説明

経口用液体組成物

【課題】グルクロノラクトン、チアミン及び糖類を含有し、グルクロノラクトン及びチアミンの経時安定性に優れた経口用液体組成物を提供する。
【解決手段】グルクロノラクトン及びチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩及び糖類を含有する経口用液体組成物において、
糖類が、乳果オリゴ糖、グルコオリゴ糖から選ばれる1種以上であることを特徴とする経口用液体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルクロノラクトン、チアミン及び糖類を含有した経口用液体組成物に関する。詳しくは、グルクロノラクトン、チアミン及び糖類を含有し、グルクロノラクトン及びチアミンの経時安定性に優れた経口用液体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルクロノラクトンは肝機能の改善、蕁麻疹、湿疹、中毒疹、妊娠悪阻、妊娠中毒症等の治療等に使用されてきた。また、アルコールや脂肪の多量摂取に起因するアルコール性脂肪肝の予防剤としての効果が知られている有用な薬物である。ビタミン類は必須の栄養素であることはよく知られており、その中でも特にビタミンB1であるチアミンは、特に糖のエネルギー代謝に必要であることが知られており、代謝率が上昇している甲状腺機能亢進症や、妊娠・授乳期のほか、感冒などによる肉体疲労の回復時には、より多くのチアミンの摂取が必要である。肉体疲労時の栄養補給や滋養強壮を目的とした経口用液体組成物において、グルクロノラクトン、チアミンは効果があり有効成分として配合されている。このような液体組成物は摂取しやすいような味とするために糖類を配合している。
【0003】
しかしながら、一般に使われている白糖などを配合すると、グルクロノラクトン、チアミンの経時的安定性に問題があった。グルクロノラクトンの安定化を図る技術としては、グルクロノラクトンとジクロロ酢酸ジイソプロピルアミンを含有した内服用液剤(例えば、特許文献1:再公表2007−077658参照)や、グルクロノラクトンと生薬を含有した内服用液剤組成物(例えば、特許文献2:特開2008−162900参照)が提案されている。また、チアミンの安定化を図る技術としては、ビタミンB1類と生薬及び糖アルコールを含有した内服液剤(例えば、特許文献3:特開平11−171793参照)が提案されている。しかしながら、グルクロノラクトン及びチアミンの経時安定性に関しては十分に満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表2007/077658号公報
【特許文献2】特開2008−162900号公報
【特許文献3】特開平11−171793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、グルクロノラクトン、チアミン及び糖類を含有し、グルクロノラクトン及びチアミンの経時安定性に優れた経口用液体組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、グルクロノラクトン、チアミンと糖類を含む液剤のグルクロノラクトン、チアミンの経時的安定性に対して、糖類をオリゴ糖とすることによって、グルクロノラクトン、チアミンの安定性が向上することを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って本発明は、下記経口用液体組成物を提供する。
[1].グルクロノラクトン及びチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩及び糖類を含有する経口用液体組成物において、
糖類が、乳果オリゴ糖、グルコオリゴ糖から選ばれる1種以上であることを特徴とする経口用液体組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、グルクロノラクトン及びチアミンの安定化方法を提供することができ、この方法を利用して、経時的に安定なグルクロノラクトン及びチアミン含有経口用液体組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明における「グルクロノラクトン」とは、グルクロノラクトンそのものと、グルクロン酸、グルクロン酸塩の総称を意味する。グルクロノラクトンとグルクロン酸(塩)とは水溶液中で互いに平衡状態をとり共存する。従って、例えばグルクロノラクトン単体化合物のみを配合しても、水溶液中ではグルクロン酸、及びその塩が共存する。
本発明で使用されるグルクロノラクトンは、市販品(例えば、中外製薬(株)製など)であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。グルクロノラクトンを合成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
グルクロノラクトンの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、g/100mL単位では、0.01g/100mL〜10g/100mLが好ましく、0.1g/100mL〜5g/100mLがより好ましい。
該範囲の下限値以上であると、グルクロノラクトンの疲労回復や滋養強壮などの効果が充分に得られる。上限値以下であると、製剤化が良好である。
【0010】
本発明で使用されるチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩は、チアミン、ビスチアミン、ジセチアミン、チアミンジスルフフィド、フルスルチアミン、ビスベンチアミン、ビスイブチアミン、ベンフォチアミンなどが挙げられ、それらの塩としては、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩は、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよい。
市販品としては、例えば、日本薬局方チアミン塩化物塩酸塩、日本薬局方チアミン硝化物(メーカー:DSM Nutritional Products社、アルプス薬品工業(株)、渡辺ケミカル(株)など)、チアミン硝酸塩(和光純薬工業(株)など)などが挙げられる。
チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩を合成する方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩は、1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、g/100mL単位では、0.0001g/100mL〜10g/100mLが好ましく、0.0005g/100mL〜1g/100mLがより好ましく、0.001g/100mL〜0.1g/100mLがさらに好ましい。
該範囲の下限値以上であると、チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩の疲労回復や滋養強壮などの効果が充分に得られる。上限値以下であると、チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩による不快な味がなく、香味が良好である。
また、本発明の経口用液体組成物中、グルクロノラクトンおよびチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩の配合量の比率(質量比)は、グルクロノラクトン:チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩=2000:1〜1:1が好ましく、1000:1〜10:1がより好ましい。
【0011】
本発明で使用される糖類は、乳果オリゴ糖、グルコオリゴ糖から選ばれる1種以上であり、それぞれの糖類は、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。合成する方法は、特に制限はなく、オリゴ糖の公知の合成方法(抽出法、発酵法、合成法、異性化法など)のなかから適宜選択することができる。市販品としては、例えば、乳果オリゴ糖:塩水港精糖(株)(商品名:SL−40L、SL−55L、SL−55P、SL−90P)など、グルコオリゴ糖:日本食品化工(株)(商品名:ゲントース#45)などが挙げられる。
本発明で使用される糖類は、1種単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明で使用される糖類の含有量は、例えばg/100mL単位では、0.1〜20.0g/100mLが好ましく、0.5〜15.0g/100mLがより好ましく、1.0〜10.0g/100mLがさらに好ましい。
該範囲の下限値以上であると、本発明の効果が充分に得られる。上限値以下であると、本発明で使用される糖類が充分に溶解し、製剤上の問題がなく、液体組成物の安定性も良好である。
また、本発明で使用される糖類の配合量は、グルクロノラクトンおよびチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩の合計量に対し、0.1〜2000質量%が好ましく、1〜1000質量%がより好ましい。
【0012】
本発明の経口用液体組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分、例えばビタミン類、生薬、生理活性成分、甘味剤、保存剤(防腐剤)、安定化剤、pH調整剤、可溶化剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、酸化防止剤、着香剤・香料、清涼化剤、着色剤、緩衝剤、水等を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量配合することができる。
【0013】
本発明で使用されるビタミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビタミンA、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等のビタミンB2、ニコチン酸アミド、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビタミンE、アスコルビン酸等のビタミンC、パントテン酸カルシウム等のビタミン類が挙げられる。上記のビタミン類は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明で使用される甘味剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エリスリトール、キシリトール、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、マルチトール、マルチトール液、マルトース、D−マンニトールなどの糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、アマチャ抽出物、甘草抽出物、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出物、ネオテーム、ソーマチン、グリシン、グリセリン、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、甘草等の甘味剤が挙げられる。上記の甘味剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
本発明で使用される保存剤(防腐剤)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノール、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル等の保存剤が挙げられる。上記の保存剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
本発明で使用される安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸ナトリウム、アミノエチルスルホン酸、DL−アラニン、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−アルギニン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、アルブミン、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、カカオ脂、カルボキシビニルポリマー、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、キサンタンガム、キシリトール、グリシン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、グリチルリチン酸二ナトリウム、グルコノ−δ−ラクトン、グルコン酸カルシウム、結晶セルロース、酢酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸フェニル、β−シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン、酒石酸、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、精製ゼラチン、精製大豆レシチン、セスキオレイン酸ソルビタン、セタノール、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、大豆油不けん化物、デキストラン、天然ビタミンE、トコフェロール、d−δ−トコフェロール、ニコチン酸アミド、濃グリセリン、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、氷酢酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、フマル酸、フマル酸−ナトリウム、プロピレングリコール、ベントナイト、ホウ酸、没食子酸プロピル、ポビドン、ポリアクリル酸部分中和物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ジブチルエーテル混合物、マクロゴール、マレイン酸、マロン酸、D−マンニトール、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水ピロリン酸ナトリウム、無水マレイン酸、メタリン酸ナトリウム、メチルセルロース、l−メントール、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、卵白アルブミン、DL−リンゴ酸等の安定化剤が挙げられる。上記の安定化剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
本発明で使用されるpH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩酸、希塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、グルコノ−δ−ラクトン、コハク酸、酢酸、酒石酸、D−酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウム、氷酢酸、フマル酸−ナトリウム、マレイン酸、無水クエン酸、DL−リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アジピン酸、グルコン酸、フマル酸、炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤が挙げられる。上記のpH調整剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明の経口用液体組成物を調製する方法は、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いることができる。例えば、第十五改正日本薬局方製剤総則「液剤」の項に準じて製造し、ろ過、滅菌して製造することができる。
【0019】
本発明の経口用液体組成物のpH(25℃)は、本発明の効果に優れることから、1.5〜3.0が好ましく、2.0〜3.0がより好ましく、2.1〜2.8が特に好ましい。一方、pHが1.5未満だと、酸味が強すぎて風味を損なう恐れがある。pHが3.0を超えると、グルクロノラクトンの安定性が悪くなり、本発明の効果が損なわれるおそれがある。
【0020】
本発明の経口用液体組成物は、内服液剤または飲料として経口投与または経口摂取される。投与量または摂取量は、特に制限はなく、目的に応じ適宜選択することができる。例えば成人においては、一回当たりのグルクロノラクトンの摂取量(投与量)が0.03〜10g、チアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩の摂取量(投与量)が0.1〜250mgの範囲内となるように摂取(投与)することが好ましい。1日の摂取(投与)回数は、通常1〜6回程度であり、1回が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定
されるものではない。
【0022】
[実施例1〜2、比較例1]
表1に示す組成の経口用液体組成物を調製した。表中、各成分の配合量の単位はg/100mLであり、精製水の「残部」は経口用液体組成物の全量が100mLとなる量である。表中、pHは、25℃におけるpHであり、pH計(HM−30R:東亜ディーケーケー(株)製を)用いて測定した。
得られた経口用液体組成物を容量50mL充填用ガラス瓶に50mL充填し、スクリュー栓をした後、恒温槽にて70℃で7日間保存した。
【0023】
<安定性の評価方法>
保存後室温まで放冷した後、高速液体クロマトグラフィーにより、グルクロノラクトン、チアミン硝化物の含有量を測定した。保存前の含有量に対する残存率(保存後含量/保存前含量)を算出し、比較例の残存率に対する百分率を算出した。この百分率を基に以下の基準で判定した。結果を表中に併記した。
百分率 安定性の判定
100.0以下 ×(不良)
100.1〜102.0 ○(良好)
102.1以上 ◎(非常に良好)
【0024】
【表1】


上記結果に示すとおり、実施例1〜6の経口用液体組成物はいずれも、グルクロノラクトン、チアミン硝化物ともに百分率が100.1以上であり、いずれの安定性も良好であった。
【0025】
[実施例3〜25]
内服液剤の実施例として、表2〜5に示す組成の経口用液体組成物を常法により調製した。表中、各成分の配合量の単位はg/100mLであり、精製水の「残部」は経口用液体組成物の全量が100mLとなる量である。また、希塩酸、水酸化ナトリウムの「適量」は、所定のpHに調節するために用いた量である。pHは、25℃におけるpHであり、pH計(HM−30R:東亜ディーケーケー(株)製)を用いて測定した。
得られた経口用液体組成物について、安定性の評価を前記と同様にして行った。結果を表中に併記した。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】
【表5】


該結果に示すとおり、実施例3〜25の経口用液体組成物はいずれも安定性は良好であった。
【0030】
(使用原料)
使用した原料は下記の通りである。
グルクロノラクトン:中外製薬(株)(グロンサン原末)
チアミン硝化物:和光純薬工業(株)(チアミン硝酸塩)
乳果オリゴ糖:塩水港精糖(株)(L−55L)
グルコオリゴ糖:日本食品化工(株)(ゲントース#45)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルクロノラクトン及びチアミン又はチアミン誘導体又はそれらの塩及び糖類を含有する経口用液体組成物において、
糖類が、乳果オリゴ糖、グルコオリゴ糖から選ばれる1種以上であることを特徴とする経口用液体組成物。


【公開番号】特開2011−136949(P2011−136949A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298174(P2009−298174)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】