説明

結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法

【課題】飛翔体と構造物との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能な結合分離装置を提供する。
【解決手段】結合分離装置は、ブロック3とストラップ2とを有するクランプバンド6と、結合部4とを具備する。ブロック3は、飛翔体の載置部材20と載置部材20に載置された構造物20とを係合する。ストラップ2は、ブロック3を外側から保持する。結合部4は、ストラップ2の両端部2aを結合し又は分離する。ストラップ2は、形状記憶合金で形成され、加熱により延伸する延伸部11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法に関し、特に、飛翔体に構造物を結合し、結合された構造物を飛翔体から分離する結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛翔体(例示:ロケット)と構造物(例示:人工衛星)とを結合・分離する結合分離システムが知られている。ロケットの結合分離システムでは、衛星とロケットとの結合を、金属製のクランプバンドで締め付けることで行われている。図1は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略平面図である。図2は、図1のA−A断面の構成を示す概略断面図である。結合分離システムは、結合分離装置101とPAF(Payload Attached Fitting)構造120とを備えている。PAF構造120は、ロケットに搭載され、衛星を載置する円筒形状の台座である。結合分離装置101は、PAF構造120と、その上に搭載された衛星側構造130とを結合又は分離する。ただし、衛星側構造130は、円筒形状を有する衛星側の部材である。PAF構造120及び衛星側構造130の直径は概ね等しい。そして両者が結合される場合、結合分離装置101に締め付けられて、本来の直径よりも小さい直径に押し込められる。それにより、PAF構造120及び衛星側構造130には歪応力が発生している。結合分離装置101は、クランプバンド106と結合部104とを備えている。
【0003】
クランプバンド106は、PAF構造120と衛星側構造130との結合部分の成す円周形状に沿って設けられている。クランプバンド106は、複数のブロック103と、ストラップ102とを備えている。複数のブロック103は、PAF構造120と衛星側構造130との結合部分の成す円周形状に沿って並んで設けられている。ブロック103は、PAF構造120の端部120aと衛星側構造130の端部130aとを併せて係合する凹部103a(例示:断面がV字型の溝、以下V溝ともいう)を有している。PAF構造120と衛星側構造130とは、端部120aと端部130aとが凹部103aで係合することで、互いに結合している。ストラップ102は、複数のブロック103における凹部103aと反対の面に結合している。複数のブロック103とストラップ102とは一体である。ストラップ102を締め付けることで、複数のブロック103を、凹部103aと反対の面から結合部分に向かって押し込んでいる。結合部104は、ストラップ102の両端部102aを結合して、クランプバンド106の締め付けを保持する。結合部104は、ストラップ102の一方の端部102aに設けられたボルト状部材(図示されず)と、他方の端部102aに設けられたナット状部材(図示されず)とに例示される。結合部104は、ボルト状部材をナット状部材にねじ込むことで、ストラップ102の両端部102aを結合する。クランプバンド106には、外側のロケット本体に取り付けられたバネ105により外向きの力が加えられている。
【0004】
結合分離装置101では、衛星とロケットとの結合の解除(分離)は、火工品を用いて行う。火工品は、その動作時に切断治具を高速に移動させ、結合部104のボルト状部材を切断する。そのボルト状部材の切断により、ストラップ102の両端102aが分離される。それにより、クランプバンド106が、クランプバンド106の張力及びバネ105の力で高速に外側に引っ張られる。その結果、複数のブロック103も高速に外側に移動するので、衛星とロケットとの結合が解除される。
【0005】
関連する技術として、特開昭60−61400号公報に構造体結合装置が開示されている。この構造体結合装置は、形状記憶合金材を特定温度で変形して構造物どうしを結合し、その結合部を上記特定温度からマルテンサイト変態温度を超えて加熱又は冷却することにより形状記憶合金材が変形前の形状に戻り、結合が解除されるように構成されている。
【0006】
また、特許第2671794号公報に宇宙構造物の分離機構が開示されている。この宇宙構造物の分離機構は、ボルトと、ハウジングと、分離ナットと、形状記憶合金コイルと、ボルト押出用ばねと、ばねと、からなることを特徴とする。ボルトは、一対の構造物を結合する。ハウジングは、一対の構造物の一方に備えられた。分離ナットは、このハウジングの内部に設けられ、ボルトと螺合する径方向に分割された。形状記憶合金コイルは、分離ナットの外周にコイル状に巻かれ、各端部がハウジングを介してヒータに接続された。ボルト押出用ばねは、ボルト先端とハウジング内壁の間に設けられ、ボルトを構造物側に押圧する。ばねは、分離ナット側面とハウジング内壁の間に設けた、分離ナットを径方向に引っ張る。
【0007】
また、特開平9−315399号公報にワイヤ保持解放装置が開示されている。このワイヤ保持解放装置は、ワイヤ部材と、ハウジングと、エンド部材と、第1及び第2の保持解放部材と、熱制御手段とを具備している。ワイヤ部材は、宇宙構造物を解放自在に位置決め保持する。ハウジングは、このワイヤ部材の一端部が係止されるものであって、対向配置された一対のボールがワイヤ部材に対して略直交する方向に出入り自在に設けられる。エンド部材は、このハウジングに離脱自在に挿着されるものであって、ワイヤ部材の他端部が係止され、ハウジングのボールに挟持されて該ハウジングに位置決め支持される。第1及び第2の保持解放部材は、ハウジングに支持されるものであって、ボールに対して付勢力を付与して、該ボールでエンド部材を位置決めする熱変形自在である。熱制御手段は、この第1及び第2の保持解放部材を熱制御して前記ボールに対する付勢力を制御し、前記エンド部材を前記ハウジングに対して位置決めあるいは位置決め解除して前記ハウジングからの離脱を許容し、前記ワイヤ部材の保持あるいは解放動作を制御する。
【0008】
また、特開平6−32296号公報に分離機構が開示されている。この分離機構は、人工衛星等の宇宙飛翔体に搭載し、打上時はワイヤによって格納状態に拘束され、運用時には前記ワイヤの拘束状態から開放されて動作状態に展開する装備品に対する前記ワイヤの拘束状態を分離する。この分離機構は、第1の形状記憶合金と、ワイヤ止めと、ストッパーと、第2の形状記憶合金と、第1および第2のヒータとを備えることを特徴とする。第1の形状記憶合金は、ワイヤ中に介在させた。ワイヤ止めは、第1の形状記憶合金を含み一端を固定した前記ワイヤの他端を緊張保持する。ストッパーは、ワイヤ止めを拘束状態に保持する。第2の形状記憶合金は、ストッパーを拘束状態に保持する。第1および第2のヒータは、第1および第2の形状記憶合金を加熱伸長させワイヤを拘束状態から開放して装備品の運用を確保せしめる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−61400号公報
【特許文献2】特許第2671794号公報
【特許文献3】特開平9−315399号公報
【特許文献4】特開平6−32296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1及び図2に示される結合分離装置101では、衛星とロケットとの結合を解除(分離)するとき、結合部104のボルト状部材が切断されて、クランプバンド106の張力及びバネ105の力で高速に外側に引っ張られる。その結果、クランプバンド106の締め付け力によりブロック103を介して押さえつけられていたPAF構造120及び衛星側構造130における中心から外側方向に向かう力(歪応力)が開放される。図3は、PAF構造120及び衛星側構造130における歪応力が開放された時の様子を示す模式図である。この図は、図2と同様の断面を示している。PAF構造120及び衛星側構造130は、結合時には、歪応力を蓄積した状態で、P0の位置にある。しかし、PAF構造120及び衛星側構造130は、結合部104のボルト状部材が切断されブロック103が開放された後は自由に動ける。そのため、極めて高速に歪応力を開放して、歪応力の無い位置であるPAへ移ろうとする。その結果、PAF構造120及び衛星側構造130は、PAの位置を略中心として激しく振動することになる。すなわち、火工品による衝撃に加えて、締め付け力の開放が瞬時に行われることにより、衛星側構造130に衝撃が発生してしまうことになる。このような分離衝撃が大きい場合には、衛星側機器の設計条件を厳しくする必要が出て、コストや重量等の面で問題となる。
【0011】
本発明の目的は、飛翔体(例示:ロケット)と構造物(例示:衛星)との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能な結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、当該結合を分離するとき、衛星側構造の歪エネルギーが瞬間的に開放されることによる衝撃を低減することが可能な結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法を提供することにある。
【0012】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本発明の結合分離装置は、ブロック(3)とストラップ(2)とを有するクランプバンド(6)と、結合部(4)とを具備する。ブロック(3)は、飛翔体の載置部材(20)と載置部材(20)に載置された構造物(30)とを係合する。ストラップ(2)は、ブロック(3)を外側から保持する。結合部(4)は、ストラップ(2)の両端部(2a)を結合し又は分離する。ストラップ(2)は、形状記憶合金で形成され、加熱により延伸する延伸部(11)を備える。
【0015】
本発明では、加熱により延伸する形状記憶合金で形成された延伸部(11)を備えるストラップ(2)が、ブロック(3)と一体となり、載置部材(20)及び構造物(30)を締め付けることにより、載置部材(20)と構造物(30)とを係合し、結合している。それにより、その結合を解除するとき、ストラップ(2)の切断の前に、形状記憶合金を加熱により延伸させることで、ストラップ(2)を延伸させることができる。ストラップ(2)が延伸して緩むと共にブロック(3)は外側に移動するので、載置部材(20)及び構造物(30)も外側に移動することができる。その結果、ストラップ(2)及びブロック(3)の締め付けにより構造物(30)に内包された歪応力(歪エネルギー)の一部を、ストラップ(2)を切断する前に開放することができる。それにより、瞬時にストラップ(2)を切断する場合と比較して、ストラップ(2)を切断するときに開放される歪エネルギーを減少させることができる。その結果、ストラップ(2)の切断時の分離衝撃を減少させることが可能となる。
【0016】
上記の結合分離装置において、ストラップ(2)は、複数の延伸部(11)を備えることが好ましい。
本発明では、この場合、加熱により延伸する複数の延伸部(11)(複数の形状記憶合金)を有している。それらの複数の延伸部(11)を例えば一つずつ延伸させることで、ストラップ(2)を切断する前に、構造物(30)に内包された歪応力(歪エネルギー)の一部を少しずつ段階的に開放することができる。それにより、瞬時にストラップ(2)を切断する場合と比較して、ストラップ(2)を切断するときに、より緩やかに歪エネルギー開放することができる。その結果、ストラップ(2)の切断時の分離衝撃をより減少させることが可能となる。
【0017】
上記の結合分離装置において、形状記憶合金は、TiNiを含むことが好ましい。
本発明では、ストラップ(2)の締め付け力に耐える必要があるため、形状記憶合金として強度的に優れたTiNiを延伸部(11)として用いることが好ましい。
【0018】
上記の結合分離装置において、ストラップ(2)の両端部(2a)は、それぞれ開口部(2b)を有することが好ましい。結合部(4)は、ピン(4a)と、ピン(4a)を開口部(2b)に出し入れする駆動部(4b)とを備えることが好ましい。結合部(4)は、開口部(2b)にピン(4a)を入れることで、ストラップ(2)の両端部(2a)を結合することが好ましい。結合部(4)は、開口部(2b)からピン(4a)を出すことで、ストラップ(2)の両端部(2a)を分離することが好ましい。
本発明では、この場合、結合部(4)がピン(4a)の出し入れで結合及び分離を行うので、火工品を用いた場合と比較して、ストラップ(2)の切断時の分離衝撃を減少させることが可能となる。
【0019】
上記の結合分離装置において、延伸部(11)を加熱する加熱部(12)を更に具備することが好ましい。
本発明では、この場合、加熱用の加熱部(12)を備えているので、飛翔体側に加熱装置を設ける必要がない。
【0020】
本発明の結合分離システムは、載置部材(20)と、結合分離装置(1)と、加熱装置(12)とを具備することが好ましい。載置部材(20)は、飛翔体に搭載され、構造物を載置することが好ましい。結合分離装置(1)は、載置される構造物を載置部材(20)に結合し又は分離するもので、上記段落のいずれか一つに記載されている。加熱装置(12)は、結合分離装置(1)の延伸部(11)を加熱することが好ましい。
本発明では、結合分離システムに上記各段落で説明された結合分離装置(1)を有しているので、上述のようにストラップ(2)の切断時の分離衝撃を減少させることが可能となる。
【0021】
上記結合分離システムにおいて、延伸部(11)の温度を検出する第1センサ(15)を更に具備することが好ましい。加熱装置(12)は、第1センサ(15)の検出結果に基づいて加熱を停止することが好ましい。
本発明では、この場合、第1センサで検出された形状記憶合金の温度に基づいて、加熱装置(12)の停止を決定している。そのため、温度が、延伸部(11)の形状記憶合金の形状回復温度以上になったことを確認してから、加熱装置(12)を停止することができる。それにより、形状記憶合金をほぼ確実に、記憶された長さに延伸させることができる。第1センサとしては、抵抗温度計や熱電対が例示される。
【0022】
上記結合分離システムにおいて、延伸部(11)の長さを検出する第2センサ(15)を更に具備することが好ましい。加熱装置(12)は、第2センサ(15)の検出結果に基づいて加熱を停止することが好ましい。
本発明では、この場合、第2センサで検出された形状記憶合金の長さに基づいて、加熱装置(12)の停止を決定している。そのため、温度が、延伸部(11)の形状記憶合金が延伸して、記憶された長さになったことを確認してから、加熱装置(12)を停止することができる。それにより、形状記憶合金を確実に、記憶された長さに延伸させることができる。第2センサとしては、歪センサが例示される。
【0023】
本発明の結合分離方法は、飛翔体に構造物を結合し又は分離する結合分離システムを用いた結合分離方法である。ただし、結合分離システムは、飛翔体に搭載され、構造物を載置する載置部材(20)と、載置される構造物を載置部材(20)に結合し又は分離する結合分離装置(1)と、加熱装置(12)とを具備する。結合分離装置(1)は、飛翔体の載置部材(20)と載置部材(20)に載置された構造物(30)とを係合するブロック(3)と、ブロック(3)を外側から保持可能なストラップ(2)と、ストラップ(2)の両端部(2a)を結合し、又は分離する結合部(4)とを備える。ストラップ(2)は、形状記憶合金で形成され、加熱により延伸する延伸部(11)を備える。
結合分離方法は、結合部(4)で両端部(2a)を結合されたストラップ(2)の延伸部(11)を、加熱装置(12)で加熱して延伸させるステップと、延伸後に、結合された両端部(2a)を、結合部(4)で分離するステップとを具備する。
【0024】
本発明では、加熱により延伸する形状記憶合金で形成された延伸部(11)を備えるストラップ(2)が、ブロック(3)と一体となり、載置部材(20)及び構造物(30)を締め付けることにより、載置部材(20)と構造物(30)とを係合し、結合している。それにより、その結合を解除するとき、ストラップ(2)の切断の前に、形状記憶合金を加熱により延伸させることで、ストラップ(2)を延伸させることができる。ストラップ(2)が延伸して緩むと共にブロック(3)は外側に移動するので、載置部材(20)及び構造物(30)も移動することができる。その結果、ブロック(3)の締め付けにより構造物(30)に内包された歪応力(歪エネルギー)の一部を、ストラップ(2)を切断する前に開放することができる。それにより、瞬時にストラップ(2)を切断する場合と比較して、ストラップ(2)を切断するときに開放される歪エネルギーを減少させることができる。その結果、ストラップ(2)の切断時の分離衝撃を減少させることが可能となる。
【0025】
上記の結合分離方法において、ストラップ(2)は、延伸部(11)を含む複数の延伸部(11)を備えることが好ましい。加熱して延伸させるステップは、加熱装置(12)が複数の延伸部(11)を互いに異なるタイミングで一つずつ加熱するステップを備えることが好ましい。
本発明では、この場合、加熱により延伸する複数の延伸部(11)(複数の形状記憶合金)を有している。それらの延伸部(11)を例えば一つずつ延伸させることで、ストラップ(2)を切断する前に、構造物(30)に内包された歪応力(歪エネルギー)の一部を少しずつ段階的に開放することができる。それにより、瞬時にストラップ(2)を切断する場合と比較して、ストラップ(2)を切断するときに、より緩やかに歪エネルギー開放することができる。その結果、ストラップ(2)の切断時の分離衝撃をより減少させることが可能となる。
【0026】
上記の結合分離方法において、一つずつ加熱するステップは、加熱装置(12)が複数の延伸部(11)のうちの一つを加熱するステップと、その加熱を終了した後、複数の延伸部(11)のうちの加熱をしていない次の一つを加熱するステップとを含むことが好ましい。
本発明では、この場合、一つの延伸部(11)の形状記憶合金の加熱を終了してから、次の加熱に移るので、加熱に要するエネルギーを抑制することができる。なお、形状記憶合金は、一度形状が回復すると、加熱を中止してもその形状を維持するので、加熱を終了しても延伸した状態は保持されるので問題はない。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、飛翔体と構造物との結合を分離するとき、分離衝撃を低減することが可能となる。また、当該結合を分離するとき、衛星側構造の歪エネルギーが瞬間的に開放されることによる衝撃を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略平面図である。
【図2】図2は、一般的な結合分離システムの構成を示す概略断面図である。
【図3】図3は、PAF構造及び衛星側構造における歪応力が開放された時の様子を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの構成を示す概略平面図である。
【図5】図5は、図4のA−A断面の構成を示す概略断面図である。
【図6】図6は、図4における結合部付近の構成を示す概略平面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの動作を示すフロー図である。
【図8A】図8Aは、図7のステップS01における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図8B】図8Bは、図7のステップS02における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図8C】図8Cは、図7のステップS03における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図8D】図8Dは、図7のステップS04における図4のA−A断面を示す概略断面図である。
【図9】図9は、図7の各段階におけるクランプバンドの張力の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の結合分離装置、結合分離システム、及び結合分離方法の実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。ここでは、結合分離システムが搭載される飛翔体としてロケット、飛翔体に結合され分離される構造物として衛星、の場合を例にして説明する。
【0030】
本発明の実施の形態に係る結合分離装置及び結合分離システムの構成について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの構成を示す概略平面図である。図5は、図4のA−A断面の構成を示す概略断面図である。結合分離システムは、結合分離装置1と、PAF(Payload Attached Fitting)構造20と、ヒータ(加熱装置)12とを備えている。
【0031】
PAF構造20(載置部材)は、ロケットに搭載され、衛星を載置する円筒形状の台座である。結合分離装置1は、PAF構造20と、その上に載置された衛星側構造30とを結合又は分離する。ただし、衛星側構造30は、円筒形状を有する衛星側の部材である。PAF構造20及び衛星側構造30の直径は概ね等しい。そして両者が結合される場合、結合分離装置1に締め付けられて、本来の直径よりも小さい直径に押し込められる。それにより、PAF構造20及び衛星側構造30には歪応力が発生している。ヒータ12は、後述される結合分離装置1の形状記憶合金要素11をその形状回復温度(マルテンサイト変態温度)以上の温度に加熱する。結合分離装置1は、クランプバンド6と、結合部4とを備えている。
【0032】
クランプバンド6は、PAF構造20と衛星側構造30との結合部分の成す円周形状に沿って設けられている。クランプバンド6を締め付けることにより、衛星側構造30とPAF構造20は内側に変形する。すなわち、衛星側構造30とPAF構造20は、係合時に、変形に伴う歪応力(歪エネルギー)を内包することになる。クランプバンド6は、複数のブロック3と、ストラップ2とを備えている。
【0033】
複数のブロック3は、PAF構造20と衛星側構造30との結合部分の成す円周形状に沿って並んで設けられている。ブロック3は、PAF構造20の端部20aと衛星側構造30の端部30aとを併せて係合する凹部3aを有している。凹部3aは略V字型の溝を形成している。PAF構造20と衛星側構造30とは、端部20aと端部30aとが合わさって山型の凸部を形成し、当該凸部が凹部3aに係合することで、互いに結合している。ブロック3は、例えば、鋼(スチール)で形成されている。
【0034】
ストラップ2は、両端部2aを後述される結合部4により結合された環形状を有する。複数のブロック3における凹部3aと反対の面に結合している。複数のブロック3とストラップ2とは一体である。ストラップ2を締め付けることで、複数のブロック3を、凹部3aと反対の面から結合部分に向かって押し込んでいる。
【0035】
PAF構造20及び衛星構造体30の中心方向に向かうこの締め付け力で、複数のブロック3を当該中心方向に押し込んでいる。その押し込む力で、凹部3aにおいて、当該中心から外側方向に向かうPAF構造20及び衛星側構造30の力を抑え込んでいる。その押え込む力とPAF構造20及び衛星側構造130の歪応力との釣り合いにより、PAF構造20及び衛星側構造30とクランプバンド6との係合を維持することができる。クランプバンド6には、外側のロケット本体(図示されず)に取り付けられたバネ5により外向きの力が加えられている。
【0036】
ここで、ストラップ2は、鋼(スチール)で形成された環の全周中、少なくとも1箇所に形状記憶合金で形成された形状記憶合金要素(延伸部)11を備えている。図4の場合、形状記憶合金要素11は4箇所である。形状記憶合金要素11には、図4で示す衛星側構造30を取り付けた状態での長さD1よりも長い状態を記憶させる。そして、記憶後に圧縮して長さD1にして、ストラップ2の所定の箇所に溶接又はボルトで取り付ける。
【0037】
ヒータ12は、形状記憶合金要素11ごとに設けられ、その形状記憶合金要素11を加熱する。PAF構造20に固定されている。ヒータ12は、加熱効率の面から、形状記憶合金要素11に接していることが好ましい。また、ヒータ12は、形状記憶合金要素11に含まれていても良い。例えば形状記憶合金要素11に電熱線を巻きつけたり貼り付けたりするなどの方法のように、形状記憶合金要素11と一体に形成されていても良い。
【0038】
制御装置13は、ヒータ12の加熱を制御する。例えば、制御装置13がタイマーの場合、制御装置13は、予め設定された時刻に予め設定された時間だけ、加熱用制御信号をヒータ12に出力する。ヒータ12は、加熱用制御信号を受信している期間、所定の温度に形状記憶合金要素11を加熱する。又は、制御装置13が、マイクロコンピュータの場合、プログラム制御により、ヒータ12の加熱温度や加熱タイミング、加熱時間などを制御しても良い。更に、その制御に際して、形状記憶合金要素11に取り付けられたセンサ15(例示:歪センサ、温度センサ)の情報を用いるようにしても良い。例えば、歪センサを用いて、形状記憶合金要素11が所定の長さに伸びたとき加熱を終了したり、温度センサを用いて、形状記憶合金要素11を所望の温度になるように加熱したりする制御である。制御装置13として、ロケット内に搭載された他の制御装置を兼用しても良い。
【0039】
結合部4は、ストラップ2が複数のブロック3と共に、PAF構造20及び衛星構造体30を締め付けた状態でストラップ2の両端部2aを結合して、クランプバンド6による締め付けを維持する。又は、両端部2aの結合を分離して、クランプバンド6による締め付けを開放する。
【0040】
形状記憶合金要素11について更に説明する。
形状記憶合金を用いるのは、加熱により延伸する長さの割合が、他の材料と比較して極めて大きいからである。すなわち、小さな温度変化で大きく延伸するからである(例えば、数%程度延伸する)。その結果、温度変化を起こすための機器やエネルギーを少なく抑えることができること、材料そのものの使用量が少なくて済むこと、などの効果がある。加えて、記憶された形状(延伸した形状)に一旦戻ると温度を下げても縮まないので、加熱のエネルギーを更に少なく抑えられることも飛翔体のようなエネルギーの限られる物体に搭載する際には有利である。なお、これらの特性を有している材料であれば、形状記憶合金要素11の代わりその材料を用いてもよい。
【0041】
形状記憶合金要素11の形状回復温度(マルテンサイト変態温度)は、ロケット内のPAF構造20付近の最高温度よりも高くする必要がある。それよりも低くすると形状記憶合金要素11の長さ制御が困難になるからである。例えば、ロケット内のPAF構造20付近の最高温度が80度の場合、形状記憶合金要素11の形状回復温度は80度を超える温度とする。形状回復温度は、形状記憶合金の材料の種類や合金組成により、所定の範囲で自由に設定することができる。
【0042】
また、形状記憶合金要素11は、ストラップ2の一部としてブロック3と共にPAF構造20及び衛星構造体30を締め付け、その締め付け状態を維持する必要がある。そのため、PAF構造20及び衛星構造体30を締め付け、その状態を維持するときに発生する荷重に耐え得る強度を有している必要がある。ストラップ2を締め付ける荷重の大きさは、図4の例では、20〜30kN程度である。
【0043】
これらの特性を有する形状記憶合金要素11の好ましい材料としては、Ti−Ni合金系の材料が例示される。このTi−Ni合金系の材料には、Ti−Ni合金に他元素をドーピングして温度特性や強度特性を改善させたものも含まれる。なお、上記ロケット内のPAF構造20付近の最高温度以上の変態温度を有し、締め付ける荷重に耐え得る強度を有する形状記憶合金であれば上記例に限定されない。
【0044】
形状記憶合金要素11の形状は、ストラップ2の形状に対応して直方体形状である。図4の状態では、例えば、PAF構造20の直径φ0が1000mmの場合、D1×D2×D3=100mm×35mm×10mm程度である。ただし、ストラップ2と同様に、PAF構造20の円周に沿って湾曲している。なお、ストラップ2の他の部分と連結(結合)可能であり、所定の強度を発揮できるのであれば、上記形状に限定されるものではない。例えば、円柱形状であっても良く、その場合には形状記憶合金要素以外の部分でブロック3を保持するようにしても良い。
【0045】
形状記憶合金要素11に長さD1よりも長い状態を記憶させ、圧縮して長さD1として挿入した場合、形状記憶合金要素11をヒータ12により形状回復温度よりも加熱することで、その長さをD1よりも長くすることができる。それにより、ストラップ2の両端部2aを結合した状態で、その全周長さを伸ばすことができる。その結果、ストラップ2の両端部2aを結合した状態で、クランプバンド6(ストラップ2)の締め付け力を弱めることができる。形状記憶合金要素11は、複数個所に設けることが好ましい。その場合、1箇所だけの場合と比較して、締め付け力を段階的に徐々に開放していくことができる。
【0046】
図6は、図4における結合部付近の構成を示す概略平面図である。結合部4は、ピン4aと駆動部4bとを備えている。ストラップ2の一方の端部2a1に設けられた開口部2b1と、他方の端部2a2に設けられた開口部2b2とを重ねて、重なった開口部2b1、2b2にピン4aを駆動部4bで挿入することにより、結合部4はストラップ2の両端部2aを結合する。また、重なった開口部2b1、2b2からピン4aを駆動部4bで引き抜くことにより、結合部4はストラップ2の両端部2aの結合を分離する。結合部4は形状記憶合金を用いたピンプラーに例示される。この場合、分離には火工品を用いる必要が無いため、火工品による衝撃の発生を無くすことができる。
【0047】
なお、衛星側構造30の分離のとき、クランプバンド6の締め付け力の開放に伴う衛星側構造30の振動の低減を特に重視している場合、結合部4として従来の火工品を用いても良い。後述されるように、本発明の形状記憶合金要素11を有するストラップ2を用いた締め付け力の開放だけでも、その振動を大幅に低減できるからである。
【0048】
次に、本発明の実施の形態に係る結合分離装置及び結合分離システムの動作(結合分離方法)について説明する。図7は、本発明の実施の形態に係る結合分離システムの動作を示すフロー図である。図8A〜図8Dは、図7の各段階における図4のA−A断面を示す概略断面図である。図9は、図7の各段階におけるクランプバンドの張力の一例を示すグラフである。ここでは、図4に示すような、4個の形状記憶合金要素11を備えるストラップ2を含むクランプバンド6の場合について説明する。
【0049】
事前に、衛星側構造30は、結合分離システムに取り付けられている。すなわち、衛星側構造30は、クランプバンド6によりPAF構造20に結合している(図4及び図5)。ストラップ2の各形状記憶合金要素11には、長さD1よりも長い長さが予め記憶されている。結合部4は、ピン4aによりストラップ2をその両端部2aで結合している(図6)。この取り付け方法は、PAF構造20上に衛星側構造30を載置した後、ストラップ2と一体であるブロック3をその周囲に嵌め込み、ストラップ2を締め上げ、その両端部2a1、2a2の開口部2b1、2b2が重なった段階で、結合部4のピン4aをそれら開口部2b1、2b2に挿入することで行う。このとき、クランプバンド6(ストラップ2)はその自然長と比較して長く引き伸ばされており、その張力は、例えば、約30kNである(図9の時刻t0の張力)。
【0050】
このようにしてPAF構造20に取り付けられている衛星側構造30を分離するには、以下の分離シーケンスを用いる。
【0051】
まず、制御装置13は、衛星側構造30を分離する時刻に達した段階で、第1番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12をONにする(ステップS01)。ただし、どの形状記憶合金要素11を第1番目とするかは任意である。第1番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12がONとなることで、その形状記憶合金要素11が形状回復温度以上に加熱される。その結果、その形状記憶合金要素11におけるストラップ2の周方向の長さが、取り付け時のD1から、事前に記憶された長さに延伸する。
【0052】
その結果、図9の時刻t1に示すように、張力が若干減少する(約23kN)。このとき、ストラップ2の長さは、第1番目の形状記憶合金要素11が延伸した分だけ伸びる。すなわち、ストラップ2の直径は若干広がる。そのため、クランプバンド6の締め付け力が弱まる。その結果、図8Aに示すように、ブロック3が少し外側に移動できるので、衛星側構造30及びPAF構造20は位置P0から位置P1へ少し外側に広がることができる。それにより、衛星側構造30内の歪応力を開放することができる。
【0053】
ヒータ12をいつOFFにするかは任意である。形状記憶合金要素11は、形状回復温度以上に一旦加熱されて記憶された長さに延伸すると、加熱を中止しても縮むことはないからである。ただし、ロケットのような電源容量が限られている環境では、不必要な加熱(エネルギーの消費)は控える方が好ましい。したがって、形状記憶合金要素11が所定の長さ伸びたと判断される段階で、できるだけ早期にヒータをOFFすることが好ましい。
【0054】
そのような制御としては、例えば、制御装置13はONから所定時間経過したときにヒータをOFFすることが考えられる。この場合、事前に、形状記憶合金要素11が所定の長さ延伸したと判断できる時間を実験的に確認し、その時間を所定時間として用いる。あるいは、センサ15として温度センサを有している場合、温度が形状回復温度以上になってから所定の時間経過したときにヒータをOFFしても良い。この場合、形状記憶合金要素11はほぼ確実に延伸したと考えることができる。更に、センサ15として歪センサを有している場合、歪が所定の値以上になった(すなわち長さが所定の長さ以上に延伸した)ときに、ヒータ12をOFFしても良い。この場合、形状記憶合金要素11は確実に延伸したと考えることができる。以下に用いられる第2番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12〜第4番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12をいつOFFするかについても同様である。したがって、その記載を省略する。
【0055】
次に、制御装置13は、第1番目の形状記憶合金要素11が所定の長さ延伸した段階で、第2番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12をONにする(ステップS02)。ただし、どの位置にある形状記憶合金要素11を第2番目とするかは任意である。例えば、対向する位置でも良いし、時計回りや反時計回りの位置でもよい。第2番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12がONとなることで、その形状記憶合金要素11が形状回復温度以上に加熱される。その結果、その形状記憶合金要素11におけるストラップ2の周方向の長さが、取り付け時のD1から、事前に記憶された長さに延伸する。
【0056】
その結果、図9の時刻t2に示すように、張力が更に若干減少する(約16kN)。このとき、ストラップ2の長さは、第2番目の形状記憶合金要素11が延伸した分だけ更に伸びる。すなわち、ストラップ2の直径は更に若干広がる。そのため、クランプバンド6の締め付け力が更に弱まる。その結果、図8Bに示すように、ブロック3が少し外側に移動できるので、衛星側構造30及びPAF構造20は位置P1から位置P2へ更に少し外側に広がることができる。それにより、衛星側構造30内の歪応力を更に開放することができる。
【0057】
次に、制御装置13は、第2番目の形状記憶合金要素11が所定の長さ延伸した段階で、第3番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12をONにする(ステップS03)。第3番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12がONとなることで、その形状記憶合金要素11が形状回復温度以上に加熱される。その結果、その形状記憶合金要素11におけるストラップ2の周方向の長さが、取り付け時のD1から、事前に記憶された長さに延伸する。
【0058】
その結果、図9の時刻t3に示すように、張力が更に若干減少する(約9kN)。このとき、ストラップ2の長さは、第3番目の形状記憶合金要素11が延伸した分だけ更に伸びる。すなわち、ストラップ2の直径は更に若干広がる。そのため、クランプバンド6の締め付け力が更に弱まる。その結果、図8Cに示すように、ブロック3が少し外側に移動できるので、衛星側構造30及びPAF構造20は位置P2から位置P3へ更に少し外側に広がることができる。それにより、衛星側構造30内の歪応力を更に開放することができる。
【0059】
次に、制御装置13は、第3番目の形状記憶合金要素11が所定の長さ延伸した段階で、第4番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12をONにする(ステップS04)。第4番目の形状記憶合金要素11用のヒータ12がONとなることで、その形状記憶合金要素11が形状回復温度以上に加熱される。その結果、その形状記憶合金要素11におけるストラップ2の周方向の長さが、取り付け時のD1から、事前に記憶された長さに延伸する。
【0060】
その結果、図9の時刻t4に示すように、張力が更に若干減少する(約1kN)。このとき、ストラップ2の長さは、第4番目の形状記憶合金要素11が延伸した分だけ更に伸びる。すなわち、ストラップ2の直径は更に若干広がる。そのため、クランプバンド6の締め付け力が更に弱まる。その結果、図8Dに示すように、ブロック3が少し外側に移動できるので、衛星側構造30及びPAF構造20は位置P3から位置P4へ更に少し外側に広がることができる。それにより、衛星側構造30内の歪応力を更に開放することができる。例えば、時刻t0〜時刻t4までは数十秒から数百秒である。
【0061】
この段階で、ストラップ2の張力は例えば10分の1以下に低減される。すなわち、衛星側構造30の歪応力(歪エネルギー)も同様に10分の1以下に低減される。次に、制御装置13は、結合部4をONにする。結合部4は、ストラップ2の両端部2aの開口部2bからピン4aを引き抜く(ステップS05)。それにより、ストラップ2の両端部2aでの結合が開放され、図9の時刻t5に示すように張力が無くなり(約0kN)、クランプバンド6はバネ5により外側に引っ張られる。その結果、ストラップ2及びブロック3は、衛星側構造30とPAF構造20との結合部分から離れる。それにより、衛星側構造30とPAF構造20との結合が開放される。その後、制御装置13は、結合部4をOFFにする。
【0062】
以上のような結合分離システムの動作により、衛星が分離される。ただし、上記分離プロセスは例示であり、締め付け荷重(張力)の大きさ及びその減少量や、締め付けを緩める回数(形状記憶合金要素の数)や、締め付けを緩める(又は衛星分離に係る)時間は、搭載される衛星や搭載するロケットなどに応じて適宜設計することが可能である。
【0063】
なお、形状記憶合金要素11を延伸させる順番は任意に選択できる。例えば、複数のボルトで固定する円形フランジのネジ止めのように襷掛け的に選択しても良いし、単純にある位置から時計回りや反時計回りに選択して行くようにしても良い。また、張力の減少の割合は、形状記憶合金要素11の数や長さによって任意に調節が可能である。例えば、形状記憶合金要素11の一本の長さを長くすれば、一度に減少させる張力の割合を大きくすることができる。また、形状記憶合金要素11の数を多くすれば、細かく段階を区切って、連続的に減少させることができる。
【0064】
本実施の形態では、クランプバンド6により結合部分に付与されている締め付け力を、段階的に開放する機構が設けられている。すなわち、ストラップ2の全周中、少なくとも1箇所(好ましくは複数個所)に形状記憶合金要素11を適用し、1箇所ずつ形状記憶合金要素を加熱してその形状を周方向に長くする。複数個所に形状記憶合金要素11を適用した場合には、異なったタイミングで加熱して周方向に延伸させる。それにより、ストラップ2(クランプバンド6)を段階的に延伸することができるので、段階的に締め付け力を開放することができる。形状記憶合金要素11の一個延伸時のクランプバンド張力の減少量は、一気に開放する場合と比較して、個数分の1に減少する(図9)。それに伴い、衝撃レベルが比例的に減少する。その結果、段階的に締め付け力を開放することにより、締め付け力開放による衝撃を大幅に低減することが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態では、結合部4として、火工品を用いず、ピン4aの出し入れで結合及び解除を行う火薬を使用していない部材を用いることができる。それにより、火工品による衝撃を緩和することも可能である。火工品を使用しない場合には、運用制約が無くなる。加えて、再利用が可能なため、実際の使用の前に、現物で試験をすることが可能となる。
【0066】
更に、本実施の形態では、衛星側構造30やPAF構造20の構造、すなわち衛星とロケットとのインターフェースをこれまでと同じにすることができる。そのため、衛星から見て他のロケットと互換性を維持することができる。
【0067】
本発明は上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0068】
1、101 結合分離装置
2、102 ストラップ
2a、2a1、2a2、102a 端部
2b、2b1、2b2 開口部
3、103 ブロック
3a 凹部
4、104 結合部
4a ピン
4b 駆動部
5、105 バネ
6、106 クランプバンド
11 形状記憶合金要素
12 ヒータ
13 制御装置
15 センサ
20、120 PAF構造
20a 端部
30、130 衛星側構造
30a 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体の載置部材と前記載置部材に載置された構造物とを係合するブロックと、前記ブロックを外側から保持するストラップとを有するクランプバンドと、
前記ストラップの両端部を結合し又は分離する結合部と
を具備し、
前記ストラップは、形状記憶合金で形成され、加熱により延伸する延伸部を備える
結合分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結合分離装置において、
前記ストラップは、前記延伸部を含む複数の延伸部を備える
結合分離装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結合分離装置において、
前記形状記憶合金は、TiNiを含む
結合分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の結合分離装置において、
前記ストラップの両端部は、それぞれ開口部を有し、
前記結合部は、
ピンと、
前記ピンを前記開口部に出し入れする駆動部と
を備える
前記開口部にピンを入れることで、前記ストラップの両端部を結合し、
前記開口部から前記ピンを出すことで、前記ストラップの前記両端部を分離する
結合分離装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合分離装置において、
前記延伸部を加熱する加熱部を更に具備する
結合分離装置。
【請求項6】
飛翔体に搭載され、構造物を載置する載置部材と、
載置される前記構造物を前記載置部材に結合し又は分離する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の結合分離装置と、
前記結合分離装置の前記延伸部を加熱する加熱装置と
を具備する
結合分離システム。
【請求項7】
請求項6に記載の結合分離システムにおいて、
前記延伸部の温度を検出する第1センサを更に具備し、
前記加熱装置は、前記第1センサの検出結果に基づいて前記加熱を停止する
結合分離システム。
【請求項8】
請求項6に記載の結合分離システムにおいて、
前記延伸部の長さを検出する第2センサを更に具備し、
前記加熱装置は、前記第2センサの検出結果に基づいて前記加熱を停止する
結合分離システム。
【請求項9】
飛翔体に構造物を結合し又は分離する結合分離システムを用いた結合分離方法であって、
前記結合分離システムは、
前記飛翔体に搭載され、前記構造物を載置する載置部材と、
載置される前記構造物を前記載置部材に結合し又は分離する結合分離装置と、
加熱装置と
を具備し、
前記結合分離装置は、
前記飛翔体の載置部材と前記載置部材に載置された前記構造物とを係合するブロックと、
前記ブロックを外側から保持するストラップと、
前記ストラップの両端部を結合し、又は分離する結合部と
を備え、
前記ストラップは、形状記憶合金で形成され、加熱により延伸する延伸部を備え、
前記結合分離方法は、
前記結合部で前記両端部を結合された前記ストラップの前記延伸部を、前記加熱装置で加熱して延伸させるステップと、
前記延伸後に、結合された前記両端部を、前記結合部で分離するステップと
を具備する
結合分離方法。
【請求項10】
請求項9に記載の結合分離方法において、
前記ストラップは、前記延伸部を含む複数の延伸部を備え、
前記加熱して延伸させるステップは、前記加熱装置が前記複数の延伸部を互いに異なるタイミングで一つずつ加熱するステップを備える
結合分離方法。
【請求項11】
請求項10に記載の結合分離方法において、
前記一つずつ加熱するステップは、
前記加熱装置が前記複数の延伸部のうちの一つを加熱するステップと、
その加熱を終了した後、前記複数の延伸部のうちの加熱をしていない次の一つを加熱するステップと
を含む
結合分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−168189(P2011−168189A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34522(P2010−34522)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】