給紙分離装置および記録装置
【課題】 記録媒体としての封筒を給紙分離するときに、上下面のずれに起因する給紙ジャムの発生を防止することができる給紙分離装置および記録装置を提供する。
【解決手段】 給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構50と、給紙方向に駆動される給紙部材2、12と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材1、8、11とを有する分離機構70と、を備えた給紙分離装置100において、分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材4、9、73を配し、記録媒体の最小長さをxとした場合、引抜部材のニップ部と分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であるように構成する。
【解決手段】 給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構50と、給紙方向に駆動される給紙部材2、12と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材1、8、11とを有する分離機構70と、を備えた給紙分離装置100において、分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材4、9、73を配し、記録媒体の最小長さをxとした場合、引抜部材のニップ部と分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙分離装置および該給紙分離装置を用いる記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機等の記録装置には、給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と給送された記録媒体を分離して搬送手段へ送り込む分離機構と有する給紙分離装置を備えた構成のものがある。かかる給紙分離装置において、記録媒体としての封筒の給紙分離を行う場合、分離部材、給紙部材および記録媒体それぞれの摩擦係数の差を利用する方法で行うと、分離部材によって給紙方向と逆の方向に摩擦力がかかり、封筒の上下面がずれてめくれてしまい、給紙ジャムなどの原因となる場合がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、フィードローラよりも給紙方向上流に押圧部材を配し、カセット内に積載された封筒を押圧部材により凸状に変形させるとともに、封筒の剛性が高い先端部をピックアップローラで押圧する構成の給紙装置が開示されている。かかる給紙装置により、封筒の見かけ上の剛性を高めることで、封筒の上下面のずれを抑制し、給紙ジャムの発生を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−024664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、リバースローラ(分離部材)から下流の搬送ローラまでの距離が長いため、搬送が進んで封筒の剛性が低い部位(中央部分)がリバースローラに到達した際に封筒の上下面がずれてめくれてしまい、給紙ジャムが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録媒体としての封筒を給紙分離するときに、封筒の上下面のずれに起因する給紙ジャムの発生を防止することができる給紙分離装置および記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と、給紙方向に駆動される給紙部材と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材とを有する分離機構と、を備えた給紙分離装置において、前記分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材を配し、記録媒体の最小長さをxとした場合、前記引抜部材のニップ部と前記分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体としての封筒を給紙分離するときに、封筒の上下面のずれに起因する給紙ジャムの発生を防止することができる給紙分離装置および記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る給紙分離装置を備えた記録装置の側面図
【図2】給紙方向に対する封筒のフラップの向きを示す下面図
【図3】第1の実施形態に係る給紙分離装置の斜視図
【図4】引抜ローラのニップ部の正面図
【図5】分離ベルトおよび引抜ローラの平面図
【図6】記録装置の制御系のブロック図
【図7】給紙分離装置の給紙スタート時の動作のフローチャート
【図8】引抜ローラの適正配置と封筒の剛性および分離ベルトの摩擦力との関係を示す図表
【図9】分離ベルトによる封筒のめくれ方を示す側面図
【図10】引抜ローラの配置と封筒のめくれ量との関係を示す図表
【図11】分離ベルトの特性と引抜ローラの特性を比較して示す表
【図12】第2の実施形態に係る給紙分離装置の側面図
【図13】第3の実施形態に係る給紙分離装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は給紙分離装置100を備えた記録装置の側面図である。図2は給紙方向に対する封筒のフラップの向きを示す下面図である。図3は第1の実施形態に係る給紙分離装置の斜視図である。給紙分離装置100Aは、給紙上流側に配された給送機構50と給紙下流側に配された分離機構70とを備えている。給送機構50は、給紙台51上に積載された封筒3を1枚ずつ分離機構70Aへ給送する。給送機構50の給紙台51上に積載される封筒束は、図2および図3に示すように、封筒3のフラップ41の開放部を下にするとともに給紙方向に対して垂直にし、フラップ41の折り曲げ部の端縁42を搬送基準面52側に揃えて給紙できるように積載されている。積載された封筒3は、給紙台51に備え付けられた給送ローラ55によって順次1枚ずつ分離機構70Aの給紙ベルト2上へ給送される。
【0011】
分離機構70Aには、不図示のDCモータによって駆動される分離部材である分離ベルト1と給紙部材である給紙ベルト2と引抜部材である引抜ローラ4が配置されている。給紙方向に駆動される給紙ベルト2は2軸固定で搬送経路下側に配され、給紙方向と逆方向に駆動される分離ベルト1は給紙ベルト2の上側(搬送経路上側)に配されている。分離ベルト1は、給紙上流側の端部で1軸固定され、給紙下流側の部位が給紙ベルト2の先端部とオーバーラップしてニップ部を形成可能に傾斜している。分離ベルト1は固定軸を中心に回動可能であり、給紙ベルト2とのニップ部を開閉するように図1中の両矢印方向に開閉運動可能である。分離ベルト1が開閉運動をすることで、薄紙から厚紙までを搬送可能にしている。分離ベルト1と給紙ベルト2の相対位置は、給紙方向下流に向かうにつれて接近するとともに、下流側端部でオーバーラップしている。このオーバーラップ領域では、図1および図3に示すように、クシ歯状に配置された複数の分離ベルト1とクシ歯状に配置された給紙ベルト2とを交互に噛み合うように配することにより分離部6が形成されている。そして、各分離ベルトの先端部を不図示のバネによって下方へ付勢することにより、分離部6にニップ圧力を付与している。
【0012】
図4は引抜ローラとプラテンとのニップ部を給紙方向から見た正面図である。図5は分離ベルトおよび引抜ローラの配置を示す平面図である。分離部6より給紙方向下流側の搬送経路上側に引抜ローラ4が配されている。また、分離部6より給紙方向下流側の搬送経路下側にはプラテン7が配されている。このプラテン7には、引抜ローラ4がオーバーラップすることでニップ部を形成できる穴53が設けられている。図示の給紙分離装置100Aでは、図2〜図4に示すように、分離ベルト1は複数(4本)の分離ベルト1a、1b、1c、11dで構成され、給紙ベルト2は複数(4本)の給紙ベルト2a、2b、2c、2dで構成され、引抜ローラ4は複数の分離ベルトのそれぞれの給紙方向延長部位に位置する複数(4個)の引抜ローラ4a、4b、4c、4dで構成されている。また、穴53も、複数の引抜ローラのそれぞれに対応する複数(4箇所)の穴53a、53b、53c、53dで構成されている。上記の給送機構50Aおよび分離機構70Aは、引抜ローラ4の駆動源と共通のモータによって駆動される。
【0013】
図6は記録装置の制御系のブロック図であり、図7は給紙分離装置100の給紙スタート時の動作のフローチャートである。モータ25は、分離部材である分離ベルト1と、給紙部材である給紙ベルト2と、引抜部材である引抜ローラ4とを駆動する。給紙ベルト2と引抜ローラ4は、給送中常に給紙方向へ駆動され、分離ベルト1は封筒を1枚に分離した後も常に給紙方向と逆方向に駆動される。制御装置21は、封筒有無検知センサ22で入力された情報から封筒の有無を判断して(S1)、封筒有りを確認してモータ25により分離ベルト1、給紙ベルト2および引抜ローラ4を駆動する(S2)。また、ジャム検知センサ23により封筒が給紙されている最中の紙―紙間の空白時間から給紙ジャムの有無を判断し(S3)、給紙ジャム無しを確認しながらモータ25により分離ベルト1、給紙ベルト2および引抜ローラ4を駆動する(S4)。
【0014】
図6において、制御装置21は、各種プログラムや各種データを格納したROM、EEPROMおよびRAMに読み出し可能に接続された中央演算処理装置であるCPU31を備えている。また、制御装置21は、USBやネットワークなどのホストインターフェースを介してパソコンなどのホスト装置に接続されている。
【0015】
図1において、プラテン7の上方(搬送経路上側)には、画像情報に基づいて記録ヘッド29により記録媒体(封筒)3に記録を行う記録ユニット20が構成されている。図示の記録ユニット20は、記録装置の幅方向に設置されたガイドシャフト81に沿って往復移動(主走査)可能なキャリッジ82に記録ヘッド29を搭載して構成されている。図示の記録ヘッド29は画像情報に基づいてノズルからインクを吐出して記録するインクジェット記録ヘッドである。また、記録ヘッド29は、カラー記録を行うための複数色(4色)のインクを用いる複数(4個)の記録ヘッド29a、29b、29c、29dで構成されている。封筒3は、分離ベルト1と給紙ベルト2とによるニップ部(分離部)6、および引抜ローラ4とプラテン7の穴53とによるニップ部(図4)を通してプラテン7上へ給紙され、さらに、プラテン7の搬送下流側に配された搬送ローラ5により搬送される。搬送ローラ5によりプラテン7上を搬送される封筒3に対し、記録ヘッド29による画像形成(記録)が行われる。記録された記録媒体は搬送ローラ5によりさらに搬送された後、装置本体外に配された排紙トレイ83上に排出される。
【0016】
引抜ローラ4は、図4に示すように、プラテン7の穴53との間で記録媒体を挟持するニップ部を形成している。図1において、記録装置によって規定される最小長さの記録媒体の給紙方向長さをxとすると、引抜ローラ4のニップ部は、分離ベルト1のニップ部である分離部6より給紙方向下流側であって距離(x/2)以内の位置に配されている。この場合のxは、使用される記録媒体の最小長さでも良い。この引抜ローラ4は、プラテン7上であって記録媒体の搬送経路の上側に配されており、給送機構50および分離機構70に共通のDCモータによって給紙方向に駆動される。また、引抜ローラ4は、封筒3の上下面に関し分離ベルト1と同じ側(図示では搬送経路の上側)に配されて給紙方向に駆動される。図示の記録装置では、分離ベルト1の給紙方向下流に記録媒体(封筒)3を給紙方向に搬送する搬送部材(搬送ローラ)5が配され、引抜ローラ4は分離ベルト1のニップ部(分離部)6と搬送部材5ニップ部との間に配されている。
【0017】
図8は引抜ローラの適正配置と封筒の剛性および分離ベルトの摩擦力との関係を示す図表である。図9は分離ベルトによる封筒のめくれ方を示す側面図である。図10は引抜ローラの配置と封筒のめくれ量との関係を示す図表である。図11は分離ベルトの特性と引抜ローラの特性を比較して示す表である。封筒3はフラップ41を糊付けした状態で給紙することもあるが、ここでは、糊付けしていないために剛性が低く給紙分離の難度が高い状態で封筒を給紙する場合について検討を行った。
【0018】
図8は、分離ベルト1が封筒上面をめくろうとする摩擦力をaとし、搬送が進んで封筒3の中腹が分離部6に接近するにつれて低下する封筒3のめくれ耐力(めくれに耐える力)をbとすると、b>aの条件のもとでは封筒3のめくれが発生しないことを示す。図8では、分離部6から給紙下流方向へ32mm以内の範囲でb>aとなる。従って、この範囲内に引抜ローラ4を配置することで、搬送が進んで封筒3の剛性が低い部位が分離部6に到達する前に引抜ローラ4とプラテン7の穴53とのニップ部で封筒3を挟持することができ、これによって封筒3のめくれを防ぐことができる。この場合の封筒3のめくれは、発生する場合は図9に示すように、封筒上下面で分離側と給紙側の搬送力が逆向きなるために発生する。そして、封筒のめくれは、封筒上下面でずれが起き、このずれがめくれとなることで発生する。
【0019】
図9は第1の実施形態に係る分離機構70Aで封筒3を給紙する場合のめくれ発生の状態を示し、図示の例では分離側に倣うように上側へめくれる状態になる。一方、分離側(分離ベルト1)が搬送経路下側であり、給紙側(給紙ベルト2)が搬送経路上側である場合は、封筒3のめくれは、分離側に倣うため、図示とは逆方向に起きる。図10は、分離6のニップ部から引抜ローラ4のニップ部までの距離(mm)に対する、封筒3のめくれ量(mm)を示す。図10は、分離部6から給紙方向下流へ32mmを越えた位置に引抜ローラ4を配置した場合、つまり封筒3の先端が分離部6から32mmを越える位置まで給紙された後に引抜ローラ4のニップ部で挟持される場合の封筒のめくれ量の特性も示している。図10の図表から、分離部6から引抜ローラ4までの距離がx/2(xは記録媒体によって規定される最小長さの記録媒体の長さ、もしくは使用される記録媒体の最小長さ))以内であれば、封筒3のめくれを10mm以内に収めることが可能であることがわかる。その場合、引抜ローラ4へ封筒3が突入するときの給紙ジャムの発生をを防ぐために、引抜ローラの半径を15mm以上にすることが好ましい。
【0020】
図11に示すように、引抜ローラ4には分離ベルト1にかかる圧力(荷重)と同程度の圧力がかかっている。また、引抜ローラ4は分離ベルト1より摩擦係数μが高い部材で構成されている。従って、引抜ローラ4と封筒3との間に生じる摩擦力は、分離ベルト1と封筒3との間に発生する摩擦力より大きくなっている。また、引抜ローラ4のローラ径は分離ベルト1の端部の曲率半径の2倍(ローラ径と対応)と同程度である。ただし、引抜ローラ4の搬送速度(給紙速度)は分離ベルト1の搬送速度より速くなっており、従って、引抜ローラ4の搬送量は分離ベルト1の搬送量より大きい関係になっている。つまり、引抜ローラ4は、分離ベルト1より高い摩擦力を発生し、搬送量が分離ベルト1の搬送量より大きい構成となっている。
【0021】
図11に示すような関係とすることで、引抜ローラ4の位置が分離部6から給紙方向下流へ32mm以上と遠くに設定され、分離ベルト1の駆動によって封筒3の上面が多少めくられた場合でも、そのめくれを給紙方向へ引き戻しながら搬送することが可能となる。このようにして、給紙方向に駆動される引抜部材(引抜ローラ)4により、封筒3の剛性が低い部位が分離部材(分離ベルト)1のニップ部(分離部)6に到達して該封筒の上下面がずれてめくれる前にニップ(挟持)するように構成されている。これとともに、封筒3の上下面にずれが生じたときに該ずれを給紙方向に引き戻すように構成されている。かかる構成によれば、給紙方向に搬送される封筒の剛性が低い部位が分離部6に到達する前に引抜部材4で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0022】
〔第2の実施形態〕
図12は第2の実施形態に係る給紙分離装置100Bの分離機構70Bの分離部72の側面図である。本実施形態は、第1の実施形態とは、分離ベルト1に代えて分離ローラ8を使用し、引抜ローラとして分離ローラ8を介して駆動される引抜ローラ9を使用する点で相違している。図12でも、第1の実施形態の各部と対応する部分は同じ符号で示されている。図12において、給紙ベルト2の駆動ローラ71に対し、分離部材である分離ローラ8が搬送経路上側からベルトを介して押圧されることで、ニップ部からなる分離部72が構成されている。分離ローラ8とその給紙下流の引抜ローラ9とはユニット化されている。そして、分離ローラ8の側面に設けられた同心の歯車10aと引抜ローラ9の側面に設けられた同心の歯車10bとが噛み合っている。駆動源であるモータ25(図6)により分離ローラ8を給紙方向と逆方向に駆動すると、これに同期して引抜ローラ9が給紙方向に駆動される。分離ローラ8と給紙ベルト1とのニップ部で構成される分離部72は、第1の実施形態における分離部6に対応している。本実施形態のその他の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
【0023】
本実施形態によっても、分離部72に引抜ローラ9を近づけて配置することにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、給紙方向に搬送される封筒3の剛性が低い部位が分離部72に到達する前に引抜部材9で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材9によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0024】
〔第3の実施形態〕
図13は第3の実施形態に係る給紙分離装置100Cの側面図である。給紙分離装置100Cは、給送機構50Cと分離機構70Cで構成されている。給送機構70Cにおいては、封筒3は、フラップ41の開放部を上にし、フラップ41の開放部を給紙方向に対して垂直に且つ不図示の搬送基準面側(図3の52に対応)に揃うようにして、給紙台カセット15に積載されている。給紙台カセット15上の封筒3は、備付けのピックアップローラ13によって、最上位のものから1枚ずつ順次給送される。給送機構70Cの給紙方向下流側には、分離部材としての分離パッド11に、給紙部材としての給紙ローラ12を押圧する構成の分離部14が配設されている。分離パッド11は給紙経路の下側に配されており、給紙ローラ12は給紙経路の上側に配されている。図示の例では、分離パッド11は、給紙ローラ12に対し斜め方向から押圧されている。分離パッド11は比較的摩擦係数が大きい部材で構成されており、給紙ローラ12と分離パッド11との圧接部で分離部14のニップ部が形成されており、このニップ部により封筒3を最上位の1枚に分離する動作が行われる。
【0025】
分離部14の給紙方向下流の距離(x/2)以内の位置に、引抜ローラ73と従動ローラ17で構成される引抜ローラ対が配置されている。ここで、xは、第1の実施形態と同様、記録装置によって規定される記録媒体の最小長さ、もしくは使用される記録媒体の最小長さである。この場合、給紙方向に駆動される引抜ローラ73は分離パッド11が位置する搬送経路の下側に配され、従動ローラ17は給紙ローラ12が位置する搬送経路の上側に配されている。引抜ローラ73は分離パッド11と同程度の摩擦係数μを有する材質で形成されている。また、引抜ローラ対73、17のニップ部には、分離部14よりも強いニップ圧(押圧力)が作用する構成となっている。また、引抜ローラ73は、その搬送量を分離部14における搬送量より大きくするため、給紙ローラ12より速い速度で回転駆動される。引抜ローラ対の搬送下流には、記録ヘッド29と対向する画像形成部を通して記録媒体(封筒)3を搬送するための搬送ローラ16が配されている。
【0026】
かかる構成によれば、分離部14における分離パッド11上で封筒3の下面が多少めくれた場合でも、そのめくれを引抜ローラ73により給紙方向へ引き戻しながら搬送することが可能となる。従って、本実施形態によっても、分離部14に引抜ローラ73を近づけて配置することにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、給紙方向に搬送される封筒3の剛性が低い部位が分離部14に到達する前に引抜部材73で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材73によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0027】
〔第4の実施形態〕
本実施形態は、第1の実施形態の構成において、引抜ローラ4に代えて引抜ベルトを配した構成を有する。つまり、引抜部材として給紙方向に駆動される引抜ベルトを使用するものである。この引抜ベルトは、その給紙上流側端部が分離部6より給紙方向下流に距離(x/2)以内の位置に配される。また、この引抜ベルトは、分離ベルト1が位置する搬送経路の上側に配される。この引抜ベルトは、記録ヘッド29の対向位置を通して記録媒体を搬送可能に構成することができ、従って、記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材としても利用することができる。また、分離ベルト1に対する引抜ベルトの回転方向、並びに摩擦力と搬送量の関係などは、図11に例示する第1の実施形態における分離ベルト1と引抜ローラ4の場合と同様である。本実施形態のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。かかる構成によっても、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0028】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、引抜部材としての引抜ローラ4、9、73や引抜ベルトを使用する他に、スライド式機構など、封筒を給紙方向へ搬送できる構成であれば、別の手段を使用しても良い。また、引抜ローラ4より給紙方向上流の分離部6、72、14の構成としては、摩擦力の差を利用して記録媒体の分離を行うことを前提に、上記以外の種々の別の構成のものを使用しても良い。
【0029】
また、以上の実施形態では、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、熱転写式、レーザービーム式、加熱式、ワイヤドット式など、その他の記録方式の記録装置においても同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドによる主走査と搬送動作による副走査とを交互に繰り返して記録を行うシリアル方式、搬送動作による副走査のみで連続的に記録を行うライン方式など、走査方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体(封筒や用紙)の材質として、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、種々の異なる材質を使用する場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 分離部材(分離ベルト)
2 給紙部材(給紙ベルト)
3 記録媒体(封筒)
4、9、73 引抜部材(引抜ローラ)
6、72、14 分離部
7 プラテン
9 引抜部材(引抜ローラ)
29 記録ヘッド
41 封筒のフラップ
50 給送機構
70 分離機構
100 給紙分離装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙分離装置および該給紙分離装置を用いる記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機等の記録装置には、給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と給送された記録媒体を分離して搬送手段へ送り込む分離機構と有する給紙分離装置を備えた構成のものがある。かかる給紙分離装置において、記録媒体としての封筒の給紙分離を行う場合、分離部材、給紙部材および記録媒体それぞれの摩擦係数の差を利用する方法で行うと、分離部材によって給紙方向と逆の方向に摩擦力がかかり、封筒の上下面がずれてめくれてしまい、給紙ジャムなどの原因となる場合がある。
【0003】
これに対し、特許文献1には、フィードローラよりも給紙方向上流に押圧部材を配し、カセット内に積載された封筒を押圧部材により凸状に変形させるとともに、封筒の剛性が高い先端部をピックアップローラで押圧する構成の給紙装置が開示されている。かかる給紙装置により、封筒の見かけ上の剛性を高めることで、封筒の上下面のずれを抑制し、給紙ジャムの発生を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−024664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、リバースローラ(分離部材)から下流の搬送ローラまでの距離が長いため、搬送が進んで封筒の剛性が低い部位(中央部分)がリバースローラに到達した際に封筒の上下面がずれてめくれてしまい、給紙ジャムが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、記録媒体としての封筒を給紙分離するときに、封筒の上下面のずれに起因する給紙ジャムの発生を防止することができる給紙分離装置および記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と、給紙方向に駆動される給紙部材と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材とを有する分離機構と、を備えた給紙分離装置において、前記分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材を配し、記録媒体の最小長さをxとした場合、前記引抜部材のニップ部と前記分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録媒体としての封筒を給紙分離するときに、封筒の上下面のずれに起因する給紙ジャムの発生を防止することができる給紙分離装置および記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る給紙分離装置を備えた記録装置の側面図
【図2】給紙方向に対する封筒のフラップの向きを示す下面図
【図3】第1の実施形態に係る給紙分離装置の斜視図
【図4】引抜ローラのニップ部の正面図
【図5】分離ベルトおよび引抜ローラの平面図
【図6】記録装置の制御系のブロック図
【図7】給紙分離装置の給紙スタート時の動作のフローチャート
【図8】引抜ローラの適正配置と封筒の剛性および分離ベルトの摩擦力との関係を示す図表
【図9】分離ベルトによる封筒のめくれ方を示す側面図
【図10】引抜ローラの配置と封筒のめくれ量との関係を示す図表
【図11】分離ベルトの特性と引抜ローラの特性を比較して示す表
【図12】第2の実施形態に係る給紙分離装置の側面図
【図13】第3の実施形態に係る給紙分離装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は給紙分離装置100を備えた記録装置の側面図である。図2は給紙方向に対する封筒のフラップの向きを示す下面図である。図3は第1の実施形態に係る給紙分離装置の斜視図である。給紙分離装置100Aは、給紙上流側に配された給送機構50と給紙下流側に配された分離機構70とを備えている。給送機構50は、給紙台51上に積載された封筒3を1枚ずつ分離機構70Aへ給送する。給送機構50の給紙台51上に積載される封筒束は、図2および図3に示すように、封筒3のフラップ41の開放部を下にするとともに給紙方向に対して垂直にし、フラップ41の折り曲げ部の端縁42を搬送基準面52側に揃えて給紙できるように積載されている。積載された封筒3は、給紙台51に備え付けられた給送ローラ55によって順次1枚ずつ分離機構70Aの給紙ベルト2上へ給送される。
【0011】
分離機構70Aには、不図示のDCモータによって駆動される分離部材である分離ベルト1と給紙部材である給紙ベルト2と引抜部材である引抜ローラ4が配置されている。給紙方向に駆動される給紙ベルト2は2軸固定で搬送経路下側に配され、給紙方向と逆方向に駆動される分離ベルト1は給紙ベルト2の上側(搬送経路上側)に配されている。分離ベルト1は、給紙上流側の端部で1軸固定され、給紙下流側の部位が給紙ベルト2の先端部とオーバーラップしてニップ部を形成可能に傾斜している。分離ベルト1は固定軸を中心に回動可能であり、給紙ベルト2とのニップ部を開閉するように図1中の両矢印方向に開閉運動可能である。分離ベルト1が開閉運動をすることで、薄紙から厚紙までを搬送可能にしている。分離ベルト1と給紙ベルト2の相対位置は、給紙方向下流に向かうにつれて接近するとともに、下流側端部でオーバーラップしている。このオーバーラップ領域では、図1および図3に示すように、クシ歯状に配置された複数の分離ベルト1とクシ歯状に配置された給紙ベルト2とを交互に噛み合うように配することにより分離部6が形成されている。そして、各分離ベルトの先端部を不図示のバネによって下方へ付勢することにより、分離部6にニップ圧力を付与している。
【0012】
図4は引抜ローラとプラテンとのニップ部を給紙方向から見た正面図である。図5は分離ベルトおよび引抜ローラの配置を示す平面図である。分離部6より給紙方向下流側の搬送経路上側に引抜ローラ4が配されている。また、分離部6より給紙方向下流側の搬送経路下側にはプラテン7が配されている。このプラテン7には、引抜ローラ4がオーバーラップすることでニップ部を形成できる穴53が設けられている。図示の給紙分離装置100Aでは、図2〜図4に示すように、分離ベルト1は複数(4本)の分離ベルト1a、1b、1c、11dで構成され、給紙ベルト2は複数(4本)の給紙ベルト2a、2b、2c、2dで構成され、引抜ローラ4は複数の分離ベルトのそれぞれの給紙方向延長部位に位置する複数(4個)の引抜ローラ4a、4b、4c、4dで構成されている。また、穴53も、複数の引抜ローラのそれぞれに対応する複数(4箇所)の穴53a、53b、53c、53dで構成されている。上記の給送機構50Aおよび分離機構70Aは、引抜ローラ4の駆動源と共通のモータによって駆動される。
【0013】
図6は記録装置の制御系のブロック図であり、図7は給紙分離装置100の給紙スタート時の動作のフローチャートである。モータ25は、分離部材である分離ベルト1と、給紙部材である給紙ベルト2と、引抜部材である引抜ローラ4とを駆動する。給紙ベルト2と引抜ローラ4は、給送中常に給紙方向へ駆動され、分離ベルト1は封筒を1枚に分離した後も常に給紙方向と逆方向に駆動される。制御装置21は、封筒有無検知センサ22で入力された情報から封筒の有無を判断して(S1)、封筒有りを確認してモータ25により分離ベルト1、給紙ベルト2および引抜ローラ4を駆動する(S2)。また、ジャム検知センサ23により封筒が給紙されている最中の紙―紙間の空白時間から給紙ジャムの有無を判断し(S3)、給紙ジャム無しを確認しながらモータ25により分離ベルト1、給紙ベルト2および引抜ローラ4を駆動する(S4)。
【0014】
図6において、制御装置21は、各種プログラムや各種データを格納したROM、EEPROMおよびRAMに読み出し可能に接続された中央演算処理装置であるCPU31を備えている。また、制御装置21は、USBやネットワークなどのホストインターフェースを介してパソコンなどのホスト装置に接続されている。
【0015】
図1において、プラテン7の上方(搬送経路上側)には、画像情報に基づいて記録ヘッド29により記録媒体(封筒)3に記録を行う記録ユニット20が構成されている。図示の記録ユニット20は、記録装置の幅方向に設置されたガイドシャフト81に沿って往復移動(主走査)可能なキャリッジ82に記録ヘッド29を搭載して構成されている。図示の記録ヘッド29は画像情報に基づいてノズルからインクを吐出して記録するインクジェット記録ヘッドである。また、記録ヘッド29は、カラー記録を行うための複数色(4色)のインクを用いる複数(4個)の記録ヘッド29a、29b、29c、29dで構成されている。封筒3は、分離ベルト1と給紙ベルト2とによるニップ部(分離部)6、および引抜ローラ4とプラテン7の穴53とによるニップ部(図4)を通してプラテン7上へ給紙され、さらに、プラテン7の搬送下流側に配された搬送ローラ5により搬送される。搬送ローラ5によりプラテン7上を搬送される封筒3に対し、記録ヘッド29による画像形成(記録)が行われる。記録された記録媒体は搬送ローラ5によりさらに搬送された後、装置本体外に配された排紙トレイ83上に排出される。
【0016】
引抜ローラ4は、図4に示すように、プラテン7の穴53との間で記録媒体を挟持するニップ部を形成している。図1において、記録装置によって規定される最小長さの記録媒体の給紙方向長さをxとすると、引抜ローラ4のニップ部は、分離ベルト1のニップ部である分離部6より給紙方向下流側であって距離(x/2)以内の位置に配されている。この場合のxは、使用される記録媒体の最小長さでも良い。この引抜ローラ4は、プラテン7上であって記録媒体の搬送経路の上側に配されており、給送機構50および分離機構70に共通のDCモータによって給紙方向に駆動される。また、引抜ローラ4は、封筒3の上下面に関し分離ベルト1と同じ側(図示では搬送経路の上側)に配されて給紙方向に駆動される。図示の記録装置では、分離ベルト1の給紙方向下流に記録媒体(封筒)3を給紙方向に搬送する搬送部材(搬送ローラ)5が配され、引抜ローラ4は分離ベルト1のニップ部(分離部)6と搬送部材5ニップ部との間に配されている。
【0017】
図8は引抜ローラの適正配置と封筒の剛性および分離ベルトの摩擦力との関係を示す図表である。図9は分離ベルトによる封筒のめくれ方を示す側面図である。図10は引抜ローラの配置と封筒のめくれ量との関係を示す図表である。図11は分離ベルトの特性と引抜ローラの特性を比較して示す表である。封筒3はフラップ41を糊付けした状態で給紙することもあるが、ここでは、糊付けしていないために剛性が低く給紙分離の難度が高い状態で封筒を給紙する場合について検討を行った。
【0018】
図8は、分離ベルト1が封筒上面をめくろうとする摩擦力をaとし、搬送が進んで封筒3の中腹が分離部6に接近するにつれて低下する封筒3のめくれ耐力(めくれに耐える力)をbとすると、b>aの条件のもとでは封筒3のめくれが発生しないことを示す。図8では、分離部6から給紙下流方向へ32mm以内の範囲でb>aとなる。従って、この範囲内に引抜ローラ4を配置することで、搬送が進んで封筒3の剛性が低い部位が分離部6に到達する前に引抜ローラ4とプラテン7の穴53とのニップ部で封筒3を挟持することができ、これによって封筒3のめくれを防ぐことができる。この場合の封筒3のめくれは、発生する場合は図9に示すように、封筒上下面で分離側と給紙側の搬送力が逆向きなるために発生する。そして、封筒のめくれは、封筒上下面でずれが起き、このずれがめくれとなることで発生する。
【0019】
図9は第1の実施形態に係る分離機構70Aで封筒3を給紙する場合のめくれ発生の状態を示し、図示の例では分離側に倣うように上側へめくれる状態になる。一方、分離側(分離ベルト1)が搬送経路下側であり、給紙側(給紙ベルト2)が搬送経路上側である場合は、封筒3のめくれは、分離側に倣うため、図示とは逆方向に起きる。図10は、分離6のニップ部から引抜ローラ4のニップ部までの距離(mm)に対する、封筒3のめくれ量(mm)を示す。図10は、分離部6から給紙方向下流へ32mmを越えた位置に引抜ローラ4を配置した場合、つまり封筒3の先端が分離部6から32mmを越える位置まで給紙された後に引抜ローラ4のニップ部で挟持される場合の封筒のめくれ量の特性も示している。図10の図表から、分離部6から引抜ローラ4までの距離がx/2(xは記録媒体によって規定される最小長さの記録媒体の長さ、もしくは使用される記録媒体の最小長さ))以内であれば、封筒3のめくれを10mm以内に収めることが可能であることがわかる。その場合、引抜ローラ4へ封筒3が突入するときの給紙ジャムの発生をを防ぐために、引抜ローラの半径を15mm以上にすることが好ましい。
【0020】
図11に示すように、引抜ローラ4には分離ベルト1にかかる圧力(荷重)と同程度の圧力がかかっている。また、引抜ローラ4は分離ベルト1より摩擦係数μが高い部材で構成されている。従って、引抜ローラ4と封筒3との間に生じる摩擦力は、分離ベルト1と封筒3との間に発生する摩擦力より大きくなっている。また、引抜ローラ4のローラ径は分離ベルト1の端部の曲率半径の2倍(ローラ径と対応)と同程度である。ただし、引抜ローラ4の搬送速度(給紙速度)は分離ベルト1の搬送速度より速くなっており、従って、引抜ローラ4の搬送量は分離ベルト1の搬送量より大きい関係になっている。つまり、引抜ローラ4は、分離ベルト1より高い摩擦力を発生し、搬送量が分離ベルト1の搬送量より大きい構成となっている。
【0021】
図11に示すような関係とすることで、引抜ローラ4の位置が分離部6から給紙方向下流へ32mm以上と遠くに設定され、分離ベルト1の駆動によって封筒3の上面が多少めくられた場合でも、そのめくれを給紙方向へ引き戻しながら搬送することが可能となる。このようにして、給紙方向に駆動される引抜部材(引抜ローラ)4により、封筒3の剛性が低い部位が分離部材(分離ベルト)1のニップ部(分離部)6に到達して該封筒の上下面がずれてめくれる前にニップ(挟持)するように構成されている。これとともに、封筒3の上下面にずれが生じたときに該ずれを給紙方向に引き戻すように構成されている。かかる構成によれば、給紙方向に搬送される封筒の剛性が低い部位が分離部6に到達する前に引抜部材4で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0022】
〔第2の実施形態〕
図12は第2の実施形態に係る給紙分離装置100Bの分離機構70Bの分離部72の側面図である。本実施形態は、第1の実施形態とは、分離ベルト1に代えて分離ローラ8を使用し、引抜ローラとして分離ローラ8を介して駆動される引抜ローラ9を使用する点で相違している。図12でも、第1の実施形態の各部と対応する部分は同じ符号で示されている。図12において、給紙ベルト2の駆動ローラ71に対し、分離部材である分離ローラ8が搬送経路上側からベルトを介して押圧されることで、ニップ部からなる分離部72が構成されている。分離ローラ8とその給紙下流の引抜ローラ9とはユニット化されている。そして、分離ローラ8の側面に設けられた同心の歯車10aと引抜ローラ9の側面に設けられた同心の歯車10bとが噛み合っている。駆動源であるモータ25(図6)により分離ローラ8を給紙方向と逆方向に駆動すると、これに同期して引抜ローラ9が給紙方向に駆動される。分離ローラ8と給紙ベルト1とのニップ部で構成される分離部72は、第1の実施形態における分離部6に対応している。本実施形態のその他の構成および動作は第1の実施形態と同様である。
【0023】
本実施形態によっても、分離部72に引抜ローラ9を近づけて配置することにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、給紙方向に搬送される封筒3の剛性が低い部位が分離部72に到達する前に引抜部材9で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材9によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0024】
〔第3の実施形態〕
図13は第3の実施形態に係る給紙分離装置100Cの側面図である。給紙分離装置100Cは、給送機構50Cと分離機構70Cで構成されている。給送機構70Cにおいては、封筒3は、フラップ41の開放部を上にし、フラップ41の開放部を給紙方向に対して垂直に且つ不図示の搬送基準面側(図3の52に対応)に揃うようにして、給紙台カセット15に積載されている。給紙台カセット15上の封筒3は、備付けのピックアップローラ13によって、最上位のものから1枚ずつ順次給送される。給送機構70Cの給紙方向下流側には、分離部材としての分離パッド11に、給紙部材としての給紙ローラ12を押圧する構成の分離部14が配設されている。分離パッド11は給紙経路の下側に配されており、給紙ローラ12は給紙経路の上側に配されている。図示の例では、分離パッド11は、給紙ローラ12に対し斜め方向から押圧されている。分離パッド11は比較的摩擦係数が大きい部材で構成されており、給紙ローラ12と分離パッド11との圧接部で分離部14のニップ部が形成されており、このニップ部により封筒3を最上位の1枚に分離する動作が行われる。
【0025】
分離部14の給紙方向下流の距離(x/2)以内の位置に、引抜ローラ73と従動ローラ17で構成される引抜ローラ対が配置されている。ここで、xは、第1の実施形態と同様、記録装置によって規定される記録媒体の最小長さ、もしくは使用される記録媒体の最小長さである。この場合、給紙方向に駆動される引抜ローラ73は分離パッド11が位置する搬送経路の下側に配され、従動ローラ17は給紙ローラ12が位置する搬送経路の上側に配されている。引抜ローラ73は分離パッド11と同程度の摩擦係数μを有する材質で形成されている。また、引抜ローラ対73、17のニップ部には、分離部14よりも強いニップ圧(押圧力)が作用する構成となっている。また、引抜ローラ73は、その搬送量を分離部14における搬送量より大きくするため、給紙ローラ12より速い速度で回転駆動される。引抜ローラ対の搬送下流には、記録ヘッド29と対向する画像形成部を通して記録媒体(封筒)3を搬送するための搬送ローラ16が配されている。
【0026】
かかる構成によれば、分離部14における分離パッド11上で封筒3の下面が多少めくれた場合でも、そのめくれを引抜ローラ73により給紙方向へ引き戻しながら搬送することが可能となる。従って、本実施形態によっても、分離部14に引抜ローラ73を近づけて配置することにより、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、給紙方向に搬送される封筒3の剛性が低い部位が分離部14に到達する前に引抜部材73で封筒をニップすることにより、封筒の上下面がずれてめくれることを防止できる。これとともに、給紙方向に駆動される引抜部材73によって、封筒の上面または下面のめくれを給紙方向へ引き戻すように補正することができる。そして、封筒の上下面がずれてめくれることを防止することで、封筒の給紙ジャムを防止することができる。
【0027】
〔第4の実施形態〕
本実施形態は、第1の実施形態の構成において、引抜ローラ4に代えて引抜ベルトを配した構成を有する。つまり、引抜部材として給紙方向に駆動される引抜ベルトを使用するものである。この引抜ベルトは、その給紙上流側端部が分離部6より給紙方向下流に距離(x/2)以内の位置に配される。また、この引抜ベルトは、分離ベルト1が位置する搬送経路の上側に配される。この引抜ベルトは、記録ヘッド29の対向位置を通して記録媒体を搬送可能に構成することができ、従って、記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材としても利用することができる。また、分離ベルト1に対する引抜ベルトの回転方向、並びに摩擦力と搬送量の関係などは、図11に例示する第1の実施形態における分離ベルト1と引抜ローラ4の場合と同様である。本実施形態のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。かかる構成によっても、第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0028】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、引抜部材としての引抜ローラ4、9、73や引抜ベルトを使用する他に、スライド式機構など、封筒を給紙方向へ搬送できる構成であれば、別の手段を使用しても良い。また、引抜ローラ4より給紙方向上流の分離部6、72、14の構成としては、摩擦力の差を利用して記録媒体の分離を行うことを前提に、上記以外の種々の別の構成のものを使用しても良い。
【0029】
また、以上の実施形態では、記録ヘッドからインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、熱転写式、レーザービーム式、加熱式、ワイヤドット式など、その他の記録方式の記録装置においても同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドによる主走査と搬送動作による副走査とを交互に繰り返して記録を行うシリアル方式、搬送動作による副走査のみで連続的に記録を行うライン方式など、走査方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体(封筒や用紙)の材質として、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、種々の異なる材質を使用する場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 分離部材(分離ベルト)
2 給紙部材(給紙ベルト)
3 記録媒体(封筒)
4、9、73 引抜部材(引抜ローラ)
6、72、14 分離部
7 プラテン
9 引抜部材(引抜ローラ)
29 記録ヘッド
41 封筒のフラップ
50 給送機構
70 分離機構
100 給紙分離装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と、
給紙方向に駆動される給紙部材と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材とを有する分離機構と、
を備えた給紙分離装置において、
前記分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材(引抜ローラ、引抜ベルト)を配し、
記録媒体の最小長さをxとした場合、前記引抜部材のニップ部と前記分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であることを特徴とする給紙分離装置。
【請求項2】
前記記録媒体が封筒であることを特徴とする請求項1に記載の給紙分離装置。
【請求項3】
前記引抜部材は、前記封筒を給紙方向に搬送する引抜ローラ、引抜ベルトもしくは引抜スライダであることを特徴とする請求項2に記載の給紙分離装置。
【請求項4】
給紙方向に駆動される前記引抜部材により、前記封筒の剛性が低い部位が前記分離部材のニップに到達して該封筒の上下面がずれてめくれる前にニップするとともに、前記封筒の上下面にずれが生じたときに該ずれを給紙方向へ引き戻すことを特徴とする請求項2または3に記載の給紙分離装置。
【請求項5】
前記引抜部材は、前記封筒の上下面に関し前記分離部材と同じ側に配されて給紙方向に駆動され、前記分離部材より高い摩擦力を発生し、搬送量が前記分離部材の搬送量より大きいことを特徴とした請求項2ないし4のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項6】
前記分離部材の給紙方向下流に記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材が配され、前記引抜部材は前記分離部材のニップ部と前記搬送部材のニップ部との間に配されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項7】
前記引抜部材は記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材としても利用可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項8】
前記給送機構および前記分離機構は、前記引抜部材を駆動するための共通のモータで駆動されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項9】
画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する記録装置において、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給紙分離装置を備えた記録装置。
【請求項1】
給紙台に積載された記録媒体を給送する給送機構と、
給紙方向に駆動される給紙部材と給紙方向に対し逆方向に駆動される分離部材とを有する分離機構と、
を備えた給紙分離装置において、
前記分離部材のニップ部の給紙下流側に、給紙方向に駆動される引抜部材(引抜ローラ、引抜ベルト)を配し、
記録媒体の最小長さをxとした場合、前記引抜部材のニップ部と前記分離部材のニップ部との給紙方向の距離がx/2以内であることを特徴とする給紙分離装置。
【請求項2】
前記記録媒体が封筒であることを特徴とする請求項1に記載の給紙分離装置。
【請求項3】
前記引抜部材は、前記封筒を給紙方向に搬送する引抜ローラ、引抜ベルトもしくは引抜スライダであることを特徴とする請求項2に記載の給紙分離装置。
【請求項4】
給紙方向に駆動される前記引抜部材により、前記封筒の剛性が低い部位が前記分離部材のニップに到達して該封筒の上下面がずれてめくれる前にニップするとともに、前記封筒の上下面にずれが生じたときに該ずれを給紙方向へ引き戻すことを特徴とする請求項2または3に記載の給紙分離装置。
【請求項5】
前記引抜部材は、前記封筒の上下面に関し前記分離部材と同じ側に配されて給紙方向に駆動され、前記分離部材より高い摩擦力を発生し、搬送量が前記分離部材の搬送量より大きいことを特徴とした請求項2ないし4のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項6】
前記分離部材の給紙方向下流に記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材が配され、前記引抜部材は前記分離部材のニップ部と前記搬送部材のニップ部との間に配されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項7】
前記引抜部材は記録媒体を給紙方向に搬送する搬送部材としても利用可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項8】
前記給送機構および前記分離機構は、前記引抜部材を駆動するための共通のモータで駆動されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の給紙分離装置。
【請求項9】
画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録媒体に画像を記録する記録装置において、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の給紙分離装置を備えた記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−173693(P2011−173693A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39385(P2010−39385)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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