結晶質固体のラサジリン塩基
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン、その医薬組成物、およびその製造方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願を通して、種々の出版物、公開された特許出願および公開された特許が参照されている。本発明が関連する技術の状態をより完全に述べるために、これらの出版物の開示は、その全体が本明細書の一部として援用される。
【0002】
米国特許第5,532,415号、第5,387,612号、第5,453,446号、第5,457,133号、第5,599,991号、第5,744,500号、第5,891,923号、第5,668,181号、第5,576,353号、第5,519,061号、第5,786,390号、第6,316,504号、第6,630,514号では、ラサジリンとしても既知のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン(R-PAI)を開示している。ラサジリンは、酵素モノアミンオキシダーゼ(MAO-B)のB型の選択的阻害剤であることが報告されており、脳においてMAO-Bを阻害することにより、パーキンソン病および他の種々の状態を治療することにおいて有用である。米国特許第6,126,968号およびPCT公開公報WO 95/11016では、ラサジリン塩を含んでなる医薬組成物を開示している。
【0003】
ラサジリンメシレートは、単剤治療または他の治療と組み合わせて、パーキンソン病の治療に適用される。例えば、アジレクト(AGILECT:登録商標)のPhysician’s Desk Reference (2006), 60th Edition, Thomson Healthcareを参照されたい。
【0004】
ラサジリンの合成は、米国特許第5,532,415号に開示されており、実施例3では、クロマトグラフィー分離の後に油としてラサジリン塩基を回収することが記載されている。米国特許第5,532,415号における他の合成例は、ラサジリンの粗製形態またはそのラセミ形態から、さらに適切な酸と反応させて、薬学的に許容可能な塩を形成するラサジリン塩の調製について示している。
【0005】
しかしながら、ラサジリン遊離塩基の結晶形態の存在または調製については、当該分野で開示されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを提供する。
【0007】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;b)前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;c)前記溶液をpH約11に塩基性化して、懸濁液を得る工程と;d)前記懸濁液から、前記結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0008】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;b)前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;c)前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;d)前記第2の有機溶液から前記第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;e)前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0009】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)水溶性有機溶媒中の、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;b)前記溶液を水と混合する工程と;c)前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;d)結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程とを含んでなる方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例4に従って調製したラサジリン塩基のX線回折を示す図である。
【図2】図2は、実施例4に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例6に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例7に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例8aに従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】図8は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図9】図9は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図10】図10は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図11】図11は、実施例9に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図12】図12は、実施例10に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを提供する。
【0012】
本発明は、2θ±0.2が8.5°、12.6°、16.1°、および16.9°にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられるR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンも提供する。それはさらに、2θ±0.2が20.3°、20.9°、25.4°、26.4°、および28.3°にピークを有する粉末X線回折パターン;または38〜41℃の融点により特徴付けられる。
【0013】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンおよび薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物も提供する。
【0014】
前記医薬組成物は、経皮的な適用のために構築されてよい。前記医薬組成物は、経皮パッチの形態であってよい。
【0015】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;b)前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;c)前記溶液をpH約11に塩基性化する工程と;d)懸濁液から、前記結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0016】
前記方法の実施形態において、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高い。
【0017】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;b)前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;c)前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;d)前記第2の有機溶液から第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、第2の残留物を得る工程と;e)前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0018】
前記方法の実施形態において、前記有機溶媒と第2の有機溶媒は同じである。
もう1つの実施形態において、前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はアルコールである。
さらにもう1つの実施形態において、前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はイソプロパノールである。
【0019】
前記方法のさらに他の実施形態において、前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンよりも光学純度が高い。
【0020】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)水溶性有機溶媒中の、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;b)前記溶液を水と混合する工程と;c)前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;d)結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程とを含んでなる方法も提供する。
【0021】
前記方法の実施形態において、前記水溶性有機溶媒はアルコールである。
もう1つの実施形態において、前記アルコールは、エタノールもしくはイソプロパノールまたはエタノールとイソプロパノールの混合物である。
【0022】
前記方法のさらにもう1つの実施形態において、前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高い。
【0023】
医薬組成物の開発において、結晶化度は、活性医薬成分において望ましい性質である。結晶物質は、ほとんどのタイプの医薬投与形態に容易に加工および製剤化することを可能にする。
【0024】
以前に、ラサジリン塩基は、結晶質固体ではなくオイルとして単離されている。理論により縛られることなく、ラサジリンは、トルエンまたはイソプロパノールのような残留溶媒の存在により、オイルとして単離することが以前から可能である。発明者らは、驚くべきことに、室温で結晶の状態で、非吸湿性の形態で、ラサジリン塩基を単離することを見出した。
【0025】
結晶性のラサジリン塩基は、多くのラサジリン塩、特に、水溶性であるメシレート塩よりも水溶性に乏しい。ラサジリンメシレートの水溶性は、pH 6.7において92 mg/ml、pH 3.3において570 mg/ml(共に25℃で測定)である。同じ温度において、ラサジリン塩基の水溶性は、pH 11において5.5 mg/mlである。
【0026】
結晶性のラサジリン塩基は、ラサジリンメシレートまたはラサジリンタータラートのようなラサジリン塩を得るために使用される合成中間体として使用されてよい。結晶性のラサジリン塩基は、溶媒に溶解され、酸と反応して、薬学的に許容可能な酸付加塩を形成してよい。ラサジリン塩基の結晶化は、酸付加塩の付加的な精製を提供する。
【0027】
水溶性は、特に経口組成物を構築する場合に、しばしば活性医薬成分の重要な特性になる。活性医薬成分の親油性は、他の医薬組成物を構築する場合に望まれる。結晶性のラサジリン塩基は、医薬組成物を構築するのに有用であり、水溶性が低いことが望ましい。例えば、経皮投与のための組成物は、親油性の化合物から構築され得る。そのような経皮組成物の例には、軟膏、クリームおよびパッチが含まれる。
【0028】
経皮製剤および経皮パッチ
経皮パッチは、皮膚を介して薬物の徐放の用量を血流中に送達するために、皮膚上に置かれる薬用の接着性のパッチである。広範な種類の薬物が経皮パッチを通して送達され、例えば、禁煙のためのニコチン、動揺病に対するスコポラミン、閉経および骨粗しょう症の予防に対するエストロゲン、狭心症に対するニトログリセリン、帯状疱疹に由来する痛み軽減のためのリドカインが挙げられる。いくつかの薬物は、皮膚に浸入する能力を増大させるために、アルコールのような他の物質と組み合わせる必要がある。しかしながら、インスリン分子および多くの他の医薬は、皮膚を介して通るには大きすぎる。経皮パッチは、保管の間にパッチを保護する裏地(liner)、薬物、接着剤、膜(貯蔵場所からの薬物の放出を制御する)、および外界からパッチを保護するための裏地(backing)を含むいくつかの重要な成分を有する。2つの最も一般的なタイプの経皮パッチは、マトリックスおよびレザバー(reservoir)タイプである(”Transdermal Patches”, Wikipedia, November 15, 2007, Wikipedia Foundation, Inc., Desember 13, 2007 http://en.wikipedia.org/wiki/Transdermal_patch; and Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2000)。
【0029】
レザバータイプのパッチにおいて、薬物は、鉱油のような不揮発性の不活性な液体と組み合わされ、一方、マトリックスタイプのパッチにおいては、薬物は、アクリルポリマーまたはビニルポリマーのような親油性または親水性のポリマーマトリックス中に分散される。ポリイソブチレンのような接着性のポリマーは、皮膚の所定の位置にパッチを固定するために使用される(Stanley Scheindlin, (2004) “Transdermal Drug Delivery: PAST, PRESENT, FUTURE, “Molecular Interventions, 4:308-312)。
【0030】
経皮的な薬物送達に対する主要な制限は、皮膚の内因性のバリヤーの性質である。皮膚表面を破壊し、より早く薬物を送達するために、浸透増強剤がしばしば経皮製剤に添加される。典型的な浸透増強剤には、高沸点アルコール、ジオール、脂肪酸エステル、オレイン酸およびグリセリドベースの溶媒が含まれ、一般的に、1〜20%(w/w)の濃度で添加される(Melinda Hopp, “Developing Custom Adhesive Systems for Transdermal Drug Delivery Products,” Drug Delivery)。
【0031】
ラサジリンは、経皮パッチにおいて、レボドパ、L-カルビドパ、ベセラジド、ラドスチジル、ペンタヒドロアルコール、ヘキサヒドロアルコール、またはリルゾール(riluzole)のような他の薬物と組み合わせて使用されてもよい。
【実施例】
【0032】
実施例1−分離および抽出によるラサジリン塩基の単離
NaOHの添加により酒石酸塩が分離されること、およびラサジリン遊離塩基が油として単離されることを除いて、ラサジリンメシレートは、本質的に、米国特許第5,532,415号の実施例6Bに記載されているように調製された。メシレート塩は、その後、メタンスルホン酸の添加により形成された。
【0033】
120gのラサジリンメシレートを、700mlの脱イオン化水に溶解した。400mlのトルエンを加え、混合物を25%のNaOH溶液でpH約14に塩基性化した。撹拌した後、2相に分離した。下の水相を200mlのトルエンで抽出した。相を分離し、水性の相を捨てた。
【0034】
2つのトルエン性の抽出物を混合し、減圧下で溶媒を蒸留した。ラサジリン塩基の収量は、黄色がかった88.5gの油であり、融点は20℃以下であった。
【0035】
25.1gの液体ラサジリン塩基を採取した。サンプルをエタノールと混合し、溶媒を減圧下で蒸留した。22.6gのラサジリン塩基残留物は、エタノール蒸発の後も黄色がかった油の形態のままであった。油の形態のラサジリン塩基は、何週間たっても油の形態のままであり、自然に結晶化しなかった。
【0036】
実施例2−分離および抽出によるラサジリン塩基の単離
本質的に米国特許第5,532,415号の実施例6Bに記載されているように調製されたラサジリンタータラート155gと、実施例1に記載したように調製したラサジリンメシレート20gを、800mlの水に溶解した。400mlのトルエンを溶液に加え、25%NaOH溶液を用いて混合物をpH約14に塩基性化し、45±5℃まで加熱した。
【0037】
撹拌した後、2相に分離した。下の水相を、45±5℃において、300mlのトルエンで2回抽出した。有機相を混合し、水性の相を捨てた。
【0038】
混合された有機相を、200mlの脱イオン化水で洗浄した。その後、溶媒を減圧下で蒸留し、得られた残留物に50mlのイソプロパノールを加えた。溶媒を減圧により除去し、さらに50mlのイソプロパノールを加え、その後、減圧により除去した。100gのシロップのような液体のラサジリン塩基が得られた。
【0039】
実施例3−分離および水からの自発的な再結晶化
15gのラサジリンメシレートを、撹拌しながら150mlの水に溶解した。溶液を5℃まで冷却し、25%NaOH溶液をゆっくりと加えた。添加の間、バッチ温度は3〜5℃に維持した。pH7.5に到達した後、固体の沈殿が観察された。pH11に到達した後、NaOH添加をやめ、1時間冷却しながらバッチを撹拌し、ろ過した。ろ過の工程は素早く行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧乾燥した。
【0040】
8.8gの固体の乾燥したラサジリン塩基が得られた。収率は91.6%であった。固体の融点は、38.2〜38.4度であると測定された。
【0041】
実施例4−融解結晶化(melt crystallization)
実施例1により得られたシロップ様の形態のラサジリン塩基の液体6gを、トルエン蒸発の後、20mlのイソプロパノールに溶解した。12mbarの減圧下、回転式のエバポレーターを用いて、温水浴中で蒸発させ、溶媒を完全に除去した。その後、残留物をさらに20mlのイソプロパノールに溶解し、蒸発を繰り返した。数時間後、得られた残留物を室温で自然に結晶化した。固体の結晶残留物は、ラサジリン塩基であることが決定された。5.2gの固体の結晶性塩基が得られた。収量は、定量的であった。
【0042】
実施例5−ラサジリンエタノール溶液の水への添加
実施例1で得られたラサジリン塩基2.4gを、2.4gのエタノールに溶解した。撹拌しながら、溶液を5mlの冷水(0〜5℃)に滴下し、添加の間に白い沈殿物が形成された。得られた混合物を、約30分間冷却しながら撹拌し、ろ過した。ろ過をすばやく行い、固体の生成物を乾燥し、減圧下で一定の量にした。
【0043】
2.15gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は89.6%であった。
【0044】
分析;HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−99.0%。
【0045】
実施例6−ラサジリンエタノール溶液への水の添加
実施例1で得られたラサジリン塩基3gを、5mlのエタノールに溶解した。溶液を室温で撹拌し、4.5mlの水を加えた。沈殿は生じなかった。得られた溶液を冷却し、12℃で白い物質の沈殿を得た。混合物を0℃に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。ろ過はすばやく行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0046】
2.72gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は90.0%であった。
【0047】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−100.0%。
【0048】
実施例7−ラサジリンイソプロパノール溶液の水への添加
実施例1で得られたラサジリン塩基8.2gを、10mlのイソプロパノールに溶解し、溶液を室温で撹拌した。14mlの水を加えた。沈殿は生じなかった。得られる溶液を冷却し、17℃で白い物質の沈殿が観察された。20mlの脱イオン化水を混合物に加え、混合物をさらに0℃以下に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。
【0049】
ろ過はすばやく行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧下で乾燥した。5.96gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は72.7%であった。
【0050】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−99.7%。
【0051】
実施例8−ラサジリンイソプロパノール溶液への水の添加
産物A
148gのラサジリン塩基(実施例1から48,0g、実施例2から100.0g)を180mlのイソプロパノールに溶解した。溶液を17℃に冷却し、252mlの脱イオン化水をこの温度で加えた。溶液を10℃に冷却し、固体のラサジリン塩基を蒔いた。直ちに結晶化が観察された。その後、100mlの水を混合物に加えた。混合物を1℃に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。固体をフィルター上で200mlの水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0052】
138.9gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は93.8%であった。オープンキャピラリーにおける融点は、39.0〜39.2℃であると測定された。
【0053】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−98.5%。
【0054】
産物B
産物Aの母液および洗浄液を混合し、混合物から固体の生成物を沈殿させた。黄色がかった物質がろ過により分離され、減圧下で乾燥した。
【0055】
1.5gの固体の結晶性ラサジリン塩基が得られ、収率は1.0%であった。
【0056】
考察
実施例3〜8において合成された固体の結晶性ラサジリン塩基は、高い純度であることがわかった。
【0057】
結晶性ラサジリン塩基の全てのバッチについて、同じ融点の値(示差走査熱量測定(DSC)によると41℃、オープンキャピラリーによると38〜39℃)が測定された。低いレベルの揮発性(水および残留する溶媒)がカールフィッシャー(KF)および熱重量分析(TGA)法により見られた。このことは、結晶性のラサジリン塩基が吸湿性でないことを示す。
【0058】
結晶性ラサジリン塩基は、極性および非極性の有機溶媒−アルコール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ヘキサンおよびn−ヘプタンに自由に溶解することが分かった。
【0059】
全てのバッチの固体のラサジリン塩基は、粉末X線回折(XRD)およびDSC法により高い結晶性が見られた。特徴的なXRDおよびフーリエ転移赤外(FTIR)パターンならびに再現性の狭い融点範囲およびエンタルピーは、実施例3〜8における全ての実験バッチが同じ多型の組成であることを示す。結晶形態は、形態Iとして示した。
【0060】
使用したX線回折装置は、Scintag X線粉末回折計モデルX’TRA、Cu-チューブ、固体状態検出器である。
【0061】
サンプルホルダー:丸い標準のアルミニウムサンプルホルダーであり、直径25mm、深さ0.5mmの空洞を有するラウンドゼロバックグラウンド石英プレートを有する
スキャンパラメータ:範囲:2〜40°2θ
スキャンモード:連続的なスキャン
ステップサイズ:0.05°
速度:5°/分。
【0062】
実施例4により調製されたサンプルのピークを以下に示す。最も特徴的なピークは、太字で示す。
【表1】
【0063】
サンプルのFTIR分析は、以下のように行った:
装置:パーキンエルマースペクトラムワンFT−IRスペクトロメーターS/N58001
パラメータ:サンプルは、DRIFTモードで試験した。全てのスペクトルは、16スキャンで測定した
解像度:4.0cm−1。
【0064】
この試験において調製した固体のラサジリン塩基の全てのサンプルは、白い結晶性の粉末として得られた(黄色がかった粉末として単離された産物Bを除く)。顕微鏡観察は、結晶化条件が粒子サイズおよび形態に大きく影響を及ぼすことを示す。種をまくことによる(seeded)結晶化は、大きな定型的な非凝集性の結晶を提供し、一方、自発的な沈殿は、小さな凝集性の粒子を形成した。粒子形態における相違は、多型性には関係しない。
【0065】
上記実施例による結晶性のラサジリン塩基の形態および粒子サイズを、以下の表に示す。形態および粒子サイズは、顕微鏡観察により決定した。
【表2】
【0066】
実施例9、10および11についての出発物質:
(1)〜10-15%の残留溶媒および0.7%のSアイソマーを含む湿ったラサジリンヘミタータラート
(2)ラセミのRAI塩基、油状、PAI含量−HPLCにより94%。
【0067】
実施例9−分離およびイソプロパノール水からの沈殿、種をまくことによるエマルジョン結晶化
70.0gのラサジリン酒石酸塩(1)を、撹拌しながら320mlの脱イオン化水に懸濁した。懸濁液を45℃に加熱し、31mlの25% NaOH溶液を160mlのトルエンと共に加えた。混合物を撹拌し、得られるエマルジョンを静置した。下の水相(pH=13〜14)を捨てた。上のトルエン相を、45℃で、100mlの脱イオン化水で洗浄し、静置した。下の水相(pH=9〜10)を捨てた。
【0068】
トルエン溶液を、エバポレーターにおいて減圧下で蒸発させ、溶媒の蒸発が完了した後、50mlのイソプロパノールを残留物に加え、蒸発を続けた。
【0069】
蒸発の完了後、25mlのイソプロパノールを加え、同じ条件下で蒸留した。
R-PAI塩基のオイル(33.9g)の残留物を41mlのイソプロパノールに溶解した。
【0070】
溶液を15℃に冷却し、58mlの脱イオン化水を冷却および撹拌しながら2時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に、油状の沈殿が形成された。得られる水中油型のエマルジョンを1〜3℃で1時間撹拌し、結晶化は観察されなかった。
【0071】
1〜3℃において、結晶性のラサジリン塩基がバッチに蒔かれ、直ちに発熱性の結晶化が起こった。得られたスラリーに50mlの水を加え、撹拌性および流動性を改善した。バッチをさらに30分間撹拌し、ろ過した。固体を水で洗浄し、室温、減圧下で乾燥した。
【0072】
31.5gの固体の乾燥したR-PAI塩基が得られ、収率はオイルベースで92%であった。図11は、このラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【0073】
分析:融点(DSCによる)−40.8℃、HPLCによるSアイソマー0.02%、HPLCによる純度−100%、HPLCによる分析−98%。
【0074】
実施例10−分離およびイソプロパノール水からの沈殿、種をまくことによるイソプロパノール水溶液からの結晶化
100.0gのラサジリンタータラート(1)を458mlの脱イオン化水に懸濁し、229mlのトルエンを加え、25% NaOH溶液46mlを撹拌しながら加えた。混合物を45℃まで加熱し、45℃で15分間撹拌し、この温度で静置した。
【0075】
2相に分離された。下の水相(PH=13〜14)を捨て、上のトルエン相を140mlの脱イオン化水で洗浄した。得られるエマルジョンを静置し、2相に分離した。下の水相(pH=9〜10)を捨て、トルエン溶液をエバポレーター中において減圧下で蒸発させた。
【0076】
溶媒の蒸発が完了した後、60mlのイソプロパノールを残留物に加え、蒸発を続けた。
蒸発の完了後、50mlのイソプロパノールを加え、同じ条件下で蒸留した。
R-PAI塩基のオイル(46.4g)の残留物を56mlのイソプロパノールに溶解した。
【0077】
溶液を16℃に冷却し、147.5mlの脱イオン化水を冷却および撹拌しながら4時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に沈殿の発達が観察され、直ちにバッチに結晶性R-PAIがまかれた。
【0078】
得られる懸濁液を2℃に冷却し、この温度で一晩撹拌し、ろ過した。固体を水で洗浄し、減圧下、室温で乾燥した。
【0079】
48.1gの固体の乾燥R-PAI塩基が得られ、収率はオイルベースで96%であった。図12は、このラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【0080】
分析:融点(DSCによる)−41.3℃、HPLCによるS-アイソマー0.01%、HPLCによる純度−100%、HPLCによる分析−96%。
【0081】
実施例11−イソプロパノール水からのラセミのPAI塩基結晶化(AF-8026)沈殿
51.0gのラセミのPAI塩基オイル(2)を、50mlのイソプロパノールに溶解した。エバポレーターにおいて、減圧下、溶液の溶媒を蒸留した。
【0082】
残留物(49.4g)を60mlイソプロパノールに溶解し、撹拌し、冷却した。冷却および撹拌しながら、156mlの脱イオン化水を3時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に、油状の沈殿が形成された。結晶性のラサジリン塩基をバッチにまいても結晶化は観察されなかった。
【0083】
得られた水中油型のエマルジョンを3℃で1時間撹拌しても結晶化は観察されなかった。
バッチを1℃で一晩撹拌し、自然に結晶化させた。固体をろ過したが、ろ過の間に融け始めた。室温において、1〜2分以内にフィルター上で、固体生成物は完全に液化した。
この物質は、完全に融解する前にサンプルとした。
【0084】
分析:HPLCによるS-アイソマー49.4%、HPLCによる分析−87%。
【0085】
考察
上記実施例9、10、および11は、室温において結晶化する能力が、純粋なラサジリン塩基(Rアイソマー)に固有の性質であることを示す。ラセミのPAI塩基は、室温では液体形態でのみ存在し、その融点は1〜18℃である(実施例11)。
【0086】
実施例は、Sアイソマーが混入したラサジリン塩基の結晶化が、結晶化生成物の有意な精製を提供することも示す。0.7%のSアイソマーを含有する出発物質は、わずか0.01〜0.02%のSアイソマーを含む固体の結晶性ラサジリン塩基となった。
【0087】
実施例9、10および11は、先行する実施例に記載されているのと同じような結晶化生成物の粒子サイズにおける傾向を示す。10〜16℃における遅い種をまくことによる結晶化(実施例9)は、1〜3℃におけるエマルジョン結晶化(実施例10)よりも大きな粒子サイズのラサジリン塩基を提供する。
【背景技術】
【0001】
本願を通して、種々の出版物、公開された特許出願および公開された特許が参照されている。本発明が関連する技術の状態をより完全に述べるために、これらの出版物の開示は、その全体が本明細書の一部として援用される。
【0002】
米国特許第5,532,415号、第5,387,612号、第5,453,446号、第5,457,133号、第5,599,991号、第5,744,500号、第5,891,923号、第5,668,181号、第5,576,353号、第5,519,061号、第5,786,390号、第6,316,504号、第6,630,514号では、ラサジリンとしても既知のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン(R-PAI)を開示している。ラサジリンは、酵素モノアミンオキシダーゼ(MAO-B)のB型の選択的阻害剤であることが報告されており、脳においてMAO-Bを阻害することにより、パーキンソン病および他の種々の状態を治療することにおいて有用である。米国特許第6,126,968号およびPCT公開公報WO 95/11016では、ラサジリン塩を含んでなる医薬組成物を開示している。
【0003】
ラサジリンメシレートは、単剤治療または他の治療と組み合わせて、パーキンソン病の治療に適用される。例えば、アジレクト(AGILECT:登録商標)のPhysician’s Desk Reference (2006), 60th Edition, Thomson Healthcareを参照されたい。
【0004】
ラサジリンの合成は、米国特許第5,532,415号に開示されており、実施例3では、クロマトグラフィー分離の後に油としてラサジリン塩基を回収することが記載されている。米国特許第5,532,415号における他の合成例は、ラサジリンの粗製形態またはそのラセミ形態から、さらに適切な酸と反応させて、薬学的に許容可能な塩を形成するラサジリン塩の調製について示している。
【0005】
しかしながら、ラサジリン遊離塩基の結晶形態の存在または調製については、当該分野で開示されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを提供する。
【0007】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;b)前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;c)前記溶液をpH約11に塩基性化して、懸濁液を得る工程と;d)前記懸濁液から、前記結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0008】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;b)前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;c)前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;d)前記第2の有機溶液から前記第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;e)前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0009】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)水溶性有機溶媒中の、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;b)前記溶液を水と混合する工程と;c)前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;d)結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程とを含んでなる方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例4に従って調製したラサジリン塩基のX線回折を示す図である。
【図2】図2は、実施例4に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例6に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、実施例7に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例8aに従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図8】図8は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図9】図9は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図10】図10は、実施例5に従って調製したラサジリン塩基のFTIRスペクトルを示す図である。
【図11】図11は、実施例9に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【図12】図12は、実施例10に従って調製したラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【発明の詳細な説明】
【0011】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを提供する。
【0012】
本発明は、2θ±0.2が8.5°、12.6°、16.1°、および16.9°にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられるR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンも提供する。それはさらに、2θ±0.2が20.3°、20.9°、25.4°、26.4°、および28.3°にピークを有する粉末X線回折パターン;または38〜41℃の融点により特徴付けられる。
【0013】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンおよび薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物も提供する。
【0014】
前記医薬組成物は、経皮的な適用のために構築されてよい。前記医薬組成物は、経皮パッチの形態であってよい。
【0015】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;b)前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;c)前記溶液をpH約11に塩基性化する工程と;d)懸濁液から、前記結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0016】
前記方法の実施形態において、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高い。
【0017】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;b)前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;c)前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;d)前記第2の有機溶液から第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、第2の残留物を得る工程と;e)前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程とを含んでなる方法も提供する。
【0018】
前記方法の実施形態において、前記有機溶媒と第2の有機溶媒は同じである。
もう1つの実施形態において、前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はアルコールである。
さらにもう1つの実施形態において、前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はイソプロパノールである。
【0019】
前記方法のさらに他の実施形態において、前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンよりも光学純度が高い。
【0020】
本発明は、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法であって:a)水溶性有機溶媒中の、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;b)前記溶液を水と混合する工程と;c)前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;d)結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程とを含んでなる方法も提供する。
【0021】
前記方法の実施形態において、前記水溶性有機溶媒はアルコールである。
もう1つの実施形態において、前記アルコールは、エタノールもしくはイソプロパノールまたはエタノールとイソプロパノールの混合物である。
【0022】
前記方法のさらにもう1つの実施形態において、前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高い。
【0023】
医薬組成物の開発において、結晶化度は、活性医薬成分において望ましい性質である。結晶物質は、ほとんどのタイプの医薬投与形態に容易に加工および製剤化することを可能にする。
【0024】
以前に、ラサジリン塩基は、結晶質固体ではなくオイルとして単離されている。理論により縛られることなく、ラサジリンは、トルエンまたはイソプロパノールのような残留溶媒の存在により、オイルとして単離することが以前から可能である。発明者らは、驚くべきことに、室温で結晶の状態で、非吸湿性の形態で、ラサジリン塩基を単離することを見出した。
【0025】
結晶性のラサジリン塩基は、多くのラサジリン塩、特に、水溶性であるメシレート塩よりも水溶性に乏しい。ラサジリンメシレートの水溶性は、pH 6.7において92 mg/ml、pH 3.3において570 mg/ml(共に25℃で測定)である。同じ温度において、ラサジリン塩基の水溶性は、pH 11において5.5 mg/mlである。
【0026】
結晶性のラサジリン塩基は、ラサジリンメシレートまたはラサジリンタータラートのようなラサジリン塩を得るために使用される合成中間体として使用されてよい。結晶性のラサジリン塩基は、溶媒に溶解され、酸と反応して、薬学的に許容可能な酸付加塩を形成してよい。ラサジリン塩基の結晶化は、酸付加塩の付加的な精製を提供する。
【0027】
水溶性は、特に経口組成物を構築する場合に、しばしば活性医薬成分の重要な特性になる。活性医薬成分の親油性は、他の医薬組成物を構築する場合に望まれる。結晶性のラサジリン塩基は、医薬組成物を構築するのに有用であり、水溶性が低いことが望ましい。例えば、経皮投与のための組成物は、親油性の化合物から構築され得る。そのような経皮組成物の例には、軟膏、クリームおよびパッチが含まれる。
【0028】
経皮製剤および経皮パッチ
経皮パッチは、皮膚を介して薬物の徐放の用量を血流中に送達するために、皮膚上に置かれる薬用の接着性のパッチである。広範な種類の薬物が経皮パッチを通して送達され、例えば、禁煙のためのニコチン、動揺病に対するスコポラミン、閉経および骨粗しょう症の予防に対するエストロゲン、狭心症に対するニトログリセリン、帯状疱疹に由来する痛み軽減のためのリドカインが挙げられる。いくつかの薬物は、皮膚に浸入する能力を増大させるために、アルコールのような他の物質と組み合わせる必要がある。しかしながら、インスリン分子および多くの他の医薬は、皮膚を介して通るには大きすぎる。経皮パッチは、保管の間にパッチを保護する裏地(liner)、薬物、接着剤、膜(貯蔵場所からの薬物の放出を制御する)、および外界からパッチを保護するための裏地(backing)を含むいくつかの重要な成分を有する。2つの最も一般的なタイプの経皮パッチは、マトリックスおよびレザバー(reservoir)タイプである(”Transdermal Patches”, Wikipedia, November 15, 2007, Wikipedia Foundation, Inc., Desember 13, 2007 http://en.wikipedia.org/wiki/Transdermal_patch; and Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2000)。
【0029】
レザバータイプのパッチにおいて、薬物は、鉱油のような不揮発性の不活性な液体と組み合わされ、一方、マトリックスタイプのパッチにおいては、薬物は、アクリルポリマーまたはビニルポリマーのような親油性または親水性のポリマーマトリックス中に分散される。ポリイソブチレンのような接着性のポリマーは、皮膚の所定の位置にパッチを固定するために使用される(Stanley Scheindlin, (2004) “Transdermal Drug Delivery: PAST, PRESENT, FUTURE, “Molecular Interventions, 4:308-312)。
【0030】
経皮的な薬物送達に対する主要な制限は、皮膚の内因性のバリヤーの性質である。皮膚表面を破壊し、より早く薬物を送達するために、浸透増強剤がしばしば経皮製剤に添加される。典型的な浸透増強剤には、高沸点アルコール、ジオール、脂肪酸エステル、オレイン酸およびグリセリドベースの溶媒が含まれ、一般的に、1〜20%(w/w)の濃度で添加される(Melinda Hopp, “Developing Custom Adhesive Systems for Transdermal Drug Delivery Products,” Drug Delivery)。
【0031】
ラサジリンは、経皮パッチにおいて、レボドパ、L-カルビドパ、ベセラジド、ラドスチジル、ペンタヒドロアルコール、ヘキサヒドロアルコール、またはリルゾール(riluzole)のような他の薬物と組み合わせて使用されてもよい。
【実施例】
【0032】
実施例1−分離および抽出によるラサジリン塩基の単離
NaOHの添加により酒石酸塩が分離されること、およびラサジリン遊離塩基が油として単離されることを除いて、ラサジリンメシレートは、本質的に、米国特許第5,532,415号の実施例6Bに記載されているように調製された。メシレート塩は、その後、メタンスルホン酸の添加により形成された。
【0033】
120gのラサジリンメシレートを、700mlの脱イオン化水に溶解した。400mlのトルエンを加え、混合物を25%のNaOH溶液でpH約14に塩基性化した。撹拌した後、2相に分離した。下の水相を200mlのトルエンで抽出した。相を分離し、水性の相を捨てた。
【0034】
2つのトルエン性の抽出物を混合し、減圧下で溶媒を蒸留した。ラサジリン塩基の収量は、黄色がかった88.5gの油であり、融点は20℃以下であった。
【0035】
25.1gの液体ラサジリン塩基を採取した。サンプルをエタノールと混合し、溶媒を減圧下で蒸留した。22.6gのラサジリン塩基残留物は、エタノール蒸発の後も黄色がかった油の形態のままであった。油の形態のラサジリン塩基は、何週間たっても油の形態のままであり、自然に結晶化しなかった。
【0036】
実施例2−分離および抽出によるラサジリン塩基の単離
本質的に米国特許第5,532,415号の実施例6Bに記載されているように調製されたラサジリンタータラート155gと、実施例1に記載したように調製したラサジリンメシレート20gを、800mlの水に溶解した。400mlのトルエンを溶液に加え、25%NaOH溶液を用いて混合物をpH約14に塩基性化し、45±5℃まで加熱した。
【0037】
撹拌した後、2相に分離した。下の水相を、45±5℃において、300mlのトルエンで2回抽出した。有機相を混合し、水性の相を捨てた。
【0038】
混合された有機相を、200mlの脱イオン化水で洗浄した。その後、溶媒を減圧下で蒸留し、得られた残留物に50mlのイソプロパノールを加えた。溶媒を減圧により除去し、さらに50mlのイソプロパノールを加え、その後、減圧により除去した。100gのシロップのような液体のラサジリン塩基が得られた。
【0039】
実施例3−分離および水からの自発的な再結晶化
15gのラサジリンメシレートを、撹拌しながら150mlの水に溶解した。溶液を5℃まで冷却し、25%NaOH溶液をゆっくりと加えた。添加の間、バッチ温度は3〜5℃に維持した。pH7.5に到達した後、固体の沈殿が観察された。pH11に到達した後、NaOH添加をやめ、1時間冷却しながらバッチを撹拌し、ろ過した。ろ過の工程は素早く行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧乾燥した。
【0040】
8.8gの固体の乾燥したラサジリン塩基が得られた。収率は91.6%であった。固体の融点は、38.2〜38.4度であると測定された。
【0041】
実施例4−融解結晶化(melt crystallization)
実施例1により得られたシロップ様の形態のラサジリン塩基の液体6gを、トルエン蒸発の後、20mlのイソプロパノールに溶解した。12mbarの減圧下、回転式のエバポレーターを用いて、温水浴中で蒸発させ、溶媒を完全に除去した。その後、残留物をさらに20mlのイソプロパノールに溶解し、蒸発を繰り返した。数時間後、得られた残留物を室温で自然に結晶化した。固体の結晶残留物は、ラサジリン塩基であることが決定された。5.2gの固体の結晶性塩基が得られた。収量は、定量的であった。
【0042】
実施例5−ラサジリンエタノール溶液の水への添加
実施例1で得られたラサジリン塩基2.4gを、2.4gのエタノールに溶解した。撹拌しながら、溶液を5mlの冷水(0〜5℃)に滴下し、添加の間に白い沈殿物が形成された。得られた混合物を、約30分間冷却しながら撹拌し、ろ過した。ろ過をすばやく行い、固体の生成物を乾燥し、減圧下で一定の量にした。
【0043】
2.15gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は89.6%であった。
【0044】
分析;HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−99.0%。
【0045】
実施例6−ラサジリンエタノール溶液への水の添加
実施例1で得られたラサジリン塩基3gを、5mlのエタノールに溶解した。溶液を室温で撹拌し、4.5mlの水を加えた。沈殿は生じなかった。得られた溶液を冷却し、12℃で白い物質の沈殿を得た。混合物を0℃に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。ろ過はすばやく行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0046】
2.72gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は90.0%であった。
【0047】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−100.0%。
【0048】
実施例7−ラサジリンイソプロパノール溶液の水への添加
実施例1で得られたラサジリン塩基8.2gを、10mlのイソプロパノールに溶解し、溶液を室温で撹拌した。14mlの水を加えた。沈殿は生じなかった。得られる溶液を冷却し、17℃で白い物質の沈殿が観察された。20mlの脱イオン化水を混合物に加え、混合物をさらに0℃以下に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。
【0049】
ろ過はすばやく行った。固体の生成物をフィルター上で水で洗浄し、減圧下で乾燥した。5.96gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は72.7%であった。
【0050】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−99.7%。
【0051】
実施例8−ラサジリンイソプロパノール溶液への水の添加
産物A
148gのラサジリン塩基(実施例1から48,0g、実施例2から100.0g)を180mlのイソプロパノールに溶解した。溶液を17℃に冷却し、252mlの脱イオン化水をこの温度で加えた。溶液を10℃に冷却し、固体のラサジリン塩基を蒔いた。直ちに結晶化が観察された。その後、100mlの水を混合物に加えた。混合物を1℃に冷却し、その温度で30分間撹拌し、ろ過した。固体をフィルター上で200mlの水で洗浄し、減圧下で乾燥した。
【0052】
138.9gの固体の結晶性ラサジリンが得られ、収率は93.8%であった。オープンキャピラリーにおける融点は、39.0〜39.2℃であると測定された。
【0053】
分析:HPLCによるクロマトグラフィー純度〜100%、HPLCによる分析−98.5%。
【0054】
産物B
産物Aの母液および洗浄液を混合し、混合物から固体の生成物を沈殿させた。黄色がかった物質がろ過により分離され、減圧下で乾燥した。
【0055】
1.5gの固体の結晶性ラサジリン塩基が得られ、収率は1.0%であった。
【0056】
考察
実施例3〜8において合成された固体の結晶性ラサジリン塩基は、高い純度であることがわかった。
【0057】
結晶性ラサジリン塩基の全てのバッチについて、同じ融点の値(示差走査熱量測定(DSC)によると41℃、オープンキャピラリーによると38〜39℃)が測定された。低いレベルの揮発性(水および残留する溶媒)がカールフィッシャー(KF)および熱重量分析(TGA)法により見られた。このことは、結晶性のラサジリン塩基が吸湿性でないことを示す。
【0058】
結晶性ラサジリン塩基は、極性および非極性の有機溶媒−アルコール、アセトン、酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル、ジオキサン、ヘキサンおよびn−ヘプタンに自由に溶解することが分かった。
【0059】
全てのバッチの固体のラサジリン塩基は、粉末X線回折(XRD)およびDSC法により高い結晶性が見られた。特徴的なXRDおよびフーリエ転移赤外(FTIR)パターンならびに再現性の狭い融点範囲およびエンタルピーは、実施例3〜8における全ての実験バッチが同じ多型の組成であることを示す。結晶形態は、形態Iとして示した。
【0060】
使用したX線回折装置は、Scintag X線粉末回折計モデルX’TRA、Cu-チューブ、固体状態検出器である。
【0061】
サンプルホルダー:丸い標準のアルミニウムサンプルホルダーであり、直径25mm、深さ0.5mmの空洞を有するラウンドゼロバックグラウンド石英プレートを有する
スキャンパラメータ:範囲:2〜40°2θ
スキャンモード:連続的なスキャン
ステップサイズ:0.05°
速度:5°/分。
【0062】
実施例4により調製されたサンプルのピークを以下に示す。最も特徴的なピークは、太字で示す。
【表1】
【0063】
サンプルのFTIR分析は、以下のように行った:
装置:パーキンエルマースペクトラムワンFT−IRスペクトロメーターS/N58001
パラメータ:サンプルは、DRIFTモードで試験した。全てのスペクトルは、16スキャンで測定した
解像度:4.0cm−1。
【0064】
この試験において調製した固体のラサジリン塩基の全てのサンプルは、白い結晶性の粉末として得られた(黄色がかった粉末として単離された産物Bを除く)。顕微鏡観察は、結晶化条件が粒子サイズおよび形態に大きく影響を及ぼすことを示す。種をまくことによる(seeded)結晶化は、大きな定型的な非凝集性の結晶を提供し、一方、自発的な沈殿は、小さな凝集性の粒子を形成した。粒子形態における相違は、多型性には関係しない。
【0065】
上記実施例による結晶性のラサジリン塩基の形態および粒子サイズを、以下の表に示す。形態および粒子サイズは、顕微鏡観察により決定した。
【表2】
【0066】
実施例9、10および11についての出発物質:
(1)〜10-15%の残留溶媒および0.7%のSアイソマーを含む湿ったラサジリンヘミタータラート
(2)ラセミのRAI塩基、油状、PAI含量−HPLCにより94%。
【0067】
実施例9−分離およびイソプロパノール水からの沈殿、種をまくことによるエマルジョン結晶化
70.0gのラサジリン酒石酸塩(1)を、撹拌しながら320mlの脱イオン化水に懸濁した。懸濁液を45℃に加熱し、31mlの25% NaOH溶液を160mlのトルエンと共に加えた。混合物を撹拌し、得られるエマルジョンを静置した。下の水相(pH=13〜14)を捨てた。上のトルエン相を、45℃で、100mlの脱イオン化水で洗浄し、静置した。下の水相(pH=9〜10)を捨てた。
【0068】
トルエン溶液を、エバポレーターにおいて減圧下で蒸発させ、溶媒の蒸発が完了した後、50mlのイソプロパノールを残留物に加え、蒸発を続けた。
【0069】
蒸発の完了後、25mlのイソプロパノールを加え、同じ条件下で蒸留した。
R-PAI塩基のオイル(33.9g)の残留物を41mlのイソプロパノールに溶解した。
【0070】
溶液を15℃に冷却し、58mlの脱イオン化水を冷却および撹拌しながら2時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に、油状の沈殿が形成された。得られる水中油型のエマルジョンを1〜3℃で1時間撹拌し、結晶化は観察されなかった。
【0071】
1〜3℃において、結晶性のラサジリン塩基がバッチに蒔かれ、直ちに発熱性の結晶化が起こった。得られたスラリーに50mlの水を加え、撹拌性および流動性を改善した。バッチをさらに30分間撹拌し、ろ過した。固体を水で洗浄し、室温、減圧下で乾燥した。
【0072】
31.5gの固体の乾燥したR-PAI塩基が得られ、収率はオイルベースで92%であった。図11は、このラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【0073】
分析:融点(DSCによる)−40.8℃、HPLCによるSアイソマー0.02%、HPLCによる純度−100%、HPLCによる分析−98%。
【0074】
実施例10−分離およびイソプロパノール水からの沈殿、種をまくことによるイソプロパノール水溶液からの結晶化
100.0gのラサジリンタータラート(1)を458mlの脱イオン化水に懸濁し、229mlのトルエンを加え、25% NaOH溶液46mlを撹拌しながら加えた。混合物を45℃まで加熱し、45℃で15分間撹拌し、この温度で静置した。
【0075】
2相に分離された。下の水相(PH=13〜14)を捨て、上のトルエン相を140mlの脱イオン化水で洗浄した。得られるエマルジョンを静置し、2相に分離した。下の水相(pH=9〜10)を捨て、トルエン溶液をエバポレーター中において減圧下で蒸発させた。
【0076】
溶媒の蒸発が完了した後、60mlのイソプロパノールを残留物に加え、蒸発を続けた。
蒸発の完了後、50mlのイソプロパノールを加え、同じ条件下で蒸留した。
R-PAI塩基のオイル(46.4g)の残留物を56mlのイソプロパノールに溶解した。
【0077】
溶液を16℃に冷却し、147.5mlの脱イオン化水を冷却および撹拌しながら4時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に沈殿の発達が観察され、直ちにバッチに結晶性R-PAIがまかれた。
【0078】
得られる懸濁液を2℃に冷却し、この温度で一晩撹拌し、ろ過した。固体を水で洗浄し、減圧下、室温で乾燥した。
【0079】
48.1gの固体の乾燥R-PAI塩基が得られ、収率はオイルベースで96%であった。図12は、このラサジリン塩基の顕微鏡写真である。
【0080】
分析:融点(DSCによる)−41.3℃、HPLCによるS-アイソマー0.01%、HPLCによる純度−100%、HPLCによる分析−96%。
【0081】
実施例11−イソプロパノール水からのラセミのPAI塩基結晶化(AF-8026)沈殿
51.0gのラセミのPAI塩基オイル(2)を、50mlのイソプロパノールに溶解した。エバポレーターにおいて、減圧下、溶液の溶媒を蒸留した。
【0082】
残留物(49.4g)を60mlイソプロパノールに溶解し、撹拌し、冷却した。冷却および撹拌しながら、156mlの脱イオン化水を3時間かけて少しずつ加えた。水の添加の間に、油状の沈殿が形成された。結晶性のラサジリン塩基をバッチにまいても結晶化は観察されなかった。
【0083】
得られた水中油型のエマルジョンを3℃で1時間撹拌しても結晶化は観察されなかった。
バッチを1℃で一晩撹拌し、自然に結晶化させた。固体をろ過したが、ろ過の間に融け始めた。室温において、1〜2分以内にフィルター上で、固体生成物は完全に液化した。
この物質は、完全に融解する前にサンプルとした。
【0084】
分析:HPLCによるS-アイソマー49.4%、HPLCによる分析−87%。
【0085】
考察
上記実施例9、10、および11は、室温において結晶化する能力が、純粋なラサジリン塩基(Rアイソマー)に固有の性質であることを示す。ラセミのPAI塩基は、室温では液体形態でのみ存在し、その融点は1〜18℃である(実施例11)。
【0086】
実施例は、Sアイソマーが混入したラサジリン塩基の結晶化が、結晶化生成物の有意な精製を提供することも示す。0.7%のSアイソマーを含有する出発物質は、わずか0.01〜0.02%のSアイソマーを含む固体の結晶性ラサジリン塩基となった。
【0087】
実施例9、10および11は、先行する実施例に記載されているのと同じような結晶化生成物の粒子サイズにおける傾向を示す。10〜16℃における遅い種をまくことによる結晶化(実施例9)は、1〜3℃におけるエマルジョン結晶化(実施例10)よりも大きな粒子サイズのラサジリン塩基を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン。
【請求項2】
2θ±0.2が8.5°、12.6°、16.1°、および16.9°にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン。
【請求項3】
2θ±0.2が20.3°、20.9°、25.4°、26.4°、および28.3°にピークを有する粉末X線回折パターンによりさらに特徴付けられる、請求項2に記載の結晶性ラサジリン塩基。
【請求項4】
融点が、オープンキャピラリーにおいて測定した場合に38〜39℃、示差走査熱量測定により測定した場合に41℃であることにより特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性ラサリジン塩基。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンおよび薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物。
【請求項6】
経皮的な適用のために製剤化された、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
経皮パッチの形態である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
a.R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;
b.前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;
c.前記溶液をpH約11に塩基性化して、懸濁液を得る工程と;
d.前記懸濁液から、結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項9】
前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a.液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;
b.前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;
c.前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;
d.前記第2の有機溶液から第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、第2の残留物を得る工程と;
e.前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒は同一である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はアルコールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はイソプロパノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
a.水溶性有機溶媒中の、R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;
b.前記溶液を水と混合する工程と;
c.前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;
d.結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項16】
前記水溶性有機溶媒はアルコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルコールは、エタノールもしくはイソプロパノールまたはエタノールとイソプロパノールの混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン。
【請求項2】
2θ±0.2が8.5°、12.6°、16.1°、および16.9°にピークを有する粉末X線回折パターンにより特徴付けられる、請求項1に記載の結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダン。
【請求項3】
2θ±0.2が20.3°、20.9°、25.4°、26.4°、および28.3°にピークを有する粉末X線回折パターンによりさらに特徴付けられる、請求項2に記載の結晶性ラサジリン塩基。
【請求項4】
融点が、オープンキャピラリーにおいて測定した場合に38〜39℃、示差走査熱量測定により測定した場合に41℃であることにより特徴付けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性ラサリジン塩基。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンおよび薬学的に許容可能なキャリアを含んでなる医薬組成物。
【請求項6】
経皮的な適用のために製剤化された、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
経皮パッチの形態である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
a.R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの塩を水に溶解して溶液を作る工程と;
b.前記溶液を約0〜15℃の温度に冷却する工程と;
c.前記溶液をpH約11に塩基性化して、懸濁液を得る工程と;
d.前記懸濁液から、結晶性のラサジリンR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項9】
前記結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a.液体のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの第1の有機溶液を得る工程と;
b.前記第1の有機溶液から溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、残留物を得る工程と;
c.前記残留物を第2の有機溶媒に溶解させて第2の有機溶液を得る工程と;
d.前記第2の有機溶液から第2の有機溶媒を減圧下で完全に蒸発させて、第2の残留物を得る工程と;
e.前記第2の残留物を0〜25℃の温度に維持して、結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを得る工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒は同一である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はアルコールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶媒および前記第2の有機溶媒はイソプロパノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
a.水溶性有機溶媒中の、R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの溶液を得る工程と;
b.前記溶液を水と混合する工程と;
c.前記溶液を0〜20℃に冷却して、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを形成する工程と;
d.結晶性のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンを単離する工程と
を含んでなる、結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンの製造方法。
【請求項16】
前記水溶性有機溶媒はアルコールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルコールは、エタノールもしくはイソプロパノールまたはエタノールとイソプロパノールの混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶性R(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンは、結晶化前のR(+)-N-プロパルギル-1-アミノインダンと比較して光学純度が高いことを特徴とする、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−513282(P2010−513282A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541390(P2009−541390)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025583
【国際公開番号】WO2008/076348
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025583
【国際公開番号】WO2008/076348
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]