説明

絞り装置

【課題】モータによって往復回転させられる絞り駆動リングが、複数枚の絞り羽根を同時に同じ方向へ回転させて絞り開口を小さくしていっても、モータに対する負荷の増加が抑制されるようにした絞り装置を提供すること。
【解決手段】6枚の絞り羽根7は、各々、羽根軸7aと連結ピン7bとを立設していて、羽根軸7aを地板1の羽根取付孔1cに回転可能に嵌合させ、連結ピン7bを絞り駆動リング6のカム溝6aに挿入している。そして、各絞り羽根7の、羽根軸7aと連結ピン7bとは、それらの軸方向の中心線を平行にしたまま、絞り羽根7の面に対する垂直状態よりも、羽根軸7aの立設位置と連結ピン7bの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ絞り開口形成縁7cとは反対の方向へ所定の角度だけ傾いて立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の絞り羽根が、絞り駆動リングによって同時に同じ方向へ往復回転させられ、協働して形成している絞り開口の大きさを変化させるようにした絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の絞り羽根が絞り駆動リングによって同時に同じ方向へ回転させられ、協働して絞り開口の大きさを変化させるようにしたカメラ用絞り装置は、古くから知られているが、最近のこの種の絞り装置の場合には、各絞り羽根は、長さ方向の一端の部位(以下、基端部という)の近傍位置には羽根軸を立設し、その基端部と他端の部位(以下、先端部という)との中間よりも基端部側には連結ピンを立設していて、地板とカバー板(補助地板という場合もある)との間に構成された羽根室内において、羽根軸を地板の孔に回転可能に嵌合させ、連結ピンを絞り駆動リングのカム溝に挿入しているのが普通である。
【0003】
また、絞り駆動リングの方は、通常、地板の羽根室側の面に光軸を中心にして環状に形成された凹部内に配置されていて、往復回転することによってカム溝が絞り羽根を往復回転させるように構成されている。そして、その往復回転は、手動で行うようにしたものもあるが、最近では、殆どがモータを駆動源として行うようにしている。
【0004】
更に、絞り羽根と絞り駆動リングとの重なり配置関係は、下記の特許文献1に記載されているように、絞り羽根が、絞り駆動リングと地板との間に配置されることもあるし、下記の特許文献2に記載されているように、絞り駆動リングとカバー板との間に配置されることもある。そのため、前者の場合には、上記の羽根軸と連結ピンは、絞り羽根の異なる面に立設されることになるし、後者の場合には同一面に立設されることになる。
【0005】
この種の絞り装置は、周知のように、露光開口を全開にしている状態(最大絞り開口制御状態)から絞り開口を小さくするときには、各絞り羽根を露光開口に進入させ、先端部を光軸中心に近づけていくようにする。ところが、特許文献1に記載されているように、複数枚の絞り羽根を単純に順に重ねて取り付け、最初に組み付けた絞り羽根と最後に組み付けた絞り羽根とが接触しないような組み付け方をした場合は、各絞り羽根の姿勢は、先端部が光軸中心に近づくにしたがって不安定になり、基準の作動面(絞り開口形成面)から、先端部を傾かせやすくなってしまう。そのため、絞り開口を基準の作動面上で適正な形状に形成することができなくなるほか、隣接する絞り羽根同士が面接触しなくなったりするようになる。そして、そのような現象は、露光開口の直径が大きいほど顕著になるので、このような絞り羽根の組み付け方は、露光開口の小さい絞り装置にだけ採用されている。
【0006】
そこで、特許文献2に記載されているような、俗に、編み込み方式といわれている、絞り羽根の組み付け方が知られている。この組み付け方は、全ての絞り羽根が、隣接する2枚の絞り羽根の間にあって、露光開口中においては、それらの最先端部を、地板側とカバー板側のいずれか一方からは目視できるが、他方からは目視できない状態に組み付けるものである。この方式を採用すると、先端部同士が絡み合って支え合うようになるため、特許文献1に記載されているような複数枚の絞り羽根を単純に順に重ねて組み付けただけの場合よりも、絞り羽根の所定の姿勢が常に安定して得られるようになる。
【0007】
本発明は、このように、特許文献1,2に記載されているような複数枚の絞り羽根を、特許文献2に記載されているような編み込み方式で組み付け、モータを駆動源として、絞り駆動リングを往復回転させることにより、絞り開口の大きさを変化させるようにしたカメラ等の絞り装置に関するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2001−201780号公報
【特許文献2】特開2003−57715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のような編み込み方式を採用した場合には、絞り開口を小さくしていくと、各絞り羽根が僅かずつ捩れるように撓まされていくので、隣接する絞り羽根同士の摺動抵抗も徐々にではあるが大きくなってゆく。ところが、そのようにして絞り開口を小さくしていくと、ある時点から、それらの最先端部が絞り開口を形成する基準面から、その基準面とは直交する方向へ盛り上がっていくようになって、最小絞り開口制御状態に至るまで急激に摺動抵抗が大きくなる。そのため、この編み込み方式を採用する絞り装置の場合には、駆動力の大きなモータを使用しなければならないか、余り小さい絞り開口までは制御しないようにしなければならないという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光軸を中心にして往復回転する絞り駆動リングが、いわゆる編み込み方式で組み付けられている複数枚の絞り羽根を同時に同じ方向へ回転させて絞り開口の大きさを変化させるようにした絞り装置において、各絞り羽根に設けられている羽根軸と連結ピンとを絞り羽根の羽根面に対して傾斜して立設し、各絞り羽根を地板の取付面に対して傾斜した姿勢となるように組み付けることにより、従来のような、小さい絞り開口制御時における絞り羽根相互間の摺動抵抗の増加を抑制し、駆動力の小さいモータでも、かなり小さい絞り開口まで制御できるようにしたカメラ等の絞り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の絞り装置は、光軸を中心にした円形の開口部と光軸を中心にして略等角度間隔位置に形成された複数の羽根取付孔とを有している地板と、光軸を中心にした円形の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、光軸を中心にして略等角度間隔に形成された複数のカム溝を有していて前記羽根室内に配置されておりモータを駆動源として光軸を中心に往復回転させられる絞り駆動リングと、各々が羽根軸と連結ピンとを同一面に立設していて前記カバー板と前記絞り駆動リングとの間に配置されており該羽根軸を前記羽根取付孔に回転可能に嵌合させ該連結ピンを前記カム溝に挿入させていて前記絞り駆動リングの往復回転により各々の絞り開口形成縁が協働して絞り開口を変化させる複数枚の絞り羽根と、を備えていて、前記各絞り羽根の前記羽根軸と前記連結ピンとは、それらの軸方向の中心線を平行にしたまま、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記羽根軸の立設位置と前記連結ピンの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁とは反対の方向へ所定の角度だけ傾いて立設されており、前記複数枚の絞り羽根は、いずれも、隣接する2枚の絞り羽根の間になるように重ねられ、それらの面が、前記地板の羽根室側の面に対して常に傾いた姿勢をとるように組み付けられているように構成する。
【0012】
また、上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用絞り装置は、光軸を中心にした円形の開口部と光軸を中心にして略等角度間隔位置に形成された複数の羽根取付孔とを有している地板と、光軸を中心にした円形の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、光軸を中心にして略等角度間隔に形成された複数のカム溝を有していて前記羽根室内に配置されておりモータを駆動源として光軸を中心に往復回転させられる絞り駆動リングと、各々が羽根軸と連結ピンとを異なる面に立設していて前記地板と前記絞り駆動リングとの間に配置されており該羽根軸を前記羽根取付孔に回転可能に嵌合させ該連結ピンを前記カム溝に挿入させていて前記絞り駆動リングの往復回転により各々の絞り開口形成縁が協働して絞り開口を変化させる複数枚の絞り羽根と、を備えていて、前記各絞り羽根の前記羽根軸と前記連結ピンとは、それらの軸方向の中心線を平行にしたまま、前記羽根軸が、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記羽根軸の立設位置と前記連結ピンの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁とは反対の方向へ所定の角度だけ傾いて立設され、前記連結ピンが、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁の方向へ所定の角度だけ傾いて立設されており、前記複数枚の絞り羽根は、いずれも、隣接する2枚の絞り羽根の間になるように重ねられ、それらの面が、前記地板の羽根室側の面に対して常に傾いた姿勢をとるように組み付けられているように構成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、光軸を中心にして往復回転する絞り駆動リングが、いわゆる編み込み方式で組み付けられている複数枚の絞り羽根を、同時に同じ方向へ回転させて絞り開口の大きさを変化させるようにしたカメラ等の絞り装置において、各絞り羽根に設けられている羽根軸と連結ピンとを絞り羽根の羽根面に対して傾斜するように立設して、各絞り羽根が地板の取付面に対して常に傾斜した姿勢をしているようにしたので、従来のような、小さい絞り開口制御時における絞り羽根相互間の摺動抵抗の増加が抑制され、駆動力の小さいモータでも、かなり小さい絞り開口まで制御できるようになるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した四つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用絞り装置は、単体の絞り装置として構成することも、シャッタ装置と共にユニット化した絞り装置として構成することも可能であるが、各実施例は、単体の絞り装置として構成したものである。そして、図1〜図4は実施例1を説明するためのものであり、図5は実施例2を説明するためのものであり、図6及び図7は実施例3を説明するためのものであり、図8は実施例4を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
最初に、図1〜図4を用いて実施例1を説明するが、図1は、最大の絞り開口の制御状態を示した平面図である。また、図2は、図1に示されている絞り羽根の形状を示したものであって、図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)の右側面図である。また、図3は、絞り込み途中の状態を示した平面図であり、図4は、最小の絞り開口の制御状態を示した平面図である。
【0016】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例のカメラ用絞り装置は、地板1とカバー板2との間に羽根室を構成している。カバー板2は、適宜な手段によって地板1に取り付けられており、地板1とは略同じ外形形状をしているが、図1においては、羽根室内の構成を分かり易くするために、その一部だけが示されており、図3及び図4では省略されている。本実施例の地板1は、合成樹脂製であり、その中央部に光軸を中心にした円形の開口部1aを形成している。また、カバー板2も合成樹脂製であって、その中央部には、上記の開口部1aと同じ直径の開口部2aを、光軸を中心にして形成しているため、本実施例においては、開口部1a,2aが露光開口(最大絞り口径)を規制していることになる。
【0017】
地板1の羽根室側の面には、開口部1aを囲むようにして凹部1bが形成されている。また、凹部1bを形成していない地板1の羽根室側の面には、光軸を中心にして略等角度間隔位置に六つの羽根取付孔1cが、従来と同様に、垂直に形成されているが、図1,図3,図4においては、それらの一つにだけ符号を付けてある。また、凹部1bの外周壁には、光軸方向へ突き出た一つのストッパ部1dと、適宜な角度間隔位置に形成された四つのガイド部1eが設けられているが、ガイド部1eも、それらの一つにだけ符号を付けてある。更に、凹部1bを形成していない地板1の羽根室側の面には、凹部1bを部分的に覆うように形成された三つの抑え部1fが設けられているが、それらについても、一つにだけ符号を付けてある。
【0018】
図1の上方部に示されているように、凹部1bには径方向へ広げて形成された領域が設けられており、そこに二つの歯車3,4が配置されている。地板1の背面側にはモータ5が取り付けられていて、歯車3は、羽根室内に延在している出力軸5aに取り付けられた出力歯車である。また、歯車4は、地板1に立設された取付軸1gに対して回転可能に取り付けられた2段歯車であって、地板1側にある大きい直径の歯車が、上記の歯車3に噛合している。
【0019】
また、上記の凹部1b内には、絞り駆動リング6が、外周面を上記の四つのガイド部1eに接触させ、光軸を中心にして往復回転可能に配置されている。図1,図3,図4においては、この絞り駆動リング6の内径形状線が、開口部1a,2aの形状線に重なっているが、実際にはその内径の方が僅かに大きくなっている。この絞り駆動リング6は、光軸を中心にして略等角度間隔に六つのカム溝6aを有しているが、図1,図3,図4においては、それらのうちの一つにだけ符号を付けてある。
【0020】
また、この絞り駆動リング6は、外周部に、上記の歯車4のうち直径の小さな歯車に噛合する歯部6bと、上記のストッパ部1dに当接する当接部6cとを有している。また、そのほかに、三つの湾状部6dも有しているが、図1,図3,図4においては、それらのうちの一つにだけ符号を付けてある。そして、この絞り駆動リング6は、湾状部6dの位置を上記の抑え部1fの位置に合わせておいて凹部1b内に落とし込まれているが、その後、大きく時計方向へ回転させているため、絞り開口の制御作動時には、湾状部6dが抑え部1fのところまで、反時計方向へ回転させられることがないようになっている。
【0021】
本実施例の場合には、カバー板2と絞り駆動リング6との間に、全て同じ形状をした合成樹脂製の6枚の絞り羽根7が配置されているが、図1,図3,図4においては、それらのうちの1枚にだけ符号を付けてある。そこで、この絞り羽根7の詳しい形状を図2を用いて説明する。尚、図2(a)は、図1に示されている絞り羽根7を裏返した状態にして示した平面図である。また、図2(b)は、図2(a)の右側面図である。
【0022】
この絞り羽根7は、基端部の一方の面に羽根軸7aを立設しており、その基端部と先端部との中間位置よりも基端部側となる同一面上の位置に連結ピン7bを立設している。また、羽根軸7aを中心にして反時計方向へ回転する側の端縁、即ち光軸側の端縁には、基端部と先端部との中間よりも基端部側となるところから先端部にかけて、他の5枚の絞り羽根7と協働して絞り開口を形成するための絞り開口形成縁7cが形成されている。そして、羽根軸7aと連結ピン7bは、それらの軸方向の中心線が互いに平行になるようにしたまま、羽根軸7aと連結ピン7bとを結ぶ直線に直交する方向であって絞り形成縁7cとは反対の方向へ、所定の角度だけ傾くようにして立設されている。
【0023】
図1に示されているように、このような形状をした6枚の絞り羽根7は、カバー板2側から、羽根軸7aを地板1の羽根取付孔1cに回転可能に嵌合させ、連結ピン7bを絞り駆動リング6のカム溝6aに挿入している。そのため、図1,図3,図4においては、各絞り羽根7は、その基端部から先端部まで、絞り開口形成縁7cの方を、反対側の端縁よりもカバー板2側にして傾いた姿勢で組み付けられている。また、本実施例の6枚の絞り羽根7は、いわゆる編み込み方式で組み付けられている。即ち、図3及び図4から分かるように、全ての絞り羽根7は、隣接している2枚の絞り羽根7の間にあり、その先端部が、隣接している地板1側の絞り羽根7に対して、カバー板2側で接触するようにして重ねられている。そのため、図3及び図4においては、全ての絞り羽根7の最先端を見ることが可能になっているが、地板1の背面側からは、それらの最先端を一つも見ることができないようになっている。
【0024】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、6枚の絞り羽根7が露光開口(開口部1a,2a)を全開にしている状態、即ち最大絞り開口の制御状態を示したものであるが、このとき、被写体光が、所定の明るさかそれよりも暗い場合には、このまま撮影が行われる。しかしながら、被写体光が、所定の明るさよりも明るい場合には、モータ5の回転子が反時計方向へ回転させられる。それにより、絞り駆動リング6が、歯車3,4を介して反時計方向へ回転させられるので、6枚の絞り羽根7は、それらの連結ピン7bがカム溝6aに押されることにより、同時に時計方向へ回転させられて露光開口内に進入し、それらの協働によって絞り開口を小さくしていく。
【0025】
そして、本実施例の絞り装置が、スチルカメラに採用されている場合には、所定の絞り開口が得られたところでモータ5の回転子が停止し、撮影が行われることになるし、ムービーカメラに採用されている場合には、被写体光の変化に対応して、モータ5の回転子が時計方向へ回転させられたり反時計方向へ回転させられたりして、常に適正な露光条件での撮影が行われるように絞り開口を変化させることになる。
【0026】
そして、図3は、6枚の絞り羽根7が、図1に示されている最大絞り開口状態と図4に示された最小絞り開口状態との中間よりも、最小絞り開口制御状態に近い制御状態を示したものであるが、この状態のときには、仮に、従来のように、絞り羽根7の基端部の面が地板1の羽根室側の面に対して常に略平行となる姿勢をさせられている構成であったとしても、露光開口に進入している部位には捩れるように変形する余地があるため編み込み方式特有の先端部の盛り上がり現象は現れない。言い換えれば、絞り駆動リング6が、図1に示されている状態と図3に示されている状態との間で回転されている限りは、絞り羽根7同士の摺動抵抗は僅かに変わるだけであって、モータ5に与える負荷の変動は問題視するほどのものではない。そして、本実施例の場合にも、この段階では、摺動抵抗は僅かに変わるだけである。
【0027】
ところが、このような図3の状態から、絞り駆動リング6が、さらに反時計方向へ回転させられると、各絞り羽根7は、その先端部が、隣接する両側の絞り羽根7の先端部同士が重なっている間に存在するようになるため、変形の自由度が極端に制限された状態になり、従来の構成の場合には、周知のように、最先端部がカバー板2側(図3の手前側)に盛り上がり、絞り羽根7同士の摺動抵抗が急激に大きくなっていく。そのため、モータ5の負荷が急激に大きくなるので、従来は、このことのために、駆動力の大きなモータを必要としていた。
【0028】
それに対して、本実施例の場合には、各絞り羽根7は、初めから、基端部から先端部まで、その絞り開口形成縁7c側が、反対の端縁側よりも常にカバー板2側となるように傾斜して組み付けられているため、各絞り羽根7の先端部がカバー板2側に盛り上がろうとするとき、カバー板2側に隣接している絞り羽根7の先端部によって盛り上がらせないようにしようとする力が、従来の構成のようには強く働かない。そのため、絞り羽根7同士の摺動抵抗は急激には大きくならず、モータ5の負荷もそれほど大きくはならないので、従来よりも駆動力の小さなモータの使用が可能になる。
【0029】
このようにして各絞り開口制御状態での撮影が終了すると、モータ5の回転子は、時計方向へ回転させられ、絞り駆動リング6を時計方向へ回転させる。それによって、6枚の絞り羽根7は、それらの連結ピン7bが絞り駆動リング6のカム溝6aに押されることによって、反時計方向へ回転させられる。そして、それらの回転は、絞り駆動リング6の当接部6cがストッパ部1dに当接することによって停止させられる。その状態が図1に示された状態である。尚、本実施例の場合には、図1が撮影開始前の状態であることにして説明したが、カメラの仕様によっては、例えば、図3や図4に示された状態などを撮影開始前の状態にすることもある。
【実施例2】
【0030】
次に、図5を用いて実施例2を説明する。本実施例の構成は、6枚の絞り羽根7の組み付け方が実施例1の場合と異なるだけで、その他の構成は、絞り羽根7の形状も含めて、実施例1の場合と全く同じである。そのため、図5は、実施例1の図3と同じ状態における2枚の絞り羽根7の取り付け箇所だけを、実施例1の場合と同じ符号を用いて示したものである。
【0031】
上記の実施例1における絞り羽根7の取り付け構成は、図3などからも分かるように、各絞り羽根7は、地板1に対して、反時計廻りに順に取り付けられていて、反時計廻り方向の位置に隣接して取り付けられている絞り羽根7の方が必ずカバー板2側となるように組み付けられていた。そのため、上記したように、実施例1の場合には、図3及び図4においては、全ての絞り羽根7の最先端を見ることが可能になっているが、地板1の背面側からは、それらの最先端を一つも見ることができないようになっていた。
【0032】
それに対して、本実施例の場合には、各絞り羽根7は、地板1に対して、時計廻りに順に取り付けられている。そして、全ての絞り羽根7は、地板1に対して時計廻り方向に隣接して取り付けられている絞り羽根7の方が必ずカバー板2側となるように組み付けられている。そのため、本実施例の場合には、図3及び図4と同じようにして見た場合、全ての絞り羽根7の最先端を見ることができず、地板1の背面側からは、それらの最先端を全て見ることが可能になっている。
【0033】
従って、各絞り羽根が従来のような形状をしていて、従来のような姿勢で組み付けられている場合には、最小絞り開口制御状態になるとき、摺動抵抗が増大してそれらの最先端が地板1側に盛り上がることになるが、本実施例の各絞り羽根7は、実施例1の場合と同じ形状をしていて、基端部から先端部に至るまで、絞り開口形成縁7c側が反対の端縁側よりも常にカバー板2側となるように傾斜して組み付けられているため、各絞り羽根7の先端部が地板1側に盛り上がろうとするとき、地板1側に隣接している絞り羽根7の先端部によって盛り上がらせないようにしようとする力が、従来の構成のようには強くは働かない。そのため、絞り羽根7同士の摺動抵抗は急激には大きくならず、モータ5の負荷もそれほど大きくはならないので、従来よりも駆動力の小さなモータの使用が可能になる。
【0034】
尚、このほかの構成と作動については、実施例1の場合と同じであるため、それらの説明を省略すると共に、絞り羽根7の組み付け構成に関連したこと以外は、実施例1で説明したことが、本実施例にも適用される。
【実施例3】
【0035】
次に、図6及び図7を用いて実施例3を説明する。本実施例の絞り羽根17は、上記の実施例1,2の場合と同様に6枚設けられているが、後述するように、形状が異なっている。また、本実施例の場合は、絞り羽根17と絞り駆動リング6との配置関係が、上記の実施例1,2の場合とは異なっており、それによって、地板1の一部の形状も異なっている。その他の構成は、図6に示されていないところも含めて、実施例1の場合と全く同じである。そのため、図6においては、実施例1の場合と実質的に同じ部材、同じ部位には同じ符号を付けてあり、実施例2の説明に用いた図5と同様に、2枚の絞り羽根17の取付け箇所だけを示してある。また、図7は、図6に示されている絞り羽根の形状を示したものであって、図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)の右側面図である。
【0036】
先ず、図6に示されているように、本実施例の地板1には、凹部1bの外周壁からラジアル方向に概ね三角形に拡張して形成された六つの取付け領域1b−1を、光軸を中心にして略等角度間隔となるように設けており、それらの取付け領域1b−1に各々上記の羽根取付孔1cを形成しているが、図6においては、それらの六つの取付け領域1b−1のうち、二つだけが示されている。更に、本実施例の地板1は、凹部1bの内部であって上記の四つのガイド部1eの光軸側に、凹部1bの底面よりも高い受け部1hが形成されており、絞り駆動リング6は、凹部1bの底面には接触せず、それらの受け部1hに接触して回転するようになっている。
【0037】
また、本実施例の絞り羽根17は、絞り駆動リング6よりも地板1側に配置されているが、図7(a)に示されているように、その平面形状は、実施例1の絞り羽根7と同じであって、絞り開口形成縁17cを有している。そして、実施例1,2の絞り羽根7は、同一面に羽根軸7aと連結ピン7bとを立設していたが、本実施例の絞り羽根17は、図7に示されているように、羽根軸17aと連結ピン17bを異なる面に立設している。即ち、本実施例の場合、絞り羽根17は、羽根軸17aを地板1側の面に立設していて、地板1の羽根取付孔1cに対して回転可能に嵌合させているが、連結ピン17bの方は、カバー板2側の面に立設していて、絞り駆動リング6のカム溝6aに挿入させている。
【0038】
また、各絞り羽根17の羽根軸17aと連結ピン17bとは、異なる面に立設されているとはいえ、本実施例の場合にも、それらの中心を軸方向に通る線が互いに平行になるようにして、絞り羽根17の面に対して垂直状態よりも所定の角度だけ傾いて立設されているが、羽根軸17aの方は、実施例1,2の場合と同様に、羽根軸17aの立設位置と連結ピン17bの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ絞り開口形成縁17cとは反対の方向へ傾いて立設されているのに対し、連結ピン17bの方は、羽根軸17aの立設位置と連結ピン17bの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ絞り開口形成縁17cの方向へ傾くように立設されている。
【0039】
そして、6枚の絞り羽根17の取付け構成は、実施例1の場合と同様に、地板1に対して絞り羽根17を反時計廻りに順に取り付けており、隣接する2枚の絞り羽根17同士は、反時計廻り方向に取り付けられている絞り羽根17の方が必ずカバー板2側(絞り駆動リング6側)となるようにして組み付けられている。そのため、実施例1の場合と同様に、全ての絞り羽根17の最先端を見ることが可能になっているが、地板1の背面側からは、それらの最先端を一つも見ることができないようになっている。
【0040】
従って、各絞り羽根17が従来のような形状に形成されていて、従来のような姿勢で組み付けられている場合には、最小絞り開口制御状態になるときに、摺動抵抗が急激に増大し、それらの最先端がカバー板2側に盛り上がることになるが、本実施例の各絞り羽根17は、実施例1の場合と同様に、基端部から先端部に至るまで、絞り開口形成縁17c側が反対の端縁側よりも常にカバー板2側となるように傾斜して組み付けられているため、各絞り羽根17の先端部がカバー板2側に盛り上がろうとするとき、カバー板2側に隣接している絞り羽根17の先端部によって盛り上がらせないようにする力が、従来の構成のようには強くは働かない。そのため、絞り羽根17同士の摺動抵抗は急激には大きくならず、モータ5の負荷もそれほど大きくはならないので、従来よりも駆動力の小さなモータの使用が可能になる。
【0041】
このほかの構成と作動については、実施例1の場合と同じであるため、それらの説明を省略すると共に、絞り羽根17の形状と組み付け構成に関連したこと以外は、実施例1で説明したことが、本実施例にも適用される。
【実施例4】
【0042】
最後に、図8を用いて実施例4を説明する。本実施例の構成は、6枚の絞り羽根17の組み付け方が実施例3の場合と異なるだけで、その他の構成は、絞り羽根17の形状も含めて、実施例3の場合と全く同じである。そのため、図8においては、実施例3の場合と同じ部材、同じ部位には同じ符号を付けてあり、実施例3の説明に用いた図6と同様に、2枚の絞り羽根17の取付け箇所だけを示してある。
【0043】
上記の実施例3においては、各絞り羽根17は、地板1に対して、反時計廻りに順に取り付けられていて、反時計廻り方向の位置に隣接して取り付けられている絞り羽根17の方が必ずカバー板2側となるように組み付けられていた。それに対して、本実施例の場合には、上記の実施例2の場合と同様に、各絞り羽根17は、地板1に対して、時計廻りに順に取り付けられている。しかも、全ての絞り羽根17は、地板1に対して時計廻り方向に隣接して取り付けられている絞り羽根7の方が必ずカバー板2側となるようにして組み付けられている。そのため、本実施例の場合には、図8に示された状態では、全ての絞り羽根7の最先端を見ることができないが、地板1の背面側からは、それらの最先端を全て見ることが可能になっている。
【0044】
従って、各絞り羽根17が、従来のような形状をしていて、従来のような姿勢で取り付けられている場合には、最小絞り開口制御状態になるとき、それらの最先端が地板1側に盛り上がる取り付け構成になっているが、本実施例の各絞り羽根17は、実施例3の場合と同じ形状をしていて、基端部から先端部に至るまで、絞り開口形成縁17c側が反対の端縁側よりも常にカバー板2側となるように傾斜して組み付けられているため、各絞り羽根17の先端部が地板1側に盛り上がろうとするとき、地板1側に隣接している絞り羽根17の先端部によって盛り上がらせないようにしようとする力が、従来の構成のようには強く働かない。そのため、絞り羽根17同士の摺動抵抗は急激には大きくならず、モータ5の負荷もそれほど大きくならないので、従来よりも駆動力の小さなモータの使用が可能になる。
【0045】
このほかの構成と作動については、実施例1の場合と同じであるため、それらの説明を省略すると共に、絞り羽根17の形状と組み付け構成に関連したこと以外は、実施例1で説明したことが、本実施例にも適用される。
【0046】
尚、各実施例で用いられているモータ5は、歯車4,5を介して絞り駆動リング6を回転させていることから、主としてステップモータを意識したものであるが、本発明のように構成した場合には、駆動力の比較的小さいモータの使用が可能になることから、例えば、特開2002−315294号公報に記載されているような電流制御式のモータを用い、その出力ピンによって、直接又は間接に絞り駆動リング6を回転させるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】最大の絞り開口の制御状態を示した実施例1の平面図である。
【図2】図1に示されている絞り羽根の形状を示したものであって、図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)の右側面図である。
【図3】絞り込み途中の状態を示した実施例1の平面図である。
【図4】最小の絞り開口の制御状態を示した実施例1の平面図である。
【図5】絞り込み途中の状態を示した実施例2の部分平面図である。
【図6】絞り込み途中の状態を示した実施例3の部分平面図である。
【図7】図6に示されている絞り羽根の形状を示したものであって、図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)の右側面図である。
【図8】絞り込み途中の状態を示した実施例4の部分平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 地板
1a,2a 開口部
1b 凹部
1b−1 取付け領域
1c 羽根取付孔
1d ストッパ部
1e ガイド部
1f 抑え部
1g 取付軸
1h 受け部
2 カバー板
3,4 歯車
5 モータ
5a 出力軸
6 絞り駆動リング
6a カム溝
6b 歯部
6c 当接部
6d 湾状部
7,17 絞り羽根
7a,17a 羽根軸
7b,17b 連結ピン
7c,17c 絞り開口形成縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を中心にした円形の開口部と光軸を中心にして略等角度間隔位置に形成された複数の羽根取付孔とを有している地板と、光軸を中心にした円形の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、光軸を中心にして略等角度間隔に形成された複数のカム溝を有していて前記羽根室内に配置されておりモータを駆動源として光軸を中心に往復回転させられる絞り駆動リングと、各々が羽根軸と連結ピンとを同一面に立設していて前記カバー板と前記絞り駆動リングとの間に配置されており該羽根軸を前記羽根取付孔に回転可能に嵌合させ該連結ピンを前記カム溝に挿入させていて前記絞り駆動リングの往復回転により各々の絞り開口形成縁が協働して絞り開口を変化させる複数枚の絞り羽根と、を備えていて、前記各絞り羽根の前記羽根軸と前記連結ピンとは、それらの軸方向の中心線を平行にしたまま、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記羽根軸の立設位置と前記連結ピンの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁とは反対の方向へ所定の角度だけ傾いて立設されており、前記複数枚の絞り羽根は、いずれも、隣接する2枚の絞り羽根の間になるように重ねられ、それらの面が、前記地板の羽根室側の面に対して常に傾いた姿勢をとるように組み付けられていることを特徴とする絞り装置。
【請求項2】
光軸を中心にした円形の開口部と光軸を中心にして略等角度間隔位置に形成された複数の羽根取付孔とを有している地板と、光軸を中心にした円形の開口部を有していて前記地板との間に羽根室を構成しているカバー板と、光軸を中心にして略等角度間隔に形成された複数のカム溝を有していて前記羽根室内に配置されておりモータを駆動源として光軸を中心に往復回転させられる絞り駆動リングと、各々が羽根軸と連結ピンとを異なる面に立設していて前記地板と前記絞り駆動リングとの間に配置されており該羽根軸を前記羽根取付孔に回転可能に嵌合させ該連結ピンを前記カム溝に挿入させていて前記絞り駆動リングの往復回転により各々の絞り開口形成縁が協働して絞り開口を変化させる複数枚の絞り羽根と、を備えていて、前記各絞り羽根の前記羽根軸と前記連結ピンとは、それらの軸方向の中心線を平行にしたまま、前記羽根軸が、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記羽根軸の立設位置と前記連結ピンの立設位置とを結ぶ直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁とは反対の方向へ所定の角度だけ傾いて立設され、前記連結ピンが、その絞り羽根の面に対する垂直状態よりも、前記直線に対して直交する方向であって且つ前記絞り開口形成縁の方向へ所定の角度だけ傾いて立設されており、前記複数枚の絞り羽根は、いずれも、隣接する2枚の絞り羽根の間になるように重ねられ、それらの面が、前記地板の羽根室側の面に対して常に傾いた姿勢をとるように組み付けられていることを特徴とする絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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