説明

組織拡張器およびその使用方法

乳房組織などの身体の組織を拡張するための組織拡張システムが開示される。この組織拡張システムは、流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、所定の期間内に流体源から流体が放出された回数と所定の期間内に流体源から流体を放出することを許可された最大回数とを比較するように適応された処理構成要素とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年9月21日に出願された米国出願No.11/231482の一部継続出願であり、それは、2004年9月21日に出願された米国仮特許出願No.60/612018および2005年6月9日に出願された米国仮特許出願No.60/688964の優先権を主張する。
【0002】
本願は、2009年12月18日に出願された米国仮出願No.61/288197の優先権を主張する。
【0003】
上述の出願の全ては、本明細書に参考として組み入れられる。
【0004】
本明細書に述べた全ての出版物および特許出願は、各個々の出版物または特許出願が参考として具体的かつ個々に組み入れることが示されているのと同程度に本明細書に参考として組み入れられる。
【背景技術】
【0005】
被検者の正常組織の欠損は、例えば熱傷、腫瘍切除術(例えば乳房切除術)、または先天性奇形から起きる。多くの場合、欠損組織は皮膚および/または下層の結合組織である。欠損組織は体内導管(例えば尿道または胃腸管)でもあり得る。
【0006】
皮膚の欠損を修正する一つの方法は、新しい皮膚の形成を刺激することである。既存の皮膚を拡張および伸張させる装置を移植すると、新しい皮膚が形成される成長反応が起きる。この反応の正確な生理学的メカニズムは充分にはわかっていないが、臨床上の成功は長年にわたって報告されている。
【0007】
外科的な組織拡張の形式概念は、1957年にNeumannによって初めて報告され、そこで、一部切断された耳を再建することを目的として、間欠的拡張を可能にするように、経皮チューブに取り付けたゴム製バルーンが移植された。組織拡張の概念は、1980年代にRadovanおよびArgentaによって乳房再建用にさらに洗練されかつ普及した。該技術の多くの利点、とりわけ最小限の追加的な外科切開および患者のダウンタイムにもかかわらず、外来患者の処置は長くかつ煩わしいままであり、多くの場合、数ヶ月間の週1回の来院、および生理食塩水の充填による周期的拡張に関連付けられる比較的高い圧力に起因する不快感を伴う。市販の組織拡張器の大半は、周期的な充填を可能にする別個のまたは埋設された弁付きの移植可能なバルーンとして機能する。通常は医師が充填手順を実行する。充填事象は比較的低頻度(例えば週1回)であり、したがって来診のたびに最大限の効果を達成するために、各来診時に通常かなりの拡張圧が加えられる。通院中に、この拡張圧の結果、比較的急激な組織の伸張が生じる。これは、被検者に不快感および/または組織虚血を経験させることがある。比較的大きい拡張圧はまた、下層の骨に陥凹を生じるなど、下層の構造に悪影響を及ぼすこともあり得る。加えて、高圧は移植物の周りに拘束性皮膜を形成させ、かつ/または組織損傷を引き起こすことがある。従来入手可能な代替品の中には、膨張または充填または膨張のために経皮針を使用し、潜在的感染源になるものもあった。
【0008】
漸進的な連続拡張が導入され、周期的な生理食塩水の注入に関連付けられる欠点の多くを克服すると考えられた。例えば浸透圧拡張装置が1979年にAustadによって、1999年にBergeによって、かつ2003年にOlbrischによって報告されている(米国特許第5005591号および第5496368号明細書参照)。限られたサイズ範囲の市販バージョンが、Osmed Corp.から入手可能である。これらの装置は、ポリマー製浸透圧駆動体を用いて、間質液(「ISF」)を吸収することによってシリコーン製移植物を拡張させる。そのような装置の潜在的な問題点は、ひとたび装置が配備された後、圧力、容積、拡張の開始、および拡張の終了のような拡張変数に対する移植後の制御または調整ができないことである。Greenbergらの米国特許第6668836号は、外部液圧ポンプを用いて組織を脈動拡張させるための方法を記載している。外部液圧ポンプはかさばり、患者にとって不便である。経皮的付着は、患者の可動性を低下させ、かつ汚染源になることもある。Reedの米国特許第4955905号明細書は、移植された流体充填組織拡張装置の圧力の外部モニタを教示している。DubrulおよびIversonそれぞれの米国特許第5092348号および第5525275号明細書は、テクスチャ加工表面を持つ移植可能な装置を教示している。幾つかの他の装置は、組織拡張に流体を使用しなければならないことを回避するために、機械力または微小機械力を使用する。
【0009】
Widgerowは、患者の完全な制御を可能にする移植された拡張装置にチューブを介して接続された外部ポンプを使用する連続拡張装置を試験した。これは、急速な経時変化および患者の満足をもたらした。しかし、コネクタチューブは患者にとって煩わしいセットアップ、および外部環境と移植された装置との間の長期接続が汚染を導くおそれの両方をもたらす。拡張された空間は最終的に恒久的移植物を受容するので、いかなるレベルの汚染も容認できないと考えられる。
【0010】
乳癌の乳房温存治療モダリティの出現および容認にもかかわらず、乳房切除術は依然として、幾つかの臨床設定において乳癌に対する最適な治療であり続ける。そのような臨床設定として、残存する乳房組織の容認できない変形なしにクリーンな辺縁を達成することができない状況、多発原発腫瘍、以前の胸壁照射、妊娠、または重度の膠原病性脈管疾患(例えばループス)が含まれる。乳房切除術はまた、BRCA1もしくはBRCA2遺伝子または対側性疾患の存在のため、女性にとって高いリスクがあることが示されている。多くのそのような女性は乳房再建の候補であり、乳房切除術時に、または治癒後に遅れて再建術を選択する。米国形成外科協会の統計によると、2007年に57102名の米国患者が乳房再建術を受けた。
【0011】
組織拡張器の後に移植物を挿置する段階的手順としての乳房の補綴再建は、最小限の付加的外科による侵襲が加わる一方、有利な審美的かつ心理学的結果をもたらす、乳房再建のための信頼できる方法である。今日、該プロセスは通常、大胸筋および不在乳房の残存皮膚の下に組織拡張装置を配置することを含む。装置は次いで、生理食塩水の周期的注入によって、数週間または数ヶ月にわたって徐々に膨張され、上層の皮膚および筋肉被覆の伸張および拡張を引き起こす。適切な被覆が達成されると、拡張装置は通常取り外され、拡張された空間内に恒久的乳房移植物が配置される。
【0012】
乳房組織拡張器のような組織拡張器が、患者の快適性、制御、速度の増大、使用者に対する総合的な優しさ、連続的または略連続的な拡張、完全な外科医‐患者の制御、および感染を導くおそれのある外部環境との経皮的連絡の根絶を可能にする一方、以前の装置に関連付けられる技術的問題の解消のいずれかまたは全部を達成することができれば、かなりの臨床上の利点が実現されるであろう。
【発明の概要】
【0013】
開示の一態様は、前部、後部、下部、および上部を有し、かつ上部および前部に固定された通信構成要素を含み、患者内に移植するように適応された移植可能な装置と、患者の体外に配置されて移植可能な装置の拡張を制御するために通信構成要素と無線通信するように適応された外部装置とを含む、組織拡張システムである。
【0014】
一部の実施形態では、移植可能な装置は拡張可能なチャンバを画定する内層を含み、該内層は、前部、後部、下部、および上部を画定する予め形成された形状を備え、かつ通信構成要素は内層の上部および前部に固定される。内層は非弾性材料を含むことができる。内層は、前部、後部、下部、および上部を画定する予め形成された略乳房形状を有することができ、通信構成要素は略乳房形状の前部および上部に固定される。略乳房形状は下極および上極を有することができ、上極は上部に配置され、下極は上極の厚さより大きい厚さを有し、かつ通信構成要素は上極内に固定される。
【0015】
一部の実施形態では、システムはさらに、移植可能な装置の内部チャンバ内に流体貯留器を備え、通信構成要素および流体貯留器は通信しており、外部装置は流体貯留器から内部チャンバ内に流体を制御可能に放出するために、通信構成要素と無線通信するように適応される。通信構成要素はアンテナを含むことができる。
【0016】
開示の一態様は、組織を拡張する方法である。該方法は患者に移植される移植可能な装置を含み、移植可能な装置は拡張可能なチャンバ、流体貯留器、および通信構成要素を備え、移植可能な装置が移植される身体領域に近接して遠隔制御装置を配置し、かつ遠隔制御装置を作動させて、拡張可能なチャンバの上極より大きい突出を有するように拡張可能なチャンバの下極を拡張させる。一部の実施形態では、下極を拡張することにより、下極に隣接する組織が拡張し、上極を拡張することにより、上極に隣接する組織を拡張し、上極より大きい突出を有するように下極を拡張することは、下極に隣接する組織を上極に隣接する組織より大きく拡張することを含む。一部の実施形態では、拡張可能なチャンバは、下極が上極の突出より大きい突出を有する予め形成された形状を有し、遠隔制御装置を作動させることにより、拡張可能なチャンバは予め形成された形状に向かって拡張する。一部の実施形態では、遠隔制御装置を作動させることにより、拡張可能なチャンバは略乳房形状に向かって拡張する。一部の実施形態では、移植可能な装置は前部、後部、上部、および下部を備え、遠隔制御装置を移植可能な装置が移植される身体領域に近接して配置することは、遠隔制御装置を上部および前部に隣接して配置することを含む。
【0017】
装置の一態様は、患者の乳房組織内に移植するように適応された、自己完結型の移植可能な装置を含む乳房移植物である。移植可能な装置は、略乳房形状を有する実質的非弾性部分を有する。
【0018】
一部の実施形態では、実質的非弾性部分は少なくとも略乳房形状の湾曲部を含む。実質的非弾性部分はさらに、乳房形状の略平坦後部を含むことができる。前部および後部は、一体に固定される2つの異なる構成要素とすることができる。一部の実施形態では、実質的非弾性部分は少なくとも部分的に、流体が収容される内部チャンバを画定する。一部の実施形態では流体は生理食塩水であり、一部の実施形態では流体はガスである。一部の実施形態では、移植物はさらに、内部チャンバ内に完全に配置されたガス貯留器を備える。一部の実施形態では、移植物はさらに、内部チャンバ内に完全に配置され、患者の体外にある装置と無線通信するように適応された通信構成要素を備える。一部の実施形態では、外部装置は、内部チャンバを拡張させるべくガス貯留器から内部チャンバ内へのガスの放出を制御するために作動するように適応される。一部の実施形態では、略乳房形状は下部および上部を含み、下部は、上部の最大突出寸法より大きい最大突出寸法を有する。
【0019】
開示の一態様は、拡張可能な構成部品およびガス源を備え、ガス源が拡張可能な構成部品内に固定されるが、拡張可能な構成部品に対して不動に固定されず、移植可能な装置が患者内に配置された後でもガス源と拡張可能な構成部品との間の相対運動が可能であるようにした移植可能な装置と、ガス源から拡張可能な構成部品内へのガスの放出を患者の体外の位置から制御するように適応された外部装置とを含む、組織拡張システムである。一部の実施形態では、移植可能な装置はガス源保持要素を備え、該保持要素の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品に対して不動に固定され、かつガス源は、ガス源保持要素を用いて拡張可能な構成部品に固定される。ガス源保持要素は薄膜層とすることができ、薄膜層の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品に不動に固定され、かつガス源は薄膜層内に固定される。ガス源保持要素の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品の後部に固定することができる。ガス源保持要素およびガス源はハンモック設計を形成することができる。
【0020】
開示の一態様は、流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、所定の期間内に流体源から流体が放出された回数と所定の期間内に流体源から流体を放出することを許可された最大回数とを比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システムである。一部の実施形態では、処理構成要素は外部制御装置内に配置される。処理構成要素はさらに、所定の期間内に流体が流体源から放出された回数が、所定の期間内に流体源から流体を放出することを許可された最大回数を超えるかそれと等しい場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応することができる。処理構成要素は、約24時間の期間内に流体源が4回以上流体を放出することを防止するように適応することができる。処理構成要素は、流体源が約3時間毎に2回以上流体を放出することを防止するように適応することができる。
【0021】
一部の実施形態では、外部制御装置は、外部制御装置が作動すると流体源からの流体の放出を制御するために移植可能な装置と通信するように適応され、処理構成要素は、外部制御装置が所定の期間内に作動した回数を、外部制御装置が所定の期間内に作動することのできる最大回数と比較するように適応される。流体源は圧縮ガス源とすることができる。
【0022】
開示の一態様は、ガス源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、所定の期間内に流体源から放出された流体の量と所定の期間内に流体源から放出することを許可された流体の最大量とを比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システムである。
【0023】
一部の実施形態では、処理構成要素は外部制御装置内に配置される。処理構成要素はさらに、所定の期間内に流体源から放出された流体の量が、所定の期間内に流体源から放出することを許可された流体の最大量を超えるかそれと等しい場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応することができる。処理構成要素は、流体源が約24時間以内に約30mLを超える流体を放出することを防止するように適応することができる。一部の実施形態では、流体源は圧縮ガス源である。
【0024】
開示の一態様は、流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく外部制御装置の作動に応答して流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、外部制御装置が1回作動した後、流体源から最大量を超える流体が放出されるのを防止するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システムである。一部の実施形態では、処理構成要素は外部制御装置内に配置される。処理構成要素は、外部制御装置が1回作動した後、約10mLを超える流体が放出されるのを防止するように適応することができる。システムは、外部制御装置が1回作動した後、最大量を超える流体が流体源から放出された場合に、事象を記録するメモリ構成要素を含むことができる。
【0025】
開示の一態様は、流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を移植可能な装置の最大充填量と比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システムである。一部の実施形態では、流体源はガス源である。処理構成要素は外部制御装置内に配置することができる。処理構成要素はさらに、移植可能な装置の最大充填量を超えるかそれと等しい場合、流体源から放出された流体の総量が流体源からの流体の放出を防止するように適応することができる。処理構成要素は、全部で約350mLから約1040mLの流体が流体源から放出された場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応させることができる。
【0026】
開示の一態様は、流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を移植可能な構成要素の最大充填量と比較するように適応された処理構成要素とを含む組織拡張システムであって、処理構成要素が、拡張可能なチャンバから外に滲み出した流体の量を考慮して、ガス源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を自動的に調整するように適応された、組織拡張システムである。
【0027】
一部の実施形態では、流体源は圧縮二酸化炭素(CO)貯留器であり、処理構成要素は、拡張可能なチャンバから外に滲み出した二酸化炭素の量を考慮して、二酸化炭素貯留器から拡張可能なチャンバ内に放出された二酸化炭素の総量を自動的に調整するように適応される。処理構成要素は、拡張器チャンバから外に滲み出した流体の量を補償するために流体源から流体を自動的に放出させるように適応することができる。
【0028】
開示の一態様は、ガス源、拡張可能なチャンバ、および拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応された圧力安全弁を備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべくガス源から拡張可能なチャンバ内へのガスの放出を制御するために、移植可能な装置と通信するように適応された外部制御装置とを含む、組織拡張システムである。一部の実施形態では、外部制御装置は、作動後に安全弁を開いて拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応されたアクチュエータを備える。外部制御装置は、ガス源からのガスの放出を制御することによって作動するように適応された第2アクチュエータを備えることができる。移植可能な装置は、拡張可能なチャンバ内の圧力が最大許容圧力を超える場合にそれを検知するように適用された圧力センサを備えることができ、圧力安全弁は自動的に開いて、拡張可能なチャンバから一定量のガスを放出するように適応される。外部制御装置は、拡張可能なチャンバ内の圧力が最大許容圧力を超えた場合にそれを検知するように適応された圧力センサを備えることができる。圧力安全弁は第1磁性構成要素を備えることができ、システムはさらに、第2磁性構成要素を含む安全弁アクチュエータを備え、第2磁性構成要素は第1磁性構成要素と相互作用して安全弁を開き、拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応される。
【0029】
開示の一態様は、流体源、拡張可能なチャンバ、および固有ポートを備え、流体源が拡張可能なチャンバと流体連通して成る移植可能な装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御して拡張可能なチャンバを拡張させるために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置とを含み、固有ポートが該ポートを介して除去装置を挿入して拡張可能なチャンバから流体を除去することを可能にするように適応されて成る、拡張可能なチャンバ組織拡張システムである。一部の実施形態では、除去装置は針であり、固有ポートは、拡張可能なチャンバから流体を除去するために針が該ポートを介して挿入された後、再密閉されるように適応される。固有ポートは、流体が拡張可能なチャンバから放出された後、移植可能な装置に生理食塩水のような第2流体を再充填することができるように適応することができる。外部制御装置は、拡張可能なチャンバからの流体の除去後、流体源からの流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応することができる。移植可能な装置はさらに通信構成要素を備えることができ、固有充填ポートは通信構成要素に隣接して配置される。移植可能な装置は外殻および内袋を備えることができ、固有ポートは外殻に形成される。移植可能な装置は外殻および内袋を備えることができ、固有ポートは内袋内に配置される。
【0030】
開示の一態様は、固有ポートを介して針を自己完結型移植物内に前進させること、および針を介して流体を除去することを含む、乳房組織内に配置された自己完結型移植物からガスを除去するステップと、患者に放射線治療が行われた後、自己完結型移植物に第2流体を再充填するステップとを含む、移植物から流体を除去する方法である。第2流体は生理食塩水とすることができる。自己完結型移植物に第2流体を再充填するステップは、固有ポートを介して針を配置すること、および針を介して第2流体を移植物内に前進させることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、移植可能な装置と遠隔制御装置とを含む例示的組織拡張システムを示す。
【0032】
【図2】図2は、流体源が拡張可能な構成部品に不動に固定されない例示的移植可能な装置の一部分を示す。
【図3】図3は、流体源が拡張可能な構成部品に不動に固定されない例示的移植可能な装置の一部分を示す。
【0033】
【図4】図4は、例示的移植可能な装置の一部分の分解組立図を示す。
【0034】
【図5】図5は、外殻の一部分の厚さが外殻の他の部分より大きい例示的外殻を示す。
【0035】
【図5A】図5Aは、略乳房形状の拡張可能な構成部品を持つ例示的移植可能な装置を示す。
【0036】
【図6】図6は、例示的駆動装置を示す。
【0037】
【図7A−7E】図7A−7Eは、例示的弁孔の特徴を示す。
【0038】
【図8】図8は、残留磁気力対ソレノイドコア偏位のグラフを示す。
【0039】
【図9】図9は、弁開時間を示す経時的に測定された例示的ソレノイド電流のグラフを示す。
【0040】
【図10A−10C】図10A−10Cは、弁ばねに組み込まれた例示的磁気増強パッドを示す。
【0041】
【図11】図11は、磁気増強パッドの代替的実施形態を示す。
【0042】
【図12】図12は、マスターキーが内部に配置された例示的遠隔制御装置を示す。
【0043】
【図13】図13は、例示的拡張システムを使用するための例示的医師用クイックリファレンスを示す。
【図14】図14は、例示的拡張システムを使用するための患者用クイックリファレンスを示す。
【0044】
【図15A−15C】図15A−15Cは、例示的安全弁の概念を示す。
【図15D−15E】図15D−15Eは、例示的安全弁の概念を示す。
【図15F−15H】図15F−15Hは、例示的安全弁の概念を示す。
【0045】
【図16】図16は、組織拡張システムに組み込むことのできる圧力安全弁の例示的実施形態を示す。
【図17】図17は、組織拡張システムに組み込むことのできる圧力安全弁の例示的実施形態を示す。
【0046】
【図18A−18C】図18A−18Cは、組織拡張器の1つ以上の領域から流体を放出し、かつ組織拡張器の領域に流体を充填するための例示的メカニズムを示す。
【0047】
【図19】図19は、組織拡張器の領域から流体を除去する例示的メカニズムを示す。
【0048】
【図20】図20は、組織拡張器の領域から流体を除去する例示的メカニズムを示す。
【0049】
【図21A−21B】図21A−21Bは、固有針ポートを持つ移植物の例示的実施形態を示す。
【図22A−22B】図22A−22Bは、固有針ポートを持つ移植物の例示的実施形態を示す。
【図23A−23B】図23A−23Bは、固有針ポートを持つ移植物の例示的実施形態を示す。
【図24A−24B】図24A−24Bは、固有針ポートを持つ移植物の例示的実施形態を示す。
【0050】
【図25A−25D】図25A−25Dは、組織拡張器を滅菌するための例示的方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本書の開示は、組織拡張器および組織拡張器の使用方法に関する。一部の実施形態では、組織拡張器は乳房組織を拡張するために使用されるが、組織拡張器は身体の他の領域の組織を拡張するために使用することができる。一部の実施形態では、組織拡張システムは、移植可能な組立体または移植物と、患者の体外に維持するように適応され、移植可能な部分の拡張を無線で制御するために患者によって作動させることのできる遠隔制御装置とを含む。移植可能な部分の拡張は、移植可能な部分が配置された身体の領域における組織の拡張を引き起こす。
【0052】
図1は、組織拡張システムの例示的実施形態を示す。組織拡張システム10は移植可能な部分20(本書では「移植物」ともいう)と遠隔制御装置30とを含む。この実施形態では、移植可能な部分は略乳房形状または構造を有し、例えば乳房切除術後の乳房再建に適応される。移植可能な部分20は外殻22と内袋とを含み、内袋は前部23と後部21とを備える。外殻の一部分および内袋の前部は、移植物の追加構成要素を示すために、除去された状態が示されている。内袋は、拡張可能な内部チャンバまたは区画を画定する。移植物20はまた、流体貯留器および弁24(組み合わされたときに、本書では一般的に「駆動装置」という)のみならず、通信構成要素25をも含む。駆動装置および通信構成要素は完全に内袋内に配置され、直接または間接的にそれに固定される。図1では、駆動装置24は、内袋の後部21に固定された受け台26に固定される。
【0053】
組織拡張システム10はまた、流体貯留器から拡張可能な内部チャンバへの流体の放出を制御するために、通信装置25を介して移植可能な部分と無線通信すると共に移植可能な部分に電力を供給するように一般的に適応された遠隔制御装置30をも含む。遠隔制御装置は筐体31、アクチュエータ32、および出力部33を含む。アクチュエータ32は操作可能なボタンとして図示される一方、出力部33は複数の可視表示器(例えばLED)として図示される。遠隔制御装置のアクチュエータは、任意の他の適切なアクチュエータ(例えばノブ、使用者の声を入力として受信するように適応されたマイクロホン等)とすることができる。出力部は、情報を伝達するために、例えば可視性、可聴性、触知性等のような任意の数の異なる種類の出力を提供することができる。
【0054】
図2〜3は、移植可能な部分の代替的実施形態の一部分の分解組立図を示す。図3は、組立体の構成要素の配置をより詳細に示す。図2は、内袋の後部およびそこに駆動装置が固定される方法を概略的に示す。移植物40の部分は、駆動装置を移植物に固定することを可能にする略「ハンモック」設計を示すが、そこで駆動装置は拡張可能なチャンバに不動に固定されない。この設計は、駆動装置と内袋との間の可動度を高める。図2の実施形態はまた、「高さ」または前部方向の駆動装置の突出を低減する。図示する移植物の部分は、フィルムバンド41、ハンモック43、駆動装置46、後部パネルバリア膜47、後部パネル52、シート材48、バリアリング49、および外パッチ50を含む。単なる例示的実施形態において、構成要素は以下の材料から作られる。すなわち、フィルムバンド41はポリエチレンフィルムであり、膜44を含むハンモック43はポリエチレンフィルムであり、後部パネルバリア膜47はポリエチレン/ポリ塩化ビニリデン(「PVDC」)フィルムであり、シート材48はテクスチャ加工シリコーン材であり、バリアリング49はポリエチレン/PVDCフィルムであり、外パッチ50はシリコーン材である。
【0055】
図示した移植物の例示的組立体では、フィルムバンド41の端部42は、後部パネルバリア膜47のシール領域53(図3に示す)に熱かしめされる。膜44のシール領域45は、後部パネルバリア膜47のシール領域54に熱かしめされる。熱かしめはハンモック43を後部パネルバリア膜47に固定させる。ハンモック43の端部45は、駆動装置46をハンモック43内に「懸架」させるように上部に配置される。バリアリング49は後部パネル52の8つのシール領域51(図3に1つだけを示する)に熱かしめされ、それによりシリコンシート材48がバリアリング49と後部パネル52との間に固定される。外パッチ50は、シリコーン接着剤を用いてシート材48に固定される。組み立てられた後、移植物40の部分は次いで移植物の残部(例えば内袋の前部および外殻)に固定することができる。
【0056】
図2および3に示す実施形態では、駆動装置の高さまたは突出が低減される。駆動装置は内部の拡張可能な構成部品に不動に固定されないので、移植物内の柔軟性が増大する。駆動装置の位置は、駆動装置によって引き起こされる不快感を緩和するために、解剖学的構造の部分に対してわずかに調整することができる。例えば駆動装置は、肋硬骨の上に配置される場合、枢動または揺動することができ、それによって患者の不快感が軽減される。この構成は、駆動装置を拡張可能なチャンバに不動に固定することなく、拡張可能なチャンバに固定することを可能にする。この設計は移植物内における駆動装置の運動に備えるが、フィルムバンド41は、患者の運動(例えば跳躍、でこぼこの多い地形での運転等)のため、駆動装置が過剰に動き回ることを防止するように働く。
【0057】
図4は、移植可能な部分(図示しない駆動装置および移植物アンテナ)の代替的実施形態を示す。内袋は、複数のフィンガ67を形成するジグザグカット付きの周辺シール66を有する略乳房形状の前部65を含む。内袋はまた、複数のフィンガ71を形成するように、同じく周辺シールの周りにジグザグカットを有する後部72をも含む。例示的製造方法において、フォーン・ダイヤル・フィルム74がフォーンダイヤル73を介して後部72に熱かしめされる。ハンモック69およびバンド68は、図2および3の実施形態と同様に、後部72の内面に熱かしめされる。前部65の周囲は後部72の周囲に熱かしめされ、内部の拡張可能なチャンバを形成する。内袋は組み立てられた後、次いで、前部62および後部63を備えた外殻61内に配置される。前部62および後部63は一体化することができ、あるいはそれらは、一体に固定された別個の構成要素とすることができる。内袋が外殻61内に配置された後、移植物を識別する情報を含むことのできる識別子75がフォーンダイヤル73に固定される。移植物はまた任意選択的に、移植物を被検者の体内組織に固定するのを助けるために使用することのできる、少なくとも1つの縫合タブ64をも含む。縫合は縫合タブを患者の体内組織に固定するために使用することができ、それによって移植物が患者の体内に固定される。縫合タブ64は、組立後に、シリコン接着剤のような接着剤により移植物に固定することができる。
【0058】
一部の実施形態では、前部65および後部72の周囲が一体に熱かしめされたときに形成される周囲は硬直化するおそれがあり、移植されたときに不快感を引き起こすことがある。図4の実施形態は、前部65および後部72両方の周囲に、この領域の剛性の量を低減するために、上述したフィンガを形成するジグザグカットを含む。一部の実施形態では、全てのフィンガが一体に熱かしめされるが、一部の実施形態では、フィンガが全部熱かしめされるわけではない。一部の実施形態では、フィンガ領域のスチフネスを軽減するために、フィンガの少なくとも1つが切断またはトリミングされる。
【0059】
1つ以上の例示的実施形態において、移植可能な部分の構成要素は以下の材料から作ることができる。すなわち、外殻はシリコーンゴムを含み、縫合タブはポリエステル(ダクロン)強化されたシリコーンゴムを含み、内袋はバリア膜であり、ハンモックおよびバンドはポリエチレンまたはバリア膜のいずれかであり、フォーンダイヤルおよびフォーン・ダイヤル・フィルムはシリコーンゴムである。
【0060】
図5は、外殻の一部分が外殻の他の部分より厚い代替的外殻を示す。内袋がその中に配置される(図4参照)外殻76は、領域77が領域78より厚い。厚い領域77は、外殻の後部裏当て、および後部裏当てに隣接する領域を含む。肥厚領域は、わずかに剛性であって移植物が移植されたときに不快感を引き起こすおそれのあるフィンガから患者を保護する(図4参照)。患者に不快感をもたらす他の構成要素が内袋に関連して存在する場合には、外殻は追加領域も厚くなるように適応することができる。
【0061】
流体がCOである実施形態では、それがガス貯留器から放出された後、内袋はCOに対するバリアを提供する。
【0062】
一部の実施形態では、内袋またはチャンバは非弾性であり、例えば非限定的に乳房のような解剖学的形状に予め形成される。貯留器から内部チャンバに流体が放出されたときに、内部チャンバは解剖学的形状に拡張する。これは、液体を充填されたときにバルーンが拡張する予め形成された形状を持たない液体充填弾性バルーンとは異なる反応を示す。内袋が予め形成された乳房の形状を有する場合、拡張後の形状は、皮膚が乳房の形になるように、乳房再建中に組織の生成が特に望まれる下極拡張を強調する。図1および4は、移植物の実質的な非弾性部分が乳房の構成または形状を有する例示的実施形態である。特に、これらの実施形態では、内部チャンバは、略乳房形状を有する非弾性構成要素である。
【0063】
一部の実施形態では、内袋は、一体に重ね合わせて内袋を形成する複数の材料層を含む。内袋に利用することのできる例示的材料は、参照によって本書に援用する2005年9月21日出願の米国特許出願公開第2006/0069403号明細書に見ることができる。一部の実施形態では、内袋はおおよそ1枚の紙の厚さを有し、比較的少量伸張する能力を有するが、弾性フィルムのような性質は持たない。内袋を所望の解剖学的形状に形成するために、内袋を形成する層は、所望の層状に互いに隣り合わせに配置され、加熱され、所望の形状を有する金型に加えられ、次いで金型で冷却される。次いで金型は取外される。例えば図4の実施形態では、前部85を形成する層は、上述の通り金型で形成することができる。
【0064】
内袋はその予め形成された形状に拡張する傾向があるので、非弾性内層の使用は、移植物が望ましくない形状に膨張することも防止する。これは、例えば真ん中が圧搾されるとドッグボーン状のバルーンになるホットドッグ形の弾性バルーンとは異なる。内袋を例えば乳房の形状に形成することにより、移植物が側方に(腕の下に)または上方に(鎖骨に向かって)拡張することが防止される。したがって、拡張される組織の形状は、内袋を特定の形状に形成することによって制御することができる。
【0065】
一部の実施形態では流体源はガス源であり、一部の実施形態ではガスは例えば非限定的にCOである。一部の実施形態では、ガス貯留器は約1ccから約50ccの内部容積を有し、一部の実施形態では約2ccから約10ccを有する。例示的実施形態では、圧縮ガス源は約5mlの総内部容積を有する。任意選択的に、大きい組織拡張は、内部容積が5mlの容器に約2.5グラムのCOを提供することによって達成することができる。これは15.5PSI(海面大気圧より0.8PSI高い)で約1200mlのCOをもたらす。正確な量は変動することがあるが、一部の実施形態では、一定の割合を使用することができる。例えば、内部容積1mL毎に0.5グラムのCOガスが充填された容器の場合、約240mLの最終容積(0.8PSI時)が存在する。貯留器は漏れのないキャニスタ内に格納することができる。
【0066】
外殻は一般的に、移植可能な装置のための組織界面をもたらす。一部の実施形態では、外殻はシリコーンから構成されるが、他の適切な材料から作ることができる。それは平滑にすることができるが、一部の実施形態では、移植物を患者の体内で安定化させるのを助けるために、外殻はテクスチャ加工される。外殻がシリコーン製外殻である場合、シリコーン製外殻は、COの透過に対する抵抗がほとんどない。
【0067】
組織拡張システムの移植可能な部分は、遠隔制御装置との通信を容易化するために、アンテナを含むことのできる通信構成要素を含む。一部の実施形態では、移植物が配置される領域で患者の身体に近接して遠隔制御装置が保持されたときに、遠隔制御装置とアンテナとの間の結合が最も容易になるように、通信構成要素は内袋の前部に固定される。例えば、図1の実施形態では、通信構成要素25は内袋の前部に固定される。通信構成要素25はまた内袋の上部に固定され、それは、遠隔制御装置が移植物の通信部と通信することを容易にすることができる。
【0068】
図5Aは、両方とも内袋502に固定された通信構成要素504および駆動装置506を露呈させるために、一部分を除去した内袋502(外殻は図示せず)を含む例示的移植物500を示す。移植物500はまた、縫合タブ508(第3タブは図示せず)をも含む。一般的に、内袋は示す通り前部および後部を含む。この実施形態では、後部は一般的に、内袋の裏当てまたは略平坦部分のみを指す。内袋の湾曲部は一般的に、前部とみなされる。加えて、内袋は図示する通り下部および上部を含む。移植物は、前部/後部および上部/下部を分離する面に基づいて、4象限に分割されるとみなすことができる。遠隔制御装置(図示せず)と通信構成要素504との間の結合をできるだけ効率的にするために、図示する通り、アンテナは内袋の前部および上部に固定される。
【0069】
内袋が予め形成された拡張構成を有する実施形態では、通信構成要素は、内袋が形成された複雑な三次元形状に取り付けられる。しかし、通信構成要素は、通信構成要素の重量およびスチフネスのため、内袋に固定されたときに、内袋の形状を変形する能力を有する。一部の実施形態では、内袋の形状を変化させずに通信構成要素を内袋に固定するために、通信構成要素は最初に薄膜層内に包封され、それは次いで内袋に固定される。包封された通信構成要素の取付け中に、形成された膜は、通信構成要素が内袋に取り付けられている間、通信構成要素全体に略均等な量の圧力を加える能力を有する。ESCAL(商標)袋のような材料は、内袋に積層されている間、包封された通信構成要素に必要な量の圧力を加えるための膜として使用することができる。これは、内袋が予め形成された形状を失うことを防止する。加えて、通信構成要素は、その位置をできるだけ患者の表面近くに維持するように、内袋の前部に配置される。これは、通信構成要素の遠隔制御装置との電磁結合を改善する。
【0070】
移植物はまた、流体貯留器と貯留器からの流体の流量を制御する弁とを備えた駆動装置をも含む。一部の実施形態では、流体貯留器は圧縮ガス源である。遠隔制御装置の作動により、弁を開き、貯留器から内部チャンバ内にガスを制御可能に放出することができる。一部の実施形態では、弁は電磁弁である。図6は例示的駆動装置の側面断面図を示す。駆動装置80は、COキャニスタとキャピラリプレートとの間に気密シールを形成するワッシャとして図示されたシール88により、キャピラリプレート87に螺着されたCOキャニスタ89を含む。一部の実施形態では、キャニスタおよびキャピラリプレートは金属であり、シールは金属ワッシャである。装置は大きい圧力容器と比較して小さいので、シール(すなわち金属ワッシャ)を「圧潰」して金属表面間を接触させるのに必要な力の量を容易に発生させることができる。キャニスタがキャピラリプレート内に螺着されたときに、キャニスタの接点90およびキャピラリプレート素材片の接点91は金属ワッシャと接触し、金属オン金属接触が発生し、金属ワッシャは2つの接点間の周りに気密シールを形成する。キャニスタおよびキャピラリプレートのねじ山もシールを増強する。加えて、2つの接点間の金属オン金属接触およびねじ山によって形成されるシールは、2つの金属部材間の通路を密封するのに(COが透過できる)Oリングのような弾性部材に依存せず、したがって接点の周囲のシール88による部分90および91間の金属オン金属接触は、シールを形成するためにOリングだけを使用する場合より、ずっと優れた気密シールを形成する。本書のシステムのいずれかに組み込むことのできる追加の例示的駆動構成要素は、参照によって本書に援用する米国特許出願第11/231482号明細書に見ることができる。
【0071】
駆動装置80はまた、ソレノイド筐体82、コア84、コイル85、およびバネ/シール組立体86を含む。ばね/シール組立体86の中心は、コイル85に通した電流によって発生する磁場に応答して、図で左に作動する。ばね/シール組立体の中心が左側に移動すると、弁孔の出口が開き、COの放出が可能になる。コイルの電流を停止すると、磁場が消え、したがってばね組立体およびゴム製シールは、孔を閉鎖する位置に戻る。これによりCOの放出が停止する。
【0072】
図6に示す例示的実施形態では、キャピラリプレート87および弁孔は単一の部品から作られ、あるいは互いに一体化される。一部の実施形態では、キャピラリプレートはステンレス鋼である。図7A〜7Eは、弁孔91、チャネル92の表面によって画定される管腔、および弁孔93の外面を含むキャピラリプレートの部分を示す。一部の実施形態では、弁孔直径(チャネル92によって画定される管腔の内径)は約0.001〜0.005インチ、例えば約0.002インチである。一部の実施形態では、外径93は約0.004〜0.015インチ、例えば約0.006インチである。図7Aに示す他の寸法もインチ単位である。チャネル92の管腔は、例えばマイクロドリリングによって形成することができる。弁孔の小さい内径は、孔が流量制限器として作動することを可能にする。チャネル92もまた非常に小さい直径を有し、したがって同じく流量制限器としても作動し、所定の時間当たりの送達量を変動または調整することができる。図7Eは穴の端面図を示し、真ん中の陰影領域は、チャネル92によって画定される管腔である。
【0073】
図6に示すソレノイドを組み立てる一部の実施形態では、ソレノイド構成要素を全部同時に一体に接着するために、エポキシ接着剤がソレノイド筐体82の穴92内に注入される。
【0074】
電磁弁では、磁場が除去された後で磁性体に残留磁気が生じることがある。これは、電磁弁を所望するより長く開いた状態に維持させるおそれがある。本書に記載する移植物では、所望するより長く開いたままの弁は、結果的に内部チャンバ内に放出されるCOが過剰になり、下述する遠隔制御装置による推定充填量の追跡の精度が低下することがあり得る。一部の実施形態では、残留磁気の量を低減するために、コアを(例えば図6では左側に)特定の量だけ偏位させ、あるいはコア84とばね組立体との間にシムを配置することができる。図8は残留磁気力対コア偏位(インチ単位)を示し、コアの偏位が大きければ大きいほど、残留磁気力が少なくなることを示す。
【0075】
弁の性能は、(抵抗器の電圧として測定される)ソレノイド電流を経時的に測定することによって試験することができる。弁の開時間は、この測定から、内部仕様を満たすように決定することができる。図9は、経時的に測定された、「弁開時間」を示す例示的ソレノイド電流を示す。
【0076】
遠隔制御装置の作動ボタンが作動するたびにキャニスタによって放出されるガスの量は、試験中にボタンが押された後に毎回キャニスタを秤量することによって決定することができる。この量の決定は、下述の通りソフトウェア内に取り込まれる。
【0077】
図10A〜10Cは、ばねの中心部の飽和を防止する磁気増強パッドの例示的実施形態を示す。図6に示したばね/シール組立体86に使用することのできる渦巻きばねが示される。ソレノイドコイル85に電流が流れると、内側円板102に磁束が発生し、内側円板は磁気的に飽和することができる。図示するばねは外側環状要素100および内側円板102を含み、それらはヒンジ要素104、106、および108で接続部分110によって接続される。ばねはまた、例えばスポット溶接によって円板102に取り付けられた第2円板120をも含む。第2円板120はばねの中心が磁気的に飽和することを防止するのに役立ち、磁場によりよく反応する(すなわちより高い透磁率を有する)。これは、弁を開くためにより大きい力がばねの中心部に加えられることを可能にする。
【0078】
図11は、図10Aおよび10Bに示した円板120の代替例として使用することのできる磁気増強パッド132を示す。パッド132には、概してパッドの周縁部に複数の貫通穴134が形成される。パッドに穴を形成することにより、パッドの質量が穴のない円板120より低くなる。使用中に、磁場が生じると、ばね組立体はそれに取り付けられたパッド132(または円板120)を弁孔に向かって加速させ、その結果衝撃が生じる(したがって弁を閉じる)。パッド132のような質量の低いパッドは、ばね組立体が閉構成に向かって移動するときに、弁孔に対して低い衝撃力を加える。パッドによって加えられる低い力は、弁の摩耗の低下を意味し、それは信頼性、安全性を高め、かつ弁の寿命を長くする。
【0079】
使用時に、移植可能な部分は、内部チャンバが拡張された構成ではない折り畳まれた構成で患者の体内に配置されるように適応される。折り畳まれた構成は、患者の体内への移植可能な部分の挿入を容易にする。移植物は、患者の体内で、組織を拡張しようとする任意の適切な位置に配置することができる。幾つかの使用方法において、移植可能な部分は乳房切除術後に患者の体内に配置される。そのような実施形態では、移植物は、切除された乳房組織の領域における例えば筋肉下、部分的筋肉下、または皮下の位置に配置することができる。
【0080】
移植可能な部分が患者の体内に配置された後、流体貯留器から弁を介して内部チャンバ内に流体が放出されるように遠隔制御装置が起動される。「バープ(burp)」を本書では流体が貯留器から放出される事象という。拡張可能な内部チャンバ内への流体の周期的または連続的放出は、時間と共に内部チャンバを拡張させ、それは移植物に近接する組織の拡張を引き起こす。所望する拡張量まで組織が拡張されると、移植物を患者から取り出すことができ、暫定的移植物を恒久的移植物に置き換えることができる。
【0081】
遠隔制御装置は、流体貯留器から放出される流体の量を経時的に制御するように適応される。使用者が遠隔制御装置のアクチュエータを作動させると、駆動装置内の弁が開き、COのような流体が貯留器から拡張可能な内部チャンバ内に放出される。
【0082】
組織拡張システムは、本書に記載する機能を実行するために種々の電子構成要素を備える。電子構成要素は遠隔制御装置、移植物に配置することができ、あるいは電子機器の一部は制御装置内に配置することができ、一部は移植物内に配置される。一般的に、組織拡張システムは、流体貯留器からの流体の放出を制御するために、遠隔制御装置が移植物と無線通信しかつ移植物に電力を提供することを可能にする電子構成要素を含む。上述したような一部の実施形態では、移植物は駆動装置と通信するように適応されたアンテナを含む。遠隔制御装置の作動がソレノイドコイルに流れる電流を誘導して弁を開かせ、それによって貯留器から流体が放出されるように、アンテナは、遠隔制御装置が作動すると遠隔制御装置のアンテナと電磁結合するように適応される。このようにして、遠隔制御装置は、誘導結合を介して移植可能な移植物に電力を提供するように適応される。暫定的電力の駆動装置への伝達を促進するために、外部装置のアンテナおよび移植可能な装置は、互いに特定の範囲内に存在しなければならない。遠隔制御装置と移植物との間の電力の伝達は、代替的に高周波リンクまたは他の種類の無線リンクを介して実行することができる。
【0083】
一部の実施形態では、遠隔制御装置は、システムの電子構成要素の一部または全部に電力を提供するために、再充電可能な電池のような電源を含む。移植可能な部分もまた、移植可能な部分内の電子構成要素に電力を提供するために、電源を備えることができる。
【0084】
一部の実施形態では、電子構成要素は、拡張可能なチャンバの拡張に関する情報のような情報を格納するために、1つ以上のメモリ素子(例えばRAM、Flash)を含むことができる。
【0085】
遠隔制御装置はまた、患者に情報を提供するための1つ以上の出力部のみならず、患者から命令を受信するための入力部をも含むことができる。出力部は可聴性、可視性、および振動のような触知性出力部を含むことができる。入力部はボタン、ノブ、タッチスクリーン、マイクロホン等のようなアクチュエータとすることができる。
【0086】
電子構成要素は任意選択的に、ソフトウェア、例えば非限定的に、ガス源から拡張可能なチャンバ内に放出されたガスの総量を予め設定された最大充填量と比較するアルゴリズムを実行するように適応された、回路構成および/またはマイクロプロセッサを含むことができる。ソフトウェアはさらに、投与量の制限(投与量/バープ、投与量/時間を含む)および投与が行われる頻度をプログラムすることができる。一部の実施形態では、処理構成要素は遠隔制御装置に配置され、投与量の制限および投与が行われる頻度の制限をプログラムされたアルゴリズムを含む。一部の実施形態では、遠隔制御装置が起動されると、処理構成要素は、所定の期間内に流体が流体源から放出された回数を、流体が所定の期間内に流体源から放出することを許可された最大回数と比較するように適応される。流体が所定の期間内に放出された回数が、流体が所定の期間内に流体源から放出されることを許可された最大回数より大きいかそれと等しい場合、遠隔制御装置は流体源からの流体の放出を開始せず(すなわち弁は閉じたままになる)、かつさらに、エラーが発生したことを示すために、可聴警報またはランプの点灯のような出力を使用者に提供するように適応することができる。一部の実施形態では、遠隔制御装置は停止するように適応される。処理構成要素にプログラムすることのできる例示的制限は、最大で約1時間毎に1回の投与(1回以上のバープから構成される)から約24時間毎に1回の投与を含む。一部の実施形態では最大投与量は約1時間毎に1回の投与であり、一部の実施形態では最大投与量は約3時間毎に1回の投与であるが、例えば約5時間毎に2回の投与とすることもできる。例えば、制限が1時間ごとに買いの投与であり、使用者がアクチュエータを1時間以内に2回作動させると、遠隔制御装置は2回目の作動時に流体を流体源から放出しない。これらの量は単なる例示であって、限定を意図するものではない。
【0087】
一部の実施形態では、遠隔制御装置が作動すると、処理構成要素は、所定の期間内に流体源から放出された流体の量を、所定の期間内に流体源から放出することを許可された流体の最大量と比較する。所定の期間内に放出された流体の量が、所定の期間内に流体源から放出することが許可された流体の最大量より大きいかそれと等しい場合、遠隔制御装置は流体源からの流体の放出を開始せず、上記の通り、使用者に出力を提供することができる。処理構成要素にプログラムすることのできる例示的制限は、24時間毎に約5mLから約100mLの最大量の制限を含む。一部の実施形態では、1日の許容量は約10mLから約50mLまでである。例えば一部の実施形態では、1日の量の制限は約24時間毎に約30mLである。使用中に、厳密に24時間の制限は、患者の日課に対して重荷になり得るので、代わりに略24時間(例えば20〜22時間)の制限をシステムにプログラムすることができる。これらは全て、約24時間とみなされる。一部の実施形態では、処理構成要素は最大3時間の量制限がプログラムされる。例えば一部の実施形態では、約3時間毎に約10mLの制限がシステムにプログラムされる。
【0088】
処理構成要素はまた、1回の投与中または1回のバープ中に放出される流体の量に対する制限をプログラムすることもできる。一部の実施形態では、遠隔制御装置が作動すると、処理構成要素は、最大量を超える流体が流体源から放出されるのを防止するように適応される。例えば一部の実施形態では、システムは1回の投与当たり約1mLから約50mL、1回の投与当たり1mLから約40mL、1回の投与当たり1mLから約30mL、1回の投与当たり1mLから約20mLを放出するようにプログラムすることができる。一部の実施形態では、システムは1回の投与当たり約5mLから約15mLを放出するようにプログラムすることができる。一部の実施形態では、システムは1回の投与当たり約10mL以下を放出するようにプログラムされる。1回の投与中に10mL超が放出されたことをシステムが検知すると、さらなる流体が放出されるのを防止するために遠隔制御装置は停止することができ、弁は自動的に閉じることができ、あるいは他の措置を講じることができる。一部の実施形態では、投与は複数のバープから構成される。所望の投与を近似させるために、整数回のバープを使用することができ、あるいは完全バープおよび部分的バープの組合せを使用してより微細に調整された投与量を達成することができる。
【0089】
処理構成要素はまた、流体源から放出された流体の総量を推定するようにプログラムすることもできる。遠隔制御装置が作動すると、処理構成要素は、流体源から内部チャンバ内に放出された流体の総量を移植可能な構成要素の最大充填量と比較する。これは、予め設定された制限を超える移植物の過剰拡張を防止することができる。ガス源から放出された総量が最大充填量を超えることが処理構成要素によって推定された場合、例えば本書に記載する通り、周期的保守量が要求されない限り、遠隔制御装置は遠隔制御装置のさらなる作動によるガスの放出を防止する。
【0090】
一部の実施形態では、移植可能な流体はCOであり、時間が経つとCOは内袋/外殻組立体から漏出する。内袋はCOバリアを設けるように適応することができるが、一部のCOは、時間が経つと内袋の層を介して拡散する。COはポリマーの分子構造を介して拡散することがあり得、ポリマー材内に完全に格納することは本質的に不可能である。内部構造の内部構成要素を介するCOの透過性のレベルを決定するために、既知の量のCOが内部区画内に放出され、内部区画は生理食塩水に浸漬される。COは時間が経つと内部区画を介して生理食塩水内に拡散する。内部区画の容積の周期的測定が経時的に行われ、それはCOの透過率の推定をもたらす。一部の実施形態では、内部区画は約0から3mL/日の間で透過可能である。
【0091】
処理構成要素は、その計算の一部または全部でガスの透過率を考慮するように適応することができる。例えば、任意の時期に移植物内に配置されるガスの全量を調整するために、処理構成要素は、ガス源から放出されたガスの全量に透過率を考慮することができる。処理構成要素はしたがって、透過のために喪失した量に等しいガスの充分な量を拡張可能なチャンバ内に放出して、移植物の外に透過したガスを補うことができる。使用中に、移植物の完全な拡張が発生した後、患者は、移植物を恒久的移植物に置き換えるために外科手術を実行することができるようになるまで、一定期間(例えば1ヶ月)待たなければならないことがある。この待機期間中に、一部のCOが移植物から拡散することがあり得る。これらの状況下で、内袋を介して拡散したCOを補償するために、貯留器から内部チャンバ内に追加のCOを放出する周期的保守投与を実行することが必要になることがある。これは、組織の拡張が完全拡張後に達成されたレベルに維持されることを確実にすることができる。
【0092】
システムは、医師がコンピュータまたはスマートフォンのような別個の電子素装置に再プログラミングキー、プログラミングステーション、および/またはアプリケーションを使用して、プログラムされたパラメータのいずれかを修正、または再プログラミング(恒久的または暫定的に)することができるように、再プログラミングキーを含むことができる。制限は、医師が、図12に実施例を示す医師マスターキー(「PMK」)を用いて、無効にすることができる。図12では、遠隔制御装置は、医師が既存のシステムパラメータを変更することを可能にするためにPMK37を挿入することができるように開くことのできる扉36を含む。
【0093】
一部の実施形態では、遠隔制御装置または移植可能な部分または両方が、非限定的に日付/時刻、エラー状態、不良巡回冗長検査(「CRC」)、送達される投与量、電池の電圧、状態(オン/オフ)、所定の投与量のためのバープ回数、成功したバープ送達、移植物中の推定総ガス量、ガス源内に残存する推定ガス量等のような、システムの使用に関する情報を格納することのできるメモリ構成要素(恒久型または取外し可能型のいずれか)を含む。格納されたデータは、USBポートを遠隔制御装置に組み込み、遠隔コンピュータワークステーションの情報を無線でダウンロードし、あるいはフラッシュドライブのような取外し可能な格納装置に情報を転送することによるなど、多種多様な公知の手段によって遠隔制御装置から抽出することができる。
【0094】
以下のステップは、本書に開示する組織拡張器のいずれかを使用する1つ以上の方法で実行することのできる例示的方法ステップである。組織拡張器を使用するときに、方法ステップの全部を必ずしも実行する必要はない。ステップのいずれかの順序もまた、実際の使用において変更することができる。
【0095】
初めて使用する前に、移植物および遠隔制御装置は互いに結合され、それにより遠隔制御装置はいずれかの他の移植物と通信することが防止される。結合ステップは典型的には、移植物が移植される前に医療従事者によって実行されるが、移植後にも行うことができ、また患者が実行することもできる。一部の実施形態では、移植物は4つのサイズの1つおよび8つのチャネルの1つであり、結果的に32の構成が得られる。一部の実施形態では、結合は、結合キーが遠隔制御装置内に挿入された後でしか実行することができない。結合キーが挿入され、移植物が遠隔制御装置に結合されると、遠隔制御装置はそのモデルおよびチャネルに結合される。遠隔制御装置に配置することのできるメモリ構成要素は、結合キーから以下の情報、すなわち送達率(cc/バープ)、移植物透過率(cc/日)、および開始移植物推定容積(cc)(通常0に設定される)を含め、移植物モデル番号、移植物チャネル番号、移植物容積充填制限(cc)を含むキャニスタ投与量較正、吐読み出し、かつ格納する。結合ステップから遠隔制御装置に格納されたパラメータは、上述した制限計算に使用することができる。
【0096】
代替的実施形態では、各移植物は一意のシリアル番号チップを含む。システムの使用前に、この一意のシリアル番号チップを用いて、遠隔制御装置を一度に一意の移植物に結合することができる。この結合シーケンスの後、遠隔制御装置はその一意のシリアル番号を認識し、それを持つ拡張器に投与を行う。代替的に、全ての結合データを移植物に格納することができ、キーは使用しない。移植物は、それが結合されたことを登録して、別の制御装置への結合が受け入れられないようにする、内部メモリを持つことができる。
【0097】
結合キーから移植物データを格納するかまたは他の初期データ転送の後に、成功したバープの総回数が零に設定され、放出された推定ガスの現在量が開始時の移植物の推定容積に設定される。移植物データを格納した後、遠隔制御装置は、この情報が別の遠隔制御装置によってダウンロードされるのを防止するために、それを結合キーから消去する。しかし、その移植物データが消去された結合キーは、それが使用される任意の投与遠隔制御装置でマスターキーとして機能することができる。移植物データを格納した後、遠隔制御装置は検出モードに入る。
【0098】
以下の特徴はいずれも、例えば検出モード中に発生するように、1つ以上の電子構成要素にプログラムすることができる。検出モードに入る前に、遠隔制御装置は移植物の透過率に基づいて移植物の総容積を更新する。検出モードに入ると、遠隔制御装置は、移植物の総容積を容積充填制限と比較する。移植物の総容積が容積充填制限と等しいかそれより大きい場合、遠隔制御装置は可聴音または表示ランプの点灯のような出力を提供し、遠隔制御装置は作動を停止する。他の種類のエラー表示をシステムに組み込むことができる。検出モードに入ると、遠隔制御装置は、概して直前の24時間以内に放出されたガス量を、24時間の制限値と比較する。放出された量が24時間の制限値と等しいかそれより大きい場合、エラー警報が発生し、遠隔制御装置は作動を停止する。検出モードに入ると、遠隔制御装置は、最後に成功した投与以来の時間を投与間の最小時間と比較する。最後の投与以来の時間が投与間の最小時間に満たない場合、エラー警報が発生し、かつ/または遠隔制御装置が作動を停止する。検出モード時に、遠隔制御装置が移植物を検出しない場合、表示ランプはどれも点灯しない。検出モード時に、移植物が検出された場合、遠隔制御装置はその型式およびチャネル番号またはシリアル番号を読み取る。検出モード時に、遠隔制御装置が、容認できない結合レベルで、その結合モデルおよびチャネル番号と一致する移植物を検出すると、容認できる結合領域からの距離を示す音を出し、かつ所定の色の比例個数の表示器LEDを点灯する。検出モード時に、遠隔制御装置が、容認できる結合レベルで、その結合モデルおよびチャネル番号と一致する移植物を検出すると、最大達成可能な結合からの距離を示す容認できる結合音を再生し、かつ特定の色の(最大可能結合の%に比例する)4個または5個の表示器LEDを点灯する。検出モード時に、投与を完了することができるように移植物が充分にチャージされ、かつ電力結合が充分なレベルである場合、遠隔制御装置のアクチュエータが作動して投与量を送達する。充分なチャージングおよび電力結合は、所定の色の4個または5個のLEDが点灯したときに、遠隔制御装置によって示される。
【0099】
遠隔制御装置は、投与モード時に以下の機能のいずれかを実行するようにプログラムすることができる。投与モードに入ると、遠隔制御装置は、処方された投与量、概して24時間の投与量制限から最後の24時間に与えられた投与量を差し引いた量、移植物充填制限から放出された総推定ガス量を差し引いた量、および処方投与量から最後の放出で与えられた投与量を差し引いた量(投与間の最小時間)のうちの低い方の値に当たる所望の投与量を放出するように、移植物に命令する。バープは移植物の弁を開いて約0.250秒+/−0.002秒間保持することによって発生するが、この時間は限定を意図するものではない。投与は整数回のバープを命令することによって行われる。遠隔制御装置はバープ間に最小限0.250秒間待機する。所定の投与で適用されるバープの回数は、概して24時間の投与制限および移植物の充填制限のどちらも超えないように計算される。処方された投与量の超過は約25%以下としなければならない。メモリ構成要素は、時間および各投与後に送達された成功した推定総量の履歴を格納することができる。メモリ構成要素は、移植物の現時点の推定総容積を維持する。メモリ構成要素は、成功したバープの現時点の投与総回数を維持する。処理構成要素は、成功したバープの現時点の投与総回数および結合時に提供されるキャニスタ投与較正に基づいて、バープ1回につき放出されるガスの量を計算することができる。バープ間に、移植物のチャージングが適切に進行していないことを遠隔制御装置が検出すると、投与の失敗を指摘し、検出モードに戻る。バープ間に、チャージングが指定された時間量(例えば3秒)より長くかかる場合、遠隔制御装置は、適切な出力(例えば可視または可聴出力)を患者に提供することによって投与の失敗を指摘し、次いで検出モードに戻る。各バープ前に、遠隔制御装置は、移植物モデルおよびチャネル番号が、遠隔制御装置の結合された移植物およびモデル番号と一致することを確認する。それらが一致しない場合、遠隔制御装置はエラー出力を提供し、作動を停止する。
【0100】
上述の通り、医師が設定範囲外の流体の放出を制御できるようにするために、マスターキーを使用して、システムのプログラムされた制限を無効にすることができる。マスターキーが遠隔制御装置に配置されるか、または遠隔制御装置と通信状態にあるときに、24時間の最大限度を無効にすることができる。マスターキーが遠隔制御装置にあるときに、投与間の最小時間は0に設定される。マスターキーが遠隔制御装置にあるときに、全ての投与量は処方された投与量である。処方された投与量が整数回のバープから構成されない場合、マスターキー付きの遠隔制御装置は、投与毎に適用されるバープの回数を切り上げることができる。マスターキーが遠隔制御装置から取り外された後、以前にプログラムされた制限が再び実施される。
【0101】
システムは任意選択的に制限キーを含む。それは、遠隔制御装置に挿入して、当初の制限を制限キーに格納された制限に置換するために使用することのできるキーである。制限キーが検出されると、遠隔制御装置はその格納された制限を、制限キーからの制限と置換する。新しい制限が格納された後、制御装置はキーから制限を再び読み出し、それらを格納された制限と比較する。制限のプログラミングに成功した後、キーを取り外すと、装置は検出モードに入る。
【0102】
システムは任意選択的に、遠隔制御装置内に挿入するように適応されたオーバライドキーを含むことができる。オーバライドキーが遠隔制御装置にある場合、24時間最大制限は無効化される。投与間の最小時間は零に設定される。最大充填制限は無効化され、全ての投与量は処方投与量である。処方投与量が整数回のバープから構成されない場合、オーバライドキー付きの遠隔制御装置は、投与毎に適用されるバープの回数を切り上げることができる。オーバライドキーが挿入されると、遠隔制御装置はそのログファイルの内容をオーバライドキーに書き込む。ログファイルをオーバライドキーに書き込むときに、遠隔制御装置は以前のログファイルに上書きする。オーバライドキー上のログファイルは、ファイルが書かれた文字および時間、ならびに制御装置が結合された移植物のモデルおよびチャネル番号を含むヘッダを含む。オーバライドキーが遠隔制御装置から取り出された後、以前にプログラムされた制限が実施される。
【0103】
一部の実施形態では、メモリ構成要素は、指定されたシステムインタラクションのログファイルを維持する。各要求投与に対し、日付および時刻、その投与に対して算出されたバープの回数、その投与で成功したバープの回数、および投与の終了時の移植物の推定容積を含むエントリがログファイルに行われる。遠隔制御装置の作動が開始されるたびに、日付および時刻、移植物容積、および電池電圧を含むログエントリを行うことができる。遠隔制御装置が作動を停止する前に、遠隔制御装置は、日付および時刻、電源投入後の不良CRCメッセージの回数、ならびに最後のエラーコードを含むエントリをログファイルに行うことができる。ログ・ファイル・メモリが制限される場合、最も新しい記録が維持され、最も古い記録は消去される(先入れ先出し)。
【0104】
一部の実施形態では、メモリ構成要素は処置および装置の機能性の情報を格納する。一部の実施形態では、情報は移植物に格納され、したがって遠隔制御装置は汎用とすることができる。すなわち、遠隔制御装置は特定の移植物に結合されず、患者特有のデータは遠隔制御装置に格納されない。
【0105】
上記の開示は、遠隔制御装置の機能性(例えば結合機能、マスターキー、オーバライド等)の文脈で、幾つかの例示的使用方法を記載している。医師用の例示的クイック・リファレンス・ガイドを図13に示す。図14は、投与指示を提供する患者用の例示的クイック・リファレンス・ガイドを示す。患者用の投与指示に加えて、移植可能な装置の1つの実施例は、拡張中は飛行機による旅行をしないように、約1000メートルを超える登りを含む地上輸送による旅行をしないように、かつ数時間にわたって痛みの度合が増加する場合、容積を増大させず、医師に連絡するように、患者に助言すべきであることを示唆している。
【0106】
一部の実施形態では、医師は移植物のキットから、または利用可能な多くの移植物のサイズから、移植物を選択する。移植物のサイズは部分的に、患者の胸壁寸法のような患者パラメータに基づくことができる。一部の実施形態では、移植物は容積が対応する恒久的移植物より20%大きい。表1は、4つの異なるサイズの移植物およびそれぞれの性質の例示的リストを提供する。医師はそこから移植用に1つを選択することができる。


【0107】
投与ガイドの態様は、患者の快適性に応じて異なる。患者が最小限の快適性しか経験していない場合、システムにプログラムされたパラメータに対する制限に従って、ガスの放出は一般的に連続させることができる。不快感のレベルに基づいて患者が組織拡張の量を制御することが可能になり、拡張を従前の処置よりもっと連続的に行うことができ、それは圧力を低下させ、総拡張時間を短縮することができるので、他の組織拡張技術より優れた例示的利点がもたらされる。
【0108】
移植物のラベル付けされた容積が達成されると、移植物の過剰な加圧を回避するために、さらに容積を追加する能力は著しく低下する。この時点で、処理構成要素は一般的に、ガス貯留器からのガスの緩速透過に等しい容積放出だけを許容する。
【0109】
一部の実施形態では、移植可能な部分は、拡張可能な内部チャンバから特定量のガスを解放して内部チャンバ内の圧力を緩和させるように構成された、1つ以上の圧力安全弁を含む。圧力安全弁の潜在的な用途として、標高管理がある。移植物を移植された患者の標高が高くなると、外部圧力が低下し、移植物内部のガスが膨張する。一部の実施形態では、システムは、移植可能な部分または(患者旅行中は患者と同一標高に維持する必要のある)遠隔制御装置内に位置することのできる圧力センサを含む。圧力センサは圧力/標高を監視し、メモリ構成要素は示度を記録することができる。圧力センサが遠隔制御装置内に配置される場合、遠隔制御装置はオン状態になるたびに圧力を監視するように、またはオン状態中に定期的圧力測定を行うように、適応することができる。遠隔制御装置は、自動的にまたは使用者に遠隔制御装置を作動させるように促した後で、移植可能な部分にある圧力安全弁の開放を制御するように適応することができる。一部の実施形態では、圧力センサは移植物内に配置され、移植物が電源を有する場合、それは圧力安全弁を自動的に開放させることができ、あるいはセンサは遠隔制御装置に通信信号を送信して、患者に遠隔制御装置を作動させ、それにより安全弁を開放させるように、注意喚起することができる。遠隔制御装置は、第1アクチュエータに貯留器からガスを放出させ、かつ(ボタンのような)第2アクチュエータに安全弁の開放を制御させるように適応することができる。
【0110】
システム内のメモリ構成要素はまた、移植物から排出されたガスの量を記録することもできる。この量の記録は、患者がより低い標高に戻った後、排出されたガスを補うために、キャニスタからどれだけの量のガスを放出すべきかを計算するために使用される。遠隔制御装置はまた、排出が頻繁すぎて、排出された量を補うための充分なガスがガス貯留器内に残っていない場合、患者に警報するための出力を提供するように適応することもできる。
【0111】
図15A〜Hは、本書に開示する組織拡張システムのいずれかに組み込むことのできる例示的安全弁の概念を示す。一部の実施形態では、圧力は内部チャンバから放出され、安全弁は再密閉されない。他の実施形態では、安全弁は再密閉能力を有する。
【0112】
図15Aは、内袋のバリア層150の少なくとも一部分が逆ドーム152に結合された移植物の一部分を示す。内袋内部の圧力「P」が増大すると、ドーム150の反転または飛出しを引き起こして、穿孔要素154にバリアファイル150の一部分を穿孔させ、ガスを内部チャンバから放出させることができる。穿孔構成要素154は、内袋の別の部分に、または外殻にさえ結合させることができる。
【0113】
図15Bは、バリア膜の第1部分156およびバリア膜の第2部分157が位置158で例えば熱かしめによって一体に結合された、移植物の一部分を示す。内部チャンバ内部の圧力「P」が高まると、熱かしめされた膜の分離を引き起こし、内部チャンバからガスが放出される。
【0114】
図15Cは、穿孔要素159が熱かしめ領域に形成または固定された移植物の一部分を示す。内袋内部の圧力「P」が充分に高まると、穿孔要素は内袋を穿通し、内部チャンバからガスが放出される。
【0115】
図15Dは、膜162がバリア層164に固定された移植物の一部分を示す。レバーアーム166は、磁気リング168と同様に、磁性体を含む。内部チャンバ内部の圧力「P」が高まると、膜162は示すように湾曲し、レバーアーム166を磁気リング168から離反させる。これにより、ガスは図示する矢印Gの方向に逃散する。
【0116】
図15Eは、フィルム円板が圧力を受けると、レバーアーム170がフィルム円板172によって押されるので、レバーアーム170が点178を中心に回転する移植物の一部分を示す。アーム170がある程度回転した後、アームの穿孔要素174がフィルム円板の第2領域内に嵌合する。これによりガスが内部チャンバから放出される。
【0117】
図15Fは、箔(または他の適切な材料)のドーム180が圧力「P」の増加により反転するように適応された移植物の一部分を示す。ドームが反転すると、応力が集中する領域182が断裂し、内部チャンバからガスが逃散することが可能になる。
【0118】
図15Gは、磁性体190および188が膜を内側に偏倚させる移植物の一部分を示す。内部の圧力「P」が増大すると、膜186は図示するように外側に湾曲し、そこで複数の穿孔要素192が膜186を穿孔し、ガスを逃散させる。
【0119】
図15Hは、膜194が破断円板の層198の間に維持される移植物の一部分を示す。破断円板は、圧力「P」が増大し、膜194が切込み196内に押し込まれたときに、膜194を断裂させるように適応した破損開始切込み196を含む。
【0120】
一部の実施形態では、弁は磁性体を含み、第2磁性体が第1磁性体に近接移動したときに、弁が作動する。これにより、例えば放射線治療の前に、ガスが排出され、組織拡張器は収縮する。弁は再密閉可能とすることができる。磁石が取り除かれると、弁は閉じ、内袋は、駆動装置内の貯留器から追加ガスを再充填することができる。この手法は、患者が高地に旅行しなければならず、移植物内のガスの膨張から痛みまたは不快感を経験するときに、ガスを抜くために使用することもできる。代替的に、下述する方法のいずれかを用いて、内袋に生理食塩水のような液体を充填することができる。一部の実施形態では、安全弁は、遠隔制御装置に収容された電子的に作動するアクチュエータである。
【0121】
図16および17は、本書に開示する組織拡張器のいずれかに組み込むことのできる、再密閉能力を持つ圧力安全弁の例示的実施形態を示す。図16に示す通り、圧力安全弁は、接着剤を使用して外弁筐体267に固定密着された流量制御チューブ270を含む。内弁筐体265は外弁筐体267に螺合され、所望の量の弁開放を決定するばね/シール組立体264およびシム266を保持する。流量チューブ270の端部の弁座271は、弁が閉じたときにばね/シール組立体264の弾性部分との漏れの無いシールを確実にするために、平滑化される。弁磁石263は、接着剤を使用してばね/シール組立体264に装着固定される。弁筐体は、弁を内袋260に熱かしめする262能力をもたらす保持リング261内に保持される。保持ナット269はシールワッシャ268および外弁筐体267とシールワッシャ268との間の保持リング261の部分を圧迫し、このようにして弁筐体と保持リングとの間に密着をもたらす。
【0122】
図17に示す通り、弁は、制御磁石275を弁磁石263に近接させることによって開放される。これは、ばね/シール組立体に取り付けられた弁磁石を矢印の方向に移動させる。ばね/シール組立体の移動は弁を開放させ、矢印で示すように、流量制御チューブ270の管腔を介し、かつ弁座271を越えて内部チャンバからガスを流出させる。
【0123】
組織拡張器の一部の実施形態は、流体が貯留器から患者の体内の内部チャンバに放出された後、流体を除去させるように適応される。これの実施例として、圧力が大きくなりすぎたときに、上述した圧力安全弁を使用して、内部チャンバからガスを放出させる。移植物から流体を放出または除去することが望ましい、追加的な潜在的状況が存在する。例えば、乳房切除術を受けた女性のための現在のプロトコルの中には、組織拡張器を患者の体内で拡張させた後、それを収縮させ、治療のため組織に放射線を照射し、次いで放射線治療後に装置を再び再拡張させることを含むものがある。
【0124】
移植物からガスを放出させる実施形態の中には、次の特徴、すなわち1)一部の実施形態では体内で、他の実施形態では体外で、ガスを抜くことによってガス充填拡張器を収縮させる特徴、2)生理食塩水またはガスのような流体で拡張器を再膨張させる特徴の1つ以上を備えるものがある。下述する実施形態のいずれかにおける任意の適切な構成要素を組織拡張システムに組み込んで、圧力安全弁を提供することができる。
【0125】
拡張器を生理食塩水で再膨張させる場合、(シリコーン材から構成することができる)外殻は、従来の生理食塩水拡張器と同様に、生理食塩水を保持するように適応される。しかし、上述した一部の実施形態では、移植中に患者の体内への挿入を容易にするために、内袋と外殻との間の空気を逃がすように外殻は穿孔される。生理食塩水を保持するように密閉外殻を持つ実施形態では、したがって移植中に内袋と外殻との間から空気を抜く代替的方法が必要になる。
【0126】
これらの実施形態は、収縮しその後に再膨張することのできる装置を移植する選択肢を医師に提供する。また、術後収縮/再膨張の可能性が非常に低い場合(予防的乳房切除術、胸壁から遠く離れた小さい腫瘍等)など、この機能性をもたらす構成要素を主拡張器から取り外すことによって、そのような能力を喪失する選択肢を医師に提供することもできる。このようにして、希望する場合、装置の一部分を取り外すことができる。
【0127】
図18A〜Cは、外殻223と一体的に形成されたドッキングポート224を含む、例示的移植物の一部分を示す。一方向遠隔弁222は外殻223に固定される。ドッキングポート224および弁222は、移植物から流体を放出するか、あるいは移植物に流体を充填するように適応された装置225を受容するように適応される。装置225は、各々がルアー取付け具229および228でそれぞれ終端する充填/排出チューブ226および針インジェクタチューブ227を有する。装置225はまた、有窓カニューレ230、圧縮ばね231、ピストン232、およびシール233をも含む。
【0128】
図18Aでは、一方向弁222は閉構成であり、カニューレまたは針230は装置225の内部に収容される。中心カニューレ237がポート224とドッキングするまで、一方向弁は閉じたままであり、空気は内袋と外殻との間に捕獲される。内袋は無傷であり、組織拡張器内にガスバリアを提供する。
【0129】
移植可能な部分を患者の体内に移植する前に、外殻(図18Aおよび18Bではシリコーン材から作られるものとして示される)を介して内袋と外殻との間の空間に拡散した空気歯、除去することができる。それが除去されない場合、移植物は部分的に膨張したように感じられ、目標領域への挿入がより困難になる。図18Bはポート224とドッキングした装置225を示し、カニューレ237は弁222を強制的に開構成にし、空気が内袋と外殻との間の空間から流出する通路を形成する。内袋220と外殻223との間に捕捉された空気234は、図示する矢印の方向によって示されるように、充填/排出チューブ226に取り付けられたシリンジを用いて、内袋220と外殻223との間の空間から抜くことができる。図18Bでは、内袋220は無償のままであり、移植物内にガスバリアをもたらし続ける。有窓カニューレまたは針230は中心カニューレ237の内側に引き込まれたままである。
【0130】
図18Cは、移植物の内部チャンバからガスを除去するための装置225および弁222の使用を示す。上述の通り、一部の患者は、組織拡張器が拡張された後、放射線治療を必要とする。放射線治療の前に移植物の収縮を患者が要求しかつプロトコルが推奨している場合、移植物内のガスを除去する必要がある。針インジェクタチューブ227に、(皮膚を介して露出される取付け具を介するか、あるいは経皮的針により穿刺された遠隔充填弁を介して)加圧流体が充填される。この注入流体からの圧力は、ピストン232を上方に偏位させ、ばね231を圧縮し、有窓カニューレ230を中心カニューレ237から展開させ、位置235でカニューレ230に内袋220を穿刺させる。次いでガス「G」は、矢印の方向によって示されるように、カニューレ230を介して、チュービング226から外に排出される。一部の実施形態では、ガスは体外に排出される。図18Cに示すアクションは、内袋220を不可逆的に穿刺し、現在市販されている生理食塩水拡張器と同様の流体制御拡張器に変換する。放射線治療または他の治療が完了した後、ポート242の位置を突き止め、針で穿刺し、内部チャンバに所望の容積まで生理食塩水の流体を充填することができる。
【0131】
図19は、外殻241の分離位置に専用ドッキングポート242を持つ移植物の代替的実施形態の一部分を示す。この設計は、内袋と外殻との間の空間から空気を排出させるための特徴を、移植物収縮/膨張特徴から分離する。チューブ246は、(図18A〜Cの中心カニューレと同様の)中心ドッキングカニューレ248およびルアー取付け具247に結合される。この装置は、図18A〜Cの変形例に示すような第2チューブ付きの有窓ばね付勢カニューレを持たない。図19の装置は、移植前に、内袋240と外殻241との間の空気を吸引するために使用することができる。移植前に、カニューレ248およびチューブ246は、ドッキングポート242から取り外される。
【0132】
図19の実施形態の手法の1つの利点は、遠隔充填ポートの移植が排除されることである。内袋と外殻との間の空間から空気を除去するために、暫定的チューブが使用され(図19に示す通り)、次いで移植物を患者の体内に移植する前に、移植物から切り離される。外殻は、組織拡張中に遭遇する圧力で生理食塩水を保持するように設計される。
【0133】
図19に示す移植物はさらに、ガスのような流体を内部チャンバから除去するために、図20に示す注入ポートのような固有注入ポートを含むことができる。放射線治療前の移植物の収縮は、位置を突き止めるのを容易にするために外殻250の前側上部位置に配置することのできる固有ポート251を標的にして、針256(例えば25G)をそこに挿入することによって達成される。針256は固有ポート251を通過し、内袋252を穿通する。内袋が針によって破られると、内部チャンバのガスは移植物から大気中に排出することができる。
【0134】
アンテナ253は、針の穿刺に抵抗するポリイミド材のような靭性材料で構成することができる。一部の実施形態では、アンテナは、ガス不透過性膜254により連続的に内袋252の内側に熱かしめされる。図20に示す通り、このタイプの組立体は、ガス「G」を逃散させるように変更することができる。特に、通気穴255をアンテナの周りに形成することができ、移植物内部のガスは通気穴を通過し、かつ針236を通過して外に出ることが可能になる。
【0135】
完了した後、針256を再び固有ポート251内に挿入することができ、かつ所望の容積を達成するように生理食塩水を内部チャンバ内に注入することができる。再膨張中に、針を内袋に穿通させる必要はなく、生理食塩水は所望の容積まで外殻に充填するだけでよい。
【0136】
固有ポートを含む実施形態では、固有ポートは以下の特徴のいずれかまたは全部を含むことができる。すなわち、針ポートは移植物の上側前部にあり、針の繰返し挿入後に再密閉する。それは、加圧された生理食塩水が内袋から漏出しないように、内袋の弾性材料に頑健に取り付けられる。また、針止めは、針が移植物の後部パネルに開窓し、漏れを引き起こすのを防止する。図示する固有ポートの概念は、一体的針止めの有無にかかわらず実現することができることが注目される。加えて、固有ポートが一体的針止めを含まない場合、内袋の後部パネルを保護する代替的方法を使用することができる(図には示さないが、例えばポリイミドフィルムのような穿刺不能な構成要素により後部パネルを補強することによって達成することができる)。
【0137】
アンテナを含む組織拡張移植物では、注入点をアンテナの真ん中に配置することができ、その位置は、遠隔制御装置に存在するアンテナ位置決め能力を用いて確立することができる。代替的に、特別にアンテナおよびポートの位置決めをタスクとする、一体的針ガイド付きの別個の外部装置を展開することができる。この位置決め針ガイドは、アンテナとの電磁結合を利用して、針穿刺に望ましいゾーンに針を誘導する。
【0138】
図21〜24に記載された例示的実施形態は、代替的固有針ポートを示し、かついかにして漏れ防止生理食塩水充填膀胱を維持し、かつ内袋の低浸透性能を保持するように、固有針ポートを組織拡張器の解剖学的形状の内袋に取り付けることができるかを示す。針止めとして作用する構成要素がある場合とない場合の両方の構成を示す。
【0139】
図21Aおよび21Bは、固有針ポートを持つ移植物の例示的実施形態を示す。図示する固有ポートは、ポートフランジ265の周りに成形された、シリコーン再密閉可能な注入ポート264を含む(図21A参照)。ポートフランジ265はシリコーンポート264内にインサート成形されるので、2つの構成要素間の漏れ防止接続は生理食塩水を移植物内に保持する。ポートフランジ265は、それと注入ポート264との間の接続の耐久性を改善するように、リブを高くしたワッシャ状に形成される。ポートフランジ265は、例えば熱かしめまたは超音波溶接のいずれでも内袋261への取付けを容易化するために、ポリエチレンのような熱可塑性材料から作ることができる。熱かしめは漏れ防止取付けを達成する。アンテナ263は注入ポート264の外側に図示されており、ポリイミド包封銅トレースのような可撓性回路材料から作られる。それは、熱かしめまたは超音波溶接法を用いて、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチックの薄膜を使用して、注入ポート264と同軸に配置固定される。アンテナ263および注入ポート264は、同じく内袋261に熱かしめされるアンテナパッチ262によって保持される。
【0140】
針を使用する前に、初期充填媒体としてガスを使用する実施形態では、注入ポート264は、内袋261が針穿刺まで完全に無傷で維持されるように取り付けられる。これは、注入ポート264またはその取付け点を介する透過のため、内袋261がガスを過度に喪失させないことを確実にする。
【0141】
注入または吸引が必要な場合、針267は外殻260を介し、内袋261を介して、ポート264内へ、かつアンテナパッチ262を介して内部構成要素内へ挿入される。針が取り除かれると、移植物の液体内容物はアンテナパッチ262を通過し、針267によって形成された穴を通過して、注入ポート264の下に貯留することができる。しかし、液体は、シリコーン製の再密閉可能な注入ポート264を通過し、または注入ポート264の周りを通過して、注入ポート264の上に位置する内袋261の針穴を介して逃散することができない。したがって内袋261は漏れを生じることなく、生理食塩水で膨張したままである。
【0142】
図21Bは、針止め268を含む以外は図21Aと同じ実施形態を示す。針止めは、注入ポート264の下に構成要素を配置することによってこの組立体に組み込まれる。針止めはポリイミドのようなプラスチックまたは金属製の円板とすることができる。図示する実施形態では、ポート全体をより小型化するために、針止めはアンテナと組み合わされる(268として組み合わされる)。針止め268をポートの下に配置固定するために、ポリエチレンのような熱可塑性プラスチック材の薄膜262を内袋に熱かしめすることができる。
【0143】
図22〜24の実施形態は、図21Aおよび21Bに示す実施形態と同様のアーキテクチャを有する。例示的相違点は、シリコーン注入ポートを頑健に漏れのないように内袋の膜に取り付ける特定の方法にある。
【0144】
図22Aおよび22Bは、シリコーン注入ポート274を内袋の膜271に頑健に漏れのないように取り付ける方法を示す。ねじ山部および貫通穴を持つプラスチックリング275は、領域278で内袋271の内側に熱かしめされる。注入ポート274はリング275内に装着され、プラスチックナット276によって保持される。注入ポート274のフランジ部281は、プラスチックナット276が締め付けられるときに圧潰され、こうしてシールが形成される。アンテナ272はパッチアンテナ273によって適所に保持される。針は、ナット276の開口277を通過して、図21Aに示すのと同様に使用することができる。
【0145】
図22Bは、図20Aおよび20Bの実施形態と同様に、針止めパッチ281によって適所に保持される針止め280の追加を示す。代替的に(図示せず)、プラスチックナット276はナットの真ん中に貫通穴を持たずに構成し、針を停止する材料の厚さを提供することができる。針が接触する場所から離れた領域でプラスチックナットに、ナットから半径方向に出る貫通穴のようなさらなる通気穴を追加することができる。パッチ281を通してポート領域にガスを通過させるために、通気穴279がパッチ281に形成される。上で示したのと同様に針を使用することができる。
【0146】
図23Aおよび23Bは、シリコーン注入ポート287を内袋の膜286に頑健に漏れのないように取り付ける方法を示す。クリンプ構成要素288はグロメットのように形作られ、金属から作製することができる。適切な工具で変形されるときに、クリンプは、注入ポート287のフランジおよびプラスチック薄膜から作られたワッシャ291の領域の両方を締め付けかつ捕獲することができる。クリンプ288はこれらの構成要素の間に防水シールを形成する。その後、組立中に、プラスチックワッシャ291は、位置292で内袋286の内側に熱かしめすることができる。アンテナ289はクリンプ288の外側に配置され、内袋286の内側に熱かしめされたアンテナパッチ290によって保持される。針は、上述の通り外殻285を介して移植物内に穿孔するために使用することができる。
【0147】
図23Bは、図21および22の実施形態と同様に針止めパッチ295によって保持される針止め294の追加を示す。図23Aにおける構成要素と同様の構成要素は、同一参照番号を有する。
【0148】
図24Aおよび24Bは、シリコーン注入ポート404を内袋の膜402に頑健に漏れがないように取り付ける方法を示す。インサートリング406およびナット408は3つの薄肉部材、すなわち注入ポート404のフランジ、ワッシャ状に形成された薄膜414、およびシリコーンワッシャ410を一体に固締するために使用される。図24Aに示す通り、この固締作業はこれらの構成要素間に耐防水シールを形成する。その後、組立中に、プラスチックワッシャ414は、領域418で内袋402の内側に熱かしめすることができる。アンテナ412は注入ポート404の外側に配置され、内袋402の内側に熱かしめされたアンテナパッチ416によって保持される。パッチ416には、流体がそこを通過できるように通気穴418が形成される。本書に記載した通り、ポート内で針を前進させることができる。
【0149】
図24Bは、図21〜23に示す実施形態と同様に、針止めパッチによって適所に保持される針止め420の追加を示す。他の構成要素は図24Aと同じ参照番号でリストされる。
【0150】
上述した実施形態の幾つかは最初にガスにより拡張されるが、患者によっては、ガスにより拡張される装置を移植しないことが推奨される場合がある。例えば、患者によっては、山岳地域で生活したり、あるいは仕事のために飛行機で、または高所に旅行しなければならない場合がある。どちらの活動も、高地で遭遇する大気圧の低下時に拡張するガス媒体を使用すると、不快感または痛みを引き起こし得る。医師は、これらの旅行が必要な患者に対し、従来の生理食塩水充填技術を使用することを選択することができる。本書に記載する一部の実施形態では、組織拡張器は解剖学的形状の内袋を含む。インビボでこの解剖学的形状は、追加的皮膚を必要とする所望の位置(例えば乳房移植の場合には下極)に皮下体積を提供する。生理食塩水充填弾性組織拡張器は一般的に、これを達成しない。乳房再建の場合、弾性(シリコーン)組織拡張器は、組織を望ましくない上極で拡張する円形バルーンの形を取ることが多い。時々、液体充填弾性バルーンは、側方に(腕の下に)または上方に(鎖骨に向かって)拡張する。したがって、従来の生理食塩水充填組織拡張器は、本書に記載する解剖学的形状の内袋のような解剖学的形状の構成要素を組み込むことによって改善することができる。
【0151】
加えて、上述の通り、患者は彼らの乳癌の臨床治療の初期に放射線治療が必要と識別されることもある。数回の収縮および再膨張サイクルが示される場合、医師は従来型の生理食塩水ベースの拡張技術を選択することがある。加えて、上述したガス膨張組織拡張器は、移植物内に駆動装置を含む。駆動装置は結局金属の塊を意味する。生理食塩水拡張器も金属を含むが、放射線腫瘍医は、彼らが慣れ親しむようになるまで、本書に記載するシステムの新しい金属製構成要素による放射線投与スキームを計画することを望まないかもしれない。したがって、解剖学的形状の生理食塩水充填組織拡張器が、計画放射線治療を受ける患者の代替的解決策になり得る。一部の実施形態では、従来型の生理食塩水充填乳房移植物は、解剖学的形状を持つ構成要素により、追加皮膚が必要な場所に形成されることを確実にするように強化される。
【0152】
加えて、乳房再建患者は、乳房切除術後の領域に、ガス拡張型組織拡張器を被覆するのに充分な皮膚を持たないことがある。ガス拡張器の駆動装置は、従来型の生理食塩水ベースの組織拡張器と比較して、さらに嵩を増やし、組織拡張器に突起を加えることがある。乳房再建患者のわずかな比率は、即時再建または遅延再建のどちらを受けるかにかかわらず、非常に低いプロファイルの組織拡張器から利益を得ることがある。固有ポートを持つ解剖学的形状の生理食塩水充填組織拡張器は、これらの患者にとって非常に低いプロファイルの解決策になり得る。したがって、本書に記載する固有ポートを、従来型の生理食塩水充填拡張器に組み込んで、所望の解剖学的形状を持つ拡張器、放射線治療中の放射線の散乱を回避するために比較的少ない金属から構成され、かつ/または非常に低いプロファイルで移植することができるものを提供することができる。
【0153】
一般的に、内部チャンバが患者の体内に存在する間に、内部チャンバを穿孔することを含む手技を患者に実行しなければならない場合、移植物の内部チャンバは滅菌する必要がある。しかし、本書に開示する移植物に含まれるプラスチックの電子ビーム滅菌(「Eビーム」)またはガンマ線滅菌による滅菌は、材料を脆弱にし、かつ/またはそれらの特性の一部を喪失させることがあり得る。移植物の電子構成要素は、同様にEビームおよびガンマ線滅菌から損傷することがあり得る。
【0154】
一部の実施形態では、移植物の内部チャンバは、エチレンオキサイド(「EtO」)のようなガスで滅菌される。しかし、このガスは内袋の外側から内袋の内側に通過することができないので、内部チャンバは簡単にEtOに曝露させることができない。移植物の製造中に、内袋の内側から内袋の外側まで入口チャネルが設けられ、該チャネルの出口にフィルタが配置される。フィルタおよびチャネル組立体を持つ内袋は次いで、EtOチャンバ内に配置される。EtOはフィルタを介してチャネル内に通過し、かつ移植物の内袋内に通過して、内袋を滅菌する。フィルタは細菌をチャネル内に浸入させないように設計されるが、ガスをフィルタに通過させる。次いで真空が内袋に加えられ、空気を内袋から除去し、チャネルは熱融着閉鎖され、内袋を滅菌された状態に維持する。次いで内袋はシリコーン製外殻の内側に固定される。次に、外殻とその中にある滅菌された内袋はEtOチャンバに配置され、それにより、内袋の外側およびシリコーン外殻のみならず、パッケージの残部も滅菌される。したがって移植物は、材料または電子機器が損傷するリスクなしに、2段階ガス滅菌プロセスを受ける。
【0155】
再密閉する能力を持つ圧力安全弁が移植物に含まれる場合、圧力安全弁は開位置の状態で滅菌施設に輸送することができる。内袋は、内袋の内側のガス滅菌のために開状態に保持することができる。また、特に滅菌のために設計され内袋内に組み込まれる弁(機械的グレネードピン、または治具もしくは遠隔制御装置によって電気的に作動する)が存在することもあり得る。一部の実施形態では、移植物は弁開状態でパッケージングし、その後にEtO滅菌することができる。次いで内袋に真空を加え、その後に最終的出荷のために袋の弁を閉じる。一部の実施形態では、駆動装置の内部は、ソレノイドの通気穴を被覆し、内部容積および駆動装置部品の滅菌状態を維持するために、Tyvek(商標)を使用して、内袋の残りとは別個に滅菌される。
【0156】
図25A〜Dは、内袋200の内部をEtOにより滅菌するために、フィルタおよびトンネルシステムを形成する例示的方法を示す。図25Aは、トンネルがEtO滅菌の真空段階中に崩壊しないようにピン202が配置された入口トンネル206と連通するフィルタ208を示す。図25Cおよび25Dは、ポートクランプ201を配置するステップ、およびつまみナット203を手動で締め付けるステップをそれぞれ示し、それらは内部チャンバを真空に引くためのアクセスを提供する。
【0157】
一部の実施形態では、パッケージングされた滅菌済み製品の最終点検が行われる。最終点検は、弁機能および移植物の内袋の漏れ検査の両方の確認を可能にする。弁機能は、弁が遠隔制御装置によって作動するときに、すなわち「バーピング」するときに、電磁弁開放中に発生する音を記録解析することによって検証することができる。一部の実施形態では、音はコンタクトマイクロホンを用いて検出記録され、次いでその後、弁が開いたことを確認し、かつ弁が開いている時間量を決定するために、コンピュータソフトウェアを用いて解析される。最終滅菌済み製品の漏れ検査は、移植物がそのパッケージ内に維持されている間に、遠隔制御装置を用いて弁を作動させ、かつ少量のガスを放出させることによって、すなわち移植物をバーピングすることによって、達成される。移植物は次いで潜在的漏れ経路からガスを絞り出させるために加圧され、使用されるガスに特定的な嗅覚性探知器により監視される。過剰なガスの存在は漏れを示唆する。
【0158】
上述した利益に加えて、本書に記載した組織拡張システムはいずれも、従来の組織拡張システムに勝る以下の利点(いくつかについては上記記載)、すなわち不快感の減少、針が不要であること、迅速化―完全な再建が早まること、通常の活動に戻ることが早くなること、来診回数の減少、および使い易さのうちの1つ以上を患者に提供することができる。医師にとっての利点として、針または病院での準備時間が零であること、拡張時間の短縮、再建の早期完了、使い易さ、患者の満足度の高さ、および注入充填の場合より合併症の確率が低いことが挙げられる。
【0159】
本開示の好ましい実施形態が本明細書において示されかつ記載されたが、かかる実施形態は例示にすぎないことは当業者に明らかであるだろう。多数の変形、変化、および置換が、この開示から逸脱せずに当業者に思いつくだろう。本明細書に記載された開示の実施形態に対する様々な代替例を本発明の実施時に使用することができることは理解されるべきである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、所定の期間内に流体源から流体が放出された回数と所定の期間内に流体源から流体を放出することを許可された最大回数とを比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システム。
【請求項2】
処理構成要素は外部制御装置内に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
処理構成要素はさらに、所定の期間内に流体が流体源から放出された回数が、所定の期間内に流体源から流体を放出することを許可された最大回数を超えるかそれと等しい場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
処理構成要素は、約24時間の期間内に流体源が4回以上流体を放出することを防止するように適応される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
処理構成要素は、流体源が約3時間毎に2回以上流体を放出することを防止するように適応される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
外部制御装置は、外部制御装置が作動すると流体源からの流体の放出を制御するために移植可能な装置と通信するように適応され、処理構成要素は、外部制御装置が所定の期間内に作動した回数を、外部制御装置が所定の期間内に作動することのできる最大回数と比較するように適応される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
流体源は圧縮ガス源である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
ガス源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、所定の期間内に流体源から放出された流体の量と所定の期間内に流体源から放出することを許可された流体の最大量とを比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システム。
【請求項9】
処理構成要素は外部制御装置内に配置される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
処理構成要素はさらに、所定の期間内に流体源から放出された流体の量が、所定の期間内に流体源から放出することを許可された流体の最大量を超えるかまたはそれと等しい場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
処理構成要素は、流体源が約24時間以内に約30mLを超える流体を放出することを防止するように適応される、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
流体源は圧縮ガス源である、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく外部制御装置の作動に応答して流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、外部制御装置が1回作動した後、流体源から最大量を超える流体が放出されるのを防止するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システム。
【請求項14】
処理構成要素は外部制御装置内に配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
処理構成要素は、外部制御装置が1回作動した後、約10mLを超える流体が放出されるのを防止するように適応される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
外部制御装置が1回作動した後、最大量を超える流体が流体源から放出された場合に、事象を記録するメモリ構成要素を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を移植可能な装置の最大充填量と比較するように適応された処理構成要素とを含む、組織拡張システム。
【請求項18】
流体源はガス源である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
処理構成要素は外部制御装置内に配置される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
処理構成要素はさらに、流体源から放出された流体の総量が、移植可能な装置の最大充填量を超えるかまたはそれと等しい場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応される、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
処理構成要素は、全部で約350mLから約1040mLの流体が流体源から放出された場合、流体源からの流体の放出を防止するように適応される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
流体源および拡張可能なチャンバを備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべく流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を移植可能な装置の最大充填量と比較するように適応された処理構成要素とを含む組織拡張システムであって、処理構成要素が、拡張可能なチャンバから外に滲み出した流体の量を考慮して、ガス源から拡張可能なチャンバ内に放出された流体の総量を自動的に調整するように適応される、組織拡張システム。
【請求項23】
流体源は圧縮二酸化炭素(CO)貯留器であり、処理構成要素は、拡張可能なチャンバから外に滲み出した二酸化炭素の量を考慮して、二酸化炭素貯留器から拡張可能なチャンバ内に放出された二酸化炭素の総量を自動的に調整するように適応される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
処理構成要素は、拡張器チャンバから外に滲み出した流体の量を補償するために流体源から流体を自動的に放出させるように適応される、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
拡張可能な構成部品およびガス源を備え、ガス源が拡張可能な構成部品内に固定されるが、拡張可能な構成部品に対して不動に固定されず、移植可能な装置が患者内に配置された後でもガス源と拡張可能な構成部品との間の相対運動が可能であるようにした移植可能な装置と、ガス源から拡張可能な構成部品内へのガスの放出を患者の体外の位置から制御するように適応された外部装置とを含む、組織拡張システム。
【請求項26】
移植可能な装置はガス源保持要素を備え、該保持要素の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品に対して不動に固定され、かつガス源は、ガス源保持要素を用いて拡張可能な構成部品に固定される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
ガス源保持要素は薄膜層とすることができ、薄膜層の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品に不動に固定され、かつガス源は薄膜層内に固定される、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
ガス源保持要素の少なくとも一部分は、拡張可能な構成部品の後部に固定される、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
ガス源保持要素およびガス源はハンモック設計を形成する、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前部、後部、下部、および上部を有し、かつ上部および前部に固定された通信構成要素を含み、患者内に移植するように適応された移植可能な装置と、患者の体外に配置されて移植可能な装置の拡張を制御するために通信構成要素と無線通信するように適応された外部装置とを含む、組織拡張システム。
【請求項31】
移植可能な装置は拡張可能なチャンバを画定する内層を含み、該内層は、前部、後部、下部、および上部を画定する予め形成された形状を備え、かつ通信構成要素は内層の上部および前部に固定される、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
内層は非弾性材料を含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
内層は、前部、後部、下部、および上部を画定する予め形成された略乳房形状を有し、通信構成要素は略乳房形状の前部および上部に固定される、請求項30に記載のシステム。
【請求項34】
略乳房形状は下極および上極を有し、上極は上部に配置され、下極は上極の厚さより大きい厚さを有し、かつ通信構成要素は上極内に固定される、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
移植可能な装置の内部チャンバ内に流体貯留器をさらに備え、通信構成要素および流体貯留器は通信しており、外部装置は流体貯留器から内部チャンバ内に流体を制御可能に放出するために、通信構成要素と無線通信するように適応される、請求項30に記載のシステム。
【請求項36】
通信構成要素はアンテナを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項37】
組織を拡張する方法であって、該方法は患者に移植される移植可能な装置を含み、移植可能な装置は拡張可能なチャンバ、流体貯留器、および通信構成要素を備え、移植可能な装置は、前部、後部、上部、および下部を備え、上部および前部に近接して遠隔制御装置を配置し、かつ遠隔制御装置を作動させて、拡張可能なチャンバの上極より大きい突出を有するように拡張可能なチャンバの下極を拡張させることを含む方法。
【請求項38】
ガス源、拡張可能なチャンバ、および拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応された圧力安全弁を備えた移植可能な装置と、拡張可能なチャンバを拡張させるべくガス源から拡張可能なチャンバ内へのガスの放出を制御するために、移植可能な装置と通信するように適応された外部制御装置とを含む、組織拡張システムであって、外部制御装置は、作動後に安全弁を開いて拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応されたアクチュエータを備える、システム。
【請求項39】
外部制御装置は、ガス源からのガスの放出を制御するように作動するように適応された第2アクチュエータを備える、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
外部制御装置は、拡張可能なチャンバ内の圧力が最大許容圧力を超えた場合にそれを検知するように適応された圧力センサを備える、請求項38に記載のシステム。
【請求項41】
圧力安全弁は第1磁性構成要素を備えることができ、システムはさらに、第2磁性構成要素を含む安全弁アクチュエータを備え、第2磁性構成要素は第1磁性構成要素と相互作用して安全弁を開き、拡張可能なチャンバからガスを放出するように適応される、請求項38に記載のシステム。
【請求項42】
流体源、拡張可能なチャンバ、および固有ポートを備え、流体源が拡張可能なチャンバと流体連通して成る移植可能な装置と、流体源から拡張可能なチャンバ内への流体の放出を制御して拡張可能なチャンバを拡張させるために移植可能な装置と無線通信するように適応された外部制御装置とを含み、固有ポートが該ポートを介して除去装置を挿入して拡張可能なチャンバから流体を除去することを可能にするように適応される、拡張可能なチャンバ組織拡張システム。
【請求項43】
除去装置は針であり、固有ポートは、拡張可能なチャンバから流体を除去するために針が該ポートを介して挿入された後、再密閉されるように適応される、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
固有ポートは、流体が拡張可能なチャンバから放出された後、移植可能な装置に第2流体を再充填することができるように適応される、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
第2流体は生理食塩水である、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
外部制御装置は、拡張可能なチャンバからの流体の除去後、流体源からの流体の放出を制御するために、移植可能な装置と無線通信するように適応される、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
移植可能な装置はさらに通信構成要素を備えることができ、固有充填ポートは通信構成要素に隣接して配置される、請求項42に記載のシステム。
【請求項48】
移植可能な装置は外殻および内袋を備え、固有ポートは外殻に形成される、請求項42に記載のシステム。
【請求項49】
移植可能な装置は外殻および内袋を備え、固有ポートは内袋内に配置される、請求項42に記載のシステム。
【請求項50】
固有ポートを介して針を自己完結型移植物内に前進させること、および針を介して流体を除去することを含む、乳房組織内に配置された自己完結型移植物からガスを除去するステップと、患者に放射線治療が行われた後、自己完結型移植物に第2流体を再充填するステップとを含む、移植物から流体を除去する方法。
【請求項51】
第2流体は生理食塩水である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
自己完結型移植物に第2流体を再充填するステップは、固有ポートを介して針を配置すること、および針を介して第2流体を移植物内に前進させることを含む、請求項50に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7A−7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10A−10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A−15C】
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【図15D−15E】
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【図15F−15H】
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【図16】
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【図17】
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【図18A−18C】
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【図19】
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【図20】
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【図21A−21B】
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【図22A−22B】
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【図23A−23B】
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【図24A−24B】
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【図25A−25D】
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【公表番号】特表2013−514840(P2013−514840A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544944(P2012−544944)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/061340
【国際公開番号】WO2011/075731
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(510265988)エアーエクスパンダーズ, インコーポレイテッド (1)
【出願人】(307031736)シャロン ヴェンチャーズ インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】