説明

給水制御方法

【課題】給水配管において、水道の管理者に無断で水道メータへの通水(水道開栓)が行われることを確実に防ぎ、その上、無断通水を防ぐために行われてきた止水栓の面倒な管理を不要とすること。
【解決手段】水道開栓を行うまでは、水道メータ3の流入口に、逆止弁4を、流入口から水道メータ3への水の流れを止める向きに取り付けておき、水道開栓を行うときに、前記逆止弁4を流入口から取り出し、流入口から水道メータ3への水の流れを前記逆止弁4が止めないよう、その取り付け向きを反転させてから、水道メータ3の流出口に前記逆止弁4を付け直す。
これにより、止水栓1のハンドル14を取り外して管理しなくても、無断で水道開栓されるのを防ぐことができ、ハンドル等の着脱作業や面倒な管理業務が不要となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道利用者への給水を管理するための給水制御方法に関し、特に、断水時などに発生する逆流を防ぐための逆止弁を使用した給水制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、浄水処理された水道水は、配水池等から配水管によって各地域まで送られ、そこからさらに、配水管から枝分かれしている給水管によって、多くの水道利用者へ供給されている。
【0003】
給水管には、水道の使用量を測定するための水道メータが接続されている。水道メータを設置するときは、通常は、その上流側に止水栓を、下流側に逆止弁を取り付ける。その場合、例えば、図3(b)に示すように、ハンドル式ボール止水栓1、水道メータ3、パッキン一体型逆止弁4、の順で上流から接続配管される。
【0004】
ここで、逆止弁は、断水の時などに下流から水が逆流して水道メータに流れ込むのを防ぐ目的で取り付けられ、例えば、水道メータの流出口に内蔵されるものが開示されている。(特許文献1参照)
【0005】
ところで、宅地の造成やマンションの新築等に伴って給水工事を行った場合、水道利用者が入居するまでは、水道メータに水が流れないように止水栓を閉栓し、無断で開栓できないようにする必要がある。これは、水道利用者への給水を開始する操作(水道開栓)が水道管理者に無断で行われると、適正な水道使用量の測定等が困難となり、水道管理上の問題が生じるからである。
そのため、止水栓の閉栓時に、水道の管理者が、止水栓から操作ハンドルを取り外して保管することがある。また、取り外したハンドルを簡単に取り付けられないようにするために、図6に示すように、ハンドルの取り付け箇所をカバーで塞ぐことも行われている。
【0006】
この図では、止水栓8の上部にキャップ9を備え、そのキャップ9の上部に保護キャップ10を螺合して、栓棒11をカバーしている。
そして、止水栓を開閉するための操作具として、栓棒押さえ12、ハンドル軸13、ハンドル14が一体化され、操作する時以外は、水道の管理者によって別の場所に保管されている。
【0007】
また、無断で開栓(通水)させない方法として、開栓と閉栓が可能なハンドルと、閉栓のみが可能なハンドルの2種類を用意する方法も開示されている。(特許文献2参照)
【0008】
これによると、水道利用者や工事業者には、閉栓のみが可能なハンドルを渡して、水漏れの発生時や水道工事の開始時に、閉栓(止水)作業だけは出来るようにしておき、工事完了後に、開栓も可能なハンドルを使って、水道の管理者が開栓(通水)を行うことになる。
この方法は、必要がある時に直ぐに自ら閉栓することができるので、水道利用者や工事業者にとって便利であり、また、水道開栓が無断で行われることがないので、水道の管理者にとっても有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−201785号公報
【特許文献2】特開2007−255059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、止水栓から操作ハンドルを取り外して保管する場合、取り外したハンドルの管理業務が発生し、管理者の負担が増える。
【0011】
また、図6に示す止水栓8は、開閉操作を行う毎に、保護キャップ10を外して栓棒11にハンドル軸13を差し込み、キャップ9に栓棒押さえ12を螺合しなければならないという不便さがあるだけでなく、キャップ9や保護キャップ10が破損すると開閉操作が可能になることがあるため、無断で通水される恐れもあった。
【0012】
さらに、ハンドルの取り付け箇所をカバーで塞ぐ場合、止水栓を開閉する度に、カバーを着脱しなければならない上に、外したカバーの管理も行わなければならなかった。
【0013】
本発明は、止水栓のハンドル等を取り外して保管しなくても、水道メータへの通水や止水の管理を簡単に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の給水制御方法は、給水を開始するための水道開栓を行うまでは、水道メータの流入口側か流出口側のいずれか一方に、逆止弁を、流入口から水道メータへの水の流れを止める向きに取り付け、前記水道開栓を行うときに、水道メータの流入口側か流出口側のいずれか一方に、前記逆止弁を、流入口から水道メータに水が流れる向きに付け直すこととしたのである。
この発明によれば、止水栓のハンドルを着脱する必要がなくなり、ハンドル等の管理業務も不要となる。
【0015】
また、本発明の給水制御方法を、給水を開始するための水道開栓を行うまでは、水道メータの流入口に、逆止弁を、流入口から水道メータへの水の流れを止める向きに取り付け、前記水道開栓を行うときに、水道メータの流出口に、前記逆止弁を、流入口から水道メータに水が流れる向きに付け直すこととすることができる。
この発明によれば、水道メータへの通水をより確実に制御できる。
【0016】
さらに、前記逆止弁をパッキン一体型逆止弁とすることができる。
この発明によれば、逆止弁の取り外しや付け直しの作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、以上のように、止水栓のハンドル等の面倒な管理を行わなくても、無断で水道開栓が行われるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態における開栓前の配管断面図であり、(a)は水道メータ上流側、(b)は水道メータ下流側の図である。
【図2】第1の実施形態における開栓後の配管断面図であり、(a)は水道メータ上流側、(b)は水道メータ下流側の図である。
【図3】第1の実施形態における配管図で、(a)は開栓前の状態、(b)は開栓後の図である。
【図4】第2の実施形態における配管図であり、(a)は開栓前、(b)は開栓後の図である。
【図5】第3の実施形態における配管図であり、(a)は開栓前、(b)は開栓後の図である。
【図6】従来の水道メータ上流側の配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、各図面は、左側を配管の上流側(右側を下流側)として描かれている。
まず、第1の実施形態について、図1〜図3を使って説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態における開栓前の水道メータ付近の配管断面図であり、(a)は水道メータの上流側、(b)は水道メータの下流側の図である。
【0021】
図1(a)において、3は水道メータで、流入口31の先端の外面には雄ネジが加工されている。この雄ネジには、袋ナット5の内面の雌ネジが螺合している。
袋ナット5の上流側端部には、内向きに鍔51が突出しており、伸縮ソケット2の下流側先端に設けた突条21と配管の軸方向に係合している。
【0022】
伸縮ソケット2の下流側先端と流入口31の先端との間には、逆止弁4のパッキン部41が挟まれている。すなわち、袋ナット5を流入口31の雄ネジに締め込むと、鍔51が突条21を下流側に引き込み、伸縮ソケット2と流入口31の間にパッキン部41を挟んで締め付ける構造となっている。
【0023】
逆止弁4は、いわゆるパッキン一体型逆止弁であり、主に給水管の配管接続部に使用される。このパッキン一体型逆止弁は、図1(a)に示すように、コイルバネと弁体42や弁座43等からなる筒状の弁本体部45と、弾性材等からなる環状のパッキン部41を一体に形成したものである。
配管への固定は、環状のパッキン部41が両配管の端部間に挟まれて締め付けられることで行われる。つまり、配管時にパッキン部41を挟んで締め付けることで、配管の接続部のシールと逆止弁の固定が行われる。
【0024】
水道開栓前の逆止弁4は、弁本体部45を上流側、パッキン部41を下流側とした向きで取り付けられている。この逆止弁の設置向きは、逆流防止のために通常使用される場合とは反対の向きとなっている。
【0025】
ここで、逆止弁4の弁体42は、コイルバネの弾性によって下流側に付勢されており、この付勢と水圧が作用してコマ形状の弁体42の外面がリング形状の弁座43に当接し、流路を完全に遮断している。
【0026】
伸縮ソケット2の上流側の先端22は、止水栓1側の継ぎ手部15に挿し込まれている。伸縮ソケット2は、先端22が継ぎ手部15の内面奥の縮径部16に突き当たるまでの距離Lだけ押し込み代が残された状態で、固定されている。
このように、伸縮ソケット2と継ぎ手部15の接続構造は、伸縮継手構造となっている。
従って、袋ナット5を緩めて流入口31から外せば、継ぎ手部15の中で伸縮ソケット2を、長さLだけ、上流側へ移動させることができる。
【0027】
図1(b)において、流出口32の先端の外面には雄ネジが加工されている。この雄ネジには、袋ナット5’の内面に設けた雌ネジが螺合している。
袋ナット5’の下流側端部には、内向きの鍔52が突出しており、ソケット7の上流側先端に設けた突条71と管軸方向に係合している。
【0028】
ここで、流出口32の先端と突条71の間には、リング状のパッキン6’が挟まれていて、袋ナット5’を流出口32の雄ネジに締め込むと、鍔52が突条71を上流側に引き込み、ソケット7と流出口32の間にパッキン6’を挟んで締め付ける構造となっている。
以上が、水道開栓前の配管状態である。
【0029】
続いて、水道開栓を行う時の操作内容を説明する。
まず、止水栓のハンドル14を回して止水し、袋ナット5を緩めて流入口31から外し、伸縮ソケット2を継ぎ手部15の中で上流側に向けて軸移動させる。この時、伸縮ソケット2の下流側に挿し込まれている逆止弁4を抜き出す。
【0030】
逆止弁4を抜き出してから、逆止弁4の代わりにリング状のパッキン6を流入口31の先端にセットし、伸縮ソケット2を下流側に向けて軸移動させて戻し、流入口31と突条21の間にパッキン6を挟む。
そのまま、袋ナット5を流入口31の雄ネジに締め込み、鍔51で突条21を下流側に引き出して、パッキン6を突条21と流入口31で挟んで締め付ける。
【0031】
つぎに、袋ナット5’のねじ込みを緩めて、流出口32から袋ナット5’を外す。これに伴い、流出口32と突条71の間に挟まれていたパッキン6’とソケット7も流出口32から離れる。
【0032】
流入口31側から取り外した逆止弁4の弁本体部45を、ソケット7の上流側先端に挿し込み、パッキン部41が上流側となる向きで、袋ナット5’を流出口32にねじ込み、環状のパッキン部41を突条71と流出口32の間に挟んで締め付ける。
このように、開栓時の逆止弁4は、弁本体部45を下流側、パッキン部41を上流側とした向きで取り付けられる。この逆止弁の向きは、逆流防止のために通常使用される場合と同じ向きである。
【0033】
逆止弁4やパッキン6の付け替えが終わり、袋ナット5、5’の締め込みが完了したら、止水栓のハンドル14を回して通水し、水道開栓を行う。
【0034】
続いて、水道開栓後の配管状態を説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態における開栓後の水道メータ付近の配管断面図であり、(a)は、水道メータの上流側、(b)は水道メータの下流側の図である。
【0035】
袋ナット5が流入口31の雄ネジにねじ込まれ、鍔51が突条21に掛かって伸縮ソケット2を下流側に引き、伸縮ソケット2の下流側先端と流入口31の先端の間にあるパッキン6を挟み付けている。
また、袋ナット5’が流出口32の雄ネジにねじ込まれ、鍔52が突条71に掛かってソケット7を上流側に引き、ソケット7の上流側先端と流出口32の先端の間にあるパッキン部41を挟み付けている。
【0036】
逆止弁4は、上流側に向けたパッキン部41が挟み付けられ、配管内に固定されている。この逆止弁4の一部分で、パッキン部41から下流側に伸びる筒状の部分、つまり、コイルバネと弁体42や弁座43等からなる弁本体部45は、ソケット7の内部に挿し込まれている。
このように、水道開栓後の逆止弁4は、弁本体部45を下流側、パッキン部41を上流側とした向きで取り付けられている。この逆止弁の向きは、逆流防止のために通常使用される場合と同じ向きである。
【0037】
ここで、逆止弁4の弁体42は、コイルバネによって上流側に付勢されているが、この付勢力よりも上流からの水圧の作用のほうが大きいため、下流に押されて移動し、弁座43から離れている。弁体42が弁座43から離れて出来た隙間から、水が下流へ流れている。
断水等によって、下流側の水圧のほうが高くなると、下流からの水圧とコイルバネの付勢によって、弁体42が上流側に押されて移動し、弁座43に当接して止まり、下流からの流れ(逆流)を遮断する。
【0038】
図3は、本発明の第1の実施形態における水道メータ付近の給水管の全体図で、(a)は開栓前の状態、(b)は開栓後のものである。
【0039】
つぎに、第2の実施形態について、図を使って説明する。なお、前述した給水管の配管と共通する部材については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図4は、本発明の第2の実施形態における水道メータの配管全体図であり、(a)は開栓前、(b)は開栓後の図である。
【0040】
水道開栓前、逆止弁4は、パッキン部41が下流側に向いた状態で、そのパッキン部41が流入口31と伸縮ソケット2の間に挟まれることで、配管に固定されている。この逆止弁の設置向きは、逆流防止のために通常使用される場合とは反対の向きとなっている。そのため、この逆止弁4が、水道メータ3に上流から水が流入するのを防いでいる。
【0041】
水道開栓を行うときは、止水栓1を閉じて水を止めてから、逆止弁4を一旦取り出す。そして、取り出した逆止弁を、パッキン部41が上流側に向くように反転させてから、同じ場所に付け直す。逆止弁の付け直しが終われば、止水栓のハンドルを回して通水(開栓)する。
【0042】
水道開栓後、逆止弁4は、パッキン部41を上流側に向け、流入口31と伸縮ソケット2の間にパッキン部41が挟まれることで配管に固定されている。この逆止弁の向きは、逆流防止のために通常使用される場合と同じ向きとなっている。よって、この逆止弁4は、上流からの水は通すが、下流からの逆流は防ぐものとなっている。
【0043】
続いて、第3の実施形態について、図を使って説明する。なお、前述した給水管の配管と共通する部材については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図5は、本発明の第3の実施形態における水道メータの配管全体図であり、(a)は開栓前、(b)は開栓後の図である。
【0044】
水道開栓前、逆止弁4は、パッキン部41を下流側に向け、流出口32とソケット7の間にそのパッキン部41が挟まれることで固定されている。この逆止弁の設置向きは、逆流防止のために通常使用される場合とは反対の向きとなっている。そのため、この逆止弁4が、水道メータ3から下流に水が流れ出るのを防いでいる。その結果、水道メータ3へ上流から水が流入することがない。
【0045】
水道開栓を行うときは、止水栓1を閉じて水を止めてから、逆止弁4を一旦取り出す。そして、取り出した逆止弁を、パッキン部41が上流側に向くように反転させてから、元の場所に付け直す。逆止弁の付け直しが終われば、止水栓のハンドル14を回して通水(開栓)する。
【0046】
水道開栓後の逆止弁4は、パッキン部41を上流側に向け、流出口32とソケット7の間にパッキン部41が挟まれることで配管に固定されている。この逆止弁の向きは、逆流防止のために通常使用される場合と同じ向きとなっている。よって、この逆止弁4は、水道メータ3から下流に流れ出る水は通すが、下流から水道メータ7への逆流は防ぐものとなっている。
【符号の説明】
【0047】
1、8 ハンドル式ボール止水栓(止水栓)
2 伸縮ソケット
3 水道メータ
4 パッキン一体型逆止弁(逆止弁)
5、5’ 袋ナット
6、6’ パッキン
7 ソケット
9 キャップ
10 保護キャップ
11 栓棒
12 栓棒押さえ
13 ハンドル軸
14 ハンドル
15 継ぎ手部
16 縮径部
21、71 突条
22 先端
31 流入口
32 流出口
41 パッキン部
42 弁体
43 弁座
45 弁本体部
51、52 鍔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道利用者への給水を管理するための給水制御方法であって、
給水を開始するための水道開栓を行うまでは、水道メータの流入口側か流出口側のいずれか一方に、逆止弁を、流入口から水道メータへの水の流れを止める向きに取り付け、
前記水道開栓を行うときに、水道メータの流入口側か流出口側のいずれか一方に、前記逆止弁を、流入口から水道メータに水が流れる向きに付け直すことを特徴とする給水制御方法。
【請求項2】
水道利用者への給水を管理するための給水制御方法であって、
給水を開始するための水道開栓を行うまでは、水道メータの流入口に、逆止弁を、流入口から水道メータへの水の流れを止める向きに取り付け、
前記水道開栓を行うときに、水道メータの流出口に、前記逆止弁を、流入口から水道メータに水が流れる向きに付け直すことを特徴とする給水制御方法。
【請求項3】
前記逆止弁がパッキン一体型逆止弁であることを特徴とする請求項1又は2に記載の給水制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57323(P2012−57323A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199719(P2010−199719)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000164896)栗本商事株式会社 (16)
【Fターム(参考)】