説明

結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置

【課題】安価な設備で均一性の優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置を提供する。
【解決手段】溶融された結晶性樹脂をTダイ12から押し出すことで成形された溶融状シートSを開口部52を有する囲い50によって囲繞しつつ金属弾性ロール14、キャスティングロール16,18によって搬送することで冷却固化させる。囲い50により囲繞することで、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。囲い50は開口部52を有するため、Tダイ12の温度制御が容易となり、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。囲い50で溶融状シートSを囲繞するだけの構成なため、不活性ガス等を用いる構成に比べて安価な設備とできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置に関し、特に、溶融された結晶性樹脂から成形された溶融状シートをロールによって搬送することで冷却固化する結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(液晶パネル)の構成部材である位相差フィルムや偏光子保護フィルム等の光学フィルムに対しては、コントラストや視野角の向上のために、高い光学的均質性が求められている。
【0003】
ここで、位相差フィルムは、分子が同じ方向に且つ同じ程度に配向するように、概ね無配向の位相差フィルム用原反フィルムを延伸することで製造される。つまり、配向軸と配向度を制御することにより、所望の位相差が均一に発現した位相差フィルムとなる。従って、延伸前の位相差フィルム用原反フィルムには、フィルムそのものにフィッシュアイやブツあるいはダイラインと呼ばれるスジ等の欠陥がないこと、高透明であること、厚み偏差が少ないこと、及び無配向であることが要求される。
【0004】
位相差フィルム用原反フィルムは、溶融された結晶性樹脂をTダイから押し出すことで成形された溶融状シートをロールによって搬送することで冷却固化させることで製造される場合がある。この方法で位相差フィルム用原反フィルムを製造する場合、透明性に優れるフィルムを得るためにはTダイから押し出された溶融樹脂を急冷する必要があり、そのためにロール温度を下げる必要がある。すると樹脂温度とロール温度の温度差が大きくなるため、Tダイとロールとの間のエアギャップ周辺の環境が不安定化しやすく、フィルムの厚みが乱れる原因となる。
【0005】
そのため、特許文献1には、溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルム状に押出すTダイが取り付けられた押出機と、フィルム状の熱可塑性樹脂を冷却する冷却ロールとを有し、Tダイと冷却ロールとの間のエアギャップ部の周囲を囲う遮蔽部材が設けられているフィルム製造装置が開示されている。特許文献1の装置では、遮蔽部材は、エアギャップ部が外部の空気の流れ(風)による影響を受けない密閉状態となるように設けられる。特許文献1では、遮蔽部材の継ぎ目や、遮蔽部材と装置との間の隙間等にシール部材などを設けて、可能な範囲で遮蔽部材内部に外部から空気等が侵入することを防ぐことが望ましいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−150806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の技術のようにTダイを密閉すると、Tダイの温度制御が利かなくなり、フィルムの厚みの精度をさらに悪化させる恐れがある。ここで、温度調整された不活性ガスを遮蔽部材内に充満させることも考えられるが、設備が大規模となる欠点がある。特に、結晶性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いた場合、積極的に雰囲気温度を上げることは望ましくない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、安価な設備で、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、溶融された結晶性樹脂をTダイから押し出すことで成形された溶融状シートを開口部を有する囲いによって囲繞しつつロールによって搬送することで冷却固化させる冷却固化工程を含む結晶性樹脂フィルム製造方法である。
【0010】
この構成によれば、冷却固化工程において、溶融された結晶性樹脂をTダイから押し出すことで成形された溶融状シートを開口部を有する囲いによって囲繞しつつロールによって搬送することで冷却固化させる。エアギャップ周辺の環境の変化の影響を受けやすい結晶性樹脂からなる溶融状シートであっても、囲いによって囲繞することで、環境の変化の影響を減少させて厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、この構成によれば、囲いは開口部を有するため、冷却固化過程において樹脂温度とロール温度との温度勾配が大きい結晶性樹脂からなる溶融状シートであっても、Tダイの温度制御が容易となり、均一性の優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、この構成によれば、囲いで溶融状シートを囲繞するだけの構成であるため、不活性ガス等を用いる構成に比べて安価な設備とすることができる。なお、本発明の結晶性樹脂フィルムにおいて、均一性に優れる上記光学特性としては、面内位相差R0、厚み方向位相差値Rthや光軸等が挙げられる。
【0011】
この場合、冷却固化工程において、囲いはTダイの方向に開口部を有するものを用いることが好適である。
【0012】
この構成によれば、冷却固化工程において、囲いはTダイの方向に開口した開口部を有するものを用いるため、Tダイの方向に開口した開口部から熱を逃がすことにより、Tダイの温度制御が容易となり、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0013】
また、冷却固化工程において、囲いは、Tダイから押し出された溶融状シートが冷却固化する温度である冷却点となる位置まで溶融状シートを囲繞することが好適である。
【0014】
この構成によれば、冷却固化工程において、囲いは、Tダイから押し出された溶融状シートが冷却固化する温度である冷却点となる位置まで溶融状シートを囲繞する。このため、環境の変化の影響を受け易い冷却点となる位置までを囲いで覆い、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、この構成によれば、環境の変化の影響を受け難い部分は囲いで覆う必要がないため、簡単で安価な設備とすることができる。
【0015】
また、冷却固化工程において、囲いは、ロールの回転に伴ってロールの外周面に沿って発生する随伴流が溶融状シートに当たらないようにする随伴流遮蔽板を有するものを用いることが好適である。
【0016】
この構成によれば、冷却固化工程において、囲いは、ロールの回転に伴ってロールの外周面に沿って発生する随伴流が溶融状シートに当たらないようにする随伴流遮蔽板を有するものを用いる。これにより、ロールの回転に伴う随伴流が溶融状シートに当たることを防ぎ、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0017】
また、冷却固化工程において、囲いは、溶融状シートの側方を覆う側方遮蔽板を有するものを用いることが好適である。溶融状シートの側方とは、押し出された溶融状シートの幅方向の両端である。
【0018】
この構成によれば、冷却固化工程において、囲いは、溶融状シートの側方を覆う側方遮蔽板を有するものを用いる。これにより、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0019】
また、冷却固化工程において、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを2つのロールの間で挟圧することで冷却固化させることが好適である。
【0020】
この構成によれば、冷却固化工程において、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを2つのロールの間で挟圧することで冷却固化させる。2つのロールを用いて冷却固化させることにより、結晶性樹脂フィルムの生産性や、製造される結晶性樹脂フィルムの平滑性を向上させることができる。
【0021】
また、冷却固化工程において、2つのロールの少なくとも1つの外周面の温度を30℃以下とすることが好適である。
【0022】
この構成によれば、冷却固化工程において、2つのロールの少なくとも1つの外周面の温度を30℃以下とする。これにより、結晶が成長する前に溶融状シートの溶融樹脂を冷却固化することができるようになるので、透明性の高い結晶性樹脂フィルムを製造することができる。
【0023】
また、冷却固化工程において、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを1つのロールにより搬送することで冷却固化させることが好適である。
【0024】
この構成によれば、冷却固化工程において、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを1つのロールにより搬送することで冷却固化させる。一つのロールにより冷却固化させることにより、装置の構成を単純なものとでき、コストを低減することができる。なお、この構成において、「前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートを1つの前記ロールにより搬送することで冷却固化させる」とは、あくまでも、Tダイから押し出された直後の溶融状シートが、まず1つのロールにより搬送されるという意味であり、当該ロールによって溶融状シートが搬送された後の下流の工程において、他の複数のロールにより溶融状シートが搬送される態様をも含むものとする。
【0025】
また、この構成においては、1つのロールで冷却固化された後に、冷却固化するためのロールと弾性を有するロールとでフィルムを挟圧することが好適である。これにより、ロール上に異物が蓄積されにくくなり、均一性の高い結晶性樹脂フィルムを得ることが出来る。
【0026】
また、冷却固化工程において、囲いは、Tダイから押し出された直後の溶融状シートの少なくとも片面を覆う内側遮蔽板を有するものを用いることが好適である。内側遮蔽板が溶融状シートの各面を覆うように設けられた囲いを用いることがより好ましい。
【0027】
この構成によれば、囲いは、Tダイから押し出された直後の溶融状シートの少なくとも片面を覆う内側遮蔽板を有するものを用いる。内側遮蔽板により、Tダイから押し出された直後の風の影響を受け易い溶融状シートの片面、好ましくは両面を覆うことにより、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0028】
この場合、冷却固化工程により溶融状シートを冷却固化した後の結晶性樹脂フィルムを延伸する延伸工程をさらに含むことが好適である。
【0029】
この構成によれば、冷却固化工程により溶融状シートを冷却固化した後の結晶性樹脂フィルムをさらに延伸工程により延伸する。これにより、所定の厚みに延伸された位相差フィルム等の結晶性樹脂フィルムを製造することができる。
【0030】
また、本発明は、溶融された結晶性樹脂を押し出すことで溶融状シートを成形するTダイと、Tダイから押し出された溶融状シートを搬送することで冷却固化させるロールと、Tダイから押し出された溶融状シートを囲繞する開口部を有する囲いとを備えた結晶性樹脂フィルム製造装置である。
【0031】
この場合、囲いは前記Tダイの方向に開口した開口部を有することが好適である。
【0032】
また、囲いは、Tダイから押し出された溶融状シートが冷却固化する温度である冷却点となる位置まで溶融状シートを囲繞することが好適である。
【0033】
また、囲いは、ロールの回転に伴ってロールの外周面に沿って発生する随伴流が溶融状シートに当たらないようにする随伴流遮蔽板を有することが好適である。
【0034】
また、囲いは、溶融状シートの側方を覆う側方遮蔽板を有することが好適である。
【0035】
また、ロールは、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを2つのロールの間で挟圧することで冷却固化させることが好適である。
【0036】
また、2つのロールの少なくとも1つの外周面の温度が30℃以下であることが好適である。
【0037】
また、ロールは、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを1つのロールにより搬送することで冷却固化させることが好適である。
【0038】
また、Tダイから押し出された直後の溶融状シートを1つのロールにより搬送する過程で、冷却固化された後に、ロールと弾性を有するロールで結晶性樹脂フィルムを挟圧することが好適である。
【0039】
また、囲いは、Tダイから押し出された直後の溶融状シートの少なくとも片面を覆う内側遮蔽板を有することが好適であり、溶融状シートの両面を覆う内側遮蔽板を有することがより好適である。
【0040】
また、ロールにより冷却固化された後の結晶性樹脂フィルムを延伸する延伸装置をさらに備えることが好適である。
【発明の効果】
【0041】
本発明の結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置によれば、安価な設備で均一性の優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィルム製造システムの概略を示す図である。
【図2】図1の装置のTダイ、金属弾性ロール及び冷却ロール周辺の構成を示す図である。
【図3】図1の装置のロングスパン縦延伸機の構成を示す図である。
【図4】図3のノズルの断面図である。
【図5】テンター法による横延伸で用いるパンチングノズルを示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るフィルム製造システムの概略を示すブロック図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るフィルム製造システムの概略を示すブロック図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るフィルム製造システムの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る結晶性樹脂フィルム製造方法及び結晶性樹脂フィルム製造装置を説明する。
【0044】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る結晶性樹脂フィルム製造装置1aは、押出機10、Tダイ12、金属弾性ロール14、キャスティングロール16,18、囲い50、精密減速機及びモータ60及び厚み測定器100を備えている。本実施形態の結晶性樹脂フィルム製造装置1aは、結晶性樹脂から成形された溶融状シートSをロールによって搬送することで冷却固化して結晶性樹脂製の未延伸のフィルム(位相差フィルム用原反フィルム)Fを製造し、さらに未延伸のフィルムFを延伸して位相差フィルムを製造するためのものである。
【0045】
(結晶性樹脂の冷却固化工程)
まず、結晶性樹脂フィルム製造装置1aについて、Tダイ12、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16,18周辺の構成について説明する。図2に示すように、押出機10は、投入されたポリオレフィン系樹脂を溶融混練しつつ押し出して、溶融混練したポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂(溶融樹脂)をTダイ12へと搬送するものである。
【0046】
Tダイ12は、押出機10と接続されており、押出機10から搬送された溶融樹脂を横方向に広げるためのマニホールド(図示せず)をその内部に有している。また、Tダイ12には、マニホールドと連通すると共にマニホールドによって横方向に広げられた溶融樹脂を吐出する吐出口12aがその下部に設けられている。そのため、Tダイ12の吐出口12aから吐出された溶融樹脂は、シート状に成形されることとなる。Tダイ12における溶融樹脂の吐出口12aから金属弾性ロール14及びキャスティングロール16によって溶融樹脂が挟圧されるまでの間(いわゆる、エアギャップ)の長さHとしては、50mm〜250mm程度であると好ましい。Tダイ12における溶融樹脂の吐出口12aから金属弾性ロール14及びキャスティングロール16によって溶融樹脂が挟圧されるまでの間での溶融樹脂の幅方向の温度均一性の点から、さらに好ましくは、エアギャップの長さHは50mm〜200mmである。
【0047】
Tダイ12の吐出口12a(以下、リップ部とも記載する)には、シャープエッジ加工を施すことが好ましい。エッジの半径としては50μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以下である。
【0048】
リップの間隙においては、特に制限はないが、500μm以上1500μm以下とすることができる。
【0049】
またTダイ12には、リップの開度を調整可能な、ボルトが配設されている。前記ボルトは、熱源により伸縮可能な構造であってもよく、この場合、下流側に設置した厚み測定器100で測定した厚みデータを用いて、自動的にリップ開度を調整することが好ましい。厚みを自動調整する作業の前においては、厚み調整時間の観点から、リップ開度を手動で予め調整することが好ましい。
【0050】
金属弾性ロール14は、高剛性の金属内筒14aと、金属内筒14aの外側に配置された薄肉金属外筒14bと、金属内筒14aの内側に配置された流体軸筒14cと、金属内筒14aと薄肉金属外筒14bとの間の空間及び流体軸筒14c内を満たす液体と、液体の温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。金属内筒14a、薄肉金属外筒14b及び流体軸筒14cは、同軸となるように配設されている。金属内筒14aには、その周方向に沿って複数の貫通孔(図示せず)が設けられている。そのため、液体は、流体軸筒14c、貫通孔、金属内筒14aと薄肉金属外筒14bとの間の空間の順に金属弾性ロール14の内部を循環するようになっている。
【0051】
薄肉金属外筒14bは、ステンレス鋼等によって形成されており、その表面に継ぎ目が存在しておらず、可撓性を有している。薄肉金属外筒14bは、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用できる範囲内で薄肉化が図られている。液体は、例えば水、エチレングリコール、油を用いることができる。図示しない温度調節手段によって液体の温度を調節することにより、間接的に薄肉金属外筒14bの表面温度が調節されることとなる。
【0052】
キャスティングロール16,18は、高剛性の金属外筒と、金属外筒の内側に配置された流体軸筒と、金属外筒と流体軸筒との間の空間及び流体軸筒内を満たす液体と、液体の温度を調節するための温度調節手段(図示せず)とを有する。キャスティングロール16,18においては、金属弾性ロール14と同様、図示しない温度調節手段によって液体Lの温度を調節することにより、間接的に金属外筒16a,18aの表面温度が調節され、金属弾性ロール14と共にTダイ12の吐出口12aから吐出された溶融状シートSを冷却して固化させる。
【0053】
本実施形態では、金属弾性ロール14は10〜150℃程度の温度とされ、キャスティングロール16,18は30℃以下の温度に制御される。金属弾性ロール14の温度としては、特に80℃〜150℃であることが好ましい。図1に戻り、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16,18は、精密減速機及びモータ60により回転数を制御されて回転させられる。流れ方向の厚み偏差の小さい結晶性樹脂製の未延伸のフィルムFを得るために、精密減速機及びモータ60は、遊星ローラ減速機又は遊星歯車減速機を用いることが好ましい。
【0054】
金属弾性ロール14及びキャスティングロール16,18によって溶融状シートSの溶融樹脂が固化すると、結晶性樹脂製の位相差フィルム用原反フィルムとなる。この結晶性樹脂製の位相差フィルム用原反フィルムは、ロングスパン縦延伸機等で延伸処理等が施されることにより、結晶性樹脂製の位相差フィルムとなる。
【0055】
(囲い)
図1に示すように、本実施形態では、Tダイ12から押し出された溶融状シートSは、Tダイ12の方向に開口した開口部を有する囲い50によって囲繞されている。囲い50は、側方遮蔽板51、開口部52、外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bを有している。
【0056】
図中破線で示す側方遮蔽板51は、Tダイ12から押し出された溶融状シートSの側方と、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の側方(回転軸の両端部の側)を覆うようにされている。側方遮蔽板51の上部は、開口部52となっており開放されている。側方遮蔽板51の下部は、概ね結晶性樹脂が冷却固化する温度である冷却点Tの位置まで伸びている。側方遮蔽板51の下端と金属弾性ロール14及びキャスティングロール16との間には、不図示の隙間が設けられており、囲い50内部の熱を逃がすことが可能とされている。
【0057】
開口部52は、囲い50のTダイの吐出口12aの周りに設けられた開口である。開口部52は、囲い50内部の熱が上方に逃げることが可能なようにされている。外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bは、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の回転に伴って金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の外周面に沿って発生する随伴流Wが溶融状シートSに当たらないように遮蔽するためのものである。つまり、外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bは特許請求の範囲に記載の随伴流遮蔽板として機能する。外側前方遮蔽板53aは、その一端が金属弾性ロール14の回転軸と略平行になるように、金属弾性ロール14に近接して設置されている。外側後方遮蔽板53bは、その一端がキャスティングロール16の回転軸と略平行になるように、キャスティングロール16に近接して設置されている。
【0058】
囲い50の材質は、特に限定されず、例えば、ステンレス板、銅板、アルミ板などの金属板、プラスチック板などを用いることができる。また、囲い50の側方遮蔽板51、外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bは、例えば、凹凸の無い平板状でも良く、波型板のような波状の凹凸などがある波板状でもよい。
【0059】
(縦延伸工程)
ロングスパン縦延伸機101は、ロングスパン延伸法により、未延伸のフィルムFを所望の厚みに延伸して位相差フィルムを製造するためのものである。図3に示すように、ロングスパン縦延伸機101は、上流側の入口側ニップロール30A、30Bと、下流側の出口側ニップロール32A,32Bと、これらのニップロール間に配置された、複数のノズル20を有するオーブン6とを主として備える。
【0060】
未延伸のフィルムFは、入口側ニップロール30A,30Bに挟まれた後、好ましくはロール31を介して、オーブン6の入口6aよりオーブン6内を例えば水平搬送される。その後、縦延伸後のフィルムFは、オーブン6の出口6bから排出され、好ましくはロール33を介して、出口側ニップロール32A,32Bに挟まれた後、後工程に送られる。
【0061】
オーブン6は、上流側から、それぞれ独立に温度制御が可能な予熱ゾーン24、延伸ゾーン26、熱固定ゾーン28との三つに主として区画されている。そして、未延伸のフィルムFが、主としてフィルムFの予熱を行う予熱ゾーン24、主としてフィルムFの縦延伸が行われる延伸ゾーン26、及び縦延伸後のフィルムFを所定温度に所定時間維持して位相差や光軸など光学的特性の安定性を効果的に向上させる熱固定ゾーン28を順次通過するように、入口側ニップロール30A,30Bと出口側ニップロール32A,32Bとの間に未延伸フィルムFが掛け渡されている。
【0062】
オーブン6内の各ゾーンには、それぞれ複数のノズル20を有する一対のノズル列21、21が、結晶性樹脂製のフィルムFを間に挟むように互いに対向して配置されている。具体的には、対向する各ノズル列21は、ノズル20が千鳥状に配置されるように、互いに、結晶性樹脂製のフィルムFの長手方向(移動方向)にずれて対向配置されている。
【0063】
各ノズル20は、図4に示すように、その先端部に、熱風の吹き出し口となる一対のスリット20aを、ノズル20の対称軸線aを挟んでフィルムFの長手方向に離間して有している。また、各スリット20aは、それぞれ、フィルムFの幅方向(図4の紙面と垂直な方向)に伸びて開口している。各スリット20aに熱風を供給する流路20bは、それぞれ、対称軸線aから離れた位置から、対称軸線aに近づくように曲がりながらスリット20aに到達するように形成されており、各スリット20aからは、対称軸線aに近づくように傾斜して熱風がそれぞれ排出され、これら2つのガスが合流して、主として、未延伸のフィルムFに対して略垂直にガスが吹き付けられることとなる。なお、対称軸線aはフィルムFとほぼ垂直になるように配置されている。ここで、図4に示すように、スリット20aの長さ方向(図4の紙面に垂直な方向)と直交する面内において、スリット20aから噴き出されるガスの流れ方向と直交する方向におけるスリット20aの開口幅をスリット幅Bとする。また、図示は省略するが、流路20bの上流には、熱風を供給するガス供給管がそれぞれ接続されている。
【0064】
本実施形態に係る縦延伸工程を説明する。未延伸のフィルムFは、まず上流側ニップロール30A,30Bにて挟まれたのち、好ましくはロール31により向きが変換されて、オーブン6の予熱ゾーン24、延伸ゾーン26、熱固定ゾーン28を通過し、各ゾーンにおいて、複数のノズル20のスリット20aからの熱風(例えば、空気等)によって加熱されると共に、熱風によって空中にエアフローティングされる。その後、オーブン6から出た縦延伸後のフィルムFは、好ましくはロール33により向きを変えられた後、下流側ニップロール32A,32Bによって挟まれて後工程に送られる。このとき、出口側ニップロール32A,32Bの回転速度を入口側ニップロール30A,30Bの回転速度よりも早くすることによって、フィルムFに対して縦方向に応力をかけることができ、これにより加熱された未延伸のフィルムFの縦延伸をすることができる。
【0065】
(横延伸工程)
本実施形態では、上記縦延伸工程の後にテンター法による横延伸工程が行なわれる。テンター法による横延伸に用いるオーブンは、縦延伸されたフィルムFが繰り出される上流側より、風の温度及び風速を独立して制御可能なゾーンが複数設けられている。これらのゾーンは、例えば、上流側を予熱ゾーンとし、下流側を延伸ゾーンとすることができる。予熱ゾーン及び延伸ゾーンには、図5に示すようなパンチングノズル38が設けられている。
【0066】
図5に示すように、オーブンの上面100aに設けられたパンチングノズル38は、その横断面が、縦延伸後のフィルムFに対向する面38aに向かって末広がり状である台形形状を有している。パンチングノズル38は、フィルムFに対向する面である下側の面38aに複数の例えば円形の開口44を有する。パンチングノズル38の熱風の吹き出し口は、面38aに設けられる複数の開口44によって構成される。複数の開口44は熱風の吹き出し口であり、熱風は開口44から所定の風速で吹き出される。開口44は、フィルムFの長手方向に複数配置されるとともに、幅方向にも複数配置されている。開口44は、例えば千鳥状に配置することができる。
【0067】
(結晶性樹脂)
結晶性樹脂とは、X線解析において明確な結晶性を示す樹脂を意味し、より詳細には、広角X線回折により求めた結晶化度が10%以上である樹脂を意味する。
【0068】
なお、フィルムFとなる結晶性樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンの単独重合体または2種類以上のオレフィンの共重合体、および1種類以上のオレフィンとこのオレフィンと重合可能であって、オレフィンではない1種類以上の重合性モノマーとの共重合体であるポリオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−ナイロン等のアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和エステル系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらの架橋物などが挙げられる。単独で10%以上の結晶化度を有する結晶性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンの単独重合体または二種類以上のオレフィンの共重合体、一種類以上のオレフィンとこのオレフィンと重合可能であって、オレフィンではない一種類以上の重合性モノマーとの共重合体であるポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和エステル系樹脂、ポリビニルアルコールやその変性樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。単独では10%以上の結晶化度を有しない樹脂であっても、前記単独で10%以上の結晶化度を有する結晶性樹脂と適当な配合割合でブレンドすることにより本実施形態に適用することができる。
【0069】
結晶性樹脂からなるフィルムは、リサイクル性、耐溶剤性に優れ、また、焼却してもダイオキシンを発生せず、環境を悪化させないなどの理由から、結晶性樹脂としてはポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0070】
ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。より具体的には、プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。本発明におけるプロピレン系重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体であり、より好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体である。
【0071】
プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン三元共重合体及びエチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが挙げられ、例えば、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどが挙げられる。このうち、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、共重合特性、経済性などの観点から、1−ブテン、1−ヘキセンがより好ましい。
【0072】
ポリオレフィン系樹脂としてプロピレン−エチレン共重合体を用いる場合、当該共重合体中のエチレン含有量は、通常0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%である。プロピレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、当該共重合体中のα−オレフィンの含有量は、通常0.1〜40質量%であり、好ましくは1〜30質量%である。プロピレン−エチレン−α−オレフィン三元共重合体を用いる場合、当該共重合体中のエチレン含有量は、通常0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%であり、α−オレフィン含有量は、通常0.1〜40質量%であり、好ましくは1〜30質量%である。エチレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合、当該共重合体中のα−オレフィンの含有量は、通常0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜20質量%である。
【0073】
ポリオレフィン系樹脂の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒による溶媒重合法、液状モノマーを溶媒として用いる塊状重合法、気体モノマー中で行う気相重合法等が挙げられる。また、極限粘度が互いに異なる複数のポリオレフィン成分を含有する原料組成物を直接重合によって得る方法としては、バッチ式に重合を行う回分式重合法、連続して重合を行う気相−気相重合法や液相−気相重合法などが挙げられ、これらのうち、生産性の観点から、連続して重合を行う気相−気相重合法や液相−気相重合法が好ましい。
【0074】
上記ポリオレフィン系樹脂は、例えばマグネシウム化合物にTi化合物を複合化させた固体触媒成分等からなるTi−Mg系触媒、この固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物及び必要に応じて電子供与性化合物などの第3成分を組み合わせた触媒系、又はメタロセン系触媒を用いて得ることができる。より具体的には、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平7−216017号公報等に記載された触媒系を挙げることができる。
【0075】
結晶性樹脂には、必要に応じて各種の添加剤や充填剤を添加することができる。かかる添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、色素などが例示される。充填剤としては、無機充填剤、樹脂微粉末などの有機充填剤などが例示される。
【0076】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム等の金属塩類、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ
ナ、酸化亜鉛等の金属酸化物、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、マイカ、ゼオライト、ガラス粉、などが使用できる。
【0077】
有機充填剤としては、種々の樹脂粒子を使用することができる。好ましくは、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の重合体、メラミン、尿素などの重縮合樹脂などの粒子が挙げられる。
【0078】
ポリオレフィン系樹脂を用いる場合においては、フェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤などの酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、耐ブロッキング剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0079】
添加剤の添加方法は、特に制限されることはないが、例えば、結晶性樹脂のパウダーと各種添加剤とをヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて混合した後、その混合物を直接ペレット化する方法や、比較的高濃度の添加剤マスターバッチと樹脂とを二軸押出機等の高混練押出機を用いてペレット化した後、そのペレットを原料組成物と配合する方法、添加剤を溶融させて液状で原料組成物に添加する方法等の方法を採用することができる。
【0080】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピルネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビタミンEに代表されるα−トコフェノール類等が挙げられる。
【0081】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニルー2,2’−ジイル)ホスファイト等が挙げられる。
【0082】
中和剤としては、カルシウムステアレート、マグネシウムステアレート、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0083】
滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルが挙げられる。帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステル、ソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられる。耐ブロッキング剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0084】
(本実施形態の作用)
本実施形態によれば、冷却固化工程において、溶融された結晶性樹脂をTダイ12から押し出すことで成形された溶融状シートSを開口部52を有する囲い50によって囲繞しつつ金属弾性ロール14及びキャスティングロール16,18によって搬送することで冷却固化させる。環境の変化の影響が大きい結晶性樹脂からなる溶融状シートSであっても、囲い50によって囲繞することで、環境の変化の影響を減少させて厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、囲い50は開口部52を有するため、Tダイ12の温度制御が容易となり、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、本実施形態では、囲い50で溶融状のシートを囲繞するだけの構成であるため、不活性ガス等を用いる構成に比べて安価な設備とすることができる。
【0085】
また、本実施形態では、冷却固化工程において、囲い50はTダイの方向に開口した開口部52を有するものを用いるため、開口部52から熱を逃がすことにより、Tダイ12の温度制御が容易となり、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、冷却固化工程において、囲い50は、Tダイ12から押し出された溶融状シートSが冷却固化する温度である冷却点Tとなる位置まで溶融状シートSを概ね、囲繞する。このため、厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。また、本実施形態によれば、環境の変化の影響を受け難い部分は囲い50で覆う必要がないため、簡単で安価な設備とすることができる。
【0087】
また、本実施形態では、冷却固化工程において、囲い50は、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の回転に伴って金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の外周面に沿って発生する随伴流が溶融状シートSに当たらないようにする外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bを有するものを用いる。これにより、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の回転に伴う随伴流が溶融状シートSに当たることを防ぎ、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0088】
また、本実施形態では、冷却固化工程において、囲い50は、溶融状シートSが押し出される方向の側方を覆う側方遮蔽板51を有するものを用いる。これにより、フィルム製造環境の気流の乱れの影響をフィルムFへ与えることが低減できるため、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0089】
また、本実施形態では冷却固化工程において、Tダイ12から押し出された直後の溶融状シートSを金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の2つのロールの間で挟圧することで冷却固化させる。金属弾性ロール14及びキャスティングロール16を用いて冷却固化させることにより、結晶性樹脂フィルムの生産性や、製造される結晶性樹脂フィルムの平滑性を向上させることができる。
【0090】
また、本実施形態では、冷却固化工程において、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16の内のキャスティングロール16の外周面の温度を30℃以下とする。これにより、結晶が成長する前に溶融状シートSの溶融樹脂を冷却固化することができるようになるので、透明性の高い結晶性樹脂フィルムを製造することができる。
【0091】
さらに本実施形態によれば、冷却固化工程により溶融状シートSを冷却固化した後の未延伸のフィルムFをさらに延伸工程により延伸する。これにより、所定の厚みに延伸された位相差フィルム等の結晶性樹脂フィルムを製造することができる。
【0092】
(他の実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態の結晶性樹脂フィルム製造装置1bでは、金属弾性ロール14が設けられていない点が上記第1実施形態と異なっている。本実施形態では、金属弾性ロール14が設けられていないため、冷却点Tが上記第1実施形態に比べて下方となりやすく、その場合、囲い50の外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bは、上記第1実施形態よりも下方に伸びている。また、囲い50には、外側前方遮蔽板53a及び外側後方遮蔽板53bの内側に、Tダイ12から押し出された直後の溶融状シートSの2つの面の各面を覆う一対の内側前方遮蔽板54a及び内側後方遮蔽板54bを有している。本実施形態では、外側後方遮蔽板53b及び内側後方遮蔽板54bは、キャスティングロール16の下流側からの随伴流Wが溶融状シートSに当たることを防ぐ役割を果たす。つまり、外側後方遮蔽板53b及び内側後方遮蔽板54bは特許請求の範囲に記載の随伴流遮蔽板として機能する。外側前方遮蔽板53bおよび内側後方遮蔽板54bは、各遮蔽板の一端がキャスティングロール16の回転軸と略平行になるように、キャスティングロール16に近接して設置されている。
【0093】
本実施形態では、冷却固化工程において、Tダイ12から押し出された直後の溶融状シートSを1つのキャスティングロール16により搬送することで冷却固化させる。一つのキャスティングロール16により溶融状シートSを冷却固化させることにより、装置の構成を単純なものとでき、コストを低減することができる。
【0094】
また、本実施形態では、囲い50は、Tダイ12から押し出された直後の溶融状シートSの各面を覆う内側前方遮蔽板54a及び内側後方遮蔽板54bを有するものを用いる。内側前方遮蔽板54a及び内側後方遮蔽板54bにより、Tダイ12から押し出された直後の風の影響を受け易い溶融状シートSの各面を覆うことにより、より厚みや光学特性の均一性に優れる結晶性樹脂フィルムを得ることができる。
【0095】
また、本実施形態では、図6に示すように、キャスティングロール上の冷却点よりも下流側にタッチロール19を配設してもよい。タッチロール19としては、弾性を有することが好ましく、材質としてはゴムを例示することができる。ゴム硬度としては特に制限はないが、通常、ゴム硬度(JIS A)でHs30°以上Hs90°以下のものが用いられる。タッチロールを配設し、フィルムFをキャスティングロール16とタッチロール19とで挟圧することにより、キャスティングロール上の汚れを低減することができる。
【0096】
なお、本発明では、図7に示す本発明の第3実施形態に係る結晶性樹脂フィルム製造装置1cのように、Tダイ12から水平方向に溶融状シートSを押し出させ、上下に配置したキャスティングロール16,18によって搬送することで溶融状シートSを冷却固化させるようにしても良い。第3実施形態では、外側後方遮蔽板53b及び内側後方遮蔽板54bは特許請求の範囲に記載の随伴流遮蔽板として機能する。
【0097】
あるいは、本発明では、図8に示す本発明の第4実施形態に係る結晶性樹脂フィルム製造装置1dのように、Tダイ12から斜め上流方向向けに溶融状シートSを押し出させ、水平に配置したキャスティングロール16,18によって搬送することで溶融状シートSを冷却固化させるようにしても良い。第4実施形態では、内側後方遮蔽板54bは特許請求の範囲に記載の随伴流遮蔽板として機能する。
【実施例1】
【0098】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下に示す各特性値は下記の方法で測定及び評価を行なった。
【0099】
(未延伸フィルム厚み)
得られた未延伸フィルムから、幅方向に対し平行に50mm幅(フィルムの流れ方向の距離)でフィルム全幅を切り出した。株式会社山文製の厚み計である静電容量式TOF−C(商品名)を用いて、切り出したフィルムの幅方向の一方の端部から他方の端部までの厚みを測定し、フィルム中央部の幅方向の長さ1100mmぶんのフィルム厚みの平均値で厚みを評価した。
【0100】
(未延伸フィルム厚み精度)
測定した未延伸フィルム中央部の幅方向の長さ1100mmぶんの厚みの最大値から最小値を減じた値で厚み精度を評価した。
【0101】
(未延伸フィルム面内位相差)
得られた未延伸フィルムは、フィルム幅方向の中央からフィルム端部両方向に100mm間隔で40mm×40mmで切り出した。切り出したフィルムは全部で14点とした。王子計測機器株式会社製の位相差計であるKOBRA−WPR(商品名)を用いて切り出した14点のフィルムの面内位相差R0を測定した。
【0102】
(未延伸フィルム位相差均一性)
測定した全14点のフィルムの面内位相差R0の最大値から最小値を減じた値で、位相差均一性を評価した。
【0103】
(Tダイ中央部温度)
Tダイ12の上流側中央部に設置した熱電対を用いて温度を計測し、押出機10を立上げ、押上機10及びTダイ12の温度を設定した後、2時間以上経過した段階の温度でTダイ12の温度を評価した。
【0104】
(縦延伸後フィルム厚み)
測定した中央部の平均値を600mmとしたこと以外は、未延伸フィルム厚みと同様の方法で厚みを評価した。
【0105】
(縦延伸後フィルム厚み精度)
測定した縦延伸後フィルムの厚みの最大値から最小値を減じた値で厚み精度を評価した。
【0106】
(縦延伸後フィルム面内位相差)
切り出した縦延伸後フィルムを全7点としたこと以外は、未延伸フィルム面内位相差と同様に測定した。
【0107】
(縦延伸後フィルム位相差均一性)
測定した全7点の面内位相差R0の最大値から最小値を減じた値で評価した。
【0108】
(横延伸後フィルム厚み)
長さ700mmぶんの厚みから平均値を求めたこと以外は、未延伸フィルム厚みと同様の方法で厚みを評価した。
【0109】
(横延伸後フィルム厚み精度)
測定した横延伸後フィルムの厚みの最大値から最小値を減じた値で厚み精度を評価した。
【0110】
(横延伸後フィルム面内位相差)
切り出した横延伸後フィルムを全7点としたこと以外は、未延伸フィルム面内位相差と同様に測定した。
【0111】
(横延伸後フィルム位相差均一性)
測定した全7点のフィルムの面内位相差R0の最大値から最小値を減じた値で評価した。
【0112】
(実施例1)
図1に示す結晶性樹脂フィルム製造装置1aによってフィルムFを製造した。ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−エチレンランダム共重合体、エチレン含有量=4重量%、メルトフローレート(以下、MFRとも呼称する)=8.0g/10min、融点=134℃)を250℃に加熱した75mmφの押出機10にて溶融混錬し、Tダイ12から金属弾性ロール14及びキャスティングロール16に対し、溶融状シートSを吐出した。Tダイ12近傍には、開口部52を有する囲い50(囲いA)を設置した。押出機10に続いて設置されているアダプタからTダイ12までは、すべて250℃と設定した。Tダイ12の吐出口12aの部分における溶融樹脂の温度は250℃であった。
【0113】
当該溶融状シートSを、金属弾性ロール14とキャスティングロール16とによって長さ5mmで挟圧するとともに、金属弾性ロール14及びキャスティングロール16によって冷却固化させることで、厚みが99μmのポリプロピレン系樹脂のフィルムFを得た。フィルムFを巻き取る前に、フィルムFの端部は、スリット工程によって切断し、幅1350mmのフィルムFを得た。金属弾性ロール14は120℃、キャスティングロール16は20℃に設定した。得られた未延伸フィルムの結果を表1に示す。
【表1】



【0114】
(実施例2)
図6に示す結晶性樹脂フィルム製造装置1bによってフィルムFを製造した。実施例1と同様の樹脂を用いて、250℃に加熱した75mmφの押出機10にて溶融混錬し、Tダイ12からキャスティングロール16に対し、溶融状シートSを吐出した。Tダイ12近傍には、開口部52を有する囲い50(囲いB)を設置した。押出機10に続いて設置されているアダプタからTダイ12までの設定温度は実施例1と同様に設定した。Tダイ12の吐出口12aの部分における溶融樹脂の温度は250℃であった。
【0115】
当該溶融樹脂を、キャスティングロール16によって引き取り、冷却固化させることで、厚みが100μmのポリプロピレン系樹脂のフィルムFを得た。キャスティングロール16は15℃に設定した。キャスティングロール16上の冷却点下流側にはタッチロール19が配設されており、冷却固化されたフィルムFをキャスティングロール16とタッチロール19とで挟圧した後に、キャスティングロール18で引き取った。得られたポリプロピレン系樹脂のフィルムFの結果を上記表1に示す。
【0116】
得られた未延伸フィルムをスリットし幅1100mmにした後、2組のニップロール30A,30B,32A,32B間にエアフローティング方式のオーブン6を有する図3及び図4に示すロングスパン縦延伸機101に投入して縦延伸を行なった。オーブン6は、予熱ゾーン24、延伸ゾーン26及び熱固定ゾーン28の3ゾーンに分かれている。各ゾーンの長さは2.6mmである。各ゾーンには6対のノズル20が設置されている。ノズル20の各スリット20aからの風速Aは7.5m/sであり、ノズルの各スリット幅Bは2×10−3mであり、上下のノズル20の間隔は70mmであった。1つのノズル20には同じスリット幅のスリット20aが2本設けられていた。縦延伸の条件は、予熱ゾーン24、延伸ゾーン26及び熱固定ゾーン28の各ゾーンをそれぞれ70℃、90℃及び110℃と設定し、入口速度は5m/minであり、出口速度は9m/minであり、延伸倍率は1.8倍とした。得られたフィルムの結果を表2に示す。
【表2】



【0117】
さらに縦延伸で得られたフィルムFをテンター法で横延伸を行なった。テンター法による横延伸に用いるオーブンは、縦延伸フィルムが繰り出される上流側より、風の温度及び風速を独立して制御可能なゾーンが複数室設けられており、各室の長さを足し合わせたオーブンの全長は12mである。風の温度及び風速を独立して制御可能なゾーンの内、上流側6mを予熱ゾーンとし、下流側6mを延伸ゾーンとして用いた。予熱ゾーン及び延伸ゾーンには、図5に示すようなパンチングノズル38が各40本(上下20対)設けられている。予熱ゾーン及び延伸ゾーンにおけるパンチングノズル38の噴出し口の風の速度はそれぞれ、6m/s及び5m/sと設定した。また、予熱ゾーン及び延伸ゾーンの温度は、それぞれ140℃及び130℃と設定した。縦延伸で得られたフィルムFをスリットし、フィルムを掴むチャック部分を除いた幅400mmで横延伸機入口から投入して3.4倍の横延伸を実施し、幅1360mmのフィルムFを得た。幅1360mmのフィルムFをスリットすることにより、幅1000mmの横延伸フィルムを得た。得られたフィルムの結果を表3に示す。
【表3】



【0118】
(比較例1)
Tダイ12近傍に上記特許文献1に示すような略密閉式の囲い(囲いC)を用いたこと以外は、実施例1と同様にフィルムFを製造した。得られた未延伸フィルムの結果を上記表1に示す。
【0119】
(比較例2)
Tダイ12近傍に囲い50を設置しないこと以外は、実施例2と同様にフィルムFを製造した。得られた未延伸フィルムの結果を上記表1に示し、得られた縦延伸フィルムの結果を上記表2に示し、得られた横延伸フィルムの結果を上記表3に示す。
【0120】
成形方法が同じである実施例1と比較例1とを対比する。表1より、実施例1ではTダイ12の設定温度250℃に対して設定した通りのTダイ12の温度となっているのに対し、比較例1ではTダイ12の設定温度250℃に対して実際のTダイ12の温度は256℃となっていることが判る。これは、密閉式の囲いの輻射熱が囲い内に篭ってしまい、Tダイ12の温度分布を乱してしまったためと考えられる。そのため、表1に示すように、囲い内に温度分布が生じ、溶融状シートSが冷却固化される過程で温度不均一性を生じさせたため、実施例1に対して比較例1の厚み精度、面内位相差及び位相差均一性は悪化していることが判る。
【0121】
成形方法が同じである実施例2と比較例2とを対比する。表1に示すように、実施例2では比較例2と比較し、厚み精度及び位相差均一性が大幅に優れることが判る。実施例2では、溶融樹脂近傍の雰囲気温度や微小な風の流れ等の影響が均一化されたため、厚み精度及び位相差均一性が優れており、さらにTダイ12の実際の温度も設定温度に対して変動していなかったことが判る。また、表2及び表3より、実施例2では、縦延伸後及び横延伸後の厚み精度及び位相差均一性も優れることが判る。これは、未延伸フィルムの精度が向上したため、延伸均一性も改善したことを示している。
【0122】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0123】
1a,1b,1c,1d…結晶性樹脂フィルム製造装置、6…オーブン、6a…入口、6b…出口、10…押出機、12…Tダイ、12a…吐出口、14…金属弾性ロール、14a…金属内筒、14b…薄肉金属外筒、14c…流体軸筒、16,18…キャスティングロール、19…タッチロール、20…ノズル、20a…スリット、21…ノズル列、24…予熱ゾーン、26…延伸ゾーン、28…熱固定ゾーン、30A,30B,32A,32B…ニップロール、31,33…ロール、38…パンチングノズル、38a…面、51…側方遮蔽板、52…開口部、53a…外側前方遮蔽板、53b…外側後方遮蔽板、54a…内側前方遮蔽板、54b…内側後方遮蔽板、60…精密減速機及びモータ、100…厚み測定器、100a…上面、ロングスパン縦延伸機101、S…溶融状シート、F…フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融された結晶性樹脂をTダイから押し出すことで成形された溶融状シートを開口部を有する囲いによって囲繞しつつロールによって搬送することで冷却固化させる冷却固化工程を含む結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項2】
前記冷却固化工程において、前記囲いは前記Tダイの方向に前記開口部を有するものを用いる、請求項1に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項3】
前記冷却固化工程において、前記囲いは、前記Tダイから押し出された前記溶融状シートが冷却固化する温度である冷却点となる位置まで前記溶融状シートを囲繞する、請求項1又は2に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項4】
前記冷却固化工程において、前記囲いは、前記ロールの回転に伴って前記ロールの外周面に沿って発生する随伴流が前記溶融状シートに当たらないようにする随伴流遮蔽板を有するものを用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項5】
前記冷却固化工程において、前記囲いは、前記溶融状シートの側方を覆う側方遮蔽板を有するものを用いる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項6】
前記冷却固化工程において、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートを2つの前記ロールの間で挟圧することで冷却固化させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項7】
前記冷却固化工程において、2つの前記ロールの少なくとも1つの外周面の温度を30℃以下とする、請求項6に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項8】
前記冷却固化工程において、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートを1つの前記ロールにより搬送することで冷却固化させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項9】
冷却固化されたフィルムを前記ロールと弾性を有するロールとで挟圧する請求項1〜5および請求項8のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項10】
前記冷却固化工程において、前記囲いは、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートの少なくとも片面を覆う内側遮蔽板を有するものを用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項11】
前記冷却固化工程により前記溶融状シートを冷却固化した後の結晶性樹脂フィルムを延伸する延伸工程をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造方法。
【請求項12】
溶融された結晶性樹脂を押し出すことで溶融状シートを成形するTダイと、
前記Tダイから押し出された前記溶融状シートを搬送することで冷却固化させるロールと、
前記Tダイから押し出された前記溶融状シートを囲繞する開口部を有する囲いと、
を備えた結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項13】
前記囲いは前記Tダイの方向に開口した前記開口部を有する、請求項12に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項14】
前記囲いは、前記Tダイから押し出された前記溶融状シートが冷却固化する温度である冷却点となる位置まで前記溶融状シートを囲繞する、請求項12又は13に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項15】
前記囲いは、前記ロールの回転に伴って前記ロールの外周面に沿って発生する随伴流が前記溶融状シートに当たらないようにする随伴流遮蔽板を有する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項16】
前記囲いは、前記溶融状シートの側方を覆う側方遮蔽板を有する、請求項12〜15のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項17】
前記ロールは、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートを2つの前記ロールの間で挟圧することで冷却固化させる、請求項12〜16のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項18】
2つの前記ロールの少なくとも1つの外周面の温度が30℃以下である、請求項17に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項19】
前記ロールは、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートを1つの前記ロールにより搬送することで冷却固化させる、請求項12〜16のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項20】
冷却固化されたフィルムを前記ロールと弾性を有するロールとで挟圧する、請求項12〜16および請求項19のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項21】
前記囲いは、前記Tダイから押し出された直後の前記溶融状シートの少なくとも片面を覆う内側遮蔽板を有する、請求項12〜20のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。
【請求項22】
前記ロールにより冷却固化された後の結晶性樹脂フィルムを延伸する延伸装置をさらに備えた、請求項12〜21のいずれか1項に記載の結晶性樹脂フィルム製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232584(P2012−232584A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−95587(P2012−95587)
【出願日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】