給電回路
【課題】使用環境などからの影響を受けにくく、放射特性の変動を抑制することができ、広帯域での使用が可能な給電回路を得る。
【解決手段】給電端子42a,42bと放射板との間に配置され、放射板に送信信号を供給する、及び/又は放射板から受信信号を供給される給電回路。この給電回路は、インダクタンス素子L1,L2を含む共振回路及び/又は整合回路を有している。インダクタンス素子L1,L2は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されている。
【解決手段】給電端子42a,42bと放射板との間に配置され、放射板に送信信号を供給する、及び/又は放射板から受信信号を供給される給電回路。この給電回路は、インダクタンス素子L1,L2を含む共振回路及び/又は整合回路を有している。インダクタンス素子L1,L2は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電回路、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICデバイスに搭載される給電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品に付された所定の情報を記憶した無線タグ(無線ICデバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。この種のRFIDシステムに使用される無線タグとして、特許文献1には、フレキシブルな基板上にアンテナと整合回路を形成し、それらと電気的に導通するようにICチップを配置したものが提案されている。ここでは基板上にループ状のコイル(インダクタ)を形成して整合回路を構成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の無線タグでは、ICチップをアンテナとのインピーダンス整合を行う整合回路が、フレキシブル基板上に露出しており、無線タグを貼り付ける物品の誘電率や物品の周囲の状況により、ループ状コイルのインダクタンス値が変動し、整合回路の特性も変動するという不具合を有している。この変動によって、ICチップをアンテナとの間での信号の伝達に損失が生じ、アンテナの放射特性が低下するという問題点が発生する。また、無線タグの使用周波数はアンテナ長で決定され、アンテナを貼り付ける物品の誘電率などに応じてその都度アンテナを設計する必要があり、極めて煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−80367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、使用環境などからの影響を受けにくく、放射特性の変動を抑制することができ、広帯域での使用が可能な給電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態である給電回路は、
複数の給電端子と放射板との間に配置され、前記放射板に送信信号を供給する及び/又は、前記放射板から受信信号を供給される給電回路であって、
少なくとも二つのインダクタンス素子を含み、
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されていること、
を特徴とする。
【0007】
前記給電回路においては、給電回路自身で信号の周波数を設定するため、本給電回路を搭載した無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板などの設計変更をする必要がなくなる。特に、給電回路を構成する少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子で発生する磁界が相殺され、Q値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。また、磁界の方向が互いに逆方向を向くので、一方の磁界が上向きのとき、他方の磁界は下向きになる。これは、交流電流源のプラスとマイナスに相当し、磁界エネルギーを通して放射板にほぼ100%のエネルギー伝達を可能にする。
【0008】
放射板から放射する送信信号の周波数及び給電端子に供給する受信信号の周波数は、給電回路の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路のサイズ、形状、給電回路と放射板との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路において送受信信号の周波数が決まるため、放射板の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給電回路が搭載された無線ICデバイスが貼り付けられる物品などによって周波数や放射特性が影響を受けることを効果的に防止できる。しかも、給電回路を構成する少なくとも二つのインダクタンス素子をそれぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成したため、発生する磁界が相殺され、共振周波数付近で広帯域化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図2】第1実施例である無線ICデバイスを構成する放射基板を示し、(A)は平面図、(B)は給電回路基板を貼着した状態を示す平面図。
【図3】第1実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路基板上に無線ICチップを搭載した状態を示す斜視図。
【図4】第1実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図5】第2実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図6】第3実施例である無線ICデバイスの等価回路図。
【図7】第3実施例である無線ICデバイスの放射基板を示し、(A)は平面図、(B)は裏面図、(C)は裏面に設けた磁性体の平面図。
【図8】第3実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図9】第4実施例である無線ICデバイスを示す斜視図。
【図10】第4実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図11】第5実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図12】第6実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図13】第7実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図14】第8実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図15】図14に示した給電回路基板の等価回路図。
【図16】第8実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の他の積層構造を示す斜視図。
【図17】図16に示した給電回路基板の等価回路図。
【図18】第9実施例である無線ICデバイスを示す斜視図。
【図19】第9実施例である無線ICデバイスを金属缶に取り付けた状態を示す斜視図。
【図20】図19の部分拡大断面図。
【図21】第10実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図22】第10実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の作製工程を示す説明図。
【図23】図22に示した作製工程途中を示す裏面図。
【図24】第11実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図25】第11実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の作製工程を示す説明図。
【図26】図25に示した作製工程途中を示す裏面図。
【図27】(A)は第12実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図、(B)は第13実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図。
【図28】(A)は第14実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図、(B)は第15実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図。
【図29】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスを示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C),(D)は裏面図である。
【図30】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図31】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスを示し、(A)は放射基板上に給電回路基板を搭載した状態の平面図、(B)は放射基板の第1例を示す平面図、(C)は放射基板の第2例を示す平面図、(D)は放射基板の裏面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る給電回路の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施例、図1〜図4参照)
第1実施例である無線ICデバイスは、図3に示す、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ10と、この無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20と、図2(A)又は図2(B)に示す放射基板30とで構成されている。
【0013】
給電回路基板20は、図1に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合(相互インダクタンスMで示す)されているインダクタンス素子L1,L2を含む共振回路・整合回路を有する給電回路21(詳細は図4を参照して以下に説明する)を備えている。
【0014】
無線ICチップ10は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、裏面に図示しない一対の入出力端子電極及び一対の実装用端子電極が設けられている。図3に示すように、入出力端子電極は給電回路基板20上に形成した給電端子電極42a,42bに、実装用端子電極は実装電極43a,43bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。
【0015】
放射基板30は、図2に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板31上の周縁部に非磁性金属材料からなるループ状の放射板32が形成され、一方の端部32aと他方の端部32bに前記給電回路基板20が接着剤を介して貼着されている。端部32a,32bはそれぞれ給電回路21のインダクタンス素子L1,L2のいずれかと結合している。また、放射板32のループの内側には磁性体33が配置されている。なお、図2(B)は、放射基板30の放射板32上に、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20を貼着した状態を示している。
【0016】
給電回路21に含まれるインダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32の端部32a,32bと電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0017】
従って、給電回路21は、無線ICチップ10から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板32に伝達し、かつ、放射板32で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ10に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板32で受信した信号によって無線ICチップ10が動作され、該無線ICチップ10からの応答信号が放射板32から外部に放射される。
【0018】
以上のごとく、本無線ICデバイスにあっては、給電回路基板20に設けた給電回路21で信号の周波数を設定するため、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板32などの設計変更をする必要がなくなる。そして、放射板32から放射する送信信号の周波数及び無線ICチップ10に供給する受信信号の周波数は、給電回路基板20における給電回路21の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路21のサイズ、形状、給電回路と放射板との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路基板20において送受信信号の周波数が決まるため、放射板32の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【0019】
ここで、給電回路基板20の構成について図4を参照して説明する。給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート41a〜41hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート41aには、給電端子電極42a,42b、実装電極43a,43b、ビアホール導体44a,44b,45a,45bが形成されている。2層目〜8層目のシート41b〜41hには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極46a,46bが形成され、必要に応じてビアホール導体47a,47b,48a,48bが形成されている。
【0020】
以上のシート41a〜41hを積層することにより、配線電極46aがビアホール導体47aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極46bがビアホール導体47bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、配線電極46a,46bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0021】
シート41b上の配線電極46aの端部46a−1はビアホール導体45aを介して給電端子電極42aに接続され、シート41h上の配線電極46aの端部46a−2はビアホール導体48a,45bを介して給電端子電極42bに接続される。シート41b上の配線電極46bの端部46b−1はビアホール導体44bを介して給電端子電極42bに接続され、シート41h上の配線電極46bの端部46b−2はビアホール導体48b,44aを介して給電端子電極42aに接続される。
【0022】
以上の給電回路21において、インダクタンス素子L1,L2は互いに略平行な巻回軸上にそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界が相殺される。磁界が相殺されるため、所望のインダクタンス値を得るためには配線電極46a,46bをある程度長くする必要がある。これにてQ値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。
【0023】
インダクタンス素子L1,L2は、給電回路基板20を平面透視したときに、左右の異なる位置に形成されている。また、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界はそれぞれ逆向きになる。これにて、給電回路21をループ状の放射板32の端部32a,32bに結合させたとき、端部32a,32bには逆向きの電流が励起され、ループ状の放射板32で信号を送受信することができる。なお、インダクタンス素子L1,L2をそれぞれ二つの異なる放射板に結合させてもよい。
【0024】
放射板32は一方の端部32aと他方の端部32bを有するループ状電極で構成され、各端部32a,32bはそれぞれ異なるインダクタンス素子L1,L2と結合している。そして、ループ状電極のループの内側に例えばフェライトからなる磁性体33が配置されている。この磁性体33にてループ状電極からなる放射板32で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。なお、磁性体33は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0025】
給電回路基板20を磁性体材料から形成し、磁性体内にインダクタンス素子L1,L2を形成することにより、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。しかも、磁性体シートの加工ばらつきや透磁率のばらつきが生じても、無線ICチップ10とのインピーダンスのばらつきを吸収できる。磁性体の透磁率μは400程度が好ましい。
【0026】
また、二つのインダクタンス素子L1,L2のインダクタンス値を実質的に同じ値に設定することで、各インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界の大きさを等しくすることができる。これにより、二つのインダクタンス素子L1,L2での磁界の相殺量を同じにすることができ、共振周波数付近での広帯域化が可能になる。
【0027】
なお、給電回路基板20は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートを積層した基板であってもよい。特に、インダクタンス素子L1,L2が給電回路基板20に内蔵されることで、給電回路21が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0028】
また、給電回路基板20は放射板32の端部32a,32b上に貼着されている必要はなく、端部32a,32bに近接して配置されていてもよい。
【0029】
(第2実施例、図5参照)
第2実施例である無線ICデバイスは、基本的には前記第1実施例と同様の構成を備え、図5に示すように、給電回路基板20の最下層に設けたシート41iの裏面に、給電回路基板20を平面透視したときに、インダクタンス素子L1,L2の外形と同じ又は小さい平面電極49a,49bを設けた点が第1実施例と異なっている。
【0030】
そして、インダクタンス素子L1,L2を形成する配線電極46a,46bの端部46a−2,46b−2にはそれぞれビアホール導体が配置され、このビアホール導体は給電端子電極42a,42bと接続されていることは勿論、シート41iに形成したビアホール導体48c,48dを介して平面電極49a,49bと接続されている。このような平面電極49a,49bを設けることで給電回路21と放射板32との結合のばらつきを抑えることができる。
【0031】
なお、平面電極49a,49bは配線電極46a,46bと電気的に接続されていなくてもよく、あるいは、放射板32と電気的に接続されていてもよい。
【0032】
(第3実施例、図6〜図8参照)
第3実施例である無線ICデバイスは、図7(A)に示すように、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20を放射基板50の表面に形成した電極53の端部53b上及び電極54上に接着剤を介して貼着したものである。無線ICチップ10は第1実施例と同じ構成を有している。
【0033】
放射基板50は、図7(A)に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板51の表面に放射板52として機能するスパイラル状の電極53及び電極54を形成し、図7(B)に示すように、裏面に放射板52として機能するスパイラル状の電極55を設けたものである。
【0034】
電極53の端部53aと電極55の端部55aとはビアホール導体56aにて電気的に接続され、電極55の端部55bと電極54とはビアホール導体56bにて電気的に接続されている。また、基板50の裏面には、例えばフェライトからなる磁性体57が電極55の外形の内側であって電極55上に形成されている。なお、磁性体57は磁性金属材料から形成してもよく、この場合は電極55とは電気的に絶縁する必要がある。
【0035】
給電回路基板20は、図6に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有するインダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4はそれぞれ同相で磁気結合し(相互インダクタンスM1)、インダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4は互いに逆相で磁気結合している(相互インダクタンスM2で示す)。インダクタンス素子L1,L2,L3,L4を含む共振回路・整合回路を有する給電回路21は、以下に図8を参照して説明する。
【0036】
給電回路21に含まれるインダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4は、互いに逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、ループ状をなす放射板52の電極端部53bと電極54と電磁界結合している。また、給電回路21の給電端子電極62a,62bは無線ICチップ10の入出力端子電極(図示せず)と電気的に接続され、無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板52のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0037】
本第3実施例では、ループ状の放射板52の電極54にプラス極性の信号が加わった場合、電極端部53bにはマイナス極性の信号が加わる。これにより、プラス(電極54)からマイナス(電極端部53b)方向に電流が流れ、放射板52と給電回路21とで信号の伝達が行われる。
【0038】
従って、給電回路21は、前記第1実施例と同様に、無線ICチップ10から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板52に伝達し、かつ、放射板52で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ10に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板52で受信した信号によって無線ICチップ10が動作され、該無線ICチップ10からの応答信号が放射板52から外部に放射される。このように、本第3実施例の作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0039】
ここで、給電回路基板20の構成について図8を参照して説明する。給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート61a〜61hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート61aには、給電端子電極62a,62b、実装電極63a,63b、ビアホール導体64a,64b,65a,65bが形成されている。2層目〜8層目のシート61b〜61hには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2,L3,L4を構成する配線電極66a,66b,66c,66dが形成され、必要に応じてビアホール導体67a,67b,67c,67d,68a,68bが形成されている。
【0040】
以上のシート61a〜61hを積層することにより、配線電極66aがビアホール導体67aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極66bがビアホール導体67bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。さらに、配線電極66cがビアホール導体67cにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L3が形成され、配線電極66dがビアホール導体67dにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L4が形成される。また、配線電極66a,66b,66c,66dの線間にキャパシタンスが形成される。
【0041】
シート61b上の配線電極66a,66bが一体化された端部66−1はビアホール導体65aを介して給電端子電極62aに接続され、シート41h上の配線電極66a,66bが一体化された端部66−2はビアホール導体68a,65bを介して給電端子電極62bに接続される。シート61b上の配線電極66c,66dが一体化された端部66−3はビアホール導体64bを介して給電端子電極62bに接続され、シート61h上の配線電極66c,66dが一体化された66−4はビアホール導体68b,64aを介して給電端子電極62aに接続される。
【0042】
以上の構成からなる給電回路21の作用は、基本的には前記第1実施例で説明した給電回路21と同様である。特に、インダクタンス素子L1,L2とL3,L4はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極66a,66bと66c,66dとで形成されているため、配線電極の長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0043】
また、放射板52は一方の端部電極53aと他方の端部電極54を有するループ状電極で構成され、各端部電極53a,54はそれぞれ異なるインダクタンス素子L1,L2とL3,L4と結合している。そして、ループ状電極のループの外形より内側に磁性体57が配置されているため、ループ状電極からなる放射板52で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。なお、磁性体57は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0044】
(第4実施例、図9及び図10参照)
第4実施例である無線ICデバイスは、図9に示すように、無線ICチップ10と、給電回路基板20と、放射板132を形成した放射基板130とから構成されている。
【0045】
無線ICチップ10は前記第1実施例と同様の構成を備えている。給電回路基板20は、二つのインダクタンス素子L1,L2を内蔵したもので、表面に設けた給電端子電極72a,72bと実装電極73a,73bとが無線ICチップ10の入出力端子電極と実装用端子電極(ともに図示せず)に電気的に接続されている。
【0046】
放射基板130は、セラミックからなる基板131の表面の半分の領域に放射板132を螺旋状に形成するとともに、残りの半分の領域に補助電極133を螺旋状に形成したものである。放射板132上には無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20が接着剤を介して貼着される。また、補助電極133は中央部に位置する端部133aがビアホール導体134を介して基板131の裏面に形成した電極135と接続され、該電極135の端部135aは放射板132の中央部に位置する端部132aと容量により結合している。なお、電極135は基板131の内部に形成されていてもよい。
【0047】
給電回路基板20は、図10に示すように、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート71a〜71eを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート71aには、給電端子電極72a,72b、実装電極73a,73b、ビアホール導体74a,74bが形成されている。2層目〜4層目のシート71b〜71dには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極75a,75b、ビアホール導体76a,76b,77が形成されている。最下層のシート71eには、配線電極75が形成されている。配線電極75a,75は各シート71b〜71eの周縁部に露出した状態で形成されている。
【0048】
以上のシート71a〜71eを積層することにより、配線電極75aがビアホール導体76aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極75bがビアホール導体76bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。配線電極75a,75bはシート71b上で分岐し、かつ、最下層のシート71e上の配線電極75で一体化されている。また、配線電極75a,75bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0049】
シート71b上の配線電極75a,75bが一体化された端部75cはビアホール導体74bを介して給電端子電極72bに接続され、シート71e上の配線電極75の端部75dは1層上のシート71dのビアホール導体76a,76bを介して配線電極75a,75bと接続されており、かつ、配線電極75の端部75eはビアホール導体77,74aを介して給電端子電極72aに接続されている。
【0050】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板132と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板132のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0051】
従って、本第4実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、第4実施例では、インダクタンス素子L1,L2の一部(配線電極75a,75)が給電回路基板20の側面に露出されているため、該露出部分が放射板としても機能する。また、露出したインダクタンス素子L1,L2の一部が給電回路基板20の側面で放射板132及び補助電極133と電磁界結合するので放射特性が向上する。補助電極133の外形寸法は給電回路基板20の外形寸法と同じか又はそれ以上の大きさであり、給電回路基板20の裏面及び側面から放射される磁界と結合しやすくなっている。
【0052】
(第5実施例、図11参照)
第5実施例である無線ICデバイスは、図11に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0053】
給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート81a〜81eを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート81aには、給電端子電極82a,82b、実装電極83a,83b、ビアホール導体84a,84bが形成されている。2層目のシート81bには、配線電極85、ビアホール導体86a,86b,87a,87bが形成されている。3層目のシート81cには、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極85a,85b、ビアホール導体86a,86b,87a,87bが形成されている。4層目のシート81dには、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極85a,85bが形成されている。最下層のシート81eの裏面には、平面電極88a,88bが形成されている。
【0054】
以上のシート81a〜81eを積層することにより、配線電極85aがビアホール導体86aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極85bがビアホール導体86bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、配線電極85a,85bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0055】
配線電極85a,85bはシート81b上で配線電極85にて一体化され、シート81d上の配線電極85aの端部85a'はビアホール導体87a,84aを介して給電端子電極82aに接続され、配線電極85bの端部85b'はビアホール導体87b,84bを介して給電端子電極82bに接続されている。
【0056】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0057】
従って、本第5実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路基板20の裏面に平面電極88a,88bを設けることによって給電回路21と放射板32との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極88a,88bは必ずしも必要なものではない。
【0058】
(第6実施例、図12参照)
第6実施例である無線ICデバイスは、図12に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0059】
また、給電回路基板20の構成は、前記第1実施例に示した給電回路基板20と基本的に同じであり、螺旋状に接続された配線電極101a,101bにてインダクタンス素子L1,L2が形成されている。このインダクタンス素子L1,L2は互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合されている。
【0060】
さらに、インダクタンス素子L1,L2の直下には平面電極102a,102bが配置され、螺旋状に接続された配線電極103にて磁界受け用コイル104が形成されている。磁界受け用コイル104は、平面電極102a,102bに対して直列に接続され、給電回路21と放射板32(図2参照)とを結合する補助的な放射機能を有している。
【0061】
本第6実施例におけるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。従って、本第6実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0062】
(第7実施例、図13参照)
第7実施例である無線ICデバイスは、図13に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0063】
給電回路基板20は、互いに隣接して螺旋状に接続された配線電極111a,111bにてインダクタンス素子L1,L2が形成されている。このインダクタンス素子L1,L2は互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合されている。
【0064】
さらに、インダクタンス素子L1,L2の直下には平面電極112a,112bが配置され、螺旋状に接続された配線電極113にて磁界受け用コイル114が形成されている。磁界受け用コイル114は、平面電極112a,112bに対して直列に接続され、給電回路21と放射板32(図2参照)とを結合する補助的な放射機能を有している。
【0065】
本第7実施例におけるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。従って、本第7実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0066】
特に、第7実施例では、インダクタンス素子L1,L2がそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極111a,111bで形成されているため、配線電極111a,111bの長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0067】
(第8実施例、図14〜図17参照)
第8実施例である無線ICデバイスは、図14に示す給電回路基板20を備えたもので、この給電回路21は前記第5実施例(図11参照)と基本的に同じである。即ち、シート121a上には給電端子電極122a,122b、実装電極123a,123bが形成され、シート121b〜121g上には配線電極125a,125bが形成されている。さらに、シート121h上には平面電極128a,128bが形成されている。
【0068】
インダクタンス素子L1,L2は配線電極125a,125bをそれぞれ螺旋状に接続することにより形成され、シート121b上の配線電極125にて一体化されている。シート121g上の配線電極125aの端部125a'が給電端子電極122aに接続され、シート121g上の配線電極125bの端部125b'が給電端子電極122bに接続されている。
【0069】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図15に示す等価回路であり、無線ICチップ10に対して直列に接続されたインダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板52(放射板32であってもよい)と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32,52のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0070】
従って、本第8実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路基板20の裏面に平面電極128a,128bを設けることによって給電回路21と放射板32,52との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極128a,128bは必ずしも必要なものではない。
【0071】
さらに、第8実施例においては、インダクタンス素子L1,L2の端部が給電端子電極122a,122bに接続される位置を変更し、前記端部125a',125b'を電気的に開放して補助整合回路を構成することができる。
【0072】
例えば、図16に示すように、シート121e上の配線電極125a,125bに引出し電極125a",125b"を形成して給電端子電極122a,122bに接続する。そして、シート121g上の配線電極125a,125bの端部125a',125b'を電気的に開放し、シート121f,121g上の配線電極125a,125bにて補助整合回路129を形成する。給電端子電極122a,122bと接続する引出し電極125a",125b"は、シート121c〜121f上に設けたいずれの配線電極125a,125bであってもよい。その等価回路を図17に示す。このような補助整合回路129を形成することによって、整合状態の微調整を行うことができる。
【0073】
(第9実施例、図18〜図20参照)
第9実施例である無線ICデバイスは、図18に示すように、無線ICチップ10を備えた給電回路基板20を放射基板30上に貼着したもので、図19に示すように、金属缶140の表面又は裏面の凹所141に貼着されている。金属缶140は、例えば、スチール材やアルミ材などの金属材からなる。給電回路基板20は前記第1実施例に示したものと同じであり、図4に示した給電回路21を有している。放射基板30も図2に示したフィルム基板31上に端部32a,32bを有するループ状の放射板32を形成したものである。但し、図2に示したフィルム基板31と放射板32とが四角形状であるのに対して、本第9実施例では図18に示すように楕円形状である。
【0074】
そして、図20に示すように、凹所141の底部に両面に接着剤を有する台紙142を介して、無線ICチップ10及び給電回路基板20を備えた放射基板30が貼着されている。凹所141の深さH1は約5mm、凹所141の底部から放射板32までの高さH2は2〜3mmであり、無線ICチップ10が凹所141から突出しないことが望ましい。
【0075】
本第9実施例の作用効果は第1実施例と同様である。ところで、信号の送受信時にループ状の放射板32の周囲には磁界φ(図20参照)が発生する。この磁界は金属を通過しないので、金属とループ状放射板32とを平行にかつ近接させて配置すると、放射板32で発生する磁界が金属によって妨げられ、外部へ十分に放射されず無線ICデバイスとしての動作が不十分になる。そこで、本第9実施例のように、放射板金属缶140の凹所141の底部から台紙142などを介して数mm程度離して放射板32を配置することで、放射板32から磁界φを放射させて無線ICデバイスとして機能させることができる。
【0076】
なお、給電回路基板20を備えた放射基板30を台紙142に埋め込むように配置しても構わない。さらに、放射基板30を台紙142と同程度の厚みにし、その放射基板30に形成した凹部に給電回路基板20を埋め込むように配置しても構わない。また、無線ICチップ10を給電回路基板20と放射基板30とに挟み込まれるように配置しても構わない。このような構造にすることにより、無線ICチップ及び給電回路基板20を落下・衝撃などから保護することができ、無線ICデバイスの機械的強度を向上させることができる。なお、本第9実施例においては金属缶140へ無線ICデバイスを貼着した例を示したが、特に金属缶に限定されるものではなく、金属製の物品であれば金属ケースあるいは回路基板上のグランド電極など何でも構わない。
【0077】
(第10実施例、図21〜図23参照)
以上の各実施例は給電回路基板内に共振回路及び/又は整合回路を有する給電回路を設けた給電回路基板を備えている。しかし、給電回路基板を備えることなく、無線ICチップの入出力端子電極が形成された裏面(主面)上に少なくとも二つのインダクタンス素子を含む共振回路及び/又は整合回路を有する給電回路を設けたものであってもよく、以下に第10実施例及び第11実施例としてこのような無線ICデバイスを示す。
【0078】
第10実施例である無線ICデバイスは、図21に等価回路として示す給電回路150を無線ICチップ10の裏面に設けたものである。この給電回路150は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成した二つのインダクタンス素子L1,L2を直列に接続してなる。各インダクタンス素子L1,L2の一端に設けた給電端子電極151a,151bが無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極と電気的に導通している。インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合し、線間浮遊容量とで形成される共振回路とで無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板(例えば、図2に示した放射板32の端部32a,32b)と電磁界結合する。従って、本第10実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0079】
この給電回路150において、インダクタンス素子L1,L2の中間点が仮想グランドとなる。また、給電回路150のインピーダンス値は無線ICチップ10のインピーダンスと複素共役になるように設計される。インダクタンス素子L1,L2は図22に示すように積層状態で形成されるため、放射板までの距離に応じてインダクタンス値が異なる。そこで、無線ICチップ10の裏面に絶縁層159を形成して放射板との距離を固定し、かつ、インダクタンス素子L1,L2を保護している。
【0080】
前記給電回路150は、図22に示す工程によって作製される。まず、図22(a)に示すように、無線ICチップ10の裏面に絶縁層152を入出力端子電極部分を除いて形成する。次に、図22(b)に示すように、電極層153を絶縁層152上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図22(c)参照)。この状態を図23(A)に示す。
【0081】
次に、図22(d)に示すように、電極層153上に絶縁層154を形成する。さらに、図22(e)に示すように、電極層155を絶縁層154上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図22(f)参照)。この状態を図23(B)に示す。さらに、図22(g)に示すように、電極層155上に絶縁層159を形成する。
【0082】
(第11実施例、図24〜図26参照)
第11実施例である無線ICデバイスは、図24に等価回路として示す給電回路150を無線ICチップ10の裏面に設けたものである。この給電回路150は、前記第9実施例で示した等価回路(図21参照)において、インダクタンス素子L1,L2の間にコンデンサCを挿入し、直列共振回路を構成したものである。本第11実施例の作用効果は前記第10実施例と同様である。
【0083】
図24に示す給電回路150は、図25に示す工程によって作製される。まず、図25(a)に示すように、無線ICチップ10の裏面に絶縁層156を入出力端子電極部分を除いて形成する。次に、図25(b)に示すように、電極層157を絶縁層156上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図25(c)参照)。この状態を図26(A)に示し、中央部分に残された電極157aが一方のコンデンサ電極となる。
【0084】
次に、図25(d)に示すように、電極層157上に絶縁層152を形成する。さらに、図25(e)に示すように、電極層153を絶縁層152上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図25(f)参照)。この状態を図26(B)に示す。このとき前記コンデンサ電極157aと対向する電極153a,153bが形成される。
【0085】
さらに、図25(g)に示すように、電極層153上に絶縁層154を形成する。その後は、図22(e),(f),(g)に示したように、電極層155、絶縁層159を形成する。電極層155を形成したときの状態を図26(C)に示す。
【0086】
(第12実施例〜第15実施例、図27〜図31参照)
第12実施例である無線ICデバイスは、図27(A)の等価回路に示すように、互いに逆方向に巻かれた螺旋状に形成されたインダクタンス素子L1,L2を直列に接続した給電回路200を備え、インダクタンス成分L10を有するループ状電極で構成した放射板212の両端部をインダクタンス素子L1,L2の両端部に電気的に導通させたものである。また、給電回路200の両端には前記無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極に接続される給電端子電極201a,201bが形成されている。
【0087】
第13実施例である無線ICデバイスは、図27(B)の等価回路に示すように、インダクタンス素子L1,L2と並列にコンデンサCを設けたもので、他の構成は前記第12実施例と同様である。
【0088】
第14実施例である無線ICデバイスは、図28(A)の等価回路に示すように、互いに逆方向に巻かれた螺旋状に形成されたインダクタンス素子L1,L2を直列に接続した給電回路200を備え、インダクタンス成分L10を有するループ状電極で構成した放射板212の両端部に設けた螺旋状のインダクタンス成分L11,L12を前記インダクタンス素子L1,L2と電磁界結合させたものである。また、給電回路200の両端には前記無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極に接続される給電端子電極201a,201bが形成されている。
【0089】
第15実施例である無線ICデバイスは、図28(B)の等価回路に示すように、インダクタンス素子L1,L2と並列にコンデンサCを設けたもので、他の構成は前記第14実施例と同様である。
【0090】
第14実施例及び第15実施例においては、給電回路200のインダクタンス素子L1,L2に対向するように放射板212の両端部に螺旋状の受け電極(インダクタンス成分L11,L12)を設けた。これにて、放射板212のインダクタンス成分L10で発生する磁界の向きを給電回路200で発生する磁界と同じ向きにできるので、給電回路200と放射板212との結合度が向上する。
【0091】
また、放射板212の両端部に設けた受け電極(インダクタンス成分L11,L12)の螺旋状の向きを互いに逆方向にすることによって、エネルギーの受け渡し効率が向上する。さらに、それぞれ結合するように形成されたインダクタンス素子と放射板の螺旋状の端部(L1とL11、L2とL12)とは、給電回路200を平面透視したときに同方向に巻かれるように形成されている。平面透視で対向するように配置された二つの螺旋状電極(L1とL11、L2とL12)に発生する磁界の向きが同じ方向になり、給電回路200と放射板212との磁界結合がより強くなる。
【0092】
さらに、放射板212のループ状電極のインダクタンス値(L10)は給電回路200のインダクタンス素子L1,L2のインダクタンス値よりも大きく設定されている。給電回路200による信号を放射板212で発生した磁界によって送受信できるため、リーダライタとの通信不良の発生を抑制することができる。
【0093】
ここで、前記等価回路で示した第12実施例〜第15実施例の具体的構成について説明する。これらの無線ICデバイスは、図29に示すように、無線ICチップ10と給電回路基板220と放射板212を備えた放射基板210(図31参照)とで構成される。給電回路基板220の表面には給電端子電極201a,201bが形成され(図29(B)参照)、裏面には平面電極202a,202bが設けられている(図29(C)参照)。平面電極202a,202bの作用効果は前記第2実施例(図5参照)で説明したとおりである。なお、図29(D)に示すように、平面電極202a,202bを省略してもよい。
【0094】
給電回路基板220の内部には図30に示す給電回路200が形成されている。給電回路基板220は誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシートを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート231aには給電端子電極201a,201b、実装電極201c,201dが形成されている。2層目のシート231bには接続用電極203a,203bが形成されている。3層目〜7層目のシート231c〜231gにはそれぞれインダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極204a,204bが形成されている。
【0095】
以上のシート231a〜231gを積層することにより、配線電極204aがビアホール導体205aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極204bがビアホール導体205bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、インダクタンス素子L1,L2(配線電極204a,204b)の一方端部どうしはシート231c上で導通接続され、他方端部は接続用電極203a,203bやビアホール導体206a,206bを介して給電端子電極201a,201bに接続される。
【0096】
以上の構成からなる給電回路200の作用効果は前記第1実施例、第2実施例での説明と同様である。特に、図30に示した給電回路200においては、二つのインダクタンス素子L1,L2の一方端部どうしを、積層体内の最上層近傍において導通接続し、他方端部をそれぞれ無線ICチップ10と接続しているため、放射板212とは離れた積層体内の最上層近傍で導通接続され、放射板212と電磁界結合する積層体の下層近傍において互いに逆方に巻かれているため、エネルギーの受け渡し効率が向上する。
【0097】
放射基板210は、図31に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板211の表面に一端212a及び他端212bを有する放射板212を螺旋状に形成するとともに、一端212aに隣接する電極213を形成したもので、電極213は基板211の裏面に形成した接続用電極214及びビアホール導体を介して放射板212の他端212bと電気的に導通されている。そして、放射板212の一端212aと電極213の一端213aに、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板220が結合されている。
【0098】
放射板212の一端212aと電極213の一端213aは、図31(B)に示すように、平面的な形状であってもよく、あるいは、図31(C)に示すように、螺旋状に形成されていてもよい。放射板212の一端212aと電極213の一端213aを螺旋状に形成した場合に第14実施例及び第15実施例に対応する。
【0099】
(実施例のまとめ)
前記無線ICデバイスにおいて、少なくとも二つのインダクタンス素子は、給電回路を平面透視したときに、異なる位置に形成されていてもよく、給電回路を二つの異なる放射板に結合させることができる。また、少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極で形成されていてもよい。隣接した二つの配線電極で一つのインダクタンス素子を構成すれば、配線電極の長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0100】
給電回路基板は積層体からなり、該積層体の最下層の内部又は表面に、該給電回路基板を平面透視したときに、少なくとも二つのインダクタンス素子の外形と同じ又は小さい平面電極を設けてもよい。平面電極を設けることで給電回路と放射板との結合のばらつきを抑えることができる。
【0101】
給電回路基板は磁性体を含み、該磁性体内に少なくとも二つのインダクタンス素子が形成されていてもよい。給電回路基板が磁性体を含むことで、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。
【0102】
少なくとも二つのインダクタンス素子の一方端部どうしは、積層体内の最上層近傍において導通接続され、他方端部はそれぞれ無線ICと結合されていてもよい。二つのインダクタンス素子は、放射板とは離れた積層体内の最上層近傍で導通接続され、放射板と電磁界結合する積層体の下層近傍において互いに逆方に巻かれているため、エネルギーの受け渡し効率が向上する。
【0103】
放射板は一方の端部と他方の端部を有するループ状電極で構成され、該一方の端部と他方の端部とはそれぞれ異なる少なくとも二つのインダクタンス素子と結合しかつそれぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成されていてもよい。放射板側で発生する磁界の向きを給電回路と同じ向きにできるため、給電回路と放射板との結合が強くなる。そして、それぞれ結合するように形成されたインダクタンス素子と放射板の螺旋状の端部とは、給電回路を平面透視したときに同方向に巻かれるように形成されていることが好ましい。平面透視で対向するように配置された二つの螺旋状電極に発生する磁界の向きが同じ方向になり、給電回路と放射板との磁界結合がより強くなる。さらに、ループ状電極のインダクタンス値は給電回路のインダクタンス素子のインダクタンス値よりも大きいことが好ましい。給電回路による信号を放射板で発生した磁界によって送受信できるため、リーダライタとの通信不良の発生を抑制することができる。
【0104】
ループ状電極のループの内側又は表面に磁性体が配置されていてもよい。これにて、ループ状電極からなる放射板で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。
【0105】
少なくとも二つのインダクタンス素子は、無線ICに対して、直列に接続されていても、あるいは、並列に接続されていてもよく、それぞれのインダクタンス値が実質的に同じであってもよい。
【0106】
給電回路基板の主面上には無線ICを実装するための複数の実装電極が形成され、少なくとも二つの実装電極は給電回路を通じて電気的に導通していてもよい。少なくとも二つの実装電極は平衡入出力端子電極であってもよい。また、給電回路は、一方の端部が該給電回路の所定位置に電気的に接続されているとともに他方の端部が電気的に開放されている補助整合回路を有していてもよい。補助整合回路によって整合状態の微調整を行うことができる。また、少なくとも二つの実装電極は平衡入出力端子電極であってもよい。
【0107】
少なくとも二つのインダクタンス素子の一部が給電回路基板の側面に露出されており、該露出部分が放射板としても機能するように構成してもよい。インダクタンス素子の一部が給電回路基板の側面で放射板と電磁界結合し、放射特性が向上する。
【0108】
給電回路基板は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、フレキシブルな基板であってもよい。特に、給電回路を構成するインダクタンス素子が基板に内蔵されることで、給電回路が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0109】
少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ直流的に導通するように接続されていてもよい。それぞれのインダクタンス素子に確実に異なる向きの磁界を発生させることができる。
【0110】
(他の実施例)
なお、本発明に係る給電回路は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0111】
例えば、無線ICは、チップタイプではなく、給電回路基板に一体的に形成されていてもよい。また、放射板は種々の形状を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明は、給電回路に有用であり、特に、使用環境などからの影響を受けにくく、放射特性の変動を抑制することができ、広帯域での使用が可能である点で優れている。
【符号の説明】
【0113】
L1〜L4…インダクタンス素子
10…無線ICチップ
20,220…給電回路基板
21,150,200…給電回路
30,50,130,210…放射基板
32,52,132,212…放射板
33…磁性体
42a,42b…給電端子電極
46a,46b…配線電極
49a,49b…磁性体
66a〜66d…配線電極
75a,75b…配線電極
85a,85b…配線電極
88a,88b…磁性体
101a,101b…配線電極
111a,111b…配線電極
112a,112b…磁性体
125a,125b…配線電極
128a,128b…磁性体
129…補助整合回路
133…補助電極
204a,204b…配線電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電回路、特に、RFID(Radio Frequency Identification)システムに用いられる無線ICデバイスに搭載される給電回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の管理システムとして、誘導電磁界を発生するリーダライタと物品に付された所定の情報を記憶した無線タグ(無線ICデバイスとも称する)とを非接触方式で通信し、情報を伝達するRFIDシステムが開発されている。この種のRFIDシステムに使用される無線タグとして、特許文献1には、フレキシブルな基板上にアンテナと整合回路を形成し、それらと電気的に導通するようにICチップを配置したものが提案されている。ここでは基板上にループ状のコイル(インダクタ)を形成して整合回路を構成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の無線タグでは、ICチップをアンテナとのインピーダンス整合を行う整合回路が、フレキシブル基板上に露出しており、無線タグを貼り付ける物品の誘電率や物品の周囲の状況により、ループ状コイルのインダクタンス値が変動し、整合回路の特性も変動するという不具合を有している。この変動によって、ICチップをアンテナとの間での信号の伝達に損失が生じ、アンテナの放射特性が低下するという問題点が発生する。また、無線タグの使用周波数はアンテナ長で決定され、アンテナを貼り付ける物品の誘電率などに応じてその都度アンテナを設計する必要があり、極めて煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−80367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、使用環境などからの影響を受けにくく、放射特性の変動を抑制することができ、広帯域での使用が可能な給電回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の一形態である給電回路は、
複数の給電端子と放射板との間に配置され、前記放射板に送信信号を供給する及び/又は、前記放射板から受信信号を供給される給電回路であって、
少なくとも二つのインダクタンス素子を含み、
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されていること、
を特徴とする。
【0007】
前記給電回路においては、給電回路自身で信号の周波数を設定するため、本給電回路を搭載した無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板などの設計変更をする必要がなくなる。特に、給電回路を構成する少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子で発生する磁界が相殺され、Q値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。また、磁界の方向が互いに逆方向を向くので、一方の磁界が上向きのとき、他方の磁界は下向きになる。これは、交流電流源のプラスとマイナスに相当し、磁界エネルギーを通して放射板にほぼ100%のエネルギー伝達を可能にする。
【0008】
放射板から放射する送信信号の周波数及び給電端子に供給する受信信号の周波数は、給電回路の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路のサイズ、形状、給電回路と放射板との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路において送受信信号の周波数が決まるため、放射板の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給電回路が搭載された無線ICデバイスが貼り付けられる物品などによって周波数や放射特性が影響を受けることを効果的に防止できる。しかも、給電回路を構成する少なくとも二つのインダクタンス素子をそれぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成したため、発生する磁界が相殺され、共振周波数付近で広帯域化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図2】第1実施例である無線ICデバイスを構成する放射基板を示し、(A)は平面図、(B)は給電回路基板を貼着した状態を示す平面図。
【図3】第1実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路基板上に無線ICチップを搭載した状態を示す斜視図。
【図4】第1実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図5】第2実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図6】第3実施例である無線ICデバイスの等価回路図。
【図7】第3実施例である無線ICデバイスの放射基板を示し、(A)は平面図、(B)は裏面図、(C)は裏面に設けた磁性体の平面図。
【図8】第3実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図9】第4実施例である無線ICデバイスを示す斜視図。
【図10】第4実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図11】第5実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図12】第6実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図13】第7実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図14】第8実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す斜視図。
【図15】図14に示した給電回路基板の等価回路図。
【図16】第8実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の他の積層構造を示す斜視図。
【図17】図16に示した給電回路基板の等価回路図。
【図18】第9実施例である無線ICデバイスを示す斜視図。
【図19】第9実施例である無線ICデバイスを金属缶に取り付けた状態を示す斜視図。
【図20】図19の部分拡大断面図。
【図21】第10実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図22】第10実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の作製工程を示す説明図。
【図23】図22に示した作製工程途中を示す裏面図。
【図24】第11実施例である無線ICデバイスを構成する給電回路を示す等価回路図。
【図25】第11実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の作製工程を示す説明図。
【図26】図25に示した作製工程途中を示す裏面図。
【図27】(A)は第12実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図、(B)は第13実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図。
【図28】(A)は第14実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図、(B)は第15実施例である無線ICデバイスの給電回路を示す等価回路図。
【図29】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスを示し、(A)は正面図、(B)は平面図、(C),(D)は裏面図である。
【図30】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスの給電回路基板の積層構造を示す平面図。
【図31】第12実施例〜第15実施例である無線ICデバイスを示し、(A)は放射基板上に給電回路基板を搭載した状態の平面図、(B)は放射基板の第1例を示す平面図、(C)は放射基板の第2例を示す平面図、(D)は放射基板の裏面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る給電回路の実施例について添付図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施例、図1〜図4参照)
第1実施例である無線ICデバイスは、図3に示す、所定周波数の送受信信号を処理する無線ICチップ10と、この無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20と、図2(A)又は図2(B)に示す放射基板30とで構成されている。
【0013】
給電回路基板20は、図1に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合(相互インダクタンスMで示す)されているインダクタンス素子L1,L2を含む共振回路・整合回路を有する給電回路21(詳細は図4を参照して以下に説明する)を備えている。
【0014】
無線ICチップ10は、クロック回路、ロジック回路、メモリ回路などを含み、必要な情報がメモリされており、裏面に図示しない一対の入出力端子電極及び一対の実装用端子電極が設けられている。図3に示すように、入出力端子電極は給電回路基板20上に形成した給電端子電極42a,42bに、実装用端子電極は実装電極43a,43bに金属バンプなどを介して電気的に接続されている。
【0015】
放射基板30は、図2に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板31上の周縁部に非磁性金属材料からなるループ状の放射板32が形成され、一方の端部32aと他方の端部32bに前記給電回路基板20が接着剤を介して貼着されている。端部32a,32bはそれぞれ給電回路21のインダクタンス素子L1,L2のいずれかと結合している。また、放射板32のループの内側には磁性体33が配置されている。なお、図2(B)は、放射基板30の放射板32上に、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20を貼着した状態を示している。
【0016】
給電回路21に含まれるインダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32の端部32a,32bと電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0017】
従って、給電回路21は、無線ICチップ10から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板32に伝達し、かつ、放射板32で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ10に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板32で受信した信号によって無線ICチップ10が動作され、該無線ICチップ10からの応答信号が放射板32から外部に放射される。
【0018】
以上のごとく、本無線ICデバイスにあっては、給電回路基板20に設けた給電回路21で信号の周波数を設定するため、本無線ICデバイスを種々の物品に取り付けてもそのままで動作し、放射特性の変動が抑制され、個別の物品ごとに放射板32などの設計変更をする必要がなくなる。そして、放射板32から放射する送信信号の周波数及び無線ICチップ10に供給する受信信号の周波数は、給電回路基板20における給電回路21の共振周波数に実質的に相当し、信号の最大利得は、給電回路21のサイズ、形状、給電回路と放射板との距離及び媒質の少なくとも一つで実質的に決定される。給電回路基板20において送受信信号の周波数が決まるため、放射板32の形状やサイズ、配置関係などによらず、例えば、無線ICデバイスを丸めたり、誘電体で挟んだりしても、周波数特性が変化することがなく、安定した周波数特性が得られる。
【0019】
ここで、給電回路基板20の構成について図4を参照して説明する。給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート41a〜41hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート41aには、給電端子電極42a,42b、実装電極43a,43b、ビアホール導体44a,44b,45a,45bが形成されている。2層目〜8層目のシート41b〜41hには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極46a,46bが形成され、必要に応じてビアホール導体47a,47b,48a,48bが形成されている。
【0020】
以上のシート41a〜41hを積層することにより、配線電極46aがビアホール導体47aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極46bがビアホール導体47bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、配線電極46a,46bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0021】
シート41b上の配線電極46aの端部46a−1はビアホール導体45aを介して給電端子電極42aに接続され、シート41h上の配線電極46aの端部46a−2はビアホール導体48a,45bを介して給電端子電極42bに接続される。シート41b上の配線電極46bの端部46b−1はビアホール導体44bを介して給電端子電極42bに接続され、シート41h上の配線電極46bの端部46b−2はビアホール導体48b,44aを介して給電端子電極42aに接続される。
【0022】
以上の給電回路21において、インダクタンス素子L1,L2は互いに略平行な巻回軸上にそれぞれ逆方向に巻かれているため、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界が相殺される。磁界が相殺されるため、所望のインダクタンス値を得るためには配線電極46a,46bをある程度長くする必要がある。これにてQ値が低くなるので共振特性の急峻性がなくなり、共振周波数付近で広帯域化することになる。
【0023】
インダクタンス素子L1,L2は、給電回路基板20を平面透視したときに、左右の異なる位置に形成されている。また、インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界はそれぞれ逆向きになる。これにて、給電回路21をループ状の放射板32の端部32a,32bに結合させたとき、端部32a,32bには逆向きの電流が励起され、ループ状の放射板32で信号を送受信することができる。なお、インダクタンス素子L1,L2をそれぞれ二つの異なる放射板に結合させてもよい。
【0024】
放射板32は一方の端部32aと他方の端部32bを有するループ状電極で構成され、各端部32a,32bはそれぞれ異なるインダクタンス素子L1,L2と結合している。そして、ループ状電極のループの内側に例えばフェライトからなる磁性体33が配置されている。この磁性体33にてループ状電極からなる放射板32で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。なお、磁性体33は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0025】
給電回路基板20を磁性体材料から形成し、磁性体内にインダクタンス素子L1,L2を形成することにより、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。しかも、磁性体シートの加工ばらつきや透磁率のばらつきが生じても、無線ICチップ10とのインピーダンスのばらつきを吸収できる。磁性体の透磁率μは400程度が好ましい。
【0026】
また、二つのインダクタンス素子L1,L2のインダクタンス値を実質的に同じ値に設定することで、各インダクタンス素子L1,L2で発生する磁界の大きさを等しくすることができる。これにより、二つのインダクタンス素子L1,L2での磁界の相殺量を同じにすることができ、共振周波数付近での広帯域化が可能になる。
【0027】
なお、給電回路基板20は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、ポリイミドや液晶ポリマなどの誘電体からなるフレキシブルなシートを積層した基板であってもよい。特に、インダクタンス素子L1,L2が給電回路基板20に内蔵されることで、給電回路21が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0028】
また、給電回路基板20は放射板32の端部32a,32b上に貼着されている必要はなく、端部32a,32bに近接して配置されていてもよい。
【0029】
(第2実施例、図5参照)
第2実施例である無線ICデバイスは、基本的には前記第1実施例と同様の構成を備え、図5に示すように、給電回路基板20の最下層に設けたシート41iの裏面に、給電回路基板20を平面透視したときに、インダクタンス素子L1,L2の外形と同じ又は小さい平面電極49a,49bを設けた点が第1実施例と異なっている。
【0030】
そして、インダクタンス素子L1,L2を形成する配線電極46a,46bの端部46a−2,46b−2にはそれぞれビアホール導体が配置され、このビアホール導体は給電端子電極42a,42bと接続されていることは勿論、シート41iに形成したビアホール導体48c,48dを介して平面電極49a,49bと接続されている。このような平面電極49a,49bを設けることで給電回路21と放射板32との結合のばらつきを抑えることができる。
【0031】
なお、平面電極49a,49bは配線電極46a,46bと電気的に接続されていなくてもよく、あるいは、放射板32と電気的に接続されていてもよい。
【0032】
(第3実施例、図6〜図8参照)
第3実施例である無線ICデバイスは、図7(A)に示すように、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20を放射基板50の表面に形成した電極53の端部53b上及び電極54上に接着剤を介して貼着したものである。無線ICチップ10は第1実施例と同じ構成を有している。
【0033】
放射基板50は、図7(A)に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板51の表面に放射板52として機能するスパイラル状の電極53及び電極54を形成し、図7(B)に示すように、裏面に放射板52として機能するスパイラル状の電極55を設けたものである。
【0034】
電極53の端部53aと電極55の端部55aとはビアホール導体56aにて電気的に接続され、電極55の端部55bと電極54とはビアホール導体56bにて電気的に接続されている。また、基板50の裏面には、例えばフェライトからなる磁性体57が電極55の外形の内側であって電極55上に形成されている。なお、磁性体57は磁性金属材料から形成してもよく、この場合は電極55とは電気的に絶縁する必要がある。
【0035】
給電回路基板20は、図6に等価回路として示すように、互いに異なるインダクタンス値を有するインダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4はそれぞれ同相で磁気結合し(相互インダクタンスM1)、インダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4は互いに逆相で磁気結合している(相互インダクタンスM2で示す)。インダクタンス素子L1,L2,L3,L4を含む共振回路・整合回路を有する給電回路21は、以下に図8を参照して説明する。
【0036】
給電回路21に含まれるインダクタンス素子L1,L2とインダクタンス素子L3,L4は、互いに逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、ループ状をなす放射板52の電極端部53bと電極54と電磁界結合している。また、給電回路21の給電端子電極62a,62bは無線ICチップ10の入出力端子電極(図示せず)と電気的に接続され、無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板52のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0037】
本第3実施例では、ループ状の放射板52の電極54にプラス極性の信号が加わった場合、電極端部53bにはマイナス極性の信号が加わる。これにより、プラス(電極54)からマイナス(電極端部53b)方向に電流が流れ、放射板52と給電回路21とで信号の伝達が行われる。
【0038】
従って、給電回路21は、前記第1実施例と同様に、無線ICチップ10から発信された所定の周波数を有する送信信号を放射板52に伝達し、かつ、放射板52で受信した信号から所定の周波数を有する受信信号を選択し、無線ICチップ10に供給する。それゆえ、この無線ICデバイスは、放射板52で受信した信号によって無線ICチップ10が動作され、該無線ICチップ10からの応答信号が放射板52から外部に放射される。このように、本第3実施例の作用効果は前記第1実施例と基本的に同様である。
【0039】
ここで、給電回路基板20の構成について図8を参照して説明する。給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート61a〜61hを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート61aには、給電端子電極62a,62b、実装電極63a,63b、ビアホール導体64a,64b,65a,65bが形成されている。2層目〜8層目のシート61b〜61hには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2,L3,L4を構成する配線電極66a,66b,66c,66dが形成され、必要に応じてビアホール導体67a,67b,67c,67d,68a,68bが形成されている。
【0040】
以上のシート61a〜61hを積層することにより、配線電極66aがビアホール導体67aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極66bがビアホール導体67bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。さらに、配線電極66cがビアホール導体67cにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L3が形成され、配線電極66dがビアホール導体67dにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L4が形成される。また、配線電極66a,66b,66c,66dの線間にキャパシタンスが形成される。
【0041】
シート61b上の配線電極66a,66bが一体化された端部66−1はビアホール導体65aを介して給電端子電極62aに接続され、シート41h上の配線電極66a,66bが一体化された端部66−2はビアホール導体68a,65bを介して給電端子電極62bに接続される。シート61b上の配線電極66c,66dが一体化された端部66−3はビアホール導体64bを介して給電端子電極62bに接続され、シート61h上の配線電極66c,66dが一体化された66−4はビアホール導体68b,64aを介して給電端子電極62aに接続される。
【0042】
以上の構成からなる給電回路21の作用は、基本的には前記第1実施例で説明した給電回路21と同様である。特に、インダクタンス素子L1,L2とL3,L4はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極66a,66bと66c,66dとで形成されているため、配線電極の長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0043】
また、放射板52は一方の端部電極53aと他方の端部電極54を有するループ状電極で構成され、各端部電極53a,54はそれぞれ異なるインダクタンス素子L1,L2とL3,L4と結合している。そして、ループ状電極のループの外形より内側に磁性体57が配置されているため、ループ状電極からなる放射板52で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。なお、磁性体57は必ずしも必要ではなく、省略してもよい。
【0044】
(第4実施例、図9及び図10参照)
第4実施例である無線ICデバイスは、図9に示すように、無線ICチップ10と、給電回路基板20と、放射板132を形成した放射基板130とから構成されている。
【0045】
無線ICチップ10は前記第1実施例と同様の構成を備えている。給電回路基板20は、二つのインダクタンス素子L1,L2を内蔵したもので、表面に設けた給電端子電極72a,72bと実装電極73a,73bとが無線ICチップ10の入出力端子電極と実装用端子電極(ともに図示せず)に電気的に接続されている。
【0046】
放射基板130は、セラミックからなる基板131の表面の半分の領域に放射板132を螺旋状に形成するとともに、残りの半分の領域に補助電極133を螺旋状に形成したものである。放射板132上には無線ICチップ10を搭載した給電回路基板20が接着剤を介して貼着される。また、補助電極133は中央部に位置する端部133aがビアホール導体134を介して基板131の裏面に形成した電極135と接続され、該電極135の端部135aは放射板132の中央部に位置する端部132aと容量により結合している。なお、電極135は基板131の内部に形成されていてもよい。
【0047】
給電回路基板20は、図10に示すように、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート71a〜71eを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート71aには、給電端子電極72a,72b、実装電極73a,73b、ビアホール導体74a,74bが形成されている。2層目〜4層目のシート71b〜71dには、それぞれ、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極75a,75b、ビアホール導体76a,76b,77が形成されている。最下層のシート71eには、配線電極75が形成されている。配線電極75a,75は各シート71b〜71eの周縁部に露出した状態で形成されている。
【0048】
以上のシート71a〜71eを積層することにより、配線電極75aがビアホール導体76aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極75bがビアホール導体76bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。配線電極75a,75bはシート71b上で分岐し、かつ、最下層のシート71e上の配線電極75で一体化されている。また、配線電極75a,75bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0049】
シート71b上の配線電極75a,75bが一体化された端部75cはビアホール導体74bを介して給電端子電極72bに接続され、シート71e上の配線電極75の端部75dは1層上のシート71dのビアホール導体76a,76bを介して配線電極75a,75bと接続されており、かつ、配線電極75の端部75eはビアホール導体77,74aを介して給電端子電極72aに接続されている。
【0050】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板132と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板132のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0051】
従って、本第4実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、第4実施例では、インダクタンス素子L1,L2の一部(配線電極75a,75)が給電回路基板20の側面に露出されているため、該露出部分が放射板としても機能する。また、露出したインダクタンス素子L1,L2の一部が給電回路基板20の側面で放射板132及び補助電極133と電磁界結合するので放射特性が向上する。補助電極133の外形寸法は給電回路基板20の外形寸法と同じか又はそれ以上の大きさであり、給電回路基板20の裏面及び側面から放射される磁界と結合しやすくなっている。
【0052】
(第5実施例、図11参照)
第5実施例である無線ICデバイスは、図11に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0053】
給電回路基板20は、誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシート81a〜81eを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート81aには、給電端子電極82a,82b、実装電極83a,83b、ビアホール導体84a,84bが形成されている。2層目のシート81bには、配線電極85、ビアホール導体86a,86b,87a,87bが形成されている。3層目のシート81cには、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極85a,85b、ビアホール導体86a,86b,87a,87bが形成されている。4層目のシート81dには、インダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極85a,85bが形成されている。最下層のシート81eの裏面には、平面電極88a,88bが形成されている。
【0054】
以上のシート81a〜81eを積層することにより、配線電極85aがビアホール導体86aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極85bがビアホール導体86bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、配線電極85a,85bの線間にキャパシタンスが形成される。
【0055】
配線電極85a,85bはシート81b上で配線電極85にて一体化され、シート81d上の配線電極85aの端部85a'はビアホール導体87a,84aを介して給電端子電極82aに接続され、配線電極85bの端部85b'はビアホール導体87b,84bを介して給電端子電極82bに接続されている。
【0056】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0057】
従って、本第5実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路基板20の裏面に平面電極88a,88bを設けることによって給電回路21と放射板32との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極88a,88bは必ずしも必要なものではない。
【0058】
(第6実施例、図12参照)
第6実施例である無線ICデバイスは、図12に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0059】
また、給電回路基板20の構成は、前記第1実施例に示した給電回路基板20と基本的に同じであり、螺旋状に接続された配線電極101a,101bにてインダクタンス素子L1,L2が形成されている。このインダクタンス素子L1,L2は互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合されている。
【0060】
さらに、インダクタンス素子L1,L2の直下には平面電極102a,102bが配置され、螺旋状に接続された配線電極103にて磁界受け用コイル104が形成されている。磁界受け用コイル104は、平面電極102a,102bに対して直列に接続され、給電回路21と放射板32(図2参照)とを結合する補助的な放射機能を有している。
【0061】
本第6実施例におけるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。従って、本第6実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0062】
(第7実施例、図13参照)
第7実施例である無線ICデバイスは、図13に示す給電回路基板20を備えたもので、他の構成部品である無線ICチップ10及び放射基板30は前記第1実施例に示したものと同様である。
【0063】
給電回路基板20は、互いに隣接して螺旋状に接続された配線電極111a,111bにてインダクタンス素子L1,L2が形成されている。このインダクタンス素子L1,L2は互いに異なるインダクタンス値を有し、かつ、互いに逆相で磁気結合されている。
【0064】
さらに、インダクタンス素子L1,L2の直下には平面電極112a,112bが配置され、螺旋状に接続された配線電極113にて磁界受け用コイル114が形成されている。磁界受け用コイル114は、平面電極112a,112bに対して直列に接続され、給電回路21と放射板32(図2参照)とを結合する補助的な放射機能を有している。
【0065】
本第7実施例におけるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図1に示した給電回路21と同様の等価回路であり、インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板32と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。従って、本第7実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0066】
特に、第7実施例では、インダクタンス素子L1,L2がそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極111a,111bで形成されているため、配線電極111a,111bの長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0067】
(第8実施例、図14〜図17参照)
第8実施例である無線ICデバイスは、図14に示す給電回路基板20を備えたもので、この給電回路21は前記第5実施例(図11参照)と基本的に同じである。即ち、シート121a上には給電端子電極122a,122b、実装電極123a,123bが形成され、シート121b〜121g上には配線電極125a,125bが形成されている。さらに、シート121h上には平面電極128a,128bが形成されている。
【0068】
インダクタンス素子L1,L2は配線電極125a,125bをそれぞれ螺旋状に接続することにより形成され、シート121b上の配線電極125にて一体化されている。シート121g上の配線電極125aの端部125a'が給電端子電極122aに接続され、シート121g上の配線電極125bの端部125b'が給電端子電極122bに接続されている。
【0069】
以上の構成からなるインダクタンス素子L1,L2を含む給電回路21は図15に示す等価回路であり、無線ICチップ10に対して直列に接続されたインダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合して無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板52(放射板32であってもよい)と電磁界結合している。また、給電回路21は無線ICチップ10のインピーダンス(通常50Ω)と放射板32,52のインピーダンス(空間のインピーダンス377Ω)とのマッチングを図っている。
【0070】
従って、本第8実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。特に、給電回路基板20の裏面に平面電極128a,128bを設けることによって給電回路21と放射板32,52との結合のばらつきを抑えることができる。なお、平面電極128a,128bは必ずしも必要なものではない。
【0071】
さらに、第8実施例においては、インダクタンス素子L1,L2の端部が給電端子電極122a,122bに接続される位置を変更し、前記端部125a',125b'を電気的に開放して補助整合回路を構成することができる。
【0072】
例えば、図16に示すように、シート121e上の配線電極125a,125bに引出し電極125a",125b"を形成して給電端子電極122a,122bに接続する。そして、シート121g上の配線電極125a,125bの端部125a',125b'を電気的に開放し、シート121f,121g上の配線電極125a,125bにて補助整合回路129を形成する。給電端子電極122a,122bと接続する引出し電極125a",125b"は、シート121c〜121f上に設けたいずれの配線電極125a,125bであってもよい。その等価回路を図17に示す。このような補助整合回路129を形成することによって、整合状態の微調整を行うことができる。
【0073】
(第9実施例、図18〜図20参照)
第9実施例である無線ICデバイスは、図18に示すように、無線ICチップ10を備えた給電回路基板20を放射基板30上に貼着したもので、図19に示すように、金属缶140の表面又は裏面の凹所141に貼着されている。金属缶140は、例えば、スチール材やアルミ材などの金属材からなる。給電回路基板20は前記第1実施例に示したものと同じであり、図4に示した給電回路21を有している。放射基板30も図2に示したフィルム基板31上に端部32a,32bを有するループ状の放射板32を形成したものである。但し、図2に示したフィルム基板31と放射板32とが四角形状であるのに対して、本第9実施例では図18に示すように楕円形状である。
【0074】
そして、図20に示すように、凹所141の底部に両面に接着剤を有する台紙142を介して、無線ICチップ10及び給電回路基板20を備えた放射基板30が貼着されている。凹所141の深さH1は約5mm、凹所141の底部から放射板32までの高さH2は2〜3mmであり、無線ICチップ10が凹所141から突出しないことが望ましい。
【0075】
本第9実施例の作用効果は第1実施例と同様である。ところで、信号の送受信時にループ状の放射板32の周囲には磁界φ(図20参照)が発生する。この磁界は金属を通過しないので、金属とループ状放射板32とを平行にかつ近接させて配置すると、放射板32で発生する磁界が金属によって妨げられ、外部へ十分に放射されず無線ICデバイスとしての動作が不十分になる。そこで、本第9実施例のように、放射板金属缶140の凹所141の底部から台紙142などを介して数mm程度離して放射板32を配置することで、放射板32から磁界φを放射させて無線ICデバイスとして機能させることができる。
【0076】
なお、給電回路基板20を備えた放射基板30を台紙142に埋め込むように配置しても構わない。さらに、放射基板30を台紙142と同程度の厚みにし、その放射基板30に形成した凹部に給電回路基板20を埋め込むように配置しても構わない。また、無線ICチップ10を給電回路基板20と放射基板30とに挟み込まれるように配置しても構わない。このような構造にすることにより、無線ICチップ及び給電回路基板20を落下・衝撃などから保護することができ、無線ICデバイスの機械的強度を向上させることができる。なお、本第9実施例においては金属缶140へ無線ICデバイスを貼着した例を示したが、特に金属缶に限定されるものではなく、金属製の物品であれば金属ケースあるいは回路基板上のグランド電極など何でも構わない。
【0077】
(第10実施例、図21〜図23参照)
以上の各実施例は給電回路基板内に共振回路及び/又は整合回路を有する給電回路を設けた給電回路基板を備えている。しかし、給電回路基板を備えることなく、無線ICチップの入出力端子電極が形成された裏面(主面)上に少なくとも二つのインダクタンス素子を含む共振回路及び/又は整合回路を有する給電回路を設けたものであってもよく、以下に第10実施例及び第11実施例としてこのような無線ICデバイスを示す。
【0078】
第10実施例である無線ICデバイスは、図21に等価回路として示す給電回路150を無線ICチップ10の裏面に設けたものである。この給電回路150は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成した二つのインダクタンス素子L1,L2を直列に接続してなる。各インダクタンス素子L1,L2の一端に設けた給電端子電極151a,151bが無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極と電気的に導通している。インダクタンス素子L1,L2は逆相で磁気結合し、線間浮遊容量とで形成される共振回路とで無線ICチップ10が処理する周波数に共振し、かつ、放射板(例えば、図2に示した放射板32の端部32a,32b)と電磁界結合する。従って、本第10実施例の作用効果は前記第1実施例と同様である。
【0079】
この給電回路150において、インダクタンス素子L1,L2の中間点が仮想グランドとなる。また、給電回路150のインピーダンス値は無線ICチップ10のインピーダンスと複素共役になるように設計される。インダクタンス素子L1,L2は図22に示すように積層状態で形成されるため、放射板までの距離に応じてインダクタンス値が異なる。そこで、無線ICチップ10の裏面に絶縁層159を形成して放射板との距離を固定し、かつ、インダクタンス素子L1,L2を保護している。
【0080】
前記給電回路150は、図22に示す工程によって作製される。まず、図22(a)に示すように、無線ICチップ10の裏面に絶縁層152を入出力端子電極部分を除いて形成する。次に、図22(b)に示すように、電極層153を絶縁層152上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図22(c)参照)。この状態を図23(A)に示す。
【0081】
次に、図22(d)に示すように、電極層153上に絶縁層154を形成する。さらに、図22(e)に示すように、電極層155を絶縁層154上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図22(f)参照)。この状態を図23(B)に示す。さらに、図22(g)に示すように、電極層155上に絶縁層159を形成する。
【0082】
(第11実施例、図24〜図26参照)
第11実施例である無線ICデバイスは、図24に等価回路として示す給電回路150を無線ICチップ10の裏面に設けたものである。この給電回路150は、前記第9実施例で示した等価回路(図21参照)において、インダクタンス素子L1,L2の間にコンデンサCを挿入し、直列共振回路を構成したものである。本第11実施例の作用効果は前記第10実施例と同様である。
【0083】
図24に示す給電回路150は、図25に示す工程によって作製される。まず、図25(a)に示すように、無線ICチップ10の裏面に絶縁層156を入出力端子電極部分を除いて形成する。次に、図25(b)に示すように、電極層157を絶縁層156上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図25(c)参照)。この状態を図26(A)に示し、中央部分に残された電極157aが一方のコンデンサ電極となる。
【0084】
次に、図25(d)に示すように、電極層157上に絶縁層152を形成する。さらに、図25(e)に示すように、電極層153を絶縁層152上にめっきなどで形成し、所定の形状にエッチングする(図25(f)参照)。この状態を図26(B)に示す。このとき前記コンデンサ電極157aと対向する電極153a,153bが形成される。
【0085】
さらに、図25(g)に示すように、電極層153上に絶縁層154を形成する。その後は、図22(e),(f),(g)に示したように、電極層155、絶縁層159を形成する。電極層155を形成したときの状態を図26(C)に示す。
【0086】
(第12実施例〜第15実施例、図27〜図31参照)
第12実施例である無線ICデバイスは、図27(A)の等価回路に示すように、互いに逆方向に巻かれた螺旋状に形成されたインダクタンス素子L1,L2を直列に接続した給電回路200を備え、インダクタンス成分L10を有するループ状電極で構成した放射板212の両端部をインダクタンス素子L1,L2の両端部に電気的に導通させたものである。また、給電回路200の両端には前記無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極に接続される給電端子電極201a,201bが形成されている。
【0087】
第13実施例である無線ICデバイスは、図27(B)の等価回路に示すように、インダクタンス素子L1,L2と並列にコンデンサCを設けたもので、他の構成は前記第12実施例と同様である。
【0088】
第14実施例である無線ICデバイスは、図28(A)の等価回路に示すように、互いに逆方向に巻かれた螺旋状に形成されたインダクタンス素子L1,L2を直列に接続した給電回路200を備え、インダクタンス成分L10を有するループ状電極で構成した放射板212の両端部に設けた螺旋状のインダクタンス成分L11,L12を前記インダクタンス素子L1,L2と電磁界結合させたものである。また、給電回路200の両端には前記無線ICチップ10の入力端子電極及び出力端子電極に接続される給電端子電極201a,201bが形成されている。
【0089】
第15実施例である無線ICデバイスは、図28(B)の等価回路に示すように、インダクタンス素子L1,L2と並列にコンデンサCを設けたもので、他の構成は前記第14実施例と同様である。
【0090】
第14実施例及び第15実施例においては、給電回路200のインダクタンス素子L1,L2に対向するように放射板212の両端部に螺旋状の受け電極(インダクタンス成分L11,L12)を設けた。これにて、放射板212のインダクタンス成分L10で発生する磁界の向きを給電回路200で発生する磁界と同じ向きにできるので、給電回路200と放射板212との結合度が向上する。
【0091】
また、放射板212の両端部に設けた受け電極(インダクタンス成分L11,L12)の螺旋状の向きを互いに逆方向にすることによって、エネルギーの受け渡し効率が向上する。さらに、それぞれ結合するように形成されたインダクタンス素子と放射板の螺旋状の端部(L1とL11、L2とL12)とは、給電回路200を平面透視したときに同方向に巻かれるように形成されている。平面透視で対向するように配置された二つの螺旋状電極(L1とL11、L2とL12)に発生する磁界の向きが同じ方向になり、給電回路200と放射板212との磁界結合がより強くなる。
【0092】
さらに、放射板212のループ状電極のインダクタンス値(L10)は給電回路200のインダクタンス素子L1,L2のインダクタンス値よりも大きく設定されている。給電回路200による信号を放射板212で発生した磁界によって送受信できるため、リーダライタとの通信不良の発生を抑制することができる。
【0093】
ここで、前記等価回路で示した第12実施例〜第15実施例の具体的構成について説明する。これらの無線ICデバイスは、図29に示すように、無線ICチップ10と給電回路基板220と放射板212を備えた放射基板210(図31参照)とで構成される。給電回路基板220の表面には給電端子電極201a,201bが形成され(図29(B)参照)、裏面には平面電極202a,202bが設けられている(図29(C)参照)。平面電極202a,202bの作用効果は前記第2実施例(図5参照)で説明したとおりである。なお、図29(D)に示すように、平面電極202a,202bを省略してもよい。
【0094】
給電回路基板220の内部には図30に示す給電回路200が形成されている。給電回路基板220は誘電体あるいは磁性体からなるセラミックシートを積層、圧着、焼成したものである。最上層のシート231aには給電端子電極201a,201b、実装電極201c,201dが形成されている。2層目のシート231bには接続用電極203a,203bが形成されている。3層目〜7層目のシート231c〜231gにはそれぞれインダクタンス素子L1,L2を構成する配線電極204a,204bが形成されている。
【0095】
以上のシート231a〜231gを積層することにより、配線電極204aがビアホール導体205aにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L1が形成され、配線電極204bがビアホール導体205bにて螺旋状に接続されたインダクタンス素子L2が形成される。また、インダクタンス素子L1,L2(配線電極204a,204b)の一方端部どうしはシート231c上で導通接続され、他方端部は接続用電極203a,203bやビアホール導体206a,206bを介して給電端子電極201a,201bに接続される。
【0096】
以上の構成からなる給電回路200の作用効果は前記第1実施例、第2実施例での説明と同様である。特に、図30に示した給電回路200においては、二つのインダクタンス素子L1,L2の一方端部どうしを、積層体内の最上層近傍において導通接続し、他方端部をそれぞれ無線ICチップ10と接続しているため、放射板212とは離れた積層体内の最上層近傍で導通接続され、放射板212と電磁界結合する積層体の下層近傍において互いに逆方に巻かれているため、エネルギーの受け渡し効率が向上する。
【0097】
放射基板210は、図31に示すように、フレキシブルな樹脂フィルム基板211の表面に一端212a及び他端212bを有する放射板212を螺旋状に形成するとともに、一端212aに隣接する電極213を形成したもので、電極213は基板211の裏面に形成した接続用電極214及びビアホール導体を介して放射板212の他端212bと電気的に導通されている。そして、放射板212の一端212aと電極213の一端213aに、無線ICチップ10を搭載した給電回路基板220が結合されている。
【0098】
放射板212の一端212aと電極213の一端213aは、図31(B)に示すように、平面的な形状であってもよく、あるいは、図31(C)に示すように、螺旋状に形成されていてもよい。放射板212の一端212aと電極213の一端213aを螺旋状に形成した場合に第14実施例及び第15実施例に対応する。
【0099】
(実施例のまとめ)
前記無線ICデバイスにおいて、少なくとも二つのインダクタンス素子は、給電回路を平面透視したときに、異なる位置に形成されていてもよく、給電回路を二つの異なる放射板に結合させることができる。また、少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極で形成されていてもよい。隣接した二つの配線電極で一つのインダクタンス素子を構成すれば、配線電極の長さや電極間隔を変化させることにより、共振特性を広帯域化できる。
【0100】
給電回路基板は積層体からなり、該積層体の最下層の内部又は表面に、該給電回路基板を平面透視したときに、少なくとも二つのインダクタンス素子の外形と同じ又は小さい平面電極を設けてもよい。平面電極を設けることで給電回路と放射板との結合のばらつきを抑えることができる。
【0101】
給電回路基板は磁性体を含み、該磁性体内に少なくとも二つのインダクタンス素子が形成されていてもよい。給電回路基板が磁性体を含むことで、大きなインダクタンス値を得ることができ、13.56MHz帯の周波数にも対応することができる。
【0102】
少なくとも二つのインダクタンス素子の一方端部どうしは、積層体内の最上層近傍において導通接続され、他方端部はそれぞれ無線ICと結合されていてもよい。二つのインダクタンス素子は、放射板とは離れた積層体内の最上層近傍で導通接続され、放射板と電磁界結合する積層体の下層近傍において互いに逆方に巻かれているため、エネルギーの受け渡し効率が向上する。
【0103】
放射板は一方の端部と他方の端部を有するループ状電極で構成され、該一方の端部と他方の端部とはそれぞれ異なる少なくとも二つのインダクタンス素子と結合しかつそれぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成されていてもよい。放射板側で発生する磁界の向きを給電回路と同じ向きにできるため、給電回路と放射板との結合が強くなる。そして、それぞれ結合するように形成されたインダクタンス素子と放射板の螺旋状の端部とは、給電回路を平面透視したときに同方向に巻かれるように形成されていることが好ましい。平面透視で対向するように配置された二つの螺旋状電極に発生する磁界の向きが同じ方向になり、給電回路と放射板との磁界結合がより強くなる。さらに、ループ状電極のインダクタンス値は給電回路のインダクタンス素子のインダクタンス値よりも大きいことが好ましい。給電回路による信号を放射板で発生した磁界によって送受信できるため、リーダライタとの通信不良の発生を抑制することができる。
【0104】
ループ状電極のループの内側又は表面に磁性体が配置されていてもよい。これにて、ループ状電極からなる放射板で発生する磁界が増幅され、通信距離が長くなる。
【0105】
少なくとも二つのインダクタンス素子は、無線ICに対して、直列に接続されていても、あるいは、並列に接続されていてもよく、それぞれのインダクタンス値が実質的に同じであってもよい。
【0106】
給電回路基板の主面上には無線ICを実装するための複数の実装電極が形成され、少なくとも二つの実装電極は給電回路を通じて電気的に導通していてもよい。少なくとも二つの実装電極は平衡入出力端子電極であってもよい。また、給電回路は、一方の端部が該給電回路の所定位置に電気的に接続されているとともに他方の端部が電気的に開放されている補助整合回路を有していてもよい。補助整合回路によって整合状態の微調整を行うことができる。また、少なくとも二つの実装電極は平衡入出力端子電極であってもよい。
【0107】
少なくとも二つのインダクタンス素子の一部が給電回路基板の側面に露出されており、該露出部分が放射板としても機能するように構成してもよい。インダクタンス素子の一部が給電回路基板の側面で放射板と電磁界結合し、放射特性が向上する。
【0108】
給電回路基板は、セラミック又は樹脂からなる多層基板であってもよく、あるいは、フレキシブルな基板であってもよい。特に、給電回路を構成するインダクタンス素子が基板に内蔵されることで、給電回路が基板外部の影響を受けにくくなり、放射特性の変動を抑制できる。
【0109】
少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ直流的に導通するように接続されていてもよい。それぞれのインダクタンス素子に確実に異なる向きの磁界を発生させることができる。
【0110】
(他の実施例)
なお、本発明に係る給電回路は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できることは勿論である。
【0111】
例えば、無線ICは、チップタイプではなく、給電回路基板に一体的に形成されていてもよい。また、放射板は種々の形状を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上のように、本発明は、給電回路に有用であり、特に、使用環境などからの影響を受けにくく、放射特性の変動を抑制することができ、広帯域での使用が可能である点で優れている。
【符号の説明】
【0113】
L1〜L4…インダクタンス素子
10…無線ICチップ
20,220…給電回路基板
21,150,200…給電回路
30,50,130,210…放射基板
32,52,132,212…放射板
33…磁性体
42a,42b…給電端子電極
46a,46b…配線電極
49a,49b…磁性体
66a〜66d…配線電極
75a,75b…配線電極
85a,85b…配線電極
88a,88b…磁性体
101a,101b…配線電極
111a,111b…配線電極
112a,112b…磁性体
125a,125b…配線電極
128a,128b…磁性体
129…補助整合回路
133…補助電極
204a,204b…配線電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の給電端子と放射板との間に配置され、前記放射板に送信信号を供給する、及び/又は、前記放射板から受信信号を供給される給電回路であって、
少なくとも二つのインダクタンス素子を含み、
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されていること、
を特徴とする給電回路。
【請求項2】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子の一方端部どうしは導通接続され、他方端部はそれぞれ前記複数の給電端子のそれぞれと結合されていること、を特徴とする請求項1に記載の給電回路。
【請求項3】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、平面透視したときに、異なる位置に形成されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給電回路。
【請求項4】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の給電回路。
【請求項5】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は前記複数の給電端子に対して直列に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の給電回路。
【請求項6】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は前記複数の給電端子に対して並列に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の給電回路。
【請求項7】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれのインダクタンス値が実質的に同じであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の給電回路。
【請求項8】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は並列接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の給電回路。
【請求項9】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は直列接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の給電回路。
【請求項10】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は共振回路を構成しており、前記送信信号及び/又は受信信号の周波数は前記共振回路の共振周波数に実質的に相当すること、を特徴とする請求項1ないし請求項9に記載の給電回路。
【請求項1】
複数の給電端子と放射板との間に配置され、前記放射板に送信信号を供給する、及び/又は、前記放射板から受信信号を供給される給電回路であって、
少なくとも二つのインダクタンス素子を含み、
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、それぞれ逆方向に巻かれた螺旋状に形成され、かつ、それぞれ直流的に導通するように接続されていること、
を特徴とする給電回路。
【請求項2】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子の一方端部どうしは導通接続され、他方端部はそれぞれ前記複数の給電端子のそれぞれと結合されていること、を特徴とする請求項1に記載の給電回路。
【請求項3】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は、平面透視したときに、異なる位置に形成されていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給電回路。
【請求項4】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれ同一平面上で隣接する二つの配線電極で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の給電回路。
【請求項5】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は前記複数の給電端子に対して直列に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の給電回路。
【請求項6】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は前記複数の給電端子に対して並列に接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の給電回路。
【請求項7】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子はそれぞれのインダクタンス値が実質的に同じであることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の給電回路。
【請求項8】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は並列接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の給電回路。
【請求項9】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は直列接続されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の給電回路。
【請求項10】
前記少なくとも二つのインダクタンス素子は共振回路を構成しており、前記送信信号及び/又は受信信号の周波数は前記共振回路の共振周波数に実質的に相当すること、を特徴とする請求項1ないし請求項9に記載の給電回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
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【図4】
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【図8】
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【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−74839(P2010−74839A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249816(P2009−249816)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2009−515654(P2009−515654)の分割
【原出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【分割の表示】特願2009−515654(P2009−515654)の分割
【原出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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