説明

結晶化肝臓X受容体ベータタンパク質

本発明は、生物工学、タンパク質の精製および結晶化、X線回折分析、コンピュータによる三次元分子モデリング、ならびに論理的薬物設計の分野のものである。本発明は、肝臓X受容体およびこの受容体のリガンド、特に結晶化肝臓X受容体β(LXRβ)に関し、また、LXRβを利用したリガンド同定法、ならびにLXRβ調節活性もしくは結合活性を有する治療剤または診断剤を選択、作成、および使用するための、化合物、組成物、および方法に関する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
LXRβのリガンド結合ドメインのうちの少なくとも150個のアミノ酸残基を含む結晶。
【請求項2】
図5に示されるヒトLXRβのLeu−220からGlu−461のアミノ酸配列、または該配列と少なくとも95%の相同性を有し、かつLXRβリガンド結合ドメインをコードするアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
完全なLXRβのリガンド結合ドメインを含む、請求項1または2に記載の結晶。
【請求項4】
LXRβのへリックス12を含む配列を用いて形成された、前記いずれかの請求項に記載の結晶。
【請求項5】
X線結晶構造解析に使用可能である、請求項1から4のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項6】
LXRβまたはその一部分に結合したリガンドを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項7】
前記リガンドは、T0901317、GW3965、または適度な親和性(内部LXRβ結合空孔に対してIC50<1,000nM)で結合する任意の他のリガンドである、請求項6に記載の結晶。
【請求項8】
空間群P2に属し、かつa=59+/−3Å、b=100+/−5Å、c=176+/−3Å、α=β=γ=90°の単位格子寸法を有するLXRβ LBDの結晶。
【請求項9】
空間群P622に属し、かつa=59+/−3Å、b=59+/−3Å、c=294+/−3Å、α=β=90°、γ=120°の単位格子寸法を有するLXRβ LBDの結晶。
【請求項10】
空間群P22に属し、かつa=89+/−3、b=91+/−3、c=131+/−3、α=β=γ=90°の単位格子寸法を有する、コアクチベータのペプチド(TIF2 NR−box1)と複合体を形成したLXRβ LBDの結晶。
【請求項11】
X線結晶構造解析により決定される、3.6Åより良好な分解能を有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の結晶。
【請求項12】
X線結晶構造解析により決定される、2.9Åより良好な分解能を有する、請求項11に記載の結晶。
【請求項13】
薬物スクリーニングアッセイにおいて、請求項1から12のいずれか1項に記載の結晶を使用する方法であって、
(a)コンピュータモデリングを用い、前記結晶について決定された三次元構造を用いて論理的薬物設計を行うことにより、潜在的リガンドを選択すること、
(b)前記潜在的リガンドをLXRβのリガンド結合ドメインと接触(すなわちドッキング)させること、および
(c)前記潜在的リガンドのリガンド結合ドメインに対する結合を検出すること、
を含む方法。
【請求項14】
潜在的薬物は、LXRβのリガンドドメインに対して、標準リガンドがLXRβのリガンド結合ドメインに対して有するよりも高い親和性を有することに基づいて選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)の標準リガンドは、T0901317、GW3965、または24(S),25−エポキシコレステロールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)前記タンパク質−リガンド複合体の原子座標を決定するため、5.0Åより大きい分解能でX線を有効に回折する程度に、N末端が切断されたLXRβと前記潜在的薬物との間に形成されたタンパク質リガンド複合体を含む補足結晶を成長させること、
(e)分子置換解析により前記補足結晶の三次元構造を決定すること、
(f)コンピュータモデリングを用い、前記補足結晶について決定された三次元構造を用いて論理的薬物設計を行うことにより、候補薬物を選択すること、
(g)LXRβを発現する細胞を接触させること、および
(h)前記細胞でのタンパク質合成の程度を検出することにより、前記細胞内でのタンパク質合成の発現を阻害または向上させる薬物を候補薬物として同定すること、
をさらに含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、工程(a)に先行する初期工程をさらに含み、初期工程は、N末端が切断されたLXRβとT0901317、GW3965、または24(S),25−エポキシコレステロールとの間に形成されたタンパク質リガンド複合体を含む結晶の三次元構造を決定することからなり、前記結晶は、前記タンパク質−リガンド複合体の原子座標を決定するために、5.0Åより大きい分解能でX線を有効に回折するものであることを特徴とする方法。
【請求項18】
薬物スクリーニングアッセイにおいて請求項1から12のいずれか1項に記載の結晶を使用する方法であって、
(a)コンピュータモデリングを用い、前記結晶について決定された三次元構造を用いて論理的薬物設計を行うことにより、潜在的リガンドを選択すること、
(b)該潜在的リガンドをLXRβにより調節されるcDNAまたはタンパク質発現アッセイ系に添加すること、および
(c)cDNAまたはタンパク質発現の程度を検出することにより、タンパク質の発現を調節する潜在的リガンドを潜在的薬物として選択すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記タンパク質発現は、in vitroタンパク質発現分析である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
機械可読データをコード化するデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体であって、該データを使用する命令がプログラミングされた機械を用いる場合、請求項1から12のいずれか1項に記載の結晶構造または該結晶構造のホモログを三次元画像表示で描画することができる、機械可読データ記憶媒体。
【請求項21】
天然のLXRβリガンドにより調節される疾患を治療するために潜在的LXRβリガンドを設計する方法であって、
(a)コンピュータ手段を用いて、化学物質と、請求項20に記載の機械可読記憶媒体から同定されるLXRβ受容体の結合部位との間でフィッティング操作を行う工程、および(b)前記フィッティング操作の結果を分析して前記潜在的LXRβリガンドと前記結合部位との間の会合を予測する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
(c)前記受容体の結晶構造に基づき前記潜在的LXRβリガンドを合成する工程、および
(d)該LXRβリガンドがLXRβにより調節される疾患の治療に用いられ得ることを示す、リポタンパク質プロフィールの変化、血清または組織トリグリセリドレベルの変化、血清または組織コレステロールレベルの変化、血清グルコースレベルの変化、アテローム性動脈硬化部の大きさの変化を含むがこれらに限定されない、1種または複数のin vivo効果を測定することにより、LXRβ動物モデル細胞株での前記LXRβリガンド結合応答を分析する工程、
を付加的に提供する方法。
【請求項23】
請求項21に記載の方法であって、
(e)前記受容体の結晶構造に基づき前記潜在的LXRβリガンドを合成する工程、および
(f)以下に限定されないが、アルカリホスファターゼ、緑色蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼなどのLXR応答エレメントに制御されるレポータ遺伝子の活性の変化であって、前記LXRβリガンドがLXRβにより調節される疾患の治療に用いられ得ることを示す変化を含む、1種または複数のin vitro効果を測定することにより、LXRβレポータ細胞株でのLXRβリガンド結合応答を分析する工程、
を付加的に提供する方法。
【請求項24】
前記請求項21から23のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)へリックス−12を立体的に置換する、または
(b)二量体化表面を破壊する
ように、前記潜在的LXRβリガンドを修飾する工程を付加的に含む方法。
【請求項25】
前記潜在的LXRβリガンドは、LXRβアンタゴニストである、請求項21から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記潜在的LXRβリガンドは、アゴニストである、請求項21から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記潜在的LXRβリガンドは、選択的調節物質である、請求項21から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
LXRβと結合するリガンドを設計する方法であって、化合物の形を、請求項1から12のいずれか1項に記載の結晶から得られるLXRβのリガンド結合空孔の形と比較すること、および前記リガンド結合ドメインのどの単数または複数のアミノ酸が前記化合物と相互作用するかを決定すること、を含む方法。
【請求項29】
座標表の、ヒトLXRβのリガンド結合ドメインのアミノ酸残基Ser242、Phe268、Phe271、Thr272、Leu274、Ala275、Ser278、Ile309、Met312、Leu313、Glu315、Thr316、Arg319、Ile327、Phe329、Leu330、Tyr335、Phe340、Leu345、Phe349、Ile350、Ile353、Phe354、His435、Gln438、Val439、Leu442、Leu449、Leu453、Trp457の構造座標により規定される結合ポケットを含む結晶化分子もしくは結晶化分子複合体、または前記分子もしくは分子複合体のホモログであって、前記アミノ酸の主鎖原子に対し、
1.5Å以下の二乗平均平方根偏差を有するホモログ。
【請求項30】
前記LXRβのリガンド結合ドメインのうちの少なくとも150個のアミノ酸残基を含む、結晶化可能な組成物。
【請求項31】
実質的に、図5aの220番目のアミノ酸から461番目のアミノ酸で示されるアミノ酸配列または図5bに示される配列からなる単離されたタンパク質。
【請求項32】
his−タグなどのタグを付加的に含む、請求項31に記載の単離されたタンパク質。
【請求項33】
図5に示されるアミノ酸配列の220番目から461番目、または図5bに示される配列からなるタンパク質をコードする核酸分子を含む、プラスミドなどのベクター。
【請求項34】
請求項33に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項35】
請求項1または2に記載の結晶に用いられるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する単離されたタンパク質。
【請求項36】
(a)座標表の、LXRβのアミノ酸残基Ser242、Phe268、Phe271、Thr272、Leu274、Ala275、Ser278、Ile309、Met312、Leu313、Glu315、Thr316、Arg319、Ile327、Phe329、Leu330、Tyr335、Phe340、Leu345、Phe349、Ile350、Ile353、Phe354、His435、Gln438、Val439、Leu442、Leu449、Leu453、Trp457の構造座標により規定される結合ポケットを含む、分子もしくは分子複合体、または
(b)前記アミノ酸の主鎖原子に対して1.5Å以下の二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む、前記分子もしくは分子複合体のホモログ、
の三次元表示を作成するコンピュータであって、
(i)前記座標表の、LXRβのアミノ酸残基Ser242、Phe268、Phe271、Thr272、Leu274、Ala275、Ser278、Ile309、Met312、Leu313、Glu315、Thr316、Arg319、Ile327、Phe329、Leu330、Tyr335、Phe340、Leu345、Phe349、Ile350、Ile353、Phe354、His435、Gln438、Val439、Leu442、Leu449、Leu453、Trp457の構造を含むコンピュータ可読データをコード化するデータ記憶材料を含む、コンピュータ可読データ記憶媒体、
(ii)前記コンピュータ可読データを処理する命令を記憶する作業メモリ、
(iii)コンピュータ可読データを処理して前記三次元表示にするための、前記作業メモリと、前記コンピュータ可読データ記憶媒体とに連結した中央演算処理装置、および
(iv)前記三次元表示を表示するための、前記中央演算処理装置と連結したディスプレイ、
を含むことを特徴とするコンピュータ。
【請求項37】
請求項36に記載のコンピュータであって、
(a)前記座標表に記載されるLXRβリガンド結合ドメインのアミノ酸残基の全ての構造座標により規定される分子もしくは分子複合体、または
(b)前記アミノ酸の主鎖原子から1.5Å以下の二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む該分子もしくは該分子複合体のホモログ、
の三次元表示を作成し、かつ前記コンピュータ可読データは前記座標表に記載されるLXRβリガンド結合ドメインのアミノ酸残基の全ての座標を含むことを特徴とするコンピュ
ータ。
【請求項38】
LXRβとそれに対するリガンドとの間の複合体の三次元構造を決定する方法であって、
(a)請求項1から12のいずれか1項に定義される複合体の結晶についてX線回折データを得ること、および
(b)前記複合体の三次元構造を定めるために、請求項29に定義される、保存されているタンパク質主鎖原子に関して1.5Å以下の二乗平均平方根偏差を有する原子座標のセットまたはその一部を利用すること、
を含む方法。
【請求項39】
LXRβを含むタンパク質、または該タンパク質とリガンドの複合体のモデル化構造を決定する方法であって、
(a)請求項29に定義される、保存されているタンパク質主鎖原子に関して1.5Å以下の二乗平均平方根偏差を有する座標のセットまたはその一部により定められる三次元構造を提供すること、
(b)相同性モデル化法および工程(a)の構造をテンプレートとして用いて、LXRβを含む前記タンパク質の三次元構造モデルを作り出すこと、および
(c)得られるモデルについて分子力学的エネルギー最小化を行うこと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−527691(P2007−527691A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563524(P2004−563524)
【出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006412
【国際公開番号】WO2004/058819
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(500561610)カロ バイオ アクチェブラーグ (17)
【Fターム(参考)】