説明

給紙装置

【課題】生産性を維持しつつ、騒音を低減できる給紙装置を提供する。
【解決手段】給紙装置は、用紙Pを画像形成部3へ搬送するレジストローラ25と、レジストローラ25へ用紙Pを搬送する給紙ローラ22と、用紙Pを第1の搬送速度で搬送した後、第1の搬送速度より小さい第2の搬送速度に減速して搬送するよう給紙ローラ22を制御する制御部とを備え、制御部は、給紙ローラ22が用紙1枚あたりの所定駆動時間で所定搬送量を搬送できる第1および第2の搬送速度を予め設定し、第2の搬送速度で用紙がレジストローラ25に突き当たるよう第1の搬送速度から第2の搬送速度への減速開始時点を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に設けられる給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に設けられ、給紙台から取り出した用紙をレジストローラによってインクジェットヘッド等を有する画像形成部に搬送する給紙装置が知られている。
【0003】
このような給紙装置は、給紙ローラにより用紙を搬送し、レジストローラに突き当てて一旦止めることにより用紙にたるみを形成する。これにより用紙の斜行が補正される。そして、給紙装置は、所定のタイミングでレジストローラを駆動させて用紙を画像形成部に送り出す。
【0004】
レジストローラに用紙が突き当たると、衝突音が発生する。特に、高い生産性(単位時間当たりの印刷枚数)を実現する画像形成装置では、用紙の搬送が高速で行われるため、衝突音が大きくなる。また、衝突による用紙のダメージも大きくなる。
【0005】
レジストローラへの用紙の衝突による衝撃を低減するには、例えば、レジストローラに緩衝材を設けることが考えられる。また、遮音カバーを設けて騒音を抑えることも考えられる。しかしながら、このような部材を追加することは、装置の大型化やコストアップを招く。
【0006】
そこで、特許文献1には、給紙ローラが第1の搬送速度で用紙を搬送し、給紙ローラとレジストローラとの間に設けられた検出器により用紙の先端が検出されると、給紙ローラによる搬送速度を第1の搬送速度以下の第2の搬送速度に減速する給紙装置が開示されている。第2の搬送速度は、検出器により用紙の先端が検出された時点に基づいて設定される。このような搬送制御により、特許文献1に記載の給紙装置は、衝突音を軽減しつつ、生産性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−40568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の給紙装置では、検出器により用紙の先端が検出された時点に基づいて第2の搬送速度を設定するので、検出器への用紙の先端の到達時間によっては、第2の搬送速度が高速となることがあった。このため、レジストローラへの用紙の衝突音が大きくなり、騒音を低減する効果が十分でなかった。
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、生産性を維持しつつ、騒音を低減できる給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る給紙装置の第1の特徴は、用紙を画像形成部へ搬送するレジストローラと、前記レジストローラへ用紙を搬送する給紙ローラと、用紙を第1の搬送速度で搬送した後、前記第1の搬送速度より小さい第2の搬送速度に減速して搬送するよう前記給紙ローラを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記給紙ローラが用紙1枚あたりの所定駆動時間で所定搬送量を搬送できる前記第1および第2の搬送速度を予め設定し、前記第2の搬送速度で用紙が前記レジストローラに突き当たるよう前記第1の搬送速度から前記第2の搬送速度への減速開始時点を決定することにある。
【0011】
本発明に係る給紙装置の第2の特徴は、前記給紙ローラと前記レジストローラとの間に配置され、用紙を検出する検出部をさらに備え、前記制御部は、前記第1の搬送速度で搬送される用紙の先端が前記検出部で検出された検出時点に基づいて、前記減速開始時点を決定することにある。
【0012】
本発明に係る給紙装置の第3の特徴は、前記給紙ローラが搬送した用紙の搬送量を示す情報を取得する搬送量取得部をさらに備え、前記制御部は、前記検出時点から前記搬送量取得部で取得された情報が示す前記給紙ローラの搬送量が所定値になった時点で、前記第2の搬送速度からの前記給紙ローラの搬送速度の減速を開始させ、前記給紙ローラを停止させることにある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る給紙装置の第1の特徴によれば、制御部は、給紙ローラが用紙1枚あたりの所定駆動時間で所定搬送量を搬送できる第1および第2の搬送速度を予め設定する。そして、制御部は、用紙を第1の搬送速度で搬送した後、第1の搬送速度より小さい第2の搬送速度に減速して搬送するよう給紙ローラを制御する。ここで、制御部は、第2の搬送速度で用紙がレジストローラに突き当たるよう第1の搬送速度から第2の搬送速度への減速開始時点を決定する。これにより、給紙装置は、生産性を維持しつつ、予め設定した第2の搬送速度で用紙をレジストローラに突き当てることができ、騒音を低減できる。
【0014】
本発明に係る給紙装置の第2の特徴によれば、用紙の先端が検出部で検出された検出時点に基づいて、第1の搬送速度から第2の搬送速度への減速開始時点を決定する。これにより、給紙装置は、検出部への用紙の到達時間がばらついても、第2の搬送速度で用紙をレジストローラに突き当てることができ、騒音を低減できる。
【0015】
本発明に係る給紙装置の第3の特徴によれば、制御部は、搬送量取得部で取得された情報が示す給紙ローラの搬送量が所定値になった時点で、第2の搬送速度からの給紙ローラの搬送速度の減速を開始させる。これにより、給紙装置は、実際の搬送量に応じて正確に給紙ローラを停止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る給紙装置を備える画像形成装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】用紙センサの検出信号、給紙ローラおよびレジストローラの搬送速度の推移を示すタイミングチャートである。
【図4】図1に示す画像形成装置の要部拡大図である。
【図5】たるみ量の説明図である。
【図6】搬送速度V1を決定する方法を説明するための図である。
【図7】搬送速度V2を決定する方法を説明するための図である。
【図8】搬送速度V2を決定する方法を説明するための図である。
【図9】搬送速度V2を決定する方法を説明するための図である。
【図10】給紙ローラの制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施の形態の画像形成装置における給紙ローラの搬送速度の測定データの一例を示す図である。
【図12】従来の給紙ローラの駆動制御による搬送速度の測定データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0018】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置を備える画像形成装置の概略構成図、図2は、図1に示す画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図である。以下の説明における上下方向、左右方向は、図1において示す上下方向、左右方向を示すものとする。また、図1において破線で示す経路が、用紙が搬送される搬送経路Rであり、左から右に向かう方向が搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送経路Rにおける上流、下流を意味する。
【0020】
図1、図2に示すように、画像形成装置1は、給紙部2と、画像形成部3と、制御部4とを備える。なお、請求項の給紙装置は、給紙部2と、制御部4とを備える。
【0021】
給紙部2は、画像形成部3に用紙Pを供給(給紙)するものである。給紙部2は、搬送経路Rの最も上流側に設けられる。給紙部2は、給紙台21と、給紙ローラ22と、給紙モータ23と、さばき板24と、レジストローラ25と、レジストモータ26と、エンコーダ27と、用紙センサ28とを備える。
【0022】
給紙台21は、画像形成媒体である用紙Pを積載するためのものである。
【0023】
給紙ローラ22は、給紙台21に積載された用紙Pを1枚ずつ取り出してレジストローラ25に向けて搬送するものである。給紙ローラ22は、給紙台21の上側に配置されている。給紙ローラ22は、給紙モータ23の駆動力により回転するが、レジストローラ25によって用紙Pを搬送する時点では、用紙Pの移動に合わせて連れ回りする構造である。
【0024】
給紙モータ23は、給紙ローラ22を回転駆動させる。
【0025】
さばき板24は、給紙ローラ22により用紙が1枚ずつ搬送されるように用紙をさばくためのものである。さばき板24は、下流側の給紙ローラ22に下方から圧接する。
【0026】
レジストローラ25は、給紙ローラ22から送られてきた用紙Pが突き当てられた後、所定のタイミングで画像形成部3に向けて用紙Pを搬送する。レジストローラ25は、給紙ローラ22の下流側に配置されている。
【0027】
レジストモータ26は、レジストローラ25を回転駆動させる。
【0028】
エンコーダ27は、給紙モータ23の回転軸の回転角度を検出し、回転角度に応じたパルス信号を発生する。このパルス信号は、給紙ローラ22が搬送した用紙Pの搬送量を示す情報に相当する。エンコーダ27は、請求項の搬送量取得部に相当する。
【0029】
用紙センサ28は、給紙ローラ22とレジストローラ25との間に配置され、搬送経路Rを搬送される用紙Pを検出する。用紙センサ28は、例えば、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサからなる。用紙センサ28は、請求項の検出部に相当する。
【0030】
画像形成部3は、用紙Pを搬送しつつ、用紙Pに画像を形成するものである。画像形成部3は、ベルト搬送部31と、ベルトモータ32と、インクジェットヘッド部33とを備える。
【0031】
ベルト搬送部31は、給紙部2から給紙された用紙Pを環状の搬送ベルト上に保持し、搬送ベルトを周回駆動することで、用紙Pを搬送するものである。ベルト搬送部31は、レジストローラ25の下流側に配置されている。
【0032】
ベルトモータ32は、ベルト搬送部31において用紙Pを保持して搬送する搬送ベルトを周回駆動させる。
【0033】
インクジェットヘッド部33は、ベルト搬送部31の上方に配置され、用紙Pの搬送方向と直交する方向に複数のノズルが配列されたラインタイプの複数のインクジェットヘッドを有する。インクジェットヘッド部33は、ベルト搬送部31により搬送される用紙Pにインクジェットヘッドからインクを吐出して画像を形成する。
【0034】
制御部4は、画像形成装置1の各部の動作を制御するものである。制御部4は、CPU、RAM、ROM等を備えて構成される。
【0035】
具体的には、制御部4は、給紙部2により用紙Pを画像形成部3に給紙し、ベルト搬送部31により用紙Pを搬送しつつ、インクジェットヘッド部33によりインクを吐出して用紙Pに印刷を行うよう制御を行う。
【0036】
給紙動作において、制御部4は、給紙する用紙1枚ごとに、給紙ローラ22およびレジストローラ25を間欠的に駆動させる。ここで、制御部4は、用紙Pを搬送速度V1(請求項の第1の搬送速度に相当)で搬送した後、搬送速度V1より小さい搬送速度V2(請求項の第2の搬送速度に相当)に減速して搬送するよう給紙ローラ22を制御する。この際、制御部4は、搬送速度V2で用紙がレジストローラ25に突き当たるよう搬送速度V1から搬送速度V2への減速開始時点を決定する。制御部4は、搬送速度V1,V2を、給紙ローラ22が用紙1枚あたりの所定駆動時間Taで所定搬送量Laを搬送できる速度で予め設定する。駆動時間Taは、画像形成装置1で所望の生産性(単位時間当たりの印刷枚数)を達成するために給紙ローラ22が駆動可能な時間として決定される。また、搬送量Laは、給紙ローラ22が用紙Pの先端をレジストローラ25に突き当てるとともに用紙Pに所定のたるみ量のたるみを形成するために必要な搬送量である。搬送速度V1,V2、減速開始時点を決定する方法の詳細については後述する。
【0037】
次に、画像形成装置1の動作の概略を説明する。
【0038】
図3は、用紙センサ28の検出信号、給紙ローラ22およびレジストローラ25の搬送速度の推移を示すタイミングチャートである。
【0039】
給紙ローラ22の駆動開始タイミングである時刻t1において、制御部4は、給紙モータ23により給紙ローラ22を起動させる。これにより、給紙台21上の用紙Pが給紙ローラ22により下流に向けて搬送され始める。
【0040】
画像形成の動作中において、制御部4は、ベルトモータ32によりベルト搬送部31の搬送ベルトを周回駆動させている。制御部4は、印字搬送速度Vgで用紙Pを搬送できるようにベルト搬送部31を駆動させる。印字搬送速度Vgは、生産性に関連し、高生産性を実現するために高速印刷を行う場合ほど高速となる。
【0041】
制御部4は、給紙ローラ22の起動後、給紙ローラ22の搬送速度を所定の加速度αupで加速させる。給紙ローラ22の搬送速度がV1に達すると、制御部4は、搬送速度V1を維持させる。
【0042】
搬送速度V1で搬送される用紙Pの先端が用紙センサ28で検出される(用紙センサ28がONになる)と、制御部4は、その検出時点から時間T1が経過後、給紙ローラ22の搬送速度をV1から所定の減速加速度αdnで減速させ始める。給紙ローラ22の搬送速度がV2にまで減速されると、制御部4は、搬送速度V2を維持させる。搬送速度V2で用紙Pの先端がレジストローラ25に突き当てられる。
【0043】
その後、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度をV2から所定の減速加速度αdnで減速させ、給紙ローラ22を停止させる。制御部4は、給紙ローラ22を起動した時刻t1から駆動時間Taが経過後の時刻t2に給紙ローラ22が停止するよう制御する。ここで、用紙Pにはたるみが形成されている。これにより用紙Pの斜行が補正される。
【0044】
そして、時刻t2において、制御部4は、レジストモータ26によりレジストローラ25を起動させる。制御部4は、レジストローラ25の起動後、その搬送速度をV3にまで加速させる。レジストローラ25の搬送速度をV3で所定時間だけ維持させた後、制御部4は、減速を開始させ、搬送速度V4にまで減速させる。搬送速度V4は、上述の印字搬送速度Vgと略等しい速度とする。制御部4は、用紙Pの先端がベルト搬送部31に到達するまでに、レジストローラ25の搬送速度をV4にまで減速するよう制御する。
【0045】
用紙Pの後端が用紙センサ28で検出される(用紙センサ28がOFFになる)と、制御部4は、次の用紙Pを給紙するために給紙ローラ22を起動させる。用紙Pがレジストローラ25を抜けると、制御部4は、レジストモータ26を停止させる。
【0046】
次に、搬送速度V1を決定する方法について説明する。
【0047】
搬送速度V1は、給紙ローラ22の搬送率が最低の条件のときでも、給紙ローラ22が用紙Pの先端をレジストローラ25に到達させ、所定のたるみ量のたるみを用紙Pに形成する必要性より決定される。
【0048】
ここで、図4に示すように、給紙台21に積置される用紙Pの先端(右端)の位置から用紙センサ28の検出位置までの距離をA、用紙センサ28の検出位置からレジストローラ25までの距離をBとする。距離A,Bは、搬送経路R上における距離である。
【0049】
また、所定のたるみ量をLtとする。たるみ量Ltは、図5に示すように、レジストローラ25に用紙Pを突き当てた際に、用紙Pの斜行を補正するために適切なだけ用紙Pをたるませたときの、用紙Pの本来の長さLpに対する縮小分である。なお、図5では、説明の便宜のため、搬送経路Rを直線路として示している。
【0050】
また、搬送率の最低値を最低搬送率βとする。搬送率は、給紙ローラ22の搬送量の理論値に対する、実際の搬送量の比率である。搬送率は、給紙ローラ22の経時変化、寸法精度、用紙種類、使用環境等により変化する。最低搬送率βは、実験的に求められる。
【0051】
前述の駆動時間Taは、以下の式(1)で表される。
【0052】
Ta=(A+B)/Vg …(1)
このように、駆動時間Taは、生産性に応じて決まる印字搬送速度Vgによって決定される。前述のように、印字搬送速度Vgは、レジストローラ25の搬送速度V4と略等しい。駆動時間Taは、レジストローラ25により搬送速度V4(=Vg)で搬送される前の用紙Pの後端が給紙ローラ22を抜けてから、レジストローラ25を抜けてレジストローラ25が停止するまでの時間を示し、これが給紙ローラ22の駆動可能な時間となる。
【0053】
前述の搬送量Laは、La=A+B+Ltで表される。給紙ローラ22が、最低搬送率βの場合でも、駆動時間Taで搬送量Laを搬送するという条件を満たすためには、図6に斜線で示す台形の面積が、La/βとなればよい。すなわち、以下の式(2)が満足されればよい。
【0054】
La/β=V1(1/αup+1/|αdn|)/2
+(Ta−V1/αup−V1/|αdn|)×V1 …(2)
ここで、加速度αup、減速加速度αdnは、給紙モータ23の仕様によって決まる固定の値である。
【0055】
搬送速度V1は、式(2)を解くことで求められる。
【0056】
次に、搬送速度V2を決定する方法について説明する。
【0057】
図7に示すように、給紙ローラ22の駆動開始から、用紙Pの先端が用紙センサ28で検出されるまでの時間をT0とする。用紙Pの先端が用紙センサ28で検出されてから給紙ローラ22の搬送速度のV1からの減速を開始する時点までの時間を、前述のようにT1とする。給紙ローラ22の搬送速度がV2になる時点から、V2からの減速を開始する時点までの時間をT2とする。給紙ローラ22の搬送速度のV1からの減速を開始してからV2になる時点までの時間をT3とする。給紙ローラ22の搬送速度のV2からの減速を開始してから停止する時点までの時間をT4とする。
【0058】
用紙センサ28で用紙Pの先端が検出された時点からの、給紙ローラ22の必要搬送量は、B+Ltである。このため、図7に斜線で示す領域の面積が、B+Ltとなればよい。
【0059】
ここで、時間T3と時間T4との和が、給紙ローラ22の搬送速度がV1から減速加速度αdnで減速して0になるまでの時間であるから、T3+T4=V1/|αdn|となる。よって、時間T3に対応する斜線の領域の面積と、時間T4に対応する斜線の領域の面積との和は、(T3+T4)×V1×1/2=V1/2×|αdn|となる。したがって、図7に斜線で示す領域の面積がB+Ltとなることは、以下の式(3)で表される。
【0060】
V1×T1+V2×T2+V1/2×|αdn|=B+Lt …(3)
また、図7における時間の関係から、以下の式(4)が成り立つ。
【0061】
T1+T2=Ta−T0−V1/|αdn| …(4)
式(3),(4)より、T1を求めると、以下の式(5)のようになる。
【0062】
T1={B+Lt−V1/2×|αdn|−V2×(Ta−T0−V1/|αdn|)}
/(V1−V2) …(5)
また、用紙Pの先端が用紙センサ28で検出されてから給紙ローラ22の搬送速度がV2になる時点までの間における給紙ローラ22の搬送量Lbは、図8に示す5角形の面積で表される。したがって、Lbは、以下の式(6)で表される。
【0063】
Lb=V1×T1+(V1+V2)×(V1−V2)/2×|αdn| …(6)
式(5)において、距離B、たるみ量Lt、減速加速度αdn、駆動時間Taは、固定の値または設定によって決まる値である。搬送速度V1は、前述の式(2)により決定される値である。そこで、時間T0に特定の値を用いれば、式(5)から、搬送速度V2の値に対する時間T1の値を算出できる。そして、その搬送速度V2、時間T1の値を用いて、式(6)から、搬送量Lbの値を算出できる。つまり、式(5),(6)により、搬送速度V2と搬送量Lbとの関係を求めることができる。
【0064】
搬送量Lbが、用紙センサ28の検出位置からレジストローラ25までの距離Bを超えると、給紙ローラ22による搬送速度がV2にまで減速される前に、用紙Pがレジストローラ25に突き当たることになる。そこで、式(5),(6)から得られる搬送速度V2と搬送量Lbとの関係から、搬送量Lbが距離Bを超えない範囲で、できるだけ小さい値の搬送速度V2が決定される。
【0065】
具体例を用いて説明する。A=63mm、B=35mm、Vg=632mm/s、αup=40000mm/s、αdn=−80000mm/s、Lt=6mm、β=0.7とする。このとき、式(1)より、Ta=0.115sとなる。また、式(2)より、搬送速度V1≒1850mm/sとなる。時間T0として、この搬送速度V1の設定で給紙ローラ22を駆動させたときに用紙Pの先端の用紙センサ28への到達が最も遅れた場合の値として実験的に得られたT0=0.07sを用い、式(5),(6)により、搬送速度V2と搬送量Lbとの関係を求めると、図9のようになる。この図9から、搬送量LbがB=35mm未満となり、かつ、低速となる搬送速度V2の値として、例えば、V2=400mm/sと決定できる。
【0066】
以上のように、給紙ローラ22の搬送速度V1,V2は決定される。制御部4は、予め決定した搬送速度V1,V2を固定値として設定している。
【0067】
次に、給紙ローラの制御について、図10のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
まず、ステップS10において、制御部4は、給紙モータ23により給紙ローラ22を起動させ、所定の加速度αupで搬送速度をV1まで加速させる。これにより、給紙台21上の用紙Pが給紙ローラ22により下流に向けて搬送され始める。給紙ローラ22の搬送速度がV1に達すると、制御部4は、搬送速度V1を維持させる。
【0069】
次いで、ステップS20において、制御部4は、用紙センサ28により用紙Pの先端が検出された(用紙センサ28がONになった)か否かを判断する。
【0070】
用紙Pの先端が検出されていないと判断した場合(ステップS20:NO)、ステップS30において、制御部4は、給紙ローラ22の起動から規定時間が経過したか否かを判断する。規定時間が経過していないと判断した場合(ステップS30:NO)、制御部4は、ステップS20に戻る。
【0071】
規定時間が経過したと判断した場合(ステップS30:YES)、ステップS40において、制御部4は、ジャム(用紙詰まり)が発生したと判断し、例えば、表示部(図示せず)にエラー情報を表示させることによりユーザにエラーを通知する。そして、制御部4は、給紙ローラ22の制御を終了する。
【0072】
用紙Pの先端が検出されたと判断した場合(ステップS20:YES)、ステップS50において、制御部4は、その検出時点、すなわち駆動開始からの時間T0に基づき、時間T1を算出する。具体的には、制御部4は、前述の式(5)に時間T0の値を代入して時間T1を算出する。
【0073】
次いで、ステップS60において、制御部4は、T1>0であるか否かを判断する。T1>0であると判断した場合(ステップS60:YES)、ステップS70において、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度V1からの減速開始時点を、用紙センサ28による用紙Pの先端の検出時点から時間T1後に設定する。
【0074】
次いで、ステップS80において、制御部4は、ステップS70で設定した給紙ローラ22の搬送速度V1からの減速開始時点になったか否かを判断する。減速開始時点になっていないと判断した場合(ステップS80:NO)、制御部4は、ステップS80の処理を繰り返す。
【0075】
減速開始時点になったと判断した場合(ステップS80:YES)、ステップS90において、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度V1からの減速を開始させ、V2になるまで、減速加速度αdnで減速させる。
【0076】
一方、ステップS60において、T1≦0であると判断した場合(ステップS60:NO)、制御部4は、ステップS90において、用紙センサ28による用紙Pの先端検出後すぐに、給紙ローラ22の搬送速度V1からの減速を開始させる。そして、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度がV2になるまで、減速加速度αdnで減速させる。
【0077】
給紙ローラ22の搬送速度がV2になった後、用紙Pの先端が、搬送速度V2でレジストローラ25に突き当たる。
【0078】
次いで、ステップS100において、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度のV2からの減速開始時点になったか否かを判断する。
【0079】
ここで、制御部4は、用紙センサ28での用紙Pの先端の検出時点からの給紙ローラ22の搬送量が、検出時点からの必要搬送量であるB+LtからV2/2×|αdn|を差し引いた値(所定値)になった時点を、給紙ローラ22の搬送速度V2からの減速開始時点とする。V2/2×|αdn|は、給紙ローラ22が搬送速度V2から減速加速度αdnで減速し始めてから停止するまでに搬送する搬送量である。
【0080】
具体的には、制御部4は、用紙センサ28での用紙Pの先端の検出時点からのエンコーダ27の出力パルス数を搬送量(距離)に換算する。その搬送量が、B+Lt−V2/2×|αdn|になった時点で、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度のV2からの減速開始時点になったと判断する。減速開始時点になっていないと判断した場合(ステップS100:NO)、制御部4は、ステップS100の処理を繰り返す。
【0081】
減速開始時点になったと判断した場合(ステップS100:YES)、ステップS110において、制御部4は、給紙ローラ22の搬送速度V2からの減速を開始させ、給紙ローラ22が停止するまで、減速加速度αdnで減速させる。
【0082】
次いで、ステップS120において、制御部4は、給紙ローラ22で搬送した今回の用紙Pが、指定された枚数における最後の用紙Pであるか否かを判断する。最後の用紙Pであると判断した場合(ステップS120:YES)、制御部4は、給紙ローラの制御を終了する。
【0083】
最後の用紙Pでないと判断した場合(ステップS120:NO)、ステップS130において、制御部4は、用紙センサ28により用紙Pの後端が検出された(用紙センサ28がOFFになった)か否かを判断する。
【0084】
用紙Pの後端が検出されていないと判断した場合(ステップS130:NO)、制御部4は、ステップS130の処理を繰り返す。用紙Pの後端が検出されたと判断した場合(ステップS130:YES)、制御部4は、ステップS10に戻り、次の用紙Pの給紙のために給紙ローラ22を起動させ、以降の処理を繰り返す。
【0085】
以上説明したように、画像形成装置1では、制御部4が、給紙ローラ22の搬送速度V1,V2を、生産性に応じて決まる用紙1枚あたりの所定駆動時間Taで所定搬送量Laを搬送できる速度で予め設定する。そして、制御部4は、用紙Pを搬送速度V1で搬送した後、V1より小さい搬送速度V2に減速して搬送するよう給紙ローラ22を制御する。この際、制御部4は、用紙Pが搬送速度V2でレジストローラ25に突き当たるよう搬送速度V1からV2への減速開始時点を決定する。これにより、画像形成装置1は、生産性を維持しつつ、予め設定した低速の搬送速度V2で用紙Pをレジストローラ25に突き当てることができ、騒音を低減できる。
【0086】
図11は、本実施の形態の画像形成装置1における給紙ローラ22の搬送速度の測定データの一例を示す図である。これに対し、図12は、従来の給紙ローラの駆動制御による搬送速度の測定データの一例を示す図である。図11では、用紙Pが約400mm/sの搬送速度でレジストローラ25に衝突している。このときの騒音値は64.8dBであった。これに対し、図12では、用紙が約1000mm/sの搬送速度でレジストローラに衝突している。このときの騒音値は66.8dBであった。このように、本実施の形態によれば、騒音が低減する。
【0087】
また、画像形成装置1では、用紙センサ28での用紙Pの先端の検出時点(給紙ローラ22の駆動開始からの時間T0)に基づいて算出した時間T1により給紙ローラ22の搬送速度V1からの減速開始時点を決定する。これにより、画像形成装置1は、用紙センサ28への用紙Pの到達時間がばらついても、搬送速度V2で用紙Pをレジストローラ25に突き当てることができ、騒音を低減できる。
【0088】
また、画像形成装置1では、用紙センサ28での用紙Pの先端の検出時点からのエンコーダ27の出力パルス数から算出した搬送量を用いて、給紙ローラ22の搬送速度V2からの減速開始時点を決定する。時間T1が算出されれば、式(4)から時間T2が算出できる。しかし、画像形成装置1では、給紙ローラ22の搬送速度がV2になってから時間T2の時点において減速を開始するのではなく、上記のようにエンコーダ27の出力パルス数から算出される実際の搬送量を用いて減速開始時点を決定する。これにより、画像形成装置1は、給紙モータ23および給紙ローラ22の動作の理論値からのずれによらず、実際の搬送量に応じて正確に給紙ローラ22を停止できる。
【0089】
なお、本実施の形態では、画像形成装置1をインクジェットプリンタとして説明したが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成装置
2 給紙部
3 画像形成部
4 制御部
21 給紙台
22 給紙ローラ
23 給紙モータ
24 さばき板
25 レジストローラ
26 レジストモータ
27 エンコーダ
28 用紙センサ
31 ベルト搬送部
32 ベルトモータ
33 インクジェットヘッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を画像形成部へ搬送するレジストローラと、
前記レジストローラへ用紙を搬送する給紙ローラと、
用紙を第1の搬送速度で搬送した後、前記第1の搬送速度より小さい第2の搬送速度に減速して搬送するよう前記給紙ローラを制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記給紙ローラが用紙1枚あたりの所定駆動時間で所定搬送量を搬送できる前記第1および第2の搬送速度を予め設定し、前記第2の搬送速度で用紙が前記レジストローラに突き当たるよう前記第1の搬送速度から前記第2の搬送速度への減速開始時点を決定することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記給紙ローラと前記レジストローラとの間に配置され、用紙を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1の搬送速度で搬送される用紙の先端が前記検出部で検出された検出時点に基づいて、前記減速開始時点を決定することを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記給紙ローラが搬送した用紙の搬送量を示す情報を取得する搬送量取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記検出時点から前記搬送量取得部で取得された情報が示す前記給紙ローラの搬送量が所定値になった時点で、前記第2の搬送速度からの前記給紙ローラの搬送速度の減速を開始させ、前記給紙ローラを停止させることを特徴とする請求項2に記載の給紙装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−218836(P2012−218836A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83728(P2011−83728)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】