説明

統合燃焼反応器と吸熱及び発熱反応の同時実施方法

【課題】発熱反応及び吸熱反応が良好に行われる統合反応器を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁があり、少なくとも一つの吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備え、一つの自由端及び一つの非自由端を備え、非自由端は、燃料及び酸化剤の入口、及び、排ガスの出口のための連結部を含有する統合反応器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2002年8月15日出願の米国特許出願第10/220,604号、同第10/219,990号、同第10/219,956号及び同第10/222,196号を参照することにより更に理解することができる。これらすべてを本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、統合燃焼反応器と吸熱及び発熱反応の同時実施方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、マイクロリアクタ内で行われる吸熱反応は、外部燃焼器からの排ガスのような外部供給源からの熱を使用して駆動している。これを行うに際しては、熱を供給するガス流の温度は、構造物の材料によって課される制約のために制限を受ける。例えば、インコネル625で出来た典型的なマイクロリアクタは、使用ガスの温度が約1050℃以下に制限される。実際上、このことは、材料の温度制限を満たすために外部燃焼器からの排ガスを冷却ガス(すなわち、過剰の空気)で希釈してガスの温度を下げなければならないことを意味する。これによってガスの総流量が増加し、排風機/圧縮機のコストを上昇させる。更に、ガス流を外部で加熱すると(マイクロリアクタへ高温ガスを輸送するのに伴う)熱損失を招き、燃焼器とマイクロリアクタを連結する高価な高温材料を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、統合燃焼器は反応のための熱を反応領域の近傍で発生させることができ、従って熱損失を低減して効率を高める。従来の燃焼触媒は貴金属の焼結のために高温(約1200℃超)において安定ではないので、統合燃焼器は触媒表面での局所温度をこの水準未満に維持するのに充分な速度で熱を除去しなければならず、さもなければ即座に触媒が急速に不活性化することになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
統合反応器においては、燃焼/熱の発生は吸熱反応の近傍で起こるべきである。発熱反応は、吸熱反応が起こるマイクロチャンネルと交互配置されるマイクロチャンネル内で起こるのが好ましい。吸熱及び発熱反応流の並流(co-flow)が好ましい。しかしながら、横流(cross-flow)又は向流も選択肢である。発熱反応の熱は発熱反応から吸熱反応触媒へ伝達され、そこで吸熱反応を駆動する。
【0006】
好ましくは、統合反応器内の発熱反応チャンネル及び/又は吸熱反応チャンネルはマイクロチャンネル、すなわち、少なくとも一つの寸法が2ミリメートル(mm)以下であるチャンネルである。最小の寸法が2mmを超えるチャンネルを使用すると、熱及び物質の移動抵抗が増大するため、効率が低下し得る。統合燃焼器はマイクロチャンネル反応器の大きな表面積を使用して発生する熱を除去することができ、こうして材料の温度制限を超えないようにマイクロリアクタの構成部品を維持しつつ、外部燃焼器に対して必要とされるであろうよりもずっと少ない過剰空気(又は希釈剤)で燃焼する。
【0007】
一側面において、本発明は:吸熱反応組成物を少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ入れることと、燃料及び酸化剤の燃焼チャンバ内でのそれぞれの接触時間を50ms以下として該燃料及び酸化剤を少なくとも一つの発熱反応チャンバへ入れることとを含む統合燃焼反応中で吸熱反応を実施する方法(ここで、前記発熱反応チャンバは少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁を備え、前記吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備え、前記少なくとも一つの発熱反応チャンバから前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ熱を0.6W/cc(燃焼チャンバ容積)以上、又は1W/cm2(吸熱反応チャンバの内部表面積)以上の何れか又は両方を満たす速度で伝達する。)を提供する。熱流束はマルチチャンバ装置内の単一の発熱反応チャンバ又は複数のチャンバの何れかに基づいて測定することができる。従って、いずれの場合も本発明の当該側面の範囲内である。本発明の方法及び装置に係る様々な好ましい実施形態おいて、発熱反応チャンバの内部寸法は2mm未満、より好ましくは1.5mm未満であり、いくつかの実施形態においては1mm未満であり;容積熱流束は反応チャンバの容積を基準にして10W/ccを超え、より好ましくは100W/ccを超え、更により好ましくは500W/ccを超える。発熱及び/又は吸熱反応チャンバ内での接触時間は好ましくは500ms未満、より好ましくは100ms以下、更により好ましくは50ms以下、より好ましくは25ms以下、更により好ましくは10ms以下である。何れかの反応チャンバの面積に対する面積熱流束は好ましくは1W/cm2以上、好ましくは5W/cm2以上、より好ましくは10W/cm2以上、更により好ましくは20W/cm2以上である。
【0008】
別の一側面において、本発明は:工程a)水蒸気及び炭化水素を、水蒸気:炭素の比率を3:1未満とし、吸熱反応チャンバを通過する際の圧力損失を900psig(6000kPa)未満として、少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ入れること、工程b)燃料及び酸化剤の燃焼チャンバ内でのそれぞれの接触時間を100ms以下として該燃料及び酸化剤を少なくとも一つの発熱反応チャンバへ入れることと(ここで、前記発熱反応チャンバは少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁を備え、前記吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備える。)、工程c)前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバにて炭化水素の反応率が50%以上、COへの選択率が50%以上となるように前記水蒸気及び炭化水素を変換してCO及びH2を生成させることと;工程a、b、cを圧力損失の増加を2psi(又は13kPa)未満として少なくとも100時間同時かつ連続的に実施することとを含む統合燃焼反応器内での水蒸気改質の方法を提供する。水蒸気:炭素の比率の他の好ましい水準は2.5:1、2:1、及び1.5:1未満である。別の一実施形態において、装置は100又は500時間の運転後に切開すると、処理したメタン燃料1kg当たりのコークスが0.1グラム未満であることを特徴とする。
【0009】
別の一側面において、本発明は:吸熱反応組成物を少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ入れることと、燃料及び酸化剤の燃焼チャンバ内でのそれぞれの接触時間を100ms以下として該燃料及び酸化剤を少なくとも一つの発熱反応チャンバへ入れることと(ここで、酸化剤は、燃料を完全に酸化して燃料及び空気を生成物に変換するのに必要な量に対して50%未満の過剰量で存在する。)、統合燃焼反応器から生成物をCO:2500ppm未満で出すこととを含む統合燃焼反応器内での発熱及び吸熱反応の同時実施の方法(ここで、前記発熱反応チャンバは少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁を備え、前記吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備える。)を提供する。低レベルのCOに代えて、又はそれに加えて、酸化剤が空気の場合は、生成物はNOxが100ppm未満である。過剰な酸化剤の量は全過剰量である−換言すれば、この変換水準には、処理チャンバ(例えば触媒コンバータ)内で付加的な酸化剤が添加されるいかなる後処理工程も含まれない。NOxの他の水準には、100ppm未満、50ppm未満、20ppm以下、10ppm以下及び5ppm以下が含まれる。
【0010】
本発明は更に、少なくとも一つの発熱反応マイクロチャンネルを備える統合燃焼器(ここで、前記発熱反応マイクロチャンネルは少なくとも一つの吸熱反応マイクロチャンネルに隣接する少なくとも一つの発熱反応マイクロチャンネル壁を備え、前記吸熱反応マイクロチャンネルは少なくとも一つの発熱反応マイクロチャンネルに隣接する前記少なくとも一つの吸熱反応マイクロチャンネル壁に接触した吸熱反応触媒を備える。)を提供する。本発明は更に本明細書で説明する熱流束測定試験(Heat Flux Measurement Test)を利用して試験するときの1以上の好ましい特性によって特徴付けられる。
【0011】
本発明はまた、第一の容積をもつ外側発熱反応層と、外側発熱反応層に隣接し、外側発熱反応層及び内側吸熱反応層の間に配置する第一燃焼器と、第二の容積をもち、第一燃焼器層及び第二燃焼器層の間に配置された内側吸熱反応層と、内側吸熱反応層に隣接する第二燃焼器層とを備える積層された統合燃焼器(ここで、第一の容積は第二の容積に比べて20〜80%小さい。)を提供する。より好ましくは、第一の容積は第二の容積に比べて45〜55%小さい。この統合燃焼反応器(ICR)の非限定的な一例は本明細書に記載する接着ICRデザインである。
【0012】
本発明は更に:燃焼チャンバに燃料を流入させることと;酸化剤が燃料を酸化し、燃焼チャンバ内の温度が燃焼チャンバの前部から後部へと上昇するように酸化剤を燃焼チャンバに添加することと;燃焼チャンバに隣接して配置された吸熱反応チャンバ内に吸熱反応組成物を供給することと(ここで、吸熱反応チャンバ及び燃焼チャンバは伝熱壁によって分離している。)を含む発熱及び吸熱反応の同時実施の方法(ここで、吸熱反応組成物は吸熱反応によって生成物を生じる。)を提供する。特に断りのない限り、燃焼チャンバの前部は燃料流が燃焼触媒及び酸化剤に接触する場所として定義され、燃焼チャンバの後部は燃焼触媒を含有し、吸熱反応チャンバと直接的に熱接触する(すなわち、壁を通して)反応チャンバの最後の部分として定義される。本明細書に記載の接着ICRデザインにおいて、排ガス部は吸熱反応チャンバと直接的に熱接触しない。代替的に、燃焼チャンバの後部は、燃料及び酸化剤の95%の熱容量が消費された場所として定義することが出来る。
【0013】
本発明はまた:燃料を第一燃料チャンネルに入れ、同時に燃料を第二燃料チャンネルに入れることと;第一及び第二の燃料チャンネルの長さに沿って分散するように酸化剤を添加することと;吸熱反応組成物を吸熱反応チャンネルを通して入れることと(前記チャンネルは、触媒を含有する吸熱反応チャンバに連結した予熱部を有する。);燃料を第一燃料チャンネル内で酸化して熱を発生させ、第一高温排ガス流を生成することと同時に、第二燃料チャンネル内の燃料を酸化して熱を発生させ、第二高温排ガス流を生成することと;第一排ガス流及び第二排ガス流を一つの排ガスチャンネルに結合することと;第一燃料チャンネル内で発生した熱の一部を壁を通して吸熱反応チャンバへ移動させることと;第一排ガス流及び第二排ガス流から熱を排ガスチャンネル壁を通して第一燃料チャンネルへ移動させることと;吸熱反応チャンバ内で吸熱反応組成物を反応させて加熱された吸熱反応生成物を生成させることと;加熱された吸熱反応生成物を生成物チャンネルへ流入させること;生成物チャンネル内の加熱された吸熱反応生成物からの熱を壁を通して吸熱反応チャンネルの予熱部へ移動させることとを含む吸熱反応の実施方法を提供する。
【0014】
本発明は更に、燃焼触媒を備える燃焼マイクロチャンネルと;燃焼マイクロチャンネルに隣接し、吸熱反応触媒を備える吸熱反応マイクロチャンネルと(吸熱反応触媒は流れの方向に10cm以上の長さをもつ);燃焼触媒及び吸熱反応触媒を分離する壁とを備える統合燃焼反応器を提供する。この長い反応触媒は短い接触時間及び大きな熱流束という予期せぬ結果を生じさせる。本発明はまた、好ましくは低圧力損失で、該ICRによって吸熱反応を実施する方法を包含する。本発明のこの側面は熱勾配が少なく、装置寿命が長いという理由のために、より長い接触時間をもつより短いチャンネルに対して優位に立つ。いくつかの好ましい実施形態において、吸熱反応マイクロチャンネルは0.5mm以下の高さ(流れに垂直で、吸熱反応マイクロチャンネルの中心から燃焼マイクロチャンネルまでの最短距離を形成する寸法)を有する。いくつかの好ましい実施形態において、吸熱反応マイクロチャンネルの壁と吸熱反応触媒の表面の間には隙間が存在し、その隙間は好ましくは8〜12mil(0.2〜0.3mm)である。
【0015】
別の一側面において、本発明は:少なくとも二つのマイクロチャンネルの積層体(ここで、前記少なくとも二つのマイクロチャンネルの少なくとも一つは取り外し可能な触媒インサート及び触媒ドアを備える。)を備えるICRを提供する。本発明はまた、触媒ドアを開けて触媒を取り出すことでICRを回収又は再生する方法を包含する。
【0016】
更なる一側面において、本発明は:エクステリアと;積層体中の少なくとも二つのマイクロチャンネル、及び前記少なくとも二つのマイクロチャンネルの少なくとも一つに連結してエクステリアへと繋がる触媒前駆体経路を備えるインテリアとを備えるICR(ここで、触媒前駆体経路はプロセスガスの入口及び出口と分離されて区別される。)を提供する。本発明はまた、触媒前駆体経路を通して触媒を添加する(又は溶解させて触媒を取り出す)方法を包含する。
【0017】
別の一側面において、本発明はICRを始動する方法を提供する。その一方法は:燃料チャンネルへ水素を添加し、次いで燃料チャンネルへの水素流れを減少させて炭化水素の流れを増加することによって燃焼反応を開始することを含む。本発明はまた、稼働中の流量に近づけるために未反応ガスが吸熱プロセス側を通過する始動方法を包含する。未反応ガスは窒素のような不活性ガスであるのが好ましいが、未反応のプロセスガスとすることもできる。本発明はまた、発熱及び/又は吸熱反応チャンバを通る流体の総流量が始動時を通じて実質的に一定である始動方法を包含する。別の一始動方法において、炭化水素燃料は燃焼チャンバに入れる前に部分酸化反応を受け、こうしてより低いライトオフ温度(又は着火温度)を得る。
【0018】
別の一側面において、本発明は:隣接する発熱マイクロチャンネル反応チャンバ内の圧力の2倍以上の圧力で、吸熱反応混合物を吸熱マイクロチャンネル反応チャンバに通すことを含む、ICR内で吸熱及び発熱反応を同時に実施する方法を提供する。
【0019】
別の一側面において、本発明はまた:H2及びメタンを含む混合物をICR内のマイクロチャンネルに通すことと;H2及びメタンを酸化剤と反応させて水、CO2及びCOを生成して熱を発生させ、こうしてH2及びメタンを混合物中から除去することとを含むICR内で吸熱及び発熱反応を同時に実施する方法(ここで、マイクロチャンネルを通過する前の混合物中のH2及びメタンのレベルとマイクロチャンネルを通過した後の任意の地点におけるH2及びメタンのレベルを比較測定すると、混合物から除去されるメタンのパーセンテージの方が混合物から除去されるH2のパーセンテージよりも大きい。)を提供する。このことは極めて驚くべき結果である。この「除去」工程は分離技術ではなく化学反応によりなされる。
【0020】
本発明は更に、空隙含有犠牲シムを含む複数のシムの積層体を形成することと;前記スタックに熱及び圧力を掛けて犠牲シムを変形させることとを含む積層装置の形成方法を提供する。本発明はまた、稼働中にプロセス流又は熱移動成分を含有しない空隙を備える積層反応器を提供する。
【0021】
別の一側面において、本発明は:出口を備える第一チャンネルと;出口を備える第二チャンネルと;第一及び第二チャンネルの出口に連結した第三チャンネルと;稼働中に第一及び第二チャンネルの出口からの流れを屈折させて実質的に同一の方向へ流れを導く第三チャンネルへ突き出た舌状部(タング)とを備える統合反応器を提供する。好ましくは、統合反応器はシムを積層することによって形成する。
【0022】
別の一側面において、本発明は:Uベンドを通って向流の吸熱生成物チャンネルへ連結された吸熱反応チャンバと;Uベンドを通って向流の排ガスチャンネルへ連結された発熱反応チャンバとを備える統合反応器を提供する。
【0023】
更なる一側面において、本発明は:Uベンドを通って向流の排ガスチャンネルへ連結された燃料チャンネルと;燃料チャンネル及び排ガスチャンネルの間に配置した酸化剤チャンネルとを備える統合反応器を提供する。
【0024】
別の一側面において、本発明は壁によって分離された燃料チャンネルと隣接する酸化剤チャンネルとを備える統合燃焼反応器(ここで、壁は噴射口を備える。)を提供する。一実施形態において、この壁は非円形の噴射口を備える。別の一実施形態において、この壁は噴射口が不均等に分布している。
【0025】
本発明はまた、反応チャンバ壁と該反応チャンバ壁に隣接する少なくとも二つの発熱反応チャンネルとを有する一つの発熱反応チャンバを備える積層型統合反応器を提供する。例えば、発熱反応チャンバは支持リブによって二つの発熱反応マイクロチャンネルへ分けることができる。
【0026】
更に別の一実施形態において、本発明は:燃料入口側及び燃焼側を備える積層統合燃焼器と;燃料入口側に少なくとも二つの連結部とを備える統合燃焼システム(ここで、燃焼側は入口側に比べて温度上昇と共に比較的自由に膨張する。)を提供する。この連結部は典型的には流体の入口及び出口のための連結部であるが、ICRの膨張を制限するクランプ又は他の手段を有してもよい。典型的には、この二つの側はICRを等容積の二つの側へ分割する。
【0027】
更なる一側面において、本発明は:第一シート(第一シートはシートの平面内にチャンネルを有し、該チャンネルは第一シートの端にある第一開口部へ伸びる。)及び第二シート(第二シートはシートの平面内にチャンネルを有し、該チャンネルは第二シートの端にある第二開口部へ伸びる。)を備える積み重ねシート(ここで、第一シートの端及び第二シートの端は積層ICRの同じ側にある。)と;第一及び第二開口部を連結する導管及び内部空間を備えるマニホールド(この導管は排ガス管、燃料管、酸化剤管、吸熱反応物管及び吸熱生成物管よりなる群から選択される。)とを備える積層ICRを提供する。
【0028】
本発明は更に:発熱反応マイクロチャンネルと、前記発熱反応マイクロチャンネルに隣接する吸熱反応マイクロチャンネルと、(随意的に)酸化剤チャンネルと、排ガスチャンネルと、生成物チャンネルとを備える統合マイクロチャンネル反応器(更に、この統合マイクロチャンネル反応器は少なくとも二つの発熱反応層及び少なくとも二つの吸熱反応層をもつ複数層状に配列される。)を提供する。付加的に、この反応器は各タイプのチャンネル及びマイクロチャンネルを複数(2以上)有することを特徴とし、少なくとも二つの吸熱反応マイクロチャンネルを連結するマニホールド、少なくとも二つの発熱反応マイクロチャンネルを連結するマニホールド、少なくとも二つの酸化剤チャンネルを連結するマニホールド、少なくとも二つの排ガスチャンネルを連結するマニホールド、及び少なくとも二つの生成物チャンネルを連結するマニホールドから選択される2以上のマニホールドを有する(ここで、これらのマニホールドの少なくとも二つは統合反応器に沿って異なる長さで連結される。)。
【0029】
更なる一側面において、本発明は:マニホールドゾーン、熱交換ゾーン、及び反応ゾーンを備える複数ゾーンの統合反応器を提供する。好ましくは、これらのゾーンは統合反応器の本体に沿って直線的に配列される。好ましくは、熱交換ゾーンと反応ゾーンの間に流体の流れが分裂して再結合する遷移ゾーンがある。好ましい一実施形態において、反応器は部分酸化ゾーン及び燃焼ゾーンを有する。
【0030】
本発明は更に、熱交換ゾーン及び反応ゾーンを通る連続したマイクロチャンネルを備える統合反応器を提供する。
【0031】
別の一側面において、本発明は燃焼チャンバ内で燃焼する前に燃料が部分的に酸化される、吸熱及び燃焼反応の同時実施方法を提供する。例えば、炭化水素は完全に又は部分的にCOに変換することができ、COは燃焼チャンバ内で燃焼する。本発明はまた、燃焼触媒の上流に位置した部分酸化触媒を備える統合反応器(ここで、燃焼触媒は吸熱反応チャンバに隣接する燃焼チャンバ内に位置する。)を包含する。部分酸化触媒は燃料チャンネル(又は燃焼チャンネル)内に配置するのが好ましく、チャンネルの断面の実質的に全体を占めるフロースルー型触媒の形態、又はチャンネルに大きな流路を残すフローバイ型触媒の形態を取ることができる。
【0032】
更に別の一側面において、本発明は触媒活性金属で被覆した(金属箔のような)稠密な支持材を備える(好ましくは統合反応器内に配置された)吸熱反応触媒のインサートを提供する。好ましくは、この稠密な支持材はこの活性金属の表面積を増加するための多孔性の層を有する。
【0033】
別の一側面において、本発明は:第一の長さをもつ第一マイクロチャンネルと;少なくとも一つのマイクロチャンネル壁によって形成される第二の長さをもつ隣接し、重複する第二マイクロチャンネルとを備えるマイクロチャンネル反応器(ここで、第二の長さは第一の長さよりも短く;触媒インサートは第二マイクロチャンネル内に配置される。)を提供する。前記少なくとも一つのマイクロチャンネル壁によって触媒インサートがこのより長いマイクロチャンネルに滑り落ちるのが防止される。
【0034】
本発明はまた、本明細書に記載のユニークな構造的特徴又はデザインの何れかを有する装置を包含する。例えば、本発明は対応する生成物チャンネルと横流関係にある発熱及び/又は吸熱反応チャンネルを有する装置を包含する。
【0035】
本発明はまた、本明細書に記載の装置、構造的特徴、デザイン又はシステムの何れかを使用する方法、或いは本明細書に記載の特性又は結果の何れかを特徴とする方法を包含する。いくつかの好適な実施形態において、本発明は従来の装置又は方法からは得ることのできなかった特徴の集合によって規定することができる。容積熱流束、面積熱流束、発熱又は吸熱反応チャンネルを通過するときの圧力損失、接触時間、燃焼排ガス中のNOx又はCOの水準、熱効率、低過剰空気、燃焼反応率、吸熱反応の平衡への接近、反応割合、生成物選択率、熱分布、燃料組成、水蒸気改質反応中での蒸気対炭素の比率、コークス生成の水準、所与の水準の水蒸気改質圧力における性能、吸熱及び発熱反応チャンネル間の差圧、及び時間の関数としての性能の一以上を含む特徴によって本発明の様々な側面を規定することができる。上記及び他の特徴の水準は詳細な説明及び実施例に見出すことができる。
【0036】
好ましい実施形態においては、本発明の複数の側面が結合される。例えば、好適な一実施形態においては本発明に係る方法は接触時間及び吸熱反応の平衡への接近によって特徴付けられる。
【0037】
本発明の様々な実施形態は圧力損失が小さいこと、必要とされる過剰空気が少ないこと、燃焼安定性が高いこと、吸熱及び/又は発熱反応のための接触時間が短いこと、CO及び/又はNOxの生成が少ないこと、理論空気量近傍での稼働であること、安全性がより高いこと、熱サイクルの持続性が高いことのような利点を有することができる。理論空気量近傍での稼働はシステムの排風機又は圧縮機に対する全体的な負荷を軽減し、有意なコスト削減に繋がる。
【0038】
吸熱反応を駆動するために必要な燃焼温度(又は発熱反応の温度)を低下させることによる付加的な利点は、材料の低コスト化又は装置の長寿命化を達成することができるような代替的な金属又は冶金学の使用である。
【0039】
燃焼は均一燃焼及び不均一燃焼が寄与し得るが、マイクロチャンネル(又はクエンチ径よりも小さいか僅かに大きい最小限の開放寸法をもつチャンネル)内での触媒燃焼によって均質反応の寄与が減少し、不均一(触媒)燃焼が優位に立つ。このことは、さもなくば燃焼混合物を材料の安全な稼働温度の限度をかなり超えたところに到達させ得る気相反応を減少させることによって更に安全性を高めることになる。気相燃焼の抑制はチャンネルの最小寸法の減少及び触媒の表面積の増加と共に強くなる。
【0040】
更なる一側面において、本発明は:吸熱反応組成物を少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ入れて該吸熱反応チャンバ内で吸熱反応を実施することと、燃料及び酸化剤を少なくとも一つの発熱反応チャンバへ入れて該発熱反応チャンバ内で発熱反応を実施することとを含む統合燃焼反応中での吸熱反応の実施方法(ここで、前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁があり、前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備える。)に関する。
【0041】
また、本発明は:少なくとも一つの吸熱反応チャンバと少なくとも一つの発熱反応チャンバを備える吸熱及び発熱反応を同時に実施するための統合反応器(ここで、前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁があり、前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備え、該反応器の熱流束特性は熱流束測定試験#1、熱流束測定試験#2、又は熱流束測定試験#3に従って測定される。)に関する。
【0042】
本発明の一側面によれば:(i)発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が20ミリ秒以下であり、熱が少なくとも一つの発熱反応チャンバから少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ吸熱反応チャンバの内部面積を基準にして5W/cm2以上で移動する;(ii)発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が100ミリ秒以下であり、酸化剤は、燃料を完全に酸化するのに必要な量に対して50%未満の過剰量で存在し、燃料及び空気は燃焼生成物(ここで、燃焼生成物はCOが2500ppm未満である。)に変換される;或いは(iii)発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が100ミリ秒以下であり、酸化剤は、燃料を完全に酸化するのに必要な量に対して50%未満の過剰量で存在し、燃料及び空気は燃焼生成物(ここで、燃焼生成物はNOxが100ppm未満である。)に変換される;の少なくとも一つの特徴が得られる。
【0043】
用語集、計算及び試験手順
「シム」とは任意の幅及び高さを有することができ、好ましくは厚さ(最小寸法)が2(ミリメートル)mm以下(いくつかの好ましい実施形態においては50〜500μm)である実質的に平面状の板又はシートのことを指す。
【0044】
「単一操作」とは化学反応、蒸発、圧縮、化学分離、蒸留、凝縮、加熱、又は冷却を意味する。混合及び輸送はしばしば単一操作と一緒に生じるけれども、「単一操作」は単なる混合又は流体輸送を意味しない。
【0045】
「マイクロチャンネル」は少なくとも一つの内部寸法が2mm以下である。
【0046】
「開放チャンネル」は、ガスが比較的低圧力損失で反応チャンバを流れることができるように、反応チャンバ全体に伸びる少なくとも0.05mmの隙間である。
【0047】
「ICR」とは少なくとも一つの吸熱反応チャンネルに隣接する少なくとも一つの燃焼チャンネルを有する統合燃焼反応器のことを指す。
【0048】
好ましい実施形態の稼働中は、反応物は燃焼又は反応チャンバに入り、「多孔性材料」又は「多孔質触媒」に接触して大きな流路を流れる。上記実施形態において、反応物の一部が分子レベルで多孔質触媒の内部へ横断的に拡散し、反応して1種又は複数種の生成物を生じる。その後、生成物は横断的に前記大きな流路に拡散して反応器から出る。
【0049】
「大きな流域」又は「大きな流路」なる用語は反応チャンバ内の開放領域又は開放チャンネルのことを指す。大きな流路(又は流域)をもつ反応チャンバは触媒を含有し、触媒表面と反応チャンバ壁又は第二触媒表面の間には隙間がある。隣接する大きな流域のために、ガスが大きな圧力損失を受けることなく反応チャンバを速く流れることができる。好ましい実施形態においては、大きな流域内は層流である。反応チャンバ内の大きな流域は好ましくは断面積が5×10-8〜1×10-22、より好ましくは5×10-7〜1×10-42である。大きな流域は、1)反応チャンバの内部容積、又は2)反応チャンバの断面のいずれかの好ましくは少なくとも5%、より好ましくは30〜80%を占める。
【0050】
「平衡反応率」は最大到達可能反応率を反応器温度、圧力、及び供給組成物の関数とする古典的な方法で定義される。炭化水素蒸気改質反応の場合、平衡反応率は温度の上昇と共に上昇し、圧力の上昇と共に低下する。
【0051】
「反応チャンバ容積」は(発熱又は吸熱)反応チャンバの内部容積である。この容積には反応チャンバ容積内の触媒容積、開放流の容積(もしあれば)及び金属支持リブ又はフィン(もしあれば)が含まれる。この容積には反応チャンバ壁は含まれない。反応チャンバ容積は断面のどこかに触媒を含有しなければならず、熱輸送のために別の反応チャンバに直接的に隣接しなければならない。例えば、2cm×2cm×0.1cmの触媒、及び該触媒に直に隣接する流れのための2cm×2cm×0.2cmの開放容積を備える反応チャンバは全体の容積が1.2cm3となる。同一の触媒が各チャンネル内に1cm×2cm×0.1cmの触媒容積をもつ二つの部分又はチャンネル(各々0.2cm3の容積が二つ)に(各触媒に直に隣接する1cm×2cm×0.2cm(各々0.4cm3の容積が二つ)の開放空間と一緒に)分割され、この二つの触媒チャンネルの間に0.1cm×2cm×0.3cm(0.06cm3)の金属リブ又は間隔があり、そして隣接する相対型の反応チャンバ(すなわち、吸熱反応チャンバに隣接する発熱反応チャンバ)があるときは、反応器の全体の容積は1.26cm3と規定される。この容積は吸熱反応チャンバの容積熱流束、面積熱流束、及び吸熱反応接触時間の計算に用いる。
【0052】
「反応器コア容積」は反応チャンバ容積及びすべての燃焼チャンバ容積及び二つのチャンバを分離する金属ウェブとして定義される。燃焼チャンバ容積は、反応チャンバ容積に隣接し、その中で発熱反応による熱が発生するチャンバ容積として定義される。周囲金属は反応器コア容積に含まれない。
【0053】
一例として、2cm×2cm×0.3cmの反応チャンバ容積と2cm×2cm×0.2cmの燃焼チャンバ容積と2cm×2cm×0.1cmの分離ウェブをもつ反応器は全体の反応器コア容積が2.4cm3となる。
【0054】
反応器コア容積には反応器コア容積に取り付けても取り付けなくてもよいいかなる予熱交換ゾーン容積も含まれない。予熱交換ゾーンは反応器に取り付けてもよいが、流れ方向に直交に装置を横切るいかなる平面に沿っても吸熱反応触媒は含有しない。
【0055】
「吸熱反応チャンバ熱流束」は吸熱反応の熱負荷を反応チャンバ容積で割った値と定義される。
【0056】
「反応器コア容積熱流束」は吸熱反応の熱負荷を反応器コア容積で割った値と定義される。
【0057】
「熱交換流束」は冷流に移動した全体の熱を熱交換コア容積で割った値と定義される。
【0058】
「熱交換コア容積」は熱を移動させるすべての流体流れに関するマイクロチャンネル、マイクロチャンネル間のリブ、及びマイクロチャンネルを分離する壁を含む総熱交換容積と定義される。熱交換容積は本明細書及び添付の図面に記載の熱交換ゾーンを含む。熱交換コア容積には吸熱反応チャンバも、流れの方向に直交に吸熱反応チャンバを横切る任意の平面内に含まれ得るいかなる容積も含まれない。
【0059】
「平均面積熱流束」は吸熱反応の熱量を吸熱反応チャンバの熱移動表面の面積で割った値と定義される。この吸熱反応チャンバの熱移動表面は(リブ又は他の構造のときは断続してもよい)吸熱反応チャンバ内の平面状の領域(その上方には反応物の流れのための領域があり、その下方には吸熱反応チャンバ及び発熱反応チャンバを分離する壁がある。)によって形成される。この領域は発熱反応チャンバから吸熱反応チャンバへの熱移動のための経路である。
【0060】
「ウェブ」は吸熱反応チャンバと発熱反応チャンバを分離する壁として定義される。
【0061】
NOxの測定は選択した装置を試験している間の排ガス流でなされる。燃焼チャンバの温度を少なくとも850℃に維持するのに充分な燃焼流と共に50%の過剰空気で測定されるNOxの濃度(ppm)は、本明細書において「標準NOx試験測定値」と呼ぶ。測定値は従来のメタン蒸気改質器での100ppmを超えるNOx水準と比較することができる。
【0062】
「見かけ平衡反応率温度」はメタンの反応率(又は、より一般的には炭化水素の反応率)に基づく見かけ上の温度、或いは測定された平均処理圧力における測定されたメタン反応率に等しい平衡メタン反応率を生じるのに必要な温度である。平均処理圧力は入口及び出口圧力の測定値の平均値であると推定した。平衡ガス組成はNASALEWIS熱力学的平衡コード又はChemCADを用いて計算した。メタンの反応率は式:
【数1】

(式中、yiは成分iのモル分率である。)
に従ってガスクロマトグラフによって測定した乾燥生成物ガス組成から計算した。
【0063】
同様に、COへの選択率に基づく見かけ温度は、測定された平均処理圧力における測定されたCOへの選択率に等しいCOへの平衡選択率を生じるのに必要な温度であると見積もった。
【0064】
ガス毎時空間速度(GHSV)は、接触時間の逆数にミリ秒を時間に変換するための転換因子を掛けた値である。
【数2】

(式中、CTはミリ秒単位での接触時間である。)
反応器に供給される容積流量は、接触時間又はGHSVを計算するために0℃及び1.013barの標準状態で規定される。従って、接触時間及びGHSVは入口のモル流量及び反応チャンバ容積のみに依存する。
【0065】
熱流束測定試験#1
850℃、1.70bar(10psig)を超えない出口圧力、水蒸気:炭素の比率を3:1、及び接触時間を100msとしてメタン水蒸気改質反応のための装置を稼働する。接触時間は標準温度及び圧力(STP:273K及び1atm)にて反応チャンバの全容積を反応物の全容積入口流量で割った値として定義される。
【0066】
例えば、反応チャンバ容積が1立方センチメートルのときは、反応物の入口全流量は100msの接触時間のためには0.6標準リットル/分となる。メタンの入口流量は標準温度及び圧力で0.15標準リットル/分で、水蒸気の入口流量は0.45リットル/分と計算される。この例では、メタンの入口モル流量は100msの接触時間のために概して0.00045モル/秒となる。これらの数値は反応チャンバの全容積と共に線形的に増減する。2立方センチメートルの反応チャンバ容積は0.0009モル/秒を必要とすることになる。
【0067】
メタン反応率は、出口生成物の組成及びメタン改質反応生成物の出口流量を測定して以下の式に基づいて計算することによって決定される。
反応率%=100×(メタンのモル数(in)−メタンのモル数(out))/(メタンのモル数(in))
メタンのモル数(in)=STPにおけるメタンの入口流量/(22.4L/mol)
メタンのモル数(out)=[全生成物の乾燥ガスの出口流量/(22.4L/mol)]×乾燥ガス中のメタン%(GC分析)
乾燥ガスは、未反応の水又は他の凝縮性流体を凝縮した後の生成物のガス流として定義される。
COへの選択率%=100×(COのモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
CO2への選択率%=100×(CO2のモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
吸熱熱負荷(単位ワット)=(反応率%/100)×メタンのモル数(in)×(一酸化炭素への水蒸気改質反応の850℃における反応熱(226800J/mol)×COへの選択率%+二酸化炭素へのメタン水蒸気改質反応の850℃における反応熱(193200J/mol)×CO2への選択率%)/100
吸熱反応チャンバ熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/吸熱反応チャンバ容積
反応器コア容積熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/反応器コア容積
【0068】
熱流束測定試験のための熱を供給する燃焼反応のためには以下の条件を満たさなければならない。
1.使用しなければならない気相燃料は水素又はメタンである。
2.空気対燃料の比率は過剰空気のパーセンテージが5〜100%に維持される。過剰空気は、燃料及び空気の組合せ中の酸素の全モル流量を、そのモル流量の燃料を完全に酸化するのに必要な酸素のモル流量で割った値として定義される。例えば、1モルの酸素は2モルの水素を完全に酸化することができるので、100%の過剰空気は空気:水素(モル比)=4.76:1に対応する。空気は酸素が21%モルパーセントで、残りが窒素として考える。
3.反応ゾーンの最後の25%の金属温度を平均化することによって評価して、或いは850℃以上の見かけ平衡反応率温度を与える吸熱反応生成物の混合物によって評価して、空気及び燃料の流量と入口温度を調節して燃焼反応ゾーンを850℃に維持する。
【0069】
性能を最適化するために上で列挙した範囲内で条件を選択する。吸熱熱負荷を反応チャンバ容積で割ることによって吸熱反応チャンバ熱流束を計算する。反応器コア容積熱流束を計算する。
【0070】
熱流束測定試験#2
850℃、1.70bar(10psig)を超えない出口圧力、水蒸気:炭素の比率を3:1、及び接触時間を20msとしてメタン水蒸気改質反応のための装置を稼働する。接触時間は標準温度及び圧力(STP:273K及び1atm)にて反応チャンバの全容積を反応物の全容積入口流量で割った値として定義される。
【0071】
メタン反応率は、出口生成物の組成及びメタン改質反応生成物の出口流量を測定して以下の式に基づいて計算することによって決定される。
反応率%=100×(メタンのモル数(in)−メタンのモル数(out))/(メタンのモル数(in))
メタンのモル数(in)=STPにおけるメタンの入口流量/(22.4L/mol)
メタンのモル数(out)=[全生成物の乾燥ガスの出口流量/(22.4L/mol)]×乾燥ガス中のメタン%(GC分析)
乾燥ガスは、未反応の水又は他の凝縮性流体を凝縮した後の生成物のガス流として定義される。
COへの選択率%=100×(COのモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
CO2への選択率%=100×(CO2のモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
吸熱熱負荷(単位ワット)=(反応率%/100)×メタンのモル数(in)×(一酸化炭素への水蒸気改質反応の850℃における反応熱(226800J/mol)×COへの選択率%+二酸化炭素へのメタン水蒸気改質反応の850℃における反応熱(193200J/mol)×CO2への選択率%)/100
吸熱反応チャンバ熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/吸熱反応チャンバ容積
反応器コア容積熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/反応器コア容積
【0072】
熱流束測定試験のための熱を供給する燃焼反応のためには以下の条件を満たさなければならない。
1.使用しなければならない気相燃料は水素又はメタンである。
2.空気対燃料の比率は過剰空気のパーセンテージが50%に維持される。過剰空気は、燃料及び空気の組合せ中の酸素の全モル流量を、そのモル流量の燃料を完全に酸化するのに必要な酸素のモル流量で割った値として定義される。例えば、1モルの酸素は2モルの水素を完全に酸化することができるので、100%の過剰空気は空気:水素(モル比)=4.76:1に対応する。空気は酸素が21%モルパーセントで、残りが窒素として考える。
3.反応ゾーンの最後の25%の金属温度を平均化することによって評価して、或いは850℃以上の見かけ平衡反応率温度を与える吸熱反応生成物の混合物によって評価して、空気及び燃料の流量と入口温度を調節して燃焼反応ゾーンを850℃以上に維持する。
【0073】
性能を最適化するために上で列挙した範囲内で条件を選択する。熱負荷を反応チャンバ容積で割ることによって吸熱反応チャンバ熱流束を計算する。反応器コア容積熱流束を計算する。
【0074】
熱流束測定試験#3
850℃、1.70bar(10psig)を超えない出口圧力、水蒸気:炭素の比率を3:1、及び接触時間を25msとしてメタン水蒸気改質反応のための装置を稼働する。接触時間は標準温度及び圧力(STP:273K及び1atm)にて反応チャンバの全容積を反応物の全容積入口流量で割った値として定義される。
【0075】
メタン反応率は、出口生成物の組成及びメタン改質反応生成物の出口流量を測定して以下の式に基づいて計算することによって決定される。
反応率%=100×(メタンのモル数(in)−メタンのモル数(out))/(メタンのモル数(in))
メタンのモル数(in)=STPにおけるメタンの入口流量/(22.4L/mol)
メタンのモル数(out)=[全生成物の乾燥ガスの出口流量/(22.4L/mol)]×乾燥ガス中のメタン%(GC分析)
乾燥ガスは、未反応の水又は他の凝縮性流体を凝縮した後の生成物のガス流として定義される。
COへの選択率%=100×(COのモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
CO2への選択率%=100×(CO2のモル数/(CO2のモル数+COのモル数+もしあればCのモル数))
吸熱熱負荷(単位ワット)=(反応率%/100)×メタンのモル数(in)×(一酸化炭素への水蒸気改質反応の850℃における反応熱(226800J/mol)×COへの選択率%+二酸化炭素へのメタン水蒸気改質反応の850℃における反応熱(193200J/mol)×CO2への選択率%)/100
吸熱反応チャンバ熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/吸熱反応チャンバ容積
反応器コア容積熱流束(単位:ワット/cm3)=吸熱熱負荷/反応器コア容積
【0076】
熱流束測定試験のための熱を供給する燃焼反応のためには以下の条件を満たさなければならない。
1.使用しなければならない気相燃料は水素又はメタンである。
2.空気対燃料の比率は過剰空気のパーセンテージが5〜100%に維持される。過剰空気は、燃料及び空気の組合せ中の酸素の全モル流量を、そのモル流量の燃料を完全に酸化するのに必要な酸素のモル流量で割った値として定義される。例えば、1モルの酸素は2モルの水素を完全に酸化することができるので、100%の過剰空気は空気:水素(モル比)=4.76:1に対応する。空気は酸素が21%モルパーセントで、残りが窒素として考える。
3.反応ゾーンの最後の25%の金属温度を平均化することによって評価して、或いは850℃以上の見かけ平衡反応率温度を与える吸熱反応生成物の混合物によって評価して、空気及び燃料の流量と入口温度を調節して燃焼反応ゾーンを850℃以上に維持する。
【0077】
性能を最適化するために上で列挙した範囲内で条件を選択する。熱負荷を反応器コア容積で割ることによって反応器コア容積熱流束を計算する。反応器コア容積熱流束を計算する。
【0078】
ICRに対する圧力試験−高温試験
好ましい実施形態において、本明細書に記載するいかなる装置も内部の差圧に耐えることができる。例えば、いくつかの好ましい実施形態は以下の圧力試験の要件を満たす。少なくとも一つの臨界的チャンネル寸法が約2mm未満のマイクロチャンネルユニット稼働装置では、少なくとも二つの入口流体流れを用いて稼働する。第一の流体流れは850℃、180psigとしなければならない。第二の流体流れは800℃、10psigとしなければならない。任意の流量を用いることができ、代替的には、装置を出るこの二つの流体流れの末端を一時的に密封した停滞流を用いてもよい。上記圧力及び温度で装置を300時間稼働する。300時間後の稼働の後、各流体流れラインを50psigに加圧して2時間保持する。圧力は一定に維持されなければならず、このことは周囲環境への漏れ経路が最小限であることを示す。次に、第一の流体流れラインを大気中に開放したまま第二の流体流れラインを50psigに加圧して2時間保持する。圧力は一定に維持されなければならず、このことは内部の漏れ経路が最小限であることを示す。最終漏れ検査のための流体としてヘリウムを使用するときは、最小限の漏れ経路は10-6標準立方センチメートル/秒未満のヘリウムの漏れ速度として定義される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の反応器の断面図を概略的に示す。
【図2】ICR内の流体流れのための種々のデザインを概略的に示す。
【図3】ICR内の流体流れのための種々のデザインを概略的に示す。
【図4】ICR内の流体流れのための種々のデザインを概略的に示す。
【図5】プレス接着によるチャンネルの変形を示す。
【図6】熱間静水圧プレス接着中に内部のチャンネルを変形から保護するための犠牲チャンネルを示す。
【図7】二流体ループをもつICR装置を組み立てるために発注したシムのリストである。
【図8】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図9】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図10】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図11】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図12】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図13】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図14】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図15】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図16】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図17】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図18】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図19】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図20】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図21】二流体ループの接着ICR装置のためのシムのデザインの例示である。
【図22A】溶接ICR装置のためのシムのデザインの例示である。このデザインを有するICRの試験結果を実施例に報告している(装置N2、N3、M1及びM2)。
【図22B】溶接ICR装置のためのシムのデザインの例示である。このデザインを有するICRの試験結果を実施例に報告している(装置N2、N3、M1及びM2)。
【図22C】溶接ICR装置のためのシムのデザインの例示である。このデザインを有するICRの試験結果を実施例に報告している(装置N2、N3、M1及びM2)。
【図23】二流体ループ中の流れの向きを変えることのできる舌状部(タング)を概略的に示す。
【図24A】接着した反応器内へ触媒インサートを挿入するための工具を示す。
【図24B】接着した反応器内へ触媒インサートを挿入するための工具を示す。
【図24C】接着した反応器内へ触媒インサートを挿入するための工具を示す。
【図25】実施例に対応するデータグラフであり、実施例1の接着ICR装置の稼働中に測定したSMR(水蒸気メタン改質)のCH4反応率及びCOへの選択率を示す(水蒸気中のメタンは水蒸気:C=2.5:1、接触時間=9ms、平均反応器温度=900℃、平均圧力=12.8atm)。865℃、12.8atmにおける反応率及び選択率の予測平衡値も示す(点線)。
【図26】実施例に対応するデータグラフであり、実施例1の接着ICR装置の稼働中に測定したSMRのメタン反応率及びCOへの選択率(左軸)を示す(水蒸気中のメタンは水蒸気:C=2.5:1、接触時間=9ms、出口圧力=12bar)。反応ゾーンの入口、中央、及び出口付近の表皮温度(右軸)も示す。
【図27】実施例に対応するデータグラフであり、図26及び接触時間9msの条件で、実施例1の接着ICR装置の稼働時の燃焼H2反応率及び燃焼CH4反応率とCOへの選択率の測定値を示す。
【図28】実施例に対応するデータグラフであり、実施例2の接着ICR装置の稼働中に測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率を示す(水蒸気中のメタンは水蒸気:C=2.5:1、850℃、12.5atm、接触時間=6〜9ms)。反応器後半(すなわち、自由端に近い)の平均測定表皮温度に基づく反応率及び選択率の予測平衡値も示す。
【図29】実施例に対応するデータグラフであり、実施例2の接着ICR装置の稼働中に測定した燃焼水素反応率、メタン反応率、及びCOへの選択率(左軸)と乾燥燃焼排ガスのNOx濃度(右軸)を示す。燃焼燃料組成は5〜10%CH4、2〜0%CO、6%CO2(残りH2)であった。COへの選択率は燃焼器に供給され、COとして燃焼器を出るCO及びCH4燃料の部分と定義されることに注意されたい。
【図30】実施例に対応するデータグラフであり、実施例2の接着ICR装置の稼働中に測定した中心線に沿った表皮温度を示す。燃焼燃料組成は5〜10%CH4、2〜0%CO、6%CO2(残りH2)であった。
【図31】実施例に対応するデータグラフであり、実施例2の接着ICR装置の稼働中に測定したSMRのメタン反応率、COへの選択率、及び炭素バランスを示す(水蒸気中のメタンは水蒸気:C=3:1、850℃、12atm、接触時間=6〜18ms)。反応器後半(すなわち、自由端に近い)の平均測定表皮温度に基づく反応率及び選択率の予測平衡値も示す。
【図32】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1(比率は正確ではない)の概略図であり、相対的な熱電対の配置及び典型的な測定熱分布(平均ウェブ温度=868℃、SMR=13atm、水蒸気:C=2:1、接触時間=6ms、燃焼燃料組成は87%H2、7%CH4、8%CO2、25%過剰燃焼空気)を示す。ウェブ温度はSMR流と燃焼流の間の金属ウェブ内のサーモウェル内部で測定し、表皮温度は絶縁材下の装置エクステリアに貼った熱電対から取った。
【図33】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1の最初の300時間の稼働にわたり測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率を示す。
【図34】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1の最初の200時間の稼働にわたり測定した燃焼水素反応率、メタン反応率、及びCO2への選択率(左軸)と乾燥燃焼排ガスNOx濃度(右軸)を示す。
【図35】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1を13atm、775〜830℃、及びSMR接触時間6msとして測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率を示す。これらのデータは最初の125時間の試験後に取った。
【図36】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1中で20atm、測定平均反応器温度=823〜855℃、水蒸気:C=2:1で測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率(左軸)と、この測定平均反応器温度で予測される平衡値との比較を示す。また、測定したSMR圧力損失及び平均反応器面積熱流束(右軸)も示す。
【図37】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M1中で20atm、(反応器の後部25%における)測定平均反応器温度=850℃、SMR接触時間=6msで測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率の比較を示す。
【図38】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M2(比率は正確ではない)の典型的な温度分布を示し、相対的な熱電対の配置及び典型的な測定熱分布を示す。反応器の条件は、SMR=13bar、水蒸気:C=2:1、接触時間=6ms、燃焼燃料組成は89%H2、5%CH4、6%CO2、5%過剰燃焼空気であった。ウェブ温度はSMRと燃焼流の間の金属ウェブ内のサーモウェル内部で測定し、表皮温度は絶縁材下の装置エクステリアに貼った熱電対から取った。
【図39】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M2の最初の200時間の稼働にわたり測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率を示す。
【図40】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M2中で13bar、850℃、水蒸気:C=2:1で測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率と、この測定平均ウェブ温度で予測される平衡値との比較を示す。また、測定したSMR圧力損失及びSMR反応熱に基づく平均反応器面積熱流束も示す。
【図41】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M2の最後の44mm中で約20bar、850℃、水蒸気:C=2:1で測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率と、この測定平均ウェブ温度で予測される平衡値との比較を示す。条件の二つに関してはウェブ温度が880及び890℃であったことに注意されたい。また、測定したSMR圧力損失及びSMR反応熱に基づく平均反応器熱流束も示す。
【図42】実施例に対応するデータグラフであり、溶接ICR装置M2の反応ゾーンの最後の44mm中で13bar、接触時間=6ms、水蒸気:C=2:1で測定したSMRメタン反応率及びCOへの選択率と、この測定平均ウェブ温度に対応する平衡値との比較を示す。また、測定したSMR圧力損失及びSMR反応熱に基づく平均反応器熱流束も示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明に係る統合反応器は発熱反応チャンバと吸熱反応を触媒できる触媒を含む隣接する第二の反応チャンバを含有する。反応チャンバ壁は発熱及び吸熱反応チャンバを分離する。
【0081】
発熱反応チャンネル及び吸熱反応チャンネルの一実施形態の断面図を図1に示す。発熱(例えば燃焼)チャンネル及び/又は吸熱(例えば改質)チャンネルはスペーサ206と共に触媒インサート204を含有することができる。スペーサ206は反応チャンバ壁210に対して触媒インサートを押す。この図においては、何れかのチャンネル中の流れは頁へ入ってくるもの又は頁から出て行くものである。壁210は触媒インサート204を反応チャンバ214から分離する。好ましくは触媒インサート204はチャンネル表面2211に接触し、熱伝達を高めるために内部壁表面213及び215にも接触する。好ましくは、スペーサ206は反応チャンバ壁表面213及び215に隣接(好ましくは接触)する。スペーサは一部品に予備成形されて触媒インサートと一体化し、又は触媒インサート上に配置された別々の部材となり得る。
【0082】
本発明において、発熱(及び/又は吸熱)反応チャンバは高さ(流れに垂直な寸法であり、積層装置では積み重ねの方向)が好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下で、いくつかの実施形態においては0.5mm以下で、そしていくつかの実施形態においては0.1mm〜1mmの範囲である。反応チャンバの寸法は内部寸法であり、触媒は含むがチャンバ壁は含まない。(発熱及び吸熱反応チャンバを分離する)反応チャンバ壁は熱伝導性で、好ましくは高さ(反応チャンバ間の距離)が5mm以下、より好ましくは2mm以下であり、いくつかの実施形態においては1〜2mmの高さである。良い性能のためには熱移動距離が短いのが望ましい。上記の短い熱移動距離が、好ましい反応器構造と結びついて、驚くほど高い容積生産性及び低圧力損失を提供することを見出した。
【0083】
反応チャンバは高さ、幅及び長さの寸法を有する。高さ及び/又は幅は好ましくは約2mm以下で、より好ましくは1mm以下である。反応チャンバの長さは典型的にはもっと長い。好ましくは、反応チャンバの長さは1cmを超え、より好ましくは1〜50cmの範囲である。驚くべきことに、反応チャンネル長さが少なくとも10cm、より好ましくは少なくとも17cm、いくつかの実施形態においては10〜50cmの範囲である統合反応器においては優れた結果が得られることを見出した。好ましくは、隣接する吸熱及び発熱反応チャンネルは熱発生負荷を吸熱反応における熱消費と合わせるために実質的に同一の長さを有する。
【0084】
典型的には、反応チャンバの側面は反応チャンバ壁によって形成される。前記壁はセラミック、鉄鋼のような鉄基合金、又はモネル、又はインコネル625、インコネル617若しくはハイネス230のような高温ニッケル基超合金等の硬質材料で作られるのが好ましい。好ましくは、反応チャンバ壁は耐久性があり、伝熱性に優れた材料で構成される。
【0085】
好ましくは、発熱反応チャンバは大きな流路を有する。いくつかの好ましい実施形態においては、発熱及び/又は吸熱反応チャンバは、入口から出口まで連続した大きな流路をもつ入口及び出口を有する。好ましくは、反応チャンバ内のこの大きな流路(開放チャンネルの隙間)の高さは1mm以下であり、長さ(正味の流れの方向)は好ましくは20インチ(50cm)以下である。大きな流路内の触媒の幅は変化し得るがこの大きな流路の周囲の好ましくは少なくとも20%、より好ましくは50%である。これらの好ましい実施形態においては、入口から出口までの圧力損失はシステムの入口圧力の好ましくは20%未満で、より好ましくは10%未満である。圧力損失は好ましくは350kPa未満で、より好ましくは圧力損失は200kPa未満で、更により好ましくは圧力損失は70kPa未満である。ポンプや圧縮機のような他のシステム機器のサイズ及びコストを削減するために、圧力損失は小さいのが望ましい。他のそれほど好ましくはない実施形態においては、反応チャンバは大きな流れに干渉するポーラスプラグのような部分を有してもよい。
【0086】
統合燃焼反応器は好ましくは、1)吸熱マイクロチャンネル触媒の上流での燃焼反応を防ぎ、2)マイクロチャンネルの断面にわたって燃焼反応物の一つを分布させるデザインを利用する。分布は均一分布、反応チャンバの前部(上流部分)に不均一な負荷をもつ分布、及び反応チャンバの後部に不均一な負荷をもつ分布を包含することができる。流れを分布させる特に好ましい方法は、そこから加圧酸化剤が燃料チャンネル内へ噴出するジェットを使用することである。もっとも好ましくは、この酸化剤は吸熱反応チャンバに直に隣接する反応チャンバ壁上に配置されている燃焼触媒へ流れる。酸化剤の絶対圧力は燃料流の絶対圧力よりもわずかに高い(1psiの10分の1から10psiまで又はそれ以上)
ことのみが必要である。
【0087】
反応器は一つの発熱反応及び一つの吸熱反応を同時に実施するように設計することができる。代替的に、単一装置は多くの発熱及び/又は吸熱反応を同時に実施するように設計することができる。例えば、二つ以上の異なる発熱(及び/又は吸熱)反応を単一装置内の別々の層で実施することができる。代替的に、複数の反応を装置の同一層内で実施することができる。例えば、単一チャンネルは部分酸化反応チャンバとそれに続く燃焼チャンバを有することができる。そのような構造は、例えば、燃料組成物中のメタン又は他の炭化水素を部分的に酸化してこの部分酸化された燃料を燃焼チャンバに流入させるのに、特に有用となり得る。代替的に、吸熱反応チャンバ内で水素へ改質される前に、炭化水素の混合物を部分的に又は完全にメタンへ予備改質することもできる。
【0088】
いくつかの好ましい実施形態においては、本発明に係る反応器は、燃料、酸化剤及び/又は吸熱反応物のための予熱ゾーンを含む。いくつかの好ましい実施形態においては、予熱ゾーンは組成物が発熱又は吸熱反応チャンバへと進む前に通過する同一のマイクロチャンネルの上流部分であるか又はこれを含む。特に好ましい実施形態においては、上記は、高温の生成物がUベンドを通り反応チャンバを含有するマイクロチャンネルの上流部分に隣接するチャンネルを通って戻り下るように流すことで達成することができる(実施例参照)。
【0089】
いくつかの好ましい実施形態においては、燃焼チャンバからの排ガスは燃料及び/又は吸熱反応物を予熱するために使用する。いくつかの好ましい実施形態においては、マイクロチャンネル排ガスチャンバは統合燃焼反応器内で燃焼チャンバの下流に位置する。好ましくは、排ガスチャンバは燃焼触媒を含有する。というのは付加的に熱を発生させることができ、そして汚染物質を低減することができるからである。水蒸気改質の関与するいくつかの好ましい実施形態においては、吸熱反応チャンバは水蒸気改質触媒を含有する一方でこの改質触媒の下流の流路部分は触媒を有しない。これにより、冷却されて反応の再平衡化が抑制されるので収率が向上する。プロセス生成物戻りチャンネル内に触媒がなくても、反応器壁が内在的に触媒作用をある程度有し、部分的に生成物を再平衡化することがある。炭化水素の水蒸気改質に関しては、所望する生成物が水素の場合は、より低い温度で水性ガスシフト反応が促進されるので、このことは有利となり得る。合成ガスを所望する場合は、生成物流の再平衡化を抑制するのが有利である。
【0090】
統合反応器内の一つの流体流れに対して複数の操作を行う必要性の観点から、いくつかの好ましい実施形態においては、統合反応器は実質的に一つの連続的なマイクロチャンネル(すなわち、マイクロチャンネルの寸法が実質的にその長さ全体にわたる統合反応器)又は少なくとも1cm、より好ましくは少なくとも10cm、いくつかの実施形態においては1〜200cmの長さの複数のマイクロチャンネルを含む。
【0091】
いくつかの実施形態においては、反応チャンバは平行六面体の形状を有するが;円筒(例えば、隣接し合う円筒、又は吸熱反応触媒を含有する円弧によって部分的に囲われた発熱反応触媒を有する円筒、若しくはその逆)、或いは角柱(熱輸送距離を減少させて熱輸送のための表面積を最大化するために緊密に詰まり合った角柱が好ましい)も可能であることを理解すべきである。上記形状は、例えば、ブロックに穴を開けることによって、或いは積層されて接着されたシムが開口部のエッジによって区画される境界を有する通路を形成するように開口部が並べられた形状をもつシムの積層体を積み重ねることによって作ることができる。表面積を増加させるために、いくつかの実施形態においては、反応チャンバ(発熱、吸熱の何れか、又は両方)は突起又はマイクロチャンネルのセットを有することができる。いくつかの好ましい実施形態においては、反応チャンバ壁はフィンを有する。フィンは任意の形状を有することができ、部分的に又は完全に反応チャンバの幅にわたって伸びることができる。好ましくは、1種又は複数種の触媒が反応チャンバ壁にわたって堆積して、発熱又は吸熱反応チャンバを形成する。
【0092】
隣接する反応チャンバ間の熱移動に加えて、いくつかの実施形態においては、反応チャンバはマイクロチャンネル熱交換器と熱接触することができる。反応チャンバと熱交換器の連結によって熱移動速度が高くなる。マイクロチャンネル熱交換器の使用を含めた具体例及びより詳細な説明は2000年1月27日出願の米国特許出願第09/492,246号に提供されており、これを本明細書に援用する。いくつかの実施形態においては、反応チャンバ及び熱交換器は少なくとも0.6W/cm3(反応器容積)の熱流束を有する。
【0093】
発熱及び吸熱反応チャンバの層を隣接させることは本発明の一般的特徴であり、いくつかの好ましい実施形態においては、少なくとも2層、より好ましくは5層の吸熱反応チャンバが少なくとも1層、より好ましくは少なくとも4層の発熱反応チャンバと交互に存在する。好ましくは、外側の層は同一タイプの内側の層と比べて反応物の質量流量が少なく(より好ましくは半分に)なるように装置が設計され、方法が実施される。例えば、三つの吸熱反応層間に交互配置された二つの発熱反応層を有する装置においては、外側の二つの吸熱反応層は内側の吸熱反応層の半分の流量であるのが好ましい。以下に記載する溶接ICR装置においては、(“M”構造を有する)それぞれの二流体ループは一つの層であるが、シムの積層体の最上層及び最下層は、稼働中は、(全二流体ループである)内側の層の半分の質量流しか含有しない半二流体ループである。装置の底部から入り、マニホールドゾーン、熱交換ゾーン、及び反応ゾーンを通って上に流れ、次いでUベンドの近くで合流し、その後に結合流として前記ゾーンを通って戻ってくる二流体の特徴を二流体ループと呼ぶ。
【0094】
装置は所望の特性により、プラスチック、金属、セラミック及びコンポジット製とすることができる。周囲の環境から装置を分離する壁は断熱性とすることができるが、しかしながら、隣接する発熱及び吸熱反応チャンバを分離する壁は伝熱性を有するべきである。
【0095】
本発明のICR反応器システムには多数の可能な構造がある。好ましい実施形態においては、単一の統合装置は反応ゾーン、予熱又は伝熱式加熱ゾーン、及びマニホールドゾーンを含有する。より好ましくは、この装置は装置の最も高温の末端部における熱膨張及び応力最小化を可能とするための自由端によって特徴付けられる。自由端を作るために、反応物流はUベンドして生成物流を形成する。燃焼流(燃料及び空気の混合)もまた、Uベンドして燃焼排ガス流を形成する。「自由端」は非自由端よりも大きな自由度をもつこと(これは、流体入口及び出口のための連結部が相対的に少ないか、より好ましくは、無いことによって達成される。)によって特徴付けられる。その代わり、流体入口及び出口は熱応力の小さい反応器の非自由端上に集められる。稼働中は、反応器の自由端は典型的には装置の非自由端よりも熱い。反応器の自由端は熱膨張を妨げるクランプ又は他の部品を相対的に少なくすべきである。
【0096】
いくつかの好ましい実施形態においては、流れ方向は二流体ループの幾何学的形状によって特徴付けられる(図2の概略図を参照。)。反応層は同一のマイクロチャンネル内に、マニホールドゾーンを流れ、予熱ゾーンを流れ、その後反応ゾーン(反応チャンバ容積)へ流入する反応物チャンネルを有する。このプロセス反応流は次いでUターンをして、元来た反応チャンネルに対向して流れる生成物戻り流となる。好ましくは、流路を流れている間中、流体は少なくとも一つの寸法がマイクロチャンネルの範囲内にあるチャンネル内に含まれる。生成物戻りチャンネルの反対側において、第二の反応物チャンネルが対向流となって流れる。Uベンドの頂上付近においては、二つのプロセス反応チャンネルは好ましくは一緒になって中央を流れる共通の生成物戻りチャンネルを形成する。この二つのプロセス反応流が合流して単一の生成物戻り流となるとき、流れの直接衝突を防ぎ、流れの不安定性を低減するためにタング(舌状部)が中間に置かれるのが好ましい。
【0097】
プロセス層に隣接するのは燃焼層である。燃焼層の最も外側のチャンネルは燃料チャンネルで構成される。燃料は装置の底部にあるマニホールドゾーンを流れ、次いで連続するマイクロチャンネル内の予熱又は伝熱式熱交換ゾーンを通り、次いで燃焼反応ゾーン(燃焼チャンバ容積)へ入る。好ましくは、空気(又は他の酸化剤)は各燃料チャンネルに隣接する酸化剤チャンネルを流れ、マニホールド及び熱交換ゾーンを通る。その後、燃焼ゾーンの長さに沿って空気を供給するためにジェットオリフィスを使用して空気が燃焼チャンバ又はゾーンに流入する。酸化剤チャンネルはUベンド部の手前で終了する。二つの燃料チャンネルは反応ゾーンの末端付近で一緒になる。好ましくは、この二つの流れは合流して燃焼層の最も内側のチャンネルを流れ下る単一の排ガスチャンネルとなる。二つの燃焼流が合流して単一の排ガス戻り流となるとき、流れの直接衝突を防ぎ、流れの不安定性を低減するためにタング(舌状部)が中間に置かれるのが好ましい。
【0098】
所望の容量を達成するために、プロセス反応及び燃焼層は複数回繰り返してもよい。反復単位の終端層は、燃焼層に隣接し、Uベンドして単一反応物チャンネルからの流れを含む生成物戻りチャンネルになる、単一プロセス反応チャンネルによって特徴付けられる。代替的に、最外層は反応物層ではなく燃焼層で構成することもできる。
【0099】
伝熱式熱交換ゾーンは熱を交換する5種類の流体で構成される。繰り返されるチャンネルは以下の通りである。すなわち:生成物、反応物、燃料、空気、排ガス、空気、燃料、反応物、生成物、反応物、燃料…である。生成物及び燃焼排ガス流からの熱は反応物、燃焼燃料、及び燃焼空気流を予熱する。
【0100】
この5種類の流れは装置の機械的寿命を高めるために、装置のより低温の末端部でマニホールドされるのが好ましい。特に好ましい実施形態においては、1種類の流体が装置の底部の外で直接マニホールドされる。他の4種類の流れは片側ごとに二つに分けることができる。五つのマニホールド領域のそれぞれは、流体を装置内へ取り込むため又は装置から取り出すために外部の配管に連結される。
【0101】
一つの代替的なデザイン(図3の概略図を参照)では、流れ方向はUターンをしてマニホールドゾーンに戻ってくる単一の反応及び燃焼チャンネルによって特徴付けられる。このデザイン(「単一流体ループ」と呼ぶ)では、流路は以下の通りである。すなわち、反応物は同一の反応マイクロチャンネル内でマニホールドゾーンを通り、予熱ゾーンを通り、次いで反応ゾーンに入る。その後、このプロセス反応流はUターンをし、元来た反応チャンネルと対向して流れる生成物戻り流となる。この生成物戻り流は触媒を含有してもよく、それによって更なる反応を支援することができる。反応ゾーンを通過した後は、生成物チャンネルは熱交換ゾーンに入り、そしてマニホールドゾーンから流れ出る。このプロセス反応層に隣接しているのが燃焼層である。反応物チャンネルに平行であるが、金属ウェブによって分離されているのが燃料チャンネルである。燃料は装置底部のマニホールドゾーンを通って流れ、次いで連続するマイクロチャンネル内の予熱又は伝熱式熱交換ゾーンを通り、次いで燃焼反応ゾーンへ入る。空気は該燃料チャンネルに隣接してマニホールド及び熱交換ゾーンを通って流れる。好ましい実施形態においては、燃焼ゾーンの長さに沿って空気を供給するためのジェットオリフィスを使用して空気(又は他の酸化剤)が燃焼ゾーンに供給される。空気チャンネルはUベンド部の手前で終了する。燃料チャンネルはその後空気チャンネルを超えてUターンし、排ガス戻りチャンネルに連結する。排ガスチャンネルはやはり触媒を含有してもよく、更なる燃焼が促進される。この空気チャンネルは、燃焼燃料から燃焼排ガスに至るUの内部にあるが、所望により、空気を下流の燃焼チャンネルに供給するための第二の孔のセットを第一の孔のセットの反対の壁に有することができる。Uベンド後の戻り通路上での燃焼は、隣接する壁にて生じる吸熱反応への熱を供給する。対応する吸熱反応チャンネルはUベンド後の吸熱プロセスチャンネルの戻り路上のものとすることができる。反応物及び燃焼のUベンド層は装置に充分な能力を提供するのに必要な回数だけ繰り返される。装置の一方の端にある反復単位の終端層は燃焼ゾーンに隣接し、Uベンドして単一反応物チャンネルからの流れを含む生成物戻りチャンネルとなる、単一プロセス反応チャンネルによって特徴付けられる。装置の最も外側の端には燃焼熱がないことに対応して、外側の端では反応物チャンネルに低能力が要求され、生成物戻りチャンネル内に触媒を必要としない。代替的に、最外層は燃焼ゾーンの第一通路上でのみ燃焼が生じる燃焼層を含むように設計することもできる。
【0102】
伝熱式熱交換ゾーンは熱を交換する5種類の流体で構成される。繰り返されるチャンネルは以下の通りである。すなわち:生成物、反応物、燃料、空気、排ガス、生成物、反応物、燃料…である。生成物及び燃焼排ガス流からの熱は反応物、燃焼燃料、及び燃焼空気を予熱する。
【0103】
この5種類の流れは装置の低温末端部でマニホールドされる。1種類の流体が装置の底部の外で直接マニホールドされる。他の4種類の流れは片側ごとに二つ分けることができる。五つのマニホールド領域のそれぞれは、流体を装置内へ取り込むため又は装置から取り出すために外部の配管に連結される。これは先の実施形態と同様の方法である。
【0104】
装置のもう一つの代替的な実施形態(図4の概略図参照)においては、流れ方向は装置の自由端を作るための単一流体ループの幾何学的形状をなす。この実施形態では、反応ゾーン及び熱交換ゾーンの間に付加的な内部マイクロチャンネルの特徴部分が加えられている。この領域(遷移ゾーンと称する。)は、反応ゾーン及び熱交換ゾーンで流れの方向が異なるように流れの再配列を遂行する。遷移ゾーンは流れを分枝又は併合する作用をして、熱交換ゾーン内おいてより多くの又はより少ない数の流体チャンネルを作ることもできる。流路は以下の通りである。すなわち、反応物は同一の反応マイクロチャンネル内でマニホールドゾーンを通り、予熱ゾーンを通り、次いで反応ゾーンに入る。その後、このプロセス反応流はUターンをし、元来た反応チャンネルと対向して流れる生成物戻り流となる。この生成物戻り流は触媒を含有してもよい。反応ゾーンを通過した後は、生成物チャンネルは熱交換を受けて、次いで生成物流はマニホールドゾーンへ入り、装置の出口へと進む。このプロセス反応U層に隣接するのが燃焼層である。反応物チャンネルに平行であるが、金属ウェブによって分離されているのが燃料チャンネルである。燃料は装置底部のマニホールドゾーンを通って流れ、次いで連続するマイクロチャンネル内の予熱又は伝熱式熱交換ゾーンを通り、次いで燃焼反応ゾーンへ入る。空気(又は他の酸化剤)は該燃料チャンネルに隣接してマニホールド及び熱交換ゾーンを通って流れる。次いで、燃焼ゾーンの長さに沿って空気を供給するためにジェットオリフィスを使用して空気が燃焼ゾーンに流入する。本実施形態では、空気チャンネルもUベンドし、空気のU字路は燃焼のU字路の完全に内側で行われる。燃料チャンネルは空気U字路を超えてUターンし、排ガス戻りに連結する。排ガスチャンネルは更なる燃焼を促進する触媒を含有する。Uの下流にある空気チャンネルは、所望により、Uの下流にある燃焼チャンネルに空気を供給するために使用される複数の小さな孔を有する。空気チャンネルはデッドエンドとなり、熱交換ゾーンには戻らない。プロセス反応層及び燃焼層は所望の能力を達成するために必要な回数だけ繰り返すことができる。繰り返すときは、上流部の反応チャンネル内の新鮮な反応物は、燃料及び空気が混合される上流部の燃焼チャンネルに合わせることができ、壁によって分離する。同様に、下流部の燃焼は下流部の反応と合わせる。装置の一方の端にある反復単位の終端層は燃焼ゾーンに隣接し、Uベンドして単一反応物チャンネルからの流れを含む生成物戻りチャンネルになる、単一プロセス反応チャンネルによって特徴付けられる。下流部の反応を行う場合には、反対側の端は、如何なる触媒をも有せず最も外側のチャンネルにて反応を受けない、低能力の反応物チャンネルに対応して供給される、より低能力の下流生成物チャンネルを特徴に持つことになる。代替的に、最外層は燃焼層とすることができる。
【0105】
伝熱式熱交換ゾーンは熱を交換する5種類の流体で構成される。これらの流体は実際には七つの異なる流路中に含まれる。空気は熱交換ゾーンにおいて二つの流体チャンネルが連結されて一つのチャンネルになり、反応ゾーンに入る。排ガスチャンネルは熱交換ゾーンに入るときに二つのチャンネルに分かれる。熱交換ゾーンにおいて繰り返されるチャンネルは以下の通りである。すなわち:生成物、反応物、燃料、排ガス、空気、排ガス、空気、生成物、反応物、燃料…である。生成物及び燃焼排ガス流からの熱は反応物、燃焼燃料、及び燃焼空気流を予熱する。
【0106】
上記流れ方向を達成するために、この空気流及び排ガス流は遷移ゾーン内で分かれ、交互配置されなければならない。このことは、二つの流れが分かれて位置交換するときに互いにバイパスし合うことを可能とする、マイクロチャネルの三次元的性質を利用することによって達成される。反応ゾーン内にある空気チャンネルのデッドエンド下方の空間も利用する。熱移動速度を高めるより小さな水力学的直径をもつチャンネルが作られるので、空気及び排ガス流の分枝及び連結によって熱交換ゾーンにおけるマイクロチャネル熱交換器のより効率的な稼働が可能となる。
【0107】
この5種類の流れは装置の低温末端部でマニホールドされる。1種類の流体が装置の底部を出て直接マニホールドされる。他の4種類の流れは片側ごとに二つに分けられる。五つのマニホールド領域のそれぞれは、流体を装置内へ取り込むため又は装置から取り出すために外部の配管に連結される。これは先の実施形態と同様の方法である。
【0108】
ICRのデザインの実施形態は、シムを薄切りして装置を構成する3平面の何れかにすることを含め、代替的なシムデザイン様式によって達成することができることが認識される。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態においては、炭化水素燃料を水素及び一酸化炭素に大部分変換させる燃焼触媒に先立って、燃焼ゾーンは部分酸化(“POx又はPOX”)触媒を用いて稼働することで強化される。燃焼ゾーン内の合成ガス燃料はメタンのようないくつかの炭化水素よりも燃焼するのが容易な燃料である。POx触媒は泡、詰め物(wad)、ペレット又は粉末、或いはガーゼのようなフロースルー構造を取ることができる。POX触媒は隣接する隙間をもつフェルト、隣接する隙間をもつ泡、隙間をもつフィン構造、薄塗り(ワッシュコート)、又は流れのための対応する隙間をもつ流れの方向に平行なガーゼのようなフローバイ構造を取ることができる。POX触媒はPOxゾーンの壁に直接薄塗りすることができる。壁の隙間は壁上の触媒被膜への物質移動を促進するために燃焼ゾーンよりも小さくすることができる。
【0110】
POX支援燃焼は二流体ループのコンセプト又は単一流体ループのコンセプトの何れかに組み込むことができる。マイクロチャンネル内でのPOX支援燃焼は他のデザイン及びデザインコンセプトに更に拡張してもよく、吸熱反応を同時に行い又は行わないでマイクロチャンネル内で炭化水素燃料を燃焼させたいと思うどんなところにも拡張することができる。
【0111】
POx触媒は組み立て及び接着の前に装置内に挿入することができる。POX触媒は燃焼薄塗り触媒のために用いられるのと同一のアクセスホールを用いて接着前に薄塗りすることができる。燃料チャンネルが装置の底部に入る流れとして選択され、従って触媒挿入ための直線形のチャンネルを与える場合は、POx触媒は低温末端部から装置に挿入することができる。
【0112】
POx支援燃焼の付加的な利点は装置始動の容易性である。多くの炭化水素は燃焼を開始するのに高い温度を必要とするが、POx反応はずっと低い温度で部分的に開始され得る。一例として、メタンに関してはPOxの着火温度は400℃未満であるが、直接的なメタンの燃焼には800℃を超える温度が必要である。
【0113】
POx支援燃焼を用いることによって統合燃焼反応器に燃料の柔軟性が与えられる。最適なジェットの間隔はしばしば燃料の燃焼特性に依存する。同一触媒が炭化水素の改質のような複数の吸熱反応に効果的な場合には、POx支援燃焼によって一つの装置が複数の燃焼燃料及び複数の吸熱反応炭化水素を用いて効率的に作動することが可能となる。
【0114】
POx支援燃焼のために、燃料及び空気の混合物は熱交換ゾーンを燃料チャンバに沿って流れ、次いでPOxゾーンを通って燃焼ゾーンに入る。POx反応に必要な空気はプロセスの安全性を高めるためにマイクロチャンネル装置の内部で混合することができる。メタンに関しては、POxゾーンにおける燃料:酸素の典型的な比率は2:1である。コークス化を防止するためにより多くの酸素を加えてもよい。混合比は1.5:1ほどに下げることができる。
【0115】
代替的に、空気の分配を制御するためにジェットを用いてPOXゾーンの手前又は中で空気を燃料流に混合することができる。
【0116】
POx支援燃焼は提示したICRのデザイン構造の何れにおいても用いることができ、代替的には変更した又は代わりのデザイン構造においても用いることができる。
【0117】
従って、本発明は燃料が燃焼チャンバ内で燃焼する前に燃料中の炭化水素/COの質量比が減少する燃焼方法も含む。いくつかの好ましい実施形態においては、炭化水素/COの質量比は少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%減少し、いくつかの実施形態においては実質的にすべての炭化水素が除去される。
【0118】
タングの説明
本発明においては、二流体の流れを合流させる前にこれらの流れを同一方向に向けるのが好ましい。好ましくは、これは図23に示すようなタング232を用いることで達成される。図示の実施形態においては、二つの平行な燃焼流234及び236の流れがUベンド238、231を通って流れ、タング232にぶつかり、合流路237へ入る。このように流れを結合することで運動撃力を同一方向に分解し、二流体が個々の流量値とは無関係に合流することが可能となる。こうして、間欠流を最小限度に抑える。
【0119】
Uベンドの底部及び角には再循環の渦が存在することになる。この再循環ゾーンの大きさは隙間の大きさ230、235及び239を調節することによって最小限度に抑えることができる。Uベンド入口235の大きさはUベンド出口の大きさと同程度にすべきである。断面積(高さ×深さ)の比率235/230は好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.6〜1.8、更により好ましくは0.8〜1.3の範囲であり、好ましくは、Uベンド入口、Uベンド及びUベンド出口は同一平面上にあり、深さが同一(図23に関しては、深さは紙面に垂直である。)である。好ましくは、合流チャンネル239の大きさは入口チャンネル235及び236の組合せの大きさと同程度である。断面積(高さ×深さ)の比率(235+236)/239は好ましくは0.1〜10の範囲、より好ましくは0.5〜2.0、更により好ましくは0.8〜1.3の範囲であり、好ましくはUベンド入口、Uベンド及びUベンド出口は同一平面上にあり、深さが同一(図23に関しては、深さは紙面に垂直である。)である。Uベンド入口235の高さhは好ましくは0.01mm〜10mm、より好ましくは0.02mm〜1.5mm、更により好ましくは0.1〜0.7mmの範囲である。Uベンド出口239の高さhは好ましくは0.02mm〜1mm、より好ましくは0.08mm〜0.6mmの範囲である。Uベンドの幅は好ましくは0.05mm〜20mm、より好ましくは0.1mmから5mmの範囲であり、好ましくはUベンド238の断面積(深さ×幅)に対するUベンド入口235の断面積(高さ×深さ)の比率は0.1〜5の範囲である。Uベンドの幅が大きすぎるとUベンドの角及び底部に大きな渦を招来する一方で、Uベンドの幅が小さすぎると、境界層の分離のためにUベンドから出た戻り経路上に新たな再循環ゾーンを誘発する。
【0120】
タングの先端233における流れの拡張は境界層分離及びタングの下を中心とした停滞ゾーンを誘発する。上記問題はタングの高さtをできるだけ小さくすることによって最小限度に抑えることが可能である。好ましくは、タングの高さは1mm未満、より好ましくは0.5mm未満、更により好ましくは0.2mm未満の厚さである。組み立て及び構造的サポートの節約のためタングは一定の高さとしてよいが、代替的に、高さは流れが合流するところが最も狭くなるようなテーパー形とすることもできる。
【0121】
燃焼ジェットのデザイン
いくつかの好ましい実施形態においては、吸熱反応用の熱源は吸熱触媒に接触している壁に直接運ばれる。このことは金属による伝導が対流式又は放射式の熱輸送よりもより効率的な熱輸送モードであるという事実に基づく。
【0122】
熱放出が均一相中で主として起こる予混合燃焼とは対照的に、燃焼ジェットは空気の濃縮流を別の燃料チャンネル流に注ぐことができる。次に、二流体は混ざって酸化反応を受ける。均一燃焼を抑制し、チャンネル壁上の不均一触媒燃焼を促進するために、ユニークなジェットデザインの特徴を実現した。重要な特徴には(1)幾何学的形状、(2)大きさ、及び(3)相対的な位置及び間隔が含まれる。
【0123】
該ジェットは燃焼酸化剤を壁に衝突させることのみならず、チャンネルの全幅に沿って可能な限り均一に燃焼酸化剤を分配するべきである。更に、不均一燃焼は吸熱反応触媒に最も近接した燃焼壁に集中するのが好ましい。他の壁上での燃焼は熱損失を意味し、更に装置内での熱応力に不利な影響を与える。
【0124】
反応ゾーンの始まり又は熱交換ゾーン中の反応物又は生成物チャンネルにおいてSMR反応の温度を上げ、コークス生成の可能性を減少するために、反応ゾーンの始まりで燃焼のためにより多くの空気を壁に運ぶべきである。この領域においてジェットを集中させ、並びに非円形ジェットオリフィスを適用することによってこの目的をうまく満たすことができる。
【0125】
経済的理由、並びに良好な流れ分布を確保するためのICR装置内の背圧を保持する目的のために、圧力損失を最小限にしつつ上述のすべての目標が達成することが望まれる。上記目的のため、本ジェットデザインでは円形及び長方形のスロットオリフィスのハイブリッドが実施可能である。代替的に、ダイア形、三角形、半円、クオータームーン等のような他の非長方形、非円形ジェットを使用することもできる。数値流体力学(CFD)の予測では、これら二つのジェット形状がジェットシムに相対する燃焼チャンネル壁上により理想的な不均一燃料/酸化剤混合物分布を与えることを指し示している。また、燃焼ゾーンの入口又は反応器の長さを下ったいずれの場所においても他の非円形ジェットオリフィスを使用できることが認識される。反応物を更に予熱し、又は装置の熱分布を更に調製するために、燃焼オリフィスは反応ゾーンの手前の伝熱式熱交換部において開始可能であることも認識される。
【0126】
均一及び不均一燃焼の相対的比率の制御はジェットデザインの操作によって達成することができる。用途により、必要に応じて均一又は不均一燃焼の何れかを増やすことができる。一例として、吸熱反応を包含しないマイクロチャネル燃焼器は、炭化水素又はCO排ガスを減少するために、或いは後の単一操作で使用するための高温ガス流を提供するために、ジェットデザインを介して均一燃焼を促進することによって、強化することができる。
【0127】
実施例には酸化剤がジェットを通過する好ましい実施形態を示しているが、代わりに燃料がジェットを流れて酸化剤と混合することもできることを理解すべきである。
【0128】
ジェットオリフィスの分布は装置の用途に依存され得る。水素は即座に燃焼するので、ホットスポットを回避するために、ジェットは燃焼チャンバに亘ってより均等な間隔とすべきである。よりゆっくり燃焼するメタンは、好ましくはジェットを燃焼チャンバの前部付近に搭載する。燃料が合成ガスのときは、ジェットの分布はその中間である。
【0129】
吸熱及び発熱反応チャンバは好ましくは触媒を含有する。選択された発熱又は吸熱反応を触媒するための好適な触媒は化学者及び化学技術者に周知である。
【0130】
いくつかの好ましい実施形態においては、触媒(特に吸熱反応触媒)は多孔質触媒とすることができる。本明細書において「多孔質触媒」とは細孔容積が多孔質材料全体の容積の5〜98%、より好ましくは30〜95%である多孔質材料のことをいう。材料の細孔容積の少なくとも20%(より好ましくは少なくとも50%)が0.1〜300ミクロン、より好ましくは0.3〜200ミクロン、更により好ましくは1〜100ミクロンの範囲の孔径(直径)をもつ細孔で構成される。細孔容積及び孔径の分布は水銀圧入法(細孔が円筒形状と想定)及び窒素吸着法によって測定する。知られていることだが、水銀圧入及び窒素吸着は相補的な技術であり、水銀圧入は大きい孔径(30nm超)の測定に対してより正確であり、窒素吸着は小さい孔径(50nm未満)に対してより正確である。約0.1〜300ミクロンの範囲の孔径であることでほとんどの気相触媒作用条件で分子が分子レベルで材料中に拡散することができる。多孔質材料自体が触媒となり得るが、より好ましくは多孔質材料は、1種又は複数種の触媒材料が堆積した単一層又は複数層を有する金属、セラミック又はコンポジットの担体を備える。多孔性はハニカム又は平行細孔構造のように幾何学的に規則的とすることができ、或いは多孔性は幾何学的に屈曲又はランダムでもよい。いくつかの好ましい実施形態においては、多孔質材料の担体は泡状金属、泡状セラミック、金属フェルト(すなわち、マット又は不織繊維)、又は金属スクリーンである。多孔構造はフローバイ向け又はフロースルー向けの何れかに方向付けされる。触媒はフローバイ構造中で流れ方向に平行な金属ガーゼの形態を取ることもできる。
【0131】
代替的に、触媒の担体は稠密な金属のシム又は箔から形成することができる。多孔質触媒層は反応のための充分な活性表面サイトを提供するために稠密な金属上に被覆することができる。活性な触媒金属又は金属酸化物を順次又は同時に薄塗りして活性な金属構造体を形成することができる。この稠密な金属箔又はシムは、マイクロチャンネル構造体を接着又は形成した後に反応器内部に配置される挿入形構造を形成する。好ましくは、触媒インサートは吸熱及び発熱反応チャンバの両方に隣接する一つの壁又は複数の壁に接触する。
【0132】
代替的に、多孔質触媒は被覆プロセスによって反応器壁に貼ることもできる。被膜は活性サイトの数を増加するための第一多孔質層を含有することができる。好ましくは、細孔の直径は数十ナノメートル(例えば10又は20nm)から数十ミクロン(例えば、10又は50μm)の範囲にある。次いで、活性な金属又は金属酸化物触媒を順次又は同時に第一多孔質被膜上に薄塗りすることができる。
【0133】
触媒の好ましい主たる活性成分には:IUPACのIIA族、IVA族、VA族、VIA族、VIIA族、VIIIA族、IB族、IIB族、IVB族、ランタノイド系列及びアクチノイド系列が包含される。触媒層も、存在するときは、多孔質であるのが好ましい。触媒層の平均孔径(容積平均)は好ましくは担体の平均孔径よりも小さい。担体上に堆積した触媒層中の平均孔径はBET法を用いたN2吸着で評価して好ましくは10-9m〜10-7mの範囲である。より好ましくは、全細孔容積の少なくとも50容積%は直径が10-9m〜10-7mの範囲の大きさの細孔で構成される。触媒層中のこれらの小さな孔内の拡散は典型的には気相系のためのクヌーセンの性質を有し、それ故分子は他の気相分子よりも細孔の壁に頻繁に衝突する。
【0134】
好ましい実施形態においては、触媒は反応チャンバに挿入し及びそれから取り除くことが都合良くできるインサートの形態にある。反応チャンバ(同一タイプ又は異なるタイプ)は複数種の触媒で直列に結合することができる。例えば、反応物は第一タイプの触媒を含有する第一反応チャンバを通過することができ、このチャンバからの生成物は第二タイプの触媒を含有する次の反応チャンバ(又は同一反応チャンバの続きの段階)に入り、そこで該生成物(又はより正確に言えば中間体)がより望ましい生成物へ変換される。所望により、付加的な反応物を前記次の反応チャンバに加えることができる。
【0135】
触媒(必ずしも多孔質である必要はない。)は薄塗りのような他の方法によっても塗布することができる。金属表面上に、化学蒸着、熱酸化等によってまず緩衝層を塗布するのが好ましい。これによって後の薄塗りの付着力が向上する。
【0136】
装置は、単一の材料ブロック内にチャンバを形成することにより、複数の構成部品を結合することにより、そして最も好ましくはシムを積層及び接着することにより、作製することができる。
【0137】
開口部を有するシムは:慣例の機械加工、ワイヤ放電加工、レーザー加工、光化学加工、電子化学加工、型成形、ウォータージェット、打ち抜き加工、エッチング(例えば、化学、光化学及びプラズマエッチ)及びこれらの組合せ、を包含する方法によって形成することができる。低コストのために、打ち抜き加工が特に望ましい。シムはラムプレス又はHIPチャンバのような拡散接合法により結合することができる。また、活性金属接着、又は面シールを作り出す他の方法で結合することもできる。代替的に、レーザー溶接シムによって装置又はシートを結合し、流路間のシールを形成することができる。装置は代替的に接着剤の使用によっても結合することができる。好ましい実施形態においては、装置は単一工程で積層され、それ程好ましくない実施形態においては、シムの第一セットを結合し、次いでシムの第二(又はそれよりも多くの)セットを結合する。いくつかの好ましい実施形態においては、シムのセットは単一の工程で結合され、次いで出来上がった結合物品を複数の装置に切り出す。
【0138】
拡散接合のための犠牲シム
シムの拡散接合によって望ましくないチャンネルの圧縮が生じることがある。拡散接合に必要な高温のために、負荷を受けている材料が耐力を超える負荷及び接着に必要な時間の間のクリープ変形によってある程度非弾性的に変形する。チャンネルの圧縮は、シムの積層体の両側(又は代替的には片側のみ)に配置され、少なくとも一つの壁シム又は壁板によって流れチャンネルから分離された犠牲シムを使用することで軽減することができる。犠牲シムは一般にはシムの積層体中で他の複数の開口ポケットをカバーする大きな開口ポケットとして説明される。犠牲シムのポケットは接着力によって生じる変形の一部を引き受け、一般には接着サイクルの後に圧縮を受ける。シムの積層体中で材料の存在しない部分は、いかなる力も伝えない。
【0139】
プレス接着においては、犠牲シムは変形力を吸収し稼働に用いられる開放領域内の内部寸法が一貫性を保持するのを助ける。内部空間が影響を受けない一方で、外側の空間(犠牲スロット)が大きく変形している図5を参照されたい。
【0140】
いかなる接着方法(軸プレス又は静水圧プレス)に対しても、犠牲シム内の開放領域が稼働チャンネルよりも幅広く伸びている場合は、該チャンネルの末端が直接的に負荷を受けず、稼働チャンネル内の長さの変化が減少する。従って、好ましくは、犠牲空間はこれらが保護している稼働チャンネルよりも更に伸びる(例えば、長い)。
【0141】
犠牲シムは、積層され又は固体壁によって分離された一つ又は複数のシムの形態を取ることができる。犠牲シムは所望シム積層体の近くにあってよく、0.25mm以下の厚さ(高さ)の単一シムによって分離することができる。犠牲シムは代替的にシム積層体からより離れて、又は6mmを超えて配置することもできる。犠牲シムは好ましくはプロセスチャンネルの外側(すなわち、表面により近い)にあるが、犠牲シムはシム積層体内の他の場所に配置することもできる。すべての場合において、犠牲シム中のチャンネルは、装置の稼働中に、所望の装置の単一操作に参加するいかなる流体とも流体接触しない。チャンバは空であり、或いは代替的に、周囲環境への又は装置の長さに沿った軸伝導への熱損失を促進する又は最小限度に抑える流体を後で充填することもできる。
【0142】
犠牲シムの概念は、やはり接着方向に垂直にシムを搭載するHIPのような3−D接着法における用途に拡張することもできる。シムの側面は所望のチャンネルを変形させることなく接着中に圧縮を引き受ける保護板又は開口ポケットでカバーすることができる。図6を参照されたい。代替的な構成では、ポケットはシムの積層体の側面に取り付けた外部部品内に形成することができ、或いはポケットを積層体中の各シム内で形成して犠牲保護板を作り出すことができる。
【0143】
より広い側面において、本発明は任意のペア(又はより多く)の吸熱及び発熱反応に関する。例えば、異なる組成物を異なる触媒を有する異なる反応チャンバに流すことができる。すべての実施例及び大部分の説明は気相反応に向けられている。しかしながら、本発明は液相反応に使用することもできる。液相反応の場合は、臨界的なチャンネル寸法は反応物を触媒表面に移動させる物質拡散速度の減少に適応するため、気相反応に対するものより小さくなるだろう。
【0144】
本発明に係る触媒プロセス(発熱又は吸熱)には:アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水添脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリール化、自熱改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、クラッキング、ハイドロクラッキング、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー‐トロプシュ、ハロゲン化、ハロゲン水素処理、同族体化、水化、脱水化、水素化、脱水素化、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理(HDS/HDN)、異性化、メチル化、脱メチル化、複分解、メタン生成、ニトロ化、酸化、優先的酸化、部分酸化、重合化、還元、改質、逆水性ガスシフト、サバチエ反応、スルホン化、テロマー化、エステル交換、三量化、及び水性ガスシフトが包含される。
【0145】
好ましい吸熱反応の一つは、水(水蒸気)及び1種の炭化水素(又は複数種の炭化水素)が吸熱反応チャンバ内で反応して水素及び炭素酸化物を生成する水蒸気改質である。メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、より高級なアルカン、アルケン、アルコール、エーテル、ケトン、そしてガソリン、ディーゼル、ケロセンのようなブレンド及び混合物、その他の様々な炭化水素が改質されて水素を生じる。
【0146】
吸熱反応へ充分な熱を供給するため、発熱反応チャンバ内での反応は発熱性が高いことが好ましい。水素、CO、又は上で列挙した1種の炭化水素(又は複数種の炭化水素)の燃焼が特に好ましい。
【0147】
本明細書に記載する何れの装置においても、言及した反応物の何れにも代えて代替的な反応物が使用できることを理解すべきである。例えば、メタンに代えて他の燃料が使用できる。
【0148】
以下に詳細を記載するが、本発明の好ましい方法は機器の構造によって、及び/又は(限定的ではないが)熱流束、容積生産性及び/又は圧力損失のような測定可能な特性(これらは流量、温度等のプロセス条件と関連付けて説明することもできる。)によって説明することができる。
【0149】
好ましい反応器及び統合反応器内での反応実施方法はそれらの特性で特徴付けることができる。特に断りのない限り、これらの特性は実施例に記載した試験条件を使用して測定する。本発明は個々の又はそれらを任意に組み合わせた特性の何れかによって特徴付けることができる。平均容積熱流束は好ましくは少なくとも1W/ccであり、又は、他の好ましい実施形態では、少なくとも5、又は10、又は20、又は50、又は100であり、そしていくつかの実施形態では10〜約120W/ccである。吸熱反応チャンバ熱流束は好ましくは少なくとも10w/cc、又は、他の好ましい実施形態では、少なくとも50、100、200又は500W/cc超であり、いくつかの実施形態では10〜約700W/ccである。装置は、実施例に記載の標準NOx試験測定によって測定したときの低NOx出力によって特徴付けられる。NOx出力は好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、更により好ましくは10ppm未満、そして更により好ましくは5ppm未満であり、いくつかの実施形態では、NOx出力は約5〜20ppmである。燃焼が関与する本発明に係る方法は好ましくは100%未満の過剰空気(又は、同等の過剰酸素)を使用し、より好ましくは75%未満、更により好ましくは50%未満、更により好ましくは25%未満、或いは10%又は5%の過剰空気を使用する。装置を特徴付けるため、過剰空気は、熱流束測定試験に記載の条件下で測定し、又は(NOx出力と共に特徴付けられるときは)標準NOx試験測定に記載の条件下で測定する。発熱及び/又は吸熱反応チャンバを通した圧力損失は好ましくは(反応チャンバの長さを基準に、好ましい順に)295,000;250,000;125,000;50,000;25,000;12,5000;2500;又は1500Pa/cmよりも小さい。装置の圧力損失は熱流束測定試験に記載の条件下で測定する。
【0150】
本発明のもう一つの利点は良好な生産性(又は良好な性能を示す他の尺度)が短い接触時間で得られることである。好ましい方法においては、気相反応のための接触時間は100ミリ秒(ms)未満であり、より好ましくは50ms未満であり、より好ましくは25ms未満であり、更により好ましくは10ms未満であり、いくつかの実施形態では1〜25msである。液相反応はこれよりも少なくとも3倍程度遅いことが予想され、従って気相に比べて長い接触時間を必要とするが、数分から数日の接触時間を有する従来の液相反応よりも早い。接触時間は、大きな流れ及び多孔質触媒の間の拡散距離を減少させ、同時にチャンネル長さを減少することによって、短くすることができる。上記接触時間で、炭化水素水蒸気改質の好ましい実施形態では、前記少なくとも一つの反応チャンバの入口に入る炭化水素の絶対又は平衡反応率の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%が水素、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素に変換される。他の方法においても同様の改善が得られる。
【0151】
本発明に係るいくつかの好ましい方法のいくつかの方法的特徴には:(1)発熱反応として燃焼を使用するのに、燃料:酸素の比率を化学量論近傍(100%未満の過剰空気)として安全に稼働すること。これにより必要空気が減少してシステム全体の熱効率が向上し、外部の排風機又は圧縮機に必要な負荷が軽減する。(2)水蒸気改質を短い接触時間又は逆に高いガス毎時空間速度で稼働すること。これはコンパクトな装置を作るのに必要である。(3)高い熱流束で稼働すること。短い接触時間で稼働するのに必要である。(4)反応器の単位長さ当たり小さな圧力損失で稼働すること。これにより単位体積当たりの生産性が高まる。(5)随意的に、気相反応を消失(クエンチ)/阻止すること。チャンネル寸法がクエンチ径に近づき、又はそれを下回ると、好ましくない気相均一燃焼反応の寄与が減少する。
【0152】
水蒸気改質では、ガス毎時空間速度は好ましくは10,000を超え、より好ましくは50,000を超え、そして約100,000hr-1〜106hr-1超の範囲とすることができ、これらは360〜3.6ミリ秒程度の接触時間にそれぞれ対応する。メタン水蒸気改質のための稼働圧力は好ましくは1atm〜50atmである。1〜30atmの範囲がより好ましい。水蒸気対炭素の比率は1〜10の範囲とすることができ、1〜3の範囲が好ましい。
【0153】
反応器内の好ましい熱分布
統合燃焼反応器内の熱分布はめったに等温にはならない。温度は、吸熱反応の熱負荷が最も高い反応器の前部が典型的には最も低温である。温度は、反応物の流れ方向で規定して、反応器の中間又は後部が典型的には最も高温である。いくつかの好ましい実施形態では、反応チャンバの後部近傍に最高温地点をもつ反応器を稼働するのが望ましい。温度が高いと金属膨張が増加するので、金属が膨れ上がる可能性のある反応ゾーンの先端又は中間よりもむしろ大部分の膨張が装置の自由端で起こるのが望ましい。ICR内の熱応力をできるだけ抑えることは、反応器の流れ方向の長さに沿って単調に増加する熱分布を作り出すことによって達成することができる。好ましくは、発熱及び吸熱反応チャンバの両方にて流れの方向に実質的に単調に温度が上昇する。いくつかの場合では、温度が反応器の最後部で最も高温であることは厳密には要求されないが、反応チャンバの後半に最高温地点を有するべきである。
【0154】
熱分布は燃焼チャンネルの長さに沿って空気ジェット又は孔を配置することによって制御することができる。この配置は燃焼させる燃料に影響される。水素は容易に燃焼するので、反応器の長さの大部分にわたってジェットを含む空気をより均等に分配するのが最も適している。メタンや天然ガスのような、それほど容易に燃焼しない燃焼燃料については、反応器の前部及び中央にはより多くの、後部にはより少ない空気を必要とする。メタンは燃焼がより難しく、空気及び燃料が互いに接触して反応器の長さに沿って燃焼するためにより多くの時間を必要とする。
【0155】
反応器内で最適な熱分布を選択するに際して付加的に考慮することは、吸熱反応でのコークス化の可能性である。一例として、比較的高い水蒸気対炭素比(>2.5:1)での水蒸気改質反応は、最前部がかなり低温(<800℃)でもコークス化を回避することができる。比較的低い水蒸気対炭素比(<2.5:1)での水蒸気改質反応では、最前部をより高温(>800℃)にしてコークス化を回避することができる。コークス化の可能性と熱応力を関連づけて比較検討し、最前部の温度と反応器の長さに沿って上昇する熱分布の傾斜の両方を調節することができる。
【0156】
【表1】

【0157】
低CO及びNOxは燃焼反応の排ガスから測定される。改質反応の出力を制御してH2の生産を最大化することができ、この場合は低CO選択率が好ましく、或いは合成ガスの生産を最大化することができ、この場合は高CO選択率が好ましい。水素の生産のためには、CO選択率は好ましくは75%未満、より好ましくは68%未満、そしていくつかの実施形態ではCO選択率は60〜70%の範囲である。「差圧」とは吸熱反応チャンバと隣接する発熱反応チャンバとの間の圧力差のことを指す。
【0158】
実施例には様々な始動手順を記載している。
【0159】
触媒インサートを含有する反応器の調整(改修)方法の一つは、(1)前記インサートを含有する反応チャンバ内の圧力を上昇させる工程と、(2)該圧力を低下させる工程と、(3)プロセスを稼働させる工程とを含む。圧力はプロセスガス又は不活性ガスを用いて上昇させることができる。驚くべきことに、この調整工程が時々反応器の性能を有意に向上させることを見出した。恐らくこの向上は反応チャンバ壁に前記インサートがより押し付けられた結果であると考えられる。
【0160】
[いくつかの好ましい実施形態の説明]
図8〜22は組み立てに用いるシムの機械製図である。図に示すシムの形状及び寸法は例示できるが、必ずしも最適化されておらず、そして必ずしも単一装置のものではなく、製造して試験をした装置のシムのデザインを表すことを意図したものである。図面のいくつかはインチで距離が含まれ、関連する線又は部分線が含まれているが、これらは図面のデザインの際の所産であり、削除してよい。
【0161】
接着ICR装置−二流体ループ
この実施形態では、単一の統合反応装置は反応ゾーン、予熱又は伝熱式加熱ゾーン、及びマニホールドゾーンを含有する。
【0162】
この装置は装置の温度が最高となる最後部での熱膨張を可能にし、応力を最小限度に抑えることを可能とする自由端によって特徴付けられる。自由端を作るために、反応物流はUベンドして生成物流を形成する。燃焼流(燃料及び空気の混合)はUベンドして燃焼排ガス流を形成する。
【0163】
流れ方向は二流体ループの幾何学的形状によって特徴付けられる。反応層は同一の反応マイクロチャンネル内でマニホールドゾーンを通り、予熱ゾーンを通り、次いで反応ゾーンに入る反応物チャンネルを含有する。その後、このプロセス反応流はUターンをし、元来た反応チャンネルと対向して流れる生成物戻り流となる。生成物戻り流の反対側には、第二の反応物チャンネルが対向して流れる。Uベンドの頂点で、この二つのプロセス反応チャンネルが結合してその中央を下る共通の生成物戻りチャンネルを形成する。この二つのプロセス反応流が合流して単一の生成物戻り流になるとき、流れの直接衝突及びそれによる不安定性を防止するためにタング(舌状部)が中間に置かれる。
【0164】
プロセス層に隣接するのが燃焼層である。最も外側のチャンネルは燃料チャンネルで構成される。燃料は装置の底部にあるマニホールドゾーンを流れ、次いで連続するマイクロチャンネル内の予熱又は伝熱式熱交換ゾーンを通り、次いで燃焼反応ゾーンへ入る。空気は各燃料チャンネルに隣接してマニホールド及び熱交換ゾーンを流れる。その後、燃焼ゾーンの長さに沿って空気を供給するためのジェットオリフィスを使用して空気が燃焼ゾーンに流入する。空気チャンネルはUベンド部の手前で終了する。二つの燃料チャンネルは反応ゾーンの末端付近で一緒になる。この二つの流れは合流して燃焼層の最も内側のチャンネルを流れ下る単一の排ガスチャンネルとなる。二つの燃焼流が合流して単一の排ガス戻り流となるとき、流れの直接衝突及びそれによる不安定性を防止するためにタング(舌状部)が中間に置かれる。
【0165】
プロセス反応層及び燃焼層は所望の能力を達成するために繰り返すことができる。反復単位の終端層は、燃焼ゾーンに隣接し、Uベンドして単一反応物チャンネルからの流れを含む生成物戻りチャンネルとなる、単一プロセス反応チャンネルによって特徴付けられる。この最外層の流れは内部の反復プロセス層の流れの半分である。
【0166】
伝熱式熱交換ゾーンは熱を交換する5種類の流体で構成される。繰り返されるチャンネルは以下の通りである。すなわち:生成物、反応物、燃料、空気、排ガス、空気、燃料、反応物、生成物、反応物、燃料…である。生成物及び燃焼排ガス流からの熱は反応物、燃焼燃料、及び燃焼空気を予熱する。
【0167】
この5種類の流れは装置の低温末端部でマニホールドされる。1種類の流体が装置の底部の外で直接マニホールドされる。他の4種類の流れは片側ごとに二つ分けることができる。五つのマニホールド領域のそれぞれは、流体を装置内へ取り込むため又は装置から取り出すために外部のパイプに連結される。
【0168】
典型的なICRは数多くのシムから作られる。例えば、ICRを図7に示す63個のシムの積層体から組み立てた(この装置のことを二流体ループ装置というときがある。)。この装置の部分分解図を図8に示す。このシムの積層体はエンドプレート86に隣接する犠牲シム82を含む。接着プロセスの間、犠牲シムは変形し、掛けられた接着圧力から応力を解放し、プロセスチャンネルの変形を軽減する。シムは約21インチ(53cm)の長さ、約1.4インチ(3.6cm)の幅、そして約0.25mm〜約0.64mmの範囲の種々の厚さ(高さ)を有する。エンドプレートは6.4mmほどの厚さである。吸熱反応チャンネルは幅9.7mmである。空気、燃料、排ガス、及び二流体ループ生成物チャンネルは幅4.1mmである。吸熱反応チャンネルごとに上記チャンネルのそれぞれが二つずつある。最外端の単一流体ループチャンネルは幅33mmの二つの生成物チャンネルを有する。
【0169】
二流体ループ装置はアロイ617の金属シムを用い、これらを拡散接合してマイクロチャンネル反応器を形成することで作った。アロイ617のシムはレーザー加工及びワイヤ−EDMを組み合わせることによって最初に形成した。シムを切り出す前に、材料のシートを最初にスルファミン酸ニッケル(アクテロン(Acteron)社、カルフォルニア州サンカルロス)の平均300μインチの層で被覆した。エンドプレートを慣例の機械加工法を使用して作り、同様に平均300μインチのスルファミン酸ニッケルの層で被覆した。切り出したシム及び被覆したエンドプレートを変性アルコール浴中で数分間洗浄し、次に拭いて乾かした。拡散接合の前に空気マイクロチャンネルを予め封止するために、二つの異なるシムのセットをレーザー溶接した。真空ラムプレスを用いて1150℃、約29,700ポンド重で6時間かけて積層したシムのセットを拡散接合した。
【0170】
次に、装置の側面及び上面にスロットを開けるために、拡散接合部分をプランジEDMを用いて機械加工した。次いで、空気、燃料、並びにSMR反応物及び生成物のラインのための外部マニホールドをTIG溶接した。次いで、最初にヘキサンを装置にポンプ輸送し、5分間浸漬し、その後、ヘキサンがすっかり出てくるまですべてのチャンネルにヘキサンをポンプで通すことによって装置を洗浄した。次いで、アルゴンでパージし、20%の硝酸を用いて上記手順を繰り返した。その後、pHが>5になるまで脱イオン水をポンプで装置に通し、その後にエタノールをポンプで装置に30秒間通した。最後に、装置を約10SLMPの流量のアルゴンで5分間パージした。次いで、(実施例に記載のように)洗浄した装置を熱処理し、燃焼触媒を薄塗りした。溶接エッジ近傍で触媒ドア及びプラグに形成された酸化物を研磨して除去した。その後、SMRの触媒を装置に搭載した。排ガスマニホールドを装置に溶接した。
【0171】
図9Aはスロット93及び95をもつ部分的に組み立てたICR91の一側面を示す。スロット97及び99をもつ反対側の図を図9Bに示す。円で囲った部分はICRへ入り又はそこから出て行く流れを処理するためにマニホールドされた部分を示す。端部92は触媒インサートポート(以下に詳細に説明する。)を有し、端部94は排ガスマニホールドへ入れる排ガスポート(図示せず)を有する。
【0172】
触媒インサートの挿入について図10に概略的に示す。各触媒の部分組立品102を挿入スロット104へ滑り入れ、サポート106は触媒インサート108を支える。触媒を挿入した後、触媒ドアを各スロットに挿入し(これらドアは実質的に流れを止める。)、端部105上に溝付きキャップ(図示せず)を端部105上に溶接し、該キャップ中の溝を溶接して閉じる。こうして吸熱反応チャンネルの一端を封止した。
【0173】
図11は燃料入口101、反応物102、空気入口103、生成物出口104、及び排ガス105を示すマニホールド端の分解図である。これらの配管のそれぞれは対応するマニホールド111〜115に溶接した。反応物は反応物入口116から反応物チャンネルを流れて通る一方で燃料は燃料入口117から流入する。
【0174】
装置の反対側の末端(図12参照)には触媒アクセスポート121がある。触媒ドア122をアクセスポートから滑り入れる。触媒ドアは触媒チャンネル内にフィットする大きさであり、触媒インサートを決まった場所に保持する金属板である。ある装置では、触媒ドアは50mm×10mm×0.5mmの寸法を有する。キャップ123を装置の末端上に配置し、溝126を稼働前に塞いだ。配管124は触媒前駆体アクセスポート125内に連結して燃焼触媒前駆体組成物を供給する。
【0175】
図13は実施例2で使用したタイプの厚さ0.64mmの燃焼シムを示す。シムは支持リブ133によって分離された流れチャンネル132を有する。稼働中は、燃料が右から入り流れチャンネルを進んで出口134から出て行く。金属領域135は接着後に取り除く。一つのエンドプレートを除いてすべてのシムと同様に、該シムは触媒前駆体通路136を有する。第一空気ジェットのすぐ(約1mm)上流で流れ安定化インサートを受け取って決まった場所に保持するため燃焼シム内に切り込みを入れる。実施例2の装置は各燃料チャンネル内において空気注入の最初の地点のすぐ上流に多孔質の流れ安定化インサートを有していた。これらの多孔質インサートは、厚さ0.7mm、長さ13mm(流れ方向)、幅約5mmのFeCrアロイ発泡体(約95孔/インチ)の長方形部品で作った。ただし、同一の目的を達成するには他の構成材料も使用できる。
【0176】
図14は、吸熱反応チャンネル141を含有する厚さ0.25mmのシムを示す。これは反応チャンネルが支持リブを有しない点を除いて燃焼シムに類似している。
【0177】
図15は、壁シム153(厚さ0.25mm)とジェットシム154(厚さ0.25mm)に挟まれた、空気チャンネル152を含有する厚さ0.64mmの空気シム151を有する溶接部分組立品を示す。実施例1のICR装置では、ジェットシムは、最初の四つのジェットが反応ゾーンの始まりの近傍にあり(1mm下流)、最後の二つのジェットが燃焼Uベンドの約0.75インチ(19mm)上流にある、28個の円形オリフィスをもつ。円形オリフィスは約0.31mmの直径を有し、燃焼チャンネルの長さに沿って不均一な中心間距離をもつ。チャンネルの幅に沿ってオリフィスのペアは、「四分割中央部」、すなわち燃焼シム中の各チャンネルの幅を横切る1/4及び3/4のところ、或いは幅各4.06mmのチャンネルを横切る1.02mm及び3.05mmのところに交互(ジグザグに)配列される。28個のジェット構造では、最初の四つの(最上流の)ジェットが各ジェットシム上にある両チャンネルの四分割中央部の両方に配置され、残りの24個のジェットは反応ゾーンの長さに沿って上述したように交互配列される。具体的には、28個のジェット構造のオリフィスは、SMR触媒の先頭(上流)端部平面から1mm(ジェットが四つ)のところ、そして8、15、24、34、46、58、72、87、104、122、142、及び160mmの位置に四分割中央部にペアになって交互配列される。実施例2のICR装置では、ジェットシムは反応ゾーンの長さに沿って間隔が増加し、24個の円形オリフィスしか有しなかった。具体的には、24個のジェットのオリフィスは、反応ゾーンの長さに沿って、SMR触媒の先頭(上流)端部平面から約1、8、15、24、34、46、58、72、87、104、122、及び142mmのところに四分割中央部にペアになって交互配列される。
【0178】
シムは位置決め穴155及び排ガス通路156を有する。排ガス通路はレーザー溶接部157によって孤立させた。空気シム151は触媒前駆体通路と排ガス通路156の間に連結チャンネル159を含有し、接着後は、触媒前駆体組成物が排ガス通路156、それから排ガス及び燃焼チャンネルへ流入する。燃焼触媒の堆積中は、触媒前駆体が燃焼及び排ガスチャンネルの所望の長さ(この場合は約18cm)のみを満たすように装置を重力に対して向けた。
【0179】
(実施例1で使用したような)代替的な構造の、固体熱移動領域161と燃焼チャンネル163を含む燃焼領域162とを有する厚さ0.41mmの燃焼シム165を図16Aに示す。燃焼チャンネル163は、燃焼チャンネルの長さ(7インチ、18cm)にわたって燃焼反応のための付加的な容積を提供する。シム160を、連続した流れチャンネル169を有する厚さ0.25mmの燃焼シム166(図16B参照)に接着する。この構造では、各シム165及び166が一緒になって、(実施例の箇所で検討するように)稼働中の燃焼の流れ安定性を与える、予熱ゾーンがより狭い燃焼チャンネルを形成し、流れ安定化インサートが必要なくなる。この構造を使用するときは、シム166を空気チャンネルシムに最も近い壁に隣接させて積層する一方で、シム165は吸熱反応チャンネルシムに最も近い壁に隣接させて積層する。
【0180】
図17は厚さ0.64mmの空気チャンネルシムを示す。空気は入口171(金属板172は接着後に切り取る。)から入り、チャンネル173の長さを満たす。分割リブ174は幅0.06インチ(1.5mm)である。この空気チャンネル173から分離され、連続していないのがUベンド通路175及び触媒前駆体通路176である。
【0181】
排ガスチャンネルシム181を図18に示す。支持リブ182がチャンネルを分離し、触媒前駆体通路183も存在する。部分184は排ガスマニホールドへの経路を形成するために接着後に除去する。典型的には類似構造の3枚の排ガスシムを積層して(すなわち、連続して積層した3枚の排ガスシムとなる。)、排ガスチャンネル及びタングを形成する。排ガスチャンネルシムの厚さ(高さ)は積層する順に0.36、0,25及び0.36mmである。3枚の排ガス積層体の中間にあるシムはタングの特徴を形成し、チャンネル長さが若干短くUターンより約5mm短いところで終了する。
【0182】
(吸熱反応触媒のための)厚さ0.25mmの触媒止めシム191を図19に示す。このシムは、触媒インサートを決まった場所に保持する188mmのチャンネル192を有する。金属板193は接着後に除去する。図20は吸熱反応チャンネルのための壁を形成して、吸熱反応チャンネルと吸熱生成物チャンネルを分離するシム(厚さ0.25mm)を示す。Uベンド通路199は吸熱生成物の通路を与える。
【0183】
図21Aは生成物チャンネルシム195(厚さ0.25mm)を示す。図示したシムは長さ11cmのチャンネル196を有し、図21Bの吸熱壁シムにレーザー溶接する。図21Bは、44.3cmのチャンネル207をもつ第二の生成物チャンネルシム(厚さ0.41mm)を示す。生成物シム208は生成物チャンネルタングを形成し、2枚の生成物チャンネルシム195の間に積層する。これらのチャンネルでは、生成物が隣接するシムのUベンド穴から197に入り、次いで隣接するシム208の吸熱生成物チャンネル207に流入する。最も外側の生成物チャンネルでは、単一の反応物チャンネルのみが生成物チャンネルに供給するので、生成物チャンネルシム208(図21B)に類似するが、Uターンから生成物マニホールドまで全47cmに伸びたより長いチャンネルをもつ、若干薄い生成物チャンネルシム(厚さ0.36mm)を使用する。
【0184】
溶接ICR装置−N及びM型は本質的に同一構造であるが触媒が異なる
溶接ICRをインコネルアロイ−617及び625で組み立てた。全部品を慣例の機械加工、ワイヤEDM、及びレーザー加工を組み合わせて作製した。全部品をヘキサンで洗浄して熱処理した。溶接エッジ近傍の酸化物を研磨して除去し、アルコールで再洗浄して積層した。装置はTIG溶接によって周囲を溶接した。配管を装置に溶接して空気、燃料、排ガス、反応物及び生成物のための連結部を形成した。
【0185】
図22Aは、溶接ICRの分解図を示す。組み立てた装置では、燃料は燃料入口223から入る。装置を溶接した後、(金属フェルト担体を含め)水蒸気メタン改質触媒を触媒スロット225内に配置する。装置は、エンドプレート227(厚さ3/8インチであり、0.014インチのチャンネルをもつ)、空気シム229(ジェットプレートによって覆われた20milの空気チャンネル)、燃料チャンネルシム231(厚さ25milであり、シムを機械加工したチャンネルをもつ)、吸熱反応シム233(厚さ0.105インチであり、空気チャンネルへ突き出た24milのリブ(図示せず)、深さ10milの反応物チャンネル、及び深さ20milの吸熱反応チャンバ225を有する。)を溶接することによって作製した。N2の組み立てに関しては、リブの2インチを機械加工でシム233から取り去り、POx触媒を燃料チャンネルへ挿入した。触媒支持片217を仮付け溶接してベンドシム219に接触させて、典型的には厚さ12milの触媒インサートを含有する反応チャンバ225の壁に対して触媒(図示せず)を押し付けた。Uベンドシム219は、60mil×380milの寸法のUベンドオリフィスを有していた。反対側のエンドプレートは、チャンネルの深さが30milである点を除いて227と同一である。
【0186】
図22Bは溶接ICR−Nのデザインの部分分解図を示し、生成物管20、空気管22及び空気マニホールド24、排ガス管26、吸熱反応物管28及び吸熱反応マニホールド30、燃料管32及び燃料マニホールド34が含まれる。この試験装置では、外側プレート36は気体の温度を監視するための熱電対を挿入するために穴38を有する。
【0187】
図22Cはジェット部分組立品229を構成する2枚のシムを示す。慣例手段により機械加工した空気チャンネルシム220は空気チャンネル222及び排ガスUベンド224を有する。ジェットシム226を空気チャンネルシムにレーザー溶接して部分組立品229を形成した。このレーザー溶接工程によってマニホールド端部の空気入口を除いてジェットシムの周囲全体に沿ってシールを形成する。こうして空気チャンネル中の流体が稼働中にジェット穴をバイパスするのを防止する。稼働中は、ジェット部分組立品からの空気がジェット穴を通過し、吸熱触媒インサートに隣接する燃焼チャンネルの触媒被覆壁に噴出する。これにより該壁での燃焼が引き起こされて吸熱反応への熱移動速度が最大化する。空気チャンネルシムは厚さが0.64mmであり、ジェットシムは厚さが約0.30mmであった。ジェットシムは、反応ゾーンの始まりにチャンネルの幅を横切る中央部に完全な円形も含めて、約0.31mm×0.91mmの寸法の二つのスロットオリフィスを有していた。第一のスロットオリフィスは長い寸法を流れの方向(軸方向)に向け、第二のスロットオリフィスは長い寸法を流れの方向に直角に向ける。上記二つのスロットの後には四分割中央部にジグザグに直径約0.31mmの10個の円形オリフィスが続く。Uベンドのすぐ上流にある最後の2個のオリフィスは直径約0.31mmでペアになって四分割中央部にある。連続するジェット間は間隔が不均等である。
【0188】
接着装置への触媒の挿入
SMRの触媒インサートは、活性な触媒材料で被覆したFeCrAlYフェルトの178mmの長い断片の形態をしていた。このインサートは公称厚さ0.25〜0.30mmで、幅9.4mmであった。代替的に、より薄い又はより厚い材料、或いはより幅広い又はより狭いフィルト断片も使用することができただろう。
【0189】
触媒断片を接着統合ICR反応器に挿入具を用いて挿入した。このインサートは、該インサートがチャンネル壁にもたれて座しながら、ガスが触媒に隣接して流れるための開放ギャップを維持することを確保するためにフェルトの両側に保持される二つの金属スペーサ(インコネル625、断面0.2mm×0.2mm)を有していた。
【0190】
挿入具の主たる構成部品は、保持具、差圧ガイドアセンブリ及び押込みアセンブリである。保持具は触媒の挿入中に装置を定まった位置に保持する。差圧ガイドアセンブリは触媒及びスペーサを定まった位置に保持するためのチャンネルを有しており、挿入中に触媒及びスペーサのアセンブリサンドイッチを定まった位置に保持するために真空を与える挿入タングを先導する。この差圧ガイドアセンブリはサンドイッチ上における差圧を探し、押込みアセンブリを先導する。押込みアセンブリはウォーム歯車滑りアセンブリである。触媒を挿入するために圧力フィードバックのある直流制御のステップモータを用いる。
【0191】
図24Aは挿入具の概略的平面図を示す。スペーサ(図24Bの245)をチャンネル242及び244内に搭載する。該スペーサを決まった場所に保持するために穴246に真空をかける。触媒(図示せず)をタング248及びスペーサの上に載せる。スペーサ及び触媒によって生じたサンドイッチの上に板(図示しないが、厚さ0.5インチである。この板は触媒インサートの上部を支えるのでマイクロチャンネル内に押し込まれるときに曲がらない。)を載せ、次いで装置に押し込む。装置の側面を「装置」と表示したブロックによって概略的に示し、その内部のチャンネルを点線で示す。タング248は厚さ6mil(0.15mm)であり、差圧ガイドアセンブリは幅が約0.5インチ(1.2cm)である。
【0192】
接着ICR反応器を保持具の中に置いて所定位置にクランプで固定した。触媒及びスペーサを、触媒断片及びスペーサのアセンブリの長さに沿って連続的に真空をかける工具(図24A〜C参照)の助けを借りて装置に同時に挿入した。真空は触媒が決まった場所に保持されるのを確実にする。スペーサを保持している真空を開放し、真空によって触媒を決まった場所に保持するタングを全体長さ7インチ(18cm)の反応チャンネルに向けて公称高さ20milのチャンネル内に挿入する。差圧ガイドアセンブリ及び板は装置の外側に残る。押込みアセンブリはチャンネルの長さにかかる圧力又は負荷を監視するための自動化された機能を有し、触媒が壁に引っかからないことを確保する。触媒が全7インチの反応チャンバの末端に届くと、真空は停止し、触媒が解放されて壁に隣接する。真空はわずかに多孔質触媒を圧縮するように作用し、それが解放されると、触媒は膨張して触媒及びスペーサのアセンブリは反応器内にとまりばめを作り出す(ぴったりフィットする)。
【0193】
マニホルディング
統合ICR反応器システムは装置に連結された5種類の別個の流体流れを有する。すなわち、プロセス反応入口、プロセス生成物流、空気入口、燃料入口、及び排ガス出口である。1種の流体流れ(排ガス)は装置の底部から出て行く。代替的に、他の流体の何れの流れも装置の底部、又は低温末端部でマニホールドすることができる。全体の圧力損失を最小限度にするために、排ガス流が装置の底部から出て行くように選択した。試験施設内での連結の容易化のため、流路を配管に連結するために外部マニホールドを装置の底部に溶接する。
【0194】
4種類の残りの流れは装置の側面にマニホールドされる。各流体はシムの側面に沿って出入りする。流体流れはICRの長さに沿って異なった位置で出入りする。各流体は一つのシム又はいくつかの隣接し合うシム内で独立しており、各流体を装置内で分離する壁シムの平面を通り抜けない。外部マニホールドが正しく結合及び封止されていないとき、或いは触媒前駆体流路と反応器流体チャンネルの間の領域でシムが正しく結合及び封止されていないときは、装置の末端以外では流間で漏れが発生することはない。代替的には、装置内で複数の流れに共通のシムを共有させることができるが、流れのマニホルディング及び封止に付加的な困難性を与える。
【0195】
複数流の装置に関しては、流体は装置の異なる高さのところで入り又は取り出すことができる。これによってマニホルディングが容易になる一方で、流間の漏れを防止することができ、更には熱交換器の熱分布を調節することができる。他の流れよりもずっと高い温度で入る流れは、装置の長さを更に下ってマニホールドするように、或いは伝熱式熱交換ゾーンのより高温部分に入れるように選択することもできる。
【0196】
ICRの底部から約13mmのところから、装置の底部から約64mmのところで空気流をマニホールドした。ここでは、装置は流体の入口及び出口をもつ一つの端部を底部にして立っているように見る。しかしながら、空気を接着装置内へ取り入れる開口スロットは高さがたった13mmであり、チャンネルが統合複数流伝熱式熱交換ゾーンに入るときに約90°曲がることが許される。空気又は他の流体のための開口部の高さは一般には全体の圧力損失をできるだけ最小にするように選択する。高い圧力損失が許容されるときは低い高さを選択することができる。同様に、より低い圧力損失が望まれるときは、入口及び出口は反応ゾーンにより近づけることができる。
【0197】
燃料流も装置の底部から約13mmのところから、装置の底部から約64mmのところで装置に入る。しかしながら、燃料はICRの反対側面でマニホールドした。燃料は空気とは異なる平面に沿って入り、間に挟まれた格納壁によって他のすべての流れと分離されている。
【0198】
装置の長さに沿って更に離れて、プロセス反応物及び生成物を対立する側面にマニホールドした。装置の端部から大体7.5〜11cmのところで、生成物流は装置に出入りする。外部のマニホールドを装置の外側に溶接してそれぞれ同種の流体を纏め、そしてマニホールドは外部の配管継手と結合する。各流体は側面から入り、約90°回転した後に装置を直線的に流れる。流れは装置に入ったときから同一のマイクロチャンネル内に留まり、熱交換ゾーンを通り、反応ゾーンを通り、Uベンドを回って、熱交換ゾーンを通って戻り、そして異なる平面に沿って装置の反対面上の側面からプロセス生成物流として出て行く。
【実施例】
【0199】
実施例で用いる水蒸気改質設計触媒の調製は、触媒粉末の調製、スラリーの調製、FeCrAlYフェルトの調製、及び工学的触媒の調製からなる。
【0200】
触媒粉末の調製
水蒸気改質に用いる触媒粉末は10wt%Rh/4.5wt%MgO/85.5wt%Al23より構成される。アルミナを挽いてマグネシウム溶液に含浸した。生じた粉末を乾燥し、粉砕して900℃で焼成した。
【0201】
次に、硝酸ロジウムの水溶液(約10wt%、エンゲルハード(Engelhard)社製)に含浸した。この粉末のスラリーを使用してFeCrAlYフェルト(フロリダ州デランドに所在のテクネティクス(Technetics)社製、厚さ0.25mm、多孔度75%)を被覆した。上記担体を洗浄し、熱処理して薄い酸化物層を成長させた。次に、この担体を化学蒸着(CVD)法を用いてアルミナのサブミクロンの層で被覆した。
【0202】
被覆に先立って、フェルトを所望の寸法(9.4mm×178mm(実施例1〜2の装置)、及び11.9mm及び88.9mm(残りの実施例))に切り出し、洗浄し、900℃の空気中で加熱し、熱処理したフェルトをCVDチャンバ内で1.5時間、850℃、5Torrとして14Vol%のO2を含有する酸化環境中でアルミニウムイソプロポキシドのような酸化アルミニウム前駆体で処理した。
【0203】
このフェルトをディップコーティングすると6.5cm2当たり約0.1グラムの乾燥触媒が搭載され、これを350℃で焼成した。
【0204】
実施例1〜2の装置内に燃焼触媒を被覆するため、空気流中で室温から1000℃まで温度を上げることで加熱処理した。
【0205】
シリンジポンプを使用し、Ce:Pdの比率を4:1としたCe及びPd塩の水性溶液で触媒前駆体通路を通して装置を満たした。18cmの高さまで装置を満たすのに14.32ccのCe/Pd溶液を必要とした。空気孔に触媒溶液が残らないように、窒素を使用して燃焼チャンネルから空気チャンネルへ装置をパージした。装置を850℃で焼成した。溶接ICR−M装置では、シムを空気中で1000℃で熱処理し、冷却してからCe:Pdの比率を4:1としたCe及びPd塩の水溶液で被覆した。綿製塗布具を使用してシム上に溶液を塗った。全部で3層の被膜を塗布、乾燥及び850℃〜1000℃の空気中で焼成した。
【0206】
Ce:Pdの比率を4:1としたCe及びPd塩の水溶液で被覆することによって、燃焼触媒を溶接ICR−N装置内に塗布した。予備混合したLa−Al23−ZrO2粉末スラリーを燃焼ゾーン表面に塗布して触媒担体の被膜を形成し、乾燥及び1000℃の空気中で焼成した。
【0207】
接着ICRの実施例1及び2
これらの実施例におけるマイクロチャンネルICR反応器システムは、上記の好ましい実施形態の説明のところで記載した二流体ループのデザインとした。装置に入る流れは室温条件又は若干高温とすることができる。一連のマイクロチャンネル熱交換器を随意的に使用して流れを付加的に予熱した。
【0208】
複数チャンネルの接着ICR装置を設計し、組み立てて、300時間稼働した。装置は、数種の流体流れを流すチャンネルを形成するために切り取られた種々の部分をもつ種々の厚さ(0.25、0.36、0.41、0.64及び6.4mm)の金属板を積層して、この積層体を拡散接合することで形成した((ブックエンドのように)厚い板を板の積層体の最外端に配置した。)。装置では三つの発熱反応(燃焼)の反復単位が吸熱反応(SMR)チャンネルの側面に配置されていた。
【0209】
この拡散接合装置のプロセス側は、接触時間9ms、水蒸気:C=2.5:1、約865℃、及びSMR出口圧力12atmとしてSMRの稼働を行った。装置の燃焼側は、燃料組成が5〜10%CH4及び6〜9%CO2(残りH2)、5〜10%過剰空気、及び出口圧力約7psig(装置下流のバルブ及び機器による損失)で稼働した。ガスクロマトグラフの較正チェックは8時間ごとに行い、必要時応じて較正した。
【0210】
設備/始動
一連の平行マイクロチャンネルを含む2種類の交換器からなるマイクロチャンネル熱交換器システムを使用してプロセス反応物を260〜290℃に予熱した。タイプ1は、2.5mm×64mm×0.25mmのマイクロチャンネルを50個含有するシングルパス型熱交換器であり、マイクロチャンネル列から2.5mmのところで抵抗加熱ロッド(ワトロー(Watlow)社のカートリッジヒータ、型式E3A50)を用いて加熱した。タイプ2は、2.5mm×114mm×0.25mmのマイクロチャンネルを100個含有するデュアルパス型熱交換器であり、マイクロチャンネル列から2.5mmのところで抵抗加熱ロッド(ワトロー(Watlow)社のカートリッジヒータ、型式G6A6032)を用いて加熱した。
【0211】
上述したタイプ2の熱交換器と同じマイクロチャンネル熱交換器を用いて160〜170℃に燃焼空気を予熱した。
【0212】
装置を始動するための燃焼燃料は純水素とした。装置内でのコークス化の可能性を一切排除するために始動時の燃料として純水素を選択したが、ある程度の量の炭化水素燃料を含む混合物を用いて装置を始動することもできると考えられる。燃料は装置の外部では予熱しなかった。代替的に、燃料をマイクロチャンネル熱交換器又は慣例の熱交換器を用いて燃料を予熱することもできたであろう。ICRへの入口で測定した典型的な入口燃料温度は80℃〜110℃であった。この室温を超える温度は装置からの線伝導損失によるガス加熱の結果である。
【0213】
入口及び出口流れの温度はすべて、ICR反応器システム上の統合熱交換器の入口又は出口から約5〜10cmのところのICR反応器システムへの連結管内に配置したタイプKの熱電対を用いて測定した。入口及び出口流のそれぞれに対して同様の場所に圧力変換器を追加した。
【0214】
五つのインコネル600製スウェッジロック(Swagelock)社の管継手を、ICR反応器システム上の適切な溶接スタッブ管に連結することで装置を設備した。全体の装置設備時間は1時間未満であった。
【0215】
熱電対は、熱交換器部分及び反応器部分の長さに沿ってICR反応器システムの外表面上に取り付けた。
【0216】
必要な機器には、反応物供給用ブルックス(Brooks)社製5850e及び5851eシリーズの質量流量調節計、オメガ(Omega)社製型式FMA−A23の質量流量計、ノーショック(NoShok)社製圧力変換器(型式1001501127及び1003001127)、オメガ(Omega)社製鎖錠継電器(型式CNI 1653−C24)、スウェッジロック(Swagelock)社製可変安全弁、熱伝導性検知ガスクロマトグラフ、ノバ(NOVA)社製型式300CLD化学ルミネセンスNO/NOx分析装置等が含まれた。正しい稼働のためにすべての機器を較正して確認した。流量は、BIOSインターナショナル社によって較正/認定された一次標準較正器(Dry−Cal DC−2Mプライマリー・フロー・キャリブレータ(Primary Flow Calibrator)(製品名))で較正した。圧力変換器は、フルーク(Fluke)社によって較正/認定されたフルーク(Fluke)社製700P07又は700P06圧力モジュールと共にフルーク(Fluke)社製圧力較正器(型式718 1006)を用いて較正した。ガスクロマトグラフ及びNO/NOx分析装置をプラックスエア・ディストリビューション(Praxair Distribution Inc.)社によってブレンド/認定された較正ガスで較正した。
【0217】
SMR生成物ラインを塞いで、まずSMR反応物ラインに静圧を掛けることによってICR反応器システムを圧力試験した。窒素を用いて217psigの圧力を掛けた。装置のこちら側の圧力をそのままにした。同時に、SMR側を加圧したまま燃焼側に48psigの圧力を掛けた。装置の機械的完全性を維持するために、圧力試験中は燃焼側の圧力はSMR側圧力を超えない。洩れ速度は15分間で0.5psigを超えず、こうしてICR反応器システムは稼働のための準備が整った。燃焼触媒は稼働前には還元又は処理しなかった。
【0218】
稼働前に、SMR触媒を約120℃〜150℃で還元した。反応器の統合燃焼部分を用いてICR反応器システムを加熱した。このプロセスは15.7SLPMでSMR側に窒素を流すことによって開始した。これはSMR触媒の還元中の平衡接触時間20ミリ秒に匹敵する流量である。次いで一次空気入口から12.0SLPMで、燃料入口から5.0SLPMで、窒素を燃焼側に供給した。次に空気を一次空気ラインから入る窒素と混合し、0.51sccmで空気を供給した。燃料入口に0.11sccmの流量で水素の供給を燃料入口に開始した。これは約100%の過剰空気に相当する。水素は室温で着火し、着火するとすぐに5%の過剰空気となるように燃料及び空気の比率を変化させた。燃焼によって放出される熱がICR反応器システムを加熱する。加熱速度は大体5℃/分であった。
【0219】
ICR反応器システム内の触媒部分の長さに沿って等温(±30℃)に近い温度分布を達成するための始動制御は適正な触媒還元にとって重要であった。5%の過剰空気を維持しつつ燃料水素及び空気の流量を同時に変化させることで制御を達成した。燃料水素の増加は燃料窒素の減少によって相殺し、空気流量の増加は一次空気ラインを流れる窒素の減少によって相殺した。これにより、ICR反応器システムの燃焼側へ比較的一定の流量を維持した。始動時に燃焼側において大体等しい全体流量を維持することは均一な温度分布を作り出すために重要であった。燃焼流体の流量が50%以上低下すると、触媒部分の前部が触媒部分の後部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。燃焼流体の流量が50%以上増加すると、触媒部分の後部が触媒部分の前部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。いずれのシナリオでも、触媒は正しく還元しない。
【0220】
SMR触媒を120〜150℃(±20℃)に1時間維持した。この時間、水素を10%として窒素(1.57SLPMのH2及び15.7SLPMのN2)をSMR触媒の側に流した(18ミリ秒の接触時間に相当)。
【0221】
1時間の触媒還元プロセスの後、SMRプロセス側の水素を止めた。窒素はSMR側を約15.7SLPMで流れ続ける。窒素の流量はSMRプロセス反応物の全体流量に大体等しかった(18ミリ秒の接触時間に相当)。18ミリ秒の接触時間はプロセス反応物の最初の流量であり、窒素流量を平衡値に設定することによって、始動時の純窒素からICR反応器システムの稼働へ変化が生じたときにICR反応器システム内の温度分布の変化が少なくなった。次に、SMR側をシステムの稼働圧力に加圧して10〜15psig/minで出口圧力160〜170psigとした。
【0222】
窒素を接触時間18ミリ秒でSMR側に流している間、装置の温度を600℃に加熱するために燃焼流体の流量を変化させた。装置の均一な加熱及び加熱速度の制御(先述したように5℃/分を超えない)のためにも始動制御は重要であった。水素:空気の比率を1:2.5に維持しつつ(5%の過剰空気に相当)、水素及び空気の流量を同時に変化させることで制御を達成した。水素及び空気の流量の増加は燃料窒素及び一次空気ラインの窒素流量をそれぞれ減少させるによって相殺し、ICR反応器システムの燃焼側への流量を一定に維持した。始動時に燃焼側において大体等しい全体流量を維持することは均一な温度分布を作り出し、5℃/分を超えないようにするために重要であった。
【0223】
ICR燃焼側の加熱を開始するために、上述したように一次空気入口ラインから空気を入れ、水素を燃料入口ラインから入れる一方で、窒素も一次空気ライン及び燃料入口ラインからシステム内に流し続けた。空気及び水素の初期流量については先に述べた。空気及び水素の流量をこれらの比率を5%の過剰空気に維持しながら互いに一分以内に増加させ、かつ全体の流量を一定に維持するために燃料窒素及び一次空気ライン窒素の双方の流量を下げることによって、これらの流体を変化させた。この一定の全体流量は600℃、18msでSMR反応を稼働するのに必要な燃焼燃料及び空気の全流量に概ね相当する。装置が600℃に達するまでには、窒素は0にまで減少する。
【0224】
空気及び水素の混合物が室温で着火しないときは、マイクロチャンネル熱交換器システムを使用して着火するまでICR反応器システムを加熱することができる。典型的には燃焼側は室温から60℃で着火する。着火後、ICR反応器システムに必要な入口温度を維持するようにマイクロチャンネル熱交換器システムを設定した。更に、この試験では燃料入口インラインから燃料と共に空気は供給しなかったが、燃焼反応率を支援するためにこれを行うことができたであろう。
【0225】
SMR側が大体400℃に達するとき、接触時間を18ミリ秒として、水蒸気の全流量の15%(水蒸気:炭素の比率=6:1に相当)でSMR反応側に水素を入れた。これは概ね2.5SLPMであった。一分以内に、SMR側の水ポンプを動かして液流量3mL/分とした。次の10〜15分で、流量が接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素=6:1に相当するまで(12mL/分)、液状の水流量を3mL/分の増加量で上昇させた。水素及び水の供給速度が増加するにつれ、これに応じて全体の流れを18msの接触時間に維持するために、SMR側の窒素流量を減少させた。
【0226】
先に記載したように燃焼側の流量を変化させることで装置を600℃へ加熱し続けた。装置が600℃に達すると、SMR反応の開始及び対応する熱の落ち込みへの準備のために燃焼流を若干増加した。流れを増やして、概ね燃料入口ラインからの水素を1.4SLPM、一次空気入口ラインからの空気を3.51SLPMとした。一分以内に、SMRのメタンを接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素の比率=6:1に適合するように入れ始めた。SMR側で最初に窒素、次に水素を止めて、ICR反応器システムが停止するまで二度と使用しなかった。
【0227】
SMR反応が開始すると熱負荷を生じるので、温度が安定化するまで水素及び空気の燃焼流量を増加する必要があった。次に、装置を反応器部分のための所望の稼働温度まで加熱した。先に議論したように、一次空気ラインの空気及び燃料水素がそれぞれ増加するにつれ、一次空気ライン及び燃料ラインへの窒素が止まるまで一次空気ラインの窒素及び燃料窒素を減少させて行った。水蒸気対炭素及び接触時間を変化させて、所望の実験条件とした。水蒸気対炭素及び接触時間が変化するとSMR側の熱負荷が増加するので、所望の反応器温度を維持するために燃焼側の流量を増加させた。燃焼側の流れを上昇させる手順は、空気の次に燃料であり、燃焼側の流れを下降させる手順は燃料の次に空気とした。
【0228】
装置では、ICRの反応器部分の温度は少なくとも800℃に加熱した後に水蒸気:炭素の比率を3:1以下に減少させた。始動条件から稼働条件へ遷移する間、SMRプロセス側の条件を変化させる手順は、水の流量を増加させた後にSMRプロセス炭化水素の流量を増加させることであった(すなわち、より高い水蒸気対炭素比にした後に所望の水蒸気対炭素比に戻した)。
【0229】
更に、この時又はより早くに、適切な燃料対空気比を維持するために空気流量を補正しながら燃焼燃料に炭化水素の供給を加えることができる。このプロセスの手順は、所望の過剰空気比率を維持するために必要な流量だけ最初に燃焼一次空気を増加させ、次に炭化水素流量の供給を開始して次いで炭化水素の流量が上昇させたのと同一のエネルギー出力分の水素の流量を下げた。
【0230】
停止プロセスは始動プロセスと逆に行った。
【0231】
緊急停止
このICR反応器システムは、プリセットした稼働温度又は圧力の上限又は下限を超えると、燃焼及びSMRプロセス反応物流を停止するいくつかのインターロックを有する。もし限界を超えると、パワー・トゥ・オープン(power-to-open)バルブによって数ミリ秒内に反応物流が停止して、ICR反応器システムのSMR及び燃焼側双方に3〜5SLPMで窒素の供給を開始する。この窒素流が100ミリ秒未満で装置からすべての可燃性流体を流し、オペレータ介入によってシステムがリセットされるまで窒素流は流れ続けることになる。
【0232】
制御方法
ICR反応器システムの始動時、稼働時及び停止時にはいくつかの制御方法を実施した。
【0233】
第一に、全体容量で稼働するときの流れ分布をよりよく模擬するために、始動時には窒素及び空気を一次空気入口ラインに入れ、窒素及び燃料を燃料入口ラインに入れた。こうすることで、始動時に必要な比較的小さな燃焼流に対してより都合良く空気及び燃料を分布及び混合することができる。この手順は始動時の混合物の燃焼性を下げることで、熱入力をほんの小さな局所領域に集中させがちな均一燃焼とは反対に、一様な触媒燃焼も促進した。ICR反応器システムの178mmの反応器長さに沿った温度分布を、全体の燃焼流量(すなわち、接触時間)及び化学量論(すなわち、過剰空気)で制御した。燃焼ゾーンの始まり部分が低温になりすぎたときは、(空気及び燃料を共に減少させ、或いは空気及び燃料の流量を一定に維持しつつ窒素のみを減少させることによって)流れを減少させて反応ゾーンの末端近傍の温度を低下させた。代替的に、178mmの反応ゾーンの末端が低温になりすぎたときは、流量を増加して該領域により高い温度を作り出した。燃料対空気の比率を用いて、全体の熱入力を増減させずにICR反応器システムの反応ゾーン内の温度分布を制御した。過剰空気が増加すると最高温度は上流側に移動し、過剰空気が減少(3〜5%ほどにまで)すると最高温度は下流側に移動する。
【0234】
第二に、温度を維持するために空気及び燃料を変化させた。これは簡単なフィードバック制御ループによって達成した。ICR反応器システムのウェブ領域にある熱電対を制御地点として選択した。システムが低温になりすぎると、フィードバック制御によって所望の燃料対空気の比率を維持しつつICR反応器システムへの空気及び燃料の流量を増加した。システムが高温になりすぎると、フィードバック制御がこれとは逆にはたらいた。
【0235】
第三に、ICR反応器システムでの変化は典型的には漸進的に数時間かかるものであったので、事前停止指示器/警報器の使用は稼働をうまく行うために不可欠であった。事前停止指示器はインターロックの値の15〜40%で起動する。それ故、該指示器はオペレータに充分に前もってシステムを停止させるであろう条件を警告し、オペレータが反応して範囲を外れたいかなるパラメータをも制御することを可能にする。これによって、定常的な監視なしでICR反応器システムを稼働することが可能になり、一方でシステムが仕様を外れてドリフトしたときは修正が可能となる。
【0236】
第四に、始動時に窒素を使用してSMRプロセス側に入ってくる全体流量を模擬することによって、SMR反応物の供給が開始されてSMR窒素の供給が停止するときに温度ショックの大きさを低減する。ICR反応器システムは寸法が小さく、マイクロチャンネルの構造により応答が速いために突然のかつ害を及ぼす可能性のある温度変化を受けやすいので、このことは重要であった。
【0237】
第五に、燃焼流を増加させるときは、瞬間的に燃料リッチな状態(上記状態では燃焼化学によってICR反応器システムに沿った温度分布を変化及び変更し得る。)になるを防止するために燃料の前に空気量を上げた。
【0238】
第六に、SMRプロセス側の流れを増加させるときは、最終的な水蒸気対炭素比とする前により高い水蒸気対炭素比とするような変化を常に行った。例えば、水及び炭化水素の双方を増加させようとするときは、最初に水を増加させて次に炭化水素を増加させた。
【0239】
結果
反応器を300時間稼働し、見掛け平衡温度約865℃で連続的に平衡SMR生成物を生産した。300時間の稼働中は、接触時間=9ms、出口温度=約12bar、そして水蒸気対炭素の比率=2.5:1を維持した。最初の50時間の稼働中は、5%の過剰空気を用い、その後10%過剰空気を用いた。燃焼燃料中のメタンを10%として、70時間を超える接着ICRの連続的稼働を行った。実験中は、SMR又は燃焼活性においてほとんど又は全く低下が観察されなかった。
【0240】
試験で得られた詳細データは表1に記載した。最初の25時間後、燃焼燃料中のメタン5〜10%で完全燃焼が観察された。SMR反応は燃焼反応によって供給されたほぼ75%の熱を吸収した。乾燥燃焼排ガス中のCO及びNOx濃度はそれぞれ0.1%及び8ppm未満であった。表1において、平均反応器温度は一表面上においてUターンに最も近いところ(反応ゾーンの最後の四分の一に広がる)での三つの表皮温度測定値の平均であると仮定した。表1に報告された表皮温度は一表面の中央線に沿って(中央の燃焼排ガスチャンネルに最も近い端をたどって)測定した。SMR接触時間は、触媒、スペーサ、及び触媒に隣接するフローバイの隙間を含めて、六つのSMR反応チャンネルの全体容積に基づいて計算した。各SMR反応チャンネルの寸法は長さ17.78cm×幅0.965cm×高さ0.051cmであり、(六つのチャンネル全部を含めて)全体容積は5.23cm3であった。乾燥試験計器の較正の変化に起因する乾燥生成物出口流の測定値に関連していくつかのエラーが見つかった。これは試験計器に水が蓄積したことによるものと考えられる。そのため、質量流量制御計及びGCの較正における微量のエラーと組み合わさって、±15%の範囲で炭素バランスのエラーが生じた。
【0241】
装置の300時間にわたる稼働の結果を図25〜27にグラフで示した。設備側のバランスに起因したプロセスの乱れが若干あったが、装置の性能は全300時間の稼働を通して著しく安定であった(図25参照)。
【0242】
室温の日々の変化と共に周期的に変動する温度の周期的挙動パターンが見られたが、装置温度(図26参照)もかなり安定であった。
【0243】
図27は燃焼性能を示す。最初の25時間の稼働中、メタン燃焼反応率が完全燃焼が達成されるまで定常的に上昇したことに注目されたい。燃料流中のメタン濃度が10%(約225時間の地点;この地点での乾燥排ガス中のCO濃度は<0.1%であった。)へ増加するまでは、乾燥排ガス中には検知可能なCOが現れなかった。反応による全体の燃焼熱は5%及び10%のメタン燃焼燃料条件の双方に対して同じであり、変化の前後において平均表皮温度及びSMRの性能はほぼ同一の結果となった。
【0244】
【表2−1】

【表2−2】

【0245】
平均反応器温度は、反応器の最後の25〜30%(もっとも下流)に沿って測定した周囲金属又は金属ウェブの熱電対測定値の平均値として計算した。
【0246】
300時間の稼働にわたって、SMR反応器の入口圧力は180psigから約245psigに増加した一方で、SMR生成物出口圧力は約165psigに維持した。SMRのメタン流量は10SLPMに維持した。SMRの液状水流量は20cc/分に維持した。SMR反応物入口ガス温度は約283℃に維持し、SMR出口ガス温度は稼働中を通じて約325℃に維持した。
【0247】
上記結果は同一の接触時間で稼働するいかなる従来装置よりも優れている。
【0248】
最初の50時間は、接着ICRは燃焼のための過剰空気を5vol%で稼働し、そして次の250時間は過剰空気を10%とした。最初の225時間の稼働中は、燃料はメタン;5%、水素;89%及びCO2;6%を含有し、そして次の75時間の稼働中はメタン;10%、水素;81%及びCO2;9%に変化させた。稼働中を通じて、空気入口温度は約160℃であり、燃料入口温度は約80℃であり、そして排ガス温度は最初の50時間は約330℃であり、次の175時間は343℃に上昇し、最後の75時間は約347℃であった。
【0249】
実施例2 接着装置;結果及び検討
メタン及び水蒸気を水蒸気:C=2.5:1で用いて、850℃及び12.5atmとして実施例2の接着ICR装置を実験した。試験は接触時間6msで88時間、次に接触時間9msで>300時間とした。燃焼燃料組成はCH4;5〜10%、CO;0〜2%、CO2;6%、残りH2とした。過剰燃焼空気は3〜7%に維持した。
【0250】
試験結果を表2及び図28〜31に示す。表2において、平均反応器温度は一表面上においてUターンに最も近いところ(反応ゾーンの最後の四分の一に広がる)での三つの表皮温度測定値の平均であると仮定した。表2に報告された表皮温度は一表面の中央線に沿って(中央の燃焼排ガスチャンネルに最も近い端をたどって)測定した。
図28は全400時間の稼働にわたるSMRの性能を示す。図29では、接着ICR試験から得られた燃焼結果を示す。図29における驚くべき結果の一つは燃焼CH4の反応率がH2反応率を超えていることである。もう一つは反応器が950℃を超えたときのCOの増加及びH2の減少である。上記観察結果は一つには、これらの高い燃焼流量においてはメタン燃焼が燃焼ゾーンで完了せず、排ガスチャンネルのどこかで部分的に酸化して水素及び一酸化炭素になると説明される。図30は稼働中に反応器の長さに沿ってどのように測定表皮温度が変化したかを示す。図31は水蒸気対炭素の比率を3.0としてSMRの接触時間を変化させたときのSMRの性能を示す。
【0251】
【表3−1】

【表3−2】

【0252】
図31のデータから分かるように、6〜18msで接触時間を変化させて得られた結果には実質的な変化はなかった。
【0253】
溶接ICR−N2
設備/始動
マイクロチャンネルICR反応器システムは、プロセス反応物、燃焼空気及び燃焼燃料を予熱するために一連の統合熱交換器を含有する。統合熱交換器はまた、プロセス生成物及び燃焼排ガスを冷却する。装置に入る流れは室温条件又は若干高温とすることができる。一連のマイクロチャンネル熱交換器を随意的に使用して流れを付加的に予熱した。更に、ICR反応器システムの反応器部分は慣例のハーフシェル形セラミックヒータで囲った。この装置は反応器部分以外にも熱を供給するためにも使用し、ICR反応器システムの外表面から1/2インチ〜3/4インチのところに取り付けた。
【0254】
上述したマイクロチャンネル熱交換器システムを用いて280〜310℃にプロセス反応物を予熱した。先述したタイプ2の熱交換器と同じマイクロチャンネル熱交換器を用いて150〜160℃に燃焼空気を予熱した。
【0255】
装置を始動するための燃焼燃料は純水素とした。装置内でのコークス化の可能性を一切排除するために始動時の燃料として純水素を選択したが、ある程度の量の炭化水素燃料を含む混合物を用いて装置を始動することもできると考えられる。燃料は装置の外部では予熱しなかった。代替的に、燃料をマイクロチャンネル熱交換器又は慣例の熱交換器を用いて燃料を予熱することもできたであろう。ICR反応器システムへの入口で測定した典型的な入口燃料温度は110℃〜120℃であった。
【0256】
入口及び出口流れの温度はすべて、ICR反応器システム上の統合熱交換器の入口又は出口から約5〜10cmのところのICR反応器システムへの連結管内に配置したタイプKの熱電対を用いて測定した。入口及び出口流のそれぞれに対して同様の場所に圧力変換器を追加した。
【0257】
五つのインコネル600製スウェッジロック(Swagelock)社の管継手を、ICR反応器システム上の適切な溶接スタッブ管に連結することで装置を設備した。全体の装置設備時間は1時間未満であった。
【0258】
熱電対は、熱交換器部分及び反応器部分の長さに沿ってICR反応器システムの外表面上に取り付けた。
【0259】
システムの機器には、反応物供給用ブルックス(Brooks)社製5850e及び5851eシリーズの質量流量調節計、オメガ(Omega)社製型式FMA−A23の質量流量計、ノーショック(NoShok)社製圧力変換器(型式1001501127及び1003001127)、オメガ(Omega)社製鎖錠継電器(型式CNI 1653−C24)、スウェッジロック(Swagelock)社製可変安全弁、熱伝導性検知ガスクロマトグラフ、ノバ(NOVA)社製型式300CLD化学ルミネセンスNO/NOx分析装置等が含まれた。正しい稼働のためにすべての機器を較正して確認した。流量は、BIOSインターナショナル社によって較正/認定された一次標準較正器(Dry−Cal DC−2Mプライマリー・フロー・キャリブレータ(Primary Flow Calibrator)(製品名))で較正した。圧力変換器は、フルーク(Fluke)社によって較正/認定されたフルーク(Fluke)社製700P07又は700P06圧力モジュールと共にフルーク(Fluke)社製圧力較正器(型式718 1006)を用いて較正した。ガスクロマトグラフ及びNO/NOx分析装置をプラックスエア・ディストリビューション(Praxair Distribution Inc.)社によってブレンド/認定された較正ガスで較正した。
【0260】
SMR生成物ラインを塞いで、まずSMR反応物ラインに静圧を掛けることによってICR反応器システムを圧力試験した。窒素を用いて205psigの圧力を掛けた。装置のこちら側の圧力をそのままにした。同時に、SMR側を加圧したまま燃焼側に55psigの圧力を掛けた。装置の機械的完全性を維持するために、圧力試験中は燃焼側の圧力はSMR側圧力を超えない。洩れ速度は15分間で0.5psigを超えず、こうしてICR反応器システムは稼働のための準備が整った。
【0261】
1SLPMの水素を用いて燃焼触媒を室温で1時間還元した(接触時間=55ミリ秒)。外部から熱は供給しなかった。次いで、SMR触媒の還元のための適切な温度を得るために燃焼流体を以下のようにして供給し始めた。SMR触媒の還元温度は250℃〜300℃とした。反応器の統合燃焼部分を用いてICR反応器システムを予熱した。このプロセスはSMR側の窒素流量を2.5SLPMに増加することによって開始した。これは21ミリ秒の接触時間に相当する。次に、燃焼側の燃料入口における水素の供給を停止した。次いで一次空気入口から2.0SLPMで、燃料入口から1.0SLPMで、窒素を燃焼側に供給した。次に0.5SLPMで空気を供給して窒素と混合した。燃焼側の燃料入口に200sccmの流量で水素の供給を再開した。水素は室温で着火した。燃焼によって放出される熱がICR反応器システムを加熱する。加熱速度は大体5℃/分であった。
【0262】
ICR反応器システム内の7インチ(178mm)の触媒部分の長さに沿って等温(±30℃)に近い温度分布を達成するための始動制御は適正な触媒還元にとって重要であった。5%の過剰空気に対応する特定の比率を維持しつつ水素及び空気の流量を同時に変化させることで制御を達成した。燃料及び空気流量の増加は燃料窒素及び一時空気ライン窒素の流量をそれぞれ減少させることによって相殺し、ICR反応器システムの燃焼側へ一定の流量を維持した。始動時に燃焼側において大体等しい全体流量を維持することは均一な温度分布を作り出すために重要であった。燃焼流体の流量が50%以上低下すると、触媒部分の前部が触媒部分の後部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。燃焼流体の流量が50%以上増加すると、触媒部分の後部が触媒部分の前部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。いずれのシナリオでも、触媒は正しく還元しない。いったんICR反応器システムの温度が反応ゾーン内で250〜300℃に到達すると、SMRの水素流量を一時間かけて徐々にSMRの窒素流量の10%にした。一時間後、SMRの水素を0.25SLPMとし、これは接触時間19ミリ秒に相当し、一時間の還元を開始した。
【0263】
SMR触媒を250〜300℃(±20℃)に1時間維持した。この時間、水素を10%として窒素(0.25SLPMのH2及び2.5SLPMのN2)をSMR触媒の側に流した(19ミリ秒の接触時間に相当)。
【0264】
1時間の触媒還元プロセスの後、SMRプロセス側の水素を止めた。窒素はSMR側を約2.5SLPMで流れ続ける。窒素の流量はSMRプロセス反応物の全体流量に大体等しかった(18ミリ秒の接触時間に相当)。18ミリ秒の接触時間はプロセス反応物の最初の流量であり、窒素流量を平衡値に設定することによって、始動時の純窒素からICR反応器システムの稼働へ変化が生じたときにICR反応器システム内の温度分布の変化が少なくなった。
【0265】
次に、SMR側をシステムの稼働圧力に加圧して10〜15psig/minで出口圧力175〜185psigとした。窒素を接触時間18ミリ秒でSMR側に流している間、装置の温度を600℃に加熱するために燃焼流体の流量を変化させた。装置の均一な加熱及び加熱速度の制御(先述したように5℃/分を超えない)のためにも始動制御は重要であった。水素:空気の比率を1:2.5に維持しつつ(5%の過剰空気に相当)、水素及び空気の流量を同時に変化させることで制御を達成した。燃料及び空気の流量の増加は燃料窒素及び一次空気ライン窒素の流量をそれぞれ減少させるによって相殺し、ICR反応器システムの燃焼側の流量を一定に維持した。
【0266】
ICR燃焼側の加熱を開始するために、上述したように一次空気入口ラインから空気を入れ、水素を燃料入口ラインから入れる一方で、窒素も一次空気ライン及び燃料入口ラインからシステム内に流し続けた。空気及び水素の初期流量については先に述べた。空気及び水素の流量をこれらの比率を5%の過剰空気に維持しながら互いに一分以内に増加させ、かつ全体の流量を一定に維持するために燃料窒素及び一次空気ライン窒素の双方の流量を下げることによって、これらの流体を変化させた。この一定の全体流量は600℃、18msでSMR反応を稼働するのに必要な燃焼燃料及び空気の全流量に概ね相当する。装置が600℃に達するまでには、窒素は0にまで減少した。
【0267】
空気及び水素の混合物が室温で着火しないときは、マイクロチャンネル熱交換器システムを使用して着火するまでICR反応器システムを加熱することができる。典型的には燃焼側は室温から60℃で着火する。着火後、ICR反応器システムに必要な入口温度を維持するようにマイクロチャンネル熱交換器システムを設定した。更に、この試験では燃料入口インラインから燃料と共に空気は供給しなかったが、燃焼反応率を支援するために行うことができただろう。
【0268】
SMR側が大体400℃に達するとき、18ミリ秒の接触時間、水蒸気の全流量の15%(水蒸気:炭素の比率=6:1に相当)でSMR反応側に水素を入れた。これは概ね380sccmであった。一分以内に、SMR側の水ポンプを動かして液流量2mL/分とした(接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素=6:1のプロセス初期条件に相当する。)。水素及び水の供給速度が増加するにつれ、これに応じて全体の流れを18msの接触時間に維持するために、SMR側の窒素流量を減少させた。
【0269】
先に記載したように燃焼側の流量を変化させることで装置を600℃へ加熱し続けた。装置が600℃に達すると、POx触媒は還元を必要とした。これは、ICR反応器システムのPOx領域を必要とされる600℃に単純に維持することで達成した。純水素を供給すると、POx触媒の下流で空気が水素と合流して燃焼し、還元に干渉することなく還元のための熱を供給するので触媒は還元した。
【0270】
以下の一連の手順をすべて一分以内に行うことによってSMR反応を開始した。SMRのメタンを接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素の比率=6:1に適合するように入れ始めた。次いで、SMR側で最初に窒素、次に水素を止めて、ICR反応器システムが停止するまで二度と使用しなかった。
【0271】
SMR反応が開始するとICR反応器システムを冷却させるので、ICR反応器システムの反応器部分の温度が600℃(+40℃、−0℃)で安定化するまで燃焼流を増加させた。この時間の間に、一次空気ライン及び燃料ラインを通る燃焼側の窒素を止めた。次に装置を860℃に加熱し、この地点で水蒸気対炭素の比率を3:1に変化させ、接触時間を12ミリ秒とした。一次空気ラインからの空気及び燃料ラインからの燃料の流量を変化させて温度を維持した。そして、外部に取り付けられたセラミックヒータを用いてICR反応器システムを860℃に維持しつつ、水素燃料が止まるまで徐々に流量を下げていった。炭化水素及び空気は燃料入口から燃焼側へ供給した。炭化水素対酸素の比率を2:1に維持しつつ、これらの流れをセラミックヒータが温度を維持するために熱を供給する必要がなくなるまで増加させ、この地点でセラミックヒータを停止した。
【0272】
こうして燃焼側の流れが反応器部分において所望の稼働温度を維持するように変更された。水蒸気:炭素及び接触時間は所望の実験条件へと変化させた。水蒸気:炭素及び接触時間が変化するとSMR側の熱負荷が上昇するので、所望の反応器温度を維持するために燃焼側の流れを増加させた。燃焼側の流れを増加させる手順は、所望の過剰空気比率を維持するのに必要な流量分だけまず燃焼一次空気を増加させ、次に炭化水素流量を増加させることである。
【0273】
装置では、望ましい運転計画に従って、ICRの反応器部分の温度は少なくとも800℃に加熱した後に水蒸気:炭素の比率を3:1以下に減少させた。始動条件から稼働条件へ遷移する間、SMRプロセス側の条件を変化させる手順は、水の流量を増加させた後にSMRプロセス炭化水素の流量を増加させることであった(すなわち、より高い水蒸気対炭素比にした後に所望の水蒸気対炭素比にした)。
【0274】
停止
停止プロセスは始動プロセスと逆に行った。緊急停止手順は先に述べた通りである。
【0275】
制御方法
ICR反応器システムの始動時、稼働時及び停止時にはいくつかの制御方法を実施した。制御方法の最初の三つのは先に述べたとおりである。
【0276】
第四に、始動時に窒素を使用してSMRプロセス側に入ってくる全体流量を模擬することによって、SMR反応物の供給が開始されてSMR窒素の供給が停止するときに温度ショックの大きさを低減する。ICR反応器システムは寸法が小さく、マイクロチャンネルの構造により応答が速いために突然のかつ害を及ぼす可能性のある温度変化を受けやすいので、このことは重要であった。
【0277】
第五に、燃焼流が増加するときは、瞬間的に燃料リッチな状態(上記状態では燃焼化学によってICR反応器システムに沿った温度分布を変化及び変更し得る。)になるのを防止するために燃料の前に空気量を上げた。
【0278】
第六に、SMRプロセス側の流れを増加させるときは、最終的な水蒸気対炭素比とする前により高い水蒸気対炭素比とするような変化を常に行った。例えば、水及び炭化水素の双方を増加させようとするときは、最初に水を増加させて次に炭化水素を増加させる。
【0279】
第七に、ICR反応器システムの反応器部分を囲む外部セラミックヒータを用いることによって、燃焼燃料として純水素を用いた装置の始動が可能となり、その後に安全かつ効率的に炭化水素燃料の供給へと切り替えることが可能となった。これにより、ICR反応器システムの燃焼領域に入る前に、水素又はメタンの空気中濃度を爆発する恐れのある領域に入れる必要性を回避した。
【0280】
溶接ICR−N3
設備/始動
N3の設備及び稼働は以下の例外を除いてN2と同一の手順に従った。
1. SMRプロセス側を290psig、燃焼側を70psigで圧力試験を行った。
2. SMRプロセス入口を280〜340℃へ予熱した。
3. 燃焼側の一次空気入口を140〜160℃へ予熱した。
4. 燃焼側の燃料入口を50〜70℃に予熱した。
5. N3に対する方法論はN2と同様だが、最初の着火に用いる流量は相違した。窒素を3.0SLPMで一次空気入口から燃焼側に供給する一方で、燃料窒素は止めた。燃料水素は200sccmで一次空気は4.0SLPMとした(これは、750%の過剰空気に相当する。)。着火は200℃で起き、加熱時間はセラミックシェルヒータの使用によって減少した。着火に続いて、N2と同じ方法でN3を始動した。
6. N3はICR反応器システムのPOx部分を含有せず、従ってPOx部分を還元しなかった。従って、装置が600℃に達したとき、SMR反応をN2の実施例で述べたよう開始した。
7. SMRプロセス側出口の稼働圧力は185〜195psigとした。
8. ICR反応器システムが600℃に達したとき、水蒸気対炭素の比率を4.5:1、接触時間を18ミリ秒としてSMR反応を開始した。
【0281】
制御方法
N3の設備及び稼働は以下の例外を除いて溶接ICR−N2と同一の手順に従った。
1. 燃焼側で水素着火するために過剰空気を変数として用いた。水素着火の間、典型的には5%の過剰空気を用いたが、N3では着火を達成するためにこの変数を750%に変化させた。
【0282】
結果
二つの燃焼チャンネルと一つの改質チャンネルの間は並流型に配列した。チャンネル内の反応物流が固体チャンネル壁と熱移動表面(燃焼チャンネルと改質チャンネル間の固体金属)に緊密に接触している多孔質触媒層との狭い隙間(約0.2mm)に流れるようにすることによって圧力損失を小さくするために、改質チャンネル内はフローバイ型のデザインとした。燃焼チャンネルには二つの異なるデザインを用いた。一つはメタン直接燃焼のデザインであり、もう一つはメタンの部分酸化後にメタン、一酸化炭素及び水素燃焼を行うデザインである。燃焼排ガスチャンネルに燃焼燃料及び空気チャンネルを、改質生成物チャンネルに改質反応物チャンネルをそれぞれ連結させるためのUターンを設計した。改質反応物、生成物、燃焼空気、燃料及び排ガス流を含む5種類の流れ間の熱分布の均衡を図るために伝熱式熱交換器を反応器に直接統合した。改質流及び燃焼流は共にループ流のパターンを進む。改質反応物は、固体チャンネル壁の片側に多孔質触媒を有するループの外側に入り、隣接する生成物チャンネル内(ここには触媒はない。)を戻ってくる。燃焼燃料は第二のMの外側に入り、燃料チャンネルと排ガスチャンネルの間にある空気チャンネルから燃焼チャンネルに空気が噴射され、熱が隣接する改質反応物チャンネルへ移動する。排ガス流は第二のMの中央から出る。この統合装置は二つの隣接する二流体ループの二半分の組合せとした。この統合反応器に対する試験結果は、本概念が商業的用途にスケールアップ可能であることを示した。
【0283】
始動1
反応器が850℃で安定化した後、反応器温度を維持するために外部のセラミックヒータを点け、一方で燃焼水素は徐々に減少させて止めた。メタンを燃焼燃料チャンネルへ導入して徐々に増加させる一方で反応器温度を維持するために外部のセラミックヒータを徐々に弱めていった。セラミックヒータを止めて反応器の定常状態が確立した後に、改質側及び燃焼側の双方を目標とする条件に調節した。
【0284】
始動2
POx触媒を600℃で1時間還元した後、燃焼水素を止めて反応器温度を400℃まで下げ、次いで反応器温度を維持するために外部のセラミックヒータを点けた。反応器温度が400℃になったときに、燃焼燃料及び空気を燃焼チャンネルに導入して反応器を600℃に加熱した。セラミックヒータは加熱中は止めた。改質側及び燃焼側の双方が600℃で安定化した後、不活性流を維持しながら水及び水素(蒸気体積の15%)を改質側に導入した。水流が確立されると、メタンの供給を開始する一方で水素及び不活性ガスを止めて、改質側にて水蒸気対炭素の比率を6:1、接触時間を18msに維持した。次いで、燃焼側での水素及び空気の流量を増加させることによって改質側を850℃に加熱した。次に、燃料流及び空気流を調節して一定の反応器温度を維持することによって改質側の水及びメタン流を目標とする条件に調節することができる。
【0285】
溶接ICR N2及びN3に対する結果及び検討
実験例
メタンを部分酸化(POx)させてからメタンを燃焼させることの有効性を試験するために溶接ICR−N2を設計した。これは、100ppiの発泡金属にPOx触媒を溶液塗布することによって行った。N2は全体で606時間稼働し、その結果を表3及び4に示す。この試験の概ね40時間は、プロセス側及び燃焼側の双方に天然ガスを使用したが、性能に変化はなかった。概して、POx後に燃焼を行うこのデザインは良好な性能を有していた。
【0286】
N2はまた、簡素化された始動手順をうまく実証した。装置は最初に水素を用いて装置を予熱することができる(或いは代替的に装置は外部のヒータを用いて加熱することができる。)。燃料ライン中の水素燃料からPOx燃料混合物へ安全に転換している間は、装置は冷却されることが予期されるが、装置が400℃未満に冷却されることはないと予期される。この始動手順は反応器を375〜400℃に加熱してPOxの供給を開始することにより試験した。POx触媒は極めて良く着火したので、この方法を用いた加熱には全く問題がなかった。POxの供給を開始した後の全体の始動手順は純水素でSMRを開始するのと顕著に類似していた。この試験は二度繰り返し、同一の結果が観察された。
【0287】
【表4】

【0288】
【表5】

【0289】
実験例
燃焼ゾーンの壁上にスラリーの薄塗りを配置することによるCH4燃焼の有効性を試験するために溶接ICR−N3を設計した。本装置はPOxなしで稼働した。SMR側を水蒸気:炭素=3:1、接触時間6msで運転したときにはCH4の反応率は95%を超えた。N3の結果は表5及び6に示す。
【0290】
【表6】

【0291】
【表7】

【0292】
N3の5流体の統合型熱交換器の性能を評価した。対応するデータを表7〜9に示す。熱交換器の流束は、冷流が得た全体の熱を合計して熱交換コア容積で割ることによって計算した。
【0293】
熱交換のエネルギーバランスは、冷流が得た熱を合計して熱流が失った熱で割ることによって計算した。
【0294】
滞留時間は、熱交換器中の流れの平均測定温度及び圧力で計算してミリ秒(ms)で報告した。各熱交換マイクロチャンネル内の滞留時間は特定流体に対する内部マイクロチャンネルの全体容積を実際の容積流量で割って求める。各流体流れについて、容積流量は入口及び出口条件の平均とした。
【0295】
熱交換器の高温末端部を出る流体の温度は統合型反応器のために直接測定することはできなかった。従って、熱交換器の高温末端部近くの金属ウェブ内に熱電対を配置し、この温度を用いて熱交換器を出る冷流(空気、燃料、反応物)の温度を見積もった。生成物及び排ガスの熱交換器の高温末端部への入口温度はそれぞれの流れのUターンガスの測定温度よりも約20℃低いと見積もった。
【0296】
表5の第二データ列に相当する条件に関して、溶接ICR−N3の熱交換流束は14.2W/cm3であり、熱交換器の熱損失は10%未満であった。冷流が得て熱流が失った熱はそれぞれ、約255W及び265Wであった。内部の熱交換容積は17.95cm3であった。
【0297】
流間平面熱移動面積率(IPHTAP)として知られるパラメータを計算した。このパラメータは、チャンネル内の全体の表面積に対する異なった流体を有する隣のチャンネルに熱を移動させる面積の比率と定義される。全体の表面積にはリブ、ファン、別の流体含有チャンネルに隣接していない表面、及び表面積拡張器(もしあれば)のみが含まれる。
【0298】
【表8】

【0299】
【表9】

【0300】
【表10】

【0301】
溶接ICR−M1
設備/始動
マイクロチャンネルICR反応器システムは、プロセス反応物、燃焼空気及び燃焼燃料を予熱するために一連の統合型熱交換器を含有する。統合型熱交換器はまた、プロセス生成物及び燃焼排ガスを冷却する。装置に入る流れは室温条件又は若干高温とすることができる。一連のマイクロチャンネル熱交換器を随意的に使用して流れを付加的に予熱した。
【0302】
上述したマイクロチャンネル熱交換器システムを用いてプロセス反応物を概ね275〜300℃に、燃焼空気を150〜170℃に予熱した。
【0303】
装置を始動するための燃焼燃料は純水素とした。装置内でのコークス化の可能性を一切排除するために始動時の燃料として純水素を選択したが、ある程度の量の炭化水素燃料を含む混合物を用いて装置を始動することもできると考えられる。燃料は装置の外部では予熱しなかった。代替的に、燃料をマイクロチャンネル熱交換器又は慣例の熱交換器を用いて燃料を予熱することもできたであろう。マイクロチャンネルICR反応器システムへの入口で測定した典型的な入口燃料温度は100℃〜125℃であった。
【0304】
入口及び出口流れの温度はすべて、ICR反応器システム上の統合熱交換器の入口又は出口から約5〜10cmのところのICR反応器システムへの連結管内に配置したタイプKの熱電対を用いて測定した。入口及び出口流のそれぞれに対して同様の場所に圧力変換器を追加した。
【0305】
五つのインコネル600製スウェッジロック(Swagelock)社の管継手を、ICR反応器システム上の適切な溶接スタッブ管に連結することで装置を設備した。熱電対は、熱交換器部分及び反応器部分の長さに沿ってICR反応器システムの外表面上に取り付けた。更に、いくつかの0.02インチの熱電対を反応器及び伝熱式熱交換器部分に創設したサーモウェルに挿入した。
【0306】
反応物供給用ブルックス(Brooks)社製5850e及び5851eシリーズの質量流量調節計、オメガ(Omega)社製型式FMA−A23の質量流量計、ノーショック(NoShok)社製圧力変換器(型式1001501127及び1003001127)、オメガ(Omega)社製鎖錠継電器(型式CNI 1653−C24)、スウェッジロック(Swagelock)社製可変安全弁、熱伝導性検知ガスクロマトグラフ、ノバ(NOVA)社製型式300CLD化学ルミネセンスNO/NOx分析装置等を、正しい稼働のために較正して確認した。流量は、BIOSインターナショナル社によって較正/認定された一次標準較正器(Dry−Cal DC−2Mプライマリー・フロー・キャリブレータ(Primary Flow Calibrator)(製品名))で較正した。圧力変換器は、フルーク(Fluke)社によって較正/認定されたフルーク(Fluke)社製700P07又は700P06圧力モジュールと共にフルーク(Fluke)社製圧力較正器(型式718 1006)を用いて較正した。ガスクロマトグラフ及びNO/NOx分析装置をプラックスエア・ディストリビューション(Praxair Distribution Inc.)社によってブレンド/認定された較正ガスで較正した。
【0307】
SMR生成物ラインを塞いで、まずSMR反応物ラインに静圧を掛けることによってICR反応器システムを圧力試験した。窒素を用いて200psigの圧力を掛けた。装置のこちら側の圧力をそのままにした。同時に、SMR側を加圧したまま燃焼側に75psigの圧力を掛けた。装置の機械的完全性を維持するために、圧力試験中は燃焼側の圧力はSMR側圧力を超えない。
【0308】
洩れ速度は15分間で0.5psigを超えず、こうしてICR反応器システムは稼働のための準備が整った。
【0309】
SMR及び燃焼側の触媒の還元を、最初にSMR及びICR反応物入口に窒素及び水素を流すことによって、開始した。典型的なSMR側の流量は窒素が2.5SLPMで水素が0.25SLPMであり、ICR側は窒素が3.0SLPMで水素が0.3SLPMであった(双方の流れとも水素10%、残り窒素とした。)。ICR側の流れは燃料入口から入り、一次空気入口ラインにはいかなる流体も入れなかった。次いで、マイクロチャンネル熱交換器を使用してICR反応器システムへのガスを120〜150℃へ予熱し、この温度範囲を逸脱せずに1時間保持した。ICR反応器システムの加熱速度は2.5〜5℃/分であった。SMR及びICRの還元中の接触時間はそれぞれ19及び17ミリ秒とした。典型的には、接触時間が20ミリ秒を超えないようにした。
【0310】
1時間の触媒還元プロセスの後、SMRプロセス側及びICR燃焼側の水素を止めた。窒素はSMR側を約3.0SLPMで流れ続ける。窒素の流量はSMRプロセス反応物の全体流量に等しかった(18ミリ秒の接触時間に相当)。18ミリ秒の接触時間はプロセス反応物の最初の流量であり、窒素流量を平衡値に設定することによって、始動時の純窒素からICR反応器システムの稼働へ変化が生じたときにICR反応器システム内の温度分布の変化が少なくなった。ICR側の窒素は概ね2.0SLPMに維持した。
【0311】
次に、SMR側をシステムの稼働圧力に加圧して10〜15psig/minで出口圧力160〜170psigとした。窒素を接触時間18ミリ秒でSMR側に流している間、装置を600℃に加熱するために燃焼流体の流量を変化させた。装置の均一な加熱及び加熱速度の制御(先述したように5℃/分を超えない)のためにも始動制御は重要であった。水素:空気の比率を1:2.5に維持しつつ(5%の過剰空気に相当)、水素及び空気の流量を同時に変化させることで制御を達成した。燃料及び空気の流量の増加は燃料入口ライン及び一次空気入口ラインを流れる窒素流量をそれぞれ減少させるによって相殺し、ICR反応器システムの燃焼側の流量を一定に維持した。始動時に燃焼側において大体等しい全体流量を維持することは均一な温度分布を作り出すために重要であった。燃焼流体の流量が50%以上低下すると、触媒部分の前部が触媒部分の後部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。燃焼流体の流量が50%以上増加すると、触媒部分の後部が触媒部分の前部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。いずれのシナリオでも、装置は均一な加熱を維持しなくなり、加熱速度が規定した5℃/分を超えるようになるだろう。
【0312】
ICR燃焼側の加熱を開始するために、上述したように一次空気入口ラインから空気を入れ、水素を燃料入口ラインから入れる一方で、窒素も一次空気ライン及び燃料入口ラインからシステム内に流し続けた。空気及び水素の初期流量は、SMRプロセス反応物の供給を最初に行なう接触時間=18ミリ秒、水蒸気対炭素の比率=6:1の条件にてSMR反応が駆動するのに必要なエネルギーの概ね20%とし、空気及び水素の流量をこれらの比率を5%の過剰空気に維持しながら互いに一分以内に増加させ、かつ全体の流量を一定に維持するために燃料窒素及び一次空気ライン窒素の双方の流量を下げることによって、これらの流体を変化させた。この一定の全体流量は600℃、18msでSMR反応を稼働するのに必要な燃焼燃料及び空気の全流量に概ね相当する。装置が600℃に達するまでには、窒素は0にまで減少する。
【0313】
空気及び水素の混合物が還元温度で着火しないときは、マイクロチャンネル熱交換器システムを使用して着火するまでICR反応器システムを加熱することができる。典型的には燃焼側は還元温度である120〜150℃で着火する。着火後、ICR反応器システムに必要な入口温度を維持するためにマイクロチャンネル熱交換器システムを設定した。更に、この試験では燃料入口インラインから燃料と共に空気は供給しなかったが、燃焼反応率を支援するために行うことができただろう。
【0314】
SMR側が大体400℃に達するとき、18ミリ秒の接触時間、水蒸気の全流量の15%(水蒸気:炭素の比率=6:1に相当)でSMR反応側に水素を入れた。これは概ね400sccmであった。一分以内に、SMR側の水ポンプを動かして、接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素=6:1に相当する液流量(2mL/分)とした。水素及び水の供給をSMR側に行うにつれ、これに応じて全体の流れを18msの接触時間に維持するために、SMR側の窒素流量を減少させた。
【0315】
先に記載したように燃焼側の流量を変化させることで装置を600℃へ加熱し続けた。装置が600℃に達すると、SMR反応の開始及び対応する熱の落ち込みへの準備のために燃焼流を若干増加した。流れを増やして、概ね燃料入口ラインからの水素500sccm、一次空気入口ラインからの空気を1.3SLPMとした。これはSMRプロセス側の予想される熱負荷の約50%であった。更に、一次空気入口ラインの窒素及び燃料窒素を概ね500sccmに減少させた。一分以内に、SMRのメタンを接触時間18ミリ秒で水蒸気:炭素の比率=6:1に適合するように入れ始めた。SMR側で最初に窒素、次に水素を止めて、ICR反応器システムが停止するまで二度と使用しなかった。
【0316】
ICR反応器システムの反応器部分の温度が600℃(+40℃、−0℃)で安定化するまで燃焼流を増加させた。この時間の間に、一次空気ライン及び燃料ラインを通る燃焼側の窒素を止めた。次いで装置を反応器部分にとって所望の稼働温度に加熱した。水蒸気対炭素及び接触時間を変化させて、所望の実験条件とした。水蒸気対炭素及び接触時間が変化するとSMR側の熱負荷が増加するので、所望の反応器温度を維持するために燃焼側の流量を増加させた。燃焼側の流れを上昇させる手順は、空気の次に燃料であり、燃焼側の流れを下降させる手順は燃料の次に空気とした。
【0317】
装置では、ICRの反応器部分の温度は少なくとも800℃に加熱した後に水蒸気:炭素の比率を3:1以下に減少させた。始動条件から稼働条件へ遷移する間、SMRプロセス側の条件を変化させる手順は、水の流量を増加させた後にSMRプロセス炭化水素の流量を増加させることであった(すなわち、より高い水蒸気対炭素比にした後に所望の水蒸気対炭素比に戻した)。
【0318】
更に、この時又はより早くに、適切な燃料対空気比を維持するために空気流量を補正しながら燃焼燃料に炭化水素の供給を加えることができる。このプロセスの手順は、所望の過剰空気比率を維持するために必要な流量だけ最初に燃焼一次空気を増加させ、次に炭化水素流量の供給を開始して次いで炭化水素の流量が上昇させたのと同一のエネルギー出力分の水素の流量を下げた。
【0319】
停止プロセスは始動プロセスと逆に行った。緊急停止手順及び制御方法は先に述べた通りである。
【0320】
結果
溶接ICR−M1は、平均SMR圧力を12〜20bar、SMR接触時間を4〜18ms(900000〜200000hr-1GHSV)、及び水蒸気対炭素の比率を6:1〜1.25:1としたことを含めた幅広いプロセス条件にわたって試験をし、800〜850℃において平衡反応率及び選択性能を与えた。燃焼性能は、水素燃料、及び水素/炭化水素燃料の混合物(5〜10%のCH4又は天然ガス及び8%のCO2)を用いて評価した。加えて、5〜50%の過剰空気を用いて燃焼性能を評価した。M1反応器はプロセス性能を低下させずに300時間にわたり連続的に稼働した。
【0321】
ウェブ温度は周囲金属を超えてSMR流と燃焼流の間の金属ウェブ内へと1mmの深さに伸びたサーモウェル内部で測定した。図32は熱電対の位置、並びにSMR接触時間6msでの840℃のSMR平衡選択率及び反応率に対応する条件における典型的な測定温度分布を示す。温度分布は装置中央で頂点に達し、その後は反応器の長さを下って低下した。
【0322】
溶接装置M1を使用したいくつかの試験の詳細な結果を表10に示す。表に示すように、1.25:1ほどの低い水蒸気対炭素の比率について評価したところ、驚くべきことに、認識できる量のコークスは生成しなかった。装置は20barの絶対圧力で稼働し、燃焼燃料流中のメタンを10%までにして評価した。化学量論に近い燃焼混合物を使用したときでさえ金属温度が反応ゾーン全体に沿って950℃未満に維持されたことに注目されたい。驚くべきことに、反応器の最大温度が925℃のときでさえ燃焼排ガス中のNOx値が5ppmを超えることはなかった。
【0323】
図33は、300時間の連続稼働の間に溶接装置M1を試験したSMRの条件タイプの簡素化した概観を示す。全300時間の稼働中にSMRが不活性化したという証拠は見られなかった。図34は最初の200時間の燃焼性能データを示す。マイクロチャンネル触媒燃焼は一貫して高い反応率及び低NOx水準を示したことに注目されたい。燃焼生成物中にある程度のCOが存在したことは燃焼の一部が気相で起きている(非触媒燃焼)ことを示唆している。燃料チャンネルの一つから不注意にも流れ安定化多孔質インサートを脱落させたことで溶接装置M1内の二つのチャンネル間で燃料の不良分布を引き起こしたことにも注意すべきである。このことは全体で5%の過剰空気(一方のチャンネルを燃料過濃、もう一方を燃料過薄にすることで、一方のチャンネルを未燃燃料、もう一方を空気にした。)に対して観察された部分燃焼水素反応率、並びに25〜50%の過剰空気を用いた試験において観察された完全燃料反応率と整合性を有する。
【0324】
(実施例2の接着ICR装置同様に)溶接ICR装置M1及びM2はそれぞれ燃料チャンネル内で空気注入の最初の地点のすぐ上流に多孔質流れ安定化多孔質インサートを有していた。これらの多孔質インサートは厚さ0.7mm×長さ13mm(流れ方向)×幅約5mmの長方形FeCr発泡合金(約95ppi(孔毎インチ))で作った。
【0325】
この流れ安定化インサートは燃焼流の不安定化を防止した。燃焼流の不安定化は例えば、水素炎の高い火炎速度のために炎が空気と燃料の混合地点から燃料ラインの更に上流地点へと移動する水素燃焼のときに起きる。加えて、容積燃料流は一般に容積空気流よりもずっと小さいため、空気が燃料チャンネルの片側を上流に流れて燃料チャンネル内で燃焼する一方で燃焼生成物は同一のチャンネルの反対側を下流に流れるというようなことが可能性として存在する。このことは、熱が所望の位置よりも上流に制御されずに加えられる原因となる。このような不安定化は、空気流及び燃料流が希釈されておらず、最初に混合される地点で局所的な化学量論的混合物を作り出すときにより生じやすい。そのため、燃焼流を燃料と空気の混合地点のすぐ上流で安定化する必要がある。流れ安定化インサートは、燃料流を空気と混合する直前に燃料チャンネルの全体に配分し、燃料の局所的速度を増加させ、燃焼を伝搬する燃焼炎中間種(すなわち、フリーラジカル)を消すための表面積の大きな小径通路を提供することによって上記の望ましくない燃焼挙動を防止する。この流れ安定化機構は当業者によって種々の異なる形態の何れにも作られ得る。
【0326】
実施例1の溶接ICR装置では、燃焼流の安定化機能は最初の空気注入の地点(ここではチャンネルは完全な高さ0.66mmに広がる。)のすぐ上流まで燃料チャンネルを0.25mmに狭くすることによって与えられる。この狭い燃料チャンネルの通路は空気注入オリフィスがある壁のすぐ隣に設置した。燃料チャンネルは、一段階の変化で空気注入オリフィスを有する壁から離れるようにして0.41mmの深さを空気注入オリフィスの反対側の壁に有効に切り込んで、広げた。
【0327】
実施例1の接着ICR装置内の狭い燃料チャンネルは、溶接ICR装置M1の流れ安定化インサートとほとんど同一のやり方で燃焼流を安定化する。具体的には、狭い燃料通路が燃料の局所的速度を増加させて、燃焼炎を伝搬する燃焼炎中間種(すなわち、フリーラジカル)を消すための小径通路を提供する。同一の機能を提供するために複数の平行狭路も用いることができる。
【0328】
マイクロチャンネル内での燃焼及び触媒燃焼は、マイクロチャンネル内の流れによって与えられる優れた熱移動によって容易化され、より燃焼性の高い混合物(すなわち、化学量論近傍又は低過剰空気)を用いることを可能にして、燃焼反応ゾーンのすぐ上流で燃焼反応物を連続的に予熱する。マイクロチャンネル燃焼の上記二つの特徴(化学量論に近い混合物の使用及び連続的な反応物の予熱)は、メタンのような、燃焼するのがより困難な燃料の燃焼及び触媒燃焼に対して安定化効果及び促進効果を有する。この理由により、燃焼又は触媒燃焼をマイクロチャンネル内で従来技術よりもずっと短い接触時間で実施することができ、コンパクトな反応器内での熱輸送の強化を可能とする。
【0329】
停止後、炭素質の堆積物を探すために実施例X(1)溶接ICR装置M1を注意深く切り開いた。従来のSMR反応器ではコークスが発生し易いとして知られている条件での稼働にも拘わらず、実施例X(1)溶接ICR装置M1の燃焼チャンネル内には炭素(コークス)の生成は見られず、プロセス(SMR)触媒上及びプロセスチャンネル内に非常にわずかな量のコークスが見られた。実際には、最上流部分の1インチ程度を除いて触媒にはコークスは全くなかった。同様にいくつかの明らかなデッドフローゾーンがあるにも拘わらず、Uターン領域もコークスがなかった。炭化水素からのコークスの生成において役割を果たすフリーラジカル中間種の多くが、所与の直径未満に燃焼壁の直径を減少させることによって均一燃焼反応が消失するのとほとんど同じ様に、壁がガス流に近接しているために実質的に「消失」したと考えられる。
【0330】
約150時間の試験後、温度を約600℃まで低下させ、より高い圧力での稼働及びより短い接触時間での稼働を調査するために必要な実験設備のいくつかを切り換える間の8時間はSMRの圧力及び負荷を取り除いた。驚くべきことに、この切り換え後にSMRの負荷を再付与して圧力を20barに上昇させると、SMRの平衡への接近は−60℃から約−35℃へと変化した(表10の第二及び第三列を比較されたい)。この圧力サイクルによって壁と触媒の間での接触状態が向上し、この変化に付随してSMR反応によって吸収される燃焼熱部分が有意に増加したためだと考えられる。図35は圧力サイクル前のSMRの性能データを示し、図36〜37は圧力サイクル後のSMRの性能データを示す。
【0331】
【表11−1】

【表11−2】

【0332】
乾燥試験計器の較正の変化に起因する乾燥生成物出口流の測定値に関連していくつかのエラーが見つかった。これは試験計器内に水が蓄積したことによるものと考えられる。そのため、質量流量制御計及びGCの較正における微量のエラーと組み合わさって、±12%の範囲で炭素バランスのエラーが生じた。
【0333】
溶接ICR−M2
設備/始動
M2の設備は以下の例外を除いてM1と同一の手順に従った。
・ SMRプロセス側を300psig、燃焼側を60psigでシステムの圧力試験を行った。
・ SMRプロセス入口を230〜300℃へ予熱した。
・ 燃焼側の一次空気入口を最初に150〜170℃へ予熱したが、約25時間の稼働時に予熱を止め、一次空気入口温度を30〜40℃に減少させた。燃焼側又はSMRプロセス側には性能に明瞭な変化はなかった。
・ 燃焼側の燃料入口を60〜95℃に予熱した。
・ 燃焼側の触媒は還元しなかった。該触媒は還元せずに使用し、概ね50℃で着火した。
・ 燃焼側の着火は燃料過濃条件を用いて行った。これは燃料過濃又は燃料過薄の燃焼反応物を供給することがより良い始動制御を提供するか決定するために試験した。SMR触媒の還元にとって適切な温度を得るために燃焼流を以下のようにして燃焼流の供給を開始した。SMR触媒の還元温度は概ね120〜150℃であった。反応器の統合燃焼部分を用いてICR反応器システムを予熱した。プロセスは、SMR側の窒素流の流量を2.5SLPMに、水素流を250sccmに増加することで開始した。窒素及びその10%の水素は、ICR反応器システムの加熱時及びSMRのための1時間の還元時間中はそのままにしておいた。これは19ミリ秒の接触時間に相当し、還元中は接触時間が20ミリ秒を超えないようにした。次に窒素を一次空気入口から概ね1.0SLPMで、燃料入口ラインから概ね500sccmで燃焼側に供給した。次に空気を1.5sccmで供給して一次空気ラインの窒素と混合した。燃料入口に600sccmの流量で水素の供給を燃焼燃料入口に開始した。水素は大体50℃で着火した。燃焼によって放出される熱がICR反応器システムを加熱する。加熱速度は概ね5℃/分であった。ICR反応器システム内の7インチの触媒部分の長さに沿って等温(±30℃)に近い温度分布を達成するための始動制御は適正な触媒還元にとって重要であった。水素及び空気の流量をこれらの比率を1.2:1(−50%の過剰空気に相当する。)に維持しつつ同時に変化させることによって制御を達成した。燃料水素の増加は燃料窒素及び一次空気ライン窒素をそれぞれ減少させることによって相殺し、ICR反応器システムの燃焼側へ一定の流量を維持した。始動時に燃焼側において大体等しい全体流量を維持することは均一な温度分布を作り出すために重要であった。燃焼流体の流量が50%以上低下すると、触媒部分の前部が触媒部分の後部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。燃焼流体の流量が50%以上増加すると、触媒部分の後部が触媒部分の前部よりもずっと熱くなる(±60℃以上)。いずれのシナリオでも、触媒は正しく還元しない。いったんICR反応器システムが120〜150℃に到達すると、一時間の還元を開始する。一時間のSMRの還元時間の後、装置をM1にて記載したように加熱する。
【0334】
システムの稼働圧力はSMRプロセス出口が160〜170psig及び260〜270psigであり、交互に変化させた。
【0335】
結果
溶接ICR装置M2は、平均SMR圧力を12〜20.5bar、SMR接触時間を3.8〜18ms(947000〜200000hr-1GHSV)、及び水蒸気対炭素の比率を6:1〜2:1としたことを含め、幅広いプロセス条件にわたってうまく稼働し、825〜870℃での平衡性能を与えた。燃焼性能は、水素燃料、及び水素/炭化水素燃料の混合物(5〜7%のCH4又は天然ガス及び8%のCO2)を用いて評価した。加えて、5〜10%の過剰空気を用いた燃焼性能を示した。総じて、反応器はプロセス性能を低下させずに350時間にわたり連続的に稼働した。
【0336】
溶接ICR装置M2はチャンネルごとに12個のジェットをもち(溶接ICR装置M1では9個)、最後のジェットは反応チャンネルの末端部からたった33mmであるように設計した。ジェットの数が増加によって、9個のジェットデザインに比べて観察される燃焼空気の圧力損失が減少した。また、ジェットは反応ゾーンの長さにわたってより均一に拡散し、反応器内にてより均一な温度勾配を生み、所与の反応器温度にてより良いSMRの性能を生んだ。
【0337】
溶接ICR装置M2を用いたいくつかの試験の詳細結果を表11に示す。表11では、たった5%の過剰燃焼空気で実質的に完全な水素燃焼がこの反応器において達成されたことが分かる。乾燥燃焼排ガス中のNOxの水準は一貫して2ppm未満であり、5ppmを超えることはなかった。表11の結果には、水蒸気:C=2:1で(平均)圧力が18〜20.5barとして830〜840℃で平衡に達する合成ガスを生成する溶接ICR装置M2の稼働中に到達した112〜116W/ccの容積流束も含まれる。これらの性能データに対応するSMRの空間速度は947000hr-1(接触時間3.8ms)である。SMRの性能はより長いSMRの接触時間でもまた優れており、もっとも注目すべきは5msで21bar(水蒸気:C=2:1)のときであり、合成ガスが平衡組成で生成した(対応する見かけ温度:870℃)。溶接ICR装置M2に対する典型的な温度分布を図38に示す。
【0338】
溶接ICR装置M2に対する他の性能データを図39〜42に示す。このSMR反応器は、13bar(図40)及び20bar(図41)の双方でSMRの接触時間が5msほどの平衡反応器として機能した。この装置では、SMRの接触時間が6ms未満に低下すると、平衡接近温度は測定した最終ウェブ温度から離れ始めるようである(図40〜41)。上記結果は、ホットスポット及びSMR触媒の不活性化を回避しながら高い面積熱流束(15〜31W/cm2)を獲得する際の分散形空気燃焼の有効性を示すものである。
【0339】
【表12−1】

【表12−2】

【符号の説明】
【0340】
20 生成物管
22 空気管
24 空気マニホールド
26 排ガス管
28 吸熱反応管
30 吸熱反応マニホールド
32 燃料管
34 燃料マニホールド
36 外側プレート
38 熱電対挿入穴
82 犠牲シム
86 エンドプレート
91 ICR
92 端部
93 スロット
94 端部
95 スロット
97 スロット
99 スロット
101 燃料入口管(図11)
102 触媒の部分組立品(図10)
102 反応物入口管(図11)
103 空気入口管(図11)
104 挿入スロット(図10)
104 生成物出口管(図11)
105 端部(図10)
105 排ガス出口管(図11)
106 サポート(図10)
108 触媒インサート(図10)
111 排ガスマニホールド
112 燃料マニホールド
113 反応物マニホールド
114 生成物マニホールド
115 空気マニホールド
116 反応物入口
117 燃料入口
121 触媒アクセスポート
122 触媒ドア
123 キャップ
124 配管
125 触媒前駆体アクセスポート
126 溝
132 チャンネル
133 支持リブ
134 出口
135 金属領域
136 触媒前駆体通路
141 吸熱反応チャンネル
151 空気シム
152 空気チャンネル
153 壁シム
154 ジェットシム
155 位置決め穴
156 排ガス通路
157 レーザー溶接部
159 連結チャンネル
160 シム
161 固体熱移動領域
162 燃焼領域
163 燃焼チャンネル
165 燃焼シム
166 燃焼シム
169 連続流れチャンネル
171 入口
172 金属板
173 空気チャンネル
174 分割リブ
175 Uベンド通路
176 触媒前駆体通路
181 排ガスチャンネルシム
182 支持リブ
183 触媒前駆体通路
184 部分
191 触媒止めシム
192 チャンネル
193 金属板
195 生成物チャンネルシム
196 チャンネル
199 Uベンド通路
204 触媒インサート
206 スペーサ
207 チャンネル
208 生成物チャンネルシム
210 反応チャンバ壁
213 反応チャンバ壁表面
214 反応チャンバ
215 反応チャンバ壁表面
217 触媒支持片
219 Uベンドシム
220 空気チャンネルシム
222 空気チャンネル
223 燃料入口
224 排ガスUベンド
225 吸熱反応チャンバ(触媒スロット)
226 ジェットシム
227 エンドプレート
229 空気シム
231 燃料チャンネルシム(図22A)
231 Uベンド(図23)
232 タング
233 吸熱反応シム(図22A)
233 タングの先端(図23)
234 燃焼流
235 Uベンド入口
236 燃焼流
237 合流路
238 Uベンド
239 合流チャンネル(Uベンド出口)
242 チャンネル
244 チャンネル
245 スペーサ
246 穴
248 タング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの吸熱反応チャンバと、
少なくとも一つの発熱反応チャンバと、
を備える吸熱及び発熱反応を同時に実施するための統合反応器であって、
前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの発熱反応チャンバ壁があり、
前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバは少なくとも一つの発熱反応チャンバに隣接する少なくとも一つの吸熱反応チャンバ壁に接触した吸熱反応触媒を備え、
一つの自由端及び一つの非自由端を備え、
前記非自由端は、燃料及び酸化剤の入口、及び、排ガスの出口のための連結部を含有する統合反応器。
【請求項2】
熱流束測定試験#1、熱流束測定試験#2、又は熱流束測定試験#3に従って測定したときに、
(i)前記少なくとも一つの発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が20ミリ秒以下であり、熱が前記少なくとも一つの発熱反応チャンバから前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバへ前記吸熱反応チャンバの内部面積を基準にして5W/cm2以上で移動し;又は
(ii)前記少なくとも一つの発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が100ミリ秒以下であり、酸化剤は、燃料を完全に酸化するのに必要な量に対して50%未満の過剰量で存在し、燃料及び空気はCOが2500ppm未満である燃焼生成物に変換され;又は
(iii)前記少なくとも一つの発熱反応チャンバ内での燃料及び酸化剤の接触時間が100ミリ秒以下であり、酸化剤は、燃料を完全に酸化するのに必要な量に対して50%未満の過剰量で存在し、燃料及び空気はNOxが100ppm未満である燃焼生成物に変換される、
熱流束特性を有する請求項1に記載の統合反応器。
【請求項3】
前記非自由端は、吸熱反応物流の入口、及び、吸熱生成物流の出口を構成する請求項1又は2に記載の統合反応器。
【請求項4】
前記少なくとも一つの発熱反応チャンバが、発熱反応触媒を備える発熱反応マイクロチャンネルを備え、
前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバが、前記発熱反応マイクロチャンネルに隣接し、流れの方向に10cm以上の長さをもつ吸熱反応触媒を備える吸熱反応マイクロチャンネルを備え、
前記発熱反応触媒及び前記吸熱反応触媒を分離する壁を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項5】
前記吸熱反応チャンバは、流れに垂直で、吸熱反応チャンバの中心から発熱反応チャンバまでの最短距離を形成する寸法で0.5mm以下の高さを有する請求項4に記載の統合反応器。
【請求項6】
前記発熱反応チャンバを形成する少なくとも一つの壁が前記発熱反応チャンバと隣接する空気チャンネル間でガス流を接続する孔を有する請求項4又は5に記載の統合反応器。
【請求項7】
前記吸熱反応チャンバの壁及び前記吸熱反応触媒の表面の間に少なくとも0.2mmの隙間が存在する請求項4〜6の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項8】
前記少なくとも一つの吸熱反応チャンバが、取り外し可能な触媒インサート及び触媒ドアを有する少なくとも一つのマイクロチャンネルを備える請求項1〜7の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項9】
空隙含有犠牲シムを含むシムの積層体を形成することと;
前記積層体に熱及び圧力を掛けて前記シムを変形させることと;
を含む方法により作製される、前記シムの積層体で構成された請求項1〜8の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項10】
前記吸熱反応チャンバは、当該吸熱反応チャンバの入口から出口まで連続し、内部に触媒が設けられた大きな流路を有する請求項4〜9の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項11】
前記吸熱反応触媒が多孔質触媒である請求項4〜10の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項12】
稼働中にプロセス流又は熱移動成分を含有しない空隙を備えるシムを含むシムの積層体で構成された積層反応器である請求項1〜11の何れか一項に記載の統合反応器。
【請求項13】
前記発熱反応チャンバに連結し、且つ、前記反応器の外部へと繋がる触媒前駆体経路を備え、該触媒前駆体経路はプロセスガスの入口及び出口と分離されて区別される、請求項4〜12の何れか一項に記載の統合反応器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2010−201429(P2010−201429A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142011(P2010−142011)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【分割の表示】特願2004−539806(P2004−539806)の分割
【原出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【出願人】(504455241)ヴェロシス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】