説明

絞り装置、光学装置、および撮像装置

【課題】汎用性の高い絞り装置、光学装置、および撮像装置を提供すること。
【解決手段】光路における光軸C上に光が通過する絞り開口を形成する複数の絞り羽根202,203を、複数の絞り羽根202,203が光路を横切る方向に移動させることによって絞り開口の開口径を調節することにより光路を通過する光量を調節する絞り装置120であって、絞り開口における最大光量を規定する最大開口204aを備える開口径制限板204を、光軸に交差する方向に移動可能に支持するレール部材209と、レール部材209の一端側に設けられて光路と外部とを連通させるスリット215とを設けて、光路に対して開口径制限板204を脱着自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、絞り装置、光学装置、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、光学装置において光が通過する絞り開口を複数枚の絞り羽根を用いて形成し、これらの絞り羽根を動かして絞り開口の大きさを調節することにより光路を通過する光量を調節する絞り装置があった。絞り装置は、光量調節をおこなわないときの開口径、いわゆる最大開口時の開放径(以下、「最大開口径」という)を、当該最大開口径の開口が形成された板状部材などを用いて規定するものが一般的であった。
【0003】
このような絞り装置においては、最大開口径を変更する場合、絞り装置およびその周辺の機構を分解して、上記板状部材を元の開口とは異なる大きさの開口が形成された別の板状部材に取り換えたり、上記板状部材に元の開口よりも小径の開口が設けられたマスクを貼り付けたりする必要があった。また、別の板状部材やマスクは、たとえばF値などに応じて複数種類を使い分ける必要があった。
【0004】
また、板状部材などを用いて最大開口径を規定する絞り装置においては、開口径の異なる3種類の開口を有する遮光幕を光軸に直交する方向に移動可能とし、所望する最大開口径に応じて遮光幕を移動させるようにした従来技術が存在する(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−38886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、最大開口径を変更するためには絞り装置およびその周辺の機構を分解して上記固定板あるいはマスクを交換するという煩雑な作業をおこなわなくてはならないという問題があった。また、上述した従来の技術では、たとえばF値が異なる光学装置を製造する場合、開口径のみが異なる絞り装置を複数種類製造し管理しなくてはならず、部品管理および製品管理が煩雑になるという問題があった。
【0007】
また、マスクを貼り付ける場合、たとえば監視カメラのように周囲の温度変化や加えられる振動が激しいなど厳しい環境下で使用されると、マスクの貼り付けに用いた接着剤が劣化するなどして貼り付け力が低下し、マスクが剥がれて光路に干渉したり剥がれたマスクが周囲の光学部材を傷つけたり、撮影した画像に影響を及ぼすという問題点が考えられる。
【0008】
また、上述した特許文献1に記載された技術では、遮光幕を移動させるための駆動手段を設けることにより絞り装置が大型化しコストが増加するという問題があった。さらに、上述した特許文献1に記載された技術であっても、遮光幕に設けることができる開口の数には限りがあり、利用者からの複数のニーズに対応しきれないという問題があった。
【0009】
この発明は、部品管理および製品管理にかかる負担を増大させることなく、複数の最大開口径を容易に設定でき、汎用性を向上させることができる絞り装置、光学装置、および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる絞り装置は、光路を通過する光量を調節する絞り装置であって、前記光路における光軸上に光が通過する絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、前記複数の絞り羽根が前記光路を横切る方向に当該複数の絞り羽根を移動させることにより前記絞り開口の開口径を調節する開口径調節手段と、前記開口径調節手段によって開口径が調節される絞り開口における最大光量を規定する最大開口を備える絞り固定部材と、前記絞り固定部材を前記光軸に交差する方向に着脱可能に支持する支持部材と、を備えることを特徴とする。この発明によれば、絞り固定部材のみを、支持部材から着脱することができる。
【0011】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記支持部材が、前記絞り固定部材を前記絞り羽根の移動方向と同方向に移動可能に支持することを特徴とする。この発明によれば、絞り固定部材と絞り羽根とを各々異なる方向に移動させる場合と比較して絞り固定部材を移動させる機構および絞り羽根を移動させる機構が占める体積を抑えることができる。
【0012】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記支持部材が、前記絞り固定部材を前記光軸方向における前記複数の絞り羽根の間に位置づけることを特徴とする。この発明によれば、絞り開口と最大開口とを近付けることができる。
【0013】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記絞り開口の開口径が所定の最小開口径以上となるように前記開口径調節手段による前記複数の絞り羽根の移動量を規制する規制手段を備えることを特徴とする。この発明によれば、絞り開口を常時開口させておくことができる。
【0014】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記規制手段が、前記複数の絞り羽根の少なくとも一つの絞り羽根の移動軌跡に干渉する位置に配置された部材であることを特徴とする。この発明によれば、電源の供給の有無に拘わらず、絞り開口を常時開口させておくことができる。
【0015】
また、この発明にかかる絞り装置は、上記の発明において、前記規制手段が、前記絞り固定部材に備えられていることを特徴とする。この発明によれば、複数の絞り羽根の移動量の規制と、絞り開口における最大光量の規定と、を一部材で実現することができる。
【0016】
また、この発明にかかる光学装置は、光が通過する光路上に設けられた一または複数の光学部材と、前記一または複数の光学部材の中の任意の光学部材を通過する光量を調節する上記の絞り装置と、を備えることを特徴とする。この発明によれば、開口径に拘わらず、光学設計上適した位置において光量調節をおこなうことができる。
【0017】
また、この発明にかかる撮像装置は、上記の光学装置を備えることを特徴とする。この発明によれば、開口径に拘わらず最適な露出に調整することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明にかかる絞り装置、光学装置、および撮像装置によれば、構造の複雑化や部品点数の増加をともなうことなく絞り固定部材のみを交換することができるので、部品管理および製品管理にかかる負担を増大させることなく、複数の最大開口径を容易に設定することができる。
【0019】
また、この発明にかかる絞り装置、光学装置、および撮像装置によれば、開口径による光量調節位置のずれを低減し、ゴーストやフレアの発生を防止することができ、これによって光学設計上最適な位置において光量調節をおこなうことが可能な絞り装置、光学装置、および撮像装置が得られるという効果を奏する。
【0020】
すなわち、この発明にかかる絞り装置、光学装置、および撮像装置によれば、部品管理および製品管理にかかる負担を増大させることなく、複数の最大開口径を容易に設定でき、汎用性を向上させるとともに、光学設計上最適な位置において光量調節をおこなうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる絞り装置、光学装置、および撮像装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。実施の形態においては、この発明にかかる絞り装置を備える光学装置について説明する。この発明にかかる絞り装置を備える光学装置は、画像を撮像する撮像装置に取り付けて使用するレンズ装置への適用例である。
【0022】
公知の技術であるため図示を省略するが、撮像装置は、入射した外光を光電変換する撮像素子を備えている。具体的に、撮像素子は、たとえば、カラーあるいはモノクロのCCDなどによって実現される。また、撮像装置は、撮像素子が光電変換することで生成された電気信号に基づいて画像データを生成する画像処理回路や、画像処理回路が生成した画像データを記録する記録部、撮像装置が備える各部を駆動制御する制御部などを備えている。画像処理回路が生成した画像データは、記録部に記録するものに限らず、たとえば、通信網を介して外部装置に送信するようにしてもよい。
【0023】
なお、撮像装置は、撮像素子に代えてフィルムを用いて、銀板方式を利用して撮像するものであってもよい。また撮像装置は、静止画を撮像するものに限らず、ビデオカメラなどのように動画を撮像するものであってもよい。
【0024】
(実施の形態1)
(レンズ装置の構成)
図1は、本実施の形態1のレンズ装置を示す断面図である。図1には、この発明にかかる本実施の形態1のレンズ装置を、レンズ装置の光軸(図1における符号Cを参照)を含む面に沿って切断した断面が示されている。図1に示したように、この発明にかかる本実施の形態1のレンズ装置100は、略円筒形状の鏡筒101を備えている。
【0025】
鏡筒101は、撮影対象側に位置づけられた主鏡筒102と、撮像装置に取り付けられる側となる副鏡筒103と、を備えている。主鏡筒102および副鏡筒103は、たとえば、プラスチック、金属、あるいは合金などを用いて形成されている。
【0026】
主鏡筒102の内部には、フォーカシングを司る第1のレンズ群104が設けられている。第1のレンズ群104は、第1のレンズ枠105によって保持されている。第1のレンズ枠105は、略環形状を有しており、その外径は光軸周りにおいて主鏡筒102の内径よりも小さい。
【0027】
第1のレンズ枠105において、主鏡筒102の内周面に対向する位置にはカムピン106が設けられている。カムピン106は、光軸を中心とする同心円上において等間隔に位置する複数箇所(たとえば3カ所)に設けられている。主鏡筒102においてカムピン106に対応する位置には、半径方向に主鏡筒102を貫通し、光軸方向を長手方向とする直進溝107が形成されている。カムピン106は、それぞれ対応する直進溝107内に挿入され、挿入された直進溝107内でスライド自在とされている。
【0028】
主鏡筒102の外周側には、フォーカスリング108が設けられている。フォーカスリング108は、主鏡筒102に対して相対的に回転自在である。フォーカスリング108の内周面には、たとえば光軸を軸心とする螺旋状など、光軸に対して傾斜する方向を長手方向とする溝(以下、「カム溝」という)108aが設けられている。カム溝108aには、主鏡筒102の半径方向に主鏡筒102を貫通し、上述した直進溝107を介してカムピン106が挿入されている。
【0029】
フォーカスリング108が光軸周りに回転すると、カムピン106に対しては、フォーカスリング108の回転方向に応じた方向にカムピン106を回転させる力が作用する。カムピン106は、直進溝107に挿入されていることから回転方向への移動が規制されるため、フォーカスリング108の回転にともなってカム溝108aに対する位置を変化させながら直進溝107に沿って光軸方向に移動する。このように、第1のレンズ枠105および第1のレンズ群104は、主鏡筒102に対して光軸方向に移動可能とされている。
【0030】
レンズ装置100においては、フォーカスリング108の回転にともなって第1のレンズ枠105および第1のレンズ群104を光軸方向に移動させることによりフォーカシングをおこなうことができる。
【0031】
フォーカスリング108には、フォーカスリング108の半径方向にフォーカスリング108を貫通するビス孔109が設けられている。ビス孔109には、フォーカスリング108の半径方向を軸心方向とするビス110が螺合されている。ビス孔109に対してビス110を締め込むと、ビス110の先端が主鏡筒102の外表面に当接する。ビス110の先端を主鏡筒102の外表面に当接させることで、ビス110の先端と主鏡筒102の外表面との間には摩擦力が作用する。レンズ装置100においてはこの摩擦力によってフォーカスリング108の回転をロックすることができる。
【0032】
副鏡筒103の内部には、リレーレンズまたは結像レンズとして機能する第2のレンズ群111が設けられている。第2のレンズ群111は、第1のレンズ群104を通過した光をそのままの大きさ、または拡大縮小して、上述した撮像装置に出射する。第2のレンズ群111は、第2のレンズ枠112によって保持されている。
【0033】
第2のレンズ枠112は、略環形状を有しており、その外径は光軸周りにおいて副鏡筒103の内径よりも小さい。第2のレンズ枠112において、副鏡筒103に対向する位置にはカムピン113が設けられている。カムピン113は、光軸を中心とする同心円上において等間隔に位置する複数箇所(たとえば3カ所)に設けられている。
【0034】
副鏡筒103においてカムピン113に対応する位置には、半径方向に副鏡筒103を貫通し、光軸方向を長手方向とする直進溝114が形成されている。カムピン113は、それぞれ対応する直進溝114内に挿入され、挿入された直進溝114内でスライド自在とされている。
【0035】
副鏡筒103の外周側には、光軸を軸心とする略円筒形状のズームリング115が設けられている。ズームリング115の内周面には、たとえば光軸を軸心とする螺旋状など、光軸に対して傾斜する方向を長手方向とする溝(以下、「カム溝」という)116が設けられている。カム溝116には、上述した直進溝114を介してカムピン113が挿入されている。
【0036】
ズームリング115の外周側には、略円筒形状のカバーリング117が設けられている。カバーリング117は、鏡筒101に一体的に取り付けられている。カバーリング117には、カバーリング117の半径方向にカバーリング117を貫通し、たとえば光軸を軸心とする螺旋状など光軸に対して傾斜する方向を長手方向とするスリット118が設けられている。
【0037】
ズームリング115には、スリット118を介して挿入され、カバーリング117の半径方向を軸心方向とするビス119が螺合されている。ズームリング115は、スリット118に沿ってビス119を光軸周りに移動させることによって光軸周りに回転する。
【0038】
ズームリング115が回転すると、ズームリング115の回転方向に応じた方向にカムピン113を回転させる力が発生するが、カムピン113は直進溝114に挿入されていることから回転方向への移動が規制されている。これにより、カムピン113はズームリング115の回転にともなってカム溝116に対する位置を変化させながら直進溝114に沿って光軸方向に移動する。
【0039】
レンズ装置100においては、ズームリング115の回転にともなって第2のレンズ枠112および第2のレンズ群111を光軸方向に移動させることにより第2のレンズ群111によるズーミング調整をおこなうことができる。
【0040】
ズームリング115に螺合されたビス119を締め込むと、ビス119の先端が副鏡筒103の外表面に当接する。ビス119の先端を副鏡筒103の外表面に当接させることで、ビス119の先端と副鏡筒103の外表面との間には摩擦力が作用する。レンズ装置100においてはこの摩擦力によってズームリング115の回転をロックすることができる。
【0041】
主鏡筒102と副鏡筒103との間には、絞りユニット120が設けられている。絞りユニット120は、主鏡筒102側から副鏡筒103側へ入射する光量を調整する。本実施の形態1においては、絞りユニット120によって絞り装置を実現することができる。
【0042】
(絞りユニットの構成)
図2は、絞りユニット120を示す分解斜視図である。図2に示したように、絞りユニット120は、絞りユニット基板201、絞り羽根202,203、および開口径制限板204を備えている。絞りユニット120が備える各部は、レンズ装置100における光路を通過する光の方向において、絞りユニット基板201、絞り羽根202、開口径制限板204、絞り羽根203の順に配列されている。
【0043】
絞りユニット基板201は、開口205と動力発生部206とを備えている。開口205は、第1のレンズ群104を通過した光を第2のレンズ群111へ向けて通過させる。図示を省略するが動力発生部206は、モータおよびモータを駆動する事によって発生する電流を検出するガルバノメータを備えている。ガルバノメータ(検流計)は高感度の電流計であり、動力発生部206はガルバノメータによって検出される電流量に基づいて、モータから発生する駆動力を調整する。
【0044】
また動力発生部206は、モータの回転にともなってモータの軸心を中心とする円周上を移動する動力伝達用の突起207,208を備えている。突起207,208は、モータの軸心と同じ方向(レンズ装置100における光路を通過する光の方向)を軸心方向とし、絞り羽根202側へ向けて突出している。
【0045】
絞りユニット基板201には、開口径制限板204を支持するレール部材209が設けられている。図2中図示を一部省略しているが、レール部材209は、開口205を間にして開口径制限板204の両側方となる位置において対をなすように設けられている。図2に示されているレール部材209は、対をなすレール部材209のうちの一方を示している。本実施の形態1においては、レール部材209によって支持部材を実現することができる。
【0046】
絞り羽根202,203は、板形状を有しており、絞りユニット基板201に支持されている。絞り羽根202,203は、それぞれレンズ装置100における光路を横切る方向に移動(スライド)自在に設けられている。本実施の形態1における絞り羽根202,203は、光軸に直交する方向に移動(スライド)自在に設けられている。上述したレール部材209は、絞り羽根202,203のスライド位置を案内する。
【0047】
絞り羽根202,203には、上述したガルバノメータに連結される連結片211,212が設けられている。各連結片211,212には、ガルバノメータにおける突起207,208の突出方向と同じ方向(絞り羽根202,203の板厚方向)に各絞り羽根202,203を貫通する連結用の長孔213,214が設けられている。上述した動力発生部206と絞り羽根202,203とは、各連結片211,212における長孔213,214の中に対応する突起207,208を挿入することによって連結される。
【0048】
長孔213,214は、絞り羽根202,203の移動方向に直交する方向を長手方向としている。動力発生部206における突起207,208は、モータの回転にともなって長孔213,214内をスライドする。これにより動力発生部206が発生した回転方向の力を絞り羽根202,203の移動(スライド)方向に応じた直進方向の力に変えて、絞り羽根202,203を図3における上下方向に移動(スライド)させることができる。
【0049】
突起207,208および長孔213,214を介して絞り羽根202,203と動力発生部206とを連結することにより、絞り羽根202,203は、光軸(図1における符号Cを参照)を間にして相反する方向に移動(スライド)自在とされる。たとえば、絞り羽根202が図3における上方向に移動(スライド)した場合、絞り羽根203は図3における下方向に移動(スライド)する。また、たとえば、絞り羽根202が図3における下方向に移動(スライド)した場合、絞り羽根203は図3における上方向に移動(スライド)する。
【0050】
絞り羽根202には、レンズ装置100に入射した光の通過方向に絞り羽根202を切り欠いた切り欠き202aが設けられている。絞り羽根203には、レンズ装置100に入射した光の通過方向に絞り羽根203を貫通する開口203aが設けられている。絞り羽根202,203は、開口203aの一部を絞り羽根202aによって遮ることにより、レンズ装置100において第1のレンズ群104から第2のレンズ群111へ至る光路に入射した光が通過する絞り開口を形成する。
【0051】
絞り開口の開口径は、絞り羽根202,203が相反する方向に移動(スライド)することによって変化する。絞り開口の開口径は、絞り羽根202,203が互いに接近する方向に移動(スライド)した場合に小さくなり、絞り羽根202,203が互いに離反する方向に移動(スライド)した場合に大きくなる。
【0052】
本実施の形態1においては、絞りユニット120、絞り羽根202,203などによって開口径調節手段を実現することができる。絞り羽根202,203は、絞り開口の開口径が、絞りユニット120を通過する光量が最小となる最小開口径以上となるような範囲を移動する。
【0053】
絞り開口の最小開口径は、レンズ装置100における光路を通過する光が完全に遮断されないように絞り開口を常時開口させるように設定されており、たとえば上述した撮像素子における露出が常時所定光量以上となるように絞り開口を常時開口させる寸法に設定されている。最小開口径は、たとえば絞り開口の開口径が最小開口径よりも小さくなる方向へのモータの回転を規制することによって規定することができる。
【0054】
最小開口径の具体的な寸法は、たとえば撮像素子のISO感度などに応じて設定される。絞り開口の最小開口径を上記のように設定することにより、絞りユニット120を駆動するための電源がOFFになり、絞り開口が閉塞する方向に絞り羽根202,203が移動した場合にも絞り開口が全閉状態となることを防止できる。
【0055】
これによって、撮像素子の露出量を常に確保することができ、たとえば動力発生部206への電力供給が遮断された場合にも、撮像装置による撮像を継続することができる。これにより、本実施の形態1の撮像装置を監視カメラなどに適用し、監視カメラによって監視される施設内への不正な侵入者によって動力発生部206への電力供給が断たれた場合にも、当該監視カメラによる監視を継続しておこなうことができる。
【0056】
開口径制限板204には、最大開口204aが設けられている。最大開口204aは、絞り開口を通過する最大の光量を制限する。本実施の形態1においては、開口径制限板204によって絞り固定部材を実現することができる。最大開口204aは、上述した絞り開口が取り得る最大の開口の開口径(最大開口径)よりも小さい。
【0057】
本実施の形態1においては、開口径制限板204が絞り羽根201と絞り羽根202との間に設けられていることから、最大開口204aは、光軸方向において絞り羽根201と絞り羽根202との間に形成されている。
【0058】
上述したレール部材209には、光軸(図2において符号Cを参照)に直交する方向を長手方向とする凹部210が設けられている。開口径制限板204は、凹部210に沿ってスライド自在とされている。これにより、本実施の形態1における開口径制限板204は、光軸(図2において符号Cを参照)に直交する方向に移動(スライド)自在とされている。
【0059】
上述した絞りユニット基板201には、レール部材209の一端側に設けられて、光路と外部とを連通させるスリット215が設けられている。スリット215は、レール部材209に沿った開口径制限板204の移動(スライド)にともなって、光路に対する開口径制限板204の出し入れを許容する、開口径制限板204の着脱用の開口部として機能する。
【0060】
図3は、絞りユニット120を示す斜視図である。図3は、組み立てた状態の絞りユニット120を、図2におけるY軸方向に沿って図2における左手前側から見た状態を示している。図3において、絞りユニット120における開口径制限板204は、レール部材209に沿って移動(スライド)することにより、スリット215を介して絞りユニット基板201に対して自在に脱着することができる。開口径制限板204は、図3におけるZ軸に平行な矢印A方向に移動(スライド)する。
【0061】
絞りユニット基板201に対する開口径制限板204の脱着は、スリット215を介しておこなわれる。このため、絞りユニット基板201はスリット215を介して内側と外側とが連通された状態となるが、開口径制限板204が絞りユニット基板201に取り付けられている状態では、スリット215は開口径制限板204によって閉塞されている。
【0062】
すなわちレール部材209は、光路中に位置づけられている開口径制限板204によってスリット215を閉塞するように開口径制限板204を支持している。これによって絞りユニット基板201の内側に埃などの異物が侵入することを防止することができ、光路上に存在する異物によって光の伝達に支障を来すなどして光学性能が低下することを防止できる。
【0063】
開口径制限板204は、スリット215を介して絞りユニット基板201の最も奥まで挿入された状態において、絞り開口を通過する最大光量を制限する。絞り開口を通過する最大光量は、絞り開口の開口径に拘わらず開口径制限板204の開口径によって規定される。
【0064】
また、絞り開口を通過する最大光量以外の光量は、絞り羽根202,203の位置によって決定される絞り開口の開口径によって規定される。開口径制限板204は、絞り羽根202,203が形成する絞り開口による光量調節位置と重複する位置において絞り開口の近傍で最大光量を規定することができる。
【0065】
絞り開口は最小開口径に設定されている場合にも、レンズ装置100における光路を通過する光は完全に遮断されるものではない。最小開口径は、たとえば上述した撮像素子における露出が常時所定光量以上となるように絞り開口を常時開口させる寸法に設定されている。
【0066】
上述したように、本実施の形態1によれば、絞りユニット120を分解したりすることなく、開口制限板204に対するメンテナンスや開口制限板204の交換作業などをおこなうことができる。
【0067】
また、本実施の形態1によれば、開口制限板204に代えて、最大開口204aの開口径を変更したり規制部の形状を変更したりした別の開口制限板を取り付けることができる。これによって、開口制限板を取り替えるだけで撮像装置の構造や用途などに応じた最大開口径や最小開口径を規定することができ、絞りユニット120を幅広く応用することができる。
【0068】
このように本実施の形態1によれば、簡易な構成かつ容易な作業によって最大光量の設定を変更することができ、これによって絞りユニット120、および絞りユニット120を搭載するレンズ装置100、レンズ装置100を取り付けて使用する撮像装置の汎用性の向上を図ることができる。
【0069】
具体的には、最大開口204aの大きさを異ならせた複数の開口径制限板204を用意しておき、必要に応じて最適な開口径制限板204を取り付けることにより最大光量を多種多様に設定することができる。これによって、少ない部品点数で複数の最大光量に応じた絞り装置120を製造することができる。
【0070】
また、本実施の形態1によれば、開口径制限板204の移動方向を絞り羽根202,203の移動方向と同方向とすることにより、開口径制限板204と絞り羽根202,203とを各々異なる方向に移動させる場合と比較して開口径制限板204を移動させる機構および絞り羽根202,203を移動させる機構の大型化を抑制することができる。
【0071】
具体的には、開口径制限板204と絞り羽根202,203とを各々異なる方向に移動させる場合、各方向において開口径制限板204あるいは絞り羽根202,203を移動させるための案内部材(レール部材209など)や移動のための空間を確保しなくてはならないが、同方向に移動させることにより案内部材の一部を共有することで部品点数の増加や確保すべき空間量を低減することができる。
【0072】
また、本実施の形態1によれば、光軸方向において絞り羽根202,203の間に開口径制限板204を配置することにより、絞り開口によって光量を絞る位置と開口径制限板204によって光量を絞る位置とを光軸方向において近付けることができる。すなわち、光路に入射した光の絞り量に拘わらず、光学設計上において光量調節に適した位置に、光の絞り位置を近付けることができる。そしてこれによって開口径に拘わらず、光学設計上適した位置において光量調節をおこなうことができる。
【0073】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる本実施の形態2のレンズ装置について説明する。本実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。図4は、本実施の形態2のレンズ装置における絞りユニットを示す分解斜視図である。図4に示したように、この発明にかかる本実施の形態2のレンズ装置は、上述した図1に示したレンズ装置100における絞りユニット120に代えて絞りユニット400を備えている。
【0074】
絞りユニット400は、絞りユニット基板401、絞り羽根202,203、および開口径制限板402を備えている。絞りユニット400が備える各部は、レンズ装置における光軸(図4における符号Cを参照)方向において、絞り羽根203、絞り羽根202、絞りユニット基板401、開口径制限板402、の順に配列されている。
【0075】
図5は、絞りユニット400を示す斜視図である。図5は、組み立て途中の状態の絞りユニット400を、図4におけるY軸方向に沿って図4における右背面側から見た状態を示している。図5に示したように、絞りユニット400における絞りユニット基板401は、開口径制限板402を支持するフレーム501を備えている。本実施の形態2においては、フレーム501によって支持部材を実現することができる。
【0076】
フレーム501は、光軸を間にして対をなしており、開口径制限板402の幅方向における両端部を支持する。開口径制限板402は、フレーム501によって支持されることにより、光軸方向において絞り開口の近傍で最大光量を規定することができる。これにより、絞り開口による光量調節位置と最大開口204aによる光量調節位置とが光軸方向においてずれることによる光学性能の低下を防止することができる。
【0077】
また、フレーム501は、絞りユニット基板401に対して開口径制限板402が移動(スライド)自在な状態で開口径制限板402を支持する。フレーム501の一端側(図5における上側)は、開口径制限板402の移動(スライド)を許容するように開放された開口部502となっている。絞りユニット400において、開口部502は、開口径制限板402の着脱用の開口部として機能する。
【0078】
開口径制限板402は、フレーム501に沿って移動(スライド)することにより、絞りユニット基板401に対して脱着自在とされている。開口径制限板402は、図5においてZ軸に平行な矢印A方向に移動(スライド)する。
【0079】
図6は、絞りユニット400を示す斜視図である。図6は、組み立てた状態の絞りユニット400を、図5と同じ方向から見た状態を示している。図6に示したように、絞りユニット基板401には、開口径制限板402側に突出する突起601が設けられている。開口径制限板402には、図6において紙面上側となる端部に、切り欠き602が設けられている。絞りユニット400を組み立てた状態では、突起601が切り欠き602に嵌り込んだ状態となる。これによって、開口径制限板402の移動(スライド)方向における開口径制限板402のがたつきを抑えることができる。
【0080】
(実施の形態3)
つぎに、この発明にかかる本実施の形態3のレンズ装置について説明する。本実施の形態3においては、上述した実施の形態1,2と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。図7〜図9は、本実施の形態3のレンズ装置における絞りユニットを示す説明図である。図7には、本実施の形態3のレンズ装置における絞りユニットの分解斜視図を示した。図8には、組み立てた状態の絞りユニットを、図7におけるY軸方向に沿って図7における左側から見た状態を示した。図9には、図8に示した絞りユニットのA−A断面図を示した。
【0081】
図7〜図9に示したように、この発明にかかる本実施の形態3のレンズ装置は、上述した図1に示したレンズ装置100における絞りユニット120、あるいは上述した図4に示した絞りユニット400に代えて、絞りユニット700を備えている。絞りユニット700は、開口径制限板701を備えている。
【0082】
開口径制限板701は、レール部材209に沿って移動(スライド)する。開口径制限板701をレール部材209に沿って移動(スライド)させることにより、開口径制限板701の移動(スライド)に際して、開口径制限板701とレール部材209との間に作用する摩擦力を小さくし、開口径制限板701をスムーズに移動(スライド)させることができる。また、開口径制限板701をレール部材209に沿って移動(スライド)させることにより、開口径制限板701を精度よく移動(スライド)させることができる。
【0083】
図8に示したように、絞り羽根202,203は、開口203aの一部を絞り羽根202によって遮ることにより、レンズ装置100において第1のレンズ群104から第2のレンズ群111へ至る光路に入射した光が通過する絞り開口901を形成する。絞り開口901の大きさは、絞り羽根202,203の位置に応じて、絞り羽根202,203の移動可能範囲内で任意の大きさにすることができる。
【0084】
図9に示したように、開口径制限板701は、レンズ装置100における光路を通過する光の方向において、絞り羽根202と絞り羽根203との間に設けられている。開口径制限板701が絞り羽根202と絞り羽根203との間に設けられていることから、最大開口204aは、光軸方向において絞り羽根202と絞り羽根203との間に形成されている。本実施の形態3においては、開口径制限板701によって絞り固定部材を実現することができる。
【0085】
開口径制限板701は、上記の最大開口204aと規制部702とを備えている。規制部702は、動力発生部206における突起207に向けて突出している。上記の突起207は、モータの回転にともなって所定の位置まで移動した場合に、規制部702に当接する。
【0086】
これにより、規制部702に当接した以降は、絞り開口が小さくなる方向へのモータの回転を規制することができる。すなわち、最小開口径は、開口径制限板701に設けられた規制部702によって規定される。本実施の形態においては、突起207や規制部702などによって規制手段を実現することができる。
【0087】
最小開口径の具体的な寸法は、たとえば撮像素子の感度などに応じて設定される。絞り開口の最小開口径を上記のように設定することにより、絞りユニット700を駆動するための電源がOFFになり、絞り開口が閉塞する方向に絞り羽根202,203が移動した場合にも絞り開口が全閉状態となることを防止できる。
【0088】
これによって、撮像素子の露出量を常に確保することができ、たとえば動力発生部206への電力供給が遮断された場合にも、撮像装置による撮像を継続することができる。これにより、本実施の形態の撮像装置を監視カメラなどに適用し、監視カメラによって監視される施設内への不正な侵入者によって動力発生部206への電力供給が断たれた場合にも、当該監視カメラによる監視を継続しておこなうことができる。
【0089】
上述したように、本実施の形態3によれば、開口径制限板701によって最大開口径および最小開口径を規定し、電源の供給の有無に拘わらず、絞り開口を常時開口させておくことができる。これによって、各々を規定するための部品を個々に設けることなく、簡易な構成によって開口径制限板701によって最大開口径および最小開口径を規定することができる。
【0090】
また、本実施の形態3によれば、最大開口204aが設けられた開口径制限板701を、絞り羽根202と絞り羽根203との間に設けることにより、簡易な構成によって、光路を通過する光の通過方向において、絞り開口901によって光量を絞る位置と開口径制限板701によって光量を絞る位置とを近付けることができる。そしてこれによって、開口径に拘わらず、光学設計上適した位置において光量調節をおこなうことができる。
【0091】
そして、本実施の形態3によれば、最大開口時においても光学設計上適した位置において光量調節をおこなうことができるので、開口径の変化によってF値が設計値から外れたり、シェーディングが発生したりするといった不具合の発生を防止できる。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態1〜3によれば、構造の複雑化や部品点数の増加をともなうことなく開口径制限板204,402,701のみを交換することができるので、部品管理および製品管理にかかる負担を増大させることなく、複数の最大開口204aを容易に設定することができる。これによって、開口径制限板204,402,701のみを交換した絞りユニット120,400および700を複数種類のレンズ装置100に設けることができ、絞りユニット120,400および700の汎用性の向上を図ることができる。
【0093】
また、本実施の形態1〜3によれば、開口径による光量調節位置のずれを低減し、ゴーストやフレアの発生を防止することができ、これによって光学設計上最適な位置において光量調節をおこなうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明にかかる絞り装置、レンズ装置、および撮像装置は、調整を必要とする絞り装置および当該絞り装置を備えるレンズ装置や撮像装置に有用であり、特に、最大光量を専用の部材によって規制する絞り装置および当該絞り装置を備えるレンズ装置や撮像装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施の形態1のレンズ装置を示す断面図である。
【図2】絞りユニットを示す分解斜視図である。
【図3】絞りユニットを示す斜視図である。
【図4】本実施の形態2のレンズ装置における絞りユニットを示す分解斜視図である。
【図5】絞りユニットを示す斜視図(その1)である。
【図6】絞りユニットを示す斜視図(その2)である。
【図7】本実施の形態3のレンズ装置における絞りユニットを示す説明図(その1)である。
【図8】本実施の形態3のレンズ装置における絞りユニットを示す説明図(その2)である。
【図9】本実施の形態3のレンズ装置における絞りユニットを示す説明図(その3)である。
【符号の説明】
【0096】
100 レンズ装置
120 絞りユニット
202,203 絞り羽根
204 開口制限板
209 レール部材
400 絞りユニット
402 開口制限板
501 フレーム
700 絞りユニット
701 開口制限板
702 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路を通過する光量を調節する絞り装置であって、
前記光路における光軸上に光が通過する絞り開口を形成する複数の絞り羽根と、
前記複数の絞り羽根が前記光路を横切る方向に当該複数の絞り羽根を移動させることにより前記絞り開口の開口径を調節する開口径調節手段と、
前記開口径調節手段によって開口径が調節される絞り開口における最大光量を規定する最大開口を備える絞り固定部材と、
前記絞り固定部材を前記光軸に交差する方向に着脱可能に支持する支持部材と、
を備えることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記絞り固定部材を前記絞り羽根の移動方向と同方向に移動可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の絞り装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記絞り固定部材を前記光軸方向における前記複数の絞り羽根の間に位置づけることを特徴とする請求項1または2に記載の絞り装置。
【請求項4】
前記絞り開口の開口径が所定の最小開口径以上となるように前記開口径調節手段による前記複数の絞り羽根の移動量を規制する規制手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の絞り装置。
【請求項5】
前記規制手段は、前記複数の絞り羽根の少なくとも一つの絞り羽根の移動軌跡に干渉する位置に配置された部材であることを特徴とする請求項4に記載の絞り装置。
【請求項6】
前記規制手段は、前記絞り固定部材に備えられていることを特徴とする請求項4または5に記載の絞り装置。
【請求項7】
光が通過する光路上に設けられた一または複数の光学部材と、
前記一または複数の光学部材の中の任意の光学部材を通過する光量を調節する請求項1〜6のいずれか一つに記載の絞り装置と、
を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光学装置を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−268723(P2008−268723A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114243(P2007−114243)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】