説明

結晶性ACAT阻害剤

【課題】N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの新規結晶形の提供。
【解決手段】本発明は、N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体、及び治療薬/化粧品としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
当該発明は、結晶形態のN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミド、及び薬剤の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
ヒトの皮膚は、3層の主要な層、角質層、表皮、及び真皮から構成される。外層は角質層である。その主な機能は外部環境に対する防壁としての役割を担うことである。脂質が角質層の表面に分泌される。これらの脂質は、角質層の透水性を低下させる。一般に、皮脂がこれらの脂質の95%を構成する。Abramovitsほか、Dermatologic Clinics、第18巻、第4号、2000年10月。
【0003】
皮脂は皮脂腺で産生される。これらの腺は体表面の大部分に存在する。これらの腺の最も高い密度は、頭皮、額、及び顔で生じる。皮脂が果たす重要な生理学的役割にもかかわらず、多くの人々が、特に顔面野での過剰な皮脂産生に悩む。過剰な皮脂は、高いにきび発生率に関係する。にきびのない個人においてでさえ、皮脂は肌が脂ぎっているように見せ、魅力を減少させる可能性がある。Abramovitsほか、上記。
【0004】
アシルCoAコレステロール・アシル・トランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤は、高コレステロールを治療するために当初評価された。米国特許第6,133,326号は、コレステロールを下げることに加えて、ACAT阻害剤が皮脂の分泌を減少させることを開示している。WO 05/034931 A1は、皮脂の削減における特定のクラスのジアミドACAT阻害剤の使用を開示している。N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドは、その使用が’931出願において例証される化合物の1つである。当初、N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドは、高コレステロールの治療のためのACAT阻害剤として欧州特許出願0 433 662(それがN'-[2,6-ビス(1-メチルエチル)-フェニル]-N-(1-メチルエチル)-N-(フェニルメチル)プロパンジアミドと呼ばれている11ページ50行を参照のこと)中に記載された。欧州’662出願は、皮脂分泌を抑えるためのこれらの化合物の使用を開示していない。
【発明の開示】
【0005】
本発明の概要
当該発明により、結晶形態のN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドが見出された。N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの構造を、以下に示す:
【化1】

結晶形態のN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドは、A型多形体と呼ばれる。それは、以下に記載の特徴的な粉末X線回折パターン(XRPD)を有する。
【0006】
前記結晶形態は、ACAT阻害剤として利用される。高いコレステロール・レベルを抑えるために、及び/又は皮脂の分泌を減少させるために、それが患者に投与される。より特定の態様において、前記結晶形態は、皮脂の分泌を減少させるため、脂性肌を軽減するため、にきびを減少させるため、テカテカした肌を減少させるため、又は一般に過剰な皮脂に関係する他の美容上の不満を減少させるために患者に投与される局所剤形に組み込まれる。
【0007】
さらなる態様において、本発明は、過剰な皮脂に関係する皮膚病を軽減するために製品をどのように使用するかを消費者に助言する使用説明書に関連する、小売り流通用に包装された、これらの局所剤形の1つを含む製造品(すなわち、キット)を対象にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
A.特徴づけの方法
1)粉末X線回折法
図1に示された実験的な粉末X線回折パターン(すなわち、XRPD)は、シングル・ゲーベル・ミラー構造を用いたGADDS(領域回折検出器システム)C2システムをもつBruker D8粉末回折計を使って得られた。サンプルを、40kV及び40mAで稼動したX線管によるCu Kアルファ放射(X=0.15056nm)にさらした。15.0cmで検出器による走査を行なった。シータ1又はコリメータは7°に存在し、そしてシータ2又は検出器は17°に存在した。走査軸は、3°の幅の2ωであった。各々の走査の終わりに、シータ1は10°に存在し、そしてシータ2は14°に存在した。サンプルを60秒間適用させ、そして走査を6.4°〜41°2θで統合した。Evaバージョン9.0を伴う2003年に発表されたDiffracPlusソフトウェアを使って、走査を評価した。サンプルを、Gem Dugout(ステートカレッジ、PA)から購入したASC-6サンプルホルダー内にはめ込む。サンプルを、サンプルホルダーの真ん中のくぼみに置いて、そしてホルダー表面と同じ高さになるようにスパーテルで平らにした。室温で全ての分析を実施した、室温は一般に約24℃〜28℃であると考えられている。
【0009】
図II中に示した実験的粉末X線回折パターン(すなわち、XRPD)は、Scintag DMS/NT3 1.36bソフトウェア下で稼動したScintag X1 Advanced Diffraction Systemを使用して得られた。前記システムは、1.5406ÅのCuKα1放射を提供するために45kV及び40mAに維持した銅X線源と、固体ペルチェ冷却検出器を使用する。ビーム開口径を、2mmと4mmのチューブ発散、散乱防止スリット、並びに0.5mmと0.3mmの幅の検出器散乱防止、受光スリットを使って制御した。データを、0.03°/ポイントのステップ走査、及び1秒/ポイントのカウント時間を使って2°〜38°の2シータ(2θ)で収集した。9mmのアルミニウム・スペーサ挿入物を有するScintag社製の円形のトップローディング・ステンレス・サンプルカップを利用した。
【0010】
メノウ乳鉢及び乳棒によってサンプルの一部をすり潰し、トレイのくぼみの中へサンプルをかき取ることによってサンプルを調製し、そしてディスクの外側のヘリの高さになるようにステンレス・ブロックで平らにした。分析は、室温及び室内気圧で行われた。
【0011】
当業者にとって容易に明白なことではあるが、たとえ同じロットの物質で実施されたとしても、いくつかの粉末X線回折の結果が異なり、それに続くXRPDの結果が一致しないことがある。この相違は、試験サンプルの調製、温度、使用したX線回折装置の特定のモデル、オペレーターの技術などによるかもしれない。用語「約」は、粉末X線回折パターンのピークを規定するのに使った場合には、±0.2°2θの2θ値を指定したものと規定される。結晶形態がA型多形体であるかどうか、及び請求項によって包含されるかどうかについてのあらゆる決定は、この試験のばらつきに照らして解釈されるべきである。
【0012】
このばらつきは図1及び2で証明される。同じロットのN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドは、異なるオペレーターによって異なる回折計を用いてXRPDに提示された。以下で議論されている特徴的ピークは各々の図面に存在し、A型多形体であることをそれが裏付けている。しかし、これらのピークの相対強度と同様に他の同定ピークも変動した。
【0013】
2)示差走査熱量測定
実験は、DSC Q1000器具(TA Instruments、ニューキャッスル、DE)を使って実施された。窒素を、パージガスとしてDSCセルに50mL/分、及び冷却された冷却システムに110mL/分の流量で使用した。熱量計は、インジウム(融点156.61℃、融解のエンタルピー28.71J/g)を使って温度及びセル定数について較正した。ピンホールのある封をしたアルミニウムなべを使用して、サンプル(3〜5mg)を10℃/分の速度で加熱した。データ分析を、Windows(登録商標)バージョン3.8B.のためのTA Instrument’s Universal Analysis 2000ソフトウェアを使って実施した。
【0014】
B)A型多形体
先に述べたように、結晶形態のN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドを発見した。この結晶形態は、本願明細書中でA型多形体と呼ばれる。A型多形体は、その粉末X線回折パターンによって同定されることができる。図1及び2の再検討は、A型多形体が3つの特徴的ピークを示すことを明らかにする。特徴的ピークは、粉末XRPDパターンの顕著な相対強度を示し、そして結晶形態を見分ける役目を果たすものである。1つ目は約28.1°2θに生じる。2つ目は約16.0°2θに生じる。3つ目のピークは約19.6°2θに生じる。これらのピークのいずれかを単独で、又は組み合わせてA型多形体を同定するために使用することができる。
【0015】
これらの特徴的ピークに加え、図1及び2の再検討は、他の同定ピークが同様に同定されたことを明らかにする。これらの補足的ピークの強度は、多形体サンプルの特別な配向性によって変動する可能性がある。これらの補足的ピークはA型多形体の存在を確認するために使用されうるが、しかし、それらの不存在は特定の物質がA型多形体でないことを決定するために使用すべきではない。これらの同定ピークは、以下の:7.3、10.3、10.8、11.3、12.1、14.6、14.9、16.5、17.9、18.1、18.9、19.1、20.7、21.8、22.9、23.2、25.0、及び26.0(度2θ、±0.2 2θ、すなわち、近似的に表される)を含む。
【0016】
A型多形体は、約102℃での鋭い吸熱を示す図3に示される示差走査熱量測定(DSC)によっても特徴づけられる。これはA型多形体の融解に対応する。他のロットのA型多形体は、約100℃±6℃の融点を示す。
【0017】
よって1つの態様において、本発明は、約28.1、16.0、又は19.6度2θで表される特徴的ピークの少なくとも1つを有する粉末X線回折パターンを示すN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体を対象とする。さらなる態様において、本発明は、約28.1、16.0、及び19.6度2θで表される特徴的ピークを有する;そして場合により、約7.3、10.3、16.5、17.9、20.7、19.1、又は25.0度2θで表される補足的ピークの少なくとも1つを示すN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体を対象にする。さらなる態様において、本発明は、約16.0、19.6、28.1度2θで表される特徴的ピーク;並びに、7.3、10.3、10.8、11.3、12.1、14.6、14.9、16.5、17.9、18.1、18.9、19.1、20.7、21.8、22.9、23.2、25.0、又は26.0度2θで表される補足的ピークの少なくとも2つを示すN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体を対象にする。
【0018】
それに加え、本発明は、以下の:1)約16.0、19.6、28.1度2θで表される特徴的ピークを有し、及び2)約7.3、10.3、10.8、11.3、12.1、14.6、14.9、16.5、17.9、18.1、18.9、19.1、20.7、21.8、22.9、23.2、25.0、又は26.0度2θで表される補足的ピークの少なくとも1つ又は2つを示す、そして3)100℃±6℃の融点を有するN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体を対象にする。
【0019】
C)調製方法
A型多形体は、以下に示す反応スキームで記載されるように調製される。
【化2】

反応物の1つが、欧州特許出願第0 433 662号に記載のとおり調製されるN-(2-6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸である。他の反応物は、商業的供給業者から購入することができるベンジル-イソプロピル-アミンである。反応は、塩基(例えば、トリエチルアミン)及びカップリング剤、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(「EDAC」)又はジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)の存在下、有機溶剤(例えば、二塩化メチレン)中で等量のアミンと酸を接触させることによって一般に実施される。一般に、反応物を、約0℃で接触させ、室温まで暖め、そして反応が完了するまで撹拌する。完了した時点で、反応をクエンチし、そして有機溶剤で希釈した。溶剤の留去が、オイルとしてN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドをもたらす。場合により、そのオイルを当該技術分野で知られるクロマトグラフィーによって精製することもできる。
【0020】
その後、前記オイルにヘプタン中での再結晶を施すことによって、A型多形体が得られる。一般に、前記オイルをヘプタン中に溶かし、そして長時間撹拌する。この時間は、含まれる分量に依存して、18〜24時間におよぶ。再結晶は、低温又は室温で実施される。所望であれば、処理を促進するためにシーディング法が利用される。
【0021】
D)医学的用途及び化粧用途
アシルCoAコレステロール・アシル・トランスフェラーゼ(ACAT)の阻害は、遊離コレステロールからコレステロール・エステルへのエステル化を妨げる。コレステロール・エステルは、動物におけるコレステロールの主な輸送及び貯蔵形態である。腸において、ACAT阻害剤が腸からのコレステロールの吸収を抑えることが示された。肝臓において、ACATの阻害が、リポタンパク質コアのコレステロール・エステル質量を減少させることによりコレステロール含有リポタンパク質の形成及び分泌を減少させることが示された。このような理由で、血清コレステロール・レベルを下げる手段として、ACAT阻害剤がこれまで評価されてきた。
【0022】
皮膚の皮脂腺は、皮脂として知られている脂質の混合物を分泌する全分泌腺である。皮脂は、トリグリセリド、ワックス、ステロール・エステル、及びスクアレンから成る。個体の変化、例えば年齢、性別、食事、及び病気に基づいて、ヒトの皮脂の組成には大きな変化がある。皮脂は、皮脂腺の腺房細胞で産生され、それらの細胞齢につれて蓄積されて、そして腺の中心に移動する。成熟時に、腺房細胞が溶解し、そしてそこから皮脂を分泌する内腔管内に皮脂が放出される。
【0023】
皮脂の形成は、脂質代謝の速度を調節するために主に作用する種々のホルモンによって調節される。ワックス及びステロールは、腺房細胞内で、種々のアシル及び脂肪酸トランスフェラーゼの活性によって貯蔵のための安定なエステル形態に変換される。その後、これらのエステルは、放出前に腺房細胞内の脂肪滴内に蓄えられる。
【0024】
N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体(以下、「化合物」)を用いて調製された薬剤は、腺房細胞内の高レベルの遊離コレステロールをもたらす遊離コレステロールからコレステロール・エステルへの変換を防ぐ。今のところ細胞機構が完全に理解されていないが、腺房細胞がACAT阻害剤と接触した場合には、より少量の皮脂しか産生しない。
【0025】
よって、前記化合物は、皮脂の分泌を抑えて、そして皮膚の表面上の皮脂の量を減少させる。前記化合物は、例えば、にきび又は脂漏性皮膚炎といった種々の皮膚病を治療するために使用することができる。
【0026】
過剰な皮脂産生に関係する病気を治療することに加えて、前記化合物は、化粧効果を得るために使用することもできる。一部の消費者は、過剰に活性な皮脂腺に苦しめられていると考えている。彼らは、皮膚が脂っぽく、そのため魅力がないと感じている。こういった個人は、皮膚上の皮脂の量を減少させるために前記化合物を利用できる。皮脂の分泌を減少させることは、そのような状態に悩まされている個人の脂性肌を緩和する。
【0027】
先に記載の生物学的な効果を示すために、前記化合物は、皮脂腺及び腺房細胞による皮脂の産生及び/又は分泌を抑制するのに十分な量で投与される必要がある。この量は、治療される特定の病気/状態、患者の病気/状態の重さ、患者、投与経路、及び患者に内在する他の病状の存在などに依存して変化する可能性がある。全身投与される場合、前記化合物は、先に列挙したあらゆる病気又は状態に関して約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の範囲の投薬量で一般に効果を示す。反復的な連日投与が望ましく、そして先に概説した状態に照らして変動する。本願出願で使用される時、用語「患者」は、哺乳動物を表し、それは主としてヒトである。
【0028】
前記化合物は、種々の経路によって投与される可能性がある。経口投与された場合、それは有効である。前記化合物は、非経口的に(すなわち、皮下に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、又はくも膜下腔に)、経直腸的に、又は局所的にも投与される。
【0029】
典型的な態様において、前記化合物は局所的に投与される剤形を調製するために利用される。局所投与は、にきび及び化粧的な徴候に特に適当である。局所用薬剤は、過剰な皮脂産生に悩まされる皮膚の領域に利用される。用量は変動するが、しかし、一般的な指針として、前記化合物は0.01〜10w/w%の量で皮膚科学的に許容される担体中に存在し、そして皮膚科学的製剤は1日に1〜4回患部に適用される。「皮膚科学的に許容される」は、皮膚、毛髪、又は頭皮に適用されることができ、そして薬物が作用部位(すなわち、皮脂腺及び/又は腺房細胞)に拡散するのを可能にする担体を表す。
【0030】
E)化粧用製剤及び医薬製剤
所望であれば、前記化合物は、あらゆる担体なしに直接的に投与されることができる。しかしながら、投与を簡単にするために、一般に医薬担体中に処方される。
【0031】
経口投与のために、前記化合物を、固形又は液体製剤、例えばカプセル剤、丸剤、錠剤、薬用ドロップ、溶解物(melts)、散剤、懸濁剤、又は乳剤中に処方することができる。固形の単位剤形は、例えば界面活性剤、滑沢剤、並びに例えばラクトース、ショ糖、及びコーンスターチといった不活性な増量剤を含む、普通のゼラチン・タイプのカプセルであるか、又は徐放性製剤であるかもしれない。
【0032】
他の態様において、前記化合物を、結合剤、例えばアラビアゴム、コーンスターチ、又はゼラチンと組み合わせて、伝統的な錠剤基材、例えばラクトース、ショ糖、及びコーンスターチ、崩壊剤、例えばジャガイモデンプン又はアルギン酸、並びに滑沢剤、例えばステアリン酸又はステアリン酸マグネシウムと一緒に錠剤にすることができる。液体製剤は、当該技術分野で知られている懸濁化剤、甘味剤、着香料、及び保存料を含むこともできる水性、又は非水性の医薬として許容される溶剤中に前記化合物を溶かすことによって調製される。
【0033】
非経口投与のために、前記化合物は、生理学的に許容される医薬担体中に分散され、そして溶液又は懸濁液として投与される。好適な医薬担体の実例は、水、生理食塩液、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、あるいは動物性油、植物性油又は合成油である。また、医薬担体は、当該技術分野で知られている防腐剤、緩衝剤などを含むかもしれない。また、前記化合物は、くも膜下腔に投与される場合、当該技術分野で知られている脳脊髄液中に溶解される。
【0034】
しかしながら一般に、前記化合物は、局所投与に好適な製剤に組み込まれる。当該技術分野で知られているあらゆる局所用製剤が使用されうる。そのような局所用製剤の例は、ローション剤、スプレー剤、クリーム、軟膏(ointmants, salves)、ゲル剤などを含む。局所用製剤を調製するための実際の方法は、当業者に知られるか又は彼らに明白であり、そしてRemington's Pharmaceutical Sciences、1990年(上記);及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第6版、Williams & Wilkins (1995年)中に詳細に記載されている。
【0035】
さらなる態様において、先に記載の製剤は、小売り販売用に包装される(すなわち、キット又は製造品)。その包装は、例えば、にきび、脂性肌などといった状態を軽くするのに当該製品をどのように使用するかを患者に助言する使用説明書を含む。そのような使用説明書は、箱に印刷されるか、別個の小冊子であるか、又は製剤を保持する容器などの側面に印刷される。
【0036】
また、前記化合物は、いずれかの不活性担体と混合され、そして当該技術分野で知られている患者の血清、尿などの中の当該化合物の濃度を測定するための実験室アッセイに利用される。また、前記化合物は、研究道具としても使用される。
【0037】
本発明はその特定の態様に関連して記載されると同時に、さらなる修飾が可能であり、そして当該出願が一般に本発明の原理に従い、かつ、本発明の技術分野内で知られるか又は慣行であるような当該開示からの逸脱を含む本発明のあらゆる変化、用途、又は適応形態を網羅することを意図していることは理解されるであろう。以下の実施例及び生物学的データは本発明をさらに説明するために提示される。この開示は、いかなる形であっても本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0038】
以下の実施例を、本発明をさらに説明するために提示する。それらは、いかなる形であっても本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0039】
実施例1
この実施例は、N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの出発材料の1つであるN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸の調製を説明する。
【0040】
ステップA) N-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸エチル・エステル
5Lの4つ首フラスコに機械式撹拌機及び温度プローブを備え付け、そして窒素でパージした。そのフラスコに200mL(188g、1.06モル)の2,6-ジイソプロピル・アニリン、163mL(118g、1.17モル)のトリエチルアミン、及び2.5Lの酢酸エチルを入れた。透明な黄色の溶液を、撹拌しながら0℃に冷やし、そして143mL(168g、95%の純度、1.06モル)のエチル・マロニル・クロライドを15分間にわたって加えた。添加中、内部温度を22℃位の高さまで上げた。冷浴を取り外し、黄色の懸濁液を100分間撹拌した(HPLCが反応完了を示した)。懸濁液をろ過し、そして濾液をRotavapにて留去して黄色がかった固体を得た。その後、未精製エステルを3.0Lのヘプタンから再結晶させて、薄黄色の固体として240.24g(78%)のN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸エチル・エステルを生じた。HPLC分析が>99%(a/a)の純度を示した。その物質の1H-NMRスペクトルは構造と一致していた。
【0041】
ステップB) N-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸
5Lの4つ首フラスコに機械式撹拌機を備え付けて、そして前述で製造した240.24g(824ミリモル)のN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸エチル・エステルと、1200mlのメタノールを入れた。透明なオレンジ色の溶液に483mL(966ミリモル)の2.0N水酸化ナトリウムを加えた。HPLC分析が反応の完了を示すまで(約2.5h)、その溶液を撹拌し、そして3N塩酸でpH3に酸性化した。懸濁液を、2.0Lの酢酸エチルと0.5Lの水で希釈した。水層を取り除き、そして有機層を0.5Lの水と0.5Lの食塩水で洗浄した。前記水層を0.5Lの酢酸エチルで逆抽出して、その後合わせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させた。Rotavapでの溶剤の留去で、黄色の固体として216g(99%)の未精製の酸を生じた。未精製物質を、2.2Lのヘプタンによってスラリーにし、そしてろ過によって分離した。その固体をヘプタンと石油エーテルで洗浄して、そして風乾して黄色の固体として202.53gのN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸を得た。HPLC分析が>99%(a/a)の純度を示した。その物質の1H-NMRスペクトルは構造と一致していた。
【0042】
実施例2
この実施例は、N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体の調製を説明する。
【0043】
撹拌機及び窒素吸気口を備えた2LのフラスコにN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸(100g、0.380モル)、及びN-ベンジルイソプロピルアミン(82mL、74g、0.5モル)を入れた。得られた溶液を、−5℃に冷えるまで氷アセトン浴中で撹拌し、そしてEDAC(80g、0.42モル)を加え、次にトリエチルアミン(75mL、54g、0.54モル)を加えた。その混合物を撹拌して、室温にし、そして一晩放置した。TLC(酢酸エチル:メタノール、95:5)がまだ存在している未反応の酸を明らかにした。別の8gのEDACと15mLのトリエチルアミンを加え、そして混合物をさらに4時間室温で撹拌した。TLCが変化を示さなかったら、まず2NのHCl(500mL)、次に2NのNaOHでの洗浄によって反応を促した(塩基洗浄の酸性化で〜13gの未反応のマロンアミド酸が析出した)。酸及び塩基洗浄の後に、有機溶液を水(500mL)、続いて食塩水(250mL)で洗浄した。その後、それを硫酸マグネシウム上で乾燥させて、ろ過して、そして粘度の高いオイルに濃縮した。未精製産物を、少量の温めたヘプタン中に溶かして、全ての所望の産物が通過するまでヘプタン中10%酢酸エチルですすいで〜500gのシリカゲルを通してろ過した。これで極性不純物の薄層をシリカゲルの表面に残して、産物のほぼ純粋な溶液を得た。溶剤の大部分をRotavapによって取り除き、酢酸エチルを取り除いて、そしてそのオイルを温めたヘプタン(1L)中に溶かした。その溶液を冷まし、数個のA型多形体の結晶を入れ、そして産物の沈殿が完了するまで室温で撹拌した。前記懸濁液をさらに24時間撹拌して、その後0℃に冷やして、そして吸引を用いてろ過した。回収した産物を室温で風乾して、98gのN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体を得た。先に記載のとおりDSCによって測定した場合に、融点は102.3℃だった。
【0044】
実施例3
この実施例は、N-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体の調製を説明する。
【0045】
N-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸(2.759kg、9.88モル)を、ジクロロメタン(12.5L)中に溶かして、そしてその溶液を−5℃に冷やした。そしてEDAC(2.08kg、10.9モル)及びトリエチルアミン(2.05L、14.8モル)を加えて、そしてその混合物を−5℃で1時間撹拌した。その温度で、N-ベンジルイソプロピルアミン(2.3L、13.8モル)を加えて、そしてその混合物を一晩で室温まで温めた。IPC(HPLC)が不完全な変換を示したら、追加のEDAC(0.378kg、2.0モル)及びトリエチルアミン(0.27L)を加えて、そしてその混合物を室温で3時間撹拌し続けた。その後、IPC(HPLC)がほぼ完全な変換を示したら、その反応混合を2NのHCl(15L)で洗浄した。有機層を、2NのNaOH(15L)、そして半飽和食塩水(28L)で洗浄した(全ての洗浄において緩徐型の相分離)。有機層を分離し、そして減圧下で濃縮した。ヘプタン(12L)を加えて、そして10.7Lを蒸留除去した。酢酸エチル(2L)を加えて、懸濁液を得た。50℃まで加熱して溶液を得、それを1時間以上にわたり20℃で撹拌した。その溶液を、酢酸エチル:ヘプタン、3:7(160L)ですすいでシリカゲル(12.2kg)を通してろ過した。80Lが産物を含んでいた。主な画分の前後に溶出された溶液サンプルを留去した:前の画分中に、物質は存在せず、主な画分の後の20L中に、12.5gだけ存在した。これを主な画分に加えないことを決定した。前記溶液を、反応装置中にて50℃、100〜150mbarで濃縮した。ヘプタン(28L)を加えて、そして溶液を形成させるためにその懸濁液を80℃に加熱した。週末中の撹拌の後に、その懸濁液を0℃に冷やし、そしてこの温度でさらに2時間撹拌した。前記懸濁液をろ過して、ヘプタン(3L)で洗浄し、窒素蒸気中で乾燥させて、そしてRotavapにて乾燥するまで留去して、HPLCにおいて99.82% a/aの純度の1985gのオフホワイトの固体を得た。
【0046】
実施例4
この実施例は、N-ベンジル-N'-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体の調製を同様に説明する。
【0047】
50gal(約189L)の容器に13.2kg(68.2モル、1.25当量)のEDCヒドロクロライドと、42.5kgのDMF(「ジメチルホルムアミド」)を入れて、0〜5℃に冷やした。100gal(約379L)の反応装置に14.38kg(54.5モル、1.0当量)のN-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-マロンアミド酸、3.75kg(27.2モル、0.5当量)の無水1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、及び19kgのDMFを入れた。その混合物を0〜5℃に冷やした。そして、この混合物に9.0kg(60.1モル、1.1当量)のN-イソプロピル・ベンジルアミンを加え、続いて5kgのDMFでリンスした。60Lのステンレス製のポータブル・タンク(SPAT)に8.5kg(82モル、1.5当量)のトリエチルアミンをあらかじめ入れておき、そして温度を5℃未満に維持した反応装置に移した。そして、前記50gal(約189L)の容器からのスラリーを、10℃未満の温度に維持した反応装置に移した。その混合物を20〜30℃に加熱して、この温度で12時間撹拌して、そして反応の完了についてHPLCによって分析した。前記反応混合物を、141Lの酢酸エチルで希釈して、そして56Lの水と22.6kgの塩酸を混ぜることによって調製された3Mの塩酸で処理した。その混合物を十分に撹拌して、そして下層の水層を分離し、捨てた。73Lの水と18.8kgの塩酸を混ぜることによって調製した2Mの塩酸溶液で酢酸エチル層を再び洗浄した。そして、有機層を90Lの炭酸ソーダの5%溶液と、94Lの水で洗浄した。そして、酢酸エチル層を約90Lに濃縮して、貯蔵タンクに移した。前記タンクを洗浄し、そして最終産物の分離について確認された後に、前記貯蔵タンク中の産物の酢酸エチル溶液を、インライン・フィルターを通して反応装置に戻した。容量が55Lより少なくなるまで蒸留を続け、2×103kgのヘプタンと共沸させ、そして約132Lの最終量まで濃縮した。前記混合物を70〜75℃に加熱して固体を溶かし、そして一連の勾配で15〜25℃までゆっくり冷やした。撹拌を15〜25℃で20時間続けた。前記混合物のアリコートからの固体を、ガラス漏斗でろ過して、ヘプタンで洗浄して、そして真空オーブン中で軽く乾燥させた。そして、反応装置中のスラリーを、ヌッチェ・フィルターでろ過して、ヘプタンで洗浄して、そして40℃の窒素で乾燥させた。産物を、コミル(co-mill)を通した後にまとめて19.19kgのA型多形体を得た。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】6.4°2θ〜41°2θのスケールでの、実施例2で調製されたA型多形体の粉末X線回折パターンを説明する。
【図2】異なる回折計を用いて得られた2.0°2θ〜38°2θのスケールでの、実施例2で同様に調製されたA型多形体の粉末X線回折パターンを説明する。
【図3】A型多形体のサーモグラムを説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ベンジル-N'-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドのA型多形体。
【請求項2】
約16.0、19.6、又は28.1度2θで表される特徴的ピークの少なくとも1つを有する粉末X線回折パターンを示すN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体。
【請求項3】
約16.0、19.6、及び28.1度2θで表される特徴的ピークを有する粉末X線回折パターンを示すN-ベンジル-N’-(2,6-ジイソプロピル-フェニル)-N-イソプロピル-マロンアミドの結晶性多形体。
【請求項4】
約7.3、10.3、16.5、17.9、19.1、又は20.7度2θで表される補足的ピークの少なくとも1つを示す、請求項2又は3に記載の結晶性多形体。
【請求項5】
約7.3、10.3、10.8、11.3、12.1、14.6、14.9、16.5、17.9、18.1、18.9、19.1、20.7、21.8、22.9、23.2、25.0、又は26.0度2θで表される補足的ピークの少なくとも2つを示す、請求項2又は3に記載の結晶性多形体。
【請求項6】
少なくとも1種類の医薬として許容される賦形剤との混合物の状態で、請求項1〜5のいずれか1項に記載の多形体を含む医薬組成物。
【請求項7】
皮膚病用薬剤の製造における請求項1〜5のいずれか1項に記載の多形体の使用。
【請求項8】
皮脂分泌を減少させるための薬剤の製造における請求項1〜5のいずれか1項に記載の多形体の使用。
【請求項9】
前記病気が、にきび及び脂性肌から成る群から選ばれる、請求項7に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−232835(P2006−232835A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−46629(P2006−46629)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】