組織再生機能を持つ不活性ポリペプチドおよびその製造方法
本発明は、細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするPTD(protein transduction domain)、一つ以上のプロタンパク質転換酵素(proprotein convertase)切断部位を有し且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性TRD(tissue regeneration domain)を細胞内で活性化させるFAD(furin activation domain)、および前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRDを含有する不活性ポリペプチド(TRPs:tissue regenerative polypeptides)およびその製造方法に関する。本発明によるTRPsは、実用的に組み換え大腸菌などのバクテリアの培養によって量産が可能であり、生体投与の前には不活性状態なので、従来の類似用途の活性タンパク質に比べてその生産コストが数十分の1に過ぎず、分離・精製および取り扱い・投薬過程が非常に簡単で便利である。本発明による不活性TRPsを生体内に投薬する場合、従来の公知のrhBMP類またはTGF−β類とは全く異なる薬理メカニズムによって骨、軟骨などの組織の形成または再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させることができて新しいメカニズムの新薬として有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD:protein transduction domain)、一つ以上のプロタンパク質転換酵素(proprotein convertase)切断部位を有し且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD:tissue regeneration domain)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD:furin activation domain)、並びに前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRDを含有する不活性組織再生ポリペプチド(TRPs:tissue regenerative polypeptides)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Proteins:BMP)は、脱無機質化条件でコラーゲンまたは生分解性高分子などと共に使用する場合、哺乳類または霊長類で骨欠損の治癒を促進し、特に、骨細胞から分泌されて隣接細胞膜の受容体を介して骨の形成を誘導するものと知られている。hBMPは、互いに類似性を持つタンパク質群であって、現在までhBMP2〜hBMP15などの14種以上が知られており、その中でもhBMP2、3、4、6、7および14は骨の再生を誘導する効果を持つものと報告されている。特に、hBMP2は現在まで最も確実な骨形成因子タンパク質であって、最近、このhBMP2タンパク質の医学的効果と適用について多くの研究が行われている。BMP7は、TGF−β1の拮抗作用によって臓器の繊維化を抑制するうえ、臓器の再生を誘導するものと知られている(Nature Med., 9:964, 2003; J. Biol. Chem., 280:8094, 2005).。BMP14(GDF−5、growth/differentiation factor-5:MP−25)は、人体または哺乳類動物に投与する場合、皮膚の傷を効果的に治癒する機能と、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の治癒を助ける効果があるものと知られている(US 6,764,994; Nature, 368:639, 1994; Exp. Cell Res., 235:218, 1997; Neurosurg Focus, 13:1, 2002; US 6,531,450)。肝臓又は腎臓の硬変の場合、BMPはTGF-βを中和することも知られ、繊維組織の形成を阻害し、正常組織の回復を誘導する。すなわち、BMPは、その用語的定義とは異なり、骨または軟骨の形成促進機能だけでなく、皮膚の再生、胃腸組織の再生再活機能も持つことができ、肝硬変または腎臓硬変の場合にはTGF−βを拮抗して繊維組織の形成を抑制し、正常組織の回復を誘導する機能も知られている。
【0003】
BMP類を製造する方法として、初期には脱灰(demineralized)された動物骨組織から自然塩(natural salt)を用いて抽出する方法(US 4,294,753)が試みられてきたが、効率が非常に低く且つ量産が不可能であるという問題点があった。1990年代初めに、BMP遺伝子で形質転換されたCHO細胞を培養し、活性化された組み換えhBMP2を分離・精製する方法(Proc. Natl. Acad. Sci., 87:2220, 1990)が開発されて以来、量産が可能になった(US 4,968,590; 5,106,626; 5,106,748; 5,166,058; 5,187,076; 5,187,623; 5,208,219; 5,258,494; 5,266,683; 5,284,756; 5,399,346; 6,593,109)。
【0004】
ところが、形質転換されたCHO細胞を用いた組み換えhBMP2およびhBMP7の製造方法は、活性を持つrhBMP2およびrhBMP7を得るために大量のCHO細胞培養を必要とし、分離・精製段階が複雑であり、生産コストが非常に高いという問題点、および分離・精製過程と保管、薬剤化処理、投薬過程中で活性の減少が伴うという共通の問題点を持っている。このような動物細胞培養による組み換えBMP類の製造方法に対する欠点を一部改善するために、最近、バイオファーム(Biopharm)社は、rhBMP14(MP−52)を組み換え大腸菌で製造する方法を開発し、その製造コストを低下させた例がある(US 2003/0181378; WO 96/33215)。しかし、前記rhBMP14も、活性を持つタンパク質の形に分離・精製する工程が複雑で不便であるうえ、保管、取り扱い及び投薬段階における、製造された活性タンパク質の活性低下の問題は依然として解決されていない。
【0005】
また、Biopharm社の如く、組み換え大腸菌方式を用いて、従来のように活性化されたタンパク質を生産する場合には、BMP類の生化学的構造によってその選択に制約がある。すなわち、Biopharm社の方式でrhBMP14のような構造のタンパク質は製造可能であるが、活性化されたrhBMP2やrhBMP4、rhBMP7などのような構造のBMP類を実用的に製造することは困難であると予測される。
【0006】
商業的に流通し、医学的にスパインフュージョン(Spine Fusion)用などに投薬されているrhBMP−2の場合、2005年現在、ミリグラム(mg)当り数千USドルの高い価格で販売されている。よって、世界的に数多くのSpin Fusion施術必要患者には勿論、rhBMP類が皮膚傷再生用、胃潰瘍再生用、肝硬変解消用などの様々な医学的潜在効用価値を持つにも拘らず、高いコストと活性消失による保管・取り扱い・投薬の不便性のため、BMP類の臨床的な使用が制限されてきた。
【0007】
したがって、当業界では、前記rhBMP類またはTGF−β類と同等以上の生医学的効用性を有しながらも、従来の公知のタンパク質に比べて製造コストが画期的に低く、分離・精製段階における非効率的不便性、保管、取り扱いおよび投薬段階における不便性および活性低下の問題を根本的に解決することができるうえ、新しい薬理メカニズムを持つ新規の生化学新薬物質の開発が切実に求められる状況である。
【0008】
そこで、本発明者らは、既存の活性タンパク質が持つ問題点を根本的に解決することができ、骨または軟骨の形成促進機能、皮膚傷再生機能、潰瘍治療機能、および/又は肝硬変などの生体組織の再生促進機能を示し、新しい生化学的構造および薬理メカニズムを持つポリペプチド群を開発するために鋭意努力した結果、製造、分離、精製、保管、処理など生体内に投薬される前までは不活性状態を維持し、生体内に投薬された以後には生体細胞内で活性化されるようにする、新しい薬理メカニズムによって骨または軟骨の形成または再生を促進し、腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ得るようにする新しい種類のポリペプチド群に着目することになった。すなわち、本発明では、細胞膜を透過させるPTD;一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性TRD(tissue regeneration domain)を細胞内で活性化させるFAD(furin activation domain);および前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRDを含有する不活性組織再生ポリペプチド(TRPs)に着目し、前記TRPがrhBMPなどの既存の活性タンパク質に比べて、その製造コストが画期的に低く、保管および取り扱いが容易であるうえ、投与が非常に簡単であることを確認するとともに、前記TRPが受容体なしで細胞内に透過されて細胞内でフューリンによって切断された後、活性化され、活性タンパク質の多量分泌によって骨の形成を促進するという新規の薬理メカニズムを持つことを確認することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主な目的は、人体の骨や軟骨などの組織の形成再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ、究極的には再生を誘導するために、人体に直接投薬できるように設計された、従来の公知の活性タンパク質とは全く異なる構造、特性および薬理メカニズムを持つ不活性TRPsおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記不活性TRPsを含有する、骨や軟骨などの組織の形成または再生促進用組成物、および腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化または硬変解消用新薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、不活性組織再生ポリペプチド(TRP)であって(a)前記ポリペプチドを細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD)、(b)一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD)、および(c)前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRD、
を含有する不活性TRPを提供する。
【0012】
また、本発明は、TRDをコードするDNAの5’前にFADをコードする塩基配列、PTDの塩基配列、タギング(tagging)のための塩基配列、および分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列が挿入されている組み換えベクター、並びに前記組み換えベクターで形質転換されたバクテリアを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記形質転換されたバクテリアを培養して[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを発現させる段階と、(b)前記培養液を遠心分離した後、上清と細胞ペレット(cell pellet)に尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの2次元および3次元構造を除去し或いは1次元線形構造に変形させた後、[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを精製する段階とを含む、不活性TRPの製造方法を提供する。
【0014】
本発明において、前記プロタンパク質転換酵素はフューリンであることを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。例えば、PC7、PC5/6A、PC5/6B、PACE4、PC1/3、PC2、PC4などであってもよい。
【0015】
また、前記TRDは、配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができるが、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導する活性を示すタンパク質である限りは、限定されるものではない。例えば、BMPsだけでなく、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様:a disintergrin and metalloproteinase-like)、TNF−α、MMPs(matrix matalloproteinases)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)などのポリペプチドがこれに該当する。
【0016】
前記FADは、配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができるが、プロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されて前記TRDを活性化させる限りは限定されるものではない。また、前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選ばれることを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明による不活性TRPの製造方法において、前記精製段階は、前記ポリペプチドをニッケル−チタニウムビーズに結合させ、これを同一の溶液で洗浄した後、イミダゾール(imidazole)と高塩濃度緩衝溶液を用いて溶出することを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明による不活性TRPは、従来の活性BMP類が共通に持つ3次元的立体規則性を持っておらず、それ自体では生化学的活性を持っていないが、人体または哺乳類の生体内に投薬される場合、FADのプロタンパク質転換酵素切断部位が生体細胞内にあるプロタンパク質転換酵素によって切断されながらTRDが活性化され、前記活性化されたTRD部分が細胞外に分泌されながら期待すべき薬効を示す。本発明によるTRPは、PTD、FADおよびTRDが融合しているポリペプチド形態であることが好ましい。本発明によるTRPは、人体の骨や軟骨などの組織の形成または再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ、ひいては元の組織の再生を誘導する機能を持つ。
【0019】
したがって、本発明はまた、前記不活性TRPを有効成分として含有しながら、従来の公知の類似用途のタンパク質医薬類とは全く異なる新しい薬理メカニズムによって組織の形成または再生を促進する新薬組成物を提供する。本発明において、前記組織は骨または軟骨であることを特徴とすることができる。また、本発明は、前記不活性TRPを有効成分として含有する、臓器の繊維化または硬変解消用新薬組成物を提供する。本発明による組成物は、TRP以外にも、その他の成長因子としてTGF−β(トランスフォーミング成長因子:transforming growth factor-β)、IGF(インスリン様成長因子:insulin-like growth factor)、PDGF(血小板由来成長因子:platelet-derived growth factor)、FGF(繊維芽細胞成長因子:fibroblast growth factor)などを適切に含むことができ、この場合、治療効果を倍加させることができる。
【0020】
本発明の他の特徴及び具現例は、以降の詳細な説明及び特許請求の範囲から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヒトのBMP2、BMP7およびTGF−βタンパク質の構造模式図と全体アミノ酸の配列を示す。
【図2】従来の市販されているrhBMP−2の2次および3次構造を示す写真である。
【図3】本発明によるTRP−1の製造および分離・精製過程を示す。
【図4】従来のrhBMPの製造および分離・精製過程を示す。
【図5】従来のrhBMPの薬理メカニズムを示す。
【図6】本発明による不活性TRPsの薬理メカニズムを示す。
【図7】hBMP2遺伝子にTATを結合させた組み換え発現ベクターを示す。
【図8】図7の組み換え発現ベクターで形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質の発現を誘導する以前と以後の総タンパク質の電気泳動写真である。
【図9】抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたTAT−BMP2のウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図10】TAT−BMP2が細胞膜を透過して細胞内に移動することを確認したウエスタンブロット写真である。
【図11】TAT−BMP2のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を示す写真である。
【図12】TAT−BMP2と市販中のrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をフォンコーサ(von Kossa)染色処理して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認した写真である。
【図13】mRNA移動を調節するものと予想されるシグナルペプチドとフューリンによって活性化されるプロドメインをBMP2と結合させ、フューリン活性メカニズムを確認するために考案されたTRP−1変異体の模式図である。
【図14】本発明によるTRP−1およびその変異体が細胞膜を透過して細胞内に移動することを確認したウエスタンブロット写真である。
【図15】本発明によるTRP−1がフューリンによって試験管内で切断されることを示す写真である。
【図16】本発明によるTRP−1が細胞内でフューリンによって活性化されることをα1−PDXと抗X−pressのウエスタンブロットで確認したものである。
【図17】本発明によるTRP−1およびその変異体で処理された繊維芽細胞におけるALP活性度を測定したものである。
【図18】本発明によるTRP−1およびその変異体で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認したものである。
【図19】本発明による組み換え大腸菌の培養の際にIPTGでTRP−1およびTRP−2の発現を誘導する以前と以後の総タンパク質に対する電気泳動写真である。
【図20】本発明によるTRP−1とTRP−2を抗X−press抗体(anti-Xpress antibody)を用いてウエスタンブロット(western blot)した結果を示す。
【図21】本発明によるTRP−1が細胞内に導入される過程の抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図22】本発明によるTRP−2が細胞内に導入される過程の抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図23】本発明によるTRP−1で処理された繊維芽細胞における活性化されたhBMP2の分泌をウエスタンブロットで確認したものである。
【図24】本発明によるTRP−1と市販中のrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認したものである。
【図25】本発明によるTRP−1と市販中のrhBMP2−で処理された繊維芽細胞におけるALP活性度を測定したものである。
【図26】多様な濃度のTRP−1およびrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認した写真である。
【図27】本発明によるTRP−1が細胞内に導入された後の半減期を示す、抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図28】本発明によるTRP−1とTRP−2の細胞内透過と温度の影響を共焦点(confocal)顕微鏡で観察した写真である。
【図29】本発明によるTRP−1とTRP−2が細胞内に透過された後、F−actinに特異的に結合することを示す写真である。
【図30】本発明によるTRP-1が投与された実験動物で骨の形成が誘導されることを示す写真である。
【図31】本発明によるTRP−1と市販中の既存のrhBMP−2の細胞毒性を比較して示すものである。
【発明の詳細な説明および具体的な実施態様】
【0022】
本発明による不活性TRPは、従来の公知のrhBMPやTGF−βなどの活性タンパク質とは全く異なる構造の特性を持っている。すなわち、生体に投与される以前に、本発明によるTRPはそれ自体で活性を持っていないが、従来の公知のrhBMP類とTGF−β類は生化学的に活性化されており、図1および図2に示すような3次元構造を持っている(Eur. J. Biochem., 237:295, 1996; J. Mol. Biol., 287:103, 1999)。
【0023】
したがって、従来の活性rhBMP類とTGF−β類を製造するためには、著しく生産性の低いCHO細胞などの組み換え動物細胞の培養に依存しなければならないという問題がある。Biopharm社のrhBMP14(MP−52)のように、動物細胞の代わりに生産性の高い組み換え大腸菌の培養によって一部のrhBMPを製造しているが、この場合にも、製造しようとするBMPの生化学的構造に多くの制約を受ける。すなわち、活性MP−52は組み換え大腸菌を用いて製造することができるが、活性rhBMP2、rhBMP4、rhBMP7などのように、骨または軟骨の形成促進と多様な組織の再生用に人体内に投薬することが可能な他の活性BMP類または活性TGF−β類は組み換え大腸菌によって製造することが容易でない。
【0024】
一方、US2004/197867A1には、骨誘導ポリペプチドとPTD(protein transduction domain)の融合ポリペプチドおよびこれを投与して動物で骨の形成を誘導する方法を開示している。より具体的には、高いBMPを直接投与する代わりに、安いLMP-1(LIM mineralization protein-1)とPTDの融合ポリペプチドを投与すると、BMP2とBMP7のmRNA発現が誘導されることと共に、骨誘導ポリペプチドとしてLMP以外にBMP、TGF−β、SMADなども、また羅列している。ところが、細胞内でmRNAが形成されるとしても、マイクロRNA(micro RNA)を介してのmRNAの調節および干渉(interference)によって数多くのmRNAからタンパク質が形成されないことが良く知られているので(Nature, 409:363, 2001; Cell, 115:199, 2003)、LMP−1(LIM mineralization protein-1)によるBMP mRNAの増加が骨細胞分化の決定的な要因という主張は信憑性が足りない。それだけでなく、PTDを用いてタンパク質を細胞内に導入しても全てのタンパク質が活性化され、期待すべき薬効を示すのではなく(Curr. Protein Peptide Sci., 4:97, 2003)、特にBMP類のように分泌されるタンパク質の場合、細胞内に存在しながら薬効を示すタンパク質とは異なり非常に複雑な活性化過程を経て薬理作用をする。
【0025】
特に、BMPは、LMPとは全く異なる薬理メカニズムと活性化メカニズムを持つタンパク質なので、LMP−1を単にBMPで代替する場合、LMP−TATから得たものと類似の効果を示すことは実験的に確認する前には全く予測することができない。US2004/197867でのように、PTDを用いて組み換えタンパク質を細胞内に導入する場合、LMP−1またはSMADは活性化されて細胞内の遺伝子調節因子として機能する可能性があるが、BMPとTGF−βはLMP類とは異なり分泌タンパク質に属するので、細胞内活性化過程はLMPまたはSMADの場合とは全く異なるであろう(Genes Dev.,15:2797, 2001; J. Cell Biol., 144:139, 1999; Curr. Prot. Pept. Sci., 4:97, 2003; Nature, 425:577, 2003)。言い換えれば、BMP類とTGF−β類は、LMP類とは異なり、非常に複雑な翻訳後過程(例えば、細胞内プロセシング及び修飾:intercellular processing and modification)を経なくては期待すべき骨または軟骨形成促進薬効を示すことができないので、PTDをBMP類に単に結合させて生体に投与した場合、所望の生物学的機能を発揮するものと予測することはできない。それにも拘らず、US2004/197867には、BMPとPTDの融合ポリペプチドの導入によって骨の形成が促進されるという実験的根拠または言及がないだけでなく、BMP−PTDの投薬が、従来のBMP類を投薬する場合に比べてどのような付加的及び異なる効果を持つかについても何の言及もない。
【0026】
本発明者らは、従来のBMP類を人体または哺乳類動物の生体に投薬するに当り、1次的な非効率性要因が生化学的活性、すなわち3次元的立体構造に起因するという点に着目し、優先的に常温で3次元的立体規則性構造を示さない不活性ポリペプチドを製造しようとした。すなわち、細胞膜受容体の助けなしで不活性ポリペプチドを細胞内に透過させるために、TATなどのPTDに融合させて細胞膜透過を確認した。このような方法により、3次元的立体構造を持たない不活性状態のBMP−TAT融合ポリペプチドを製造して細胞に投与させた結果、後述する実施例1に示すように、前記融合ポリペプチドが細胞膜を透過して細胞内には導入されたが、所望の生化学的活性と骨または軟骨の形成促進に関する薬理効果は全く示さないことを確認した。
【0027】
かかる問題を更に解決するために、不活性状態のBMPを人体または哺乳類動物に投与するに当り、投与されるポリペプチドに細胞膜透過特性を付与するとともに、細胞内に様々に存在するフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって、人体内に投与された不活性ポリペプチドが人体内で活性化できるようにする機能を同時に付与する実用的な方法を開発することになった。すなわち、人体などの哺乳類動物の細胞膜受容体(receptor)の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするPTDとフューリンなどの生体内プロタンパク質転換酵素によって不活性タンパク質を細胞内で活性化させ得るようにするFAD、および骨、軟骨の形成または再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの繊維化および硬変を解消するなど、生体内で組織の成長または再生を誘導する機能を持つように活性化できるTRDを含有するポリペプチド(TRP)を製造し、前記製造されたポリペプチドが細胞内に透過されるだけでなく、細胞内で活性化された後で分泌されて、組織の成長促進或いは再生効果を発揮することを確認した。
【0028】
本発明によるTRPsは、組み換え大腸菌などのバクテリアの培養によるタンパク質の生化学的構造に制約を受けずに、実用的に量産することができ、生体に投与される前には生化学的に不活性状態を維持するため、従来の公知の類似用途の活性タンパク質(rhBMP類、TGF−β類など)に比べて生産コストがわずかに数十分の一であり、分離・精製過程と取り扱い、保管および投薬過程が著しく簡単で便利である。
【0029】
従来の活性BMP類はその製造方式に制限があったが、本発明では様々な構造のBMP類とTGF−β類をTRDとして含有するTRPsを組み換え大腸菌を用いて実用的で安く製造することができるという利点がある(図3)。図3は本発明によるTRP−1の製造および分離・精製過程を示し、図4は従来のrhBMPの製造および分離・精製過程を示す(US 4,968,590; 5,106,626; 5,106,748; 5,166,058; 5,187,076; 5,187,623; 5,208,219; 5,258,494; 5,266,683; 5,284,756; 5,399,346; 6,593,109)。図示の如く、従来の方法は形質転換されたCHO細胞培養によってBMPを精製・分泌させ、大規模の培養培地からherarin sepharous columnなどを用いて分離・精製する過程を経るなど分離・精製過程が複雑であり、精製収率が低いという問題点がある。これに対し、本発明の方法は分離・精製過程が非常に簡単で精製収率が高いという利点がある。すなわち、本発明によるTRP−1は、従来の公知のrhBMP−2とは異なり投薬の前には不活性状態なので、活性BMPの生産に伴う大量のCHO細胞培養が不要であり、分離・精製が単純で容易であり、その精製収率が著しく高い。したがって、本発明による不活性TRPは、従来の市販されるrhBMP−2に比べて数十分の一のコストで生産が可能であるうえ、保管および投薬が簡便であるという利点を持つ。
【0030】
本発明では、従来の公知の活性rhBMPなどが共通に持っていた高コストの問題点と、活性製品の分離・精製、保管および投薬過程の非効率的問題を根本的に解決しながら、且つ不活性ポリペプチドを人体または哺乳類動物の生体に直接投薬して従来の公知の活性タンパク質とは全く異なる新しい薬理メカニズムを持つが、従来の活性rhBMPまたはTGF−βと同等或いはそれ以上の組織形成促進または再生効果を示すことを確認した。
【0031】
本発明による不活性TRPは、従来の活性BMPやTGF−βなどとは全く異なる薬理メカニズムを持つ。すなわち、本発明による不活性TRPsを人体或いは哺乳類の生体内に投与する場合、従来の公知のrhBMP類またはTGF−β類とは全く異なる薬理メカニズムによって骨または軟骨の形成を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を解消させることができる。例えば、従来のrhBMPは、図5に示すように、細胞固有の受容体に結合し、これによるSmad信号伝達体系を介して骨形成細胞の分化を誘導する。これに対し、本発明によるTRPsは、図6に示すように、受容体と関係なく細胞膜を透過し、細胞内でHSPなどによって再構成される。その後、再構成されたTRPsが、ゴルジ複合体などにあるフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって切断され、そして活性化され、活性化されたBMPが細胞外部に分泌され、この分泌されたBMPが自己(autocrine)または隣接(paracrine)細胞の受容体に結合して骨形成細胞の分化を誘導する。
【0032】
また、本発明では、骨の形成を誘導するために試みられた従来の活性BMPを直接製造して生体内に投与した方式とは全く異なる治療方法を採用している。すなわち、PTD、FADおよびTRDが結合した不活性ポリペプチド(TRP)を組み換えバクテリアで製造した後、これを生体細胞内に投与し、前記TRPのアミノ酸構造が細胞内でHSP(熱衝撃タンパク質)などによってリフォールディングされ、フューリン(furin)などによって切断されて活性を持つBMPに転換され、この活性化されたBMPが細胞外に分泌されることにより、骨の形成を誘導する。
【0033】
本発明による不活性TRPは、細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするPTD、一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性TRDを細胞内で活性化させ得るようにするFAD、および前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって細胞内で活性化され、組織の成長または形成或いは組織の再生を促進するTRDを含有するポリペプチドであって、それ自体では活性を持たないが、生物体または細胞に透過された後、ほぼ全ての細胞に多量で存在するプロタンパク質転換酵素によってFADが切断され、前記TRDが活性化され、活性化されたタンパク質が細胞外に分泌されて薬効を発揮する。このような本発明によるTRPは、製造コストが高く、保管および取り扱いが容易でなく、受容体を必ず必要とする既存の活性タンパク質が持つ欠点を全て解決することができる。
【0034】
本発明では、まず、BMP遺伝子の5’部位(5’region)前にフューリン切断部位を有するBMPプロドメインの塩基配列とPTDの塩基配列を挿入し、その前にタギング(tagging)のための塩基配列、分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列、および開始塩基配列のATGを挿入して組み換えベクターを製作した。
【0035】
本発明において、前記BMP遺伝子として、配列番号:1のhBMP2または配列番号:6のhBMP7をコードする遺伝子を使用したが、これに限定されるものではない。また、前記FADとして、配列番号:14および19のhBMP2およびhBMP7のプロドメインを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、フューリンのようなプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRDを活性化させることができる限りは、BMP類およびTGF−β類のプロドメインを制限なく、使用することができる。
【0036】
また、本発明では、前記PTDとしてTAT(YGRKKRRQRRR:配列番号:27)を使用したが、これに限定されるものではない。例えば、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド(Gene Therapy, 8:1, Blackbirch Press, 2001)、mph−1−btm(米国特許2005/0147971)などのPTDを使用することもできる。また、前記タギング塩基配列としてX−pressのタグを使用したが、Flag、Myc、Ha、GSTなどを使用することもできる。
【0037】
前記組み換えベクターを製作するために、本発明では、アンピシリン(ampicillin)抵抗性を持っており、商業的に販売されているpRSETを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、選択的マーカーとしてカナマイシン(kanamycin)を持つバクテリアベクター、pcDNAなどの哺乳類細胞発現用ベクター、pPGS、pBabeなどのウイルスベクターを使用することもできる。
【0038】
次に、前記組み換えベクターで形質転換された微生物を培養して本発明によるTRPを発現させた後、前記発現されたTRPを分離・精製した。本発明で形質転換された大腸菌は、通常用いられる培地で培養することができ、融合ポリペプチドの過発現を誘導するためにIPTGを添加することが好ましい。
【0039】
本発明では、形質転換微生物として大腸菌(E.coli)を使用したが、他の種類のバクテリア、酵母、またはカビを使用することも可能であり、且つ微生物を利用せずに化学的方法で有効部位のみを合成して使用することもできる。
【0040】
前記形質転換微生物の培養によって発現された融合ポリペプチドは、GST融合タンパク質(GST-fusion protein)またはその他の通常のタンパク質の分離・精製方法を用いて分離することができる。例えば、尿素(urea)または硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いてタンパク質の沈澱を誘導し、これを透析して塩(slat)を除去することにより、本発明による不活性TRPsを精製することができる。また、本発明では、過発現されたポリペプチドの2次元および3次元構造が不要なので、尿素を用いて2次元および3次元構造のタンパク質を不活性の1次元線形構造に転換して使用することが好ましい。
【0041】
本発明によるTRPを骨細胞、前駆細胞、幹細胞などに投与する場合、前記TRPのFADがフューリンのようなプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRD(BMP)が活性化された後、分泌される。この過程を詳細に説明すると、細胞内に透過されたTRPは、細胞内のF−actinに特異的に結合し、これらはHSP70のような因子によって3次元構造を回復し、細胞内タンパク切断酵素であるフューリンによってフューリン切断部位が切断されてTRD(例:BMP)が活性化された後、活性化されたBMPが細胞の外部に分泌される。細胞に透過された本発明のTRPは細胞の種類と活性に応じて3〜24時間の半減期を有するが、これは透過されたタンパク質が細胞に応じて様々な活性化時間を持つことを意味する。
【0042】
一方、フューリン切断部位を突然変異させた場合、活性化されたBMPが分泌されない点からみて、透過されたタンパク質の細胞内工程と活性化にフューリン切断酵素によるタンパク質修飾(protein modification)が決定的に作用することが分かった。また、生体内でBMPが作られるとき、タンパク質の細胞内移動と活性化に重要な役割を果たすシグナルペプチドが存在する。ところが、シグナルペプチドを削除しても、骨の形成において自然状態にある(wild type)BMP2と類似であり或いは却って良い効果を示すことからみて、TATを用いたBMP伝達には生体とは異なりシグナルペプチドを必要としないことを確認した。
【0043】
本発明によるTRPを0.1nM以上細胞に投与する場合、前記TRPは、濃度依存的に細胞内へ移動し、細胞内で活性化されたBMPに転換され、活性BMPを細胞外に分泌する。本発明のTRPは、細胞膜にあるBMP受容体の存在とは関係なく、1時間以内に大部分の細胞の細胞膜を直接透過し、細胞膜透過過程は受容体を経ない温度非依存的であることを確認した。また、様々な濃度のTRPを細胞に投与した場合にも、細胞毒性は観察されなかった。
【0044】
結局、本発明による不活性TRPは、活性BMPなどの3次元構造を維持する必要がなく、1次元線形構造状態で骨細胞内に透過されて活性BMPなどに転換された後、分泌されてメカニズムを示す。すなわち、従来のhBMPが直接薬効を示す反面、本発明によるTRPはin vivoでの間接的な活性化により薬効(potency)を示す。したがって、本発明による不活性TRPは、3次元構造の維持のための追加的な装備またはコストが不要であり、分離・精製が非常に容易であり、生産工程が簡単であり、生産コストが低く、医学的な効率性が増大して、従来のhBMPタンパク質の問題点を全て解決することができる。本発明によるTRPの特性を従来の活性hBMP2およびhBMP7タンパク質と比較して下記表1に示した。表1は、本発明による不活性TRPs製品の分離・精製、保管および投薬過程と特徴を従来の公知の活性rhBMP類の場合と比較したものである。
【0045】
本発明による不活性TRPは、骨が正常に形成されていない環境で骨の成長を誘導し、或いは外部衝撃の骨折による骨の損失および人工関節の固定を促進するなど、骨疾患治療用として有用である。具体的な例として、先天性、外傷、または腫瘍切除、頭蓋顔面奇形などの治療、歯根膜疾病の治療などの歯科治療に用いられて骨形成細胞の分化を誘導し、骨形成細胞の成長を刺激し、或いは骨形成細胞の分化を誘引する環境を提供する。この他にも、本発明によるTRPは、腎臓や肝などの組織の繊維化予防および組織の再生を誘導するために使用でき、神経または血管の再生などといった他の用途としても使用できる。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明による不活性TRPは、それ自体を使用し、或いは薬学的に許容可能な酸付加塩または金属複合体、例えば亜鉛、鉄などの塩の形で使用する。より具体的に、酸付加塩は、塩化水素、臭化水素、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ベンゾ酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩を使用することが好ましい。
【0048】
本発明による不活性TRPを有効成分として含有する組成物は、通常の投与方法、投与形態および治療目的に応じて、前記有効成分を薬学的に許容可能な賦形剤またはマトリックスとしての担体とともに混合して希釈し、或いは容器形態の担体内に封入させることが好ましい。また、他の骨欠陥治療に有益な他の薬剤と配合して使用することができる。この際、目的とするpH、等張性、安定性などを持つ生理的に受け入れられるタンパク質組成物の製法は、本発明の分野における通常の技術範囲内にあるものを使用することができる。本発明において、前記マトリックスは生物接合性、生物分解性、機械的特性、美容的外観、および接触特性に応じて選択される。本発明において使用することのできる担体の例として、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ホリル無水物などの生物分解性および化学的物質;骨または皮膚コラーゲン、その他の純粋タンパク質または細胞のマトリックス成分などの生物分解性および生物学的物質;焼結されたヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネートまたはその他のセラミックなどの非生物分解性および化学的物質;ポリ乳酸、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびリン酸三カルシウムなどの上述した物質の配合物を含むことができる。しかし、本発明は前記担体に限定されるものではない。
【0049】
本発明において、賦形剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、マグネシウムステアレート、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、水、メチルヒドロキシベンゾエート(metylhydroxybenzoate)、プロピルヒドロキシベンゾエート(propylhydroxybenzoate)、タルク(talc)、鉱物油などを使用することができる。
【0050】
一方、本発明による不活性TRPを含有する組成物は、骨損傷部位に入れるために粘性型にして注射し或いはカップルセル化して使用することが好ましい。本発明による組成物の投与量は使用される賦形剤やマトリックスなどの担体の種類と患者の形成された骨の重量、骨損傷部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別およびダイエット、疾患の重症度、投与時間、およびその他の臨床的要因を考慮して調節できるため限定されないが、通常公知の有効量は骨の重量を考慮して適正量を連続してまたは分割して投与し、骨の成長を観察して追加投与を決定することができる。
【0051】
実施例
以下、本発明を具体的な実施例によってさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想と範囲内において様々な変形または修正を加え得るのは、当業者には明白なことである。
【0052】
特に、下記実施例では、TRPを構成するTRDとしてhBMP2およびhBMP7のみを例示したが、hBMP3、hBMP4、hBMP6、hBMP14(MP−52)などのヒト由来BMPだけでなく、マウス、牛、豚などの哺乳類およびその他の高等動物由来のBMPも使用することができるのは、当業者には自明なことである。BMPs以外にもTGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド(β-amyloid)、ADAMs(a disintegrin and metalloproteinase-like)、Eda−1(エクトディスプラシン−A:ectodysplasin-A)などのTNF−α群、MT1−MMP(膜型マトリックスメタロプロテイナーゼ:membrane type-matrix metalloproteinase)とMMP−2を含むMMPs群、インスリン様成長因子−1(IGF−1)などのポリペプチドを使用することもできるのは、当業者には自明なことである。
【0053】
また、下記の実施例では、TRPを構成するFADとしてBMPのプロドメインのみを例示したが、プロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRDを活性化させる限り、それに限定されるものではないことも、当業者には自明なことである。
【0054】
実施例1:[TAT−hBMP2]融合ポリペプチドの製造
BMP/TGF−β群タンパク質は、一つのジスルフィド結合(disulfide bond)によって2つの同一のペプチドが互いに連結されたダイマー(dimer)から構成される。この際、それぞれのペプチドは、BMPの種類に応じて120〜140個のアミノ酸から構成され、各BMPsの内部に存在する7個のシステイン端末基のうち一つが別のペプチドの同一部位とジスルフィド結合を形成することにより、ダイマー(dimer)を構成し、残り6個のシステインは同一のアミノ酸内で3つのジスルフィドボンドを形成して(intrachain disulfide bond)独特な3次元構造を持つ(Proc. Natl. Acad. Sci., 93:878, 1996; J. Bone Joint Surg., 83:S1, 2001)。この際、BMP2は114個のアミノ酸、BMP7は139個のアミノ酸、TGF−β2とβ3は112個のアミノ酸から構成される。図1はこれらのアミノ酸配列と3次元構造の模式図を示し、図2は既に公知のBMP2の3次元構造を示す(Eur. J. Biochem., 237:295, 1996; J. Mol. Biol., 287:103, 1999)。BMP/TGF−βの内部の7個のシステインの位置が全て保存されていることからみて、システインが3次元構造に重要な役割を果たすことが分かる。
【0055】
従って、従来の公知のhBMP2にPTDを結合させて融合タンパク質を製造し、これを細胞内に投与する場合、既によく知られているように、この融合タンパク質は、細胞膜受容体の助けなしでも細胞膜を透過して、HSPs(ヒートショックプロテイン:heat shock protein)などによって生物学的活性を持つタンパク質にリフォールディング(refolding)されるものと期待することができる(Nature Med., 4:1449, 1998; Science, 285:1569, 1999)。
【0056】
従って、本実施例では、配列番号:28と29のプライマーを用いてSaos−2細胞(American Type Culture Collection、ATCC HTB−85)のmRNAを鋳型として用いたRT−PCRによって配列番号:1のアミノ酸配列を持つhBMP2をコードする遺伝子を増幅した。バクテリア発現ベクターにクローニングするために、各プライマーの5’に制限酵素KpnI部位(5’-ggtacc-3’)を追加した。以下の実施例においてもクローニングのためのプライマーはいずれも制限酵素KpnI部位を追加して利用した。
【0057】
配列番号: 28: 5'-caa gcc aaa cac aaa cag cgg aaa-3'
配列番号: 29: 5'-ttt gct gta cta gcg aca ccc aca-3'
【0058】
前記増幅されたhBMP2遺伝子をTAクローニングベクター(Invitrogen、Inc)に挿入し、GenBankの塩基配列(NCBI、NM_00120)と比較して、前述した114個のアミノ酸が全て含まれたことを確認した。前記クローニングされたhBMP2遺伝子をpRSETバクテリア発現ベクター(Invitrogen、Inc)のKpnI部位に再びクローニングし、前記hBMP2遺伝子の5’前にTAT(YGRKKRRQRRR:配列番号:27)塩基配列を挿入した後、その前にX−press(Invitrogen、Inc)タグ(tag)と、分離・精製のための6個のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列と開始塩基配列のATGを挿入してBMP2の発現のための組み換え発現ベクターを製作した(図7)。この際、TATの挿入されないベクターを陰性対照群として使用した。
【0059】
前記製作された組み換えベクターを熱衝撃(heat shock)方法によって大腸菌BL21(Invitrogen Inc.)に導入し、37℃で2〜3時間培養した後、IPTG(isopropylthio-galactoside)1mMを添加し、2〜18時間追加培養してTAT−BMP2の発現を誘導した。
【0060】
前記培養物を遠心分離し、ペレットを回収した。上清とペレット(cell pellet)に8Mの尿素溶液を添加してBMPの2次元および3次元構造を除去した後、ニッケル−チタニウムビーズ(Qiagen)を添加してTAT−BMP2をビーズに結合させた後、これを同一の溶液で3回洗浄し、イミダゾール(Imidazole)と高塩濃度緩衝溶液(high salt buffer)を用いて溶出し、精製されたTAT−BMP2を得た。
【0061】
図8は形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質発現を誘導する以前と以後の総タンパク質を電気泳動によって確認したものである。ここで、矢印はIPTGに誘導されたTAT−BMP融合タンパク質を示し、レーン1は誘導されていないTAT−BMP2、レーン2はIPTGに誘導されたTAT−BMP2、レーン3は誘導されていないBMP2(w/o TAT)、レーン4はIPTGに誘導されたBMP2(w/o TAT)を示す。図示の如く、IPTGの添加によって融合タンパク質の生成を誘導した場合、対照群に比べてTAT−BMP2融合タンパク質がさらに多く生成されることを確認することができた。
【0062】
図9は前記精製されたTAT−BMP2とBMP2(w/o TAT)を抗X−press抗体を用いたウエスタンブロットによって確認したものである。ここで、レーン1はTAT−BMP2、レーン2はBMP2(w/o TAT)を示す。図示の如く、TATが付加された場合(〜20kDa)は、付加されていない場合(〜18kDa)に比べて、分子量がやや増加することが分かった。前記結果より、TAT−hBMP2融合ポリペプチドがうまく製造されたことを確認することができた。
【0063】
前記製造されたTAT−BMP2が細胞内に透過されるかを確認するために、1次培養された歯肉繊維芽細胞(gingival fibroblast)にTAT−BMP2を4nMの濃度で2時間処理した後、細胞を得て抗X−press1次抗体(Invitrogen、Inc)を用いてウエスタンブロットを行った。その結果、図10に示すように、TAT−BMP2は2時間以内に大部分細胞内に透過されたことが分かった。TATがない場合には細胞内に透過されなかった。レーン1はTATのない4nMのBMP2を2時間処理したもので、レーン2〜6は同じ濃度のTAT−BMP2をそれぞれ0時間、15分、30分、1時間、2時間処理し、細胞にあるTAT−BMP2の発現を抗X−press抗体を用いてウエスタンブロットしたものである。レーン7はウエスタンブロット陽性対照群としてTAT−BMP2を10ng使用した。
【0064】
細胞内に導入されたTAT−BMP2が生物学的活性を持つBMP2に変化し、これらが骨細胞分化を誘導するかを調べるために、同一の細胞に2nMのTAT−BMP2を48時間間隔で投与し、1週後にアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定し、2週間培養してvon Kossa染色を行って石灰化物質の形成を観察した。この際、TATのないBMP2を陰性対照群として使用し、市販中のrhBMP−2を陽性対照群として使用した。図11はALP活性度を示すものであり、陰性対照群(N/C)は1次培養された繊維母細胞に培地のみを1週間処理したものであり、rhBMP−2は市販中のBMP2を2nMの濃度で1週間処理したものであり、TAT−BMP−2は本実施例によるTAT−BMP−2を2nMの濃度で1週間処理したものであり、TAT(−)BMP−2はTAT−BMP−2からTATを削除したものである。図12はvon Kossa染色で石灰化物質の沈着を観察したものである。図11および図12に示すように、市販されるrhBMP−2とは異なり、本実施例によるTAT−hBMP−2は生物学的活性を持たないことが分かった。
【0065】
実施例2:[TAT−FAD−hBMP2]融合ポリペプチド(TRP−1)の製造
実施例1で述べたように、hBMP2はジスルフィド結合によって固有な内部3次元構造とダイマーを形成することにより、生物学的活性を持つ。ところが、実施例1から分かるように、TATとhBMP2とが融合したタンパク質は、うまく細胞内に透過されるにも拘らず、生物学的活性、すなわち骨細胞分化を誘導しないことが分かった。これは、分泌されて生物学的活性を持つタンパク質の場合、従来のPTDと融合したタンパク質(Trends Cell Biol., 10:290, 2000; Curr. Prot. Pept. Sci., 4:97, 2003)とは異なり、HSPsなどによるアミノ酸の再構成(restructuring)のみでは活性を示すのに十分でないことを意味する。
【0066】
BMPsとTGF−βは、細胞内のリボソーム(ribosome)で生合成されるとき、400個以上のアミノ酸から構成された前駆体(precursor)の形で存在する。合成されたアミノ酸は、N−末端部分に存在するシグナルペプチド(signal peptide)によってゴルジ複合体(Golgi complex)、エンドソーム(endosome)などに移動し、これらは再びフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって切断および活性化されて細胞外に分泌される(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002; J. Cell Biol., 144:139, 1999)。前記ゴルジ複合体などで翻訳後修飾ないし活性化過程(post-translational modification)を経るが、この際、アミノ端末部位に位置したシグナルペプチドとプロドメインが決定的な役割を果たす(Mol. Biol. Cell, 15:5012, 2004)。この過程で、BMP前駆体は他の分泌タンパク質と類似にフューリン切断部位(−RSKR−)がフューリン(furin)によって切断されて成熟BMP部分に活性化された後で分泌される(Constam, D.B. & Robertson, E.J., J. Cell Biol., 144:139, 1999; Cui, Y. et al., Genes & Development, 15:2797, 2001)。ところが、前記論文には、BMP前駆体の細胞内投与方法については何の言及もないうえ、特にPTDと融合した形でBMP前駆体を細胞内に導入させることについては示唆されたこともない。
【0067】
フューリンなどのプロタンパク質転換酵素としては、PC7、PC5/6A、PC5/6B、PACE4、PC1/3、PC2、PC4などが知られている(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002)。これらは大部分の細胞内小器官、特にゴルジ複合体、エンドソーム(endosomes)、分泌顆粒(secretory granule)に豊富に存在し、多様なタンパク質の活性化および分泌だけでなく、様々な感染性疾患の活性化にも重要な役割を行う。フューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって活性化されるヒト生体タンパク質としては、BMPs/TGF−βの他にβ−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(a disintergrin and metalloproteinase-like)、Eda−1(ectodysplasin-A)などのTNF−α群、MT1−MMP(membrane type-matrix metalloproteinase)とMMP−2を含むMMPs群、IGF−1などがある(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002)。
【0068】
特に、BMPsは、細胞内で自然に生合成される場合、BMPs前駆体のプロドメインにある一つまたは二つのフューリン切断部位がBMPsの活性化に寄与するものと知られている(J. Cell Biol., 144:139, 1999; Genes Dev., 15:2797, 2001)。ヒトBMP2の場合、プロドメインの内部に1〜2個のフューリン切断部位(RXKR、R=Arg、K=Lys、X=basicアミノ酸を除いた他のアミノ酸)が存在し、PTD−BMP2融合タンパク質の活性化と分泌にこれらが重要な役割をするものと推論した。これを確認するために、本実施例では、実施例1のTAT−hBMP2に配列番号:14のアミノ酸配列を持つフューリン切断部位含有FADを追加してTAT−FAD−hBMP2の構造を持つポリペプチドを製造した。
【0069】
まず、前記FADをコードする塩基配列を追加するために、配列番号:30と31のプライマーを用いて、配列番号:1のhBMP2をコードする塩基配列と配列番号:14のアミノ酸配列を持つFADをコードする塩基配列を全て持つDNAを実施例1と同様の方法で増幅した。前記増幅されたDNAの塩基配列を確認した後、実施例1と同様の方法でバクテリア発現ベクターにクローニングした。
【0070】
配列番号: 30: 5'-gag ttt ttc cat gtg gac gct ctt-3'
配列番号: 31: 5'-ttt gct gta cta gcg aca ccc aca-3'
【0071】
前記形質転換された大腸菌を実施例1と同様の方法で培養および精製してTAT−FAD−hBMP2(TRP−1)を得た。すなわち、培養物でTRP−1が生成された大腸菌を遠心分離した後、上清とペレット(cell pellet)に8Mの尿素溶液を添加してBMP2の2次元および3次元構造を除去し、ニッケル−チタニウムビーズ(Qiagen)を添加してTRP−1をビーズに結合させた後、これを同一の溶液で3回洗浄し、イミダゾール(Imidazole)と高塩濃度緩衝溶液(high salt buffer)を用いて溶出し、精製されたTRP−1を得た(図3)。
【0072】
一方、シグナルペプチドとプロドメイン、フューリン切断部位の重要性を確認するために、前記製作された発現ベクターを鋳型とし、それぞれ配列番号:32と33(ΔSig)、配列番号:34と35(ΔPro)、配列番号:36と37(R283A)のプライマーを用いてそれぞれの削除(deletion)、または突然変異ベクターを製作した。その模式図は図13に示した。
【0073】
配列番号: 32: 5'-tcc acc atg gcc ggt acc ctc gtt ccg gag ctg ggc-3'
配列番号: 33: 5'-gcc cag ctc cgg aac gag ggt acc ggc cat ggt gga-3'
配列番号: 34: 5'-tcc acc atg gcc ggt acc gat gga aaa ggg cat cct-3'
配列番号: 35: 5'-agg atg ccc ttt tcc atc ggt acc ggc cat ggt gga-3'
配列番号: 36: 5'-ctc cac aaa aga gaa aaa gct caa gcc aaa cac aaa cag-3'
配列番号: 37: 5'-ctg ttt gtg ttt ggc ttg agc ttt ttc tct ttt gtg gag-3'
【0074】
前記製作されたそれぞれの発現ベクターで大腸菌を形質転換させた後、TRP−1と同一の培養・精製過程を経て多様なTRP−1変異体を得た。図13において、TRP−1はTAT−hBMP2にFADを追加した本実施例によるTAT−FAD−hBMP2を示し、Δ(Sig)はTAT−FAD−hBMP2からシグナルペプチド(配列番号:14のアミノ酸1〜24)部位を削除したものであり、Δ(FAD)はTAT−FAD−hBMP2からTAT−hBMP2と2番目のフューリン切断部位のみを持つようにN−末端部位のFAD(配列番号:14のアミノ酸1〜269)を削除したものであり、R283AはTAT−FAD−hBMP2から2番目のフューリン切断部位のArgをAlaに突然変異させたものを示す。各発現ベクターのN末端側には実施例1と同様にTATドメイン、X−press tagなどが含まれており、各ベクターの製作後に塩基配列を確認した。
【0075】
次に、前記製造されたTRP−1およびその変異体をそれぞれ同一の細胞に投与した。すなわち、各組み換えタンパク質を1次培養された繊維芽細胞に2nMで2時間処理した後、細胞を得て抗X−press抗体でウエスタンブロットした(図14)。その結果、図14に示すように、TRP−1およびその変異体が全て細胞内に透過されて発現されることを確認することができた。
【0076】
実施例3:プロタンパク質転換酵素によるTRP−1の切断および活性化
本発明による不活性TRP−1がフューリンによって切断され、細胞内で活性化されるかを調べるために、実施例2で製造されたTRP−1を組み換えフューリンタンパク質(Sigma、米国)を用いて試験管で切断した。その結果、図15に示すように、TRP−1は試験管でフューリンによってうまく切断されることが分かった。
【0077】
また、本発明による不活性TRP−1が細胞内でフューリンによって活性化されるかを確認するために、フューリン抑制タンパク質であるα1−PDX(α1 antitrypsin Portland) (Proc. Natl. Acad. Sci., 95:7293, 1998)発現ベクターを用いて細胞内のフューリンを抑制した。本発明による不活性TRP−1は、細胞内に導入された以後、生物学的活性を持つタンパク質に転換されるので、TRP−1投与の後一定の時間が経つと、細胞内に初期に導入されたTRP−1が益々減少する。したがって、α1−PDXの発現を誘導してフューリンを抑制した場合、残存TRPの量が増加することを予想することができる。
【0078】
その結果、図16に示すように、本発明のTRP−1は、α1−PDX発現(フューリン酵素抑制)によって半減期が増加した。すなわち、本発明のTRP−1を投与した場合、4時間後(星印)の対照群に比べて、α1−PDX投与群で半減期が増加した。その結果より、細胞内に投与されたTRP−1がフューリン酵素によって切断および活性化されることを確認することができた。
【0079】
実施例4:TRP−1の活性化時のFADの重要性
実施例2と3を通じて、TRP−1が細胞内でフューリンによって切断され活性化されるということを確認した。よって、TRP−1が細胞内に投与された後、生物学的活性を示すことには、FADとフューリン切断部位が重要な役割を行うことを予想することができる。
【0080】
これを確認するために、実施例2で得たTRP−1およびその変異体を1次培養した繊維芽細胞に投与し、ALP活性と石灰化物質の沈着を観察した(図17)。TRP−1およびその変異体に対して、実施例1と同様の方法でアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定した結果、図17に示すように、TRP−1(TAT−FAD−hBMP2)は高いALP活性を示し、シグナルペプチドの削除されたTRP−1変異体[Δ(Sig)]においてもTRP−1と類似し或いは却ってさらに高い活性を示した。その結果は、TATとFADを用いたBMP2の活性化にシグナルペプチドが必須でないことを示す。ところが、TAT−hBMP2に2番目のフューリン活性化部位のみを含む変異体[Δ(FAD)]およびTRP−1のフューリン切断部位の一部を突然変異させた変異体(R283A)の場合には生物学的活性がないことを確認することができた。
【0081】
また、前述した方法でTRP−1およびその変異体をそれぞれ2週間処理し、von Kossa染色して石灰化物質の沈着を観察した結果、図18に示すように、前記ALP活性度結果と類似の結果を示した。ここで、rhBMP−2は市販中のrhBMP−2を同じ濃度で処理して陽性対照群として使用したものであり、何にも処理せず培地のみを使用したものを(N/C)陰性対照群として使用した。このような結果は、TAT−FAD−hBMP2組み換えタンパク質が細胞内に投与されて生物学的活性を持つようにするためには、自然に生合成されるhBMP−2またはrhBMP−2の場合とは異なり、リボソーム(ribosomes)からゴルジ複合体への移動過程は不要であるが、フューリン切断部位を完全且つ正確に持っていなければならないことを意味する。
【0082】
本実施例を介して、本発明のTAT−FAD−hBMP2融合ポリペプチドは、PTD、FAD、TRD(本実施例ではhBMP2)の3ドメインから構成されるポリペプチドのうちいずれか一つのドメインがない或いは欠陥を持つ場合、人体に投与しても所望の薬理効果を発揮することができないことを確認した。このようなTRP−1の薬理作用に対するメカニズム解析(図6)が完全なものでないこともあるが、骨、軟骨、或いは多様な種類の組織再生を目的として不活性状態のBMP類あるいはTGF−β類のポリペプチドを人体に投与する場合、本発明によるTRP−1が従来の公知の製品に比べて非常に有用な薬理効果と革新的な商業的価値を示すものと期待される。すなわち、TAT−FAD−rhBMP−2は、従来の公知のBMP類あるいはTGF−β類とは全く異なる新しい薬理作用の概念の下に設計され、新しい方法で製造されたので、これをTRP−1と命名した。
【0083】
実施例5:TRP−2[TAT−FAD−BMP7]の製造
実施例4に示すように、BMPsおよびTGF−βなどの分泌タンパク質がPTDと融合する場合、全長を持つだけでは不十分であり、生体で生合成されるとき、形成される前駆体(precursor)のフューリン切断および活性化部位を十分持っていなければならない。ヒトのBMP7は骨および軟骨細胞の分化を促進し、最近では、同一の遺伝子群であるTGF−βの拮抗剤として作用して腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を抑えるものと知られている(Nature Med., 9:964, 2003; J. Clin. Invest., 112:1776, 2003)。
【0084】
本実施例では、配列番号:38と39のプライマーを用いて、配列番号:19のFADおよび配列番号:6のhBMP7を含むアミノ酸配列をコードする塩基配列を実施例2と同様の方法で増幅した。前記増幅物の塩基配列をGenBankで確認(NCBI、NM_001719)し、実施例2と同様の方法でバクテリア発現ベクターにクローニングして組み換えポリペプチドを製造し、これをTRP−2と命名した。
【0085】
配列番号: 38: 5'-ggc gcg atg cac gtg cgc tc ctg -3'
配列番号: 39: 5'-agg gtc tga att ctc gga gga gct -3'
【0086】
図19は、形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質発現を誘導する以前と以後の総タンパク質を電気泳動によって確認したものである。ここで、矢印はIPTGに誘導されたTRP融合タンパク質を示し、レーン1は誘導されていないTRP−1、レーン2はIPTGに誘導されたTRP−1、レーン3は誘導されていないTRP−1(w/o TAT)、レーン4はIPTGに誘導されたTRP−1(w/o TAT)、レーン5は誘導されていないTRP−2(w/o TAT)、レーン6は誘導されたTRP−2(w/o TAT)、レーン7は誘導されていないTRP−2、レーン8はIPTGに誘導されたTRP−2を示す。図示の如く、IPTGの添加によって融合タンパク質の生成を誘導した場合、対照群に比べてTRPsがさらに多く生成された。
【0087】
図20は、前記精製されたTRPsを抗X−press抗体を用いたウエスタンブロットによって確認したものである。ここで、レーン1はTRP−1、レーン2はTRP−1(w/o TAT)、レーン3はTRP−2(w/o TAT)、レーン4はTRP−2を示す。図示の如く、TATが付加された場合は、付加されてない場合に比べて分子量がやや増加した。このことより、TRPs融合ポリペプチドがうまく製造されたことを確認することができた。
【0088】
実施例6:TRP−1とTRP−2の細胞内への導入
本実施例では、まず1次培養した歯肉の繊維芽細胞(gingival fibroblasts)に、実施例2と5で精製されたTRP1−およびTRP−2を4nM処理し、細胞と培地にそれぞれ存在するTRP−1およびTRP−2の発現程度を比較して細胞内導入の有無を調べた。
【0089】
その結果、図21に示すように、TRP−1は細胞膜を透過して細胞内に移動した。すなわち、1次培養された歯肉の繊維芽細胞に4nMのTRP−1を処理し、細胞と培地にそれぞれ存在するTRP−1の発現程度をウエスタンブロットした結果、TRP−1は1時間以内に大部分細胞内に移動し、6時間以後には培地に殆ど残っていなかった。ところが、TATのない対照群の場合には細胞内に全く入らなかった。また、同一の方法でTRP−2を細胞に投与した結果、図22に示すように、TRP−2も2時間以内に細胞膜を透過して細胞の内部に移動したが、TATのない対照群の場合には細胞内に全く入らなかった。
【0090】
実施例7:TRPsによる活性化BMPの分泌とPTDの重要性
本実施例では、TRPsが細胞内に導入された場合、前記細胞で活性化されたBMPが分泌されるか否かを確認するために、TRP−1を細胞内に導入し、48時間以内に活性化BMP2の分泌の有無を測定した。その結果、図23に示すように、細胞内に入ったTRP−1は、48時間内に活性化されたBMP2を分泌することが分かった。この際、陽性対照群として、市販される活性化BMP2のrhBMP−2を使用した。
【0091】
また、本発明のTRP−1を細胞内に導入し、1次培養された繊維芽細胞の骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認することにより、骨細胞分化および骨再生の効果を調べた。繊維芽細胞を1週間培養しながらrhBMP−2とTRP−1をそれぞれ2nMの濃度で2週間処理し、1週後、von Kossa染色処理して肉眼で観察した結果、図24に示すように、細胞培地のみを用いた陰性対照群(N/C)とTATのないTRP−1[TRP−1(TAT−)]の場合、骨細胞の分化と石灰化物質の形成を観察することができなかったが、TRP−1と市販中のrhBMP−2の場合には繊維芽細胞内で骨細胞の分化と石灰化物質の形成を確認することができた。
【0092】
しかも、同一の方法で繊維芽細胞を1週間処理し、骨細胞分化マーカーとして用いられるアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定した結果、図25に示すように、本発明のTRP−1と市販中のrhBMP−2が同程度のALP誘導効果を示した。
【0093】
一方、市販される活性化BMP2(rhBMP−2)の力価と本発明のTRP−1の力価を比較するために、1次培養された繊維芽細胞を1週間培養し、それぞれTRP−1およびrhBMP−2で処理した後、von Kossa染色処理して肉眼で観察した。その結果、図26に示すように、本発明のTRP−1と市販中の活性rhBMP−2は同程度の薬効(potency)を示すものと確認することができた。具体的には、0.5nM以上の濃度では市販されるrhBMP−2の力価と本発明によるTRP−1の力価とが類似であった。
【0094】
実施例8:細胞膜透過後のTRPsの活性化半減期
本実施例では、細胞内に透過されて入ったTRPsがHSPsなどによるタンパク質再配列とフューリンによる活性化過程を経て、活性BMPに分泌されることを確認するために、投与されたタンパク質の活性化過程半減期を調べた。このために、フューリン活性の高い293細胞株(ATCC CRL−1573)に本発明によるTRP−1を投与した後、実施例6と同様の方法で処理し、TRP−1の発現程度を時間別にウエスタンブロットした。
【0095】
その結果、図27に示すように、細胞に投与されたTRP−1は、293細胞で3〜4時間の半減期を持っていた。このような半減期は、細胞によって異なり、骨原性肉腫(osteogenic sarcoma)細胞株では約6時間、1次培養された繊維芽細胞では約8時間であった。この結果より、本発明によるTRPsは、細胞内でHSPs、フューリンなどによる活性化過程を経て活性BMPに分泌されることを確認することができた。
【0096】
実施例9:TRPsの細胞膜透過と透過時温度の影響
市販中の組み換えrhBMPは細胞膜に存在する受容体を通過するが、本発明のTRPsは細胞膜を直接透過し、従来のrhBMP−2の受容体を介しての過程は温度に依存的である。本発明によるTRPsの細胞内透過が温度依存的であるか否かを確認するために、TRP−1とTRP−2を多様な温度で細胞に適用し、様々な時間に共焦点蛍光顕微鏡(confocal fluorescent microscope)で観察した。この際、本発明のTRP−1またはTRP−2を10nMの一定の濃度の下に、図28に示すように、多様な温度と時間別に処理した。透過されたTRPsを、1次抗体として抗X−press抗体(Invitrogen)、2次抗体としてAlexa−Fluoro−488(Invitrogen)と反応させ、核の染色のためにFar−Red TOTO−3(Molecular Probes)を使用した。図28において最も上方の写真はTRP−1が37℃で細胞質内に入ったことを示し、Mergeは同一断面のTRP−1と細胞核の映像を重畳したものである。また、中間写真はTRP−1を5分間、TRP−2を5分および60分間処理し、前述した方法で重畳したイメージを示すものである。最も下方の写真はTRP−1とTRP−2を4℃で60分間処理し、細胞内に導入されたTRP−1とTRP−2の重畳イメージを示すものである。
【0097】
その結果、図28に示すように、TRP−1は37℃で投与した後、5分以内に細胞内に透過されて入り込み、1時間程度経過の後、TRP−1とTRP−2は一部の核にもあったが、大部分の細胞質内に存在した。しかも、25℃と4℃においても37℃と類似の透過パターンを示した。その結果より、本発明によるTRPsの細胞膜透過は温度に非依存的であることが分かった。
【0098】
実施例10:細胞内に導入されたTRPsとF−actinの特異的な結合の有無
上述したように、細胞内に透過された本発明によるTRPsは、細胞内で線形(linear)の特定のパターンを持って存在することを示した。本実施例では、本発明によるTRPsが細胞膜の透過後、特定の小器官または構造に特異的に存在するかを調べるために、前記構造と類似の配列を持つF−actinストレスファイバー(F-actin stress fiber)に対する特異結合因子であるファロイジン(phalloidin)免疫蛍光染色を行い、共焦点蛍光顕微鏡で観察した(図29)。この際、TRP−1とTRP−2は実施例9と同様の方法で蛍光染色し、F−actin特異的染色のためにファロイジン−Alexa−594(Molecular Probes)を使用した。図29において、重畳写真の微弱な青色イメージは細胞核の下端部位を示す。
【0099】
その結果、図29に示すように、本発明のTRP−1およびTRP−2は、投与後に細胞のF−actint同一の配列を持つだけでなく、同じ位置に存在することが分かった。これは、本発明のTRPsが細胞内に透過された後、F−actinに特異的に反応して結合することを示す。この結果より、TRPsが細胞内に透過されると、細胞質内に無作為に分布するのではなく、F−actinに特異的に結合し、細胞内の多様な活性化過程とフューリン切断過程を経て活性化BMPに転換されることが分かった。
【0100】
実施例11:動物実験モデルにおけるTRPsによる骨形成誘導
実施例1〜10において、本発明のTRP−1およびTRP−2が細胞膜を透過してフューリンによって活性化されて分泌され、これらが骨細胞の分化と石灰化物質の形成を誘導することを示した。本実施例では、本発明によるTRPsが生体内で骨の形成を誘導するかを調べるために、ラットの頭蓋骨に自然治癒不可能な損傷(8mm)を被らせた後、本発明によるTRP−1を市販中のrhBMP−2と比較投与して骨形成誘導を観察した(図30)。この際、自然治癒不可能な損傷を被らせるために、ラット(rat)の頭蓋骨に直径8mmのトレフィン(trephine)を用いて骨損傷部を形成した。陰性対照群には第1型コラーゲンを、陽性対照群(rhBMP)には市販中の組み換えBMP2を第1型コラーゲンに混合して利用し、本発明のTRP−1を陽性対照群と同一の方法で投与した。rhBMP−2とTRP−1は、それぞれ10nmole投与した。BMP投与2週後に各実験群の組織を採取して10%のホルマリンに24時間固定し、4μmの切片をヘマトキシリン/エオシン染色した後、光学顕微鏡で観察した。図30において、矢印の両方は骨損傷部位の末端部を示し、最も下方のボックスはTRP−1による骨形成部位を拡大したものである。
【0101】
その結果、図30に示すように、本発明のTRP−1投与2週後に生体内で旺盛な骨細胞分化と骨形成誘導を確認することができた。また、同量のTRP−1を投与した場合、市販中のrhBMP−2と比較して、より優れる力価または少なくとも類似の力価を示した。
【0102】
実施例12:TRPsの細胞毒性
実施例1〜11において本発明によるTRPsを細胞または組織に投与したときの作用メカニズムと応用可能性を提示した。最後に、本発明のTRPsを過量投与した場合の細胞毒性を調べるために、市販中のrhBMPと共に200nMまで濃度を高めながら細胞毒性を検査した。この際、TRP−1と組み換えBMP2を1次培養された繊維芽細胞に各濃度別に投与し、72時間後、生存した細胞の数を測定した(図31)。その結果、図31に示すように、TRP−1を200nM投与した場合にも細胞毒性を全く示さなかった。
【0103】
以上、本発明の内容の特定な部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的記述は好適な実施例に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものでないことは明白である。例えば、本発明のTRP−1を人体に投与する場合、既に立証したように、骨および軟骨の形成を促進するのに有用であるが、本発明のTRP−2を人体に投与する場合、骨または軟骨の形成促進だけでなく、場合と投薬条件に応じて腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を解消することにも有用であるものと期待される。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上詳しく述べたように、本発明は、従来の活性タンパク質とは全く異なる薬理メカニズムを持つ不活性ポリペプチドを提供するという効果がある。本発明によるTRPは、生体内に投与される前までは不活性状態であるが、生体内で活性化される新しいメカニズムを持っており、細胞膜受容体との結合を3次元構造に維持するための追加の装備または費用が不要である。また、生産工程が簡単であり、分離・精製が非常に容易であって生産コストが低く、保管、取り扱いおよび投与過程も便利であってrhBMP類などの従来の活性タンパク質を代替することができるものと期待される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD:protein transduction domain)、一つ以上のプロタンパク質転換酵素(proprotein convertase)切断部位を有し且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD:tissue regeneration domain)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD:furin activation domain)、並びに前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRDを含有する不活性組織再生ポリペプチド(TRPs:tissue regenerative polypeptides)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨形成タンパク質(Bone Morphogenetic Proteins:BMP)は、脱無機質化条件でコラーゲンまたは生分解性高分子などと共に使用する場合、哺乳類または霊長類で骨欠損の治癒を促進し、特に、骨細胞から分泌されて隣接細胞膜の受容体を介して骨の形成を誘導するものと知られている。hBMPは、互いに類似性を持つタンパク質群であって、現在までhBMP2〜hBMP15などの14種以上が知られており、その中でもhBMP2、3、4、6、7および14は骨の再生を誘導する効果を持つものと報告されている。特に、hBMP2は現在まで最も確実な骨形成因子タンパク質であって、最近、このhBMP2タンパク質の医学的効果と適用について多くの研究が行われている。BMP7は、TGF−β1の拮抗作用によって臓器の繊維化を抑制するうえ、臓器の再生を誘導するものと知られている(Nature Med., 9:964, 2003; J. Biol. Chem., 280:8094, 2005).。BMP14(GDF−5、growth/differentiation factor-5:MP−25)は、人体または哺乳類動物に投与する場合、皮膚の傷を効果的に治癒する機能と、胃潰瘍または十二指腸潰瘍の治癒を助ける効果があるものと知られている(US 6,764,994; Nature, 368:639, 1994; Exp. Cell Res., 235:218, 1997; Neurosurg Focus, 13:1, 2002; US 6,531,450)。肝臓又は腎臓の硬変の場合、BMPはTGF-βを中和することも知られ、繊維組織の形成を阻害し、正常組織の回復を誘導する。すなわち、BMPは、その用語的定義とは異なり、骨または軟骨の形成促進機能だけでなく、皮膚の再生、胃腸組織の再生再活機能も持つことができ、肝硬変または腎臓硬変の場合にはTGF−βを拮抗して繊維組織の形成を抑制し、正常組織の回復を誘導する機能も知られている。
【0003】
BMP類を製造する方法として、初期には脱灰(demineralized)された動物骨組織から自然塩(natural salt)を用いて抽出する方法(US 4,294,753)が試みられてきたが、効率が非常に低く且つ量産が不可能であるという問題点があった。1990年代初めに、BMP遺伝子で形質転換されたCHO細胞を培養し、活性化された組み換えhBMP2を分離・精製する方法(Proc. Natl. Acad. Sci., 87:2220, 1990)が開発されて以来、量産が可能になった(US 4,968,590; 5,106,626; 5,106,748; 5,166,058; 5,187,076; 5,187,623; 5,208,219; 5,258,494; 5,266,683; 5,284,756; 5,399,346; 6,593,109)。
【0004】
ところが、形質転換されたCHO細胞を用いた組み換えhBMP2およびhBMP7の製造方法は、活性を持つrhBMP2およびrhBMP7を得るために大量のCHO細胞培養を必要とし、分離・精製段階が複雑であり、生産コストが非常に高いという問題点、および分離・精製過程と保管、薬剤化処理、投薬過程中で活性の減少が伴うという共通の問題点を持っている。このような動物細胞培養による組み換えBMP類の製造方法に対する欠点を一部改善するために、最近、バイオファーム(Biopharm)社は、rhBMP14(MP−52)を組み換え大腸菌で製造する方法を開発し、その製造コストを低下させた例がある(US 2003/0181378; WO 96/33215)。しかし、前記rhBMP14も、活性を持つタンパク質の形に分離・精製する工程が複雑で不便であるうえ、保管、取り扱い及び投薬段階における、製造された活性タンパク質の活性低下の問題は依然として解決されていない。
【0005】
また、Biopharm社の如く、組み換え大腸菌方式を用いて、従来のように活性化されたタンパク質を生産する場合には、BMP類の生化学的構造によってその選択に制約がある。すなわち、Biopharm社の方式でrhBMP14のような構造のタンパク質は製造可能であるが、活性化されたrhBMP2やrhBMP4、rhBMP7などのような構造のBMP類を実用的に製造することは困難であると予測される。
【0006】
商業的に流通し、医学的にスパインフュージョン(Spine Fusion)用などに投薬されているrhBMP−2の場合、2005年現在、ミリグラム(mg)当り数千USドルの高い価格で販売されている。よって、世界的に数多くのSpin Fusion施術必要患者には勿論、rhBMP類が皮膚傷再生用、胃潰瘍再生用、肝硬変解消用などの様々な医学的潜在効用価値を持つにも拘らず、高いコストと活性消失による保管・取り扱い・投薬の不便性のため、BMP類の臨床的な使用が制限されてきた。
【0007】
したがって、当業界では、前記rhBMP類またはTGF−β類と同等以上の生医学的効用性を有しながらも、従来の公知のタンパク質に比べて製造コストが画期的に低く、分離・精製段階における非効率的不便性、保管、取り扱いおよび投薬段階における不便性および活性低下の問題を根本的に解決することができるうえ、新しい薬理メカニズムを持つ新規の生化学新薬物質の開発が切実に求められる状況である。
【0008】
そこで、本発明者らは、既存の活性タンパク質が持つ問題点を根本的に解決することができ、骨または軟骨の形成促進機能、皮膚傷再生機能、潰瘍治療機能、および/又は肝硬変などの生体組織の再生促進機能を示し、新しい生化学的構造および薬理メカニズムを持つポリペプチド群を開発するために鋭意努力した結果、製造、分離、精製、保管、処理など生体内に投薬される前までは不活性状態を維持し、生体内に投薬された以後には生体細胞内で活性化されるようにする、新しい薬理メカニズムによって骨または軟骨の形成または再生を促進し、腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ得るようにする新しい種類のポリペプチド群に着目することになった。すなわち、本発明では、細胞膜を透過させるPTD;一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性TRD(tissue regeneration domain)を細胞内で活性化させるFAD(furin activation domain);および前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRDを含有する不活性組織再生ポリペプチド(TRPs)に着目し、前記TRPがrhBMPなどの既存の活性タンパク質に比べて、その製造コストが画期的に低く、保管および取り扱いが容易であるうえ、投与が非常に簡単であることを確認するとともに、前記TRPが受容体なしで細胞内に透過されて細胞内でフューリンによって切断された後、活性化され、活性タンパク質の多量分泌によって骨の形成を促進するという新規の薬理メカニズムを持つことを確認することにより、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主な目的は、人体の骨や軟骨などの組織の形成再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ、究極的には再生を誘導するために、人体に直接投薬できるように設計された、従来の公知の活性タンパク質とは全く異なる構造、特性および薬理メカニズムを持つ不活性TRPsおよびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記不活性TRPsを含有する、骨や軟骨などの組織の形成または再生促進用組成物、および腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化または硬変解消用新薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、不活性組織再生ポリペプチド(TRP)であって(a)前記ポリペプチドを細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD)、(b)一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD)、および(c)前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRD、
を含有する不活性TRPを提供する。
【0012】
また、本発明は、TRDをコードするDNAの5’前にFADをコードする塩基配列、PTDの塩基配列、タギング(tagging)のための塩基配列、および分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列が挿入されている組み換えベクター、並びに前記組み換えベクターで形質転換されたバクテリアを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記形質転換されたバクテリアを培養して[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを発現させる段階と、(b)前記培養液を遠心分離した後、上清と細胞ペレット(cell pellet)に尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの2次元および3次元構造を除去し或いは1次元線形構造に変形させた後、[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを精製する段階とを含む、不活性TRPの製造方法を提供する。
【0014】
本発明において、前記プロタンパク質転換酵素はフューリンであることを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。例えば、PC7、PC5/6A、PC5/6B、PACE4、PC1/3、PC2、PC4などであってもよい。
【0015】
また、前記TRDは、配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができるが、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導する活性を示すタンパク質である限りは、限定されるものではない。例えば、BMPsだけでなく、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様:a disintergrin and metalloproteinase-like)、TNF−α、MMPs(matrix matalloproteinases)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)などのポリペプチドがこれに該当する。
【0016】
前記FADは、配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とすることができるが、プロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されて前記TRDを活性化させる限りは限定されるものではない。また、前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選ばれることを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
本発明による不活性TRPの製造方法において、前記精製段階は、前記ポリペプチドをニッケル−チタニウムビーズに結合させ、これを同一の溶液で洗浄した後、イミダゾール(imidazole)と高塩濃度緩衝溶液を用いて溶出することを特徴とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明による不活性TRPは、従来の活性BMP類が共通に持つ3次元的立体規則性を持っておらず、それ自体では生化学的活性を持っていないが、人体または哺乳類の生体内に投薬される場合、FADのプロタンパク質転換酵素切断部位が生体細胞内にあるプロタンパク質転換酵素によって切断されながらTRDが活性化され、前記活性化されたTRD部分が細胞外に分泌されながら期待すべき薬効を示す。本発明によるTRPは、PTD、FADおよびTRDが融合しているポリペプチド形態であることが好ましい。本発明によるTRPは、人体の骨や軟骨などの組織の形成または再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの臓器の繊維化および硬変を解消させ、ひいては元の組織の再生を誘導する機能を持つ。
【0019】
したがって、本発明はまた、前記不活性TRPを有効成分として含有しながら、従来の公知の類似用途のタンパク質医薬類とは全く異なる新しい薬理メカニズムによって組織の形成または再生を促進する新薬組成物を提供する。本発明において、前記組織は骨または軟骨であることを特徴とすることができる。また、本発明は、前記不活性TRPを有効成分として含有する、臓器の繊維化または硬変解消用新薬組成物を提供する。本発明による組成物は、TRP以外にも、その他の成長因子としてTGF−β(トランスフォーミング成長因子:transforming growth factor-β)、IGF(インスリン様成長因子:insulin-like growth factor)、PDGF(血小板由来成長因子:platelet-derived growth factor)、FGF(繊維芽細胞成長因子:fibroblast growth factor)などを適切に含むことができ、この場合、治療効果を倍加させることができる。
【0020】
本発明の他の特徴及び具現例は、以降の詳細な説明及び特許請求の範囲から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ヒトのBMP2、BMP7およびTGF−βタンパク質の構造模式図と全体アミノ酸の配列を示す。
【図2】従来の市販されているrhBMP−2の2次および3次構造を示す写真である。
【図3】本発明によるTRP−1の製造および分離・精製過程を示す。
【図4】従来のrhBMPの製造および分離・精製過程を示す。
【図5】従来のrhBMPの薬理メカニズムを示す。
【図6】本発明による不活性TRPsの薬理メカニズムを示す。
【図7】hBMP2遺伝子にTATを結合させた組み換え発現ベクターを示す。
【図8】図7の組み換え発現ベクターで形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質の発現を誘導する以前と以後の総タンパク質の電気泳動写真である。
【図9】抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたTAT−BMP2のウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図10】TAT−BMP2が細胞膜を透過して細胞内に移動することを確認したウエスタンブロット写真である。
【図11】TAT−BMP2のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を示す写真である。
【図12】TAT−BMP2と市販中のrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をフォンコーサ(von Kossa)染色処理して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認した写真である。
【図13】mRNA移動を調節するものと予想されるシグナルペプチドとフューリンによって活性化されるプロドメインをBMP2と結合させ、フューリン活性メカニズムを確認するために考案されたTRP−1変異体の模式図である。
【図14】本発明によるTRP−1およびその変異体が細胞膜を透過して細胞内に移動することを確認したウエスタンブロット写真である。
【図15】本発明によるTRP−1がフューリンによって試験管内で切断されることを示す写真である。
【図16】本発明によるTRP−1が細胞内でフューリンによって活性化されることをα1−PDXと抗X−pressのウエスタンブロットで確認したものである。
【図17】本発明によるTRP−1およびその変異体で処理された繊維芽細胞におけるALP活性度を測定したものである。
【図18】本発明によるTRP−1およびその変異体で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認したものである。
【図19】本発明による組み換え大腸菌の培養の際にIPTGでTRP−1およびTRP−2の発現を誘導する以前と以後の総タンパク質に対する電気泳動写真である。
【図20】本発明によるTRP−1とTRP−2を抗X−press抗体(anti-Xpress antibody)を用いてウエスタンブロット(western blot)した結果を示す。
【図21】本発明によるTRP−1が細胞内に導入される過程の抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図22】本発明によるTRP−2が細胞内に導入される過程の抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図23】本発明によるTRP−1で処理された繊維芽細胞における活性化されたhBMP2の分泌をウエスタンブロットで確認したものである。
【図24】本発明によるTRP−1と市販中のrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認したものである。
【図25】本発明によるTRP−1と市販中のrhBMP2−で処理された繊維芽細胞におけるALP活性度を測定したものである。
【図26】多様な濃度のTRP−1およびrhBMP−2で処理された繊維芽細胞をvon Kossa染色して骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認した写真である。
【図27】本発明によるTRP−1が細胞内に導入された後の半減期を示す、抗X−press抗体(anti-X-press antibody)を用いたウエスタンブロット(western blot)の結果を示す。
【図28】本発明によるTRP−1とTRP−2の細胞内透過と温度の影響を共焦点(confocal)顕微鏡で観察した写真である。
【図29】本発明によるTRP−1とTRP−2が細胞内に透過された後、F−actinに特異的に結合することを示す写真である。
【図30】本発明によるTRP-1が投与された実験動物で骨の形成が誘導されることを示す写真である。
【図31】本発明によるTRP−1と市販中の既存のrhBMP−2の細胞毒性を比較して示すものである。
【発明の詳細な説明および具体的な実施態様】
【0022】
本発明による不活性TRPは、従来の公知のrhBMPやTGF−βなどの活性タンパク質とは全く異なる構造の特性を持っている。すなわち、生体に投与される以前に、本発明によるTRPはそれ自体で活性を持っていないが、従来の公知のrhBMP類とTGF−β類は生化学的に活性化されており、図1および図2に示すような3次元構造を持っている(Eur. J. Biochem., 237:295, 1996; J. Mol. Biol., 287:103, 1999)。
【0023】
したがって、従来の活性rhBMP類とTGF−β類を製造するためには、著しく生産性の低いCHO細胞などの組み換え動物細胞の培養に依存しなければならないという問題がある。Biopharm社のrhBMP14(MP−52)のように、動物細胞の代わりに生産性の高い組み換え大腸菌の培養によって一部のrhBMPを製造しているが、この場合にも、製造しようとするBMPの生化学的構造に多くの制約を受ける。すなわち、活性MP−52は組み換え大腸菌を用いて製造することができるが、活性rhBMP2、rhBMP4、rhBMP7などのように、骨または軟骨の形成促進と多様な組織の再生用に人体内に投薬することが可能な他の活性BMP類または活性TGF−β類は組み換え大腸菌によって製造することが容易でない。
【0024】
一方、US2004/197867A1には、骨誘導ポリペプチドとPTD(protein transduction domain)の融合ポリペプチドおよびこれを投与して動物で骨の形成を誘導する方法を開示している。より具体的には、高いBMPを直接投与する代わりに、安いLMP-1(LIM mineralization protein-1)とPTDの融合ポリペプチドを投与すると、BMP2とBMP7のmRNA発現が誘導されることと共に、骨誘導ポリペプチドとしてLMP以外にBMP、TGF−β、SMADなども、また羅列している。ところが、細胞内でmRNAが形成されるとしても、マイクロRNA(micro RNA)を介してのmRNAの調節および干渉(interference)によって数多くのmRNAからタンパク質が形成されないことが良く知られているので(Nature, 409:363, 2001; Cell, 115:199, 2003)、LMP−1(LIM mineralization protein-1)によるBMP mRNAの増加が骨細胞分化の決定的な要因という主張は信憑性が足りない。それだけでなく、PTDを用いてタンパク質を細胞内に導入しても全てのタンパク質が活性化され、期待すべき薬効を示すのではなく(Curr. Protein Peptide Sci., 4:97, 2003)、特にBMP類のように分泌されるタンパク質の場合、細胞内に存在しながら薬効を示すタンパク質とは異なり非常に複雑な活性化過程を経て薬理作用をする。
【0025】
特に、BMPは、LMPとは全く異なる薬理メカニズムと活性化メカニズムを持つタンパク質なので、LMP−1を単にBMPで代替する場合、LMP−TATから得たものと類似の効果を示すことは実験的に確認する前には全く予測することができない。US2004/197867でのように、PTDを用いて組み換えタンパク質を細胞内に導入する場合、LMP−1またはSMADは活性化されて細胞内の遺伝子調節因子として機能する可能性があるが、BMPとTGF−βはLMP類とは異なり分泌タンパク質に属するので、細胞内活性化過程はLMPまたはSMADの場合とは全く異なるであろう(Genes Dev.,15:2797, 2001; J. Cell Biol., 144:139, 1999; Curr. Prot. Pept. Sci., 4:97, 2003; Nature, 425:577, 2003)。言い換えれば、BMP類とTGF−β類は、LMP類とは異なり、非常に複雑な翻訳後過程(例えば、細胞内プロセシング及び修飾:intercellular processing and modification)を経なくては期待すべき骨または軟骨形成促進薬効を示すことができないので、PTDをBMP類に単に結合させて生体に投与した場合、所望の生物学的機能を発揮するものと予測することはできない。それにも拘らず、US2004/197867には、BMPとPTDの融合ポリペプチドの導入によって骨の形成が促進されるという実験的根拠または言及がないだけでなく、BMP−PTDの投薬が、従来のBMP類を投薬する場合に比べてどのような付加的及び異なる効果を持つかについても何の言及もない。
【0026】
本発明者らは、従来のBMP類を人体または哺乳類動物の生体に投薬するに当り、1次的な非効率性要因が生化学的活性、すなわち3次元的立体構造に起因するという点に着目し、優先的に常温で3次元的立体規則性構造を示さない不活性ポリペプチドを製造しようとした。すなわち、細胞膜受容体の助けなしで不活性ポリペプチドを細胞内に透過させるために、TATなどのPTDに融合させて細胞膜透過を確認した。このような方法により、3次元的立体構造を持たない不活性状態のBMP−TAT融合ポリペプチドを製造して細胞に投与させた結果、後述する実施例1に示すように、前記融合ポリペプチドが細胞膜を透過して細胞内には導入されたが、所望の生化学的活性と骨または軟骨の形成促進に関する薬理効果は全く示さないことを確認した。
【0027】
かかる問題を更に解決するために、不活性状態のBMPを人体または哺乳類動物に投与するに当り、投与されるポリペプチドに細胞膜透過特性を付与するとともに、細胞内に様々に存在するフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって、人体内に投与された不活性ポリペプチドが人体内で活性化できるようにする機能を同時に付与する実用的な方法を開発することになった。すなわち、人体などの哺乳類動物の細胞膜受容体(receptor)の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするPTDとフューリンなどの生体内プロタンパク質転換酵素によって不活性タンパク質を細胞内で活性化させ得るようにするFAD、および骨、軟骨の形成または再生を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓などの繊維化および硬変を解消するなど、生体内で組織の成長または再生を誘導する機能を持つように活性化できるTRDを含有するポリペプチド(TRP)を製造し、前記製造されたポリペプチドが細胞内に透過されるだけでなく、細胞内で活性化された後で分泌されて、組織の成長促進或いは再生効果を発揮することを確認した。
【0028】
本発明によるTRPsは、組み換え大腸菌などのバクテリアの培養によるタンパク質の生化学的構造に制約を受けずに、実用的に量産することができ、生体に投与される前には生化学的に不活性状態を維持するため、従来の公知の類似用途の活性タンパク質(rhBMP類、TGF−β類など)に比べて生産コストがわずかに数十分の一であり、分離・精製過程と取り扱い、保管および投薬過程が著しく簡単で便利である。
【0029】
従来の活性BMP類はその製造方式に制限があったが、本発明では様々な構造のBMP類とTGF−β類をTRDとして含有するTRPsを組み換え大腸菌を用いて実用的で安く製造することができるという利点がある(図3)。図3は本発明によるTRP−1の製造および分離・精製過程を示し、図4は従来のrhBMPの製造および分離・精製過程を示す(US 4,968,590; 5,106,626; 5,106,748; 5,166,058; 5,187,076; 5,187,623; 5,208,219; 5,258,494; 5,266,683; 5,284,756; 5,399,346; 6,593,109)。図示の如く、従来の方法は形質転換されたCHO細胞培養によってBMPを精製・分泌させ、大規模の培養培地からherarin sepharous columnなどを用いて分離・精製する過程を経るなど分離・精製過程が複雑であり、精製収率が低いという問題点がある。これに対し、本発明の方法は分離・精製過程が非常に簡単で精製収率が高いという利点がある。すなわち、本発明によるTRP−1は、従来の公知のrhBMP−2とは異なり投薬の前には不活性状態なので、活性BMPの生産に伴う大量のCHO細胞培養が不要であり、分離・精製が単純で容易であり、その精製収率が著しく高い。したがって、本発明による不活性TRPは、従来の市販されるrhBMP−2に比べて数十分の一のコストで生産が可能であるうえ、保管および投薬が簡便であるという利点を持つ。
【0030】
本発明では、従来の公知の活性rhBMPなどが共通に持っていた高コストの問題点と、活性製品の分離・精製、保管および投薬過程の非効率的問題を根本的に解決しながら、且つ不活性ポリペプチドを人体または哺乳類動物の生体に直接投薬して従来の公知の活性タンパク質とは全く異なる新しい薬理メカニズムを持つが、従来の活性rhBMPまたはTGF−βと同等或いはそれ以上の組織形成促進または再生効果を示すことを確認した。
【0031】
本発明による不活性TRPは、従来の活性BMPやTGF−βなどとは全く異なる薬理メカニズムを持つ。すなわち、本発明による不活性TRPsを人体或いは哺乳類の生体内に投与する場合、従来の公知のrhBMP類またはTGF−β類とは全く異なる薬理メカニズムによって骨または軟骨の形成を促進し、或いは腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を解消させることができる。例えば、従来のrhBMPは、図5に示すように、細胞固有の受容体に結合し、これによるSmad信号伝達体系を介して骨形成細胞の分化を誘導する。これに対し、本発明によるTRPsは、図6に示すように、受容体と関係なく細胞膜を透過し、細胞内でHSPなどによって再構成される。その後、再構成されたTRPsが、ゴルジ複合体などにあるフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって切断され、そして活性化され、活性化されたBMPが細胞外部に分泌され、この分泌されたBMPが自己(autocrine)または隣接(paracrine)細胞の受容体に結合して骨形成細胞の分化を誘導する。
【0032】
また、本発明では、骨の形成を誘導するために試みられた従来の活性BMPを直接製造して生体内に投与した方式とは全く異なる治療方法を採用している。すなわち、PTD、FADおよびTRDが結合した不活性ポリペプチド(TRP)を組み換えバクテリアで製造した後、これを生体細胞内に投与し、前記TRPのアミノ酸構造が細胞内でHSP(熱衝撃タンパク質)などによってリフォールディングされ、フューリン(furin)などによって切断されて活性を持つBMPに転換され、この活性化されたBMPが細胞外に分泌されることにより、骨の形成を誘導する。
【0033】
本発明による不活性TRPは、細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするPTD、一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し且つ前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性TRDを細胞内で活性化させ得るようにするFAD、および前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって細胞内で活性化され、組織の成長または形成或いは組織の再生を促進するTRDを含有するポリペプチドであって、それ自体では活性を持たないが、生物体または細胞に透過された後、ほぼ全ての細胞に多量で存在するプロタンパク質転換酵素によってFADが切断され、前記TRDが活性化され、活性化されたタンパク質が細胞外に分泌されて薬効を発揮する。このような本発明によるTRPは、製造コストが高く、保管および取り扱いが容易でなく、受容体を必ず必要とする既存の活性タンパク質が持つ欠点を全て解決することができる。
【0034】
本発明では、まず、BMP遺伝子の5’部位(5’region)前にフューリン切断部位を有するBMPプロドメインの塩基配列とPTDの塩基配列を挿入し、その前にタギング(tagging)のための塩基配列、分離・精製のための4つ以上のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列、および開始塩基配列のATGを挿入して組み換えベクターを製作した。
【0035】
本発明において、前記BMP遺伝子として、配列番号:1のhBMP2または配列番号:6のhBMP7をコードする遺伝子を使用したが、これに限定されるものではない。また、前記FADとして、配列番号:14および19のhBMP2およびhBMP7のプロドメインを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、フューリンのようなプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRDを活性化させることができる限りは、BMP類およびTGF−β類のプロドメインを制限なく、使用することができる。
【0036】
また、本発明では、前記PTDとしてTAT(YGRKKRRQRRR:配列番号:27)を使用したが、これに限定されるものではない。例えば、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド(Gene Therapy, 8:1, Blackbirch Press, 2001)、mph−1−btm(米国特許2005/0147971)などのPTDを使用することもできる。また、前記タギング塩基配列としてX−pressのタグを使用したが、Flag、Myc、Ha、GSTなどを使用することもできる。
【0037】
前記組み換えベクターを製作するために、本発明では、アンピシリン(ampicillin)抵抗性を持っており、商業的に販売されているpRSETを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、選択的マーカーとしてカナマイシン(kanamycin)を持つバクテリアベクター、pcDNAなどの哺乳類細胞発現用ベクター、pPGS、pBabeなどのウイルスベクターを使用することもできる。
【0038】
次に、前記組み換えベクターで形質転換された微生物を培養して本発明によるTRPを発現させた後、前記発現されたTRPを分離・精製した。本発明で形質転換された大腸菌は、通常用いられる培地で培養することができ、融合ポリペプチドの過発現を誘導するためにIPTGを添加することが好ましい。
【0039】
本発明では、形質転換微生物として大腸菌(E.coli)を使用したが、他の種類のバクテリア、酵母、またはカビを使用することも可能であり、且つ微生物を利用せずに化学的方法で有効部位のみを合成して使用することもできる。
【0040】
前記形質転換微生物の培養によって発現された融合ポリペプチドは、GST融合タンパク質(GST-fusion protein)またはその他の通常のタンパク質の分離・精製方法を用いて分離することができる。例えば、尿素(urea)または硫酸アンモニウムの濃度勾配を用いてタンパク質の沈澱を誘導し、これを透析して塩(slat)を除去することにより、本発明による不活性TRPsを精製することができる。また、本発明では、過発現されたポリペプチドの2次元および3次元構造が不要なので、尿素を用いて2次元および3次元構造のタンパク質を不活性の1次元線形構造に転換して使用することが好ましい。
【0041】
本発明によるTRPを骨細胞、前駆細胞、幹細胞などに投与する場合、前記TRPのFADがフューリンのようなプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRD(BMP)が活性化された後、分泌される。この過程を詳細に説明すると、細胞内に透過されたTRPは、細胞内のF−actinに特異的に結合し、これらはHSP70のような因子によって3次元構造を回復し、細胞内タンパク切断酵素であるフューリンによってフューリン切断部位が切断されてTRD(例:BMP)が活性化された後、活性化されたBMPが細胞の外部に分泌される。細胞に透過された本発明のTRPは細胞の種類と活性に応じて3〜24時間の半減期を有するが、これは透過されたタンパク質が細胞に応じて様々な活性化時間を持つことを意味する。
【0042】
一方、フューリン切断部位を突然変異させた場合、活性化されたBMPが分泌されない点からみて、透過されたタンパク質の細胞内工程と活性化にフューリン切断酵素によるタンパク質修飾(protein modification)が決定的に作用することが分かった。また、生体内でBMPが作られるとき、タンパク質の細胞内移動と活性化に重要な役割を果たすシグナルペプチドが存在する。ところが、シグナルペプチドを削除しても、骨の形成において自然状態にある(wild type)BMP2と類似であり或いは却って良い効果を示すことからみて、TATを用いたBMP伝達には生体とは異なりシグナルペプチドを必要としないことを確認した。
【0043】
本発明によるTRPを0.1nM以上細胞に投与する場合、前記TRPは、濃度依存的に細胞内へ移動し、細胞内で活性化されたBMPに転換され、活性BMPを細胞外に分泌する。本発明のTRPは、細胞膜にあるBMP受容体の存在とは関係なく、1時間以内に大部分の細胞の細胞膜を直接透過し、細胞膜透過過程は受容体を経ない温度非依存的であることを確認した。また、様々な濃度のTRPを細胞に投与した場合にも、細胞毒性は観察されなかった。
【0044】
結局、本発明による不活性TRPは、活性BMPなどの3次元構造を維持する必要がなく、1次元線形構造状態で骨細胞内に透過されて活性BMPなどに転換された後、分泌されてメカニズムを示す。すなわち、従来のhBMPが直接薬効を示す反面、本発明によるTRPはin vivoでの間接的な活性化により薬効(potency)を示す。したがって、本発明による不活性TRPは、3次元構造の維持のための追加的な装備またはコストが不要であり、分離・精製が非常に容易であり、生産工程が簡単であり、生産コストが低く、医学的な効率性が増大して、従来のhBMPタンパク質の問題点を全て解決することができる。本発明によるTRPの特性を従来の活性hBMP2およびhBMP7タンパク質と比較して下記表1に示した。表1は、本発明による不活性TRPs製品の分離・精製、保管および投薬過程と特徴を従来の公知の活性rhBMP類の場合と比較したものである。
【0045】
本発明による不活性TRPは、骨が正常に形成されていない環境で骨の成長を誘導し、或いは外部衝撃の骨折による骨の損失および人工関節の固定を促進するなど、骨疾患治療用として有用である。具体的な例として、先天性、外傷、または腫瘍切除、頭蓋顔面奇形などの治療、歯根膜疾病の治療などの歯科治療に用いられて骨形成細胞の分化を誘導し、骨形成細胞の成長を刺激し、或いは骨形成細胞の分化を誘引する環境を提供する。この他にも、本発明によるTRPは、腎臓や肝などの組織の繊維化予防および組織の再生を誘導するために使用でき、神経または血管の再生などといった他の用途としても使用できる。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明による不活性TRPは、それ自体を使用し、或いは薬学的に許容可能な酸付加塩または金属複合体、例えば亜鉛、鉄などの塩の形で使用する。より具体的に、酸付加塩は、塩化水素、臭化水素、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ベンゾ酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩を使用することが好ましい。
【0048】
本発明による不活性TRPを有効成分として含有する組成物は、通常の投与方法、投与形態および治療目的に応じて、前記有効成分を薬学的に許容可能な賦形剤またはマトリックスとしての担体とともに混合して希釈し、或いは容器形態の担体内に封入させることが好ましい。また、他の骨欠陥治療に有益な他の薬剤と配合して使用することができる。この際、目的とするpH、等張性、安定性などを持つ生理的に受け入れられるタンパク質組成物の製法は、本発明の分野における通常の技術範囲内にあるものを使用することができる。本発明において、前記マトリックスは生物接合性、生物分解性、機械的特性、美容的外観、および接触特性に応じて選択される。本発明において使用することのできる担体の例として、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、ホリル無水物などの生物分解性および化学的物質;骨または皮膚コラーゲン、その他の純粋タンパク質または細胞のマトリックス成分などの生物分解性および生物学的物質;焼結されたヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミネートまたはその他のセラミックなどの非生物分解性および化学的物質;ポリ乳酸、ヒドロキシアパタイト、コラーゲンおよびリン酸三カルシウムなどの上述した物質の配合物を含むことができる。しかし、本発明は前記担体に限定されるものではない。
【0049】
本発明において、賦形剤は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、マグネシウムステアレート、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、水、メチルヒドロキシベンゾエート(metylhydroxybenzoate)、プロピルヒドロキシベンゾエート(propylhydroxybenzoate)、タルク(talc)、鉱物油などを使用することができる。
【0050】
一方、本発明による不活性TRPを含有する組成物は、骨損傷部位に入れるために粘性型にして注射し或いはカップルセル化して使用することが好ましい。本発明による組成物の投与量は使用される賦形剤やマトリックスなどの担体の種類と患者の形成された骨の重量、骨損傷部位、損傷した骨の状態、患者の年齢、性別およびダイエット、疾患の重症度、投与時間、およびその他の臨床的要因を考慮して調節できるため限定されないが、通常公知の有効量は骨の重量を考慮して適正量を連続してまたは分割して投与し、骨の成長を観察して追加投与を決定することができる。
【0051】
実施例
以下、本発明を具体的な実施例によってさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想と範囲内において様々な変形または修正を加え得るのは、当業者には明白なことである。
【0052】
特に、下記実施例では、TRPを構成するTRDとしてhBMP2およびhBMP7のみを例示したが、hBMP3、hBMP4、hBMP6、hBMP14(MP−52)などのヒト由来BMPだけでなく、マウス、牛、豚などの哺乳類およびその他の高等動物由来のBMPも使用することができるのは、当業者には自明なことである。BMPs以外にもTGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド(β-amyloid)、ADAMs(a disintegrin and metalloproteinase-like)、Eda−1(エクトディスプラシン−A:ectodysplasin-A)などのTNF−α群、MT1−MMP(膜型マトリックスメタロプロテイナーゼ:membrane type-matrix metalloproteinase)とMMP−2を含むMMPs群、インスリン様成長因子−1(IGF−1)などのポリペプチドを使用することもできるのは、当業者には自明なことである。
【0053】
また、下記の実施例では、TRPを構成するFADとしてBMPのプロドメインのみを例示したが、プロタンパク質転換酵素切断部位を有し、細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断されてTRDを活性化させる限り、それに限定されるものではないことも、当業者には自明なことである。
【0054】
実施例1:[TAT−hBMP2]融合ポリペプチドの製造
BMP/TGF−β群タンパク質は、一つのジスルフィド結合(disulfide bond)によって2つの同一のペプチドが互いに連結されたダイマー(dimer)から構成される。この際、それぞれのペプチドは、BMPの種類に応じて120〜140個のアミノ酸から構成され、各BMPsの内部に存在する7個のシステイン端末基のうち一つが別のペプチドの同一部位とジスルフィド結合を形成することにより、ダイマー(dimer)を構成し、残り6個のシステインは同一のアミノ酸内で3つのジスルフィドボンドを形成して(intrachain disulfide bond)独特な3次元構造を持つ(Proc. Natl. Acad. Sci., 93:878, 1996; J. Bone Joint Surg., 83:S1, 2001)。この際、BMP2は114個のアミノ酸、BMP7は139個のアミノ酸、TGF−β2とβ3は112個のアミノ酸から構成される。図1はこれらのアミノ酸配列と3次元構造の模式図を示し、図2は既に公知のBMP2の3次元構造を示す(Eur. J. Biochem., 237:295, 1996; J. Mol. Biol., 287:103, 1999)。BMP/TGF−βの内部の7個のシステインの位置が全て保存されていることからみて、システインが3次元構造に重要な役割を果たすことが分かる。
【0055】
従って、従来の公知のhBMP2にPTDを結合させて融合タンパク質を製造し、これを細胞内に投与する場合、既によく知られているように、この融合タンパク質は、細胞膜受容体の助けなしでも細胞膜を透過して、HSPs(ヒートショックプロテイン:heat shock protein)などによって生物学的活性を持つタンパク質にリフォールディング(refolding)されるものと期待することができる(Nature Med., 4:1449, 1998; Science, 285:1569, 1999)。
【0056】
従って、本実施例では、配列番号:28と29のプライマーを用いてSaos−2細胞(American Type Culture Collection、ATCC HTB−85)のmRNAを鋳型として用いたRT−PCRによって配列番号:1のアミノ酸配列を持つhBMP2をコードする遺伝子を増幅した。バクテリア発現ベクターにクローニングするために、各プライマーの5’に制限酵素KpnI部位(5’-ggtacc-3’)を追加した。以下の実施例においてもクローニングのためのプライマーはいずれも制限酵素KpnI部位を追加して利用した。
【0057】
配列番号: 28: 5'-caa gcc aaa cac aaa cag cgg aaa-3'
配列番号: 29: 5'-ttt gct gta cta gcg aca ccc aca-3'
【0058】
前記増幅されたhBMP2遺伝子をTAクローニングベクター(Invitrogen、Inc)に挿入し、GenBankの塩基配列(NCBI、NM_00120)と比較して、前述した114個のアミノ酸が全て含まれたことを確認した。前記クローニングされたhBMP2遺伝子をpRSETバクテリア発現ベクター(Invitrogen、Inc)のKpnI部位に再びクローニングし、前記hBMP2遺伝子の5’前にTAT(YGRKKRRQRRR:配列番号:27)塩基配列を挿入した後、その前にX−press(Invitrogen、Inc)タグ(tag)と、分離・精製のための6個のヒスチジン(histidine)をコードする塩基配列と開始塩基配列のATGを挿入してBMP2の発現のための組み換え発現ベクターを製作した(図7)。この際、TATの挿入されないベクターを陰性対照群として使用した。
【0059】
前記製作された組み換えベクターを熱衝撃(heat shock)方法によって大腸菌BL21(Invitrogen Inc.)に導入し、37℃で2〜3時間培養した後、IPTG(isopropylthio-galactoside)1mMを添加し、2〜18時間追加培養してTAT−BMP2の発現を誘導した。
【0060】
前記培養物を遠心分離し、ペレットを回収した。上清とペレット(cell pellet)に8Mの尿素溶液を添加してBMPの2次元および3次元構造を除去した後、ニッケル−チタニウムビーズ(Qiagen)を添加してTAT−BMP2をビーズに結合させた後、これを同一の溶液で3回洗浄し、イミダゾール(Imidazole)と高塩濃度緩衝溶液(high salt buffer)を用いて溶出し、精製されたTAT−BMP2を得た。
【0061】
図8は形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質発現を誘導する以前と以後の総タンパク質を電気泳動によって確認したものである。ここで、矢印はIPTGに誘導されたTAT−BMP融合タンパク質を示し、レーン1は誘導されていないTAT−BMP2、レーン2はIPTGに誘導されたTAT−BMP2、レーン3は誘導されていないBMP2(w/o TAT)、レーン4はIPTGに誘導されたBMP2(w/o TAT)を示す。図示の如く、IPTGの添加によって融合タンパク質の生成を誘導した場合、対照群に比べてTAT−BMP2融合タンパク質がさらに多く生成されることを確認することができた。
【0062】
図9は前記精製されたTAT−BMP2とBMP2(w/o TAT)を抗X−press抗体を用いたウエスタンブロットによって確認したものである。ここで、レーン1はTAT−BMP2、レーン2はBMP2(w/o TAT)を示す。図示の如く、TATが付加された場合(〜20kDa)は、付加されていない場合(〜18kDa)に比べて、分子量がやや増加することが分かった。前記結果より、TAT−hBMP2融合ポリペプチドがうまく製造されたことを確認することができた。
【0063】
前記製造されたTAT−BMP2が細胞内に透過されるかを確認するために、1次培養された歯肉繊維芽細胞(gingival fibroblast)にTAT−BMP2を4nMの濃度で2時間処理した後、細胞を得て抗X−press1次抗体(Invitrogen、Inc)を用いてウエスタンブロットを行った。その結果、図10に示すように、TAT−BMP2は2時間以内に大部分細胞内に透過されたことが分かった。TATがない場合には細胞内に透過されなかった。レーン1はTATのない4nMのBMP2を2時間処理したもので、レーン2〜6は同じ濃度のTAT−BMP2をそれぞれ0時間、15分、30分、1時間、2時間処理し、細胞にあるTAT−BMP2の発現を抗X−press抗体を用いてウエスタンブロットしたものである。レーン7はウエスタンブロット陽性対照群としてTAT−BMP2を10ng使用した。
【0064】
細胞内に導入されたTAT−BMP2が生物学的活性を持つBMP2に変化し、これらが骨細胞分化を誘導するかを調べるために、同一の細胞に2nMのTAT−BMP2を48時間間隔で投与し、1週後にアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定し、2週間培養してvon Kossa染色を行って石灰化物質の形成を観察した。この際、TATのないBMP2を陰性対照群として使用し、市販中のrhBMP−2を陽性対照群として使用した。図11はALP活性度を示すものであり、陰性対照群(N/C)は1次培養された繊維母細胞に培地のみを1週間処理したものであり、rhBMP−2は市販中のBMP2を2nMの濃度で1週間処理したものであり、TAT−BMP−2は本実施例によるTAT−BMP−2を2nMの濃度で1週間処理したものであり、TAT(−)BMP−2はTAT−BMP−2からTATを削除したものである。図12はvon Kossa染色で石灰化物質の沈着を観察したものである。図11および図12に示すように、市販されるrhBMP−2とは異なり、本実施例によるTAT−hBMP−2は生物学的活性を持たないことが分かった。
【0065】
実施例2:[TAT−FAD−hBMP2]融合ポリペプチド(TRP−1)の製造
実施例1で述べたように、hBMP2はジスルフィド結合によって固有な内部3次元構造とダイマーを形成することにより、生物学的活性を持つ。ところが、実施例1から分かるように、TATとhBMP2とが融合したタンパク質は、うまく細胞内に透過されるにも拘らず、生物学的活性、すなわち骨細胞分化を誘導しないことが分かった。これは、分泌されて生物学的活性を持つタンパク質の場合、従来のPTDと融合したタンパク質(Trends Cell Biol., 10:290, 2000; Curr. Prot. Pept. Sci., 4:97, 2003)とは異なり、HSPsなどによるアミノ酸の再構成(restructuring)のみでは活性を示すのに十分でないことを意味する。
【0066】
BMPsとTGF−βは、細胞内のリボソーム(ribosome)で生合成されるとき、400個以上のアミノ酸から構成された前駆体(precursor)の形で存在する。合成されたアミノ酸は、N−末端部分に存在するシグナルペプチド(signal peptide)によってゴルジ複合体(Golgi complex)、エンドソーム(endosome)などに移動し、これらは再びフューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって切断および活性化されて細胞外に分泌される(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002; J. Cell Biol., 144:139, 1999)。前記ゴルジ複合体などで翻訳後修飾ないし活性化過程(post-translational modification)を経るが、この際、アミノ端末部位に位置したシグナルペプチドとプロドメインが決定的な役割を果たす(Mol. Biol. Cell, 15:5012, 2004)。この過程で、BMP前駆体は他の分泌タンパク質と類似にフューリン切断部位(−RSKR−)がフューリン(furin)によって切断されて成熟BMP部分に活性化された後で分泌される(Constam, D.B. & Robertson, E.J., J. Cell Biol., 144:139, 1999; Cui, Y. et al., Genes & Development, 15:2797, 2001)。ところが、前記論文には、BMP前駆体の細胞内投与方法については何の言及もないうえ、特にPTDと融合した形でBMP前駆体を細胞内に導入させることについては示唆されたこともない。
【0067】
フューリンなどのプロタンパク質転換酵素としては、PC7、PC5/6A、PC5/6B、PACE4、PC1/3、PC2、PC4などが知られている(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002)。これらは大部分の細胞内小器官、特にゴルジ複合体、エンドソーム(endosomes)、分泌顆粒(secretory granule)に豊富に存在し、多様なタンパク質の活性化および分泌だけでなく、様々な感染性疾患の活性化にも重要な役割を行う。フューリンなどのプロタンパク質転換酵素によって活性化されるヒト生体タンパク質としては、BMPs/TGF−βの他にβ−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(a disintergrin and metalloproteinase-like)、Eda−1(ectodysplasin-A)などのTNF−α群、MT1−MMP(membrane type-matrix metalloproteinase)とMMP−2を含むMMPs群、IGF−1などがある(Nature Rev. Mol. Cell Biol., 3:753, 2002)。
【0068】
特に、BMPsは、細胞内で自然に生合成される場合、BMPs前駆体のプロドメインにある一つまたは二つのフューリン切断部位がBMPsの活性化に寄与するものと知られている(J. Cell Biol., 144:139, 1999; Genes Dev., 15:2797, 2001)。ヒトBMP2の場合、プロドメインの内部に1〜2個のフューリン切断部位(RXKR、R=Arg、K=Lys、X=basicアミノ酸を除いた他のアミノ酸)が存在し、PTD−BMP2融合タンパク質の活性化と分泌にこれらが重要な役割をするものと推論した。これを確認するために、本実施例では、実施例1のTAT−hBMP2に配列番号:14のアミノ酸配列を持つフューリン切断部位含有FADを追加してTAT−FAD−hBMP2の構造を持つポリペプチドを製造した。
【0069】
まず、前記FADをコードする塩基配列を追加するために、配列番号:30と31のプライマーを用いて、配列番号:1のhBMP2をコードする塩基配列と配列番号:14のアミノ酸配列を持つFADをコードする塩基配列を全て持つDNAを実施例1と同様の方法で増幅した。前記増幅されたDNAの塩基配列を確認した後、実施例1と同様の方法でバクテリア発現ベクターにクローニングした。
【0070】
配列番号: 30: 5'-gag ttt ttc cat gtg gac gct ctt-3'
配列番号: 31: 5'-ttt gct gta cta gcg aca ccc aca-3'
【0071】
前記形質転換された大腸菌を実施例1と同様の方法で培養および精製してTAT−FAD−hBMP2(TRP−1)を得た。すなわち、培養物でTRP−1が生成された大腸菌を遠心分離した後、上清とペレット(cell pellet)に8Mの尿素溶液を添加してBMP2の2次元および3次元構造を除去し、ニッケル−チタニウムビーズ(Qiagen)を添加してTRP−1をビーズに結合させた後、これを同一の溶液で3回洗浄し、イミダゾール(Imidazole)と高塩濃度緩衝溶液(high salt buffer)を用いて溶出し、精製されたTRP−1を得た(図3)。
【0072】
一方、シグナルペプチドとプロドメイン、フューリン切断部位の重要性を確認するために、前記製作された発現ベクターを鋳型とし、それぞれ配列番号:32と33(ΔSig)、配列番号:34と35(ΔPro)、配列番号:36と37(R283A)のプライマーを用いてそれぞれの削除(deletion)、または突然変異ベクターを製作した。その模式図は図13に示した。
【0073】
配列番号: 32: 5'-tcc acc atg gcc ggt acc ctc gtt ccg gag ctg ggc-3'
配列番号: 33: 5'-gcc cag ctc cgg aac gag ggt acc ggc cat ggt gga-3'
配列番号: 34: 5'-tcc acc atg gcc ggt acc gat gga aaa ggg cat cct-3'
配列番号: 35: 5'-agg atg ccc ttt tcc atc ggt acc ggc cat ggt gga-3'
配列番号: 36: 5'-ctc cac aaa aga gaa aaa gct caa gcc aaa cac aaa cag-3'
配列番号: 37: 5'-ctg ttt gtg ttt ggc ttg agc ttt ttc tct ttt gtg gag-3'
【0074】
前記製作されたそれぞれの発現ベクターで大腸菌を形質転換させた後、TRP−1と同一の培養・精製過程を経て多様なTRP−1変異体を得た。図13において、TRP−1はTAT−hBMP2にFADを追加した本実施例によるTAT−FAD−hBMP2を示し、Δ(Sig)はTAT−FAD−hBMP2からシグナルペプチド(配列番号:14のアミノ酸1〜24)部位を削除したものであり、Δ(FAD)はTAT−FAD−hBMP2からTAT−hBMP2と2番目のフューリン切断部位のみを持つようにN−末端部位のFAD(配列番号:14のアミノ酸1〜269)を削除したものであり、R283AはTAT−FAD−hBMP2から2番目のフューリン切断部位のArgをAlaに突然変異させたものを示す。各発現ベクターのN末端側には実施例1と同様にTATドメイン、X−press tagなどが含まれており、各ベクターの製作後に塩基配列を確認した。
【0075】
次に、前記製造されたTRP−1およびその変異体をそれぞれ同一の細胞に投与した。すなわち、各組み換えタンパク質を1次培養された繊維芽細胞に2nMで2時間処理した後、細胞を得て抗X−press抗体でウエスタンブロットした(図14)。その結果、図14に示すように、TRP−1およびその変異体が全て細胞内に透過されて発現されることを確認することができた。
【0076】
実施例3:プロタンパク質転換酵素によるTRP−1の切断および活性化
本発明による不活性TRP−1がフューリンによって切断され、細胞内で活性化されるかを調べるために、実施例2で製造されたTRP−1を組み換えフューリンタンパク質(Sigma、米国)を用いて試験管で切断した。その結果、図15に示すように、TRP−1は試験管でフューリンによってうまく切断されることが分かった。
【0077】
また、本発明による不活性TRP−1が細胞内でフューリンによって活性化されるかを確認するために、フューリン抑制タンパク質であるα1−PDX(α1 antitrypsin Portland) (Proc. Natl. Acad. Sci., 95:7293, 1998)発現ベクターを用いて細胞内のフューリンを抑制した。本発明による不活性TRP−1は、細胞内に導入された以後、生物学的活性を持つタンパク質に転換されるので、TRP−1投与の後一定の時間が経つと、細胞内に初期に導入されたTRP−1が益々減少する。したがって、α1−PDXの発現を誘導してフューリンを抑制した場合、残存TRPの量が増加することを予想することができる。
【0078】
その結果、図16に示すように、本発明のTRP−1は、α1−PDX発現(フューリン酵素抑制)によって半減期が増加した。すなわち、本発明のTRP−1を投与した場合、4時間後(星印)の対照群に比べて、α1−PDX投与群で半減期が増加した。その結果より、細胞内に投与されたTRP−1がフューリン酵素によって切断および活性化されることを確認することができた。
【0079】
実施例4:TRP−1の活性化時のFADの重要性
実施例2と3を通じて、TRP−1が細胞内でフューリンによって切断され活性化されるということを確認した。よって、TRP−1が細胞内に投与された後、生物学的活性を示すことには、FADとフューリン切断部位が重要な役割を行うことを予想することができる。
【0080】
これを確認するために、実施例2で得たTRP−1およびその変異体を1次培養した繊維芽細胞に投与し、ALP活性と石灰化物質の沈着を観察した(図17)。TRP−1およびその変異体に対して、実施例1と同様の方法でアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定した結果、図17に示すように、TRP−1(TAT−FAD−hBMP2)は高いALP活性を示し、シグナルペプチドの削除されたTRP−1変異体[Δ(Sig)]においてもTRP−1と類似し或いは却ってさらに高い活性を示した。その結果は、TATとFADを用いたBMP2の活性化にシグナルペプチドが必須でないことを示す。ところが、TAT−hBMP2に2番目のフューリン活性化部位のみを含む変異体[Δ(FAD)]およびTRP−1のフューリン切断部位の一部を突然変異させた変異体(R283A)の場合には生物学的活性がないことを確認することができた。
【0081】
また、前述した方法でTRP−1およびその変異体をそれぞれ2週間処理し、von Kossa染色して石灰化物質の沈着を観察した結果、図18に示すように、前記ALP活性度結果と類似の結果を示した。ここで、rhBMP−2は市販中のrhBMP−2を同じ濃度で処理して陽性対照群として使用したものであり、何にも処理せず培地のみを使用したものを(N/C)陰性対照群として使用した。このような結果は、TAT−FAD−hBMP2組み換えタンパク質が細胞内に投与されて生物学的活性を持つようにするためには、自然に生合成されるhBMP−2またはrhBMP−2の場合とは異なり、リボソーム(ribosomes)からゴルジ複合体への移動過程は不要であるが、フューリン切断部位を完全且つ正確に持っていなければならないことを意味する。
【0082】
本実施例を介して、本発明のTAT−FAD−hBMP2融合ポリペプチドは、PTD、FAD、TRD(本実施例ではhBMP2)の3ドメインから構成されるポリペプチドのうちいずれか一つのドメインがない或いは欠陥を持つ場合、人体に投与しても所望の薬理効果を発揮することができないことを確認した。このようなTRP−1の薬理作用に対するメカニズム解析(図6)が完全なものでないこともあるが、骨、軟骨、或いは多様な種類の組織再生を目的として不活性状態のBMP類あるいはTGF−β類のポリペプチドを人体に投与する場合、本発明によるTRP−1が従来の公知の製品に比べて非常に有用な薬理効果と革新的な商業的価値を示すものと期待される。すなわち、TAT−FAD−rhBMP−2は、従来の公知のBMP類あるいはTGF−β類とは全く異なる新しい薬理作用の概念の下に設計され、新しい方法で製造されたので、これをTRP−1と命名した。
【0083】
実施例5:TRP−2[TAT−FAD−BMP7]の製造
実施例4に示すように、BMPsおよびTGF−βなどの分泌タンパク質がPTDと融合する場合、全長を持つだけでは不十分であり、生体で生合成されるとき、形成される前駆体(precursor)のフューリン切断および活性化部位を十分持っていなければならない。ヒトのBMP7は骨および軟骨細胞の分化を促進し、最近では、同一の遺伝子群であるTGF−βの拮抗剤として作用して腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を抑えるものと知られている(Nature Med., 9:964, 2003; J. Clin. Invest., 112:1776, 2003)。
【0084】
本実施例では、配列番号:38と39のプライマーを用いて、配列番号:19のFADおよび配列番号:6のhBMP7を含むアミノ酸配列をコードする塩基配列を実施例2と同様の方法で増幅した。前記増幅物の塩基配列をGenBankで確認(NCBI、NM_001719)し、実施例2と同様の方法でバクテリア発現ベクターにクローニングして組み換えポリペプチドを製造し、これをTRP−2と命名した。
【0085】
配列番号: 38: 5'-ggc gcg atg cac gtg cgc tc ctg -3'
配列番号: 39: 5'-agg gtc tga att ctc gga gga gct -3'
【0086】
図19は、形質転換された大腸菌BL21の培養の際にIPTGでタンパク質発現を誘導する以前と以後の総タンパク質を電気泳動によって確認したものである。ここで、矢印はIPTGに誘導されたTRP融合タンパク質を示し、レーン1は誘導されていないTRP−1、レーン2はIPTGに誘導されたTRP−1、レーン3は誘導されていないTRP−1(w/o TAT)、レーン4はIPTGに誘導されたTRP−1(w/o TAT)、レーン5は誘導されていないTRP−2(w/o TAT)、レーン6は誘導されたTRP−2(w/o TAT)、レーン7は誘導されていないTRP−2、レーン8はIPTGに誘導されたTRP−2を示す。図示の如く、IPTGの添加によって融合タンパク質の生成を誘導した場合、対照群に比べてTRPsがさらに多く生成された。
【0087】
図20は、前記精製されたTRPsを抗X−press抗体を用いたウエスタンブロットによって確認したものである。ここで、レーン1はTRP−1、レーン2はTRP−1(w/o TAT)、レーン3はTRP−2(w/o TAT)、レーン4はTRP−2を示す。図示の如く、TATが付加された場合は、付加されてない場合に比べて分子量がやや増加した。このことより、TRPs融合ポリペプチドがうまく製造されたことを確認することができた。
【0088】
実施例6:TRP−1とTRP−2の細胞内への導入
本実施例では、まず1次培養した歯肉の繊維芽細胞(gingival fibroblasts)に、実施例2と5で精製されたTRP1−およびTRP−2を4nM処理し、細胞と培地にそれぞれ存在するTRP−1およびTRP−2の発現程度を比較して細胞内導入の有無を調べた。
【0089】
その結果、図21に示すように、TRP−1は細胞膜を透過して細胞内に移動した。すなわち、1次培養された歯肉の繊維芽細胞に4nMのTRP−1を処理し、細胞と培地にそれぞれ存在するTRP−1の発現程度をウエスタンブロットした結果、TRP−1は1時間以内に大部分細胞内に移動し、6時間以後には培地に殆ど残っていなかった。ところが、TATのない対照群の場合には細胞内に全く入らなかった。また、同一の方法でTRP−2を細胞に投与した結果、図22に示すように、TRP−2も2時間以内に細胞膜を透過して細胞の内部に移動したが、TATのない対照群の場合には細胞内に全く入らなかった。
【0090】
実施例7:TRPsによる活性化BMPの分泌とPTDの重要性
本実施例では、TRPsが細胞内に導入された場合、前記細胞で活性化されたBMPが分泌されるか否かを確認するために、TRP−1を細胞内に導入し、48時間以内に活性化BMP2の分泌の有無を測定した。その結果、図23に示すように、細胞内に入ったTRP−1は、48時間内に活性化されたBMP2を分泌することが分かった。この際、陽性対照群として、市販される活性化BMP2のrhBMP−2を使用した。
【0091】
また、本発明のTRP−1を細胞内に導入し、1次培養された繊維芽細胞の骨細胞の分化と石灰化物質の形成有無を確認することにより、骨細胞分化および骨再生の効果を調べた。繊維芽細胞を1週間培養しながらrhBMP−2とTRP−1をそれぞれ2nMの濃度で2週間処理し、1週後、von Kossa染色処理して肉眼で観察した結果、図24に示すように、細胞培地のみを用いた陰性対照群(N/C)とTATのないTRP−1[TRP−1(TAT−)]の場合、骨細胞の分化と石灰化物質の形成を観察することができなかったが、TRP−1と市販中のrhBMP−2の場合には繊維芽細胞内で骨細胞の分化と石灰化物質の形成を確認することができた。
【0092】
しかも、同一の方法で繊維芽細胞を1週間処理し、骨細胞分化マーカーとして用いられるアルカリホスファターゼ(ALP)の活性度を測定した結果、図25に示すように、本発明のTRP−1と市販中のrhBMP−2が同程度のALP誘導効果を示した。
【0093】
一方、市販される活性化BMP2(rhBMP−2)の力価と本発明のTRP−1の力価を比較するために、1次培養された繊維芽細胞を1週間培養し、それぞれTRP−1およびrhBMP−2で処理した後、von Kossa染色処理して肉眼で観察した。その結果、図26に示すように、本発明のTRP−1と市販中の活性rhBMP−2は同程度の薬効(potency)を示すものと確認することができた。具体的には、0.5nM以上の濃度では市販されるrhBMP−2の力価と本発明によるTRP−1の力価とが類似であった。
【0094】
実施例8:細胞膜透過後のTRPsの活性化半減期
本実施例では、細胞内に透過されて入ったTRPsがHSPsなどによるタンパク質再配列とフューリンによる活性化過程を経て、活性BMPに分泌されることを確認するために、投与されたタンパク質の活性化過程半減期を調べた。このために、フューリン活性の高い293細胞株(ATCC CRL−1573)に本発明によるTRP−1を投与した後、実施例6と同様の方法で処理し、TRP−1の発現程度を時間別にウエスタンブロットした。
【0095】
その結果、図27に示すように、細胞に投与されたTRP−1は、293細胞で3〜4時間の半減期を持っていた。このような半減期は、細胞によって異なり、骨原性肉腫(osteogenic sarcoma)細胞株では約6時間、1次培養された繊維芽細胞では約8時間であった。この結果より、本発明によるTRPsは、細胞内でHSPs、フューリンなどによる活性化過程を経て活性BMPに分泌されることを確認することができた。
【0096】
実施例9:TRPsの細胞膜透過と透過時温度の影響
市販中の組み換えrhBMPは細胞膜に存在する受容体を通過するが、本発明のTRPsは細胞膜を直接透過し、従来のrhBMP−2の受容体を介しての過程は温度に依存的である。本発明によるTRPsの細胞内透過が温度依存的であるか否かを確認するために、TRP−1とTRP−2を多様な温度で細胞に適用し、様々な時間に共焦点蛍光顕微鏡(confocal fluorescent microscope)で観察した。この際、本発明のTRP−1またはTRP−2を10nMの一定の濃度の下に、図28に示すように、多様な温度と時間別に処理した。透過されたTRPsを、1次抗体として抗X−press抗体(Invitrogen)、2次抗体としてAlexa−Fluoro−488(Invitrogen)と反応させ、核の染色のためにFar−Red TOTO−3(Molecular Probes)を使用した。図28において最も上方の写真はTRP−1が37℃で細胞質内に入ったことを示し、Mergeは同一断面のTRP−1と細胞核の映像を重畳したものである。また、中間写真はTRP−1を5分間、TRP−2を5分および60分間処理し、前述した方法で重畳したイメージを示すものである。最も下方の写真はTRP−1とTRP−2を4℃で60分間処理し、細胞内に導入されたTRP−1とTRP−2の重畳イメージを示すものである。
【0097】
その結果、図28に示すように、TRP−1は37℃で投与した後、5分以内に細胞内に透過されて入り込み、1時間程度経過の後、TRP−1とTRP−2は一部の核にもあったが、大部分の細胞質内に存在した。しかも、25℃と4℃においても37℃と類似の透過パターンを示した。その結果より、本発明によるTRPsの細胞膜透過は温度に非依存的であることが分かった。
【0098】
実施例10:細胞内に導入されたTRPsとF−actinの特異的な結合の有無
上述したように、細胞内に透過された本発明によるTRPsは、細胞内で線形(linear)の特定のパターンを持って存在することを示した。本実施例では、本発明によるTRPsが細胞膜の透過後、特定の小器官または構造に特異的に存在するかを調べるために、前記構造と類似の配列を持つF−actinストレスファイバー(F-actin stress fiber)に対する特異結合因子であるファロイジン(phalloidin)免疫蛍光染色を行い、共焦点蛍光顕微鏡で観察した(図29)。この際、TRP−1とTRP−2は実施例9と同様の方法で蛍光染色し、F−actin特異的染色のためにファロイジン−Alexa−594(Molecular Probes)を使用した。図29において、重畳写真の微弱な青色イメージは細胞核の下端部位を示す。
【0099】
その結果、図29に示すように、本発明のTRP−1およびTRP−2は、投与後に細胞のF−actint同一の配列を持つだけでなく、同じ位置に存在することが分かった。これは、本発明のTRPsが細胞内に透過された後、F−actinに特異的に反応して結合することを示す。この結果より、TRPsが細胞内に透過されると、細胞質内に無作為に分布するのではなく、F−actinに特異的に結合し、細胞内の多様な活性化過程とフューリン切断過程を経て活性化BMPに転換されることが分かった。
【0100】
実施例11:動物実験モデルにおけるTRPsによる骨形成誘導
実施例1〜10において、本発明のTRP−1およびTRP−2が細胞膜を透過してフューリンによって活性化されて分泌され、これらが骨細胞の分化と石灰化物質の形成を誘導することを示した。本実施例では、本発明によるTRPsが生体内で骨の形成を誘導するかを調べるために、ラットの頭蓋骨に自然治癒不可能な損傷(8mm)を被らせた後、本発明によるTRP−1を市販中のrhBMP−2と比較投与して骨形成誘導を観察した(図30)。この際、自然治癒不可能な損傷を被らせるために、ラット(rat)の頭蓋骨に直径8mmのトレフィン(trephine)を用いて骨損傷部を形成した。陰性対照群には第1型コラーゲンを、陽性対照群(rhBMP)には市販中の組み換えBMP2を第1型コラーゲンに混合して利用し、本発明のTRP−1を陽性対照群と同一の方法で投与した。rhBMP−2とTRP−1は、それぞれ10nmole投与した。BMP投与2週後に各実験群の組織を採取して10%のホルマリンに24時間固定し、4μmの切片をヘマトキシリン/エオシン染色した後、光学顕微鏡で観察した。図30において、矢印の両方は骨損傷部位の末端部を示し、最も下方のボックスはTRP−1による骨形成部位を拡大したものである。
【0101】
その結果、図30に示すように、本発明のTRP−1投与2週後に生体内で旺盛な骨細胞分化と骨形成誘導を確認することができた。また、同量のTRP−1を投与した場合、市販中のrhBMP−2と比較して、より優れる力価または少なくとも類似の力価を示した。
【0102】
実施例12:TRPsの細胞毒性
実施例1〜11において本発明によるTRPsを細胞または組織に投与したときの作用メカニズムと応用可能性を提示した。最後に、本発明のTRPsを過量投与した場合の細胞毒性を調べるために、市販中のrhBMPと共に200nMまで濃度を高めながら細胞毒性を検査した。この際、TRP−1と組み換えBMP2を1次培養された繊維芽細胞に各濃度別に投与し、72時間後、生存した細胞の数を測定した(図31)。その結果、図31に示すように、TRP−1を200nM投与した場合にも細胞毒性を全く示さなかった。
【0103】
以上、本発明の内容の特定な部分を詳細に述べたが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的記述は好適な実施例に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものでないことは明白である。例えば、本発明のTRP−1を人体に投与する場合、既に立証したように、骨および軟骨の形成を促進するのに有用であるが、本発明のTRP−2を人体に投与する場合、骨または軟骨の形成促進だけでなく、場合と投薬条件に応じて腎臓、肝、肺、及び心臓の繊維化および硬変を解消することにも有用であるものと期待される。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上詳しく述べたように、本発明は、従来の活性タンパク質とは全く異なる薬理メカニズムを持つ不活性ポリペプチドを提供するという効果がある。本発明によるTRPは、生体内に投与される前までは不活性状態であるが、生体内で活性化される新しいメカニズムを持っており、細胞膜受容体との結合を3次元構造に維持するための追加の装備または費用が不要である。また、生産工程が簡単であり、分離・精製が非常に容易であって生産コストが低く、保管、取り扱いおよび投与過程も便利であってrhBMP類などの従来の活性タンパク質を代替することができるものと期待される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性組織再生ポリペプチド(TRP)であって、
(a)前記ポリペプチドを細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD)、
(b)一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD)、および
(c)前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRD、
を含有する不活性TRP。
【請求項2】
プロタンパク質転換酵素はフューリンであることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項3】
3次元的立体規則性を持っておらず、それ自体では活性を持っていないことを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項4】
前記FADのプロタンパク質転換酵素切断部位が細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断され、前記TRDが活性化されて前記活性化されたTRDが細胞外に分泌されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項5】
前記TRDはBMPs、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様)、TNF−α、MMPs(マトリックスメタルプロテナーゼ)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項6】
前記TRDは配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項7】
前記FADは配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項8】
前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項9】
PTD、FAD及びTRDが融合されている請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項10】
TRDをコードするDNAの5’前にFADをコードする塩基配列、PTDの塩基配列、タギングのための塩基配列、および分離・精製のための4つ以上のヒスチジンをコードする塩基配列が挿入されている組み換えベクター。
【請求項11】
請求項10の組み換えベクターで形質転換されたバクテリア。
【請求項12】
(a)請求項11の形質転換されたバクテリアを培養して[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを発現させる段階と、(b)前記培養液を遠心分離した後、上清と細胞ペレットに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの2次元および3次元構造を除去し或いは1次元線形構造に変形させた後、[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを精製する段階とを含む、不活性TRPの製造方法。
【請求項13】
前記TRDはBMPs、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様)、TNF−α、MMPs(マトリックスメタルプロテナーゼ)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記TRDは配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記FADは配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記精製段階は、前記ポリペプチドをニッケル−チタニウムビーズに結合させ、これを同一の溶液で洗浄した後、イミダゾール(imidazole)と高塩濃度緩衝溶液を用いて溶出する副工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜9の何れか一項の不活性TRPを有効成分として含有する組織の形成または再生促進用組成物。
【請求項19】
骨または軟骨形成促進用であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
TGF−β、IGF、PDGF及びFGFよりなる群から選択される成長因子をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1〜9の何れか一項の不活性TRPを有効成分として含有する臓器の繊維化または硬変の解消用組成物。
【請求項22】
TGF−β、IGF、PDGF及びFGFよりなる群から選択される成長因子をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【請求項1】
不活性組織再生ポリペプチド(TRP)であって、
(a)前記ポリペプチドを細胞膜受容体の助けなしで細胞膜を透過し得るようにするタンパク質導入ドメイン(PTD)、
(b)一つ以上のプロタンパク質転換酵素切断部位を有し、前記プロタンパク質転換酵素によって切断されて不活性組織再生ドメイン(TRD)を細胞内で活性化させるフューリン活性ドメイン(FAD)、および
(c)前記FADのプロタンパク質転換酵素の切断によって活性化され、細胞内で組織の成長または形成を促進し或いは組織の再生を誘導するTRD、
を含有する不活性TRP。
【請求項2】
プロタンパク質転換酵素はフューリンであることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項3】
3次元的立体規則性を持っておらず、それ自体では活性を持っていないことを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項4】
前記FADのプロタンパク質転換酵素切断部位が細胞内でプロタンパク質転換酵素によって切断され、前記TRDが活性化されて前記活性化されたTRDが細胞外に分泌されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項5】
前記TRDはBMPs、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様)、TNF−α、MMPs(マトリックスメタルプロテナーゼ)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項6】
前記TRDは配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項7】
前記FADは配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項8】
前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項9】
PTD、FAD及びTRDが融合されている請求項1に記載の不活性TRP。
【請求項10】
TRDをコードするDNAの5’前にFADをコードする塩基配列、PTDの塩基配列、タギングのための塩基配列、および分離・精製のための4つ以上のヒスチジンをコードする塩基配列が挿入されている組み換えベクター。
【請求項11】
請求項10の組み換えベクターで形質転換されたバクテリア。
【請求項12】
(a)請求項11の形質転換されたバクテリアを培養して[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを発現させる段階と、(b)前記培養液を遠心分離した後、上清と細胞ペレットに尿素溶液を加えて前記ポリペプチドの2次元および3次元構造を除去し或いは1次元線形構造に変形させた後、[PTD−FAD−TRD]ポリペプチドを精製する段階とを含む、不活性TRPの製造方法。
【請求項13】
前記TRDはBMPs、TGF−β、β−NGF(β−神経成長因子)、β−アミロイド、ADAMs(ディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼ様)、TNF−α、MMPs(マトリックスメタルプロテナーゼ)、インスリン様成長因子−1(IGF−1)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記TRDは配列番号:1〜13よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記FADは配列番号:14〜26よりなる群から選ばれたアミノ酸配列で表示されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記PTDはTAT、ショウジョウバエ由来Antpペプチド、VP22ペプチド、およびmph−1−btmよりなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記精製段階は、前記ポリペプチドをニッケル−チタニウムビーズに結合させ、これを同一の溶液で洗浄した後、イミダゾール(imidazole)と高塩濃度緩衝溶液を用いて溶出する副工程を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜9の何れか一項の不活性TRPを有効成分として含有する組織の形成または再生促進用組成物。
【請求項19】
骨または軟骨形成促進用であることを特徴とする請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
TGF−β、IGF、PDGF及びFGFよりなる群から選択される成長因子をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1〜9の何れか一項の不活性TRPを有効成分として含有する臓器の繊維化または硬変の解消用組成物。
【請求項22】
TGF−β、IGF、PDGF及びFGFよりなる群から選択される成長因子をさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2008−545374(P2008−545374A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503926(P2008−503926)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003660
【国際公開番号】WO2006/104306
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507325530)
【出願人】(507325552)
【出願人】(507325574)
【出願人】(507325600)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003660
【国際公開番号】WO2006/104306
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(507325530)
【出願人】(507325552)
【出願人】(507325574)
【出願人】(507325600)
【Fターム(参考)】
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