説明

給湯システム

【課題】 複数の熱源機を併用した給湯システムにおいて、従来よりもさらに運転効率の向上を図る。
【解決手段】 制御部61は、給水源5から供給され十字継手43で分岐されてヒートポンプ給湯機2までを通流する間の管路内を通流する低温水、または入出水口31から供給され十字継手43を介してヒートポンプ給湯機2までを通流する間の管路内を通流する温水の入水温度に関する情報、並びにヒートポンプ給湯機2の設置された領域の外気温度に関する情報が与えられる構成であって、前記入水温度と前記外気温度に基づいてヒートポンプ給湯機2の運転状態を評価するための状態指数を算定するとともに、予め定められた目標指数と前記状態指数とを比較して、当該比較結果に応じてヒートポンプ給湯機2の運転制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクから給湯負荷に対して給湯可能に構成された給湯システムに関し、特に、複数の熱源機を備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯システムは、熱源機によって加熱された温水を貯湯タンクに貯湯し、この貯湯タンクから給湯負荷に温水を供給する構成となっている。従来、熱源機として、ガス等を熱源とする温水ボイラを利用するものや、ヒートポンプ回路の凝縮器からの凝縮熱と熱交換して水を加熱するヒートポンプ給湯機を利用するものが存在する。
【0003】
ヒートポンプ給湯機は、夜間の安価な電力を使用することで、夜間の給湯使用量の少ない低給湯負荷状態となる時間帯に貯湯タンクに温水を貯めて、翌日の昼間の給湯負荷、例えば風呂やシャワー等の給湯に対して使用するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、ヒートポンプ給湯機の加熱能力は、夜間の低給湯負荷状態を想定して決定されているため、専ら貯湯目的に所定の温度に加熱するだけでよく、短時間での加熱能力は非常に低くなっており、高給湯負荷時に貯湯タンクの温水を消費した場合に温水の給湯能力が不足する場合が生じる。また、夜間に蓄熱する一方、温水を利用するのは翌日の昼間や夕方となるため使用時間が大幅にずれ、貯湯タンクからの放熱が多くなり、せっかく高効率で蓄熱した熱を放熱させてしまうという問題が生じる。
【0005】
このようなヒートポンプ給湯機の加熱能力不足を補い、ヒートポンプ給湯機に必要な給湯能力を確保する方法として、本出願人により、ヒートポンプ給湯機と温水ボイラを併用する給湯システムが従来開示されている(下記特許文献1参照)。以下、特許文献1に開示された構成につき、図面を参照して説明する。
【0006】
図7は、上記特許文献1に開示された給湯システムの概略構成図である。図7に示す給湯システム100は、貯湯タンク1、ヒートポンプ給湯機2、温水ボイラ3、給湯負荷4、給水源5を備える。
【0007】
給水源5からは、弁11、三方継手41を介して、入出水口31から貯湯タンク1に低温水が供給可能に構成されている。更に、給水源5から、弁11、三方継手41、弁12、循環ポンプ13、弁14を介してヒートポンプ給湯機2に低温水が供給可能に構成されている。ヒートポンプ給湯機2は、ヒートポンプ回路の冷媒として例えばCOを採用したCOヒートポンプで構成され、供給された低温水(または温水)に対して凝縮器からの凝縮熱と熱交換して加熱処理を行い、加熱された温水が、逆止弁15、三方継手42、弁16を介して、入水口33から貯湯タンク1に供給される。入水口33は、貯湯タンク1内において入出水口31よりも上方に形成されている。
【0008】
また、貯湯タンク1に貯えられた温水は、出水口32から逆止弁17、循環ポンプ24、弁18を介して温水ボイラ3に供給可能に構成されている。温水ボイラ3は、例えばガス焚真空式温水機で構成され、缶体内の下部にガスバーナの火炎で熱媒水を加熱する火炉を設けると共に、缶体内の上部の減圧空気中にU字状の伝熱管を設けており、缶体内の下部に封入された熱媒水をガスバーナの火炎で加熱し、その上部の減圧空気中の伝熱管を加熱することによって伝熱管中を流れる水を加熱する。温水ボイラ3は、このようにして供給される温水をボイラによって加熱した後、弁19、三方継手42、弁16を介して入水口33から貯湯タンク1に温水を供給する。すなわち、貯湯タンク1の出水口32から取得された温水が、循環ポンプ24を介して温水ボイラ3へ供給され、当該温水ボイラ3で加熱された後、入水口33から貯湯タンク1に再供給される循環回路(以下、「第1循環回路C1」と記載)が構成されている。
【0009】
更に、貯湯タンク1に貯えられた温水は、入出水口31から三方継手41、弁12、循環ポンプ13、弁14を介してヒートポンプ給湯機2に供給され、再加熱可能に構成されている。ヒートポンプ給湯機2によって加熱された温水は、すでに前述したように、入水口33から貯湯タンク1に供給され、貯湯される。すなわち、貯湯タンク1の入出水口31から取得された温水が、循環ポンプ13を介してヒートポンプ給湯機2へ供給され、当該ヒートポンプ給湯機2で加熱された後、入水口33から貯湯タンク1に再供給される循環回路(以下、「第2循環回路C2」と記載)が構成されている。図8に、第1循環回路C1及び第2循環回路C2の経路図を示す。なお、図8では、弁や継手等の一部の構成要素の図示を省略している。
【0010】
又、第2循環回路C2において、ポンプ13が稼働して入出水口31から取り出された温水は、全てヒートポンプ給湯機2側へ送出される構成である。
【0011】
再び図7に戻り、貯湯タンク1内に貯湯された温水は、貯湯タンク1の出水口34から弁21を介して給湯負荷4に対して供給される。給湯負荷4は、例えばカランやシャワー、浴槽等で構成される。水は、温度が高くなるにつれ上方に移動する性質、いわゆる対流性を有しているため、貯湯タンク1の上部領域には温度の高い温水が貯湯される。従って、貯湯タンク1の上部領域に設置された出水口34から給湯負荷4に対して高温の温水を供給することが可能となる。また、その温水の一部が、管路での放熱による温水温度の低下を防止すべく、循環ポンプ23、弁22を介して入水口35から貯湯タンク1に循環される。
【0012】
さらに、貯湯タンク1には、タンク上部に貯えられた温水の温度を検出する温度センサ51、及びタンク下部に貯えられた温水の温度を検出する温度センサ52が取り付けられている。上述したように、給水源5から供給される低温水が貯湯タンク1の下部に取り付けられた入出水口31からタンク1内に流入し、ヒートポンプ給湯機2若しくは温水ボイラ3で加熱された温水が貯湯タンク1の上部に取り付けられた入水口33からタンク1内に流入する構成である。このため、タンク下部に取り付けられた温度センサ52よりも、タンク上部に取り付けられた温度センサ51の方が高い温度を検出する。
【0013】
そして、この温度センサ51の検出結果に基づいて温水ボイラ3及び循環ポンプ24の制御を行う一方、温度センサ52の検出結果に基づいてヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13の制御を行う。より具体的には、例えば温度センサ51から与えられる温度情報が60℃以上であれば温水ボイラ3及び循環ポンプ24を停止させる一方、55℃以下であれば温水ボイラ3及び循環ポンプ24を稼働させる。さらに、例えば温度センサ52から与えられる温度情報が60℃以上であればヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13を停止させる一方、50℃以下であればヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13を稼働させる。
【0014】
上述したように、温度センサ52よりも温度センサ51の方が高い温度が検出されるため、貯湯タンク1内に給水源5から低温水が供給され、タンク内の温度が低下し始めると、温度センサ52の方が先に50℃以下を検出し、これによって温水ボイラ3よりヒートポンプ給湯機2の方が先に稼働される。一方、加熱された温水が供給されることでタンク内の温度が上昇し始めると、温度センサ51の方が先に60℃以上を検出し、これによって温水ボイラ3がヒートポンプ給湯機2よりも先に停止される。このように、図7の構成とすることで、温水ボイラ3よりもヒートポンプ給湯機2を優先的に稼動させる制御が行われることとなる。上述のように、ヒートポンプ給湯機2は温水ボイラ3よりも単体で高効率を実現する構成であるため、高効率のヒートポンプ給湯機2の稼働率が向上されることで、システム全体としての高い効率が実現できるというものである。
【0015】
【特許文献1】特開2007−170770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように、図7のような構成とすることで、貯湯タンク1内の下部に設置された温度センサ52において温度低下が検知されると、高効率のヒートポンプ給湯機2が優先的に稼働する。
【0017】
しかしながら、一般的にヒートポンプ給湯機は、設置箇所における外気温度が低下すればするほどCOP(Coefficient Of Performance:成績係数)値が低下する性質を有する。さらに、ヒートポンプ給湯機は、入水温度が上昇すればするほど前記COP値が低下する性質を有する。このため、上記従来構成のように、単に貯湯タンク1内の温水の温度のみでヒートポンプ給湯機2の運転制御を行った場合、外気温度や入水温度によってはシステム全体として低いエネルギー効率で運転をしている場合も想定される。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑み、複数の熱源機を有する給湯システムにおいて、従来構成よりもさらに高効率あるいは高メリットが実現できる給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するための本発明に係る給湯システムは、温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を給湯負荷に供給する貯湯タンクと、前記貯湯タンクから供給される温水を加熱した後、再び前記貯湯タンクに供給する第1熱源機と、前記第1熱源機とは異なる原理で温水を加熱する構成であって、少なくとも供給される温水の入水温度及び設置箇所の外気温度に依存して運転効率が変化する第2熱源機と、前記第2熱源機の発停制御を行う制御部と、を備えてなり、前記第2熱源機は、供給された温水を加熱した後、前記貯湯タンクに供給する構成であり、前記制御部は、前記第2熱源機に供給される温水の入水温度に関する情報、並びに前記第2熱源機の設置された領域の外気温度に関する情報が与えられる構成であって、前記入水温度と前記外気温度に基づいて前記第2熱源機の運転状態を評価するための状態指数を算定するとともに、予め定められた目標指数と前記状態指数とを比較して、当該比較結果に応じて前記第2熱源機の運転制御を行うことを特徴とする。
【0020】
第2熱源機は、入水温度及び設置箇所の外気温度に応じて運転効率が変化する構成であるため、例えばタンク内に備えられた温度センサが示す温度のみで運転制御を行った場合、外気温度や実際に第2熱源機に供給される入水温度によっては、システム全体として低いエネルギー効率あるいは低いメリット(コスト、CO排出量等)で運転をしている場合も想定される。このような場合には、ヒートポンプ給湯機を先に停止させ、温水ボイラのみが稼働している運転状態に制御する方が、システム全体の効率、メリットが高くなる。
【0021】
前記の通り、第2熱源機の運転効率を低下させる要因として外気温度と入水温度の2つの要素が存在するため、単に外気温度のみ、あるいは入水温度のみでその運転制御を行った場合には、第2熱源機を運転させる方が効率的或いは高メリットな場面で停止させてしまったり、逆に、第2熱源機を停止させる方が効率的或いは高メリットな場面で運転を持続してしまうという制御が行われる可能性がある。そして、このように運転効率に2つの要素が関連して影響をし合うため、単に外気温度や入水温度を所定の温度と比較することのみで第2熱源機の運転制御を行っても、効率的な運転が期待できない場合も想定される。
【0022】
そこで、本発明のように、演算部において、外気温度と入水温度に基づいて運転状態を評価するための状態指数を算定し、予め定められた目標指数を比較して比較結果に応じて運転制御を行うという構成とすることで、高効率あるいは高メリットが実現できる運転環境下であるか否かにつき制御部によって判断することができる。そして、高効率あるいは高メリットが実現できると判断すれば第2熱源機を運転させ、一方、それが実現できないと判断した場合には第2熱源機を運転させない(停止させる)旨の制御を行うことができる。これによって、第2熱源機を運転させることで効率やメリットが低下するような場合においても当該熱源機が運転されるという状態を回避し、システム全体としての高効率、高メリット性を実現することができる。
【0023】
なお、このとき、より詳細な構成の一例としては、上記構成に加えて、前記貯湯タンク下部に設けられた出水口から取得された温水が、前記第1熱源機を介して前記貯湯タンク上部に設けられた入水口から前記貯湯タンクに再供給される第1循環回路と、前記貯湯タンク下部に設けられた入出水口から取得された温水が、前記第2熱源機を介して直接、若しくは更に前記第1熱源機を介して、前記入水口から前記貯湯タンクに再供給される第2循環回路と、給水源から供給された低温水が、前記第2循環回路上の分岐点で分岐されて前記入出水口並びに前記第2熱源機に供給される給水回路と、を備える構成とすることができる。この場合、前記制御部は、前記給水回路内を通流する前記低温水、または前記第2循環回路内における前記分岐点から前記第2熱源機までの間の管路内を通流する温水の温度を前記入水温度に関する情報として与えられる構成とする。
【0024】
また、上記目的を達成するための本発明に係る給湯システムとして、温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を給湯負荷に供給する貯湯タンクと、温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を前記貯湯タンクに供給するクッションタンクと、前記貯湯タンクから供給される温水を加熱した後、再び前記貯湯タンクに供給する第1熱源機と、前記第1熱源機とは異なる原理で温水を加熱する構成であって、少なくとも供給される温水の入水温度及び設置箇所の外気温度に依存して運転効率が変化する第2熱源機と、前記第2熱源機の発停制御を行う制御部と、を備えてなり、前記第2熱源機は、供給された温水を加熱した後、前記クッションタンクに供給する構成であり、前記制御部は、前記第2熱源機に供給される温水の入水温度に関する情報、並びに前記第2熱源機の設置された領域の外気温度に関する情報が与えられる構成であって、前記入水温度と前記外気温度に基づいて前記第2熱源機の運転状態を評価するための状態指数を算定するとともに、予め定められた目標指数と前記状態指数とを比較して、当該比較結果に応じて前記第2熱源機の運転制御を行う構成としても良い。この場合においても、上記の特徴を有する給湯システムと同様の効果を奏することができる。
【0025】
また、上記特徴に加えて、前記第2熱源機が運転中である場合において、前記状態指数が前記目標指数を下回っている場合には、前記制御部が前記第2熱源機を停止する制御を行う構成としても良い。
【0026】
また、上記特徴に加えて、前記制御部は、前記入水温度が第1温度以下であって、且つ、前記状態指数が前記目標指数を上回っている場合には、前記第2熱源機を運転する制御を行い、前記入水温度が前記第1温度より高い第2温度以上であるか、または、前記状態指数が前記目標指数を下回っているかの少なくともいずれか一方が該当した場合には、前記第2熱源機を停止する制御を行う構成としても良い。
【0027】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記制御部が、前記入水温度と前記外気温度の組み合わせに応じて前記状態指数が決定される状態指数算定データベースを内部に格納しており、前記入水温度及び前記外気温度に関する情報が与えられると、与えられた両情報の組み合わせに最も近い組み合わせに応じた前記状態指数を前記状態指数算定データベースから算定する構成としても良い。
【0028】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記制御部は、複数の異なる運転モードから選択された一の運転モードを設定可能に構成され、設定された前記運転モードに応じて決定される前記目標指数と前記状態指数とを比較する構成としても良い。
【0029】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記第1熱源機が、燃焼式の温水機であり、前記第2熱源機が、ヒートポンプ回路の凝縮器からの凝縮熱と熱交換することで前記低温水を加熱して温水を生成するヒートポンプ式給湯機であるものとしても良い。
【0030】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記状態指数及び前記目標指数がヒートポンプ式給湯機の成績係数を示すCOP値で表されているとしても良い。
【0031】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記外気温度の測定が可能な外気温度センサを備え、前記制御部が、前記外気温度センサから前記外気温度に関する情報が与えられる構成としても良い。
【0032】
また、本発明に係る給湯システムは、上記特徴に加えて、前記第2熱源機に温水を供給する管路内を通流する温水の温度、または、前記第2熱源機に供給する温水が貯えられたタンク内の温水の温度の測定が可能な入水温度センサを備え、前記制御部が、前記入水温度センサから前記入水温度に関する情報が与えられる構成としても良い。
【0033】
このとき、特に前記貯湯タンク下部に設けられた出水口から取得された温水が、前記第1熱源機を介して前記貯湯タンク上部に設けられた入水口から前記貯湯タンクに再供給される第1循環回路と、前記貯湯タンク下部に設けられた入出水口から取得された温水が、前記第2熱源機を介して直接、若しくは更に前記第1熱源機を介して、前記入水口から前記貯湯タンクに再供給される第2循環回路と、給水源から供給された低温水が、前記第2循環回路上の分岐点で分岐されて前記入出水口並びに前記第2熱源機に供給される給水回路と、を備える構成である場合であれば、前記給水回路内を通流する前記低温水の温度、または前記第2循環回路内における前記分岐点から前記第2熱源機までの間の管路内を通流する温水の温度の測定が可能な入水温度センサを備え、前記制御部が、前記入水温度センサから前記入水温度に関する情報が与えられる構成としても良い。
【0034】
そして、さらに、前記第2循環回路内において、前記入出水口と前記第2熱源機の間に位置する前記分岐点に介装された四方向に第1〜第4開口部を有する十字継手を有し、前記第2開口部に前記給水源を接続し、前記第3開口部に前記第2熱源機を接続し、前記第4開口部に前記入出水口を接続することで、前記給水源から供給される前記低温水が、前記十字継手で分岐されて前記貯湯タンク並びに前記第2熱源機に供給可能に構成されており、前記入水温度センサが、前記第1開口部から前記十字継手内部の流路に到達するように挿嵌されることで、前記十字継手内部の流路を通水する温水の温度測定が可能に構成されているものとしても良い。このように構成されるとき、十字継手のうちの一開口部から温度センサを挿嵌することで第2熱源機に供給される温水の温度を測定することができる。そして、市販の十字継手を用い、一開口部から温度センサを挿嵌することのみで実現することができる。このため、第2熱源機に供給される温水の温度を測定するために、管路上に温度センサを設置するための開口部を別途形成する必要がない。
【発明の効果】
【0035】
本発明の構成によれば、複数の熱源機を併用した給湯システムにおいて、従来よりもさらに運転効率あるいは運転メリットの向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下において、本発明に係る給湯システムの実施形態(以下、適宜「本実施形態」という)について図面を参照して説明する。なお、図7及び図8に示す従来構成と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0037】
又、以下の各図面は、システム構成を概略的に示したものであり、圧力センサ等の一部の構成要素については図示していない。
【0038】
図1は、本発明に係る給湯システム(以下、適宜「本システム」という)の概略構成図である。図1に示す本システム10は、図7に示す従来の給湯システム100と比べて、制御部61及び外気温度センサ62を備える。なお、制御部61は、入力された情報に基づいて演算処理を行う演算機能を有し、当該演算処理によって得られた演算結果を外部に出力する構成であり、例えばCPUと記憶手段を備える。
【0039】
外気温度センサ62は、本システム10(特にヒートポンプ給湯機2)の設置箇所(または設置区域、設置地域)における外気の温度を測定し、当該測定結果を制御部61に与えることができる構成である。
【0040】
また、本システムでは、従来の給湯システム100と異なり、三方継手41の代わりに異なる四方向に開口部を有する十字継手43を備え、この十字継手の一の開口部に温度センサ52が挿嵌されている。言い換えれば、図8(b)に示す第2循環回路C2内において、入出水口31とヒートポンプ給湯機2の間に十字継手43が介装される構成である。
【0041】
このとき、貯湯タンク1の入出水口31から取得された温水は、入出水口31、十字継手43を介してヒートポンプ給湯機2に供給され、ヒートポンプ給湯機2で加熱された温水が、入水口33から貯湯タンク1へ再供給される。また、給水源5から供給された低温水は、十字継手43によって、入出水口31から貯湯タンク1に供給される経路と、ヒートポンプ給湯機2へ供給される経路とに分岐される。
【0042】
図2は、十字継手43の構造を拡大した模式図である。十字継手43は、異なる四方向にそれぞれ第1開口部43a、第2開口部43b、第3開口部43c、及び第4開口部43dを備える。
【0043】
第1開口部43aには、当該十字継手43内部の流路に到達するように温度センサ52が挿嵌されており、十字継手43内部の流路を通水する温水の温度測定が可能に構成されている。また、第2開口部43bには給水源5と連絡された管路が接続され、第3開口部43cにはヒートポンプ給湯機2と連絡された管路が接続され、第4開口部43dには入出水口31が接続されている。
【0044】
これにより、給水源5から供給された低温水は、第2開口部43bから十字継手43内部に流入した後、第3開口部43cからヒートポンプ給湯機2へ供給される低温水と、第4開口部43dから入出水口31を介して貯湯タンク1内に供給される低温水とに分岐される。また、貯湯タンク1内に貯えられていた温水は、入出水口31から第4開口部43dを介して十字継手43内部に流入した後、第3開口部43cからヒートポンプ給湯機2へ供給される。そして、このように十字継手43内部を通水する温水または低温水の温度が、第1開口部43aから挿嵌された温度センサ52によって検出可能に構成されている。
【0045】
このとき、ヒートポンプ給湯機2に対して、給水源5からの低温水あるいは貯湯タンク1の入出水口31から取り出された温水のいずれが供給される場合であっても、この供給される温水は必ず分岐点である十字継手43内を通流する構成である。つまり、十字継手43内の挿嵌された温度センサ52は、当該十字継手43内を通流する温水または低温水の温度を検出することで、ヒートポンプ給湯機2に対する入水温度を検出することが可能な構成である。
【0046】
ここで、一般的に、ヒートポンプ給湯機2は、入水温度と外気温度によって運転時の成績係数を示すCOP(Coefficient Of Performance)値が決定される。本システム10の演算部61は、内部の記憶手段に、入水温度と外気温度の組み合わせによって決定されるヒートポンプ給湯機2のCOP値を、各入水温度及び各外気温度別に登録したデータベースを格納している。なお、ここでいうCOP値は状態指数に対応し、データベースは状態指数算定データベースに対応する。
【0047】
図3は、あるヒートポンプ給湯機2を本システム10に採用した場合における、制御部61内の記憶手段に格納された状態指数算定データベースの一例を示す表である。前記のとおり、入水温度と外気温度の組み合わせに基づいて、ヒートポンプ給湯機2におけるCOP値が定められている。そして、制御部61は、外気温度センサ62から与えられる外気温度に関する情報、及び温度センサ52から与えられるヒートポンプ2への入水温度に関する情報に基づいて、これらの組み合わせに対応したCOP値(状態指数)を算定する。例えば、外気温度センサ62から与えられた外気温度が6℃であり、温度センサ52から与えられた入水温度が48℃である場合、図3に示す状態指数算定データベースに基づいて、状態指数が1.98と算定される(図3内において枠で囲んで表記している)。
【0048】
なお、図3に示す状態指数算定データベースでは、外気温度及び入水温度はいずれも整数値で与えられる表として構成されている。この場合において、外気温度センサ62から与えられた外気温度、及び温度センサ52から与えられるヒートポンプ給湯機2への入水温度が整数値で表されない場合には、状態指数算定データベースに表示されている外気温度入水温度の組み合わせの中から、最も近い組み合わせに対応した状態指数を算定するものとすれば良い。
【0049】
また、制御部61が、外気温度と入水温度が与えられることで状態指数を算定することができる演算式を記憶手段に記録している場合には、当該演算式に対して、外気温度センサ62から与えられた外気温度、及び温度センサ52から与えられるヒートポンプ2への入水温度の情報を代入することで演算処理を行って状態指数を算定するものとすれば良い。この場合、制御部61は前記状態指数算定データベースを内部に備えなくても良い。
【0050】
前述したように、ヒートポンプ給湯機は、原則としては、ガス焚あるいは油焚きの温水機(温水ボイラ)よりもエネルギー効率が高いため、ヒートポンプ給湯機を優先的に稼働させることでシステム全体の効率が向上する。しかし、一方で、一般的にヒートポンプ給湯機は、設置箇所における外気温度が低下すればするほど、また、入水温度が上昇すればするほどCOP値が低下する性質を有する。
【0051】
すなわち、上記従来構成のように、単に貯湯タンク1内の温水の温度のみでヒートポンプ給湯機2の運転制御を行った場合、外気温度や入水温度によっては、システム全体として低いエネルギー効率で運転をしている場合も想定される。このような場合には、ヒートポンプ給湯機を先に停止させ、温水ボイラのみが稼働している運転状態に制御する方が、システム全体の効率が高くなる。
【0052】
しかしながら、前記の通り、ヒートポンプ給湯機の運転効率を低下させる要因として外気温度と入水温度の2つの要素が存在するため、単に外気温度のみ、あるいは入水温度のみでヒートポンプ給湯機の運転制御を行った場合には、ヒートポンプ給湯機を運転させる方が効率的な場面で停止させてしまったり、逆に、ヒートポンプ給湯機を停止させる方が効率的な場面で運転を持続してしまうという制御が行われる可能性がある。そして、このように運転効率に2つの要素が関連して影響をし合うため、単に外気温度や入水温度を所定の温度と比較することのみでヒートポンプ給湯機の運転制御を行っても、効率的な運転が期待できない場合も想定される。
【0053】
そこで、本システム10では、予め、外気温度と入水温度の組み合わせ毎に、当該環境下においてヒートポンプ給湯機を運転した場合の運転状態を評価するための状態指数をCOP値によって算定し、制御部61内の記憶手段に状態指数算定データベースとして記録している。さらには、運転中のヒートポンプを停止させた方がシステム全体の効率が向上する分岐点として「目標指数」を定めている。このように構成することで、制御部61は、与えられた外気温度と入水温度の情報を用い、状態指数算定データベースから読み出された状態指数と目標指数を比較し、ヒートポンプ給湯機2を停止するか否かを判断する。
【0054】
ここで、本システム10は、予め複数の異なる運転モードの中から、一の運転モードを指定することができる構成となっており、制御部61において、どの運転モードに設定されているかを認識することができる。そして、前記目標指数は、設定された運転モードごとに記憶手段に記録されている。
【0055】
例えば、運転モードとしては、ランニングコストメリット優先モード、CO排出量削減優先モード、一次エネルギー換算優先モード等の中から適宜選択して決定することができる。そして、各運転モードごとに、入水温度と外気温度の各組み合わせに応じた目標となるCOP値(目標指数)が予め決定されている。
【0056】
具体的な目標指数の定め方の一例を以下に示す。
【0057】
ランニングコストメリット優先モードの場合、同一の負荷を供給すべく、ヒートポンプ給湯機2を運転した場合と温水ボイラ3を運転した場合において、ヒートポンプ給湯機2の運転ランニングコストが、温水ボイラ3の運転ランニングコストよりも所定の金額以上(例えば10円以上)、下回る最低条件をもって目標指数とする。
【0058】
ここで、給湯負荷をZ〔kW〕,温水ボイラ3のCOP値をPb,熱源(ここではガスとする)の単価をCg〔円/Nm〕,ガスの熱効率(定数)をηg〔kcal/Nm〕,単位換算用の定数をk(=860〔cal/W〕)とすると、温水ボイラ3によって当該給湯負荷に対して熱供給を行うのに必要なコストCbzは、下記(数1)によって表される。
【0059】
(数1)
Cbz=(Z・k/(Pb・ηg))・Cg
【0060】
一方、前記給湯負荷に対し、ヒートポンプ給湯機2によって熱供給を行うのに必要なコストChzは、ヒートポンプ給湯機2の運転時のCOP値をPh,電力単価をCe〔円/kW〕とすると、下記(数2)によって表される。
【0061】
(数2)
Chz=(Z/Ph)・Ce
【0062】
ここで、前記Pbは、システム10に用いられる温水ボイラ3の能力によって決定される。また、ηg,k,Cg,Ceはそれぞれ定数であるため、ヒートポンプ給湯機2によって熱供給することで生じるコストChzが、温水ボイラ3によって熱供給することで生じるコストCbzよりも、所定の金額以上、下回るような必要条件を満足するCOP値(Ph)が算出される。ここで、Z=116,Pb=0.9,ηg=9700,k=860,Cg=95をそれぞれ代入すると、温水ボイラ3によるコストCbz=1086円と算出され、このコストを例えば10円以上、下回るための最低条件として、例えばヒートポンプ給湯機2のCOP値(Ph)を1.2としたときに、ヒートポンプ給湯機2によるコストは上記(数2)によってChz=1063円と算定される。すなわち、Ph=1.2以上の条件下でヒートポンプ給湯機2が運転されるような環境であれば、温水ボイラ3単独で給湯負荷に対して熱供給をする場合に比較して、ヒートポンプ給湯機2を運転させた方がランニングコストが安価になることが分かる。図3におけるA−A’線は、COP=1.2を示す境界を折れ線で結んだものであり、かかる折れ線より左下に位置する領域の環境下でヒートポンプ給湯機2を運転すれば、COPが1.2以上を示し、ヒートポンプ給湯機2を運転することによるランニングコストメリットが得られるというものである。
【0063】
同様に、CO排出量メリット優先モードの場合、同一の負荷を供給すべく、ヒートポンプ給湯機2を運転した場合と温水ボイラ3を運転した場合において、ヒートポンプ給湯機2の運転時CO排出量が、温水ボイラ3の運転時CO排出量よりも所定量以上(例えば0.5kg以上)、下回る最低条件をもって目標指数とする。
【0064】
ここで、ガスの排出量原単位をEg〔kg/Nm〕とすると、温水ボイラ3によって当該給湯負荷に対して熱供給を行うに際し生じるCO排出量Ebzは、下記(数3)によって表される。
【0065】
(数3)
Ebz=(Z・k/(Pb・ηg))・Eg
【0066】
一方、前記給湯負荷に対し、ヒートポンプ給湯機2によって熱供給を行うに際し生じるCO排出量Ehzは、電力の排出量原単位をEe〔kg/Nm〕とすると、下記(数4)によって表される。
【0067】
(数4)
Ehz=(Z/Ph)・Ee
【0068】
ここで、Z=116,Pb=0.9,ηg=9700,k=860,Eg=2.108をそれぞれ代入すると、温水ボイラ3によるCO排出量はEbz=24.1kgと算出される。そして、この排出量を例えば0.5kg以上、下回るための最低条件として、例えばヒートポンプ給湯機2のCOP値(Ph)を1.8としたときに、ヒートポンプ給湯機2によるCO排出量は、上記(数4)によってコストEhz=23.1kgと算定される。すなわち、Ph=1.8以上の条件下でヒートポンプ給湯機2が運転されるような環境であれば、温水ボイラ3単独で給湯負荷に対して熱供給をする場合に比較して、ヒートポンプ給湯機2を運転させた方がCO排出量が削減できることが分かる。図3におけるB−B’線は、COP=1.8を示す境界を折れ線で結んだものであり、かかる折れ線より左下に位置する領域の環境下でヒートポンプ給湯機2を運転すれば、COPが1.8以上を示し、ヒートポンプ給湯機2を運転することによるCO排出量メリットが得られるというものである。
【0069】
同様に、一次エネルギー換算メリット優先モードの場合、同一の負荷を供給すべく、ヒートポンプ給湯機2を運転した場合と温水ボイラ3を運転した場合において、温水ボイラ3のCOP値よりも、一次エネルギー換算におけるヒートポンプ給湯機2のCOP値が所定値以上(例えば0.001以上)、上回る最低条件をもって目標指数とする。
【0070】
ヒートポンプ給湯機2のCOP値を一次エネルギー換算後のCOP値Ph1は、発電効率ηe(定数)を用いて、以下の(数5)で表される。
【0071】
(数5)
Ph1=Ph・ηe
【0072】
よって、温水ボイラ3のCOPをPb=0.9とし、ηe=0.369とした場合、例えばヒートポンプ給湯機2のCOP値(Ph)を2.45としたときに、一次エネルギー換算後のヒートポンプ給湯機2のCOP値(Ph1)は0.904となって、温水ボイラ3のCOP値を0.001以上上回る。すなわち、Ph=2.45以上の条件下でヒートポンプ給湯機2が運転されるような環境であれば、温水ボイラ3単独で給湯負荷に対して熱供給をする場合に比較して、ヒートポンプ給湯機2を運転させた方が一次エネルギー換算後であってもCOP値が高い値を示すことが分かる。図3におけるC−C’線は、COP=2.45を示す境界を折れ線で結んだものであり、かかる折れ線より左下に位置する領域の環境下でヒートポンプ給湯機2を運転すれば、COPが2.45以上を示し、ヒートポンプ給湯機2を運転することによる一次エネルギー換算のメリット、すなわち省資源運転が得られるというものである。
【0073】
例えば、上記のような方法を用いることで、ランニングコストメリット優先モード、CO排出量削減優先モード、一次エネルギー換算優先モードの各運転モードにおいて、それぞれ目標指数が1.20、1.80、2.45と定められて、制御部61内の記憶手段に記録されている。
【0074】
本システムでは、図7に示す従来構成と同様、温水ボイラ3及び循環ポンプ24については温度センサ51の検出結果に基づいて運転制御が行われる。具体的には、例えば温度センサ51から与えられる温度情報が60℃以上であれば温水ボイラ3及び循環ポンプ24は停止制御が行われ、55℃以下であれば温水ボイラ3及び循環ポンプ24は運転制御が行われる。
【0075】
一方、ヒートポンプ給湯機2は、制御部61によって運転制御が行われる。具体的には、ヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13は、入水温度、並びに状態指数と目標指数の比較結果を踏まえて運転制御が行われる。
【0076】
すなわち、ヒートポンプ給湯機2が運転中である場合において、制御部61は、運転モード毎に定められた目標指数を状態指数が下回った段階で、ヒートポンプ給湯機2を停止する制御を行う。このとき、制御部61は、温度センサ52及び外気温度センサ62が示す温度情報を逐次取得可能な構成であるものとして良い。
【0077】
前述のように、目標指数は、各運転モード毎に定められた目標となるCOP値であり、この目標を下回るCOP値を示すような運転状態である場合には、目標よりもシステム10全体の運転効率が低下していること、並びに、かかる場合にはヒートポンプ給湯機2を停止して温水ボイラ3の単独運転状態に切り換えた方がシステム10全体のメリット(コストメリット、CO排出量メリット、エネルギー換算メリット)が向上することを示している。すなわち、制御部61が、運転モード毎に定められた目標指数を状態指数が下回った段階で、ヒートポンプ給湯機2を停止する制御を行うことで、システム10全体で見たときの効率が向上する。
【0078】
一方で、従来と同様、制御部61は、入水温度が60℃以上を示す場合においてもヒートポンプ給湯機2を停止する制御を行う。また、入水温度が50℃以下を示す場合では、前記目標指数が状態指数を上回っていることを条件にヒートポンプ給湯機2を運転する制御を行う。
【0079】
上記制御が行われることにより、ヒートポンプ給湯機2は、実際には、入水温度が60℃未満である場合にのみ、目標指数を用いた運転制御が行われる構成となる。このとき、原則としては、高効率なヒートポンプ給湯機2を優先的に運転しながらも、ヒートポンプ給湯機2を運転した方がシステム全体のメリットが低下してしまうような条件下に陥った場合には、例外的に温水ボイラ3よりもヒートポンプ給湯機2を先に停止する制御を行う。これにより、従来構成のメリットを活用しながらも、さらに従来よりも高いエネルギー効率を実現することができる。
【0080】
この場合、給湯負荷4が大きく給水源5から低温水が供給される場合には、温度センサ52によって当該低温水の温度が検出される構成となるため、検出された温度が低い温度であることを直ちに認識してヒートポンプ給湯機2を稼働させることができる。即ち、給湯負荷4が高負荷となった場合に、高効率のヒートポンプ給湯機2を直ちに稼働させる制御を行うことができ、システム全体として、更に高い効率が実現できる。
【0081】
ところで、図7に示す従来構成は、予め温水ボイラ3とヒートポンプ給湯機2を併用して熱源を供給する給湯システムを想定したものである。しかし、温水ボイラ3による加熱のみを想定して製造された従来の貯湯タンク1では、温水ボイラ3の制御のための温度センサ51は既に取り付けられているものの、ヒートポンプ給湯機2の制御のための温度センサ52は取り付けられていない。
【0082】
従って、このような温水ボイラ3による加熱のみを想定して製造された貯湯タンク1を図7に示す給湯システム100に適用するためには、新たに温度センサ52を取り付ける必要があるが、貯湯タンク1にはこのような温度センサ52を新たに取り付けるための管台が存在しておらず、このような温度センサ52を新たに取り付けるのが困難である。
【0083】
しかしながら、本システム10によれば、予め温水ボイラ3による加熱のみが想定された温水ボイラ3を備えたシステムに対しても、市販の十字継手(クロス継手とも称される)を用い、一の開口部に温度センサ52を挿嵌することで実現可能である。このため、熱源機として温水ボイラ3のみを想定していた従来の貯湯タンク1に対して、ヒートポンプ給湯機2を新たな熱源機として追加する場合においても、貯湯タンク1に温度センサ52を取り付けるための孔を空ける施工を行う必要がなく、給湯システムの信頼性に影響を与えず容易に本システムを実現することができる。
【0084】
なお、上述の実施形態において、継手内を通水する温水の温度を測定するために挿嵌する温度センサは、鉛直下向きに挿嵌する必要はなく、挿嵌方向に依存するものではない。また、各継手間の接続位置や継手の取り付け位置は、図面上に図示された位置に限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意に変更可能である。例えば、図2では貯湯タンク1の入出水口31を接続する開口部43dと向かい合う位置の開口部43bには給水源5を接続し、開口部43dの時計回りの位置で隣接する開口部43aには温度センサ52を挿嵌し、開口部43dの反時計回りの位置で隣接する開口部43cにはヒートポンプ給湯機2を接続するものとしたが、これら給水源5、温度センサ52、及びヒートポンプ給湯機2を、開口部43a〜43cの何れに接続(挿嵌)させる構成としても構わない。又、図2では開口部43aと開口部43cとが鉛直方向に向かい合う構成であったが、例えば水平方向に向かい合う構成としても構わない。
【0085】
さらに、上述の実施形態では、システム10内に、ヒートポンプ給湯機2の設置箇所(または設置区域、設置地域)における外気の温度を測定する外気温度センサ62を備える構成としたが、外気温度に関する情報が制御部61に与えられる構成であれば、必ずしも外気温度そのものを測定する機能を有する装置(温度センサ)を備える必要はない。具体的には、制御部61に対し、気象データが随時更新されるデータベース、サーバ、あるいはストレージから電気通信回線を通じて外気温度に関する情報が取得可能に構成されていても良い。
【0086】
また、上述の実施形態では、ヒートポンプ給湯機2で加熱された温水は、直接貯湯タンク1に供給されるシステム構成としたが、温水ボイラ3を介して貯湯タンク1に供給されるシステム構成としても構わない。図4は、本発明システムの別実施形態を示す概略構成図である。
【0087】
図4に示す本発明システム10aは、図1に示す本発明システム10と比較して、循環ポンプ25及び三方継手44を新たに備え、又、逆止弁15及び三方継手42を備えない。即ち、ヒートポンプ給湯機2で加熱された温水が、循環ポンプ25を介して逆止弁17と温水ボイラ3の間に介装された三方継手44内に供給され、この三方継手44を介して温水ボイラ3へ供給される構成である。循環ポンプ25は、制御部61によって、ヒートポンプ給湯機2と同様の条件で運転制御が行われる。なお、圧力的に循環ポンプ13だけで温水ボイラ3側へ供給可能であれば、循環ポンプ25は不要である。
【0088】
かかる構成とすることで、ヒートポンプ給湯機2と温水ボイラ3の双方が運転している場合、ヒートポンプ給湯機2によって加熱された温水が、温水ボイラ3に供給された後、再度温水ボイラ3によって加熱されて貯湯タンク1に供給される。この場合、温水ボイラ3には予めヒートポンプ給湯機2によって加熱された温水が供給されるため、温水ボイラ3に供給される温水の温度が本発明システム10と比較して上昇し、これによって温水ボイラ3の熱交換量を減らすことができるため、上記実施形態よりもさらにシステム全体の効率が向上する。
【0089】
なお、上記実施形態では、第2循環回路C2内において、入出水口31とヒートポンプ給湯機2の間の分岐点に十字継手43を介装し、この十字継手43の一開口部に温度センサ52を挿嵌する構成とした。しかし、このような形態に限られるものではない。例えば、三方継手41をそのまま介装した状態で、当該三方継手41とヒートポンプ給湯機2の間における管路上に、当該管路内を通流する温水の温度を測定可能な温度センサ52を備える構成としても良い。このように構成しても、温度センサ52によってヒートポンプ給湯機2の入水温度を測定することができるため、当該温度センサ52によって測定された入水温度に関する情報を制御部61に与える構成とすることで、前記実施形態と同様の構成を実現できる。
【0090】
また、上記実施形態では、運転状態を評価するための指数としてCOP値を用いたが、運転状態を一元的に評価できる値であれば、COP値に限られるものではない。また、上記各運転モードについても一例であって、その他の異なる運転モードを想定し、これらの運転モード毎に目標指数が登録されている構成であっても構わない。
【0091】
さらに、上述の実施形態では、熱源機としてヒートポンプ給湯機2と温水ボイラ3を用いるものとして説明したが、複数の熱源機を備えると共に、一の熱源機が、外気温度と入水温度の2つの条件によって運転効率が左右される特性を有する構成であれば、熱源機の種類に限定されるものではない。また、ヒートポンプ給湯機2並びに温水ボイラ3を備える場合であっても、上述のようにCO冷媒を用いたヒートポンプ給湯機や真空式ボイラに限定されるものではない。更に、ヒートポンプ給湯機2及び温水ボイラ3の発停条件として記載した設定温度値はあくまで一例であり、設定値はこの値に限られるものではない。
【0092】
例えば、図5に示すようなシステム10aや図6に示すようなシステム10bにおいても、上述した実施形態と同様、外気温度と入水温度に基づいて制御部61がヒートポンプ給湯機2並びに循環ポンプ13を制御する構成とすることで、同様の効果を得ることができる。
【0093】
図5に示すシステム10bの場合、給水源5からの給水は貯湯タンク1にのみ供給される。一方、貯湯タンク1の出水口32から、分岐点43を介して、ヒートポンプ給湯機2と温水ボイラ3に低温水が供給される。ヒートポンプ給湯機2は供給される低温水を加熱し、入水口33から貯湯タンク1に温水を供給する。このような構成の場合、貯湯タンク1内に設けられた温度センサ52が示す温度と、外気温度センサ62が示す外気温度に基づいて制御部61が、ヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13を制御する。このとき、上記実施形態と同様、優先モードに応じてヒートポンプ給湯機2の運転の制御を行う。制御方法は上記実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【0094】
また、図6に示すシステム10cの場合、貯湯タンク1の他にクッションタンク7を備える構成である。そして、給水源5からの給水は、分岐点72を介してクッションタンク7と貯湯タンク1に供給される。クッションタンク7に貯えられた温水は、出水口82からヒートポンプ給湯機2に供給され、加熱された後入水口83よりクッションタンク7内に再度供給される。そして、このクッションタンク7に貯えられた温水は、出水口84から分岐点71を介して貯湯タンク1に供給される。このような構成の場合、クッションタンク7内に設けられた温度センサ52が示す温度と、外気温度センサ62が示す外気温度に基づいて制御部61が、ヒートポンプ給湯機2及び循環ポンプ13を制御する。このとき、上記実施形態と同様、優先モードに応じてヒートポンプ給湯機2の運転の制御を行う。制御方法は上記実施形態と同様であるため、説明を割愛する。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る給湯システムは、例えばヒートポンプ式の給湯システムに利用でき、ヒートポンプ式の給湯システムの高いエネルギー効率を維持して、瞬間的な高給湯負荷への給湯に自動的に対応可能で、システム内の給湯圧力を高めることのできる給湯システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る給湯システムの概略構成図
【図2】十字継手の構造を拡大した模式図
【図3】状態指数算定データベースの一例を示す表
【図4】本発明に係る給湯システムの別の概略構成図
【図5】本発明に係る給湯システムのさらに別の概略構成図
【図6】本発明に係る給湯システムのさらに別の概略構成図
【図7】従来の給湯システムの概略構成図
【図8】第1循環回路及び第2循環回路の経路図
【符号の説明】
【0097】
1: 貯湯タンク
2: ヒートポンプ給湯機
3: 温水ボイラ
4: 給湯負荷
5: 給水源
7: クッションタンク
10、10a、10b、10c: 本発明に係る給湯システム
11、12、14、16、18、19、21、22:弁
13、23、24、25: 循環ポンプ
15、17: 逆止弁
31: 入出水口
32、34: 出水口
33、35: 入水口
41、42、44: 三方継手
43: 十字継手
43a、43b、43c、43d: 開口部
51、52: 温度センサ
61: 制御部
62: 外気温度センサ
100: 従来の給湯システム
C1、C2: 循環回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を給湯負荷に供給する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクから供給される温水を加熱した後、再び前記貯湯タンクに供給する第1熱源機と、
前記第1熱源機とは異なる原理で温水を加熱する構成であって、少なくとも供給される温水の入水温度及び設置箇所の外気温度に依存して運転効率が変化する第2熱源機と、
前記第2熱源機の発停制御を行う制御部と、を備えてなり、
前記第2熱源機は、供給された温水を加熱した後、前記貯湯タンクに供給する構成であり、
前記制御部は、
前記第2熱源機に供給される温水の入水温度に関する情報、並びに前記第2熱源機の設置された領域の外気温度に関する情報が与えられる構成であって、前記入水温度と前記外気温度に基づいて前記第2熱源機の運転状態を評価するための状態指数を算定するとともに、予め定められた目標指数と前記状態指数とを比較して、当該比較結果に応じて前記第2熱源機の運転制御を行うことを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を給湯負荷に供給する貯湯タンクと、
温水を貯湯すると共に当該貯湯された温水を前記貯湯タンクに供給するクッションタンクと、
前記貯湯タンクから供給される温水を加熱した後、再び前記貯湯タンクに供給する第1熱源機と、
前記第1熱源機とは異なる原理で温水を加熱する構成であって、少なくとも供給される温水の入水温度及び設置箇所の外気温度に依存して運転効率が変化する第2熱源機と、
前記第2熱源機の発停制御を行う制御部と、を備えてなり、
前記第2熱源機は、供給された温水を加熱した後、前記クッションタンクに供給する構成であり、
前記制御部は、
前記第2熱源機に供給される温水の入水温度に関する情報、並びに前記第2熱源機の設置された領域の外気温度に関する情報が与えられる構成であって、前記入水温度と前記外気温度に基づいて前記第2熱源機の運転状態を評価するための状態指数を算定するとともに、予め定められた目標指数と前記状態指数とを比較して、当該比較結果に応じて前記第2熱源機の運転制御を行うことを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
前記第2熱源機が運転中である場合において、
前記状態指数が前記目標指数を下回っている場合には、前記制御部が前記第2熱源機を停止する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記入水温度が第1温度以下であって、且つ、前記状態指数が前記目標指数を上回っている場合には、前記第2熱源機を運転する制御を行い、
前記入水温度が前記第1温度より高い第2温度以上であるか、または、前記状態指数が前記目標指数を下回っているかの少なくともいずれか一方が該当した場合には、前記第2熱源機を停止する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記制御部が、前記入水温度と前記外気温度の組み合わせに応じて前記状態指数が決定される状態指数算定データベースを内部に格納しており、前記入水温度及び前記外気温度に関する情報が与えられると、与えられた両情報の組み合わせに最も近い組み合わせに応じた前記状態指数を前記状態指数算定データベースから算定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
前記制御部は、
複数の異なる運転モードから選択された一の運転モードを設定可能に構成され、設定された前記運転モードに応じて決定される前記目標指数と前記状態指数とを比較することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項7】
前記第1熱源機が、燃焼式の温水機であり、
前記第2熱源機が、ヒートポンプ回路の凝縮器からの凝縮熱と熱交換することで前記低温水を加熱して温水を生成するヒートポンプ式給湯機であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項8】
前記状態指数及び前記目標指数は、ヒートポンプ式給湯機の成績係数を示すCOP値で表されていることを特徴とする請求項7に記載の給湯システム。
【請求項9】
前記外気温度の測定が可能な外気温度センサを備え、
前記制御部が、前記外気温度センサから前記外気温度に関する情報が与えられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項10】
前記第2熱源機に温水を供給する管路内を通流する温水の温度、または、前記第2熱源機に供給する温水が貯えられたタンク内の温水の温度の測定が可能な入水温度センサを備え、
前記制御部が、前記入水温度センサから前記入水温度に関する情報が与えられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の給湯システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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