説明

給水管のライニング方法

【課題】建造物内の既設配管の内部をライニング方法であって、塗料を供給する塗装始端側の第1のエルボ内部の塗膜を厚く形成する。
【解決手段】既設配管のメータ取り付け基端部側から先端部側までと各分岐された支管毎に塗装区間を区分し、各区分された塗装区間をそれぞれ分岐された各支管の端部エルボから塗料を供給し基端部側に向けて塗料を吹き延ばして所要厚さの塗膜を配管全長に形成した後に、各分岐された支管の端部エルボ2aにソケット状の塗料収納部10を有する塗料供給部6と加熱流体の送気手段9とを接続し、塗料収納部10にコマ部材11の抵抗体を配設すると共に所要量の塗料を収容し、送気手段9により塗料収納部11の塗料を端部エルボ2aに吹き付けて塗装するものであって、塗料が供給されて塗装が行われる始端側の端部エルボ2aの内面の塗膜を厚く形成できるのであり、全体としてバランスの良い厚さの塗膜を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の集合住宅またはオフィスビル等の高層建造物に配設されている既設給水管を更生させるために、配管の内面を研掃して錆こぶ、スケール及び汚れ等の付着物を研掃除去した後に、無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を用いてライニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の既設給水管に関する更生方法として、配管の内面を研掃した後に、無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を用い送気流体により二回塗りまたは重ね塗りして多層ライニングする方法が従来例として公知である。
【0003】
この公知の技術の一つとしては、前工程(一次工程)でライニングして塗膜を指触によって硬化乾燥状態を判定し、その硬化乾燥状態がライニングのための送風でまだ流動の可能性を残している指触乾燥初期から中期の段階において次工程(二次工程)のライニングを行うようにしたことによって、前工程で塗布した塗膜がまだ滑面(略完全乾燥)になっていないことから、流動摩擦抵抗が比較的大であり、次工程での塗料の滑流動が抑制されて、特に、配管の継ぎ手部分において比較的厚手の塗膜が形成できるようになると共に、塗料に可溶性分子及び/または極性基が多く残っている段階で二次塗装がなされるので、一次塗装と二次塗装とで形成される塗膜同士が架橋反応によって一体化し、良質な塗膜を形成するというものである。(特許文献1参照)
【0004】
また、公知技術のもう一つとしては、塗料が収納される収納室と、該収納室に連通させ且つ上部に開口する第1のエアー供給手段及び第2のエアー供給手段と、前記収納室の底部寄り側面に設けられた処理パイプ(既設配管)への連結手段とを有し、前記第1のエアー供給手段からのエアー供給によって収納室内の塗料を押し出して主たるライニング(一次塗装)を行い、続いて第2のエアー供給手段からエアーを供給して追い打ちライニング(二次塗装)を行うようにしたことにより、特に塗料を一括して投入し、吹き延ばしてライニングする場合に生ずる始端側の塗膜厚さが薄くなる欠点を追い打ちライニングにより補正して全体を均一厚さの塗膜に形成するというものである。(特許文献2参照)
【0005】
【特許文献1】特開平11ー276990号公報
【特許文献2】特開平8ー229488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に開示された発明は、指触乾燥初期から中期の段階において次工程のライニングを遂行し、更に環境条件の影響を大きく受けないように加熱手段を付加して工程上の時間を大幅に短縮し、ライニングを同日施工で行うことを可能としたものであり、塗料を一気に押し出してライニング区間の略中間付近まで吹き延ばし、その吹き延ばしの段階で塗料は変成スラグ流から環状流に変遷し、環状流の状態で管壁に塗料を塗布して塗膜を形成するものであるが、吹き延ばしライニングのための送気時間が長くなることから、特に、始端部側近傍(第1エルボから第2エルボまで)の膜厚が薄くなるとの問題点を有する。
【0007】
また、前記特許文献2に開示された発明は、塗膜厚さの薄い始端部側について、始端部側から略中間部近傍まで追い打ちライニングを行うに当たり、塗料を始端部側の近いところで環状流で流動させ、始端部側から略中間部近傍まで先に形成された塗膜の上を重ね塗り状態にするものであるが、塗料が二次塗装区間の略中間部までの少ない量であり、その流動態様は、ほぼ送気と同時に形成される環状流であって、既設配管の一般的な配設状態においては実質的に一次塗装と大きな差のない送気時間をかけて管内を流動させること、それに加えて一次塗装されたゲル化点以前の塗面を送気流動させるため、第1エルボ部での重ね塗り効果がほとんど表れないという問題点を有している。
【0008】
従って、従来の一次塗装と二次塗装による多層塗装であっても、塗料吹き延ばしによる塗膜形成を行っているので、塗装しようとする既設配管の第1エルボを含む始端部側の膜厚が薄くなってしまうのであり、これを解消して始端部側の膜厚を充分確保できるライニング方法を提供することに解決課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する具体的な手段として本発明は、建築物内に配管され複数の支管が分岐されている既設配管の内部を研掃した後に無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を送気流体により吹き延ばして管内面に所要厚さの塗膜を形成するライニング方法であって、前記既設配管におけるメータが取り付けられる基端部側から先端部側までと各分岐された支管毎に塗装区間を区分し、各区分された塗装区間をそれぞれ分岐された各支管の端部エルボから塗料を供給し前記基端部側に向けて塗料を吹き延ばして所要厚さの塗膜を配管全長に形成した後に、各分岐された支管の端部エルボにソケット状の塗料収納部を有する塗料供給部と加熱流体の送気手段とを接続し、前記ソケット状の塗料収納部にコマ部材の抵抗体を配設すると共に所要量の塗料を収容し、送気手段により塗料収納部の塗料を端部エルボに吹き付けて塗装することを最も主要な特徴とするライニング方法である。
【0010】
また、本発明においては、配管全長に形成する塗膜は、一次塗装と二次塗装によって形成されること;支管の端部エルボに形成される塗膜は三次塗装によって形成されること;三次塗装のによる塗膜形成後に、70〜80℃に加熱した気体を送気して乾燥を行うこと;二次塗装および三次塗装は、その前に塗装した塗膜が少なくとも指触乾燥初期から中期に至る間に行うこと;を付加的な要件として含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る給水管のライニング方法は、要するに各区分された塗装区間をそれぞれ分岐された各支管の端部エルボから塗料を供給し前記基端部側に向けて塗料を吹き延ばして所要厚さの塗膜を配管全長に形成した後に、各分岐された支管の端部エルボにソケット状の塗料収納部を有する塗料供給部と加熱流体の送気手段とを接続し、前記ソケット状の塗料収納部にコマ部材の抵抗体を配設すると共に所要量の塗料を収容し、送気手段により塗料収納部の塗料を端部エルボに吹き付けて塗装することによって、塗料が供給されて塗装が行われる始端側の端部エルボの内面の塗膜を厚く形成できるのであり、全体としてバランスの良い厚さの塗膜を形成することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るライニング方法を図示の具体的な実施の形態を基づいて説明する。図1は、塗装しようとする既設配管の一例を示すものである。この既設配管1は、適宜の継手部材を介して複数の支管1a、1b、1c、……が分岐連結してあり、各支管の自由端部側には一般的に継手部材、即ち第1のエルボ2a、2b、2c、……を介して蛇口等の吐出部材が取り付けられている。また、各支管1a、1b、1c、……の立ち上がり部分においても継手部材、即ち第2のエルボ3a、3b、3c、……が設けられ、末端側の支管1aを除く各分岐連結部分には第3の継手部材(チース)4b、4c、……を介して連結され、基端部側はメータ取付端部1fである。なお、分岐した支管が複数回屈曲する場合には、その途中の屈曲部分に当然のこととして第4乃至第5のエルボが介在することは当然のことである。
【0013】
そして、このような既設配管1において、再生のためにライニングを行う場合には、図示したように、蛇口等の吐出部材を取り外した後に、第1のエルボ2a、2b、2c、……乃至第3の継手部材(チース)4b、4c、……及び支管1a、1b、1c、……を含めて既設配管1の全内部は、予め適宜の研掃手段により錆こぶ、スケール等の汚れが除去され、内部を乾燥させて清掃した状態にしてからライニングを行う。
【0014】
ライニングの一つの方法としては、内部が清掃された状態の既設配管1において、支管1aの先端部側からメータが取り付けられるメータ取付端部1fの基端部側までその内部にライニングを行う。この場合に、分岐されている支管毎に一応区分した状態でライニングを行うものであり、例えば、末端側の支管1aの場合は、基端側のメータ取付端部1fまでを区間Aとする。そして、支管1bは分岐点の第3の継手部材4bまでを区間Bとし、以下順次それに倣って区間C、D、……として区分し、各区分した区間毎にそれぞれ一括して塗料を供給し、所定圧のエアーによる吹き延ばし手段で順次ライニングする。
【0015】
投入される塗料の量は、その区間毎における管径及び長さ等を予め計算し、その管径及び長さにおいて、所定厚さの塗膜が形成される塗料の量を計算し、その計算された量に所要量増量した量の塗料を一括して投入するようにする。使用される塗料の一例としては、例えば、300cc/ポットライフが環境温度25℃で4〜7分程度であって、流動時粘度が12000〜20000cps程度で、且つチクソトロピック特性がTi値3.0〜5.0程度の無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料であり、周知の塗料である。
【0016】
そして、実際のライニングにおいては、各支管1a、1b、1c……の先端部側に予め所要量の塗料が収容できる作業管をそれぞれ取り付けておき、その作業管に図示していないが所定の気体を送気する手段が連結されるものである。そして、その作業管に所定量の塗料が一括して収容され、送気手段からの送気流体により塗料を送出してライニングするものである。
【0017】
このように準備し、ポットライフが比較的短い塗料を使用するので、各支管毎に一次塗装と二次塗装を行う。まず、区間Bから塗装を開始し区間C、D、……Aの順にライニングする。区間Bにおける一次塗装は、支管1bの端部から塗料を投入し送気流体により吹き延ばして分岐点の第3の継手部材4bまで至らせる。その吹き延ばしの初期段階では、塗料は変成スラグ流で流動しその後に環状流に変遷して管壁に塗料を塗布しながら支管1bの分岐点の第3の継手部材4bに達し、その第3の継手部材4bを僅かに越える位置まで塗布するようになる。
【0018】
続いて、区間Bの二次塗装を行う。この場合に一次塗装の塗膜が指触乾燥状態、即ち、塗料がほぼ流動しない程度に硬化した状態になった時点、つまり、環境にもよるが未だ一部において指に付着する指触乾燥初期において、二次塗装を行う。
【0019】
この二次塗装は、支管1bの第1のエルボ2bから第2のエルボ3bの位置までを基準にして、その位置を越えて略30〜50%先の位置まで達する程度の量の塗料を前記一次塗装と同様に一括投入し、送気流体により流動させて塗装を行う。
【0020】
次に、区間Cをライニングする。この場合も、前記同様に一次塗装と二次塗装を行う二であり、まず、一次塗装で支管1cの端部から塗料を投入し送気流体により吹き延ばし、変成スラグ流から環状流に変遷させて管壁に塗料を塗布しながら分岐点の第3の継手部材4cまで至らせ、その第3の継手部材4cを僅かに越える位置まで塗布する。
【0021】
続いて、区間Cの二次塗装を行う。この場合でも一次塗装の塗膜が指触乾燥初期状態になった時点で、支管1cの第1のエルボ2cから第2のエルボ3cの位置までを基準にして、その位置を越えて略30〜50%先の位置まで達する程度の量の塗料を前記一次塗装と同様に一括投入し、送気流体により流動させて塗装を行う。以下、同様に他の区間D、……についても一次塗装と二次塗装をそれぞれ行う。
【0022】
最後に、区間Aをライニングする。この場合も、まず、一次塗装は、支管1aの先端部から一括して塗料を投入し、基端部側のメータ取付端部1fまで塗料を送気流体により吹き延ばし、途中で変成スラグ流から環状流に変遷させて管壁に塗料を塗装する。この区間Aの配管の長さは比較的長いので、その長さに対応して計算された多くの量の塗料が投入されると共に、吹き延ばしの送気時間もそれに伴って長くなる。
【0023】
そして、区間Aにおいて、一次塗装が終了した後に、前記区間と同様に二次塗装を行うのである。この場合に、二次塗装は、支管1aの第1のエルボ2aから第2のエルボ3aの位置までを一応基準にして、その位置を越えて略40〜50%先の位置まで達する程度の量の塗料を前記一次塗装と同様に一括投入し、送気流体により流動させて塗装を行う。特に、支管1aの場合は、第2のエルボ3aから基端部側のメータ取付端部1fまでの長さが長いので、好ましくは、第2のエルボ3aを越えてその先の支管1bの分岐点である第3の継手部材4bまで変成スラグ流を維持できる量の塗料を投入して塗装した方が良いのである。
【0024】
前記いずれの区間においても、塗料の送気流体による吹き延ばし塗装は、各区間における略中間付近までは一括投入した塗料が変成スラグ流として流動し、その後に環状流として流動するのであり、変成スラグ流でも環状流でも管壁に対して押し付けられるように流動して塗装ができるのである。
【0025】
なお、一次塗装における送気流体での吹き延ばし塗装は、各区間において投入される塗料の量が、計算された量の略10〜20%程度増量させた量であり、吹き延ばしによって変成スラグ流から環状流になって塗装されるが、各支管1a、1b、1c、……における始端部側から第2のエルボ3a、3b、3c、……までの間が薄く形成され、その第2のエルボをわずかに越えた辺りから徐々に厚くなるのであり、始端部側の第1のエルボ2a、2b、2c……と終端部側の第3の継手部材4b、4c、……との間で塗膜厚さに比較的大きなバラツキが生じており、全体的に塗装された塗膜は各塗装区間の管長方向において必然的に始端側が薄く終端側が厚くなるという不均一な塗料分布になるのである。
【0026】
しかしながら、その不均一な塗料分布は、二次塗装による重ね塗りで修正されて全体として略均一厚さの塗膜が形成されるのである。各支管における二次塗装の場合には、送気圧・風量等を調整して行わなければならない部分もあるが、前記一次塗装と同様に全体として略一様に、投入した塗料を送気流体により変成スラグ流の状態で管内を流動させ、変成スラグ流が崩壊した時点で送気を停止する。これは、各分岐管において概ね一次塗装の略1/3〜1/4程度の時間である。
【0027】
そこで、この二次塗装の塗料分布について説明すると、送気流体により変成スラグ流のまま維持された状態で流動し、各区間における第2のエルボ3b、3c、……を越える位置まで流動し、流動方向の始端側が厚く終端側が薄く形成されるのである。つまり、変成スラグ流の場合には、送気流体で押されて流動するので、流動する塗料の先端側は徐々にその量が少なくなるので、必然的に塗料の流動する先端側が薄く後端側が厚く分布する状態になるのであり、その分布状態を維持するために変成スラグ流が崩壊した時点で送気を停止するのである。なお、変成スラグ流の崩壊後に送気流体の送気を続けて送気時間を長くすると、環状流になって後端側の塗料が順次先端側に流動して、一次塗装と同じように先端側が厚い塗膜状態になってしまい好ましくないのである。
【0028】
この二次塗装で形成される塗膜は一次塗装の塗膜の上に層状をなして形成され、変成スラグ流の崩壊時点で送気流体の送気を停止するので、一次塗装における後端側の薄い塗膜の上、主として第1エルボ2a、2b、2c、……から第2エルボ3a、3b、3c、……までの間における薄い塗膜の上に重ねて形成されるのであり、それによって、一次塗装による塗膜分布のアンバランスを調整することができるのである。従って、二次塗装における変成スラグ流が崩壊する時点というのは、各区間における第2のエルボ近傍を僅かに越えた任意の位置なのである。要するに、二次塗装は、一次塗装による塗膜の薄い部分、即ち、各区間における始端部側の主として第2のエルボを越える位置までの塗膜を補正するための塗装なのである。
【0029】
そして、変成スラグ流の崩壊に至るまでの送気時間は、配管の設置状況にもよるが、概ね1〜5sec以内であり、変成スラグ流の崩壊によって送気抵抗が減じることでその崩壊状況が検知できる。また、送気の停止は、配管の設置状況等によって、例えば、変成スラグ流崩壊後、3〜20secの範囲(一部が環状流初期の状態になる)において選択的に継続してもよい。
【0030】
二次塗装が終了した後に、環境などによって必要があれば、他端部側のメータ取付端部1fを開放した状態で、適宜の加熱手段により所定温度に加熱維持された送気流体を各支管1a、1b、1c、……の端部から導入することにより、塗布した塗料(塗膜)を加熱硬化させるようにしても良い。つまり、塗料を加温することにより、塗料の硬化反応(鎖状分子構造の形成速度)が促進され、塗膜面のゲル化点に達する時間を短縮でき、ゲル化点以降に進行する架橋反応も促進されるため、一次塗装と二次塗装の塗膜が一体化して所要厚さの塗膜が形成される。
【0031】
この送気によって一体化した塗膜が指触乾燥初期から指触乾燥中期の状態になった時に三次塗装を行う。この場合の三次塗装は、主として各支管における第1のエルボ2a、2b、3c、……を塗装するものであり、図2に示したように、一次塗装または二次塗装とは全く異なる塗装手段を各支管1a、1b、1c、……の第1のエルボ2a、2b、3c、……に接続して使用するものである。
【0032】
即ち、塗装手段は、塗料供給部6と、温度センサー7と、加熱手段8と、送風手段9とから概ね構成されている。前記塗料供給部6には、漏斗状の塗料投入用のソケット状の塗料収納部10が設けられており、該塗料収納部10の内部には塗料の押し出しを制限する抵抗体となるコマ部材11が配設されると共に、前記塗料収納部10の開口部にはプラグ12がねじ込み式で施蓋可能に設けられている。
【0033】
加熱手段8の内部には、電気的に発熱する発熱体13が設けられており、該発熱体13は制御部14によって発熱強度が制御されるのであり、該制御部14は温度センサー7からの温度情報によって設定された温度に制御されるようになっている。なお、温度センサー7および加熱手段8を有する加熱装置については、同一出願人に特開平11−24477号公報に記載したものがそのまま使用できる。
【0034】
送風手段9は、例えば適宜のコンプレッサーに接続されており、所要の風量を設定して送風できるものであり、この三次塗装においては、主として第1のエルボを塗装するものであるので、塗料の量および吹き延ばし(送風)時間が少なくて済む(3〜6秒)のであり、吹き延ばしの際に最初から加熱送気でも良いし、吹き延ばし後の乾燥工程で加熱送気でも良いのである。
【0035】
因みに、三次塗装に関して具体的な数値を挙げると、塗料のポットライフが25℃で4〜5分程度、塗料のTi値が4.0〜5.0程度で、塗料投入量は略25〜35cc、風速略3〜5m/sec、温度は略70〜80℃で、送風時間は略2〜6分程度である。なお、温度と送風時間は外気温度によって大きく変動する可能性がある。
【0036】
塗料供給部6の塗料収納部10内に配設されたコマ部材11は、図3に示したように、所要長さの柱状部11aの下方を膨らませた膨出部11bに形成し、柱状部に姿勢維持のために上下位置において直交する方向に複数本の棒状部材11cを突出形成したものである。また、柱状部の上端付近に塗料収納部10からピックアップするための孔11dを設けてある
【0037】
このような塗装手段を用いて三次塗装の状況を、図4に基づいて説明すると、まず、塗料投入用の塗料収納部10内にコマ部材11を配設しておき、その後、塗料収納部10内に略25ccの塗料15を投入し、例えば、加熱手段8の発熱体13に通電して加熱状態にし、送風手段9から、例えば、風速約5m/secで送気すると80℃に加熱された空気流が塗料15を吹き延ばすようになる。
【0038】
この場合に、塗料収納部10内に配設されたコマ部材11は、膨出部11bが塗料供給部6の壁面に当接して略中間位置で止まっており、柱状部11aの大半は塗料収納部10内に姿勢維持されて静止した状態になっており、送気によって投入されている塗料15が流動してもコマ部材11は揺動しないのである。
【0039】
送風手段9からの送気によって、膨出部11bの周囲にある塗料が塊になった状態で流動し、第1のエルボ2aの内面に塗りつけられる。その後に、塗料収納部10内の塗料が送気によって塗料供給部6の上面側の壁部を伝って第1のエルボ2a方向に順次流動し、図5に示したように、第1のエルボ2aにおける上方側の位置において、一次塗装と二次塗装とによって形成された薄い塗膜5の上に比較的厚い塗膜15aとして塗装されるのである。
【0040】
この三次塗装によって、塗料収納部10に残存する塗料が80°に加熱された風速5m/secの送気によって吹き延ばされて第1のエルボ2aの内側上面に塗布されるが、この吹き延ばしの送気時間はせいぜい1〜2秒程度であり、その後においては、その風速と温度を維持して所要時間(6分程度)の乾燥送気を行う。この送気を行うことによっても塗料が第1のエルボ2aから下方に流下し、第1のエルボ2aの下側においても所要厚さの塗膜15aが形成されることは当然であり、加熱空気によって第2のエルボ3aの内壁の塗膜を均一な厚みに修正することも解ったのである。いずれにしても、風量を弱めて乾燥送気を行えば、三次塗装による塗膜15aは、まだ流動性を有しているので、第1のエルボ2aから自然流下して支管1aの内部にも塗膜を形成する。
【0041】
このようにして各支管において、主として第1のエルボ2a、2b、2c、……に三次塗装を行うことにより、一次塗装と二次塗装で形成された塗膜5の上に三次塗装による塗膜15aを重ね塗りすることができ、しかも、一次塗装と二次塗装で形成された塗膜5が完全乾燥する前に三次塗装が遂行されるので、塗膜5と三次塗装の塗膜15aとの分子間で架橋反応が促進されて一体化した厚手の塗膜が形成できるのである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
建築物内に配管されている給水管などの既設配管の内部を無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を塗装するライニング方法であって、複数に分岐した支管からなる既設配管における各支管の一端部側から塗料を供給し吹き延ばして塗装するライニングの場合に、塗膜厚さのバラツキをなくすために、一次塗装の塗膜の上に二次塗装の塗膜を形成する工程とからなるものが公知であるが、一次塗装と二次塗装による塗膜を形成しても、塗料供給側の第1のエルボから第2のエルボに至る支管の内部、特に、第1のエルボにおいては、塗料供給の始端側は吹き延ばしの気体が供給され続けられるため、その吹き延ばしの気体によって塗料が流動してしまい、塗料を重ね塗りしても塗膜が薄くしか形成できなかったが、特殊な手法による三次塗装によって、充分な膜厚の塗膜を形成することができるものであり、既設配管として給水管に限らず、例えば、給湯管または工場などに配設したその他の配管などの管更生においても当然のこととして本発明のライニング方法を利用することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る実施例のライニング方法が適用できる集合住宅における給水管の状況を略示的に示した説明図である。
【図2】同ライニング方法の実施において、三次塗装に使用される塗装手段を略示的に示した側面図である。
【図3】同塗装手段の内部に組み込まれるコマ部材を示した側面図である。
【図4】同塗装手段の要部のみを拡大し且つ破断して略示的に示した側面図である。
【図5】本発明のライニング方法によって塗装された第1のエルボの内部を略示的に示した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 既設配管
1a、1b、1c、1d… 支管
1f メーター取付端部
2a、2b、2c、2d… 第1のエルボ(継手部材)
3a、3b、3c、3d… 第2のエルボ(継手部材)
4b、4c、4d… 第3の継手部材(チース)
5 一次塗装と二次塗装による塗膜
6 塗料供給部
7 温度センサー
8 加熱手段
9 送風手段
10 ソケット状の塗料収納部
11 コマ部材
12 プラグ
13 発熱体
14 制御部
15 塗料
15a 三次塗装による塗膜
A、B、C、D 一応区分した区間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物内に配管され複数の支管が分岐されている既設配管の内部を研掃した後に無溶剤型の二液性エポキシ樹脂塗料を送気流体により吹き延ばして管内面に所要厚さの塗膜を形成するライニング方法であって、
前記既設配管におけるメータが取り付けられる基端部側から先端部側までと各分岐された支管毎に塗装区間を区分し、各区分された塗装区間をそれぞれ分岐された各支管の端部エルボから塗料を供給し前記基端部側に向けて塗料を吹き延ばして所要厚さの塗膜を配管全長に形成した後に、
各分岐された支管の端部エルボにソケット状の塗料収納部を有する塗料供給部と加熱流体の送気手段とを接続し、
前記塗料収納部にコマ部材の抵抗体を配設すると共に所要量の塗料を収容し、
送気手段により塗料収納部の塗料を端部エルボに吹き付けて塗装すること
を特徴とする給水管のライニング方法。
【請求項2】
配管全長に形成する塗膜は、一次塗装と二次塗装によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の給水管のライニング方法。
【請求項3】
支管の端部エルボに形成される塗膜は三次塗装によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の給水管のライニング方法。
【請求項4】
三次塗装のによる塗膜形成後に、70〜80℃に加熱した気体を送気して乾燥を行うこと
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の給水管のライニング方法。
【請求項5】
二次塗装および三次塗装は、その前に塗装した塗膜が少なくとも指触乾燥初期から中期に至る間に行うこと
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の給水管のライニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296151(P2008−296151A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145723(P2007−145723)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(393011407)日本設備工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】