説明

給湯システム及び方法

【課題】使用者が温水を使用する可能性が高いときには、給湯配管内の温水を貯湯タンクに循環させることで、使用開始直後から温水を供給する。
【解決手段】温水を貯留する貯湯タンク10と、貯湯タンク10に貯留されている温水を給湯口40に供給する給湯配管35と、給湯配管35の所定の箇所と貯湯タンク10とを接続する循環配管37と、給湯配管35内の温水を循環配管37を介して貯湯タンク10へ送給するためのポンプ70と、ポンプ70を制御する制御部90と、を備え、制御部90は、使用者が温水を使用すると想定されるときにポンプ90を作動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
貯湯タンクに貯留された温水を供給する給湯システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の家庭用の給湯システムとして、高温の温水を貯湯タンクに貯留し、この温水を給湯配管によりシャワーやカラン等の複数の給湯口に導くことで給湯を行うようにした給湯システムが一般的である。このような従来の給湯システムにおいて、貯湯タンクから離れたところにある給湯口では、給湯されていない間に給湯配管内の温水が冷めてしまい、給湯口を開けて給湯を開始してからしばらくの間、冷めた温水が出てくることがよくある。このため、使用者は温水が出てくるまで長い間待たなければならず不愉快であり、また、湯になるまでの水が無駄に捨てられてしまうなどの問題がある。
【0003】
そこで、こうした問題に対処するために、特許文献1にでは、給湯配管内の温水を循環する循環系統を設けると共に、深夜等時間帯に循環系統を循環する温水をヒートポンプで追い焚きすることによって循環系統の温水の温度低下を防止する技術が開示されている。
【0004】
しかし、このような循環系統を備えた給湯システムでも、深夜時間帯等の温水が使用されない時間帯に長時間にわたって給湯配管内に温水を循環させると、給湯配管からの放熱の分だけ給湯システム全体のCOP(Coefficient of Performance)、すなわち、消費エネルギー当りの熱効率が低下してしまう。
【特許文献1】特開2005−147597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に対して、使用者が温水を使用する可能性が高いときにのみ、給湯配管内の温水を貯湯タンクに循環させて使用開始直後から温水を供給することが可能な給湯システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、温水を貯留する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯留されている温水を給湯口に供給する給湯配管と、
前記給湯配管の所定の箇所と前記貯湯タンクとを接続する循環配管と、
前記給湯配管内の温水を前記循環配管を介して前記貯湯タンクへ送給するためのポンプと、
前記ポンプを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、使用者が温水を使用すると想定されるときに前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システムである。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に記載の給湯システムであって、
人が近づいたことを感知する人感センサを備え、
前記制御部は、前記人感センサが人を感知すると前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システムである。
【0008】
第3の発明は、第1又は2の発明に記載の給湯システムであって、
温水が使用されると想定される時間帯を示す使用パターン情報を記憶している記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された使用パターン情報に基づいて、温水が使用されると想定される時間帯に前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システムである。
【0009】
第4の発明は、第3の発明に記載の給湯システムであって、
給湯口から実際に給湯が行われた時間帯を示す給湯実績情報を取得して前記記憶部に記憶する給湯実績情報取得部を備え、
前記制御部は前記記憶部に記憶された給湯実績情報に基づいて温水が使用される可能性の高い時間帯を推定し、この時間帯に前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システムである。
【0010】
なお、前記使用パターン情報及び前記給湯実績情報は、季節や曜日等の情報を含み、制御部は当日の季節や曜日に該当する情報を用いて前記ポンプを作動させる時間帯を設定することとしてもよい。
【0011】
第5の発明は、第1〜4の発明に記載の給湯システムであって、
給湯口が複数ある場合、各給湯口に対応して前記ポンプを備えることを特徴とする給湯システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者が温水を使用する可能性が高いときには、給湯配管内の温水を貯湯タンクに循環させることで、使用開始直後から温水を供給することが可能な給湯システム及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態である給湯システム1の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態の給湯システム1は、貯湯タンク10、三方弁20、給湯口40、人感センサ50、逆止弁60、ポンプ70、制御部90、記憶部92などを備えている。
【0014】
貯湯タンク10は、高温(例えば、90℃)の温水を貯留するタンクである。給水配管31、32を介して外部から常温(外気温とほぼ同じで、例えば5〜30℃)の水の供給を受け、その常温水を貯湯タンク10内に設けられた加熱手段12(例えば、電気ヒータ等)によって加熱することで温水を生成し、貯留する。なお、貯湯タンク10内の温水が加熱手段によって沸騰した場合には、貯湯タンク10内の圧力が所定圧以上にならないようにするため、配管38から逃がし弁39を介して蒸気を排出することとしてもよい。また、貯留する温水の生成は、貯湯タンク10外に設けられた加熱手段(例えば、ヒートポンプ等)によってもよい。
【0015】
三方弁20は、貯湯タンク10に貯留された温水と給水配管31、33を介して供給された常温水とを混合して給湯するのに適温(例えば、60℃)とする。この適温となった温水は、給湯配管35を介して給湯口40へ供給される。
【0016】
給湯口40は、蛇口40a、40b、40cやシャワー40s等、使用者が温水を使用する場所に設けられる。この使用される温水は、貯湯タンク10から給湯配管34、35、35a、35b、35cを介して供給される。また、給湯口には、給水配管36、36a、36b、36cを介して常温水も供給され、給湯口40にて温水と常温水を混合することで使用する湯の温度を適宜調節することができる。
【0017】
循環配管37aは、給湯配管35a上における給湯口40a近傍の箇所と貯湯タンク10とを接続する。同様に、循環配管37b、37cは、給湯配管35b、35c上における給湯口40b、40c近傍の箇所と貯湯タンク10とを介して接続する。
【0018】
人感センサ50は、給湯口40近傍に設置され、給湯口40に人が近づいたことを感知する。人感センサ50は、図1に示すように、各給湯口40a〜40cのそれぞれに別個に人感センサ50a〜50cとして設置されていてもよい。あるいは、相互に近い箇所に複数の給湯口40がある場合は、それらの給湯口40をまとめて一つの人感センサ50で感知することとしてもよい。
【0019】
循環配管37aには、ポンプ70a及び逆止弁60aが設置され、ポンプ70aにより給湯配管35a内の温水が貯湯タンク10へ還流できるようになっている。同様に、循環配管37b及び循環配管37cには、それぞれ逆止弁60b及び逆止弁60cとポンプ70b及びポンプ70cとが設置されている。なお、複数の給湯口40に対して共通の人感センサ50が設置されている場合は、それらの給湯口40から分岐する循環配管37が合流する箇所に逆止弁60及びポンプ70を設置してもよい。
【0020】
温度センサ80は、給湯口40(例えば、蛇口40a)近傍の給湯配管35(例えば、給湯配管35a)上に設置され、給湯配管35(例えば、給湯配管35a)内の温水の温度を検知する。
【0021】
入力部91は、それぞれの給湯口40において温水が使用される時間帯についての温水使用パターンに係る情報の入力を受付ける。例えば、共働きで子無しの夫婦であれば、洗面台の蛇口40aの温水は、平日の朝と夜に利用され、深夜と日中に使用されることはあまりないとの使用パターンであると想定され休日は朝から昼前までと夕方、夜に利用され、深夜には利用されないとの使用パターンであると想定される。入力部91は、こうした季節、日付、曜日、時間帯等の情報の入力を温水の使用者等から受付ける。入力部91で入力を受付けた情報は記憶部92に記憶される。さらに、入力部91は、給湯される温水の温度についても季節、日付、曜日、時間帯等の情報に関連付けて入力を受付、記憶部92で記憶してもよい。
【0022】
給湯実績情報取得部93は、給湯口40から実際に給湯が行われた季節、日付、曜日、時間帯等についての情報(以下、給湯実績情報という)を取得し、記憶部92に記憶する。この給湯実績情報は、例えば、各給湯口40a〜40cに給湯の有無を検知するセンサを設け、このセンサの検知出力に基づいて取得してもよいし、人感センサ50a〜50cにより人の接近が検知された時間帯を給湯時間帯として取得するようにしてもよい。さらに、給湯実績情報取得部93は、給湯される温水の温度についても季節、日付、曜日、時間帯等の情報を併せて取得し、記憶部92で記憶してもよい。
【0023】
制御部90は、人感センサ50から人を感知した旨の情報を受信すると、ポンプ70を作動させる。
【0024】
また、制御部90は、記憶部92に記憶された給湯実績情報に基づいて、温水が使用される可能性の大きい時間帯を推定し、その時間帯にポンプ70を作動させる。その際、当日の季節や日付、曜日を考慮し、該当する季節や日付、曜日における給湯実績情報を用いて推定する。さらに、制御部90は、記憶部92に記憶された使用パターンに関する情報に従って、使用される確率の高い時間帯にはポンプ70を作動させる。この場合も、当日の季節や日付、曜日を考慮し、該当する季節や日付、曜日における使用パターンに関する情報を用いて、ポンプ70を作動させる時間帯を決定する。
【0025】
次に、給湯開始前後の動作について説明する。人が給湯口40に近づいてくると、人感センサ50は人を感知し、その情報をポンプ70に伝送する。ポンプ50は、人感センサ50から情報を受取ると直ちに作動を開始する。すると、給湯配管35等に滞留していた温水は、循環配管37等を介して貯湯タンク10に還流すると共に、貯湯タンク10からは高温の温水が給湯配管35を介して給湯口40へ供給される。これにより、給湯口40に近づいた人が給湯口で温水の使用を開始した直後から、十分に水温の高い温水を供給することが可能となる。
【0026】
また、人感センサ50で人を感知しなくとも、上記のように記憶部92が予め記憶していた温水使用パターンや給湯実績情報に基づいて温水が使用されると想定される時間帯となれば、記憶部92がポンプ70を作動させる。
【0027】
また、温度センサ80がこのときの給湯配管35内の温水の温度を検知して、所定の温度(例えば、45℃)以上の場合は、ポンプ70の作動を停止させる。給湯開始後しばらくして温度センサ80により検知された温度が上記所定の温度に達した場合に、ポンプ70の作動を停止させることとしてもよい。なお、上記所定の温度は、当日の季節や日付、曜日を考慮し、該当する季節や日付、曜日における給湯実績情報に含まれる給湯温度を用いて設定してもよい。あるいは、夏は低い給湯温度に、冬は高い給湯温度に設定する等季節に応じて一律に設定してもよい。
【0028】
以上の通り、本実施形態の給湯システム1によれば、使用者が温水を使用すると想定されるときには、使用者が温水の使用を開始する前に循環配管37を介して貯湯タンク10に貯留された温水を循環させることで、使用者が温水の使用を開始するときには給湯配管35内の温水を温かくすることができる。これにより、使用者が温水の使用開始直後から、所望の温度の温水を給湯口40から供給することができる。
【0029】
また、季節や日付、曜日についても考慮することで、平日と祝日、及び夏季と冬季等の温水使用に係る時間帯や温水温度の違いについても、木目細かく対応することができる。
【0030】
加えて、給湯システム1によれば、使用者が温水を使用する可能性が高い時間帯に給湯配管35に温かい温水を満たすので、温水が使用されない時間帯には給湯配管35内を熱い温水が循環することはなく、よって不必要に給湯配管35から放熱されることはなく、給湯に係るエネルギー損失を削減することができる。
【0031】
使用者が温水を使用すると想定されるときを予測する機能として、人感センサ50による人の感知や、記憶部92に記憶された温水使用パターンに係る情報等を組み合わせることで、より正確に予測することができる。
【0032】
なお、以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態である給湯システム1の全体構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 給湯システム
10 貯湯タンク
12 加熱手段
20 三方弁
31、32、33 給水配管
34、35 給湯配管
36 給水配管
37 循環配管
40 給湯口
50 人感センサ
60 逆止弁
70 ポンプ
80 温度センサ
90 制御部
91 入力部
92 記憶部
93 給湯実績情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯留する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯留されている温水を給湯口に供給する給湯配管と、
前記給湯配管の所定の箇所と前記貯湯タンクとを接続する循環配管と、
前記給湯配管内の温水を前記循環配管を介して前記貯湯タンクへ送給するためのポンプと、
前記ポンプを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、使用者が温水を使用すると想定されるときに前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムであって、
人が近づいたことを感知する人感センサを備え、
前記制御部は、前記人感センサが人を感知すると前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の給湯システムであって、
温水が使用されると想定される時間帯を示す使用パターン情報を記憶している記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された使用パターン情報に基づいて、温水が使用されると想定される時間帯に前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項3に記載の給湯システムであって、
給湯口から実際に給湯が行われた時間帯を示す給湯実績情報を取得して前記記憶部に記憶する給湯実績情報取得部を備え、
前記制御部は前記記憶部に記憶された給湯実績情報に基づいて温水が使用される可能性の高い時間帯を推定し、この時間帯に前記ポンプを作動させることを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の給湯システムであって、
給湯口が複数ある場合、各給湯口に対応して前記ポンプを備えることを特徴とする給湯システム。
【請求項6】
温水を貯湯タンクに貯留するステップと、
前記貯湯タンクに貯留されている温水を給湯口に給湯配管で供給するステップと、
前記ポンプを使用者が温水を使用する可能性が高いときに前記給湯配管の所定の箇所と前記貯湯タンクとを接続する循環配管を介して前記給湯配管内の温水を前記貯湯タンクへポンプで送給するステップと、
を含むことを特徴とする給湯循環予熱方法。

【図1】
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