説明

経皮投与製剤

【課題】 本発明はフェンタニルを含有する貼付剤において、長時間フェンタニルの治療量を安定に経皮投与できると共に、貼付剤としての本来の機能を維持しつつ合理的手段により乱用防止を実現する実用的で安全性の高い製剤を簡便かつ安価に提供することである。
【解決手段】 本発明は、支持体と粘着剤層を有する貼付剤であって、該粘着剤層が、薬物としてフェンタニルおよび/またはその塩を1〜10質量%、固体成分を0.1〜10質量%、および粘着基剤として極性官能基を有しない(メタ)アクリレート共重合体を含む、前記貼付剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンタニルおよびその塩を含む貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
急性および慢性両方の痛みを治療するための麻薬性鎮痛薬のひとつであるフェンタニルおよびこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどを経皮投与する貼付剤は従来から知られている。
【0003】
一方、このような麻薬性鎮痛薬は不正使用される可能性があるため、不正使用を防止する目的で、特許文献1に開示されているように、苦味物質あるいは刺激性物質を含有させる方法や、特許文献2に開示されているように、不正使用される可能性のある物質の拮抗薬を不正使用に伴う効果を消失させるのに充分な量で組み合わせた製剤を提供することが提案されている。しかしながら、これらの技術は、製剤の処方に苦味物質、刺激性物質あるいはアンタゴニストを加える必要があり、製剤の構造も複雑なものとなる。
【0004】
また、製剤からの薬物の抽出を妨げる方法として、例えば、特許文献3には薬物の乱用を抑制するため、悪臭物質や色素あるいは、微細な不溶性粒状物質を含む経皮パッチを含む剤形において、タルカム(タルク)を含む固体粒状粒子が、抽出媒体(溶媒)に容易に懸濁されて、抽出を妨げたり、注射の間に針をブロックするために用いられることが開示されている。
【0005】
特許文献4には、特にカプセル剤からの常習性薬物の乱用防止のための手段として、粘土、制御放出剤を含有する、医薬ペースト組成物が示されている。
しかしながら貼付剤の分野において、十分に実用的で有効に乱用を抑制できる貼付剤はこれまでのところ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−193835号公報
【特許文献2】特表2007−527415号公報
【特許文献3】特表2006−528986号公報
【特許文献4】特表2009−536927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、薬物の乱用を抑制する工夫の施された製剤については、一応知られているものの貼付剤において具体化したものは存在しないところ、本発明者らは、フェンタニルまたはこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなど、またはそれらの塩のような麻薬性鎮痛薬を用いた貼付剤については、比較的乱用されやすい形状を有することから、これを抑制する必要があることに着眼した。したがって本発明の課題はかかる着眼点を出発点として、貼付剤としての本来の機能を維持しつつ合理的手段により乱用防止を実現する貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねる中で、驚くべきことに、支持体と粘着剤層を有する貼付剤であって、該粘着剤層が、薬物としてフェンタニルおよび/またはその塩1〜10質量%、固体成分としてタルク0.1〜10質量%および粘着基剤として極性官能基を有しない(メタ)アクリレート共重合体を含有することにより、フェンタニルの治療量を長時間安定に経皮投与できること、乱用目的での抽出を困難にすることを見出し、さらに検討を進めた結果、タルクを含有せしめることにより、投与時の皮膚への付着性、保形性が改善され、皮膚炎症や皮膚疾患に対する効果をも付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、支持体と粘着剤層を有する貼付剤であって、該粘着剤層が、薬物としてフェンタニルおよび/またはその塩を1〜10質量%、固体成分を0.1〜10質量%、および粘着基剤として極性官能基を有しない(メタ)アクリレート共重合体を含むことを特徴とする、フェンタニルの治療有効量を経皮投与可能な貼付剤に関する。
【0010】
また本発明は、固体成分が、平均粒子径1〜100μmを有する無機粒子である、前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、無機粒子がタルクである、前記貼付剤に関する。
また本発明は、粘着剤層が、さらに経皮吸収促進剤を含む、前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、適用時に5〜50cmの面積を有する、前記貼付剤に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、フェンタニルを含有する粘着剤層の、粘着基剤がカルボキシル基及び/または水酸基などの極性官能基を有しない(メタ)アクリルレート共重合体であることにより、粘着剤層中のフェンタニルの含有量が少ないにも関わらず、治療に有効な量のフェンタニルを長時間、安定に経皮投与でき、さらに、損傷皮膚に貼付された時にはフェンタニルが放出されにくいという特徴を併せ持つため、薬物を有効利用できると共に、フェンタニルの過剰投与による副作用の発現を未然に防ぐことが可能である。
【0012】
しかし、粘着基剤が極性官能基を有しない(メタ)アクリレート共重合体であることにより、薬物抽出を妨げる手段として、溶媒に対する粘着剤の溶解性を低下させるための架橋処理を施すことができない。しかしながら、本発明の貼付剤は、溶媒に不溶の固体成分(タルクなどの無機粒子)を粘着剤層中に含有せしめることで、抽出液を懸濁液とし、フェンタニルの抽出操作を極めて困難なものにするため、フェンタニルが乱用されにくい。
【0013】
また、固体成分、とりわけタルクにより、皮膚への付着性、保形性が改善され、また皮膚炎症や皮膚疾患に対する効果が付与されるため、本発明の貼付剤は、従来の貼付剤よりも皮膚への負担がはるかに小さい。
さらに、本発明の貼付剤は、低コストで容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に用いられるフェンタニルとしては、フェンタニル塩基またはその塩を、好適に用いる事ができる。フェンタニル塩としては、特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよく、代表的なフェンタニル塩であるクエン酸塩、塩酸塩、フマル酸塩等を挙げることができる。これらの中でも、クエン酸フェンタニルは特に好ましい。なお、フェンタニルまたはその塩は、単独で用いることもできるが、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
また、フェンタニルまたはその塩は、経皮投与製剤として十分な透過量及び製剤自体の物性への悪影響を考慮して、本発明の貼付剤の粘着剤層全体の重量に基づいて、1〜10質量%の量で配合することが好ましく、2〜8%がより好ましく、さらに、3〜6%が特に好ましい。
【0016】
本発明に用いられる固体成分は、これに限定するものではないが、例えばタルク、軽質酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、沈降炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの無機粒子が挙げられる。特にタルク、例えばクラウンタルクなどが、吸湿性が低く、分散性が良い点で好ましい。固体成分は、本発明の目的とする乱用防止効果(抽出阻害効果)が発揮できれば特に制限はないが、本発明の貼付剤の粘着剤層全体の重量に基づいて、0.1〜10質量%、好ましくは、0.1〜5.0質量%、特に好ましくは、0.2〜3.0質量%を配合する事が好ましい。また、本発明に用いる固体成分は、乱用防止のための抽出を阻害する効率の点から、平均粒子径は1〜100μmが好ましい。
【0017】
本発明の粘着剤層に用いられる粘着基剤は、カルボキシル基及び水酸基を実質的に有しない(メタ)アクリレート共重合体であり、例えば、これに限定するものではないが、アクリル酸2−エチルヘキシルと酢酸ビニルとを共重合して得られるアクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリレート共重合体の遊離のカルボキシル基や水酸基は、粘着剤層中のフェンタニルおよびその類縁体の飽和溶解度を好ましい範囲を超えて上昇させるため、フェンタニルおよび/またはその塩の利用率が低下するため好ましくない。
【0018】
本発明の(メタ)アクリレート共重合体の調製のために適する単量体は、これに限定するものではないが、特には、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレートおよびこれらの単量体の混合物である。これらの単量体は別の官能基を伴わない直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族C−C12置換基を含むアクリル酸またはメタクリル酸のエステルである。
【0019】
酢酸ビニルもまたこれらの単量体の少なくとも1種と共に(メタ)アクリレート共重合体の調製のためのコモノマーとして使用することができる。なお、アクリル酸2−エチルヘキシル・酢酸ビニル共重合体などのアクリレート共重合体またはメタクリレート共重合体の製造工程において、原料モノマー中にカルボキシル基や水酸基を有するモノマーが不純物として微量存在したり、重合の際に熱劣化などの副反応が起こると、得られるアクリル系またはメタクリル系高分子中に不純物に由来するカルボキシル基や水酸基が導入される場合がある。
【0020】
本発明では、本発明の貼付剤が有する十分に高い薬物の皮膚透過性と十分に高い製剤物性とを損なわない限りにおいて、不純物の混入や熱劣化等の副反応に由来するカルボキシル基や水酸基が、(メタ)アクリレート共重合体に含まれていてもよい。しかし、カルボキシル基や水酸基ができるだけ低減された(メタ)アクリレート共重合体を用いることが好ましい。このような(メタ)アクリレート共重合体系の接触接着剤は、市販品を用いても良く、例えば、National Starchより入手できるElite接着剤およびSolutiaより入手できるGMS3083やコスメディ製薬株式会社より入手できるMAS811Bが例示として挙げられる。
【0021】
本発明の粘着剤層は、更に、経皮吸収促進剤を含有していてもよい。経皮吸収促進剤は、薬剤の経皮吸収促進作用が認められる1種又は2種以上の化合物であればよく、例えば、炭素鎖数6〜20の脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸エステル、アルキルエーテル、芳香族系有機酸、芳香族系アルコール、芳香族系有機酸エステル、アリールエーテルを挙げることができる。さらに、乳酸エステル類、酢酸エステル類、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、エイゾン(Azone)又はその誘導体、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリソルベート類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ショ糖脂肪酸エステル類等を挙げることができる。
【0022】
さらに詳細な好ましい経皮吸収促進剤の例としては、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチル、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、クレゾール、乳酸セチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、1−メントール、ボルネオール、d−リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl−カンフル、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、HCO−60(硬化ヒマシ油)、1−[2−(デシルチオ)エチル]アザシクロペンタン−2−オンが挙げられるが、特に脂肪酸エステル及び脂肪族アルコールが好ましい。中でも、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノオレイン酸ソルビタン、オクチルドデカノール及びオレイルアルコールが好ましい。
【0023】
薬物層における経皮吸収促進剤の配合量は、薬物層全体の質量に基づいて、0.01〜20%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、0.5〜10%であることが特に好ましい。薬物層における経皮吸収促進剤の配合量が20%を超える場合には、発赤、浮腫等の皮膚への刺激が生じるおそれがあり、0.01%未満の場合には、経皮吸収促進剤の配合の効果が得られないおそれがある。
【0024】
さらに、本発明の貼付剤においては、皮膚から発生した汗等の水性成分を吸収させるために、必要に応じて親水性ポリマーを配合することもできる。親水性ポリマーとしては、例えば、軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCNa)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロール(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、デンプン誘導体(プルラン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ酢酸ビニル(VA)、カルボキシビニルポリマー(CVP)、エチル酢酸ビニル共重合体(EVA)、オイドラギット、ゼラチン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリイソブチレン無水マレイン酸共重合体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアガム、トラガント、カラヤガム、ポリビニルメタクリレートが好ましく、特に軽質無水ケイ酸、セルロース誘導体(CMCNa、HPMC、HPC、MC、オイドラギットが好ましい。なお、親水性ポリマーは、薬物層全体の質量に基づいて、0.1〜20%、特に0.5〜10%配合することが好ましい。
【0025】
また、本発明の貼付剤は、必要に応じて、抗酸化剤、架橋剤、保存剤、紫外線吸収剤及び鉱油を用いることができる。抗酸化剤としては、トコフェロール及びこれらのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒトログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール等がある。
【0026】
架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、金属又は金属化合物等の無機系架橋剤が望ましい。
【0027】
保存剤としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等が望ましい。
【0028】
紫外線吸収剤としては、p−アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、クマリン誘導体、アミノ酸系化合物、イミダゾリン誘導体、ピリミジン誘導体、ジオキサン誘導体等が望ましい。鉱油としては流動パラフィンが好ましい。
【0029】
このような抗酸化剤、架橋剤、保存剤、紫外線吸収剤及び鉱油は合計で、薬物層全体の質量に基づいて、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、とくに好ましくは10%以下の量で配合されることができる。
【0030】
本発明の貼付剤は、溶剤法、ホットメルト法等といった従来法により製造することができる。例えば、溶剤法により製造する場合には、配合される粘着基剤の有機溶剤溶液に、他の成分を添加、攪拌後、支持体に展延し、乾燥させ薬物層を形成することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。また、配合される粘着基剤がホットメルト法により塗工可能であるものである場合には、高温で粘着基剤を溶解させた後、他の成分を添加し、攪拌し、支持体に展延し薬物層を形成することにより、本発明の貼付剤を得ることができる。
【0031】
なお、支持体の代わりに後述する後述する剥離ライナーを用いて薬物層を形成した後に、支持体を貼り合わせることにより本発明の貼付剤を得ることもできる。
【0032】
また、本発明の貼付剤は、薬物層が上記のような粘着剤からなり、それを支持する支持体を有するものであれば、その他の層やそれらを構成する成分は、特に限定されない。例えば、本発明の貼付剤は、支持体及び薬物層の他、薬物層上に設けられる剥離ライナーを含むことができる。
【0033】
支持体としては、特に限定されないが、例えば、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙、アルミニウムシート等又はそれらの複合素材を好適に用いることができる。
【0034】
剥離ライナーとしては、薬物層からの十分な剥離性を有するものであれば特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等を好適に用いることができる。
【0035】
また、本発明の貼付剤によれば、活性な薬物の適用量についても、貼付剤を裁断すること等により、患者の症状、年齢、体重、性別等に応じて、容易に調節することができる。本発明の貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積は特に限定されないが、5〜50cmであることが好ましく、5〜30cmであることがより好ましく、5〜10cmであることがさらに好ましい。貼付剤の皮膚に接するべき薬物層の面積を50cm以下にすることによって適用時の扱いが好適なものになり、5cm以上にすることによって、薬物の十分な皮膚透過性を維持することが容易になる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の貼付剤はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1]
表1に示した割合で、フェンタニル、および、タルクを極性官能基を有しないアクリレート共重合体溶液に加え、十分に撹拌し、塗工液を得た。次に、得られた塗工液をポリエチレンテレフタレート製離型フィルム上に塗布した後、溶媒を乾燥除去して、所定の膏体厚みを有する薬物含有層を形成させた。さらに、この薬物含有層をポリエチレンテレフタレート製支持体と張り合わせて、実施例1〜3、および比較例1の貼付剤を得た。
【0037】
【表1】

【0038】
[試験例]
まず、本発明の貼付剤から剥離フィルムを剥がし、ガラス製遠沈管(容量50mL)に投入した。次に、抽出液としてテトラヒドロフラン10mLを加え、1時間振とうした。次いで、これに全量が50mLになるようにメタノールを加えて、さらに1時間振とうした後、抽出液の状態を目視にて観察した。
【0039】
その結果、実施例1〜3の貼付剤から得られた抽出液には、固体微粉末(タルク)が懸濁状態で存在していた。微粉末の濾去は困難であり、抽出操作と精製は困難であった。
一方、比較例1の貼付剤から得られた抽出液は、澄明で、固体はほとんど存在せず、その後の精製操作は容易であった。
以上のように、本発明のフェンタニル含有貼付剤は、簡便に製剤からの抽出を阻害することができ、乱用防止に有効であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
フェンタニルを含有する貼付剤において、長時間フェンタニルの治療量を安定に経皮投与できると共に、乱用目的での抽出が困難であり、さらに皮膚への負担が低減された実用的で安全性の高い製剤を簡便かつ安価に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と粘着剤層を有する貼付剤であって、該粘着剤層が、薬物としてフェンタニルおよび/またはその塩を1〜10質量%、固体成分を0.1〜10質量%、および粘着基剤として極性官能基を有しない(メタ)アクリレート共重合体を含むことを特徴とする、フェンタニルの治療有効量を経皮投与可能な貼付剤。
【請求項2】
固体成分が、平均粒子径1〜100μmを有する無機粒子である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
無機粒子がタルクである、請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
粘着剤層が、さらに経皮吸収促進剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
適用時に5〜50cmの面積を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の貼付剤。

【公開番号】特開2011−219400(P2011−219400A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88989(P2010−88989)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】