説明

結晶性アトルバスタチンカルシウム含有錠剤の製造方法

【課題】炭酸カルシウム等の塩基性化合物、金属塩添加剤や水酸化アンモニウムを用いることなく、アトルバスタチンカルシウムの保存安定性を増大させることのできる医薬組成物、及び、これを用いた錠剤を提供する。
【解決手段】本発明の良好な保存安定性を示す医薬組成物は、少なくとも、活性成分である結晶性アトルバスタチンカルシウム及び有機アミンを含有することを特徴とするものである。有機アミンとしてはメグルミン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEが好ましく、組成物100重量部に対して0.01〜30重量部であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性アトルバスタチンカルシウムを含有することを特徴とする保存安定性に優れた医薬組成物、及び、この医薬組成物を含有する錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチンカルシウムは、HMG−CoA還元酵素阻害作用をもつ医薬成分で、血清総コレステロール、LDL−コレステロールを低下させる作用を示し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症に対して優れた有用性が認められている。
【0003】
しかし、アトルバスタチンカルシウムは、熱、湿気、酸性環境及び光に対し不安定であり、特に酸性環境下で、アトルバスタチンカルシウムはラクトン体に変化するなど不安定な薬物である。又、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの製剤を製造する工程に於いて、結合剤、崩壊剤、賦形剤など他の添加剤との接触により、或いは湿式造粒工程などにより不安定化されるため、より安定性を高めるための手段が必要となってくる。
【0004】
市販の製剤アトルバスタチンカルシウム含有製剤としては錠剤があり、沈降炭酸カルシウムを安定化剤として添加したものが上市されている。又、特許文献1には、安定化金属塩添加剤を含有し、安定性の改善された医薬組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、炭酸カルシウム等の塩基性化合物を多量に用いることは、経口製剤においては特に低胃酸の患者へ投与する場合に、胃での消化機能に障害をきたすおそれがあり、あまり好ましくない。
又、一般にアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩は潮解性及び吸湿性があるため、特に工業生産規模での製剤化の工程に於いて、これらの取り扱いに問題となる場合がある。
【0006】
又、特許文献2には、アルカリ金属、アルカリ土類金属以外に水酸化アンモニウムを添加することで安定化する方法が記載されている。しかし、水酸化アンモニウムは製剤化工程或いは製剤の保存中に製剤から揮発することが考えられ、長期的な安定性を確保することは難しい。更に、工業生産規模での製造において水酸化アンモニウムは、その揮発性と毒性のため、取り扱いが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3254219号公報
【特許文献2】特許第2935220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、炭酸カルシウム等の塩基性化合物、金属塩添加剤や水酸化アンモニウムを用いることなく容易に製造が可能な、良好な安定性を示すアトルバスタチンカルシウム含有の医薬組成物を開発することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、結晶性のアトルバスタチンカルシウムを用い、更に有機アミンを添加剤とすることにより、安定性を増大させることができることを見い出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、以下の構成により上記課題を解決しようとするものである。
【0011】
〔1〕少なくとも、活性成分である結晶性アトルバスタチンカルシウム及び有機アミンを含有することを特徴とし、良好な保存安定性を示す医薬組成物。
【0012】
〔2〕アトルバスタチンカルシウムの含有量が、組成物100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲である〔1〕に記載の医薬組成物。
【0013】
〔3〕有機アミンが、メグルミン及び/又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEである〔1〕又は〔2〕に記載の医薬組成物。
【0014】
〔4〕有機アミンの含有量が、組成物100質量部に対して0.01〜30重量部の範囲である〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の医薬組成物。
【0015】
〔5〕〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の医薬組成物よりなる製剤用粉体。
【0016】
〔6〕〔5〕に記載の製剤用粉体を打錠した錠剤。
【0017】
〔7〕〔6〕に記載の錠剤にフィルムコーティングを施したフィルムコート錠。
【発明の効果】
【0018】
本発明におけるアトルバスタチンカルシウムを有効成分とする医薬組成物は、保存中の含量低下や不純物増加の問題を防ぐことが可能な、良好な安定性を示す優れた製剤である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1、2及び4で使用した特願2009-552583号公報に記載のD2形結晶アトルバスタチンカルシウムの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】実施例3で使用した特願2010-202286号公報に記載のα形結晶アトルバスタチンカルシウムの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3】実施例5で使用した特許第3296564号号公報に記載のI形結晶アトルバスタチンカルシウムの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4】比較例2で使用したアモルファスアトルバスタチンカルシウムの粉末X線回折パターンを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0021】
以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0022】
本発明の医薬組成物の有効成分であるアトルバスタチンカルシウムは、上記のように不安定であり、保存中に類縁物質の増加がみられる。
【0023】
本発明の医薬組成物におけるアトルバスタチンカルシウムは、結晶性のものであり、例えば、I、II、IV形結晶(特許第3296564号公報記載)、III形結晶(特許第3296563号公報記載)、VII形結晶(特許第3965155号公報記載)、V形結晶(特願2001-538875公報記載)、D1、D2形結晶(特願2009-552583公報記載)、X、A、B1、B2、C、D、E形結晶(特願2009-127757公報記載)、α形結晶(特願2010-202286公報記載)のものを挙げることができ、又、その他新規な形態の結晶のものでもよい。
【0024】
アトルバスタチンカルシウムの配合量は、医薬品の活性成分としての有効量を投与できるのであれば、特に限定されないが、組成物100重量部中に0.1〜30重量部であり、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは5〜20重量部である。
【0025】
本発明の医薬組成物における有機アミンとしては、メグルミン、グルコサミン、アルギニン、リシン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS等を挙げることができ、好ましくはメグルミン、アルギニン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEであり、より好ましくは、経口剤の医薬品添加物として一般的に用いられているメグルミン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーEである。又、添加する有機アミンは1種あるいは2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
更に、本発明の医薬組成物における有機アミンの含有量は、活性成分の安定化が良好に得られ、活性成分含有錠の好ましい特性を得ることができる限りにおいて、特に限定されないが、通常組成物100重量部に対して有機アミン0.01〜30重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0027】
本発明の医薬組成物には、一般に使用される各種の成分、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、着色剤、滑沢剤及びコーティング剤などを任意に用いることができる。
【0028】
賦形剤としては、例えば、乳糖水和物、無水乳糖、乳糖G、ショ糖、白糖等の糖類;D-マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、マルトース、キシリトール、ソルビトール、トレハロース等の糖アルコール類;結晶セルロール、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類;コーンスターチ、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等のデンプン類;リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム等を挙げることができ、中でもD-マンニトール、エリスリトール、乳糖水和物、結晶セルロースが好ましい。
【0029】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロース、粉末セルロース、コーンスターチ、バレイショデンプン等を挙げることができ、中でも低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、粉末セルロースが好ましい。
【0030】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(置換度タイプ:1828、2208、2906、2910)、ポリビニルアルコール、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ポビドン、カルメロースナトリウム、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、結晶セルロース、デキストリン、アラビアゴム末等を挙げることができ、中でもヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒプロメロース(置換度タイプ:2910)が好ましい。
【0031】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、青色1号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ等を挙げることができ、中でも黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄が好ましい。
【0032】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を挙げることができ、中でもステアリン酸マグネシウム、タルクが好ましい。
【0033】
コーティング剤としては、例えば、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルメロースナトリウム、クエン酸トリエチル、酸化チタン、酸化マグネシウム、タルク、炭酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート、ポリビニルアルコール、マクロゴール、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース等を挙げることができ、これらを単独で用いても、又2種類以上を組み合わせて用いても良く、中でもヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化チタン、マクロゴールを組み合わせたものが好ましい。
【0034】
又、本発明の医薬組成物を用いて本発明の製剤用粉体、或いは、散剤、細粒剤又は顆粒剤を調製する際に、造粒溶媒を使用することができる。この造粒溶媒としては、特に限定されないが、例えば水や各種有機溶媒等、更に具体的には水;メタノール、エタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;塩化メチレン、或いはそれらの混合液等を挙げることができ、好ましくは、水、エタノール又は水とエタノールの混液である。
【0035】
本発明のアトルバスタチンカルシウム含有錠剤は、活性成分である結晶性アトルバスタチンカルシウム、有機アミン、更には各種任意成分よりなる、上記本発明の医薬組成物を含有するもので、結晶性アトルバスタチンカルシウム、有機アミン、更には各種任意成分を、公知の方法で添加、混合、造粒、乾燥、整粒、後混合してなる上記本発明の製剤用粉体を打錠することにより得ることができる。
【0036】
具体的には、本発明の医薬組成物を、水、アルコール又は水とアルコールの混液にて造粒し、得られた造粒物を乾燥させ、整粒する。次いで得られた整粒物に、必要に応じ賦形剤、崩壊剤、着色剤及び滑沢剤等を添加し混合して、製剤用粉体とし、得られた製剤用粉体を、例えば単発打錠機又はロータリー打錠機を用いて圧縮成形して錠剤とするのである。
【0037】
造粒方法としては、通常の製剤時に用いられる方法でよく、乾式造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動流動層造粒法、遠心転動流動層造粒法、押出し造粒法等を例示することができる。
【0038】
本発明のアトルバスタチンカルシウム含有錠剤の形状は特に制限されないが、丸型、キャブレット型、オブロング型等の形状などであってもよく、又、識別性のためのマーク、文字や分割用の割線を付すこともできる。
【0039】
このようにして得られた本発明のアトルバスタチンカルシウム含有錠剤は、フィルムコーティングを施し、フィルムコート錠として提供することができる。
【0040】
尚、本発明の医薬組成物或いは製剤用粉体は、このまま細粒剤、顆粒剤、散剤として使用してもよく、或いはカプセルに充填するなどしてもよい。
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されるわけではない。
【0042】
実施例1
ポリビニルアルコール0.9g、メグルミン1.8gを水11.1gに溶かし、造粒液1とした。ヒドロキシプロピルセルロース2.7gを水51.3gに溶かし、造粒液2とした。図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウム16.26g、D-マンニトール110.34g及び結晶セルロース18gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、造粒液1及び精製水10gを加えながら造粒した。これを流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)に移し、乾燥した後、乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒した。その後、整粒物を造粒液2にて造粒し、乾燥した。乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒し、この整粒物に結晶セルロース18g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース10.8g及びステアリン酸マグネシウム1.2gを加え、混合して製剤用粉体を製した。この粉体をロータリー打錠機(VEL5:(株)菊水製作所)にて直径5.5mmのR杵で、1錠重量60mgにて打錠した。この錠剤をハイコーター(HC-LABO:フロイント産業(株))にて8%オパドライ(OY-7300)液でコーティングし、フィルムコート錠とした。
【0043】
実施例2
ポリビニルアルコール1g、メグルミン2gを水12.3gに溶かし、造粒液1とした。ヒドロキシプロピルセルロース2.75gを水53gに溶かし、造粒液2とした。図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウム27.1g、D-マンニトール100.9g及び結晶セルロース18.25gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、造粒液1及び精製水8gを加えながら造粒した。これを流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)に移し、乾燥した後、乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒した。その後、整粒物を造粒液2にて造粒し、乾燥した。乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒し、この整粒物に結晶セルロース18.25g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース11g及びステアリン酸マグネシウム1.25gを加え、混合して製剤用粉体を製した。この粉体をロータリー打錠機(VEL5:(株)菊水製作所)にて直径6.0mmのR杵で、1錠重量73mgにて打錠した。この錠剤をハイコーター(HC-LABO:フロイント産業(株))にて8%オパドライ(OY-7300)液でコーティングし、フィルムコート錠とした。
【0044】
実施例3
図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウムの代わりに図2に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウムを用いて、実施例2と同様に製剤用粉体を調製し、打錠、フィルムコーティングを行った。
【0045】
実施例4
Tween80 1.5g及びメグルミン3gを水15gに溶かし、造粒液1とした。ヒドロキシプロピルセルロース6g及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーE 2.5gをエタノール100gに溶かし、造粒液2とした。図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウム27.1g、D-マンニトール180.4g及び結晶セルロース60gを高速攪拌造粒機(VG-01:(株)パウレック製)にて混合し、造粒液1及び精製水20gを加えながら造粒した。これを流動層造粒機(MP-01:(株)パウレック製)に移し、乾燥した後、乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒した。その後整粒物を造粒液2にて造粒し、乾燥した。乾燥物を30号篩(500μm)にて篩過・整粒し、この整粒物に低置換度ヒドロキシプロピルセルロース18g及びステアリン酸マグネシウム1.5gを加え、混合して製剤用粉体を製した。この粉体をロータリー打錠機(VEL5:(株)菊水製作所)にて直径5.5mmのR杵で、1錠重量60mgにて打錠した。この錠剤をハイコーター(HC-LABO:フロイント産業(株))にて8%オパドライ(OY-7300)液でコーティングし、フィルムコート錠とした。
【0046】
実施例5
図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウムの代わりに図3に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウムを用いて、実施例2と同様に製剤用粉体を調製し、打錠、フィルムコーティングを行った。
【0047】
比較例1
メグルミンの代わりにD−マンニトールを用いて、実施例2と同様に製剤用粉体を調製し、打錠、フィルムコーティングを行った。
【0048】
比較例2
図1に記載の粉末X線回折パターンを示す結晶性アトルバスタチンカルシウムの代わりに図4に記載の粉末X線回折パターンを示すアモルファスアトルバスタチンカルシウムを用いて、実施例2と同様に製剤用粉体を調製し、打錠、フィルムコーティングを行った。
【0049】
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたアトルバスタチンカルシウム錠を、無包装状態で40℃75%RH及び60℃に2週間保存した後、高速液体クロマトグラフィーにて錠剤中の総類縁物質量及びラクトン体を測定した。面積百分率で求めた総類縁物質増加量及びラクトン体増加量の結果を表1及び2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1及び2に示されるように、実施例1〜5のアトルバスタチンカルシウム錠は、比較例1〜2のアトルバスタチンカルシウム錠に比べ、40℃75%RH及び60℃保存のいずれの条件に保存しても分解物の増加量が少なく、高温・加湿条件下でも安定性が確保されていることが確認された。
【0053】
即ち、40℃75%RHの保存条件下では、実施例1〜5と比較して、比較例1では総類縁物質増加量及びラクトン体増加量が共に大きく、比較例2ではラクトン体増加量は観測されないものの、総類縁物質増加量が大きい。60℃の保存条件下でも同様の傾向が示されているが、比較例2での総類縁物質増加量は、比較例1と比較しても大きく、このように、双方の保存条件下で双方の増加量が抑えられていない製剤は、安定性が確保されているとはいいがたいのである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の医薬組成物は、通常用いられる医薬品及びその添加物から調製されており、さらに製造上特殊な設備なども必要ではなく、一般的な製造方法により容易に製造が可能であることから、産業上の有用性が極めて高いものである。
【0055】
又、本発明のアトルバスタチンカルシウム錠は、高温、加湿条件下でも安定であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、活性成分である結晶性アトルバスタチンカルシウム及び有機アミンを含有することを特徴とし、良好な保存安定性を示す医薬組成物。
【請求項2】
アトルバスタチンカルシウムの含有量が、組成物100重量部に対して0.1〜30重量部の範囲である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
有機アミンが、メグルミン及び/又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEである請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
有機アミンの含有量が、組成物100重量部に対して0.01〜30重量部の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の医薬組成物よりなる製剤用粉体。
【請求項6】
請求項5に記載の製剤用粉体を打錠した錠剤。
【請求項7】
請求項6に記載の錠剤にフィルムコーティングを施したフィルムコート錠。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103924(P2013−103924A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250653(P2011−250653)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【特許番号】特許第5065519号(P5065519)
【特許公報発行日】平成24年11月7日(2012.11.7)
【出願人】(393016952)小林化工株式会社 (4)
【出願人】(506075827)エルメッド エーザイ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】