結腸直腸癌のためのバイオマーカの組み合わせ
本発明は、癌、特に結腸直腸癌の早期診断および管理のための所定のバイオマーカの検出のための、方法およびキットに関する。本発明は、対象の結腸直腸癌を診断または同定する方法を提供し、方法には、対象からの試料において有効な量の一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物を測定するステップと;その量を基準値と比較するステップであり、基準値に対する一つ以上のCLRMARKERの量の増加または減少が、対象が結腸直腸癌を患うことを示す、ステップが含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、固形腫瘍に関連する末梢血代用バイオマーカのプロフィール、および、結腸直腸癌のスクリーニング、防止、診断、療法、モニタリング、および予後のための、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
スクリーニングおよびモニタリングアッセイは、癌の早期検出および管理に必須である。医療環境において集められる血液のテスト等の癌スクリーニングおよびモニタリングテストを用いて、臨床的に健常な(または「無症状」の)個体の大規模スクリーニング、対象の診断、予測テスト、または疾患モニタリングを行いうる。
【0003】
このような用途の血液ベースの遠隔試料の利点は、対象にとって試料を提供するのが非常に好都合であり、したがってテスト集団におけるコンプライアンスがはるかに高いことである。結腸直腸癌の場合には、主に結腸鏡検査法等の不快な侵襲性スクリーニング方法により誘発される心理的障壁のために、リスクのある者でスクリーニングされるのは20%未満である。
【0004】
したがって、従来技術において、経済的であり、迅速であり、最小限侵襲性、好ましくは非侵襲性であるという追加的利益を有する、結腸直腸癌等の固形腫瘍の早期発見および治療を提供するアプローチが必要とされる。追加的有用性は、癌の予後、対象の癌治療のモニタリング、および癌の再発の検出、ならびに固形腫瘍等の癌を治療するための新しい治療的介入の発見を可能とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、発病が明白となるよりはるかに前に、血清または他の体液において、疾患関連のバイオマーカを同定しうるという発見を前提とする。結腸直腸癌を患う患者の血清のフットプリントからのこれらのバイオマーカの存否を、早期診断ツールとして使用でき、そのために治療戦略が考案および実施されて、腫瘍性結腸直腸細胞の形成が防止、遅延、改善または後退されうる。本発明の一つまたはいくつかの疾患関連バイオマーカを用いて、結腸直腸癌を患う対象を診断し、または好都合に、結腸直腸癌につき無症状である対象を診断しうる。
【0006】
したがって本発明は、固形腫瘍、特に結腸直腸癌に関係する固形腫瘍に関係する複数の末梢血代用バイオマーカを分析するための、バイオマーカプロフィールおよび方法に関する。これらのバイオマーカは、固形腫瘍に対する遺伝的素因、固形腫瘍の早期発見、固形腫瘍の診断、癌組織タイピングのためのテスト、およびその他の使用方法を含む固形腫瘍の遺伝学的検査に有用である。
【0007】
本発明の開示の方法、キット、およびバイオマーカプロフィールは、好ましくは70%以上の感度および95%以上の特異度で結腸直腸癌をスクリーニングするようにデザインされるのが好ましい。開示の方法は、固形腫瘍に関連した標的遺伝子および/または遺伝子産物の相対量および絶対量を定量化することも可能である。
【0008】
一般に、本発明の方法およびバイオマーカプロフィールは、末梢血を含みうる、単一の細胞を含めばよい試料中の固形腫瘍に関係した多様な遺伝子の発現についての定量的情報を得るために有用である。
【0009】
一実施形態においては、癌は、結腸直腸癌を含む。バイオマーカのレベルは、電気泳動的または免疫化学的に測定でき、免疫化学的検出は、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイまたは酵素結合抗体免疫吸着アッセイにより達成されうる。バイオマーカのレベルは、実時間PCRで測定されるのが好ましい。
【0010】
対象からの試料には、例えば全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、腹水液、間質(interstitital)液、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗または尿が含まれうる。
【0011】
したがって、本発明は、対象の結腸直腸癌を診断または同定する方法を提供し、方法には、対象からの試料において有効な量の一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物を測定するステップと;その量を基準値と比較するステップであり、基準値に対する一つ以上のCLRMARKERの量の増加または減少が、対象が結腸直腸癌を患うことを示す、ステップが含まれる。基準値は、指標値(index value)、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患うものとして診断または同定される対象から導出される値を含みうる。いくつかの実施形態では、対象には、結腸直腸癌を有すると過去に診断された者、結腸直腸癌を有すると過去に診断されていない者、または結腸直腸癌につき無症状である者が含まれる。
【0012】
本発明は、対象の結腸直腸癌の進行をモニタする方法も提供し、方法には、第一期間に、対象からの第一試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;第二期間に、対象からの第二試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;ステップ(a)において検出される一つ以上のCLRMARKERの量を、ステップ(b)で検出される量と、または基準値と、比較するステップが含まれる。一実施形態では、モニタリングには、結腸直腸癌を発症するリスクの変化を評価するステップが含まれる。対象には、結腸直腸癌の治療を過去に受けている者、結腸直腸癌の治療を過去に受けていない者、または、結腸直腸癌を患うものと過去に診断も同定もされていない者が含まれうる。ある実施形態では、第一試料が、結腸直腸癌の治療を受ける前に対象からとられ、第二試料が、結腸直腸癌の治療を受けた後に対象からとられる。他の実施形態では、モニタリングには、対象のための治療レジメンを選択するステップ、および/または結腸直腸癌のための治療レジメンの有効性をモニタするステップが、さらに含まれ、結腸直腸癌のための治療レジメンには、外科的介入、結腸直腸癌調節剤、またはその組み合わせが含まれうる。いくつかの実施形態では、基準値には、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定される対象から導出される値が含まれる。
【0013】
別の態様では、本発明は、結腸直腸癌を患うものと診断または同定された対象を治療するための方法を提供し、方法には、第一期間に、対象からの第一試料に存在する一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の量が、結腸直腸癌を発症するリスクが低い一つ以上の対象において測定される基準値、または一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果として、結腸直腸癌リスク因子の改善を示す一つ以上の対象において測定される基準値に戻るまで、一つ以上の結腸直腸癌調節剤で対象を治療するステップが含まれる。
【0014】
一つ以上の結直腸調節剤には、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド薬剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその組み合わせが含まれうる。一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果としての、結腸直腸癌リスク因子の改善には、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少、またはその組み合わせが含まれうる。
【0015】
本発明は、一つ以上のCLRMARKERを検出するCLRMARKER検出試薬と、正常コントロールレベルを有する対象から得られた試料と、必要に応じて、本発明の方法において試薬を使用するための指示とを含む、キットも提供する。一実施形態では、検出試薬には、一つ以上の抗体またはそのフラグメント、一つ以上のアプタマー、一つ以上のオリゴヌクレオチド、またはその組み合わせがさらに含まれる。
【0016】
別段の断りがない限り、本明細書において用いられる全ての専門的および科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意義を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本発明の実施に用いられうるが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合には、定義を含む本明細書が優先する。さらに、本明細書に記載の材料、方法および実施例は、例示にすぎず、制限を意図するものではない。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載および請求項から明らかとなる。
【0018】
以下の詳細な説明は例として与えられ、本発明を記載された特定の実施形態に限定するものではないが、参照により本明細書に組み込まれる添付の図面に関連して理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1B】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1C】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1D】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1E】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図2】CON対POLおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図3】CONおよびPOL群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図4】CONおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER CK20の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図5】ConおよびIBD対POLおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図6】CON対POLおよびCARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図7】CON対POLおよびCARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図8】CON対POLの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図9】CON対POLの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図10】CON対CARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図11】CON対CARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図12】CONおよびIBD対POLおよびCARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図13】CONおよびIBD対POLおよびCARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図14】CON対IBDの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図15】CON対IBDの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
したがって、本発明は、一つ以上および、好ましくは二以上の組み合わせにおいて同時に使用する場合に、そのようなバイオマーカの組み合わせを、結腸直腸癌を検出するために使用できる、固形腫瘍のバイオマーカを提供する。
【0021】
本明細書で使用されるところの、「1つの(a)、(an)」および「前記(the)」には、文脈により特に要求されない限り、単数および複数の指示物が含まれる。したがって、例えば、「活性薬剤」または「薬理活性薬剤」への言及には、単一の活性薬剤、ならびに組み合わせた二つ以上の異なる活性薬剤が含まれ、「担体」への言及には、二つ以上の担体の混合物、ならびに単一の担体などが含まれる。
【0022】
本発明の文脈における「バイオマーカ」は、特定の生物学的性質の分子指標であり、結腸直腸癌を検出するために使用できる生化学的形質または側面である。「バイオマーカ」には、タンパク質、核酸、および代謝産物と、それらの多型、突然変異体、変異体、修飾体、サブユニット、フラグメント、タンパク質―リガンド複合体、および分解産物、タンパク質―リガンド複合体、要素、関連の代謝産物、電解質、要素、および他の分析物または試料から得られる測定値が含まれるがこれに限定されない。バイオマーカには、変異タンパク質または変異核酸も含まれうる。バイオマーカは、年齢、人種、および癌の家族歴等、結腸直腸癌の他の臨床的特徴またはリスク因子を含む健康状態の非分析物生理学的マーカもさしうる。本明細書で用いられるところの「分析物」は、測定される任意の物質を意味しうる。
【0023】
「大腸癌」とは、結腸(大腸の最長部分)の組織に形成する、癌および/または腫瘍をさす。ほとんどの大腸癌は、腺癌(粘液および他の流体を生成し放出する細胞で始まる癌)である。「直腸癌」とは、直腸(大腸の肛門手前の少なくとも数インチ)の組織に形成する、癌および/または腫瘍をさす。本発明の文脈における「結腸直腸癌」とは、結腸または直腸のいずれかに生じる癌をさす。
【0024】
「測定する」または「測定」は、臨床的試料または対象由来試料中のいずれかにおける所与の物質の、かかる物質の質的または量的な濃度レベルを含めて、存在、非存在、数量または量(「有効な量」でありうる)を査定すること、または他の方法により対象の臨床的パラメータの値または分類を評価することを意味する。
【0025】
本発明の文脈における「試料」は、対象から単離される生体試料であり、例えば全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、腹水液、間質(interstitital)液(別名「細胞外液」、細胞の間の間隔にある流体を含む)、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗、尿、または任意の他の分泌物、排泄物、または他の体液を非限定的に含みうる。
【0026】
本発明の文脈における「対象」は、哺乳類であるのが好ましい。哺乳類は、ヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシでありうるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、結腸直腸癌の動物モデルを表す対象として、都合よく使用されうる。対象は、雄または雌でありうる。対象は、結腸直腸癌を患うか有するものと過去に診断または同定された者であり得、必要に応じて、結腸直腸癌の治療を既に受けていてもよいが、その必要はない。対象は、結腸直腸癌を患っていない者であってもよい。対象は、結腸直腸癌を患うと診断または同定されているが、結腸直腸癌のための一つ以上の治療を受けた結果、疾患の改善(例えば腫瘍サイズの減少)が見られる者でもありうる。あるいは、対象は、結腸直腸癌を有するものと過去に診断または同定されていない者でもありうる。例えば、対象は、結腸直腸癌の一つ以上のリスク因子を有する者、または結腸直腸癌のリスク因子を有しない対象、または結腸直腸癌につき無症状の対象でありうる。対象は、結腸直腸癌を患い、または結腸直腸癌を発症するリスクのある者でもありうる。
【0027】
結腸直腸癌を有する対象、または結腸直腸癌を発病する傾向がある対象においてそのレベルが変更、改変または修正されるタンパク質、ペプチド、核酸、多型、および代謝産物が、表1にまとめられ、本明細書において、とりわけ「結腸直腸癌関連タンパク質」、「CLRMARKERポリペプチド」、または「CLRMARKERタンパク質」と集合的に称される。ポリペプチドをコードする対応する核酸は、「結腸直腸癌関連核酸」、「結腸直腸癌関連遺伝子」、「CLRMARKER核酸」、または「CLRMARKER遺伝子」と呼ばれる。別段の断りがない限り、「CLRMARKER」、「結腸直腸癌関連タンパク質」、「結腸直腸癌関連核酸」は、本明細書に開示される任意の配列を意味するものである。本明細書において「CLRMARKER代謝産物」と呼ばれる、対応するCLRMARKERタンパク質または核酸の代謝産物も、測定されうる。本発明の文脈におけるCLRMARKER「代謝産物」は、完全長ポリペプチドの一部を含みうる。「一部」という用語により特定の長さが示唆されるものではない。CLRMARKER代謝産物は、500アミノ酸未満の長さ、例えば400、350、300、250、200、150、100、75、50、35、26、25、15、または10アミノ酸以下の長さでありうる。上述のクラスのCLRMARKERの一つ以上、好ましくは二つ以上の測定値を数学的に組み合わせることにより作られる、計算された指標は、「CLRMARKER指標」と呼ばれる。前述の任意のものから構築される一般の生理的測定値および指標とならび、タンパク質、核酸、多型、変異タンパク質および変異核酸、代謝産物、および他の分析物が、「CLRMARKER」の広い区分に含まれる。
【0028】
結腸直腸癌を有する対象、または結腸および直腸内部のポリープの存在または増殖等、結腸直腸癌に特徴的な症状をもつ対象において、存在または濃度レベルが変更または改変されるものとして、五一(51)のバイオマーカが同定されている。結腸直腸癌のリスク因子には、結腸および直腸内部のガン化しうるポリープの存在または増殖、高脂肪の食事、結腸直腸癌、および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、またはクローン病の家族歴または個人歴が含まれるがこれに限定されない。とりわけ、切除のような外科的介入および抗癌化学療法等の結腸直腸癌調節剤の結果としてのリスク因子の減少には、例えば、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少または軽減、またはこれらの組み合わせが含まれうる。
【0029】
本発明の性能、したがって絶対的および相対的な臨床有用性は、複数の方法により評価できる。本発明は、様々な性能評価の中で、癌、特に結腸直腸癌の臨床診断の精度を提供することを意図する。
【0030】
バイオマーカ
本発明のバイオマーカおよび方法により、当業者が、癌または固形腫瘍の症状を一切示さないが、なお癌または固形腫瘍を発症するリスクがあるか、またはガン状態に特徴的な症状のある対象を、同定、診断するなど、評価することが可能となる。
【0031】
表1は、本発明による固形腫瘍の末梢血代用バイオマーカ候補の非網羅的リストを含む情報を提供する。当業者には当然のことながら、本明細書に提示されるバイオマーカには、多型、アイソフォーム、突然変異体、誘導体、核酸およびプロタンパク質を含む前駆体、切断産物、受容体(可溶性および膜貫通受容体を含む)、リガンド、タンパク質―リガンド複合体、および翻訳後修飾変異体(例えば架橋またはグリコシル化)、フラグメント、および分解産物、ならびに、バイオマーカの任意のものを構造体全体の構成サブユニットとして含む、任意の複数ユニットの核酸、タンパク質、および糖タンパク質構造物を含む、全ての形および変異体が含まれる。血液試料中の全てのバイオマーカの発現が、実験により確認されている。
【表1】
【表2−1】
【表2−2】
本発明の実行において、一つ以上、好ましくは二つ以上のCLRMARKERが検出されうる。例えば、一(1)、二(2)、三(3)、五(5)、十(10)、十五(15)、二十(20)、二五(25)、三十(30)、三五(35)、四十(40)、四五(45)、五十(50)またはそれ以上のCLRMARKERが検出されうる。いくつかの態様においては、本明細書に開示される51全てのCLRMARKERが検出されうる。CLRMARKERの数が検出されうる好適な範囲には、一および51の間から選択される任意の最低値、特に二、三、四、五、六、七、八、九、十、十二、十五、二十、二五、三十、四十、五十と、既知のCLRMARKERの合計に至るまでの任意の最大値、特に一、二、五、十、二十、および二五とが対になったものを境界とする範囲が含まれる。特に好適な範囲には、一〜二(1〜2)、一〜五(1〜5)、一〜十(1〜10)、一〜十五(1〜15)、一〜二十(1〜20)、一〜二五(1〜25)、一〜三十(1〜30)、一〜三五(1〜35)、一〜四十(1〜40)、一〜四五(1〜45)、一〜五十(1〜50)、一〜五一(1〜51)、二〜五(2〜5)、二〜十(2〜10)、二〜十五(2〜15)、二〜二十(2〜20)、二〜二五(2〜25)、二〜三十(2〜30)、二〜三五(2〜35)、二〜四十(2〜40)、二〜四五(2〜45)、二〜五十(2〜50)、二〜五一(2〜51)、五〜十五(5〜15)、五〜二十(5〜20)、五〜二五(5〜25)、五〜三十(5〜30)、五〜三五(5〜35)、五〜四十(5〜40)、五〜四五(5〜45)、五〜五十(5〜50)、五〜五一(5〜51)、十〜十五(10〜15)、十〜二十(10〜20)、十〜二五(10〜25)、および十〜三十(10〜30)、十〜三五(10〜35)、十〜四十(10〜40)、十〜四五(10〜45)、十〜五十(10〜50)、十〜五一(10〜51)、二十〜五十(20〜50)、および二十〜五一(20〜51)が含まれる。
【0032】
バイオマーカの検出
結腸直腸癌を発病するリスクを、試験試料中の「有効な量」のCLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、および他の分析物(例えば対象由来試料)を検査し、有効な量を基準値または指標値と比較することにより検出できる。「有効な量」は、試料中に検出されるCLRMARKERの合計量またはレベルであり得、または「正規化された」量、例えば試料中に検出されるCLRMARKERとバックグラウンドノイズの間の差でありうる。正規化の方法および正規化された値は、バイオマーカが検出される方法により異なる。好ましくは、数学的アルゴリズムを用いて、複数の個別のCLRMARKERの結果からの情報を、単一の測定値または指標に合わせうる。結腸直腸癌のリスクが高いものと同定される対象は、必要に応じて、結腸直腸癌の発症を防止または遅延させるために、本明細書に定義される「結腸直腸癌調節剤」等の予防または治療化合物の投与等、治療レジメンを受けるように選択されうる。
【0033】
CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の量が、テスト試料において測定され、正常コントロールレベルと比較されうる。「正常コントロールレベル」という用語は、例えば、高齢までモニタされ、結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患および/またはクローン病等、関連の疾患続発症を発病しないと分かった若年対象の長期研究から集められた試料と比較した、結腸直腸癌を患っておらず、結腸直腸癌を有する見込みのない対象に典型的に見られる一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物または他の分析物のレベル、またはCLRMARKER指標を意味する。正常コントロールレベルは、範囲または指標でありうる。あるいは、正常コントロールレベルは、過去にテストされた対象からのパターンのデータベースでありうる。正常コントロールレベルと比較した対象由来試料における一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物のレベルの変化は、対象が結腸直腸癌を患っているか、または発病のリスクがあることを示しうる。これに対して、方法が予防的に適用される場合には、対象由来試料における一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の、正常コントロールレベルと比較して類似のレベルが、対象が結腸直腸癌を患っておらず、発病のリスクがなく、またはリスクが低いことを示しうる。
【0034】
基準値は、ガン状態が既知である(すなわち、結腸直腸癌を患うと診断または同定され、または結腸直腸癌を患うと診断または同定されていない)コントロール対象または集団から得られた値をさしうる。基準値は、例えば指標値またはベースライン値(例えば、本明細書で定義される「正常コントロールレベル」)でありうる。基準試料または指標値またはベースライン値は、抗癌治療、放射線療法、または化学療法を受けている一つ以上の対象から採取または導出され、または結腸直腸癌を発病するリスクが低い一つ以上の対象から採取または導出され、または、治療を受けた結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している対象から採取または導出されうる。あるいは、基準試料または指標値またはベースライン値は、抗癌治療、放射線療法、または化学療法を受けていない一つ以上の対象から採取または導出されうる。例えば治療の進行をモニタするために、結腸直腸癌のための初期治療および結腸直腸癌のための後続治療を受けている対象から、試料が集められうる。基準値は、本明細書に開示されるもの等の結腸直腸癌の人口調査からリスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出された値も含みうる。基準値は、結腸直腸癌の発病を伴わずに、ポリープ、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病を発病している対象または集団からの値も含みうる。
【0035】
本発明の方法により測定されるCLRMARKERのレベルまたは量(「有効な量」でありうる)の差には、正常コントロールレベル、基準値、指標値またはベースライン値と比較したCLRMARKERのレベルまたは量の増加または減少が含まれうる。基準値に対するCLRMARKERの量の増加または減少は、結腸直腸癌の進行、結腸直腸癌の遅延、進行、発症、または改善、結腸直腸癌または関連の合併症の発症リスクの増加または減少を表しうる。増加または減少は、結腸直腸癌のための一つ以上の治療レジメンの成功を表し、または結腸直腸癌リスク因子の改善または後退を示しうる。増加または減少は、例えば、基準値または正常コントロールレベルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%でありうる。
【0036】
CLRMARKERのレベル(または量)の差は、統計学的に有意であるのが好ましい。「統計学的に有意」とは、変化が偶然のみにより生じると期待されうるものより大きいことを意味する。統計的有意性は、公知技術の任意の方法により決定されうる。例えば、統計的有意性は、p値により決定されうる。p値は、実験中の群間差が偶然により生じた確率の尺度である。(P(z>z観察))。例えば、0.01のp値は、結果が偶然生じた可能性が100分の1であることを意味する。p値が低いほど、群間差が治療により生じた可能性が高くなる。p値が少なくとも0.05である場合に、変化は統計学的に有意であると考えられる。p値は、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001以下であるのが好ましい。以下に記載されるように、本発明の制限を一切伴うものではないが、統計的有意性の達成には、常にではないが一般に、統計学的に有意のCLRMARKER指標を達成するために、いくつかのCLRMARKERの組み合わせがパネルにおいて同時に使用され、数学的アルゴリズムと組み合わせられることが必要である。
【0037】
テスト、アッセイ、または方法の「診断精度」は、対象が一つ以上のCLRMARKERのレベルの「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」を有するかに基づく、結腸直腸癌を有する対象または結腸直腸癌のリスクのある対象の間で区別する、テスト、アッセイ、または方法の能力に関する。「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」とは、対象中の(典型的には対象からの試料中の)CLRMARKERの存在(例えば、ミリグラム、ナノグラム等の質量、またはデシリットルあたりミリグラム等の体積あたり質量、または単位体積あたりの転写産物のコピー数)またはCLRMARKERの存在の変化が、そのCLRMARKERの所定のカットオフ点(または閾値)より高く、したがって対象が、そのタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物または分析物の十分に高い存在がマーカである結腸直腸癌を有することを示すことを意味する。
【0038】
本発明を用いて、結腸直腸癌に転換するリスクの分類的または連続的測定を行うことができ、したがって結腸直腸癌を発病するリスクがあるものと定義される区分の対象(例えば、結腸または直腸ポリープと診断される対象、または、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病と診断されている対象)を診断しうる。分類的測定においては、本発明の方法を用いて、正常対象と結腸直腸癌を発病するリスクがある対象を識別しうる。このような本発明の分類的使用においては、「高度の診断精度」および「非常に高度の診断精度」という用語は、所定のカットオフ点が前結腸直腸癌状態の存否を正しく(正確に)示している、そのCLRMARKER(またはCLRMARKER指標;CLRMARKER値には、単一のCLRMARKERからのものであるかCLRMARKERの指標から導出されたものであるかを問わず、任意の個別の測定値が含まれる)のテストまたはアッセイをさす。完全なテストは、完全な精度を有する。したがって、結腸直腸癌を発病するリスクがある対象では、テストは陽性の検査結果だけを示し、それらの対象を一人も「陰性」と報告しない(「偽陰性」なし)。換言すれば、テストの「感度」(真の陽性率)は、100%となる。他方で、結腸直腸癌を発病するリスクがない対象では、テストは陰性の検査結果だけを示し、それらの対象を一人も「陽性」と報告しない(「偽陽性」なし)。換言すれば、「特異度」(真の陰性率)は、100%となる。例えば、臨床的診断テスト等のテストの特異度、感度および陽性および陰性予測値を論議する、O’Marcaigh AS,Jacobson RM,“Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test,How To Prevent Misleading Or Confusing Results,”Clin.Ped.1993,32(8):485―491を参照。他の実施形態においては、本発明を用いて、結腸直腸癌を有する者から結腸直腸癌を発病するリスクのある者を、または健常対象から結腸直腸癌を有する者を、識別しうる。そのような使用には、異なるCLRMARKERのサブセット(表1に開示される全てのCLRMARKERのうち)、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフ点を要しうるが、意図された使用の目的で、同じ前述の診断精度の測定に従いうる。
【0039】
病気の分類的診断においては、テスト(またはアッセイ)のカットオフ点または閾値の変更が通常は、感度および特異度を質的に逆相関の関係で変化させる。例えばカット点が下げられる場合、テスト集団中のより多くの対象が、典型的に、カット点または閾値を上回る試験結果を有することとなる。カット点を上回るテスト結果を有する対象は、テストが行われている疾患、状態、または症候群を有すると報告されるため、カット点を下げることにより、より多くの対象が陽性結果を有する(例えば結腸直腸癌を有する)と報告されることになる。したがって、より高い割合の結腸直腸癌を有する者が、それを有するとテストにより示される。したがって、テストの感度(真の陽性率)が高まる。しかし、同時に、疾患、状態、または症候群を有しない、より多くの者(例えば真「陰性」の人)が、カット点を上回るCLRMARKER値を有する(例えば、疾患、状態または症候群を有する)とテストにより示され、したがってテストにより正しく陰性と示されずに陽性と報告されるため、偽陽性も多くなる。したがって、テストの特異度(真の陰性率)が、低下する。同様に、カット点を上げることにより、感度が低下し、特異度が高まる傾向がある。したがって、対象の状態を評価するための、提唱された医学的テスト、アッセイ、または方法の精度および有用性を評価する際には、常に感度および特異度の両方を考慮すべきであり、様々なカット点で感度および特異度が有意に変動しうるため、感度および特異度が報告されるカット点の値に留意すべきである。
【0040】
受信者操作特性(「ROC」)曲線が、一つの値だけで全ての範囲のテスト(またはアッセイ)のカット点についてテスト、アッセイ、または方法の感度および特異度を示すのを可能にする指標として用いられうる。例えば、Shultz,“Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures,”第14章、Teitz,Fundamentals of Clinical Chemistry,Burtis and Ashwood(eds.),4th edition 1996,W.B.Saunders Company,pages192―199;およびZweig等、“ROC Curve Analysis:An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease,”Clin.Chem.,1992,38(8):1425―1428を参照。
【0041】
ROC曲線は、感度をゼロ〜一(例えば100%)のスケールでy軸とし、一から特異度を引いたものに等しい値をゼロ〜一(例えば100%)のスケールでx軸とした、x―yプロットである。したがってROC曲線は、そのテスト、アッセイ、または方法の偽陽性率に対する真の陽性率のプロットである。問題のテスト、アッセイ、または方法についてのROC曲線を作成するために、問題のテスト、アッセイまたは方法から独立した完全に正確な方法、または「ゴールドスタンダード」の方法により対象を評価して、対象が病気、状態、または症候群につき真に陽性であるか陰性であるかを決定しうる(例えば、冠動脈造影法は、冠状動脈硬化症の存在についてのゴールドスタンダード試験である)。対象は、問題のテスト、アッセイ、または方法を用いてもテストされればよく、様々なカット点において、対象がテスト、アッセイ、または方法で陽性または陰性と報告される。感度(真の陽性率)および一から特異度を引いたものに等しい値(この値は、偽陽性率に等しい)が、カット点ごとに決定され、各x―y値の組が、x―yグラフ上に単一点としてプロットされる。それらの点を結ぶ「曲線」が、ROC曲線である。ROC曲線は、感度および特異度が最大化される、最適な単一の臨床的カットオフ値または治療閾値を決定するために使用されることが多い。そのような状況は、曲線下に描くことができる最も大きな一つの長方形の左上角である、ROC曲線上の点である。
【0042】
全曲線下面積(「AUC」)は、一つの値だけで全ての範囲のカット点でのテスト、アッセイ、または方法の感度および特異度を表すのを可能にする指標である。最大AUCは、一(完全テスト)であり、最小面積は二分の一(例えば正常対疾患の識別がない面積)である。AUCが一に近いほど、テストの精度が良い。全てのROCおよびAUCには、疾患の定義およびテスト後対象期間が内在することに注意しなければならない。
【0043】
本明細書で定義されるところの、「高度の診断精度」は、AUC(テストまたはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.70、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.95である、テストまたはアッセイを意味する。
【0044】
「非常に高度の診断精度」は、AUC(テストまたはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.875、好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.925、最も好ましくは少なくとも0.95である、テストまたはアッセイを意味する。
【0045】
あるいは、低有病率のテスト集団(一年に1%未満の発生率の集団と定義)では、ROCおよびAUCは、テストの臨床的有用性に関して誤解を生じる可能性があり、本開示の他所で定義される絶対および相対リスク比が、診断精度の程度を決定するために用いられうる。テストする対象の集団を、上位四分位(集団の25%)が、結腸直腸癌を発病しまたは患う相対リスクが最も高い対象群を含み、下の四分位数は、結腸直腸癌を発病する相対リスクが最も低い対象群を含む、四分位に分類することもできる。一般に、低有病率集団における上位から下位四分位からの相対リスクの2.5倍以上を有するテストまたはアッセイから導出される値は、「高度の診断精度」を有すると考えられ、各四分位の相対リスクの五〜七倍のものは、「非常に高度の診断精度」を有すると考えられる。しかし、各四分位数の相対リスクの1.2〜2.5倍にとどまるテストまたはアッセイから導出される値も、なお臨床的に有用である、疾患に対するリスク因子として広く使用される。
【0046】
任意の診断検査の予測値は、テストの感度および特異度、およびテスト集団における状態の有病率によって決まる。スクリーニングされる状態が対象または集団に存在する可能性(テスト前確率)が高いほど、陽性テストの有効性が高く、結果が真陽性である可能性が高い。したがって、状態が存在する可能性が低い任意の集団においてテストを使用する上での問題は、陽性結果が、限定された価値を有する(すなわち偽陽性である可能性がより高い)ことである。同様に、リスクが非常に高い集団では、陰性の試験結果が、偽陰性である可能性がより高い。診断精度の程度、すなわちROC曲線上のカット点を定義し、許容可能なAUCの値を定義し、本発明のCLRMARKERの有効な量を構成するものの相対濃度の許容可能な範囲を決定することにより、当業者がCLRMARKERを用いて所定レベルの予測可能性で対象を診断または同定することが可能となる。
【0047】
診断精度を決定する代替的方法は、リスクの連続測定を伴って用いられなければならず、関連の医学会および医学の実施により疾患区分またはリスク区分が未だ明確に定義されていない場合に一般に使用される。
【0048】
本発明の文脈における「リスク」は、「絶対」リスクを意味しうるものであり、事象が特定の時間的期間に発生するその百分率確率をさす。絶対リスクは、関連の時間コホートの測定後の実際の観察に関して、または適切な時間的期間追跡された統計学的に有効な過去のコホートから作成された指標値に関して、測定されうる。「相対」リスクは、低リスクコホートまたは平均集団リスクと比較した対象のリスクの絶対リスクの比をさし、臨床的リスク因子の評価方法により異なりうる。オッズ比、すなわち所与のテスト結果の陰性事象に対する陽性事象の比も、転換無しについて一般に使用される(オッズは式p/(1―p)にしたがい、式中pは事象の確率であり、(1―p)は事象が無い確率である)。本発明の文脈において評価されうる代替的な連続的測定値には、結腸直腸癌転換までの時間および治療的結腸直腸癌転換リスク減少率が含まれる。
【0049】
このような連続的測定では、計算された指標の診断精度の測定は、典型的に、予測連続値および実測値(または過去の指標計算値)の間の線形回帰曲線の適用基づき、Rの二乗、p値および信頼区間等の値を利用する。このようなアルゴリズムを用いる予測値は、Genomic Health(Redwood City,California)により商業化される将来の乳癌再発リスクのテストのように、過去の観察コホートの予測値に基づいて信頼区間(通常90%または95%CI)とともに報告されることが多い。
【0050】
結腸直腸癌のリスク予測は、過去のコホートに関して対象が結腸直腸癌を発病する絶対リスクを評価および推定する、リスク予測アルゴリズムおよび計算された指標も含みうる。このような予測数学的アルゴリズムおよび計算された指標を用いたリスク評価は、診断テストおよび治療のガイドラインに組み込まれることが多くなっており、とりわけ、代表的集団からの多段階の階層化された試料から得られ、確認された指標を含む。例えば、APACHE I、IIおよびIII等のアパッチ急性生理学・慢性健康評価(APACHE)スコアリングシステム、簡略性生理スコア(SAPS IおよびII)、およびPOSSUMモデルシステム(Cowen,J.S.およびKelley,M.A.(1994)Crit Care Clin 10:53;Escarce,JJ.およびKelley,M.A.(1990)JAMA 264:2389;Knaus,W.A.,Wagner,D.P.,Draper,E.A.等(1991)Chest 100:1619;これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0051】
結腸直腸癌のリスクを評価するために、多数の研究およびアルゴリズムが用いられているにもかかわらず、所見に基づく複数リスク因子評価アプローチは、無症状または他の健常個体に結腸直腸癌があらわれる短期および長期的リスクの予測の正確性が中等度にとどまる。このようなリスク予測アルゴリズムを、本発明のCLRMARKERと都合よく組み合わせて用いて、目的の集団中の対象を区別し、結腸直腸癌を発病するリスクの層別化を行いうる。本明細書に開示されるCLRMARKERおよび使用方法は、そのようなリスク予測アルゴリズムと組み合わせて、無症状であり従来のリスク因子を示さない対象を評価、同定、または診断するために使用できるツールを提供する。
【0052】
リスク予測アルゴリズムおよび本発明の方法から導出されたデータが、線型回帰により比較されうる。線形回帰分析は、観察データに線形方程式を適用することにより、二つの変数間の関係をモデル化する。一つの変数は説明変数であると考えられ、他方は従属変数であると考えられる。例えば、計算されたアルゴリズムスコアに内在する基本的生物学をより完全に定義する努力において、APACHE集団分析から得られる値が従属変数として使用され、説明変数としての一つ以上のCLRMARKERのレベルに対して分析されうる。あるいは、そのようなリスク予測アルゴリズム、または、一般にCLRMARKER自体であるその個々の入力が、本発明の実施に直接組み込まれ、組み合わせられたアルゴリズムが過去のコホートにおける実際の観察結果に対して比較されうる。
【0053】
線形回帰分析は、とりわけ対象からの試料中の一つ以上のCLRMARKERのレベルを、その対象の実際に観察される臨床的結果と相関づけることに基づいて、結腸直腸癌を発病するリスクを予測するために、または、例えば計算されたAPACHEリスクスコア、SAPSスコア、POSSUMリスクスコア、またはTukey,J.(1993)Controlled Clinical Trialsにより説明され、Richard Simons研究によりマイクロアレイ分野において一般に広められた複合共変量予測因子(CCP)、臨床または診断アッセイにおいて偽発見率を計算するためのBenjamini―Hochberg法(例えば、Klipper―Aurbach,Y.等、(1995)Med.Hypotheses 45(5):486―90を参照)、Mann―Whitney U検定、中央値の等価性についてのWilcoxon検定(Wilcoxon,F.(1945)Biometrics,1,80―83を参照)、およびファミリーごとの修正のためのHochberg法(例えば、Levin,B.(1996)Am.J.Public Health 86(5):628―629を参照)を含む、結腸直腸癌の有病率を診断または予測するための他の公知の方法と組み合わせて、用いることができる。しかし特に有用なのは、結腸直腸癌の公知の予測モデルと対象試料中に検出されるCLRMARKERのレベルの関係を決定するための、非線形方程式および分析である。特に興味深いのは、K次近隣距離、ブースティング、決定木、ニュートラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシン、および隠れマルコフモデル等の確立された技術を含む、パターン認識機能を利用する、構造的および協働的分類アルゴリズム、ならびにリスク指標構築の方法である。さらに、複数のCLRMARKERのパネルへのこのような技術の適用は、複数のCLRMARKER入力からの情報を含む一つの数値的「リスク指標」または「リスクスコア」を作成するためのこのような組み合わせの使用と同様に、本発明の範囲に包含され、または含まれる。
【0054】
因子分析は、その構成成分からCLRMARKERパネルを構築し、代用可能なマーカ群をグループ化する上で、非常に有用でありうる。因子分析は、多数の相関変数(結腸直腸癌リスク因子等)を、元の変数の分散の大きな割合を占める異なる属性を表す、より少ない「因子」に減らすことができる、数学的技術である(例えば、Slattery,ML.等、(1998)Am.J.Epidemiol.148:4―16;Martinez,M.E.等、(1998)Am.J.Epidemiol.148:17―19を参照)。これらの分析からの因子「スコア」の疫学的研究から、例えば潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の成分、および結腸直腸癌の発病率の間の関係がさらに決定されうる。因子分析の基礎にある前提は、一連の変数の間に観察される相関関係が、少数の固有の観測されない変数、「因子」により説明できるということである。因子分析は、二つの手順を伴う:1)因子数を推定するための因子抽出、および2)元の変数に関して各因子の成分を決定するための因子回転。因子抽出は、主成分分析法により行われうる。これらの成分は、各成分と他の各成分の相関がゼロとなるように構築される、元の変数の線形和である。各主成分は、その成分により説明される元の変数の分散を表す「固有値」を伴う(元の変数の各々が1の分散を有するように標準化される)。構築されうる主成分の数は、元の変数の数に等しい。因子分析においては通例、全分散において任意の一つの元の変数よりも意味のある成分(すなわち、固有値>1である成分)のみを維持することにより因子数が決定される。
【0055】
因子数は確立されたら、元の変数に関して最も節約的解釈を有する因子の組成を決定するために、因子回転が行われる。因子回転においては、各因子の元の変数との相関を表す「因子負荷量」が、これらの因子負荷量が0または1に可能な限り近くなるように、変更される(因子により説明される分散の合計量が不変であるという制約を伴って)。因子回転のための多数の方法が開発されており、最終的因子組が互いに無相関なままであることを必要とするか(別名「直交法」)、または因子が互いに相関しうるか(「斜交法」)により区別されうる。因子分析の解釈においては、因子負荷量のパターンが検討されて、どの元の変数が各因子の重要構成成分であるかが決定される。従来、特定の因子に対する因子負荷量が>0.4(または−0.4未満)である変数が、その重要構成成分であると考えられる。
【0056】
同時または時間的に異なる時間に測定されるテスト(「対象」)および基準(「コントロール」)試料について、比較が行われうる。後者の例は、CLRMARKERの発現レベルに関する情報を集めるコンパイルされた発現情報、例えば配列データベースの使用である。基準試料、例えばコントロール試料が、結腸直腸癌を有しない対象からのものであり、対象のテスト試料とコントロール基準試料中のCLRMARKERの量が類似する場合には、治療が有効なことを示す。しかし、テスト試料および基準試料中の一つ以上のCLRMARKERの量の変化は、より好ましくない臨床的結果または予後を反映しうる。「効果的」または「有効」とは、治療が、一つ以上のCLRMARKERの量の減少または増加につながることを意味する。対象の結腸直腸癌を診断または治療するための任意の公知の方法に関連して、効果が決定されうる。
【0057】
本発明のCLRMARKERのレベルの実際の測定値は、公知技術の任意の方法を用いて、タンパク質または核酸レベルで決定されうる。例えば核酸レベルでは、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンおよびサザンハイブリダイゼーション分析、ならびにリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、遺伝子の発現を決定できる。あるいは、例えば発現量の異なる遺伝子の配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、バイオマーカのレベルを測定できる。バイオマーカのレベルは、例えば本明細書に記載の遺伝子産物によりコードされるペプチドのレベルまたはその活性を測定することにより、タンパク質レベルでも決定されうる。そのような方法は公知技術であり、例えば遺伝子、アプタマーまたは分子インプリントによりコードされるタンパク質に対する抗体に基づくイムノアッセイを含む。任意の生物学的材料を、タンパク質またはその活性の検出/定量化に用いうる。あるいは、分析される各タンパク質の活性に従って、バイオマーカ遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を決定するために適切な方法が選択されうる。
【0058】
CLRMARKERの量は、とりわけ、電気泳動的に(アガロースゲル電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウム―ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS―PAGE)、Tris―HClポリアクリルアミドゲル、非変性タンパク質ゲル、二次元ゲル電気泳動(2DE)等による)、免疫化学的に(すなわち、放射性免疫測定、免疫ブロット、免疫沈降、免疫蛍光、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)、「プロテオーム解析」により、または「ゲノム分析」により、検出されうる。
【0059】
「プロテオーム解析」は、表面増強レーザ脱着イオン化(SELDI)、マトリックス支援レーザ脱着イオン化―飛行時間型(MALDI―TOF)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析(LC/MS)を伴う、または伴わない液体クロマトグラフィ、タンデム型LC/MS、タンパク質アレイ、ペプチドアレイ、および抗体アレイを含むがこれに限定されない。
【0060】
「ゲノム分析」は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、実時間PCR(例えば、Roche Applied Sciencesから利用可能なLight Cycler(登録商標)による)、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、ノーザンブロット分析、およびサザンブロット分析を含みうる。
【0061】
マイクロアレイ技術が、遺伝子またはタンパク質の発現を分析するためのツールとして用いられればよく、これには、小膜または固体担体(光ファイバ検出手段を伴う、または伴わない、顕微鏡ガラススライド、プラスチック担体、シリコンチップまたはウェーハ等、および、ニトロセルロース、ナイロン、またはポリフッ化ビニリデンを含む膜などであるがこれに限定されない)が含まれる。固体担体は、目的の分析物、通常は核酸、タンパク質、または代謝産物またはそのフラグメントの結合を可能にするために、化学的に(シラン、ストレプトアビジン、および他の多数の例等)、または物理的に誘導体化(例えばフォトリソグラフィ)されうる。核酸またはタンパク質は、in situでプリント(すなわちインクジェットプリント)、スポット、または合成されうる。アレイ上に正確かつ再現可能なスポットを提供するピン技術と組み合わせた、非常に正確なx―、y―、およびz―軸上の運動制御を伴う自動化されたスポッティングデバイスを利用するxyzロボットマイクロアレイヤーにより、目的の核酸またはタンパク質の沈着を達成できる。目的の分析物が、特に所望される分析物の容易な同定を促進するために、規則的または固定的な配置で固体担体上に配置される。多数のマイクロアレイフォーマットが、とりわけ、Affymetrix、ArrayIt、Agilent Technologies、Asper Biotech、BioMicro、CombiMatrix、GenePix、Nanogen、およびRoche Diagnosticsから市販されている。
【0062】
一つ以上の検出可能な標識で標識されたヌクレオチドまたはアミノ酸の存在下で、目的の核酸またはタンパク質が合成されうる。このような標識には、例えば、蛍光染料および化学発光標識が含まれる。特に、マイクロアレイ検出では、ローダミン、フルオレセイン、フィコエリトリン、Cy3およびCy5のようなシアニン染料、およびストレプトアビジン―フィコエリトリン(核酸またはタンパク質がビオチンで標識される場合)のような結合体等の蛍光染料が多用される。通常は、共焦点蛍光レーザ走査または光電増倍管を用いて、蛍光発光の検出および画像取得が達成され、これによりアレイ上の核酸またはタンパク質についての相対シグナル強度および分析物存在量の割合が提供される。多様なスキャニング機器が利用可能であり、多数の画像取得および定量化パッケージがそれらに伴い、これにより、組み合わされた選択規準の数値的評価によって、中央値、四分位間範囲(IQR)、飽和スポットのカウント、ペアワイズのスキャン間の線形回帰(r2およびP)等の最適なスキャニング条件を画定することが可能になる。スキャン再現性、ならびにスキャニング条件の最適化、バックグラウンド補正、および正規化が、データ分析の前に評価される。
【0063】
正規化とは、アレイ、サブアレイ(またはプリントチップ群)、および色素―標識チャンネルの間の組織的非生物学的差異から生じる効果のために、データ平均値または分散を調節するために用いられるプロセスの集まりをさす。アレイは、チップまたは固体担体上の標的プローブ組全体として定義される。サブアレイまたはプリントチップ群とは、同じプリントチップにより堆積される標的プローブのサブセットであり、完全なアレイの中の、異なるより小さなプルーブ(proves)のアレイとして確認されうるものをさす。色素―標識チャンネルとは、チップにハイブリダイズされた標的試料の蛍光の周波数をさす。二つの異なる色素標識の試料が混合され、同じチップにハイブリダイズされる実験は、従来技術において「二重色素実験」と呼ばれ、「赤色」チャンネルと「緑色チャンネル」の比のログとして表される場合が多い、アレイ上の各標的の絶対ではなく相対発現値をもたらす。正規化は、レシオメトリックまたは絶対値の方法にしたがって実行されうる。レシオメトリック分析は、一つのチャンネルまたはアレイが共通基準との関係で考慮される二重色素実験において主に用いられる。各標的プローブの発現の比が、テスト試料と基準試料の間で計算された後、比がlog2(比)に転換されて、相対変化が対称的に表される。絶対値方法は、チャンネルまたはアレイの適切な基準がない、一重色素実験または二重色素実験において多用される。特定の実験的条件を特徴付ける発現レベルまたは量として、適切な「ヒット」が定義される。通常これらは、異なる実験条件間で発現レベルが有意に異なる核酸またはタンパク質であり、異なる条件における核酸またはタンパク質の発現レベルの比較、および、核酸またはタンパク質の相対的発現(「倍率変化」)および一つの試料組におけるその発現レベルの、別の組におけるその発現に対する比の分析によるのが通常である。
【0064】
マイクロアレイ実験から得られたデータは、クラスタリング法およびスコアリング法等の多数の統計的分析のいずれか一つにより分析されうる。クラスタリング法は、様々な条件または試料で同様に反応する標的(核酸および/またはタンパク質等)を同定することを試みる。このような標的を見つける動機は、類似の発現パターンを示す標的は、共通の調節因子、共通の機能、または共通の細胞起源等の共通の特性を共有するという仮定にもとづく。
【0065】
階層型クラスタリングは、単一メンバーのクラスターが、より大きなクラスターに融合されていく集塊プロセスである。手順は、全ての標的分子間のペアワイズの距離行列を計算することにより開始される。距離行列は、最も近い遺伝子につき調査され、それらがクラスターとして定義される。二つのクラスターの集塊により新しいクラスターが形成された後、距離行列が、他の全てのクラスターからの距離を反映するようにアップデートされる。その後、最も近いクラスター対を捜して集塊する手順が繰り返される。この手順により、複数のクラスターがその類似性にしたがってノードに融合されて、単一の階層ツリーとなる、階層的デンドログラムができる。階層的クラスタリングソフトウェアアルゴリズムには、例えば、ClusterおよびTreeviewが含まれる。
【0066】
K―平均クラスタリングは、それらの「中心」点または平均に関して定義されるクラスターを探索する反復的手順である。クラスターの中心組が定義されたら、各標的分子が、最も近いクラスターに割り当てられる。そして、クラスタリングアルゴリズムが、各クラスター中の標的分子の中心までの距離の合計が最小になるように、各遺伝子クラスターの中心を調節する。この結果、クラスター中心の新しい選択肢が生じ、標的分子がクラスターに再度割り当てられうる。収束が観察されるまで、これらの反復が行われる。自己組織化マップ(SOM)は、データが所定のクラスター組に割り当てられるという点で、k―平均法に一部関係する。しかしk―平均法とは異なり、その後行われるのは、各クラスターの遺伝子発現ベクターが、異なるクラスター間の最善の区別を見出すように「訓練される」反復プロセスである。換言すれば、データに部分構造が与えられてから、この構造がデータにしたがって繰り返し修正される。SOMは、例えばGeneCluster等、多くのソフトウェアパッケージに含まれる。他のクラスタリング法には、グラフ理論的クラスタリングが含まれるが、これは、グラフ理論的および統計的技術を利用して、同じ真のクラスターに属する可能性がある類似性の高い要素の緊密な群(カーネル)を同定する。そして、いくつかの帰納的手順を用いて、カーネルが完全なクラスタリングに拡張される。グラフ理論的クラスタリングを利用するソフトウェアの例には、Expander可視化ツールと組み合わされたCLICKが含まれる。
【0067】
ハイスループット発現分析から得られたデータは、パラメトリックおよびノンパラメトリック法等の統計方法を用いてスコア化されうる。パラメトリックなアプローチは、発現プロフィールをパラメータで表してモデル化し、実験群のパラメータがいかに異なるかを問う。パラメトリック法の例には、t検定、分離スコア、およびベイジアンt検定が含まれるがこれに限定されない。ノンパラメトリック法は、データの発現プロフィールの分布について推測的仮定は一切設けられず、二つの発現測定群が区別される程度が直接検定される、データの分析に関する。別の方法は、発現値に対する単純閾値により二つの試料群の分離の成功度を測定する、TNOM、すなわち誤分類の閾値数を用いる。
【0068】
SAGE(遺伝子発現の連続分析)を用いて、遺伝子発現のレベルを系統的に決定することもできる。SAGEにおいては、転写産物を一意的に同定するために十分な情報を含む、特定の位置の短い配列タグが使用された後、連続的様式で標識が連結される。例えば、Velculescu V.E.等、(1995)Science 270:484―487を参照。ポリアデニル化RNAが、オリゴdTプライミングにより単離されてから、cDNAが、ビオチン標識プライマを使用して合成される。その後cDNAがアンカリング制限エンドヌクレアーゼにより切断され、3’―末端cDNAフラグメントが、ストレプトアビジンでコートされたビーズに結合される。タグ化酵素のための認識部位を含むオリゴヌクレオチドリンカーが、結合されたcDNAに連結される。タグ化酵素は、3’から認識部位の一定の塩基数でDNAを切断し、酵素による消化後に短いタグおよびリンカーがビーズから放出される、クラスII制限エンドヌクレアーゼでありうる。そして、放出されたタグの3’末端とリンカーが平滑末端化され、互いにライゲートされて、長さが約100塩基対の連結ダイタグが形成される。そして、ダイタグがPCR増幅された後、リンカーおよびタグが、アンカリング制限エンドヌクレアーゼによる消化により放出される。その後、タグ(通常は25〜30マーのサイズ範囲)がゲル精製され、連結され、配列ベクターにクローニングされる。コンカテマの配列決定により、個々のタグが同定でき、所与の細胞または組織型の転写産物の量を決定できる。
【0069】
タンパク質の混合物(血清等の生体試料に見られるような)を、一次元目で等電点(例えば5〜8のpH範囲)にしたがって分離し、二次元目で分子量にしたがって分離する、二次元ゲル電気泳動が特に有用である。二次元液体クロマトグラフィも、本発明のCLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型を同定または検出するために都合よく用いられうる。
【0070】
CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型は、対象からの試料を、CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、または多型に結合する抗体と接触させてから、反応生成物の有無を検出することにより、典型的に検出されうる。本明細書に詳述されるように、抗体は単クローン、多クローン、キメラ、または以上のフラグメントであり得、反応生成物を検出するステップは、任意の適切なイムノアッセイにより行われうる。単離された抗体は、例えば、(本明細書で定義されるところの)ヒト定常領域、および表1に記載の一つ以上のCLRMARKERに結合する抗原結合領域で、好ましくは少なくとも一つ、好ましくは二、三、四、五、六、七、八、九、十またはそれ以上のアミノ酸残基のものを含みうる。対象からの試料は、典型的には上述の「試料」という用語により定義されるところの生物流体であり、上述の方法を行うために用いられる生物流体と同じ試料でありうる。
【0071】
本発明にしたがって行われるイムノアッセイは、ホモジニアスアッセイまたはヘテロジニアスアッセイでありうる。ホモジニアスアッセイにおいては、免疫反応は通常、特異抗体(例えば抗CLRMARKERタンパク質抗体)、標識された分析物、および目的の試料に関わる。抗体が標識された分析物に結合すると、標識から生じるシグナルが、直接または間接的に変更される。免疫反応およびその程度の検出の両方が、ホモジニアス溶液において行われうる。使用できる免疫化学的標識には、フリーラジカル、放射性同位体、蛍光染料、酵素、バクテリオファージ、またはコエンザイムが含まれる。
【0072】
ヘテロジニアスアッセイのアプローチにおいては、試薬は通常、試料、抗体、および検出可能なシグナルを生成するための手段である。上述の試料を使用できる。抗体が、ビーズ(プロテインAアガロース、プロテインGアガロース、ラテックス、ポリスチレン、磁性または常磁性ビーズ等)、プレートまたはスライド等の担体上に固定され、液相において抗原を含むと疑われる試料と接触させられうる。そして、担体が液相から分離され、検出可能なシグナルにつき、かかるシグナルを生成するための手段を用いて、担体相または液相が検査される。シグナルは、試料中の分析物の存在に関係付けられる。検出可能なシグナルを生成する手段には、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識の使用が含まれる。例えば、検出される抗原が第二結合部位を含む場合には、その部位に結合する抗体が検出可能な基に結合され、分離ステップの前の液相反応溶液に加えられうる。固体担体上の検出可能な基の存在が、テスト試料中の抗原の存在を示す。適切なイムノアッセイの例は、オリゴヌクレオチド、免疫ブロット、免疫沈降、免疫蛍光法、化学発光法、電気化学発光または酵素結合イムノアッセイである。
【0073】
本明細書に開示の方法を実施するために有用でありうる、多数の具体的なイムノアッセイフォーマットおよびこれらの変形は、当業者に公知である。一般に、E.Maggio,Enzyme―Immunoassay,(1980)(CRC Press,Inc.,BocaRaton,FIa.)を参照;Skold等に対する米国特許第4,727,022号、表題“Methods for Modulating Ligand―Receptor Interactions and their Application”、Forrest等に対する米国特許第4,659,678号、表題“Immunoassay of Antigens”、David等に対する米国特許第4,376,110号、表題“Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies”、Litman等に対する米国特許第4,275,149号、表題“Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays”、Maggio等に対する米国特許第4,233,402号、表題“Reagents and Method Employing Channeling”、およびBoguslaski等に対する米国特許第4,230,767号、表題“Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label”も参照。
【0074】
受動結合等の公知の技術により、診断アッセイに適切な固体担体(例えば、プロテインAまたはプロテインGアガロース等のビーズ、ラテックスまたはポリスチレン等の材料から形成されるミクロスフィア、プレート、スライドまたはウェル)に抗体が結合されうる。本明細書に記載の抗体も同様に、公知の技術により、放射標識(例えば35S、125I、131I)、酵素標識(例えばワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(例えばフルオレセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質)等の検出可能な標識または基に結合されうる。
【0075】
抗体は、チロシンリン酸化、スレオニンリン酸化、セリンリン酸化、グリコシル化(例えばO―GlcNAc)等、CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型の翻訳後修飾を検出するためにも有用でありうる。このような抗体は、目的のタンパク質(単数または複数)におけるリン酸化アミノ酸を特異的に検出し、本明細書に記載の免疫ブロット、免疫蛍光、およびELISAアッセイにおいて使用されうる。これらの抗体は当業者に周知であり、市販である。反射装置マトリックス支援レーザ離脱イオン化―飛行時間質量分析(MALDI―TOF)において準安定イオンを用いても、翻訳後修飾が決定されうる(Wirth,U.等(2002)Proteomics 2(10):1445―51)。
【0076】
酵素活性を有することが知られるCLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型では、公知技術の酵素アッセイを用いて、in vitroで活性が決定されうる。このようなアッセイには、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、レダクターゼアッセイが含まれるがこれに限定されない。ヒルプロット、ミカエリス―メンテン式、ラインウィーバー―バーク分析およびスキャッチャードプロット等の線形回帰プロットなど、公知のアルゴリズムを用いて速度定数KMを測定することにより、酵素活性のキネティクスの変調が決定されうる。
【0077】
公知技術の任意の方法を用いて、本明細書に開示される遺伝子の発現をRNAレベルで測定できる。例えば、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析を用いて、遺伝子発現を決定できる。あるいは、例えば差別的に発現された配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、発現を測定できる。
【0078】
あるいは、CLRMARKERタンパク質および核酸代謝産物またはフラグメントが測定されうる。「代謝産物」という用語には、生体分子(例えばタンパク質、核酸、炭水化物、または脂質)のプロセシング、切断または消費により産生される任意の化合物等、代謝プロセスの化学的または生化学的産物が含まれる。代謝産物は、屈折率分光(RI)、紫外分光(UV)、蛍光分析、放射化学分析、近赤外分光(近IR)、核磁気共鳴分光(NMR)、光散乱分析(LS)、質量分析、熱分解質量分析、比濁分析、分散ラマン分光、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィ、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィ、質量分析と組み合わせたマトリックス支援レーザ離脱イオン化―飛行時間(MALDI―TOF)、表面増強レーザ離脱イオン化(SELDI)、質量分析と組み合わせたイオンスプレー分光、キャピラリー電気泳動、NMRおよびIR検出を含む、当業者に周知の様々な方法で検出されうる。(参照により全体として本明細書に組み込まれる、国際公開第04/056456号および第04/088309号を参照)。この点に関しては、他のCLRMARKER分析物が、上述の検出法または当業者に周知の他の方法を用いて測定されうる。
【0079】
バイオマーカ配列のデータベースエントリにより提供される配列情報を用いて、バイオマーカ配列の発現が、従来技術において当業者に周知の技術を用いて検出され(存在すれば)、測定されうる。例えば、バイオマーカ配列に対応する配列データベースエントリ中の配列、または本明細書に開示される配列中の配列を用いて、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション分析または特定の核酸配列を特異的および好ましくは量的に増幅する方法において、バイオマーカRNA配列を検出するためのプローブを構築しうる。別の例として、配列を用いて、例えば逆転写ベースのポリメラーゼ連鎖反応法(RT―PCR)等の増幅ベースの検出法において、バイオマーカ配列を特異的に増幅するためのプライマを構築しうる。遺伝子発現の変化が、遺伝子増幅、欠失、多型、および変異に関連するときには、テストおよび基準細胞集団における検査されるDNA配列の相対量を比較することにより、テストおよび基準集団における配列比較が行われうる。
【0080】
公知技術の任意の方法を用いて、本明細書に開示される遺伝子の発現が、RNAレベルで測定されうる。例えば、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析を用いて、遺伝子発現を決定できる。あるいは、例えば発現量の異なる配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、発現を測定できる。例えば他の標的増幅方法(例えばTMA、SDA、NASBA)、またはシグナル増幅方法(例えばbDNA)等を用いて、RNAを定量することもできる。国際出願PCT/US02/38806号(参照により内容が全体として本明細書に組み込まれる、国際公開第03/048377号として発行、およびTherianos等、(2004)Am.J.Pathol.164(3):795―806)にさらに説明されるように、本発明のバイオマーカの発現のレベルが、実時間PCRにより検出されるのが好ましい。
【0081】
CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の有効な量のレベルにより、結腸直腸癌の治療経過をモニタリングすることも可能になる。この方法では、生体試料が、結腸直腸癌のための治療レジメン、例えば薬物療法を受けている対象から提供されうる。このような治療レジメンには、食事補助(アルファ―リポ酸、クロミウム、コエンザイムQ10、ニンニク、マグネシウム、およびオメガ―3脂肪酸を含むこれに限定されない)、外科的介入(結腸直腸切除等)、および、例えば本明細書に定義される結腸直腸癌調節剤等、結腸直腸癌と診断または同定される対象において使用される治療または予防薬での治療が含まれうるがこれに限定されない。必要に応じて、生体試料は、治療前、治療の間、または治療後の様々な時点で対象から得られる。そして、CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の有効な量のレベルが決定され、基準値、例えば癌状態が既知であるコントロール対象または集団、または指標値またはベースライン値と、比較されうる。基準試料または指標値またはベースライン値は、治療を受けている一つ以上の対象から入手または導出され、または、結腸直腸癌を発病するリスクが低い一つ以上の対象から入手または導出され、または、治療を受けた結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している対象から入手または導出されうる。あるいは、基準試料または指標値またはベースライン値は、治療を受けていない一つ以上の対象から入手または導出されうる。例えば、結腸直腸癌の初期治療および結腸直腸癌の後続治療を受けている対象から試料が集められて、治療の進行がモニタされうる。基準値には、本明細書に開示されるようなリスク予測アルゴリズムから導出される値または人口調査からの計算された指標も含みうる。
【0082】
したがって、本発明のCLRMARKERを用いて、結腸直腸癌を有さず、結腸直腸癌を発病すると期待されない対象において検出されるCLRMARKERの発現レベルのパターンを含む「基準発現プロフィール」を生成できる。本明細書に開示されるCLRMARKERを用いて、結腸直腸癌を有する対象からとられたCLRMARKERの発現レベルのパターンを含む「対象発現プロフィール」を生成することもできる。対象発現プロフィールを、基準発現プロフィールと比較して、結腸直腸癌を発病するリスクがある対象を診断または同定し、結腸直腸癌に関係する合併症の発症または発症のリスクを含めて、疾患の進行ならびに疾患の進行速度をモニタし、結腸直腸癌の治療様式の有効性をモニタできる。
【0083】
本発明の基準および対象発現プロフィールは、VCR、CD―ROM、DVD―ROM、USBフラッシュ媒体等により読取り可能なもののような、アナログテープまたはデジタルメディア等の機械可読媒体に含まれうるがこれに限定されない。このような機械可読媒体には、結腸および/または直腸癌の家族歴、高脂肪の食事、結腸直腸ポリープの形成、または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患および/またはクローン病の発病のような限定されない従来の結腸直腸癌リスク因子の測定値など、追加的なテスト結果も含まれうる。代替的または追加的に、機械可読媒体は、既往および任意の関連の家族歴等の、対象の情報も含みうる。機械可読媒体は、本明細書に記載されるような、他の結腸直腸癌リスクアルゴリズムおよび計算された指標に関する情報も含みうる。
【0084】
対象の遺伝的構造の差により、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうる様々な薬剤を代謝する相対的能力の差が生じうる。結腸直腸癌を有する対象、または結腸直腸癌を発病するリスクがある対象は、年齢、民族性、食事、ポリープの存否、および他のパラメータが異なりうる。したがって、本明細書に開示されるCLRMARKERの使用により、選択された対象においてテストされる候補治療薬または予防薬が、対象において結腸直腸癌またはその合併症を治療または防止するために適するという予測可能性のレベルを予め決定できる。
【0085】
特定の対象に適切な治療剤または薬剤を同定するために、対象からのテスト試料が、治療剤または薬物に曝露され、一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物または他の分析物のレベルが決定されうる。一つ以上のCLRMARKERのレベルが、治療剤または薬物による治療または曝露前の第一期間および曝露後の第二期間で対象から得られる試料と比較され、または、そのような治療または曝露の結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している一つ以上の対象から得られる試料と比較されうる。結腸直腸治療において多用され、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうるこのような治療剤または薬剤の例には、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその任意の組み合わせの一つ以上が含まれるがこれに限定されない。このような治療剤または薬剤は、結腸直腸癌と診断された対象のために処方され、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうる(本明細書において「結腸直腸癌調節剤」)。
【0086】
本発明での使用に適するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤には、本明細書で定義されるように、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環式テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体が含まれるがこれに限定されない。本発明の方法における使用に適するHDAC阻害剤の非限定的な具体例には、SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルビスヒドロキサム酸、アゼラインアゼラインビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライン1―9―ヒドロオキサメート―アニリド(AAHA)、6―(3―クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(3C1―UCHA)、オキサムフラチン、A―161906、スクリプタイド、PXD―101、LAQ―824、CHAP、MW2796およびMW2996等のヒドロキサム酸を含む化合物;トラポキシンA、FR901228(FK228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC―トキシン、WF27082、およびクラミドシンより選択される環式テトラペプチド;酪酸ナトリウム、イソ吉草酸、吉草酸、4フェニル酪酸(4―PBA)、フェニル酪酸(PB)、プロピオネート、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニルアセテート、3―ブロモプロピオネート、トリブチリン、バルプロン酸およびバルプロエートより選択される短鎖脂肪酸(SCFA);CI―994、MS―27―275(MS―275)、およびMS―27―275の3’―アミノ誘導体等のベンズアミド誘導体;トリフロロメチルケトンおよびN―メチル―a―ケトアミド等のa―ケトアミド等の求電子性ケトン誘導体;および、天然産物、プサムマプリンおよびデプデシンを含む他の種々のHDAC阻害剤が含まれる。
【0087】
アルキル化剤の例は、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えばチオテパ)、アルキルアルコン(alkone)スルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、およびシスプラチン)が含まれるがこれに限定されない。これらの化合物は、リン酸、アミノ、ヒドロキシル、スルフィヒドリル(sulfihydryl)、カルボキシル、およびイミダゾール基と反応する。他の白金化合物には、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,894,049号、第5,244,919号、および第5,072,011号に開示されるものが含まれる。
【0088】
生理学的条件下で、これらの薬物はイオン化し、感受性核酸およびタンパク質に結合する正に帯電したイオンを生成し、細胞周期停止および/または細胞死をもたらす。アルキル化剤は、細胞周期の特定段階と独立して活性を及ぼすため、細胞周期非特異的薬剤である。ナイトロジェンマスタードおよびアルキルアルコン(alkone)スルホネートは、G1またはM期の細胞に対して最も有効である。ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード、およびアジリジンは、G1およびS期からM期への進行を損なう。ChabnerおよびCollins eds.(1990)“Cancer Chemotherapy:Principles and Practice”,Philadelphia:JBLippincott。
【0089】
抗生物質(例えば細胞毒性抗生物質)は、DNAまたはRNA合成を直接阻害することにより作用し、細胞周期の全体にわたって有効である。抗生物質の例には、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、およびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが含まれる。これらの抗生物質は、異なる細胞成分をターゲッティングすることにより、細胞成長を妨げる。例えば、アントラサイクリンは、転写的に活性のDNAの領域においてDNAトポイソメラーゼIIの作用を妨げ、DNA鎖切断をもたらすと一般に考えられている。
【0090】
抗代謝性薬剤(すなわち抗代謝剤)は、生理機能および癌細胞の増殖に不可欠な代謝プロセスを妨げる薬物群である。活発に増殖する癌細胞は、大量の核酸、タンパク質、脂質、および他の不可欠な細胞成分の持続的合成を必要とする。抗代謝剤の多くが、プリンまたはピリミジンヌクレオシドの合成を阻害し、またはDNA複製の酵素を阻害する。いくつかの抗代謝剤は、リボヌクレオシドの合成およびRNAおよび/またはアミノ酸代謝、ならびにタンパク質合成も妨げる。抗代謝剤は、不可欠な細胞成分の合成を妨げることにより、癌細胞の成長を遅延または停止させうる。抗分裂剤は、この群に含まれる。抗代謝薬剤の例には、フルオロウラシル(5―FU)、フロクスウリジン(5―FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6―TG)、メルカプトプリン(6―MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2―CDA)、アザシチジン、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、フラボピリドール、およびペメトレキセドが含まれるがこれに限定されない。
【0091】
ホルモン剤は、その標的器官の成長および発達を調節する薬物群である。ほとんどのホルモン剤が、エストロゲン、プロゲストーゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよびプロゲスチン等の、性ステロイドおよびその誘導体およびそのアナログである。これらのホルモン剤は、性ステロイドの受容体のアンタゴニストとして働き、受容体発現および不可欠な遺伝子の転写をダウンレギュレートしうる。このようなホルモン剤の例は、合成エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール)、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、およびラロキシフェン)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、ニルタミド、およびフルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えばアミノグルテチミド、アナストロゾール、およびテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、プレドニソン、ケトコナゾール、ゴセレリンアセテート、ロイプロリド、メゲストロールアセテート、およびミフェプリストンである。ホルモン剤は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、および髄膜腫を治療するために用いられる。ホルモンの主な作用がステロイド受容体により媒介されるため、受容体陽性乳癌の60%が、第一線のホルモン療法に応答し;受容体陰性腫瘍で応答したのは10%未満だった。ホルモン剤と関係する主な副作用は、発赤である。頻繁に見られるのは、骨痛の突然の増加、皮膚損傷周辺の紅斑、および高カルシウム血症の誘発である。
【0092】
特に、プロゲストーゲンは子宮内膜癌を治療するために用いられる。これらの癌が、プロゲストーゲンに対抗されない高濃度のエストロゲンに曝露される女性に生じるためである。抗アンドロゲン剤は、主にfテストステロンのレベルを減少させ、これにより腫瘍の成長を阻害するために使用される。乳癌のホルモン治療は、腫瘍性乳房細胞におけるエストロゲン受容体の、エストロゲンに依存した活性化のレベルを低下させることを伴う。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体に結合し、活性化補助因子の動員を防止し、これによりエストロゲンシグナルを阻害することにより作用する。LHRH類似体は、テストステロンのレベルを低下させて腫瘍の成長を減少させるために、前立腺癌の治療において用いられる。アロマターゼ阻害剤は、ホルモン合成に必要とされる酵素を阻害することにより作用する。
【0093】
植物由来薬剤は、植物から得られ、または薬剤の分子構造に基づいて修飾される薬物群である。それらは、細胞分裂に必須の細胞成分の集合を防止することにより、細胞複製を阻害する。植物由来薬剤は、多くの形の癌を治療するために用いられる。例えば、ビンクリスチンは、白血病、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、および幼児期腫瘍神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、およびウィルムス腫瘍の治療において使用される。ビンブラスチンは、リンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉腫、およびカポシ肉腫に対して使用される。ドキセタキセル(Doxetaxel)は、進行乳癌、肺非小細胞癌(NSCLC)、および卵巣癌に対して有望な活性を示している。エトポシドは、様々な腫瘍に対して活性であり、中でも小細胞肺癌、精巣癌、およびNSCLCは最も応答する。
【0094】
植物由来薬剤の例には、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、およびビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えばエトポシド(VP―16)およびテニポシド(VM―26))、およびタキサン(例えばパクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。これらの植物由来薬剤は一般に、チュービュリンに結合し、有糸分裂を阻害する抗分裂剤として働く。エトポシド等のポドフィロトキシンは、トポイソメラーゼIIと相互作用し、DNA鎖切断をもたらすことにより、DNA合成を妨げると考えられる。ビンクリスチン(例えば硫酸ビンクリスチン、Gensia Sicor Pharmaceuticals,Irvine,CA)は、一般の草花、ツルニチニチソウ植物(Vinca rosea Linn)から得られるアルカロイドである。硫酸ビンクリスチンは、ビンカロイコブラスチン、22―オキソ―、硫酸塩(1:1)(塩)である。エトポシド(例えば、VePesid(登録商標)、Bristol―Myers Squibb Co.,Princeton,NJ,一般にVP―16としても知られる)は、ポドフィリンの半合成誘導体である。リン酸エトポシドの化学名は、4’―デメチルエピポドフィロトキシン9―[4,6―O―(R)―エチリデン―b―D―グルコピラノシド],4’―(リン酸二水素)である。エトポシドの化学名は、4’―デメチルエピポドフィロトキシン9―[4,6―0―(R)―エチリデン―b―D―グルコピラノシド]である。
【0095】
他の結腸直腸癌調節剤には、腫瘍ワクチン接種アプローチにおいて使用される抗体および試薬での免疫療法による治療が含まれうる。この療法クラスの一次薬物は、単独または例えば癌細胞に対する毒素または化学療法剤/細胞障害剤を担持する、抗体である。腫瘍抗原に対する単クローン抗体は、腫瘍により発現される抗原、好ましくは腫瘍特異抗原に対して誘発される抗体である。例えば、単クローン抗体ハーセプチン(トラスツズマ)が、転移性乳癌を含むいくつかの乳腺腫瘍に過剰発現されるヒト表皮成長因子受容体2(HER2)に対して産生される。HER2タンパク質の過剰発現は、より悪性の疾患および臨床予後の低下と関係する。ハーセプチンが、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌患者の治療のための単剤として使用される。
【0096】
腫瘍抗原に対する単クローン抗体の別の例は、リンパ腫細胞上のCD20に対して産生され、正常および悪性CD20+前Bおよび成熟B細胞を選択的に枯渇させる、リツキサン(リツキシマブ)である。リツキサンは、例えば、再発または耐性低悪性度または濾胞性、CD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療のための単剤として使用されている。マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)およびキャンパス(アレムツズマブ)は、使用できる腫瘍抗原に対する単クローン抗体のさらなる例である。
【0097】
癌抑制遺伝子は、細胞成長および分裂周期を阻害し、これにより新生物の発達を防止する機能をする遺伝子である。癌抑制遺伝子における突然変異により、細胞が、抑制シグナルのネットワークの成分の一つ以上を無視し、細胞周期チェックポイントを克服し、制御された細胞成長のより速い速度―癌が生じる。癌抑制遺伝子の例には、Duc―4、NF―1、NF―2、RB、p53、WT1、BRCA1およびBRCA2が含まれる。
【0098】
癌ワクチンは、腫瘍に対する身体の特異的免疫応答を誘導する薬剤群である。研究開発および臨床試験下のほとんどの癌ワクチンは、腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞に存在し、正常細胞において比較的不在または減少した構造(すなわちタンパク質、酵素または炭水化物)である。TAAは、腫瘍細胞に非常に固有であることにより、免疫系が認識し破壊するための標的を提供する。TAAの例には、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異性抗原(PSA)、a―フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(大腸癌および他の腺癌、例えば乳腺、肺、胃、および膵臓癌により産生される)、黒色腫関連抗原(MART―1、gap100、MAGE1,3チロシナーゼ)、乳頭腫ウイルスE6およびE7フラグメント、自己腫瘍細胞および同種腫瘍細胞の細胞全体または部分/溶解物が含まれる。
【0099】
本発明で使用するための、レチノイドまたはレチノイド剤には、ビタミンAの全ての天然、組換、および合成誘導体またはミメティクス、例えばパルミチン酸レチニル、レチノイド―ベータ―グルクロニド(ビタミンA1ベータ―グルクロニド)、レチニルリン酸塩(ビタミンA1リン酸塩)、レチニルエステル、4―オキソレチノール、4―オキソレチンアルデヒド、3―デヒドロレチノール(ビタミンA2)、11―シス―レチナール(11―シス―レチンアルデヒド、11―シスまたはネオbビタミンA1アルデヒド)、5,6―エポキシレチノール(5,6―エポキシビタミンA1アルコール)、無水レチノール(アンヒドロビタミンA1)、および4―ケトレチノール(4―ケト―ビタミンA1アルコール)、オールトランスレチノイン酸(ATRA;トレチノイン;ビタミンA酸;3,7―ジメチル―9―(2,6,6―トリメチル―1―シクロヘネン―1―イル)―2,4,6,8―ノナテトラエン酸[CAS No.302―79―4])、オールトランスレチノイン酸の脂質製剤(例えばATRA―IV)、9―シスレチノイン酸(9―シス―RA;アリトレチノイン;Panretin(商標);LGD1057)、(e)―4―[2―(5,6,7,8―テトラヒドロ―2―ナフタレニル)―1―プロペニル]―安息香酸、3―メチル―(E)―4―[2―(5,6,7,8―テトラヒドロ―2―ナフタレニル)―1―プロペニル]―安息香酸、フェンレチニド(N―(4―ヒドロキシフェニル)レチンアミド;4―HPR)、エトレチネート(2,4,6,8―ノナテトラエン酸)、アシトレチン(Ro10―1670)、タザロテン(エチル6―[2―(4,4―ジメチルチオクロマン―6―イル)―エチニル]ニコチン酸)、トコレチナート(9―シス―トレチノイントコフェリル)、アダパレン(6―[3―(1―アダマンチル)―4―メトキシフェニル]―2―ナフトエ酸)、モトレチニド(トリメチルメトキシフェニル―N―エチルレチンアミド)、およびレチンアルデヒドが含まれる。
【0100】
CD437(6―[3―(1―アダマンチル)―4―ヒドロキシフェニル]―2―ナフタレンカルボン酸およびAHPNとも呼ばれる)、CD2325、ST1926([E―3―(4’―ヒドロキシ―3’―アダマンチルビフェニル―4―イル)アクリル酸)、ST1878(メチル2―[3―[2―[3―(2―メトキシ―1,1―ジメチル―2―オキソエトキシ)フェノキシ]エトキシ]フェノキシ]イソブチレート)、ST2307、ST1898、ST2306、ST2474、MM11453、MM002(3―Cl―AHPC)、MX2870―1、MX3350―1、MX84、およびMX90―1等のレチノイド関連分子も、レチノイドとして含まれる(Garattini等、2004,Curr.Pharmaceut.Design 10:433―448;GarattiniおよびTerao,2004,J.Chemother.16:70―73)。一つ以上のRXRに結合するレチノイド剤が、本発明の用途に含まれる。一つ以上のRXRに結合し、一つ以上のRARには結合しない(すなわち、RXRに対する選択的結合;レキシノイド)レチノイド剤、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)、フィタン酸、メトプレン酸、LG100268(LG268)、LG100324、LGD1057、SR11203、SR11217、SR11234、SR11236、SR11246、AGN194204も含まれる(例えば、SimeoneおよびTari,2004,Cell Mol.Life Sci.61:1475―1484;RigasおよびDragnev,2005,The Oncologist 10:22―33;Ahuja等、2001,Mol.Pharmacol.59:765―773;GorgunおよびFoss,2002,Blood 100:1399―1403;Bischoff等、1999,J.Natl.Cancer Inst.91:2118―2123;Sun等、1999,Clin.Cancer Res.5:431―437;CrowおよびChandraratna,2004,Breast Cancer Res.6:R546―R555を参照)。9―シス―RAの誘導体が、さらに含まれる。3―メチルTTNEBおよび関連の薬剤、例えばTargretin(登録商標);ベクサロテン;LGD1069;4―[1−(5,6,7,8―テトラヒドロ―3,5,5,8,8―ペンタメチル―2―ナフタレニル)エテニル]安息香酸、またはその薬理学上許容可能な塩または水和物が特に含まれる。
【0101】
本発明に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、一つ以上のチロシンキナーゼ(例えば受容体チロシンキナーゼ)の活性またはレベルを減少させる、全ての天然、組換え、および合成薬剤、例えばEGFR(ErbB―1;HER―1)、HER―2/neu(ErbB―2)、HER―3(ErbB―3)、HER―4(ErbB―4)、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)、エフリン受容体(EPHR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、肝細胞成長因子受容体(HGFR)、インシュリン受容体(INSR)、白血球チロシンキナーゼ(Ltk/Alk)、筋肉特異的キナーゼ(Musk)、トランスフォーミング成長因子受容体(例えば、TGF―ベータ―RIおよびTGFベータ―RII)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、および血管内皮成長因子受容体(VEGFR)を含む。阻害剤には、上皮細胞成長因子(例えばEGF)、神経成長因子(例えばNGF―アルファ、NGF―ベータ、NGF―ガンマ)、ヘレグリン(例えばHRG―アルファ、HRG―ベータ)、トランスフォーミング成長因子(例えばTGF―アルファ、TGF―ベータ)、エピレグリン(例えばEP)、アンフィレグリン(例えばAR)、ベタセルリン(例えばBTC)、ヘパリン―結合EGF―様成長因子(例えばHB―EGF)、ニューレグリン(例えばNRG―1、NRG―2、NRG―4、NRG―4、グリア細胞成長因子とも呼ばれる)、アセチコリン(acetycholine)受容体誘導活性(ARIA)、および感覚運動性ニューロン由来成長因子(SMDGF)等、受容体チロシンキナーゼの内因性または修飾リガンドを含む。
【0102】
EGFRの阻害剤の例は、例えばセツキシマブ(エルビタックス;IMC―C225;MoAb C225)およびゲフィチニブ(IRESSA(商標);ZD1839;ZD1839;4―(3―クロロ―4―フルオロアニリノ)―7―メトキシ―6―(3―モルホリノプロポキシ)キナゾリン)、ZD6474(AZD6474)、およびEMD―72000(マツズマブ)、パニツムマブ(ABX―EGF;MoAb ABX―EGF)、ICR―62(MoAb ICR―62)、CI―1033(PD183805;N―[―4―[(3―クロロ―4―フルオロフェニル)アミノ]―7―[3―(4―モルホリニル)プロポキシ]―6―キナゾリニル]―2―プロペンアミド)、ラパチニブ(GW572016)、AEE788(ピロロ―ピリミジン;Novartis)、EKB―569(Wyeth―Ayerst)、およびEXEL7647/EXEL09999(EXELIS)である。エルロチニブおよび誘導体、例えばタルセバ(登録商標);NSC718781、CP―358774、OSI―774、R1415;N―(3―エチニルフェニル)―6,7―ビス(2―メトキシエトキシ)―4―キナゾリンアミン、またはその薬理学上許容可能な塩類または水和物(例えばメタンスルホン酸塩、モノヒドロクロリド)も含まれる。
【0103】
最近の開発により、癌を治療するために用いられる従来の細胞傷害性療法およびホルモン療法に加えて、癌の治療のための療法が導入されている。例えば、多くの形態の遺伝子治療の前臨床または臨床的治験が行われている。さらに、腫瘍の血管新生(すなわち脈管形成)の阻害に基づくアプローチが現在開発中である。これらのアプローチは、新たに形成される腫瘍血管系により提供される栄養および酸素の供給から、腫瘍を断絶するために用いられている。さらに、新生細胞の終末分化の誘導による癌療法も試みられている。適切な分化剤には、参照により内容が本明細書に組み込まれる以下の参考文献の任意の一つ以上に開示される化合物が含まれる。
【0104】
極性化合物(Marks等、(1987);,Friend,C.,Scher,W.,Holland,J.W.,およびSato,T.(1971)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)68:378―382;Tanaka,M.,Levy,J.,Terada,M.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1975)Proc.Natl.Acad Sci.(USA)72:1003―1006;Reuben,R.C.,Wife,R.L.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)73:862―866);ビタミンDおよびレチノイン酸の誘導体(Abe,E.,Miyaura,C,Sakagami,H.,Takeda,M.,Konno,K.,Yamazaki,T.,Yoshika,S.,およびSuda,T.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:4990―4994;Schwartz,E.L.,Snoddy,J.R.,Kreutter,D.,Rasmussen,H.,およびSartorelli,A.C.(1983)Proc.Am.Assoc.Cancer Res.24:18;Tanenaga,K.,Hozumi,M.,およびSakagami,Y.(1980)Cancer Res.40:914―919);ステロイドホルモン(Lotem,J.およびSachs,L.(1975)Int.J.Cancer 15:731―740);成長因子(Sachs,L.(1978)Nature(Lond.)274:535,Metcalf,D.(1985)Science,229:16―22);プロテアーゼ(Scher,W.,Scher,B.M.,およびWaxman,S.(1983)Exp.Hematol.11:490―498;Scher,W.,Scher,B.M.,およびWaxman,S.(1982)Biochem.& Biophys.Res.Comm.109:348―354);発癌プロモータ(Huberman,E.およびCallaham,M.F.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:1293―1297;Lottem,J.およびSachs,L.(1979)Proc.Natl.Acad Sci(USA)76:5158―5162);およびDNAまたはRNA合成の阻害剤(Schwartz,E.L.およびSartorelli,A.C.(1982)Cancer Res.42:2651―2655,Terada,M.,Epner,E.,Nudel,U.,Salmon,J.,Fibach,E.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)75:2795―2799;Morin,M.J.およびSartorelli,A.C.(1984)Cancer Res.44:2807―2812;Schwartz,E.L.,Brown,B.J.,Nierenberg,M.,Marsh,J.C.,およびSartorelli,A.C.(1983)Cancer Res.43:2725―2730;Sugano,H.,Furusawa,M.,Kawaguchi,T.,およびIkawa,Y.(1973)Bibl.Hematol.39:943―954;Ebert,P.S.,Wars,I.,およびBuell,D.N.(1976)Cancer Res.36:1809―1813;Hayashi,M.,Okabe,J.,およびHozumi,M.(1979)Gann 70:235―238)。
【0105】
他の阻害剤には、DMPQ(5,7―ジメトキシ―3―(4―ピリジニル)キノリンジヒドロクロリド)、アミノゲニステイン(4’―アミノ―6―ヒドロキシフラボン)、エルブスタチンアナログ(2,5―ジヒドロキシメチルシナメート、メチル2,5―ジヒドロキシシナメート)、イマチニブ(Gleevec(商標)、Glivec(商標);STI―571;4―[(4―メチル―1―ピペラジニル)メチル]―N―[4―メチル―3―[[4―(3―ピリジニル)―2―イリミジニル(yrimidinyl)]アミノ]―フェニル]ベンズアミドメタンスルホネート)、LFM―A13(2―シアノ―N―(2,5―ジブロモフェニル)―3―ヒドロキシ―2―ブテンアミド)、PD153035(ZM252868;4―[(3―ブロモフェニル)アミノ]―6,7―ジメトキシキナゾリンヒドロクロリド)、ピセタノール(トランス―3,3’,4,5’―テトラヒドロキシスチルベン、4―[(1E)―2―(3,5―ジヒドロキシフェニル)エテニル]―1,2―ベンゼンジオール)、PP1(4―アミノ―5―(4―メチルフェニル)―7―(t―ブチル)ピラゾロ[3,4―d]ピリミジン)、PP2(4―アミノ―5―(4―クロロフェニル)―7―(t―ブチル)ピラゾロ[3,4,d]ピリミジン)、パーツズマブ(Omnitarg(商標);rhuMAb2C4)、SU4312(3―[[4―(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]―1,3―ジヒドロ―2H―インドール―2―オン)、SU6656(2,3―ジヒドロ―N,N―ジメチル―2―オキソ―3―[(4,5,6,7―テトラヒドロ―1H―インドール―2―イル)メチレン]―1H―インドール―5―スルホンアミド)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標);rhuMAb VEGF)、セマキサニブ(SU5416)、SU6668(Sugen,Inc.)、およびZD6126(Angiogene Pharmaceuticals)が含まれる。
【0106】
他の薬剤も、例えば補助療法等、本発明の用途に有用でありうる。このような補助薬剤は、抗癌剤の有効性を増強し、または、低い血球数、好中球減少、貧血、過敏性反応、血小板減少、高カルシウム血症、粘膜炎、挫傷、出血、毒性(例えばロイコボリン)、疲労、痛み、嘔気、および嘔吐等、抗癌剤と関連する状態を防止または治療するために用いることができる。制吐剤(例えば5―HT受容体遮断薬またはベンゾジアゼピン)、抗炎症剤(例えば副腎皮質ステロイドまたは抗ヒスタミン剤)、および制酸剤(例えばH2受容体遮断薬)が、癌療法に対する患者の耐容性を増すために有用でありうる。H2受容体遮断薬の例には、ラニチジン、ファモチジンおよびシメチジンが含まれる。抗ヒスタミン剤の例には、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、クロルフェニラミン、クロルフェナミン、マレイン酸ジメチンデン、およびプロメタジンが含まれる。ステロイドの例には、デキサメサゾン、ハイドロコーチゾン、およびプレドニソンが含まれる。他の薬剤には、赤血球産生を刺激するエポエチンアルファ(例えばProcrit(登録商標)、Epogen(登録商標))、好中球産生を刺激するG―CSF(顆粒球コロニー刺激因子;フィルグラスチム、例えばNeupogen(登録商標))、マクロファージを含むいくつかの白血球の産生を刺激するためのGM―CSF(顆粒球―マクロファージコロニー刺激因子)、および血小板の産生を刺激するためのIL―11(インターロイキン11、例えばNeumega(登録商標))等の成長因子が含まれる。
【0107】
ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウム、Roxane Laboratories,Inc.,Columbus,OH;フォリン酸、ホリナートカルシウム、シトロボラム因子とも呼ばれる)が、葉酸拮抗剤に対する解毒剤として使用でき、フルオロウラシル等、一定の薬物の活性も強化しうる。ロイコボリンカルシウムは、N―[4―[[(2―アミノ―5―ホルミル―1,4,5,6,7,8―ヘキサヒドロ―4―オキソ―6―プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]―L―グルタミン酸のカルシウム塩である。
【0108】
デキサメサゾン(例えば、Decadron(登録商標);Merck & Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ)は、薬剤過敏症等、アレルギー性反応を制御するための抗炎症剤として使用できる合成副腎皮質ステロイドである。経口投与のためのデキサメサゾン錠剤は、9―フルオロ―11―ベータ,17,21―トリヒドロキシ―16―アルファメチルプレグナ―1,4―ジエン―3,20―ジオンを含む。静脈内投与のためのリン酸デキサメサゾンには、9―フルオロ―11β,17―ジヒドロキシ―16α―メチル―21―(ホスホノオキシ)プレグナ―1,4―ジエン―3,20―ジオンジナトリウム塩が含まれる。ジフェンヒドラミン(例えばBenadryl(登録商標);Parkedale Pharmaceuticals,Inc.,Rochester,MI)は、アレルギー性反応の改善のために使用される抗ヒスタミン薬である。ジフェンヒドラミン塩酸塩(例えば注射用ジフェンヒドラミンHCl)は、2―(ジフェニルメトキシ)―N,N―ジメチルエチルアミンヒドロクロリドである。ラニチジン(例えばZantac(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)は、ヒスタミンH2受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減らすために用いることができる。塩酸ラニチジン(例えば錠剤または注射)は、N[2―[[[5―[(ジメチルアミノ)メチル]―2―フラニル]メチル]チオ]エチル]―N’―メチル―2―ニトロ―1,1―エテンジアミン,HClである。シメチジン(例えばTagamet(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)も、ヒスタミンH2受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減らすために用いることができる。シメチジンは、N’’―シアノ―N―メチル―N’―[2―[[(5―メチル―1H―イミダゾール―4―イル)メチル]チオ]―エチル]―グアニジンである。アプレピタント(例えばEMEND(登録商標);Merck & Co.,Inc.)は、サブスタンスP/ニューロキニン1(NKl)受容体アンタゴニストおよび制吐薬である。アプレピタントは、5―[[(2R,3S)―2―[(1R)―1―[3,5―ビス(トリフロロメチル)フェニル]エトキシ]―3―(4―フルオロフェニル)―4―モルホリニル]メチル]―1,2―ジヒドロ―3H―1,2,4―トリアゾール―3―オンである。オンダンセトロン(例えばZofran(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)は、5―ΗT3セロトニン受容体の選択的遮断剤および制吐薬である。塩酸オンダンセトロン(例えば注射用)は、(±)1,2,3,9―テトラヒドロ―9―メチル―3―[(2―メチル―1H―イミダゾール―1―イル)メチル]―4H―カルバゾール―4―オン,モノヒドロクロリド,無水物である。ロラゼパム(例えばロラゼパム注射;Baxter Healthcare Corp.,Deerfield,IL)は、抗けいれん効果を有するベンゾジアゼピンである。ロラゼパムは、7―クロロ―5(2―クロロフェニル)―1,3―ジヒドロ―3―ヒドロキシ―2H―1,4―ベンゾジアゼピン―2―オンである。
【0109】
キット
本発明は、キットの形で共にパッケージされる、CLRMARKER―検出試薬、例えばCLRMARKER核酸の一部に対して相補的なオリゴヌクレオチド配列等、相同の核酸配列を有することにより一つ以上のCLRMARKER核酸を特異的に同定する核酸、またはCLRMARKER核酸によりコードされるタンパク質に対する抗体も含む。当業者は、本発明のキットにより、本明細書に開示される基準および対象の発現プロフィールを生成することができる。本発明のキットは、本開示において提供される任意の方法を実施するためにも、都合よく用いられうる。オリゴヌクレオチドは、CLRMARKER遺伝子のフラグメントでありうる。例えば、オリゴヌクレオチドは、長さが200、150、100、50、25、10、またはそれ以下のヌクレオチドでありうる。CLRMARKER―検出試薬は、とりわけ、抗体または抗体のフラグメント、およびアプタマーも含みうる。キットは、別々の容器に、核酸または抗体(既に固体マトリックスに結合されたもの、またはそれらをマトリックスに結合するための試薬と別々にパッケージされたもの)、コントロール製剤(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識を含みうる。本発明の一つ以上のCLRMARKERを検出するアッセイを行うための指示(例えば書面、テープ、VCR、CD―ROM等)が、キットに含まれうる。アッセイは、例えば周知のノーザンブロットハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形でありうる。あるいは、キットは、周知のマイクロアレイの形でありうる。
【0110】
本明細書に記載の方法を行うための診断キットは、多数の方法で作成される。本発明のキットは、正常なグルコースレベルを有する対象から得られたコントロール(または基準)試料を含むのが好ましい。あるいは、キットは、結腸直腸癌を患うものと診断または同定されている対象から得られるコントロール試料を含みうる。一実施形態においては、診断用キットは、(a)固体担体に結合された抗体(例えばフィブリノーゲンαCドメインペプチド)と、(b)検出可能な基に結合された本発明の第二抗体とを含む。試薬は、緩衝剤およびタンパク質安定化剤等、例えば多糖等の付属薬剤も含みうる。診断キットは、必要に応じて、検出可能な基が属するシグナル生成システムの他の成分(例えば酵素基質)、テストにおけるバックグラウンド干渉を減らすための薬剤、コントロール試薬、テストを行うための装置等をさらに含みうる。あるいは、テストキットは、(a)本発明の抗体と、(b)検出可能な基に結合された抗体の特異的結合パートナーとを含む。テストキットは、典型的に単一の容器に全ての要素を伴って、テストを行うための印刷された指示書を必要に応じて伴って、任意の適切な様式でパッケージされうる。
【0111】
例えば、CLRMARKER検出試薬が、多孔性ストリップ等、固体マトリックス上に固定されて、少なくとも一つのCLRMARKER検出部位が形成されうる。多孔性ストリップの測定または検出領域は、核酸を含む複数の部位を含みうる。テストストリップは、陰性および/または陽性コントロールのための部位も含みうる。あるいは、コントロール部位は、テストストリップとは別のストリップ上にありうる。必要に応じて、異なる検出部位が、異なる量の固定された核酸を含めばよく、例えば第一検出部位に多い量を、後の部位には少ない量を含みうる。テスト試料の添加時には、検出可能シグナルを示す部位の数が、試料に存在するCLRMARKERの量についての量的指標を提供する。検出部位は、任意の適切な検出可能な形において構成されればよく、典型的にはテストストリップの幅にわたるバーまたはドットの形状である。
【0112】
あるいは、キットは、一つ以上の核酸配列を含む核酸基質アレイを含む。アレイ上の核酸は、CLRMARKER1〜51により表される一つ以上の核酸配列を特異的に同定する。様々な実施形態において、CLRMARKER1〜51のうち2、3,4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、またはそれ以上の発現が、アレイに対する結合により同定されうる。基質アレイは、例えば固形基質、例えば米国特許第5,744、305号に記載されるような「チップ」上にありうる。あるいは、基質アレイは、溶液アレイ、例えばxMAP(Luminex,Austin,TX)、Cyvera(Illumina,San Diego,CA)、CellCard(Vitra Bioscience,Mountain View,CA)およびQuantum Dots’Mosaic(Invitrogen,Carlsbad,CA)上にありうる。
【0113】
当業者は、表1のCLRMARKERの任意のものに対する抗体、核酸プローブ、例えばオリゴヌクレオチド、アプタマー、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドをルーチン的に作成できる。このような技術は、当業者に周知である。
【0114】
本発明の例示的実施形態
本発明の一実施形態は、RNeasy Protectミディキット(Qiagen,Valencia,CA)等、標準的な市販のキットを用いた全RNA抽出を含む。各RNA調製は、製造業者の指示により、DNaseIおよびプロテイナーゼK(Qiagen)処置も含みうる。全RNAの収率が、260nmol/Lの吸光度で決定されうる。RNAの完全性が、260/280nmol/Lの両比およびアガロースゲル電気泳動により評価されうる。
【0115】
本開示の別の実施形態においては、製造業者のバッファー中の4UのOmniscriptリバーストランスクリプターゼ(Qiagen)等の逆転写のための特異的酵素を含み、各dNTP0.5mmol/L等のoligoを含み、10UのRNアーゼ阻害剤(Promega,Madison,WI)等のRNAse阻害酵素を含み、1μmol/LのNVd(T)(5’―TTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN―3’;配列番号103)等のオリゴヌクレオチドを含む、20マイクロリットル(μl)の最終体積で、各試料からの1μgの全RNAがcDNAに逆転写されうる。反応は、37℃で最高12時間まで行われ、−20℃で将来の使用まで貯蔵されうる。
【0116】
本発明のさらに別の実施形態においては、Cyber―Green方法論を用いて、またはAmplifluor Universal Detectionシステム(Intergen,Purchase,NY)等、実時間定量PCR反応を達成するために多用される任意の他のシステムを用いて、実時間定量PCR反応が実行されうる。iCycler(Bio―Rad,Richmond,CA)等の定量サーモサイクラが使用されうる。PCRプライマは、例えば同じPCR条件において目的の遺伝子に対応する配列の177〜237bpを特異的に増幅するためにPrimer3ソフトウェア(http://www―genome.wi.mit.edu/genomesoftware/other/primer3.htmlで利用可能)を用いて、設計されうる。Amplifluor Universal Detectionシステムを使用する場合には、UniPrimerアニーリングに必要とされるZ―配列(ACTGAACCTGACCGTACA;配列番号104)を5’末端に含む追加的なフォワードプライマが、各目的の遺伝子のために用いられうる。Amplifluor Universal Detectionシステムキットを使用する場合には、「サンライズ」プライマ戦略が用いられうる。UniPrimerは、Z―配列の5’―末端でレポーター(FAM、6―カルボキシフルオレセイン等)、3’―末端でクエンチャー色素(DABSYL、4―(ジメチルアミン)アゾベンゼンスルホン酸等)により標識された、同じZ―配列を含む。
【0117】
本発明の別の実施形態においては、各100μlのPCR反応物が、1μlのcDNAまたはプラスミド、製造業者のバッファー中の5UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)、0.5μM/Lの各dNTP、2μlのプライマ混合物を含みうる、多重定量PCRの第一ラウンド。プライマ混合物は、固形腫瘍に関連した全ての目的遺伝子のためのフォワードおよびリバースプライマを各10μM/Lの最終濃度で含みうる。PCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するための95℃の15分の後、95℃での20秒の変性を15サイクル、60℃での20秒のアニーリング、および72℃での35秒の伸長を含みうる。72℃での10分間の伸長の最終ステップが、実行されうる。このPCRのラウンドは、前増幅と考えられるにとどまり、実時間PCRを伴わない。多重定量PCRの第二ラウンドでは、各50μlの実時間PCR反応物は、1μlの第一ラウンド多重定量PCR反応物、製造業者のバッファー中の2.5UのHot―StarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)、0.5mmol/Lの各dNTP、0.02μmol/Lフォワードプライマ、および一つの遺伝子に0.2μmol/Lのリバースプライマ、および0.2μmol/L UniPrimerを含みうる。Cyber―Green方法論が使用される場合には、Uniprimerは使用されない。PCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するための95℃の15分の後、95℃での20秒の変性を15サイクル、60℃での20秒のアニーリング、および72℃での35秒の伸長を含みうる。10分間の72℃での最終伸長ステップが、実行されうる。
【0118】
開示の方法が定量的であるため、多様な細胞状態または細胞型の間の定量的レベルでの発現パターンの比較が達成されうる。一般に、任意の単離方法を用いて、末梢血等の標的試料から全RNAが単離されうる。そして、このRNAを用いて、任意の方法を使用して、例えば、プライマがメッセンジャーRNA(mRNA)に伴うポリA鎖および非ポリA鎖の間の接合部でアニールするように、全ての可能な組み合わせをカバーする特定の配列の短いストレッチに3’―末端で連結されたオリゴdTプライマである、ランダムプライマ、オリゴdTプライマまたはランダムオリゴ―dTプライマを使用して、第一鎖コピーDNA(cDNA)が生成されうる。そして、cDNAが、PCR反応におけるテンプレートとして使用されうる。このPCR反応は、モニタされる発現遺伝子に特異的な、癌に関係する遺伝子に関連した配列を有するプライマ対により実行される。この反応は、異なる癌に関係するプライマ対を所望されるだけ多く含みうるが、典型的には5〜100の間の異なるプライマ組を含み、各々が癌に関係する単一遺伝子または癌に関係する単一のアイソフォームに特異的である(5〜100の間の任意の特定の数を含む)。典型的には、全てのプライマが、等モル濃度で存在する。DNAが約80%または85%または90%または95%を超える倍加率で増幅するように多数のPCRサイクル、例えば15サイクルを実行した後、反応が止められる。典型的には、PCRの第一ラウンドでは、定量PCR(実時間PCR)が実行される場合には、増幅の閾値サイクルは達成されない。
【0119】
そして、PCR反応物が、(新たな)追加的PCRラウンドのため、新たな反応管に分割されうる。各チューブが、第一PCR混合物中に存在する全ての特異的プライマから合成された全ての産物を含む、前のPCR反応混合物の画分を含む。第一PCR混合物からの画分を含む第二PCR混合物には、典型的には、分子ビーコンに対応する配列を有するユニバーサルプライマに加えて、一つだけの特異的プライマ対または新しいプライマ対が加えられる。
【0120】
この第二PCRラウンドは、例えばユニプライマ(ユニバーサルプライマ)がDNA配列に結合する間の、反応物の各増幅サイクルにおけるクエンチャー配列からの蛍光の放出による蛍光の増加に依存する(例えば増幅プローブの一つの一部にハイブリダイズするプローブ)、定量実時間PCRプロトコルを用いて実行されうる。実時間定量PCRにおいて使用される蛍光アプローチは、典型的に、SYBRグリーン、FAM、フルオレセイン、HEX、TET、TAMRA等の蛍光レポーター色素と、DABSYL、Black Hole等のクエンチャーとに基づく。PCRの伸長段階の間にクエンチャーがプローブから分離されたときに、レポーターの蛍光が測定されうる。Molecular Beacons、Taqman Probes、Scorpion PrimersまたはSunrise Primersおよびその他のようなシステムが、実時間定量PCRを実行するためにこのアプローチを用いる。開示の方法において標準曲線が使用されうるが、C(t)を用いた分析等、標的の絶対的コピー数を導出する他の方法も使用できる。
【0121】
臨床的に、バイオマーカの有効性を評価するために重要な二つの規準は、感度および特異度である。臨床的に定義されるバイオマーカの感度とは、正しく診断される対象の割合をいう。臨床的文脈におけるバイオマーカの特異度は、疾患が治療可能な段階で検出される確率として定義される。理想的には、バイオマーカは、100%の臨床的選択性および100%の臨床的感度を有する。
【0122】
本発明の一実施形態は、固形腫瘍のための対象の管理に要求される感度が好ましくは70%以上であり、特異度が95%以上である末梢血代用バイオマーカ候補のプロフィールである。表1に示されるように、エントリ1〜51は、結腸直腸癌等の固形腫瘍のための末梢血代用バイオマーカのポリヌクレオチドコード配列候補であり、各目的の遺伝子産物についての名前、エントリナンバー、フォワードプライマ、リバースプライマおよびアンプリコンサイズを含む。
【0123】
蛍光強度は、各サイクルのアニーリングステップの間に、あるいは伸長ステップの間に、一般に測定されうる。各反応の閾値サイクル(CT)が、iCyclerソフトウェア(BioRad)を使用して分析されうる。全ての実時間PCR実験を三通りに実行でき、三通りの実験の平均CTが、全ての後の分析で使用される。酵素またはテンプレートを省いた反応が、陰性コントロールとして使用されねばならない。全ての反応物が、1%アガロースゲル電気泳動により分離されて、プロフィールにおける特定の遺伝子のPCR増幅が確認されうる。転写産物の量が、各標準曲線に照らして計算されうる。
【0124】
固形腫瘍のバイオマーカプロフィールを分析および使用するための、提唱される方法は、a)末梢血からRNAを抽出し、b)当該RNAをcDNAに逆転写し、c)当該バイオマーカのための等モル濃度のプライマを含むPCRの第一ラウンドを実行し、d)目的の各バイオマーカに特異的な第二定量PCRラウンドを実行し、e)(例えば)主成分分析(PCA)を用いて開示の組成物および方法から導出された統計データ分析を実行することである。
【0125】
一例としてであり、本発明のいかなる態様の制限も意図するものではないが、本発明の一つ以上のバイオマーカの存在の決定から導出されるデータを分析するために適用できる、他の組成物および方法である。
【0126】
例えば、本発明による方法により得られるデータを分析するために使用できる他の方法には、コピー数を評価するための、核酸技術で公知の任意の他の定量化方法を伴いうる。これには、特定の配列の増幅、オリゴヌクレオチドプローブ、相補的プローブによる標的遺伝子のハイブリダイゼーション、制限エンドヌクレアーゼによるフラグメンテーションおよび生じたフラグメント(多型)の研究、パルス磁場ゲル技術、等温の多置換増幅、ローリングサークル増幅または複製、イムノPCRなど、当業者に公知のものが挙げられるがこれに限定されない。
【0127】
固形腫瘍上のバイオマーカの分析のために使用できる他の方法は、任意の他の当分野で認められた結果の統計的分析、例えば遺伝子クラスタリング、データマイニングツール、および、公知技術で本明細書に開示される他のアルゴリズムまたは計算された指標に関わる。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
結直腸腺腫および癌腫の検出のためのデータ分析
統計的分析は、51種のRNAの定量に基づいた。種の取り扱い、分析および定量は、scqmRT―PCR法により実行され、校正曲線を用いてインプットRNAの標準化された質量あたりコピー数において転換された(参照により内容が全体として本明細書に組み込まれる、Therianos等、(2004)Am.J.Pathol.164(3):795―806、および国際出願PCT/US02/38806号を参照)。
【0129】
コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)と呼ばれる四つの試料のクラス(生物学的状態)があり、それらは結腸直腸癌のステージI〜IIである。表1は、四つの生物学的状態のクラスの各々から得られた試料数を示す。
【表1A】
特に、以下のペアワイズのクラス識別問題が注目される:
【表2A】
バイオ統計方法―データ前処理および分類
コピー数データ「x」が、y=log(1+x)として定義される対数量測定値に転換された。このアルゴリズムが、本明細書に論議される分析の全体にわたって用いられた。分類のために、関連試料組、例えば交差検定ループにおける現在の訓練列の、中央値の減算および四分位間範囲(IQR)による割算により、「y」が標準化される。
【0130】
ここで使用される分類器は、John Tukey,(1993)Controlled Clinical Trialsに記載され、Richard Simons研究によりマイクロアレイ分野において一般に広められた複合共変量予測因子(CCP)の変化形である。これは、重み付き平均対数発現レベルに基づき、重みは、例えば調査されるクラス間のt―統計量の値でありうる。この分類器は、独立性の仮定が強くほぼ常に誤りであるために文献中で「単純分類器」とも呼ばれる独立特徴モデルに基づく。このようなモデルの利点は、訓練に利用可能な試料のサイズが小さく、変数間の関係の適切な予測に不十分であるときに、過剰適合が生じにくく、したがって検定の失敗が生じにくいことである。非単純モデルのミスパラメータ化は、検定の失敗につながる。分類機能は、分類器に含まれる遺伝子に対する重み付き平均による試料のスコアリングに基づく。標準化された対数量測定値が、遺伝子選択および試料スコアリングに使用される。特徴選択は、標準化後の中央値の絶対差によりトップにランクされる遺伝子を採用する。重みは、中央値の(符号付)差に比例する。交差検定においては、各ループにおける複数の遺伝子のスコアが、試料の現在の訓練列の、中央値の減算および四分位間範囲(IQR)による割算により、再標準化される。
【0131】
一次統計エンドポイント、ROC曲線下面積として、AUCにより識別能力が定量化される。ランダム分類器は、y=xの直線周辺で確率的に変動する曲線、および0.5の予測AUCを有する。あるいは、感度および特異度の等価のプロットが、これら二つの量を読み取るほうが容易でありうる場合には、ここで描かれる。Jiang,Varma and Simon,2008のバイアスを低減したブートストラップケース交差検定(BR―BCCV)法により、AUCの信頼区間が計算される。
【0132】
結果―単一遺伝子のクラス識別能力
図1A〜1Eに、可能なカットオフにわたる、トップの遺伝子の感度および特異度をプロットした。51の遺伝子中最も性能の良いものを選択したため、性能推定が正にバイアスされ、このデータ組においてこの問題につき一つの単一マーカにより達成されうる、識別の上限を表す。それは、AUCの値と感度および特異度の値との関係も示す。AUCは、全ての可能なカットオフにわたる識別平均の測定値であり、明確に定義される。感度および特異度の間には、カットオフに依存するトレードオフがあり、さらなる定義付けおよびROC曲線上の一点だけへの集中を伴わずにそれらの値が一意的に決定されることがない。交差検定が、よりバイアスされないクラス識別性能の推定のために用いられる。試料に対するブートストラッピングにより、これらの単一遺伝子予測子の性能指標に対する信頼区間がここで推定されうる。表3は、CON対POLおよびCARの比較を表し、AUCによるトップ20性能遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、ファミリーごとの修正のためのHochberg法により決定される調整されたp値、およびBenjamini―Hochberg法により決定される偽発見率を表す。図2は、群CON対POLおよびCARにおけるCLRMARKER、ESM1のレベルを測定するROC曲線のグラフ表示である。
【0133】
表3:AUCにより計算されるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。
【表3】
表4:CON対POL;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。図3は、群CON対POLの間のESM1のROC曲線を示す。
【表4】
表5:CON対CAR;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。図4は、CLRMARKER CK20のROC曲線を示す。
【表5】
表6:CONおよびIBD対CAR;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。
【表6】
遺伝子およびAUCの最適選択
利用可能なデータにより期待できる予測性能の推定を試みた。単一遺伝子分析と比較して、予測因子に用いられる特徴が、結果を知る前に選択されねばならない。1個抜き(LOO)交差検定(CV)を用いてこの状況がシミュレートされる。
【0134】
次に、データから各試料をとり、除外された試料に関する一切の情報を全く用いない分類器(スコアリング機能)を自動的に構築した。そして、スコアリング機能が残された試料に適用された。これが各試料につき繰り返されて、完全なスコア組が生成された。そして、このスコア組につき分類性能が計算された。各試料が、異なる遺伝子組を用いうる新たに構築された(したがって異なる)分類器によりスコアリングされる。方法は、完全なデータ組に基づいて固有の分類器を生成することにより、新たなデータに期待されうる性能の不偏推定を提供する。それは、分類器の性能試験に同様に使用される試料の情報に基づいて、分類器の特徴が選択されるときに存在するバイアスを修正する。
【0135】
分類アルゴリズムの具体的選択によるLOOCVの結果が、図13〜16にグラフの形で提示される。
【0136】
一つのパラメータだけを変動させることにより、分類器により用いられるモデルの数および遺伝子の数がテストされた。この数Fは、各LOOCVの実施において固定されたが、複数の遺伝子からの情報を用いることにより識別が改善できるかを決定するために、異なる数が用いられた。選択された遺伝子は、ランキングがFではなく訓練列のみに依存し、したがってFの異なるモデルが正に相関する、ランキング統計によるトップ―nである。Fに対する性能のばらつきは、異なる遺伝子数のモデル間の差を表すが、モデリングにおける機会のばらつきおよび不安定性のソースも表す。多重度は限られたままであり、次のステップのための最善の性能のFの選択は、評価可能な量のバイアスを導入すると期待されなかった。10〜25の間の遺伝子数のモデルでは、感度および特異度のプロットが加えられた。例えば、図13〜16を参照。
【0137】
表7は、本明細書および図13〜16に記載される分析から得られた、LOOCVにより推定されるAUC値のまとめである。
【表7】
本発明をその詳細な説明とともに記載したが、以上の記載は、添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限することではなく、例示することを意図するものである。他の態様、利点、および変更は、本開示の範囲内である。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、固形腫瘍に関連する末梢血代用バイオマーカのプロフィール、および、結腸直腸癌のスクリーニング、防止、診断、療法、モニタリング、および予後のための、その使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
スクリーニングおよびモニタリングアッセイは、癌の早期検出および管理に必須である。医療環境において集められる血液のテスト等の癌スクリーニングおよびモニタリングテストを用いて、臨床的に健常な(または「無症状」の)個体の大規模スクリーニング、対象の診断、予測テスト、または疾患モニタリングを行いうる。
【0003】
このような用途の血液ベースの遠隔試料の利点は、対象にとって試料を提供するのが非常に好都合であり、したがってテスト集団におけるコンプライアンスがはるかに高いことである。結腸直腸癌の場合には、主に結腸鏡検査法等の不快な侵襲性スクリーニング方法により誘発される心理的障壁のために、リスクのある者でスクリーニングされるのは20%未満である。
【0004】
したがって、従来技術において、経済的であり、迅速であり、最小限侵襲性、好ましくは非侵襲性であるという追加的利益を有する、結腸直腸癌等の固形腫瘍の早期発見および治療を提供するアプローチが必要とされる。追加的有用性は、癌の予後、対象の癌治療のモニタリング、および癌の再発の検出、ならびに固形腫瘍等の癌を治療するための新しい治療的介入の発見を可能とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、発病が明白となるよりはるかに前に、血清または他の体液において、疾患関連のバイオマーカを同定しうるという発見を前提とする。結腸直腸癌を患う患者の血清のフットプリントからのこれらのバイオマーカの存否を、早期診断ツールとして使用でき、そのために治療戦略が考案および実施されて、腫瘍性結腸直腸細胞の形成が防止、遅延、改善または後退されうる。本発明の一つまたはいくつかの疾患関連バイオマーカを用いて、結腸直腸癌を患う対象を診断し、または好都合に、結腸直腸癌につき無症状である対象を診断しうる。
【0006】
したがって本発明は、固形腫瘍、特に結腸直腸癌に関係する固形腫瘍に関係する複数の末梢血代用バイオマーカを分析するための、バイオマーカプロフィールおよび方法に関する。これらのバイオマーカは、固形腫瘍に対する遺伝的素因、固形腫瘍の早期発見、固形腫瘍の診断、癌組織タイピングのためのテスト、およびその他の使用方法を含む固形腫瘍の遺伝学的検査に有用である。
【0007】
本発明の開示の方法、キット、およびバイオマーカプロフィールは、好ましくは70%以上の感度および95%以上の特異度で結腸直腸癌をスクリーニングするようにデザインされるのが好ましい。開示の方法は、固形腫瘍に関連した標的遺伝子および/または遺伝子産物の相対量および絶対量を定量化することも可能である。
【0008】
一般に、本発明の方法およびバイオマーカプロフィールは、末梢血を含みうる、単一の細胞を含めばよい試料中の固形腫瘍に関係した多様な遺伝子の発現についての定量的情報を得るために有用である。
【0009】
一実施形態においては、癌は、結腸直腸癌を含む。バイオマーカのレベルは、電気泳動的または免疫化学的に測定でき、免疫化学的検出は、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光アッセイまたは酵素結合抗体免疫吸着アッセイにより達成されうる。バイオマーカのレベルは、実時間PCRで測定されるのが好ましい。
【0010】
対象からの試料には、例えば全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、腹水液、間質(interstitital)液、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗または尿が含まれうる。
【0011】
したがって、本発明は、対象の結腸直腸癌を診断または同定する方法を提供し、方法には、対象からの試料において有効な量の一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物を測定するステップと;その量を基準値と比較するステップであり、基準値に対する一つ以上のCLRMARKERの量の増加または減少が、対象が結腸直腸癌を患うことを示す、ステップが含まれる。基準値は、指標値(index value)、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患うものとして診断または同定される対象から導出される値を含みうる。いくつかの実施形態では、対象には、結腸直腸癌を有すると過去に診断された者、結腸直腸癌を有すると過去に診断されていない者、または結腸直腸癌につき無症状である者が含まれる。
【0012】
本発明は、対象の結腸直腸癌の進行をモニタする方法も提供し、方法には、第一期間に、対象からの第一試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;第二期間に、対象からの第二試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;ステップ(a)において検出される一つ以上のCLRMARKERの量を、ステップ(b)で検出される量と、または基準値と、比較するステップが含まれる。一実施形態では、モニタリングには、結腸直腸癌を発症するリスクの変化を評価するステップが含まれる。対象には、結腸直腸癌の治療を過去に受けている者、結腸直腸癌の治療を過去に受けていない者、または、結腸直腸癌を患うものと過去に診断も同定もされていない者が含まれうる。ある実施形態では、第一試料が、結腸直腸癌の治療を受ける前に対象からとられ、第二試料が、結腸直腸癌の治療を受けた後に対象からとられる。他の実施形態では、モニタリングには、対象のための治療レジメンを選択するステップ、および/または結腸直腸癌のための治療レジメンの有効性をモニタするステップが、さらに含まれ、結腸直腸癌のための治療レジメンには、外科的介入、結腸直腸癌調節剤、またはその組み合わせが含まれうる。いくつかの実施形態では、基準値には、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定される対象から導出される値が含まれる。
【0013】
別の態様では、本発明は、結腸直腸癌を患うものと診断または同定された対象を治療するための方法を提供し、方法には、第一期間に、対象からの第一試料に存在する一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の量が、結腸直腸癌を発症するリスクが低い一つ以上の対象において測定される基準値、または一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果として、結腸直腸癌リスク因子の改善を示す一つ以上の対象において測定される基準値に戻るまで、一つ以上の結腸直腸癌調節剤で対象を治療するステップが含まれる。
【0014】
一つ以上の結直腸調節剤には、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド薬剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその組み合わせが含まれうる。一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果としての、結腸直腸癌リスク因子の改善には、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少、またはその組み合わせが含まれうる。
【0015】
本発明は、一つ以上のCLRMARKERを検出するCLRMARKER検出試薬と、正常コントロールレベルを有する対象から得られた試料と、必要に応じて、本発明の方法において試薬を使用するための指示とを含む、キットも提供する。一実施形態では、検出試薬には、一つ以上の抗体またはそのフラグメント、一つ以上のアプタマー、一つ以上のオリゴヌクレオチド、またはその組み合わせがさらに含まれる。
【0016】
別段の断りがない限り、本明細書において用いられる全ての専門的および科学的用語は、本発明が関連する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意義を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が、本発明の実施に用いられうるが、適切な方法および材料が以下に記載される。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合には、定義を含む本明細書が優先する。さらに、本明細書に記載の材料、方法および実施例は、例示にすぎず、制限を意図するものではない。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な記載および請求項から明らかとなる。
【0018】
以下の詳細な説明は例として与えられ、本発明を記載された特定の実施形態に限定するものではないが、参照により本明細書に組み込まれる添付の図面に関連して理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1B】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1C】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1D】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図1E】コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)に対応する試料のクラスによる遺伝子の分布を示す複数のグラフである。
【図2】CON対POLおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図3】CONおよびPOL群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図4】CONおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER CK20の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図5】ConおよびIBD対POLおよびCAR群の間で比較した、CLRMARKER ESM1の、単一遺伝子ROC曲線のクラス識別能力である。
【図6】CON対POLおよびCARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図7】CON対POLおよびCARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図8】CON対POLの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図9】CON対POLの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図10】CON対CARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図11】CON対CARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図12】CONおよびIBD対POLおよびCARの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図13】CONおよびIBD対POLおよびCARの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【図14】CON対IBDの、「1個抜き」交差検定モデルにおける、複数遺伝子分類器の曲線下面積のクラス選別能力および遺伝子数を示す。
【図15】CON対IBDの、実施例に記載されるLOOCV反復のうち四つについての、感度および特異度のグラフ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
したがって、本発明は、一つ以上および、好ましくは二以上の組み合わせにおいて同時に使用する場合に、そのようなバイオマーカの組み合わせを、結腸直腸癌を検出するために使用できる、固形腫瘍のバイオマーカを提供する。
【0021】
本明細書で使用されるところの、「1つの(a)、(an)」および「前記(the)」には、文脈により特に要求されない限り、単数および複数の指示物が含まれる。したがって、例えば、「活性薬剤」または「薬理活性薬剤」への言及には、単一の活性薬剤、ならびに組み合わせた二つ以上の異なる活性薬剤が含まれ、「担体」への言及には、二つ以上の担体の混合物、ならびに単一の担体などが含まれる。
【0022】
本発明の文脈における「バイオマーカ」は、特定の生物学的性質の分子指標であり、結腸直腸癌を検出するために使用できる生化学的形質または側面である。「バイオマーカ」には、タンパク質、核酸、および代謝産物と、それらの多型、突然変異体、変異体、修飾体、サブユニット、フラグメント、タンパク質―リガンド複合体、および分解産物、タンパク質―リガンド複合体、要素、関連の代謝産物、電解質、要素、および他の分析物または試料から得られる測定値が含まれるがこれに限定されない。バイオマーカには、変異タンパク質または変異核酸も含まれうる。バイオマーカは、年齢、人種、および癌の家族歴等、結腸直腸癌の他の臨床的特徴またはリスク因子を含む健康状態の非分析物生理学的マーカもさしうる。本明細書で用いられるところの「分析物」は、測定される任意の物質を意味しうる。
【0023】
「大腸癌」とは、結腸(大腸の最長部分)の組織に形成する、癌および/または腫瘍をさす。ほとんどの大腸癌は、腺癌(粘液および他の流体を生成し放出する細胞で始まる癌)である。「直腸癌」とは、直腸(大腸の肛門手前の少なくとも数インチ)の組織に形成する、癌および/または腫瘍をさす。本発明の文脈における「結腸直腸癌」とは、結腸または直腸のいずれかに生じる癌をさす。
【0024】
「測定する」または「測定」は、臨床的試料または対象由来試料中のいずれかにおける所与の物質の、かかる物質の質的または量的な濃度レベルを含めて、存在、非存在、数量または量(「有効な量」でありうる)を査定すること、または他の方法により対象の臨床的パラメータの値または分類を評価することを意味する。
【0025】
本発明の文脈における「試料」は、対象から単離される生体試料であり、例えば全血、血清、血漿、血液細胞、内皮細胞、組織生検、リンパ液、腹水液、間質(interstitital)液(別名「細胞外液」、細胞の間の間隔にある流体を含む)、骨髄、脳脊髄液(CSF)、唾液、粘液、痰、汗、尿、または任意の他の分泌物、排泄物、または他の体液を非限定的に含みうる。
【0026】
本発明の文脈における「対象」は、哺乳類であるのが好ましい。哺乳類は、ヒト、ヒト以外の霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシでありうるが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳類は、結腸直腸癌の動物モデルを表す対象として、都合よく使用されうる。対象は、雄または雌でありうる。対象は、結腸直腸癌を患うか有するものと過去に診断または同定された者であり得、必要に応じて、結腸直腸癌の治療を既に受けていてもよいが、その必要はない。対象は、結腸直腸癌を患っていない者であってもよい。対象は、結腸直腸癌を患うと診断または同定されているが、結腸直腸癌のための一つ以上の治療を受けた結果、疾患の改善(例えば腫瘍サイズの減少)が見られる者でもありうる。あるいは、対象は、結腸直腸癌を有するものと過去に診断または同定されていない者でもありうる。例えば、対象は、結腸直腸癌の一つ以上のリスク因子を有する者、または結腸直腸癌のリスク因子を有しない対象、または結腸直腸癌につき無症状の対象でありうる。対象は、結腸直腸癌を患い、または結腸直腸癌を発症するリスクのある者でもありうる。
【0027】
結腸直腸癌を有する対象、または結腸直腸癌を発病する傾向がある対象においてそのレベルが変更、改変または修正されるタンパク質、ペプチド、核酸、多型、および代謝産物が、表1にまとめられ、本明細書において、とりわけ「結腸直腸癌関連タンパク質」、「CLRMARKERポリペプチド」、または「CLRMARKERタンパク質」と集合的に称される。ポリペプチドをコードする対応する核酸は、「結腸直腸癌関連核酸」、「結腸直腸癌関連遺伝子」、「CLRMARKER核酸」、または「CLRMARKER遺伝子」と呼ばれる。別段の断りがない限り、「CLRMARKER」、「結腸直腸癌関連タンパク質」、「結腸直腸癌関連核酸」は、本明細書に開示される任意の配列を意味するものである。本明細書において「CLRMARKER代謝産物」と呼ばれる、対応するCLRMARKERタンパク質または核酸の代謝産物も、測定されうる。本発明の文脈におけるCLRMARKER「代謝産物」は、完全長ポリペプチドの一部を含みうる。「一部」という用語により特定の長さが示唆されるものではない。CLRMARKER代謝産物は、500アミノ酸未満の長さ、例えば400、350、300、250、200、150、100、75、50、35、26、25、15、または10アミノ酸以下の長さでありうる。上述のクラスのCLRMARKERの一つ以上、好ましくは二つ以上の測定値を数学的に組み合わせることにより作られる、計算された指標は、「CLRMARKER指標」と呼ばれる。前述の任意のものから構築される一般の生理的測定値および指標とならび、タンパク質、核酸、多型、変異タンパク質および変異核酸、代謝産物、および他の分析物が、「CLRMARKER」の広い区分に含まれる。
【0028】
結腸直腸癌を有する対象、または結腸および直腸内部のポリープの存在または増殖等、結腸直腸癌に特徴的な症状をもつ対象において、存在または濃度レベルが変更または改変されるものとして、五一(51)のバイオマーカが同定されている。結腸直腸癌のリスク因子には、結腸および直腸内部のガン化しうるポリープの存在または増殖、高脂肪の食事、結腸直腸癌、および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、またはクローン病の家族歴または個人歴が含まれるがこれに限定されない。とりわけ、切除のような外科的介入および抗癌化学療法等の結腸直腸癌調節剤の結果としてのリスク因子の減少には、例えば、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、および潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少または軽減、またはこれらの組み合わせが含まれうる。
【0029】
本発明の性能、したがって絶対的および相対的な臨床有用性は、複数の方法により評価できる。本発明は、様々な性能評価の中で、癌、特に結腸直腸癌の臨床診断の精度を提供することを意図する。
【0030】
バイオマーカ
本発明のバイオマーカおよび方法により、当業者が、癌または固形腫瘍の症状を一切示さないが、なお癌または固形腫瘍を発症するリスクがあるか、またはガン状態に特徴的な症状のある対象を、同定、診断するなど、評価することが可能となる。
【0031】
表1は、本発明による固形腫瘍の末梢血代用バイオマーカ候補の非網羅的リストを含む情報を提供する。当業者には当然のことながら、本明細書に提示されるバイオマーカには、多型、アイソフォーム、突然変異体、誘導体、核酸およびプロタンパク質を含む前駆体、切断産物、受容体(可溶性および膜貫通受容体を含む)、リガンド、タンパク質―リガンド複合体、および翻訳後修飾変異体(例えば架橋またはグリコシル化)、フラグメント、および分解産物、ならびに、バイオマーカの任意のものを構造体全体の構成サブユニットとして含む、任意の複数ユニットの核酸、タンパク質、および糖タンパク質構造物を含む、全ての形および変異体が含まれる。血液試料中の全てのバイオマーカの発現が、実験により確認されている。
【表1】
【表2−1】
【表2−2】
本発明の実行において、一つ以上、好ましくは二つ以上のCLRMARKERが検出されうる。例えば、一(1)、二(2)、三(3)、五(5)、十(10)、十五(15)、二十(20)、二五(25)、三十(30)、三五(35)、四十(40)、四五(45)、五十(50)またはそれ以上のCLRMARKERが検出されうる。いくつかの態様においては、本明細書に開示される51全てのCLRMARKERが検出されうる。CLRMARKERの数が検出されうる好適な範囲には、一および51の間から選択される任意の最低値、特に二、三、四、五、六、七、八、九、十、十二、十五、二十、二五、三十、四十、五十と、既知のCLRMARKERの合計に至るまでの任意の最大値、特に一、二、五、十、二十、および二五とが対になったものを境界とする範囲が含まれる。特に好適な範囲には、一〜二(1〜2)、一〜五(1〜5)、一〜十(1〜10)、一〜十五(1〜15)、一〜二十(1〜20)、一〜二五(1〜25)、一〜三十(1〜30)、一〜三五(1〜35)、一〜四十(1〜40)、一〜四五(1〜45)、一〜五十(1〜50)、一〜五一(1〜51)、二〜五(2〜5)、二〜十(2〜10)、二〜十五(2〜15)、二〜二十(2〜20)、二〜二五(2〜25)、二〜三十(2〜30)、二〜三五(2〜35)、二〜四十(2〜40)、二〜四五(2〜45)、二〜五十(2〜50)、二〜五一(2〜51)、五〜十五(5〜15)、五〜二十(5〜20)、五〜二五(5〜25)、五〜三十(5〜30)、五〜三五(5〜35)、五〜四十(5〜40)、五〜四五(5〜45)、五〜五十(5〜50)、五〜五一(5〜51)、十〜十五(10〜15)、十〜二十(10〜20)、十〜二五(10〜25)、および十〜三十(10〜30)、十〜三五(10〜35)、十〜四十(10〜40)、十〜四五(10〜45)、十〜五十(10〜50)、十〜五一(10〜51)、二十〜五十(20〜50)、および二十〜五一(20〜51)が含まれる。
【0032】
バイオマーカの検出
結腸直腸癌を発病するリスクを、試験試料中の「有効な量」のCLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、および他の分析物(例えば対象由来試料)を検査し、有効な量を基準値または指標値と比較することにより検出できる。「有効な量」は、試料中に検出されるCLRMARKERの合計量またはレベルであり得、または「正規化された」量、例えば試料中に検出されるCLRMARKERとバックグラウンドノイズの間の差でありうる。正規化の方法および正規化された値は、バイオマーカが検出される方法により異なる。好ましくは、数学的アルゴリズムを用いて、複数の個別のCLRMARKERの結果からの情報を、単一の測定値または指標に合わせうる。結腸直腸癌のリスクが高いものと同定される対象は、必要に応じて、結腸直腸癌の発症を防止または遅延させるために、本明細書に定義される「結腸直腸癌調節剤」等の予防または治療化合物の投与等、治療レジメンを受けるように選択されうる。
【0033】
CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の量が、テスト試料において測定され、正常コントロールレベルと比較されうる。「正常コントロールレベル」という用語は、例えば、高齢までモニタされ、結腸直腸癌または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患および/またはクローン病等、関連の疾患続発症を発病しないと分かった若年対象の長期研究から集められた試料と比較した、結腸直腸癌を患っておらず、結腸直腸癌を有する見込みのない対象に典型的に見られる一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物または他の分析物のレベル、またはCLRMARKER指標を意味する。正常コントロールレベルは、範囲または指標でありうる。あるいは、正常コントロールレベルは、過去にテストされた対象からのパターンのデータベースでありうる。正常コントロールレベルと比較した対象由来試料における一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物のレベルの変化は、対象が結腸直腸癌を患っているか、または発病のリスクがあることを示しうる。これに対して、方法が予防的に適用される場合には、対象由来試料における一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の、正常コントロールレベルと比較して類似のレベルが、対象が結腸直腸癌を患っておらず、発病のリスクがなく、またはリスクが低いことを示しうる。
【0034】
基準値は、ガン状態が既知である(すなわち、結腸直腸癌を患うと診断または同定され、または結腸直腸癌を患うと診断または同定されていない)コントロール対象または集団から得られた値をさしうる。基準値は、例えば指標値またはベースライン値(例えば、本明細書で定義される「正常コントロールレベル」)でありうる。基準試料または指標値またはベースライン値は、抗癌治療、放射線療法、または化学療法を受けている一つ以上の対象から採取または導出され、または結腸直腸癌を発病するリスクが低い一つ以上の対象から採取または導出され、または、治療を受けた結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している対象から採取または導出されうる。あるいは、基準試料または指標値またはベースライン値は、抗癌治療、放射線療法、または化学療法を受けていない一つ以上の対象から採取または導出されうる。例えば治療の進行をモニタするために、結腸直腸癌のための初期治療および結腸直腸癌のための後続治療を受けている対象から、試料が集められうる。基準値は、本明細書に開示されるもの等の結腸直腸癌の人口調査からリスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出された値も含みうる。基準値は、結腸直腸癌の発病を伴わずに、ポリープ、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病を発病している対象または集団からの値も含みうる。
【0035】
本発明の方法により測定されるCLRMARKERのレベルまたは量(「有効な量」でありうる)の差には、正常コントロールレベル、基準値、指標値またはベースライン値と比較したCLRMARKERのレベルまたは量の増加または減少が含まれうる。基準値に対するCLRMARKERの量の増加または減少は、結腸直腸癌の進行、結腸直腸癌の遅延、進行、発症、または改善、結腸直腸癌または関連の合併症の発症リスクの増加または減少を表しうる。増加または減少は、結腸直腸癌のための一つ以上の治療レジメンの成功を表し、または結腸直腸癌リスク因子の改善または後退を示しうる。増加または減少は、例えば、基準値または正常コントロールレベルの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%でありうる。
【0036】
CLRMARKERのレベル(または量)の差は、統計学的に有意であるのが好ましい。「統計学的に有意」とは、変化が偶然のみにより生じると期待されうるものより大きいことを意味する。統計的有意性は、公知技術の任意の方法により決定されうる。例えば、統計的有意性は、p値により決定されうる。p値は、実験中の群間差が偶然により生じた確率の尺度である。(P(z>z観察))。例えば、0.01のp値は、結果が偶然生じた可能性が100分の1であることを意味する。p値が低いほど、群間差が治療により生じた可能性が高くなる。p値が少なくとも0.05である場合に、変化は統計学的に有意であると考えられる。p値は、0.04、0.03、0.02、0.01、0.005、0.001以下であるのが好ましい。以下に記載されるように、本発明の制限を一切伴うものではないが、統計的有意性の達成には、常にではないが一般に、統計学的に有意のCLRMARKER指標を達成するために、いくつかのCLRMARKERの組み合わせがパネルにおいて同時に使用され、数学的アルゴリズムと組み合わせられることが必要である。
【0037】
テスト、アッセイ、または方法の「診断精度」は、対象が一つ以上のCLRMARKERのレベルの「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」を有するかに基づく、結腸直腸癌を有する対象または結腸直腸癌のリスクのある対象の間で区別する、テスト、アッセイ、または方法の能力に関する。「臨床的に有意な存在」または「臨床的に有意な変化」とは、対象中の(典型的には対象からの試料中の)CLRMARKERの存在(例えば、ミリグラム、ナノグラム等の質量、またはデシリットルあたりミリグラム等の体積あたり質量、または単位体積あたりの転写産物のコピー数)またはCLRMARKERの存在の変化が、そのCLRMARKERの所定のカットオフ点(または閾値)より高く、したがって対象が、そのタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物または分析物の十分に高い存在がマーカである結腸直腸癌を有することを示すことを意味する。
【0038】
本発明を用いて、結腸直腸癌に転換するリスクの分類的または連続的測定を行うことができ、したがって結腸直腸癌を発病するリスクがあるものと定義される区分の対象(例えば、結腸または直腸ポリープと診断される対象、または、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病と診断されている対象)を診断しうる。分類的測定においては、本発明の方法を用いて、正常対象と結腸直腸癌を発病するリスクがある対象を識別しうる。このような本発明の分類的使用においては、「高度の診断精度」および「非常に高度の診断精度」という用語は、所定のカットオフ点が前結腸直腸癌状態の存否を正しく(正確に)示している、そのCLRMARKER(またはCLRMARKER指標;CLRMARKER値には、単一のCLRMARKERからのものであるかCLRMARKERの指標から導出されたものであるかを問わず、任意の個別の測定値が含まれる)のテストまたはアッセイをさす。完全なテストは、完全な精度を有する。したがって、結腸直腸癌を発病するリスクがある対象では、テストは陽性の検査結果だけを示し、それらの対象を一人も「陰性」と報告しない(「偽陰性」なし)。換言すれば、テストの「感度」(真の陽性率)は、100%となる。他方で、結腸直腸癌を発病するリスクがない対象では、テストは陰性の検査結果だけを示し、それらの対象を一人も「陽性」と報告しない(「偽陽性」なし)。換言すれば、「特異度」(真の陰性率)は、100%となる。例えば、臨床的診断テスト等のテストの特異度、感度および陽性および陰性予測値を論議する、O’Marcaigh AS,Jacobson RM,“Estimating The Predictive Value Of A Diagnostic Test,How To Prevent Misleading Or Confusing Results,”Clin.Ped.1993,32(8):485―491を参照。他の実施形態においては、本発明を用いて、結腸直腸癌を有する者から結腸直腸癌を発病するリスクのある者を、または健常対象から結腸直腸癌を有する者を、識別しうる。そのような使用には、異なるCLRMARKERのサブセット(表1に開示される全てのCLRMARKERのうち)、数学的アルゴリズム、および/またはカットオフ点を要しうるが、意図された使用の目的で、同じ前述の診断精度の測定に従いうる。
【0039】
病気の分類的診断においては、テスト(またはアッセイ)のカットオフ点または閾値の変更が通常は、感度および特異度を質的に逆相関の関係で変化させる。例えばカット点が下げられる場合、テスト集団中のより多くの対象が、典型的に、カット点または閾値を上回る試験結果を有することとなる。カット点を上回るテスト結果を有する対象は、テストが行われている疾患、状態、または症候群を有すると報告されるため、カット点を下げることにより、より多くの対象が陽性結果を有する(例えば結腸直腸癌を有する)と報告されることになる。したがって、より高い割合の結腸直腸癌を有する者が、それを有するとテストにより示される。したがって、テストの感度(真の陽性率)が高まる。しかし、同時に、疾患、状態、または症候群を有しない、より多くの者(例えば真「陰性」の人)が、カット点を上回るCLRMARKER値を有する(例えば、疾患、状態または症候群を有する)とテストにより示され、したがってテストにより正しく陰性と示されずに陽性と報告されるため、偽陽性も多くなる。したがって、テストの特異度(真の陰性率)が、低下する。同様に、カット点を上げることにより、感度が低下し、特異度が高まる傾向がある。したがって、対象の状態を評価するための、提唱された医学的テスト、アッセイ、または方法の精度および有用性を評価する際には、常に感度および特異度の両方を考慮すべきであり、様々なカット点で感度および特異度が有意に変動しうるため、感度および特異度が報告されるカット点の値に留意すべきである。
【0040】
受信者操作特性(「ROC」)曲線が、一つの値だけで全ての範囲のテスト(またはアッセイ)のカット点についてテスト、アッセイ、または方法の感度および特異度を示すのを可能にする指標として用いられうる。例えば、Shultz,“Clinical Interpretation Of Laboratory Procedures,”第14章、Teitz,Fundamentals of Clinical Chemistry,Burtis and Ashwood(eds.),4th edition 1996,W.B.Saunders Company,pages192―199;およびZweig等、“ROC Curve Analysis:An Example Showing The Relationships Among Serum Lipid And Apolipoprotein Concentrations In Identifying Subjects With Coronory Artery Disease,”Clin.Chem.,1992,38(8):1425―1428を参照。
【0041】
ROC曲線は、感度をゼロ〜一(例えば100%)のスケールでy軸とし、一から特異度を引いたものに等しい値をゼロ〜一(例えば100%)のスケールでx軸とした、x―yプロットである。したがってROC曲線は、そのテスト、アッセイ、または方法の偽陽性率に対する真の陽性率のプロットである。問題のテスト、アッセイ、または方法についてのROC曲線を作成するために、問題のテスト、アッセイまたは方法から独立した完全に正確な方法、または「ゴールドスタンダード」の方法により対象を評価して、対象が病気、状態、または症候群につき真に陽性であるか陰性であるかを決定しうる(例えば、冠動脈造影法は、冠状動脈硬化症の存在についてのゴールドスタンダード試験である)。対象は、問題のテスト、アッセイ、または方法を用いてもテストされればよく、様々なカット点において、対象がテスト、アッセイ、または方法で陽性または陰性と報告される。感度(真の陽性率)および一から特異度を引いたものに等しい値(この値は、偽陽性率に等しい)が、カット点ごとに決定され、各x―y値の組が、x―yグラフ上に単一点としてプロットされる。それらの点を結ぶ「曲線」が、ROC曲線である。ROC曲線は、感度および特異度が最大化される、最適な単一の臨床的カットオフ値または治療閾値を決定するために使用されることが多い。そのような状況は、曲線下に描くことができる最も大きな一つの長方形の左上角である、ROC曲線上の点である。
【0042】
全曲線下面積(「AUC」)は、一つの値だけで全ての範囲のカット点でのテスト、アッセイ、または方法の感度および特異度を表すのを可能にする指標である。最大AUCは、一(完全テスト)であり、最小面積は二分の一(例えば正常対疾患の識別がない面積)である。AUCが一に近いほど、テストの精度が良い。全てのROCおよびAUCには、疾患の定義およびテスト後対象期間が内在することに注意しなければならない。
【0043】
本明細書で定義されるところの、「高度の診断精度」は、AUC(テストまたはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.70、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、最も好ましくは少なくとも0.95である、テストまたはアッセイを意味する。
【0044】
「非常に高度の診断精度」は、AUC(テストまたはアッセイのROC曲線下面積)が少なくとも0.80、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.875、好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.925、最も好ましくは少なくとも0.95である、テストまたはアッセイを意味する。
【0045】
あるいは、低有病率のテスト集団(一年に1%未満の発生率の集団と定義)では、ROCおよびAUCは、テストの臨床的有用性に関して誤解を生じる可能性があり、本開示の他所で定義される絶対および相対リスク比が、診断精度の程度を決定するために用いられうる。テストする対象の集団を、上位四分位(集団の25%)が、結腸直腸癌を発病しまたは患う相対リスクが最も高い対象群を含み、下の四分位数は、結腸直腸癌を発病する相対リスクが最も低い対象群を含む、四分位に分類することもできる。一般に、低有病率集団における上位から下位四分位からの相対リスクの2.5倍以上を有するテストまたはアッセイから導出される値は、「高度の診断精度」を有すると考えられ、各四分位の相対リスクの五〜七倍のものは、「非常に高度の診断精度」を有すると考えられる。しかし、各四分位数の相対リスクの1.2〜2.5倍にとどまるテストまたはアッセイから導出される値も、なお臨床的に有用である、疾患に対するリスク因子として広く使用される。
【0046】
任意の診断検査の予測値は、テストの感度および特異度、およびテスト集団における状態の有病率によって決まる。スクリーニングされる状態が対象または集団に存在する可能性(テスト前確率)が高いほど、陽性テストの有効性が高く、結果が真陽性である可能性が高い。したがって、状態が存在する可能性が低い任意の集団においてテストを使用する上での問題は、陽性結果が、限定された価値を有する(すなわち偽陽性である可能性がより高い)ことである。同様に、リスクが非常に高い集団では、陰性の試験結果が、偽陰性である可能性がより高い。診断精度の程度、すなわちROC曲線上のカット点を定義し、許容可能なAUCの値を定義し、本発明のCLRMARKERの有効な量を構成するものの相対濃度の許容可能な範囲を決定することにより、当業者がCLRMARKERを用いて所定レベルの予測可能性で対象を診断または同定することが可能となる。
【0047】
診断精度を決定する代替的方法は、リスクの連続測定を伴って用いられなければならず、関連の医学会および医学の実施により疾患区分またはリスク区分が未だ明確に定義されていない場合に一般に使用される。
【0048】
本発明の文脈における「リスク」は、「絶対」リスクを意味しうるものであり、事象が特定の時間的期間に発生するその百分率確率をさす。絶対リスクは、関連の時間コホートの測定後の実際の観察に関して、または適切な時間的期間追跡された統計学的に有効な過去のコホートから作成された指標値に関して、測定されうる。「相対」リスクは、低リスクコホートまたは平均集団リスクと比較した対象のリスクの絶対リスクの比をさし、臨床的リスク因子の評価方法により異なりうる。オッズ比、すなわち所与のテスト結果の陰性事象に対する陽性事象の比も、転換無しについて一般に使用される(オッズは式p/(1―p)にしたがい、式中pは事象の確率であり、(1―p)は事象が無い確率である)。本発明の文脈において評価されうる代替的な連続的測定値には、結腸直腸癌転換までの時間および治療的結腸直腸癌転換リスク減少率が含まれる。
【0049】
このような連続的測定では、計算された指標の診断精度の測定は、典型的に、予測連続値および実測値(または過去の指標計算値)の間の線形回帰曲線の適用基づき、Rの二乗、p値および信頼区間等の値を利用する。このようなアルゴリズムを用いる予測値は、Genomic Health(Redwood City,California)により商業化される将来の乳癌再発リスクのテストのように、過去の観察コホートの予測値に基づいて信頼区間(通常90%または95%CI)とともに報告されることが多い。
【0050】
結腸直腸癌のリスク予測は、過去のコホートに関して対象が結腸直腸癌を発病する絶対リスクを評価および推定する、リスク予測アルゴリズムおよび計算された指標も含みうる。このような予測数学的アルゴリズムおよび計算された指標を用いたリスク評価は、診断テストおよび治療のガイドラインに組み込まれることが多くなっており、とりわけ、代表的集団からの多段階の階層化された試料から得られ、確認された指標を含む。例えば、APACHE I、IIおよびIII等のアパッチ急性生理学・慢性健康評価(APACHE)スコアリングシステム、簡略性生理スコア(SAPS IおよびII)、およびPOSSUMモデルシステム(Cowen,J.S.およびKelley,M.A.(1994)Crit Care Clin 10:53;Escarce,JJ.およびKelley,M.A.(1990)JAMA 264:2389;Knaus,W.A.,Wagner,D.P.,Draper,E.A.等(1991)Chest 100:1619;これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0051】
結腸直腸癌のリスクを評価するために、多数の研究およびアルゴリズムが用いられているにもかかわらず、所見に基づく複数リスク因子評価アプローチは、無症状または他の健常個体に結腸直腸癌があらわれる短期および長期的リスクの予測の正確性が中等度にとどまる。このようなリスク予測アルゴリズムを、本発明のCLRMARKERと都合よく組み合わせて用いて、目的の集団中の対象を区別し、結腸直腸癌を発病するリスクの層別化を行いうる。本明細書に開示されるCLRMARKERおよび使用方法は、そのようなリスク予測アルゴリズムと組み合わせて、無症状であり従来のリスク因子を示さない対象を評価、同定、または診断するために使用できるツールを提供する。
【0052】
リスク予測アルゴリズムおよび本発明の方法から導出されたデータが、線型回帰により比較されうる。線形回帰分析は、観察データに線形方程式を適用することにより、二つの変数間の関係をモデル化する。一つの変数は説明変数であると考えられ、他方は従属変数であると考えられる。例えば、計算されたアルゴリズムスコアに内在する基本的生物学をより完全に定義する努力において、APACHE集団分析から得られる値が従属変数として使用され、説明変数としての一つ以上のCLRMARKERのレベルに対して分析されうる。あるいは、そのようなリスク予測アルゴリズム、または、一般にCLRMARKER自体であるその個々の入力が、本発明の実施に直接組み込まれ、組み合わせられたアルゴリズムが過去のコホートにおける実際の観察結果に対して比較されうる。
【0053】
線形回帰分析は、とりわけ対象からの試料中の一つ以上のCLRMARKERのレベルを、その対象の実際に観察される臨床的結果と相関づけることに基づいて、結腸直腸癌を発病するリスクを予測するために、または、例えば計算されたAPACHEリスクスコア、SAPSスコア、POSSUMリスクスコア、またはTukey,J.(1993)Controlled Clinical Trialsにより説明され、Richard Simons研究によりマイクロアレイ分野において一般に広められた複合共変量予測因子(CCP)、臨床または診断アッセイにおいて偽発見率を計算するためのBenjamini―Hochberg法(例えば、Klipper―Aurbach,Y.等、(1995)Med.Hypotheses 45(5):486―90を参照)、Mann―Whitney U検定、中央値の等価性についてのWilcoxon検定(Wilcoxon,F.(1945)Biometrics,1,80―83を参照)、およびファミリーごとの修正のためのHochberg法(例えば、Levin,B.(1996)Am.J.Public Health 86(5):628―629を参照)を含む、結腸直腸癌の有病率を診断または予測するための他の公知の方法と組み合わせて、用いることができる。しかし特に有用なのは、結腸直腸癌の公知の予測モデルと対象試料中に検出されるCLRMARKERのレベルの関係を決定するための、非線形方程式および分析である。特に興味深いのは、K次近隣距離、ブースティング、決定木、ニュートラルネットワーク、ベイジアンネットワーク、サポートベクターマシン、および隠れマルコフモデル等の確立された技術を含む、パターン認識機能を利用する、構造的および協働的分類アルゴリズム、ならびにリスク指標構築の方法である。さらに、複数のCLRMARKERのパネルへのこのような技術の適用は、複数のCLRMARKER入力からの情報を含む一つの数値的「リスク指標」または「リスクスコア」を作成するためのこのような組み合わせの使用と同様に、本発明の範囲に包含され、または含まれる。
【0054】
因子分析は、その構成成分からCLRMARKERパネルを構築し、代用可能なマーカ群をグループ化する上で、非常に有用でありうる。因子分析は、多数の相関変数(結腸直腸癌リスク因子等)を、元の変数の分散の大きな割合を占める異なる属性を表す、より少ない「因子」に減らすことができる、数学的技術である(例えば、Slattery,ML.等、(1998)Am.J.Epidemiol.148:4―16;Martinez,M.E.等、(1998)Am.J.Epidemiol.148:17―19を参照)。これらの分析からの因子「スコア」の疫学的研究から、例えば潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の成分、および結腸直腸癌の発病率の間の関係がさらに決定されうる。因子分析の基礎にある前提は、一連の変数の間に観察される相関関係が、少数の固有の観測されない変数、「因子」により説明できるということである。因子分析は、二つの手順を伴う:1)因子数を推定するための因子抽出、および2)元の変数に関して各因子の成分を決定するための因子回転。因子抽出は、主成分分析法により行われうる。これらの成分は、各成分と他の各成分の相関がゼロとなるように構築される、元の変数の線形和である。各主成分は、その成分により説明される元の変数の分散を表す「固有値」を伴う(元の変数の各々が1の分散を有するように標準化される)。構築されうる主成分の数は、元の変数の数に等しい。因子分析においては通例、全分散において任意の一つの元の変数よりも意味のある成分(すなわち、固有値>1である成分)のみを維持することにより因子数が決定される。
【0055】
因子数は確立されたら、元の変数に関して最も節約的解釈を有する因子の組成を決定するために、因子回転が行われる。因子回転においては、各因子の元の変数との相関を表す「因子負荷量」が、これらの因子負荷量が0または1に可能な限り近くなるように、変更される(因子により説明される分散の合計量が不変であるという制約を伴って)。因子回転のための多数の方法が開発されており、最終的因子組が互いに無相関なままであることを必要とするか(別名「直交法」)、または因子が互いに相関しうるか(「斜交法」)により区別されうる。因子分析の解釈においては、因子負荷量のパターンが検討されて、どの元の変数が各因子の重要構成成分であるかが決定される。従来、特定の因子に対する因子負荷量が>0.4(または−0.4未満)である変数が、その重要構成成分であると考えられる。
【0056】
同時または時間的に異なる時間に測定されるテスト(「対象」)および基準(「コントロール」)試料について、比較が行われうる。後者の例は、CLRMARKERの発現レベルに関する情報を集めるコンパイルされた発現情報、例えば配列データベースの使用である。基準試料、例えばコントロール試料が、結腸直腸癌を有しない対象からのものであり、対象のテスト試料とコントロール基準試料中のCLRMARKERの量が類似する場合には、治療が有効なことを示す。しかし、テスト試料および基準試料中の一つ以上のCLRMARKERの量の変化は、より好ましくない臨床的結果または予後を反映しうる。「効果的」または「有効」とは、治療が、一つ以上のCLRMARKERの量の減少または増加につながることを意味する。対象の結腸直腸癌を診断または治療するための任意の公知の方法に関連して、効果が決定されうる。
【0057】
本発明のCLRMARKERのレベルの実際の測定値は、公知技術の任意の方法を用いて、タンパク質または核酸レベルで決定されうる。例えば核酸レベルでは、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンおよびサザンハイブリダイゼーション分析、ならびにリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、遺伝子の発現を決定できる。あるいは、例えば発現量の異なる遺伝子の配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、バイオマーカのレベルを測定できる。バイオマーカのレベルは、例えば本明細書に記載の遺伝子産物によりコードされるペプチドのレベルまたはその活性を測定することにより、タンパク質レベルでも決定されうる。そのような方法は公知技術であり、例えば遺伝子、アプタマーまたは分子インプリントによりコードされるタンパク質に対する抗体に基づくイムノアッセイを含む。任意の生物学的材料を、タンパク質またはその活性の検出/定量化に用いうる。あるいは、分析される各タンパク質の活性に従って、バイオマーカ遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を決定するために適切な方法が選択されうる。
【0058】
CLRMARKERの量は、とりわけ、電気泳動的に(アガロースゲル電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウム―ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS―PAGE)、Tris―HClポリアクリルアミドゲル、非変性タンパク質ゲル、二次元ゲル電気泳動(2DE)等による)、免疫化学的に(すなわち、放射性免疫測定、免疫ブロット、免疫沈降、免疫蛍光、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ)、「プロテオーム解析」により、または「ゲノム分析」により、検出されうる。
【0059】
「プロテオーム解析」は、表面増強レーザ脱着イオン化(SELDI)、マトリックス支援レーザ脱着イオン化―飛行時間型(MALDI―TOF)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、質量分析(LC/MS)を伴う、または伴わない液体クロマトグラフィ、タンデム型LC/MS、タンパク質アレイ、ペプチドアレイ、および抗体アレイを含むがこれに限定されない。
【0060】
「ゲノム分析」は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、実時間PCR(例えば、Roche Applied Sciencesから利用可能なLight Cycler(登録商標)による)、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、ノーザンブロット分析、およびサザンブロット分析を含みうる。
【0061】
マイクロアレイ技術が、遺伝子またはタンパク質の発現を分析するためのツールとして用いられればよく、これには、小膜または固体担体(光ファイバ検出手段を伴う、または伴わない、顕微鏡ガラススライド、プラスチック担体、シリコンチップまたはウェーハ等、および、ニトロセルロース、ナイロン、またはポリフッ化ビニリデンを含む膜などであるがこれに限定されない)が含まれる。固体担体は、目的の分析物、通常は核酸、タンパク質、または代謝産物またはそのフラグメントの結合を可能にするために、化学的に(シラン、ストレプトアビジン、および他の多数の例等)、または物理的に誘導体化(例えばフォトリソグラフィ)されうる。核酸またはタンパク質は、in situでプリント(すなわちインクジェットプリント)、スポット、または合成されうる。アレイ上に正確かつ再現可能なスポットを提供するピン技術と組み合わせた、非常に正確なx―、y―、およびz―軸上の運動制御を伴う自動化されたスポッティングデバイスを利用するxyzロボットマイクロアレイヤーにより、目的の核酸またはタンパク質の沈着を達成できる。目的の分析物が、特に所望される分析物の容易な同定を促進するために、規則的または固定的な配置で固体担体上に配置される。多数のマイクロアレイフォーマットが、とりわけ、Affymetrix、ArrayIt、Agilent Technologies、Asper Biotech、BioMicro、CombiMatrix、GenePix、Nanogen、およびRoche Diagnosticsから市販されている。
【0062】
一つ以上の検出可能な標識で標識されたヌクレオチドまたはアミノ酸の存在下で、目的の核酸またはタンパク質が合成されうる。このような標識には、例えば、蛍光染料および化学発光標識が含まれる。特に、マイクロアレイ検出では、ローダミン、フルオレセイン、フィコエリトリン、Cy3およびCy5のようなシアニン染料、およびストレプトアビジン―フィコエリトリン(核酸またはタンパク質がビオチンで標識される場合)のような結合体等の蛍光染料が多用される。通常は、共焦点蛍光レーザ走査または光電増倍管を用いて、蛍光発光の検出および画像取得が達成され、これによりアレイ上の核酸またはタンパク質についての相対シグナル強度および分析物存在量の割合が提供される。多様なスキャニング機器が利用可能であり、多数の画像取得および定量化パッケージがそれらに伴い、これにより、組み合わされた選択規準の数値的評価によって、中央値、四分位間範囲(IQR)、飽和スポットのカウント、ペアワイズのスキャン間の線形回帰(r2およびP)等の最適なスキャニング条件を画定することが可能になる。スキャン再現性、ならびにスキャニング条件の最適化、バックグラウンド補正、および正規化が、データ分析の前に評価される。
【0063】
正規化とは、アレイ、サブアレイ(またはプリントチップ群)、および色素―標識チャンネルの間の組織的非生物学的差異から生じる効果のために、データ平均値または分散を調節するために用いられるプロセスの集まりをさす。アレイは、チップまたは固体担体上の標的プローブ組全体として定義される。サブアレイまたはプリントチップ群とは、同じプリントチップにより堆積される標的プローブのサブセットであり、完全なアレイの中の、異なるより小さなプルーブ(proves)のアレイとして確認されうるものをさす。色素―標識チャンネルとは、チップにハイブリダイズされた標的試料の蛍光の周波数をさす。二つの異なる色素標識の試料が混合され、同じチップにハイブリダイズされる実験は、従来技術において「二重色素実験」と呼ばれ、「赤色」チャンネルと「緑色チャンネル」の比のログとして表される場合が多い、アレイ上の各標的の絶対ではなく相対発現値をもたらす。正規化は、レシオメトリックまたは絶対値の方法にしたがって実行されうる。レシオメトリック分析は、一つのチャンネルまたはアレイが共通基準との関係で考慮される二重色素実験において主に用いられる。各標的プローブの発現の比が、テスト試料と基準試料の間で計算された後、比がlog2(比)に転換されて、相対変化が対称的に表される。絶対値方法は、チャンネルまたはアレイの適切な基準がない、一重色素実験または二重色素実験において多用される。特定の実験的条件を特徴付ける発現レベルまたは量として、適切な「ヒット」が定義される。通常これらは、異なる実験条件間で発現レベルが有意に異なる核酸またはタンパク質であり、異なる条件における核酸またはタンパク質の発現レベルの比較、および、核酸またはタンパク質の相対的発現(「倍率変化」)および一つの試料組におけるその発現レベルの、別の組におけるその発現に対する比の分析によるのが通常である。
【0064】
マイクロアレイ実験から得られたデータは、クラスタリング法およびスコアリング法等の多数の統計的分析のいずれか一つにより分析されうる。クラスタリング法は、様々な条件または試料で同様に反応する標的(核酸および/またはタンパク質等)を同定することを試みる。このような標的を見つける動機は、類似の発現パターンを示す標的は、共通の調節因子、共通の機能、または共通の細胞起源等の共通の特性を共有するという仮定にもとづく。
【0065】
階層型クラスタリングは、単一メンバーのクラスターが、より大きなクラスターに融合されていく集塊プロセスである。手順は、全ての標的分子間のペアワイズの距離行列を計算することにより開始される。距離行列は、最も近い遺伝子につき調査され、それらがクラスターとして定義される。二つのクラスターの集塊により新しいクラスターが形成された後、距離行列が、他の全てのクラスターからの距離を反映するようにアップデートされる。その後、最も近いクラスター対を捜して集塊する手順が繰り返される。この手順により、複数のクラスターがその類似性にしたがってノードに融合されて、単一の階層ツリーとなる、階層的デンドログラムができる。階層的クラスタリングソフトウェアアルゴリズムには、例えば、ClusterおよびTreeviewが含まれる。
【0066】
K―平均クラスタリングは、それらの「中心」点または平均に関して定義されるクラスターを探索する反復的手順である。クラスターの中心組が定義されたら、各標的分子が、最も近いクラスターに割り当てられる。そして、クラスタリングアルゴリズムが、各クラスター中の標的分子の中心までの距離の合計が最小になるように、各遺伝子クラスターの中心を調節する。この結果、クラスター中心の新しい選択肢が生じ、標的分子がクラスターに再度割り当てられうる。収束が観察されるまで、これらの反復が行われる。自己組織化マップ(SOM)は、データが所定のクラスター組に割り当てられるという点で、k―平均法に一部関係する。しかしk―平均法とは異なり、その後行われるのは、各クラスターの遺伝子発現ベクターが、異なるクラスター間の最善の区別を見出すように「訓練される」反復プロセスである。換言すれば、データに部分構造が与えられてから、この構造がデータにしたがって繰り返し修正される。SOMは、例えばGeneCluster等、多くのソフトウェアパッケージに含まれる。他のクラスタリング法には、グラフ理論的クラスタリングが含まれるが、これは、グラフ理論的および統計的技術を利用して、同じ真のクラスターに属する可能性がある類似性の高い要素の緊密な群(カーネル)を同定する。そして、いくつかの帰納的手順を用いて、カーネルが完全なクラスタリングに拡張される。グラフ理論的クラスタリングを利用するソフトウェアの例には、Expander可視化ツールと組み合わされたCLICKが含まれる。
【0067】
ハイスループット発現分析から得られたデータは、パラメトリックおよびノンパラメトリック法等の統計方法を用いてスコア化されうる。パラメトリックなアプローチは、発現プロフィールをパラメータで表してモデル化し、実験群のパラメータがいかに異なるかを問う。パラメトリック法の例には、t検定、分離スコア、およびベイジアンt検定が含まれるがこれに限定されない。ノンパラメトリック法は、データの発現プロフィールの分布について推測的仮定は一切設けられず、二つの発現測定群が区別される程度が直接検定される、データの分析に関する。別の方法は、発現値に対する単純閾値により二つの試料群の分離の成功度を測定する、TNOM、すなわち誤分類の閾値数を用いる。
【0068】
SAGE(遺伝子発現の連続分析)を用いて、遺伝子発現のレベルを系統的に決定することもできる。SAGEにおいては、転写産物を一意的に同定するために十分な情報を含む、特定の位置の短い配列タグが使用された後、連続的様式で標識が連結される。例えば、Velculescu V.E.等、(1995)Science 270:484―487を参照。ポリアデニル化RNAが、オリゴdTプライミングにより単離されてから、cDNAが、ビオチン標識プライマを使用して合成される。その後cDNAがアンカリング制限エンドヌクレアーゼにより切断され、3’―末端cDNAフラグメントが、ストレプトアビジンでコートされたビーズに結合される。タグ化酵素のための認識部位を含むオリゴヌクレオチドリンカーが、結合されたcDNAに連結される。タグ化酵素は、3’から認識部位の一定の塩基数でDNAを切断し、酵素による消化後に短いタグおよびリンカーがビーズから放出される、クラスII制限エンドヌクレアーゼでありうる。そして、放出されたタグの3’末端とリンカーが平滑末端化され、互いにライゲートされて、長さが約100塩基対の連結ダイタグが形成される。そして、ダイタグがPCR増幅された後、リンカーおよびタグが、アンカリング制限エンドヌクレアーゼによる消化により放出される。その後、タグ(通常は25〜30マーのサイズ範囲)がゲル精製され、連結され、配列ベクターにクローニングされる。コンカテマの配列決定により、個々のタグが同定でき、所与の細胞または組織型の転写産物の量を決定できる。
【0069】
タンパク質の混合物(血清等の生体試料に見られるような)を、一次元目で等電点(例えば5〜8のpH範囲)にしたがって分離し、二次元目で分子量にしたがって分離する、二次元ゲル電気泳動が特に有用である。二次元液体クロマトグラフィも、本発明のCLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型を同定または検出するために都合よく用いられうる。
【0070】
CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型は、対象からの試料を、CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、または多型に結合する抗体と接触させてから、反応生成物の有無を検出することにより、典型的に検出されうる。本明細書に詳述されるように、抗体は単クローン、多クローン、キメラ、または以上のフラグメントであり得、反応生成物を検出するステップは、任意の適切なイムノアッセイにより行われうる。単離された抗体は、例えば、(本明細書で定義されるところの)ヒト定常領域、および表1に記載の一つ以上のCLRMARKERに結合する抗原結合領域で、好ましくは少なくとも一つ、好ましくは二、三、四、五、六、七、八、九、十またはそれ以上のアミノ酸残基のものを含みうる。対象からの試料は、典型的には上述の「試料」という用語により定義されるところの生物流体であり、上述の方法を行うために用いられる生物流体と同じ試料でありうる。
【0071】
本発明にしたがって行われるイムノアッセイは、ホモジニアスアッセイまたはヘテロジニアスアッセイでありうる。ホモジニアスアッセイにおいては、免疫反応は通常、特異抗体(例えば抗CLRMARKERタンパク質抗体)、標識された分析物、および目的の試料に関わる。抗体が標識された分析物に結合すると、標識から生じるシグナルが、直接または間接的に変更される。免疫反応およびその程度の検出の両方が、ホモジニアス溶液において行われうる。使用できる免疫化学的標識には、フリーラジカル、放射性同位体、蛍光染料、酵素、バクテリオファージ、またはコエンザイムが含まれる。
【0072】
ヘテロジニアスアッセイのアプローチにおいては、試薬は通常、試料、抗体、および検出可能なシグナルを生成するための手段である。上述の試料を使用できる。抗体が、ビーズ(プロテインAアガロース、プロテインGアガロース、ラテックス、ポリスチレン、磁性または常磁性ビーズ等)、プレートまたはスライド等の担体上に固定され、液相において抗原を含むと疑われる試料と接触させられうる。そして、担体が液相から分離され、検出可能なシグナルにつき、かかるシグナルを生成するための手段を用いて、担体相または液相が検査される。シグナルは、試料中の分析物の存在に関係付けられる。検出可能なシグナルを生成する手段には、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識の使用が含まれる。例えば、検出される抗原が第二結合部位を含む場合には、その部位に結合する抗体が検出可能な基に結合され、分離ステップの前の液相反応溶液に加えられうる。固体担体上の検出可能な基の存在が、テスト試料中の抗原の存在を示す。適切なイムノアッセイの例は、オリゴヌクレオチド、免疫ブロット、免疫沈降、免疫蛍光法、化学発光法、電気化学発光または酵素結合イムノアッセイである。
【0073】
本明細書に開示の方法を実施するために有用でありうる、多数の具体的なイムノアッセイフォーマットおよびこれらの変形は、当業者に公知である。一般に、E.Maggio,Enzyme―Immunoassay,(1980)(CRC Press,Inc.,BocaRaton,FIa.)を参照;Skold等に対する米国特許第4,727,022号、表題“Methods for Modulating Ligand―Receptor Interactions and their Application”、Forrest等に対する米国特許第4,659,678号、表題“Immunoassay of Antigens”、David等に対する米国特許第4,376,110号、表題“Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies”、Litman等に対する米国特許第4,275,149号、表題“Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays”、Maggio等に対する米国特許第4,233,402号、表題“Reagents and Method Employing Channeling”、およびBoguslaski等に対する米国特許第4,230,767号、表題“Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label”も参照。
【0074】
受動結合等の公知の技術により、診断アッセイに適切な固体担体(例えば、プロテインAまたはプロテインGアガロース等のビーズ、ラテックスまたはポリスチレン等の材料から形成されるミクロスフィア、プレート、スライドまたはウェル)に抗体が結合されうる。本明細書に記載の抗体も同様に、公知の技術により、放射標識(例えば35S、125I、131I)、酵素標識(例えばワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(例えばフルオレセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質)等の検出可能な標識または基に結合されうる。
【0075】
抗体は、チロシンリン酸化、スレオニンリン酸化、セリンリン酸化、グリコシル化(例えばO―GlcNAc)等、CLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型の翻訳後修飾を検出するためにも有用でありうる。このような抗体は、目的のタンパク質(単数または複数)におけるリン酸化アミノ酸を特異的に検出し、本明細書に記載の免疫ブロット、免疫蛍光、およびELISAアッセイにおいて使用されうる。これらの抗体は当業者に周知であり、市販である。反射装置マトリックス支援レーザ離脱イオン化―飛行時間質量分析(MALDI―TOF)において準安定イオンを用いても、翻訳後修飾が決定されうる(Wirth,U.等(2002)Proteomics 2(10):1445―51)。
【0076】
酵素活性を有することが知られるCLRMARKERタンパク質、ポリペプチド、変異体、および多型では、公知技術の酵素アッセイを用いて、in vitroで活性が決定されうる。このようなアッセイには、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、レダクターゼアッセイが含まれるがこれに限定されない。ヒルプロット、ミカエリス―メンテン式、ラインウィーバー―バーク分析およびスキャッチャードプロット等の線形回帰プロットなど、公知のアルゴリズムを用いて速度定数KMを測定することにより、酵素活性のキネティクスの変調が決定されうる。
【0077】
公知技術の任意の方法を用いて、本明細書に開示される遺伝子の発現をRNAレベルで測定できる。例えば、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析を用いて、遺伝子発現を決定できる。あるいは、例えば差別的に発現された配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、発現を測定できる。
【0078】
あるいは、CLRMARKERタンパク質および核酸代謝産物またはフラグメントが測定されうる。「代謝産物」という用語には、生体分子(例えばタンパク質、核酸、炭水化物、または脂質)のプロセシング、切断または消費により産生される任意の化合物等、代謝プロセスの化学的または生化学的産物が含まれる。代謝産物は、屈折率分光(RI)、紫外分光(UV)、蛍光分析、放射化学分析、近赤外分光(近IR)、核磁気共鳴分光(NMR)、光散乱分析(LS)、質量分析、熱分解質量分析、比濁分析、分散ラマン分光、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィ、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィ、質量分析と組み合わせたマトリックス支援レーザ離脱イオン化―飛行時間(MALDI―TOF)、表面増強レーザ離脱イオン化(SELDI)、質量分析と組み合わせたイオンスプレー分光、キャピラリー電気泳動、NMRおよびIR検出を含む、当業者に周知の様々な方法で検出されうる。(参照により全体として本明細書に組み込まれる、国際公開第04/056456号および第04/088309号を参照)。この点に関しては、他のCLRMARKER分析物が、上述の検出法または当業者に周知の他の方法を用いて測定されうる。
【0079】
バイオマーカ配列のデータベースエントリにより提供される配列情報を用いて、バイオマーカ配列の発現が、従来技術において当業者に周知の技術を用いて検出され(存在すれば)、測定されうる。例えば、バイオマーカ配列に対応する配列データベースエントリ中の配列、または本明細書に開示される配列中の配列を用いて、例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション分析または特定の核酸配列を特異的および好ましくは量的に増幅する方法において、バイオマーカRNA配列を検出するためのプローブを構築しうる。別の例として、配列を用いて、例えば逆転写ベースのポリメラーゼ連鎖反応法(RT―PCR)等の増幅ベースの検出法において、バイオマーカ配列を特異的に増幅するためのプライマを構築しうる。遺伝子発現の変化が、遺伝子増幅、欠失、多型、および変異に関連するときには、テストおよび基準細胞集団における検査されるDNA配列の相対量を比較することにより、テストおよび基準集団における配列比較が行われうる。
【0080】
公知技術の任意の方法を用いて、本明細書に開示される遺伝子の発現が、RNAレベルで測定されうる。例えば、これらの配列の一つ以上を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析を用いて、遺伝子発現を決定できる。あるいは、例えば発現量の異なる配列に特異的なプライマを用いた、逆転写ベースのPCRアッセイ(RT―PCR)を用いて、発現を測定できる。例えば他の標的増幅方法(例えばTMA、SDA、NASBA)、またはシグナル増幅方法(例えばbDNA)等を用いて、RNAを定量することもできる。国際出願PCT/US02/38806号(参照により内容が全体として本明細書に組み込まれる、国際公開第03/048377号として発行、およびTherianos等、(2004)Am.J.Pathol.164(3):795―806)にさらに説明されるように、本発明のバイオマーカの発現のレベルが、実時間PCRにより検出されるのが好ましい。
【0081】
CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の有効な量のレベルにより、結腸直腸癌の治療経過をモニタリングすることも可能になる。この方法では、生体試料が、結腸直腸癌のための治療レジメン、例えば薬物療法を受けている対象から提供されうる。このような治療レジメンには、食事補助(アルファ―リポ酸、クロミウム、コエンザイムQ10、ニンニク、マグネシウム、およびオメガ―3脂肪酸を含むこれに限定されない)、外科的介入(結腸直腸切除等)、および、例えば本明細書に定義される結腸直腸癌調節剤等、結腸直腸癌と診断または同定される対象において使用される治療または予防薬での治療が含まれうるがこれに限定されない。必要に応じて、生体試料は、治療前、治療の間、または治療後の様々な時点で対象から得られる。そして、CLRMARKERタンパク質、ペプチド、核酸、多型、代謝産物、または他の分析物の有効な量のレベルが決定され、基準値、例えば癌状態が既知であるコントロール対象または集団、または指標値またはベースライン値と、比較されうる。基準試料または指標値またはベースライン値は、治療を受けている一つ以上の対象から入手または導出され、または、結腸直腸癌を発病するリスクが低い一つ以上の対象から入手または導出され、または、治療を受けた結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している対象から入手または導出されうる。あるいは、基準試料または指標値またはベースライン値は、治療を受けていない一つ以上の対象から入手または導出されうる。例えば、結腸直腸癌の初期治療および結腸直腸癌の後続治療を受けている対象から試料が集められて、治療の進行がモニタされうる。基準値には、本明細書に開示されるようなリスク予測アルゴリズムから導出される値または人口調査からの計算された指標も含みうる。
【0082】
したがって、本発明のCLRMARKERを用いて、結腸直腸癌を有さず、結腸直腸癌を発病すると期待されない対象において検出されるCLRMARKERの発現レベルのパターンを含む「基準発現プロフィール」を生成できる。本明細書に開示されるCLRMARKERを用いて、結腸直腸癌を有する対象からとられたCLRMARKERの発現レベルのパターンを含む「対象発現プロフィール」を生成することもできる。対象発現プロフィールを、基準発現プロフィールと比較して、結腸直腸癌を発病するリスクがある対象を診断または同定し、結腸直腸癌に関係する合併症の発症または発症のリスクを含めて、疾患の進行ならびに疾患の進行速度をモニタし、結腸直腸癌の治療様式の有効性をモニタできる。
【0083】
本発明の基準および対象発現プロフィールは、VCR、CD―ROM、DVD―ROM、USBフラッシュ媒体等により読取り可能なもののような、アナログテープまたはデジタルメディア等の機械可読媒体に含まれうるがこれに限定されない。このような機械可読媒体には、結腸および/または直腸癌の家族歴、高脂肪の食事、結腸直腸ポリープの形成、または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患および/またはクローン病の発病のような限定されない従来の結腸直腸癌リスク因子の測定値など、追加的なテスト結果も含まれうる。代替的または追加的に、機械可読媒体は、既往および任意の関連の家族歴等の、対象の情報も含みうる。機械可読媒体は、本明細書に記載されるような、他の結腸直腸癌リスクアルゴリズムおよび計算された指標に関する情報も含みうる。
【0084】
対象の遺伝的構造の差により、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうる様々な薬剤を代謝する相対的能力の差が生じうる。結腸直腸癌を有する対象、または結腸直腸癌を発病するリスクがある対象は、年齢、民族性、食事、ポリープの存否、および他のパラメータが異なりうる。したがって、本明細書に開示されるCLRMARKERの使用により、選択された対象においてテストされる候補治療薬または予防薬が、対象において結腸直腸癌またはその合併症を治療または防止するために適するという予測可能性のレベルを予め決定できる。
【0085】
特定の対象に適切な治療剤または薬剤を同定するために、対象からのテスト試料が、治療剤または薬物に曝露され、一つ以上のCLRMARKERタンパク質、核酸、多型、代謝産物または他の分析物のレベルが決定されうる。一つ以上のCLRMARKERのレベルが、治療剤または薬物による治療または曝露前の第一期間および曝露後の第二期間で対象から得られる試料と比較され、または、そのような治療または曝露の結果として結腸直腸癌リスク因子の改善を示している一つ以上の対象から得られる試料と比較されうる。結腸直腸治療において多用され、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうるこのような治療剤または薬剤の例には、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその任意の組み合わせの一つ以上が含まれるがこれに限定されない。このような治療剤または薬剤は、結腸直腸癌と診断された対象のために処方され、結腸直腸癌の症状またはリスク因子を調節しうる(本明細書において「結腸直腸癌調節剤」)。
【0086】
本発明での使用に適するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤には、本明細書で定義されるように、ヒドロキサム酸誘導体、短鎖脂肪酸(SCFA)、環式テトラペプチド、ベンズアミド誘導体、または求電子性ケトン誘導体が含まれるがこれに限定されない。本発明の方法における使用に適するHDAC阻害剤の非限定的な具体例には、SAHA、ピロキサミド、CBHA、トリコスタチンA(TSA)、トリコスタチンC、サリチルビスヒドロキサム酸、アゼラインアゼラインビスヒドロキサム酸(ABHA)、アゼライン1―9―ヒドロオキサメート―アニリド(AAHA)、6―(3―クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(3C1―UCHA)、オキサムフラチン、A―161906、スクリプタイド、PXD―101、LAQ―824、CHAP、MW2796およびMW2996等のヒドロキサム酸を含む化合物;トラポキシンA、FR901228(FK228またはデプシペプチド)、FR225497、アピシジン、CHAP、HC―トキシン、WF27082、およびクラミドシンより選択される環式テトラペプチド;酪酸ナトリウム、イソ吉草酸、吉草酸、4フェニル酪酸(4―PBA)、フェニル酪酸(PB)、プロピオネート、ブチルアミド、イソブチルアミド、フェニルアセテート、3―ブロモプロピオネート、トリブチリン、バルプロン酸およびバルプロエートより選択される短鎖脂肪酸(SCFA);CI―994、MS―27―275(MS―275)、およびMS―27―275の3’―アミノ誘導体等のベンズアミド誘導体;トリフロロメチルケトンおよびN―メチル―a―ケトアミド等のa―ケトアミド等の求電子性ケトン誘導体;および、天然産物、プサムマプリンおよびデプデシンを含む他の種々のHDAC阻害剤が含まれる。
【0087】
アルキル化剤の例は、ビスクロロエチルアミン(ナイトロジェンマスタード、例えばクロランブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード)、アジリジン(例えばチオテパ)、アルキルアルコン(alkone)スルホネート(例えばブスルファン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン)、非古典的アルキル化剤(アルトレタミン、ダカルバジン、およびプロカルバジン)、白金化合物(カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、およびシスプラチン)が含まれるがこれに限定されない。これらの化合物は、リン酸、アミノ、ヒドロキシル、スルフィヒドリル(sulfihydryl)、カルボキシル、およびイミダゾール基と反応する。他の白金化合物には、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,894,049号、第5,244,919号、および第5,072,011号に開示されるものが含まれる。
【0088】
生理学的条件下で、これらの薬物はイオン化し、感受性核酸およびタンパク質に結合する正に帯電したイオンを生成し、細胞周期停止および/または細胞死をもたらす。アルキル化剤は、細胞周期の特定段階と独立して活性を及ぼすため、細胞周期非特異的薬剤である。ナイトロジェンマスタードおよびアルキルアルコン(alkone)スルホネートは、G1またはM期の細胞に対して最も有効である。ニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード、およびアジリジンは、G1およびS期からM期への進行を損なう。ChabnerおよびCollins eds.(1990)“Cancer Chemotherapy:Principles and Practice”,Philadelphia:JBLippincott。
【0089】
抗生物質(例えば細胞毒性抗生物質)は、DNAまたはRNA合成を直接阻害することにより作用し、細胞周期の全体にわたって有効である。抗生物質の例には、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、およびアントラセンジオン)、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、プリカトマイシンが含まれる。これらの抗生物質は、異なる細胞成分をターゲッティングすることにより、細胞成長を妨げる。例えば、アントラサイクリンは、転写的に活性のDNAの領域においてDNAトポイソメラーゼIIの作用を妨げ、DNA鎖切断をもたらすと一般に考えられている。
【0090】
抗代謝性薬剤(すなわち抗代謝剤)は、生理機能および癌細胞の増殖に不可欠な代謝プロセスを妨げる薬物群である。活発に増殖する癌細胞は、大量の核酸、タンパク質、脂質、および他の不可欠な細胞成分の持続的合成を必要とする。抗代謝剤の多くが、プリンまたはピリミジンヌクレオシドの合成を阻害し、またはDNA複製の酵素を阻害する。いくつかの抗代謝剤は、リボヌクレオシドの合成およびRNAおよび/またはアミノ酸代謝、ならびにタンパク質合成も妨げる。抗代謝剤は、不可欠な細胞成分の合成を妨げることにより、癌細胞の成長を遅延または停止させうる。抗分裂剤は、この群に含まれる。抗代謝薬剤の例には、フルオロウラシル(5―FU)、フロクスウリジン(5―FUdR)、メトトレキセート、ロイコボリン、ヒドロキシウレア、チオグアニン(6―TG)、メルカプトプリン(6―MP)、シタラビン、ペントスタチン、リン酸フルダラビン、クラドリビン(2―CDA)、アザシチジン、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、ボルテゾミブ、フラボピリドール、およびペメトレキセドが含まれるがこれに限定されない。
【0091】
ホルモン剤は、その標的器官の成長および発達を調節する薬物群である。ほとんどのホルモン剤が、エストロゲン、プロゲストーゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよびプロゲスチン等の、性ステロイドおよびその誘導体およびそのアナログである。これらのホルモン剤は、性ステロイドの受容体のアンタゴニストとして働き、受容体発現および不可欠な遺伝子の転写をダウンレギュレートしうる。このようなホルモン剤の例は、合成エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール)、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、トレミフェン、フルオキシメステロール、およびラロキシフェン)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、ニルタミド、およびフルタミド)、アロマターゼ阻害剤(例えばアミノグルテチミド、アナストロゾール、およびテトラゾール)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体、プレドニソン、ケトコナゾール、ゴセレリンアセテート、ロイプロリド、メゲストロールアセテート、およびミフェプリストンである。ホルモン剤は、乳癌、前立腺癌、黒色腫、および髄膜腫を治療するために用いられる。ホルモンの主な作用がステロイド受容体により媒介されるため、受容体陽性乳癌の60%が、第一線のホルモン療法に応答し;受容体陰性腫瘍で応答したのは10%未満だった。ホルモン剤と関係する主な副作用は、発赤である。頻繁に見られるのは、骨痛の突然の増加、皮膚損傷周辺の紅斑、および高カルシウム血症の誘発である。
【0092】
特に、プロゲストーゲンは子宮内膜癌を治療するために用いられる。これらの癌が、プロゲストーゲンに対抗されない高濃度のエストロゲンに曝露される女性に生じるためである。抗アンドロゲン剤は、主にfテストステロンのレベルを減少させ、これにより腫瘍の成長を阻害するために使用される。乳癌のホルモン治療は、腫瘍性乳房細胞におけるエストロゲン受容体の、エストロゲンに依存した活性化のレベルを低下させることを伴う。抗エストロゲンは、エストロゲン受容体に結合し、活性化補助因子の動員を防止し、これによりエストロゲンシグナルを阻害することにより作用する。LHRH類似体は、テストステロンのレベルを低下させて腫瘍の成長を減少させるために、前立腺癌の治療において用いられる。アロマターゼ阻害剤は、ホルモン合成に必要とされる酵素を阻害することにより作用する。
【0093】
植物由来薬剤は、植物から得られ、または薬剤の分子構造に基づいて修飾される薬物群である。それらは、細胞分裂に必須の細胞成分の集合を防止することにより、細胞複製を阻害する。植物由来薬剤は、多くの形の癌を治療するために用いられる。例えば、ビンクリスチンは、白血病、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫、および幼児期腫瘍神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、およびウィルムス腫瘍の治療において使用される。ビンブラスチンは、リンパ腫、精巣癌、腎細胞癌、菌状息肉腫、およびカポシ肉腫に対して使用される。ドキセタキセル(Doxetaxel)は、進行乳癌、肺非小細胞癌(NSCLC)、および卵巣癌に対して有望な活性を示している。エトポシドは、様々な腫瘍に対して活性であり、中でも小細胞肺癌、精巣癌、およびNSCLCは最も応答する。
【0094】
植物由来薬剤の例には、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビンゾリジン、およびビノレルビン)、ポドフィロトキシン(例えばエトポシド(VP―16)およびテニポシド(VM―26))、およびタキサン(例えばパクリタキセルおよびドセタキセル)が含まれる。これらの植物由来薬剤は一般に、チュービュリンに結合し、有糸分裂を阻害する抗分裂剤として働く。エトポシド等のポドフィロトキシンは、トポイソメラーゼIIと相互作用し、DNA鎖切断をもたらすことにより、DNA合成を妨げると考えられる。ビンクリスチン(例えば硫酸ビンクリスチン、Gensia Sicor Pharmaceuticals,Irvine,CA)は、一般の草花、ツルニチニチソウ植物(Vinca rosea Linn)から得られるアルカロイドである。硫酸ビンクリスチンは、ビンカロイコブラスチン、22―オキソ―、硫酸塩(1:1)(塩)である。エトポシド(例えば、VePesid(登録商標)、Bristol―Myers Squibb Co.,Princeton,NJ,一般にVP―16としても知られる)は、ポドフィリンの半合成誘導体である。リン酸エトポシドの化学名は、4’―デメチルエピポドフィロトキシン9―[4,6―O―(R)―エチリデン―b―D―グルコピラノシド],4’―(リン酸二水素)である。エトポシドの化学名は、4’―デメチルエピポドフィロトキシン9―[4,6―0―(R)―エチリデン―b―D―グルコピラノシド]である。
【0095】
他の結腸直腸癌調節剤には、腫瘍ワクチン接種アプローチにおいて使用される抗体および試薬での免疫療法による治療が含まれうる。この療法クラスの一次薬物は、単独または例えば癌細胞に対する毒素または化学療法剤/細胞障害剤を担持する、抗体である。腫瘍抗原に対する単クローン抗体は、腫瘍により発現される抗原、好ましくは腫瘍特異抗原に対して誘発される抗体である。例えば、単クローン抗体ハーセプチン(トラスツズマ)が、転移性乳癌を含むいくつかの乳腺腫瘍に過剰発現されるヒト表皮成長因子受容体2(HER2)に対して産生される。HER2タンパク質の過剰発現は、より悪性の疾患および臨床予後の低下と関係する。ハーセプチンが、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌患者の治療のための単剤として使用される。
【0096】
腫瘍抗原に対する単クローン抗体の別の例は、リンパ腫細胞上のCD20に対して産生され、正常および悪性CD20+前Bおよび成熟B細胞を選択的に枯渇させる、リツキサン(リツキシマブ)である。リツキサンは、例えば、再発または耐性低悪性度または濾胞性、CD20+、B細胞非ホジキンリンパ腫の患者の治療のための単剤として使用されている。マイロターグ(ゲムツズマブオゾガマイシン)およびキャンパス(アレムツズマブ)は、使用できる腫瘍抗原に対する単クローン抗体のさらなる例である。
【0097】
癌抑制遺伝子は、細胞成長および分裂周期を阻害し、これにより新生物の発達を防止する機能をする遺伝子である。癌抑制遺伝子における突然変異により、細胞が、抑制シグナルのネットワークの成分の一つ以上を無視し、細胞周期チェックポイントを克服し、制御された細胞成長のより速い速度―癌が生じる。癌抑制遺伝子の例には、Duc―4、NF―1、NF―2、RB、p53、WT1、BRCA1およびBRCA2が含まれる。
【0098】
癌ワクチンは、腫瘍に対する身体の特異的免疫応答を誘導する薬剤群である。研究開発および臨床試験下のほとんどの癌ワクチンは、腫瘍関連抗原(TAA)である。TAAは、腫瘍細胞に存在し、正常細胞において比較的不在または減少した構造(すなわちタンパク質、酵素または炭水化物)である。TAAは、腫瘍細胞に非常に固有であることにより、免疫系が認識し破壊するための標的を提供する。TAAの例には、ガングリオシド(GM2)、前立腺特異性抗原(PSA)、a―フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)(大腸癌および他の腺癌、例えば乳腺、肺、胃、および膵臓癌により産生される)、黒色腫関連抗原(MART―1、gap100、MAGE1,3チロシナーゼ)、乳頭腫ウイルスE6およびE7フラグメント、自己腫瘍細胞および同種腫瘍細胞の細胞全体または部分/溶解物が含まれる。
【0099】
本発明で使用するための、レチノイドまたはレチノイド剤には、ビタミンAの全ての天然、組換、および合成誘導体またはミメティクス、例えばパルミチン酸レチニル、レチノイド―ベータ―グルクロニド(ビタミンA1ベータ―グルクロニド)、レチニルリン酸塩(ビタミンA1リン酸塩)、レチニルエステル、4―オキソレチノール、4―オキソレチンアルデヒド、3―デヒドロレチノール(ビタミンA2)、11―シス―レチナール(11―シス―レチンアルデヒド、11―シスまたはネオbビタミンA1アルデヒド)、5,6―エポキシレチノール(5,6―エポキシビタミンA1アルコール)、無水レチノール(アンヒドロビタミンA1)、および4―ケトレチノール(4―ケト―ビタミンA1アルコール)、オールトランスレチノイン酸(ATRA;トレチノイン;ビタミンA酸;3,7―ジメチル―9―(2,6,6―トリメチル―1―シクロヘネン―1―イル)―2,4,6,8―ノナテトラエン酸[CAS No.302―79―4])、オールトランスレチノイン酸の脂質製剤(例えばATRA―IV)、9―シスレチノイン酸(9―シス―RA;アリトレチノイン;Panretin(商標);LGD1057)、(e)―4―[2―(5,6,7,8―テトラヒドロ―2―ナフタレニル)―1―プロペニル]―安息香酸、3―メチル―(E)―4―[2―(5,6,7,8―テトラヒドロ―2―ナフタレニル)―1―プロペニル]―安息香酸、フェンレチニド(N―(4―ヒドロキシフェニル)レチンアミド;4―HPR)、エトレチネート(2,4,6,8―ノナテトラエン酸)、アシトレチン(Ro10―1670)、タザロテン(エチル6―[2―(4,4―ジメチルチオクロマン―6―イル)―エチニル]ニコチン酸)、トコレチナート(9―シス―トレチノイントコフェリル)、アダパレン(6―[3―(1―アダマンチル)―4―メトキシフェニル]―2―ナフトエ酸)、モトレチニド(トリメチルメトキシフェニル―N―エチルレチンアミド)、およびレチンアルデヒドが含まれる。
【0100】
CD437(6―[3―(1―アダマンチル)―4―ヒドロキシフェニル]―2―ナフタレンカルボン酸およびAHPNとも呼ばれる)、CD2325、ST1926([E―3―(4’―ヒドロキシ―3’―アダマンチルビフェニル―4―イル)アクリル酸)、ST1878(メチル2―[3―[2―[3―(2―メトキシ―1,1―ジメチル―2―オキソエトキシ)フェノキシ]エトキシ]フェノキシ]イソブチレート)、ST2307、ST1898、ST2306、ST2474、MM11453、MM002(3―Cl―AHPC)、MX2870―1、MX3350―1、MX84、およびMX90―1等のレチノイド関連分子も、レチノイドとして含まれる(Garattini等、2004,Curr.Pharmaceut.Design 10:433―448;GarattiniおよびTerao,2004,J.Chemother.16:70―73)。一つ以上のRXRに結合するレチノイド剤が、本発明の用途に含まれる。一つ以上のRXRに結合し、一つ以上のRARには結合しない(すなわち、RXRに対する選択的結合;レキシノイド)レチノイド剤、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)、フィタン酸、メトプレン酸、LG100268(LG268)、LG100324、LGD1057、SR11203、SR11217、SR11234、SR11236、SR11246、AGN194204も含まれる(例えば、SimeoneおよびTari,2004,Cell Mol.Life Sci.61:1475―1484;RigasおよびDragnev,2005,The Oncologist 10:22―33;Ahuja等、2001,Mol.Pharmacol.59:765―773;GorgunおよびFoss,2002,Blood 100:1399―1403;Bischoff等、1999,J.Natl.Cancer Inst.91:2118―2123;Sun等、1999,Clin.Cancer Res.5:431―437;CrowおよびChandraratna,2004,Breast Cancer Res.6:R546―R555を参照)。9―シス―RAの誘導体が、さらに含まれる。3―メチルTTNEBおよび関連の薬剤、例えばTargretin(登録商標);ベクサロテン;LGD1069;4―[1−(5,6,7,8―テトラヒドロ―3,5,5,8,8―ペンタメチル―2―ナフタレニル)エテニル]安息香酸、またはその薬理学上許容可能な塩または水和物が特に含まれる。
【0101】
本発明に使用するためのチロシンキナーゼ阻害剤は、一つ以上のチロシンキナーゼ(例えば受容体チロシンキナーゼ)の活性またはレベルを減少させる、全ての天然、組換え、および合成薬剤、例えばEGFR(ErbB―1;HER―1)、HER―2/neu(ErbB―2)、HER―3(ErbB―3)、HER―4(ErbB―4)、ジスコイジンドメイン受容体(DDR)、エフリン受容体(EPHR)、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)、肝細胞成長因子受容体(HGFR)、インシュリン受容体(INSR)、白血球チロシンキナーゼ(Ltk/Alk)、筋肉特異的キナーゼ(Musk)、トランスフォーミング成長因子受容体(例えば、TGF―ベータ―RIおよびTGFベータ―RII)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、および血管内皮成長因子受容体(VEGFR)を含む。阻害剤には、上皮細胞成長因子(例えばEGF)、神経成長因子(例えばNGF―アルファ、NGF―ベータ、NGF―ガンマ)、ヘレグリン(例えばHRG―アルファ、HRG―ベータ)、トランスフォーミング成長因子(例えばTGF―アルファ、TGF―ベータ)、エピレグリン(例えばEP)、アンフィレグリン(例えばAR)、ベタセルリン(例えばBTC)、ヘパリン―結合EGF―様成長因子(例えばHB―EGF)、ニューレグリン(例えばNRG―1、NRG―2、NRG―4、NRG―4、グリア細胞成長因子とも呼ばれる)、アセチコリン(acetycholine)受容体誘導活性(ARIA)、および感覚運動性ニューロン由来成長因子(SMDGF)等、受容体チロシンキナーゼの内因性または修飾リガンドを含む。
【0102】
EGFRの阻害剤の例は、例えばセツキシマブ(エルビタックス;IMC―C225;MoAb C225)およびゲフィチニブ(IRESSA(商標);ZD1839;ZD1839;4―(3―クロロ―4―フルオロアニリノ)―7―メトキシ―6―(3―モルホリノプロポキシ)キナゾリン)、ZD6474(AZD6474)、およびEMD―72000(マツズマブ)、パニツムマブ(ABX―EGF;MoAb ABX―EGF)、ICR―62(MoAb ICR―62)、CI―1033(PD183805;N―[―4―[(3―クロロ―4―フルオロフェニル)アミノ]―7―[3―(4―モルホリニル)プロポキシ]―6―キナゾリニル]―2―プロペンアミド)、ラパチニブ(GW572016)、AEE788(ピロロ―ピリミジン;Novartis)、EKB―569(Wyeth―Ayerst)、およびEXEL7647/EXEL09999(EXELIS)である。エルロチニブおよび誘導体、例えばタルセバ(登録商標);NSC718781、CP―358774、OSI―774、R1415;N―(3―エチニルフェニル)―6,7―ビス(2―メトキシエトキシ)―4―キナゾリンアミン、またはその薬理学上許容可能な塩類または水和物(例えばメタンスルホン酸塩、モノヒドロクロリド)も含まれる。
【0103】
最近の開発により、癌を治療するために用いられる従来の細胞傷害性療法およびホルモン療法に加えて、癌の治療のための療法が導入されている。例えば、多くの形態の遺伝子治療の前臨床または臨床的治験が行われている。さらに、腫瘍の血管新生(すなわち脈管形成)の阻害に基づくアプローチが現在開発中である。これらのアプローチは、新たに形成される腫瘍血管系により提供される栄養および酸素の供給から、腫瘍を断絶するために用いられている。さらに、新生細胞の終末分化の誘導による癌療法も試みられている。適切な分化剤には、参照により内容が本明細書に組み込まれる以下の参考文献の任意の一つ以上に開示される化合物が含まれる。
【0104】
極性化合物(Marks等、(1987);,Friend,C.,Scher,W.,Holland,J.W.,およびSato,T.(1971)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)68:378―382;Tanaka,M.,Levy,J.,Terada,M.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1975)Proc.Natl.Acad Sci.(USA)72:1003―1006;Reuben,R.C.,Wife,R.L.,Breslow,R.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1976)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)73:862―866);ビタミンDおよびレチノイン酸の誘導体(Abe,E.,Miyaura,C,Sakagami,H.,Takeda,M.,Konno,K.,Yamazaki,T.,Yoshika,S.,およびSuda,T.(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)78:4990―4994;Schwartz,E.L.,Snoddy,J.R.,Kreutter,D.,Rasmussen,H.,およびSartorelli,A.C.(1983)Proc.Am.Assoc.Cancer Res.24:18;Tanenaga,K.,Hozumi,M.,およびSakagami,Y.(1980)Cancer Res.40:914―919);ステロイドホルモン(Lotem,J.およびSachs,L.(1975)Int.J.Cancer 15:731―740);成長因子(Sachs,L.(1978)Nature(Lond.)274:535,Metcalf,D.(1985)Science,229:16―22);プロテアーゼ(Scher,W.,Scher,B.M.,およびWaxman,S.(1983)Exp.Hematol.11:490―498;Scher,W.,Scher,B.M.,およびWaxman,S.(1982)Biochem.& Biophys.Res.Comm.109:348―354);発癌プロモータ(Huberman,E.およびCallaham,M.F.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76:1293―1297;Lottem,J.およびSachs,L.(1979)Proc.Natl.Acad Sci(USA)76:5158―5162);およびDNAまたはRNA合成の阻害剤(Schwartz,E.L.およびSartorelli,A.C.(1982)Cancer Res.42:2651―2655,Terada,M.,Epner,E.,Nudel,U.,Salmon,J.,Fibach,E.,Rifkind,R.A.,およびMarks,P.A.(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)75:2795―2799;Morin,M.J.およびSartorelli,A.C.(1984)Cancer Res.44:2807―2812;Schwartz,E.L.,Brown,B.J.,Nierenberg,M.,Marsh,J.C.,およびSartorelli,A.C.(1983)Cancer Res.43:2725―2730;Sugano,H.,Furusawa,M.,Kawaguchi,T.,およびIkawa,Y.(1973)Bibl.Hematol.39:943―954;Ebert,P.S.,Wars,I.,およびBuell,D.N.(1976)Cancer Res.36:1809―1813;Hayashi,M.,Okabe,J.,およびHozumi,M.(1979)Gann 70:235―238)。
【0105】
他の阻害剤には、DMPQ(5,7―ジメトキシ―3―(4―ピリジニル)キノリンジヒドロクロリド)、アミノゲニステイン(4’―アミノ―6―ヒドロキシフラボン)、エルブスタチンアナログ(2,5―ジヒドロキシメチルシナメート、メチル2,5―ジヒドロキシシナメート)、イマチニブ(Gleevec(商標)、Glivec(商標);STI―571;4―[(4―メチル―1―ピペラジニル)メチル]―N―[4―メチル―3―[[4―(3―ピリジニル)―2―イリミジニル(yrimidinyl)]アミノ]―フェニル]ベンズアミドメタンスルホネート)、LFM―A13(2―シアノ―N―(2,5―ジブロモフェニル)―3―ヒドロキシ―2―ブテンアミド)、PD153035(ZM252868;4―[(3―ブロモフェニル)アミノ]―6,7―ジメトキシキナゾリンヒドロクロリド)、ピセタノール(トランス―3,3’,4,5’―テトラヒドロキシスチルベン、4―[(1E)―2―(3,5―ジヒドロキシフェニル)エテニル]―1,2―ベンゼンジオール)、PP1(4―アミノ―5―(4―メチルフェニル)―7―(t―ブチル)ピラゾロ[3,4―d]ピリミジン)、PP2(4―アミノ―5―(4―クロロフェニル)―7―(t―ブチル)ピラゾロ[3,4,d]ピリミジン)、パーツズマブ(Omnitarg(商標);rhuMAb2C4)、SU4312(3―[[4―(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]―1,3―ジヒドロ―2H―インドール―2―オン)、SU6656(2,3―ジヒドロ―N,N―ジメチル―2―オキソ―3―[(4,5,6,7―テトラヒドロ―1H―インドール―2―イル)メチレン]―1H―インドール―5―スルホンアミド)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標);rhuMAb VEGF)、セマキサニブ(SU5416)、SU6668(Sugen,Inc.)、およびZD6126(Angiogene Pharmaceuticals)が含まれる。
【0106】
他の薬剤も、例えば補助療法等、本発明の用途に有用でありうる。このような補助薬剤は、抗癌剤の有効性を増強し、または、低い血球数、好中球減少、貧血、過敏性反応、血小板減少、高カルシウム血症、粘膜炎、挫傷、出血、毒性(例えばロイコボリン)、疲労、痛み、嘔気、および嘔吐等、抗癌剤と関連する状態を防止または治療するために用いることができる。制吐剤(例えば5―HT受容体遮断薬またはベンゾジアゼピン)、抗炎症剤(例えば副腎皮質ステロイドまたは抗ヒスタミン剤)、および制酸剤(例えばH2受容体遮断薬)が、癌療法に対する患者の耐容性を増すために有用でありうる。H2受容体遮断薬の例には、ラニチジン、ファモチジンおよびシメチジンが含まれる。抗ヒスタミン剤の例には、ジフェンヒドラミン、クレマスチン、クロルフェニラミン、クロルフェナミン、マレイン酸ジメチンデン、およびプロメタジンが含まれる。ステロイドの例には、デキサメサゾン、ハイドロコーチゾン、およびプレドニソンが含まれる。他の薬剤には、赤血球産生を刺激するエポエチンアルファ(例えばProcrit(登録商標)、Epogen(登録商標))、好中球産生を刺激するG―CSF(顆粒球コロニー刺激因子;フィルグラスチム、例えばNeupogen(登録商標))、マクロファージを含むいくつかの白血球の産生を刺激するためのGM―CSF(顆粒球―マクロファージコロニー刺激因子)、および血小板の産生を刺激するためのIL―11(インターロイキン11、例えばNeumega(登録商標))等の成長因子が含まれる。
【0107】
ロイコボリン(例えば、ロイコボリンカルシウム、Roxane Laboratories,Inc.,Columbus,OH;フォリン酸、ホリナートカルシウム、シトロボラム因子とも呼ばれる)が、葉酸拮抗剤に対する解毒剤として使用でき、フルオロウラシル等、一定の薬物の活性も強化しうる。ロイコボリンカルシウムは、N―[4―[[(2―アミノ―5―ホルミル―1,4,5,6,7,8―ヘキサヒドロ―4―オキソ―6―プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]―L―グルタミン酸のカルシウム塩である。
【0108】
デキサメサゾン(例えば、Decadron(登録商標);Merck & Co.,Inc.,Whitehouse Station,NJ)は、薬剤過敏症等、アレルギー性反応を制御するための抗炎症剤として使用できる合成副腎皮質ステロイドである。経口投与のためのデキサメサゾン錠剤は、9―フルオロ―11―ベータ,17,21―トリヒドロキシ―16―アルファメチルプレグナ―1,4―ジエン―3,20―ジオンを含む。静脈内投与のためのリン酸デキサメサゾンには、9―フルオロ―11β,17―ジヒドロキシ―16α―メチル―21―(ホスホノオキシ)プレグナ―1,4―ジエン―3,20―ジオンジナトリウム塩が含まれる。ジフェンヒドラミン(例えばBenadryl(登録商標);Parkedale Pharmaceuticals,Inc.,Rochester,MI)は、アレルギー性反応の改善のために使用される抗ヒスタミン薬である。ジフェンヒドラミン塩酸塩(例えば注射用ジフェンヒドラミンHCl)は、2―(ジフェニルメトキシ)―N,N―ジメチルエチルアミンヒドロクロリドである。ラニチジン(例えばZantac(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)は、ヒスタミンH2受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減らすために用いることができる。塩酸ラニチジン(例えば錠剤または注射)は、N[2―[[[5―[(ジメチルアミノ)メチル]―2―フラニル]メチル]チオ]エチル]―N’―メチル―2―ニトロ―1,1―エテンジアミン,HClである。シメチジン(例えばTagamet(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)も、ヒスタミンH2受容体でのヒスタミンの競合阻害剤であり、胃酸を減らすために用いることができる。シメチジンは、N’’―シアノ―N―メチル―N’―[2―[[(5―メチル―1H―イミダゾール―4―イル)メチル]チオ]―エチル]―グアニジンである。アプレピタント(例えばEMEND(登録商標);Merck & Co.,Inc.)は、サブスタンスP/ニューロキニン1(NKl)受容体アンタゴニストおよび制吐薬である。アプレピタントは、5―[[(2R,3S)―2―[(1R)―1―[3,5―ビス(トリフロロメチル)フェニル]エトキシ]―3―(4―フルオロフェニル)―4―モルホリニル]メチル]―1,2―ジヒドロ―3H―1,2,4―トリアゾール―3―オンである。オンダンセトロン(例えばZofran(登録商標);GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)は、5―ΗT3セロトニン受容体の選択的遮断剤および制吐薬である。塩酸オンダンセトロン(例えば注射用)は、(±)1,2,3,9―テトラヒドロ―9―メチル―3―[(2―メチル―1H―イミダゾール―1―イル)メチル]―4H―カルバゾール―4―オン,モノヒドロクロリド,無水物である。ロラゼパム(例えばロラゼパム注射;Baxter Healthcare Corp.,Deerfield,IL)は、抗けいれん効果を有するベンゾジアゼピンである。ロラゼパムは、7―クロロ―5(2―クロロフェニル)―1,3―ジヒドロ―3―ヒドロキシ―2H―1,4―ベンゾジアゼピン―2―オンである。
【0109】
キット
本発明は、キットの形で共にパッケージされる、CLRMARKER―検出試薬、例えばCLRMARKER核酸の一部に対して相補的なオリゴヌクレオチド配列等、相同の核酸配列を有することにより一つ以上のCLRMARKER核酸を特異的に同定する核酸、またはCLRMARKER核酸によりコードされるタンパク質に対する抗体も含む。当業者は、本発明のキットにより、本明細書に開示される基準および対象の発現プロフィールを生成することができる。本発明のキットは、本開示において提供される任意の方法を実施するためにも、都合よく用いられうる。オリゴヌクレオチドは、CLRMARKER遺伝子のフラグメントでありうる。例えば、オリゴヌクレオチドは、長さが200、150、100、50、25、10、またはそれ以下のヌクレオチドでありうる。CLRMARKER―検出試薬は、とりわけ、抗体または抗体のフラグメント、およびアプタマーも含みうる。キットは、別々の容器に、核酸または抗体(既に固体マトリックスに結合されたもの、またはそれらをマトリックスに結合するための試薬と別々にパッケージされたもの)、コントロール製剤(陽性および/または陰性)、および/または検出可能な標識を含みうる。本発明の一つ以上のCLRMARKERを検出するアッセイを行うための指示(例えば書面、テープ、VCR、CD―ROM等)が、キットに含まれうる。アッセイは、例えば周知のノーザンブロットハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形でありうる。あるいは、キットは、周知のマイクロアレイの形でありうる。
【0110】
本明細書に記載の方法を行うための診断キットは、多数の方法で作成される。本発明のキットは、正常なグルコースレベルを有する対象から得られたコントロール(または基準)試料を含むのが好ましい。あるいは、キットは、結腸直腸癌を患うものと診断または同定されている対象から得られるコントロール試料を含みうる。一実施形態においては、診断用キットは、(a)固体担体に結合された抗体(例えばフィブリノーゲンαCドメインペプチド)と、(b)検出可能な基に結合された本発明の第二抗体とを含む。試薬は、緩衝剤およびタンパク質安定化剤等、例えば多糖等の付属薬剤も含みうる。診断キットは、必要に応じて、検出可能な基が属するシグナル生成システムの他の成分(例えば酵素基質)、テストにおけるバックグラウンド干渉を減らすための薬剤、コントロール試薬、テストを行うための装置等をさらに含みうる。あるいは、テストキットは、(a)本発明の抗体と、(b)検出可能な基に結合された抗体の特異的結合パートナーとを含む。テストキットは、典型的に単一の容器に全ての要素を伴って、テストを行うための印刷された指示書を必要に応じて伴って、任意の適切な様式でパッケージされうる。
【0111】
例えば、CLRMARKER検出試薬が、多孔性ストリップ等、固体マトリックス上に固定されて、少なくとも一つのCLRMARKER検出部位が形成されうる。多孔性ストリップの測定または検出領域は、核酸を含む複数の部位を含みうる。テストストリップは、陰性および/または陽性コントロールのための部位も含みうる。あるいは、コントロール部位は、テストストリップとは別のストリップ上にありうる。必要に応じて、異なる検出部位が、異なる量の固定された核酸を含めばよく、例えば第一検出部位に多い量を、後の部位には少ない量を含みうる。テスト試料の添加時には、検出可能シグナルを示す部位の数が、試料に存在するCLRMARKERの量についての量的指標を提供する。検出部位は、任意の適切な検出可能な形において構成されればよく、典型的にはテストストリップの幅にわたるバーまたはドットの形状である。
【0112】
あるいは、キットは、一つ以上の核酸配列を含む核酸基質アレイを含む。アレイ上の核酸は、CLRMARKER1〜51により表される一つ以上の核酸配列を特異的に同定する。様々な実施形態において、CLRMARKER1〜51のうち2、3,4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、またはそれ以上の発現が、アレイに対する結合により同定されうる。基質アレイは、例えば固形基質、例えば米国特許第5,744、305号に記載されるような「チップ」上にありうる。あるいは、基質アレイは、溶液アレイ、例えばxMAP(Luminex,Austin,TX)、Cyvera(Illumina,San Diego,CA)、CellCard(Vitra Bioscience,Mountain View,CA)およびQuantum Dots’Mosaic(Invitrogen,Carlsbad,CA)上にありうる。
【0113】
当業者は、表1のCLRMARKERの任意のものに対する抗体、核酸プローブ、例えばオリゴヌクレオチド、アプタマー、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドをルーチン的に作成できる。このような技術は、当業者に周知である。
【0114】
本発明の例示的実施形態
本発明の一実施形態は、RNeasy Protectミディキット(Qiagen,Valencia,CA)等、標準的な市販のキットを用いた全RNA抽出を含む。各RNA調製は、製造業者の指示により、DNaseIおよびプロテイナーゼK(Qiagen)処置も含みうる。全RNAの収率が、260nmol/Lの吸光度で決定されうる。RNAの完全性が、260/280nmol/Lの両比およびアガロースゲル電気泳動により評価されうる。
【0115】
本開示の別の実施形態においては、製造業者のバッファー中の4UのOmniscriptリバーストランスクリプターゼ(Qiagen)等の逆転写のための特異的酵素を含み、各dNTP0.5mmol/L等のoligoを含み、10UのRNアーゼ阻害剤(Promega,Madison,WI)等のRNAse阻害酵素を含み、1μmol/LのNVd(T)(5’―TTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN―3’;配列番号103)等のオリゴヌクレオチドを含む、20マイクロリットル(μl)の最終体積で、各試料からの1μgの全RNAがcDNAに逆転写されうる。反応は、37℃で最高12時間まで行われ、−20℃で将来の使用まで貯蔵されうる。
【0116】
本発明のさらに別の実施形態においては、Cyber―Green方法論を用いて、またはAmplifluor Universal Detectionシステム(Intergen,Purchase,NY)等、実時間定量PCR反応を達成するために多用される任意の他のシステムを用いて、実時間定量PCR反応が実行されうる。iCycler(Bio―Rad,Richmond,CA)等の定量サーモサイクラが使用されうる。PCRプライマは、例えば同じPCR条件において目的の遺伝子に対応する配列の177〜237bpを特異的に増幅するためにPrimer3ソフトウェア(http://www―genome.wi.mit.edu/genomesoftware/other/primer3.htmlで利用可能)を用いて、設計されうる。Amplifluor Universal Detectionシステムを使用する場合には、UniPrimerアニーリングに必要とされるZ―配列(ACTGAACCTGACCGTACA;配列番号104)を5’末端に含む追加的なフォワードプライマが、各目的の遺伝子のために用いられうる。Amplifluor Universal Detectionシステムキットを使用する場合には、「サンライズ」プライマ戦略が用いられうる。UniPrimerは、Z―配列の5’―末端でレポーター(FAM、6―カルボキシフルオレセイン等)、3’―末端でクエンチャー色素(DABSYL、4―(ジメチルアミン)アゾベンゼンスルホン酸等)により標識された、同じZ―配列を含む。
【0117】
本発明の別の実施形態においては、各100μlのPCR反応物が、1μlのcDNAまたはプラスミド、製造業者のバッファー中の5UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)、0.5μM/Lの各dNTP、2μlのプライマ混合物を含みうる、多重定量PCRの第一ラウンド。プライマ混合物は、固形腫瘍に関連した全ての目的遺伝子のためのフォワードおよびリバースプライマを各10μM/Lの最終濃度で含みうる。PCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するための95℃の15分の後、95℃での20秒の変性を15サイクル、60℃での20秒のアニーリング、および72℃での35秒の伸長を含みうる。72℃での10分間の伸長の最終ステップが、実行されうる。このPCRのラウンドは、前増幅と考えられるにとどまり、実時間PCRを伴わない。多重定量PCRの第二ラウンドでは、各50μlの実時間PCR反応物は、1μlの第一ラウンド多重定量PCR反応物、製造業者のバッファー中の2.5UのHot―StarTaq DNAポリメラーゼ(Qiagen)、0.5mmol/Lの各dNTP、0.02μmol/Lフォワードプライマ、および一つの遺伝子に0.2μmol/Lのリバースプライマ、および0.2μmol/L UniPrimerを含みうる。Cyber―Green方法論が使用される場合には、Uniprimerは使用されない。PCRプログラムは、ポリメラーゼを活性化するための95℃の15分の後、95℃での20秒の変性を15サイクル、60℃での20秒のアニーリング、および72℃での35秒の伸長を含みうる。10分間の72℃での最終伸長ステップが、実行されうる。
【0118】
開示の方法が定量的であるため、多様な細胞状態または細胞型の間の定量的レベルでの発現パターンの比較が達成されうる。一般に、任意の単離方法を用いて、末梢血等の標的試料から全RNAが単離されうる。そして、このRNAを用いて、任意の方法を使用して、例えば、プライマがメッセンジャーRNA(mRNA)に伴うポリA鎖および非ポリA鎖の間の接合部でアニールするように、全ての可能な組み合わせをカバーする特定の配列の短いストレッチに3’―末端で連結されたオリゴdTプライマである、ランダムプライマ、オリゴdTプライマまたはランダムオリゴ―dTプライマを使用して、第一鎖コピーDNA(cDNA)が生成されうる。そして、cDNAが、PCR反応におけるテンプレートとして使用されうる。このPCR反応は、モニタされる発現遺伝子に特異的な、癌に関係する遺伝子に関連した配列を有するプライマ対により実行される。この反応は、異なる癌に関係するプライマ対を所望されるだけ多く含みうるが、典型的には5〜100の間の異なるプライマ組を含み、各々が癌に関係する単一遺伝子または癌に関係する単一のアイソフォームに特異的である(5〜100の間の任意の特定の数を含む)。典型的には、全てのプライマが、等モル濃度で存在する。DNAが約80%または85%または90%または95%を超える倍加率で増幅するように多数のPCRサイクル、例えば15サイクルを実行した後、反応が止められる。典型的には、PCRの第一ラウンドでは、定量PCR(実時間PCR)が実行される場合には、増幅の閾値サイクルは達成されない。
【0119】
そして、PCR反応物が、(新たな)追加的PCRラウンドのため、新たな反応管に分割されうる。各チューブが、第一PCR混合物中に存在する全ての特異的プライマから合成された全ての産物を含む、前のPCR反応混合物の画分を含む。第一PCR混合物からの画分を含む第二PCR混合物には、典型的には、分子ビーコンに対応する配列を有するユニバーサルプライマに加えて、一つだけの特異的プライマ対または新しいプライマ対が加えられる。
【0120】
この第二PCRラウンドは、例えばユニプライマ(ユニバーサルプライマ)がDNA配列に結合する間の、反応物の各増幅サイクルにおけるクエンチャー配列からの蛍光の放出による蛍光の増加に依存する(例えば増幅プローブの一つの一部にハイブリダイズするプローブ)、定量実時間PCRプロトコルを用いて実行されうる。実時間定量PCRにおいて使用される蛍光アプローチは、典型的に、SYBRグリーン、FAM、フルオレセイン、HEX、TET、TAMRA等の蛍光レポーター色素と、DABSYL、Black Hole等のクエンチャーとに基づく。PCRの伸長段階の間にクエンチャーがプローブから分離されたときに、レポーターの蛍光が測定されうる。Molecular Beacons、Taqman Probes、Scorpion PrimersまたはSunrise Primersおよびその他のようなシステムが、実時間定量PCRを実行するためにこのアプローチを用いる。開示の方法において標準曲線が使用されうるが、C(t)を用いた分析等、標的の絶対的コピー数を導出する他の方法も使用できる。
【0121】
臨床的に、バイオマーカの有効性を評価するために重要な二つの規準は、感度および特異度である。臨床的に定義されるバイオマーカの感度とは、正しく診断される対象の割合をいう。臨床的文脈におけるバイオマーカの特異度は、疾患が治療可能な段階で検出される確率として定義される。理想的には、バイオマーカは、100%の臨床的選択性および100%の臨床的感度を有する。
【0122】
本発明の一実施形態は、固形腫瘍のための対象の管理に要求される感度が好ましくは70%以上であり、特異度が95%以上である末梢血代用バイオマーカ候補のプロフィールである。表1に示されるように、エントリ1〜51は、結腸直腸癌等の固形腫瘍のための末梢血代用バイオマーカのポリヌクレオチドコード配列候補であり、各目的の遺伝子産物についての名前、エントリナンバー、フォワードプライマ、リバースプライマおよびアンプリコンサイズを含む。
【0123】
蛍光強度は、各サイクルのアニーリングステップの間に、あるいは伸長ステップの間に、一般に測定されうる。各反応の閾値サイクル(CT)が、iCyclerソフトウェア(BioRad)を使用して分析されうる。全ての実時間PCR実験を三通りに実行でき、三通りの実験の平均CTが、全ての後の分析で使用される。酵素またはテンプレートを省いた反応が、陰性コントロールとして使用されねばならない。全ての反応物が、1%アガロースゲル電気泳動により分離されて、プロフィールにおける特定の遺伝子のPCR増幅が確認されうる。転写産物の量が、各標準曲線に照らして計算されうる。
【0124】
固形腫瘍のバイオマーカプロフィールを分析および使用するための、提唱される方法は、a)末梢血からRNAを抽出し、b)当該RNAをcDNAに逆転写し、c)当該バイオマーカのための等モル濃度のプライマを含むPCRの第一ラウンドを実行し、d)目的の各バイオマーカに特異的な第二定量PCRラウンドを実行し、e)(例えば)主成分分析(PCA)を用いて開示の組成物および方法から導出された統計データ分析を実行することである。
【0125】
一例としてであり、本発明のいかなる態様の制限も意図するものではないが、本発明の一つ以上のバイオマーカの存在の決定から導出されるデータを分析するために適用できる、他の組成物および方法である。
【0126】
例えば、本発明による方法により得られるデータを分析するために使用できる他の方法には、コピー数を評価するための、核酸技術で公知の任意の他の定量化方法を伴いうる。これには、特定の配列の増幅、オリゴヌクレオチドプローブ、相補的プローブによる標的遺伝子のハイブリダイゼーション、制限エンドヌクレアーゼによるフラグメンテーションおよび生じたフラグメント(多型)の研究、パルス磁場ゲル技術、等温の多置換増幅、ローリングサークル増幅または複製、イムノPCRなど、当業者に公知のものが挙げられるがこれに限定されない。
【0127】
固形腫瘍上のバイオマーカの分析のために使用できる他の方法は、任意の他の当分野で認められた結果の統計的分析、例えば遺伝子クラスタリング、データマイニングツール、および、公知技術で本明細書に開示される他のアルゴリズムまたは計算された指標に関わる。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
結直腸腺腫および癌腫の検出のためのデータ分析
統計的分析は、51種のRNAの定量に基づいた。種の取り扱い、分析および定量は、scqmRT―PCR法により実行され、校正曲線を用いてインプットRNAの標準化された質量あたりコピー数において転換された(参照により内容が全体として本明細書に組み込まれる、Therianos等、(2004)Am.J.Pathol.164(3):795―806、および国際出願PCT/US02/38806号を参照)。
【0129】
コントロール(CON)、炎症性腸疾患(IBD)、進行ポリープ/腺腫(POL)、および癌腫(CAR)と呼ばれる四つの試料のクラス(生物学的状態)があり、それらは結腸直腸癌のステージI〜IIである。表1は、四つの生物学的状態のクラスの各々から得られた試料数を示す。
【表1A】
特に、以下のペアワイズのクラス識別問題が注目される:
【表2A】
バイオ統計方法―データ前処理および分類
コピー数データ「x」が、y=log(1+x)として定義される対数量測定値に転換された。このアルゴリズムが、本明細書に論議される分析の全体にわたって用いられた。分類のために、関連試料組、例えば交差検定ループにおける現在の訓練列の、中央値の減算および四分位間範囲(IQR)による割算により、「y」が標準化される。
【0130】
ここで使用される分類器は、John Tukey,(1993)Controlled Clinical Trialsに記載され、Richard Simons研究によりマイクロアレイ分野において一般に広められた複合共変量予測因子(CCP)の変化形である。これは、重み付き平均対数発現レベルに基づき、重みは、例えば調査されるクラス間のt―統計量の値でありうる。この分類器は、独立性の仮定が強くほぼ常に誤りであるために文献中で「単純分類器」とも呼ばれる独立特徴モデルに基づく。このようなモデルの利点は、訓練に利用可能な試料のサイズが小さく、変数間の関係の適切な予測に不十分であるときに、過剰適合が生じにくく、したがって検定の失敗が生じにくいことである。非単純モデルのミスパラメータ化は、検定の失敗につながる。分類機能は、分類器に含まれる遺伝子に対する重み付き平均による試料のスコアリングに基づく。標準化された対数量測定値が、遺伝子選択および試料スコアリングに使用される。特徴選択は、標準化後の中央値の絶対差によりトップにランクされる遺伝子を採用する。重みは、中央値の(符号付)差に比例する。交差検定においては、各ループにおける複数の遺伝子のスコアが、試料の現在の訓練列の、中央値の減算および四分位間範囲(IQR)による割算により、再標準化される。
【0131】
一次統計エンドポイント、ROC曲線下面積として、AUCにより識別能力が定量化される。ランダム分類器は、y=xの直線周辺で確率的に変動する曲線、および0.5の予測AUCを有する。あるいは、感度および特異度の等価のプロットが、これら二つの量を読み取るほうが容易でありうる場合には、ここで描かれる。Jiang,Varma and Simon,2008のバイアスを低減したブートストラップケース交差検定(BR―BCCV)法により、AUCの信頼区間が計算される。
【0132】
結果―単一遺伝子のクラス識別能力
図1A〜1Eに、可能なカットオフにわたる、トップの遺伝子の感度および特異度をプロットした。51の遺伝子中最も性能の良いものを選択したため、性能推定が正にバイアスされ、このデータ組においてこの問題につき一つの単一マーカにより達成されうる、識別の上限を表す。それは、AUCの値と感度および特異度の値との関係も示す。AUCは、全ての可能なカットオフにわたる識別平均の測定値であり、明確に定義される。感度および特異度の間には、カットオフに依存するトレードオフがあり、さらなる定義付けおよびROC曲線上の一点だけへの集中を伴わずにそれらの値が一意的に決定されることがない。交差検定が、よりバイアスされないクラス識別性能の推定のために用いられる。試料に対するブートストラッピングにより、これらの単一遺伝子予測子の性能指標に対する信頼区間がここで推定されうる。表3は、CON対POLおよびCARの比較を表し、AUCによるトップ20性能遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、ファミリーごとの修正のためのHochberg法により決定される調整されたp値、およびBenjamini―Hochberg法により決定される偽発見率を表す。図2は、群CON対POLおよびCARにおけるCLRMARKER、ESM1のレベルを測定するROC曲線のグラフ表示である。
【0133】
表3:AUCにより計算されるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。
【表3】
表4:CON対POL;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。図3は、群CON対POLの間のESM1のROC曲線を示す。
【表4】
表5:CON対CAR;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。図4は、CLRMARKER CK20のROC曲線を示す。
【表5】
表6:CONおよびIBD対CAR;AUCによるトップ20遺伝子、二群間の中央値の等価性についてのWilcoxon検定からの生のp値、調整されたp値(ファミリーごとの修正のためのHochberg法)、および偽発見率(Benjamini―Hochberg法による)。
【表6】
遺伝子およびAUCの最適選択
利用可能なデータにより期待できる予測性能の推定を試みた。単一遺伝子分析と比較して、予測因子に用いられる特徴が、結果を知る前に選択されねばならない。1個抜き(LOO)交差検定(CV)を用いてこの状況がシミュレートされる。
【0134】
次に、データから各試料をとり、除外された試料に関する一切の情報を全く用いない分類器(スコアリング機能)を自動的に構築した。そして、スコアリング機能が残された試料に適用された。これが各試料につき繰り返されて、完全なスコア組が生成された。そして、このスコア組につき分類性能が計算された。各試料が、異なる遺伝子組を用いうる新たに構築された(したがって異なる)分類器によりスコアリングされる。方法は、完全なデータ組に基づいて固有の分類器を生成することにより、新たなデータに期待されうる性能の不偏推定を提供する。それは、分類器の性能試験に同様に使用される試料の情報に基づいて、分類器の特徴が選択されるときに存在するバイアスを修正する。
【0135】
分類アルゴリズムの具体的選択によるLOOCVの結果が、図13〜16にグラフの形で提示される。
【0136】
一つのパラメータだけを変動させることにより、分類器により用いられるモデルの数および遺伝子の数がテストされた。この数Fは、各LOOCVの実施において固定されたが、複数の遺伝子からの情報を用いることにより識別が改善できるかを決定するために、異なる数が用いられた。選択された遺伝子は、ランキングがFではなく訓練列のみに依存し、したがってFの異なるモデルが正に相関する、ランキング統計によるトップ―nである。Fに対する性能のばらつきは、異なる遺伝子数のモデル間の差を表すが、モデリングにおける機会のばらつきおよび不安定性のソースも表す。多重度は限られたままであり、次のステップのための最善の性能のFの選択は、評価可能な量のバイアスを導入すると期待されなかった。10〜25の間の遺伝子数のモデルでは、感度および特異度のプロットが加えられた。例えば、図13〜16を参照。
【0137】
表7は、本明細書および図13〜16に記載される分析から得られた、LOOCVにより推定されるAUC値のまとめである。
【表7】
本発明をその詳細な説明とともに記載したが、以上の記載は、添付の請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限することではなく、例示することを意図するものである。他の態様、利点、および変更は、本開示の範囲内である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の結腸直腸癌を診断または同定する方法であって、
a.前記対象からの試料における、一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;
b.前記量を基準値と比較するステップであり、前記基準値に対する前記一つ以上のCLRMARKERの量の増加または減少が、前記対象が結腸直腸癌を患うことを示す、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記基準値が、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定された対象から導出される値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、結腸直腸癌を有すると過去に診断されている者、結腸直腸癌を有すると過去に診断されていない者、または前記結腸直腸癌につき無症状である者を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象における結腸直腸癌の進行をモニタリングする方法であって、
a.第一期間に、前記対象からの第一試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;
b.第二期間に、前記対象からの第二試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;
c.ステップ(a)において検出される前記一つ以上のCLRMARKERの前記量を、ステップ(b)で検出される量または基準値と、比較するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
前記モニタリングが、結腸直腸癌を発症するリスクの変化を評価するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、結腸直腸癌の治療を過去に受けている者、結腸直腸癌の治療を過去に受けていない者、または、結腸直腸癌を患っていると過去に診断も同定もされていない者を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第一試料が、結腸直腸癌の治療を受ける前に、前記対象から採取される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第二試料が、結腸直腸癌の治療を受けた後に、前記対象から採取される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記モニタリングが、前記対象のための治療レジメンを選択するステップ、および/または結腸直腸癌のための治療レジメンの有効性をモニタリングするステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記結腸直腸癌の治療が、外科的介入、結腸直腸癌調節剤、またはその組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基準値が、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定される対象から導出される値を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
結腸直腸癌を患っていると診断または同定された対象を治療するための方法であって:
a.第一期間に、前記対象からの第一試料中に存在する一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;
b.前記一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の量が、結腸直腸癌を発症するリスクが低い一つ以上の対象において測定される基準値、または、一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果として結腸直腸癌リスク因子に改善を示す一つ以上の対象において測定される基準値に戻るまで、前記対象を前記一つ以上の結腸直腸癌調節剤で治療するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
前記一つ以上の結直腸調節剤が、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果としての結腸直腸癌リスク因子の改善が、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少、またはその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
一つ以上のCLRMARKERを検出するCLRMARKER検出試薬と、正常コントロールレベルを有する対象由来の試料と、必要に応じて、請求項1、4、および12のいずれか一つに記載の方法において前記試薬を使用するための指示とを含む、キット。
【請求項16】
前記検出試薬が、一つ以上の抗体またはそのフラグメント、一つ以上のアプタマー、一つ以上のオリゴヌクレオチド、またはその組み合わせをさらに含む、請求項15に記載のキット。
【請求項1】
対象の結腸直腸癌を診断または同定する方法であって、
a.前記対象からの試料における、一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;
b.前記量を基準値と比較するステップであり、前記基準値に対する前記一つ以上のCLRMARKERの量の増加または減少が、前記対象が結腸直腸癌を患うことを示す、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記基準値が、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定された対象から導出される値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、結腸直腸癌を有すると過去に診断されている者、結腸直腸癌を有すると過去に診断されていない者、または前記結腸直腸癌につき無症状である者を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
対象における結腸直腸癌の進行をモニタリングする方法であって、
a.第一期間に、前記対象からの第一試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;
b.第二期間に、前記対象からの第二試料における一つ以上のCLRMARKERの有効な量を測定するステップと;
c.ステップ(a)において検出される前記一つ以上のCLRMARKERの前記量を、ステップ(b)で検出される量または基準値と、比較するステップ
を含む、方法。
【請求項5】
前記モニタリングが、結腸直腸癌を発症するリスクの変化を評価するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、結腸直腸癌の治療を過去に受けている者、結腸直腸癌の治療を過去に受けていない者、または、結腸直腸癌を患っていると過去に診断も同定もされていない者を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第一試料が、結腸直腸癌の治療を受ける前に、前記対象から採取される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第二試料が、結腸直腸癌の治療を受けた後に、前記対象から採取される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記モニタリングが、前記対象のための治療レジメンを選択するステップ、および/または結腸直腸癌のための治療レジメンの有効性をモニタリングするステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記結腸直腸癌の治療が、外科的介入、結腸直腸癌調節剤、またはその組み合わせを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基準値が、指標値、一つ以上の結腸直腸癌リスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される値、結腸直腸癌を患っていない対象から導出される値、または、結腸直腸癌を患っていると診断または同定される対象から導出される値を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
結腸直腸癌を患っていると診断または同定された対象を治療するための方法であって:
a.第一期間に、前記対象からの第一試料中に存在する一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の有効な量を測定するステップと;
b.前記一つ以上のCLRMARKERまたはその代謝産物の量が、結腸直腸癌を発症するリスクが低い一つ以上の対象において測定される基準値、または、一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果として結腸直腸癌リスク因子に改善を示す一つ以上の対象において測定される基準値に戻るまで、前記対象を前記一つ以上の結腸直腸癌調節剤で治療するステップ
を含む、方法。
【請求項13】
前記一つ以上の結直腸調節剤が、アルキル化剤、抗生物質、抗代謝剤、ホルモン剤、植物由来薬剤、レチノイド剤、チロシンキナーゼ阻害剤、生物学的因子、遺伝子治療剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、他の抗癌剤、またはその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一つ以上の結腸直腸癌調節剤による治療の結果としての結腸直腸癌リスク因子の改善が、ポリープ形成の減少、ポリープサイズの減少、ポリープ数の減少、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および/またはクローン病の症状の減少、またはその組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
一つ以上のCLRMARKERを検出するCLRMARKER検出試薬と、正常コントロールレベルを有する対象由来の試料と、必要に応じて、請求項1、4、および12のいずれか一つに記載の方法において前記試薬を使用するための指示とを含む、キット。
【請求項16】
前記検出試薬が、一つ以上の抗体またはそのフラグメント、一つ以上のアプタマー、一つ以上のオリゴヌクレオチド、またはその組み合わせをさらに含む、請求項15に記載のキット。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2011−517765(P2011−517765A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510915(P2010−510915)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003175
【国際公開番号】WO2009/037572
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509333782)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003175
【国際公開番号】WO2009/037572
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509333782)
【Fターム(参考)】
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