説明

給湯システム

【課題】低温湯張りが可能な給湯システムを提供する。
【解決手段】給湯システムS1は、弁体30を制御して、第1配管23および第2配管24を開状態とすることにより、第1配管23を通る加熱水WH1と第2配管24を通る水WL1とを混合させて、所定の下限温度から所定の上限温度の範囲で湯WH2を生成する制御部40とを含む。制御部40は、設定温度が下限温度よりも低いとき、まず、弁体30により、第1配管23を閉状態とすると共に、第2配管24を開状態として、第2配管24からの水WL1を浴槽8に所定量供給させ、次に、弁体30により、第1配管23および第2配管24の両方を開状態として、下限温度の湯WH2を浴槽8に所定量供給させる第1制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが設定した設定温度かつ設定湯量の湯を浴槽に張る湯張り機能を備えた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽に湯を張る湯張り機能を備えた家庭用給湯システムとして、従来から、主にセミオート給湯システムおよびフルオート給湯システムの2つが知られている。セミオート給湯システムおよびフルオート給湯システムは共に、ユーザによって設定された温度および湯量で自動的に湯張りを行うものである。フルオート給湯システムは、さらに、特許文献1のように、湯張り中に湯が放熱して温度が低下すると、追い炊き機能等により湯を設定温度まで昇温させて、湯温を常時設定温度となるように維持している。一方、セミオート給湯システムは、フルオート給湯システムと異なり、追い炊き機能を有していない。
【特許文献1】特開平6−050609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなセミオート給湯システムおよびフルオート給湯システムは、貯湯タンク内で沸き上げられた加熱水と、水とを湯水混合弁によって混合させて、一般的に36〜48℃の範囲の湯を浴槽に供給することが可能である。言い換えれば、従来のセミオート給湯システムおよびフルオート給湯システムは、36℃(下限温度)よりも低い温度の湯を自動的に供給することができない。
【0004】
一方、36℃よりも低い温度の湯の使用を希望するユーザは多い。ユーザが、例えば30℃程度のぬるま湯を浴槽に張りたい場合、ユーザは、まず、給湯システムによって供給可能な下限温度の湯を自動的に浴槽にある程度張り、次に、浴槽内の混合栓から浴槽に水を手動で供給することにより、ぬるま湯を浴槽に張ることになる。このように、従来のセミオート給湯システムおよびフルオート給湯システムは、自動的に低温湯張りを行うことができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、低温湯張りが可能な給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る給湯システムは、ユーザが設定した設定温度かつ設定湯量の湯を浴槽に張る湯張り機能を備えた給湯システムであって、加熱された加熱水を貯留する貯湯タンクと、前記加熱水を前記貯湯タンクから前記浴槽に供給する第1配管と、水の元供給源から前記浴槽に水を供給する第2配管と、前記第1配管および第2配管に接続され、該第1配管および第2配管の開閉を行う弁体と、前記弁体を制御して、前記第1配管および第2配管を開状態とすることにより、前記第1配管を通る前記加熱水と前記第2配管を通る前記水とを混合させて、所定の下限温度から所定の上限温度の範囲で湯を生成する制御部と、前記設定温度および設定湯量を含む湯張り情報を前記制御部に与える操作部とを含む。前記制御部は、前記操作部から受け取った前記湯張り情報において前記設定温度が前記下限温度よりも低いとき、まず、前記弁体により、前記第1配管を閉状態とすると共に、前記第2配管を開状態として、前記第2配管からの水を前記浴槽に所定量供給させ、次に、前記弁体により、前記第1配管および第2配管の両方を開状態として、前記下限温度の湯を前記浴槽に所定量供給させる第1制御を行う。
【0007】
従来では、水および加熱水を混合して、所定の下限温度から所定の上限温度の範囲の湯を予め生成してからその湯を浴槽に供給して湯張りを行うため、下限温度よりも低い温度の湯で湯張りを行うこと、つまり低温湯張りを行うことができなかった。これに対し、本発明に係る給湯システムでは、まず、水のみを浴槽に供給し、次に、下限温度の湯を、水のみが張られた浴槽に供給するため、浴槽内で水と下限温度の湯とが混合されて生成される湯は、下限温度よりも低い温度となる。これにより、例えば下限温度が36℃である場合、これよりも低い、例えば30℃のぬるま湯を浴槽に自動的に張ることができる。このように、本発明に係る給湯システムは、低温湯張りに対応可能な給湯システムである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、給湯システムは、さらに、前記弁体と前記浴槽とを連通させる第3配管を含む。前記弁体は、第1入力ポート、第2入力ポートおよび出力ポートを有し、前記第1入力ポートおよび第2入力ポートの各開度が調整可能な三方弁であり、前記第1入力ポートには、前記第1配管が接続され、前記第2入力ポートには、前記第2配管が接続され、前記出力ポートには、前記第3配管が接続される。前記制御部は、前記第1ポートおよび第2ポートの各開度を調整することにより前記第1制御を行う。この構成によれば、三方弁を使用して、簡易に湯張りを行うことができる。
【0009】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記制御部は、前記水の供給量および前記下限温度の前記湯の供給量の総量が前記設定湯量となるように、かつ前記浴槽に張られる湯が前記設定温度となるように前記水供給量および前記湯供給量を演算して前記第1制御を行う。
【0010】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記制御部は、前記第1制御に加え、前記設定温度が前記下限温度から前記上限温度の範囲にあるとき、前記第1入力ポートおよび前記第2入力ポートの各開度を調整して前記加熱水および前記水を混合させることにより、前記設定温度の湯を生成し、その湯を前記出力ポートから前記浴槽に前記設定湯量供給させる第2制御を行い、前記第1制御および第2制御は、いずれか一方が前記設定温度に応じて前記制御部によって自動的に択一的に選択される。
【0011】
この構成によれば、ユーザが設定した温度に応じて第1制御または第2制御による湯張りが自動的に選択されるので、本発明に係る給湯システムは、ユーザにとって使い勝手がよい。
【0012】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、給湯システムは、さらに、前記水の温度を測定するセンサを含む。前記制御部は、前記水の温度が前記設定温度以上のとき、前記第1ポートを閉状態とすると共に前記第2ポートを開状態として、前記水が前記設定湯量に達するまで前記水の前記浴槽への供給を行う。
【0013】
この構成によれば、例えば、水温が高くなる夏季において、設定温度が水温よりも低い場合、加熱水を用いて生成する下限温度の湯を用いずに低温湯張りを行うので、給湯システムが消費する熱量を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る給湯システムによれば、例えば30℃程度の温度の湯を浴槽に張る低温湯張りを自動的に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る給湯システムS1について説明する。この給湯システムS1は、浴槽8、シングルレバー式の混合栓Z1およびサーモスタット式の混合栓Z2に給湯する貯湯タンクユニットU1として構成されており、ユーザが設定した温度かつ湯量の湯を浴槽8に自動的に張る湯張り機能を備えたセミオート給湯器である。貯湯タンクユニットU1は、貯湯タンク10、元配管20、分岐管21、第1配管23、第2配管24、第3配管25、湯水混合三方弁(弁体)30、給湯制御部40およびリモコン装置(操作部)50を含む。
【0017】
なお、シングルレバー式混合栓Z1は、例えば開栓頻度が高い台所に配置され、ひとつのレバー操作で出水・止水が可能な混合栓であり、ユーザは、レバー位置を「水」から「湯」への移動レンジの適宜な位置に設定して、好みの湯温で出水させることが可能である。また、サーモスタット式混合栓Z2は、例えば浴室に配置され、内臓のサーモスタットエレメントにより湯と水の量を調節して一定温度に保つ混合栓であり、ユーザは、温度調整ハンドルを好みの温度に設定して、温水を出水させることが可能である。また、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に代えて、湯側と水側とが独立した給湯栓を用いてもよい。
【0018】
貯湯タンク10は、300〜560リットル程度の内容量を有する加熱水の貯留タンクであって、タンク内には水を加熱するための電気ヒータ61が取り付けられている。電気ヒータ61は、ON/OFFに切換え可能であり、給湯制御部40に制御されてONの状態にされると貯湯タンク10内の水をジュール熱で加熱する。例えば、深夜電力時間帯の終了時刻に合わせて、貯湯タンク10内の水の全量が所定温度(例えば60〜90℃)に昇温されるように、電気ヒータ61は通電制御される。また、昼間時間帯(深夜電力時間帯外)でも、貯湯タンク10内の加熱水が所定温度以下になると、追い炊きのために電気ヒータ61に通電され、貯湯タンク10内の水が加熱される。
【0019】
貯湯タンク10内部には、サーミスタ等からなる5つの温度センサ11〜15が上下方向に並ぶように配置されている。これらの温度センサ11〜15は、貯湯タンク10内に貯留されている加熱水の量を計測するために利用される。すなわち、深夜電力時間帯に貯湯タンク10内の水を沸き上げる場合に、温度センサ11〜15の全てが所定の湯温を検知したときに、水の全量が昇温されたと判定する。また、昼間時間帯に貯湯タンク10内の加熱水が使用されると、タンク下層部から徐々に水に入れ替わっていくことになるが、温度センサ11〜15の検知結果に基づくタンク上下方向の温度分布により、貯湯タンク10内に残存している加熱水量を推定することができる。
【0020】
元配管20は、商用の水供給系統に接続された配管である。分岐管21は、貯湯タンク10の底部に接続され、元配管20からの水WL2を貯湯タンク10へ供給するための配管である。なお、元配管20には、貯湯タンクユニットU1に含まれない、第1分岐管221および第2分岐管222からなる分岐管22が接続されている。第1分岐管221は、シングルレバー式混合栓Z1に接続され、元配管20から分流される水WL3をシングルレバー式混合栓Z1に直接供給する。第2分岐管222は、サーモスタット式混合栓Z2に接続され、元配管20から分流される水WL4をサーモスタット式混合栓Z2に直接供給する。
【0021】
第1配管23は、貯湯タンク10の上部に接続され、貯湯タンク10内の加熱水を、浴槽8、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための配管である。第2配管24は、元配管20から分流される水WL1を、浴槽8、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための配管である。第3配管25は、第1配管23からの加熱水および第2配管24からの水を、浴槽8、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2に導くための配管である。第1配管23の下流端、第2配管24の下流端および第3配管25の上流端には、湯水混合三方弁30が接続されている。
【0022】
湯水混合三方弁30は、第1入力ポート31、第2入力ポート32および出力ポート33を有し、第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度調整が可能な三方弁である。第1入力ポート31には、第1配管23の下流端が接続され、第2入力ポート32には、第2配管24の下流端が接続され、出力ポート33には、第3配管25の上流端が接続されている。第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が適宜調整されることにより、貯湯タンク10から第1配管23で導出される加熱水WH1に、第2配管24から供給される水WL1がユーザによる設定温度に応じて適量加えられると、前記設定温度の湯WH2が出力ポート33から第3配管25に導出される。三方弁を使用すれば、設定温度の湯WH2を簡易に生成することができる。湯WH2は、所定の下限温度から所定の上限温度の範囲で生成され、ユーザはその範囲の中から浴槽8に張られる湯の温度を設定する。下限温度は、例えば36℃であり、上限温度は、例えば48℃である。なお、下限温度および上限温度は、これらの数値に限定されない。
【0023】
第3配管25は、第1分岐管251および第2分岐管252に分岐される。第1分岐管251は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から導出された水WL1,湯WH2を浴槽8に供給するための配管であり、第1分岐管251の開閉を行うことが可能な風呂湯張り電磁弁26、および第1分岐管251を通る湯の量、つまり浴槽8に張られた湯の量を測定する風呂湯張りカウンター27が設けられている。第2分岐管252の下流端には、シングルレバー式混合栓Z1に水WL1,湯WH2を供給する第3分岐管253と、サーモスタット式混合栓Z2に水WL1,湯WH2を供給する第4分岐管254とが接続されている。
【0024】
給湯制御部40は、マイクロプロセッサや各種回路を含み、貯湯タンクユニットU1の各部の動作を制御する。本実施形態では、給湯制御部40は、特に、ユーザが設定した設定温度が下限温度よりも低いときに第1制御を行い、前記設定温度が下限温度から上限温度の範囲にあるときに第2制御を行うものである。第1制御および第2制御については後述する。
【0025】
リモコン装置(操作部)50は、浴室に設置される第1リモコン51と、台所に設置される第2リモコン52とを含む。第1リモコン51および第2リモコン52は、複数の操作ボタンを有するリモコンパネルであり、その操作ボタン群のうちの1つの操作ボタンが、給湯制御部40に給湯を開始させる湯張りボタン511,521とされている。
【0026】
このように構成された給湯システムS1では、湯水混合三方弁30を本来の動作状態で使用して浴槽8に湯を張る場合(本実施形態では第2制御による湯張り)の給湯経路は次の通りとなる。ユーザが、リモコン装置50によって、下限温度から上限温度の範囲にある、例えば温度42℃、湯量200リットルの湯を張るように設定すると、給湯制御部40は、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整して、第1配管23からの加熱水WH1と第2配管24からの水WL1とを混合させることにより、前記設定温度(42℃)の湯WH2を生成させる。湯WH2は、湯水混合三方弁30の出力ポート33から第3配管25の第1分岐管251に導入され、開状態とされた湯張り電磁弁26および湯張りカウンター27を通って浴槽8に供給される。湯WH2は、浴槽8に設定湯量である200リットルの湯が張られるまで供給され続ける。湯張りカウンター27によって浴槽8に設定湯量の湯が張られたことが検知されると、湯張り電磁弁26が閉止されて、湯WH2の浴槽8への供給は停止される。これにより、湯張りは完了する。
【0027】
給湯制御部40は、ユーザによって設定された温度が、湯水混合三方弁30によって調整可能な、下限温度(本実施形態では36℃)から上限温度(本実施形態では48℃)の範囲の温度であれば、上記のようにして湯張り(第2制御)を行う。
【0028】
ところで、42℃程度の比較的高温の湯ではなく、下限温度である36℃よりも低い温度、例えば30℃程度のぬるま湯での入浴を希望するユーザは多い。しかしながら、前記第2制御は、36℃以上48℃以下の温度での湯張りに対応するものであって、30℃程度の低温の湯張りに対応するものではない。そこで、本実施形態の給湯システムS1では、そのようなユーザの希望に応えるために、設定温度が下限温度である36℃よりも低い場合であっても給湯制御部40が湯張りを行うことが可能な第1制御を構成している。
【0029】
第1制御は、浴槽8に水WL1のみを供給した後、浴槽8に下限温度である36℃の湯WH2を供給して、浴槽8に設定温度かつ設定湯量の湯を張らせるものである。一方、第2制御は、上述のように、水WL1および加熱水WH1を混合して、設定温度(36℃〜48℃)の湯WH2を予め生成した後、その湯WH2を浴槽8に供給させるものである。本実施形態の給湯システムS1では、ユーザが設定した設定温度に応じて第1制御または第2制御のいずれかが給湯制御部40によって自動的に択一的に選択される。
【0030】
図2は、第1制御および第2制御を行う給湯制御部40の機能構成を示すブロック図であり、図3および図4はそれぞれ、リモコン装置50の第1リモコン51(浴室用)および第2リモコン52(台所用)のリモコンパネルを示す平面図である。
【0031】
まず、図3に示す第1リモコン51は、浴槽8への給湯およびサーモスタット式混合栓Z2からの給湯の設定を行うためのリモコンである。第1リモコン51には、給湯制御部40に湯張りを行わせるための湯張りボタン511が設けられている。この他、第1リモコン51には、風呂温度や湯量の設定等を行うための操作ボタン群と、設定情報を表示する表示パネル512とが設けられている。
【0032】
次に、図4に示す第2リモコン52は、主としてシングルレバー式混合栓Z1からの給湯の設定を行うためのリモコンである。第2リモコン52にも、湯張りボタン521が設けられており、ユーザは、台所から浴槽8への給湯設定を行うことができる。この他、第2リモコンには、各種の設定を行うための操作ボタン群と、設定情報を表示する表示パネル522とが設けられている。
【0033】
給湯制御部40は、リモコン装置50(第1リモコン51および第2リモコン52)で設定された給湯運転を行うために、貯湯タンクユニットU1による給湯動作を制御する。給湯運転とは、浴槽8への自動湯張り動作や、シングルレバー式混合栓Z1およびサーモスタット式混合栓Z2からの給湯動作を含むが、ここでは、主に浴槽8への自動湯張り動作について説明する。図2に示すように、給湯制御部40は、機能的に、電気ヒータ61による沸き上げ・追い炊き動作を制御するヒータ制御部42と、ユーザが設定した設定温度に対して判定を行う設定温度判定部41と、湯水混合三方弁30の開度を制御する三方弁制御部43と、湯張り電磁弁26の開閉を制御する電磁弁制御部45と、水WL1および湯WH2の浴槽8への各供給量を演算する供給量演算部48とを含む。
【0034】
ヒータ制御部42は、沸き上げ・追い炊き動作に応じて、電気ヒータ61に対する通電制御を行う。深夜電力時間帯における沸き上げ動作のとき、ヒータ制御部42は、貯湯タンク10内の温度センサ11〜15の出力から沸き上げに必要な熱量、加熱時間を演算し、例えば深夜電力時間帯の終了時刻に合わせて、貯湯タンク10内の水の全量が所定温度(例えば60〜90℃)に昇温されるように電気ヒータ61を通電制御する。また、昼間時間帯においては、ヒータ制御部42は、温度センサ11〜15の出力から貯湯タンク10内の残存温水量を把握し、温水量が所定量以下となったと判定された場合に、電気ヒータ61に通電して追い炊き動作を行わせる。
【0035】
設定温度判定部41は、ユーザによる設定温度に基づき、第1制御による低温湯張りおよび第2制御による通常湯張りのうちの一方の実行を決定するものである。具体的には、設定温度判定部41は、設定温度が下限温度の36℃よりも低い場合、第1制御の実行を決定し、設定温度が36℃〜48℃の範囲にある場合、第2制御の実行を決定する。また、設定温度判定部41は、ユーザによる設定温度が水WL1の温度よりも高いか否かを判定する。
【0036】
三方弁制御部43は、低温湯張り(第1制御)および通常湯張り(第2制御)に応じて、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整する。
【0037】
電磁弁制御部45は、ユーザによって湯張りボタン511,521が押されて浴槽8の湯張りが開始されると、第1分岐管251に設けられた湯張り電磁弁26を開状態とする。湯張り電磁弁26が開状態になると、湯水混合三方弁30からの湯WH2および水WL1が浴槽8に供給可能となる。また、湯張りカウンター27からの出力値に基づいて、浴槽8がユーザによって設定された湯量で満たされたと判定されると、湯張り電磁弁26は閉止される。
【0038】
供給量演算部48は、第1制御が実行されたとき、水WL1の浴槽8への供給量および下限温度の湯WH2の浴槽8への供給量を演算するものである。
【0039】
第1制御は、湯水混合三方弁30および湯張り電磁弁26に対して次の動作を行わせる。まず、湯張り電磁弁26が開状態とされる。また、第1入力ポート31が閉状態となると共に、第2入力ポート32が開状態となるように、開度調整モータ44によって、第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度を調整する開度調整バルブ(図示せず)が駆動される。これにより、第2配管24からの水WL1のみが浴槽8に供給される。すなわち、第2配管24からの水WL1は、出力ポート33から第3配管25に導出された後、第1分岐管251に流入し、開状態とされた湯張り電磁弁26および湯張りカウンター27を通って浴槽8に所定量供給される。このとき、第1配管23からの加熱水WH1が浴槽8に供給されることはない。第3配管25に導出された水WL1は、湯温センサ47により温度が測定される。その測定値に基づき、供給量演算部48は、後述する連立方程式(1)から水WL1の供給量を導き出す。
【0040】
水WL1が浴槽8に所定量供給された後、第1配管23からの加熱水WH1と第2配管24からの水WL1とを混合して、下限温度である、例えば36℃の湯WH2が生成されるように、第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が調整される。下限温度の湯WH2は、出力ポート33から第3配管25に導出された後、第1分岐管251に流入し、開状態とされた湯張り電磁弁26および湯張りカウンター27を通って浴槽8に所定量供給される。このように浴槽8に供給された、水WL1の前記所定量および下限温度の湯WH2の前記所定量の総量が、ユーザによって設定された湯量に達したことが湯張りカウンター27によって検知されると、湯張り電磁弁26が閉状態とされ、湯WH2の浴槽8への供給が停止される。これにより、第1制御による低温湯張りが完了する。
【0041】
次に、第1制御における、水WL1の前記供給量および下限温度の湯WH2の前記供給量の決定方法について説明する。ユーザが、浴槽8に張られる湯の温度を30℃かつ湯量を200リットルに設定し、湯WH2の下限温度が36℃であると仮定する。水WL1の前記供給量および湯WH2の前記供給量の決定するにあたり、まず、第1配管24から湯水混合三方弁30を通って第3配管25に導入された水WL1の温度を湯温センサ47によって測定する。以下、測定された水WL1の温度が、例えば28℃であった場合につき説明する。次に、供給量演算部48が、以下の連立方程式(1)により、水WL1の前記供給量および湯WH2の前記供給量を求める。
X(L)+Y(L)=Z(L)
WL1の温度(℃)×X(L)+湯WH2の下限温度(℃)×Y(L)
=設定温度(℃)×Z(L)・・・(1)
ここで、Xは、水WL1の供給量、Yは、下限温度の湯WH2の供給量、Zはユーザによる設定湯量、Lはリットルを表す。
【0042】
上記の設定条件を前記連立方程式(1)に代入すると、以下の式となる。
X(L)+Y(L)=200(L)
28(℃)×X(L)+36(℃)×Y(L)=30(℃)×200(L)
【0043】
この連立方程式を解くと、X(L)=150、Y(L)=50である。すなわち、水WL1の供給量は、150リットルであり、36℃(下限温度)の湯WH2の供給量は、50リットルである。この解に基づき、浴槽8に、まず150リットルの水WL1が供給される。浴槽8に150リットルの水WL1が張られたことが湯張りカウンター27によって検知されると、次に50リットルの湯WH2が浴槽8に供給される。
【0044】
上述の第1制御に対し、第2制御は、湯水混合三方弁30および湯張り電磁弁26に対して次の動作を行わせる。まず、浴槽8に張られる湯、つまり浴槽8に供給される湯WH2が、ユーザによって設定された温度となるように、開度調整モータ44によって前記開度調整バルブが駆動されて第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が調整される。次に、湯水混合三方弁30において、第1配管23からの加熱水WH1と第2配管24からの水WL1とが混合されて前記設定温度の湯WH2が生成される。例えば、設定温度が42℃、設定湯量が200リットルである場合、三方弁制御部43は、湯温センサ47の出力値に基づき湯WH2の温度を監視しつつ開度調整モータ44を駆動して、湯温センサ47の出力値が42℃となる位置に第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度調整バルブを移動させる。湯WH2は、第3配管25から第1分岐管251に流入し、開状態とされた湯張り電磁弁26を通って浴槽8に導入される。湯張りカウンター27からの出力値に基づいて、浴槽8がユーザによって設定された湯量(200リットル)で満たされたと判定されると、湯張り電磁弁26が閉止されて湯WH2の浴槽8への供給が停止される。これにより、第2制御による湯張りが完了する。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る給湯システムS1の給湯動作を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。まず、給湯制御部40の設定温度判定部41は、ユーザによる設定温度が下限温度(本実施形態では36℃)よりも低いか否かを判定する(ステップS1)。
【0046】
設定温度が下限温度よりも低いと判定された場合(ステップS1でYES)、第1制御が開始される。一方、設定温度が下限温度以上である判定された場合、つまり、設定温度が下限温度から上限温度の範囲にあると判定された場合(ステップS1でNO)、第2制御が開始される。まず、第1制御について説明する。なお、上限温度(48℃)を超える温度設定は、ユーザの火傷防止のためにできない。
【0047】
第1制御が開始された場合、三方弁制御部43は、湯水混合三方弁30の第1入力ポート31を閉状態とすると共に、第2入力ポートを開状態とする。また、電磁弁制御部45は、湯張り電磁弁26を開状態とする(ステップS2)。次に、温度センサ47により、出力ポート33から導出された水WL1の温度が測定され、また、湯張りカウンター27が始動する(ステップS3)。
【0048】
供給量制御部48は、測定された水WL1の温度に基づき、上記連立方程式(1)を計算して、水WL1の供給量X(L)および湯WH2の供給量Y(L)を求める(ステップS4)。次に、設定温度判定部41によって、ユーザによる設定温度が水WL1の温度よりも高いか否かが判定される(ステップS5)。
【0049】
設定温度が水WL1の温度よりも高い場合(ステップS5においてYES)、温度センサ11〜15からの出力値に基づき、湯WH2をY(L)供給可能か否かが確認される(ステップS6)。湯WH2がY(L)供給可能であることが確認された場合(ステップS6においてYES)、水WL1の浴槽8への供給量がX(L)に達したか否かが湯張りカウンター27によって確認される(ステップS7)。確認されない場合(ステップS7でNO)、水WL1の供給はX(L)に達するまで続けられ、確認された場合(ステップS7でYES)、三方弁制御部43によって第1入力ポート31および第2入力ポート32の開度が調整され、下限温度である36℃の湯WH2が浴槽8に供給される(ステップS8)。
【0050】
次に、ステップS9において、湯張りカウンター27からの出力値に基づいて、湯WH2の供給量がY(L)に達したか否かが確認される。確認されない場合(ステップS9でNO)、湯WH2の供給はY(L)に達するまで続けられ、確認された場合(ステップS9でYES)、三方弁制御部43によって第1入力ポート31および第2入力ポート32が閉じられると共に、電磁弁制御部45によって湯張り電磁弁26が閉じられる(ステップS10)。これにより、第1制御による低温湯張りが完了する(ステップS11)。
【0051】
一方、ステップS6において、湯WH2をY(L)供給できないことが確認された場合(ステップS6でNO)、給湯制御部40は低温湯張りを中止し、例えばリモコン51,52にエラー表示を出力することで、ユーザに低温湯張りの中止を知らせる(ステップS12)。
【0052】
また、ステップS5において、設定温度判定部41によって、ユーザによる設定温度が水WL1の温度と同等またはそれよりも低いことが確認された場合(ステップS5でNO)、三方弁制御部43により、第1入力ポート31の閉状態および第2入力ポート32の開状態が維持され、水WL1のみが浴槽8に供給され続ける(ステップS15)。つまり、下限温度の湯WH2が浴槽8に供給されることはない。そして、ステップS16において、水WL1の供給量X(L)がユーザによる設定湯量に達したか否かが確認される。確認されない場合(ステップS16でNO)、水WL1の供給はユーザによる設定湯量(例えば200L)に達するまで続けられ、確認された場合(ステップS16でYES)、三方弁制御部43によって第2入力ポート32が閉じられると共に、電磁弁制御部45によって湯張り電磁弁26が閉じられる(ステップS17)。これにより、第1制御による低温湯張りが完了する(ステップS18)。
【0053】
次に、第2制御について説明する。第2制御(通常湯張り)は、ステップS1において、ユーザによる設定温度が下限温度から上限温度の範囲にあると判定された場合に実行される。ステップS20において、三方弁制御部43によって第1入力ポート31および第2入力ポート32の各開度が適宜調整されると共に、電磁弁制御部45によって湯張り電磁弁26が開放される。そして、温度調整された例えば42℃の湯WH2の浴槽8への供給が開始され、湯張りカウンター27がスタートする(ステップS21)。
【0054】
ステップS22において、湯WH2がユーザによる設定湯量(例えば200L)に達したか否かが確認される。確認されない場合(ステップS22でNO)、湯WH2の供給は設定湯量に達するまで続けられ、確認された場合(ステップS22でYES)、三方弁制御部43によって第1入力ポート31および第2入力ポート32が閉じられると共に、電磁弁制御部45によって湯張り電磁弁26が閉じられる(ステップS23)。これにより、第2制御による通常湯張りが完了する(ステップS24)。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る給湯システムによれば、まず、水WL1のみを浴槽8に供給し、次に、下限温度の湯WH2を、水WL1のみが張られた浴槽8に供給することにより、浴槽8内で水WL1と下限温度の湯WH2とが混合されて生成される湯を、下限温度よりも低い温度の湯とすることが可能である。したがって、水WL1の供給量X(L)および下限温度の湯WH2の供給量Y(L)を適宜調整すれば、例えば30℃のぬるま湯を自動的に容易に浴槽8に張ることが可能である。このように、給湯システムS1は、低温湯張りに対応可能である。
【0056】
また、本実施形態の給湯システムS1では、ユーザが設定した温度に応じて第1制御(低温湯張り)または第2制御(通常湯張り)による湯張りが自動的に択一的に選択されるので、給湯システムS1は、ユーザにとって使い勝手がよい。
【0057】
さらに、本実施形態の給湯システムS1では、低温湯張りにおいて、水WL1の温度がユーザによる設定温度と略同等またはそれよりも高い場合、湯WH2を用いず、水WL1のみを用いて湯張りを完了することができる(上記のステップS5,S15〜S18参照)。この構成は、特に、水温が高くなる夏季において有利である。これにより、給湯システムが消費する熱量を低減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る給湯システムS1をセミオート給湯器に適用した場合につき説明してきたが、追い炊き機能等を備えたフルオート給湯器に適用してもよい。この場合、初期湯張りとして、低温湯張りを行ってもよい。
【0059】
また、給湯システムS1を、所謂貯湯式ヒートポンプ給湯器や瞬間式ヒートポンプ給湯器に適用してもよい。貯湯式ヒートポンプ給湯器では、下限温度の湯WH2が供給可能か否かを確認するためにサーミスタが必要であるが、瞬間式ヒートポンプ給湯器では、水WL2を極めて短時間で加熱することが可能なので、サーミスタを設けなくてもよい。したがって、その分、瞬間式ヒートポンプ給湯器の構成を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態に係る給湯システムを示す構成図である。
【図2】第1モードおよび第2モードを行う給湯制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】リモコン装置の第1リモコン(浴室用)のリモコンパネルを示す平面図である。
【図4】リモコン装置の第2リモコン(台所用)のリモコンパネルを示す平面図である。
【図5】本実施形態に係る給湯システムの給湯動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
8 浴槽
10 貯湯タンク
11〜15 温度センサ
20 元配管
21 分岐管
23 第1配管
24 第2配管
25 第3配管
26 湯張り電磁弁
27 湯張りカウンター
30 湯水混合三方弁
40 給湯制御部
41 設定温度判定部
42 ヒータ制御部
43 三方弁制御部
45 電磁弁制御部
47 温度センサ
48 供給量演算部
50 リモコン装置(操作部)
S1 給湯システム
U1 貯湯タンクユニット
WH1 加熱水
WH2 湯
WL1〜WL4 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが設定した設定温度かつ設定湯量の湯を浴槽に張る湯張り機能を備えた給湯システムであって、
加熱された加熱水を貯留する貯湯タンクと、
前記加熱水を前記貯湯タンクから前記浴槽に供給する第1配管と、
水の元供給源から前記浴槽に水を供給する第2配管と、
前記第1配管および第2配管に接続され、該第1配管および第2配管の開閉を行う弁体と、
前記弁体を制御して、前記第1配管および第2配管を開状態とすることにより、前記第1配管を通る前記加熱水と前記第2配管を通る前記水とを混合させて、所定の下限温度から所定の上限温度の範囲で湯を生成する制御部と、
前記設定温度および設定湯量を含む湯張り情報を前記制御部に与える操作部と、
を備え、
前記制御部は、前記操作部から受け取った前記湯張り情報において前記設定温度が前記下限温度よりも低いとき、まず、前記弁体により、前記第1配管を閉状態とすると共に、前記第2配管を開状態として、前記第2配管からの水を前記浴槽に所定量供給させ、次に、前記弁体により、前記第1配管および第2配管の両方を開状態として、前記下限温度の湯を前記浴槽に所定量供給させる第1制御を行う給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムにおいて、さらに、前記弁体と前記浴槽とを連通させる第3配管を備え、
前記弁体は、第1入力ポート、第2入力ポートおよび出力ポートを有し、前記第1入力ポートおよび第2入力ポートの各開度が調整可能な三方弁であり、前記第1入力ポートには、前記第1配管が接続され、前記第2入力ポートには、前記第2配管が接続され、前記出力ポートには、前記第3配管が接続され、
前記制御部は、前記第1ポートおよび第2ポートの各開度を調整することにより前記第1制御を行う給湯システム。
【請求項3】
請求項2に記載の給湯システムにおいて、前記制御部は、前記水の供給量および前記下限温度の前記湯の供給量の総量が前記設定湯量となるように、かつ前記浴槽に張られる湯が前記設定温度となるように前記水供給量および前記湯供給量を演算して前記第1制御を行う給湯システム。
【請求項4】
請求項3に記載の給湯システムにおいて、前記制御部は、前記第1制御に加え、前記設定温度が前記下限温度から前記上限温度の範囲にあるとき、前記第1入力ポートおよび前記第2入力ポートの各開度を調整して前記加熱水および前記水を混合させることにより、前記設定温度の湯を生成し、その湯を前記出力ポートから前記浴槽に前記設定湯量供給させる第2制御を行い、
前記第1制御および第2制御は、いずれか一方が前記設定温度に応じて前記制御部によって自動的に択一的に選択される給湯システム。
【請求項5】
請求項2に記載の給湯システムにおいて、さらに、前記水の温度を測定するセンサを備え、
前記制御部は、前記水の温度が前記設定温度以上のとき、前記第1ポートを閉状態とすると共に前記第2ポートを開状態として、前記水が前記設定湯量に達するまで前記水の前記浴槽への供給を行う給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−133592(P2010−133592A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308373(P2008−308373)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】