説明

組織を修復する方法およびそのためのコラーゲン生成物

コラーゲン物質を用いて関節組織を修復するための方法およびデバイスを提供する。コラーゲン物質の組成物および関連するキットもまた提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦支援の研究
本発明は、NIH K02 AR049346のもと政府の支援によりなされた。従って、政府は、本発明における一定の権利を有し得る。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、コラーゲン物質を用いて関節組織を修復するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
前十字靱帯(ACL)などの関節内組織は、断裂した後は治癒しない。加えて、ヒトの関節における関節半月および関節軟骨もまた、損傷を受けた後に治癒しないことが度々ある。関節外に見られる組織は、断裂された組織端部を接合し、その後、再構築されて瘢痕を形成して組織を治癒するフィブリン塊を形成することにより治癒する。滑膜性の連結の内部では、フィブリン塊は、膝への損傷の後、形成されないか、またはすぐに溶解され、これにより、軽微な損傷後の関節症および剛性が防止されている。関節は滑液を含有し、これが、正常な関節の作用の一部として、関節における血塊形成を自然に防止する。この線維素溶解プロセスは、関節内または節内組織内での、フィブリン塊スキャフォールドの早発的な損失および組織に対する治癒プロセスの阻害をもたらす。
【0004】
成長因子を用いる靱帯の治癒の促進は大きな関心が示されており、および研究されている分野である。研究の大半が治癒を促すための単一の成長因子の使用に注目している一方で、自然的な創傷治癒プロセスは、血小板および他の細胞により放出される複数の成長因子のゆっくりとした組織化である。インビトロおよびインビボ環境内においてこれの再現を試みるために、先行する研究者らは、複数の成長因子の適用を試験すると共に、これらのサイトカインを数日間または数週間にわたって放出するための徐放性キャリアおよびウイルス性ベクターに注目してきた。これらの研究は、適用された成長因子の組み合わせの、靱帯の創傷治癒へのいくらかの相乗効果を示してきた;しかしながら、高度な適用技術によっても、成長因子の組み合わせ、放出のタイミングおよび放出濃度により、これらの系の最適化は困難である。
【0005】
近年において前十字靱帯の治癒を促すために用いられている代替的な方法は、活性多血小板血漿(platelet−rich plasma, PRP)の適用である。PRPは、通常、血漿(フィブリノゲンおよびフィブロネクチンを含む)および血小板中に見出される細胞外基質タンパク質の組み合わせである。血小板は、靱帯損傷の露出されたコラーゲンにより活性化されると、凝集し始め、血小板由来成長因子(PDGFαα、PDGFαβ、PDGFββ)、トランスフォーミング成長因子−β(TGFβ1、TGFβ2)、血管内皮増殖因子、塩基性線維芽細胞成長因子(FGF2)、IGF−1および上皮成長因子を含む複数の成長因子を放出する。成長因子の放出は、典型的には血小板の活性化の直後に生じ、血小板の寿命(最長で5〜7日間)の間、かなり低めのレベルで持続される。
【0006】
PRPは、血小板が同様の程度で血漿中に濃縮されている場合、活性PDGF−αβおよびTGF−β1の局所的濃度を300%超で増加させるために用いることが可能である。この血小板濃縮の程度は、数々の利用可能な系により達成されることが可能である。インビボで見られるとおり、これらの濃厚血小板により局所的に放出されたサイトカインのこれらのレベルは、高い線維芽細胞DNA合成ならびに、I型コラーゲン産生の上方制御およびコラーゲン組織化の変化をもたらすことが可能であり、実際に、はるかに低い濃度(10ng/ml TGF−β1および20ng/ml PDGF−αβ)の使用が、線維芽細胞増殖、線維芽細胞化学走性、コラーゲン産生およびコラーゲン組織化に影響を与える可能性がある。精製された成長因子濃縮物を超えるPRPの使用は、特にコラーゲン原線維の存在下での、細胞接着をも促す追加的なECMタンパク質の追加的な有益性およびコラーゲン合成をもたらす。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、前十字靱帯の再生または治癒を促進する方法および生成物に対するいくつかの態様に関する。
【0008】
いくつかの態様において、本発明は、5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン、0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリン、中和剤の無菌溶液の組成物であって、ここで、溶液は280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、組成物はトロンビンを含まない。
【0009】
他の態様において、本発明は、1超〜5mg/ml未満の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン、0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリンの無菌溶液の組成物であって、ここで、溶液は280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、組成物はトロンビンを含まない。
【0010】
無菌可溶化コラーゲン、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方、および緩衝塩の乾燥粉末組成物であって、トロンビンを含まない組成物が、本発明の他の態様により提供され得る。
【0011】
他の態様において、本発明は、5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度および6.8〜8.0のpHを有する可溶化コラーゲンの無菌溶液の急速硬化性(quick set)組成物であって、ここで、溶液は280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、溶液は、30℃超の温度への露出の10分間以内にスキャフォールドに硬化する。いくつかの実施形態における溶液は液体またはゲルであり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、この組成物は、緩衝剤をさらに含む。組成物は、6.8〜8.0のpHを有し得る。いくつかの実施形態において、組成物は7.4のpHを有する。いくつかの実施形態において、溶液は4℃の温度で維持される。
【0013】
いくつかの実施形態において、可溶化コラーゲンは15mg/ml超の濃度で存在する。コラーゲンは、いくつかの実施形態においては、I型、II型またはIII型コラーゲンであり得る。コラーゲンは、ペプシン可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲンであり得、または一定の実施形態においてはアテロコラーゲンであり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、各組成物は、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む。他の実施形態において、各組成物は、デコリンおよびバイグリカンの両方を含む。
【0015】
組成物は、抗生物質、抗プラスミン剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、フィブリノゲン、グリコサミノグリカン、不溶性コラーゲン、無毒性架橋剤、または促進剤などの他の構成要素を含み得る。組成物はまた、血小板または白血球を含み得る。他の実施形態において、組成物は中和剤を含み得る。
【0016】
他の態様において、本発明は、5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲンの無菌溶液を調製する工程と、可溶化コラーゲンの無菌溶液を少なくとも30℃の温度に供する工程であって、ここで、可溶化コラーゲンの無菌溶液がコラーゲンスキャフォールドを形成する工程とによる、コラーゲンスキャフォールドを調製する方法である。
【0017】
いくつかの実施形態において、コラーゲンスキャフォールドは、任意の構成要素のいずれかを含むか、または上述の特性のいずれかを有する。
【0018】
1超〜5mg/ml未満の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲンの無菌溶液を調製する工程、および可溶化コラーゲンの無菌溶液を少なくとも30℃の温度に供する工程であって、ここで、可溶化コラーゲンの無菌溶液がコラーゲンスキャフォールドを形成する工程によりコラーゲンスキャフォールドを調製する方法が本発明の他の態様により提供されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、コラーゲンスキャフォールドは、任意の構成要素のいずれかを含むか、または上述の特性のいずれかを有する。他の実施形態において、コラーゲンスキャフォールドは促進剤を含む。
【0020】
他の態様において、5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン溶液を収容する第1の容器、第1の容器または第2の容器中に収容された緩衝塩、および可溶化コラーゲン溶液および緩衝塩から溶液を調製するための説明書を含むキットが提供されている。
【0021】
5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン溶液を収容する容器、血液を収容するためのデバイス、および可溶化コラーゲン溶液およびデバイス中に収容された血液から分離された血液成分からゲルを調製するための説明書を含むキットが本発明の他の態様により提供されている。
【0022】
他の態様においては、本発明は、コラーゲンを含む粉末を収容する容器、血液を収容するためのデバイス、および可溶化コラーゲン溶液およびデバイス中に収容された血液から分離された血液成分からゲルを調製するための説明書を含むキットである。一実施形態において、粉末は中和薬剤を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、コラーゲンスキャフォールドは、任意の構成要素のいずれかを含むか、または上述の特性のいずれかを有する。例えば、いくつかの実施形態において、溶液は液体またはゲルである。
【0024】
一定の実施形態において、緩衝塩は、第1の容器中に収容されており、可溶化コラーゲン溶液の一部である。他の実施形態において、緩衝塩は第2の容器中に収容されている。
【0025】
キットはまた、中和溶液を収容する容器を含み得る。
【0026】
キットはまた、血液を収容するためのデバイスを含み得る。いくつかの実施形態において、血液を収容するためのデバイスは、採血するために用いられることができるシリンジである。他の実施形態において、血液を収容するためのデバイスは、遠心分離チューブである。抗凝固剤は、任意により、血液を収容するためのデバイスに含まれるか、または個別の容器中に含まれ得る。さらに他の実施形態において、キットは、ボルテックスチューブを含む。
【0027】
他の態様による本発明は、対象における断裂した関節組織の端部を、5超〜50mg/ml以下の濃度の、1,000〜200,000センチポアズの粘度および6.8〜8.0のpHを有する可溶化コラーゲン、および0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリンの無菌溶液と接触させる工程であって、ここで、溶液は280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、組成物はトロンビンを含まない工程、ならびに溶液を硬化させて、断裂した関節組織を治療する工程を含む方法である。
【0028】
いくつかの実施形態において、関節組織は関節内組織である。関節内損傷は、例えば、半月板断裂、靱帯断裂または軟骨病変であり得る。
【0029】
他の実施形態において、関節組織は関節外組織である。関節外損傷は、例えば、靱帯、腱または筋肉損傷であり得る。
【0030】
この方法は、断裂した組織の端部を機械的に接合する工程を含み得る。
【0031】
装具(prosthetic device)を、断裂した関節組織の部位に近接した組織に機械的に固定する工程であって、ここで、装具が、誘導コアと該誘導コアの少なくとも一部分に配置される癒着性ゾーンとを有すると共に、断裂した関節組織の部位に近接した組織と誘導コアとの間に微小環境を提供して、断裂した関節組織の部位に近接した組織から誘導コアへの細胞遊走を促進させるよう適合されている工程;ならびに、断裂した関節組織の部位に近接した組織と装具の癒着性ゾーンとの間に結合を形成させる工程により、断裂した関節組織を置換する方法が、本発明の他の態様により提供されている。一実施形態において、断裂した関節組織の部位に近接した組織は骨である。他の実施形態において、コアはコラーゲンスポンジである。
【0032】
他の態様においては、本発明は、対象における断裂した関節組織の端部を、可溶化コラーゲンおよび少なくとも4×10wbc/mlの濃度の白血球の無菌溶液と接触させる工程、および溶液を硬化させて、断裂した関節組織を治療する工程を含む方法である。
【0033】
本発明の制限の各々は、本発明の種々の実施形態を包含することが可能である。従って、いずれか1つの構成要素または構成要素の組み合わせを含む本発明の制限の各々は、本発明の各態様に含まれることが可能であることが予期される。本発明は、その適用においては、以下の明細書に記載されている、または図面に図示されている構成要素の構成および配置の詳細には限定されない。本発明は、他の実施形態が可能であると共に、種々の方法で実施され、または実行されることが可能である。また、本明細書において用いた語法および用語法は説明の目的のためであり、および限定的であるとしてみなされるべきではない。本明細書における「含んでいる(including)」、「含んでいる(comprising)」、または「有している(having)」、「含有している(containing)」、「含んでいる(involving)」およびこれらの変形の使用は、その後に列挙されている項目およびそれらの均等物を、追加の項目と共に包含することを意味する。
【0034】
図は、単に例示的であり、本明細書に開示の本発明を可能にするために必要とはされない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
(図1)活性化ウシトロンビン(BT)および活性化コラーゲン(CENTR(遠心分離PRP)、PC(濃厚血小板)および低RBC濃厚血小板)PRPヒドロゲルからの経時的なPDGF−αβの放出を示すグラフである。
(図2)活性化ウシトロンビン(BT)および活性化コラーゲン(CENTR、PCおよび低RBC濃厚血小板)PRPヒドロゲルからの経時的なTGF−β1の放出を示すグラフである。
(図3)血小板活性化後12時間での、PRP中の血小板濃度の関数としてのTGF−β1放出を示すグラフである。
(図4)血小板活性化後12時間での、PRP中の血小板濃度の関数としてのPRPゲルからのPDGF−αβ放出を示すグラフである。
(図5)細胞を播種したPRPヒドロゲルからの経時的なPDGF−αβ溶出を示すグラフである。経時的な負の値はPDGF−αβの細胞ベースでの消尽を示唆する。
(図6)細胞を播種したPRPヒドロゲルからの経時的なVEGF溶出を示すグラフである。経時的な正のトレンドは、ACL細胞による、VEGFの消尽より多い継続的な産生を示唆する。
(図7)ゲル中での細胞増殖を示すグラフである。
(図8)ACL細胞性ゲル収縮の結果を示すグラフである。
(図9)手術室において動物自身のPRPと混合したコラーゲンスラリー/緩衝剤で治療したインビボブタ完全ACL横断切片の結果を示すグラフであり、ここで、混合物は切断された靱帯端部の間の隙間に注入された。
(図10)培養時間およびコラーゲン濃度の関数として細胞数を示すグラフである。
(図11)本発明のコラーゲン溶液の構成要素を示すSDS−PAGEゲルのスキャンである。
(図12)血小板活性化後12時間での、PRPにおける顆粒球濃度の関数としてVEGF放出を示すグラフである。
(図13A)混合時間の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する平均弾性係数である。

は30秒と120秒の間の統計的に有意な差を表す。

は60秒と120秒の間の統計的に有意な差を表す。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図13B)混合時間の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する弾性係数における平均である。

は30秒と120秒の間の統計的に有意な差を表す。

は60秒と120秒の間の統計的に有意な差を表す。エラーバーは±1標準偏差を表す。良好
(図14A)混合速度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する平均弾性係数。3つのグループ間の差は統計的に有意ではなかった。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図14B)混合速度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する弾性係数における平均である。3つのグループ間の差は統計的に有意ではなかった。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図15A)加熱速度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する平均弾性係数である。グループ間での差は統計的に有意ではなかった。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図15B)混合速度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する弾性係数における平均である。グループ間での差は統計的に有意ではなかった。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図16A)注入温度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する平均弾性係数である。

は、24℃〜26℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。

は、26℃〜28℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図16B)注入温度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する弾性係数における平均である。

は、24℃〜26℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。

は、26℃〜28℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図17)注入温度の関数としてのコラーゲン−PRPヒドロゲルに対する45°までの平均時間である。

は、24℃〜26℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。

は、26℃〜28℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。

は、28℃〜30℃とすべての他のグループの間の統計的に有意な差を表す。エラーバーは±1標準偏差を表す。
(図18)破損強度対注入時の温度のインビボ結果を示すグラフである。
(図19)無処置ACLを伴うヤギの膝のコロナル(A)画像である。黒い矢印がACL自体を示す。
(図20)コラーゲングループ(サジタル画像)において治癒しているグラフト。このグラフトは、移植時と同等の外観に見える(白い矢印);しかしながら、瘢痕塊がグラフトの後ろに存在している(黒い矢印)。
(図21)コラーゲン−血小板グループにおいて治癒しているグラフト。このグラフトは、移植時より大きく、全体的に滑液化されていて、維管組織と浸潤しているように見える。良好な統合が挿入部位で観察された。(21A=コロナル画像、21B=サジタル画像)。
(図22)血小板数の関数としての関節の強度を示すグラフである。
(図23A)回帰95%信頼帯での二変量散布図である。血小板数の関数としての破断荷重を示す。
(図23B)回帰95%信頼帯を有する二変量散布図である。血小板数の関数としての剛性を示す。
(図24)インストロンマシーン(Instron Machine)に組み込まれたAP弛緩治具である。大腿骨骨幹軸が、テストのために0〜90度の屈曲となるよう膝を回転させることが可能である上部固定具に固定されている。本実験におけるすべてのテストは、60度の屈曲での膝で実施した。
(図25)荷重対転移データをテストするAP弛緩のサンプルグラフである。本テストは、30度屈曲された膝で、前側および中央骨孔の両方を通して結束された縫合に対するものであった。得られたAP弛緩は、曲線の2つの垂直方向の領域の間のx軸上の距離として計測して8.7mmである。
(図26)ブタの膝におけるACL挿入の解剖学である。ブタには、ACLの2つの個別の脛骨の挿入部位がある(1つ目が内側半月の前側ホーンアタッチメントの後ろの後外側(白い矢印)であり、2つ目が内側半月の前側ホーンアタッチメントと、外側半月の前側ホーンアタッチメントとの間の前正中位置(鉗子が外側半月の前側ホーンアタッチメントを後退させている)である)。
(図27)前側、中央および後側脛骨孔位置の写真である。白い矢印が、それぞれ3つの部位を通るヒューソン(Hewson)スーチャーパッサーの出口部位を強調している。
(図28)種々のテスト位置に対する6つの膝の各々の個体値である。無処置の膝弛緩(カラム1)は、縫合糸が、前側または中央骨孔を通って、60度の屈曲の膝で結束されたグループ(カラム6、8および12)において最も良好に復元された。
(図29)すべての修復条件に対する膝の無処置AP弛緩からの差である。バーは平均を表わし、エラーバーは平均の標準誤差を表す。すべてのグループについてN=6である。無処置から有意差が認められなかったグループはアスタリスクでマークされている。
(図30)2日目および10日目で計測した、スポンジ/PRP調製物中の細胞数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明の詳細な説明
本発明の態様は、傷害を受けた関節組織を修復するための組成物および方法に関する。本発明は、例えば、断裂または裂傷を受けた靱帯などの関節組織を修復するための新規のコラーゲンベース組成物および配合物に関与する。この組成物は、単独で、または三次元(3D)スキャフォールドあるいは他の慣習的な修復デバイスと組み合わせて用いられ得る。この材料は、靱帯および繊維の断裂端部の間の結合をもたらすか、または裂傷を受けた靱帯に対して損傷の後に、単独で、または他のデバイスとの組み合わせで置換をもたらし、適切な治癒細胞の瘢痕および新たな組織を形成するための遊走を促し、それ故、治癒および再生を促進する。
【0037】
本発明の組成物および方法の使用は、特定の組織タイプの修復、置換、再建または増強を含むことが意図される。関節損傷は、関節内および関節外損傷の両方を含む。関節内損傷は、例えば、関節半月、靱帯および軟骨に対する損傷を含む。関節外損傷は、これらに限定されないが、靱帯、腱または筋肉に対する損傷を含む。それ故、本発明の方法は、前十字靱帯(ACL)、外側側副靱帯(LCL)、後十字靱帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)、掌側橈骨手根靭帯、背側橈骨手根靭帯、尺側側副靱帯、橈側側副靱帯、関節半月、関節唇、例えば関節唇および寛骨臼唇、軟骨、例えば、ならびに損傷後に滑液に露出されている他の組織に対する損傷の治療に用いられ得る。
【0038】
治療される損傷は、例えば、裂傷または断裂を受けた靱帯であり得る。靱帯は、コラーゲン繊維から構成される短いバンドの強靭な線維状の結合組織である。靱帯が、骨を他の骨と結合して関節を形成する。裂傷を受けた靱帯は、靱帯は結合されたままであるが傷害を受けて、靱帯に裂傷が生じているものである。この裂傷は、いかなる長さまたは形状であってもよい。断裂を受けた靱帯は、靱帯の2つの個別の端部が形成される完全に切断された靱帯である。断裂を受けた靱帯は、同様のまたは異なる長さの2つの靱帯端部を形成し得る。断裂は、靱帯断端が一端に形成されるようなものであり得る。
【0039】
断裂を受けた前十字靱帯の一例は、単に例示的な目的のためだけに記載される。前十字靱帯(ACL)は、膝関節の骨を結合する4本の強固な靱帯の1つである。ACLの機能は、膝に安定性をもたらし、膝関節に掛かる応力を最低限とすることである。ACLは、大腿骨、大腿と相対的な下腿骨、脛骨の過剰な前方への動作を抑制し、膝の回転動作を拘束する。前十字靱帯は、大腿骨と脛骨との間の結合をこれ以上は形成しないよう断裂される。断裂を受けたACLのもたらされる端部はいかなる長さでもあり得る。これらの端部は、同等の長さであり得、または一方の端部が他方より長さが長くてもよい。
【0040】
傷害を受けた組織の修復は、コラーゲンベースの修復材料を、単独でまたは組織治癒デバイスと組み合わせて用いて達成される。組織治癒デバイスは傷害を受けた組織の修復を補助する修復材料以外のデバイスであり、例えば、スポンジおよびグラフトなどのスキャフォールド、ならびに、縫合糸およびアンカーなどの機械的デバイスを含む。
【0041】
この傷害または損傷を受けた組織は、可溶化コラーゲンの無菌溶液である新規な組成物で治療される。本明細書において用いられるところ、可溶化コラーゲンとは、I、II、III、IV、V、X型コラーゲンの1つ以上を含む酵素可溶化コラーゲンである。好ましくは、酵素可溶化コラーゲンは、材料の抗原性を低減させるために、線維性コラーゲンではなくトロポコラーゲンまたはアテロコラーゲンである。コラーゲンは、ソースから単離されて、機械的に刻まれ、および水性または塩溶液ではなく酵素ベースの酸媒体中に離散される。例えば、コラーゲンは、ペプシン中に可溶化され得る。コラーゲンを機械的に刻むステップは、凝集物および塊を含まない均一な稠性の材料をもたらす均質化のために重要である。
【0042】
可溶化の最中の溶液のpHは極度に酸性であり、例えばpH=2.0が、通常、ペプシンとの可溶化の最中に達せられる。材料の保管のために好ましいpHは、2.0〜6.5である。好ましくは、コラーゲンは、保管の最中および調製の全体を通して低温(4℃または氷上)に維持される。
【0043】
一実施形態において、可溶化コラーゲンはI型コラーゲンである。本明細書において用いられるところ、「I型コラーゲン」という用語は、2本のα1(I型)鎖と1本のα2(I型)鎖により特徴付けられる(ヘテロ三量体コラーゲン)。α1(I型)鎖は約300nmの長さである。I型コラーゲンは主に骨、皮膚(シート様構造で)、および腱(ロープ様構造で)に見出される。I型コラーゲンは、プロテオグリカンとして知られる他の結合組織構成要素のタンパクコアとのその反応により、さらに特徴付けられる。I型コラーゲンは、細胞遊走を促進させるシグナル領域を含む。
【0044】
このコラーゲンは、合成または天然のものである。コラーゲンの天然ソースは、動物またはヒトソースから入手し得る。例えば、ラット、ブタ、雌ウシ、またはヒト組織またはいずれかの他の種の組織に由来し得る。腱、靱帯、筋肉、筋膜、皮膚、軟骨、尾部、または膠原性組織のいずれかのソースが有用である。次いで、材料が、同一のまたは異なる種の対象に移植される。「異種間」および「異種移植」という用語は、レシピエント以外の種を原産とする、またはこのような種に由来する細胞または組織を指す。あるいは、コラーゲンは自家細胞から入手され得る。例えば、コラーゲンは、培養された患者の線維芽細胞に由来し得る。次いで、コラーゲンは、その患者または他の患者に用いられ得る。「自家性」および「自家グラフト」という用語は、レシピエントを原産とする、またはレシピエントに由来する組織または細胞を指し、一方で、「同種」および「同種移植」という用語は、レシピエントと同一の種のドナーを原産とする、またはこれに由来する細胞および組織を指す。コラーゲンは、手術前に随時単離され得る。
【0045】
この可溶化コラーゲンは溶液中に1〜50mg/mlの濃度であり得る。いくつかの実施形態において、可溶化コラーゲンのこの濃度は5mg/ml超〜50mg/ml以下である。コラーゲンの濃度は、例えば、10、15、20、25、30、35、または40mg/mlであり得る。このような高濃度のコラーゲンが、本発明の方法について望ましい粘度レベルをもたらすために有用である。最も市販されているコラーゲン溶液は、濃度の低いものである。より高い濃度は、例えば本明細書に記載の方法を用いて達成されることが可能である。他の実施形態において、可溶化コラーゲン溶液は、1mg/ml〜5mg/ml未満の濃度を有する。このようなより低い濃度のコラーゲンが用いられる場合、本発明の方法について有用とするように材料の粘度を増加させるために追加の構成要素またはステップがとられる。粘度を誘起させる方法または構成要素の例は本明細書に記載されている。
【0046】
溶液は、最終組成物の所望流動特性をもたらすよう、コラーゲン含有量および他の構成要素を変化させて調製されるべきである。いくつかの実施形態において、この溶液は、1,000〜200,000センチポアズのコラーゲン粘度を有する。
【0047】
コラーゲン溶液は、インビボ用途用では無菌である。無菌組成物をもたらすために、溶液は滅菌され得、および/または溶液の構成要素は無菌技術を用いて無菌条件下で単離され得る。組成物の最終的に所望される特性は、いくつかの滅菌技術は粘度などの特性に影響し得るために、どのように溶液が滅菌されるかが決定要因であり得る。すなわち、天然ソースから単離されたコラーゲンといった溶液の一定の構成要素が滅菌されるべきではない場合、コラーゲンを添加する前に残りの構成要素を組み合わせて滅菌することが可能であり、または構成要素の各々を個別に滅菌することが可能である。溶液は、次いで、滅菌された構成要素の各々と無菌技術を用いて無菌条件下で単離されたコラーゲンとを混合することにより形成されることが可能である。滅菌は、例えば、およそ約115℃〜130℃、好ましくは、約120℃〜125℃の温度で約30分間〜1時間オートクレービングすることにより達成され得る。ガンマ線が構成要素を滅菌するための他の方法である。エチレンオキシドでの滅菌と共に、ろ過もまた可能である。
【0048】
可溶化コラーゲン溶液は、不溶性コラーゲン、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンなどの他の細胞外基質タンパク質(ECM)、フィブロネクチン、ラミニン、エンタクチン、デコリン、リシルオキシダーゼ、架橋性前駆体(還元性および非還元性)、エラスチン、エラスチン架橋前駆体;細胞膜タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、核タンパク質、サイトソームタンパク質および細胞表面受容体などの細胞構成要素;PDGF、TGF、EGFおよびVEGFなどの成長因子;ならびにヒドロキシプロリンなどの追加の構成要素を含有し得る。いくつかの実施形態において、ヒドロキシプロリンは、溶液中に1〜3.0μg/mlの濃度で存在し得、これはコラーゲン溶液における総タンパク質の8〜9%であり得る。いくつかの実施形態において、ヒドロキシプロリンは、いずれかの緩衝剤の添加の前に、コラーゲン溶液中に0.5〜4.0μg/mlの濃度で存在する。いくつかの実施形態において、コラーゲン溶液はトロンビンを含まない。本明細書において用いられるところ、「トロンビンを含まない」とは、1%未満のトロンビンを有する組成物を指す。いくつかの実施形態において、トロンビンを含まない、とは検出不可能なレベルを指す。他の実施形態において、これは、0%トロンビンを指す。
【0049】
コラーゲンは1種以上の緩衝剤と混合されて、その後の細胞との混合および身体への適用のために望ましいpH範囲を有する溶液がもたらされる。理想的には、緩衝剤溶液は、無毒性の構成要素または残渣を有し、生理学的モル浸透圧濃度を与えおよび溶液を生理学的pHで維持する緩衝能を有する。本発明により用いられる好ましい緩衝剤はヘペス緩衝剤である。しかしながら、無毒であると共に、pHおよび/またはモル浸透圧濃度を本明細書に記載のレベルに制御することができるいずれの緩衝剤が、本発明によれば有用である。ヘペスは、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸である(分子量および構造=238.31、C18S)。例えば、本発明者らは、以下の緩衝剤溶液が適切なpHおよびモル浸透圧濃度値を達成することを見出した。
0.1Mヘペス
10×ハムF−10培地
100×抗生物質/抗真菌性溶液(メディアテック(Mediatech)によるセルグロー(CellGro)製、10,000I.U.ペニシリン、10,000μg/mLストレプトマイシン、25μg/mLアンホテリシンB)
滅菌超純水
7.5%重炭酸ナトリウム
NaHCO
【0050】
10×ハムF−10の構成要素としては以下が挙げられる。


【0051】
上述の緩衝剤は例示である。要素のほとんどは必須ではなく、例えば、適切なモル浸透圧濃度が維持される限りにおいては滅菌水を用いることは必須ではない。10×F10溶液もまた任意である。緩衝剤は、10×F10または同等の溶液なしで調製され得る。さらに、グルコースまたは他の糖質が10×F10の代わりに用いられ得る。
【0052】
この緩衝剤は、抗生物質を含んでいても含んでいなくてもよい。例えば、抗生物質は、上述のペニシリン/ストレプトマイシンであり得る。あるいは、参照により本明細書に援用される、レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences(マックパブリッシング(Mack Publishing Co.)、ペンシルベニア州イーストン(Easton PA))に記載のいずれかのものなどの、疾病の治療または予防のためにヒト患者に用いられる臨床的抗生物質であり得る。
【0053】
緩衝剤は、単一の構成要素であり得、または同時にあるいは異なる時間で添加される複数の構成要素であり得る。緩衝剤が単一の構成要素である場合、これは、所望のpH範囲およびモル浸透圧濃度を有する溶液をもたらすことができる特性を有しているべきである。いくつかの事例においては、少なくとも2種の緩衝剤構成要素、コラーゲン緩衝剤溶液および中和緩衝剤を有することが望ましい。コラーゲン緩衝剤溶液は、溶液中にコラーゲンを調製するために用いられ得る。いくつかの事例においては、調製されたコラーゲン溶液は長時間保存され得る。
【0054】
中和剤とも称される中和緩衝剤は、溶液として、または乾燥塩の形態でコラーゲン溶液に添加され得る。一旦中和緩衝剤が添加されたら、溶液は低温に維持されるべきである。材料が長時間室温で処理される場合には、中和緩衝剤は保管後にコラーゲン溶液に添加されることが好ましい。それ故、中和薬剤を含まないコラーゲン溶液が事前に調製され、保管され得、またはこれは、手術中に調製されて、すぐに用いられる。中和薬剤は、手術時に、または事前に添加され得るが、中和されたコラーゲン溶液は、好ましくは、低温(4℃または氷上)に維持されているべきである。
【0055】
中和剤がコラーゲン溶液に添加された後、250〜350mOsm/kgのモル浸透圧濃度が達成されることが好ましい。モル浸透圧濃度は、溶液中の浸透圧的に活性な粒子の総数数値であり、その溶液中に存在するすべての溶質のモル濃度の総和に等しい。これは、1リットルの溶液当たりの溶質の浸透圧モルの尺度として定義される。モル浸透圧濃度は、1キログラムの溶剤当たりの溶質の浸透圧モルの尺度である。当業者は、浸透圧計を用いて計算値を得ることにより溶液のモル浸透圧濃度を測定することが可能である。以下の式が溶液のモル浸透圧濃度を測定するために用いられる。
Osm=φnC
式中、
・φは、浸透圧係数であり、溶質の解離度を説明する。φは0〜1であり、ここで、1は100%解離を表す。
・nは、分子が解離する粒子の数である。
・Cは、溶液のモル濃度である。
【0056】
さらに、中和剤が添加された後、好ましくは6.8〜9.0のpHが達成される。いくつかの実施形態において、6.8〜8.0のpHが好ましい。他の実施形態において、7.2〜7.6またはさらには7.4のpHが好ましい。
【0057】
好ましくは、緩衝剤は、コラーゲン溶液に添加される前に無菌である。滅菌されていない場合には、コラーゲン溶液に添加される前に滅菌されるべきであり、またはコラーゲン/緩衝剤溶液の全体が、本明細書に記載のとおり滅菌されるべきである。緩衝剤の構成要素は滅菌されていなくてもよく、コラーゲンと混合される前の時点でろ過されてもよい。
【0058】
一定の実施形態において、コラーゲン溶液は、血小板または白血球などの細胞と混合される。いくつかの実施形態において、細胞は、治療されるべき被験者に由来する。他の実施形態において、細胞は、被験者と同種であるドナーに由来する。
【0059】
一定の実施形態において、血小板は、多血小板血漿(PRP)として入手され得る。この構成要素は、フィブリンおよび血小板ならびに、血中に見出される他の血漿タンパク質を含有する。いくらかの白血球(WBC)および赤血球(RBC)もまたこの調製物中に見出されてもよい。好ましくは、PRPの血小板濃度は、少なくとも100K/ml、および好ましくは300K/ml超である。例えば、血小板濃度は、患者の血液の少なくとも1×、および好ましくは1.5×超であり得る。細胞の安定性を維持するために、生理学的pH(すなわち、6.2〜7.6)および生理学的血漿モル浸透圧濃度(すなわち、280〜360osms/kg)が用いられる。PRPの機能を促進するために、好ましくは、PRPは、患者またはドナーから採取されてから7日間以内に用いられる。度々、PRPは、手術時に患者から単離される。好ましくは、20〜24℃(室温)で保管される。しかしながら、細胞の単離および保管は、活性構成要素の活性度を維持するために当該技術分野において公知である、いずれの方法により、いかなる期間の間にわたって達成されてもよい。
【0060】
非限定的な例において、血小板は、対象の血液から当業者に公知である技術を用いて単離されてもよい。一例としては、血液サンプルは、700rpmで20分間遠心分離され、多血小板血漿上層が取り出され得る。血小板密度は、当業者に公知であるとおり細胞数を用いて判定される。多血小板血漿は、コラーゲンと混合されて、患者に適用され得る。
【0061】
非限定的な例において、白血球はまた、対象の血液から当業者に公知である技術を用いて単離され得る。一例としては、血液サンプルは、700rpmで20分間遠心分離され、白血球を含有する軟膜が取り出され得る。WBC密度は、当業者に公知であるとおり細胞数を用いて判定され得る。WBCは、コラーゲンと混合されて、患者に適用されることが可能である。
【0062】
コラーゲン溶液はまた、抗プラスミン剤、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、他のタンパク質または酵素阻害剤、プラスミンに対する抗体、組織プラスミノーゲン活性化因子またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子に対する抗体、無毒性架橋剤、カルシウム、ブドウ糖または他の糖質および生理学的濃度での細胞栄養分のいずれか1種以上を含み得る。抗プラスミン剤としては、これらに限定されないが、活性化因子におけるプラスミノーゲン、プラスミノーゲン結合α抗プラスミン、非プラスミノーゲン結合α抗プラスミン、αマクログロブリン、αプラスミン阻害剤、α抗プラスミン、およびトロンビン可活性化線維素溶解阻害剤などの抗線維素溶解酵素が挙げられる。他のタンパク質または酵素阻害剤としては、これらに限定されないが、コラゲナーゼ、トリプシン、マトリックスメタロプロテアーゼ、エラスターゼおよびヒアルロニダーゼの阻害剤を含む抗酵素タンパク質が挙げられる。ECMは、原線維および非線維性構成要素から構成されている。主な原線維タンパク質は、コラーゲンおよびエラスチンである。ECMとしては、例えば、コラーゲン、フィブリノゲン、プロテオグリカン、エラスチン、ヒアルロン酸、ならびに;ラミニン、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびエンタクチンを含む種々の糖タンパク質の幅広い組み合わせが挙げられる。無毒性架橋剤としては、これらに限定されないが、組織トランスグルタミナーゼ、リシルオキシダーゼ、フィブリン、フィブロネクチン、および還元性および非還元性架橋前駆体分子が挙げられる。
【0063】
上述の追加の構成要素を含むまたは含まないコラーゲン溶液は、液体またはゲル材料として保管され得、または乾燥されて、粉末として保管され得る。例えば、コラーゲン溶液は、粉末をもたらすために凍結乾燥され得る。この粉末は、次いで、緩衝剤溶液中に還元され得る。中和剤は、還元緩衝剤中に存在し得、または個別の緩衝剤あるいは塩として添加され得る。
【0064】
最終コラーゲン溶液は、コラーゲン、緩衝剤およびPRPまたはWBCなどの細胞を含む。これらの構成要素は、積層されるのではなく顕微鏡レベルで混合される。好ましくは、7.4のpHおよび約1,000センチポアズの最低粘度を有する。好ましくは、粘度は、1,000〜200,000センチポアズの範囲内である。
【0065】
「固体性」の程度は用途によって異なり得るが、一般的には、本発明のコラーゲン溶液は、液体〜ゲル様〜固体様の全ての範囲における粘度を示すこととなる。最適な粘度を有するコラーゲン溶液は、コラーゲンの濃度に応じてコラーゲンのソースから直接的に達成することが可能である。しかしながら、最適な粘度を有さないコラーゲン溶液を処理して正しい粘度とすることが可能である。コラーゲン溶液の粘度は、溶液の希釈により低下され得る。より低い粘度コラーゲン溶液の粘度は、ゲル化を高めるために増加され得る。ゲル化は、液体様組成物から固体またはゲル様組成物への粘度の変化である。ゲル化または溶液の粘度は、以下:特にこれらに限定されないが、不溶性コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、およびセルロースを含む他のECM分子;特にこれらに限定されないが、血小板および線維芽細胞を含む細胞の追加;特にこれらに限定されないが、組織トランスグルタミナーゼ、リシルオキシダーゼ、フィブリン、およびフィブロネクチンを含む無毒性架橋剤;ならびに特にこれらに限定されないが、アルギン酸塩および合成充填材材料を含む低いモル浸透圧濃度を有する他の高粘度材料の1種以上を添加することにより増加され得る。
【0066】
本発明のコラーゲン溶液を調製するための方法および使用方法の一例が提供されている。本発明の方法はそれほど限定的ではなく、この記載は、単に例示的目的のために提供されている。コラーゲンは、適用時(手術)の前6週間〜6ヶ月にラットの尾から単離されると共に処理される。緩衝剤溶液もまた事前に混合される。この緩衝剤は、コラーゲン−緩衝剤混合物が7.4のpHを有すると共に血漿と等張性であることとなるよう設計される。PRPは、大口径針および抗凝固剤を用いて手術のための麻酔の最中に、患者から採血した血液から入手される。血液は遠心分離されて、正常値の少なくとも1×の血小板数のPRPが得られる。手術部位の準備ができてから、コラーゲンおよび緩衝剤(中和剤を含有する)が、先ず、ボルテックスを利用して混合される。次いで、PRPは、中和済コラーゲン−緩衝剤混合物に添加される。PRPおよびコラーゲンが混合プロセスを利用して組み合わされて修復材料が提供される。得られたゲルが、関節創傷部位に関節鏡視下的に注入されて治癒プロセスが促進される。
【0067】
本明細書において用いられるところ、「修復材料」という用語は、コラーゲン溶液と被験者に送達されるべき細胞との最終配合物を指す。
【0068】
このコラーゲン溶液または修復材料は、成長因子、抗生物質、不溶性または可溶性コラーゲン、架橋剤、トロンビン、幹細胞、遺伝子改変線維芽細胞、血小板、水、血漿、細胞外タンパク質および細胞培地助剤などの追加の材料を含み得る。あるいは、コラーゲン溶液または修復材料は、特にトロンビンといったこれらの構成要素のいずれかが除外されていてもよい。追加の材料は、細胞増殖、細胞外マトリックス産生、稠性、疾病または感染症の抑制、浸透圧、栄養用経路が形成されるまでの細胞栄養分、およびコラーゲン溶液または修復材料のpHに作用させるために添加され得る。これらの追加の材料のすべてのまたは一部は、コラーゲン溶液または修復材料と移植の前あるいはその最中に混合されてもよく、または、その代わりに、追加の材料は、修復材料が配置された後に欠陥部の近傍に移植されてもよい。
【0069】
普通、コラーゲン溶液は、事前にまたは手術時に調製される。好ましくは4℃〜およそ室温の温度でPRPまたはWBCが添加される。PRP/WBCコラーゲン混合物は、使用されるまで氷上に維持される。使用される直前に混合物は24〜30℃(好ましくは28℃)の温度に温められ、次いで、迅速に被験者に注入され得る。被験者において、材料は、30℃を超える体温に供されてゲルを形成する。
【0070】
本発明の修復材料は、上述したとおり、組織に単独で直接的に適用され得、またはスキャフォールドなどの組織治癒デバイスと組み合わせて用いられ得る。スキャフォールドは、グラフトにおけるものなどの合成または天然であり得る。デバイスまたはスキャフォールドは、対象への移植のために有用な形状のいずれであってもよい。スキャフォールド、例えば、管状、半管状、円柱状(中実の円柱または中空の空洞を有する円柱のいずれかを含む)、チューブ、中空の空洞が画定されるよう平坦なシートをチューブ状に巻いたもの、液体、修復空間の形状に適合するアモルファス形状、「チャイニーズフィンガートラップ」設計、トラフ形状、または正方形であることが可能である。当業者に公知であるデバイスのスキャフォールド用に好適な他の形状がまた本発明において考慮される。
【0071】
このスキャフォールドは、対象への移植前に修復材料で前処理されてもよい。例えば、スキャフォールドは、修復部位への移植の前または最中に修復材料に浸漬され得る。修復材料は、移植の前または最中にスキャフォールドに直接的に注入され得る。修復材料は、修復時にスキャフォールド中に注入され得る。
【0072】
スキャフォールドは修復部位に挿入されることができ、いずれの場合においても組織の完全性および構造が維持されるように、断裂を受けた組織の端部間に、または裂傷を受けた組織の周囲に結合を形成する。スキャフォールドは、好ましくは、滑液による分解に対していずれかのいくらかの耐性を有する圧縮性の弾性材料製である。滑液は、正常な関節の作用の一部として、自然に血塊形成を防止する。この線維素溶解プロセスがスキャフォールドの早期の分解をもたらして、組織の治癒プロセスを乱すこととなる。この材料は、天然または合成であり得、ポリマーおよびコポリマーなどの耐久性のまたは生分解性の材料であり得る。スキャフォールドは、例えば、コラーゲン繊維、コラーゲンゲル、発泡ゴム、天然材料;ゴム、シリコーンおよびプラスチックなどの合成材料;粉末圧縮材料、有孔材料、または圧縮性固体材料から構成されていることが可能である。
【0073】
圧縮および膨張が可能であるスキャフォールドが特に望ましい。例えば、スポンジスキャフォールドは、修復部位への移植の前または最中に圧縮され得る。圧縮されたスポンジスキャフォールドは、修復部位の内部でのこのスポンジスキャフォールドの膨張を可能とする。本発明に係る有用なスキャフォールドの例は、各々の全内容が本明細書において参照により援用される、米国特許第6,964,685号明細書および米国特許出願公開第2004/0059416号明細書および同2005/0261736号明細書に見出される。
【0074】
天然マトリックスの重要なサブセットは、靱帯における主な構造構成要素であるコラーゲンから主に形成されたものである。コラーゲンは、可溶性または不溶性のタイプのものであることが可能である。好ましくは、コラーゲンは、可溶性であり、例えば、酸性または塩基性である。例えば、コラーゲンは、I、II、III、IV、V、IXまたはX型であることが可能である。好ましくは、コラーゲンはI型である。より好ましくは、コラーゲンは可溶性I型コラーゲンである。I型コラーゲンは、ヒト前十字靱帯の細胞外マトリックスの主な構成要素であり、生物工学的スキャフォールドのベースに対する選択の例を提供する。コラーゲンは、主に線維状形態で生じて、体積率、繊維配向、およびコラーゲンの架橋度を変更することにより、大きく異なる機械特性を有する材料の設計を可能とする。細胞浸潤速度およびスキャフォールド分解の生物学的特性はまた、孔径、架橋度を変更することにより、ならびに、グリコサミノグリカン、成長因子、およびサイトカインなどの追加のタンパク質を使用することにより変更され得る。加えて、コラーゲン−ベースのバイオマテリアルは、患者自身の皮膚から製造されることが可能であり、それ故、移植片の抗原性が最低限とされる(フォード(Ford)ら、105、Laryngoscope、p.944〜948(1995年))。
【0075】
天然または合成構成要素のいずれかから形成された数多くのマトリックスが、組織修復および再建における使用のために検討されてきている。天然マトリックスは、加工されたまたは再構成された組織構成要素(コラーゲンおよびGAGなど)から形成される。天然マトリックスは、細胞とおよびそれらの環境との間の相反的な相互作用に対して通常関与する構造を模倣するため、これらは最低限の修飾を伴う細胞制御因子として作用し、細胞に、再生のために必要条件である移植された材料を再構築する能力を与える。
【0076】
合成マトリックスは、主に高分子材料から形成される。合成マトリックスは、注意深く定義された化学組成および構造配置の一連の利点を提供する。いくつかの合成マトリックスは分解性ではない。非分解性マトリックスは修復を助け得る一方で、非分解性マトリックスは再構築によっては置換されず、従って、靱帯を完全に再生させるために使用することはできない。磨耗した粒子の生成に関する問題により、外来性の材料を関節内に永久的に残すことは望ましくなく、それ故、分解性材料が、再生における作業については好ましい。分解性合成スキャフォールドは、操作されて分解速度を制御することが可能である。
【0077】
スキャフォールドは、その形状が維持されるよう中実の材料であっても、またはその形状および/またはサイズを変更することができる半中実材料であってもよい。スキャフォールドは、必要に応じて収縮または膨張させるよう膨張性材料で形成され得る。材料は、血漿、血液、他の体液、液体、ヒドロゲル、またはスキャフォールドが接触することとなる、あるいはスキャフォールドに添加される他の材料を吸収することができる。
【0078】
スキャフォールド材料は、タンパク質、乾燥凍結材料、またはいずれかの他の好適な材料であることができる。タンパク質は、合成、生体吸収性または天然タンパク質であることができる。タンパク質は、特に限定されないが、フィブリン、ヒアルロン酸、またはコラーゲンを含む。スキャフォールド材料は、治療目的用の、特にこれらに限定されないが、ホルモン、サイトカイン、成長因子、凝固因子、抗プロテアーゼタンパク質(例えば、α1−アンチトリプシン)、血管新生タンパク質(例えば、血管内皮増殖因子、線維芽細胞成長因子)、血管新生抑制タンパク質(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン)、および血液中に存在する他のタンパク質を含む治療的タンパク質;骨形態発生タンパク質(BMP)、骨誘導因子(IFO)、フィブロネクチン(FN)、内皮の細胞成長因子(ECGF)、セメント質アタッチメント抽出物(CAE)、ケタンセリン、ヒト成長ホルモン(HGH)、動物成長ホルモン、上皮増殖因(EGF)、インターロイキン−1(IL−1)、ヒトαトロンビン、トランスフォーミング成長因子(TGF−β)、インスリン様成長因子(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF、bFGF等)、および歯周靱帯走化性因子(PDLGF)を含み得る。乾燥凍結材料は、液体、ゲルまたは他の液体が添加され、または接触することとなったときに膨潤することができるものである。
【0079】
この修復材料はまた、ACLグラフトなどのグラフトであるスキャフォールドと組み合わせて用いられ得る。数々のタイプのACLグラフトが、ACL再建術における外科医による使用に利用可能である。グラフトは、例えば膝蓋骨−腱−骨グラフト、または膝腱グラフトといった、患者から採取された自家グラフトであり得る。あるいは、グラフトは、異種移植片、同種移植片、または合成ポリマーグラフトであることが可能である。同種移植は、屍体から採取され、適切に処理されると共に消毒され、好ましくは滅菌された靱帯組織を含む。異種移植片は、例えばブタの組織などの動物性ソースから採取した結合性組織を含む。典型的には、異種移植片は、免疫応答を排除しまたは最低限とするために、適切に処理されていなければならない。合成グラフトは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエステルおよび他の従来の生体適合性生体吸収性または非吸収性ポリマーなどの合成ポリマー;ならびに本明細書に記載のスキャフォールドなどの複合体製のグラフトを含む。
【0080】
組織治癒デバイスはまた、縫合糸およびアンカーなどの機械的デバイスを含む。アンカーは、骨または組織に対して安定なアタッチメントを形成するよう、骨または組織中に挿入されることができるデバイスである。いくつかの事例においては、アンカーは、所望の場合には骨から除去されることが可能である。アンカーは、一端に鋭利な先端と縦方向に軸を有する本体とを有するコニカル形状であり得る。アンカーの本体は、その縦方向の軸に沿って直径が大きくなってもよい。アンカーの本体は、アンカーをねじ込んで配置するために好適な溝が含まれていてもよい。アンカーは、アンカー本体の基部に、1本以上の縫合糸が通過し得るようなアイレットを含み得る。アイレットは楕円形または円形であり得、1本以上の縫合糸が貫通し、アイレット中で保持されるようないずれかの好適なサイズであり得る。
【0081】
アンカーは、当業者に公知であるとおり、物理的または機械的方法によって骨または組織に取り付けられ得る。アンカーとしては、特に限定されないが、スクリュー、さかとげ、螺旋状のアンカー、ステープル、クリップ、スナップ、リベット、または圧縮タイプアンカーが挙げられる。アンカーの本体は、様々な長さであり得る。アンカーの例としては、これらに限定されないが、IN−FAST(商標)ボーンスクリューシステム(カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco,CA)のインフリューエンス社(Influence,Inc.))、IN−TAC(商標)ボーンアンカーシステム(カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco,CA)のインフリューエンス社(Influence,Inc.))、モデル3000AXYALOOP(商標)チタンボーンアンカー(マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,MA)のアキシャメディカル社(Axya Medical Inc.))、オーパスマグナム(OPUS MAGNUM)(登録商標)インサータを備えるアンカー(カリフォルニア州サンファンカピストラーノ(San Juan Capistrano,CA)のオーパスメディカル社(Opus Medical,Inc.))、アンクロン(ANCHRON)(商標)、ヘキサロン(HEXALON)(商標)、トリニオン(TRINION)(商標)(全て、オクラホマ州オクラホマシティー(Oklahoma City,OK)のイニオン社(Inion Inc.)製)およびエンドボタンおよびツインフィックスAB(TwinFix AB)吸収性縫合糸アンカー(マサチューセッツ州アンドーバー(Andover,MA)のスミス&ネフュー社(Smith & Nephew,Inc.))が挙げられる。アンカーは、カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco,CA)のインフリューエンス社(Influence,Inc.)、マサチューセッツ州ビバリー(Beverly,MA)のアキシャメディカル社(Axya Medical Inc.)、カリフォルニア州サンファンカピストラーノ(San Juan Capistrano,CA)のオーパスメディカル社(Opus Medical,Inc.)、オクラホマ州オクラホマシティー(Oklahoma City,OK)のイニオン社(Inion Inc.)、ならびにマサチューセッツ州アンドーバー(Andover,MA)のスミス&ネフュー社(Smith&Nephew,Inc.)などの製造業者から商業的に入手可能である。
【0082】
アンカーは、金属、例えばチタン316LVMステンレス鋼、CoCrMo合金、またはニッチノール合金、またはプラスチックなどの非分解性材料製であり得る。アンカーは、被験者がアンカーを分解し、吸収することが可能であるよう生体吸収性であることが好ましい。生体吸収性材料の例としては、これらに限定されないが、モノクリル(MONOCRYL)(ポリグレカプロン25)、PDS II(ポリジオキサノン)、手術用腸腺縫合糸(SGS)、腸腺、被覆ビクリル(VICRYL)(ポリグラクチン910、編込みポリグラクチン910)、ヒト自家グラフト腱材料、コラーゲン繊維、ポリソルブ(POLYSORB)、ポリ−L−乳酸(PLLA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリスルホン、ポリ乳酸(Pla)、ポリ乳酸のラセミ体(D,L−Pla)、ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)、70/30ポリ(L−ラクチド−コ−D,L−ラクチド)、ポリグリコリド(PGa)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリヒドロキシ酸、および吸収性プレート材料(例えばOrthopedics、2002年10月、第25巻、10号/追補を参照のこと)が挙げられる。アンカーは、特に限定されないが、数日間、数週間、数ヶ月または数年にわたって経時的に生体吸収され得る。
【0083】
縫合糸は、被験者が縫合糸を分解し、これを吸収することができるよう、生体吸収性であることが好ましく、縫合糸が天然ソース由来のものであり得ないよう合成であることが好ましい。縫合糸の例としては、これらに限定されないが、ビクリル(VICRYL)(商標)ポリグラクチン910、パナクリル(PANACRYL)(商標)吸収性縫合糸、エチボンド(ETHIBOND)(登録商標)エクセル(EXCEL)ポリエステル縫合糸、PDS(登録商標)ポリジオキサノン縫合糸およびプロレン(PROLENE)(登録商標)ポリプロピレン縫合糸が挙げられる。縫合糸は、マサチューセッツ州ウェストウッド(Westwood,Mass)のエチコン社(ETHICON,INC.)のMITEK PRODUCTS部門などの製造業者から商業的に入手可能である。
【0084】
ステープルは、骨または組織に挿入されることができる2本のアームを有するアンカーの一種である。いくつかの事例においては、ステープルのアームは、骨に取り付けられたときに、またはいくつかの事例においては、他の組織に取り付けられたときに、勝手に折れ曲がる。ステープルは、金属、例えばチタンまたはステンレス鋼、プラスチック、またはいずれかの生分解性材料から構成され得る。ステープルとしては、特に限定されないが、線形ステープル、環状ステープル、湾曲ステープルまたは直線状ステープルが挙げられる。ステープルは、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ)のジョンソン&ジョンソンヘルスケアシステム(Johnson&Johnson Health Care Systems,Inc.)およびニュージャージー州サマービル(Somerville,NJ)のエチコン社(Ethicon,Inc.)などの製造業者から商業的に入手可能である。ステープルは、例えばハンマーおよびステープルセッター(ステープルホルダー)といった当業者に公知であるいずれかのステープルデバイスを用いて取り付けられ得る。
【0085】
このデバイスは、断裂または裂傷を受けた組織の修復部位に挿入され得る。修復部位は、本発明の材料が挿入され得る、断裂または裂傷を受けた組織の周囲の部域である。デバイスが、当業者に公知である技術を用いて手術の最中に修復部位域に配置され得る。この方法においてスキャフォールドが用いられる場合、スキャフォールドは、修復部位を埋めるか、または修復部位を部分的に埋めることが可能である。スキャフォールドは、挿入時には修復部位を部分的に埋め、血液、血漿または、修復部位中に存在するかあるいはこの修復部位に添加される修復材料などの他の液体の存在下に、膨張して修復部位を埋めることが可能である。
【0086】
このスキャフォールドは、手術的技術との組み合わせで配置され得る。例えば、断裂あるいは裂傷を受けた組織の修復部位のもしくはその周囲の骨に孔を穿孔し、この孔を通して骨にスキャフォールドを縫合により取り付けてもよい。修復部位のまたはその周囲の骨は、修復部位にきわめて近接しているものであり、本発明の方法およびデバイスを用いて利用することが可能である。例えば、裂傷を受けた前十字靱帯の修復部位のまたはその周囲の骨は、大腿骨および/または脛骨である。孔は、キルシュナー鋼線(例えば小径のキルシュナー鋼線)およびドリル、または微小破損性のピックまたは錐などのデバイスを用いて骨に穿孔することが可能である。
【0087】
孔は、修復部位に対して逆側に骨に穿孔され得る。縫合糸が骨の孔を通されて、骨に取り付けられ得る。スキャフォールドは、スキャフォールドを骨と断裂を受けた組織の端部との間に固定するよう縫合糸に取り付けられる。断裂を受けた組織は、以前は結合されていた組織の端部を2つもたらす。スキャフォールドは、断裂を受けた組織の一方または両方に、1本以上の縫合糸により取り付けられ得る。縫合糸は、修復部位のまたはその付近の第2の骨部位に取り付けられ得る。縫合糸は、第2のアンカーを用いて第2の骨に取り付けられ得る。
【0088】
例えばACLの典型的な関節鏡検査法において、外科医は、患者の膝に無菌生理食塩水溶液を注入することにより手術に対して患者の準備をする。数々のカニューレが膝に挿入され、膝の内部への進入用ポータルとして用いられる。従来の関節鏡は、膝が外科医によって遠隔的に視認され得るように、カニューレの1本を通して挿入される。
【0089】
ACLなどの組織の外科的再建術において、外科医は、従来の手術用ドリルおよびドリルガイドを用いる従来の外科的技術に従って、脛骨孔および大腿骨孔を穿孔し得る。次いで、置換用前十字靱帯グラフトが準備され、脛骨および大腿骨孔に据付けられ、膝再建術を完了するために従来の技術および公知のデバイスを用いて固定される。
【0090】
修復材料が対象に適用される。被験者への適用は外科手術を含む。以下は、本発明の方法を用いて実施され得る外科手術の一例である。患部の四肢が準備され、標準的な無菌様式でドレープされる。示される場合には止血帯が用いられ得る。関節内病変が識別されると共に画定され、組織端部が機械的にまたは化学的に前処理され、スキャフォールドが用いられる場合には、スキャフォールドが組織欠損部に挿入される。スキャフォールドが修復材料中に予め浸漬されていなかった場合、またはさらなる修復材料が所望される場合には、次いで、修復材料がスキャフォールドに追加される。スキャフォールドは、縫合糸またはクリップの留置により補強され得る。スキャフォールドが用いられない場合には、組織欠損部は、修復材料で直接的に被覆される。術後のリハビリテーションは、患部の関節、治療された病変のタイプおよびサイズ、および関与する組織に応じる。
【0091】
修復材料の温度が、インビボでの迅速なゼラチン化を最適化するために制御され得る。例えば、例においては、身体への修復材料の挿入時の様々な温度がゼラチン化が生じるために必要な時間に作用する可能性があることが示されている。本発明のいくつかの実施形態において、注入温度は、理想的には、24℃〜30℃である。28℃が、いくつかの設定において最短のゼラチン化時間を達成するために至適温度であり得る。注入温度は、注入直前に溶液を至適温度に温めることにより達成されることが可能である。
【0092】
本発明の方法は、関節鏡検査法を用いて達成され得る。標準的な関節鏡器具が用いられ得る。初期においては、適切な修復部位を識別するために診断的関節鏡法が実施され得る。スキャフォールドが用いられる場合、関節鏡のポータル、切開部および器具を通した挿入が可能であるよう、圧縮性であるべきである。修復材料は、直接的な注入により修復部位に配置されることが可能である。術後、関節鏡のポータルは閉鎖され、無菌包帯材が配置されることが可能である。
【0093】
被験者としては、特に限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたは雌ウシなどのいずれかの哺乳動物が挙げられる。一定の実施形態において、対象がヒトである。
【0094】
本発明において用いられる材料は、生体適合性、薬学的に許容可能であり、および無菌であることが好ましい。本明細書において用いられるところ、「生体適合性」という用語は、接触する他の組成物の正常な生物学的機能を実質的に乱すことがない組成物(例えば細胞、組織、マトリックス等)を指す。選択された実施形態において、本発明はまた、生分解性および非生分解性の生体適合性の材料の両方を意図する。
【0095】
上述のとおり、修復材料の構成要素の各々は無菌的に調製され得る。しかしながら、1種以上の構成要素が無菌的様式で回収または処理されていない場合には、被験者への適用の前に滅菌されることが可能である。例えば、材料(好ましくは細胞を含まない)は、産生の後に、γ線照射、エタノール、オートクレーブ滅菌または他の公知の滅菌方法を用いて滅菌され得る。
【0096】
本明細書において用いられるところ、「薬学的に許容可能な」という用語は、スキャフォールド材料または修復材料の生物活性の有効性を妨げない無毒性の材料を意味する。「生理学的に許容可能な」という用語は、細胞、細胞培養物、組織、または生体などの生物学的系と適合性である無毒性の材料を指す。キャリアの特徴は、投薬経路に応じることとなる。生理学的におよび薬学的に許容可能なキャリアとしては、希釈剤、充填材、塩、緩衝剤、安定化剤、溶解剤、および技術分野において周知である他の材料が挙げられる。「キャリア」という用語は、一緒にスキャフォールド材料が組み合わされて適用が促進される、天然または合成の有機または無機処方成分を表す。薬学的組成物の構成要素もまた、本発明のデバイスと、および相互に、所望の薬学的効力を実質的に損なわせるであろう相互作用がないような様式で混合されることができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、修復材料組成物は注入可能である。注入可能な組成物は、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの配合薬剤を含有し得る。注入用薬学的配合物は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの懸濁液の粘度を高める物質を含有し得る。任意により、材料はまた、好適な安定化剤を含有し得る。
【0098】
このコラーゲン溶液は、細胞を追加する前は、液体、ゲルまたは固体の形態であり得る。一旦細胞が追加されたら、修復材料は、身体への適用のためにゲル化を増加し始めることとなる。コラーゲン溶液が液体またはゲルである場合、細胞は、溶液に直接的に添加され得る。
【0099】
あるいは、コラーゲン溶液は、使用前の例えば無菌パイロジェンフリーの水といった好適なビヒクルとの構成のために粉末形態であり得る。中和薬剤は、還元の前または後に添加され得る。粉末が還元された後、細胞と混合されて修復材料が形成される。
【0100】
本明細書において用いられるところ、「ゲル」という用語は、液体と固体との間の物質の状態を指す。すなわち、「ゲル」は、液体の特性のいくつか(すなわち、形状が弾性であると共に易変形性である)および固体の特性のいくつか(すなわち、形状は、二次元的表面上に三次元を維持するに十分に独立している。)を有する。ゲルは、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水などの当業者に公知である薬学的許容可能なキャリア中に提供され得る。このようなキャリアは、ルーチン的に、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝材、防腐剤、適合性のキャリアおよび任意により他の治療薬を含有し得る。
【0101】
ゲルの一例はヒドロゲルである。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然または合成)が共有結合、イオン結合または水素結合を介して架橋されたときに、水分子を封入する三次元開口格子構造を成してゲルを形成することにより形成される物質である。ポリマーは、対象への移植の前または後に架橋されてヒドロゲルを形成し得る。例えば、ヒドロゲルは、その場で、例えば修復部位で形成され得る。一定の実施形態において、修復材料は、体温に曝されると修復部位中でヒドロゲルを形成する。
【0102】
コラーゲン溶液および細胞を含む修復材料は、一旦形成されると硬化し始める。硬化プロセスは、低温を維持することにより遅延させることが可能であり、または混合物を加熱することにより加速させ得る。一定の実施形態において、急速硬化性組成物の修復材料がもたらされる。急速硬化性組成物は、材料が30℃超の温度に露出されるとき、混合から10分間以内に硬化スキャフォールドを形成することができる。いくつかの実施形態において、このような温度では、スキャフォールドの形成は約5分間かかる。上述のとおり、硬化時間は、注入温度を至適化することによりさらに加速されることが可能である。急速硬化性組成物は、コラーゲン溶液を本明細書に記載のとおりの濃度および粘度で調製することにより達成される。急速硬化性は、無毒性架橋剤の添加によりさらに促進されることが可能である。このような組成物は、組織欠損部に迅速に適用されて、欠損部および手術部域の終結前に十分に硬化されるべきである。
【0103】
本発明はまた、いくつかの態様において、断裂または裂傷を受けた関節組織の修復用キットを含む。キットは、本発明の構成要素を収容するための、および/または血液または細胞を採取しあるいは保管するための1つ以上の容器、ならびに使用のための説明書を含み得る。このキットは、外科医による本明細書に記載の方法の使用を促進するために設計され得、多くの形態をとることも可能である。キットの組成物の各々は、適用可能な場合には、液体形態(例えば溶液中に)、または固体形態(例えば乾燥粉末)で提供され得る。一定の場合において、組成物のいくつかは、例えば、キットと共に提供されていてもいなくてもよい好適な溶剤または他の種(例えば水または細胞培地)の添加により、構成可能またはそうでなければ加工可能(例えば活性形態に)であり得る。本明細書において用いられるところ、「説明書」は、説明書および/または促進の構成要素を定義することが可能であり、典型的には、本発明のパッケージングのまたはこれに関する書面による説明書を含む。説明書はまた、例えば、視聴覚器材(例えばビデオテープ、DVD等)、インターネット、および/またはウェブベースの情報交換等といった、使用者が説明書はキットと関連すべきと明らかに認識することとなるような、いずれかの様式で提供された口頭でのまたは電子的説明書のいずれかを含むことが可能である。書面での説明書は、医薬品または生物学的生成物の製造、使用または販売を監督する行政機関による規定の形態であり得、この説明書はまた、製造機関による承認、ヒト投与に対する使用または販売を反映することが可能である。
【0104】
キットは、1つ以上の容器中に、本明細書に記載の構成要素のいずれか1種以上を含有し得る。一実施形態においては、一例として、キットは、キットの1種以上の構成要素を混合し、および/またはサンプル(例えば、対象から採血した血液)を単離すると共に混合し、ならびに対象に適用するための説明書を含み得る。キットは、コラーゲンを収容する容器を含み得る。コラーゲンは、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であり得る。コラーゲンは、滅菌的にシリンジ封入されて調製され得、冷蔵輸送され得る。あるいは、コラーゲンは、保管のためにバイアルまたは他の容器中に収容され得る。第2の容器は、予め混合されて滅菌的に調製されたまたは塩の形態での緩衝剤溶液を有し得る。あるいは、このキットは、シリンジ、バイアル、チューブ、または他の容器中に予め混合されると共に輸送されるコラーゲンと数種の緩衝剤とを含み得る。この混合物は、中和薬剤を含んでいてもいなくてもよい。中和薬剤は、個別の容器中に含まれていてもよいが、またはキット中に含まれていなくてもよい。
【0105】
このキットは、患者から採血し、サンプルを濃厚血小板またはWBCに処理に、および修復材料を手術部位に送達させるために必要な構成要素の1種以上またはすべてを有し得る。例えば、患者から採血するためのキットは、このような処理に必要とされる品目の1つ以上が含まれ得る。例えば、典型的には、注入がなされるとき、患者の皮膚はアルコールワイプなどの消毒剤で清浄化され;次いで、ヨウ素またはベタジンなどの第2の消毒剤が皮膚に適用され得;部域が、通常は、止血帯で単離されて、動脈または静脈中の血流が制限されて、針が挿入されるより前に血管がより視認可能とされ、採血管などの採取デバイスに取り付けられた針が患者の皮膚を通して注入されて血液が採取され;この針は、次いで、除去されると共に清浄に拭かれ;ならびに、穿刺部位が血行停止後まで吸収パッドで覆われる。
【0106】
含まれる付属品は、臨床家の患者からの血液の採取を可能とするよう特に設計されたものであり得る。例えば、付属品としては、以下の、止血帯、皮膚貫通用機器、血液を収容するためのデバイス、採取管、消毒剤または注入後出血パッチの1つ以上が挙げられ得る。
【0107】
出血させるための皮膚貫通用機器は、針などの従来のデバイスであり得る。針は、単頭または両頭型であり得、好ましくは21または23ゲージのいずれかのゲージであり得る。針は、任意により、針ハブに取り付けられていてもよい安全スリーブを有し、好ましくは、従来のチューブホルダーと共に用いられる。針はまた、バレルおよびプランジャーを含む従来のシリンジアセンブリの一部であり得る。この針は、羽根などの把持手段を有する貫通針が、ハブを介して、真空管のセプタムの穿刺のための吐出針へのチューブに接続されている、従来の採血セットの一部であり得る。
【0108】
この血液を収容するためのデバイスは、例えばシリンジバレルなどの血液サンプルを受けるためのいずれかのタイプの容器であり得、または例えばチューブといった、採取の後に血液サンプルが移されるデバイスであり得る。血液を収容するための好ましいデバイスは、閉塞された一端と開放端を有する従来のチューブまたはバイアルである。このようなチューブは、100μl〜100mlの内部容積を有し得る。採取された後の血液を収容するデバイスとしては、例えば、バイアル、遠心分離チューブ、ボルテックスチューブまたはいずれかの他のタイプの容器が挙げられる。血液を受けるためのデバイスは、開放端が穿刺可能なセプタムまたはストッパーによって覆われている、採血管などの真空管であり得る。真空管は、一般に、複数のより多量の血液サンプルの採取のための従来のチューブホルダーおよび採血セットと共に用いられ、ならびに抗凝固剤などの多様な従来の血液分析添加剤のいずれかを含有し得る。好ましい抗凝固剤はクエン酸およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。
【0109】
血小板を含有する血漿が、全血から分離され得る。例えば沈降、遠心分離またはろ過といったいずれの分離技術を利用することも可能である。遠心分離は、血小板を入手するために約500gで約20分間実施されることが可能である。血漿を含有する上澄は、標準的な技術により除去することが好ましい。ろ過は、血液細胞を血漿から分離する好適なフィルタに全血を通過させることにより実施することが可能である。
【0110】
任意により、キットは、消毒剤および注入後出血パッチを含み得る。消毒剤などの意図される穿刺区域の患者の皮膚を滅菌するための手段を提供してもよい。典型的な、かつ、従来の消毒剤は、通例、消毒剤と組み合わされたガーゼと呼ばれる一片の織物である。いくつかの典型的な消毒剤としては、消毒用アルコール、抗細菌性薬剤、ヨウ素、およびベタジンが挙げられ、これは、個別にシールされたパック中の塗布用パッドで提供されても、されなくてもよい。注入後出血パッチはまた、比較的単純なガーゼパッドおよび接着片から、包帯まで異なっていることが可能である。
【0111】
採血しようとするときに、臨床家は、シールされたキットを開き;下腕などの患者の身体の選択された領域を止血帯で隔離して、その領域内の血流を制限すると共に血管をより視認可能とし;注射部位を1種以上の滅菌剤で清浄化し;針を採取管に取り付け;針を患者の血管に刺すと共に、血液サンプルをチューブ中に採取し;針を皮膚から引き抜き;および穿刺部位を吸収パッドで覆えばよい。次いで、血液は、血小板または白血球の濃縮物をもたらすために加工され得る。
【0112】
このキットは、ポーチ、チューブ、容器、箱またはバッグの1つ以上中に遊びをもって梱包された付属品と共に、疱疹ポーチ、収縮包装ポーチ、真空シール可能なポーチ、シール可能な熱成形トレイ、または同様のポーチまたはトレイ形態などの多様な形態をとり得る。
【0113】
このキットは、付属品が追加された後に滅菌されていてもよく、これにより容器中の個体の付属品はそれ以外に未梱包とされ得る。このキットは、放射線滅菌、加熱滅菌、または技術分野において公知である他の滅菌方法などのいずれかの適切な滅菌技術を用いて滅菌されることが可能である。
【0114】
このキットはまた、キットの意図された目的のために必要とされるいずれかの他の構成要素を含み得る。それ故、他の構成要素は、滅菌ステップ後に消毒剤を除去するためのガーゼ、またはサンプルが採取された後に穿刺傷を覆うためのガーゼなどの織物であり得る。キットの他の任意の構成要素は、使い捨て手袋、サンプルが採られた後に血液を保持するためのデバイス用の支持体、接着剤または穿刺傷上に織物を維持するための他のデバイスである。
【0115】
このキットは、使い捨て使い捨てパッケージング中に無菌で提供された使い捨て構成要素を含み得る。このキットはまた、特定の用途、例えば、容器、細胞培地、塩、緩衝剤、試薬、シリンジ、針等に応じて他の構成要素を含み得る。
【0116】
以下の実施例は、本発明の一定の実施形態の一定の態様を例示することを意図するが、本発明の全範囲は例示しない。
【実施例】
【0117】
実施例1:コラーゲン溶液の調製および特性のテスト
A.いくつかの配合物で達成された最低ゲル化
1.インノコール(Innocoll):インノコール(Innocoll)コラーゲンのアリコート(開始pH=4.1)を形成した。アリコートの重量は0.380mgコラーゲンであり、pH=4.1であった。サンプルの半分に5マイクロリットルNaHCOが添加されて7.0〜8.0のpHとされ、もう半分中和しなかった。300マイクロリットルウシ胎孔血清を各アリコートに添加した。すべての溶液を30分間、37℃でゲル化について監視した。溶液は、水(約1センチポアズ)に類似する粘度を伴って液体のままで維持された。経時的な粘度の増加は長時間にわたってもなかった。
【0118】
インノコール(Innocoll)アリコートでの、開始pH=2.5での同等の実験もまた実施した。さらに、実験を、1:1、2:1および3:1のコラーゲン:FBSの比を用いて実施した。これらの材料のいずれもゲル化生成物を37℃で生成しなかった。溶液は、水(約1センチポアズ)に類似する粘度を伴って、液体のままで維持された。経時的な粘度の増加は長時間にわたってもなかった。
【0119】
2.EPC:コラーゲンスラリーは、エラスチンプロダクツカンパニー(Elastin Products Company)(ミズーリ州オーウェンビル(Owensville,Missouri))から、製品番号C857、ロット番号698、仔ウシ皮膚製の乾燥凍結I型酸可溶性コラーゲンとして入手した。Gallop and Seifter Meth. Enzymol.、6、635、(1963年)の方法に準拠して調製した。この方法において、新鮮な仔ウシの皮膚が0.5M NaOAcで抽出されて非コラーゲンタンパク質が除去される。可溶性コラーゲンは、0.075Mクエン酸ナトリウムで、pH3.7で抽出され、0.02M NaHPOに対する透析により原線維として沈殿される。生成物は、最大で10mg/mlで0.01M〜0.5M酢酸中に可溶性であり、0.075Mクエン酸ナトリウムpH3.7中に、および希酢酸0.01M〜0.5M中に可溶性であった。
【0120】
ヒドロゲルの血小板構成要素と組み合わせる前に、コラーゲンスラリーを、0.1Mヘペス緩衝剤1M溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))、10×ハムF−10培地(オハイオ州オーロラ(Aurora,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals,LCC))、抗生物質−抗真菌剤溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))および滅菌水と混合した。コラーゲンスラリーを、7.5%重炭酸ナトリウムを用いて7.4のpHに中和した(メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville,MD)のカムブレックスバイオサイエンスウォーカーズビル社(Cambrex BioScience Walkersville,Inc.))。コラーゲン−PRPの混合物を、3:1のコラーゲン:FBS比を用いてテストした。これらの材料のいずれも、37℃でゲル化生成物を生成しなかった。溶液は、水(約1センチポアズ)に類似する粘度を伴って液体のままで維持された。経時的な粘度の増加は1時間または一晩にわたっても認められなかった。
【0121】
3.セルバ(SERVA):コラーゲンスラリーは、セルバ(Serva)から、製品番号47256、ロット番号14902、I型ラットテールコラーゲン溶液として、0.1%酢酸中に4mg/mlで入手した(独国ハイデルベルグ(Heidelberg Germany))。コラーゲンスラリーは、0.1Mヘペス緩衝剤1M溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))、10×ハムF−10培地(オハイオ州オーロラ(Aurora,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals,LCC))、抗生物質−抗真菌剤溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))および滅菌水と混合した。コラーゲンスラリーを、7.5%重炭酸ナトリウムを用いて7.4のpHに中和した(メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville,MD)のカムブレックスバイオサイエンスウォーカーズビル社(Cambrex BioScience Walkersville,Inc.))。
【0122】
コラーゲン−PRPの混合物を、3:1のコラーゲン:FBS比を用いてテストした。この材料は、ゲル化生成物を37℃で生成しなかった。溶液は、水(約1センチポアズ)に類似する粘度を伴って液体のままで維持された。経時的な粘度の増加は1時間または一晩にわたっても認められなかった。
【0123】
4.ビトロゲン(VITROGEN):コラーゲンスラリーは、コヘージョンテクノロジーズ(Cohesion Technologies)(カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))から入手した。3.1mg/mlのコラーゲン濃度を有する、ビトロゲン(Vitrogen)100スラリー、ロット番号C101636もまたテストした。溶液型ビトロゲン(Vitrogen)コラーゲンは、細菌性コラゲナーゼ感度および銀染色技術と併せてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法により判定されるところ、99.9%純度のコラーゲンである。溶液は、残りはIII型コラーゲンから構成される95〜98%I型コラーゲンである。溶液型ビトロゲン(Vitrogen)コラーゲンは、切れ目の入ったまたは短縮されたらせん体を低い割合で含有するが、旋光分析およびトリプシン感度により判定されるところ、未変性コラーゲンである。
【0124】
コラーゲンスラリーは、0.1Mヘペス緩衝剤1M溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))、10×ハムF−10培地(オハイオ州オーロラ(Aurora,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals,LCC))、抗生物質−抗真菌剤溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))および滅菌水と混合した。コラーゲンスラリーを、7.5%重炭酸ナトリウムを用いて7.4のpHに中和した(メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville,MD)のカムブレックスバイオサイエンスウォーカーズビル社(Cambrex BioScience Walkersville,Inc.))。コラーゲン−PRPの混合物を、3:1のコラーゲン:FBS比を用いてテストした。この材料は、ゲル化生成物を37℃で生成しなかった。最初の30分間については、溶液は、水(約1センチポアズ)に類似する粘度を伴って液体のままで維持された。経時的な粘度の顕著な増加は、1時間が経過するまでは認められなかった。
【0125】
5.ウェイクフォーレスト(Wake Forest)コラーゲンテスト:コラーゲン溶液をブタ皮膚から形成した。皮膚を水で洗浄し、毛および皮下脂肪を除去した。皮膚を切り刻み、アセトンでさらに脱脂し、および脱イオン水で洗浄した。刻んだ欠片を10%NaCl中に4℃で24時間浸漬し、次いで、クエン酸緩衝剤(pH4.3)中に48時間浸漬し、および0.5M酢酸中に4℃で均質化した。ホモジェネートを次いで、ペプシンで4℃で24時間消化させ、遠心分離した。5%w/vNaCl均等物を添加してアテロコラーゲンを塩析させ、コラーゲンをリン酸緩衝剤で洗浄し、0.5M酢酸中に溶解させて透析した。
【0126】
コラーゲンのアリコートは、FBSおよびハムF12と混合するまでは氷上で保持した。すべての溶液は、7.0〜7.5のpHを有していた。150マイクロリットルのFBSおよび50マイクロリットルのハムF12を各チューブに添加し、ボルテックスミキサー(vortexer)で混合し、および37℃で水浴中に置いた。5つのアリコートの1つが7分間でゲル化した。他の4つのいずれもテストの30分間にわたってゲル化しなかった。テストを、ゲル化しなかった4つのコラーゲンサンプルについて反復した。反復サンプルはいずれも30分間の時間枠中ではゲル化しなかった。
【0127】
ゲル化生成物をもたらした単一のサンプルのゲル化の精度を確認するために、第2の治験を実施して、第1の治験において硬化したコラーゲンタイプに対する研究を反復した。第2の治験において37℃で、3時間後でもゲル化は観察されなかった。実験を、コラーゲンおよびFBSのみで再度試行した。以下が観察された:2:1コラーゲン:FBSの比はゲル化をもたらさず、および3:1コラーゲン:FBSの比は、37℃で水浴に入れたところゲル化した(ゲルは、残りの時間の経過で軟化した)。このコラーゲンタイプの反復テストは、形状を維持し続けるのではなく経時的に軟化した一致性のないゲル化を示した。
【0128】
B.本発明の配合物で観察された迅速なゲル化
ブタ膝蓋腱を切り刻み、10%NaCl溶液中に入れて塩−可溶化コラーゲンを得た。コラーゲンを均質化すると共に遠心分離した。上澄を吸引し、PRPを添加した。テストした6つのサンプルのうち5つが、37℃の温度に露出されたときに迅速なゲル化をもたらした。1つのサンプルにおいてはゲル化は見られなかった。
【0129】
ラット尾腱を採取した。すべてのステップは、無菌技術および溶液を用いて実施した。塩可溶化された腱束を遠心分離し、上澄を除去し、酢酸および酵素で置き換えてコラーゲンをさらに可溶化させた。得られたコラーゲンスラリーは、pH=3.0を有していた。アリコートを形成し、NaHCOでpH=7.0に中和した。500マイクロリットルのPRPを1ccコラーゲンスラリーのアリコートに添加し、ボルテックスした(混合前はすべて氷上)。混合物を37℃で水浴に入れた。サンプルの各々は、軟質の硬化ゲルを5分間以内に形成した(部分的ゲル化)。
【0130】
コラーゲンスラリー、ならびにF10培養培地および抗生物質を含有する緩衝剤を含む追加のアリコートをテストした。150マイクロリットル血清を、NaHCOおよびNaOHでの中和の後に添加した。コラーゲンゲルは、初期の4つのテストでは、37℃で5分間以内に硬化した。5番目のサンプルはゲル化しなかった。反復テストは、このプロトコルで形成されたスラリーのほとんどが硬化することとなるが、すべてではない(およそ60%)ことを示した。
【0131】
次いで、コラーゲン溶液を、異なる緩衝剤構成要素を用いて調製した。7.0〜8.0の間でのpHの維持の補助のためのヘペス緩衝剤の添加、ならびに、モル浸透圧濃度を280〜350mOsm/kg以内とするための緩衝剤の他の構成要素(抗生物質、F10および滅菌水)の調整により、本発明者らは、治験においてテストしたアリコートの90%超で、10分間以内での、高信頼性でのゲル化を達成することができた。
【0132】
C.コラーゲン/緩衝剤混合物における細胞バイアビリティ
液滴テスト:百万のブタ一次派生ACL細胞をトリプシン処理し、中和済コラーゲンスラリーに添加して、1×105細胞/ccの細胞密度をもたらした。FBSを添加して、3:1および4:1コラーゲン:FBSの比をもたらした。液滴を、組織培養プレートの個別のウェルに入れた。次の日に、いくらかの細胞伝播が3つのゲルの2つで見られた。4日目に、細胞は、3つのゲルの1つで増殖していた。
【0133】
D.コラーゲンゲルに播種されたブタACL細胞の増殖がゲルの最終コラーゲン濃度によって影響されたかどうかの評価
以下の方法を実施した。
目標細胞を5×10細胞/mlで播種した。ゲル中の最終コラーゲン濃度は、3.4、1.7および0.8mg/mlであった。これらの採集濃度は、スラリー50番のコラーゲン濃度(10.5mg/ml)、スラリーは1倍、1/2および1/4の濃度で用いられることとなるという事実、およびゲルを形成するときにスラリーがどの程度希釈されるか、に基づいて算出した。1、5および10日で時間点をとり、合計で9つのデータ点をもたらした(時間/コラーゲン濃度)。各データ点は、各データ点での2つの細胞を含まない対照と共に、4重で実施した。
【0134】
細胞を播種したゲルの総量は36mlであった。各データ点用に十分なゲルを1.5mLスラリーおよび1.5mL PRPを用いて形成した。データ点について必要なPRPは13.5mL(1.5×9)であり、細胞を含まないゲルに必要なPRPは2.2mlであった。合計で必要なPRPは15.7mlであった。
【0135】
必要な細胞数は13.5×5×10×3(ゲルの形成時にはPRPは約3倍に希釈されているため)であり、これは、202.5×10(または20.3×10)の細胞をもたらした。
【0136】
1日目−細胞を播種したゲルを形成
細胞をトリプシン処理し、遠心分離し、完全培地中に再懸濁させると共に、アッセイ用に十分な細胞があるかを確認するために計数した。細胞溶液を遠心分離し、13.5mL PRP中の細胞濃度が(少なくとも)15×10細胞/ml(ゲルを形成するとき、PRPは約3倍に希釈した)であるよう、細胞をPRP中に再懸濁させた。
【0137】
ゲルは、事例に応じて細胞と共に、または無しでPRPを用いて形成した。1mlのゲルを12−ウェルプレートの42ウェル中に分割し、インキュベータに入れた。1時間後、完全培地をゲルの上に添加し、細胞をゲル中に約24時間平衡化した。
【0138】
2、6および11日目−1、5および10日目でのMTTアッセイ
プレートをインキュベータから取出し、培地を吸引した。無菌スパチュラですべてのゲルを新たな12−ウェルプレートに移した。1mLのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)染料を時点1日目の各ウェルに添加した。ゲルを3時間インキュベートした。MTT溶液を吸引し、廃棄した。1mlの無菌1×DPBSを各ウェルに添加した。プレートを回転台上に置き、30分間穏やかにすすがせた。200μlアリコートを各ウェルから取り出し、吸光度を色度除去の残留性について読み取った。DPBSの残りを取り除き、DPBSステップを2回反復した。三回目のすすぎ後のDPBSからの吸光度レベルが未だ0.1超であれば、四回目のすすぎが実施され得る。無菌スパチュラを用いて、ゲルをウェルの側面/底面から剥がし、新たな3mLチューブに移した。1mLの洗浄剤(20%SDS/ホルムアミド)を添加した。この混合物を5時間インキュベートした。チューブをインキュベータから取り出し、簡潔に高速で約5秒ボルテックスし、およびサンプルを1500rpmで5分間遠心沈殿させた。200μlの上澄を96−ウェルプレートに移し、吸光度を計測した。
【0139】
結果:インビトロ細胞増殖は0.8〜3.4mg/mlの最終コラーゲン濃度で見られた(開始コラーゲン濃度は10.5、5.3および2.6mg/ml)。細胞数は、1〜10日間の間、すべてのグループについて培養時間と共に増加した。結果が図10に示されている。
【0140】
E.コラーゲン/緩衝剤混合物の粘度
低温では、粘度は70cpであり、37℃へ加熱後、粘度は1/秒のせん断速度で3200cpと評価した。より遅いせん断速度(0.3/秒)では、37℃での粘度は、6,000〜11,000cpと測定された。
【0141】
F.コラーゲン/緩衝剤溶液の血小板の成長因子放出を促す能力
コラーゲン/緩衝剤混合物(上記(B)に記載の)を血小板混合物に添加し、血小板からのその後の成長因子の放出をELISAアッセイを用いて計測した。トロンビンを含まない調製を、血小板の成長因子の放出を促すためにウシトロンビンを用いる調製と比較した。活性化因子としてのウシトロンビンと同様の成長因子放出が、血小板活性化因子としてコラーゲンスラリーを用いて見られた。結果は実施例2に記載されている。
【0142】
G.無菌性
複数のインビトロアッセイを(B)において上述したコラーゲン/緩衝剤溶液を用いて実施したところ、10日間までインビトロで、および9週間以下インビボでテストしたいずれのサンプルにおいても細菌性または真菌性汚染または感染のエビデンスはなかった。
【0143】
H.コラーゲン/緩衝剤溶液のインビボテスト
モデル:ブタ完全ACL横断切片を、手術室において動物自身のPRPと混合したコラーゲンスラリー/緩衝剤で処理した。この混合物を、切断された靱帯端部の間の隙間に注入した。コラーゲン/緩衝剤溶液の自家PRPへの添加は、修復のために縫合糸を単独で用いた場合と比して、インビボで、4週間後に治癒靱帯の2倍を超える降伏強度をもたらした。図9は、コラーゲンスラリー/緩衝剤で治療したインビボブタ完全ACL横断切片の結果を示すグラフである。
【0144】
実施例2
この実施例において、I型コラーゲンを用いて、フィブリン凝固メカニズムの活性化および血小板活性化を促した。初期において、本発明者らは、血小板機能のマーカーとして用いた2種の成長因子、すなわちTGF−β1およびPDGF−αβの、外因性のトロンビンを用いた場合と比したさらなる徐放がもたらされることとなるかを判定するためにコラーゲンをテストした。第2に、本発明者らは、この放出の量がPRP中の血小板濃度に依存するかどうかをテストした。3つのタイプのコラーゲン−PRPゲルからのこれらの成長因子の放出プロファイルを、10日間にわたって、外因性のウシトロンビンである形成されたPRP塊からの放出プロファイルと比較した。さらに、本発明者らは、活性化コラーゲンPRPヒドロゲルからの成長因子放出は、1)成長因子の細胞新陳代謝、2)ゲル中の細胞増殖および3)細胞性ゲル収縮の観点でACL細胞に生理学的変化を生じさせるであるかについて判定した。
【0145】
材料および方法
多血小板血漿の調製:遠心分離方法
300ミリリットルの全血を、米国血液銀行協会(American Association of Blood Banks)(食品医薬局(Food and Drug Administration)、生物学評価研究センター(Center for Biologies Evaluation and Research))のすべての判断基準を満たす5人の血液学的に正常なボランティアの各々から採血した。血液は、血液研究センター(The Center for Blood Research)(マサチューセッツ州ボストン(Boston,MA))で、10%酸−クエン酸デキストロースを含有するバッグ中に採取した。各患者からの45mLの全血を6分間、200gで遠心分離した(カリフォルニア州フラートン(Fullerton,CA)のベックマン(Beckman)GS−6セントリフュージ(Centrifuge))。上澄を吸引し、PRPとして回収した。PRPサンプルの2つの追加のグループを、ハーベストスマートPreP2システム(Harvest Smart PreP2 System)(マサチューセッツ州プリマス(Plymouth,MA)のハーベストテクノロジーズ(Harvest Technologies))を以下のとおり用いて形成した。
【0146】
スマートPreP2システム(Smart PreP2 system)を用いるPRP調製:血小板濃縮方法
PRPもまた、ハーベストスマートPreP2システム(Harvest Smart PreP2 System)(マサチューセッツ州プリマス(Plymouth,MA)のハーベストテクノロジーズ(Harvest Technologies))を用いて形成した。PRPは、製造業者により推奨された方法により形成した。54ccの全血を、10%酸−クエン酸デキストロースを用いて抗凝固剤処置し、デバイスの血液チャンバに移し、および2ml ACDを使い捨て血液プロセッサ(DP)の血漿チャンバに入れた。血液は、軟膜/赤血球界面の直下に上昇するよう設計されたフローティングシェルフを備える容器中に遠心分離される。赤血球からの血漿の分離に続いて、遠心分離を遅くして、血小板、血漿および白血球が血漿チャンバに傾瀉される。血漿傾瀉が完了したら、第2の遠心分離ステップが用いられて、濃厚血小板のペレットが血漿チャンバの底に形成される。血漿チャンバは、濃厚血小板(ボタン状沈殿物)および血小板の少ない血漿(上澄)を含有する。全プロセスが完全に自動であり、約14分間で完了した。血小板の少ない血漿(platelet−poor plasma, PPP)の約2/3が除去される。濃厚血小板(PC)が、次いで、残りのPPP中に再懸濁される。
【0147】
スマートPreP2システム(Smart PreP2 system)を用いるPRP調製:低RBC方法
このグループ中のPRPは、上述の濃厚血小板を用いて、追加のステップでPRP中の赤血球のほとんどを除去して調製した。これを達成するために、各患者からの30mLの濃厚血小板をスマートPreP2システム(Smart PreP2 system)中にさらに2分間遠心分離した。次いで、上澄が吸引され、低RBC(RBC−red)PRPとして保存される。
【0148】
初期および最終血小板および白血球濃度を測定するために、全血および多血小板血漿調製物のサンプルを示差を伴う全血球算定について分析した(表1および表2)。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
ヒドロゲル中に用いられる酸−可溶性コラーゲンの製造
ラット尾部を、研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)承認の他の研究のために安楽死させられた管理ブリーダーラットから入手した。ラット−尾腱を滅菌的に採取し、切り刻み、および酸性化したペプシン溶液に可溶化させて酸可溶性コラーゲンを得た。スラリー中のコラーゲン含有量は、0.01N塩酸を用いて5mg/ml超に調整した。ヒドロゲルの血小板構成要素と組み合わせる前に、コラーゲンスラリーを、0.1Mヘペス緩衝剤1M溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))、10×ハムF−10培地(オハイオ州オーロラ(Aurora,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals,LCC))、抗生物質−抗真菌剤溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))および滅菌水と混合した。コラーゲンスラリーを、7.5%重炭酸ナトリウムを用いて7.4のpHに中和した(メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville,MD)のカムブレックスバイオサイエンスウォーカーズビル社(Cambrex BioScience Walkersville,Inc.))。
【0152】
血小板活性化:外因性のトロンビングループ
5ミリリットルの塩化カルシウム(100mg/ml)を5,000IUウシトロンビン(ウシトロンビン−JMI、バージニア州ブリストル(Bristol,VA)のジョーンズファーマ社(Jones Pharma Inc))に添加して、1,000IU/ml溶液を製造した。80mLのトロンビン溶液を、次いで、各患者の720mLの血小板濃縮物グループに添加した。混合物の重複サンプルを2ml遠心分離チューブに注入し、血塊を形成させた。血塊を計量し、無菌12−ウェルプレートに移す前に、37℃インキュベータに20分間入れた。2%抗生物質(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))を含む1ミリリットルのダルベッコ変性イーグル培地(DMEM、カタログ番号10013CV、バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))を各血塊に添加した。サンプルを37℃の加湿したインキュベータ中で培養した。
【0153】
血小板活性化:コラーゲングループ
各サンプルについて、等体積のPRPおよびコラーゲンヒドロゲルを混合し、1分にわたって30℃に加熱した。各コラーゲン−PRP混合物の重複サンプルを2本の2mL遠心分離チューブに注入した。これをすべてのテストグループについて反復した。ゲルを計量し、無菌12−ウェルプレートに移す前に37℃のインキュベータ中に20分間入れた。2%抗生物質(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))を含む1mLのDMEMを各ゲルに添加した。サンプルを37℃の加湿したインキュベータ中で培養した。
【0154】
さらに、コラーゲンヒドロゲル−のみ(PRP無し)をまた形成し、12時間、1日、3日および5日で放出を評価した。
【0155】
成長因子レベルの計測
各時点(12時間、1、3、5、7および10日)で、各サンプルの周囲から培地を吸引し、1mLの新鮮な培地(2%抗生物質が添加された血清を含まないDMEM)で置き換えた。培地サンプルは、すべてのサンプルを採取するまで−80℃の冷凍庫でクリオバイアル中に保存した。ヒトPDGFαβ、TGFβおよびVEGFの濃度は、市販されているクアンチキーネ(Quantikine)比色サンドイッチELISAキット(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN)のR&Dシステムズ(R&D Systems))を用いて測定した。製造業者の説明書に記載されているとおり、培地サンプルで、アッセイを重複して実施した。1:20(12時間サンプル)および1:10(1日目、3日目、5日目、7日目および10日目サンプル)の希釈率をPDGFαβアッセイにおけるサンプルについて用い;1:10の希釈率をTGFβアッセイにおけるすべてのサンプルについて用い;およびVEGFアッセイについては希釈は用いなかった。これらの希釈率を分析において考慮した。
【0156】
各成長因子の培地濃度は、上述の希釈を行った後にELISAキットを用いて測定した。血漿合計TGFβを、20マイクロリットルの1N HClを40マイクロリットルの培地サンプルに添加することによる血漿の酸活性の後に評価した。反応溶液を混合し、マイクロリットルの1.2NのNaOH/0.5Mヘペスで中和する前に、室温で10分間インキュベートした。これを、ELISAプレートに添加する前に、標準物質希釈剤中に1:10にさらに希釈した。
【0157】
各成長因子について、0、31.2、62.5、125、250、500、1000および2000pg/mlの最終濃度とするためにキットにもたらされた既知の濃度の成長因子の2倍段階希釈により、標準曲線を形成した。最終反応の変色を450nmの波長で光学的密度について計測したところ、標準曲線濃度対吸光度は、4つのパラメータロジスティック適合曲線を用いてリニアであった。TGF−β1の報告されている最低検出限界は4.61pg/mlであり、VEGFについては9.0pg/mlであり、ならびにPDGF−αβについては1.7pg/mlであった。
【0158】
上述の培地サンプリング技術により、結果のセクションに報告した成長因子濃度は、培地変更前からの時点における成長因子放出を反映している。12時間および1日目について、これは12時間放出であり、3日目、5日目および7日目については48時間放出である。
【0159】
分析:累積TGFb放出を、3×105個のACL細胞を播種したゲルの1、5および10日間の培養の後に計測した。TGFb放出に対する播種した細胞の影響を、各時点での細胞を含まないゲルからの累積TGFb放出を、同一の時点での細胞を播種したゲルからの累積TGFb放出から差し引くことにより算出した(両方の値は、ゲル製造の最中におけるゲルサイズにあり得る差を考慮するために、1mLのゲル当たりで算出した)。
【0160】
累積PDGF放出を、3×105個のACL細胞を播種したゲルの1、5および10日間の培養の後に計測した。PDGF放出に対する播種した細胞の影響を、各時点での細胞を含まないゲルからの累積PDGF放出を、同一の時点での細胞を播種したゲルからの累積PDGF放出から差し引くことにより算出した(両方の値は、ゲル製造の最中におけるゲルサイズにあり得る差を考慮するために、1mLのゲル当たりで算出した)。
【0161】
累積VEGF放出を、3×105個のACL細胞を播種したゲルの1、5および10日間の培養の後に計測した。VEGF放出に対する播種した細胞の影響を、各時点での細胞を含まないゲルからの累積VEGF放出を、同一の時点での細胞を播種したゲルからの累積PDGF放出から差し引くことにより算出した(両方の値は、ゲル製造の最中におけるゲルサイズにあり得る差を考慮するために、1mLのゲル当たりで算出した)。
【0162】
細胞増殖への影響:MTTアッセイ
3×105個の細胞/mlを含有するコラーゲン−PRPヒドロゲルおよびトロンビン−PRP塊を以下のとおり調製した。一次派生ヒトACL細胞を、ACL再建術を実施する2人の女性(15および22歳)から入手した外植片から培養した。外植片は、10%FBS(ユタ州サウスローガン(South Logan,UT)のハイクローン社(HyClone Inc.)、カタログ番号16777−006)、1% AB/AM(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Media Tech,Inc.)、カタログ番号30004067)を含有する培地中に培養し、培地は、周密的な培養が確立されるまで2回/週で交換した。細胞をトリプシン処理し、使用するまでT−75フラスコに1度蒔いた。最初に通過するACL細胞をトリプシン処理し、完全培地中に再懸濁させ、計数すると共に、6×10個の細胞を含有する4つのペレットを15cc遠心分離チューブ中に調製した。各ペレットを6.5ccの以下の4種の溶液のうちの1種中に再懸濁させた:遠心分離により調製したPRP、PC PRP、低RBC PRPまたは正常なリン酸緩衝生理食塩水(ニュージャージー州ギブスタウン(Gibbstown,NJ)のEMDケミカルズ(EMD Chemicals)、カタログ番号B10241−34)。
【0163】
細胞増殖を、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを用いて計測した;このアッセイは、細胞のミトコンドリアの脱水素酵素が、黄色の可溶性のMTT塩を紫色のホルマザン塩に転換する能力を計測する。MTTは、無菌ストックMTT溶液(5mg/ml PBS)由来の血清を含まないDMEM中に1mg/mlの濃度で調製した。各ウェルから培地を除去した後、無菌スパチュラを用いて、各ゲルを無菌12−ウェルプレートに移した;これは、ゲル中で増殖している細胞のみをMTTにより標識させる。1.2mLのMTT溶液(1mg/ml)を各ウェルに添加した。各ゲルをMTT溶液中に完全に浸漬させた。MTTを添加した後、プレートを3時間インキュベートした(37℃、5%CO2)。続いて、過剰なMTT溶液を除去し、1mLの無菌1×PBSを各ウェルに添加し、垂直攪拌機(フィシャーサイエンティフィッククリニカルローター(Fisher Scientific Clinical Rotator)、100rpm)に入れ、室温で30分間静置してすすいだ。その後、150マイクロリットルのPBSを各ウェルから除去し、無菌96−ウェルプレートに移し、吸光度を562nmで読み取った。このすすぎを、すべてのPBSアリコートの読み取り吸光度が0.100nm未満となるまで反復した。次いで、すべてのPBSを除去し、各ゲルを、無菌スパチュラで無菌3.0mL遠心分離チューブに移した。次いで、ゲルおよびホルマザン結晶を、20%水性SDS/ホルムアミド(1:1体積比)を含有する1mLの洗浄剤を各チューブに添加すると共に37℃の水浴中に5時間インキュベートすることにより溶解させた。最後に、チューブを5分間、1500rpmで遠心分離し、各チューブからの上澄のアリコート(200マイクロリットル)を、次いで、無菌96−ウェルプレートに移した。吸光度を562nmで計測し、細胞濃度を測定した。
【0164】
本発明者らは、おそらくはこのPRP調製物中の多数の赤血球により、細胞を含まないゲルに対する対照読み取り値が吸光度リーダーの許容誤差より大きかったため、PCの細胞増殖に対する影響を評価することができなかった。
【0165】
MTT対照を単に細胞を不在としたこと以外は同様に上記の方法のとおり調製した。MTTプロトコルを1、5および10日間で再度実施して、対照を測定させ、および細胞を播種したヒドロゲルからのMTT結果に適応されるとき、各ゲルの細胞に対する影響を単離すると共に比較した。
【0166】
コラーゲンゲル収縮アッセイ
線維芽細胞およびPRP−媒介コラーゲンゲル収縮の両方を評価した。コラーゲンゲルの収縮の程度は、培養における経時的な各ゲルの面積を計測することにより判定した。2日間に1回(1日目、3日目、5日目および7日目)、ゲル中央点での長さおよび幅をミリメートル定規を用いて計測し、記録した。PRPを含むおよび含まない線維芽細胞を播種したゲルと、PRPを含むおよび含まない細胞を含まないゲルとの比較をした。
【0167】
統計学的分析
グループおよび時間に対する二因子ANOVAを用いて、コラーゲン−PRPヒドロゲルの成長因子放出をトロンビン−PRP塊のものと比較し、ここで、p<0.05の値を統計的に有意であるとみなした。ボンフェローニ−ダン事後検定を用いて、対分析におけるグループ間の観察された差の有意性を判定した。
【0168】
結果
仮説1:コラーゲンの血小板活性化因子としての使用は、PRPゲルからの成長因子のさらなる徐放をもたらすこととなる。
活性化ウシトロンビンおよび活性化コラーゲンPRPゲルの両方において、PDGF−αβおよびTGF−β1の最も高い放出は、最初の12時間に生じた(図1および2)。3日間超の時点について(遅延放出)、活性化ウシトロンビンと活性化コラーゲングループとの間で、PDGF−αβまたはTGF−β1の放出には差はなかった。両方のグループにおいて、10日でのPDGF−αβの放出は1.9ng/ml超であり、TGF−β1については、活性化ウシおよび活性化コラーゲンPRPゲルの両方について、10日での放出は、15ng/ml超であった。
【0169】
結果が図1および2に示されている。図1は、活性化ウシトロンビン(BT)および活性化コラーゲン(Centr、PCおよび低RBC)PRPヒドロゲルからの経時的なPDGF−αβの放出を示すグラフである。活性化ウシトロンビン(BT)および活性化コラーゲン(Centr、PCおよび低RBC)PRPヒドロゲルからの経時的なTGF−β1の放出が図2に示されている。
【0170】
仮説2:PRP中の血小板数は、PRPゲルからの成長因子の放出に影響することとなる。
PRP調製物中の血小板数と、TGF−β1およびPDGF−αβ放出との間には強い正相関があった。TGF−bについて、これは12時間時点で最も強く(r2=0.608)、10および12日目の時点で正のままであった(両方の相関についてr2>0.35)。正相関はまた、特に12時間時点(r2>0.35)で、ゲル中の血小板濃度とPDGF放出との間にも見いだされた。結果が図3および4に示されている。
【0171】
血小板活性化後12時間でのPRP中の血小板濃度の関数としてのTGF−β1放出が図3に示されている。図4は、血小板活性化後12時間でのPRP中の血小板濃度の関数としてのPRPゲルからのPDGF−αβ放出を示す。
【0172】
ゲル中の血小板濃度と、すべての時点でのゲル収縮(すべての時点でr2>0.64)との間には強い正相関があり、ゲルの収縮は血小板媒介性であることを示唆していた。顆粒球数とゲル収縮との間にはより小さい相関が見出され(すべての相関についてr2<0.30)、これは、PRP中の血小板の含有量と顆粒球の含有量との間の相似による(r2=0.35)可能性が高い。
【0173】
仮説3:活性化コラーゲンPRPヒドロゲルからの成長因子放出は、1)成長因子の細胞新陳代謝、2)ゲル内の細胞増殖および3)細胞媒介性ゲル収縮に関して、ACL細胞における生理学的変化をもたらすこととなる。
1)コラーゲン−PRPゲルにおける成長因子の細胞新陳代謝
細胞を播種したゲルから溶出されるTGF−β1およびPDGF−αβは、細胞を含まないゲルからよりも少なく、細胞が、TGF−β1およびPDGF−αβを代謝していたことを示唆している。グループ間では有意な差は認められなかった(グループについてはp>0.2および時間についてはp>0.4での二因子ANOVA)。対照的に、細胞を播種したゲルからはより多量のVEGFが溶出され、細胞がさらなるVEGFを産生していたことを示唆している。グループ間では有意な差は認められなかったが、しかしながら、VEGF放出は培養において経時的に増加した(グループについてはp>0.15および時間についてはp<0.02での二因子ANOVA、1および10日目の値間の比較についてp<0.012のBFD事後検定)。平均では、細胞を播種したゲルからは、細胞を含まないゲルより4倍を超えるVEGFが溶出された。
【0174】
細胞を播種したPRPヒドロゲルからの経時的なPDGF−αβ溶出が図5に示されている。経時的な負の値はPDGF−αβの細胞ベースでの消尽を示唆する。細胞を播種したPRPヒドロゲルからの経時的なVEGF溶出が図6に示されている。経時的な正のトレンドは、ACL細胞による、VEGFの消尽より多い継続的な産生を示唆する。
【0175】
2)ゲル中での細胞増殖
遠心分離またはRBC枯渇多血小板血漿のコラーゲンヒドロゲルへの取り込みは、インビトロで10日間の培養でゲル中の細胞数の顕著な増加をもたらし(一因子ANOVA、p<0.009)、ここで、生理食塩水(0.165+/−0.03平均+/−sd)と遠心分離(0.316+/−0.04)グループとの間では細胞数はほぼ2倍の増加であり、ならびに、生理食塩水と、RBC枯渇(−.359+/−0.11)グループとの間では2倍超の差であった。遠心分離およびRBC−Dグループの間では有意な差は認められなかった(BFD、p>0.40)。結果は図7に示されている。
【0176】
3)ACL細胞性ゲル収縮
ACL細胞のゲルへの添加は、10日間の培養の間のゲルサイズの安定化をもたらした(二因子ANOVA、時間についてはp<0.006およびグループについてはp<0.001、BFD p<0.001である0〜1日の間を除く時点間のすべての比較についてp>0.003)。結果は図8に示されている。
【0177】
ゲル収縮への成長因子消尽の影響
ゲル収縮とTGF−β1消尽との間には正相関があり、すなわち、より多くのTGF−β1が細胞によって消尽されると、ゲルの細胞性収縮はより大きくなった。これは低RBCグループにおいて最も顕著であり(r2=0.38)、およびPC(r2=0.24)および遠心分離(r2=0.11)グループにおいてはそれほどではなかった。ゲル収縮とPDGF消尽との間にも正相関があり、すなわち、より多くのPDGFが細胞によって消尽されると、ゲルの細胞性収縮はより大きくなった。これは、低RBCグループ(r2=0.27)におけるよりも、遠心分離(r2=0.46)およびPCグループ(r2=0.42)において最も顕著であった。対照的に、より多くのVEGFが細胞により産生されると、ゲルの細胞性収縮はより大きくなる(r2=0.38)。これは遠心分離グループ(r2=0.38)においてのみ顕著であり、PC(r2=0.11)または低RBCグループ(r2=0.004)においては見られなかった。
【0178】
実施例3
本発明の好ましいコラーゲン溶液の構成要素を、構成要素を同定するためにテストした。
【0179】
方法
種々のソースからのコラーゲン(オハイオ州ソロン(Solon,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals)製セラゲン(Cellagen)(図11においてレーン4として示されている);ミズーリ州オーウェンズビル(Owensville,MO)のエラスチンプロダクツカンパニー社(Elastin Products Company,Inc.)(図11においてレーン5として示されている);ステムセルテクノロジーズ(StemCell Technologies)(図11においてレーン6として示されている)、ニュージャージー州フランクリンレイク(Franklin Lakes,NJ)のベクトンディキンソン(Becton Dickinson)(図11においてレーン7として示されている);フルオレセイン標識化コラーゲン(図11にレーン8として示されている))をアリコートサンプルに調製した。各コラーゲンサンプルの総タンパク質含有量を、等しいタンパク質含有量のアリコートサンプルのために、比色アッセイ(イリノイ州ロックフォード(Rockford,IL)のBCAプロテインアッセイキット(BCA Protein Assay Kit))を用いて測定した。アリコートをSDSおよびβ−メルカプトエタノールで処理し、変性のために100℃に5分間置き、次いで、4〜12%SDS−PAGEゲルに添加した。ゲルを、クーマシーブルー(Coomassie Blue)(カリフォルニア州ハーキュリーズ(Hercules,CA)のバイオ−ラッド(Bio−Rad))で染色し、および7.5%酢酸および5%メタノール脱染色溶液で洗浄した。
【0180】
結果
SDS−PAGEゲルの染色の結果が図11に示されている。結果は、市販されている製品は比較的純粋なI型コラーゲンを含有していたことを実証した(レーン4〜8)。レーン1〜2は陰性対照とする。図11においてゲルのレーン3に示した材料は、本明細書に記載の方法により調製した(すなわち、実施例1、「ヒドロゲルにおいて用いられる酸可溶性コラーゲンの製造」)。本発明のコラーゲン調製物は、約39KDである移動している追加のバンドをもたらし、この調製物中に存在する追加のタンパク質を示している。デコリンおよびバイグリカンに一致する2つの追加のバンド、ならびに数々の他のバンドが約39KDで見られた。これらのバンドは、本発明の方法により調製されたコラーゲン調製物においてのみ観察され、テストした市販されているコラーゲン製品のいずれにおいても観察されなかった。
【0181】
実施例4
ACL治癒の刺激に対する試みは、他の軟質結合組織における成功している創傷治癒プロセスの最中に見出される成長因子の放出をもたらす活性化送達系を生成することであった。白血球(WBC)のコラーゲン溶液に対する添加をテストした。意外なことに、本明細書に記載の多血小板血漿−コラーゲン溶液中のWBCの検出可能な濃度は、ヒドロゲルからのVEGFの即時放出に顕著な影響を有していることが発見された。
【0182】
方法
多血小板血漿の調製方法、スマートPreP2システム(Smart PreP2 System)を用いるPRP調製方法、血小板および低RBC方法、ヒドロゲルに用いられる酸−可溶性コラーゲンの製造、および血小板活性化:コラーゲングループを実施例2に記載のとおり実施した。
【0183】
初期および最終血小板および白血球濃度を測定するために、全血および多血小板血漿調製物のサンプルを示差を伴う全血球算定について分析した。データは上記表2に示されている。
【0184】
成長因子レベルの計測
各ゲルからのVEGF放出を12時間で計測した。各サンプルの周囲から培地を吸引し、1mLの新鮮な培地(2%抗生物質が添加された血清を含まないDMEM)で置き換えた。培地サンプルは、すべてのサンプルを採取するまで−80℃の冷凍庫で1.3mlのクリオバイアル中に保存した。ヒトVEGFの濃度は、市販されているクアンチキーネ(Quantikine)比色サンドイッチELISAキット(ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN)のR&Dシステムズ(R&D Systems))を用いて測定した。製造業者の説明書に記載されているとおり、培地サンプルで、アッセイを重複して実施した。VEGFアッセイについては希釈は用いなかった。
【0185】
各成長因子について、0、31.2、62.5、125、250、500、1000および2000pg/mlの採集濃度とするためにキットにもたらされた既知の濃度の成長因子の2倍段階希釈により、標準曲線を形成した。最終反応の変色を450nmの波長で光学的密度について計測したところ、標準曲線濃度対吸光度は、4つのパラメータロジスティック適合曲線を用いてリニアであった。TGF−β1の報告されている最低検出限界は4.61pg/mlであり、VEGFについては9.0pg/mlであり、ならびにPDGF−αβについては1.7pg/mlであった。
【0186】
結果
研究の結果が図12に示されている。リニア回帰分析は、12時間時点での、特に顆粒球といったWBC数とVEGF放出との間に、r=0.35で正相関を示した。この結果は、WBCの本発明のコラーゲン−PRP材料への包含は、治癒および組織修復のための向上した条件をもたらすことが可能であることを示す。
【0187】
実施例5:注入温度は、コラーゲン−PRPヒドロゲルのインビトロおよびインビボ性能に著しく影響する。
本発明者らは、動物モデルにおける部分的および完全横断後の前十字靱帯(ACL)の治癒を促すための、コラーゲン−PRPヒドロゲルの使用の効力を実証した。これらのヒドロゲルは、ACL創傷部位における代替的な仮のスキャフォールドとして機能すると考えられている。仮のスキャフォールドの重要な流動学的特性はそのゲル化特徴を含む(最終弾性率およびゲル化までの時間を含む)。上述のとおり、仮のスキャフォールドの弾性率は、創傷部位における仮のスキャフォールド類似体を維持すると共に、周囲の創傷縁部と同様に変形が可能であるよう十分でなければならない。過小な弾性率を有するヒドロゲルは、創傷治癒を促すことが可能である前に創傷部位から流出してしまう可能性が高い。外科手術においては、5分間でゲル化を達成することができる仮のスキャフォールド代替物は、手術部位の閉鎖を許容するよう十分に堅固となるために60分間以上必要とするヒドロゲルよりきわめて実用的であるため、ゲル化までの時間もまた重要である。
【0188】
この実験において、本発明者らは、コラーゲン架橋の集積の間の機械的摂動およびこの最終摂動が生じた温度をテストし、仮のスキャフォールドのインビトロでの機械特性に顕著な影響を有しており、従って、ACL修復のインビボモデルにおけるこれらの材料の機能に著しく影響したことを実証した。
【0189】
材料および方法
インビトロ研究:実験設計
酸可溶性コラーゲンを中和し、多血小板血漿と組み合わせて仮のスキャフォールドマトリックスのアリコートを形成した。次いで、各アリコートを、特定の加熱および混合パラメータ下で、同時にゲル中の温度を記録しながら、加熱電圧、混合速度および混合時間を正確に制御することが可能である自動デバイスを用いて混合した。処理の後、アリコートを微小振動レオメータのプレート上に注入し、弾性率およびゲル化までの時間を記録した。
【0190】
多血小板血漿(PRP)の調製
合計で1002ミリリットルの全血を、研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)承認の他の研究に係っている2匹の血液学的に正常なブタから採取した。血液は、10体積%酸−クエン酸デキストロースを含有するバッグ中に採取した。この血液を、15ミリリットル遠心分離チューブに、10ミリリットル/チューブで移した。チューブを6分間、150g’s(GH3.8ロータ、カリフォルニア州フラートン(Fullerton CA)のベックマン(Beckman)GS−6セントリフュージ(Centrifuge))で遠心分離した。上澄をPRPとして回収し、全血球算定(CBC)を行った。
【0191】
ヒドロゲルに用いた酸−可溶性コラーゲンの製造
この研究において用いたコラーゲンは、研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)承認の他の研究のために安楽死させられた管理ブリーダーラットから入手したラットの尾由来のものであった。ラット−尾腱を滅菌的に採取し、切り刻み、および可溶化した。得られたスラリー中のコラーゲン含有量は>5mg/mlであった。同一のコラーゲンスラリーをすべての実験において用いた。
【0192】
コラーゲンスラリーを、ヘペス緩衝剤(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))、ハムF−10培地(オハイオ州オーロラ(Aurora,OH)のMPバイオメディカルズ(MP Biomedicals,LCC))、抗生物質−抗真菌剤溶液(バージニア州ヘルンドン(Herndon,VA)のメディアテック社(Mediatech,Inc)のセルグロ(Cellgro))および滅菌水を用いて中和した。7.5%重炭酸ナトリウム(メリーランド州ウォーカーズビル(Walkersville,MD)のカムブレックスバイオサイエンスウォーカーズビル社(Cambrex BioScience Walkersville,Inc.))を用いて、酸性スラリーを7.4のpHに中和した。仮のスキャフォールド類似体のアリコートを、等量のPRPと中和済コラーゲンとを組み合わせることにより形成し、以下に概略されているとおり混合するまで氷上に維持した。
【0193】
ゲル混合および加熱用装置
混合速度、混合時間、および加熱速度は、TNCO Inc.(マサチューセッツ州ホィットマン(Whitman,MA))により設計され、製作されたクレードルを用いて制御した。オーガーを、クレードルに保持された6ccシリンジの内部に適合するよう設計した。これは、コラーゲンヒドロゲル構成要素の混合を許容する。このデバイスは、混合速度および時間の制御を可能とするためにオーガーに連結されたモータを有すると共に、加熱速度の制御を許容するために、シリンジの下に加熱パッドを有していた。クレードルを、可変要素の制御およびフィードバックデータのログを許容する、特注ラボビュー(LabView)(テキサス州オースチン(Austin,TX))アプリケーションを実行しているノート型コンピュータに接続した。
【0194】
実験は、3種の異なる混合速度(50RPM、100RPM、および150RPM)、3種の異なる混合時間(30秒、60秒、および120秒)、および3種の異なる加熱速度(9mV、11mV、および13mV)でテストした。これらのパラメータのすべての組み合わせを、表3に見られるとおりテストした。ゲルの最終温度をこれらの混合条件について記録した。24℃〜26℃、26℃〜28℃、28℃〜30℃、および30℃〜32℃の注入温度を有する追加の3通りのゲルもまたテストした。追加のゲルを、100RPMで混合し、ゲルが必要な最終温度に達するまでに必要な時間11mVで加熱することにより調製した。
【0195】
【表3】

【0196】
ゲルの調製
酸可溶性コラーゲンの1ミリリットルアリコートを5mlクリオチューブに計量した。適切な量の緩衝剤をこのチューブに添加し、5秒間ボルテックスした。次いで、オーガーをシリンジ中に入れ、中和済コラーゲンの吸引に用いた。酸可溶性コラーゲンと等量のPRPを、次いで、同一のシリンジ中に吸引した。シリンジをクレードルに固定し、これにより混合した。
【0197】
機械的テスト
ゲルの機械特性を、TAインスツルメンツ(TA Instruments)AR1000レオメータ(デラウェア州ニューキャッスル(New Castle,Delaware))を用いて、コーン・オン・プレート微小振幅振動せん断レオメトリー(Cone on Plate Small Amplitude Oscillatory Shear Rheometry)を用いて測定した。レオメータには、60mm1°アクリル製コーンが設けられており、ベースプレートを25℃に加熱した。ゲルを上述のとおり調製し、1ミリリットルのコラーゲン−PRPゲルをレオメータプレート上に分取した。ゲルがコーンとプレートとの間の38μmの層に位置されるようコーンを下げ、1%振動歪みに供した。ゲルの粘弾性複合弾性率をゲル化が進行するに伴って記録した。弾性係数(G’)、非弾性係数(G’’)、および相角度をすべてのゲルについて計測した。
【0198】
インビボ研究:実験設計
5匹の30kgメスヨークシャー種ブタを研究において用いた。4匹の動物は左右対称のACL横断を受けており、これらの各々に対して、一方側をコラーゲン−PRPヒドロゲルで増強した縫合修復術で治療し、その一方で、逆側では、横断切片をヒドロゲルを用いずに縫合修復術で治療した。残りの動物においては、一側性手術を増強修復で実施し、反対側は同世代無処置対照として放置した。動物のうち1匹が術後の漿液腫を発症し、これは、コラーゲン−PRP側で、抗生物質で治療した。この膝は、研究から除外した。従って、合計で、増強修復グループに4つの膝が、および非増強グループに4つの膝があった。すべての動物は14週間生存し、次いで、MRI評価を経て安楽死させた。膝を直ぐに採取し、生体力学テストまで凍結させた。降伏荷重、破損荷重、最大剛性および破損転移を計測した。
【0199】
外科手術
いずれかの外科手術の前に本研究に対する、研究機関の動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を得た。5匹の30kgメスのヨークシャー種ブタをこの研究において用いた。これらのブタに、テラゾール4.4〜6.6mg/kg IM、キシラジン1.1〜2.2mg/kg IM、およびアトロピン0.04mg/kgを前投与した。これらを挿管し、麻酔維持管理のためにイソフルラン1〜3%に供した。麻酔が導入された後、ブタを計量し、手術室台の上に仰臥位で置いた。両方の後肢を剪毛し、クロルヘキシジンで用意し、続いて、ベタジンペイントおよび滅菌的にドレープした。止血帯は用いなかった。ACLを露出させるために、膝蓋腱の内側縁上に4センチメートルの切開を形成した。切開を、電気メスを用いて滑膜まで鋭く下方に進めた。脂肪パッドをその基部の結合部から離し、半月板の間の靱帯を露出させるために部分的に適除した。半月板の間の靱帯を開放して、ACLの脛骨挿入部を露出させた。ACLを開放する前にラックマン操作を実施して膝安定性を検証した。2本の1番ビクリル(Vicryl)縫合糸を変性ケスラースティッチを用いて遠位のACL断端に固定した。ACLを、中央と近接した3番目との結合部で12番ブレードを用いて完全に横断した。完全横断切片を視覚的に検証し、ラックマン操作を反復し、これは、完全横断後に顕著な端点が検出されないすべての膝で陽性となった。すべての膝を無菌生理食塩水で洗浄して、縫合糸アンカーを配置する前に滑液を除去した。吸収性縫合糸アンカー(ツインフィックス(TwinFix)AB5.0縫合糸アンカーとデュラブレイドスーチャー(DuraBraid Suture)(USP2番);スミスアンドネフュー社(Smith and Nephew,Inc)、マサチューセッツ州アンドバー(Andover MA))を大腿ノッチの後に配置した。膝を500ccの無菌通常生理食塩水で洗浄してすべての滑液を除去した。一旦血行停止が達成されたら、コラーゲンスポンジを冷たいコラーゲン−PRPヒドロゲルに浸漬し、縫合糸およびノッチにおける近接したACL断端の領域まで装着した。縫合糸を、膝を静止屈曲させて(これらの動物における完全な伸張から約70°〜40°足りない)最大マニュアル張力を用いて結束した。コラーゲン−PRPヒドロゲルの第2のバッチを、順次、等しいアリコートの中和されたコラーゲン溶液および自家PRPを混合および加熱デバイス(図)にとり、50rpmおよび13mVで1分混合することにより混合し、これは、28.9〜32.4℃の注入温度をもたらした。次いで、この混合物をACL修復部上に配置して、顆間のノッチを埋めた。膝は、縫合糸アンカー修復の同等の技術が、コラーゲン−PRPヒドロゲルの添加がなされていない以外は同等のコラーゲンスポンジで実施されている間は、伸張させたまま静置させておいた。切開部を吸収性縫合糸を用いて多層で閉じた。
【0200】
動物は、術後は拘束せず、自由に活動させた。一旦動物が麻酔から回復したら、通常のカゴ内での活動を許可し、および自由に栄養を取らせた。ブプレネックス(Buprenex)0.01mg/kg IMを1回およびフェンタニルパッチ1〜4ug/kgを経皮的に、術後の鎮痛のために与えた。すべての動物は、手術後24時間には後肢に体重をかけていた。インビボで14週間の後、動物に再度麻酔をかけ、以下に詳述したプロトコルを用いてインビボMR撮像を行った。
【0201】
磁気共鳴画像を撮った後、動物をフェータルプラス(Fatal Plus)を1cc/10lbsで用いて安楽死させた。いずれの動物も、早期の安楽死が必要となったであろう、通常歩行傷害、発赤、温感および膝の腫大、発熱または感染症の他の徴候といったいずれかの手術合併症は有していなかった。
【0202】
6つの無処置の対照膝を、胸部への外科手術後に安楽死させられた、年齢−、性別−および重量−が適合する動物から入手した。後肢を−20℃で3ヶ月凍結させ、機械的テストの前に4℃で一晩かけて解凍した。これらの膝についてのすべての他のテスト条件は、実験グループにおけるものと同等であった。
【0203】
磁気共鳴画像法
インビボ磁気共鳴画像法を、特定の時点で8−チャネルフェーズアレイコイルで、1.5テスラ(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee,WI)のGEメディカルシステムズ(GE Medical Systems))で実施した。スキャニングは、最大伸張(30〜45度の屈曲)の膝で実施した。従来のMRは、多層T1、FSE PDおよびT2強調画像を含んでいた。視野(FOV):16〜18cm、マトリックス:256×256、(繰返し時間/エコー時間)TR/TE:400/16、2500/32、3000/66msec、エコートレイン長さ(ETL):8、バンド幅(BW):15kHz、スライス厚さ:3、スライス間ギャップ:1mm)。灌流は、スポイルドグラジェントエコー配列(TR/TE=200/2ms、フリップ角=60、3mmスライス厚、および0.625mm面解像度)を、スキャン開始から10秒後に注入した静脈内造影剤(マグネビスト(Magnevist);ニュージャージー州ウェイン(Wayne,NJ)のベルレックス(Berlex))0.2ml/kgと共に用いて評価した。78秒間隔のスライス当たり、5枚のイメージを撮像した。ポストコントラストT1−強調イメージを(FOV:16cm、マトリックス:256×256,TR/TE:400/9msec、スライス厚:3mm、スライス間ギャップ:1mm)前頭面および矢状面で得た。
【0204】
生体力学テスト
各ブタに対する両方の膝からの骨−靱帯−骨ACL複合体を、単軸張力でテストした。要約すると、テストは、30度の屈曲で屈曲された膝で、および室温で実施した。プレコンディショニングの直後、各検体を、20mm/分での単軸張力で破損されるまでテストした。近距離デジタルイメージを、マクロレンズを備えた高解像度デジタルカメラ(PixeLINK PLA662メガピクセルファイヤーワイヤー(Firewire)カメラ、加国オンタリオ州オタワ(Ottawa ON,Canada)のPixeLINK)を用いて3Hzで撮影して、破損形態を判定した。降伏荷重、降伏時の転移、接線係数(力−転移曲線の最大勾配)、破損での最大荷重、破損での転移および破損への総仕事量(力−転移曲線下の面積)を、各骨−靱帯−骨ACL複合体について計測した力−転移曲線から判定した。降伏荷重は、正規化した力−転移曲線に沿った点を表し、ここではACL複合体の機械的挙動は「リニア」挙動から離れ、この分析の目的のために、その最大値から少なくとも2%接線係数が下降する点として定義した。降伏時の転移は、この同一の点で記録された転移であった。最大荷重は、破損および破損時の転移(最大荷重で記録された転移)の前にACL複合体によって維持される最大正規化荷重である。破損へのエネルギーは、力−転移曲線下の合計面積を積分することにより導かれる。
【0205】
統計学的分析:機械的テスト計測値を、4週間インビボで、無処置のACLと、縫合糸アンカー修復単独で治療したACLと、縫合糸アンカー修復およびコラーゲンスポンジにより治療したものとの間で、多変数変量解析(MANOVA)からのF検定を95%信頼区間(CI)で用いて、比較した。3.84の臨界値を超えるF検定を、統計的有意性に対するエビデンスとしてみなすこととした。6つの可変要素の各々(降伏時荷重、最大荷重、降伏時転移、破損時転移、接線係数、および破損エネルギー)は正規(ガウシアン形)分布に従い、従ってデータは、平均および標準偏差(SD)の観点で表されている。対t検定を用いて、PRPを伴う縫合糸アンカーを受ける左右対称の側と比した縫合糸アンカー修復単独で治療したACLにおける差を評価した。統計学的分析は、SPSSバージョン14.0(イリノイ州シカゴ(Chicago,IL)のSPSS Inc.)を用いて実施した。p<0.05のすべての値を統計的に有意であるとみなした。
【0206】
結果
血液学
各ブタからの全血の1ミリリットルサンプル、および各々のPRPの1ミリリットルサンプルをCBR Institute for Biomedical Research(マサチューセッツ州ボストン(Boston,MA))に持ち込み、全血球算定を実施した。結果が表4にまとめられている。
【0207】
【表4】

【0208】
機械的テスト
1.)混合時間の影響
ゲルの構成要素の30秒の混合または60秒の混合の間には、最大弾性係数により計測したところ統計学的差異はなかった(112±34Pa対142±25Pa)。結果が図13Aに示されている。しかしながら、120秒の混合は、最大弾性係数をわずかに5±2Paにまで著しく低減させた(一変数ANOVA p<0.01)。同様の知見が非弾性係数についても見られた(図13Bに示されている)。30秒混合したサンプルに対する非弾性係数は27±8Paであり、および60秒混合したサンプルに対する非弾性係数は35±7Paであった。これは、統計的に有意な差を表さなかった。しかしながら、非弾性係数は、30秒および60秒混合時間サンプル(一変数ANOVA p<0.001)と比較すると、120秒混合したサンプルについては著しく低かった(2±0.4Pa)。
【0209】
30秒または60秒混合したサンプルに対して、45°までの時間、G’maxまでの時間およびG’’maxまでの時間で計測したところ、ゲル化速度には統計的に有意な差は認められなかった。30秒混合したサンプルについては、45°までの時間は3.1±0.0分であり、G’maxまでの時間は16±2.6分であり、およびG’’maxまでの時間は16±2.8分であった。60秒混合したサンプルについては、45°までの時間は2.7±0.4分であり、時間G’maxは14.2±4.2分であり、およびG’’maxまでの時間は14.2±4.3分であった。しかしながら、120秒混合したサンプルは0.3±0.03分の45°までの時間を有しており、これは、30秒および60秒混合サンプルの両方と比較したとき、統計的に有意な低減を表す(一変数ANOVA p<0.001)。G’max(9.5±5.2分)およびG’’max(8±6.8分)までの時間は、30秒および60秒サンプルを120秒サンプルに対して比較したとき、統計的に有意ではなかった。
【0210】
2.)混合速度の影響
コラーゲン−PRPヒドロゲルの流動学的特性に対する混合速度の影響を試験したところ、弾性(図14A)および非弾性係数(図14B)(一変数ANOVA)の両方に対する3種の混合速度間では、統計的に有意な差は認められなかった。50RPMでの混合は、140±42Paの弾性係数および35±11Paの非弾性係数をもたらした。100RPMでの混合は、112±41Paの弾性係数および27±10Paの非弾性係数をもたらした。200RPMでの混合は、112±30Paの弾性係数および27±7Paの非弾性係数をもたらした。
【0211】
しかも、種々の混合速度は、45°までの時間、G’maxまでの時間、およびG’’maxまでの時間で計測したところ、ゲル化が生じる速度に対して統計学的な影響を有していなかった。50RPMで混合したゲルについて、45°までの時間は2.3±0.0分であり、G’maxまでの時間16±2.4分、およびG’’maxまでの時間は16±2.5分であった。100RPMで混合したゲルについて、45°までの時間は2.8±0.5分であり、G’maxまでの時間16±1.6分、およびG’’maxまでの時間は16±1.7分であった。200RPMで混合したゲルについて、45°までの時間は2.7±0.6分であり、G’maxまでの時間は17±4.1分、およびG’’maxまでの時間は16.7±3.6分であった。
【0212】
3.)加熱速度の影響
コラーゲン−PRPヒドロゲルの加熱速度の増加は、ゲルの粘弾性係数に対して統計学的影響を有していなかった。9mVで加熱したゲルは、106±20Paの弾性係数(図15A)、および25±4Paの非弾性係数(図15B)を記録した。11mVで加熱したゲルは、93±13Paの弾性係数、および22±3.1Paの非弾性係数を有していた。13mVで加熱したゲルは、89±56Paの弾性係数、および22±16Paの非弾性係数を有していた。これらのいずれも統計的に有意な差を示さなかった。
【0213】
9mVで加熱したゲルについては45°までの時間は3.6±0.4分であり、G’maxまでの時間17.4±1.0分、およびG’’maxまでの時間は16.4±2.0分であった。11mVで加熱したゲルは、2.4±0.6分の45°までの時間、16±.5分のG’maxまでの時間および15±0.8分のG’’maxまでの時間を有していた。最後に、13mVで加熱したゲルは、2.0±0.5分の45°までの時間、17±1.2分のG’maxまでの時間および16±1.5分のG’’maxまでの時間を有していた。これらの値を比較したところ、45°までの時間に対する9mVと13mVとの加熱速度間のみが統計的に有意な比較であった(一変数ANOVA p<0.01)。
【0214】
4.)注入温度の影響
注入温度の上昇は、コラーゲン−PRPヒドロゲルの機械特性の低下をもたらした。24℃〜26℃の間でレオメータプレートに注入したゲルは、156±26Paの弾性係数(図16A)、および39.4±7.2Paの非弾性係数(図16B)を有していた。26℃〜28℃の間でレオメータプレートに注入したゲルは、128.7±15.7Paの弾性係数、および32.3±2.7Paの非弾性係数を有していた。28℃〜30℃の間でレオメータプレートに注入したゲルは、90.3±11.4Paの弾性係数、および22.3±3.6Paの非弾性係数を有していた。最後に、30℃〜32℃の間でレオメータプレートに注入したゲルは、54.6±30.4Paの弾性係数、および14.2±6.5Paの非弾性係数を有していた。弾性係数については、24℃〜26℃で注入したゲルと、すべての他のグループとの間に統計的に有意な差(一変数ANOVA p<0.01)が認められ、26℃〜28℃で注入したゲルと、30℃〜32℃で注入したゲルとの間に統計的に有意な差が認められた。非弾性係数について、24℃〜26℃で注入したゲルと、28℃〜30℃で注入したゲルと、30℃〜32℃で注入したゲルとの間には統計的に有意な差が認められた(一変数ANOVA p<0.005)。非弾性係数において、26℃〜28℃で注入したゲルと、30℃〜32℃で注入したゲルとの間に統計的に有意な差がまた認められた(一変数ANOVA p<0.005)。
【0215】
45°までの時間、G’maxまでの時間、およびG’’maxまでの時間で計測したところ、ゲル化速度は、注入温度の上昇により影響された。24℃〜26℃で注入したゲルについては、45°までの時間は2.3±0.1分と見出され、G’maxまでの時間は14.6±4.5分であり、およびG’’maxまでの時間は14.5±4.7分であった。26℃〜28℃で注入したゲルについては、45°までの時間は1.6±0.3分であり、G’maxまでの時間は10.5±3.1分であり、およびG’’maxまでの時間は9.4±2.1分であった。28℃〜30℃で注入したゲルについては、45°までの時間は1.5±0.0分と見出され、G’maxまでの時間は10.6±3.3分であり、およびG’’maxまでの時間は9.0±2.1分であった。最後に、30℃〜32℃で注入したゲルについては、45°までの時間は1.0±0.2分と見出され、G’maxまでの時間は8.6±0.8分であり、およびG’’maxまでの時間は8.5±0.9分であった。統計的に、G’maxまでの時間についてのグループとG’’maxまでの時間についてグループとの間に有意な差は認められなかった;しかしながら、45°までの時間についてのグループとの間では統計的に有意な差が認められた。24℃〜26℃で注入したゲルを、すべての他の注入温度グループと比較すると、45°までの時間において顕著な減少があった(一変数ANOVA p<0.003)(図17)。26℃〜28℃グループと30℃〜32℃グループとの間、および28℃〜30℃グループと30℃〜32℃グループとの間には、45°までの時間について有意な差がまたあった(一変数ANOVA p>0.005)。
【0216】
インビボ結果:14週間での修復強度に対する注入温度の影響が図18に示されている。スポンジ単独の対照グループにおける平均強度は206Nであった。注入時のゲルの温度は、ヒドロゲルのインビトロ機械特性、ならびにヒドロゲルにより誘起される組織治癒のインビボ特性の両方に著しく影響する。26℃未満の温度が最も強固なゲルをインビトロでもたらし、28℃の温度が最も強固なインビボ治癒靱帯をもたらした。
【0217】
実施例6:ヤギモデルにおける、ACLグラフト強度および術後膝弛緩の血小板による促進
米国では、ACL損傷は、200,000人を超える患者に毎年影響を及ぼしている。ACL再建術は膝の安定性を全体的に再建するためには信頼のおける手法であるが、膝の正常な生体力学は復元されず、臨床的に関連性のある割合の患者が過剰な弛緩を術後に有する。構造的特性が低下したACL再建術グラフトの早期の治癒は、術後の膝弛緩の増加のほとんどが手術後の最初の数ヶ月以内に発生したことを示すヒトにおける先行研究を部分的に説明することが可能である。それ故、ACLグラフトの早期の構造的特性(強度および剛性)を向上させることが可能であるストラテジーが、ACL再建手術後の異常な膝弛緩のリスクを低減させるための有望な溶液として所望されている。
【0218】
本発明者らは、生体力学的に安定な部分ACL損傷モデルの治癒の組織学的評価により、成長因子プロファイルを実証した。内側側副靱帯(MCL)および膝蓋腱(PT)の正常な関節外治癒において、発現およびタイミングは、部分的ACLへのコラーゲン−血小板ヒドロゲルの配置と定性的に同様であった。これは、コラーゲン−血小板ヒドロゲル無し(対照)での部分的ACL損傷における、治癒の不足およびひどく制限された成長因子発現と対照的である。特定の個別の成長因子(PDGF対TGFおよびEGF対VEGF)が、ヒツジまたはイヌのいずれかにおけるACL再建術モデルに適用されてきている。血小板(PDGFおよびTGF)中に大量に存在する両方の成長因子が、向上した荷重および剛性を術後12週間で実証した。しかしながら、血管再生(VEGF)を促す成長因子の適用は、グラフトを12週間で弱化した。ACL再建術グラフトが最弱に近い場合の、早期の構造的特性を向上するための、より早期の時点(6週間)で、至適な投与量、組み合わせまたは適用方法は知られていない。それ故、身体自身の成長因子を適用してACL再建術グラフトの構造的特性の戻りを促進するためのストラテジーは、さらなる研究が必要である。
【0219】
手術時のACLグラフトの周囲への血小板ゲルの配置がグラフトの早期の機械特性(最大荷重および剛性)を向上するであろうことを示すためにこの研究を実施した。グラフトの周囲の血小板濃度が、ACLグラフトの早期の破損荷重と直接的な相関を有するであろうことも示した。
【0220】
材料および方法
動物モデル:4歳の去勢したオスのヌビアン種交配ヤギ12匹に、骨−膝蓋腱−骨自家グラフトを用いて一側前十字靱帯再建を行った。実験グループにおいては、6匹のヤギがコラーゲン−血小板ヒドロゲルで増強されたグラフトを有しており、一方で、6匹の対照ヤギがコラーゲン−ヒドロゲル単独での増強を有していた。手術は、各治療グループ中の右膝および左膝間で交互に実施した。ACL再建術グラフトが治癒している間、動物に非制限的なカゴ活動を許した。術後6週間で、これらを、ペンタバルビトール溶液の過量投与(ユサゾール(Euthasol);1cc/10lbs)で安楽死させた。安楽死の時に、再建および反対側の対照膝の両方を採取し、機械的テストの前に−20℃で保存した。
【0221】
外科手術:動物は、アセプロミジン(10mg IM)を用いて術前に鎮静化させた。次いで、ペントタールナトリウム(5〜8mg/Kg IV)で麻酔を導入すると共に、イソフルオランを用いて手術の最中維持した。
【0222】
15ブレードを用いて、膝蓋骨の上から脛骨結節の下のちょうど正中の内側まで切開を開いた。膝蓋前皮下包を皮膚切開と一致させて切り取って、腱傍結合組織を露出させた。縦方向の切り口を腱傍結合組織を中心に形成して膝蓋腱を露出させた。膝蓋腱の内側および外側境界を触診し、6mm幅のグラフトを電気メスでマークした。膝蓋骨ブロックは15×6mmであり、上方に10mmの膝蓋骨無処置のまま残した。脛骨ブロックは10×6mmであった。採取したグラフトを成形して、6mm直径の骨ブロックに適合させ、1.5mmの穿孔を骨ブロックの各側に設けた。膝蓋腱の長さがACLより長いため、脛骨ブロックを膝蓋腱上に折り畳み、短くするために8mm骨−腱ブロックの縫い代をこの側に形成して縫合した。2本の2番エチボンド(Ethibond)縫合糸を各骨ブロックに配置した。顆間ノッチを、膝蓋腱における中央欠損を通して、脂肪パッドを切除することにより露出させた。半月板の間の靱帯は切断しなかった。膝のベースライン安定性についてラックマンテストをチェックした。11番ブレードを用いてACLをノッチの後から開放させ、ACLを、靱帯をその脛骨挿入部から剥離することにより除去した。手動でのラックマンを実施して、ACLの完全な機能損失を検証した。脛骨孔を、65°に設定した脛骨標準ガイドを用いて穿孔した。ピンを8mmドリルでオーバードリルし、すべての軟部組織を除去した。キューレットを用いてノッチ形成術を実施した。膝を過度に屈曲させ、6mmオフセット大腿ドリルガイド(フロリダ州ネープルス(Naples FL)のアルスレックス(Arthrex Inc))をノッチの後ろに10:30位置で配置した。パッシングピンを大腿骨を通して穿孔し、次いで、7mmドリルで20〜25mmまでオーバードリルした。大腿骨孔の後壁の完全性をすべての事例において検証した。先ず、エチボンド(Ethibond)縫合糸を用い、次いで、5×20mm干渉スクリュー(アルスレックス(Arthrex Inc))を用いて大腿骨に固定して、グラフトを大腿骨孔中に配置した。次いで、グラフトを脛骨孔に逆側に引っ張った。60度の屈曲での膝で、グラフトをしっかりと張り、脛骨孔中に6×20mm干渉スクリュー(アルスレックス(Arthrex Inc))を用いて固定した。脛骨修復を、脛骨固定が十分に安定ではないとみなされる場合には、縫合糸で骨膜に補強した。
【0223】
実験グループについては、グラフトを、スポンジの一部をグラフトの前側に置いて、フリーアーエレベータ(freer elevator)を用いてACLとLFCとの間に配置したコラーゲンスポンジで増強した。2立方センチメートルのコラーゲン−血小板ヒドロゲル(n=6)をスポンジ上に置いた。対照グループは、血小板をコラーゲン−ヒドロゲルに添加しなかったこと以外は同等であった。10分後、膝を層で閉めた。動物を、膝を静止位置のまま維持して完全にゲル化させるために、ゲルを配置してから1時間の間麻酔下に維持した。
【0224】
術後鎮痛は、ブプレノルフィン(0.01mg/Kg IM、1日2回)およびケトプロフェン(1mg/Kg IM、1日1回)を5日間にわたって用いて制御した。アンピシリン(10mg/Kg SC、1日2回)を、感染症のリスクを低減させるために10日間投与した。
【0225】
コラーゲンゲルおよびコラーゲン−血小板ゲル製造:ラット尾コラーゲンを、本明細書に記載のとおり酸可溶化させた。コラーゲングループについて、コラーゲンを7.4のpHに中和すると共に、中和の直後に手術部位に添加した。血小板をゲルに添加するために、最初は、多血小板血漿の製造を試みた;しかしながら、ヤギの血小板と赤血球とのサイズおよび重量の類似度により、150〜250gを20〜30分間用いる遠心分離プロトコルはすべて、PRPにおける赤血球の効果的な低減をもたらしたが、PRP画分中の血小板数は、すべてのプロトコルで全血の100%未満であった。250gで30分間の、エキソビボで判定した最も有効なプロトコルを用いて、ヤギのPRPにおいて得られた血小板は、計測済のMPVを用いて血小板数を算出した場合、この研究における12匹のヤギについて平均で102%+/−68%(平均+/−標準偏差)であった。加えて、グループ中で見られた濃縮には大きな変動があった。従って、本発明者らは、コラーゲン−血小板グループについてヤギの自家全血液を用いることを選んだ。これにより、コラーゲン−血小板ヒドロゲル中に送達される血小板の濃度が、末梢血血小板濃度により決定される。加えて、本発明者らは、実験グループおよび対照グループの両方のすべての動物に対する末梢血中の血小板濃度を計測した。54ccの血液を、6ccの酸−クエン酸−ブドウ糖を抗凝固剤として含有するシリンジ中に各動物から採取した。ゲル配置時にコラーゲンを中和し、血液と4:1コラーゲン:血液比で混合し、およびコラーゲン−血小板ゲルをグラフトに添加した。
【0226】
機械的テスト:すべての試料を採取した後、膝を解凍し、弛緩および破損テストのために準備した。脛骨および大腿骨を囲む軟部組織を剥離して、関節被膜を無処置で残した。遠位の脛骨および近接した大腿骨を、次いで、機械的テスト用に据え付けることが可能であるよう、注封材料(スムースキャスト(SmoothCast)200;ペンシルベニア州イーストン(Easton PA)のスムース−オン(Smooth−On))中にPVCパイプ中に注封した。
【0227】
無処置関節の前後荷重−転移応答を、30°および60°の屈曲で固定された膝を有するカスタム設計の固定具を用いて計測した(図19)(フレミング(Fleming)ら、JOR、19:841、2001年)。±60ニュートンの前側および後側方向せん断荷重を、AP転移を計測しながら、MTS810マテリアルテスティングシステム(Materials Testing System)(ミネソタ州プレーリーエデン(Prairie Eden,MN)のMTS)を用いて脛骨に対して大腿骨に適応した。脛骨の軸回転を中立位置に固定し、すべての他の動きは拘束しなかった。
【0228】
AP弛緩テストが完了した後、脛骨および大腿骨を、ACLの機械的軸が材料テストシステムの荷重軸と同一直線上にあるよう位置させた(ウー(Woo)ら;AJSM、19:217、1991年;トーヤマ(Tohyama)ら;AJSM、24:608、1996年)。膝屈曲角度を30°に設定した。脛骨を、移動式X−Yプラットホームを介してMTSのベースに装着した。大腿骨は回転に対して拘束しなかった。これは、引張荷重を適用したときに治癒グラフトの断面の全体にわたって荷重が分布されるよう、検体が自身を配置させることを可能とする。
【0229】
関節被膜、半月板、側副靱帯およびPCLを関節から切除して、ACLグラフトおよび瘢痕塊を無処置で残した。大腿骨−グラフト−脛骨複合体を、次いで、破損荷重−転移データを記録しながら、20mm/分で破損までの張力に供した。同等のプロトコルを反対側のACL−無処置の膝についても実施した。MTS荷重−転移トレーシングから、破損荷重、破損転移、および線形剛性を測定した。
【0230】
除外:最初に手術した動物をコラーゲン−血小板グループに割り当てた。この動物におけるグラフトの採取で技術的困難が伴い、手術の終結時に、この動物を分析から除外することを決定した。加えて、コラーゲン単独グループにおける1匹の動物は、両方のグループにおけるいずれかの他の動物よりも3倍を超えて高い破損強度を有するグラフトを有しており、それ故、3シグマルールにより残りの分析から除外した。従って、いずれの動物も、統計的グループのいずれも代表せず、どの図にも図示されていない。
【0231】
統計学的分析:コラーゲン(キャリアのみ)と、血小板コラーゲングループとの間のAP弛緩値、破損強度、および剛性値の比較を行った。治療した膝と反対側の対照膝との間のこれらのパラメータの各々についての差を算出した。不対t検定を実施して、差が顕著であったかを判定した(p<0.05)。相関分析を実施して、全身血小板数と治癒6週間後のグラフトの強度との間の関連を判定した。
【0232】
結果
手術結果:12匹の動物中11匹が手術から良好に回復した。しかしながら、コラーゲンのみのグループからの1匹のヤギが手術から1日以内に死亡した。検死によれば、広範なアテローム性動脈硬化が判明し、死亡の原因は心臓に関連すると考えられた。安楽死のとき、すべての動物は正常に歩行しているように見られた。
【0233】
肉眼的形態:観察者には、試料を採取し、類別しているときにグループを教えなかった。靱帯粘膜の再形成速度、ノッチ瘢痕塊から膝蓋腱の収集欠損への瘢痕または癒着形成速度または観察された関節癒着量の観点では、肉眼的形態でコラーゲンとコラーゲン−血小板グループとの間には差はなかった。瘢痕塊がグラフトの最も頭側の区域のみに浸潤するかどうかのグループ、または大腿骨から脛骨に橋掛けされているかどうかのグループの間に差はなかった−両方の知見は両方のグループの靱帯において見られた。
【0234】
生体力学:60度の屈曲の膝屈曲角度で、膝のAP弛緩はコラーゲン−血小板グループにおいてコラーゲングループより34%低く、その差は統計的に有意であった(17.2+/−3.3mm対23.1+/−4.0mm;平均+/−SD;p<0.05)。30度の屈曲でも、膝のAP弛緩はコラーゲン−血小板グループにおいて40%減少したが;しかしながら、差は、部分的に各グループにおいて見られる大きな標準偏差により、統計的有意性に接近したがこれに達することはなかった(コラーゲン−血小板グループ14.3+/−4.0mm対コラーゲングループ20+/−4.5mm;p<0.09)。
【0235】
コラーゲン−血小板グループ強度は、コラーゲングループより30%高く(139+/−41N対108+/−47N;共に平均+/−SD)、差は統計的に有意ではなかった(p>0.30)。両方のグループにおける値は、無処置のACL強度の約10%であった。大腿骨孔サイズ、コラーゲンスポンジサイズおよびコラーゲンゲル量は、破損強度の顕著な予報値とは見出されなかった。
【0236】
破損転移の観点でグループ間に有意な差は認められなかった。コラーゲングループは9.3+/−5.1mm(平均+/−SD)で破断し、コラーゲン−血小板グループは8.4+/−4.4mmで破断した(p>0.80)。興味深いことに、両方の値は、平均20.8+/−1.8mmであった反対側の無処置靱帯における破損転移よりはるかに小さかった。グループ間で線形剛性にも有意な差はなく、ここで、コラーゲングループは22+/−15N/mmの剛性を有しており、コラーゲン−血小板グループは26+/−14N/mmの剛性を有していた(平均+/−SD;p>0.60)。両方のグループは、無処置靱帯平均剛性の三分の一未満であった(90+/−34N/mm;平均+/−SD)。
【0237】
より高い全身的な血小板数は、より高い破損荷重(図20:R^2>0.67)およびより高い靱帯線形剛性(図21:R^2>0.80)の両方と、リニア回帰モデルを用いて著しく相関した。血小板濃度と、破損転移(R^2=0.40)または60度でのAP弛緩(R^2=0.44)との間には、テストした動物の数では顕著な相関はなかった。データが図22および23に図示されている。図22は、血小板数の関数としての関節の強度を示すグラフである。図23Aおよび図23Bは、回帰95%信頼帯での二変量散布図である。図23Aは、血小板数の関数としての破断荷重を示す。図23Bは、血小板数の関数としての剛性を示す。
【0238】
それ故、30度の膝屈曲で計測したAP弛緩は、実験血小板グループにおいて、キャリア単独で治療したものと比して著しく向上した(154%+/−44%対355%+/−55%;p=0.03)。2つのグループにおけるACLグラフトの最大荷重の間には有意な差は認められなかったが;しかしながら、グラフトの最大荷重は、両方の実験(R2=0.95)および対照(R2=0.85)グループにおいて全身血小板数と直接的に相関した。コラーゲン−ヒドロゲルへの血小板の添加は、6週間でのACL再建された膝の以前の報告と比して、AP弛緩を向上した。
【0239】
血小板のコラーゲンヒドロゲルへの添加(実験グループ)は、自家グラフト膝蓋腱ACL再建術から6週間で膝弛緩に臨床的に顕著な低減をもたらした。加えて、動物の全身血小板数は、実験グループ(コラーゲン−血小板ヒドロゲル)および対照グループ(コラーゲンヒドロゲル)の両方に対する最大荷重と直接的に相関した。これらの知見の両方は、早期の望ましくない術後のAP弛緩におけるおそらくは臨床的に関連性のある低減を伴う、ACL再建術グラフト治癒において血小板が果たす役割を強調する。
【0240】
膝を30度の屈曲でテストしたところ(ヤギの膝における完全な伸張)、AP弛緩における向上は明らかであった。この位置で、コラーゲン−血小板ヒドロゲルで治療した膝は無処置のACLでの反対側の膝よりわずかに54%大きいAP弛緩を有していたが、その一方で、コラーゲンヒドロゲル単独治療した膝は、無処置の膝より200%超大きい弛緩を有していた。60度の屈曲では、グループ間の差は小さく、有意ではなかった。この知見は、早期の望ましくない臨床的弛緩を低減させるための潜在的な役割を示唆している。血小板の影響が、グラフト治癒に対するものか、または被膜構造に対するものかは不明である。血小板濃度ならびに投与タイミングのさらなる至適化が必要である。コラーゲンヒドロゲル単独グループにおいて見られたAP弛緩の大きな増加は、ヤギモデルを用いる自家膝蓋腱グラフトを伴うACL再建術の先行する研究のものと合致する(アブラモウィッチ(Abramowitch)、JOR、21:707、2003年;カミングス(Cummings)、JOR、20:1003、2002年;パパジョルジュ(Papageorgiou)、AJSM、29:620、2001年;ジャックソン(Jackson)、AJSM、21:176、1993年)。パパジョルジュ(Papageorgiou)らは、治癒後6週間で、30度および60度の屈曲での膝で、238%および285%のAP弛緩の増加をそれぞれ報告した。コラーゲン−血小板グループに見られる向上もまた、以前発表されたヒツジにおけるACLRの結果からの顕著な向上であり、ここで、本発明者らがこの研究において行ったとおりの大腿骨および脛骨干渉スクリュー固定を用いるモデルにおいて、膝のAP弛緩は、6週間で、無処置の膝で2.0+/−0.7mm〜8.3+/−2.3mm増加した(ハント(HUNT)ら、「Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.」2006年12月;14(12):p.1245〜51)。
【0241】
6週間の時点が、動物モデルに対するACL再建術における強度の最下点としてよく認識されている。両方のグループにおける強度値は、ヒツジモデルにおける3%(ハント(Hunt)ら、「Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc.」、2006年12月;14(12):1245〜51)、および6週間の治癒後のヤギモデルに対する典型(パパジョルジュ(Papgeorgiou、AJSM、29:620、2001年;アブラモウィッチ(Abramowitch)、21:708、2003年)の以前の報告よりわずかに高い、無処置のACLの約10%であった。安定化コラーゲン−ヒドロゲル中に血小板を適用することにより、本発明者らは、関節外治癒のためにフィブリン塊中に体積される血小板に伴って見出される「自然の」環境をシミュレートした。さらに、血小板は、適切な濃度でのTGF−βおよびPDGFに追加して多数の成長因子を関節外治癒のために含有する。さらに、組み換え型TGFまたはPDGFまたはEGFの費用は、血液由来の自家グラフト血小板を適用することの費用をはるかに上回る。
【0242】
本研究の制限としては、動物における対照リハビリテーションができないこと、およびヤギのモデルにおいて2倍〜4倍に増加した濃厚血小板をコラーゲンヒドロゲル中にもたらすことができないことが挙げられる。反芻動物は、きわめて早期の術後期間において直立していなければならず、それ故、このモデルにおいて荷重のかかる体重からACLグラフトを保護することが困難である。この動物モデルにおいて、包帯法および不動化は実際的または効果的ではない。血小板を濃縮できないことは、全血を超えた血小板数の増加が、ACLグラフト治癒を促進すると共に術後弛緩をさらに低減し続けることとなるかどうかを見出す能力を制限する。しかしながら、モデルの制限にかかわらず、データは、血小板の添加がグラフト治癒を促進すると共に、早期の時点での、ヤギモデルにおけるACL再建術後の膝のAP安定性を改善することを明白に実証する。
【0243】
実施例7:ACL横断後に膝の正常なAP弛緩を復元する縫合技術
本明細書に記載のデータは、大腿骨から脛骨に達する縫合技術が、膝の正常なAP弛緩を、特にこれらがわずかに屈曲して結束されていると共に脛骨付着点が正常なACLフットプリント内である場合に、時間ゼロで復元することが可能であることを実証する。以下に示されるとおり、ACLの脛骨断端に対する修復(マーシャル(Marshall)の技術)は、無処置のACLでの膝より5mm大きいAP弛緩の膝をもたらした。正常なACLフットプリント内の固定点を用いた骨に対する縫合修復は、60度での膝屈曲で縫合糸を結束した場合、無処置のACLを有する膝の0.5mm以内の膝弛緩をもたらした。30度の屈曲でまたはより後側の骨孔で膝に縫合糸を結束した場合に、1〜3mmの弛緩増加が見られた。
【0244】
ACLの初期の修復は、1960年代にジョンマーシャル(John Marshall)によって開拓された(マーシャルJL(Marshall JL)、ウォーレンRF(Warren RF)、ウィッキーウィクスTL(Wickiewicz TL)、Clin Orthop.、1979年;143:p.97〜106、マーシャルJL(Marshall JL)、ウォーレンRF(Warren RF)、ウィッキーウィクスTL(Wickiewicz TL)、Am J Sports Med.1982年;10:p.103〜107)。この技術に対する好ましさは:高い再断裂率(フィージンJA,Jr.(Feagin JA,Jr.)、カールWW(Curl WW)、Am J Sports Med.、1976年;4(3):95〜100)および一次修復を受ける患者において見られる非手術的治療を超える向上が制約的であることにより失われた(エングブレッセン(Engebretsen L)、ベーナムP(Benum P)、ファスティングO(Fasting O)、モルスターA(Molster A)、ストランドT(Strand T)、American Journal of Sports Sports Medicine.1990年;18(6):p.585〜590、グロンベットT(Grontvedt T)、エングブレッセン(Engebretsen L)、ベーナムP(Benum P)、ファスティングO(Fasting O)、モルスターA(Molster A)、ストランドT(Strand T).Journal of Bone&Joint Surgery−米国版、1996年;78(2):p.159〜168)。しかしながら、本出願人による近年の発見は、生物工学的スキャフォールドを用いて創傷部位に成長因子を送達することによって裂傷を受けたACLの修復応答を増幅することで、切断されたACLの機能的治癒がもたらされ得ることを示唆した(ムレーMM(Murray MM)、スピンドラーKP(Spindler KP)、デビンC(Devin C)ら、J Orthop Res.、2006年4月;24(4):820〜830、ムレーMM(Murray MM)、スピンドラーKP(Spindler KP)、バラードP(Ballard P)、ウェルチTP(Welch TP)、ズラコフスキーD(Zurakowski D)、ナニーLB(Nanney LB)、J Orthop Res.、2007年4月5日)。
【0245】
一次修復の彼の技術を概略するマーシャル(Marshall)の研究以来、ACLの一次修復のための縫合技術の比較に対する関心または発表された研究はあまりなかった。これは、固定タイプ、骨孔配置および再建する線維束の数に対する論文を含む、ACL再建術技術に対して毎年発表された論文数と全く対照的である。一次修復における近年の新たな関心で、種々の技術を用いて、ACLの縫合修復の後の膝のAP弛緩を定義するために追加の研究が必要とされている。これらの外科的な可変要素の定義は、動物モデルにおける新たな組織改変構成のより正確なテストを可能とし、最終的なヒトへの用途への最も適切な技術の定義をも開始させるであろう。
【0246】
本研究においては2つの仮説をテストした。最初の仮説は、縫合修復は膝の正常なAP弛緩を時間ゼロで復元することが可能であるというものであり、および第2の仮説は、縫合糸を結束する屈曲の角度が膝の結果的なAP弛緩に顕著な影響を有するであろうというものであった。
【0247】
材料および方法
IACUC承認の他の研究のための安楽死時に30kgのメスのヨークシャー種ブタから6つの後肢を回収した。これらの肢を、テストの時まで冷凍した(約3週間)。肢は、テストの日の朝に温水中に解凍した。小転子の直下で大腿骨と、足首関節上の脛骨2cmとを切断することにより膝を単離した。脛骨および大腿骨への筋肉の結合点を、膝関節被膜を破らないように注意して除去した。すべての余剰−被膜筋肉もまた除去した。大腿骨および脛骨は、骨にそって間隔を持って配置された乾式壁スクリュー(各骨における4つのスクリュー)を有して注封材料における支点を補助しており、次いで、骨を、順次、スムース−オン(Smooth−On)キャスティング材料を用いて2インチ径ポリ塩化ビニルパイプ中に注封した。テストまで、膝を通常生理食塩水で濡らしたタオルで覆った。
【0248】
AP弛緩テストを、インストロン(Instron)テスト機械に装着したカスタム治具を用いて実施した(図24)。大腿骨を、60度の屈曲で膝の位置決めを可能とする可動性の固定具に装着した。ブタを膝は完全伸張に達する30度手前までしか伸びず、それ故、60度位置は、ヒトでの30度位置に相当すると考えられる。パイロット研究は、30度位置は、膝におけるAP弛緩の変化に対して感度が劣ることを実証し、従って、この研究においては60度位置のみを用いた。一旦膝を固定具に位置させたら、30Nの繰返し荷重を大腿骨にかけた。これは、30Nでの前大腿転移に続く30Nへの脛骨と相対的な後大腿転移をもたらした。荷重の適用に伴う転移の程度を100Hzでの各周期について計測し、エクセル(Excel)を用いてプロットして、荷重−転移曲線を形成した(図25)。
【0249】
6つの膝の各々は、無処置状態(無処置)でテストした。このテストの後、解剖を実施して、膝蓋骨および膝蓋腱を除去してノッチを露出させ、テストを繰り返した(PAT欠損)。検体を解剖台に戻し、ACLを完全に切除し、テストを繰り返した(ACL欠損)。
【0250】
次いで、膝を、種々の一次修復技術用に準備した。先ず、ツインフィックス(TwinFix)3.5mmチタンアンカー(スミス&ネフュー(Smith&Nephew他)を、右膝については11:00位置でおよび左膝については1:00位置で大腿骨の後外側ノッチに配置した。このアンカーは、アンカーアイレットを通過する2本のデュラブレイド(Durabraid)縫合糸を有しており、修復には、4本のストランドを利用可能とした。これらの縫合糸をすべてのテストについて用いた。種々の深さで脛骨断端に2本のループを形成した1番ビクリル(Vicryl)縫合糸を通し、四本ストランドマーシャル(Marshall)修復のためにこれらの4つの端部をデュラブレイド(Durabraid)の4つの端部に固定することにより、4四本ストランドマーシャル(Marshall)修復技術を実施した。縫合糸は、先ず、最初に30度の屈曲(マーシャル(MARSHALL)30)、次いで、60度の屈曲(マーシャル(MARSHALL)60)の膝に結束した。縫合糸の結び目を解き、ACLの脛骨断端を適除して、脛骨の挿入部位を現した。ブタにおいてはACLの2つの独立した脛骨の挿入部位があり、一方が、内側半月の前側ホーンアタッチメントの後の後外側であり、他方が内側半月の前側ホーンアタッチメントと外側半月の前側ホーンアタッチメントとの間に位置される前正中である(図26)。脛骨照準器(ACUFEX)を用いて、脛骨の前内側縁からこれらの挿入部位の各々まで2.4mmガイドピンを配置した。前内側脛骨の穿孔部位の各々間に最低でも5mmが維持されるように注意をした。第3の穿孔を、外側脛骨棘の尖部への直ぐ内側に形成した。これらの脛骨穿孔部位を、AM線維束の挿入部を前側、PL線維束の挿入部を中央および外側脛骨棘部位を後側と標識した。膝の内の4つにおいて、注封材料を貫通して適切な部位に達する穿孔を正確に行った。
【0251】
次いで、AP弛緩テストを、前側、中央または後側骨孔を通過させ、エンドボタンで結束した縫合糸で実施した。各骨孔を通る縫合糸は、先ず30度の屈曲で、次いで60度の屈曲で結束し、次いで、AP弛緩テストを60度位置で行った。例えば、各膝は、30度の屈曲の膝で、前側骨孔をとおって配置されると共に、エンドボタン上で一緒に結束された4本の縫合糸のすべてを有していた。このテストは(前側30)と標識した。次いで、縫合糸を解き、60度の屈曲の膝で再度結束し、この膝のAP弛緩を計測した(前側60)。次いで、縫合糸を解き、中央骨孔を通し、30度で結束し、テスト(中央30)するなどした。前側、中央および後側骨孔を通る4本のすべての縫合糸に追加して、前側骨孔を通る2本の縫合糸および中央骨孔を通る2本の縫合糸での最終位置もまたテストした(ANT−MID30およびANT−MID60)。
【0252】
各テストの後、念のために縫合糸アンカーがまだ固定されているか膝を点検し、これを検証した。テストのいずれについても縫合糸アンカーのはずれの証拠はなかった。
【0253】
統計学的分析:縫合位置および膝屈曲角度を、個別の試料をトラックするために含まれた反復測定項および被験者要因として有する混合モデルANOVAを用いてグループ間の差の有意性を判定した。複合対称性共分散構造(これは、アカイケインフォメーションクライテリオン(Akaike’s Information Criterion (AIC)に基づく良好な適合を示した)を選択した。
【0254】
結果
無処置の膝は、4.9mm+/−0.4mm(平均+/−SEM)のAP弛緩を有していた。膝蓋骨、膝蓋腱、靱帯粘膜および脂肪パッドの除去は、そのグループについての5.2+/−0.3mmおよび2つのグループ間での比較についてのp>0.79のt検定の値で、膝のAP弛緩にはほとんど影響を有していなかった。ACLを切断したとき、膝の弛緩はテストデバイス(32mm)により設定された最大レベルを超え、これらの転移でも、荷重細胞に荷重はかからなかった。従って、このグループは32mmの転移とした。
【0255】
マーシャル(Marshall)技術を用いた一次修復は、ACL欠損膝と比して向上した弛緩をもたらしたが、30度の屈曲および60度の屈曲の両方で修復を行った場合、無処置および膝蓋骨欠損膝と比してAP弛緩が増加した(表5)。無処置と、マーシャル(Marshall)技術靱帯膝弛緩との間でのこれらの差は、30および60度の両方で統計的に有意であった(両方の比較についてp<0.002)。
【0256】
縫合修復後の膝のAP弛緩は脛骨縫合糸の位置に応じていた(F=35;p<0.001)。ACL脛骨挿入部位内に位置された中央骨孔に配置した縫合糸は、膝のAP弛緩を、膝蓋骨を除去した無処置のACL膝のものと類似の値にまで復元した(5.2+/−0.6mm対5.2+/−0.4mm、p>0.99;平均+/−SEM)。前側骨孔に配置した縫合糸は、中央位置に配置した縫合糸より平均1.2mm大きい弛緩で修復をもたらし(6.4+/−0.4mm)、差は、この多重比較モデルにおいて統計的有意性に近づいたがこれに達することはなかった(p>0.05)。脛骨棘のより後側位置またはACL脛骨レムナントでの縫合糸の配置は、無処置のACLでの膝または前側または中央骨孔に修復した膝よりも著しく大きい弛緩の膝をもたらした(すべての比較についてp<0.05)。
【0257】
図27は、前側(27A)、中央(27B)、および後側(27C)脛骨孔位置の写真である。図28は、すべての試料に対するAP弛緩値を示すグラフである。図29は、無処置AP弛緩値からの差を示すグラフである。
【0258】
縫合糸修復後の膝のAP弛緩はまた、縫合糸を結束した時の膝屈曲角度に応じていた(F=30、p<0.001)。弛緩は、修復を30度の屈曲で結束したときに最大であり、修復を60度で結束したときに弛緩の減少がみられたが(p<0.001);しかしながら、両方のグループにおける弛緩はACL無処置の膝の場合より高いままであった(p<0.02)。
【0259】
脛骨縫合位置と膝屈曲角度(p=0.67)との間には相互作用はなかった。
【0260】
大腿骨から脛骨に達する縫合技術は、膝の正常なAP弛緩を、特にこれらがわずかに屈曲して結束されていると共に脛骨付着点が正常なACLフットプリント内である場合に、時間ゼロで復元することが可能である。データは、脛骨断端に対する縫合修復は、マーシャル(Marshall)技術にあるとおり、膝の正常なAP弛緩を復元しないことを実証し、この知見が、この技術のACL修復が、患者の大部分が術後の異常な膝弛緩を有する結果もたらした1つの理由であり得る。
【0261】
しかしながら、数々のグループにおいては、いくつかの膝が縫合修復後に無処置のACL状態より小さいAP弛緩を有していた。これは、膝の過度の制約をもたらす可能性があった。過度の制約または過剰な弛緩のいずれがより高い可能性で早期の変性関節変化に進行するかどうかは未だ不明確であるが、膝弛緩に大きな変化をもたらす修復は理想的でない可能性が高い。
【0262】
【表5】

【0263】
実施例8:40mg/ml高密度スポンジ(HDBCスポンジ)の使用
標準密度コラーゲンスポンジ(ゲルフォーム(Gelfoam))と高密度コラーゲンスポンジ(HDBC)との有効性を比較する研究を実施し、ゲルフォーム(Gelfoam)およびHDBC(コラーゲン濃度の3×増加)の両方の1cm径のスポンジをスキャフォールドとして用いた。
【0264】
HDBCスポンジは、コラーゲンスラリーを乾燥凍結させ、40mg/mlコラーゲンの密度にまで還元することにより調製した。スラリーを中和し、38℃でゲル化させた。得られたゲルを次いで乾燥凍結させた。ゲルフォーム(GELFOAM)およびHDBCスポンジの両方に、多血小板血漿中に懸濁させた細胞を播種した(PRまたはコラーゲンスラリー+PRP中に懸濁させた細胞(両方のグループについて濃度1×10細胞/ml)。両方の細胞溶液をインキュベータ中において、30分間スポンジに吸収させ、次いで、湿りを一晩維持するために、スポンジの上部に2滴の完全培地を置いた。12時間後、1mlの完全培地を各ウェルに添加した。
【0265】
結果:標準密度スポンジ(ゲルフォーム(GELFOAM))は、PRPまたはコラーゲンスラリーをきわめて効率的には吸収しなかった。スポンジ中の細胞数を2日目および10日目に計測した(図30)。HDBC+PRPグループにおいて最大の細胞増殖が生じており、ゲルフォーム(Gelfoam)+PRPグループにおいて最低の増殖が生じていた。
【0266】
前述の書面による明細書は、当業者による本発明の実施を可能とするに十分であるとみなされる。本発明は、実施例は本発明の一態様の単一の例示として意図されるため、提供された実施例により範囲が限定されるべきではなく、他の機能的に均等な実施形態は、本発明の範囲内である。本明細書に示されるおよび記載のものに追加して、本発明の種々の改良は、前述の記載から当業者には明らかになり、添付の特許請求の範囲の範囲内に属することとなる。本発明の利点および目的は、本発明の各実施形態により必ずしも包含されない。当業者は、単なるルーチン実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識し、または確かめることができるであろう。このような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0267】
本明細書において開示されているすべての文献は、参照によりそれらの全体が援用される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13A】

【図13B】

【図14A】

【図14B】

【図15A】

【図15B】

【図16A】

【図16B】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21A】

【図21B】

【図22】

【図23A】

【図23B】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27A】

【図27B】

【図27C】

【図28】

【図29】

【図30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン、0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリン、中和剤の無菌溶液を含む組成物であって、該溶液が280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、該組成物がトロンビンを含まない、組成物。
【請求項2】
溶液が液体である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
溶液がゲルである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
可溶化コラーゲンが、15mg/mlより大きく40mg/ml以下である濃度で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
血小板をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
白血球をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
緩衝剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
6.8〜8.0のpHを有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
7.4のpHを有する、請求項7記載の組成物。
【請求項10】
コラーゲンが、I型、II型、またはIII型コラーゲンである、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
コラーゲンが酵素可溶化コラーゲンである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
コラーゲンがアテロコラーゲンである、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
溶液が4℃の温度で維持される、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
抗生物質をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
抗プラスミン剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
プラスミノーゲン活性化因子阻害剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
グリコサミノグリカンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
1mg/mlより大きく5mg/ml未満である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン、0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリンの無菌溶液を含む組成物であって、該溶液が280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、該組成物がトロンビンを含まない、組成物。
【請求項21】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
無毒性架橋剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
促進剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
無菌可溶化コラーゲンと、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方と、緩衝塩とを含み、トロンビンを含まない、乾燥粉末組成物。
【請求項26】
中和剤をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
無毒性架橋剤をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項29】
促進剤をさらに含む、請求項25記載の組成物。
【請求項30】
コラーゲンが、I型、II型、またはIII型コラーゲンである、請求項25記載の組成物。
【請求項31】
コラーゲンが酵素可溶化コラーゲンである、請求項25記載の組成物。
【請求項32】
コラーゲンがアテロコラーゲンである、請求項25記載の組成物。
【請求項33】
デコリンおよびバイグリカンの両方を含む、請求項25記載の組成物。
【請求項34】
5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲンの無菌溶液を調製する工程、および可溶化コラーゲンの該無菌溶液を少なくとも30℃の温度に供する工程であって、ここで、可溶化コラーゲンの該無菌溶液がコラーゲンスキャフォールドを形成する工程を含む、コラーゲンスキャフォールドを調製する方法。
【請求項35】
溶液が液体である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
溶液がゲルである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
可溶化コラーゲンが15mg/mlよりも大きい濃度で存在する、請求項34記載の方法。
【請求項38】
血小板をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
白血球をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項40】
緩衝剤をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項41】
組成物が6.8〜8.0のpHを有する、請求項34記載の方法。
【請求項42】
組成物が7.4のpHを有する、請求項34記載の方法。
【請求項43】
コラーゲンが、I型、II型、またはIII型コラーゲンである、請求項34記載の方法。
【請求項44】
コラーゲンが酵素可溶化コラーゲンである、請求項34記載の方法。
【請求項45】
コラーゲンがアテロコラーゲンである、請求項34記載の方法。
【請求項46】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項47】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項34記載の方法。
【請求項48】
可溶化コラーゲンの無菌溶液が120秒未満の間混合される、請求項34記載の方法。
【請求項49】
可溶化コラーゲンの無菌溶液が30〜60秒間混合される、請求項34記載の方法。
【請求項50】
可溶化コラーゲンの無菌溶液が、24〜28℃の温度に供され、その後、30℃を超える温度に曝露される、請求項34記載の方法。
【請求項51】
可溶化コラーゲンの無菌溶液が28℃の温度に供される、請求項34記載の方法。
【請求項52】
1mg/mlより大きく5mg/ml未満である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲンの無菌溶液を調製する工程、および可溶化コラーゲンの該無菌溶液を少なくとも30℃の温度に供する工程であって、ここで、可溶化コラーゲンの該無菌溶液がコラーゲンスキャフォールドを形成する工程を含む、コラーゲンスキャフォールドを調製する方法。
【請求項53】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項54】
無毒性架橋剤をさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項55】
促進剤をさらに含む、請求項52記載の方法。
【請求項56】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項52記載の方法。
【請求項57】
5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度および6.8〜8.0のpHを有する可溶化コラーゲンの無菌溶液を含む急速硬化性(quick set)組成物であって、該溶液が、280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、30℃を超える温度への曝露から10分間以内にスキャフォールドに硬化する、組成物。
【請求項58】
フィブリノゲンをさらに含む、請求項57記載の組成物。
【請求項59】
無毒性架橋剤をさらに含む、請求項57記載の組成物。
【請求項60】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項57記載の組成物。
【請求項61】
5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン溶液を収容する第1の容器、
該第1の容器または第2の容器中に収容された緩衝塩、
可溶化コラーゲン溶液および緩衝塩から溶液を調製するための説明書
を含むキット。
【請求項62】
緩衝塩が、第1の容器中に収容され、かつ可溶化コラーゲン溶液の一部である、請求項61記載のキット。
【請求項63】
緩衝塩が第2の容器中に収容されている、請求項61記載のキット。
【請求項64】
中和溶液を収容する容器をさらに含む、請求項61記載のキット。
【請求項65】
溶液が液体である、請求項61記載のキット。
【請求項66】
溶液がゲルである、請求項61記載のキット。
【請求項67】
血液を収容するためのデバイスをさらに含む、請求項61記載のキット。
【請求項68】
血液を収容するためのデバイスが、採血するために用いることができるシリンジである、請求項67記載のキット。
【請求項69】
血液を収容するためのデバイス中に抗凝固剤をさらに含む、請求項67記載のキット。
【請求項70】
組成物が6.8〜8.0のpHを有する、請求項61記載のキット。
【請求項71】
組成物が7.4のpHを有する、請求項61記載のキット。
【請求項72】
コラーゲンが、I型、II型、またはIII型コラーゲンである、請求項61記載のキット。
【請求項73】
コラーゲンがペプシン可溶化コラーゲンである、請求項61記載のキット。
【請求項74】
コラーゲンがアテロコラーゲンである、請求項61記載のキット。
【請求項75】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項61記載のキット。
【請求項76】
コラーゲン溶液が15〜40℃の濃度を有する、請求項61記載のキット。
【請求項77】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項61記載のキット。
【請求項78】
5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度を有する可溶化コラーゲン溶液を収容する容器、
血液を収容するためのデバイス、および
可溶化コラーゲン溶液と、デバイス中に収容された血液から分離された血液成分とからゲルを調製するための説明書
を含むキット。
【請求項79】
血液を収容するためのデバイスが、採血するために用いることができるシリンジである、請求項78記載のキット。
【請求項80】
血液を収容するためのデバイス中に抗凝固剤をさらに含む、請求項78記載のキット。
【請求項81】
血液を収容するためのデバイスが遠心分離チューブである、請求項78記載のキット。
【請求項82】
ボルテックスチューブをさらに含む、請求項78記載のキット。
【請求項83】
中和溶液を収容する第2の容器をさらに含む、請求項78記載のキット。
【請求項84】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項78記載のキット。
【請求項85】
コラーゲンを含む粉末を収容する容器、
血液を収容するためのデバイス、および
可溶化コラーゲン溶液と、デバイス中に収容された血液から分離された血液成分とからゲルを調製するための説明書
を含むキット。
【請求項86】
血液を収容するためのデバイスが、採血するために用いることができるシリンジである、請求項85記載のキット。
【請求項87】
血液を収容するためのデバイス中に抗凝固剤をさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項88】
血液を収容するためのデバイスが遠心分離チューブである、請求項85記載のキット。
【請求項89】
ボルテックスチューブをさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項90】
中和薬剤を収容する第2の容器をさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項91】
粉末が中和薬剤を含む、請求項85記載のキット。
【請求項92】
コラーゲンが、I型、II型、またはIII型コラーゲンである、請求項85記載のキット。
【請求項93】
コラーゲンがアテロコラーゲンである、請求項85記載のキット。
【請求項94】
不溶性コラーゲンをさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項95】
デコリンをさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項96】
バイグリカンをさらに含む、請求項85記載のキット。
【請求項97】
対象における断裂した関節組織の端部を、5mg/mlより大きく50mg/ml以下である濃度で、かつ1,000〜200,000センチポアズの粘度および6.8〜8.0のpHを有する可溶化コラーゲン、ならびに0.1〜5.0μg/mlの濃度のヒドロキシプロリンの無菌溶液と接触させる工程であって、該溶液が280〜350mOs/kgのモル浸透圧濃度を有し、該組成物がトロンビンを含まない、工程、ならびに
該溶液を硬化させて、該断裂した関節組織を処置する工程
を含む方法。
【請求項98】
関節組織が関節内組織である、請求項97記載の方法。
【請求項99】
関節内損傷が、半月板断裂、靱帯断裂、または軟骨病変である、請求項98記載の方法。
【請求項100】
関節組織が関節外組織である、請求項97記載の方法。
【請求項101】
関節外損傷が、靱帯、腱、または筋肉の損傷である、請求項100記載の方法。
【請求項102】
断裂した組織の端部を機械的に接合する工程をさらに含む、請求項97記載の方法。
【請求項103】
コラーゲン溶液がデコリンおよびバイグリカンを含む、請求項97記載の方法。
【請求項104】
断裂した組織の端部にグラフトを固定する工程をさらに含む、請求項97記載の方法。
【請求項105】
断裂した関節組織を置換する方法であって、
断裂した関節組織の部位に近接する組織に装具(prosthetic device)を機械的に固定する工程であって、該装具が、誘導コアと、該誘導コアの少なくとも一部分に配置される癒着性ゾーンとを有し、該癒着性ゾーンが、断裂した関節組織の部位に近接する該組織と該誘導コアとの間に微小環境を提供して、断裂した関節組織の部位に近接する該組織から該誘導コアへの細胞遊走を促進させるよう適合されている、工程、および
断裂した関節組織の部位に近接した該組織と装具の該癒着性ゾーンとの間に結合を形成させる工程
を含む、方法。
【請求項106】
断裂した関節組織の部位に近接する組織が骨である、請求項105記載の方法。
【請求項107】
誘導コアがコラーゲンスポンジである、請求項105記載の方法。
【請求項108】
癒着性ゾーンが、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含むコラーゲン溶液である、請求項105記載の方法。
【請求項109】
対象における断裂した関節組織の端部を、可溶化コラーゲンおよび少なくとも4×10wbc/mlの濃度の白血球の無菌溶液と接触させる工程、および
該溶液を硬化させて、該断裂した関節組織を処置する工程
を含む方法。
【請求項110】
コラーゲン溶液が、デコリンおよびバイグリカンの少なくとも一方を含む、請求項109記載の方法。
【請求項111】
断裂した組織の端部にグラフトを固定する工程をさらに含む、請求項109記載の方法。

【公表番号】特表2010−509943(P2010−509943A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530453(P2009−530453)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/021009
【国際公開番号】WO2008/060361
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(596115687)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (25)
【Fターム(参考)】