説明

経口投与により腫瘍の発生又は増殖を抑止する組成物

【課題】安全性が高く、経口投与により優れた抗腫瘍作用等を示す医薬等を提供する。
【解決手段】L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、L−カルノシン類等を経口投与することにより脾臓交感神経活動を低下させて腫瘍免疫を促進し、抗腫瘍効果が発揮される組成物、該組成物を用いる腫瘍の治療方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
哺乳類の骨格筋や心筋で合成されるL−カルノシン(β−アラニル−L−ヒスチジン)は運動により血中に放出され、副腎、腎臓、肝臓などを支配する交感神経の活動を抑制し血糖及び血圧を低下させる作用を持っている(非特許文献1〜6)。
【0003】
ところで、これまで、脾臓交感神経活動を低下させるとNKリンパ球細胞の活性化が引き起されることを示す結果が報告されており(非特許文献7)、脾臓交感神経活動を低下させる物質はヌードマウスの皮下に移植したヒト大腸癌細胞(HCT116細胞)やヒト乳癌(MCF7)細胞の増殖を抑制する作用を有することが報告されている(非特許文献8及び9)。NKリンパ球細胞は腫瘍細胞を殺傷する細胞であるので、脾臓交感神経活動を低下させる作用があればNK細胞の活性を上昇させて腫瘍免疫を促進し腫瘍の発生や増殖を抑制することができると考えられる。
【0004】
一方、これまでL−カルノシンの抗腫瘍作用については多数の報告がある(特許文献1〜4、及び非特許文献10〜14)。しかしながら、いずれの先行文献においても経口によるL−カルノシンの単独投与で抗腫瘍作用が確認された例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−16934号公報
【特許文献2】国際公開第WO95/25515号(1995)
【特許文献3】特開2003−267992号公報
【特許文献4】特開2005−120007号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yamano, T. et al., Neurosci. Lett. 2001 vol. 313, p. 78-82.
【非特許文献2】Niijima, A. et al., Autonom Neurosci. Basic & Clinical 2002 vol. 97, p. 99-102.
【非特許文献3】Nagai K. et al., Exp. Biol. Med (Maywood). 2003 vol. 228(10), p. 1138-1145.
【非特許文献4】Tanida M. et al., Am. J. Physiol. 2005 vol. 288, p. R447-R455.
【非特許文献5】Tanida M. et al., Regulatory Peptides 2007 vol. 144, p. 62-71.
【非特許文献6】Shen J. et al., Neurosci. Lett. 2008 vol. 441, p. 100-104.
【非特許文献7】Katafuchi T. et al., J. Physiol. 1993 vol. 471 p. 209-221.
【非特許文献8】Shen J. et al., Auton. Neurosci. Basic & Clin. 2009 vol. 145 p. 50-54.
【非特許文献9】Shen J. et al., Auton Neurosci. Basic & Clin. 2009 vol. 14 p. 86-90.
【非特許文献10】永井ら 日本生理学雑誌 1986 48(11)巻, p. 741-7.
【非特許文献11】Boissonneault, Gilbert A. et al., Nutrition Research (New York) 1998 vol. 18(4) p. 723-733.
【非特許文献12】Renner, C. et al., Int. J. Pept. Res. Ther. 2008 vol. 14 p. 127-135.
【非特許文献13】Renner, C. et al., Neurological Res. 2010 vol. 32(1) p. 101-105.
【非特許文献14】Renner, C. et al., Molecular Cancer 2010, doi:10.1186/1476-4598-9-2 (online journal)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、安全性が高く、経口投与により優れた抗腫瘍作用等を示す医薬等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、L−カルノシンがラットの脾臓交感神経活動を有意に抑制することを見出し、その作用に基づき、L−カルノシンを経口投与した場合のヌードマウスの皮下に移植したヒト大腸癌細胞(HCT116細胞)の増殖を抑制する作用について検討した。その結果、L−カルノシンを一定量経口投与したとき、ヌードマウスの皮下に移植したヒト大腸癌細胞(HCT116細胞)から形成される腫瘍塊の増殖が有意に抑制されることを見出した。
これらの結果は、L−カルノシンが脾臓交感神経活動を低下させて、腫瘍の増殖を抑制したことを示すものである。脾臓交感神経活動を抑制すると、腫瘍細胞を殺傷するナチュラルキラー(NK)リンパ球細胞活性が上昇することが知られている(非特許文献7)。従って、L−カルノシンの抗腫瘍作用には脾臓交感神経活動の抑制によるNK細胞の活性化が関与しているものと考えられた。また、このときのヌードマウスにおいて腫瘍増殖を抑制したL−カルノシン経口投与量は、例えばヒト換算で1日あたり体重あたり約10.5〜11.3mg/kgであったことから、1日あたり体重あたり約5〜150mg/kgのL−カルノシンを経口投与することにより、ヒトを含む哺乳動物において腫瘍の発生又は増殖を効果的に抑制できることに想到した。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1)L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する組成物。
(2)L−カルノシン類が、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられる前記(1)に記載の組成物。
(3)L−カルノシン類が、L−カルノシンである前記(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する腫瘍の発生又は増殖抑制剤。
(5)脾臓交感神経活動を抑制するために用いられる前記(4)に記載の腫瘍の発生又は増殖抑制剤。
(6)L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する脾臓交感神経活動抑制剤。
(7)L−カルノシン類が、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられる前記(4)〜(6)のいずれか一項に記載の剤。
(8)L−カルノシン類が、L−カルノシンである前記(4)〜(7)のいずれか一項に記載の剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腫瘍の発生又は増殖を効果的に抑制することができる。さらに、本発明の有効成分であるL−カルノシン類は、哺乳類や鳥類、魚類の体内に存在するジペプチド化合物等であり、人体に安全な成分である。このため、本発明の組成物は長期にわたって摂取しても安全であり、医薬組成物、機能性食品等として広く適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ウレタン麻酔ラットにおいて1mg及び10mgのL−カルノシンを含む水溶液1mLをそれぞれ十二指腸内投与したときの脾臓交感神経活動(splenic sympathetic nerve activity、以下、Splenic-SNAと略)の変化を示す図である。
【図2】図2は、ウレタン麻酔ラットにおいてL−カルノシン1mgを含む水溶液1mLを十二指腸内投与したときの脾臓交感神経活動(Splenic-SNA)の変化を、対照群(水のみ投与)と比較した結果を示す図である。
【図3】図3は、BALB/Cマウスに移植したヒト大腸癌細胞(HCT116)(2.5×106細胞/匹を皮下投与)が形成した腫瘍塊の体積の増加を示す図である(●:L−カルノシン水溶液(1mg/mL)自由摂取投与群、○:対照群(水のみ自由摂取投与))。
【図4】図4は、BALB/Cマウスにヒト大腸癌細胞(HCT116)(2.5×106細胞/匹を皮下投与)移植後22日目のL−カルノシン水溶液(1mg/mL)を唯一の飲料水として自由摂取させた群(図4のB)及び水を自由摂取させたコントロール群(図4のA)における腫瘍塊の外観写真である(各群n=6)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の組成物は、L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有し、当該L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるものである。
L−カルノシン類としては、例えば、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、又はそれらのアシル誘導体(例えば、N−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、N−アセチル−L−ホモカルノシン等)等が挙げられる。アシル誘導体は、公知のアシル化剤を使用して自体公知の方法で製造することができる。
L−カルノシン類の薬学的に許容される塩として、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等の塩が挙げられる。
有効成分であるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0013】
本発明の組成物は、有効成分としてL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有するものであるが、L−カルノシン類は、好ましくは、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、又はそれらのアシル誘導体である。L−カルノシン類が、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である組成物は、本発明の好ましい態様の1つである。L−カルノシン類は、より好ましくは、L−カルノシン又はN−アセチル−L−カルノシンであり、さらに好ましくは、L−カルノシンである。L−カルノシン若しくはN−アセチル−L−カルノシン、又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシンとして体重あたり約5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるL−カルノシン若しくはN−アセチル−L−カルノシン、又はその塩を含有する組成物は、本発明の好ましい実施態様の1つである。L−カルノシン類は、特に好ましくは、L−カルノシンである。すなわち、1日あたり体重あたり約5〜150mg/kgのL−カルノシンが、ヒトを含む哺乳動物に対して経口投与されるように用いられる、L−カルノシンを含有する組成物は、本発明の特に好ましい実施態様の1つである。
【0014】
本発明の組成物は、L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の組成物は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態として用いることができる。本発明の組成物を含む医薬品、医薬部外品、飲食品、及び飼料も、本発明に包含される。
【0015】
本発明の組成物は、例えば、医薬品であれば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸薬、トローチ剤、チュアブル剤、散剤、シロップ剤等の経口投与用製剤の形態で好適に用いられる。中でも、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等が好ましい。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、結晶性セルロース、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、燐酸水素カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイドシリカ等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等)、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール等)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される甘味料、酸味料、香料等)、希釈剤等の当業界で使用される公知の添加剤等を用いて自体公知の方法に従って製造することができる。
【0016】
製剤中に含まれるL−カルノシン類、及びその薬学的に許容される塩の量は、通常、最終製剤中に約10〜100質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0017】
本発明の組成物の投与量は、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kgである。このような投与量とすることにより、脾臓交感神経作用が制御され、腫瘍の発生又は増殖を効果的に抑制することができる。より好ましくは、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシンとして体重あたり約5〜150mg/kgである。また、好ましくは、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり約8〜70mg/kgである。投与する回数としては特に限定されず、前記量を1回で経口投与してもよく、2〜6回程度に分けて経口投与してもよい。好ましくは、2〜3回程度に分けて経口投与する。
【0018】
本発明の組成物の好ましい投与量は、動物の種類、体重等に応じて上記範囲内で適宜設定することができる。
例えば、ヒトに対しては、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)、体重あたり8〜20mg/kg程度投与することが好ましく、体重あたり9〜15mg/kg程度投与することがより好ましく、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり10〜13mg/kg程度投与することがさらに好ましい。例えば、体重約50〜80Kgのヒトに対しては、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくは、1日あたりL−カルノシンとして)、好ましくは約400〜1600mg、より好ましくは約450〜1200mg、さらに好ましくは約500〜1040mgを経口投与する。
【0019】
本発明の組成物は、ヒト以外の哺乳動物に用いてもよい。ヒト以外の哺乳動物に対する好ましい投与量は、上記のヒト換算の投与量から、Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics In Adult Volunteers, FDA July (2005)、Shannon Reagan-Shaw et al., FASEB Journal 2007 vol.22 march p. 659-661(2007)等の記載を基に、動物の体表面積に応じて適宜計算される。例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、サル、フェレット等のヒト以外の哺乳動物に対しては、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり15〜70mg/kg程度投与することが好ましく、体重あたり17〜60mg/kg程度投与することがより好ましい。また、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、サル等の哺乳動物に対しては、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり15〜50mg/kg程度投与することが好ましく、体重あたり17〜40mg/kg程度投与することがより好ましい。
【0020】
例えば、イヌであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり15〜30mg/kg程度投与することが好ましく、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり17〜25mg/kg程度投与することがより好ましい。ウサギ又はサルであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり20〜50mg/kg程度投与することが好ましく、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり25〜40mg/kg程度投与することがより好ましい。フェレットであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり30〜70mg/kg程度投与することが好ましく、体重あたり40〜60mg/kg程度投与することがより好ましい。
【0021】
例えば、マウス、ラット等であれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり50〜150mg/kg程度投与することが好ましく、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり60〜40mg/kg程度投与することがより好ましい。例えばラットであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり60〜70mg/kg程度投与することがさらに好ましい。また、マウスであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり130〜140mg/kg程度投与することがさらに好ましい。
【0022】
本発明の組成物は、ヒトを含む哺乳動物の脾臓交感神経活動を抑制する作用、腫瘍の発生を抑制する作用、腫瘍の増殖を抑制する作用等を有するものである。このような作用により、大腸癌、胃癌、肺癌、子宮癌、肝臓癌等の腫瘍の発生の予防又は腫瘍の治療に好適に用いられる。
【0023】
本発明の組成物は、例えば、腫瘍の発生又は増殖抑制剤、脾臓交感神経活動抑制剤等として好適に用いられる。
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する腫瘍の発生又は増殖抑制剤も、本発明に包含される。
腫瘍の発生又は増殖抑制剤は、好ましくは、脾臓交感神経活動を抑制することで腫瘍の発生又は増殖を抑制するために用いられる。
【0024】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する脾臓交感神経活動抑制剤も、本発明に包含される。本発明の脾臓交感神経活動抑制剤は、脾臓交感神経活動を低下させる作用を有することから、腫瘍の発生又は増殖の抑制等に好適に用いられる。
【0025】
本発明の腫瘍の発生又は増殖抑制剤及び脾臓交感神経活動抑制剤、並びにその好ましい態様等は、上述した本発明の組成物と同様である。例えば、L−カルノシン類としては、上述したものと同様であり、例えば、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体(例えば、N−アセチル−L−カルノシン、N−アセチル−L−アンセリン、N−アセチル−L−ホモカルノシン等)等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、又はそれらのアシル誘導体であり、より好ましくは、L−カルノシン又はN−アセチル−L−カルノシンであり、さらに好ましくは、L−カルノシンである。
【0026】
本発明の組成物、腫瘍の発生又は増殖抑制剤、及び脾臓交感神経活動抑制剤は、例えば、腫瘍(好ましくは悪性腫瘍)が形成された個体等に好適に適用される。個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、フェレット等の哺乳類が好ましく、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ヒト等がより好ましく、特にヒトが好ましい。
【0027】
本発明の組成物、腫瘍の発生又は増殖抑制剤、及び脾臓交感神経活動抑制剤は、人体に安全な成分から成るため、長期にわたって摂取しても安心で、上記した医薬組成物以外にも機能性食品、健康補助食品、飲食品等の原料としても広く利用することができるものである。
【0028】
本発明の腫瘍の発生又は増殖抑制剤を含む腫瘍の発生又は増殖抑制用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明の脾臓交感神経活動抑制剤を含む脾臓交感神経活動抑制用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明に係る飲食品組成物を、例えば腫瘍が形成されたヒトを含む哺乳動物に摂取させることにより、腫瘍の増殖を抑制することができる。飲食品組成物中に含まれる有効成分であるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩の量は、通常、最終組成物中に約10〜100質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0029】
本発明の組成物、腫瘍の発生又は増殖抑制剤、及び脾臓交感神経活動抑制剤を飲食品組成物に用いる場合、その形態は特に限定されない。液状、ゼリー状、ヨーグルト状、固体状のいずれの形態であってもよい。飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばクッキー、ケーキ、ビスケット、和菓子などの菓子類;麺類、パン類、米飯又はその加工品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態とすることができる。
【0030】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分、添加剤等を含んでいてもよい。例えば、乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩等が挙げられる。
【0031】
本発明に係る飲食品組成物は、L−カルノシン類として上述した組成物の場合と同様の量摂取されることが好ましい。本発明に係る飲食品組成物量は、通常、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kgがヒトを含む哺乳動物に摂取されるように用いられるものである。好ましくは、1日あたりL−カルノシンとして体重あたり約5〜150mg/kgである。摂取する回数としては特に限定されず、前記量を1回で摂取してもよく、2〜6回程度に分けて摂取してもよい。好ましくは、前記量を2〜3回程度に分けて摂取する。
【0032】
本発明に係る飲食品組成物の好ましい摂取量は、例えばヒトであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり約8〜20mg/kgとすることが好ましい。ヒトであれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり9〜15mg/kg程度摂取することがより好ましく、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり10〜13mg/kg程度摂取することがさらに好ましい。好ましい実施態様においては、例えば、体重約50〜80Kgのヒトに対して1日あたりL−カルノシン類として(より好ましくはL−カルノシンとして)好ましくは約400〜1600mg、より好ましくは約450〜1200mg、さらに好ましくは約500〜1040mgが摂取されるように用いられる。
【0033】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、サル、フェレット等のヒト以外の哺乳動物であれば、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり15〜70mg/kg程度が摂取されることが好ましく、体重あたり17〜60mg/kg程度が摂取されることがより好ましい。また、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、サル等の哺乳動物に対しては、1日あたりL−カルノシン類として(好ましくはL−カルノシンとして)体重あたり15〜50mg/kg程度が摂取されることが好ましく、体重あたり17〜40mg/kg程度が摂取されることがより好ましい。
【0034】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与する腫瘍の発生又は増殖を抑制する方法も、本発明に包含される。好ましくは、脾臓交感神経活動を抑制することで腫瘍の発生又は増殖を抑制するために投与される。L−カルノシン類及びその好ましい投与量等は、上述した本発明の組成物、及び腫瘍の発生又は増殖抑制剤と同様である。
【0035】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与する脾臓交感神経活動を抑制する方法も、本発明に包含される。脾臓交感神経活動を抑制することにより、腫瘍の発生又は増殖を効果的に抑制することができる。L−カルノシン類及びその好ましい投与量等は、上述した本発明の組成物、及び脾臓交感神経活動抑制剤と同様である。
【0036】
腫瘍の発生又は増殖を抑制するために使用され、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩も、本発明に包含される。
脾臓交感神経活動を抑制するために使用され、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり約5〜150mg/kg経口投与されるように用いられるL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩も、本発明に包含される。
L−カルノシン類及びその好ましい投与量等は、上述した本発明の組成物、腫瘍の発生又は増殖抑制剤、及び脾臓交感神経活動抑制剤と同様である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。
【0038】
実施例1
脾臓交感神経活動に対する影響の検討
体重約300gのWistar系雄ラット(約9週齢)を使用した。十二指腸に十二指腸カニューレを挿入した後、脾臓交感神経を銀電極で吊り上げ、既述の方法(非特許文献8及び9)にてそれら神経の電気活動を測定した。これらの測定値が落ち着いた時期に十二指腸カニューレを使用して種々の濃度のL−カルノシン水溶液1mLを十二指腸内に投与し、脾臓交感神経の電気活動を電気生理学的に測定した。対照実験としては水1mLを十二指腸内投与し脾臓交感神経活動を測定した。L−カルノシンは、浜理薬品工業社製のものを使用した。
【0039】
図1に、ウレタン麻酔ラットにおいて、L−カルノシンを1mg含む水溶液1mL及びL−カルノシンを10mg含む水溶液1mLを十二指腸内投与したときの脾臓交感神経活動(splenic sympathetic nerve activity: Splenic-SNA)の変化を示す。この試験のSplenic-SNAの測定は、L−カルノシン水溶液投与(刺激開始)後、Splenic-SNAのデータを5分間毎の5秒あたりの発火頻度(pulse/5 s)の平均値にて解析し刺激開始前5分間の平均値の値(0分値)を100%とした百分率で表し、その平均値を計算した。図1の横軸は、L−カルノシンを含む水溶液を投与後の時間を示す(投与直前:0分)。図1中、◆は、1mgのL−カルノシンを含む水溶液1mLを投与した場合のSplenic-SNAの変化であり、■は、10mgのL−カルノシンを含む水溶液1mLを投与した場合のSplenic-SNAの変化である。10mg/mL及び1mg/mLのL−カルノシン水溶液の十二指腸内投与は、いずれもSplenic-SNAを低下させた(図1)。また、L−カルノシンは用量依存的にSplenic-SNAを抑制する傾向があった。
【0040】
これらの濃度の内で脾臓交感神経活動を低下させる1mg/mL濃度のL−カルノシン水溶液の効果をさらに確認するためにL−カルノシン投与群3匹と水投与群3匹でこの濃度のL−カルノシン水溶液のSplenic-SNAに対する効果を検討した。図2に、ウレタン麻酔ラットへL−カルノシン1mg含む水溶液1mL及び水1mLを十二指腸内投与したときの脾臓交感神経活動(Splenic-SNA)の変化を示す。図2の横軸は、L−カルノシンを含む水溶液又は水を投与後の時間を示す(投与直前:0分)。図2中、◆は、1mgのL−カルノシンを含む水溶液1mLを投与した場合のSplenic-SNAの変化であり、▲は、水を投与した場合のSplenic-SNAの変化である。図2に示されるように、対照実験として行った水1mLを十二指腸内投与した後にはSplenic-SNAはやや増加するものの投与前値から大きく変化しなかったのに対して、L−カルノシン 1mgを含む水溶液1mLを十二指腸内投与すると、Splenic-SNAを徐々に著しく低下させ、投与60分後には45%にまで減少させた(図2)。投与後5分から60分までの水投与の場合とL−カルノシン1mg投与の場合のSplenic-SNAの値を群として比較するため、分散分析法(ANOVA with repeated measures法)により統計検定を行ったところ、L−カルノシン1mg投与時のSplenic-SNAの値は水投与の場合よりも有意(P<0.0005, F=88.7 by ANOVA)に低いことが明らかとなった。以上の事実は、L−カルノシン1mgを含む水溶液1mLの十二指腸内投与は膵臓交感神経活動を抑制することを示している。
【0041】
実施例2
ヌードマウスに移植したヒト大腸癌細胞(HCT116細胞)の増殖に対するL−カルノシンの作用の検討
実施例1の結果から、1mgのL−カルノシンを含む水溶液1mLの十二指腸内投与は脾臓交感神経活動を抑制することが明らかになった。この試験結果をふまえて担癌マウスへL−カルノシンを経口的に投与し、腫瘍増殖に対する作用を調べた。
具体的には、胸腺を欠損していて獲得免疫能の無いヌードマウス(雌、体重約20g)の皮下に、皮下注射によりヒト大腸癌(HCT116)細胞(2.5×106個/マウス)を移植した。移植したヒト大腸癌(HCT116)細胞の形成する腫瘍に対する1mg/mLの濃度のL−カルノシン水溶液投与効果を検討した。移植後6日間は水(UV照射滅菌水)と餌を自由摂食させた後、形成された腫瘤の大きさの平均が均等になるように2群に分けた。一方の群は対照群として引き続きUV照射滅菌水と餌を自由摂食させた。もう一方の群については、6日目以降はUV照射滅菌餌とL−カルノシン(1mg/mL)を含むUV滅菌水を唯一の飲料水として自由摂取させ癌細胞移植後22日目まで飼育して、腫瘍細胞の体積と体重の変化を対照群と比較した。つまり、ヒト大腸癌(HCT116)細胞(2.5×10細胞/マウス)を移植して6日後から、対照実験群ヌードマウスには引き続き水(UV滅菌水)を飲料水として与えたが、L−カルノシン投与群のヌードマウスには1mg/mLの濃度のL−カルノシン水(UV滅菌水)溶液を唯一の飲料水として与え自由摂取させた。腫瘍塊の大きさについては公知の方法(Gonzalez L. et al., J. Biol. Chem. 2006 vol. 281 p. 20851-20864に記載の方法)に準拠して測定した。
【0042】
図3に、移植した大腸癌細胞により形成された腫瘍の体積の変化を示す。水摂取対照群(n=6)では実験群への飲料水切替え日の6日目(図3中に矢印で示す)に29.9mm、切替え2日目(実験開始後8日目)に122mm、切替え7日目(実験開始後13日目)に307mm、切替え日16日目(実験開始後22日目)に870mmへと腫瘍体積は増加した。一方、L−カルノシン(1mg/mL)水溶液に切替えたマウス群(n=6)では大腸癌移植後の腫瘍体積は6日目(図3中に矢印で示す)に29.6mm、切替え2日目(実験開始後8日目)に50mm、切替え7日目(実験開始後13日目)に138mm、切替え16日目(実験開始後22日目)に408mmへと増加した。これらの両群における移植大腸癌細胞の形成する腫瘍体積を比較すると、対照水投与群と比較してL−カルノシン水溶液投与群では遥かにそして有意に(P<0.0005, F=25.6 by ANOVA)腫瘍体積の増加抑制が認められた。移植後22日目(L−カルノシン水溶液への切替え後16日目)のヒト大腸癌(HCT116)細胞の形成する腫瘍体積は水投与対照群では870mmであるのに対して、L−カルノシン水溶液投与群では408mmと対照群に比して約47%であった。図4は大腸癌(HCT116)細胞移植後22日目(実験開始後22日目)の対照群(図4のA)、及びL−カルノシン投与群(図4のB)L−カルノシン投与群両群の腫瘍の外観を示す。図4中、腫瘍を点線で囲んで示す。L−カルノシン投与群の1匹では飲料水切替え前に存在した腫瘍が消失していた(図4のBの右列最下段のマウス)。従って、経口投与されたL−カルノシン水溶液は、腫瘍塊形成抑止作用を示すことが分かった。
対照水投与群の体重と比較してL−カルノシン投与群の体重は大腸癌(HCT116)細胞移植後16日目及び22日目で大きい傾向はあったが、ANOVAによる解析では有意差が認められなかった。
【0043】
以上の実験から、次のことが分かった。
1)ウレタン麻酔ラットの十二指腸内にL−カルノシン1mgを含む水溶液1mLを注入すると脾臓交感神経活動(Splenic-SNA)が抑制された(図1及び図2)。2)ヒト大腸癌細胞(HCT116細胞)を移植したヌードマウスにL−カルノシン水溶液(1mg/mL)を唯一の飲料水として与えると、腫瘍塊の体積はがん細胞移植後22日目で対照群の約47%であり対照群に比して有意に(P<0.0005, F=25.6 by ANOVA)小さかった。
以上の結果はL−カルノシンが脾臓交感神経活動を低下させて、腫瘍の増殖を抑制したことを示すものである。
脾臓交感神経活動を抑制すると、腫瘍細胞を殺傷するナチュラルキラー(NK)リンパ球細胞活性が上昇することが知られている(非特許文献7)ので、L−カルノシンの抗腫瘍作用には脾臓交感神経活動の抑制によるNK細胞の活性の活性化が関与しているものと考えられる。
【0044】
マウスへのL−カルノシン投与量の見積と、Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics In Adult Volunteers, FDA July (2005)及びShannon Reagan-Shaw et al., FASEB Journal 2007 vol.22 march p. 659-661(2007)によるヒト投与量換算
Mei-chin M. et al.(European Journal of Pharmacology 2011 vol. 653(1-3) p. 82-88)では1mg/mLのL−カルノシン溶液をマウスは2.6mL/day飲んだという報告がある。この摂水量を元にマウスへのL−カルノシン一日投与量をmg/Kg単位で計算した。
【0045】
マウスの平均摂水量を2.6mL/dayとすると、この中のL−カルノシン量は2.6mgであり、一日あたり、2.6mg/マウス/dayの投与量となる。今回使用したマウスの平均体重はL−カルノシン投与開始時18.7gで、試験終了時では19.9gであったので、それぞれに対応するKg体重あたりの投与量は、139mg/Kg及び130mg/Kgとなる。これをそれぞれGuidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics In Adult Volunteers, FDA July (2005)及びShannon Reagan-Shaw et al., FASEB Journal 2007 vol.22 march p. 659-661(2007)に従ってヒト投与量に換算すると(ヒト投与量(mg/Kg)=マウス投与量(mg/Kg)×マウスKm/ヒトKm、Kmは体表面積から求められた定数で、マウスでは3であり、ヒトでは37である)、11.3mg/Kg及び10.5mg/Kgとなる。つまり上記マウスへの投与量をヒトへの経口投与量に換算すると、体重1Kgあたり、L−カルノシンを10.5〜11.3mgである。例えば体重50〜80Kgのヒトに対しては1日あたり約525〜904mgの投与に対応する。
【0046】
ヒト以外の哺乳動物への体重あたりの投与量は、前記マウスに対する投与量から、ヒトの場合と同様に、各動物の体表面積から求められる定数(Km)を基に容易に計算することができる(Guidance for Industry: Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics In Adult Volunteers, FDA July (2005)及びShannon Reagan-Shaw et al., FASEB Journal 2007 vol.22 march p. 659-661(2007))。
例えば、イヌであれば、イヌのKm20を用いて、マウスへの投与量(mg/kg)×(マウスKm(3)/イヌKm(20))で計算できる。
例えば、ウサギであれば、ウサギのKm12を用いて、マウスへの投与量(mg/kg)×(マウスKm(3)/ウサギKm(12))で計算できる。
例えば、サルであれば、サルKmとして12を用いて、上記と同様に計算される。ミニブタであれば、ミニブタKmは35であり、フェレットの場合は、フェレットKmは7である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、医薬又はサプリメントもしくは食品の分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する組成物。
【請求項2】
L−カルノシン類が、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられる請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
L−カルノシン類が、L−カルノシンである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する腫瘍の発生又は増殖抑制剤。
【請求項5】
脾臓交感神経活動を抑制するために用いられる請求項4に記載の腫瘍の発生又は増殖抑制剤。
【請求項6】
L−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩が、ヒトを含む哺乳動物に対して、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられることを特徴とするL−カルノシン類又はその薬学的に許容される塩を含有する脾臓交感神経活動抑制剤。
【請求項7】
L−カルノシン類が、L−カルノシン、L−アンセリン、L−バレニン、L−ホモカルノシン、カルシニン、及びそれらのアシル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、1日あたりL−カルノシン類として体重あたり5〜150mg/kg経口投与されるように用いられる請求項4〜6のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
L−カルノシン類が、L−カルノシンである請求項4〜7のいずれか一項に記載の剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219080(P2012−219080A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88612(P2011−88612)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(507157908)株式会社ANBAS (7)
【出願人】(000236573)浜理薬品工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】