説明

給湯システム

【課題】給湯開始時に過度に高温の温水が吐出することのない給湯システムを提供する。
【解決手段】熱水Hと冷水Cを混合して温水Mを生成する湯水混合弁44と、湯水混合弁44から温水Mを導出する導出する導出通路73に設けられて温水Mを撹拌する撹拌器36とを備え、湯水混合弁44は、熱水Hの導入通路66および前記冷水Cの導入通路67を開閉する単一の混合弁体68と、生成された温水Mの温度に応じて弁体68を駆動する混合弁駆動部60とを有し、撹拌器36は、円筒状の内周面37sを有し内部に撹拌室38を形成するケース37と、このケース37内に配置されてケース37の上壁の温水入口40から流入した温水Mを偏向して撹拌室38に流出させる偏向体39とを有し、偏向体39は、内周面37sに向けて、温水Mを流出させる流出孔39aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯開始時に過度に高温の温水が吐出するのを防止する給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気の熱によって温水を生成する給湯システムとして、蒸気の熱で冷水を加熱することにより熱水を生成する熱交換器と、熱水が所定温度となるように前記熱交換器への蒸気の供給量を調節する蒸気調節弁と、熱水と冷水とを混合して温水を生成する湯水混合弁を備えたものがある。前記湯水混合弁は、熱水の熱水通路および冷水の導入通路を開閉する単一の混合弁体と、生成された温水の温度に応じて混合弁体を駆動する混合弁駆動部を有し、湯水混合弁からの温水導出通路に、その通路面積を急激に増大させたのち減少させることにより、湯水混合弁を通過した熱水と冷水の撹拌を促進する撹拌器(熱ダンパー)が設けられている。このような給湯システムによれば、給湯開始時に、所定温度以上の高温の熱水が熱交換器から湯水混合弁に供給される結果、湯水混合弁から一部の熱水が漏出しても、通路面積を急激に増大させたのち減少させた撹拌器内で、先行する低温の温水または冷水と熱水とが十分撹拌されるので、熱水の温度が効果的に下げられ、熱水が高い温度を保持したまま給湯口弁(カラン)から出るのを防止することができる(特許文献1)。
【0003】
このような給湯システムで用いられる撹拌器としては、例えば図13に示すような撹拌器80がある。この撹拌器80は、円筒状の内周面と上部に設けられた温水入口83を有し、内部に撹拌室82を形成する上部ケース81と、この上部ケース81の下側に取付けられて下部に温水出口85を有する下部ケース84との間に拡散板88を挟み、O−リング86を介してボルト87で締結された構造となっている。この撹拌器80によれば、温水入口83から高温の温水Mが撹拌室82に入ると、拡散板88に当たって撹拌室82の内周面82aに向かうよう偏向されたのち、拡散板88の先端部の隙間90を通って、拡散板88の下方で折り返して、温水出口85に向かう。これによって、温水Mは、撹拌室82内に先行して溜まっている低温の温水または冷水と撹拌されて混ざり合わされ、その温度が均一化されたのち、温水出口85より吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記撹拌器80および特許文献1の撹拌器のいずれの場合であっても、撹拌室82内で温水Mを効率的に撹拌させるためには、撹拌室82の容積を大きくし、十分に撹拌して冷水との広い接触面積を確保する必要があるので、撹拌器80の大型化とコストアップを招く。
【0006】
本発明の目的は、撹拌器を大型化させることなく、給湯開始時に過度に高温の温水が供給されるのを効果的に防止できる給湯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明にかかる給湯システムは、熱水と冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記湯水混合弁から温水を導出する導出通路に設けられて温水を撹拌する撹拌器とを備え、前記湯水混合弁は、前記熱水の導入通路および前記冷水の導入通路を開閉する単一の混合弁体と、前記生成された温水の温度に応じて前記弁体を駆動する混合弁駆動部とを有し、前記撹拌器は、円筒状の内周面を有し内部に撹拌室を形成するケースと、このケース内に配置されてケースの上壁の温水入口から流入した温水を偏向して前記撹拌室に流出させる偏向体とを有し、前記偏向体は、前記内周面に向けて、温水を流出させる流出孔を有する。
【0008】
この構成によれば、給湯開始時に、湯水混合弁の制御遅れで、設定温度を上回る熱水の一部が湯水混合弁から流出した場合であっても、熱水は偏向体の流出孔からケース内周面に沿って噴き付けられ、ケース内周面に沿って長い距離を流動するので、先行する低温の温水または冷水との撹拌が進む。その結果、撹拌器の容積を大きくすることなく、熱水の温度を速やかに低下させることができ、過度に高温の温水が供給されるのを防止できる。
【0009】
本発明において、好ましく、前記流出孔は前記ケースの軸心と平行な長手軸を有する長孔である。長孔の好ましい縦横比は2〜4である。流出孔を長孔とすることで、熱水を流出孔から径方向幅が小さい層状態でケース内周面に沿って高速で流動させることができるので、撹拌効果が高まる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記流出孔の開口方向と前記ケースの内周面とが交差する点における内周面の接線に対して、前記開口方向が30〜80°の角度をなしている。このような角度に設定することで、流出孔から縦長の層状態で噴出する温水が、より一層ケース内周面に沿って高速で流れやすくなるので、撹拌が一層進む。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記偏向体は、前記温水入口に接続されて前記ケースの軸心と平行に延びる有底の円孔を有し、前記流出孔が前記円孔に接続されて前記軸心と直交する方向に開口している。
【0012】
この構成によれば、偏向体に長孔の出口を持つ温水通路を型成形によって容易に形成できる。
【0013】
本発明の給湯システムは、さらに、蒸気と冷水との熱交換により熱水を生成する熱交換器と、前記熱交換器に流入する蒸気量を調節する蒸気調節弁とを備え、前記蒸気調節弁は、蒸気通路の開度を調節する調節弁部と、前記生成された熱水の温度に応じて前記調節弁部を駆動する駆動部とを有する構成とすることができる。
【0014】
この構成によれば、従来における蒸気調節弁の制御遅れに伴う温水少量時の温水温度のハンチング現象を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、給湯開始時に、湯水混合弁の制御遅れで設定温度を上回る熱水の一部が湯水混合弁から流出した場合であっても、熱水は、攪拌器内の偏向体の流出孔から、攪拌器のケース内周面に沿って噴き付けられ、ケース内周面に沿って流動するので、先行する低温の温水または冷水との撹拌が進む。その結果、撹拌器の容積を大きくすることなく、熱水の温度を速やかに低下させることができ、過度に高温の温水が供給されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる給湯システムの系統図である。
【図2】同上の給油システムにおける開弁時の蒸気調節弁の縦断面図である。
【図3】湯水混合弁の縦断面図である。
【図4】撹拌器を示す縦断面図である。
【図5】撹拌器の平面図である。
【図6】撹拌器の縦断面図である。
【図7】撹拌器のVII−VII線断面図である。
【図8】撹拌器の要部拡大断面図である。
【図9】偏向体の配置角度を示す第1例で、第1ケース半体を下方から見た底面図である。
【図10】偏向体の配置角度の第2例で、第1ケース半体を下方から見た底面図である。
【図11】偏向体の配置角度の第3例で、第1ケース半体を下方から見た底面図である。
【図12】偏向体の配置角度の第4例で、。第1ケース半体を下方から見た底面図である。
【図13】従来の撹拌器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳述する。図1において、本発明の実施形態にかかる給湯システム10は、設定給湯温度の温水Mを給湯する用途に適用できるものであり、加熱流体として飽和蒸気Sの熱で被加熱流体である冷水C(例えば水道水)を加熱することにより高温の熱水Hを生成する熱交換器11を備えている。このような熱交換器11としては、例えば複数のプレートを重ねて、その間に図示しない加熱流体Sの通路と冷水Cの通路とを、前記プレートを介して交互に配置したプレート型熱交換器と呼ばれるものが、小型で熱交換容量が比較的大きいことから望ましい。
【0018】
前記給湯システム10は、外部の給水源WAから供給される冷水Cを前記熱交換器11に導く主冷水通路12と、蒸気供給源(例えばボイラ)VAから供給される飽和蒸気Sを前記熱交換器11に導く蒸気通路13と、前記熱交換器11で生成された高温の熱水Hを導出する熱水通路14と、熱交換器11を通った加熱後のドレンDを排出する復水排出通路15を有している。
【0019】
蒸気通路13には蒸気調節弁17が設けられており、この蒸気調節弁17は、熱交換器11から導入される熱水Hが所定温度、例えば90℃となるように熱交換器11への蒸気Sの供給量を調節するようになっており、詳しくは後述する。
【0020】
熱交換器11からの熱水通路14には湯水混合弁44が設けられており、この湯水混合弁44は、熱交換器11からの高温の熱水Hに給水源WAからの冷水Cを混合して、所望の設定給湯温度に調節された温水Mとし、撹拌器36を経て、給湯出口となる給湯口弁(カラン)24を介して給湯する。撹拌器36および湯水混合弁44の具体的構成については後述する。
【0021】
主冷水通路12から分岐して前記湯水混合弁44に冷水Cを導入する導入通路である混合用冷水通路42には第1逆止弁31が、また主冷水通路12から分岐して熱交換器11に冷水Cを供給する熱交換器用冷水通路43には第2逆止弁32が、それぞれ設けられている。前記主冷水通路12には前記混合用冷水通路42と熱交換器用冷水通路43との分岐点の上流側に第3逆止弁33が設けられている。また、復水排出通路15には、ドレンDのみを排出し、蒸気Sをトラップする周知の蒸気トラップ34が設けられている。
【0022】
つぎに、蒸気調節弁17について図2により具体的に説明する。図2は蒸気調節弁17の開弁時を示す。蒸気調節弁17は、ハウジング50内に熱交換器11へ蒸気Sを供給する蒸気通路13の開度を調節する調節弁部55と、熱水Hの温度に応じて伸縮する感熱素子54により、前記調節弁部55を駆動する駆動部53とを有する。前記ハウジング50に、前記感熱素子54の感熱部54aの一端面である下端面に接触するとともに外周の少なくとも一部分を隙間69を介して覆うカバー51が取り付けられている。このカバ−51は、熱交換器11からの熱水Hを蒸気調節弁17に導入する通路である熱水通路14の一部を形成している。
【0023】
蒸気調節弁17の開弁時、図1の蒸気供給源VAからの蒸気Sが、蒸気調節弁17の蒸気導入通路13aから調節弁部55内に導入され、弁体57と弁口52との間を通って蒸気導出通路13bから導出され、図1の熱交換器11に向かう。熱交換器11での蒸気Sと冷水Cとの熱交換により生成された熱水Hは、図2の熱水導入通路14aから駆動部53内に導入され、熱水導出通路14bを経て図1に示す湯水混合弁44に導入される。温度に応じて図3の感熱素子54が伸縮し、調節弁部55の開度を調整する。例えば、蒸気調節弁17に導入される熱水Hが所定温度よりも高温の場合、感熱素子54の筒状のガイド54bにより案内されたピストン54cが弁軸58を押し上げて、調節弁部55の弁体57を復帰ばね49Aのばね力に抗して上方へ駆動する。これにより、調節弁部55の弁開度が小さくなる。弁体57と弁軸58の間に、感熱素子54の過大な押圧力が弁体57に作用するのを防止するダンパーばね49Bが介装されている。
【0024】
つぎに、湯水混合弁44の具体的構成について図3を参照しながら説明する。同図に示すように、この湯水混合弁44は、ボデイ71内に、熱水通路14を接続する熱水Hの導入口66と、混合用冷水通路42に接続する冷水Cの導入口67と、熱水Hと冷水Cを混合して温水Mを生成する混合室72と、熱水導入口66および冷水導入口67を開閉する円盤状の単一の混合弁体68と、生成された温水Mの温度に応じて混合弁体68を駆動する混合弁駆動部60とを備えている。この混合弁駆動部60は、サーモワックスなどの感熱素子を有する感温部62と、感温部62の熱変位を混合弁体68に伝達する弁棒63とを有している。この湯水混合弁44により、熱水Hと冷水Cとを混合して温水導出口70から温水Mとして導出通路73に導出する。この導出通路73は図1の撹拌器36を経て給湯口弁24に接続される。
【0025】
前記混合弁体68は弁体63が挿入されるボス部68aと外周のリング部68bとを放射状のリブ68cで連結したもので、混合弁体68を混合弁駆動部60によって軸方向(図3の上下方向)に移動させることにより、リング部68bの下端の熱水弁口66aと上端の冷水弁口67aの開度を調節するようになっている。つまり、単一の混合弁体68によって熱水Hと冷水Cの両方の通路を開閉する。ボデイ71の上部には、混合弁駆動部60の変位量を調整して温水Mの設定温度を調節するキャップ44aが装着されている。
【0026】
図4により撹拌器36の基本的な構造を説明する。同図に示すように、この撹拌器36は、円筒状の内周面37sを有し内部に撹拌室38を形成する金属製のケース37と、このケース37内に配置されてケース37の温水入口40から流入した高温の温水Mを偏向して前記撹拌室38に流出させる金属製の偏向体39とを備えている。ケース37は、その軸心O1の方向に上下に分割された第1ケース半体37aと第2ケース半体37bとを有している。第1ケース半体37aは、上壁となる端壁37aaと、円筒状の周壁37abと、端壁37aaから軸方向O1に沿って上方に突出する導入パイプ37acと、開口端に設けられた第1フランジ37adとを有し、導入パイプ37acに前記温水入口40が形成されている。第2ケース半体37bは、下壁となる端壁37baと、円筒状の周壁37bbと、端壁37baから下方に突出する導出パイプ37bcと、開口端に設けられた第2フランジ37bdとを有し、導出パイプ37bcに温水出口41が形成されている。第1ケース半体37aと第2ケース半体37bは、第1フランジ37adと第2フランジ37bdとの間に、シール用のO−リング37dを介してボルト45で締結されている。
【0027】
偏向体39は、前記内周面37sに向けて温水を流出させる流出孔39aと、ケース37の軸心O1と平行に延びる有底の円孔39bとを有している。流出孔39aは、円孔39bの下半部に接続されて前記軸心O1と直交する方向に開口している。したがって、流出孔39aと円孔39bは、偏向体39の型成形と同時に形成できる。温水入口40と温水出口41とは、同一の軸心O2上に位置しており、さらに、偏向体39の円孔39bも軸心O2上に位置する。
【0028】
攪拌器36の平面図である図5に示すように、偏向体39はケース37内に、その上部から見てケース軸心O1から偏心した位置に設けられている。この偏向体39は、縦断面図である図6に示すように、ケース37内の上部に設けられ、内周面37sに向けて、温水Mを流出させる流出孔39aを有している。図6のVII−VII線断面図である図7に示すように、円孔39b内に導入された高温の温水Mは、流出孔39aからケース37の内周面37sに向かって流出する。前記流出孔39aは、図8に示すように、軸心O1と平行な上下方向に長手軸を持つ長孔に形成されており、縦寸法Aと横寸法Bの比である縦横比が3に設定されている。このように長孔とすることで、温水Mは、図7に示す流出孔39aから径方向幅Wが小さい層状態でケース内周面37sに沿って高速で流動するので、撹拌効果が高まる。縦横比は2〜4が好ましく、この範囲外では流出孔39aからの温水の撹拌が十分進まない。
【0029】
前記流出孔39aの開口方向OPは、この開口方向OPとケース37の内周面37sとが交差する点PIにおける内周面37sの接線ISに対して、30〜80°の対向角度θをなしている。開口方向OPとは、流出孔39aの通路中心線O3に開口縁39aaで接する接線が、流出孔39aの外側に向かう方向である。図7では、対向角度θは45°であるが、30〜80°が好ましい。対向角度θが30°未満では温水Mが内周面37sに衝突する際に発生する乱流が弱いために撹拌されにくくなる。対向角度θが80°を超えると、温水Mが内周面37sに強く衝突するために流動力が弱くなり、やはり撹拌されにくくなる。また、円孔39bの直径をd(図6)としたとき、流出孔39aの縦幅Aは1.5d、横幅Bは0.5d位である。したがって、円孔39bの通路面積(3.14d)は、流出孔39aの開口面積(0.75d)よりも大きい。
【0030】
図9〜図12は対向角度θの適正値を求めるために使用した偏向体39の配置例を示し、第1ケース半体17aを下方から見た底面図である。図9〜12に示す各配置例では、偏向体39を前面39fのみを円弧面とした四角柱で形成されており、その開口方向OPとケース37の内周面37sの接線ISとがなす対向角度θは、図9の第1配置例では70°、図10の第2配置例では60°、図11の第3配置例では40°、図11の第4配置例では90°に、それぞれ設定されている。これらの第1〜第4配置例の各場合について同一の運転条件下で給湯開始時の給湯温度の測定試験を行なった。以下、測定試験について説明する。
【0031】
運転条件として、(1)蒸気圧力(ゲージ圧):0.3MPa、冷水圧力(ゲージ圧):0.4MPa、(2)冷水温度:11±2℃、(3)給湯温度:43±2℃、(4)カラン(給湯口弁24)数:1ケ、(5)給湯量:カラン1ケ当りの給湯量は15リットル/min。
測定方法として、(1)図1の混合用冷水通路42の給水入口弁(図示せず)を開弁、蒸気調節弁17の蒸気入口弁(図2の調節弁部55)を開弁状態で給湯口弁24を開弁し、給湯システム内を冷水により冷却する。(2)給湯システム内が冷水温度まで低下し、図2の蒸気調節弁17の感熱素子54装着付近の外表面の温度が十分に低下したら給湯口弁24を閉弁する。(3)上記調節弁17の蒸気入口弁を開弁する。(4)スチームトラップ34の2回目の開弁作動時に給湯口弁24を開弁し、給湯温度の上昇を測定する。
測定基準として、(1)カラン24出口の上昇温度…60℃以下、(2)ピーク時間 1秒以内。
【0032】
このような測定試験の結果では、前記偏向体39の第1〜第4のすべての配置例において、カラン出口温度が50℃以下であり、良好な結果が得られた。特に、図9の第1配置例の場合が45.7℃で最も優れ、図10の第2配置例の場合が46.7℃で続き、図11の第3配置例の場合が47.1℃、図12の第4配置例の場合が47.9℃であった。これらの結果を考察した結果、偏向体39の流出孔39aの開口方向OP、つまり、流出孔39aからの噴出し方向は、ケース37の内周面37sに直角で当てるよりも、対向角度θ=40〜80°だけ傾けてケース37の内周面37sを沿わすのが効果的であり、θ=40〜70°がより効果的であり、θ=40〜60°がさらに効果的であることが判明した。
【0033】
このように、流出孔39aの開口方向OPの対向角度θが30〜80°である場合、流出孔39aから縦長の層状態で噴出する温水Mが、ケース内周面37sに沿って高速で流れやすくなるので、撹拌が一層進む。
【0034】
以上説明した本発明の動作について説明する。図1において、冷水Cと蒸気Sとは熱交換器11で熱交換され、冷水Cが蒸気Sにより加熱されて熱水Hが生成される。この熱水Hは蒸気調節弁17を経由して湯水混合弁44に導入され、湯水混合弁44で冷水Cと混合されて,設定温度、例えば40℃の温水Mが得られる。温水Mは撹拌器36で撹拌されて均一な温度となったのち、給湯口弁24から給湯される。熱水Hの温度は常に、図2に示す蒸気調節弁17の感熱素子54の感熱部54aで検知され、熱水Hが所定温度、例えば90℃となるように、蒸気調節弁17により熱交換器11への蒸気Sの供給量が調節される。
【0035】
給湯開始時のように、給湯システム内に先行する温水または冷水が満水し冷えている場合、図2の蒸気調節弁17の調節弁部55および図3の湯水混合弁44の弁体68の熱水側の弁開度が全開し、冷水側の弁開度は閉弁している。この状態で図1の給湯口弁24を開いて給湯システム内に蒸気Sおよび冷水Cを通気し給湯を行なうと、湯水混合弁44内の温水Mは低温であるから蒸気調節弁17は全開状態にあり、蒸気Sが全開した蒸気調節弁17を通って、過剰に熱交換器11内に流入する。熱交換器11内に流入していた冷水Cは、この過剰な蒸気Sの加熱によりさらに温度上昇し、湯水混合弁44へ流入する。湯水混合弁44へ流入した高温の熱水Hは、図3に示す湯水混合弁44の全開した熱水口66aを通って混合室に入るが、冷水口67aが閉弁しているため、高温の温水Mが湯水混合弁44を通り図1の給湯口弁24より排出される。このため、給湯弁24から設定温度以上、例えば手洗いで使用する40℃付近の設定温度よりも高い70℃の温水Mが一時的に吐出するおそれがある。
【0036】
ここで、本発明の撹拌器36は、図4の偏向体39を前述した第1〜第4配置例のように、高温の温水Mを流出する流出孔39aの開口方向OPがケース37の内周面37sに向き、温水Mが内周面37sを沿うような方向に配置したので、温水Mが内周面37sに適切な強さで衝突することによって、十分撹拌される結果、給湯開始時において、高温の温水Mが攪拌器36から給湯口弁24を経て外部に供給されるのを防止できる。また、温水入口40から撹拌器36の偏向体39に熱水Hが流れ込んだ場合でも、まず円孔39bの底部分に当って円孔39bで偏向され、続いて流出孔39aからケース37の撹拌室38内に流出する。つまり、開口面積が大きい円孔39bから狭い流出孔39aに至り、この流出孔39aからケース37の撹拌室38内に流出するから、高速となって、さらに攪拌が促進される。
【0037】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0038】
10 給湯システム
11 熱交換器
14 熱水通路(熱水の導入通路)
15 復水排出通路
17 蒸気調節弁
24 給湯口弁(カラン)
36 撹拌器
37 ケース
37a 第1ケース半体
37b 第2ケース半体
37aa,37ba 端壁
37s 内周面
38 撹拌室
39 偏向体
39a 流出孔
39b 円孔
42 混合用冷水通路(冷水の導入通路)
43 熱交換器用冷水通路
44 湯水混合弁
53 駆動部
54 感熱素子
54a 感熱部
55 調節弁部
60 混合弁駆動部
C 冷水
H 熱水
S 蒸気
M 温水
θ 対向角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱水と冷水を混合して温水を生成する湯水混合弁と、前記湯水混合弁から温水を導出する導出通路に設けられて温水を撹拌する撹拌器とを備え、
前記湯水混合弁は、前記熱水の導入通路および前記冷水の導入通路を開閉する単一の混合弁体と、前記生成された温水の温度に応じて前記弁体を駆動する混合弁駆動部とを有し、
前記撹拌器は、円筒状の内周面を有し内部に撹拌室を形成するケースと、このケース内に配置されてケースの上壁の温水入口から流入した温水を偏向して前記撹拌室に流出させる偏向体とを有し、
前記偏向体は、前記内周面に向けて、温水を流出させる流出孔を有する給湯システム。
【請求項2】
請求項1において、前記流出孔は前記ケースの軸心と平行な長手軸を有する長孔である給湯システム。
【請求項3】
請求項2において、前記流出孔は縦横比が2〜4である給湯システム。
【請求項4】
請求項1または2において、前記流出孔の開口方向と前記ケースの内周面とが交差する点における内周面の接線に対して、前記開口方向が30〜80°の角度をなしている給湯システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記偏向体は、前記温水入口に接続されて前記ケースの軸心と平行に延びる有底の円孔を有し、前記流出孔が前記円孔に接続されて前記軸心と直交する方向に開口している給湯システム。
【請求項6】
請求項1において、さらに、蒸気と前記冷水との熱交換により前記熱水を生成する熱交換器と、前記熱交換器に流入する蒸気量を調節する蒸気調節弁とを備え、
前記蒸気調節弁は、蒸気通路の開度を調節する調節弁部と、前記生成された熱水の温度に応じて前記調節弁部を駆動する駆動部とを有している給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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