給水装置
【課題】給水装置を長時間停止した後に初めてポンプを始動するに際して、ウォーターハンマーの発生を防止することができる給水装置を提供する。
【解決手段】給水装置1は、ポンプPと、ポンプPを駆動するモータMと、吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合にポンプPを始動して、吐出側圧力が目標圧力になるようにインバータ20にポンプPの回転速度の指令を行う制御部35とを備える。制御部35は、吐出側圧力が始動圧力以下であるときに、給水装置1への電源投入後初めてポンプPが始動されるか否かを判断し、給水装置1への電源投入後初めてのポンプP始動でなければ通常の始動動作を行い、給水装置1への電源投入後初めてのポンプP始動であれば、吐出側圧力の上昇が通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行う。
【解決手段】給水装置1は、ポンプPと、ポンプPを駆動するモータMと、吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合にポンプPを始動して、吐出側圧力が目標圧力になるようにインバータ20にポンプPの回転速度の指令を行う制御部35とを備える。制御部35は、吐出側圧力が始動圧力以下であるときに、給水装置1への電源投入後初めてポンプPが始動されるか否かを判断し、給水装置1への電源投入後初めてのポンプP始動でなければ通常の始動動作を行い、給水装置1への電源投入後初めてのポンプP始動であれば、吐出側圧力の上昇が通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビルやマンションなどの建物に水を供給するための給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、建物に給水するための給水システムの全体構成を示す模式図である。図1に示すように、給水装置100は、建物10内に設けられている給水管7に接続され、水道本管または受水槽からの水をポンプにより増圧して給水管7の末端に設けられている給水栓(蛇口など)9に移送する。水道本管に直接接続される給水装置は、一般に、直結式給水装置と呼ばれ、受水槽に接続される給水装置は受水槽式給水装置と呼ばれている。
【0003】
給水装置100は、その吐出側圧力を測定する圧力センサ(図示せず)を有しており、この圧力センサの出力値が所定の始動圧力にまで低下したときに、ポンプが始動される。ポンプの運転中は、圧力センサの出力値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御が行われる。より具体的には、圧力センサの出力値と予め設定されている目標圧力との偏差を0とするためのフィードバック制御に基づき、ポンプがモータにより駆動される。
【0004】
停電や給水装置100の故障などの理由により、給水装置100が長い間停止することは起こりうる。給水装置100が停止しているときに建物10内で水が使用されると、給水装置100の吐出側圧力は大きく低下する。この状態で、給水装置100が再起動されると、圧力センサの出力値と目標圧力との偏差が大きいため、ポンプは急激に最高速度まで加速される。これは、フィードバック制御においては、一般的に定常運転時に最適な制御がなされるように設定されており、偏差が想定外に大きいと、ポンプの加速が急になるからである。
【0005】
給水装置100が停止しているときに建物10内で水が使用されると、空気が給水栓9から給水管7内に入り込むことがある。このような状態で、給水装置100が再起動されてポンプが急激に加速されると、ポンプにより送り出された水は、大きな運動エネルギーを伴って給水管7を進み、給水管7内に滞留している空気を押しつぶす。水により押しつぶされた空気の圧力は、ポンプの性能を遥かに超えた高い圧力となる。この圧力は空気から水に伝わり、ウォーターハンマー現象を引き起こす。このウォーターハンマーが起こると、給水管7およびその周囲の機器に衝撃を与え、これらに損傷を与える要因となる。
【0006】
通常、空気は給水管7の最上部に滞留するため、建物10によっては、図1に示すように、給水管7の最上部に吸排気弁11が設けられていることがある。この吸排気弁11は、給水管7内の空気を抜くため、または給水管7内に負圧が形成されたときに空気を給水管7に取り込むために設けられる。このような吸排気弁11が設けられている建物10では、上述のウォーターハンマーは防止される場合もある。しかしながら、ポンプによる送水の勢いが特に大きい場合や、吸排気弁11が設けられている場所とは異なる場所に空気が滞留している場合には、ウォーターハンマーは起こりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−200233号公報
【特許文献2】特開平9−217682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、給水装置を長時間停止した後に初めてポンプを始動するに際して、ウォーターハンマーの発生を防止することができる給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記給水装置への電源投入後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、停電からの復電後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、停電からの復電後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、停電からの復電後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、水道本管に直結されるポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記ポンプの流入圧力が所定の保護圧力以下の場合に前記ポンプの運転を禁止し、前記流入圧力が前記所定の保護圧力よりも高くなったときに前記ポンプの運転の禁止を解除し、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記吐出側圧力と、前記始動圧力よりも低い所定の極低圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記極低圧力よりも高いときには、通常の始動動作を行い、前記吐出側圧力が前記極低圧力以下のときには、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記通常の始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を第1の加速度で上昇させ、前記保護始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度で上昇させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記駆動装置には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記制御部には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記制御部には、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す圧力基準線が記憶されており、前記制御部は、前記吐出側圧力と、該吐出側圧力が測定された時間に対応する前記圧力基準線上の圧力との差に基づいて、前記保護始動動作中に前記第2の加速度を変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、所定の時間間隔で前記吐出側圧力と前記圧力基準線上の圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも低いときは、前記第2の加速度を大きくし、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも高いときは、前記第2の加速度を小さくすることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記通常の始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第1の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、前記保護始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第2の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記第1の目標圧力よりも低い圧力から所定の圧力まで上昇させることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す目標圧力線として記憶しており、前記目標圧力線は、時間0から所定の時間までの間に、前記圧力が0から前記所定の圧力まで増加する上昇勾配を有していることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記目標圧力線を設定するための入力部を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの始動時の吐出側圧力から前記所定の圧力まで上昇させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記通常始動動作時には、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記ポンプを締切運転しているときの目標圧力となる締切回転速度以上の速度領域で前記ポンプの運転を制御し、前記保護始動動作時には、前記制御部は、前記締切回転速度よりも低い回転速度を含む速度領域で前記ポンプの運転を制御することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記駆動装置に送る指令回転速度を所定の上昇勾配に沿って上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通常の始動動作よりもゆっくりとポンプの回転速度を上昇させるので、建物の給水管内に空気が存在しているときであっても、ウォーターハンマーの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】建物に給水するための給水システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る給水装置を示す模式図である。
【図3】給水装置の基本的な動作フローを示す図である。
【図4】推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。
【図5】制御部が保護始動動作または通常始動動作を選択的に行う制御フローを示す図である。
【図6】インバータの構造を模式的に示す図である。
【図7】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図8】インバータの他の構成例を模式的に示す図である。
【図9】インバータのさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図10】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図11】インバータのさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図12】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図13】図12に示す保護始動動作の変形例を示す図である。
【図14】制御部の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る給水装置を示す模式図である。図2に示すように、給水装置1の吸込口は、導入管5を介して水道管または受水槽に接続されている。給水装置1の吐出口には給水管7が接続されており、この給水管7は、建物10の各層階の給水栓9に連通している。給水装置1は、水道管または受水槽からの水を増圧して建物10の各給水栓9に水を供給するようになっている。
【0022】
給水装置1は、ポンプPと、このポンプPを駆動する駆動源としてのモータMと、モータMを可変速駆動する駆動装置としてのインバータ20と、ポンプPの吐出側に配置された逆止弁22と、逆止弁22の吐出側に配置された圧力センサ26、フロースイッチ24、および圧力タンク28とを備えている。これら構成要素は、キャビネット30内に収容されている。本実施形態では、ポンプP、モータM、逆止弁22、およびフロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、1組、または3組以上のポンプ、モータ、逆止弁、およびフロースイッチを設けてもよい。
【0023】
逆止弁22は、ポンプPの吐出口に接続された吐出管32に設けられており、ポンプPが停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチ24は吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。圧力センサ26は、吐出側圧力(すなわち、給水装置1に加わる背圧)を測定するための水圧測定器である。圧力タンク28は、ポンプPが停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0024】
給水装置1は、給水動作を制御する制御部35をさらに備えている。インバータ20、フロースイッチ24、圧力センサ26は、制御部35に信号線を介して接続されている。フロースイッチ24により水の流量が所定の値にまで低下したことが検知されると、制御部35はポンプPの運転速度を一時的に上げるようインバータ20に指令を出し、圧力タンク28に蓄圧してからポンプPの運転を停止させるようになっている。一方、吐出側圧力(吐出管32内の水圧)が所定の始動圧力まで低下すると、制御部35はポンプPの運転を開始するようインバータ20に指令を出す。制御部35には、ポンプPを始動させるトリガーとなる始動圧力が予め記憶されている。制御部35は、給水装置1の運転に関する様々な設定値を入力するための入力部35aを備えている。
【0025】
図3は、給水装置の基本的な動作フローを示す図である。ポンプPが停止している状態で建物10内で水が使用されると、ポンプPの吐出側圧力が低下する。この吐出側圧力、すなわち圧力センサ26の出力値が上記所定の始動圧力にまで低下すると、制御部35はポンプPを始動させる。制御部35はポンプPが始動されるごとにポンプ始動回数をカウントする。このポンプ始動回数は、給水装置1に電源が投入された後に何回ポンプPが始動されたかを示す回数である。このポンプ始動回数は制御部35の揮発性メモリー(図示せず)に記憶される。
【0026】
ポンプPの運転中は、圧力センサ26の出力値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御が行われる。建物10での水の使用が停止されると、ポンプPから吐き出される水の流量が低下する。フロースイッチ24は、ポンプPからの水の流量が所定の値まで低下したことを検知すると、その検知信号を制御部35に送る。制御部35はこの検知信号を受け、インバータ20に指令を出して吐出側圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプPの回転速度を増加させ、その後ポンプPを停止させる。
【0027】
吐出圧力一定制御では、ポンプPの吐出側圧力が所定の目標値を維持するように一定に制御される。推定末端圧力一定制御では、建物10内の給水管7での抵抗損失に応じて目標値を適切に変化させることにより、給水管7の末端での水圧が一定に制御される。図4は、推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。図4において、横軸は水の流量であり、縦軸は圧力すなわち揚程(ヘッド)である。
【0028】
図4に示すPAは、最大流量時に目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプPの吐出側圧力であり、PBは、ポンプPの締切運転時に(すなわち流量0時に)目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプPの吐出側圧力である。記号NMAXで示される曲線は、圧力PAを達成する回転速度NMAXでポンプPを運転したときのポンプPの性能曲線であり、記号NBで示される曲線は、締切運転時の圧力PBを達成する回転速度(締切回転速度)NBでポンプPを運転したときのポンプPの性能曲線である。抵抗曲線Rは、ポンプPから給水末端までの水の流量に応じた管路抵抗である。
【0029】
推定末端圧力一定制御においては、水の流量に応じた(抵抗曲線Rで示される)管路抵抗を考慮して、ポンプPの回転速度が制御される。すなわち、ポンプPの吐出側圧力が抵抗曲線Rに沿って変化するように圧力センサ26の出力値に基づいてポンプPの回転速度が制御される。したがって、流量が少ないときは、管路抵抗が少ないので、その分ポンプPの必要動力が低くなり、省エネルギー運転が実現される。
【0030】
ポンプPの運転中は、ポンプPの吐出側圧力がPAとPBとの間で制御される。したがって、定常運転時では、ポンプPはNB以上の回転速度で駆動される。なお、図4において、圧力PBが圧力PAに等しくなるように圧力PBを設定すると、制御部35は吐出圧力一定制御を実行する。この場合は、制御部35は、ポンプPの吐出側圧力がPA(=PB)を保つように、ポンプPの回転速度を制御する。
【0031】
直結型給水装置は、水道本管からの水を増圧して建物10内の給水管7に送水する。このような直結型給水装置では、何らかの原因で水道本管の圧力が低下しているときにポンプが始動されると、水道本管に負圧が形成されるおそれがある。そこで、水道本管に負圧が形成されないようにするために、給水装置1の吸込側圧力(以下、流入圧力という)が所定の保護圧力にまで低下しているときは、制御部35はポンプPを始動させないようにポンプPの運転を禁止する。この場合は、ポンプPの吸込側に圧力センサ(図示せず)が設けられ、制御部35は、この圧力センサの出力値を監視する。そして、圧力センサの出力値、すなわちポンプPの流入圧力が上記保護圧力にまで低下しているときは、ポンプPの吐出側圧力が始動圧力に達したときであっても、ポンプPは始動されない。流入圧力が増加して保護圧力を超えたときは、制御部35はポンプPの運転禁止を解除する。
【0032】
ウォーターハンマー現象は、建物10の給水管7に空気が入り込んでいる状態でポンプPが急激に加速されたときに発生しやすい。このようなウォーターハンマーが起きる状況は、ポンプPが長期間に亘って起動できなかったときに成立しやすい。そこで、ウォーターハンマーの発生を防止するために、制御部35は次のような保護始動動作を行う。図5は、制御部35が保護始動動作または通常始動動作を選択的に行う制御フローを示す図である。図5に示すように、制御部35は、ポンプPの吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、ポンプPの始動が以下に示す所定の条件を満たしているか否かを判断する。
(i)停電からの復電後初めてのポンプ始動か?
(ii)給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動か?
(iii)流入圧力低下による運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動か?
(iv)ポンプの吐出側圧力が所定の極低圧力値よりも低いか?
【0033】
上記条件(iv)に示す所定の極低圧力値とは、ポンプPを始動させるトリガーとしての始動圧力よりもさらに低い圧力のことをいう。ポンプ始動時の吐出側圧力が、給水管7の最高位高さから給水装置1の設置高さまでの水頭圧よりも低いと、給水管7内が負圧になり、空気が混入している可能性が高い。そのため、極低圧力値は、そのような水頭圧に等しいか、または安全を見込んでそのような水頭圧よりもやや高い値(例えば、上記水頭圧に2〜3mを加えた値)に設定されているのが好ましい。
【0034】
ポンプPの始動が、上述した条件(i)乃至(iv)のいずれにも当てはまらないときは、制御部35は通常の始動動作を行う。一方、ポンプPの始動が、上述した条件(i)乃至(iv)のいずれかに当てはまるときは、制御部35はポンプPの吐出側圧力の上昇が通常の始動動作のときよりも緩やかな保護始動動作を行う。
【0035】
次に、保護始動動作について詳細に説明する。上述した条件(i)乃至(iv)は制御部35によって判断される。条件(i)および(ii)が満たされるか否かは、次のようにして決定することができる。上述したように、ポンプPが始動されるたびに制御部35の揮発性メモリーにはポンプ始動回数が記憶される。停電が起きると、この揮発性メモリーに記憶されているポンプ始動回数が消去される。したがって、停電から復電した後に初めてポンプPが始動されるときは、ポンプ始動回数は1とカウントされる。同様に、給水装置1に電源を入れた後に初めてポンプPが始動されるときも、ポンプ始動回数は1とカウントされる。制御部35は、ポンプ始動回数が1であったときは、条件(i)または(ii)が満たされると判断して保護始動動作を行う。なお、停電からの復電ではなく条件(ii)が満たされる場合としては、ポンプ故障や受水槽渇水信号によるポンプ停止等の重程度の故障により給水装置が運転不能になった際のメンテナンスを行った後の始動が考えられる。
【0036】
条件(iii)は、直結型給水装置の場合に限定される。流入圧力の低下による運転禁止および運転禁止の解除は制御部35によって実行されるので、制御部35は、運転禁止が解除された後に初めてポンプPが始動されるか否かを判断することができる。条件(iv)に関しては、制御部35は、圧力センサ26から送信されてくるポンプPの吐出側圧力が予め設定された極低圧力値よりも低いか否かを判断することができる。
【0037】
上記条件(i)乃至(iv)のいずれかが満たされたとき、制御部35は、以下に説明する保護始動動作に従ってポンプPを始動させる。保護始動動作では、ポンプPの吐出側圧力が急激に上昇しないように、ポンプPの回転速度を通常の始動動作時よりも緩やかに上昇させる。図6は、インバータ20の構造を模式的に示す図である。図6に示すように、インバータ20は、比較部20A、変速部20B、加速度切換部20C、ドライブ信号生成部20D、およびスイッチング素子20Eを備えている。比較部20Aは、制御部35から送信される指令回転速度と現在の回転速度とを比較し、その偏差を出力する。変速部20Bは、その偏差が0となるように、加速度切換部20Cによって特定される加速度に従って現在の回転速度を増加または減少させる。
【0038】
加速度切換部20Cには、加速度1および加速度2が予め設定されている。加速度1,2は、変速部20Bが上記偏差に基づいて現在の回転速度を加減速するときの加速度を決定する。加速度1は、通常始動動作で使用される第1の加速度である。一方、加速度2は、保護始動動作で使用される第2の加速度であり、ポンプPの回転速度を緩やかに上昇させるべく加速度1よりも低く設定されている(加速度1>加速度2)。なお、本実施形態では、2つの加速度1および加速度2がインバータ20に記憶されているが、3つ以上の加速度を記憶してもよい。
【0039】
加速度切換部20Cは制御部35に接続されており、制御部35から加速度指令信号が加速度切換部20Cに送信されるようになっている。加速度切換部20Cは、この加速度指令信号を受けて、変速部20Bに送る指令加速度を加速度1と加速度2との間で切り換える。通常の運転では、加速度1が選択される。一方、上記条件(i)乃至(iv)のいずれかが満たされたときは、制御部35は、加速度1から加速度2に切り換えるように加速度切換部20Cに加速度指令信号を発信する。加速度切換部20Cは、この加速度指令信号を受けて、加速度1から加速度2に切り換える。加速度2は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな回転速度の上昇勾配に設定される。
【0040】
ドライブ信号生成部20Dは、変速部20Bから出力された回転速度に対応するドライブ信号を生成する。スイッチング素子20Eは、このドライブ信号に基づいて動作し、モータMの駆動電力がインバータ20からモータMに出力される。
【0041】
図7は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。図7に示すグラフにおいて、縦軸はポンプPの吐出側圧力、すなわち圧力センサ26の出力値を示し、横軸はポンプPの始動から経過した時間、すなわちポンプPの運転時間を示す。図7に示すP0は、通常始動動作時に使用される所定の標準目標圧力であり、予め制御部35に記憶されている。この標準目標圧力P0は、図4に示す圧力PBから圧力PAまでの範囲から選択されることが好ましい。典型的には、標準目標圧力P0は圧力PAに設定される。
【0042】
図7に示す例では、ポンプPの始動時の吐出側圧力は0に近い値となっている。ポンプPが始動されると、ポンプPの回転速度は加速度2に従って緩やかに上昇する。ポンプPの回転速度の上昇とともに、吐出側圧力も図7に示すように緩やかに上昇する。吐出側圧力が標準目標圧力P0に達すると、制御部35は加速度切換部20Cに加速度指令信号を送信する。この加速度指令信号を受け、加速度切換部20Cは、変速部20Bに送る指令加速度を加速度2から加速度1に切り換える。その後のポンプPの回転速度は、加速度1に基づいて加減速される。保護始動動作は、吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。
【0043】
なお、インバータ20の加速度切換部20Cを省き、制御部35が変速部20Bに加速度指令信号として加速度の値を直接送信してもよい。具体的には、図8に示すように、制御部35は、指令加速度としての加速度1または加速度2を変速部20Bに直接送信する。この場合でも、図7に示すような同様の保護始動動作が行なわれる。
【0044】
図9は、インバータ20のさらに他の構成例を模式的に示す図である。特に説明しない構成は、図6に示す構成と同様である。この例では、保護始動動作用の第2の加速度として、複数の加速度(加速度2a,加速度2b,および加速度2c)が加速度切換部20Cに設けられている。加速度2aは、通常始動動作時に使用される加速度1よりも小さく、加速度2bは加速度2aよりも小さく、加速度2cは加速度2bよりも小さく設定されている(加速度1>加速度2a>加速度2b>加速度2c)。
【0045】
図10は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。制御部35には、ポンプPの始動からの運転時間と吐出側圧力との関係を示す圧力基準線RLが予め記憶されている。この圧力基準線RLは、時間0から所定の時間T3までの間に、圧力が0から標準目標圧力P0までほぼ直線的に上昇する上昇勾配を有し、時間T3以降は圧力が標準目標圧力P0に固定されている。標準目標圧力P0は、上述したように、制御部35に予め記憶されている値である。圧力基準線RLの上昇勾配は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな上昇勾配である。
【0046】
制御部35は、所定の時間が経過するたびに(図10に示す例では時間T1,T2が経過するときに)、圧力センサ26によって測定されたポンプPの吐出側圧力と、同時間での圧力基準線RL上の対応する圧力とを比較する。現在の吐出側圧力が圧力基準線RL上の対応する圧力よりも高ければ、変速部20Bに送る指令加速度を現在の加速度からより低い加速度に切り換える。一方、吐出側圧力が圧力基準線RL上の対応する圧力よりも低ければ、変速部20Bに送る加速度の指令値を現在の加速度からより高い加速度に切り換える。図10に示す例では、時間T1では、吐出側圧力が圧力基準線RLを上回っているので、加速度2bから加速度2cに切り換えられる。一方、時間T2では、吐出側圧力が圧力基準線RLを下回っているので、加速度2cから加速度2bに切り換えられる。
【0047】
ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作が終了し、変速部20Bに送る加速度の指令値は加速度1に切り換えられる。保護始動動作の後は、通常の運転制御の下でポンプPが運転される。所定の時間T3に達したときに保護始動動作を終了することは可能であるが、時間T3の経過後に吐出側圧力が標準目標圧力P0を大きく下回っていると、保護始動動作の終了と同時にポンプPが急加速する可能性がある。したがって、安全を確保する観点から、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作を終了させることが好ましい。
【0048】
保護始動動作に使用される第2の加速度の数はこの例では3つであるが、4つ以上の第2の加速度をインバータ20に記憶してもよい。また、図8の例と同じように、インバータ20の加速度切換部20Cを省き、制御部35が直接変速部20Bに指令加速度(加速度1,加速度2a,加速度2b,…)を送信してもよい。さらに、吐出側圧力と圧力基準線RL上の対応圧力とを比較する時間を、より細かい時間間隔で設定することも可能である。
【0049】
図11は、インバータ20のさらに他の構成例を模式的に示す図である。特に説明しない構成は、図6に示す構成と同様である。この例では、インバータ20には、保護始動動作に用いるための加速度切換部20Cは設けられていなく、制御部35からインバータ20には加速度指令信号は送信されない。これに代えて、制御部35は、保護始動動作中に目標圧力を徐々に増加させ、これによりポンプPの回転速度を緩やかに増加させる。
【0050】
図12は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。制御部35には、上記標準目標圧力(第1の目標圧力)P0に加えて、図12に示すような緩やかな上昇勾配を有する目標圧力線(第2の目標圧力)TLが予め記憶されている。制御部35は、通常始動動作時には、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に一致するようにフィードバック制御に基づいてポンプPの回転速度を制御する。一方、保護始動動作時には、制御部35はポンプPの吐出側圧力がこの目標圧力線TLに沿って上昇するように、インバータ20を介してポンプPの回転速度を制御する。この目標圧力線TLは、時間0から所定の標準時間T0までの間に、圧力が0から標準目標圧力P0まで直線的に増加する上昇勾配を有し、標準時間T0以降は圧力が標準目標圧力P0に固定されている。目標圧力線TLの上昇勾配は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな上昇勾配である。
【0051】
制御部35は、通常始動動作時と同様に、圧力センサ26の出力値と目標圧力線TL上の目標圧力との偏差が0となるようにフィードバック制御を行う。すなわち、制御部35は、運転時間に従って目標圧力を目標圧力線TLに沿って変化させながらフィードバック制御に基づいてポンプPの回転速度を制御する。ポンプPの定常運転時および通常始動動作時では、制御部35は、図4に示す締切運転時の回転速度NB以上の速度領域でポンプPが回転するようにインバータ20に回転速度指令信号を発する。一方、保護始動動作時には、ウォーターハンマーの発生を防止するために、ポンプPをより低い回転速度で駆動する必要がある。したがって、保護始動動作時では、制御部35は、回転速度NBよりも低い回転速度を含む広い速度領域でポンプPが回転するようにインバータ20に回転速度指令信号を発する。
【0052】
図12に示すように、目標圧力線TLは時間0から標準時間T0までの時間領域では緩やかな上昇勾配を有しているので、ポンプPの吐出側圧力もこの目標圧力線TLに追随して緩やかに上昇する。図12に示す例では、ポンプPの吐出側圧力は、0に近い値P1から目標圧力線TLに沿って緩やかに上昇し、標準時間T0をやや超えた時点で標準目標圧力P0に達する。保護始動動作は、吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。
【0053】
上述したように、標準目標圧力P0は制御部35に予め記憶されている。したがって、目標圧力線TLは、標準時間T0および上昇勾配(目標圧力線TLの傾き)のいずれか一方を決定することによって設定することができる。具体的には、目標圧力線TLの設定は、標準時間T0または上昇勾配を入力部35aを介して制御部35に入力することによって行われる。
【0054】
標準時間T0は、吐出側圧力が0から標準目標圧力P0まで上昇するのに要する時間である。この標準時間T0は、給水装置1が設置される現場の状況によって調整されることが好ましいが、通常は30秒から2分の範囲内で設定される。上昇勾配は、単位時間当たりの圧力または揚程の増加幅として表される。例えば、上昇勾配は、1秒間当たりに1m程度の揚程の増加幅として設定される。いずれの場合でも、標準目標圧力P0は予め設定された値であるので、標準時間T0および上昇勾配のいずれか一方が設定されれば、他方も一意的に定まる。
【0055】
保護始動動作は、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。そして、保護始動動作の後は、通常の運転制御の下でポンプPが運転される。標準時間T0に達したときに保護始動動作を終了することは可能であるが、標準時間T0の経過後に吐出側圧力が標準目標圧力P0を大きく下回っていると、保護始動動作の終了と同時にポンプPが急加速する可能性がある。したがって、この例においても、安全を確保する観点から、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作を終了させることが好ましい。
【0056】
図13は、図12に示す保護始動動作の変形例を示す図である。ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxは、状況ごとに変わりうる。保護始動動作の時間を短くするためには、図13に示すように、ポンプPの始動時の吐出側圧力に応じて目標圧力線の始点を変化させることが好ましい。具体的には、図13に示すように、ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxを始点とする新たな目標圧力線TL’を設定する。この場合、目標圧力線TL’の上昇勾配(傾き)はオリジナルの目標圧力線TLと同じである。すなわち、時間0での目標圧力線TL’の傾きはそのままに維持される。さらに、目標圧力線TL’の最大値も不変であり、標準目標圧力P0に維持される。
【0057】
図13に示すような目標圧力線TL’は、次のようにして設定することができる。当初の目標圧力線TL(図13の一点鎖線で示す)は、上述したように、標準時間T0または上昇勾配(目標圧力線TLの傾き)を特定することによって設定される。標準時間T0から目標圧力線が設定される場合、ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxに対応する時間Txは、図13に示すように、目標圧力線TLから求められる。制御部35は、標準時間T0から時間Txを引き算することにより時間T0’を求め、時間0から時間T0’までの間に吐出側圧力がPxからP0まで上昇する上昇勾配を有する新たな目標圧力線TL’を生成する。一方、上昇勾配から目標圧力線が設定される場合は、制御部35は、入力された上昇勾配(傾き)と、時間0での圧力Pxの値と、標準目標圧力P0とから目標圧力線TL’を生成することができる。このように、ポンプPの始動時における吐出側圧力に応じて目標圧力線を平行移動させることにより、図12に示す例に比べて、保護始動動作の時間を短くすることができる。
【0058】
図14は、インバータ20への指令回転速度を徐々に増加させる制御部35の一構成例を示す模式図である。図14に示すように、比較部35Aは、目標圧力と圧力センサ26によって測定された吐出側圧力との偏差を算出し、その偏差をPI動作部35Bに送る。PI動作部35Bは、偏差を0とするためのポンプPの指令回転速度を演算し、それを加速度リミッタ35Cに送る。加速度リミッタ35Cは、指令回転速度の増加幅を所定の値に制限するように構成される。具体的には、加速度リミッタ35Cは、PI動作部35Bで演算された指令回転速度が加速度リミッタ35Cに入力されるたびに、該加速度リミッタ35Cに一時的に記憶されている前回の指令回転速度に対する増加幅を計算する。そして、加速度リミッタ35Cは、その増加幅が所定の限度幅を超えている場合には、入力された指令回転速度にその限度幅の上限値または下限値を加えた新たな指令回転速度を出力する。
【0059】
インバータ20は、上述のように生成された指令回転速度に基づいて、モータMを駆動する。このような加速度リミッタ35Cの動作により、指令回転速度はポンプPの運転時間とともに所定の上昇勾配に沿って増加する。したがって、上述した例と同様に、保護始動動作時のポンプPの吐出側圧力は緩やかに上昇する。保護始動動作が終了した後は、加速度リミッタ35Cはバイパスされ、これにより通常の制御動作が行なわれる。
【0060】
以上述べたように、本発明の上記実施形態によれば、ポンプPの吐出側圧力が緩やかに上昇するので、建物10の給水管7内に空気が滞留している状態でポンプが始動されたときであっても、ウォーターハンマーの発生を防止することが可能である。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 給水装置
20 インバータ
22 逆止弁
24 フロースイッチ
26 圧力センサ
28 圧力タンク
35 制御部
P ポンプ
M モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフィスビルやマンションなどの建物に水を供給するための給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、建物に給水するための給水システムの全体構成を示す模式図である。図1に示すように、給水装置100は、建物10内に設けられている給水管7に接続され、水道本管または受水槽からの水をポンプにより増圧して給水管7の末端に設けられている給水栓(蛇口など)9に移送する。水道本管に直接接続される給水装置は、一般に、直結式給水装置と呼ばれ、受水槽に接続される給水装置は受水槽式給水装置と呼ばれている。
【0003】
給水装置100は、その吐出側圧力を測定する圧力センサ(図示せず)を有しており、この圧力センサの出力値が所定の始動圧力にまで低下したときに、ポンプが始動される。ポンプの運転中は、圧力センサの出力値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御が行われる。より具体的には、圧力センサの出力値と予め設定されている目標圧力との偏差を0とするためのフィードバック制御に基づき、ポンプがモータにより駆動される。
【0004】
停電や給水装置100の故障などの理由により、給水装置100が長い間停止することは起こりうる。給水装置100が停止しているときに建物10内で水が使用されると、給水装置100の吐出側圧力は大きく低下する。この状態で、給水装置100が再起動されると、圧力センサの出力値と目標圧力との偏差が大きいため、ポンプは急激に最高速度まで加速される。これは、フィードバック制御においては、一般的に定常運転時に最適な制御がなされるように設定されており、偏差が想定外に大きいと、ポンプの加速が急になるからである。
【0005】
給水装置100が停止しているときに建物10内で水が使用されると、空気が給水栓9から給水管7内に入り込むことがある。このような状態で、給水装置100が再起動されてポンプが急激に加速されると、ポンプにより送り出された水は、大きな運動エネルギーを伴って給水管7を進み、給水管7内に滞留している空気を押しつぶす。水により押しつぶされた空気の圧力は、ポンプの性能を遥かに超えた高い圧力となる。この圧力は空気から水に伝わり、ウォーターハンマー現象を引き起こす。このウォーターハンマーが起こると、給水管7およびその周囲の機器に衝撃を与え、これらに損傷を与える要因となる。
【0006】
通常、空気は給水管7の最上部に滞留するため、建物10によっては、図1に示すように、給水管7の最上部に吸排気弁11が設けられていることがある。この吸排気弁11は、給水管7内の空気を抜くため、または給水管7内に負圧が形成されたときに空気を給水管7に取り込むために設けられる。このような吸排気弁11が設けられている建物10では、上述のウォーターハンマーは防止される場合もある。しかしながら、ポンプによる送水の勢いが特に大きい場合や、吸排気弁11が設けられている場所とは異なる場所に空気が滞留している場合には、ウォーターハンマーは起こりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−200233号公報
【特許文献2】特開平9−217682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、給水装置を長時間停止した後に初めてポンプを始動するに際して、ウォーターハンマーの発生を防止することができる給水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記給水装置への電源投入後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、停電からの復電後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、停電からの復電後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、停電からの復電後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、水道本管に直結されるポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記ポンプの流入圧力が所定の保護圧力以下の場合に前記ポンプの運転を禁止し、前記流入圧力が前記所定の保護圧力よりも高くなったときに前記ポンプの運転の禁止を解除し、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、ポンプと、前記ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速駆動する駆動装置と、前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記吐出側圧力と、前記始動圧力よりも低い所定の極低圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記極低圧力よりも高いときには、通常の始動動作を行い、前記吐出側圧力が前記極低圧力以下のときには、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記通常の始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を第1の加速度で上昇させ、前記保護始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度で上昇させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記駆動装置には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする。
【0014】
本発明の好ましい態様は、前記制御部には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記制御部には、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す圧力基準線が記憶されており、前記制御部は、前記吐出側圧力と、該吐出側圧力が測定された時間に対応する前記圧力基準線上の圧力との差に基づいて、前記保護始動動作中に前記第2の加速度を変化させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、所定の時間間隔で前記吐出側圧力と前記圧力基準線上の圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも低いときは、前記第2の加速度を大きくし、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも高いときは、前記第2の加速度を小さくすることを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記通常の始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第1の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、前記保護始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第2の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記第1の目標圧力よりも低い圧力から所定の圧力まで上昇させることを特徴とする。
【0017】
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す目標圧力線として記憶しており、前記目標圧力線は、時間0から所定の時間までの間に、前記圧力が0から前記所定の圧力まで増加する上昇勾配を有していることを特徴とする。
【0018】
本発明の好ましい態様は、前記制御部は、前記目標圧力線を設定するための入力部を有していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの始動時の吐出側圧力から前記所定の圧力まで上昇させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記通常始動動作時には、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記ポンプを締切運転しているときの目標圧力となる締切回転速度以上の速度領域で前記ポンプの運転を制御し、前記保護始動動作時には、前記制御部は、前記締切回転速度よりも低い回転速度を含む速度領域で前記ポンプの運転を制御することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記保護始動動作中、前記制御部は、前記駆動装置に送る指令回転速度を所定の上昇勾配に沿って上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通常の始動動作よりもゆっくりとポンプの回転速度を上昇させるので、建物の給水管内に空気が存在しているときであっても、ウォーターハンマーの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】建物に給水するための給水システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る給水装置を示す模式図である。
【図3】給水装置の基本的な動作フローを示す図である。
【図4】推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。
【図5】制御部が保護始動動作または通常始動動作を選択的に行う制御フローを示す図である。
【図6】インバータの構造を模式的に示す図である。
【図7】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図8】インバータの他の構成例を模式的に示す図である。
【図9】インバータのさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図10】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図11】インバータのさらに他の構成例を模式的に示す図である。
【図12】保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。
【図13】図12に示す保護始動動作の変形例を示す図である。
【図14】制御部の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る給水装置を示す模式図である。図2に示すように、給水装置1の吸込口は、導入管5を介して水道管または受水槽に接続されている。給水装置1の吐出口には給水管7が接続されており、この給水管7は、建物10の各層階の給水栓9に連通している。給水装置1は、水道管または受水槽からの水を増圧して建物10の各給水栓9に水を供給するようになっている。
【0022】
給水装置1は、ポンプPと、このポンプPを駆動する駆動源としてのモータMと、モータMを可変速駆動する駆動装置としてのインバータ20と、ポンプPの吐出側に配置された逆止弁22と、逆止弁22の吐出側に配置された圧力センサ26、フロースイッチ24、および圧力タンク28とを備えている。これら構成要素は、キャビネット30内に収容されている。本実施形態では、ポンプP、モータM、逆止弁22、およびフロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、1組、または3組以上のポンプ、モータ、逆止弁、およびフロースイッチを設けてもよい。
【0023】
逆止弁22は、ポンプPの吐出口に接続された吐出管32に設けられており、ポンプPが停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチ24は吐出管32を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。圧力センサ26は、吐出側圧力(すなわち、給水装置1に加わる背圧)を測定するための水圧測定器である。圧力タンク28は、ポンプPが停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0024】
給水装置1は、給水動作を制御する制御部35をさらに備えている。インバータ20、フロースイッチ24、圧力センサ26は、制御部35に信号線を介して接続されている。フロースイッチ24により水の流量が所定の値にまで低下したことが検知されると、制御部35はポンプPの運転速度を一時的に上げるようインバータ20に指令を出し、圧力タンク28に蓄圧してからポンプPの運転を停止させるようになっている。一方、吐出側圧力(吐出管32内の水圧)が所定の始動圧力まで低下すると、制御部35はポンプPの運転を開始するようインバータ20に指令を出す。制御部35には、ポンプPを始動させるトリガーとなる始動圧力が予め記憶されている。制御部35は、給水装置1の運転に関する様々な設定値を入力するための入力部35aを備えている。
【0025】
図3は、給水装置の基本的な動作フローを示す図である。ポンプPが停止している状態で建物10内で水が使用されると、ポンプPの吐出側圧力が低下する。この吐出側圧力、すなわち圧力センサ26の出力値が上記所定の始動圧力にまで低下すると、制御部35はポンプPを始動させる。制御部35はポンプPが始動されるごとにポンプ始動回数をカウントする。このポンプ始動回数は、給水装置1に電源が投入された後に何回ポンプPが始動されたかを示す回数である。このポンプ始動回数は制御部35の揮発性メモリー(図示せず)に記憶される。
【0026】
ポンプPの運転中は、圧力センサ26の出力値に基づいて推定末端圧力一定制御または吐出圧力一定制御が行われる。建物10での水の使用が停止されると、ポンプPから吐き出される水の流量が低下する。フロースイッチ24は、ポンプPからの水の流量が所定の値まで低下したことを検知すると、その検知信号を制御部35に送る。制御部35はこの検知信号を受け、インバータ20に指令を出して吐出側圧力が所定の停止圧力に達するまでポンプPの回転速度を増加させ、その後ポンプPを停止させる。
【0027】
吐出圧力一定制御では、ポンプPの吐出側圧力が所定の目標値を維持するように一定に制御される。推定末端圧力一定制御では、建物10内の給水管7での抵抗損失に応じて目標値を適切に変化させることにより、給水管7の末端での水圧が一定に制御される。図4は、推定末端圧力一定制御の一例を説明するためのポンプの運転特性曲線図である。図4において、横軸は水の流量であり、縦軸は圧力すなわち揚程(ヘッド)である。
【0028】
図4に示すPAは、最大流量時に目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプPの吐出側圧力であり、PBは、ポンプPの締切運転時に(すなわち流量0時に)目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプPの吐出側圧力である。記号NMAXで示される曲線は、圧力PAを達成する回転速度NMAXでポンプPを運転したときのポンプPの性能曲線であり、記号NBで示される曲線は、締切運転時の圧力PBを達成する回転速度(締切回転速度)NBでポンプPを運転したときのポンプPの性能曲線である。抵抗曲線Rは、ポンプPから給水末端までの水の流量に応じた管路抵抗である。
【0029】
推定末端圧力一定制御においては、水の流量に応じた(抵抗曲線Rで示される)管路抵抗を考慮して、ポンプPの回転速度が制御される。すなわち、ポンプPの吐出側圧力が抵抗曲線Rに沿って変化するように圧力センサ26の出力値に基づいてポンプPの回転速度が制御される。したがって、流量が少ないときは、管路抵抗が少ないので、その分ポンプPの必要動力が低くなり、省エネルギー運転が実現される。
【0030】
ポンプPの運転中は、ポンプPの吐出側圧力がPAとPBとの間で制御される。したがって、定常運転時では、ポンプPはNB以上の回転速度で駆動される。なお、図4において、圧力PBが圧力PAに等しくなるように圧力PBを設定すると、制御部35は吐出圧力一定制御を実行する。この場合は、制御部35は、ポンプPの吐出側圧力がPA(=PB)を保つように、ポンプPの回転速度を制御する。
【0031】
直結型給水装置は、水道本管からの水を増圧して建物10内の給水管7に送水する。このような直結型給水装置では、何らかの原因で水道本管の圧力が低下しているときにポンプが始動されると、水道本管に負圧が形成されるおそれがある。そこで、水道本管に負圧が形成されないようにするために、給水装置1の吸込側圧力(以下、流入圧力という)が所定の保護圧力にまで低下しているときは、制御部35はポンプPを始動させないようにポンプPの運転を禁止する。この場合は、ポンプPの吸込側に圧力センサ(図示せず)が設けられ、制御部35は、この圧力センサの出力値を監視する。そして、圧力センサの出力値、すなわちポンプPの流入圧力が上記保護圧力にまで低下しているときは、ポンプPの吐出側圧力が始動圧力に達したときであっても、ポンプPは始動されない。流入圧力が増加して保護圧力を超えたときは、制御部35はポンプPの運転禁止を解除する。
【0032】
ウォーターハンマー現象は、建物10の給水管7に空気が入り込んでいる状態でポンプPが急激に加速されたときに発生しやすい。このようなウォーターハンマーが起きる状況は、ポンプPが長期間に亘って起動できなかったときに成立しやすい。そこで、ウォーターハンマーの発生を防止するために、制御部35は次のような保護始動動作を行う。図5は、制御部35が保護始動動作または通常始動動作を選択的に行う制御フローを示す図である。図5に示すように、制御部35は、ポンプPの吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、ポンプPの始動が以下に示す所定の条件を満たしているか否かを判断する。
(i)停電からの復電後初めてのポンプ始動か?
(ii)給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動か?
(iii)流入圧力低下による運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動か?
(iv)ポンプの吐出側圧力が所定の極低圧力値よりも低いか?
【0033】
上記条件(iv)に示す所定の極低圧力値とは、ポンプPを始動させるトリガーとしての始動圧力よりもさらに低い圧力のことをいう。ポンプ始動時の吐出側圧力が、給水管7の最高位高さから給水装置1の設置高さまでの水頭圧よりも低いと、給水管7内が負圧になり、空気が混入している可能性が高い。そのため、極低圧力値は、そのような水頭圧に等しいか、または安全を見込んでそのような水頭圧よりもやや高い値(例えば、上記水頭圧に2〜3mを加えた値)に設定されているのが好ましい。
【0034】
ポンプPの始動が、上述した条件(i)乃至(iv)のいずれにも当てはまらないときは、制御部35は通常の始動動作を行う。一方、ポンプPの始動が、上述した条件(i)乃至(iv)のいずれかに当てはまるときは、制御部35はポンプPの吐出側圧力の上昇が通常の始動動作のときよりも緩やかな保護始動動作を行う。
【0035】
次に、保護始動動作について詳細に説明する。上述した条件(i)乃至(iv)は制御部35によって判断される。条件(i)および(ii)が満たされるか否かは、次のようにして決定することができる。上述したように、ポンプPが始動されるたびに制御部35の揮発性メモリーにはポンプ始動回数が記憶される。停電が起きると、この揮発性メモリーに記憶されているポンプ始動回数が消去される。したがって、停電から復電した後に初めてポンプPが始動されるときは、ポンプ始動回数は1とカウントされる。同様に、給水装置1に電源を入れた後に初めてポンプPが始動されるときも、ポンプ始動回数は1とカウントされる。制御部35は、ポンプ始動回数が1であったときは、条件(i)または(ii)が満たされると判断して保護始動動作を行う。なお、停電からの復電ではなく条件(ii)が満たされる場合としては、ポンプ故障や受水槽渇水信号によるポンプ停止等の重程度の故障により給水装置が運転不能になった際のメンテナンスを行った後の始動が考えられる。
【0036】
条件(iii)は、直結型給水装置の場合に限定される。流入圧力の低下による運転禁止および運転禁止の解除は制御部35によって実行されるので、制御部35は、運転禁止が解除された後に初めてポンプPが始動されるか否かを判断することができる。条件(iv)に関しては、制御部35は、圧力センサ26から送信されてくるポンプPの吐出側圧力が予め設定された極低圧力値よりも低いか否かを判断することができる。
【0037】
上記条件(i)乃至(iv)のいずれかが満たされたとき、制御部35は、以下に説明する保護始動動作に従ってポンプPを始動させる。保護始動動作では、ポンプPの吐出側圧力が急激に上昇しないように、ポンプPの回転速度を通常の始動動作時よりも緩やかに上昇させる。図6は、インバータ20の構造を模式的に示す図である。図6に示すように、インバータ20は、比較部20A、変速部20B、加速度切換部20C、ドライブ信号生成部20D、およびスイッチング素子20Eを備えている。比較部20Aは、制御部35から送信される指令回転速度と現在の回転速度とを比較し、その偏差を出力する。変速部20Bは、その偏差が0となるように、加速度切換部20Cによって特定される加速度に従って現在の回転速度を増加または減少させる。
【0038】
加速度切換部20Cには、加速度1および加速度2が予め設定されている。加速度1,2は、変速部20Bが上記偏差に基づいて現在の回転速度を加減速するときの加速度を決定する。加速度1は、通常始動動作で使用される第1の加速度である。一方、加速度2は、保護始動動作で使用される第2の加速度であり、ポンプPの回転速度を緩やかに上昇させるべく加速度1よりも低く設定されている(加速度1>加速度2)。なお、本実施形態では、2つの加速度1および加速度2がインバータ20に記憶されているが、3つ以上の加速度を記憶してもよい。
【0039】
加速度切換部20Cは制御部35に接続されており、制御部35から加速度指令信号が加速度切換部20Cに送信されるようになっている。加速度切換部20Cは、この加速度指令信号を受けて、変速部20Bに送る指令加速度を加速度1と加速度2との間で切り換える。通常の運転では、加速度1が選択される。一方、上記条件(i)乃至(iv)のいずれかが満たされたときは、制御部35は、加速度1から加速度2に切り換えるように加速度切換部20Cに加速度指令信号を発信する。加速度切換部20Cは、この加速度指令信号を受けて、加速度1から加速度2に切り換える。加速度2は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな回転速度の上昇勾配に設定される。
【0040】
ドライブ信号生成部20Dは、変速部20Bから出力された回転速度に対応するドライブ信号を生成する。スイッチング素子20Eは、このドライブ信号に基づいて動作し、モータMの駆動電力がインバータ20からモータMに出力される。
【0041】
図7は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。図7に示すグラフにおいて、縦軸はポンプPの吐出側圧力、すなわち圧力センサ26の出力値を示し、横軸はポンプPの始動から経過した時間、すなわちポンプPの運転時間を示す。図7に示すP0は、通常始動動作時に使用される所定の標準目標圧力であり、予め制御部35に記憶されている。この標準目標圧力P0は、図4に示す圧力PBから圧力PAまでの範囲から選択されることが好ましい。典型的には、標準目標圧力P0は圧力PAに設定される。
【0042】
図7に示す例では、ポンプPの始動時の吐出側圧力は0に近い値となっている。ポンプPが始動されると、ポンプPの回転速度は加速度2に従って緩やかに上昇する。ポンプPの回転速度の上昇とともに、吐出側圧力も図7に示すように緩やかに上昇する。吐出側圧力が標準目標圧力P0に達すると、制御部35は加速度切換部20Cに加速度指令信号を送信する。この加速度指令信号を受け、加速度切換部20Cは、変速部20Bに送る指令加速度を加速度2から加速度1に切り換える。その後のポンプPの回転速度は、加速度1に基づいて加減速される。保護始動動作は、吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。
【0043】
なお、インバータ20の加速度切換部20Cを省き、制御部35が変速部20Bに加速度指令信号として加速度の値を直接送信してもよい。具体的には、図8に示すように、制御部35は、指令加速度としての加速度1または加速度2を変速部20Bに直接送信する。この場合でも、図7に示すような同様の保護始動動作が行なわれる。
【0044】
図9は、インバータ20のさらに他の構成例を模式的に示す図である。特に説明しない構成は、図6に示す構成と同様である。この例では、保護始動動作用の第2の加速度として、複数の加速度(加速度2a,加速度2b,および加速度2c)が加速度切換部20Cに設けられている。加速度2aは、通常始動動作時に使用される加速度1よりも小さく、加速度2bは加速度2aよりも小さく、加速度2cは加速度2bよりも小さく設定されている(加速度1>加速度2a>加速度2b>加速度2c)。
【0045】
図10は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。制御部35には、ポンプPの始動からの運転時間と吐出側圧力との関係を示す圧力基準線RLが予め記憶されている。この圧力基準線RLは、時間0から所定の時間T3までの間に、圧力が0から標準目標圧力P0までほぼ直線的に上昇する上昇勾配を有し、時間T3以降は圧力が標準目標圧力P0に固定されている。標準目標圧力P0は、上述したように、制御部35に予め記憶されている値である。圧力基準線RLの上昇勾配は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな上昇勾配である。
【0046】
制御部35は、所定の時間が経過するたびに(図10に示す例では時間T1,T2が経過するときに)、圧力センサ26によって測定されたポンプPの吐出側圧力と、同時間での圧力基準線RL上の対応する圧力とを比較する。現在の吐出側圧力が圧力基準線RL上の対応する圧力よりも高ければ、変速部20Bに送る指令加速度を現在の加速度からより低い加速度に切り換える。一方、吐出側圧力が圧力基準線RL上の対応する圧力よりも低ければ、変速部20Bに送る加速度の指令値を現在の加速度からより高い加速度に切り換える。図10に示す例では、時間T1では、吐出側圧力が圧力基準線RLを上回っているので、加速度2bから加速度2cに切り換えられる。一方、時間T2では、吐出側圧力が圧力基準線RLを下回っているので、加速度2cから加速度2bに切り換えられる。
【0047】
ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作が終了し、変速部20Bに送る加速度の指令値は加速度1に切り換えられる。保護始動動作の後は、通常の運転制御の下でポンプPが運転される。所定の時間T3に達したときに保護始動動作を終了することは可能であるが、時間T3の経過後に吐出側圧力が標準目標圧力P0を大きく下回っていると、保護始動動作の終了と同時にポンプPが急加速する可能性がある。したがって、安全を確保する観点から、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作を終了させることが好ましい。
【0048】
保護始動動作に使用される第2の加速度の数はこの例では3つであるが、4つ以上の第2の加速度をインバータ20に記憶してもよい。また、図8の例と同じように、インバータ20の加速度切換部20Cを省き、制御部35が直接変速部20Bに指令加速度(加速度1,加速度2a,加速度2b,…)を送信してもよい。さらに、吐出側圧力と圧力基準線RL上の対応圧力とを比較する時間を、より細かい時間間隔で設定することも可能である。
【0049】
図11は、インバータ20のさらに他の構成例を模式的に示す図である。特に説明しない構成は、図6に示す構成と同様である。この例では、インバータ20には、保護始動動作に用いるための加速度切換部20Cは設けられていなく、制御部35からインバータ20には加速度指令信号は送信されない。これに代えて、制御部35は、保護始動動作中に目標圧力を徐々に増加させ、これによりポンプPの回転速度を緩やかに増加させる。
【0050】
図12は、保護始動動作を行ったときの吐出側圧力の変化を示す図である。制御部35には、上記標準目標圧力(第1の目標圧力)P0に加えて、図12に示すような緩やかな上昇勾配を有する目標圧力線(第2の目標圧力)TLが予め記憶されている。制御部35は、通常始動動作時には、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に一致するようにフィードバック制御に基づいてポンプPの回転速度を制御する。一方、保護始動動作時には、制御部35はポンプPの吐出側圧力がこの目標圧力線TLに沿って上昇するように、インバータ20を介してポンプPの回転速度を制御する。この目標圧力線TLは、時間0から所定の標準時間T0までの間に、圧力が0から標準目標圧力P0まで直線的に増加する上昇勾配を有し、標準時間T0以降は圧力が標準目標圧力P0に固定されている。目標圧力線TLの上昇勾配は、吐出側圧力が始動圧力を大きく下回り、かつ給水管7内に空気が入り込んでいる場合であっても、ウォーターハンマーが起こらないような緩やかな上昇勾配である。
【0051】
制御部35は、通常始動動作時と同様に、圧力センサ26の出力値と目標圧力線TL上の目標圧力との偏差が0となるようにフィードバック制御を行う。すなわち、制御部35は、運転時間に従って目標圧力を目標圧力線TLに沿って変化させながらフィードバック制御に基づいてポンプPの回転速度を制御する。ポンプPの定常運転時および通常始動動作時では、制御部35は、図4に示す締切運転時の回転速度NB以上の速度領域でポンプPが回転するようにインバータ20に回転速度指令信号を発する。一方、保護始動動作時には、ウォーターハンマーの発生を防止するために、ポンプPをより低い回転速度で駆動する必要がある。したがって、保護始動動作時では、制御部35は、回転速度NBよりも低い回転速度を含む広い速度領域でポンプPが回転するようにインバータ20に回転速度指令信号を発する。
【0052】
図12に示すように、目標圧力線TLは時間0から標準時間T0までの時間領域では緩やかな上昇勾配を有しているので、ポンプPの吐出側圧力もこの目標圧力線TLに追随して緩やかに上昇する。図12に示す例では、ポンプPの吐出側圧力は、0に近い値P1から目標圧力線TLに沿って緩やかに上昇し、標準時間T0をやや超えた時点で標準目標圧力P0に達する。保護始動動作は、吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。
【0053】
上述したように、標準目標圧力P0は制御部35に予め記憶されている。したがって、目標圧力線TLは、標準時間T0および上昇勾配(目標圧力線TLの傾き)のいずれか一方を決定することによって設定することができる。具体的には、目標圧力線TLの設定は、標準時間T0または上昇勾配を入力部35aを介して制御部35に入力することによって行われる。
【0054】
標準時間T0は、吐出側圧力が0から標準目標圧力P0まで上昇するのに要する時間である。この標準時間T0は、給水装置1が設置される現場の状況によって調整されることが好ましいが、通常は30秒から2分の範囲内で設定される。上昇勾配は、単位時間当たりの圧力または揚程の増加幅として表される。例えば、上昇勾配は、1秒間当たりに1m程度の揚程の増加幅として設定される。いずれの場合でも、標準目標圧力P0は予め設定された値であるので、標準時間T0および上昇勾配のいずれか一方が設定されれば、他方も一意的に定まる。
【0055】
保護始動動作は、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに終了する。そして、保護始動動作の後は、通常の運転制御の下でポンプPが運転される。標準時間T0に達したときに保護始動動作を終了することは可能であるが、標準時間T0の経過後に吐出側圧力が標準目標圧力P0を大きく下回っていると、保護始動動作の終了と同時にポンプPが急加速する可能性がある。したがって、この例においても、安全を確保する観点から、ポンプPの吐出側圧力が標準目標圧力P0に達したときに、保護始動動作を終了させることが好ましい。
【0056】
図13は、図12に示す保護始動動作の変形例を示す図である。ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxは、状況ごとに変わりうる。保護始動動作の時間を短くするためには、図13に示すように、ポンプPの始動時の吐出側圧力に応じて目標圧力線の始点を変化させることが好ましい。具体的には、図13に示すように、ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxを始点とする新たな目標圧力線TL’を設定する。この場合、目標圧力線TL’の上昇勾配(傾き)はオリジナルの目標圧力線TLと同じである。すなわち、時間0での目標圧力線TL’の傾きはそのままに維持される。さらに、目標圧力線TL’の最大値も不変であり、標準目標圧力P0に維持される。
【0057】
図13に示すような目標圧力線TL’は、次のようにして設定することができる。当初の目標圧力線TL(図13の一点鎖線で示す)は、上述したように、標準時間T0または上昇勾配(目標圧力線TLの傾き)を特定することによって設定される。標準時間T0から目標圧力線が設定される場合、ポンプPの始動時の吐出側圧力Pxに対応する時間Txは、図13に示すように、目標圧力線TLから求められる。制御部35は、標準時間T0から時間Txを引き算することにより時間T0’を求め、時間0から時間T0’までの間に吐出側圧力がPxからP0まで上昇する上昇勾配を有する新たな目標圧力線TL’を生成する。一方、上昇勾配から目標圧力線が設定される場合は、制御部35は、入力された上昇勾配(傾き)と、時間0での圧力Pxの値と、標準目標圧力P0とから目標圧力線TL’を生成することができる。このように、ポンプPの始動時における吐出側圧力に応じて目標圧力線を平行移動させることにより、図12に示す例に比べて、保護始動動作の時間を短くすることができる。
【0058】
図14は、インバータ20への指令回転速度を徐々に増加させる制御部35の一構成例を示す模式図である。図14に示すように、比較部35Aは、目標圧力と圧力センサ26によって測定された吐出側圧力との偏差を算出し、その偏差をPI動作部35Bに送る。PI動作部35Bは、偏差を0とするためのポンプPの指令回転速度を演算し、それを加速度リミッタ35Cに送る。加速度リミッタ35Cは、指令回転速度の増加幅を所定の値に制限するように構成される。具体的には、加速度リミッタ35Cは、PI動作部35Bで演算された指令回転速度が加速度リミッタ35Cに入力されるたびに、該加速度リミッタ35Cに一時的に記憶されている前回の指令回転速度に対する増加幅を計算する。そして、加速度リミッタ35Cは、その増加幅が所定の限度幅を超えている場合には、入力された指令回転速度にその限度幅の上限値または下限値を加えた新たな指令回転速度を出力する。
【0059】
インバータ20は、上述のように生成された指令回転速度に基づいて、モータMを駆動する。このような加速度リミッタ35Cの動作により、指令回転速度はポンプPの運転時間とともに所定の上昇勾配に沿って増加する。したがって、上述した例と同様に、保護始動動作時のポンプPの吐出側圧力は緩やかに上昇する。保護始動動作が終了した後は、加速度リミッタ35Cはバイパスされ、これにより通常の制御動作が行なわれる。
【0060】
以上述べたように、本発明の上記実施形態によれば、ポンプPの吐出側圧力が緩やかに上昇するので、建物10の給水管7内に空気が滞留している状態でポンプが始動されたときであっても、ウォーターハンマーの発生を防止することが可能である。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0062】
1 給水装置
20 インバータ
22 逆止弁
24 フロースイッチ
26 圧力センサ
28 圧力タンク
35 制御部
P ポンプ
M モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記給水装置への電源投入後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、停電からの復電後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
停電からの復電後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
停電からの復電後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項3】
水道本管に直結されるポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記ポンプの流入圧力が所定の保護圧力以下の場合に前記ポンプの運転を禁止し、
前記流入圧力が前記所定の保護圧力よりも高くなったときに前記ポンプの運転の禁止を解除し、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項4】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記吐出側圧力と、前記始動圧力よりも低い所定の極低圧力とを比較し、
前記吐出側圧力が前記極低圧力よりも高いときには、通常の始動動作を行い、
前記吐出側圧力が前記極低圧力以下のときには、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項5】
前記通常の始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を第1の加速度で上昇させ、
前記保護始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度で上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記駆動装置には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、
前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、
前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項9】
前記制御部には、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す圧力基準線が記憶されており、
前記制御部は、前記吐出側圧力と、該吐出側圧力が測定された時間に対応する前記圧力基準線上の圧力との差に基づいて、前記保護始動動作中に前記第2の加速度を変化させることを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定の時間間隔で前記吐出側圧力と前記圧力基準線上の圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも低いときは、前記第2の加速度を大きくし、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも高いときは、前記第2の加速度を小さくすることを特徴とする請求項9に記載の給水装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする請求項9または10に記載の給水装置。
【請求項12】
前記通常の始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第1の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、
前記保護始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第2の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記第1の目標圧力よりも低い圧力から所定の圧力まで上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す目標圧力線として記憶しており、
前記目標圧力線は、時間0から所定の時間までの間に、前記圧力が0から前記所定の圧力まで増加する上昇勾配を有していることを特徴とする請求項12に記載の給水装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記目標圧力線を設定するための入力部を有していることを特徴とする請求項13に記載の給水装置。
【請求項15】
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの始動時の吐出側圧力から前記所定の圧力まで上昇させることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項16】
前記通常始動動作時には、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記ポンプを締切運転しているときの目標圧力となる締切回転速度以上の速度領域で前記ポンプの運転を制御し、
前記保護始動動作時には、前記制御部は、前記締切回転速度よりも低い回転速度を含む速度領域で前記ポンプの運転を制御することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項17】
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記駆動装置に送る指令回転速度を所定の上昇勾配に沿って上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項1】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記給水装置への電源投入後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
前記給水装置への電源投入後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、停電からの復電後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
停電からの復電後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
停電からの復電後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項3】
水道本管に直結されるポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記ポンプの流入圧力が所定の保護圧力以下の場合に前記ポンプの運転を禁止し、
前記流入圧力が前記所定の保護圧力よりも高くなったときに前記ポンプの運転の禁止を解除し、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記ポンプの運転禁止が解除された後初めて前記ポンプが始動されるか否かを判断し、
前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動でなければ通常の始動動作を行い、
前記ポンプの運転禁止が解除された後初めてのポンプ始動であれば、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項4】
ポンプと、
前記ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速駆動する駆動装置と、
前記ポンプの吐出側圧力を測定する圧力センサと、
前記吐出側圧力が所定の始動圧力以下の場合に前記ポンプを始動して、前記吐出側圧力が目標圧力になるように前記駆動装置に前記ポンプの回転速度の指令を行う制御部とを備えた給水装置であって、
前記制御部は、
前記吐出側圧力が前記始動圧力以下であるときに、前記吐出側圧力と、前記始動圧力よりも低い所定の極低圧力とを比較し、
前記吐出側圧力が前記極低圧力よりも高いときには、通常の始動動作を行い、
前記吐出側圧力が前記極低圧力以下のときには、前記吐出側圧力の上昇が前記通常の始動動作よりも緩やかな保護始動動作を行うことを特徴とする給水装置。
【請求項5】
前記通常の始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を第1の加速度で上昇させ、
前記保護始動動作時には、前記駆動装置は前記モータの回転速度を前記第1の加速度よりも小さい第2の加速度で上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項6】
前記駆動装置には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、
前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項7】
前記制御部には、前記第1の加速度および前記第2の加速度が記憶されており、
前記制御部は、前記保護始動動作を行う場合には、前記前記駆動装置に前記第2の加速度を使用するように指令することを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項9】
前記制御部には、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す圧力基準線が記憶されており、
前記制御部は、前記吐出側圧力と、該吐出側圧力が測定された時間に対応する前記圧力基準線上の圧力との差に基づいて、前記保護始動動作中に前記第2の加速度を変化させることを特徴とする請求項5に記載の給水装置。
【請求項10】
前記制御部は、所定の時間間隔で前記吐出側圧力と前記圧力基準線上の圧力とを比較し、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも低いときは、前記第2の加速度を大きくし、前記吐出側圧力が前記圧力基準線上の圧力よりも高いときは、前記第2の加速度を小さくすることを特徴とする請求項9に記載の給水装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記吐出側圧力が予め設定された標準目標圧力に達したときに前記保護始動動作を終了させることを特徴とする請求項9または10に記載の給水装置。
【請求項12】
前記通常の始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第1の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、
前記保護始動動作時には、前記制御部は前記吐出側圧力が第2の目標圧力に到達するように前記ポンプの回転速度を増加させ、
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記第1の目標圧力よりも低い圧力から所定の圧力まで上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの運転時間と圧力との関係を示す目標圧力線として記憶しており、
前記目標圧力線は、時間0から所定の時間までの間に、前記圧力が0から前記所定の圧力まで増加する上昇勾配を有していることを特徴とする請求項12に記載の給水装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記目標圧力線を設定するための入力部を有していることを特徴とする請求項13に記載の給水装置。
【請求項15】
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記第2の目標圧力を、前記ポンプの始動時の吐出側圧力から前記所定の圧力まで上昇させることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項16】
前記通常始動動作時には、前記制御部は、前記吐出側圧力が前記ポンプを締切運転しているときの目標圧力となる締切回転速度以上の速度領域で前記ポンプの運転を制御し、
前記保護始動動作時には、前記制御部は、前記締切回転速度よりも低い回転速度を含む速度領域で前記ポンプの運転を制御することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項17】
前記保護始動動作中、前記制御部は、前記駆動装置に送る指令回転速度を所定の上昇勾配に沿って上昇させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の給水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−127460(P2011−127460A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284839(P2009−284839)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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