説明

経口投与用医薬組成物

【課題】杵付着性を有する化合物の3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の崩壊性を維持しつつ、杵付着性などの打錠障害を低減してなる経口投与用医薬組成物、及び該組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】前記経口投与用医薬組成物は、製薬学的に許容され、かつ打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できるヒドロキシプロピルセルロースを含有する。前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度は、好ましくは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下であるか、あるいは、2%水溶液で20℃での粘度が10mPa・S以上150mPa・S未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアゼパン誘導体を含有する経口投与用医薬組成物に関する。詳細には、本発明は、3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩を含有し、結合剤として特定のヒドロキシプロピルセルロースを配合することにより、崩壊性を維持しつつ、かつ圧縮成形時の杵付着性などの打錠障害を低減した経口投与用医薬組成物並びに当該医薬組成物の製造方法に関するものである。
また、本発明は、3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に、結合剤として配合し、崩壊性を維持しつつ、かつ杵付着性を低減した経口投与用医薬組成物を製造するための特定のヒドロキシプロピルセルロースの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジアゼパン誘導体である3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩は、アステラス製薬により創製された化合物であり、活性化血液凝固第Xa因子を特異的に阻害し、強力な抗凝固作用を有し、血液凝固抑制剤、又は血栓若しくは塞栓によって引き起こされる疾病の予防・治療剤としての開発を検討中である(特許文献1)。
【0003】
医薬品製剤は、単位操作である「粉砕・混合・造粒・乾燥・打錠・表面改質」等の工程により製造され、医療の現場に提供される。該医薬品が通常製剤の場合、良好な崩壊性・溶出性なる特性も要求される。しかし、該特性が医薬品製剤に付与されるとき、上記製造工程、特に打錠工程時に打錠障害(スティッキング・バインディング)を起こし、製剤の一部が欠けるといった成形障害につながることがある。生産スケールにて製造する場合には、このような打錠障害は機械の停止の原因となり、生産自体が困難になることも想定される。また、錠剤表面に識別コードを刻印する場合にも、打錠障害により刻印抜けが起こり、大きな問題となる。更に、実生産においてこのような杵付着が発生した場合には、一旦生産を中断し、杵表面の付着物を取り除く作業が必要となり、このようなトラブルが生産中に多く発生してくると、生産効率の低下、不良錠の増加による品質低下(収率の低下)という種々の問題と発展していく。
【0004】
通常、このような打錠障害はタルクやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤の増量等によって解決されるが、滑沢剤の増量は、製剤自体の成形性を低下させ、それに伴う硬度低下や摩損度低下を引き起こすことがあるため、このような方法は極力避けて問題を解決することが望ましい。また、打錠工程時に使用する臼杵表面に磨きを施すことで打錠障害を防ぐことができるが、磨きの効果は永久的なものではないため、磨耗により打錠障害が発生し、根本的な解決とはならない。
【0005】
杵付着を改善することを目的として、杵付着性薬物原末に可塑剤を含んだコーティング用組成物でコーティングした顆粒を配合し、打錠してなる医薬製剤が開示されている(特許文献2)。
また、融点が70〜150℃の生理活性成分のスティッキングを可及的に防止して打錠することが出来る錠剤用組成物及び打錠方法を提供することを目的に、平均粒子径1〜100μmの結晶性粉末を配合することを特徴とする錠剤用組成物が開示されている(特許文献3)。
【0006】
しかしながら、いずれの文献に記載された技術も医薬品製剤の製造時の付着性を改善するものであって、医薬品製剤としての良好な崩壊性を維持し、かつ圧縮成形時の杵付着性を改善させるための技術ではない。3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の崩壊性を維持しつつ、かつ杵(金属)付着性を改善する技術及び医薬組成物、並びに該組成物の製造方法について、さらに技術開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2001/074791号パンフレット(日本特許第3788349号明細書)
【特許文献2】特開2007−169273号公報
【特許文献3】特開平10−59842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
製剤化検討の中で、3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に杵(金属)付着性があることが明らかとなった。
本発明は、杵付着性を有する化合物の3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の崩壊性を維持しつつ、杵付着性などの打錠障害を低減してなる経口投与用医薬組成物、及び該組成物の製造方法を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、3−ヒドロキシ−N1−(4−メトキシベンゾイル)−N2−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に配合し、崩壊性を維持し、かつ杵付着性などの打錠障害を低減してなる経口投与用医薬組成物を製造するための、特定のヒドロキシプロピルセルロースの結合剤としての使用、を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる状況下、本発明者らは、3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物について鋭意検討した結果、従来技術では、圧縮成形時において、杵や臼への付着といった打錠障害(スティッキング・バインディング)が生じることを知った。また、添加する成分によっては、杵付着等の打錠障害は改善するものの、錠剤の崩壊性が悪くなり、それに伴う薬物の溶出遅延が生じてしまうことを知った。本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の水溶性高分子を選択・使用することにより、圧縮成形時の杵付着等の打錠障害を低減し、さらに錠剤の良好な崩壊性を保持できることを知見して、本願発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩、およびヒドロキシプロピルセルロースを含有し、良好な崩壊性を示す、経口投与用医薬錠剤、
[2]前記ヒドロキシプロピルセルロースが、製薬学的に許容され、かつ打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できるものである、[1]の経口投与用医薬錠剤、
[3]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[2]の経口投与用医薬錠剤、
[4]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロース、又は、5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[3]の経口投与用医薬錠剤、
[5]5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL LF(商標)である、[4]の経口投与用医薬錠剤、
[6]5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL JF(商標)である、[5]の経口投与用医薬錠剤、
[7]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、2%水溶液で20℃での粘度が10mPa・S以上150mPa・S未満の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[2]の経口投与用医薬錠剤、
[8]良好な崩壊性が、日本薬局方の一般試験法で測定した崩壊時間が5分以内である、[1]〜[7]のいずれかの経口投与用医薬錠剤、
[9]3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に、製薬学的に許容され、かつ打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できるヒドロキシプロピルセルロースを配合する、経口投与用医薬錠剤の製造方法、
[10]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[9]の製造方法、
[11]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロース、又は、5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[10]の製造方法、
[12]5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL LF(商標)である、[11]の製造方法、
[13]5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL JF(商標)である、[11]の製造方法、
[14]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、2%水溶液で20℃での粘度が10mPa・S以上150mPa・S未満の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、[9]の製造方法、
[15]良好な崩壊性が、日本薬局方の一般試験法で測定した崩壊時間が5分以内である、[9]〜[14]のいずれかの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、(1)薬物の良好な崩壊性を維持することができ、(2)圧縮成形時の杵付着性等の打錠障害を低減させることができる医薬品製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の経口投与用医薬組成物を説明する。
本明細書において、「杵付着」とは、打錠中に杵の打錠面に薬物や打錠末が付着し、更に打錠を継続すると臼杵への付着物によって錠剤の刻印が欠けたり、打錠末が成長することによって素錠表面のつやをなくしたり、素錠表面に凸凹を形成する現象である。
本明細書において、杵付着性の評価は、打錠機にて打錠を実施後、杵表面を目視観察、他の態様としてマイクロスコープによって観察し、杵表面における曇りの有無によって杵付着性を評価する。
【0013】
本明細書において、崩壊性の評価は、硬度が50N以上の錠剤を6錠用いて、日本薬局方の一般試験法に準拠する。具体的には、試験液を水とし、錠剤1錠が入った試験器を受軸に取り付け、ビーカー中に入れ、1分間29〜32往復、振幅53〜57mmで滑らかに上下運動を行うように調節する。試験器が最も下がった時、下の網面がビーカーの底から25mmになるようにし、ビーカーに入れる試験液量は、試験器が最も下がった時、試験器の上面が試験液の上面が液の表面に一致するようにする。試験液の温度は、37±2℃に保ち、錠剤が崩壊するまでの時間を測定する。6錠の平均値を崩壊時間とする。
本明細書において、「良好な崩壊性」とは、例えば、一般試験法において測定した崩壊時間が5分以内であり、他の態様として、4分以内である。
【0014】
本発明に用いられる薬物である3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミン(以下、化合物Aと略称することがある)は、以下の構造式により表され、化合物Aを含むジアゼパン誘導体が特許第3788349号明細書に開示されている。
【化1】

【0015】
化合物Aは、塩を有さないフリー体の態様だけでなく、他の態様として、酸付加塩を形成または塩基との塩を形成する場合があり、更なる態様として、酸付加塩を形成する場合がある。かかる塩として、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン等の有機塩基、リジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸との塩やアンモニウム塩等が挙げられ、他の態様として、マレイン酸塩である。
【0016】
本発明に用いられる前記薬物は、活性化血液凝固第X因子を特異的に阻害し、強力な抗凝固作用を有する。従って、血液凝固抑制剤、又は血栓若しくは塞栓によって引き起こされる疾病の予防・治療剤として有用である。
【0017】
化合物Aのヒトに対する臨床投与量は適用される患者の症状、体重、年齢や性別等を考慮して適宜決定されるが、通常成人1日当たり例えば、0.1mg以上500mg以下、他の態様として、0.3mg以上200mg以下、更なる態様として、1mg以上120mg以下を1回あるいは数回に分けて経口投与する。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与量範囲より少ない量で十分な場合もある。
化合物Aの配合量は、投与単位製剤あたりの有効量を含有していればよいが、例えば、1製剤あたり例えば、0.1重量%以上55重量%以下、他の態様として、0.5重量%以上45重量%以下である。
【0018】
ヒドロキシプロピルセルロース(以下、HPCと記載することがある)は、セルロースに酸化プロピレンを反応させて得られるヒドロキシエーテルであり、分子重合度の違いにより粘度が異なる。
本発明で用いるHPCについては、製薬学的に許容され、かつ杵付着等の打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できる範囲であれば特に制限されないが、例えば、2%水溶液で20℃での粘度が、約6mPa・S以上約150mPa・S未満、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度、他の態様として、2%水溶液で20℃での粘度が、約6mPa・S以上約10mPa・S以下、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度である。
当該ポリマーは、例えば2%水溶液で20℃での粘度が、約6mPa・S以上約10mPa・S以下であるHPC−L(日本曹達)、5%水溶液で25℃での粘度が、75mPa・S以上150mPa・S以下であるKLUCEL LF(ハーキュリーズ社)、5%水溶液で25℃での粘度が、150mPa・S以上400mPa・S以下であるKLUCEL JF(ハーキュリーズ社)の商品名として販売されている。
【0019】
本発明では、水などの溶媒に溶解させても懸濁させても、また薬物とともに物理混合して添加しても良い。
配合量は、製薬学的に許容され、かつ杵付着等の打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できる範囲であれば特に制限されないが、例えば、薬物の量に対して約2w/w%以上約720w/w%以下であり、他の態様として約4w/w%以上約360w/w%以下であり、更に他の態様として約7w/w%以上約25w/w%以下である。製剤全体の量に対して、例えば、約2w/w%以上約10w/w%以下であり、他の態様として約3w/w%以上約7.5w/w%以下であり、更に他の態様として約3w/w%以上約5w/w%以下である。
【0020】
本発明の経口投与用医薬組成物には、所望によりさらに各種医薬添加剤が適宜使用され、製剤化される。かかる医薬添加剤としては、製薬的に許容されるものであれば特に制限されない。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤などが使用される。
【0021】
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、アラビアゴムなどが挙げられる。
賦形剤としては、例えば乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、精製白糖、ブドウ糖などが挙げられる。
崩壊剤としては、例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、メチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、部分アルファー化デンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウムなどが挙げられる。他の態様として、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシスターチナトリウム及びクロスポビドンが挙げられる。
酸味料としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
発泡剤としては、例えば重曹などが挙げられる。
人工甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。
香料としては、例えばレモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどが挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、食用青色3号などが挙げられる。
緩衝剤としては、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸またはその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニンまたはその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸またはその塩類などが挙げられる。
抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどが挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0022】
これらの医薬添加剤としては、1種または2種以上組合せて適宜適量添加することができる。これらの配合量は、製剤全体の量に対して1重量%以上100重量%未満であり、他の態様として、20重量%以上100重量%未満、更なる態様として40重量%以上100重量%未満である。但し、結合剤については、本発明の特定のHPCの所望の効果を達成できる程度の範囲内の量を添加する態様を排除するものではない。
【0023】
本発明の医薬組成物は、各種医薬品製剤とすることができる。医薬品製剤としては、例えば、散剤、細粒剤、ドライシロップ剤、カプセル剤、錠剤、口腔内崩壊錠等が挙げられる。
散剤、細粒剤、ドライシロップ剤、カプセル剤等に用いられる紛体は、流動性が優れている点や、用量調節が可能である点で有用である。
【0024】
以下に本発明の医薬組成物の製造法を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
本発明の医薬組成物は、例えば、粉砕、混合、造粒、打錠、フィルムコート等、自体公知の方法により製造可能である。
粉砕する方法としては、通常製薬学的に粉砕できる方法であれば、装置・手段とも特に制限されない。粉砕装置としては、例としてハンマーミル、ボールミル、ジェットミルなどが挙げられる。粉砕条件は適宜選択されれば特に制限されない。
【0025】
混合する方法としては、通常製薬学的に各成分を均一に混合できる方法であれば、装置・手段とも特に制限されない。混合装置としては、例としてV型混合機、リボン型混合機、コンテナミキサー、高速攪拌混合機などが挙げられる。混合条件は適宜選択されれば特に制限されない。
【0026】
薬物を造粒する方法としては、通常の造粒法を採用することができる。例えば、流動層造粒法、攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、転動型流動層造粒法、押し出し造粒法、破砕造粒法、乾式造粒法などである。他の態様として、流動層造粒法、攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、転動型流動層造粒法であり、造粒することが可能ないずれの方法を用いてもよい。
【0027】
例えば、流動層造粒法で、薬物と賦形剤などの添加剤と共に流動させながら、スプレーガンにてヒドロキシプロピルセルロースを含有する液を必要量噴霧すればよい。ヒドロキシプロピルセルロースを含有する液は、ヒドロキシプロピルセルロースを水、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解または分散して調製される。またこれらの溶媒を適宜混合し用いることも可能である。
【0028】
HPC溶液の濃度は、固形分濃度として1%以上20%以下であり、他の態様として5%以上15%以下である。
【0029】
好ましい結合液の噴霧速度は、通常粉状の凝集塊と未処理状態の粉末からなる不均一なものにならない速度であれば特に制限されない。また、製造方法または製造するスケールにより異なるが、例えば流動層造粒法により1kgスケールで製造するとき、1g/min以上20g/min以下であり、他の態様として5g/min以上20g/min以下であり、更に他の態様として、8g/min以上12g/min以下である。
【0030】
造粒する際の好ましい品温は20℃以上40℃以下であり、他の態様として25℃以上35℃以下である。
造粒物は、乾燥、熱処理などを施しても良く、好ましい温度として、例えば品温が30℃以上50℃以下であり、他の態様として40℃以上45℃以下である。
【0031】
打錠方法としては、通常製薬学的に圧縮成形物が製造される方法であれば特に限定されないが、例えば、薬物、ヒドロキシプロピルセルロースと適当な添加剤を混合後に圧縮成形し錠剤を得る直接打錠法、造粒後に滑沢剤などを混合して打錠する方法などが挙げられる。
【0032】
打錠装置としては、通常製薬学的に圧縮成形物(好適には錠剤)が製造される方法であれば、装置とも特に限定されないが、例えばロータリー打錠機、単発打錠機などが挙げられる。
【0033】
打錠後に錠剤表面にフィルムコーティングをしてもよい。
フィルムコーティング方法として通常製薬学的にコーティングされる方法であれば特に限定されないが、例えば、パンコーティング、ディップコーティングなどが挙げられる。
【0034】
フィルムコーティング剤としては、通常製薬学的にコーティングされる添加剤であれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、メチルセルロース、エチルセルロース、ステアリン酸、ステアリルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、トリアセチン、グリセリン、酸化チタン、タルク、カルナウバロウなどが挙げられる。フィルムコーティング剤としては、1種または2種以上組合せて適宜適量添加することができる。
コーティング率は通常のコーティング率を用いれば特に限定されないが、例えば、素錠に対して1重量%以上5重量%以下であり、他の態様として2重量%以上4重量%以下である。
【0035】
本発明のヒドロキシプロピルセルロースの使用としては、化合物Aまたはその製薬学的に許容される塩に、結合剤として、崩壊性を維持し、かつ圧縮成形時の杵付着性を低減してなる経口投与用医薬組成物を製造するための、約6m・Pa・S以上約150m・Pa・S未満、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースの使用であり、その実施の形態については本発明の医薬組成物の説明を引用する。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例、比較例に基づいて本発明を更に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。また、化合物Aマレイン酸塩は国際公開第WO2001/074791号パンフレット(日本特許第3788349号明細書)の記載に従って製造されたものを用いた。
【0037】
実施例1
2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約10mPa・S以下であるヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、製品名:HPC-L、以下記載無い場合同じ)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品12.45部とD−マンニトール(ロケット社製、製品名:Pearlitol 50C、以下同じ)62.25部を流動層造粒機(パウレック製、GPCG-5/15、以下同じ)に仕込み、噴霧速度100g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース(旭化成製、製品名:Ceolus PH-102、以下同じ)9部、クロスカロメロースナトリウム(FMC製、製品名:Ac-Di-Sol、以下同じ)2.7部及びステアリン酸マグネシウム(メルク社製、以下同じ)0.9部を容器回転式混合機(寿工業製、コンテナミキサーLM-20、以下同じ)に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機(畑鉄工所製、HT-X-SS-20、以下同じ)を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0038】
実施例2
ヒドロキシプロピルセルロース 2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機に仕込み、噴霧速度100g/minにて結合液を噴霧し、品温が28℃になるように造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0039】
実施例3
ヒドロキシプロピルセルロース 5.4部を精製水62.1部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品74.7部とD−マンニトール74.7部を流動層造粒機に仕込み、噴霧速度100g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)154.8部、微結晶セルロース18部、クロスカロメロースナトリウム5.4部及びステアリン酸マグネシウム1.8部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵8mmφ、打錠圧8kN/杵、錠剤重量180mg)。
【0040】
実施例4
ヒドロキシプロピルセルロース 10.8部を精製水124.2部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品149.4部とD−マンニトール149.4部を流動層造粒機に仕込み、噴霧速度100g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)309.6部、微結晶セルロース36部、クロスカロメロースナトリウム10.8部及びステアリン酸マグネシウム3.6部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵10mmφ、打錠圧10kN/杵、錠剤重量360mg)。
【0041】
実施例5
ヒドロキシプロピルセルロース 4.5部を精製水51.75部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール35.55部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度10g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を乳棒/乳鉢にて混合後、圧縮試験機(島津製・オートグラフ、以下同じ)を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0042】
実施例6
実施例5で得られた本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部に、ヒドロキシプロピルセルロース 2.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を添加し、乳棒/乳鉢にて混合後、圧縮試験機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量92mg)。
【0043】
実施例7
実施例5で得られた本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部に、ヒドロキシプロピルセルロース 5.0部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を添加し、乳棒/乳鉢にて混合後、圧縮試験機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量95mg)。
【0044】
実施例8
5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下であるヒドロキシプロピルセルロース(HERCULES社製、製品名:KLUCEL LF)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度10g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0045】
実施例9
5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下であるヒドロキシプロピルセルロース(HERCULES社製、製品名:KLUCEL JF)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度5g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、本発明の医薬組成物(造粒物)を得た。本発明の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、本発明の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0046】
実施例1〜7の処方を表1に示す。
【表1】

【0047】
実施例8〜9の処方を表2に示す。
【表2】

【0048】
比較例1
ポリビニルピロリドンK30(BASF社製、製品名Kollidon K30)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度10g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、比較例の医薬組成物(造粒物)を得た。比較例の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、比較例の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0049】
比較例2
2%水溶液で20℃での粘度が約3.0mPa・S以上約5.9mPa・S以下であるヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達製、製品名HPC-SL、以下同じ)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度10g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し、比較例の医薬組成物(造粒物)を得た。比較例の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、比較例の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0050】
比較例3
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(信越化学製、製品名TC-5R)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機(フロイント産業/大河原製作所製・FLO-1)に仕込み、噴霧速度10g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品を乾燥し比較例の医薬組成物(造粒物)を得た。比較例の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、比較例の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0051】
比較例4
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL)2.7部を精製水31.05部に溶解して結合液を調製した。次に、化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部とD−マンニトール37.35部を流動層造粒機に仕込み、噴霧速度100g/minにて結合液を噴霧し、造粒した。結合液噴霧後、造粒品をし、比較例の医薬組成物(造粒物)を得た。比較例の医薬組成物(造粒物)77.4部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて,事前に杵表面に鏡面磨きを施した杵により、比較例の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0052】
比較例5
化合物Aマレイン酸塩粉砕品37.35部、D−マンニトール40.05部、微結晶セルロース9部、クロスカロメロースナトリウム2.7部及びステアリン酸マグネシウム0.9部を容器回転式混合機に仕込み、混合後、ロータリー式打錠機を用いて、比較例の医薬組成物(錠剤)を得た(杵6mmφ、打錠圧6kN/杵、錠剤重量90mg)。
【0053】
比較例1〜5の処方を表3に示す。
【表3】

【0054】
試験例1[杵付着性の評価]
本発明の医薬組成物(錠剤)および比較の医薬組成物(錠剤)の杵付着の有無を評価した。評価は、ロータリー式打錠機(畑鉄工所製、HT-X-SS-20、以下同じ)にて実施例1〜4、8、9の造粒物および比較例1〜5の造粒物を表4または5の条件にて打錠後、杵表面を目視観察、さらにはマイクロスコープ(KEYENCE、デジタルマイクロスコープ)によって観察した。杵表面に曇りがある場合、杵付着は有り、曇りが無い場合、杵不付着はなしとして評価した。結果を表4及び表5に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
試験例2[崩壊性の評価]
本発明の医薬組成物(錠剤)および比較の医薬組成物(錠剤)の崩壊性、及び錠剤硬度を評価した。崩壊性評価は、実施例1〜9、及び比較例1〜5の錠剤をそれぞれ6錠ずつ用いて、日本薬局方の一般試験法に準拠し行った。具体的には、試験液を水とし、錠剤1錠が入った試験器を受軸に取り付け、ビーカー中に入れ、1分間29〜32往復、振幅53〜57mmで滑らかに上下運動を行うように調節した。試験器が最も下がった時、下の網面がビーカーの底から25mmになるようにし、ビーカーに入れる試験液量は、試験器が最も下がった時、試験器の上面が試験液の上面が液の表面に一致するようにした。試験液の温度は、37±2℃に保ち、錠剤が崩壊するまでの時間を測定した。6錠の平均値を崩壊時間とした。また、錠剤硬度は、10錠の平均値を記載した。
【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
表4〜7から明らかなとおり、特定の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースを結合剤として用いることにより、本発明の医薬組成物は崩壊性が4分以内と良好で、かつ、圧縮成形時の杵付着等の打錠障害を低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたは製薬学的に許容される塩およびヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有してなる経口投与用医薬組成物、および該医薬組成物を製造するためのヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用に関するものである。
本発明は圧縮成形時の杵付着等の打錠障害を低減し崩壊性も維持することが出来る。
【0062】
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に開示した事項は、以下のとおりである。
[1]3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩、および2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約150mPa・S未満、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースを含有してなる、経口投与用医薬組成物、
[2]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約10mPa・S以下である、[1]に記載の経口投与用医薬組成物、
[3]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約2〜約720w/w%である、[1]また[2]に記載の経口投与用医薬組成物、
[4]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約4〜約360w/w%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、
[5]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約7〜約25w/w%である、[1]〜[4]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、
[6]組成物が、5分以内に崩壊することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物、
[7]3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に、2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約150mPa・S未満、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースを配合する、経口投与用医薬組成物の製造方法、
[8]前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約10mPa・S以下である、[7]に記載の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[9]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約2〜約720w/w%である、[7]または[8]に記載の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[10]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約4〜約360w/w%である、[7]〜[9]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[11]ヒドロキシプロピルセルロースの量が3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩の量に対して約7〜約25w/w%である、[7]〜[10]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[12]組成物が、5分以内に崩壊することを特徴とする、[7]〜[11]のいずれかに記載の経口投与用医薬組成物の製造方法、
[13]3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に配合し、結合剤として、崩壊性を維持し、かつ圧縮成形時の杵付着性を低減してなる経口投与用医薬組成物を製造するための、2%水溶液で20℃での粘度が約6mPa・S以上約150mPa・S未満、あるいは、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースの使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩、およびヒドロキシプロピルセルロースを含有し、良好な崩壊性を示す、経口投与用医薬錠剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロピルセルロースが、製薬学的に許容され、かつ打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できるものである、請求項1に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項2に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項4】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロース、又は、5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項3に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項5】
5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL LF(商標)である、請求項4に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項6】
5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL JF(商標)である、請求項4に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項7】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、2%水溶液で20℃での粘度が10mPa・S以上150mPa・S未満の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項2に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項8】
良好な崩壊性が、日本薬局方の一般試験法で測定した崩壊時間が5分以内である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の経口投与用医薬錠剤。
【請求項9】
3−ヒドロキシ−N−(4−メトキシベンゾイル)−N−[4−(4−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)ベンゾイル]−1,2−フェニレンジアミンまたはその製薬学的に許容される塩に、製薬学的に許容され、かつ打錠障害を低減し、錠剤の良好な崩壊性を保持できるヒドロキシプロピルセルロースを配合する、経口投与用医薬錠剤の製造方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロース、又は、5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
5%水溶液で25℃での粘度が75mPa・S以上150mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL LF(商標)である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
5%水溶液で25℃での粘度が150mPa・S以上400mPa・S以下の粘度を有する前記ヒドロキシプロピルセルロースが、KLUCEL JF(商標)である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ヒドロキシプロピルセルロースの粘度が、2%水溶液で20℃での粘度が10mPa・S以上150mPa・S未満の粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項15】
良好な崩壊性が、日本薬局方の一般試験法で測定した崩壊時間が5分以内である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−235630(P2010−235630A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157727(P2010−157727)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2010−509600(P2010−509600)の分割
【原出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】