説明

給紙装置

【課題】 ノイズ検出用受信素子を追加することなく、超音波式重送判定時のノイズの影響を軽減する。
【解決手段】 超音波発信素子1は、給紙シートの搬送路付近に設けられ、所定の周波数の超音波を搬送路に向けて発信し、超音波受信素子2は、給紙シートの搬送路付近に設けられ、超音波発信素子1から発信された超音波を受信する。装置内には、その超音波の所定の周波数と略同一の周波数、整数倍すると超音波の周波数と略同一になる周波数、またはその超音波の周波数の整数倍の周波数と略同一の周波数で動作する内部デバイス9が存在し、CPU8は、超音波発信素子1から超音波が発信されている期間における内部デバイス9の動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波式の重送検知では、超音波発信素子が、給紙シートの搬送路を挟んで配置された超音波受信素子へ超音波を発信し、超音波受信素子による超音波の検出結果に基づいて給紙シートの重送が検知される。給紙シートが1枚である場合より、給紙シートが複数枚である場合(つまり重送時)のほうが超音波の減衰量が多くなるため、超音波受信素子により検出される超音波の強度に基づいて、給紙シートの重送が検知される。
【0003】
ある装置では、受信素子を2つ設け、一方の受信素子で電磁波ノイズや振動などのノイズを検出し、そのノイズレベルが低いときに、他方の受信素子により受信される超音波の強度に基づいて重送判定を行う(例えば特許文献1参照)。あるいは、受信素子を2つ設け、一方の受信素子で電磁波ノイズや振動などのノイズを検出し、ノイズレベルに応じて閾値を変更し、その閾値と他方の受信素子により受信される超音波の強度とを比較して重送判定を行う(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−15121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の装置では、ノイズ検出用受信素子を追加する必要があり、装置のコストが増加してしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ノイズ検出用受信素子を追加することなくノイズの影響を軽減する給紙装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0008】
本発明に係る給紙装置は、給紙シートの搬送路付近に設けられ、所定の周波数の超音波を搬送路に向けて発信する超音波発信素子と、給紙シートの搬送路付近に設けられ、超音波発信素子から発信された超音波を受信する超音波受信素子と、その超音波の所定の周波数と略同一の周波数、整数倍すると超音波の周波数と略同一になる周波数、またはその超音波の周波数の整数倍の周波数と略同一の周波数で動作する内部デバイスと、超音波発信素子から超音波が発信されている期間における内部デバイスの動作を停止させる制御部とを備える。
【0009】
これにより、重送誤検知の要因となる特定の内部デバイスからのノイズの影響を軽減することができる。したがって、ノイズ検出用受信素子を追加することなく(つまり、装置のコストの増加を抑えつつ)ノイズの影響が軽減される。
【0010】
また、本発明に係る給紙装置は、上記の給紙装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、内部デバイスは、クロック信号に従って動作し、制御部は、超音波発信素子から超音波が発信されている期間における、内部デバイスへのクロック信号の供給を停止する。
【0011】
また、本発明に係る給紙装置は、上記の給紙装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、制御部は、超音波発信素子から超音波が発信されている期間における、内部デバイスへの電源電力の供給を停止する。
【0012】
また、本発明に係る給紙装置は、上記の給紙装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、内部デバイスは、給紙シートの搬送路に設けられ、所定の周波数で測定光を出射して測定光に対応する反射光を検出して給紙シートの搬送タイミングを検知するセンサーである。
【0013】
また、本発明に係る給紙装置は、上記の給紙装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、給紙装置は、超音波受信素子の出力のうち上述の所定の周波数と同一の周波数成分を透過するバンドパスフィルターと、バンドパスフィルターの出力に基づいて、給紙シートの重送の有無を判定する判定部とをさらに備える。
【0014】
これにより、超音波の周波数以外の周波数のノイズの影響を軽減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、給紙装置において、ノイズ検出用受信素子を追加することなくノイズの影響が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
実施の形態1.
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る給紙装置の構成を示すブロック図である。なお、図1では、給紙装置のうち、重送検知に関連する部分が描画されている。実施の形態に係る給紙装置は、例えば、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などに内蔵される。
【0020】
この給紙装置は、超音波発信素子1、超音波受信素子2、発振回路3、バンドバスフィルター4、増幅回路5、積分回路6、A/D(Analog to Digital)変換回路7、CPU(Central Processing Unit)8、および内部デバイス9を有する。
【0021】
超音波発信素子1は、印刷用紙などの給紙シートの搬送路付近に設けられ、所定の周波数(例えば300kHz)の超音波をその搬送路に向けて発信する。超音波受信素子2は、給紙シートの搬送路に設けられ、超音波発信素子1から発信された超音波を受信する。
【0022】
発振回路3は、超音波発信素子1の駆動信号を発振し、超音波発信素子1に印加する。
【0023】
バンドバスフィルター4は、超音波受信素子1の出力信号のうち、超音波発信素子1により発信される超音波の所定の周波数と同一の周波数成分を透過する。
【0024】
増幅回路5は、バンドバスフィルター4の出力信号を増幅する回路であり、積分回路6は、増幅されたバンドパスフィルター4の出力信号を積分する回路である。A/D変換回路7は、積分回路6の出力信号をデジタル信号に変換し、CPU8に供給する。
【0025】
CPU8は、図示せぬ記録媒体(ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリーなど)に記録されたプログラムに従って動作し、発振回路3、内部デバイス9などの内部回路を制御する。
【0026】
CPU8は、発振回路3にクロック信号を供給して発振回路3を動作させ、超音波発信素子1から超音波を発信させる。したがって、CPU8は、発振回路3を介して、超音波発信素子1からの超音波発信のオン/オフ制御を行える。また、この実施の形態では、CPU8は、内部デバイス9にクロック信号を供給して内部デバイス9を動作させる。したがって、CPU8は、内部デバイス9の動作のオン/オフ制御を行える。
【0027】
CPU8は、超音波発信素子1から超音波が発信されている期間における内部デバイス9の動作を一時的に停止させる。この実施の形態1では、CPU8は、内部デバイス9へのクロック信号の供給を停止することで、内部デバイス9の動作を停止させる。
【0028】
また、CPU8は、A/D変換回路7の出力信号に基づいて重送の有無を判定する。したがって、増幅回路5、積分回路6、A/D変換回路7、およびCPU8が、バンドパスフィルター4の出力に基づいて、給紙シートの重送の有無を判定する判定部として機能する。
【0029】
内部デバイス9は、当該給紙装置が内蔵される装置の内部に存在し、超音波発信素子1により発信される超音波の所定の周波数と略同一の周波数、整数倍すると超音波の周波数と略同一になる周波数、またはその超音波の周波数の整数倍の周波数と略同一の周波数で動作する。
【0030】
例えば、内部デバイス9は、給紙シートの搬送路に設けられ、所定の周波数で測定光を出射して測定光に対応する反射光を検出して給紙シートの搬送タイミングを検知する反射型のフォトセンサーである。
【0031】
内部デバイス9は、超音波発信素子1、超音波受信素子2、発振回路3、バンドバスフィルター4、増幅回路5、積分回路6、A/D変換回路7、CPU8などと同一の電源を使用するため、内部デバイス9の動作周波数と同一の周波数(あるいは、その同一の周波数およびその周波数の高調波周波数)で電源電圧が微小変動し、それらの素子や回路におけるノイズの原因となる。その他、内部デバイス9の種類によっては、内部デバイス9の動作周波数と同一の周波数(あるいは、その同一の周波数およびその周波数の高調波周波数)で電磁波や振動が発生して、それらの素子や回路におけるノイズの原因となる。これらのノイズは、超音波の周波数と同一の周波数成分を有するため、バンドパスフィルター4などで除去されずに重送誤検知の原因となる。
【0032】
次に、上記給紙装置における重送判定の動作について説明する。
【0033】
CPU8は、図示せぬ搬送タイミングのセンサーの出力信号などを参照して、給紙シートが搬送路内の所定の位置に到達すると、重送判定を開始する。
【0034】
CPU8は、発振回路3へのクロック信号の供給を開始するとともに、内部デバイス9へのクロック信号の供給を停止する。
【0035】
発振回路3は、クロック信号が供給されると、所定の周波数の駆動信号を生成して超音波発信素子1に印加する。これにより、超音波発信素子1から所定の周波数の超音波が送出される。この超音波は、給紙シートで減衰しながら透過し、超音波受信素子2へ到達する。
【0036】
超音波受信素子2は、その超音波を受信し、受信した超音波の強度に応じた振幅の信号を出力する。バンドパスフィルター4は、超音波受信素子2の出力信号のうち、上述の超音波と同一の周波数成分以外の周波数成分を減衰させた信号を出力し、増幅回路5は、その信号を増幅して、積分回路6に出力する。積分回路6は、その信号を積分していき、各時点での積分値を示す信号をA/D変換回路7に出力する。
【0037】
CPU8は、A/D変換回路7の出力信号の波形(つまり、バンドパスフィルター4の出力信号の積分の時間的変化)から、重送しているか否かを判定する。
【0038】
CPU8は、この判定が終了すると、発振回路3へのクロック信号の供給を停止するとともに、内部デバイス9へのクロック信号の供給を再開する。
【0039】
以上のように、上記実施の形態1によれば、超音波発信素子1は、給紙シートの搬送路付近に設けられ、所定の周波数の超音波を搬送路に向けて発信し、超音波受信素子2は、給紙シートの搬送路付近に設けられ、超音波発信素子1から発信された超音波を受信する。装置内には、その超音波の所定の周波数と略同一の周波数、または整数倍すると超音波の周波数と略同一になる周波数で動作する内部デバイス9が存在し、CPU8は、超音波発信素子1から超音波が発信されている期間における内部デバイス9の動作を停止させる。
【0040】
これにより、重送誤検知の要因となる特定の内部デバイス9からのノイズの影響を軽減することができる。したがって、ノイズ検出用受信素子を追加することなく(つまり、装置のコストの増加を抑えつつ)ノイズの影響が軽減される。
【0041】
実施の形態2.
【0042】
本発明の実施の形態2に係る給紙装置では、CPU8は、超音波発信素子1から超音波が発信されている期間における、内部デバイス9への電源電力の供給を停止して、その期間における内部デバイス9の動作を停止させる。なお、実施の形態2に係る給紙装置のそれ以外の構成および動作については、実施の形態1のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0043】
なお、上述の各実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施の形態1,2において、その他の内部デバイス9として、装置内のファンおよびその駆動回路が考えられる。その場合、CPU8は、同様に、重送判定中の期間、ファンおよびその駆動回路の動作を停止させる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば、プリンター、スキャナー、コピー機、ファクシミリ機、複合機などに適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 超音波発信素子
2 超音波受信素子
4 バンドパスフィルター
5 増幅回路(判定部の一例の一部)
6 積分回路(判定部の一例の一部)
7 A/D変換回路(判定部の一例の一部)
8 CPU(制御部,判定部の一例の一部)
9 内部デバイス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙シートの重送を検知する給紙装置において、
前記給紙シートの搬送路付近に設けられ、所定の周波数の超音波を前記搬送路に向けて発信する超音波発信素子と、
前記給紙シートの搬送路付近に設けられ、前記超音波発信素子から発信された超音波を受信する超音波受信素子と、
前記超音波の所定の周波数と略同一の周波数、整数倍すると前記超音波の周波数と略同一になる周波数、またはその超音波の周波数の整数倍の周波数と略同一の周波数で動作する内部デバイスと、
前記超音波発信素子から前記超音波が発信されている期間における前記内部デバイスの動作を停止させる制御部と、
を備えることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記内部デバイスは、クロック信号に従って動作し、
前記制御部は、前記超音波発信素子から前記超音波が発信されている期間における、前記内部デバイスへの前記クロック信号の供給を停止すること、
を特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記超音波発信素子から前記超音波が発信されている期間における、前記内部デバイスへの電源電力の供給を停止することを特徴とする請求項1記載の給紙装置。
【請求項4】
前記内部デバイスは、前記給紙シートの搬送路に設けられ、所定の周波数で測定光を出射して前記測定光に対応する反射光を検出して前記給紙シートの搬送タイミングを検知するセンサーであることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の給紙装置。
【請求項5】
前記超音波受信素子の出力のうち前記所定の周波数と同一の周波数成分を透過するバンドパスフィルターと、前記バンドパスフィルターの出力に基づいて、前記給紙シートの重送の有無を判定する判定部とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の給紙装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−49513(P2013−49513A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188102(P2011−188102)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】