説明

結合剤−潤滑剤の組合せを含有する鉄基粉末組成物及びその粉末組成物の製造

本発明は、鉄又は鉄基粉末が少なくとも約80重量%で;少なくとも一種類の合金用粉末;そしてポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの結合剤/潤滑剤組合せで、前記ポリエチレンワックスが約1000より小さい重量平均分子量及びエチレンビスステアルアミドの融点よりも低い融点を有し、前記組合せの10〜90重量%の量で存在する、結合剤/潤滑剤組合せを約0.05〜約2重量%含む、成形部品を製造するための凝離を起こしにくく、塵を発生しにくい改良冶金用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末冶金工業のための新規な金属粉末組成物に関する。特に本発明は、部品を形成するために用いられる成形(compaction)過程中に潤滑性も与える結合用組成物を含む鉄基(iron-based)粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄基粉末組成物を成形し、焼結することにより製造される金属製品は、工業的に益々広く用いられるようになってきている。これらの金属製品に対して要求される品質条件は向上し続けており、その結果、改良された性質を有する新規な粉末組成物が開発されている。最終的焼結製品の最も重要な性質の一つは、密度及び形状の誤差であり、とりわけ、それらは首尾一貫していなければならない。最終的製品の大きさ変動の問題は、成形される粉末混合物の不均一性によりしばしば生ずる。これらの問題は、大きさ、密度、及び形が異なる粉末成分を含む粉末混合物で特に顕著であり、粉末組成物の輸送、貯蔵、及び取扱い中に、なぜ凝離が起きるのかと言う理由でもある。この凝離は、組成物が不均一に構成されていることを意味し、それが今度は、その粉末組成物から作られた部品の構成組織が異なり、その結果、異なった性質をもつようになることを意味している。さらに別の問題は、微細粒子、特に黒鉛のような低い密度のものは、粉末混合物の取扱い中に塵の発生を起こすということである。
【0003】
添加剤の小さな粒径も、粉末の流動性、即ち、自由流動性粉末として挙動する粉末の能力に問題を生ずる。流動性が悪いと、粉末で型を充填する時間が増大する形で現れ、そのことは生産性が低くなり、成形部品の密度が変動する危険を増大することを意味し、焼結後に許容できない変形をもたらすことがある。
【0004】
粉末組成物に種々の結合剤及び潤滑剤を添加することにより、上記した問題を解決しようとする試みが行われてきた。結合剤の目的は、合金用成分のような小さな粒径の添加剤粒子を基礎金属粒子の表面に堅く効果的に結合し、従って、凝離及び塵発生の問題を小さくする。潤滑剤の目的は、粉末組成物を成形する間の内部及び外部摩擦を減少し、取り出し力(ejection force)、即ち、最終的に成形された生成物を型から取り出すのに必要な力も減少させることである。
【0005】
種々の有機結合剤が、例えば、米国特許第4,483,905号〔エングストローム(Engstrom)〕に記載されており、それは、「粘着性又は脂肪特性」を有するものとして広く記載されている結合剤を使用することを教示している。米国特許第4,676,831号明細書(エングストローム)には、結合剤として或るトール油を用いることが記載されている。更に米国特許第4,834,800号明細書〔セメル(Semel)〕には、水に不溶性であるか、又は実質的に不溶性の或るフィルム形成性重合体樹脂を結合剤として使用することが記載されている。
【0006】
特許文献に記載された他の種類の結合剤は、米国特許第5,298,055号明細書(セメル)に記載されている少なくとも約7000の分子量を有するポリアルキレンオキシドである。結合剤として二塩基有機酸と固体ポリエーテル、液体ポリエーテル、及びアクリル樹脂のような一種類以上の付加的成分との組合せが、米国特許第5,290,336号明細書に記載されている。高温成形潤滑剤と共に用いることができる結合剤が、米国特許第5,368,630号明細書〔ラック(Luk)〕に記載されている。
【0007】
更に、米国特許第5,480,469号明細書〔ストールストレーム(Storstroem)〕は、粉末冶金工業で結合剤を使用することについての簡単な概説を与えている。この特許は、結合剤により鉄基粉末に合金用粉末を接着させた粉末組成物のみならず、型内での粉末組成物の適切な圧縮性を達成し、型からその部品を取り出すのに必要な力を減少させるために潤滑剤を存在させることが重要であることを認めている。
【0008】
特に、米国特許第5,480,469号明細書は、ジアミドワックス結合剤を用いることにより、鉄又は鉄基粉末粒子に鉄基粉末冶金用混合物中の添加剤を結合させる方法を教示している。鉄又は鉄基粒子と添加剤粒子との間の効果的な結合を達成するため、結合剤を含む粉末冶金用混合物を混合し、約90〜160℃へ加熱し、その間に結合剤の混合及び溶融を行い、続いて混合物を、結合剤が固化するまで、混合しながら冷却する。この方法により、流動性及び見掛けの密度は実質的に改良され、塵発生の問題を軽減するか、又は無くすことができる。
【0009】
米国特許第5,480,469号明細書では特に論じられていない粉末混合物の性質は、潤滑性である。この性質は、大きな密度及び/又は複雑な形をした部品が必要とされる場合、特に重要になる。そのような成分を製造することに関連して、使用される粉末冶金用混合物の潤滑性が良好であることが必須であり、そのことは、今度は、型から部品を取り出すために必要なエネルギー、即ち、取り出しエネルギー(ejection energy)が、低くなるべきであることを意味し、そのことは、取り出された部品の表面仕上げ、即ち、擦り傷又は他の欠陥を持たない表面仕上げのためには不可欠な条件である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
我々は、凝離性が低く、塵の発生が少なく、良好な流動性、及び大きな見掛け密度により区別され、良好な潤滑性によっても区別され、即ち、粉末を高密度製品へ成形し、焼結するのに全て重要になる性質によって区別される新規な鉄又は鉄基組成物を今回開発した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
簡単に述べると、本発明による鉄又は鉄基組成物は、少なくとも約80重量%の鉄又は鉄基粉末;20重量%までの量の少なくとも一種類の合金用粉末;及び約0.05〜約2重量%の、ポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミド(ethylene bisstearamide)との組合せ;を含む。ポリエチレンワックスは、約1000より低い重量平均分子量及びエチレンビスステアルアミドの融点よりも低い融点を有するのがよい。更に、ポリエチレンワックスの量は、ポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの結合剤/潤滑剤組合せの全重量の10〜90重量%の範囲にあるのがよい。成形のために用いられる粉末組成物では、ポリエチレンワックスは、鉄又は鉄基粒子上の層又は被覆として存在し、合金用元素状粒子とエチレンビスステアルアミド粒子を鉄又は鉄基粒子へ結合する。組成物は、脂肪酸及び流動剤も含むのが好ましい。本発明は、成形すべき粉末組成物を製造する方法にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の詳細な記述
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられている表現「鉄又は鉄基粉末」とは、噴霧、好ましくは水噴霧により製造された粉末を包含する。別法として、粉末はスポンジ状鉄に基づいていてもよい。それら粉末は、本質的に純粋な鉄粉末、好ましくは大きな圧縮性を有するそのような粉末にすることができる。一般に、そのような粉末は、0.04重量%より低いような、低い炭素含有量を有する。粉末の別の例は、強度、硬化性、電磁気的性質、又は最終製品に望まれる性質を改良する他の物質で予め合金化されているか、又は部分的に合金化された鉄粉末である。それら粉末の例は、例えば、ディスタロイ(Distaloy)AE、アスタロイ(Astaloy)Mo、及びASC 100.29であり、それらは全てスエーデンの


から市販されている。
【0013】
鉄又は鉄基粒子の粒径は、通常約500μmまでの最大重量平均粒径を有し、一層好ましくは、それら粒子は、約25〜150μm、最も好ましくは40〜100μmの範囲の重量平均粒径を有するであろう。
【0014】
合金用元素の例は、銅、モリブデン、クロム、ニッケル、マンガン、燐、黒鉛の形の炭素、及びタングステンであり、それらは別々に又は組合せて用いられる。これらの添加剤は、一般に基礎になる鉄粉末よりも小さな粒径を有し、殆どの添加剤は約20μmより小さな粒径を有する。
【0015】
ポリエチレンワックスの分子量は、粉末の性質に影響を与え、良好な流動性、大きな見掛け密度、及び低い取り出しエネルギーが、本発明に関連して1000より低く、特に800より小さいが、300より大きく、特に400より大きい分子量を有する線状ポリエチレンを意味する低分子量ポリエチレンを用いて得られることが判明している。ポリエチレンワックスの分子量の外に、エチレンビスステアルアミドとポリエチレンワックスとの比率がこれらの性質に影響を与える。エチレンビスステアルアミドは、アクラワックス(Acrawax)(登録商標名)、又はリコワックス(Licowax)(登録商標名)として入手することができる。ポリエチレンワックスは、アライド・シグナル(Allied Signal)及びベーカー・ペトロライト(Baker Petrolite)から入手することができる。
【0016】
本発明に従い、実施例で例示するように、ポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの相対的量が重要である。ポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドの結合剤/潤滑剤組合せでは、10〜90重量%がポリエチレンワックスになるべきであることが判明している。現在最も好ましい態様に従い、ポリエチレンワックスの量は結合剤/潤滑剤組合せの20〜70重量%で存在すべきである。もしポリエチレンワックスを90重量%より多く用いると、殆どの場合潤滑性が不充分になり、もしエチレンビスステアルアミドを90重量%より多く用いると、結合が不十分になるであろう。組成物中の結合剤/潤滑剤組合せの全量は、0.5〜1重量%であるのが好ましい。
【0017】
本発明に従い、凝離を起こしにくく、塵を発生しにくい改良された冶金用組成物は、少なくとも約80重量%の鉄基粉末;少なくとも一種類の合金用粉末;及び約0.05〜約2重量%の、部分的に溶融し、次に固化される結合剤/潤滑剤組合せであって、鉄又は鉄基粉末粒子に前記合金用粉末粒子を接着させるもの;を含む組成物として定義することができる。
【0018】
低分子量ポリエチレンワックスは、例えば、米国特許第6,605,251号明細書〔ビダールソン(Vidarsson)〕で、PM工業のための鉄基金属粉末に関連して言及されており、その場合、ポリエチレンワックスを、鉄又は鉄基粉末の温間又は冷間成形で潤滑剤として用いることができることが記載されている。温間成形で用いた場合、ポリエチレンワックスを含有する混合物を、成形前にポリエチレンワックスの融点より低い温度へ加熱する。米国特許第6,602,315号明細書〔ヘンドリクソン(Hendrickson)〕及び関連する米国特許第6,280,683号明細書(ヘンドリクソン)には、結合された混合物中に低分子量ポリエチレンワックスを使用することが記載されている。その結合効果は、ワックスの融点よりも低い上昇させた温度でそのワックスにより達成される。鉄又は鉄基粉末に関する例示された実施例は、試料のいずれも流動を示さなかったことを示している。更に、米国特許第6,533,836号明細書〔ウエノソノ(Uenosono)〕及び第6,464,751号明細書(ウエノソノ)には、ステアリン酸、オレアミド、ステアルアミド、ステアルアミドとエチレンビス(ステアルアミド)との溶融混合物、及びエチレンビス(ステアルアミド)からなる群から選択されたものを少なくとも一種類含む結合剤と組合せた、低分子量ポリエチレンワックス及びエチレンビスステアルアミドの遊離潤滑剤が記載されている。その結合剤は、オレイン酸、スピンドル油、及びタービン油からなる群から選択された少なくとも一種類のもの及びステアリン酸亜鉛を含んでいてもよい。
【0019】
本発明により、鉄又は鉄基粉末、合金用粉末、及びポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドの外に、出発混合物は、脂肪酸、好ましくは10〜22個のC原子を有する脂肪酸を含むことも好ましい。そのような酸の例は、オレイン酸、ステアリン酸、及びパルミチン酸である。脂肪酸の量は、粉末組成物の全重量に基づいて計算して、通常0.005〜0.15%、好ましくは0.010〜0.08%、最も好ましくは0.015〜0.07%である。0.005%よりも少ない脂肪酸含有量は、脂肪酸の均一な分布を達成するのを困難にする。もしその含有量が0.15%より大きいと、流動性が悪くなるという危険性がかなり高く存在する。
【0020】
更に、米国特許第5,782,954号明細書(ラック)に記載されている種類の流動剤を、結合が完了した後の組成物に含有させるのが好ましい。この流動剤は珪素酸化物であるのが好ましく、最も好ましくは約40nmより小さく、好ましくは約1〜35nmの平均粒径を有する二酸化珪素であり、それは、全組成物の重量に基づき約0.005〜約2重量%、好ましくは0.01〜1重量%、最も好ましくは0.025〜0.5重量%の量で用いられる。金属又は金属酸化物の形態で流動剤として用いることができる他の金属には、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、金、銀、白金、パラジウム、ビスマス、コバルト、マンガン、鉛、錫、バナジウム、イットリウム、ニオブ、タングステン、及びジルコニウムが含まれ、粒径は200nmより小さい。
【0021】
新規な粉末組成物を製造する方法は、
− 鉄又は鉄基粉末、合金用元素状粉末、エチレンビスステアルアミド、粉末ポリエチレンワックス、及び場合により脂肪酸を混合し、その混合物を前記ポリエチレンワックスの融点より高いが、EBSの融点よりは低い温度へ加熱する工程と、
− 得られた混合物を、前記ポリエチレンワックスを固化して、前記合金用元素状粉末粒子を前記鉄含有粒子へ結合するのに充分な時間,前記ポリエチレンワックスの融点より低い温度へ冷却し、凝集粒子を形成する工程と、場合により、
− 200nmより小さく、好ましくは40nmより小さい粒径を有する粉末流動剤を、前記の得られた混合物に、その組成物の0.005〜約2重量%の量で混合する工程と、
を含む。
前記加熱は、70〜150℃の温度で1〜60分の時間行うのが適切である。
【0022】
本発明を、更に次の実施例により例示するが、本発明は、それに限定されるものではない。実施例中、次の成分及び方法が用いられた:
【0023】
ヘガネスAB(スウーデン)からの鉄粉末−AHC 100.29
クロップムール(Kropfmuhl)からの黒鉛uf4,
ベーカー・ペトロライト(USA)からのポリエチレンワックス400、500、655、750、及び1000,
クラーリアント(Clariant)(ドイツ)からリコワックス(Licowax)(商標名)として入手することができるエチレンビスステアルアミド(EBS),
ステアリン酸は、ファシ(Faci)(イタリー)から入手することができる。
エアロジルは、デガッサ(Degussa)AG(ドイツ)から入手することができる。
【0024】
流動性は、ISO 4490に従って測定された。
【0025】
見掛け密度は、ISO 3923に従って測定された。
【0026】
取り出しエネルギーは、実験室用125t油圧一軸プレス機械で評価した。成形体を射出する間の力及び変位を記録する。取り出しエネルギーは、取り出された部品の変位に対して力を積分することにより計算する。取り出しエネルギーは、包接表面積当たりのエネルギーとして表す。
【0027】
塵発生性は、5gの試料を1.7リットル/分の空気流にかけ、その空気流によって運ばれた10μmより小さい粒子を、ダスト・トラック・エアロゾル・モニター(Dust Track Aerosol Monitor)8520型測定装置で数えることにより測定した。塵発生性は、mg/mの単位で表す。部品に結合した黒鉛及び潤滑剤を、アミンコ(Aminco)からのローラー・エアー・アナライザー(Roller Air Analyzer)、又はローラー粒径アナライザー装置により測定した。この装置は空気分類機であり、直径及び密度により材料を分離する。50gの試料を用いた。結合黒鉛の分率を、空気分類前及びその後の黒鉛の含有量を比較することにより計算した。この場合の結合は、結合した黒鉛の%として表す。
【0028】
例1
鉄粉末、0.5重量%の黒鉛、及び0.8重量%の、表1に記載した種々の重量平均分子量を有するポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの結合剤/潤滑剤組合せ、及び0.05重量%のステアリン酸を含む混合物を、前記ポリエチレンワックスの融点より高いが、エチレンビスステアルアミドの融点よりは低い温度に加熱して完全に混合した。次にそれら混合物を冷却して、黒鉛粒子が鉄粒子に結合した結合粉末混合物を得た。冷却中、0.06%の無機粒状流動剤を添加した。流動性、見掛け密度、及び塵発生性のような粉末の性質を測定した。潤滑性を測定するため、55mmの外径、45mmの内径、及び10mmの高さを有するリングを、三つの異なった成形圧力で成形し、成形後、型からその物体を取り出すのに必要なエネルギー、即ち、取り出しエネルギーを測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
例2
鉄粉末、0.5重量%の黒鉛、及び、0.8重量%の、表2に記載されている、異なった性質のポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの結合剤/潤滑剤組合せ、及び0.05重量%のステアリン酸を含む混合物を、前記ポリエチレンワックスの融点より高いが、エチレンビスステアルアミドの融点よりは低い温度に加熱して完全に混合した。次にそれら混合物を冷却して、黒鉛粒子が鉄粒子に結合した結合粉末混合物を得た。冷却中、0.06%の無機粒状流動剤を添加した。流動性、見掛け密度、及び塵発生性のような粉末の性質を測定した。潤滑性を測定するため、55mmの外径、45mmの内径、及び10mmの高さを有するリングを、三つの異なった成形圧力で成形し、成形後、型からその物体を取り出すのに必要なエネルギー、即ち、取り出しエネルギーを測定した。
【0031】
【表2】

【0032】
例3−比較例
鉄粉末、0.5重量%の黒鉛、0.8重量%のエチレンビスステアルアミドを含むが、ポリエチレンワックスを含まない二つの混合物を調製した。0.05重量%のステアリン酸を含む混合物No.11を、前記エチレンビスステアルアミドの融点よりも高い温度に加熱して完全に混合した。次にその混合物を冷却して、黒鉛粒子が鉄粒子に結合した結合粉末混合物を得た。冷却中、0.06%の無機粒状流動剤を添加した。混合物No.12を、加熱することなく完全に混合した。流動性、見掛け密度、及び塵発生性のような粉末の性質を測定した。潤滑性を測定するため、55mmの外径、45mmの内径、及び10mmの高さを有するリングを、三つの異なった成形圧力で成形し、成形後、型からその物体を取り出すのに必要なエネルギー、即ち、取り出しエネルギーを測定した。
【0033】
表4から分かるように、ポリエチレンワックス及びエチレンビスステアルアミドを含む結合剤/潤滑剤組合せを含有する粉末冶金用組成物のための、AD、流動性、結合性、及び潤滑性の最良の組合せが、結合剤/潤滑剤組合せ中、ポリエチレンワックスの平均分子量が500〜750であり、ポリエチレンワックスの含有量が10〜90%であり、エチレンビスステアルアミドの含有量が90〜10%である場合に達成される。
【0034】
次の表4から分かるように、ポリエチレンワックス及びエチレンビスステアルアミドを含む結合剤/潤滑剤組合せを含有する粉末冶金用組成物のための、AD、流動性、結合性、及び潤滑性の最良の組合せが、結合剤/潤滑剤組合せで、ポリエチレンワックスの平均分子量が500〜750であり、ポリエチレンワックスの含有量が20〜80%であり、エチレンビスステアルアミドの含有量が80〜20%である場合に達成される。
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部品を製造するための、凝離を起こしにくく、塵を発生しにくい改良冶金用組成物において、
(a) 少なくとも約80重量%の鉄又は鉄基粉末;
(b) 少なくとも一種類の合金用粉末;及び
(c) ポリエチレンワックスとエチレンビスステアルアミドとの結合剤/潤滑剤組合せが約0.05〜約2重量%であって、前記ポリエチレンワックスが、約1000より小さい重量平均分子量及び前記エチレンビスステアルアミドの融点よりも低い融点を有し、そして前記結合剤/潤滑剤組合せの10〜90重量%の量で存在する、前記結合剤/潤滑剤組合せ;
を含む,上記冶金用組成物。
【請求項2】
鉄又は鉄基粉末の粒子が、合金用元素の粒子及びエチレンビスステアルアミドの粒子を結合するためのポリエチレンワックスの層で被覆されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエチレンワックスが、400〜800の重量平均分子量を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
結合剤/潤滑剤組合せが、20〜70重量%のポリエチレンワックス、及び80〜30重量%のエチレンビスステアルアミドにより構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
結合剤/潤滑剤組合せが、全組成物の0.5〜1.5重量%の量で存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
更に、組成物の重量に基づき、0.005〜0.15重量%、好ましくは0.010〜0.08重量%、最も好ましくは0.015〜0.07重量%の量で脂肪酸を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
脂肪酸がステアリン酸である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に、全組成物の重量に対して、0.01〜1重量%、好ましくは0.025〜0.5重量%の量で流動剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
流動剤が二酸化珪素である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
鉄基粉末に結合した合金用粉末を含有する、凝離を起こしにくく、塵を発生しにくい改良冶金用組成物を製造する方法において、
− 鉄又は鉄基粉末、合金用元素状粉末、エチレンビスステアルアミド、粉末ポリエチレンワックス、及び場合により脂肪酸を混合し、前記ポリエチレンワックスの融点より高いが、エチレンビスステアルアミドの融点よりは低い温度へ加熱する工程と、
− 得られた混合物を、前記ポリエチレンワックスを固化して、前記合金用元素状粉末粒子を前記鉄含有粒子へ結合するのに充分な時間,前記ポリエチレンワックスの融点より低い温度へ冷却し、凝集粒子を形成する工程、及び場合により、
− 200nmより小さく、好ましくは40nmより小さい粒径を有する粉末流動剤を、前記得られた混合物と、組成物の0.005〜約2重量%の量で混合する工程と、
を含む製造方法。
【請求項11】
混合物を、1〜60分間,70〜150℃の温度へ加熱する、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2007−517980(P2007−517980A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546902(P2006−546902)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001905
【国際公開番号】WO2005/061157
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(595054486)ホガナス アクチボラゲット (66)
【Fターム(参考)】