説明

組織修復用に調整されたマトリクス組成物

【課題】多様な種類の細胞の修復、分化、成熟、空間的構造化を支援する能力が改善された組成物を提供する。
【解決手段】本発明は宿主体内の組織のリモデリング、再建、修復、又は置換のために調整された組成物を提供する。この組成物はマトリクス上で細胞を培養することおよび/または培養した細胞又はマトリクスを1つ以上のストレス因子に曝すことによって調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2003年6月25日付米国特許出願第60/482,480号および2004年1月21日付米国特許出願第60/538,385号の優先権及び利益を請求するものであり、上記出願の内容は参照により本明細書に含まれる。
本発明は宿主体内組織のリモデリング、置換、復元、または修復用に調整されたマトリクスを含む組成物、当該組成物の調製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織移植片構造物、たとえば再生用足場などは、損傷又は罹患した組織の修復、置換、復元および/またはリモデリングを行なうために組織工学的用途で一般に利用されている。これらの組織足場は、このような足場に構造を提供するためのマトリクス、たとえば天然に見られる細胞外マトリクス(ECM)を含む。天然に見られるECMは、組織および臓器内部に見られる細胞を取り囲み支持する複雑な3次元微細構造体内部に配置された構造的および機能的分子の混合物である。これ以外に、天然に見られるECMたとえばコラーゲンの構造的又は機能的成分からマトリクスを製造することもできる。天然に見られるECMは、マトリクスに接触した細胞の複製、分化、成熟、器質化において重要な役割を果す、構造的および機能的な分子であって生物学的に活性な分子、例えばサイトカインや成長因子、で構成される。
【0003】
天然に見られるECMの組成および構造は宿主の年齢、特定の組織および臓器内のECMのある場所、環境ストレス因子の結果としてECMにもたらされる要求の関数である。たとえば、天然に見られる筋腱ECMは、反復的な一軸又は多軸ストレス又は圧縮負荷に対する応答としてコラーゲンの付着および膠原繊維の再構成の結果、より強力になる。天然に見られる肝性ECMでは、低酸素症の発症から数時間以内にラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンIVの濃度増加が見られる。天然に見られるECMは組織障害に対する宿主応答として、正常な組織発達の基本的要素であることから、必須成分であると認識されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然に見られるECMの選択された形態たとえば小腸粘膜下層(SIS)に由来するECMは臨床前動物実験とヒトによる臨床応用の双方で組織工学的用途の足場としての使用に成功している。患者での経験から、成功の度合及び経時的に足場内部で発生する形態学的変化は、たとえば機械的負荷(リハビリテーション)、周辺組織の生存能力、および周辺組織のpHとイオン濃度など局所的な環境刺激の直接的な結果であることが示唆されている。これらの足場組成物は組織工学的応用についての開始点を提供しているが、多様な種類の細胞の修復、分化、成熟、空間的構造化を支援する能力が改善された組成物が当該技術で要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、患者体内の組織の修復、置換、リモデリング、又は復元を増補するためにマトリクスを含む組成物を調整することができるという知見に基づくものである。1つの観点によれば本発明は脱細胞化マトリクスを含む組成を特徴とする。当該マトリクスはマトリクス上で体外(in vitro)培養した細胞によって調整されこれにより修復、リモデリング、置換又は復元が必要な患者の組織と接触して置かれた場合に、脱細胞化・調整されたマトリクスは修復、リモデリング、置換又は修復能力が増大する。
本発明のこの観点による一つの実施態様では、当該マトリクスは天然に見られる細胞外マトリクス(ECM)を含む。関連実施態様において、ECMは少なくとも粘膜下層の一部、少なくとも上皮基底膜の一部、又は少なくとも固有層の一部を含む。本発明のこの観点によるその他の関連実施態様において、ECMの少なくとも一部は表皮、皮下組織、膵臓結合織、胃から採取した組織、小腸から採取した組織、膀胱から採取した組織、皮膚から採取した組織、又は粘膜を含む組織から採取した組織を含む。
【0006】
本発明のその他の実施態様では、マトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分を含み、又はマトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物を含む。
【0007】
マトリクスを調整するための細胞は一次細胞、二次細胞、および不死化細胞群からなるグループから選択することができる。一つの実施態様では、マトリクス調整用細胞は線維芽細胞(fibroblast)、ケラチン生成細胞(keratinocyte)、星状膠細胞(astroglial cell)、上皮細胞、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液細胞およびその前駆細胞、並びに肝細胞およびその前駆細胞とからなるグループから選択する。
【0008】
更なる実施態様では、マトリクス調整用細胞は注目している生物学的活性分子を発現させる。一つの実施態様による注目している生物学的活性分子は、蛋白質を含み、更なる実施態様ではこの蛋白質はアンギオジェニン、アンギオポエチン−1、Del−1、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、胎盤成長因子(PlGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、プレオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、骨形態形成タンパク−2(BMP−2)、間質由来成長因子−1からなるグループから選択される。
【0009】
一つの実施態様による蛋白質は成長因子であり、関連実施態様ではこの成長因子は血管新生成長因子又は骨新生成長因子である。
【0010】
本発明の別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞である。一つの実施態様では、遺伝子組み替え細胞は外来性核酸を含み注目している蛋白質を発現するトランスフェクト細胞である。別の実施態様では、遺伝子組み替え細胞は注目している蛋白質をエンコードする核酸とトランスフェクトされている。遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することが可能である。関連実施態様では、注目している生物学的に活性な分子はVEGF蛋白質、bFGF蛋白質、BMP蛋白質、又は間質由来の成長因子−1蛋白質である。別の関連実施態様では、注目している生物学的に活性な分子は組み替え型蛋白質である。
【0011】
更なる実施態様では、マトリクスは天然に見られるECMを含みこのECMは脊椎動物の組織から採取される。
【0012】
本発明の実施態様による修復、リモデリング、置換又は復元が必要な組織は、患者の組織であって、骨、皮膚、心臓、泌尿器組織、消化管組織、神経組織、間接組織、結合組織からなるグループから選択された組織を含む。
【0013】
別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は少なくとも一つのストレス因子に曝される。この少なくとも一つのストレス因子は低酸素状態、高炭酸状態、又は電流を含むことができる。更なる実施態様では、マトリクスは少なくとも一つのストレス因子に曝され、関連実施態様ではストレス因子は機械的負荷である。
【0014】
本発明のさらなる態様は一般にマトリクス上で体外(in vitro)培養され、かつ、少なくとも一つのストレス因子に曝された細胞により調整されたマトリクスを含む組成物が関係する。調整されたマトリクスは修復、リモデリング、置換又は復元が必要な組織と接触して置かれた場合に増大した修復、リモデリング、置換又は復元能力を有する。
【0015】
本発明のこの観点による一つの実施態様では、マトリクスを調整するための細胞は線維芽細胞、ケラチン生成細胞、星状膠細胞、上皮細胞、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液細胞およびその前駆細胞、並びに肝細胞およびその前駆細胞からなるグループから選択される。別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は自己細胞である。
【0016】
本発明の更なる実施態様によれば、上記少なくとも一つのストレス因子は低酸素状態、高炭酸状態、電流、又は機械的負荷を含む。別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現し、関連実施態様では、注目している生物学的に活性な分子は蛋白質を含む。別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞であって遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現する。注目している生物学的に活性な分子は蛋白質であることがあり、当該蛋白質は組み換え型蛋白質であることがある。
【0017】
別の観点では、本発明は哺乳類の組織の修復、リモデリング、置換又は復元を誘発するための方法を特徴とする。この方法は脱細胞化マトリクスを提供するステップと、このマトリクス上で細胞を体外培養することによりこのマトリクスを調整するステップと、このマトリクスの脱細胞化を行なうステップとを含み脱細胞化・調整済マトリクスが組織の修復、リモデリング、置換又は復元を誘発する。
【0018】
本発明のこの観点の一つの実施態様では、この方法は少なくとも一つのストレス因子にマトリクスを調整するための細胞を曝すステップを含む。別の実施態様では、この方法は少なくとも一つのストレス因子にマトリクスを曝すステップを含む。更なる実施態様では、組織は血管組織、心臓組織、骨組織からなるグループから選択された組織を含む。
【0019】
別の実施態様によれば、マトリクスを培養するための組織は注目している生物学的に活性な分子を発現する。注目している生物学的に活性な分子は成長因子を含むことができる。一つの実施態様では、注目している生物学的に活性な分子はVEGF蛋白質、間質由来成長因子−1蛋白質、又は骨形態形成蛋白質を含む。
【0020】
別の実施態様では、マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞であり、関連実施態様では、遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現する。更なる実施態様では、注目している生物学的に活性な分子は組み換え型蛋白質である。
【0021】
本発明の更に別の実施態様では、マトリクスは脊椎動物の組織から採取される。
【0022】
本発明のさらなる観点は一般に患者の組織置換、修復、復元又はリモデリングのための組成物に関連する。この組成物は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分を含む脱細胞化マトリクス、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物、又はこれらの組み合わせを含む。マトリクスは体外においてマトリクス上で細胞を培養することにより調整される。一つの実施態様では、マトリクスを調整するための細胞は少なくとも一つのストレス因子に曝され、別の実施態様ではマトリクスは少なくとも一つのストレス因子に曝される。
【0023】
本発明のさらなる観点はマトリクスを含む組成物を特徴とする。マトリクスは少なくとも一つのストレス因子に曝すことにより組織修復、リモデリング、置換又は復元のために調整される。一つの実施態様では、ストレス因子は電流である。
【0024】
「生物学的に活性な分子」とは生体に影響を与え、生命体と相互作用し、又は生命体に応答することが可能な分子を意味する。
【0025】
「接触する」という文言は、液体連通を含む直接および間接両方の接触を含む。
【0026】
「遺伝子組み替え細胞」とは外来性核酸配列を含む細胞を意味する。
【0027】
「外来性核酸配列」とは形質導入により細胞内へ導入された核酸を意味する。外来性核酸は注目している蛋白質をエンコードする遺伝子であったり、注目している蛋白質の発現を変化させるたとえば注目している蛋白質の発現および産生を上方修正するような核酸配列であったりすることがある。外来性核酸配列は他の種に由来する核酸を含むか、又は同一種に由来する場合には意図的な人間の介入により組成および/またはゲノム遺伝子座が本来の形から実質的に改変されている核酸を含む。
【0028】
「トランスフェクション(transfection)」とは細胞内への遺伝子又は遺伝子フラグメントの導入プロセスを意味する。
【0029】
「形質導入された(transduced)」とは細胞内への外来性核酸の挿入プロセスを意味する。挿入は、たとえばトランスフェクション若しくは形質変換、ウィルス感染、注入、トランスフェクション、遺伝子照射、エレクトロポレーション、又はその他細胞内へ核酸を導入するのに有効な何らかの手段により行なわれる。形質導入に続き、外来性核酸は細胞のゲノム(DNA)に全体的又は部分的に統合されるか、細胞のゲノム外部に残留するかして、安定的に形質導入された又は過渡的に形質導入された細胞を提供する。
【0030】
「一次細胞」という文言は(培養される前に、すなわちペトリ皿やフラスコ等の組織培養基質に付着される前に)組織供給源から分離された細胞の懸濁物中に存在する細胞、組織に由来する体外移植組織中に存在する細胞、初めて培養される前述の両方の種類の細胞、および培養された細胞に由来する細胞懸濁物を含む。「二次細胞」は培養において後続の全てのステップにおける細胞を表わす。つまり初めて培養される一次細胞が培養基質から取り出されて再培養(継代)されると、これが二次細胞と呼ばれ、これ以降の継代培養における全ての細胞も同様である。「不死化細胞」とは培養物中で細胞分裂して子孫を発生することが出来る確立された細胞株からの細胞を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は宿主に移植されたときに組織を置換、修復、復元、又はリモデリングするように調整された組成物に関する。この組成物は天然に見られるECMに由来するか又は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分に由来するか又はその分解産物に由来するマトリクスを含む。この組成物は様々な方法で調整することができ、これにはマトリクス上で細胞を培養する、細胞および/またはマトリクスを改変された環境および/または物理的条件に曝す、又はこれらの組み合わせが含まれる。マトリクス上での細胞の培養および/または培養された細胞およびマトリクスを様々なストレス因子に曝すことで、各種細胞と単に組み合わせただけで脱細胞化されていないマトリクス又は化学的若しくは物理的方法により生物活性因子と組み合わされたマトリクスと比較して、生物学的な性質が向上した調整済組成物を提供することができる。本発明による調整されたマトリクスは培養された細胞により、又はストレス因子の適用によりマトリクスに統合された性質を保持し、自然の状態をより良く模倣するような方法で宿主内に移植されたときに調整済マトリクスにより得られる分子的特性を提供することが可能である。つまり、本発明による調整済組成物は細胞の複製、分化、成熟および空間的構造化を支援し、よって患者体内の臓器又は組織の再生、置換、修復、復元および/またはリモデリングを向上させる。
【0032】
1つの観点によれば、本発明は脱細胞化マトリクスを含む組成物を含む。マトリクスは体外でマトリクス上で培養された細胞によって調整されることにより、脱細胞化・調整済マトリクスは、修復、リモデリング、置換又は復元が必要とされる組織と接触して置かれた場合に修復、リモデリング、置換、又は復元特性が向上する性質を備えている。
【0033】
別の観点では、本発明はマトリクスを含む組成物を提供する。マトリクスは体外でマトリクス上で培養され、かつ、少なくとも一つのストレス因子に曝すことにより調整され、このことにより調整済マトリクスは修復、リモデリング、置換又は復元が必要とされる組織と接触して置かれた場合に修復、リモデリング、置換、又は復元特性が向上する性質を備えている。
【0034】
本発明は更に哺乳類の組織の修復、リモデリング、置換、又は復元を誘発する方法を提供する。この方法は脱細胞化マトリクスを提供するステップと、ついでマトリクス上で細胞を培養することによりマトリクスを調整するステップと、最後にマトリクスを脱細胞化するステップとを含み、脱細胞化・調整されたマトリクスは組織の修復、リモデリング、置換又は復元を誘発する。
【0035】
別の観点では、本発明は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物、又はこれらの組み合わせを含む脱細胞化マトリクスを含み、組織の置換、復元、修復、又はリモデリングのための組成物を含む。マトリクスはマトリクス上で細胞を体外培養することにより調整される。
【0036】
更に別の観点では、本発明はマトリクスを含む組成物を特徴とし当該マトリクスは少なくとも一つのストレス因子に曝すことにより組織の修復、リモデリング、置換、又は復元のために調整される。
【0037】
本発明の実施態様によれば、マトリクスはたとえば脊椎動物の組織から分離された天然に見られるECMを含み、この脊椎動物の組織はたとえば哺乳類の消化器、呼吸器、小腸、泌尿器又は生殖器の組織を含む。更に、天然に見られるECMは少なくとも粘膜下層の一部、上皮基底膜、固有層、皮膚の一部を含む。その他の実施態様では、天然に見られるECMはたとえば皮下組織、呼吸器組織、膵臓結合織、肝臓結合織、胃から採取した組織、小腸から採取した組織、膀胱から採取した組織、尿管から採取した組織、肝臓から採取した組織、生殖器から採取した組織、皮膚から採取した組織、又は粘膜を含む組織から採取した組織の少なくとも一部を含む。これ以外に、天然に見られるECMは上記の組み合わせを含み、たとえばECMは上皮基底膜の一部と固有層の一部とを含む膀胱から採取した組織を含むことがある。
【0038】
これ以外に、別の実施態様では、マトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物、又はそれらの組み合わせを含む。構造的又は機能的成分はたとえばコラーゲン(すなわちタイプI〜タイプXIXのコラーゲン)、ヒアルロン酸、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、天然に見られるECMの精製成分、又はこれらの組み合わせを含む。マトリクスは高度に保存したコラーゲン、糖蛋白、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンをこれら本来の構造と本来の濃度で含むことができる。
【0039】
本発明の一つの実施態様によれば、細胞はマトリクス上および/またはその内部で培養され、細胞は一次細胞、二次細胞、および/または不死化細胞分画を含む。細胞はたとえば、線維芽細胞、ケラチン生成細胞、星状膠細胞、上皮細胞、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液細胞およびその前駆細胞、並びに肝細胞及びその前駆細胞を含む。特定の実施態様において、マトリクス上および/またはその内部で培養された細胞はマトリクスを宿主に移植した場合にマトリクス上および/またはマトリクス内部に留まる。別の実施態様では、一次細胞、二次細胞、又は不死化細胞が、自己細胞を含め、調整されたマトリクスへ追加される。これらの細胞は調整されたマトリクス上又はその内部で成長し、患者の解剖学的部位で調整された組成とともに移植される。
【0040】
一つの実施態様では、細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現する。注目している生物学的に活性な分子は細胞によって産生され、細胞がマトリクス上又はその内部で培養されている間にマトリクス内に統合される。注目している生物学的に活性な分子は、たとえば蛋白質であり、これはたとえば成長因子を含む。成長因子はたとえば血管新生又は骨新生成長因子である。別の実施態様において、蛋白質はアンギオジェニン、アンギオポエチン−1、Del−1、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、胎盤成長因子(PlGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、プレオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、骨形態形成タンパク2(BMP−2)、および/または間質由来成長因子−1を含む。
【0041】
別の実施態様では、細胞は遺伝子組み替えされたものである。本発明による一つの実施態様では、遺伝子組み替え細胞はトランスフェクトされた細胞で、外来性核酸を含み注目している蛋白質を発現するものであるか、又は遺伝子組み替え細胞は注目している蛋白質をエンコードする核酸がトランスフェクトされた細胞である。したがって、遺伝子組み替え細胞は1つまたはそれ以上の注目している生物学的に活性な分子、たとえばVEGF蛋白、bFGF蛋白、BMP蛋白、間質由来の成長因子1蛋白、又は組み換え蛋白を発現する。
【0042】
マトリクス上で培養された細胞はまた、少なくとも一つのストレス因子又はストレス因子の組み合わせに曝されてマトリクスを調整する細胞の能力を向上することができる。ある種のストレス因子に曝すことは細胞からの生物学的活性分子の放出を刺激し、各種の目的で組成物の調整に寄与することができる。ある種のストレス因子に曝すことはまた、細胞からの望ましくない生物学的活性分子の放出を防止し、宿主に移植された場合に望ましくない作用を回避するように組成物の調整に関与することができる。一つの実施態様によれば、ストレス因子は低酸素状態であり、別の実施態様ではストレス因子は高炭酸状態である。低酸素状態および/または高炭酸状態に曝すことは細胞が培養されているマトリクスに含まれる生物学的活性分子の産生において細胞を支援し、たとえば新生血管の成長を支持し、移植部位の又これを取り巻く組織への血流の回復を支援する。各ストレス因子への暴露時間はたとえば10分から1か月等変化することがあり、これは調整される組成物で意図される用途、関係する組織の種類、及び又は調整しようとするマトリクスの種類によって変化する。
【0043】
別の実施態様では、細胞は機械的負荷等のストレス因子に曝される。機械的負荷に曝すことは、たとえば、構造蛋白およびその他の生物学的活性分子の細胞による産生を増加させ、これらをマトリクスに取り込みこれらの引張り強度を改善する。一つの実施態様によれば、機械的負荷に曝すことは、たとえば所定の期間にわたってマトリクスに対し、たとえば合計168時間にわたって、定常的に歪みを印加する(すなわち、長さの変化を惹起する力を印加する)、又はストレスを印加する(すなわち機械的負荷をかける)ことで実現される。これ以外に、機械的調整は周回パターンでマトリクスに対してストレス又は歪みを印加する、たとえば5分毎に1分間合計48時間にわたってストレス又は歪みを印加することにより実現することができる。マトリクスにかかるストレス又は歪みは時間間隔にわたってずっと一定しているか、又はこれ以外にストレス又は歪みを変化させることが可能である。ストレス又は歪みの量は適当な装置たとえば負荷セル等を使用して5%から15%まで変化させることが可能である。ストレス又は歪みは一軸方向又は多軸方向に印加できる。印加される歪みの量は当該技術で公知の何らかの手段たとえばレーザー・ビームと偏向回数を使用するレーザー測定により細胞培養システム内で測定可能である。
【0044】
調整された組成物の別の実施態様では、マトリクス上で培養された細胞が電流に曝される。電流に曝すことはたとえば成長因子およびその他の生物学的活性分子が細胞からマトリクスへ放出されることを刺激し、マトリクスが加速された組織再生および創傷治癒能力を示すようになる。細胞は一定の時間にわたって電流に曝されるか、又は培養細胞は周回パターンで電流に曝され、たとえば電流又は電位を1分毎に10秒間全体として1時間にわたり印加する。電流の電位は暴露時間全体にわたって一定のままとするか、またはこれ以外に電流電位の大きさをたとえばプラスとマイナスの電位の間でたとえば100ミリボルトから300ミリボルトの範囲内で変化させることが可能である。
【0045】
別の実施態様では、細胞はマトリクス上で培養されず、またマトリクスは意図した使用方法でマトリクスを調整するように少なくとも一つのストレス因子に曝される。ストレス因子は生物学的活性分子の放出を刺激することができ、又はこれ以外にストレス因子を印加することで望ましくない生物学的活性分子のマトリクス内への放出を減少させたり防止したりすることが可能である。マトリクスをたとえば電流又は電位に曝すことができる。電流又は電位に曝すことはある種の成長因子たとえばTGF−βをマトリクス内に存在する細胞から放出するのを減少させる又は防止することが可能で、宿主へ移植した場合に副作用たとえば瘢痕組織の形成等の危険性を減少させる調整されたマトリクスが得られる。
【0046】
調整された組成は各種の組織たとえば骨、皮膚、心臓、泌尿器組織、消化管組織、神経組織、間接組織、結合組織の置換、修復、復元、又はリモデリングに有用である。調整された組成を体内で配置しようとする解剖学的部位および/またはその他の望ましい生理学的作用たとえば血管新生や骨新生などは、もしあればどの細胞がマトリクス上で培養されるかを選択し、またもしあればどの生物学的活性分子が注目されているかを選択し、またもしあればどのようなストレス因子に細胞および/またはマトリクスを曝すかを選択する上での役割を演じる。
【0047】
たとえば、脱細胞化され調整された組成物は血管新生を促進するように使用することが可能で、これは血管新生を必要としている宿主の罹患部位で、注目している血管新生又は脈管形成蛋白質を発現させるマトリクス上で培養された細胞により調整されたマトリクスを含む脱細胞化された足場を提供することによって行なえる。脱細胞化され調整された組成物はまた、たとえば筋腱再建を必要とする宿主の罹患部位に注目している構造蛋白質を発現させる培養細胞によって調整された脱細胞化組成物を提供することにより筋腱組織再建のために使用することも可能である。さらに、脱細胞化され調整された組成物は細胞により調整して成長因子を発現させ、治療を必要としている宿主の罹患部位にその組成物を導入した場合に組成を取り巻く宿主の組織の成長を刺激することが可能である
【0048】
以下の実施態様は本発明の実施の更なる詳細を提供する。本発明を実現するのに有用な幾つかの方法が以下で例示されるが、本発明はこれに制限されるべきではなく、またこれの考察により当業者には広い適用範囲が理解されるであろう。
【0049】
実施態様1:マトリクスの供給源と調製
以下では本発明による使用のためのマトリクスの代表的調製法を提供する。特定の実施態様は天然に見られるECMを含むマトリクスの調製を示している。本発明による使用のための天然に見られるECMの調製は、米国特許第4,902,508号、4,956,178号、5,554,389号、6,576,265号、6,579,538号にも記載されており、各特許の全体が参照により本明細書に含まれる。たとえば、小腸粘膜下組織はブタ、ヒツジ、ウシ等の脊椎動物から組織を採取することで調製できる。この組織は長手方向に剥ぎ取る動きを用いた掻爬を行なって外層、平滑筋組織、最内層すなわち粘膜層の管腔部分を除去する。残りの粘膜下組織又はその一部を生食水で洗浄する。
【0050】
これ以外に、膀胱に由来する外皮基底膜(UBM)を含む天然に見られるECMを調製することも可能で、たとえばブタ等の脊椎動物から膀胱組織を摘除し、まず高張生食水、最も望ましくは1.0規定生食水、などの脱上皮液(deepithelializing solution)に10分から4時間の時間間隔にわたって組織を浸漬して離層する。高張生食水に曝すことで基盤となる基底膜から上皮細胞を効果的に除去する。最初の裏層処理後に残った組織は外皮基底膜と上皮基底膜より管腔外の組織層を含む。この組織は次に管腔外組織の大半を除去するように処理するが、外皮基底膜は残すようにする。固有層の外側漿膜、外膜、平滑筋組織、粘膜下織、管腔外部分は、残った脱上皮組織から除去し、それには機械的研削又は酵素処理、水和、研削の組み合わせを用いる。これらの組織の機械的な除去はたとえばアドソン・ブラウン鉗子とメッツェンバウム鋏で腸間膜組織を除去し、筋肉層と管腔外固有層はメスの柄の部分又はその他の硬いものに湿潤ガーゼを巻いて長手方向に拭き取る動きにより剥ぎ取ることで行なう。これらの組織が除去できたら、残ったECMは外皮基底膜とその下の固有層で構成されている。組織を更に処理し、高張生食水、過酢酸、又は滅菌水で洗浄する。組織層を除去するその他の方法たとえばミクロトームを用いることで、本発明の組織組成を得ることもできる。
【0051】
これ以外に、本発明によるマトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物、又はそれらの組み合わせを含む。構造的又は機能的成分はたとえばコラーゲン(すなわちタイプI〜タイプXIXのコラーゲン)、ヒアルロン酸、ラミニン、フィブロネクチン、エラスチン、天然に見られるECMの精製成分、またはそれらの組み合わせを含むことができる。マトリクスはたとえば高度に保存されたコラーゲンや、糖蛋白、プロテオグリカンおよびグリコサミノグリカンをこれら本来の構造と本来の濃度で含むことができる。天然に見られるECMの構造的又は機能的成分とその分解産物を含むマトリクスの調製法は従来技術で周知となっており、米国特許6,572,650号や6,051,750号に記載されており、各特許の全体は参照により本明細書に含まれる。
【0052】
マトリクスは水和状態又は脱水状態で保存できる。凍結乾燥又は風乾マトリクスをもう一度水和して本発明によって使用することが可能である。
【0053】
一つの実施態様では、グルタルアルデヒド・タンニング、酸性側pHでのホルムアルデヒド・タンニング、プロピレンオキサイド処理、エチレンオキサイド、ガスプラズマ滅菌、ガンマ線照射、電子線照射、過酢酸滅菌を含む従来の滅菌技術を用いて細胞付加前に滅菌することが可能である。組織の機械的強度、構造、生物向性等に有害に影響することのない滅菌技術が好適である。たとえば、強力なガンマ線照射は粘膜下組織のシートの機械的強度を失わせることがある。好適な滅菌技術としては、移植片を過酢酸に曝す、1〜4Mラドのガンマ線照射(更に望ましくは1〜2.5Mラドのガンマ線照射)、又はガスプラズマ滅菌が挙げられ、過酢酸滅菌が最も好適な滅菌法である。代表的には、組織は2回又はそれ以上の滅菌処理を行なう。たとえば化学処理による等で組織を滅菌したら、組織をプラスチック又は箔のラップでくるみ電子ビーム又はガンマ線照射滅菌技術を用いてもう一度滅菌する。
【0054】
粘膜下組織を含む組成を体外での真核細胞の成長又は増殖の支持に使用することができる。粘膜下組織は各種の態様で細胞成長基質として本発明にしたがって使用することができ、これには天然に見られるシート状構造、ゲル状マトリクス、従来技術で認められている細胞/組織培養培地への添加物、又は培養器のコーティングとして用いることで、マトリクスと接触する細胞の増殖を支持し増強する一層生理学的に適切な基質を提供することができる。粘膜下組織は細胞粘着表面を提供し細胞分化の誘発も補助する。
【0055】
細胞の添加前にマトリクスは好適に滅菌されるが、抗生物質を細胞培養しステムに含める場合非滅菌マトリクスを使用することも可能である。
【0056】
従来技術で公知の何らかの技術を用いればマトリクス上で細胞を培養した後でマトリクスの脱細胞化ができる。たとえば、マトリクスを脱細胞化用溶液たとえば1.0規定生食水等の高張生食水又はハンクス緩衝生食水(HBSS)等に入れることで、マトリクスを脱細胞化できる。
【0057】
本発明の実施態様にしたがってマトリクスの調整が終わったら、自己細胞を含めた一次細胞、二次細胞、又は不死化細胞を調整されたマトリクスに添加してマトリクス上および/またはマトリクス内で成長させ、患者の罹患部位に調整された組成物を移植することができる。一次細胞、二次細胞、および/または不死化細胞の種類は調整された組成物の想定される使用方法、調整された組成物の移植部位、又は調整された組成物の希望の生理学的性質に基づいて選択する。
【0058】
実施態様2:細胞の供給源と調製
以下では本発明にかかる調整されたマトリクスを作成するためにマトリクス上で培養されるマトリクス調整用細胞の供給源および調製方法の代表例を提供する。マトリクスの組成および構成は各種細胞の付着と増殖を促進する独特な細胞成長基質を提供する。一般に、本方法は細胞成長に資するまた従来技術で周知の条件下でマトリクスと細胞を接触させることによるものである。
【0059】
マトリクス調整用細胞は原核細胞又は脊椎動物細胞等の真核細胞(特に哺乳類の細胞たとえばヒト、チンパンジー、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、又はネコに由来する細胞等)とすることができる。マトリクス調整用細胞は一次細胞、二次細胞、および/または不死化細胞とすることができ、マトリクス中尾静養細胞はまた自己細胞とすることもできる。マトリクス調整用細胞の種類は、線維芽細胞、ケラチン生成細胞、上皮細胞(たとえば乳腺上皮細胞、小腸上皮細胞等)、内皮細胞、脂肪細胞、星状膠細胞、心筋細胞、軟骨細胞、膠細胞、神経細胞、血液の構成要素(たとえばリンパ球、骨髄球等)、筋肉細胞、神経節細胞、腺細胞、膠細胞、造血細胞、間葉細胞、肝細胞、体性細胞種の前駆細胞群などを含む。
【0060】
更に、マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞とすることができる。各種の遺伝子組み替え哺乳類宿主細胞系統を使用することができ、これにはたとえばL細胞、C127、3T3線維芽細胞、T−84細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、BHK細胞株、CV−1細胞(ATCC CCL70)、COS−7細胞、CV−1/EBNAなどがある。好適なマトリクス調整用細胞は細胞に外来性核酸配列を導入することにより遺伝子組み替えを行なうことができる。外来性核酸は注目している生物学的に活性な分子、たとえば蛋白質をエンコードすることができ、又はこれ以外で外来性DNAを外来性遺伝子の発現を活性化する調節配列とする(たとえば同種組み換えを使用する)ことで注目している生物学的に活性な分子を産生させる。これらの技術は周知でありたとえばSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Plainview, N.Y.) 又はその他の実験マニュアルに記載されている。
【0061】
実施態様3:注目している生物学的に活性な分子
何らか所望の生物学的活性分子をマトリクス上に分泌するように選択できる。注目している生物学的に活性な分子は調整された組成物を配置しようとする体内の部位および/または受容者の生理的条件に基づいて選択する。たとえば、脱細胞化され調整された組成物を用いて骨を修復する場合、マトリクス上に産生される注目している生物学的に活性な分子は骨成長因子たとえば骨形態形成蛋白質たとえばBMP−2であり得る。注目している生物学的に活性な分子は酵素、ホルモン、サイトカイン、コロニー刺激因子、ワクチン抗原、抗体、凝固因子、血管新生因子、調節性蛋白、転写因子、レセプター、および構造化蛋白たとえば上皮基底膜蛋白質たとえばIV型コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン等を含むことがある。注目している生物学的に活性な分子はまたヒト成長ホルモン、第VIII因子、第IX因子、エリスロポエチン、インシュリンを含むこともできる。遺伝子組み替え細胞の場合、注目している生物学的に活性な分子についての核酸配列とアミノ酸配列は国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から容易に入手することができる。
【0062】
特定の実施態様で、注目している生物学的に活性な分子は哺乳類発現ベクター等の発現ベクターを用いることで遺伝子組み替えマトリクス調整用細胞に発現する。哺乳類発現ベクターは代表的には非転写要素、たとえば複製の起点や適当なプロモーターたとえばROSAプロモーター等、および発現させようとする遺伝子にリンクされたエンハンサー、およびその他の5’末端又は3’末端側副非転写配列、及び5’末端又は3’末端非転写配列たとえば必要なリボゾーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングのドナー側とレセプター側の部位、及び転写終端配列等を含む。転換脊椎動物細胞で使用しようとする発現ベクターの転写及び翻訳制御配列はウィルス供給源によって提供される。共通に使用されるプロモーターやエンハンサーはポリオーマ、アデノウィルス2型、シミアンウィルス40(SV40)、及びヒトサイトメガロウィルスに由来する。SV40ウィルス性ゲノムに由来するDNA配列、たとえばSV40起点、初期と後期のプロモーター、エンハンサー、スプライス、ポリアデニル化部位、を用いて外来性DNA配列の発現に必要とされるその他の遺伝子要素を提供することができる。初期と後期のプロモーターは特に有用で、これは両方ともSV40ウィルス起点又は複製も含むフラグメントとしてウィルスから容易に入手できるためである。
【0063】
注目している生物学的に活性な分子たとえば注目している蛋白質の分泌のためには、発現ベクターはDNA符号化信号又はリーダーペプチドたとえばIL−7又はインターロイキン4の本来の信号配列等を含むことができる。
【0064】
注目している生物学的に活性な分子は遺伝子組み替え蛋白質を含むことができる。遺伝子組み替え蛋白質の高収量産生は注目している蛋白質を安定的に発現する細胞によって産生され得る。注目している蛋白質を安定的に発現するような細胞株を遺伝子工学的に作成することができる。ウィルス性の複製起点を含む発現ベクターを使用するのではなく、宿主細胞を適当な発現制御要素(たとえばプロモーター、エンハンサー配列、転写終了暗号、ポリアデニル化部位、その他)と選択可能なマーカーで変換することができる。
【0065】
ベクターDNAは従来の形質導入技術たとえばリン酸カルシウム又は塩化カルシウムの共沈、DEAE−デキストラン介在形質移入、又は遺伝子エレクトロポレーションを用いる等により真核細胞性のマトリクス調整用細胞へ導入することができる。
【0066】
外来性DNAの導入に続いて、遺伝子工学的に操作したマトリクス調整用細胞を高栄養培地で1〜2日間にわたって成長させ、ついで選択培地へ切り換える。遺伝子組み替えプラスミドの選択性マーカーが選択に対しての抵抗性を付与し、細胞がそのクロモゾームにプラスミドを安定的に組み込むことができ、また増殖巣を形成するように成長させることができ、この増殖巣をクローンし細胞株に拡張することができる。好適な選択性マーカーとしては、G418、ハイグロマイシン、メソトレキセートがある。このような遺伝子工学的に操作した細胞株をマトリクスに追加して培養することが可能で、注目している生物学的に活性な分子がマトリクス上に分泌されそのマトリクスに組み込めるようになる。
【0067】
実施態様4:マトリクス上での細胞培養
マトリクス調整用細胞は、前述した方法のいずれかによって調製したマトリクスを用い、マトリクス上および/またはマトリクス内で、体外培養することが可能である。細胞は細胞成長に繋がる条件下で培養され、所望なら注目している生物学的に活性な分子の発現に繋がる条件下で培養される。細胞培養の条件は従来技術で周知であり特定の細胞形式とは無関係である。理論で制約を受けることを希望しないものの、マトリクス上でマトリクス調整用細胞によって体外で発現される生物学的活性分子は蛋白質等の分子が天然に見られる細胞外マトリクスへ生体内で組み込まれるのと同様の方法で組み込まれると思われる。培養細胞によって産生された分子がマトリクスへ組み込まれることは、たとえば脱細胞化マトリクスへ蛋白質を単純に添加した場合と比較して、この調整された組成物に優れた修復性の特徴を付与する。組み込まれた生物学的活性分子は調整された組成物の受容者の体内で組成分解の関数として放出される。更に、調整された組成物には、実質的に受容者による組織インプラントの拒絶を招くような細胞要素が全く入っていない。
【0068】
実施態様5:本発明の調整された組成物の使用
本発明の組成物は再生、修復、置換、復元、又はリモデリングが必要な組織が存在している宿主の体内のあらゆる部位に移植することが可能である。
【0069】
A.血管新生を増進する調整された組成物
血管新生及び脈管新生は移植組織への血流再建の一部分である。血管新生の過程は、初期受傷後相で毛細管内皮細胞の移動と増殖、また後期の受傷後相で毛細管内皮細胞の分化が起こり微小脈管網に内皮細胞を編成する。血管新生は細胞たとえば線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞と、マトリクス内に存在する広範囲の血管新生及び脈管新生因子やサイトカインたとえばFGF、VEGF、TGFβその他との間のダイナミックな相互作用を必要とする。これらの細胞とマトリクスの複合体が協調して細胞の成熟、抑制、分化の各相を調節し、損傷した組織とその脈管供給を再配置、修復、再建する。
【0070】
以下の実験は血管新生及び骨髄新生に関連した本発明の調整された組成物の使用に関連するものである。膀胱由来の天然に見られるECMを、SDF−1を構成的に発現するマトリクス調整用形質移入心筋芽細胞と共に培養した。培地内及びマトリクス内のSDF−1濃度は6日間測定した。その結果によると、足場内のSDF−1濃度はわずか6日の間に100倍超に増加したことが示された(5pg/ml未満から625pg/ml)。
【0071】
SDF−1で調整されたマトリクスは前述のように脱細胞化し、全ての骨随由来細胞に緑の蛍光蛋白を発現するように遺伝子操作したマウスに皮下移植した。対照群マウスも同様に処理し、調整されていない天然に見られるECMを用いたか又は単なる疑似手術のみを行なった。マウスでの血管新生は所定の部位から採取した断面サンプルについて低倍率での形態学的アッセイを実施することで測定定量した。7日後及び14日後、本発明にかかる脱細胞化され調整された足場で処理したマウスは対照群マウスと比較して血管新生が増加し骨随由来細胞の個数も増加した。結果は対照(調整されていない)マトリクスと比較して、血管断面積の増加%が48%±13%、p<0.05の増加を示した。
【0072】
代表的な方法によれば、移植後に組成物内において血管新生を改善するために本発明の調整された組成物が用いられる。マトリクス調整用内皮細胞を高酸素環境に曝すことでマトリクス調整用細胞がマトリクス内に血管新生因子の天然の補体を放出するのを支援し、これがマトリクスの特異性を増進する。暴露時間は1分から30分の範囲にわたることができる。このような血管新生及び脈管新生因子は以下の蛋白質の1つ以上を含むことができる:FGF、VEGF、TGFβ、アンジオポエチン。マトリクスは脱細胞化するがマトリクスに組み込まれた血管新生因子は残る。この後調整されたマトリクスは血管系の支援が必要な受容者の体内に移植され生体内での血管新生の増進が得られる。
【0073】
特定の実験では、天然に見られるECMは前述のとおりに調製した。マトリクス調整用内皮細胞(EC)をマトリクスに供給し72時間の間通常酸素条件下でマトリクス上で培養し最後の24時間は結成を含まない培地を用いた。培養細胞を48時間にわたり酸素濃度2%の低酸素環境に曝した。VEGF蛋白質の165及び189アイソフォームの濃度はマトリクスと上清の両方で測定した。結果は、EC細胞を同一条件で培養したが低酸素環境に曝さなかった対照と比較して、マトリクスでのVEGF濃度の5倍の増加と、上清でのVEGFの10倍の濃度増加が見られた。
【0074】
ここに示した一つの実験は心臓組織の再生における本発明の使用に関連している。大きさ約1センチメートル×2センチメートルの小腸に由来し天然に見られるECMを前述のとおりに調製しこれに0.5×106個/cmのマトリクス調整用線維芽細胞を播種する。マトリクス調整用線維芽細胞は遺伝子操作して間質由来の成長因子1(SDF−1)を発現する。マトリクス調整用遺伝子組み替え細胞はマトリクスと共に24時間から168時間の期間にわたって培養する。調整用マトリクス内のSDF−1の存在はELISA法で確認する。次にマトリクスをHBSSに入れてマトリクスの脱細胞化を行なう。脱細胞化の後、調整されたマトリクスは外科手術によって受容者の心筋の損傷部位へ移植される。脱細胞化され調整された組成物が受容者によって分解されると、注目している蛋白質たとえばSDF−1がマトリクス分解による他の産物と一緒に放出される。この後、調整された組成物は循環血中の多能性細胞を誘引し、これがたとえば心筋細胞へと分化するように影響を与える。暴露時間は1分から30分の間とすることができる。
【0075】
別の代表的実施態様では、天然に見られるECMは、前述のとおり調製し、血管新生および/または脈管新生を改善する因子を産生するように遺伝子操作されたマトリクス調整用細胞を播種する。このような血管新生及び脈管新生因子は以下の蛋白質の1つ以上を含むことができる:FGF、VEGF、TGFβ、アンジオポエチン。適当な培養期間の後、新しい血管の形成が必要な宿主の部位、たとえば心筋梗塞等によって惹起した心筋虚血の治療のために心筋内へ、調整された組成物を移植する。
【0076】
上記に示した実施態様は天然に見られるECMの使用に言及しているが、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分および/またはその分解産物を含むマトリクスを使用しての実験を行なうこともできる。
【0077】
B.強度を向上させる調整された組成物
以下は組織修復、置換、再建又はリモデリングのために本発明を用いて組成物の強度を向上させる代表的な方法である。マトリクスは前述のとおりに調製し、マトリクス調整用線維芽細胞をマトリクスに導入し機械的付加に曝す。バイオリアクタ環境中でストレスと歪みの独立制御が可能な周回負荷システムをマトリクスに適用し細胞培養システムは滅菌条件を提供すると同時にマトリクスのストレス及び歪み負荷をモニタする。細胞培養システムはたとえば25N容量の負荷セルと30ミリメートル移動容量のリニア・アクチュエータを含む。このシステムによりユーザは各マトリクスに負荷をかけて振動の振幅と頻度を指定することにより又は移動量を記載する関数を定義することにより移動プロファイルを定義できる。マトリクス又はマトリクス調整用線維芽細胞を機械的負荷に曝すことで、構造蛋白質およびその他の生物学的活性分子を細胞からマトリクスへ放出するのを助ける。マトリクスを含む調整された組成物は宿主への移植前に脱細胞化される。
【0078】
ここに示す一つの実施態様では、天然に見られるECMを含むマトリクスを前述のように調製し、適当なインキュベーション期間の後で構造性蛋白質たとえばコラーゲンを分泌する遺伝子組み替え細胞をマトリクス上で培養する。マトリクスは宿主への移植前に脱細胞化されて本発明による調整用組成物を形成する。
【0079】
特定の実施態様では、0.5×10cmの線維芽細胞を約1センチメートル×2センチメートルの小腸に由来し天然に見られるECMへ導入した。約12時間にわたりマトリクス上で細胞を培養し、その間に0.25Nの予備負荷を印加した。次に10%の歪みを24時間にわたり1Hzでマトリクスに印加した。マトリクスにかかる負荷は実験中連続モニタし細胞数と培地のpHを実験の終了時に測定した。細胞生活能力は代謝活性のある細胞を染色するMTTアッセイを用いて判定した。プロコラーゲンI型の存在はELISAキットを用いて判定した。結果によると、線維芽細胞は印加したストレスの線に沿って急速に整列し細長いスピンドル状の形状となったことが示された。このような結果は調整された組成物の強度が宿主へ移植される時点で同様に調整されていない組成物と比べて増加するであろうことを示している。
【0080】
前述の実験は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分および/またはそれらの分解産物を含むマトリクスを用いて行なうこともできる。
【0081】
C.骨形成用の調整された組成物
ここに示す別の実施態様では、骨形成を促進するために本発明の調整された組成物が使用される。天然に見られるECMを含むマトリクスを前述のとおりに調製する。骨成長因子、骨形態形成蛋白質2(BMP−2)を分泌するマトリクス調整用遺伝子組み替え細胞を適当なインキュベーション期間にわたりマトリクス上で培養する。マトリクスは宿主への移植前に脱細胞化される。天然に見られるECMの構造的又は機能的成分を含むマトリクスを用いて同じ実験を実施することができる。
【0082】
D.組織成長を誘発する調整された組成物
以下の代表的な方法によれば、天然に見られるECMを含むマトリクスを前述のとおり調製して、適当なインキュベーション期間の後に成長因子およびその他の生物学的活性分子を産生するマトリクス調整用細胞をマトリクス上で培養する。培養された細胞は、移植前に、成長因子およびその他の生物学的活性分子の細胞からマトリクスへの放出を刺激する目的で、直流又は交流電位のいずれかに曝す。ここに示す一つの実施態様では、マトリクスにはマトリクス調整用内皮細胞の集団を電位への暴露前に播種する。25mVから約500mVの範囲の電位、望ましくは300mVをマトリクス両端に24時間から72時間にわたって、望ましくは48時間にわたって印加する。電流へ細胞を曝すことにより、成長因子およびその他の生物学的活性分子たとえば蛋白質、酵素、ホルモン、サイトカイン等が細胞から放出されマトリクスに組み込まれる。マトリクスは宿主への移植前に脱細胞化される。本方法は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分および/またはそれらの分解産物を含むマトリクスを用いて行なうこともできる。
【0083】
印加された電位が各種の創傷治癒を促進し得るという様々な報告が存在する。ウサギにおいて低レベル電位を重症虚血組織へ印加した場合は組織の治癒が加速し組織の血管新生が促進されると報告されている。Chekanov et al. (2002), Electrical stimulation promotes angiogenesis in rabbi hind−limb ischemia model, Vas. Endovascular Surg. Vol. 36, pp. 357−366. 電位を用いて創傷の針治療を行ない非治癒骨折、潰瘍を治療し、また神経再生を刺激した。Sisken et al. (1993), Prospects on clinical applications of electrical stimulation for nerve regeneration, J. Cell Biochem., vol. 51, pp. 404−409; Evans et al. (2001), Electrical stimulation with bone and wound healing, Clin. Podiatr. Med. Surg., vol. 18, pp. 79−95. これらの研究では印加した電位が生体内で細胞から、マトリクスから、又は両方のいずれかから生物学的活性因子の放出を刺激していることをデータが示差している。
【0084】
E.望ましくない性質を減少する調整された組成物
以下の代表的方法によれば、天然に見られるECMを含むマトリクスを前述のとおり調製する。マトリクスを宿主に移植した場合に望ましくない性質を招来し得るある種の生物学的活性分子のマトリクスが欠乏するような電位にマトリクスを曝す。一つの特定の実施態様では、TGFβ成長因子の放出を減少又は防止することが知られている直流電位へ72時間の期間にわたりマトリクスを曝した。次に調整されたマトリクスが宿主に移植され、移植部位での望ましくない瘢痕組織の形成のリスクが減少する。
【0085】
F.組織特有の親和性のための調整された組成物
以下に示す方法によれば、天然に見られるECMを含むマトリクスを前述のとおりに調製して、特定の組織種たとえば中枢神経系(CNS)の組織等の天然に見られるECMに対して特徴的であることが知られている特性をマトリクスに付与するように選択した特定のマトリクス調整用細胞の集団たとえば星状膠細胞等の添加により体外で調整した。一つの実施態様では、マトリクス調整用肝細胞を導入してマトリクス上で培養し肝臓組織を取り巻く天然に見られるECMに固有の性質をマトリクスに付与する。培養細胞は受容者への移植前に除去する。脱細胞化され調整されたマトリクスは、宿主の標的組織への調整されたマトリクスの移植時に、内皮細胞の分化たとえば肝臓の洞様内皮細胞(HSEC)分化や脳内皮細胞(BEC)分化を指令することができる。本方法は天然に見られるECMの構造的又は機能的成分および/またはそれらの分解産物を含むマトリクスを用いて行なうこともできる。
【0086】
天然に見られるECMは常在細胞の産物を反映するダイナミックな構造であって組織や臓器に特有である。前述した代表的方法により調整された組成物は特化したマトリクスを含み、一旦脱細胞化されるとマトリクスは調整化段階および/または培養段階の間に存在した細胞サブタイプに関連した性質を維持する。調整された組成物は標的領域への移植をあらかじめ想定しておくことができるので調整されていないマトリクスと比較して修復能力の改善を示す。たとえば内皮細胞(EC)は各種の表現型能力を示す。EC表現型はEC機能に関連し、機能は部位に依存する。たとえば、腎糸球体内皮細胞は糸球体瀘過機能に良く適合している。肝臓の洞様内皮細胞は有窓又は「ふるい」の独特な表現型特性を備え、これは正常な肝血液瀘過機能に必須である。これ以外に、脳の内皮細胞はほとんどの分子が事実上通過できない脳血液関門の重要な構成要素である。CNS内部の血管網は開窓部がなく(すなわち血液脳関門)、緊密な接合が特徴の閉鎖帯蛋白1,2,及び3を発現する。
【0087】
本明細書に記載した内容の変化及び変更は請求項に記載の本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者には明らかであろう。したがって前述した代表的説明によってではなく以下の請求項の精神及び範囲によって本発明は定義されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱細胞化マトリクスを含み、前記マトリクスは体外で前記マトリクス上で培養された細胞によって調整されることにより前記脱細胞化・調整されたマトリクスが修復、リモデリング、置換、又は復元を必要とする組織と接触して置かれたときに、修復、リモデリング、置換、又は復元能力が向上することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記マトリクスは天然に見られる細胞外マトリクス(ECM)を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ECMは少なくとも粘膜下層の一部を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ECMは少なくとも上皮基底膜の一部を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ECMは少なくとも固有層の一部を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記ECMの少なくとも一部は表皮を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ECMの少なくとも一部は皮下組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記ECMの少なくとも一部は膵臓結合組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
前記ECMの少なくとも一部は胃から採取した組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
前記ECMの少なくとも一部は小腸から採取した組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記ECMの少なくとも一部は膀胱から採取した組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記ECMの少なくとも一部は皮膚から採取した組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
前記ECMの少なくとも一部は粘膜を含む組織から採取した組織を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記マトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記マトリクスは天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記マトリクス調整用細胞は一次細胞、二次細胞、不死化細胞群からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記マトリクス調整用細胞は線維芽細胞、ケラチン生成細胞、星状膠細胞、上皮細胞、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液細胞及びその前駆細胞、並びに肝細胞及びその前駆細胞からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記マトリクス調整用細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記注目している生物学的に活性な分子は蛋白質を含むことを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記蛋白質は、アンギオジェニン、アンギオポエチン−1、Del−1、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、肝細胞成長因子(HGF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、胎盤成長因子(PlGF)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、血小板由来成長因子−BB(PDGF−BB)、プレオトロフィン(PTN)、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)、骨形態形成タンパク−2(BMP−2)、間質由来成長因子−1からなるグループから選択されることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記蛋白質は成長因子であることを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記成長因子は血管新生成長因子であることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記成長因子は骨形成成長因子であることを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
前記遺伝子組み替え細胞は外来性核酸を含み注目する蛋白質を発現するトランスフェクトされた細胞であることを特徴とする請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記遺伝子組み替え細胞は注目する蛋白質をエンコードする核酸がトランスフェクトされることを特徴とする請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記注目している生物学的に活性な分子は、VEGF蛋白、bFGF蛋白、BMP蛋白、又は間質由来の成長因子1蛋白であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記注目している生物学的に活性な分子は遺伝子組み替え蛋白質であることを特徴とする請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記ECMは脊椎動物の組織から採取されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項31】
修復、リモデリング、置換又は復元が必要な組織は、骨、皮膚、心臓、泌尿器の組織、消化管の組織、神経組織、間接組織、及び結合組織からなるグループから選択された組織を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記マトリクス調整用細胞は少なくとも1種類のストレス因子に曝されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項33】
前記少なくとも1種類のストレス因子は低酸素状態を含むことを特徴とする請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記少なくとも1種類のストレス因子は高炭酸状態を含むことを特徴とする請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記少なくとも1種類のストレス因子は電流を含むことを特徴とする請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
前記マトリクスは少なくとも1種類のストレス因子に曝されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項37】
前記ストレス因子は機械的負荷を含むことを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
マトリクス上で体外培養された細胞によって調整され、かつ、少なくとも1種類のストレス因子に曝されることで調整されたマトリクスを含み、前記調整されたマトリクスは修復、リモデリング、置換、又は復元を必要とする組織と接触して置かれたときに、修復、リモデリング、置換、又は復元能力が向上することを特徴とする組成物。
【請求項39】
前記マトリクス調整用細胞は線維芽細胞、ケラチン生成細胞、星状膠細胞、上皮細胞、内皮細胞、膠細胞、神経細胞、血液細胞及びその前駆細胞、並びに肝細胞及びその前駆細胞からなるグループから選択されることを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記マトリクス調整用細胞は自己細胞であることを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
前記少なくとも1種類のストレス因子は低酸素状態を含むことを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項42】
前記少なくとも1種類のストレス因子は高炭酸状態を含むことを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1種類のストレス因子は電流を含むことを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項44】
前記少なくとも1種類のストレス因子は機械的負荷を含むことを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項45】
前記マトリクス調整用細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項46】
前記注目している生物学的に活性な分子は蛋白質を含むことを特徴とする請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞であることを特徴とする請求項38に記載の組成物。
【請求項48】
前記遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記注目している生物学的に活性な分子は蛋白質であることを特徴とする請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記蛋白質は遺伝子組み替え蛋白質であることを特徴とする請求項49に記載の組成物。
【請求項51】
哺乳類の組織の修復、リモデリング、置換又は復元を誘発するための方法であって、
脱細胞化マトリクスを提供するステップと、
前記マトリクス上で細胞を体外培養することにより前記マトリクスを調整するステップと、
前記マトリクスを脱細胞化し前記脱細胞化・調整済マトリクスが組織の修復、リモデリング、置換又は復元を誘発するようにするステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項52】
前記マトリクス調整用細胞を少なくとも1種類のストレス因子に曝すステップを更に含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記マトリクスを少なくとも1種類のストレス因子に曝すステップを更に含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記組織は血管組織、心臓組織、骨組織からなるグループから選択された組織を含むことを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記マトリクス調整用細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記注目している生物学的に活性な分子は成長因子を含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記注目している生物学的に活性な分子はVEGF蛋白質、間質由来の成長因子−1、又は骨形成蛋白質を含むことを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記マトリクス調整用細胞は遺伝子組み替え細胞であることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記遺伝子組み替え細胞は注目している生物学的に活性な分子を発現することを特徴とする請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記注目している生物学的に活性な分子は遺伝子組み替え蛋白質であることを特徴とする請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記マトリクスは脊椎動物の組織から採取されることを特徴とする請求項51に記載の方法。
【請求項62】
組織の置換、復元、修復、又はリモデリングのための組成であって、
天然に見られるECMの構造的又は機能的成分、天然に見られるECMの構造的又は機能的成分の分解産物、又はそれらの組み合わせを含む脱細胞化マトリクスを含み、前記マトリクスは前記マトリクス上で細胞を体外培養することにより調整されることを特徴とする組成物。
【請求項63】
前記マトリクス調整用細胞は少なくとも1種類のストレス因子に曝されることを特徴とする請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
前記マトリクスは少なくとも1種類のストレス因子に曝されることを特徴とする請求項62に記載の組成物。
【請求項65】
マトリクスを含む組成物であって、前記マトリクスは少なくとも1種類のストレス因子に曝すことにより組織の修復、リモデリング、置換又は復元のために調整されることを特徴とする組成物。
【請求項66】
前記ストレス因子は電流を含むことを特徴とする請求項65に記載の組成物。

【公表番号】特表2007−526017(P2007−526017A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517627(P2006−517627)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020315
【国際公開番号】WO2005/002601
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(507145086)エイセル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】