説明

経皮吸収製剤用装置

【課題】力の強弱にかかわらず良好な溶解液の移行性を示す溶解液保存容器を備えた経皮吸収製剤用装置を提供する。
【解決手段】基材1と電極層2からなり溶解液通過孔9を有する電極フィルムと、該電極フィルムの電極層2側に取り付けられた薬剤含浸部材3と、前記溶解液通過孔9を覆うリッド材7を介して前記電極フィルムの基材1側に接合された溶解液保存容器5とを備え、該溶解液保存容器5は底部と側壁部とを備え、該底部の中央部に前記溶解液通過孔9に向き合う凸部5bを有し、該側壁部が上下方向に折り返す折り返し部5cを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療または診断の医療分野において用いられる経皮吸収製剤用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経皮吸収製剤用装置は、皮膚または粘膜より薬物を体内に吸収させる装置であって、その一つに、イオントフォレーシス装置がある。イオントフォレーシス装置は皮膚または粘膜に電圧を印加し、電気的に薬物を泳動させ、皮膚または粘膜から薬物を投与するものである。
【0003】
イオントフォレーシス装置において、特に水分に対し安定性の悪い薬物を使用する場合には、保存時に薬物が劣化するのを防止するために、保存時には薬物と溶解液を分離し、治療に使用する直前に薬物と溶解液とを混合する必要がある。この際、皮膚や粘膜に貼付するための電極層を含むイオントフォレーシス電極自体に溶解液保存容器が一体化され、簡単な操作で溶解液と薬物とを混合できる構造とした方が便利である。
【0004】
例えば特許文献1では、電極層と薬物含有層とからなるイオントフォレーシス用プラスター構造体に、アルミ箔を介して電解質溶液を封入したカプセルを取り付けた構造が提案されている。当該構造においては、カプセルを押すことにより、カプセルに設けられた突起がアルミ箔等の薄膜を突き破り、内部の電解液を薬物含有層側に移行させ、電解液と薬物を混合することができる。
【0005】
【特許文献1】特公平5−84180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に挙げられたような装置では、カプセルを押して内部の電解液を薬物含有層に移行させる際に、カプセルを押す力が弱いと十分に電解液が薬物含有層に移行しにくいという問題があった。
【0007】
本願発明は、このような問題を解決し、力の強弱にかかわらず良好な溶解液の移行性を示す溶解液保存容器を備えた経皮吸収製剤用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべくなされた本発明は、以下の構成を有するものである。
【0009】
溶解液通過孔を有する保持体と、該保持体の一方の面側に設けられた薬剤含浸部材と、前記溶解液通過孔を覆うリッド材を介して前記保持体の他方の面側に設けられた溶解液保存容器とを備え、前記溶解液保存容器は底部と側壁部とを備え、該底部の中央部に前記溶解液通過孔に向き合う凸部を有し、該側壁部が上下方向に折り返す折り返し部を有することを特徴とする経皮吸収製剤用装置である。
【0010】
本発明においては、下記の構成を好ましい態様として含む。
【0011】
前記溶解液保存容器の底部の中央部に設けた凸部が、先端に凹部を有する。特に、前記凸部の外周に頂部と底部を有する。また、前記頂部と底部をそれぞれ複数有し、これらが前記凸部の外周に対照的に配列されている。
【0012】
前記保持体が、基材上に電極層を形成してなり、該基材がリッド材に接合されているイオントフォレーシス装置である。
前記リッド材が樹脂製リッド材であり、熱可塑性樹脂層もしくは粘着剤層を介して前記基材に接合されている。特に、前記溶液通過孔に位置する前記樹脂製リッド材の表面には前記熱可塑性樹脂層もしくは粘着剤層を有しない。
前記リッド材がアルミ製リッド材であり、前記溶解液保存容器が開口部にフランジ部を有し、アルミ製リッド材は前記溶解液保存容器のフランジ部外径内に配置されている。また、前記アルミ製リッド材と前記基材は粘着剤層を介して接合されている。特に、前記溶液通過孔に位置する前記アルミ製リッド材の表面には前記粘着剤層を有しない。また、前記アルミ製リッド材と前記溶解液保存容器はシーラント層を介して接合されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、溶解液保存容器の側壁部に折り返し部を設けたことで、溶解液移行時の操作性が向上し、該容器を押す力の強弱に関わらず、高いレベルの溶解液移行率が安定して得られ、使い勝手の良い経皮吸収製剤用装置が提供される。
【0014】
特に、本発明においては、溶解液保存容器の底部に形成した凸部の先端に凹部を形成しておくことにより、溶解液保存容器を押した際に、凸部とリッド材の初期接触を面接触ではなく線接触状態にすることができ、応力を集中させてリッド材を効果的に初期破断させることができると共に、凸部の外形に応じた広い領域に亘ってリッド材を突き破ることができる。つまり、リッド材を確実且つ広範囲に亘って突き破ることができるため、溶解液の移行率を高め、所望の薬効を発現させることができる。
【0015】
また、前記凸部の外周に頂部と底部を設けた場合には、凸部とリッド材の初期接触を線接触状態からさらに点接触状態に近くすることができ、より一層効果的にリッド材を突き破ることができる。
【0016】
また、前記頂部と前記底部をそれぞれ複数設けてこれらを凸部の外周に対称的に配列させた場合には、リッド材を複数箇所において万遍なく初期破断させることができ、より一層確実且つ広範囲に亘って突き破ることができる。
【0017】
さらに、本発明において、樹脂製リッド材を用いた場合には、通電時に漏電する危険性がなく、信頼性・安全性に優れたものとなる。
【0018】
また、本発明において、アルミ製リッド材を用いる場合には、デバイス表面に該リッド材が露出しないため、通電時に漏電する危険性がなく、信頼性・安全性に優れたものとなる。
【0019】
本発明の経皮吸収製剤用装置は、リッド材を基材に接合した保持体をロール状シート等の材料を用いて量産可能であり、信頼性・安全性に優れた経皮吸収製剤用装置を容易に量産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明が好ましく適用されるイオントフォレーシス装置を例に挙げ、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態であるイオントフォレーシス装置の一例を示す図であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である。本例のイオントフォレーシス装置は、主に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等からなる基材1と、基材1上に設けられた電極層2と、電極層2上に設けられた薬剤含浸部材3と、薬剤含浸部材3の周囲に設けられた発泡シート4と、溶解液6が充填された溶解液保存容器(溶解液保存用ブリスター容器)5と、溶解液保存容器5の蓋材として機能するリッド材7で構成されている。
【0022】
(保持体)
本発明において、イオントフォレーシス装置を構成する場合には、保持体は基材1と電極層2からなる電極フィルムである。尚、電極層2を持たない装置の場合には、基材1のみで保持体とする。
【0023】
基材1としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムが挙げられ、特にポリエチレンテレフタレートは絶縁性、耐熱性、加工容易性等に優れることから好適に用いることができる。また、これらを単体フィルムまたは複合体フィルムとして用いてもよい。
【0024】
電極層2は、電極放電部となるほぼ円形の部分と電極端子部となる延長部分とからなる。電極層2の材料としては、例えば銀、塩化銀、カーボン、チタン、白金、金、アルミ、鉄、ニッケルなどの金属、非金属の導電性材料及びこれらの混合物をベースとした材料を用いることができる。またこれらの材料をベースとした導電性ペーストを用いてもよい。これら導電性ペーストを用いると量産性に適したスクリーン印刷により電極層2を作成することができる。
【0025】
基材1上に電極層2が形成された保持体には、使用時に溶解液保存容器5内の溶解液6を薬剤含浸部材3に移行させるために、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成してある。
【0026】
(薬剤含浸部材)
薬剤含浸部材3の材料としては、親水性基材で薬物溶液を吸収保持できるものであれば、特に限定されないが、セルロース繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン発泡体、ポリカーボネート発泡体、ポリビニルアルコール発泡体、ポリエステル発泡体、ポリエステル不織布、綿等、またはこれらの複合体が挙げられる。
【0027】
(発泡シート)
発泡シート4は、薬剤含浸部材3に溶解液6を含浸させた際に、薬液がデバイス外に漏洩するのを防止する機能を有する。そのため、保持体と強固に接着されている必要がある。また、デバイスを皮膚に貼り付けて使用するため、フレキシブルな軟質発泡体であり、各種高分子、例えばポリウレタンやポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、アクリル樹脂、ポリスチレン等の発泡体を支持体としたものが望ましい。また、使用時に皮膚に貼り付けるため、ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の粘着剤8を片面に塗布したものを用いるのが好ましい。
【0028】
(シーリング層)
薬剤含浸部材3及び発泡シート4は、保持体の電極層2の周辺部等の所定の領域に粘着性材料やヒートシール性材料からなるシーリング層(不図示)を設けて保持体と接合する。製造工程などの容易さなどを考慮すると、シーリング層としてはヒートシール性のものが好適である。ヒートシール性のものとしては、ポリジエン、ポリアクリル、ポリメタクリル、アクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリロニトリルが挙げられる。好ましくは、ポリジエン、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリエチレン、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリシロキサンが挙げられる。更に好ましくは、ポリジエン、ポリアクリル、ポリメタクリル、ポリエステル、ポリシロキサンが挙げられるがこれらに限定されない。粘着性のものとしては、アクリルやシリコーンを主成分とするものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
(溶解液保存容器)
図2は、図1の溶解液保存容器5を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)中のA−A’断面図である。図2に示すように、溶解液保存容器5は、開口部の外周にフランジ部5aを有し、底部の中央部には凸部5bが、側壁部には上下方向に折り返す折り返し部5cがそれぞれ形成されている。
【0030】
本発明の経皮吸収製剤用装置は、使用する際には、発泡シート4の上面に設けられた粘着剤8により皮膚に貼付け後、溶解液保存容器5の底部を押し、凸部5bによりリッド材7を突き破り、溶解液6を溶解液通過孔9より薬剤含浸部材3に移行させて薬剤と混合させる。そして、電極層2に電流を流すことにより薬液がイオン化して皮膚より体内に導入されるものである。この時、リッド材7を十分に突き破ることができないと、溶解液6が薬剤含浸部材3に十分に移行せず溶解液保存容器5内部に液残りが発生してしまい、所望の薬効を得ることができなくなる。
【0031】
本発明においては、溶解液保存容器5の側壁部に上下方向に折り返す折り返し部5cを形成することにより、底部を押して凸部5bによりリッド材7を突き破る際に、側壁が係る折り返し部5cにおいて内側に屈曲しやすく、該容器5の底を押す力が弱い場合でも、凸部5bをリッド材7に向けて押しつけて突き破ることができ、溶解液6を十分に薬剤含浸部材3に移行させることができる。
【0032】
本発明に係る折り返し部5cの形状としては、図2に例示するように、側壁部の断面が上下方向において一旦折り返す形状で、溶解液6の移行性が高く且つ安定であればよく、折り返す長さや折り返し部5cの幅については特に限定されない。
【0033】
さらに本発明においては、溶解液保存容器5の底部に形成した凸部5bの先端に凹部5dを形成することにより、溶解液保存容器5の底部を押した際に、凸部5bとリッド材7の初期接触を面接触ではなく線接触状態にすることができ、応力を集中させてリッド材7を効果的に初期破断させることができると共に、凸部5b先端の外形(言い換えれば凹部5dの外形)に応じた広い領域に亘ってリッド材7を突き破ることができる。
【0034】
また、溶解液保存容器5のフランジ部5aにシールされたリッド材7は、フランジ部5aに近い程ピンと張った状態になり、中央部では弛んだ状態になりやすいため、中央部よりも外周部に近いほど破断され易い。このため、図2に例示したように、凸部5bの先端に凹部5dを形成し、リッド材7の中央部から外れた部分で初期破断させることにより、極めて簡単且つ効果的にリッド材を突き破ることができる。
【0035】
本発明において好ましく用いられる溶解液保存容器5の別の例を図3乃至図7、図18に示す。これらの図において、(a)は上面図、(b)は(a)中のA−A’断面図、(c)は(a)中のB−B’断面図である。
【0036】
図2、図3の例では凸部5bの先端を全周に亘って同じ高さとしているが、図4乃至図6に例示するように、凸部5bの外周(言い換えれば凹部5dの外周)に頂部5eと底部5fを設けることも好ましい。このような形態を採ることにより、凸部5bとリッド材7の初期接触を線接触状態からさらに点接触状態に近くすることができ、さらに応力を集中させてより一層効果的にリッド材7を突き破ることができる。また、図4乃至図6に例示したように、頂部5eと底部5fをそれぞれ複数設けてこれらを凸部5bの外周に対称的に配列させることにより、リッド材7を複数箇所において万遍なく初期破断させることができ、より一層確実且つ広範囲に亘ってリッド材7を突き破ることができる。
【0037】
また、図6に示した例では、凹部5d内に、頂部5eよりも低い第2の凸部5gを形成している。このような形態を採ることにより、例えば凸部5bが仮に十分に深く押されなかった場合においても、頂部5eによって初期破断されたリッド材7の内側を第2の凸部5gで押すことで開口部を広げ、不十分な突き破り状態を効果的に回避することができる。
【0038】
また、凸部5bの外形は図2乃至図6に例示したような円形(円柱状)のものに限らず、例えば多角柱状や、図7、図18に例示するような十字状等であってもかまわない。
【0039】
溶解液保存容器5の材質としては、内部に溶解液6を充填して保存した際、溶解液6が蒸発し液量が減少するのを防ぐため、水蒸気バリアー性の高いものを用いることが望ましい。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、熱可塑性エラストマー、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、エチレン・メタアクリレート共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メチルメタクリレート共重合体などのエチレン性不飽和結合を有する有機カルボン酸誘導体とエチレンとの共重合体、三フッ化塩化エチレン樹脂、アルミニウム等などの金属箔などが挙げられ、単層もしくは積層して多層としたシートを真空成形、圧空成形、真空圧空成形して溶解液保存容器5を得ることができる。
【0040】
(リッド材)
リッド材7は、保存時には薬剤含浸部材3への水分の透過を防ぐと共に、使用時に容易に破壊して溶解液保存容器5の溶解液6と薬剤含浸部材3の薬剤を混合できるように、水蒸気バリアー性、突き破り性ともに優れる材質のものが好ましい。具体的には、樹脂製或いはアルミ製が好ましく用いられる。リッド材7には、突き破り易いようハーフカットを入れることもできる。
【0041】
本発明において用いられる樹脂製リッド材の材料としては、例えばポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレンからなり、一軸方向に延伸されたシートや炭酸カルシウム等の無機フィラーを上記材料に配合したシートが好適である。
【0042】
樹脂製リッド材と基材1とは、熱可塑性樹脂層(後述する図9の14)もしくは粘着剤層10を介して接合するのが好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メチル・メタアクリレート共重合体、エチレン・メタアクリレート共重合体、アイオノマー、及びそれらの誘導体、混合体等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等のシーラント樹脂を用いることができる。
【0044】
熱可塑性樹脂層を介して接合する場合には、基材1とリッド材7の間に熱可塑性樹脂を挟み込み、ラミネートする。ラミネート手法としては、エクスプロージョンラミネート法、ドライラミネート法、熱ラミネート法等、種々の加工方法を用いることができる。上記の熱可塑性樹脂を、エクスプロージョンラミネート法ではTダイで押出して積層、ドライ及び熱ラミネート法ではインフレーションやTダイ法によりフィルムとして成膜後に積層して使用する。尚、基材1に溶解液通過孔9が形成された状態でラミネートする場合には、エクスプロージョンラミネート法及びドライラミネート法を適用することができないため、熱ラミネート法を用いる。
【0045】
粘着剤層10を介して接合する場合には、安全性や、湿潤時の不都合をなくすためゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニル系、ポリエステル系、ポリウレタン系が好適である。
【0046】
基材1と樹脂製のリッド材7を粘着剤層10を介して接合する際、リッド材7を溶解液保存容器5のフランジ部5aとシールした後、基材1に形成されている粘着剤層10と接合しても構わないし、予め基材1とリッド材7をラミネートした後、溶解液保存容器5のフランジ部5aをリッド材7にシールしても構わない。予め基材1とリッド材7をラミネートしておいた方が、リッド材7/粘着剤層10間に隙間が無くなり、毛細管現象による溶解液のロスを効果的に防ぐことができ好適である。
【0047】
また、本発明においてアルミ製リッド材を用いる場合、アルミニウム箔に溶解液保存容器5のフランジ部5aとシールするためのシーラント樹脂を塗工したアルミ製リッド材を用いる。
【0048】
尚、本発明の装置を、イオントフォレーシス装置とする場合、使用時の通電が必須であるため、リッド材7にアルミ箔等の導電性材料を使用した場合には漏電の危険性がある。このため、アルミ製リッド材を用いる場合には、図8に示すように、溶解液保存容器5のフランジ部5aの外径内にリッド材7を配置することが重要である。これにより、リッド材7がデバイスの外に露出することがなく、漏電を効果的に防ぐことができる。
【0049】
アルミ製のリッド材7は、基材1として好適に用いられるPET等のプラスチックフィルムとは直接接着しないため、本発明においては基材1とアルミ製のリッド材7を粘着剤層10を介して接合するのが好ましい。この粘着剤層10に使用する粘着剤には特に制限はないが、樹脂製リッド材を用いた場合と同様の粘着剤を用いることができる。
【0050】
基材1とアルミ製のリッド材7を粘着剤層10を介して接合する際、リッド材7を溶解液保存容器5のフランジ部5aとシールした後、基材1に形成されている粘着剤層10とリッド材7とを接合しても構わないし、予め基材1とリッド材7とをラミネートした後、溶解液保存容器5のフランジ部5aとリッド材7とをシールしても構わない。予め基材1とリッド材7とをラミネートしておいた方が、リッド材7/粘着剤層10間に隙間が無くなり、毛細管現象による溶解液のロスを効果的に防ぐことができ好適である。
【0051】
以上の構成を有するイオントフォレーシス装置は、使用する際には、発泡シート4の上面に設けられた粘着剤8によりデバイスを皮膚に貼付け後、溶解液保存容器5の底部を指で押し、該溶解液保存容器5の底部に設けてある凸部5bによりリッド材7を突き破り、溶解液6を溶解液通過孔9より薬剤含浸部材3に移行させて薬剤と混合させる。そして、電極層2に電流を流すことにより薬液がイオン化して皮膚より体内に導入される。
【0052】
上記説明においては、保持体が電極層2を備えたイオントフォレーシス装置について説明したが、本発明は電極層2を持たない装置であっても良く、その場合の各構成部材については、上記イオントフォレーシス装置の場合と同様である。但し、リッド材7としてアルミ製リッド材を用いる場合、該リッド材が溶解液保存容器5のフランジ部5a外径よりも大きく、デバイスの外に露出していてもかまわない。
【0053】
次に、本発明の経皮吸収製剤用装置の製造方法について、図1,図8に例示したイオントフォレーシス装置を例に、図9〜図15を参照して具体的に説明する。
【0054】
(製造例1)
図9に、図1に例示した構成のイオントフォレーシス装置の製造工程図を示す。
【0055】
本例の製造方法は、基材1に電極層2を形成してなる電極フィルムの、溶解液保存容器5を接合する側の全面に熱可塑性樹脂層14を積層する工程と、熱可塑性樹脂層14を積層した電極フィルムに溶解液通過孔9を形成する工程と、樹脂製のリッド材7を熱ラミネート法により熱可塑性樹脂層14に接合する工程と、リッド材7に溶解液保存容器5を接合する工程を有している。
【0056】
先ず、PETフィルム等の基材1上に、電極層2を形成して電極フィルムを形成し、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺部にシーリング層11を形成する〔図9(a)〕。
【0057】
次に、上記電極フィルムの基材1側全面に熱可塑性樹脂層14を積層した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図9(b)〕。
【0058】
上記熱可塑性樹脂層14の積層方法としては、エクスプロージョンラミネート法、ドライラミネート法、熱ラミネート法等、種々の加工方法を用いることができる。熱可塑性樹脂を、エクスプロージョンラミネート法ではTダイで押出して積層、ドライ及び熱ラミネート法ではインフレーションやTダイ法によりフィルムとして成膜後に積層する。
【0059】
次に、樹脂製のリッド材7を熱ラミネート法により熱可塑性樹脂層14に接合してリッド材ラミネート電極フィルムが得られる〔図9(c)〕。
【0060】
次に、リッド材ラミネート電極フィルムの電極層2表面に形成されたシーリング層11上に、薬剤含浸部材3と発泡シート4を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合する。次に、溶解液6を充填した溶解液保存容器5のフランジ部5aをリッド材ラミネート電極フィルムのリッド材7面に接合することにより、本発明のイオントフォレーシス装置が完成する〔図9(d)〕。この接合方法としては、ヒートシール、インパルスシール、超音波シール、高周波シール等、種々の方法を用いることができる。
【0061】
本例では、基材1と電極層2からなる電極フィルムに熱可塑性樹脂層14を形成した後に溶解液通過孔9を形成しているため、溶解液通過孔9の領域には熱可塑性樹脂層14が存在しない。このため、使用時にリッド材7を突き破る際に熱可塑性樹脂層14が突き刺し強度に影響を与えることが無く、容易に溶解液6と薬物とを混合することができる。
【0062】
(製造例2)
製造例1では熱可塑性樹脂層14を基材1側に積層したが、本例は熱可塑性樹脂層14をリッド材7側に積層する例であり、図10にその製造工程図を示す。
【0063】
本例の製造方法は、電極フィルムに溶解液通過孔9を形成する工程と、リッド材7に熱可塑性樹脂層14を積層する工程と、リッド材7を溶解液通過孔9を覆うように熱可塑性樹脂層14を介して熱ラミネート法により基材1に接合する工程と、リッド材7に溶解液保存容器5を接合する工程を有している。
【0064】
先ず、PETフィルム等の基材1上に電極層2を形成して電極フィルムを形成し、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺にシーリング層11を形成した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図10(a)〕。
【0065】
また、樹脂製のリッド材7に熱可塑性樹脂層14を積層する〔図10(b)〕。
【0066】
次に、リッド材7を、溶解液通過孔9を覆うように熱可塑性樹脂層14を介して熱ラミネート法により基材1に接合してリッド材ラミネート電極フィルムが得られる〔図10(c)〕。
【0067】
次に、リッド材ラミネート電極フィルムの電極層2表面に形成されたシーリング層11上に、薬剤含浸部材3と発泡シート4を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合する。次に、溶解液6を充填した溶解液保存容器5のフランジ部5aをリッド材ラミネート電極フィルムのリッド材7面に接合することにより、本発明のイオントフォレーシス装置が完成する〔図10(d)〕。
【0068】
尚、本例のように熱可塑性樹脂層14を樹脂製のリッド材7側に積層する場合において、特に突き刺し強度に著しく影響を与える熱可塑性樹脂を使用するケースでは、溶解液通過孔9の領域をリッド材7のみの一層構成とするために、溶解液通過孔9に対応する開口を有する樹脂フィルムを用いて熱可塑性樹脂層14を形成するのが好ましい。
【0069】
(製造例3)
製造例1、2では樹脂製のリッド材7を熱可塑性樹脂層14を介して基材1に接合したが、本例は樹脂製のリッド材7を粘着剤層10を介して基材1に接合する例であり、図11にその製造工程図を示す。
【0070】
本例の製造方法は、電極フィルムの溶解液保存容器5を接合する部分にのみ粘着剤層10を形成する工程と、電極フィルムの粘着剤層10を形成した内側の領域に溶解液通過孔9を形成する工程と、溶解液保存容器5に樹脂製のリッド材7を接合する工程と、溶解液保存容器5に接合されたリッド材7を、溶解液通過孔9を覆うようにして粘着剤層10を介して基材1に接合する工程を有している。
【0071】
先ず、PETフィルム等の基材1上に電極層2を形成して電極フィルムを形成し、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺にシーリング層11を形成した後、電極フィルムの基材1側に溶解液保存容器5のフランジ部5aとの接合部分にのみ粘着剤層10を塗工した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図11(a)〕。
【0072】
上記粘着剤の塗工方法としては、グラビアコート、リバースコート、リップコート、ダイコート、コンマコート、ナイフコート、スクリーン印刷、カレンダーコート、ホットメルトコート等種々の塗工方法を用いることができる。
【0073】
また、溶解液6を充填した溶解液保存容器5のフランジ5aに、樹脂製のリッド材7を接合する〔図11(b)〕。
【0074】
次に、電極フィルムの電極層2面に形成されたシーリング層11上に、薬剤含浸部材3と発泡シート4を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合する。次に、溶解液保存容器5のフランジ部5aを接合した樹脂製のリッド材7を電極フィルムの粘着剤層10形成面と接合してイオントフォレーシス装置が完成する〔図11(c)〕。
【0075】
本例では、電極フィルムの基材1側に粘着剤層10を形成した後に溶解液通過孔9を形成しているため、溶解液通過孔9の領域には粘着剤層10が存在しない。このため、使用時に樹脂製のリッド材7を突き破る際に粘着剤層10が突き刺し強度に影響を与えることが無く、容易に溶解液と薬物とを混合することができる。
【0076】
尚、本製造例は、リッド材7としてアルミ製リッド材を用いる場合にも好ましく適用される。具体的には、樹脂製のリッド材7のかわりに、予め片面にシーラント層を形成してあるアルミ製のリッド材7を用い、該シーラント層を介して溶解液保存容器5のフランジ部5aを、リッド材7に接合すればよい。
【0077】
(製造例4)
製造例3では基材1側に粘着剤層10を形成したが、本例はリッド材7側に粘着剤層10を形成する場合の例であり、図12にその製造工程図を示す。
【0078】
本例の製造方法は、電極フィルムに溶解液通過孔9を形成する工程と、片面に粘着剤層10を形成した樹脂製のリッド材7の他の面を溶解液保存容器5に接合する工程と、溶解液保存容器5に接合された樹脂製のリッド材7を、溶解液通過孔9を覆うようにして粘着剤層10を介して基材1に接合する工程を有している。
【0079】
先ず、PETフィルム等の基材1上に電極層2を形成して電極フィルムを形成し、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺にシーリング層11を形成した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図12(a)〕。
【0080】
また、剥離フィルム12の剥離面に粘着剤層10を形成した後、この粘着剤層10形成面に樹脂製のリッド材7を積層し、粘着剤層付き樹脂製リッド材を得る〔図12(b)〕。
【0081】
次に、溶解液6を充填した溶解液保存容器5のフランジ部5aに、上記粘着剤層付き樹脂製リッド材のリッド材7を接合する〔図12(c)〕。
【0082】
次に、電極フィルムの電極層2面に形成されたシーリング層11上に、薬剤含浸部材3と発泡シート4を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合する。次に、溶解液保存容器5のフランジ部5aに貼り付けた粘着剤層付き樹脂製リッド材の剥離フィルム12を除去し、樹脂製のリッド材7で溶解液通過孔9を覆うようにして粘着剤層10を介して電極フィルムの基材1にリッド材7を接合してイオントフォレーシス装置が完成する〔図12(d)〕。
【0083】
尚、本例のように粘着剤層10をリッド材7側に塗布する場合において、特に突き刺し強度に著しく影響を与える粘着剤を使用するケースでは、溶解液通過孔9の領域をリッド材7のみの一層構成とするために、パートコートにより粘着剤を塗工するのが好ましい。
【0084】
尚、本製造例は、リッド材7としてアルミ製リッド材を用いる場合にも好ましく適用される。具体的には、樹脂製のリッド材7のかわりに、予め片面にシーラント層を形成してあるアルミ製のリッド材7を用い、該シーラント層を介して溶解液保存容器5のフランジ部5aを、リッド材7に接合すればよい。
【0085】
(製造例5)
図13に、図8に例示した構成のイオントフォレーシス装置の製造工程図を示す。
【0086】
本例の製造方法は、電極フィルムの溶解液保存容器5を接合する部分にのみ粘着剤層10を形成する工程と、電極フィルムの粘着剤層10を形成した内側の領域に溶解液通過孔9を形成する工程と、片面にシーラント層を有するアルミ製のリッド材7を粘着剤層10に接合する工程と、アルミ製のリッド材7をシーラント層を介して溶解液保存容器5のフランジ部5aに接合し、溶解液保存容器5のフランジ部5a外径内にアルミ製のリッド材7を配置する工程を有している。
【0087】
先ず、PETフィルム等の基材1上に電極層2を形成し、電極フィルムを形成して、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺にシーリング層11を形成する〔図13(a)〕。
【0088】
次に、上記基材1の溶解液保存容器5のフランジ部5aとの接合部分に粘着剤層10を塗工した後、粘着剤層10を形成した内側の領域に溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図13(b)〕。
【0089】
上記粘着剤の塗工方法としては、グラビアコート、リバースコート、リップコート、ダイコート、コンマコート、ナイフコート、スクリーン印刷、カレンダーコート、ホットメルトコート等種々の塗工方法を用いることができる。
【0090】
次に、電極フィルムの粘着剤層10形成面に、予め片面にシーラント層を形成してあるアルミ製のリッド材7を積層し、このリッド材7を溶解液保存容器5のフランジ部5aとの接合部分に合わせてハーフカットし、粘着剤層10と接触していないリッド材を除去する。これにより、粘着剤層10を形成している部分にのみアルミ製のリッド材7が接合されたリッド材ラミネート電極フィルムが得られる〔図13(c)〕。
【0091】
本発明においてはアルミ製のリッド材7を溶解液保存容器5のフランジ部5a外径内にのみ設置するため、粘着剤層10はデバイス全面ではなく接合部分にのみ設ける。そのため、粘着剤層10を電極フィルム側に形成する場合には、本例のように接合部分にのみパートコートする方法、もしくは全面に塗工し接合部分のみ穴を開けたマスクフィルムをラミネートする方法(後述する製造例6)により粘着剤層10を設置する。その後、アルミ製リッド材7とラミネートすると、粘着剤層10を形成した部分のみにおいて接合されるため、接合部分に合わせてアルミ製リッド材7をハーフカットすることにより、上記のように接合部分にのみアルミ製リッド材7が残り、粘着剤層10と接触していないリッド材7を簡単に除去することができる。
【0092】
次に、リッド材ラミネート電極フィルムの電極層2面に形成されたシーリング層11上に、薬剤含浸部材3と発泡シート4を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合する。
【0093】
次に、溶解液6を充填した溶解液保存容器5のフランジ部5aをリッド材ラミネート電極フィルムのリッド材7面にシールにより接合することにより、溶解液保存容器5のフランジ部5a外径内にアルミ製のリッド材7が配置された本発明のイオントフォレーシス装置が完成する〔図13(d)〕。尚、溶解液保存容器5のフランジ部5aをアルミ製のリッド材7面にシールする方法は特に限定されるものではなく、ヒートシール、インパルスシール、超音波シール、高周波シール等、種々の方法を用いることができる。
【0094】
(製造例6)
製造例5では粘着剤層10を電極フィルムの溶解液保存容器5に接合する部分にのみ設けたが、本例は粘着剤層10を電極フィルムの溶解液保存容器5を接合する側の全面に形成する例であり、図14にその製造工程図を示す。
【0095】
本例の製造方法は、電極フィルムの溶解液保存容器5を接合する側の全面に粘着剤層10を形成する工程と、粘着剤層10を形成した電極フィルムに溶解液通過孔9を形成する工程と、電極フィルムの粘着剤層10形成面に、溶解液通過孔9よりも大きな開口を有する被覆フィルム13と、片面にシーラント層を有するアルミ製のリッド材7とを積層し、前記開口部分においてリッド材7を粘着剤層10に接合する工程と、リッド材7のシーラント層を介して溶解液保存容器5のフランジ部5aをリッド材7に接合し、溶解液保存容器5のフランジ部5a外径内にアルミ製のリッド材7を配置する工程を有している。
【0096】
まず、PETフィルム等の基材1上に電極層2を形成して電極フィルムを形成し、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺にシーリング層11を形成する〔図14(a)〕。
【0097】
次に、上記電極フィルムの基材1側全面に粘着剤層10を塗工した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成する〔図14(b)〕。
【0098】
次に、電極フィルムの粘着剤層10形成面に、溶解液通過孔9よりも大きく、且つ、溶解液保存容器5のフランジ部5a外径よりも小さな開口を有する被覆フィルム13と、予め片面にシーラント層を形成してあるアルミ製のリッド材7とを積層し、このリッド材7を溶解液保存容器5のフランジ部5aとの接合部分に合わせてハーフカットし、粘着剤層10と接触していないリッド材7を除去する。これにより、被覆フィルム13の開口部分においてリッド材7が粘着剤層10に接合されたリッド材ラミネート電極フィルムが得られる〔図14(c)〕。
【0099】
次に、製造例5と同様に、リッド材ラミネート電極フィルムに薬剤含浸部材3と発泡シート4と溶解液保存容器5を組み付けることにより、溶解液保存容器5のフランジ部5a外径内にアルミ製のリッド材7が配置された本発明のイオントフォレーシス装置が完成する〔図14(d)〕。
【0100】
以上説明したように、樹脂製リッド材を用いたイオントフォレーシス装置では、溶解液保存容器の蓋材として使用している樹脂製リッド材を電極フィルムと接合して溶解液保存容器を電極フィルムと一体化させており、また、リッド材として絶縁性の樹脂製リッド材を用いているため、簡単な操作で溶解液と薬物とを混合できる構造を持ち、且つ、通電時に漏電する危険性がなく、信頼性・安全性に優れたイオントフォレーシス装置が実現される。
【0101】
また、係るイオントフォレーシス装置の製造方法では、電極フィルム(もしくは樹脂製リッド材付き電極フィルム)をロール状シート等の材料を用いて量産可能であり、信頼性・安全性に優れたイオントフォレーシス装置を容易に量産することができる。
【0102】
また、アルミ製リッド材を用いたイオントフォレーシス装置では、溶解液容器の蓋材として使用しているアルミ製リッド材を電極フィルムと接合して溶解液保存用ブリスター容器を電極フィルムと一体化させており、また、アルミ製リッド材がデバイス表面に露出しないため、簡単な操作で溶解液と薬物とを混合できる構造を持ち、且つ、通電時に漏電する危険性がなく、信頼性・安全性に優れたイオントフォレーシス装置が実現される。
【0103】
さらに、係るイオントフォレーシス装置の製造方法では、電極フィルム(もしくはアルミ製リッド材付き電極フィルム)をロール状シート等の材料を用いて量産可能であり、特に製造例6のように粘着剤層を電極フィルムの全面に形成する方法の場合には、アルミ製リッド材付き電極フィルムのほぼ全製造工程を連続的に実施することができ、信頼性・安全性に優れたイオントフォレーシス装置を容易に量産することができる。
【実施例】
【0104】
図15(実施例1)、図16(比較例1)、図17(比較例2)にそれぞれ示す溶解液保存容器5を用いてイオントフォレーシス装置を図9の製造工程により製造した。
【0105】
厚さ75μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの基材1上に、導電性カーボン及び導電性塩化銀ペーストインキをスクリーン印刷して厚さ30μmの電極層2を形成した。次に、電極層2上の溶解液通過孔9形成領域の周辺に熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂から構成されるインキを用いてスクリーン印刷し、厚さ10μmのシーリング層11を形成した〔図9(a)〕。
【0106】
次に、上記基材1の非印刷面全面にアンカーコート剤(商品名「タケラック」:三井武田ケミカル(株)製)を塗工し、さらに低密度ポリエチレン(商品名「サンテックLD」:旭化成(株)製)をエクストルージョンラミネート法により積層して熱可塑性樹脂層14を形成した後、溶解液通過孔9を打ち抜き加工により形成した〔図9(b)〕。
【0107】
次に、熱可塑性樹脂層14と樹脂製リッド材7(商品名「PP−MONO−PTP」:藤森工業(株)製)とを熱ラミネート法により融着して積層し、リッド材ラミネート電極フィルムを得た〔図9(c)〕。
【0108】
PTP用樹脂シート(商品名「PP−MONO−PTP」:藤森工業(株)製)を用い、真空成形により図15、図16、図17に示す溶解液保存容器5を得た。
【0109】
リッド材ラミネート電極フィルムの電極層2上に形成されたシーリング層11上に、発泡シート4(発泡オレフィン、商品名「ボラーラ」:積水化学工業(株)製)と薬剤含浸部材3(不織布)を設置し、ヒートシールにより熱融着させて接合した。続いて、溶解液保存容器5に下記の組成の溶解液6を充填した後、リッド材ラミネート電極フィルムの溶解液通過孔9を溶解液保存容器5の中央に配置した状態で、リッド材ラミネート電極フィルムのリッド材7面に溶解液保存容器5のフランジ部5aをインパルスシールにより接合してイオントフォレーシス装置を完成させた〔図9(d)〕。
【0110】
溶解液の組成
プロピレングリコール(丸石製薬社製) 2.00重量%
濃グリセリン(小堺製薬社製) 30.00重量%
精製水(吉田製薬社製) 68.00重量%
【0111】
上記実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれのイオントフォレーシス装置について、溶解液保存容器5の底部に1.5kg及び2.0kgの荷重をかけて押圧した。1分後に容器5中に残存する溶解液6の量を測定し、薬剤含浸部材3への溶解液6の移行率を算出した。また、操作性の評価を行った。結果を表1に示す。尚、操作性の評価基準は、以下の通りである。
○:指で押し易く、穴のあけ損じが少ない。
△:「○」と比べて押すのに力が必要である。
【0112】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の好ましい実施形態であるイオントフォレーシス装置の構成例を示す模式図である。
【図2】図2に示したイオントフォレーシス装置の溶解液保存容器を示す模式図である。
【図3】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【図4】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【図5】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【図7】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【図8】本発明において、アルミ製リッド材を用いたイオントフォレーシス装置の構成例を示す模式図である。
【図9】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図10】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図11】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図12】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図13】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図14】本発明の経皮吸収製剤用装置の一例の製造工程図である。
【図15】本発明の実施例で用いた溶解液保存容器を示す模式図である。
【図16】本発明の実施例で比較例1として用いた溶解液保存容器を示す模式図である。
【図17】本発明の実施例で比較例2として用いた溶解液保存容器を示す模式図である。
【図18】本発明に用いられる溶解液保存容器の他の構成例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0114】
1 基材
2 電極層
3 薬剤含浸部材
4 発泡シート
5 溶解液保存容器(溶解液保存用ブリスター容器)
5a フランジ部
5b 凸部
5c 折り返し部
5d 凹部
5e 頂部
5f 底部
5g 第2の凸部
6 溶解液
7 リッド材
8 粘着剤
9 溶解液通過孔
10 粘着剤層
11 シーリング層
12 剥離フィルム
13 被覆フィルム
14 熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解液通過孔を有する保持体と、該保持体の一方の面側に設けられた薬剤含浸部材と、前記溶解液通過孔を覆うリッド材を介して前記保持体の他方の面側に設けられた溶解液保存容器とを備え、前記溶解液保存容器は底部と側壁部とを備え、該底部の中央部に前記溶解液通過孔に向き合う凸部を有し、該側壁部が上下方向に折り返す折り返し部を有することを特徴とする経皮吸収製剤用装置。
【請求項2】
前記溶解液保存容器の底部の中央部に設けた凸部が、先端に凹部を有する請求項1に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項3】
前記凸部の外周に頂部と底部を有する請求項2に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項4】
前記頂部と底部をそれぞれ複数有し、これらが前記凸部の外周に対照的に配列されている請求項3に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項5】
前記保持体が、基材上に電極層を形成してなり、該基材がリッド材に接合されているイオントフォレーシス装置である請求項1乃至4のいずれかに記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項6】
前記リッド材が樹脂製リッド材であり、熱可塑性樹脂層もしくは粘着剤層を介して前記基材に接合されている請求項5に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項7】
前記溶液通過孔に位置する前記樹脂製リッド材の表面には前記熱可塑性樹脂層もしくは粘着剤層を有しない請求項6に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項8】
前記リッド材がアルミ製リッド材であり、前記溶解液保存容器が開口部にフランジ部を有し、アルミ製リッド材は前記溶解液保存容器のフランジ部外径内に配置されている請求項6に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項9】
前記アルミ製リッド材と前記基材は粘着剤層を介して接合されている請求項8に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項10】
前記溶液通過孔に位置する前記アルミ製リッド材の表面には前記粘着剤層を有しない請求項9に記載の経皮吸収製剤用装置。
【請求項11】
前記アルミ製リッド材と前記溶解液保存容器はシーラント層を介して接合されている請求項8乃至10のいずれかに記載の経皮吸収製剤用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−73062(P2008−73062A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252013(P2006−252013)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】