説明

経路探索システム及び方法、搬送システム並びにコンピュータプログラム

【課題】ビークル等の搬送車の最適経路を探索する経路探索システムにおいて演算負荷を低減する。
【解決手段】経路探索システム(100)は、複数の単位経路の各々を搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、出発地点から任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段(101)と、経路網上で分岐可能な経路点で分岐して複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、それら搬送車のいずれかが早期に到達する経路点から順に早期に到達する経路点が目的地点に一致するか否かを判定する判定手段(102)と、一致すると判定された場合に、早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、最適経路として特定する特定手段(103)とを備える。演算手段は、仮想的に移動する複数の搬送車についての移動時間を並列に算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置製造用の各種基板などの被搬送物を、工場内に敷設された軌道上を移動するビークル等の搬送車で搬送する搬送システムにおいて、最適な経路を探索する経路探索システム及び方法の技術分野に関する。本発明は更に、かかる搬送システム及びにコンピュータをこのような経路探索システムとして機能させるコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の経路探索システムとして、例えば特許文献1には、複数の分岐や合流を含んで張り巡らされた軌道上で出発点から目的地点までの最適な経路を探索するのに、所謂“ダイクストラ法”を利用した技術が開示されている。この技術では、全経路の各々が、最適経路の候補とされる。該各々の候補を構成するリンクのコスト(即ち、分岐点や合流点に相当するノード間を走行するのにかかる時間或いは時間に対応する評価値)が、出発地点から目的地点までについて積算される。その後、候補のうち出発点から目的地点までのコストが最小となるものが、最適経路として決定される。
【0003】
更に、特許文献2には、同一経路上に存在し得る複数の搬送車が互いに干渉しあう状況までもコスト計算に組み込んで、このような最適経路の探索を行う技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−320047号公報
【特許文献2】特開2003−345439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した背景技術によれば、全経路についてコストを出発地点から目的地点まで計算するので、特に近時における経路の複雑化にともなって、コンピュータにかかる負荷は膨大となる。このため、演算時間が長くなって、リアルタイム或いはそれに近い形で最適経路を探索することが困難となり、或いは、迅速な搬送が困難となり、更に、これを防ぐにために経済性に見合わないような高性能のコンピュータが必要となりかねないという技術的問題点がある。
【0006】
特に、特許文献2に開示された経路探索では、複数の搬送車間の相互干渉までもコスト計算に組み込むので、このようなコンピュータにかかる負荷は飛躍的に増大してしまう。逆に、特許文献1に開示されているような複数の搬送車間の相互干渉を考慮しない経路探索では、例えば複雑且つ大規模な経路上に数十台から数百台といった多数の搬送車が存在している場合に、真の最適経路を探索することは殆ど不可能となってしまう。この場合、経路上で大渋滞やデッドロックが発生しかねないという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば、上述の問題点に鑑みなされたものであり、演算負荷を低減しつつ最適経路を探索可能であり、他の搬送車の存在を考慮する場合であっても演算負荷の増大を実践的なレベルに抑えることを可能ならしめる、経路探索システム及び方法、そのようなシステムを含む搬送システム、並びにコンピュータをそのようなシステムとして機能させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の経路探索システムは上記課題を解決するために、搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索システムであって、前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段と、該演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定手段と、前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定手段とを備え、前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出する。
【0009】
本発明の経路探索システムによれば、例えばビークル等の搬送車は、経路網上で移動する際の最適経路を次のように探索する。ここに「経路」とは、例えば工場内に敷設されたレールなど、被搬送物が搭載された又はされない状態で搬送車が移動可能である経路を意味する。例えば、被搬送物の一時的な格納を行うストッカにおける、搬入口と搬出口との経路における位置が相互に異なる場合には、ストッカも、経路の一部として扱われ得る。「経路網」とは、例えば各々がループ状の軌道を描くと共に相互乗り入れ可能な複数のレール等の、相互間で搬送車が行き来可能な複数の経路の集合である。
【0010】
本発明の経路探索システムによれば、例えばプロセッサ、メモリ等を備える演算手段は、複数の単位経路の各々を搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、言い換えれば一連の単位経路に沿って積算することで、搬送車が出発地点から任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能に構成されている。ここに「単位経路」とは、経路網において、分岐点、合流点、交差点、行き止まり点などの間を直接結んでおり、移動の仕方について単純に進むことしか選択枝がない、一本の直線又は曲線状若しくは屈曲状の経路部分を意味しており、ダイクストラ方法における「リンク」に対応する。「経路点」とは、経路網において、単位経路の端に位置しており、典型的には、分岐点、合流点、交差点、行き止り点、更にはストッカの搬出搬入箇所など、搬送経路における移動の仕方についての選択枝が複数存在する点或いは箇所を意味しており、ダイクストラ方法における「ノード」に対応する。このような移動時間は、実際の経路探索の動作に先立って、例えばデータベースに情報として格納されてもよい。或いは、実際の経路探索の動作の直前又は開始直後の動作として、例えば経路の長さや混雑状況等の検出結果に基づいての演算により求められてもよい。
【0011】
その経路探索時には先ず、演算手段によって、仮想的に、搬送車が、移動時間に対応する移動速度で且つ経路網上で分岐可能な経路点で分岐して複数の単位経路を並列に移動するという条件で移動するものとして、かかる仮想的に移動する複数の搬送車についての移動時間が、並列に算出される。ここに「移動時間に対応する移動速度」とは、個々の単位経路を移動する時間を求める際の前提とされた移動速度である。例えば、単位経路夫々についての、過去における平均速度や、これに単位経路夫々の混雑状況等を加味した速度である。「仮想的に並列に移動する」とは、複数の搬送車があると仮定して、更にこれら搬送車を、時間を追って並列に進めることを意味する。「並列に算出する」とは、例えば演算手段を構成するプロセッサ上における並列処理により、これらの搬送車の各々が進んだ経路点まで移動するのにかかる移動時間を、同時処理又は並列処理により算出することを意味する。要するに、仮想的な複数の搬送車について、それらの移動時間に比例した時間軸上で順を追って夫々の移動時間が算出されることになる。ここでの「並列」は、完全に同時又は並列でなくてもよく、時分割的な処理により、これら複数の搬送車を固定又は可変の微小距離ずつ順繰りに進めて各移動時間を算出してもよく、少なくとも単位経路以下の長さずつ順繰りに進めて各移動時間を算出してもよい。例えば、仮想的に並列に移動する複数の搬送車を、算出される移動時間を基準として所定期間ずつ順繰りに移動して、移動した経路点まで移動時間を算出してもよい。或いは、仮想的に並列に移動する複数の搬送車を、複数の単位経路の所定数分ずつ又は前記複数の経路点の所定数分ずつ移動して、移動した経路点まで移動時間を算出してもよい。
【0012】
尚、この移動時間の算出には、仮想的に移動する搬送車の行く手に存在する他の搬送車は、これが存在する単位経路に係る移動時間に組み込まれているようにすれば、既に考慮されている。或いは、行く手に存在する他の搬送車の存在は、完全に無視すれば、移動時間を算出するのが簡易となる。
【0013】
このような演算手段による移動時間の算出と同時に若しくは並行に又は相前後しながら交互に、例えばプロセッサ、メモリ等を備える判定手段によって、このように仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、より早期に到達する経路点が、目的地点に一致するか否かが判定される。しかも、この判定は、仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかがより早期に到達する経路点に至る一連の単位経路から順番に行われる。
【0014】
尚、「より早期に到達する搬送車」は、同じ移動時間で目的地点に到達する限りにおいて、複数存在するものとして、判定手段による判定を行ってもよい。更に、可能性は低いものの、この判定の結果、複数の経路地点が目的地点に一致すると判定された場合には、これら複数の経路地点のうちより早期に判定が下されたものを、有効な(即ち、目的地点に一致する)経路点として扱ってもよいし、これらのうち移動時間が最も短いものを、有効な経路点として扱ってもよい。
【0015】
判定手段による判定の結果において、経路点が目的地点に一致する場合には、例えばプロセッサ、メモリ等を備える特定手段によって、複数の単位経路のうち、出発地点から該より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路が、最適経路として特定される。
【0016】
以上の結果、演算手段によって、例えば伝統的なダイクストラ法のように最適経路となり得る目的地点まで到達する経路の一つ一つについて、目的地点に到達するまでの移動時間が算出されることはない。或いは、最適経路となり得る目的地点まで到達する経路を仮想的に移動中の搬送車が、その経路で目的地点に到達可能であってもなくても、搬送車が未だ仮想的に移動していない経路部分についての移動時間が、算出されることはない。本発明では、演算手段は、最適経路が特定される前まで、仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出すれば済む。最初に目的地点に到達したことが判定された時点で、算出は終了されてよいので、全体として最適経路を特定するために必要な演算量は、極めて顕著に低減される。よって、リアルタイム或いはそれに近い形で経路探索を行うことも容易となる。
【0017】
しかも、この算出を終了した以降に、残る搬送車を仮想的に移動させて目的地点に到達させたとしても、既に最適経路を利用した場合の移動時間より短い移動時間で、到達することはあり得ない。即ち、演算手段によって、二番手以降に目的地点に到達する搬送車に関する移動時間或いは一連の単位経路を特定することはできないものの、最適経路を特定するという目的からすれば、かかる二番手以降に到達する搬送車に関する移動時間或いは一連の単位経路の情報は不要である。このように不要な情報を算出することなく、ほぼ必要最低限に近い算出によって一連の処理を終了する本発明は、格段に優れている。
【0018】
尚、仮想的に移動する複数の搬送車の移動時間を並列に算出する際における、並列の程度としては、理想的には、同時もしくは殆ど同時、又は、なるべく同時に近付くように微小単位の距離毎で行うのがよい。但し、最適経路となり得る複数の候補について、最終的には、実際に最適経路として特定される候補についてのみ、目的地点に至るまでの移動時間が算出される限りにおいて、演算量を軽減する効果は得られる。従って、かかる並列の程度としては、最適経路となり得る候補の経路一つ一つについて目的地点まで進めない程度に並列であれば足り、これにより演算量軽減についての効果が相応に得られる。
【0019】
本発明の一態様では、前記判定手段は、前記目的地点に一致すると判定されない限り、前記より早期に到達する経路点を除外した前記任意の経路点のうち前記仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかがより早期に到達する経路点が、前記目的地点に一致するか否かを繰り返し判定する。
【0020】
この態様によれば、仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかがより早期に到達する経路点が、目的地点に一致するまで、かかる目的地点に一致するか否かの判定が、繰り返して行われる。そして、目的地点に一致すると判定されることによって、移動時間を算出する処理等は完了される。よって、出発地点から目的地点まで至る経路であって且つ目的地点までの移動時間が算出されるのは、結果として、最適経路のみとなるので、無駄な算出が行われないで済む。
【0021】
本発明の他の態様では、前記単位経路を前記搬送車が移動する平均時間を示す時間情報及び前記搬送車に対して他の搬送車が存在する前記経路網上における位置を示す位置情報を、前記単位経路及び前記経路点のうち少なくとも一方に対応付けて格納するデータベースを更に備え、前記演算手段は、前記格納された時間情報及び位置情報に基づくコスト計算によって、前記移動時間を算出可能である。
【0022】
この態様によれば、演算手段によって、移動時間が算出される際には、データベースが参照され、これに格納された時間情報及び位置情報に基づくコスト計算によって、前記移動時間が算出される。よって、データベースを用いての迅速且つ確実な算出が可能となる。尚、かかるデータベースは、例えば経路網における混雑状態等の経路の状態に応じて、更新されてもよい。
【0023】
このデータベースを備えた態様では、前記演算手段は、前記位置情報に基づいて、前記搬送車が、前記他の搬送車の位置を通過しないように前記コスト計算を行ってもよい。
【0024】
このように構成すれば、例えば、故障等が原因で他の搬送車が停止しているために通過不可能な箇所については、位置情報に基づいて、搬送車がこの箇所を通過しないようにコスト計算が行われる。例えば、この箇所を含む単位経路を通過するのにかかる移動時間が無限大となるようにコスト計算が行われる。これにより、最終的に特定される最適経路は、この箇所を含む単位経路を除いた他の一連の単位経路となる。
【0025】
或いは、このデータベースを備えた態様では、前記演算手段は、前記位置情報に基づいて、前記搬送車が、前記他の搬送車の位置の所定距離以内に近付かないように前記コスト計算を行ってもよい。
【0026】
このように構成すれば、例えば、故障等が原因で他の搬送車が停止しているために通過不可能な箇所については、位置情報に基づいて、搬送車がこの箇所の所定距離範囲内に近付かないようにコスト計算が行われる。例えば、この箇所を含む単位経路及びその付近にある単位経路における移動時間が無限大となるようにコスト計算が行われる。これにより、最終的に特定される最適経路は、この箇所を含む単位経路及びその付近にある単位経路を除いた他の一連の単位経路となる。ここに「所定範囲」は、搬送車がこの箇所を移動中に接触する可能性のある距離にマージンを加えて値として規定される。
【0027】
本発明の搬送システムは上述の課題を解決するために、上述した本発明に係る経路探索システム(但し、その各種態様を含む)と、前記経路網と、前記搬送車と、前記搬送車を前記経路網上で移動させる移動手段とを備える。
【0028】
本発明の搬送システムによれば、上述した本発明に係る経路探索システムを含むので、最適経路を特定するために必要な演算量は、極めて顕著に低減される。よって、リアルタイム或いはそれに近い形で経路探索を行うことも容易となる。これにより、例えばビークルの推進装置、レールなどを含んでなる移動手段によって、搬送車が、例えば同一の製造ライン内で或いは異なる製造ライン間で、迅速に移動可能となる。例えば、複数の作業装置から一つの製造ラインが構成されており、複数の製造ラインに対応して複数の搬送ラインが設けられ、更に複数の搬送ラインの相互間にも、搬送ラインが設けられている搬送システムにおいて、最適経路を経由して移動可能にできる。
【0029】
尚、本発明の搬送システムにおいても、上述した本発明の経路探索システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0030】
本発明の経路探索方法は上記課題を解決するために、搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索方法であって、前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定工程と、前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定工程とを備え、前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出する。
【0031】
本発明の経路探索方法によれば、上述した本発明に係る経路探索システムの場合と同様に、最適経路を特定するために必要な演算量は、極めて顕著に低減される。よって、リアルタイム或いはそれに近い形で経路探索を行うことも容易となる。
【0032】
尚、本発明の経路探索方法においても、上述した本発明の経路探索システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0033】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索システムに備えられるコンピュータを、前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段と、該演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定手段と、前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定手段として機能させ、前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出する。
【0034】
本実施形態のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムを、経路探索システムに備えられたコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを通信手段を介してダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明に係る経路探索システムを比較的簡単に構築できる。これにより、上述した本発明に係る経路探索システムの場合と同様に、最適経路を特定するために必要な演算量は、極めて顕著に低減される。よって、リアルタイム或いはそれに近い形で経路探索を行うことも容易となる。
【0035】
尚、本発明のコンピュータプログラムにおいても、上述した本発明の経路探索システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0036】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0038】
先ず、本実施形態に係る経路探索システム100の構成について、図1を参照して説明する。ここに図1は、搬送システム内で搬送車が走行する際に最適な経路を探索するための、経路探索システム100のブロック図である。
【0039】
図1において、経路探索システム100は、例えば半導体製造工場内に敷設されたレール網上を、ビークル等の搬送車が自動走行するように構成された搬送システムに組み込まれる。経路探索システム100は、経路探索用のプロセッサ1、経路探索用のデータベース2、探索経路記録用のメモリ3、並びに、開始地点及び目的地点を入力可能な入力部4を備える。
【0040】
経路探索用のプロセッサ1は、経路探索部101、経路判定部102、及び経路特定部103を備える。
【0041】
データベース2は、経路網上の全経路点、及び全単位経路を格納した地図データベース201、走行時間データベース202、及び搬送車位置データベース203を備える。
【0042】
経路探索メモリ3は、プロセッサにより特定された経路点までの経路(即ち、最適経路の候補及び最適経路)を記憶するように構成されている。
【0043】
入力部4は、探索車に与えられる搬送要求の開始地点及び目的地点を入力可能に構成されている。
【0044】
経路探索システム100は更に、搬送車位置検出部5、走行時間検出部6、及び平均走行時間算出部7を備える。搬送車位置検出部5は、経路網上の全ての搬送車の位置情報を検出し、搬送車位置データベース203に格納するように構成されている。走行時間検出部7は、搬送車位置検出部5により取得された搬送車の位置情報より、該搬送車の速度情報から、現在走行中の単位経路を走行する所要時間を検出し、得られた走行時間情報を走行時間データベースに格納するように構成されている。平均走行時間算出部7は、過去に格納された走行時間情報をもとに、各単位経路を走行する際に所要する平均走行時間を算出し、得られた平均走行時間情報を走行時間データベース202に格納するように構成されている。
【0045】
経路探索部101は、地図データベース201、走行時間データベース202、及び搬送車位置データベース203に格納された位置情報、及び走行時間情報に基づいて、探索車の位置を仮想的に移動させる。探索経路メモリ3は、探索車が通過した経路点、及び単位経路を逐一記憶する。経路判定部102は、探索車が経路点に進入した場合、該経路点が目的地点、既に通過した経路点、及び分岐点のいずれかに一致するかどうかの判定を行うように構成されている。
【0046】
経路特定部103は、該経路点が目的地点と一致した場合には、経路探索メモリ3に記憶された経路情報から、目的地点に到達した探索車が通過してきた一連の経路を、最適経路であると特定する。経路探索部101は、このような最適経路を特定すると、探索車の移動を打ち切り、経路探索を終了するように構成されている。
【0047】
以上のように構成された経路探索システム100は、次に詳述するように、搬送車を仮想的に推移させて、該仮想的に推移される搬送車(以下適宜、単に「探索車」と呼ぶ)が経路点に到達した際に、その経路点が目的地点に一致するか否かを判定し、一致した場合に、その経路点に至る経路を最適経路として決定する。
【0048】
次に以上のように構成された経路探索システム100の動作の詳細について図2のフローチャートを参照して、説明する。
【0049】
図2において先ず、経路探索システム100に対して、入力部4を介して開始地点及び目標地点が入力され、「開始地点から目的地点まで荷物を運搬する」という搬送要求が与えられ、経路探索システム100は経路探索を開始する。プロセッサ1において、探索車は経路網上を仮想的に移動する(ステップS01)。探索車が経路点に進入した際に、該経路点が目的地点と一致するかどうかの判定が行われる(ステップS02)。
【0050】
ここで、該経路点が目的地点と一致しなかった場合(ステップS02:No)、次に該経路点が少なくとも一つの探索車によって既に通過された経路点であるかどうかの判定が行われる(ステップS03)。ここで、該経路点が既に探索車によって通過済みであった場合には(ステップS03:Yes)、該経路点に進入した探索車を離線扱いとする(ステップS04)。ここに、離線扱いとは、該経路探索における探索車の仮想的な推移において、該探索車を推移処理から消去し、以降の移動は行われないものとすることである。
【0051】
この動作によれば、経路探索において、探索車が、少なくとも一つの探索車が既に通過した経路に進入した際に、該探索車が通過した経路は、既に該通路に進入した少なくとも一つの探索車が通過した経路よりも、多くの走行所要時間を要することは自明であるため、その経路に関する以降の探索を行わないことで、演算処理の低減が出来る。
【0052】
他方、該経路点が目的地点でも、既に通過した経路点でもなかった場合には、該経路点が分岐可能な経路点(以下適宜「分岐点」と呼ぶ)であるかどうかの判定が行われる(ステップS05)。ここで、該経路点が分岐点であった場合(ステップ05:Yes)、分岐可能な経路点で分岐して、複数の単位経路を並列に移動するという条件を満たすように、探索車は仮想的に分身して、夫々が該経路点を経て分岐した各単位経路に進入することとなる(ステップS06)。分身した複数の探索車は、その全てが探索車として扱われ、夫々に対して並列的に探索車の移動が行われることになる(ステップS01)。
【0053】
また、該経路点が目的地点、既に通過した経路点、及び分岐点のいずれにも一致しない場合には(ステップS05:No)、探索車はそのまま次に続く単位経路へと進入し、移動を続けることとなる(ステップS01)。
【0054】
他方、該経路点が目的地点であった場合(ステップS02:Yes)には、該経路点に進入した探索車の、そこに至る一連の経路を記録し、経路網上の全ての探索車を離線扱いとする。そして、該記録した経路を最適経路であると特定し、経路探索は終了となる(ステップS07)。複数の探索車は仮想的に並列に走行しているので、最初に目的地に到達した探索車があれば、その探索車が走行した経路が、最短時間で到達可能な経路、即ち最適経路に他ならない訳である。
【0055】
次に、経路探索部101が行う、経路探索時における搬送車及び探索車(即ち、仮想的に適宜分身しながら進行する搬送車)の移動の詳細について説明する。経路探索において、搬送車及び探索車の動き方は一定のルールに従ってモデル化されている。以下にそのルールを示す。
【0056】
ルール(a):経路探索において、未来における新しい搬送要求の出現は、予想不可能であるため、新しい搬送要求は発生しないものとし、運行予測を開始した時点で夫々の搬送車或いは探索車に対して登録されている経路は変更されないものとする。
【0057】
ルール(b):搬送車及び探索車の走行速度は、単位経路毎に走行時間データベース202に格納された走行時間情報に基づく速度、若しくは速度0(ゼロ)で停止しているものとする。
【0058】
ルール(c):所定の最小車間距離よりも、一の搬送車或いは探索車と、他の搬送車或いは搬送車とが、接近することを禁止する。但し、分身した探索車が搬送車の直前を走行している場合に関しては、該分身した探索車の存在は不定であるため、車間距離は考慮しない。
【0059】
ルール(d):合流点では、排他制御を行い、複数の搬送車が一つの合流点に進入する場合には、先行する搬送車、或いは合流後の単位経路と平行走行している搬送車を先に進入させ、その間相手の搬送車は進入禁止とする。但し、搬送車が進入しようとしている合流点に、先行して分身した探索車が進入しようとしている場合には、分身した探索車の存在は不定であるため、該搬送車は経路を進入禁止にされることはない。
【0060】
ルール(e):搬送要求のない場合、搬送車はCYCLE(サイクル)モードにあるとする。ここにCYCLEモードとは、夫々の搬送車に登録された所定のルートを巡回走行している状態である。
【0061】
ルール(f):CYCLEモードの搬送車に搬送要求が受け渡されると、FROM(フローム)モードとなる。ここに、FROMモードとは、開始地点において荷物の積み作業を終えるまでの状態を指し、この状態において、経路探索システム100により該開始地点から目的地点までの経路が探索される。尚、仮に経路探索に時間がかかるために、積荷作業が先に終わった場合には、経路探索が終了するまで、搬送車が走行されることはない。
【0062】
ルール(g):FROMモードの搬送車が開始地点で荷物の積み作業を終えると、TOモードとなる。ここに、TOモードとは、荷物を積載した搬送車が、搬送要求により指定された目的地点まで、探索された経路を走行して、目的地点において荷物の降ろし作業を終えるまでの状態を指す。搬送車は、荷物の降ろし作業を終えるとCYCLEモードとなる。
【0063】
次に、図3を参照して、このようなルールの下で行われる経路探索の詳細について説明を加える。ここに図3は、経路探索システム100が設置される搬送システムにおける、分岐点、合流点、及びストッカの搬出搬入箇所を経路点として備え、更に経路点の間を直接結んでいる単位経路を備えた経路網の一例を示す経路網の概略平面図である。
【0064】
図3において、五角形で示した搬送車V01、及び搬送車V02は、経路点N01乃至経路点N16、及び単位経路L01乃至単位経路L18を備えた、点と実線で示される経路網301上を矢印の方向に進むことが出来る。経路点N02、及び経路点N08は合流点を示し、経路点N03、及び経路点N09は分岐点を示す。尚、搬送車V01、及び搬送車V02は、経路網上の走行を片方向と限定せず、双方向に走行できるものとしても良く、適宜設定が可能である。
【0065】
経路網301上の搬送車V01、及び搬送車V02は、共にCYCLEモードで走行しており、該CYCLEモードにおいて、搬送車V01はL01→L02→L03→L04→L05→L06→L07→L08→L09→L10→L11→L12の一連の単位経路を走行し、搬送車V02は、L02→L13→L14→L15→L08→L16→L17→L18の一連の単位経路を走行しているものとする。
【0066】
経路探索システム100の入力部4に、搬送要求として経路点N04(以下、開始地点N04)を開始地点とし、経路点N07を目的地点(以下、目的地点N07)とした搬送要求が入力されたものとする。搬送車位置検出部7により、搬送車V01、及び搬送車V02の現在位置が検出され、搬送車位置データベース203の位置情報が更新される。尚、該位置情報の更新は搬送要求の有無に依らず、リアルタイムや所定の期間ごとに更新されるものであってもよい。該位置情報、及び走行時間データベース202に格納された走行時間情報より、経路探索部101によって最短時間で開始地点へ到達できる搬送車が選択され、該当する搬送車を探索車とした経路探索が開始される。
【0067】
図3において、開始地点N04に最短時間で到達できる搬送車が搬送車V01であったとする。ここに、搬送車V01はFROMモードとなり、該搬送車V01を探索車(以下、“探索車V01”と称する)とした、経路探索が開始される。経路探索システム100は、経路探索部101において探索車V01を仮想的に移動させることにより、先ず現在位置から開始地点N04まで、次に開始地点N04から目的地点N07までの経路探索を行う。現在位置L03と開始地点N04は探索車V01の進行方向において接続しており、経路通りに移動することで開始地点N04に到達する。
【0068】
次に経路探索部101は、開始地点N04において探索車V01が荷物の積み作業を行うためにかかる所要時間分、他の搬送車を位置情報、及び走行時間情報に基づいて移動させる。探索車V01はその間、開始地点N04で停止している扱いとなる。
【0069】
該積み作業の終了後、経路探索部101は、再び探索車V01の移動を行う。経路通りにL04→L05→L06の一連の単位経路を通過し、探索車V01は目的地点N07に到達する。経路判定部102により、経路点N07が目的地点であると判定され、経路探索で通過したL03→L04→L05→L06の一連の単位経路が探索経路メモリ3に記録される。経路探索部101は経路探索を終了し、経路特定部103はL03→L04→L05→L06の一連の単位経路を最適経路として特定する。
【0070】
次に、図4を参照して、経路探索部101で最適経路を探索する際に実行されるコスト計算による移動時間の算出の詳細について説明する。ここに図4は、経路探索システム100が設置される搬送システムにおける、分岐点、合流点、及びストッカの搬出搬入箇所を経路点として備え、更に経路点の間を直接結んでいる単位経路を備えた経路網の一例を示す経路網の概略平面図である。
【0071】
図4に示すように、本実施形態に係る経路探索システム100において、経路探索における移動時間の算出は、各単位経路ごとに走行時間データベース202に格納された、走行時間情報をコストとするコスト計算によって行われる。また、該コスト計算は、単純に各経路の平均走行時間のみではなく、途中の経路において、他の搬送車が作業を行っている状況や、渋滞状況をも考慮したものとなっている。
【0072】
図4において、探索車V21は経路点N21(以下、開始地点N21)を開始地点とし、経路点N27を目的地点(以下、目的地点N27)とした搬送要求を受けたものとする。経路探索システム100において、探索車V21が開始地点N21にて荷物の積み込みを終えた時点からの経路探索が行われる。ここで、単位経路L21乃至単位経路L27を通過するための走行時間は夫々1秒であると走行時間データベース222に格納されているものとする。
【0073】
単位経路L22と単位経路L23を繋ぐ経路点N23において、別の搬送車V22が荷物の積み下ろし作業を行っているとする。
【0074】
経路探索において、仮想的に移動された探索車V21は、分岐可能な経路点N22において、2つに分身し、単位経路L22、及び単位経路L24に同時に進入することとなる。ここに、単位経路L22に進入した分身した探索車を探索車V21aとし、単位経路L24に進入した分身した探索車を探索車V21bとする。
【0075】
単純な各単位経路の走行時間をコストとしてコスト計算を行った場合、一連の単位経路としてL21→L22→L23→L27を通過して目的地点N27に到達した場合、所要時間は4秒となるが、実際には、搬送車V22は経路点N23で作業を行っているため、探索車V21aは搬送車V22が作業を終了して走行を開始するまで、経路点N23を通過することが出来ず、所定の車間距離を取って停止し、作業の終了を待つこととなる。該経路点23を通過する際のコストに、作業終了を待つまでの所要時間を加算しておくことにより、搬送車V22の作業に伴う待ち時間を考慮した、走行所要時間のコスト計算を行うことが出来る。以上の状況では、L21→L22→L23→L27の一連の単位経路を通過する場合には、実際の所要時間は各単位経路の走行時間の総和である4秒よりも多くの時間を要することとなる。
【0076】
他方、探索車V21bが、L21→L24→L25→L26→L27という一連の単位経路を通過して目的地点N27に到達した場合、所要時間は5秒となる。搬送車V22の作業状況によっては、探索車V21bが、探索車V21aよりも先に目的地点N27に到達することとなり、その場合には、単純に各単位経路の走行時間で見た最適経路ではなく、他の搬送車の動きも考慮した最適経路として、L21→L24→L25→L26→L27が特定される。
【0077】
また、故障等が原因で搬送車V22が、経路点N23上で停止している場合には、経路探索において、故障の回復は起こらないものと予め設定し、例えば、該経路点N23を通過する際のコストを無限大と設定することにより、探索車V21aは、どれだけ時間が経過しても目的地点N27へ到達することは出来ず、故障した搬送車V22が経路を塞いでいるL21→L22→L23→L27の一連の単位経路が最適経路として特定されるような事態は起こり得ない。
【0078】
以上のような動作により、経路探索システム100によれば、経路網上の他の搬送車の作業状況や、渋滞状況を、コストとして考慮した上で、最も短い時間で目的地点へと到達出来る経路が、最適経路として特定される。この効果は経路網上を走行する搬送車の数が増加するごとに顕著となる。
【0079】
次に、本発明の他の実施形態について図5のフローチャートを参照して説明する。他の実施形態のハードウエア構成は、図1から図4を参照して説明した上述の実施形態と同様であり、ソフトウエア構成が異なる。
【0080】
図5において先ず、経路探索システム100に対して、入力部4を介して開始地点及び目標地点が入力され、「開始地点から目的地点まで荷物を運搬する」という搬送要求が与えられ、搬送車位置データベースより現在の搬送車位置情報、及び探索車の元となる探索車の情報が与えられる。また、この時には任意に設定した制限時間を入力することも可能である(ステップS10)。ここに制限時間とは、経路探索において、他の搬送車の作業や渋滞によって、或る探索車が移動を停止した場合、該探索車の待ち時間の上限を設定するものであり、制限時間を越えても移動を再開できない場合には、該探索車の通過した経路に関する経路探索を打ち切るものとする。
【0081】
以上の入力を受け、経路探索部101は、位置情報として現在の搬送車位置情報を、探索車Vとして探索車のナンバ(即ち、識別番号)を、nowとして現在時刻を格納し、経路探索システム100は経路探索を開始する(ステップS11)。ここに、探索車のナンバとは、探索車が分身した際にも互いに識別可能な各探索車に固有のナンバであるとし、探索車Vと示した場合には、ある固有のナンバを持つ探索車のことを示す。
【0082】
次に、経路探索部101は、時刻t0としてnow値を格納し(ステップS12)、探索車Vが分岐可能な経路点上にあるか否かの判定が行われる(ステップS13)。探索車Vが分岐点上にある場合(ステップS13:Yes)、探索車Vは分身し、夫々の分身は互いに異なる固有のナンバを持つことになる(ステップS14)。
【0083】
探索車Vが分岐点上にない場合(ステップS13:No)、或いは分岐点上で分身した場合、夫々の探索車Vに対し、現在の位置情報と、現在時刻nowを仮想的に推移させることで経路探索が行われる(ステップS15)。ここで、探索車が複数存在する場合には、夫々の探索車Vに関して、経路点に到達する、或いは経路点で作業を開始する、等のイベントが発生する毎に該探索車Vに対し焦点を合わせることで、以下に説明する種々の処理を、夫々の探索車に対して行っても構わない。
【0084】
ステップS15における仮想的な推移に伴って、探索車Vの位置情報及びnow値が変化する。ここで、now−t0が、ステップS10において入力された制限時間以上となっているか否かの判定が行われる(ステップS16)。「now−t0>=制限時間」となっていた場合(ステップS16:Yes)、つまり、探索車Vに関して、設定された制限時間を過ぎていた場合には、該探索車の経路探索は失敗終了であるとし(ステップS17)、該探索車に関する以降の経路探索は行われないものとする。
【0085】
「now−t0>=制限時間」となっていない場合(ステップS16:No)には、次に探索車Vの走行した単位経路に関して、下に記載する「跡」が存在するか否かの判定が行われる。この「跡」は、既に探索車Vが該単位経路を通過したか否かを示すものであり、該単位経路に跡が存在している場合(ステップS18:Yes)、該単位経路は既に探索車Vにより通過されたものであるとし、該探索車Vを離線扱いとする(ステップS19)。探索車Vが離線された後には、他の存在する探索車Vに焦点を移し、仮想的な推移が行われる(ステップS15)。
【0086】
探索車Vの走行した単位経路に「跡」が存在しない場合(ステップS18:No)、探索車Vの走行した単位経路に「跡」をつける(ステップS20)。即ち、最適経路の候補としてメモリに格納される。
【0087】
次に、探索車Vが積み下ろしの作業中であるか否かの判定が行われる(ステップS21)。
ここに作業とは、FROMモード時に行うストッカの搬出地点での荷物の積み作業、及びTOモード時に行うストッカの搬入地点での荷物の降ろし作業を示す。以上の作業は、経路探索において、搬送要求による開始地点、及び目的地点で行われる。探索車Vが作業中でない場合(ステップS21:No)、探索車Vは開始地点にも目的地点にも到達していないことを意味し、再び経路探索を開始する(ステップS12)。
【0088】
探索車Vが作業中であった場合(ステップS21:Yes)、次に探索車VがFROMモードであるか否かの判定が行われる(ステップS22)。探索車VがFROMモードであった場合(ステップS22:Yes)、該探索車Vが行っている作業は荷物の積み作業であり、現在は開始地点にあることが分かる。そこで、経路特定部103は、Vの走行した一連の単位経路を、経路探索を開始した時点での探索車Vの位置から、搬送要求により指示された開始地点までの最適経路であると特定し、探索経路メモリ3に格納する。これと共に、該探索車V以外の全ての探索車を離線扱いとし、全単位経路の「跡」を消去する(ステップS23)。
【0089】
続けて、ステップS12に戻り、開始地点から目的地点までの経路探索を開始する(ステップS12)。
【0090】
他方で、ステップS22の判定において、探索車VがFROMモードでない場合(ステップS22:No)、該探索車Vが行っている作業は荷物の降ろし作業であり、現在は目的地点に到達していることが分かる。そこで、経路特定部103は、メモリに格納されている、該探索車Vの走行した一連の単位経路を、搬送要求により指定された、開始地点から目的地点までの最適経路として特定し、探索経路メモリ3に格納する。ここで経路探索を終了する。
【0091】
以上の結果、本実施形態によれば、プロセッサ1における演算負荷を低減しつつ最適経路を探索可能であり、他の搬送車の存在を考慮する場合であっても演算負荷の増大を実践的なレベルに抑えることが可能となる。
【0092】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う経路探索システム及び方法、コンピュータプログラム、並びに搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施形態に係る経路探索システムの概略的なブロック図である。
【図2】実施形態に係る経路探索システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】経路探索システムが設置される搬送システムにおける、分岐点、合流点、及びストッカの搬出搬入箇所を経路点として備え、更に経路点の間を直接結んでいる単位経路を備えた経路網の一例である。
【図4】経路探索システムが設置される搬送システムにおける、分岐点、合流点、及びストッカの搬出搬入箇所を経路点として備え、更に経路点の間を直接結んでいる単位経路を備えた経路網の一例である。
【図5】他の実施形態に係る経路探索システムの動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1… プロセッサ
2… データベース
3… 経路探索メモリ
4… 入力部
5… 搬送車位置検出部
6… 走行時間検出部
7… 平均走行時間算出部
100… 経路探索システム
101… 経路探索部
102… 経路判定部
103… 経路特定部
201… 地図データベース
202… 走行時間データベース
203… 搬送車位置データベース
301… 経路網
N01、N02、N03、N04、N05、N06、N07、N08、N09、N10、N11、N12、N13、N14、N15、N16、N21、N22、N23、N24、N25、N26、N27、N28… 経路点
L01、L02、L03、L04、L05、L06、L07、L08、L09、L10、L11、L12、L13、L14、L15、L16、L17、L18、L21、L22、L23、L24、L25、L26、L27… 単位経路
V01、V02、V21、V22… 搬送車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索システムであって、
前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段と、
該演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定手段と、
前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定手段と
を備え、
前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出する
ことを特徴とする経路探索システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記目的地点に一致すると判定されない限り、前記より早期に到達する経路点を除外した前記任意の経路点のうち前記仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかがより早期に到達する経路点が、前記目的地点に一致するか否かを繰り返し判定することを特徴とする請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項3】
前記単位経路を前記搬送車が移動する平均時間を示す時間情報及び前記搬送車に対して他の搬送車が存在する前記経路網上における位置を示す位置情報を、前記単位経路及び前記経路点のうち少なくとも一方に対応付けて格納するデータベースを更に備え、
前記演算手段は、前記格納された時間情報及び位置情報に基づくコスト計算によって、前記移動時間を算出可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記演算手段は、前記位置情報に基づいて、前記搬送車が、前記他の搬送車の位置を通過しないように前記コスト計算を行う
を特徴とする請求項3に記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記演算手段は、前記位置情報に基づいて、前記搬送車が、前記他の搬送車の位置の所定距離以内に近付かないように前記コスト計算を行う
を特徴とする請求項3に記載の経路探索システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の経路探索システムと、
前記経路網と、
前記搬送車と、
前記搬送車を前記経路網上で移動させる移動手段と
を備える搬送システム。
【請求項7】
搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索方法であって、
前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定工程と、
前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定工程と
を備え、前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出することを特徴とする経路探索方法。
【請求項8】
搬送車が経路網上で出発地点から目的地点まで移動する際の最適経路を探索する経路探索システムに備えられるコンピュータを、
前記経路網を構成する複数の経路点間を結ぶ複数の単位経路の各々を前記搬送車が移動するのにかかる移動時間を集計することで、前記搬送車が、前記出発地点から前記複数の経路点のうち任意の経路点まで移動するのにかかる移動時間を算出可能である演算手段と、
該演算手段により算出される移動時間に対応する移動速度で且つ前記経路網上で分岐可能な経路点で分岐して前記複数の単位経路を並列に移動するという条件で、仮想的に前記搬送車が複数の搬送車として移動するものとして、該仮想的に移動する複数の搬送車のいずれかが、前記任意の経路点のうち、より早期に到達する経路点から順に、該より早期に到達する経路点が前記目的地点に一致するか否かを判定する判定手段と、
前記目的地点に一致すると判定された場合に、前記複数の単位経路のうち、前記出発地点から前記より早期に到達する経路点に至る一連の単位経路を、前記最適経路として特定する特定手段と
として機能させ、
前記演算手段は、前記仮想的に移動する複数の搬送車についての前記移動時間を並列に算出する
ことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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