説明

給湯装置

【課題】中温層の湯を有効利用することにより、効率よく湯を利用でき、使用性の向上と高い省エネルギー性とを実現する給湯装置を提供すること。
【解決手段】貯湯槽1の上部に接続された第1の出湯管3と、貯湯槽1の第1の出湯管3と給水管18との間に接続された第2の出湯管4と、混合弁23の出口側に接続された給湯口24とを備え、第1の出湯管3の貯湯槽1の近傍の湯温を検知する第1の湯温検知手段31、第2の出湯管4の貯湯槽1の近傍の湯温を検知する第2の湯温検知手段32の検知温度と、給湯口24から給湯する給湯設定温度とに基づいて、第1の出湯管3に設けられた第1の流調弁20と、第2の出湯管4に設けられた第2の流調弁21と、第1の出湯管3と第2の出湯管4とを接続して合流させた出湯管合流管22と給水管18から分岐された給水分岐管19とを入口側に接続した混合弁23との動作を制御する給湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸き上げた湯を貯湯槽に貯えて給湯利用する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の給湯装置は、例えば図7のようなものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の給湯装置を示すものである。図7に示すように、貯湯槽1と、この貯湯槽1の湯水を加熱する加熱手段2と、貯湯槽1の上部に接続された第1の出湯管3と、貯湯槽1の中間部分に接続された第2の出湯管4と、貯湯槽1からの湯を第1の出湯管3を通じて出湯するか第2の出湯管4を通じて出湯するかを切り換える三方弁5と、第2の出湯管4が接続された位置での貯湯槽1内の湯温を検知する湯温検知手段6と、給湯温度を設定する給湯温度設定手段7を設け、湯温検知手段6により検知された湯温が給湯温度設定手段7で設定された給湯設定温度以上であれば、第2の出湯管4から出湯し、給湯設定温度未満であれば第1の出湯管3から出湯するように、三方弁5の流路を切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−161518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貯湯槽1の上部からの出湯と中間部分からの出湯を切り換える前記従来の構成では、給湯利用の過程で熱伝導と熱対流によって貯湯槽1内の残湯と給湯時に貯湯槽1下部から補給する給水との間にできる中間的な温度となる層(以下、中温層と呼ぶ)のうち給湯設定温度以上となっている部分の湯しか利用できず、給湯設定温度以下の中温層の湯はそのまま貯湯槽1上部へ移動する。
【0006】
ここで、図8、図9を用いてこの作用を詳しく説明する。まず、図8は中温層について説明したものであり、横軸に温度、縦軸に貯湯槽1高さをとって温度分布を示す。使用中の貯湯槽1内は、高温の湯8と低温の水9が積み重なっている状態であるが、これら高温の湯8と低温の水9との間で熱伝導と熱対流により中間の温度となる中温層10は時間の経過に伴って成長する。
【0007】
中温層10の大きさによる利用可能な湯量の違いとして、11の温度分布は中温層10aの小さい状態、12は中温層10bの大きい状態であり、たとえば温度tsを給湯利用可能な温度の下限とした場合、利用できる熱量の差を模式的に表わすと領域13に相当する。つまり中温層10が大きくなるほど湯切れが起こりやすく、また、貯湯槽1に貯えた湯のうち利用できる熱量が少ないということはすなわち省エネルギー性が低い。
【0008】
そのため、貯湯槽1中間部の湯を第2の出湯管4から出湯することで中温層10の減少を図ろうとするものであり、この動作を図9を用いて説明する。第2の出湯管4からの出湯位置として模式的に矢印14で示し、15の温度分布は中温層10の上端が第2の出湯管4の位置にかかった時点である。中温層10の大きさは10cで示している。
【0009】
この後、第2の出湯管4を通じて、中温層10の湯が出湯されることで、温度分布は1
6となり、中温層10の大きさは10dまで減少する。第2の出湯管4の位置で貯湯槽1内の湯温が給湯に利用できる湯の下限温度ts以下になると三方弁5は第1の出湯管3から出湯するように切り換えるため、中温層10はそのまま貯湯槽1の上方へ向かい、温度分布も17となって減少することなく10eに示すように時間経過とともに大きくなる。
【0010】
このように、従来の構成の場合は中温層10を減少させる効果が限定的であることから、貯湯槽1内の湯の熱量を有効に利用できないことに加え、次回の沸き上げ時に、中温層10にあった比較的高い温度の水を加熱しなければならないことになり、加熱手段2にヒートポンプを使用している場合は水温が高いと運転効率が低下するという特性があることによって、効率的な運転に支障をきたすという問題がある。
【0011】
すなわち、出湯位置を切り換える構成では、混合層の湯を排出できないことによる利用可能湯量の減少と、ヒートポンプによる沸き上げ時の効率低下という課題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、中温層の湯を有効利用することにより、効率よく湯を利用でき、さらに加熱手段がヒートポンプである場合には、高い加熱効率を得られることで、使用性の向上と高い省エネルギー性とを実現する給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の給湯装置は、貯湯槽と、前記貯湯槽の上部に接続された第1の出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、前記貯湯槽の上下方向において前記第1の出湯管が接続された位置と前記給水管が接続された位置との間に接続された第2の出湯管と、前記給水管から分岐された給水分岐管と、前記第1の出湯管に設けられた第1の流調弁と、前記第2の出湯管に設けられた第2の流調弁と、前記第1の出湯管と前記第2の出湯管とを接続して合流させた出湯管合流管と、前記出湯管合流管と前記給水分岐管とを入口側に接続した混合弁と、前記混合弁の出口側に接続された混合水管と、前記混合水管に接続された給湯口と、前記第1の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第1の湯温検知手段と、前記第2の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第2の湯温検知手段と、前記給湯口から給湯する給湯設定温度を設定する給湯温度設定手段と、制御手段とを備え、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記第1および第2の湯温検知手段の検知温度とに基づいて、前記第1の流調弁と前記第2の流調弁と前記混合弁との動作を制御することを特徴とするものである。
【0014】
これによって、給湯設定温度より低い中温層の湯を第2の出湯管を通じて有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中温層の湯を有効利用することにより、効率よく湯を利用でき、さらに加熱手段がヒートポンプである場合には、高い加熱効率を得られることで、使用性の向上と高い省エネルギー性とを実現する給湯装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における給湯装置の構成図
【図2】同給湯装置の制御ブロック図
【図3】同流調弁の動作フローチャート
【図4】同給湯利用時の貯湯槽内の温度分布を示した図
【図5】本発明の実施の形態2における給湯装置の構成図
【図6】同流調弁の動作フローチャート
【図7】従来の給湯装置の構成図
【図8】同貯湯槽内の中温層の説明図
【図9】同給湯装置の貯湯槽内の温度分布を示した図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、貯湯槽と、前記貯湯槽の上部に接続された第1の出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、前記貯湯槽の上下方向において前記第1の出湯管が接続された位置と前記給水管が接続された位置との間に接続された第2の出湯管と、前記給水管から分岐された給水分岐管と、前記第1の出湯管に設けられた第1の流調弁と、前記第2の出湯管に設けられた第2の流調弁と、前記第1の出湯管と前記第2の出湯管とを接続して合流させた出湯管合流管と、前記出湯管合流管と前記給水分岐管とを入口側に接続した混合弁と、前記混合弁の出口側に接続された混合水管と、前記混合水管に接続された給湯口と、前記第1の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第1の湯温検知手段と、前記第2の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第2の湯温検知手段と、前記給湯口から給湯する給湯設定温度を設定する給湯温度設定手段と、制御手段とを備え、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記第1および第2の湯温検知手段の検知温度とに基づいて、前記第1の流調弁と前記第2の流調弁と前記混合弁との動作を制御することを特徴とする給湯装置である。
【0018】
このようにすることにより、貯湯槽の中間部から中温層の湯を有効に出湯することで、貯湯された湯の熱量を最大限有効に利用し、かつ沸き上げ効率の低下を防ぐことができるので、良好な使い勝手と高い省エネルギー性とを実現できるという効果がある。
【0019】
第2の発明は、第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とするもので、給湯温度の制御性を維持しつつ、中温層の湯を有効に利用できるという効果がある。
【0020】
第3の発明は、給湯口以外に少なくとも一つ以上の追加給湯口を設け、給湯温度設定手段は前記追加給湯口毎に追加給湯設定温度を設定できるとともに、前記追加給湯口毎に、出湯管合流管から分岐された出湯管合流管分岐管と、給水分岐管から分岐された第2の給水分岐管と、前記出湯管合流管分岐管と前記第2の給水分岐管とを入口側に接続した追加混合弁と、前記追加混合弁の出口側に接続された追加混合水管とを備え、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記追加給湯設定温度と第1および第2の湯温検知手段の検知温度とに基づいて、第1の流調弁と第2の流調弁と混合弁と前記追加混合弁との動作を制御することを特徴とするもので、複数の給湯口を有する場合にも中温層の湯を有効に利用できるという効果がある。
【0021】
第4の発明は、第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満
の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とするもので、複数の給湯口を有する場合の制御性を確保しつつ、中温層の湯を有効に利用できるという効果がある。
【0022】
第5の発明は、混合水管と追加混合水管とに給湯の有無を検知する給湯有無検知手段を設け、前記給湯有無検知手段によって給湯されていることが検知された給湯口および/または追加給湯口に対して、第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とするもので、複数の給湯口がある場合に、給湯の有無に応じてきめ細かく制御することで、中温層の湯の利用効果を向上させるという効果がある。
【0023】
また、複数の給湯口から同時に給湯されている場合に、給湯温度の制御性を維持しつつ、中温層の湯を有効に利用できるという効果がある。
【0024】
第6の発明は、流調弁を、二方弁としたことを特徴とするもので、簡単な構成ならびに制御で所望の効果を得ることができる。
【0025】
第7の発明は、貯湯槽内の水を加熱する加熱手段を設け、前記加熱手段をヒートポンプサイクルとしたことを特徴とするもので、貯湯槽内の湯の熱量を有効に利用できることによって低い沸き上げ温度を適用できる結果、高効率の特性を最大限に引き出せる。
【0026】
第8の発明は、ヒートポンプサイクルは、運転時、高サイド圧力が臨界圧力以上に昇圧された冷媒により水を加熱する構成としたことを特徴とするもので、沸き上げ温度を高温にできるので、利用できる熱量の増大と湯切れ防止性を向上することができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における給湯装置の構成を示す図である。
【0029】
図1において、貯湯槽1と、この貯湯槽1の水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプユニット2と、貯湯槽1の上部に接続された第1の出湯管3と、貯湯槽1の下部に接続された給水管18と、第1の出湯管3と給水管18とが接続された位置の間すなわち貯湯槽1の胴部に接続された第2の出湯管4と、給水管18から分岐された給水分岐管19と、第1の出湯管3の中間に設けられた第1の二方弁20と、第2の出湯管4の中間に設けられた第2の二方弁21と、第1の出湯管3と第2の出湯管4とを接続して合流させた出湯管合流管22と、この出湯管合流管22と給水分岐管19とが入口側に接続された混合弁23と、この混合弁23の出口側に接続された混合水管24と、この混合水管24に接続された給湯口25と、出湯管合流管22から分岐された出湯管合流管分岐管26と、給水分岐管19から分岐された第2の給水分岐管27と、出湯管合流管分岐管26と第2の給水分岐管27とが入口側に接続された追加混合弁28と、この追加混合弁28の出口側
に接続された追加混合水管29と、この追加混合水管29に接続された追加給湯口30とが設けられている。
【0030】
また、第1の出湯管3が接続された位置における貯湯槽1内の湯温を検知する第1の湯温検知手段31と、第2の出湯管4が接続された位置における貯湯槽1内の湯温を検知する第2の湯温検知手段32と、給湯口25および追加給湯口30の給湯温度を設定する給湯温度設定手段7と、第1の湯温検知手段31と第2の湯温検知手段32の出力ならびに給湯温度設定手段7の設定に基づいて第1の二方弁20と第2の二方弁21と混合弁23と追加混合弁28とを制御する制御手段33とを有する制御装置34とを設けている。なお、混合弁23と追加混合弁28の出口側には湯温制御のための混合弁出口湯温検知手段35と追加混合弁出口湯温検知手段36とが設けられている。
【0031】
図2は制御のブロック図を示し、第1の湯温検知手段31と第2の湯温検知手段32の出力と給湯温度設定手段7の設定に基づいて、第1の二方弁20と第2の二方弁21と混合弁23と追加混合弁28の制御をおこなう制御手段33からなる。
【0032】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0033】
基本的な動作としては、沸き上げ前は貯湯槽1に低温の水が多く満たされており、運転を開始すると、貯湯槽1の水がヒートポンプユニット2に送出され、そこで加熱されて高温の湯が貯湯槽1に戻される。これによって貯湯槽1には高温の湯が貯えられていく。
【0034】
沸き上げ後の給湯利用の際には、第1の出湯管3と第2の出湯管4を通じて出湯される貯湯槽1の湯と給水管18からの給水を混合弁23および追加混合弁28によってそれぞれの給湯設定温度に混合されて給湯口25ないし追加給湯口30へ供給される。また、給湯に使用された湯量相当の水が給水管18を通じて貯湯槽1下部から流入する。
【0035】
ここで、この給湯利用時の動作を図3〜図4を用いて詳細に説明する。給湯温度は給湯口25、追加給湯口30ごとに給湯温度設定手段7でそれぞれ給湯設定温度と追加給湯設定温度として設定され、それらの高いほうの値は設定温度tsである。ここではtsを給湯口25の給湯設定温度とする。
【0036】
また、第1の二方弁20と第2の二方弁21が共に開放されたときの第1の出湯管3と第2の出湯管4を流れる湯の流量が等しくなるように、それぞれの流路の圧力損失が設計されている。なお、この流量比は任意に設計できるものである。
【0037】
図3は制御のフローチャートである。t1とt2は、それぞれ第1の湯温検知手段31と第2の湯温検知手段32による測定値であり、制御手段33は、これらの測定値に基づいて、第1の二方弁20と第2の二方弁21の開閉を制御する。
【0038】
第2の湯温検知手段32による測定値t2が設定温度のtsよりも高い場合(ステップ1)、第1の二方弁20を閉じて第2の二方弁21を開放することにより(ステップ2)、第2の出湯管4からだけ出湯させる。t2がts以下の場合は(ステップ1)、第1の湯温検知手段31による測定値t1と上記tsの平均値が設定温度tsよりも高いかどうかを判断し(ステップ3)、高い場合は第1の二方弁20と第2の二方弁21を共に開放して(ステップ4)、第1の出湯管3と第2の出湯管4の両方から出湯させる。
【0039】
t1とt2の平均値がts以下であれば(ステップ3)、第1の二方弁20は開いて、第2の二方弁21を閉じることによって(ステップ5)、第1の出湯管3からだけ出湯させる。
【0040】
以上の動作によって出湯管合流管22を流れる湯温は設定温度tsよりも高くなり、制御手段33は混合弁23を制御して、この湯と給水分岐管19からの給水とを混合して混合弁出口湯温検知手段35が設定温度のtsになるように流量比を調整する(ステップ6)。
【0041】
設定温度tsに調整された湯は、混合水管24を通じて給湯口25から給湯される。なお、この説明において、設定温度tsと、第1の湯温検知手段31と第2の湯温検知手段32による測定値の平均値との温度差は0℃を閾値として制御しているが、混合弁23の制御性や配管での温度低下を考慮してステップ1の式のtsに任意の値を加えてもよい。
【0042】
図4は、貯湯槽1内の温度分布の変化を示した図である。横軸に温度、縦軸に貯湯槽1の高さを示し、37の温度分布は、中温層10の上端が第2の出湯管4の貯湯槽1との接続位置にある場合、つまり、中温層10の給湯利用が開始される直前の様子である。先に説明したとおり、第2の出湯管4の接続位置での湯温がtsより高ければ、第2の出湯管4からだけ出湯され、この湯温がts以下でかつ第1の出湯管3の接続位置である貯湯槽1の上端とこの湯温との平均湯温がtsより高い間は両方から出湯されることで、中温層10は縮小しながら貯湯槽1の上方へ移動する。
【0043】
このとき、第2の出湯管4からは、貯湯槽1の上端の温度とtsとの温度差をtsから減じた湯温まで出湯がおこなわれる。平均湯温がts以下になると、第2の出湯管4からの出湯は停止し、中温層10はそのまま貯湯槽1の上方へ移動する。この結果、中温層10の大きさは当初は10fであったものが10gまで縮小する。38は、中温層10gが第2の出湯管4の接続位置を通過した時点の温度分布である。
【0044】
また、この実施の形態の場合は、より設定温度の低い追加給湯口30からの給湯であっても第1の二方弁20と第2の二方弁21の制御はtsに基づいてなされる。
【0045】
このように、本発明の第1の実施の形態によれば、給湯温度設定手段7で設定された給湯口25の給湯設定温度と追加給湯口30の追加給湯設定温度とのどちらか高い方の値と第1の湯温検知手段31および第2の湯温検知手段32の測定値に基づいて第1の出湯管3に設けた第1の二方弁20と、第2の出湯管4に設けた第2の二方弁21の開閉をおこなうという簡単な構成で中温層10の効果的な縮小を実現し、利用可能湯量の減少とヒートポンプユニット2での沸き上げ効率の低下を防ぐことができるので、良好な使い勝手と高い省エネルギー性とを実現できる。
【0046】
さらに、ヒートポンプユニット2の冷凍サイクルは冷媒として二酸化炭素を用い、臨界圧を越える圧力で運転することが好ましい。二酸化炭素を冷媒として用いることで沸き上げ温度を高温にできるので、貯湯槽1内の湯温を自在に制御できる。
【0047】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における給湯装置の構成を示す図である。第1の実施の形態の構成に加えて、混合水管24と追加混合水管29にそれぞれ給湯有無検知手段としての第1の流量計39と第2の流量計40とを設けている。これにより、実際に給湯がおこなわれる設定温度に基づいて弁の制御がなされるので、より中温層10を縮小させる効果が高い。
【0048】
図6は、動作のフローチャートである。第1の流量計39と第2の流量計40との出力に基づいて設定温度tsを決定する方法を示している。まず、給湯口25における給湯設定温度ts1と追加給湯口30における追加給湯設定温度ts2とを比較し(ステップ1
1)、高い方の値を設定温度tsとする(ステップ12、ステップ13)。
【0049】
次に第1の流量計39で給湯口25からの給湯が検出され(ステップ14)、さらに第2の流量計40で追加給湯口30からの給湯も検出されると(ステップ15)、給湯設定温度ts1と追加給湯設定温度ts2を比較して(ステップ16)、高い方の値を設定温度tsとする(ステップ17、ステップ18)。
【0050】
追加給湯口30からの給湯がなければ(ステップ15)、給湯設定温度ts1を設定温度tsとする(ステップ19)。ステップ14で給湯口25からの給湯が検出されず、追加給湯口30で給湯が検出されると(ステップ20)、追加給湯設定温度ts2を設定温度tsとする(ステップ21)。
【0051】
給湯口25でも追加給湯口30でも給湯が検出されない場合は(ステップ14、ステップ20)、ステップ12またはステップ13で採用された値がそのまま使われる。このようにして決定された設定温度tsに基づき、第1の実施の形態で説明した弁制御(図3)と同じ動作がおこなわれる(ステップ22)。
【0052】
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、給湯されている状態に応じてきめ細かく弁の制御がおこなわれ、中温層10を減少させる効果がより大きくなって、さらに使い勝手と省エネルギー性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる給湯装置は、貯湯槽内の湯の熱を利用する場合において給湯可能湯量の減少を最小限とするので、前記したような家庭用の給湯装置に適用できるほか、熱源と貯湯槽を有するシステムにおいて業務用などの規模の大きい用途にも適用し、優れた省エネルギー性を提供できる。
【符号の説明】
【0054】
1 貯湯槽
2 加熱手段(ヒートポンプユニット)
3 第1の出湯管
4 第2の出湯管
7 給湯温度設定手段
18 給水管
19 給水分岐管
20 第1の二方弁(第1の流調弁)
21 第2の二方弁(第2の流調弁)
22 出湯管合流管
23 混合弁
24 混合水管
25 給湯口
26 出湯管合流管分岐管
27 第2の給水分岐管
28 追加混合弁
29 追加混合水管
30 追加給湯口
31 第1の湯温検知手段
32 第2の湯温検知手段
33 制御手段
39 給湯有無検知手段(第1の流量計)
40 給湯有無検知手段(第2の流量計)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯槽と、前記貯湯槽の上部に接続された第1の出湯管と、前記貯湯槽の下部に接続された給水管と、前記貯湯槽の上下方向において前記第1の出湯管が接続された位置と前記給水管が接続された位置との間に接続された第2の出湯管と、前記給水管から分岐された給水分岐管と、前記第1の出湯管に設けられた第1の流調弁と、前記第2の出湯管に設けられた第2の流調弁と、前記第1の出湯管と前記第2の出湯管とを接続して合流させた出湯管合流管と、前記出湯管合流管と前記給水分岐管とを入口側に接続した混合弁と、前記混合弁の出口側に接続された混合水管と、前記混合水管に接続された給湯口と、前記第1の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第1の湯温検知手段と、前記第2の出湯管が接続された前記貯湯槽の位置近傍の湯温を検知する第2の湯温検知手段と、前記給湯口から給湯する給湯設定温度を設定する給湯温度設定手段と、制御手段とを備え、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記第1および第2の湯温検知手段の検知温度とに基づいて、前記第1の流調弁と前記第2の流調弁と前記混合弁との動作を制御することを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
給湯口以外に少なくとも一つ以上の追加給湯口を設け、給湯温度設定手段は前記追加給湯口毎に追加給湯設定温度を設定できるとともに、前記追加給湯口毎に、出湯管合流管から分岐された出湯管合流管分岐管と、給水分岐管から分岐された第2の給水分岐管と、前記出湯管合流管分岐管と前記第2の給水分岐管とを入口側に接続した追加混合弁と、前記追加混合弁の出口側に接続された追加混合水管とを備え、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と前記追加給湯設定温度と第1および第2の湯温検知手段の検知温度とに基づいて、第1の流調弁と第2の流調弁と混合弁と前記追加混合弁との動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項4】
第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とする請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
混合水管と追加混合水管とに給湯の有無を検知する給湯有無検知手段を設け、前記給湯有無検知手段によって給湯されていることが検知された給湯口および/または追加給湯口に対して、第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、第1の流調弁を遮断するとともに第2の流調弁を開放し
、その温度差が所定温度差未満で、かつ、第1および前記第2の湯温検知手段により検知された温度に基づいて得られた値が、前記給湯温度設定手段で設定された給湯設定温度と追加給湯設定温度のうち最も高い値より高く、その温度差が所定温度以上の場合には、前記第1の流調弁および前記第2の流調弁を開放し、その温度差が所定温度差未満の場合には、前記第1の流調弁を開放するともに前記第2の流調弁を閉塞して、混合弁の出口温度が前記給湯設定温度に近づくように制御することを特徴とする請求項4に記載の給湯装置。
【請求項6】
流調弁を、二方弁としたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項7】
貯湯槽内の水を加熱する加熱手段を設け、前記加熱手段をヒートポンプサイクルとしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項8】
ヒートポンプサイクルは、運転時、高サイド圧力が臨界圧力以上に昇圧された冷媒により水を加熱する構成としたことを特徴とする請求項7に記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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