。
【0012】
各レンダリングの生物力学的特性の平均値を計算するステップS122は、腫瘍組織内の生物力学的特性の値と、腫瘍組織を取り囲むバックグラウンド組織の生物力学的特性の値の差を計算するステップS124を具えることが好ましい。この差を計算するステップは、バックグラウンド組織の生物力学的特性の値を無視するよう機能する。好ましくは、差を計算するステップS124は、腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値から、バックグラウンド組織の生物力学的特性の平均値を減算するステップS126を具えているが、この差は、適宜の方法で計算することができる。各レンダリングにおける腫瘍組織に対するバックグラウンド組織の境界は、いくつかの方法のうちの一つ又はそれ以上で規定することができる。一の変形例では、バックグラウンド組織が、アウトラインを入れた腫瘍組織の境界を超える距離スレッシュホールド(例えば、2cm)を超える領域として規定されている。別の変形例では、バックグラウンド組織は、生物力学的特性の傾きが差スレッシュホールドを満たす境界を超える領域として規定されている。しかしながら、腫瘍組織に対するバックグラウンド組織の境界は、適宜の方法で規定することができる。
【0013】
別の変形例では、代表値セットを生成するステップS120は、生物力学的特性の初期値又はベースライン値、あるいは生物力学的特性の適宜の特異値を決定するステップを具えている。例えば、この初期値は、ステップS110で取得した第1レンダリングから取ることができる。更に、生物力学的特性の傾向を決定するステップS130は、複数の生物力学的特性の初期値、又は、複数の生物力学的特性の特異値を特徴づけるステップを具える。
【0014】
代替的に、代表値セットを生成するステップS120は、各レンダリングセットの生物力学的特性の空間分布を特徴づけるステップを具えていても良い。この特徴付けは、定性的なものであっても良く、あるいは生物力学的特性の空間分布のパラメータ記述を行うことによる定量的なものでも良い。代表値セットを生成するステップS120は、音響レンダリングにおける音響速度の空間分布を特徴づけるステップを具えていても良いが、追加で、及び/又は代替的に、音響減衰又は、適宜の生物力学的特性の空間分布を特徴づけるステップを具えていても良い。
【0015】
生物力学的特性の傾向を決定するステップS130は、音響データを分析して治療計画に対する患者の応答を予測あるいは特徴づける評価基準を生成するよう機能する。傾向を決定するステップS130は、平均値セットの変化率を計算するステップS132を具えることが好ましい。このステップは、いくつかの変形例の一又はそれ以上であっても良い。第1の変形例では、図6に示すように、生物力学的特性の傾向を決定するステップS130が、経時的変数(例えば、治療日数又は治療回数)に対するプロット上に生物力学的特性の平均値セットをグラフにするステップS134を具える。平均値セットの各値は、絶対値で表わしても、そのセットの第1の平均値のパーセンテージで表わしても良く、何らかの適宜の方法で表わすこともできる。この変形例では、変化率を計算するステップS132が、このプロットの少なくとも一部に合致する最良適合曲線のスロープを計算するステップを具えるのが好ましい。換言すると、生物力学的特性の計算した変化率は、容量平均値セットにおける2又はそれ以上の値に合致する最良適合曲線のスロープであっても良い。代替的に、計算した変化率は、最初の平均値と最後の平均値の間のスロープであっても良く、隣り合う平均値対のサブセット間のスロープの平均又は中間であっても、プロット上の2又はそれ以上の点間の平均差異であっても、プロット上の変化率の適宜の統計測定値であっても良い。計算した変化率は、プロット上に表示しても、しなくとも良い。
【0016】
第2の変形例では、生物力学的特性の傾向を決定するステップS130は、変化率を数学的に計算するステップを具える。この計算は、プロット上に平均値セットをグラフ化することなく、コンピュータ計算が行われることを除いて、第1の変形例と同じである。
【0017】
第3の変形例では、生物力学的特性の傾向を決定するステップS130は、複の生物力学的特性の傾向を決定するステップを具える。例えば、複数の生物力学的特性の初期値は、別の生物力学的特性に対する生物力学的特性の初期値をプロットすることによる(又は、比率を計算するなど、適宜の方法で比較することによって)などで、互いに特徴づけられている。例えば、複数の生物力学的特性の傾向を決定する際に、組織の音響速度の初期値を、組織の音響減衰の初期値と比較することができる。更に、図6に示すように、一の生物力学的特性の複数の時間に依存した代表値(例えば、経時的平均値)を、一軸に音響速度の時間に依存した値、別の軸に音響減衰の時間に依存した値、及び潜在的に第三軸の経時的変数、又は一軸の二つの生物力学的特性と別の軸の経時的変数、を有する複数の次元プロット上など、別の生物力学的特性の代表値と、比較することができる。
【0018】
代替の実施例では、生物力学的特性の傾向を決定するステップS132が、第1変形例のプロットと同様に、経時的変数に対してプロット上で生物力学的特性の平均値セットをグラフ化するステップと、プロットによって形成された曲線の一般形状を特徴づけるステップとを具える。この曲線の一般的な形状(例えば、プラトゥ)は、定量的及び/又は定性的に特徴づけることができる。例えば、プロット上に示す生物力学的特性の傾向は、傾斜のおおよその度合い、あるいは平坦度を示すある種のスロープ又はプラトゥを有するものとしてそれぞれ記載することができる。
【0019】
生物力学的特性の傾向に基づいて組織の応答を予測するステップS140は、治療計画に対する組織の応答を特徴づけるよう機能する。予測ステップの間に、生物力学的特性の傾向を、化学療法や放射線療法のような長期に亘る複数ステージの治療介入用、又は、凍結療法、高周波アブレーション、あるいは電気穿孔法等のアブレーション介入による細胞死用といった、組織の特性の変化として評価することができる。図7に示すように、組織の反応を予測するステップS140は、好ましくは変化率をスレッシュホールドと比較するステップS142を具える。このスレッシュホールドは、定量的なものでも、定性的なものでも良い。スレッシュホールドは、以前の患者が受けている治療計画が、現在の患者を比較するベースラインを形成するといった、以前の患者の応答を治療計画に対して特徴づけるデータに基づいていることが好ましい。例えば、スレッシュホールドは、好ましい方法によってスキャンニングを行って分析した患者の従来の実験データを用いて決めることができる。これらの以前の患者の何人か又は全員が、治療計画を終了し、MRIやPETスキャンなどの追加の手段を用いて、これらの患者が治療計画に反応したかしなかったかを決定し、この患者がどの程度成功裏に治療計画に反応するかを見る。以前の患者の実験データの分析は、予測した反応の治療計画に対するスレッシュホールドの変化(例えば、「完全」、「一部」、あるいは「応答なし」)を表示する複数のスレッシュホールドを生じさせても良い。
【0020】
好ましい変形例では、スレッシュホールドが、「成功」スレッシュホールドであり、生物力学的特性の変化率(あるいは、初期ベースライン値などの特異値)が、成功スレッシュホールドと同じ、及び/又はそれ以上であったら、患者が連続治療計画に確実に応答していると予測される。更に、この変形例では、変化率が成功スレッシュホールドに合致しない場合、患者が治療計画に好ましく応答しないと予測される。変化率、あるいはスレッシュホールドに対するその他の傾向の正確な比較は、生物力学的特性に依存する。例えば、特定の患者の原発腫瘍内の音響速度における変化率が、成功スレッシュホールドの傾斜より急な減少傾斜である場合、特定の患者は、連続治療計画に確実に反応すると予測される。しかしながら、その他の生物力学的特性については、その患者は、変化率が成功スレッシュホールドの傾斜より急な上昇傾斜であれば、確実に応答している。代替的に、このスレッシュホールドを、「失敗」スレッシュホールドとしても良い。
【0021】
組織の応答を予測するステップS140は、追加で、及び/又は代替的に、生物力学的特性の平均値セットの適宜の特徴を有していても良い。例えば、代替の変形例では、組織の応答を予測するステップS140は、経時的変数に対する平均値セットのプロットで形成された曲線の一般形状を分析するステップを具えていても良い。別の変形例では、組織の応答を予測するステップS140が、平均値セットの生物力学的特性の初期開始値を分析するステップを具えている。更に別の実施例では、組織の応答を予測するステップS140が、一又はそれ以上の生物力学的特性の傾向及び/又は別の生物力学的特性に対する形態特性及び/又は形態特性を分析するステップを具える。例えば、この傾向を分析するステップは、一軸上における一の生物力学的特性(例えば音響速度)値を有する多次元プロット上の広がり又は分布、別の生物力学的特性の値(例えば、音響減衰)及び、潜在的に第三軸の経時的変数、を分析するステップを具えていても良い。別の実施例では、この傾向を分析するステップが、二つの生物力学的特性性(又は、経時的変数に対する変化率をプロットすることによってできたカーブの一般的形状)間の比率の傾向を分析するステップを具えていても良い。
【0022】
この方法は、更に、予測した応答に基づいて治療計画を変更するステップS150を具えていても良く、この変更が患者の最大の利益のために組織の予測した応答を利用するよう機能する。例えば、この予測が、患者が治療計画に好適に応答するであろうとの予測である場合、予測した応答に基づく治療計画を変更するステップS150が、現在の治療計画を維持するステップ及び/又は患者の生理的応答をモニタし続けるステップを具えていても良い。別の例では、この予測が、患者が治療計画に良好に応答しないとの予測であれば、治療計画を変更するステップが:治療計画の特徴(投与タイプ、投与量、投与回数、あるいは放射線又はアブレーションのパターン分布)を変更するステップか、異なる種類の治療を行うステップ、又は、治療計画を中止するステップを具えても良い。別の好適な変形例は、当業者には知られているように、特異性と患者のステータスに応じて、医師の裁量によるものであっても良い。
【0023】
上述の記載及び図面及び特許請求の範囲から、当業者は、本発明の好ましい実施例を、特許請求の範囲に記載された範囲から外れることなく変形及び変更することができることを認識する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の病的反応を治療計画に特徴づける方法において:
前記組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップであって、各レンダリングが前記治療計画における特定の時点に対応するステップと;
前記レンダリングセットに対する前記組織の生物力学的特性の代表値セットを生成するステップであって、各代表値が対応するレンダリングに基づいているステップと;
前記代表値セットに基づいて前記生物力学的特性の傾向を決定するステップと;
前記生物力学的特性の傾向に基づいて前記治療計画に対する前記組織の応答を予測するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、連続形態レンダリングセットを取得するステップが、腫瘍組織の形態レンダリングセットを取得するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、連続形態レンダリングセットを取得するステップが、前記組織をスキャンニングして音響データを取得するステップと、当該音響データを用いて前記組織の音響パラメータを表わす画像を生成するステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記組織をスキャンニングするステップが、超音波スキャナを用いてスキャンニングするステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法において、前記画像を生成するステップが、前記組織からの音響反射、前記組織内の音響減衰、及び前記組織内の音響速度の少なくとも一つを表わす画像を生成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記画像を生成するステップが、一又はそれ以上の二次元画像を生成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記画像を生成するステップが、前記組織の複数の二次元断面画像を生成するステップと、当該断面画像を前記組織の三次元画像と組み合わせるステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記組織をスキャンニングするステップが、リング型トランスデューサで胸部組織を取り囲むステップと、当該リング型トランスデューサを前記胸部組織に対して腹部から背部への方向に沿って通過させるステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項3に記載の方法において、前記組織をスキャンニングするステップと画像を生成するステップとが、前記治療計画中の定期的時間インターバルで繰り返されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、生物力学的特性の代表値セットを生成するステップが、各レンダリング用に前記組織の生物力学的特性の容量平均値を計算して、前記組織の生物力学的特性の容量平均値連続セットを生成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、容量平均値を計算するステップが、各レンダリング用に、前記組織内の音響速度の容量平均値を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、容量平均値を計算するステップが、各レンダリング用に、前記組織内の胸部密度の容量平均値を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、容量平均値を計算するステップが、腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値を計算して、腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値セットを生成するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値を計算するステップが、前記腫瘍組織内の生物力学的特性の値と、当該腫瘍組織を取り囲むバックグラウンド組織内の生物力学的特性の値との差異を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記差異を計算するステップが、前記腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値から、前記バックグラウンド組織の生物力学的特性の容量平均値を減算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法において、前記腫瘍組織の生物力学的特性の容量平均値を計算するステップが、前記腫瘍組織内の音響速度の容量平均値を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法において、代表値セットを生成するステップが、前記生物力学的特性の初期値又はベースライン値を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、代表値セットを生成するステップが、前記レンダリングセットの各々における前記生物力学的特性の空間分布を特徴づけるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記組織における生物力学的特性の傾向を決定するステップが、代表値セットの変化率を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記変化率を計算するステップが、前記代表値セットにおける二又はそれ以上の値に最も良く合致する曲線の傾斜を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法において、前記組織の応答を予測するステップが、前記変化率をスレッシュホールドと比較するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記変化率をスレッシュホールドと比較するステップが、前記変化率を、前記治療計画に先立つ患者の応答を特徴づけるデータに基づくスレッシュホールドと比較するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法において、前記組織の生物力学的特性の傾向を決定するステップが、経時的変数に対する平均値セットのプロットによって形成した曲線の全体形状を分析するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項1に記載の方法において、前記組織の応答を予測するステップが、前記生物力学的特性の傾向をスレッシュホールドと比較するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1に記載の方法において、前記組織の応答を予測するステップが、別の生物力学的特性に対する一又はそれ以上の生物力学的特性の傾向を分析するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1に記載の方法において、前記傾向を決定するステップが、前記連続形態レンダリングセットにおける前記組織内の音響速度の傾向を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1に記載の方法において、前記傾向を決定するステップが、前記連続形態レンダリングにおける前記組織内の音響減衰の容量平均値における傾向を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項1に記載の方法において、前記傾向を決定するステップが、前記連続形態レンダリングセットにおける組織内の音響反響の傾向を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項1に記載の方法において、前記傾向を決定するステップが、前記連続形態レンダリングセットにおけるドップラ測定の傾向を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項1に記載の方法において、前記傾向を決定するステップが、前記連続形態レンダリングセットにおける造影剤取り込み測定の傾向を決定するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項1に記載の方法が更に、前記予測した応答に基づいて前記治療計画を変更するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項32】
患者の組織内の腫瘍の病的応答を治療計画に特徴づける方法において:
前記組織の連続形態レンダリングセットを取得するステップであって、各レンダリングが治療計画中の異なる時点に対応するステップと;
前記レンダリングセット用に前記腫瘍内の音響速度容量平均値セットを生成するステップであって、各容量平均値が対応するレンダリングに基づくものであるステップと;
前記容量平均値セットに基づいて前記腫瘍内の音響速度の変化率を計算するステップと;
前記腫瘍中の音響速度の変化率に基づいて前記治療計画に対する腫瘍の応答を予測するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、連続超音波形態レンダリングセットを取得するステップが、前記腫瘍の複数の二次元断面画像を生成するステップと、当該断面画像を前記腫瘍の三次元画像に組み合わせるステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、超音波連続形態レンダリングセットを取得するステップが、リング型トランスデューサを用いて前記腫瘍組織をスキャンニングするステップと、当該リング型トランスデューサを前記腫瘍組織に対して腹部から背部への方向に沿って通過させるステップと、を具えることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法において、前記腫瘍内の音響速度の変化率を計算するステップが、前記容量平均値セットの二又はそれ以上の値に最も良く合致する曲線の傾斜を計算するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32に記載の方法において、前記腫瘍の応答を予測するステップが、前記治療計画に以前の患者の応答を特徴づけるデータに基づくスレッシュホールドへの変化率を比較するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32に記載の方法が更に、前記予測した応答に基づいて前記治療計画を変更するステップを具えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−519454(P2013−519454A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553077(P2012−553077)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2011/024765
【国際公開番号】WO2011/100691
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512209863)デルフィヌス メディカル テクノロジーズ,インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DELPHINUS MEDICAL TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】