説明

給紙装置

【課題】給紙口から用紙が給紙されるときに、用紙が用紙支持部材の被収容部に支持されずに給紙されることを抑制することができる給紙装置を提供する。
【解決手段】給紙装置2は、給紙口21が設けられた装置本体11と、給紙口21において用紙を支持する用紙支持部材3とを備える。用紙支持部材3は、給紙口21を開閉するカバー部4と、装置本体11に収容可能な被収容部5とを有し、被収容部5に対してカバー部4が回動可能に接続されている。用紙支持部材3は、カバー部4が給紙口21を閉鎖するとともに被収容部5が装置本体11に収容された第1の状態から、給紙口21が開放された状態が維持される第2の状態に遷移する。この用紙支持部材3には、用紙支持部材3が第1の状態から第2の状態に遷移しようとするときに、被収容部5が装置本体11に収容されている場合には、給紙口21が開放された状態が維持されることを制限する突起7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み可能な用紙支持部材を備えた給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンター等の画像形成装置やスキャナー等の画像読取装置は、画像形成部または画像読取部へ用紙を給紙する給紙装置を備えている。また、一般的に、給紙装置は、用紙を支持する用紙支持部材を備え、用紙支持部材として、折り畳み可能な用紙トレイが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、用紙トレイである給紙トレイによって給紙口(給紙部の開口)を塞ぐこと、即ち、用紙支持部材が、用紙を支持する機能と給紙口を開閉する機能とを備えることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−201054号公報
【特許文献2】特開2009−143691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、給紙口を開閉する用紙支持部材を、コンパクト化を目的に折り畳みに可能に構成した場合には、給紙口が開放されただけで、折り畳まれた状態の用紙支持部材が完全に展開されずに使用されるおそれがある。
【0006】
具体的には、例えば図7に示すように、プリンター101を構成する給紙装置102が、給紙口121が設けられた装置本体111と、折り畳み可能な用紙支持部材103を備える場合には、用紙支持部材103が有するカバー部104によって給紙口121が開閉される。そして、図7に示す折り畳み可能な用紙支持部材103は、このカバー部104に対して回動可能に構成されるとともに、装置本体111に収容可能な被収容部105を有している。
【0007】
図7(a)は、給紙装置102が使用されないときの状態を示すプリンター101の斜視図であって、図7(c)は、折り畳まれた状態の用紙支持部材が完全に展開されて、給紙装置102が使用されるときの状態を示すプリンター101の斜視図である。図7に示す給紙装置102を使用する場合には、図7(a)に示すカバー部104を給紙口121が開放される方向に回動させて、図7(c)に示すように給紙口121を開放させる必要がある。
【0008】
しかしながら、図7(b)に示すように、装置本体111から引き出されるべき用紙支持部材103の被収容部105が装置本体111に収容されたままの状態で、給紙口121が開放されると、用紙支持部材103においてカバー部104のみに用紙が載置されるおそれがある。即ち、用紙支持部材103が完全に展開されず、用紙支持部材103を構成する被収容部105によって用紙が支持されないおそれがある。
【0009】
給紙装置において、給紙口から用紙が給紙されるときに、用紙支持部材のカバー部によって用紙が支持されている場合であっても、用紙が用紙支持部材の被収容部に支持されずに給紙されると、種々の不都合が生じる。例えば、用紙を所定の直線方向に対して平行に搬送できず、プリンターにおいて用紙の所望の位置に印刷する印刷精度が低くなるといった不都合や、スキャナーにおいて用紙に形成されている画像を所望の角度で読み取る読取精度が低くなるといった不都合がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、給紙口から用紙が給紙されるときに、用紙が用紙支持部材の被収容部に支持されずに給紙されることを抑制することができる給紙装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の給紙装置は、給紙される用紙が差し込まれる給紙口が設けられた装置本体と、前記給紙口において用紙を支持する用紙支持部材とを備える給紙装置であって、前記用紙支持部材は、前記給紙口を開閉するカバー部と、前記装置本体に収容可能な被収容部とを有するとともに、前記被収容部に対して前記カバー部が回動可能に接続され、前記用紙支持部材は、前記被収容部に対して前記カバー部が回動されることにより、前記カバー部が前記給紙口を閉鎖するとともに前記被収容部が前記装置本体に収容された第1の状態から、前記カバー部が前記給紙口を開放して該給紙口が開放された状態が維持される第2の状態に遷移し、前記用紙支持部材及び前記装置本体の少なくとも一方には、前記用紙支持部材が前記第1の状態から前記第2の状態に遷移しようとするときに、前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態である場合には、前記給紙口が開放された状態が維持されることを制限する開放制限部が設けられている。
【0012】
この発明によれば、用紙支持部材を構成する被収容部が装置本体に収容されている状態である場合には、給紙口が開放された状態が維持されないため、給紙口が開放された状態を維持するためには、被収容部を装置本体から引き出す必要がある。よって、開放された給紙口から用紙を給紙するときには、被収容部が装置本体から引き出され、用紙支持部材を構成するカバー部と被収容部とに用紙を支持させることができる。従って、給紙口から用紙を給紙するときに、用紙が用紙支持部材の被収容部に支持されずに給紙されることを抑制することができる。
【0013】
本発明の給紙装置において、前記開放制限部は、前記カバー部に設けられた突起であって、前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態において前記給紙口が開放される方向に前記カバー部を回動させたときに前記突起は前記装置本体に当接し、前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態であって、かつ、前記装置本体に前記突起が当接するときに、前記給紙口が閉鎖される方向に前記カバー部が自重で回動するように前記突起が配設されている。
【0014】
この発明によれば、被収容部が装置本体に収容されている状態において、給紙口が開放される方向に回動されたカバー部の突起が装置本体に当接するときには、カバー部は給紙口が閉鎖される方向に自重で回動する。このため、被収容部が装置本体に収容されている状態である場合に、簡単な構成で給紙口が開放された状態が維持されないようにすることができる。
【0015】
本発明の給紙装置において、前記突起を前記装置本体に当接させた状態において、前記突起と前記装置本体とが当接する箇所を軸として、前記給紙口が開放される方向に前記カバー部を回動させようとするときに、前記突起が前記装置本体に乗り上げて前記装置本体から引き出される方向に前記被収容部が移動する。
【0016】
この発明によれば、突起と装置本体とが当接する箇所を軸として給紙口が開放される方向にカバー部が回動したときに、突起が装置本体に乗り上げて被収容部が装置本体から引き出される方向に移動するため、カバー部を回動させて給紙口を開放させようとする作業者は、装置本体から被収容部を引き出す必要があることを認知し易い。
【0017】
本発明の給紙装置において、前記カバー部には、前記給紙口を閉鎖するように前記カバー部が回動する方向に向けて突出するとともに、用紙の幅方向における側端に当接する用紙ガイドが設けられている。
【0018】
この発明によれば、カバー部に設けられた用紙ガイドにより、搬送される用紙をガイドすることができ、また、用紙ガイドが設けられていない場合に比べて、カバー部は給紙口が閉鎖される方向に自重で回動し易くなる。
【0019】
本発明の給紙装置において、前記カバー部及び前記被収容部の各々は、用紙を支持する支持平面を有するとともに、前記カバー部が有する前記支持平面が、前記被収容部が有する前記支持平面に比べて上側に設けられ、前記用紙支持部材が前記第2の状態であるときに、前記カバー部が有する支持平面が、前記被収容部が有する支持平面に対して、前記給紙口側に向けて屈曲する状態が維持される。
【0020】
この発明によれば、給紙可能な第2の状態において、カバー部が有する支持平面が、被収容部が有する支持平面に対して、給紙口側に向けて屈曲する状態が維持される。このため、例えば、用紙支持部材によって傾斜した状態で支持される用紙において、用紙の上端が支持されない場合(即ち、用紙の上端が用紙支持部材からはみ出す場合)に、カバー部が有する支持平面によって用紙の上端を上方へ向けることが可能となる。即ち、カバー部が有する支持平面と被収容部が有する支持平面とが直線状に設けられる場合に比べて、用紙支持部材に支持される用紙の上端を上方へ向け易い。従って、用紙の上端が支持されない場合であっても用紙を安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)(b)本発明の実施形態に係る給紙装置を備えたプリンターの斜視図。
【図2】(a)(b)同実施形態に係る給紙装置が備える用紙支持部材の斜視図。
【図3】同実施形態に係る給紙装置において、用紙支持部材のカバー部によって給紙口が閉鎖されている状態を示す断面模式図。
【図4】同実施形態に係る給紙装置において、カバー部に設けられた突起が装置本体に当接した状態を示す断面模式図。
【図5】同実施形態に係る給紙装置において、装置本体に突起を当接させた状態においてカバー部を回動させた状態を示す断面模式図。
【図6】同実施形態に係る給紙装置において、給紙口が開放され、かつ、用紙支持部材の被収容部が装置本体から引き出された状態を示す断面模式図。
【図7】(a)〜(c)給紙口を開閉する用紙支持部材が折り畳みに可能に構成された給紙装置の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図6に基づいて説明する。なお、図中の矢印Zは、鉛直方向である上下方向Zを示している。また、図中の矢印Xは、上下方向Zに直交するとともに用紙が搬送される方向を前方とする前後方向Xを示している。また、図中の矢印Yは、上下方向Z及び前後方向Xに直交する左右方向Yを示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置としてのプリンター1は、背面側(後側)から搬送される用紙(図示略)に画像を形成して記録する記録装置であって、プリンター1の筐体を構成する略直方体の装置本体11と、装置本体11の後側に設けられた給紙装置2と、装置本体11に収納された画像形成部12とを備えている。
【0024】
給紙装置2は、自動シート搬送装置(ASF:Auto Sheet Feeder)であって、電動モーターにより駆動される給紙ローラー(不図示)を用いて用紙を前方へ搬送することにより画像形成部12に用紙を供給する(即ち、給紙する)。
【0025】
画像形成部12は、用紙に印刷を施す印刷機構により構成されている。具体的には、画像形成部12は、給紙装置2によって供給された用紙に対して、インクを微細な粒子として吹き付けることにより印刷を施すインクジェット方式の印刷機構により構成される。このようにして画像形成部12は、給紙装置2によって供給される用紙に画像を形成する。
【0026】
画像形成部12によって画像が形成された用紙(即ち、印刷が施された用紙)は、前方へ搬送されて、装置本体11の前側に設けられた開口である排紙口13から排出される。以上のようにプリンター1においては、装置本体11内に記録用紙が搬送されて、画像が形成された用紙が装置本体11内から排出される。
【0027】
次に、本発明に係る給紙装置2について詳しく説明する。
給紙装置2は、筐体を構成する装置本体11と、装置本体11の後側に設けられる折り畳み可能な用紙支持部材3と、搬送する力を用紙に与える給紙ローラー(図示略)と、装置本体11内において用紙を支持する用紙支持体6(図3等参照)とを備えている。
【0028】
給紙装置2の筐体を構成する装置本体11は、上述のごとくプリンター1の筐体も構成している。即ち、本実施形態においては、プリンター1の筐体と給紙装置2の筐体とが一体的に形成されて装置本体11が構成されている。
【0029】
図1(a)は、用紙支持部材3が折り畳まれた状態であって給紙装置2が使用されないときのプリンター1の斜視図である。また、図1(b)は、用紙支持部材3が展開された状態であって給紙装置2が使用されるときのプリンター1の斜視図である。
【0030】
装置本体11の後側端部には、給紙される用紙が差し込まれる開口である給紙口21(図1(b)参照)が設けられている。図1(a)に示すように、給紙装置2が使用されないときには、用紙支持部材3により給紙口21が閉鎖され、図1(b)に示すように、給紙装置2が使用されるときには、給紙口21が開放される。
【0031】
以上のようにして、給紙口21が開放された状態、即ち用紙支持部材3が展開された状態になると、用紙支持部材3は給紙口21において用紙を支持することが可能となる。用紙支持部材3によって支持された用紙は、給紙ローラーによって前方に搬送される。
【0032】
図2に示すように、用紙を支持する機能と給紙口21を開閉する機能とを備える用紙支持部材3は、給紙口21を開閉するカバー部4と、装置本体11に収容可能な被収容部5とを有している。本実施形態においては、カバー部4及び被収容部5は、それぞれ、別体として形成された樹脂成形体であって、用紙支持部材3はこれら2つの樹脂成形体からなる。
【0033】
用紙支持部材3は、カバー部4と被収容部5との接続部分において折り畳み可能に構成されている。即ち、被収容部5に対してカバー部4が回動可能に接続されている。従って、被収容部5に対してカバー部4が回動することにより、カバー部4が有する内面42と被収容部5が有する支持平面51とのなす角度が変化して用紙支持部材3の態様が変化する。
【0034】
具体的には、用紙支持部材3は、被収容部5に対してカバー部4が回動されることにより、カバー部4が給紙口21を閉鎖するとともに被収容部5が装置本体11に収容された第1の状態から、カバー部4が給紙口21を開放して給紙口21が開放された状態が維持される第2の状態に遷移する。
【0035】
第1の状態は、図1(a)に示すように給紙口21が閉鎖された状態であって、第2の状態は、図1(b)に示すように給紙口21が開放された状態である。従って、用紙支持部材3が第1の状態から第2の状態に遷移するためには、給紙口21が開放される方向(図中の矢印R1参照)にカバー部4が回動される。なお、図1(b)に示す第2の状態は、上述のごとく用紙支持部材3が展開された状態であって、カバー部4と被収容部5とに用紙を支持させることができる状態である。
【0036】
図1(b)に示す用紙支持部材3が展開された状態とは、具体的には、カバー部4が有する内面42と被収容部5が有する支持平面51とのなす角度が最も大きくなるように、被収容部5とカバー部4とが接続されている態様である。以下、用紙支持部材3の構成の説明では、用紙支持部材3が展開された状態において、被収容部5の下端が設けられる方向を下端側とし、この反対側の方向(即ち、被収容部5の下端から遠ざかる方向)を先端側として説明する。
【0037】
左右方向Yに延設された略平板状のカバー部4は、被収容部5の先端側に接続されている。このカバー部4は、給紙口21が閉鎖されたときにプリンター1の外観を構成する外面41と、外面41の反対側の面である内面42とを有している。用紙支持部材3が第1の状態においては、外面41は上方に向けて設けられるとともに、内面42は下方に向けて設けられる。そして、用紙支持部材3が第2の状態においては、内面42は斜め上方に向けて設けられる。
【0038】
従って、用紙支持部材3が展開された第2の状態においては、内面42上に用紙を載置することができ、内面42によって用紙を支持する支持平面42aが構成されている。なお、本実施形態においては、内面42の一部によって支持平面42aが断続的に構成されている。
【0039】
具体的には、本実施形態においては、カバー部4には、剛性を向上させることが可能な、給紙口21側に向けて突出するリブ42Aが設けられている。これらリブ42Aが有する平坦な先端により内面42の一部である支持平面42aが構成されている。このような構成によりカバー部4は用紙を支持する支持平面42aを有している。
【0040】
なお、本実施形態においては、カバー部4の外面41がプリンター1の外観形状に沿うように形成され、カバー部4の内面42におけるリブ42Aの一部は湾曲している。この湾曲した部分においては、リブ42Aによって支持平面42aは構成されていない。
【0041】
また、左右方向Yの一方の端部において、カバー部4の内面42には、内面42から突出した用紙ガイド43が設けられている。用紙ガイド43は、用紙支持部材3の内面42上に載置された(即ち、支持平面42aによって支持された)用紙の幅方向(左右方向Y)における側端に当接する。なお、カバー部4が給紙口21を閉鎖するときに、用紙ガイド43が装置本体11に干渉しないように、装置本体11には、用紙ガイド43が挿通される開口である挿通口14(図1参照)が形成されている。
【0042】
さらに、カバー部4における下端側であって、左右方向Yにおけるカバー部4の両端には、左右方向Yに貫通された開口を有する軸挿通部44が設けられている。この軸挿通部44において、左右方向Yに延設された略平板状の被収容部5に対してカバー部4が回動可能に接続されている。
【0043】
カバー部4の下端側に接続されている被収容部5は、用紙を支持する支持平面51と、支持平面51の反対側の面である裏面52とを有している。用紙支持部材3が第2の状態においては、支持平面51は、カバー部4の内面42と同様に、斜め上方に向けて設けられる。即ち、用紙支持部材3が展開された第2の状態においては、被収容部5の支持平面51上に用紙を載置することができる。なお、被収容部5の裏面52には、剛性を向上させることが可能なリブ52Aが設けられている。
【0044】
また、左右方向Yにおける被収容部5の両端には、装置本体11に設けられたガイド溝15(図3等参照)に沿って案内される被ガイド部53が設けられている。被ガイド部53が上下方向Zに延設されたガイド溝15に沿って案内されて移動することにより、上下方向Zにおける被収容部5の移動が案内される。本実施形態においては、被ガイド部53は、上下方向Zに延設されるとともに下端部が膨らんだ形状を有している。なお、被ガイド部53の下端部は、用紙支持部材3が展開された第2の状態において、装置本体11に設けられた保持溝16(図6等参照)によって保持される。
【0045】
また、被収容部5における先端側であって、左右方向Yにおける被収容部5の両端の各々には、軸挿通部44に挿通される回動軸54が設けられている。この回動軸54が軸挿通部44に挿通されることによって、カバー部4と被収容部5とが接続されている。
【0046】
以上のように、用紙支持部材3は、カバー部4と被収容部5との接続部分において折り曲げ可能であって、用紙支持部材3を構成するカバー部4によって給紙口21を閉鎖することができる。
【0047】
ここで、本実施形態においては、用紙支持部材3に、用紙支持部材3が第1の状態から第2の状態に遷移しようとするときに、被収容部5が装置本体11に収容されている状態である場合には、給紙口21が開放された状態が維持されることを制限する開放制限部としての突起7が設けられている。
【0048】
突起7は用紙支持部材3を構成するカバー部4に設けられている。具体的には、突起7は、カバー部4の下端側(即ち、被収容部5の近傍)において、カバー部4の外面41から突出して形成されている。この突起7は、被収容部5が装置本体11に収容されている状態において給紙口21が開放される方向(図中の矢印R1参照)にカバー部4を回動させたときに、装置本体11を構成する後側壁部11Aに当接する。
【0049】
突起7は、被収容部5が装置本体11に収容されている状態であって、かつ、装置本体11に突起7が当接するときに、給紙口21が閉鎖される方向(図5中の矢印R2参照)にカバー部4が自重で回動するように配設されている。従って、被収容部5が装置本体11に収容されている状態において、手動により給紙口21が開放される方向にカバー部4を回動させて、装置本体11に突起7が当接するときにカバー部4から手を離すと、給紙口21が自動的に閉鎖される。
【0050】
図3〜図6を参照しながら、手動によって、用紙支持部材3が、図1(a)に示す第1の状態から図1(b)に示す第2の状態に遷移するまでの流れを詳しく説明する。
図3は、用紙支持部材3のカバー部4によって給紙口21が閉鎖されている第1の状態を示している。被収容部5が装置本体11に収容されている第1の状態は、被収容部5に用紙を支持させることができない状態であって、図1(a)及び図3に示す第1の状態においては、給紙口21に用紙を差し込んでカバー部4に用紙を支持させることもできない状態である。図3に示す状態において給紙口21が開放される方向(図3中の矢印R1が示す方向)にカバー部4を回動させると、図4に示すように装置本体11の後側壁部11Aに突起7が当接する。
【0051】
図4は、被収容部5が装置本体11に収容されている状態において、装置本体11に突起7が当接した状態を示している。図3に示す状態から図4に示す状態に遷移するまでの間においては、カバー部4は被収容部5に対して回動して移動するが、被収容部5は略動かない。図4に示す状態において、カバー部4から手を離すと、給紙口21が閉鎖される方向(図4中の矢印R2が示す方向)にカバー部4が自重で回動する。なお、本実施形態においては、カバー部4に設けられた用紙ガイド43は、給紙口21を閉鎖するようにカバー部4が回動する方向(即ち、矢印R2が示す方向)に向けて突出しているため、図4に示す状態において、カバー部4は給紙口21が閉鎖される方向に自重で回動し易い。
【0052】
なお、本実施形態においては、図4に示す状態において給紙口21が開放される方向(図4中の矢印R1が示す方向)にカバー部4をさらに回動させると、図5に示すように被収容部5が装置本体11から引き出される方向(即ち、上方)に若干移動する。
【0053】
図5は、被収容部5が装置本体11に収容されている状態において、突起7を装置本体11に当接させた状態において、突起7と装置本体11とが当接する箇所を軸として、給紙口21が開放される方向にカバー部4を回動させた状態を示している。即ち、本実施形態においては、突起7を装置本体11に当接させた状態において、突起7と装置本体11とが当接する箇所を軸として、給紙口21が開放される方向にカバー部4を回動させようとするときに、突起7が、上下方向Zに延設された装置本体11の後側壁部11Aに乗り上げる。そして、このように突起7が装置本体11に乗り上げることによって、装置本体11から引き出される方向(上方)に被収容部5が若干移動する。なお、突起7が装置本体11の後側壁部11Aに容易に乗り上げることができるように、後側壁部11Aの上端は曲面により形成されていることが好ましい。
【0054】
図4に示す状態と同様に、図5に示す状態において、カバー部4から手を離すと、給紙口21が閉鎖される方向(図5中の矢印R2参照)にカバー部4が自重で回動する。この図5に示す状態においても、カバー部4に設けられた用紙ガイド43により、カバー部4は給紙口21が閉鎖される方向に自重で回動し易い。
【0055】
図5に示す被収容部5が装置本体11に収容されたままの状態においては、装置本体11に収容された被収容部5は、被ガイド部53に係合するガイド溝15によって前後方向Xにおける移動が規制されているため、給紙口21が開放される方向にカバー部4を被収容部5に対して回動させることはできない。即ち、被収容部5が装置本体11に収容されたままの状態においては、カバー部4の支持平面42aが斜め上方を向くようにカバー部4を回動させることができず、カバー部4が手で支持しなければ給紙口21が開放された状態が維持されない。従って、カバー部4を手で支持しなくとも給紙口21が開放された状態に維持されるためには、被収容部5を上方に移動させる必要がある。即ち、被収容部5を装置本体11から引き出して、または引き出しながら給紙口21が開放される方向にカバー部4を回動させる必要がある。
【0056】
図6は、用紙支持部材3のカバー部4が給紙口21を開放して給紙口21が開放された状態が維持される第2の状態であって、装置本体11から被収容部5が引き出された状態を示している。図1(b)及び図6に示す第2の状態においては、給紙口21に用紙を差し込んで、用紙支持体6が有する支持面61に用紙を支持させるともにカバー部4及び被収容部5に用紙を支持させることができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、用紙支持部材3が図1(b)及び図6に示す第2の状態であるときに、カバー部4及び被収容部5の各々が有する支持平面42a,51は屈曲している。具体的には、支持平面51に比べて上側に設けられた支持平面42aは、用紙支持部材3が第2の状態であるときに、支持平面51に対して給紙口21側に向けて屈曲する状態が維持される。このように支持平面42aが支持平面51に対して給紙口21側に向けて屈曲する状態は、内面42と支持平面51とのなす角度を制限する機構により維持される。具体的には、図6等に示すように、カバー部4の下端側端部には回動制限部45が設けられている。この回動制限部45が、支持平面42aが支持平面51に対して給紙口21側に向けて屈曲する状態において、被収容部5の裏面52に当接することにより、被収容部5に対するカバー部4の回動が制限されて、上述の状態が維持されている。
【0058】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)用紙支持部材3には、用紙支持部材3が第1の状態から第2の状態に遷移しようとするときに、被収容部5が装置本体11に収容されている状態である場合には、給紙口21が開放された状態が維持されることを制限する開放制限部としての突起7が設けられている。即ち、用紙支持部材3を構成する被収容部5が装置本体11に収容されている状態である場合には、給紙口21が開放された状態が維持されないため、給紙口21が開放された状態を維持するためには、被収容部5を装置本体11から引き出す必要がある。よって、開放された給紙口21から用紙を給紙するときには、被収容部5が装置本体11から引き出され、用紙支持部材3を構成するカバー部4と被収容部5とに用紙を支持させることができる。従って、給紙口21から用紙を給紙するときに、用紙が用紙支持部材3の被収容部5に支持されずに給紙されることを抑制することができる。その結果、用紙を適切に支持することができ、用紙を前後方向Xに対して平行に搬送して、プリンター1において、用紙の所望の位置に印刷する印刷精度を向上させることができる。
【0059】
(2)被収容部5が装置本体11に収容されている状態であって、かつ、装置本体11に突起7が当接するときに、給紙口21が閉鎖される方向にカバー部4が自重で回動するように突起7が配設されている。即ち、被収容部5が装置本体11に収容されている状態において、給紙口21が開放される方向に回動されたカバー部4の突起7が装置本体11に当接するときには、カバー部4は給紙口21が閉鎖される方向に自重で回動する。このため、被収容部5が装置本体11に収容されている状態である場合に、簡単な構成で給紙口21が開放された状態が維持されないようにすることができる。
【0060】
(3)突起7を装置本体11に当接させた状態において、突起7と装置本体11とが当接する箇所を軸として、給紙口21が開放される方向にカバー部4を回動させようとするときに、突起7が装置本体11に乗り上げて装置本体11から引き出される方向(即ち、上方)に被収容部5が移動する。従って、カバー部4を回動させて給紙口21を開放させようとする作業者は、装置本体11から被収容部5を引き出す必要があることを認知し易い。
【0061】
(4)カバー部4には、給紙口21を閉鎖するようにカバー部4が回動する方向に向けて突出するとともに、用紙の幅方向における側端に当接する用紙ガイド43が設けられている。このため、カバー部4に設けられた用紙ガイド43により、搬送される用紙をガイドすることができ、また、用紙ガイド43が設けられていない場合に比べて、カバー部4は給紙口21が閉鎖される方向に自重で回動し易くなる。
【0062】
(5)用紙支持部材3が第2の状態(即ち給紙可能な状態)であるときに、カバー部4が有する支持平面42aが、被収容部5が有する支持平面51に対して、給紙口21側に向けて屈曲する状態が維持される。このため、用紙支持部材3によって傾斜した状態で支持される用紙において、用紙の上端が支持されない場合(即ち、用紙の上端が用紙支持部材3からはみ出す場合)に、カバー部4が有する支持平面42aによって用紙の上端を上方へ向けることが可能となる。即ち、カバー部4が有する支持平面42aと被収容部5が有する支持平面51とが直線状に設けられる場合に比べて、用紙支持部材3に支持される用紙の上端を上方へ向け易い。従って、用紙の上端が支持されない場合であっても、用紙の上端が下方へ垂れ下がらないようにして用紙を安定して支持することができる。その結果、用紙をより適切に支持することができ、プリンター1において、用紙の所望の位置に印刷する印刷精度を一層向上させることができる。
【0063】
(6)カバー部4と被収容部5との接続部分において折り曲げ可能な用紙支持部材3は、折り曲げ不可能な用紙支持部材(不図示)に比べてコンパクト化を図ることができる。
(7)カバー部4によって給紙口21が閉鎖されることによって、給紙装置2が使用されないときの給紙口21への異物の侵入抑制を図ることができ、被収容部5が装置本体11に収容されることにより給紙装置2並びにプリンター1の美観性の向上等を図ることができる。
【0064】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・被収容部5が装置本体11に収容されている状態において、給紙口21が閉鎖される方向にカバー部4が自重で回動するように装置本体11に当接することができるのであれば、突起7の形状や配置等を適宜変更してもよい。
【0065】
・上記実施形態において、用紙支持部材3に開放制限部としての突起7を設ける構成に代えて、装置本体11の後側壁部11Aに開放制限部としての突起(不図示)が設けられていてもよい。即ち、開放制限部としての突起は、用紙支持部材3及び装置本体11の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0066】
・開放制限部が突起以外により構成されていてもよい。例えば、突起7により構成される開放制限部に代えて、カバー部4を下方に付勢するばね等の弾性部材により開放制限部が構成されていてもよい。
【0067】
・上記実施形態において、給紙装置2を、スキャナー等の画像読取装置に適用することもできる。即ち、上記実施形態の給紙装置2と、用紙に形成された画像を読み取る画像読取部である撮像機構とを備えた画像読取装置によれば、用紙に形成されている画像を所望の角度で読み取る読取精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…プリンター(画像形成装置)、2…給紙装置、3…用紙支持部材、4…カバー部、5…被収容部、6…用紙支持体、7…突起(開放制限部)、11…装置本体、11A…後側壁部、12…画像形成部、13…排紙口、14…挿通口、15…ガイド溝、16…保持溝、21…給紙口、41…外面、42…内面、42a…支持平面、42A…リブ、43…用紙ガイド、44…軸挿通部、45…回動制限部、51…支持平面、52…裏面、52A…リブ、53…被ガイド部、54…回動軸、61…支持面、X…前後方向、Y…左右方向、Z…上下方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙される用紙が差し込まれる給紙口が設けられた装置本体と、前記給紙口において用紙を支持する用紙支持部材とを備える給紙装置であって、
前記用紙支持部材は、前記給紙口を開閉するカバー部と、前記装置本体に収容可能な被収容部とを有するとともに、前記被収容部に対して前記カバー部が回動可能に接続され、
前記用紙支持部材は、前記被収容部に対して前記カバー部が回動されることにより、前記カバー部が前記給紙口を閉鎖するとともに前記被収容部が前記装置本体に収容された第1の状態から、前記カバー部が前記給紙口を開放して該給紙口が開放された状態が維持される第2の状態に遷移し、
前記用紙支持部材及び前記装置本体の少なくとも一方には、前記用紙支持部材が前記第1の状態から前記第2の状態に遷移しようとするときに、前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態である場合には、前記給紙口が開放された状態が維持されることを制限する開放制限部が設けられている
ことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記開放制限部は、前記カバー部に設けられた突起であって、前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態において前記給紙口が開放される方向に前記カバー部を回動させたときに前記突起は前記装置本体に当接し、
前記被収容部が前記装置本体に収容されている状態であって、かつ、前記装置本体に前記突起が当接するときに、前記給紙口が閉鎖される方向に前記カバー部が自重で回動するように前記突起が配設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記突起を前記装置本体に当接させた状態において、前記突起と前記装置本体とが当接する箇所を軸として、前記給紙口が開放される方向に前記カバー部を回動させようとするときに、前記突起が前記装置本体に乗り上げて前記装置本体から引き出される方向に前記被収容部が移動する
ことを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記カバー部には、前記給紙口を閉鎖するように前記カバー部が回動する方向に向けて突出するとともに、用紙の幅方向における側端に当接する用紙ガイドが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記カバー部及び前記被収容部の各々は、用紙を支持する支持平面を有するとともに、前記カバー部が有する前記支持平面が、前記被収容部が有する前記支持平面に比べて上側に設けられ、
前記用紙支持部材が前記第2の状態であるときに、前記カバー部が有する支持平面が、前記被収容部が有する支持平面に対して、前記給紙口側に向けて屈曲する状態が維持される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の給紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219201(P2011−219201A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88036(P2010−88036)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】