説明

絶対角検出装置

【課題】イニシャライズに要する角度及び検出素子の故障判定に要する角度を循環型グレイコードの1ステップ分に相当する角度にできる絶対角検出装置を提供する。
【解決手段】符号“1”と符号“0”の組み合わせからなるNビットの循環型グレイコードを記憶し、コードパターンに沿って配置されたN個の検出素子から出力されるNビットのコード列を循環型グレイコードと照合することにより、回転体の絶対角を検出する。循環型グレイコードは、Nが偶数であるときには、各ステップ毎のコード列中に含まれる符号“1”の数をN/2又は(N+2)/2とし、Nが奇数であるときには、各ステップのコード列中に含まれる符号“1”の数を(N+1)/2又は(N−1)/2、若しくは(N+1)/2又は(N+3)/2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環型グレイコードを用いて回転体の絶対角を検出する絶対角検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のステアリングシャフトと車体との間などに絶対角検出装置を備え、絶対角検出装置にて検出されたステアリングホイールの操舵角度、操舵速度及び操舵方向等に基づいてサスペンションの減衰力制御やオートマチックトランスミッションのシフトポジション制御それに四輪操舵車における後輪の操舵制御などを行う技術が知られている。
【0003】
本願出願人は、先に、この種の絶対角検出装置として、循環型グレイコードを利用したものを提案した(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
循環型グレイコードは、1セクタ内の隣接するステップ間でコード列が1ビットずつ変化すると共に、1セクタの先頭のコード列と最後のコード列も1ビットの変化で連続し、かつ1セクタ内に同一のコード列が存在しないようにコード列の並びを設定したもので、特許文献1に記載の技術によれば、分解能が1.5度以下であって、しかもその値が360度の公約数である絶対角検出装置を実現することができる。
【特許文献1】特開2005−62177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、従来例に係る10ビットの循環型グレイコードの例であり、1セクタが360度、分解能が1.5度、ステップ数が240の場合を示している。この図の「符号“1”の数」の欄から明らかなように、本例の循環型グレイコードにおいては、各ステップにおける符号“1”の数が、1〜9の間で変化している。このように、各ステップにおける符号“1”の数を1〜9の間で変化させると、各ステップに割り当てるコード列を選択しやすくなるので、高分解能の絶対角検出装置を設計しやすくなるという利点がある。
【0006】
しかしながら、かかる構成によると、10ビットの循環型グレイコードを検出する10個の検出素子のうちの1つが故障した場合、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転体の回転角度は、図6に示すように、最大2ステップ分の角度である3度になる。ここで、図6は、従来例に係る絶対角検出装置の検出素子の1つが故障したときの各角度位置(ステップ)における故障判定に要する最大の回転角度を示すグラフ図である。
【0007】
図6についてより詳細に説明すると、図5に例示した10ビットの循環型グレイコードにおいては、第0ステップのコード列が(0000100000)に設定されているが、D8信号を出力する検出素子が故障して、当該検出素子から出力される信号が全て“1”になったとすると、第0ステップにおいてコード列(0000100100)が検出されることになる。コード列(0000100100)は、第73ステップのコード列と同一である。この状態から回転体を1.5度回転して第1ステップのコード列を検出すると、D8信号を出力する検出素子が故障していてその出力が“1”になるため、10個の検出素子によって検出される第1ステップのコード列は(0100100100)になる。このコード列は、第74ステップのコード列と同一である。この状態から更に回転体を1.5度回転して第2ステップのコード列を検出すると、D8信号を出力する検出素子が故障していてその出力が“1”になるため、10個の検出素子によって検出される第2ステップのコード列は(0100100110)になる。このコード列は、第75ステップのコード列である(0100100101)と異なっているので、この段階に至って初めて絶対角検出装置は、D8信号を出力する検出素子が故障していることを認識できる。その他、D8信号を出力する検出素子以外の検出素子が1個だけ故障した場合には、前記と同様に循環型グレイコードを構成する各ステップのコード列の並びから、絶対角検出装置は直ちに、或いは回転体を1.5度又は3度回転した段階で、これらの検出素子の故障を認識することができる。したがって、第0ステップについては、絶対角検出装置に電源が投入されてイニシャライズされるとき、回転体を最大3度回転させないと絶対角検出装置の故障を検知することができず、また、イニシャライズ後においても、回転体を最大3度回転させないと絶対角検出装置の故障を検知することができないことになる。
【0008】
第1ステップのコード列を検出する際にD5信号を出力する検出素子が故障して、当該検出素子から出力される信号が全て“0”になった場合にも、第167ステップ〜第170ステップのコード列との関係で、絶対角検出装置に電源が投入されてイニシャライズされるとき、回転体を最大3度回転させないと回転体の絶対角を検出することができず、また、イニシャライズ後においても、回転体を最大3度回転させないと絶対角検出装置の故障を検知することができない。その他、D5信号を出力する検出素子以外の検出素子が1個だけ故障した場合には、前記と同様にグレイコードを構成する各ステップのコード列の並びから、絶対角検出装置は直ちに、或いは回転体を1.5度又は3度回転した段階で、これらの検出素子の故障を認識することができる。したがって、第1ステップについても、絶対角検出装置に電源が投入されてイニシャライズされるとき、回転体を最大3度回転させないと回転体の絶対角を検出することができず、また、イニシャライズ後においても、回転体を最大3度回転させないと絶対角検出装置の故障を検知することができない。
【0009】
これに対して、第2ステップについては、D5信号を出力する検出素子が故障して当該検出素子から出力される信号が全て“0”になった場合、D7信号を出力する検出素子が故障して当該検出素子から出力される信号が全て“1”になった場合、及びD9信号を出力する検出素子が故障して当該検出素子から出力される信号が全て“0”になった場合、それぞれ第169ステップのコード列、第3ステップのコード列、及び第1ステップのコード列と同一になるが、回転体を第2ステップから第3ステップまで回転したときのコード列がいずれも正規のコード列にならないので、この段階でD5,D7,D9信号を出力する各検出素子の故障を判定することができる。その他、D1,D2、D3,D4,D6,D8,D10の信号を出力する検出素子が故障した場合に第2ステップから検出されるコード列は、いずれのステップにも設定されていないので、絶対角検出装置は直ちにこれらの検出素子の故障を認識することができる。したがって、第2ステップにおいては、絶対角検出装置のイニシャライズ及び検出素子の故障判定に必要な回転角は最大1.5度である。このようなシミュレーションの結果をまとめたのが図6である。
【0010】
従来例に係る絶対角検出装置においては、回転体を最大2ステップ分の回転角である3度回転しないと、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後における検出素子の故障判定を行うことができないが、絶対角検出装置の信頼性を高め、その使い勝手を良好なものにするためには、検出素子の故障判定に要する角度をより小さなものにすることが求められる。
【0011】
本発明は、かかる従来技術に課題を解決するためになされたものであり、その目的は、検出素子の故障判定に要する角度を循環型グレイコードの1ステップ分に相当する角度にすることができる絶対角検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、符号“1”と符号“0”の組み合わせからなるNビットの循環型グレイコードが記憶され、コードパターンに沿って配列されたN個の検出素子から出力されるNビットのコード列を前記Nビットの循環型グレイコードと照合することにより、回転体の絶対角を検出する絶対角検出装置において、前記循環型グレイコードは、前記Nが偶数であるときには、各ステップ毎のコード列中に含まれる符号“1”の数がN/2又は(N+2)/2であり、Nが奇数であるときには、各ステップのコード列中に含まれる符号“1”の数が(N+1)/2又は(N−1)/2、若しくは(N+1)/2又は(N+3)/2のであるという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、循環型グレイコードを構成する各ステップのコード列の並びのみならず、各ステップのコード列に含まれる符号“1”の数からもコード列の誤り、即ち、検出素子の故障を判定することができるので、絶対角検出装置のイニシャライズに要する角度及び検出素子の故障判定に要する角度を、循環型グレイコードの1ステップ分に相当する角度にすることができる。
【0014】
また本発明は、第2に、前記第1の構成の絶対角検出装置において、前記Nが、7以上であるという構成にした。
【0015】
コード列のビット数Nを7よりも小さくすると、ビット数Nを8とした場合と比較して循環型グレイコードに使用できるコード、すなわちどの桁から読み始めても異なるコードの数が極端に少なくなり、1セクタに分配する角度が小さくなるので、絶対角度の検出精度を高めることが困難になるという問題がある。例えば、コード列のビット数Nを6とすれば、コード列中に含まれる符号“1”の数が3又は4の循環型コード列の総数が24個と少なくなるため、分解能を1.5度にすると1セクタに分配する角度が36度(1.5度×24)と小さくなるので、セクタに分配される角度を大きく設定できる場合(ビット数Nが8の場合)に比較して機械的ガタによるセクタ検出の精度低下が顕著となり、絶対角度の検出精度を高めることが困難になるという問題がある。したがって、コード列のビット数Nは、7以上が望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の絶対角検出装置は、符号“1”と符号“0”の組み合わせからなるNビットの循環型グレイコードを、Nが偶数であるときには、各ステップ毎のコード列中に含まれる符号“1”の数をN/2又は(N+2)/2とし、Nが奇数であるときには、各ステップのコード列中に含まれる符号“1”の数を(N+1)/2又は(N−1)/2、若しくは(N+1)/2又は(N+3)/2としたので、循環型グレイコードを構成する各ステップのコード列の並びのみならず、各ステップのコード列に含まれる符号“1”の数からもコード列の誤りを判定することができ、絶対角検出装置のイニシャライズに要する角度及び検出素子の故障判定に要する角度を、循環型グレイコードの1ステップ分に相当する角度にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る絶対角検出装置の一実施形態を、図1乃至図4に基づいて説明する。図1は実施形態に係る絶対角検出装置に備えられる回転ディスクの構成と回転ディスクからコード列を検出する検出素子群の配列とを示す平面図、図2は実施形態に係る絶対角検出装置に備えられる制御部の構成図、図3は実施形態に係る絶対角検出装置に適用される循環型グレイコードのコード列表、図4は実施形態に係る絶対角検出装置の検出素子の1つが故障したときの各角度位置(ステップ)における故障判定に要する最大の回転角度を示すグラフ図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る絶対角検出装置は、ステアリングシャフトなどの図示しない回転体に装着され、当該回転体と一体に回転する回転ディスク1と、当該回転ディスクに形成されたコードパターン列2と、当該コードパターン列2と対向に配置された第1乃至第10の検出素子3a〜3jと、これら第1乃至第10の検出素子3a〜3jの出力信号から10ビットのコード列を生成し、生成されたコード列から回転ディスク1(回転体)の絶対角度を求める制御部4とから主に構成されている。
【0019】
回転ディスク1の中心部には、ステアリングシャフトなどの回転体を挿入するための透孔1aが設けられており、その片面には、遮光板からなるコードパターン列2が透孔1aと同心に形成されている。
【0020】
検出素子3a〜3jとしては、発光素子と受光素子とが一体的に組み合わされたフォトインタラプタが用いられる。各検出素子3a〜3jは、コードパターン列2を介してその両側に発光素子と受光素子とを配置する。本例においては、10個の検出素子3a〜3jが、1条のコードパターン列2に沿って等分に配置されている。なお、これらの各検出素子3a〜3jは、各検出素子間の取付誤差を小さくするためには、1つのホルダーを用いて位置決めすることが望ましい。
【0021】
信号処理部4は、図2に示すように、記憶部4bを内蔵するデータ判別部4aを有する。データ判別部4aは、検出素子3a〜3jから出力される10ビットのコード列を入力し、連続して入力される2つのコード列が記憶部4bに予め記憶されたコード列(図3のコード列表)の順番になっているか否かを判定して、しかるべき順番になっていると判定されるとき、入力された最新のコード列に応じた角度信号を出力すると共に、しかるべき順番になっていないと判定されるときには、その判定時点に故障信号に応じた信号を出力する。このように、データ判定部4aは、検出素子3a〜3jから角度信号が連続して入力されたときに初めて機能するものであり、例えば起動時のように、検出素子3a〜3jから出力される10ビットのコード列が初めて入力された状態、すなわち連続して入力されない状態では、角度信号又は故障信号に応じた信号を出力することができない。
【0022】
次に、図3のコード列表について説明する。この図に示すように、本例の循環型グレイコードは、360度が240ステップに分割されていて、分解能が1.5度になっており、各ステップが10ビットのコード列から構成されている。図中の「符号“1”の数」の欄から明らかなように、各コード列中に含まれる符号“1”の数は、「5」又は「6」のみに制限されている。「5」又は「6」という数は、各コード列のビット数「10」に対して、10/2又は(10+2)/2に相当する。つまり、各コード列のビット数Nとしたとき、N/2又は(N+2)/2に相当する。また、循環型グレイコードであるから、隣接するステップ間でコード列が1ビットずつ変化すると共に、第0ステップのコード列と第239ステップのコード列の間も1ビットだけ変化し、かつ360度内に同一のコード列が表れないように各ステップのコード列が設定されている。
【0023】
循環型グレイコードをこのように構成すると、コード列中の符号“1”の数が「5」である第0ステップにおいて、D1信号を出力する検出素子3aが故障して検出素子3aから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、D2信号を出力する検出素子3bが故障して検出素子3bから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、D3信号を出力する検出素子3cが故障して検出素子3cから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、D5信号を出力する検出素子3eが故障して検出素子3eから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、及びD7信号を出力する検出素子3gが故障して検出素子3gから常に“0”の信号が出力されるようになった場合には、いずれも第0ステップから検出されるコード列中に含まれる符号“1”の数が「4」になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子3a,3b,3c,3e,3gのいずれかに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0024】
D4信号を出力する検出素子3dが故障して検出素子3dから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、第0ステップから検出されるコード列は、第239ステップのコード列(1111101000)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第1ステップから検出されるコード列が(1111101100)となり、第239ステップの次ステップ(第0ステップ)のコード列(1110101000)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3dに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0025】
D6信号を出力する検出素子3fが故障して検出素子3fから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、第0ステップから検出されるコード列は、第19ステップのコード列(1110111000)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第1ステップから検出されるコード列が(1110111100)となり、第19ステップの次ステップ(第20ステップ)のコード列(1110110000)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3fに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、この場合にも、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0026】
D8信号を出力する検出素子3hが故障して検出素子3hから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、第0ステップから検出されるコード列は、第1ステップのコード列(1110101100)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第1ステップから検出されるコード列が(1110101100)となり、第1ステップの次ステップ(第2ステップ)のコード列(1110100100)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3fに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、この場合にも、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0027】
D9信号を出力する検出素子3iが故障して検出素子3iから常に“1”の信号が出力されるようになった場合には、第0ステップから検出されるコード列が(1110101010)となり、これと同一のコード列をもつステップはコード表中に設定されていないので、データ判定部4bは直ちに検出素子3iに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0028】
D10信号を出力する検出素子3jが故障して検出素子3jから常に“1”の信号が出力されるようになった場合には、第0ステップから検出されるコード列が(1110101001)となり、これと同一のコード列をもつステップはコード表中に設定されていないので、データ判定部4bは直ちに検出素子3jに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0029】
また、コード列中の符号“1”の数が「6」である第1ステップにおいて、D4信号を出力する検出素子3dが故障して検出素子3dから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、D6信号を出力する検出素子3fが故障して検出素子3fから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、D9信号を出力する検出素子3iが故障して検出素子3iから常に“1”の信号が出力されるようになった場合、及びD10信号を出力する検出素子3jが故障して検出素子3jから常に“1”の信号が出力されるようになった場合には、いずれも第1ステップから検出されるコード列中に含まれる符号“1”の数が「7」になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子3d,3f,3i,3jのいずれかに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0030】
D1信号を出力する検出素子3aが故障して検出素子3aから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は(0110101100)となり、これと同一のコード列をもつステップはコード表中に設定されていないので、データ判定部4bは直ちに検出素子3jに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0031】
D2信号を出力する検出素子3bが故障して検出素子3bから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は(1010101100)となり、これと同一のコード列をもつステップはコード表中に設定されていないので、この場合にもデータ判定部4bは直ちに検出素子3jに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0032】
D3信号を出力する検出素子3cが故障して検出素子3cから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は(1100101100)となり、これと同一のコード列をもつステップはコード表中に設定されていないので、この場合にもデータ判定部4bは直ちに検出素子3jに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。
【0033】
D5信号を出力する検出素子3eが故障して検出素子3eから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は、第40ステップのコード列(1110001100)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第2ステップから検出されるコード列が(1110000100)となり、第40ステップの次ステップ(第41ステップ)のコード列(1111001100)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3eに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、この場合には、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0034】
D7信号を出力する検出素子3gが故障して検出素子3gから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は、第2ステップのコード列(1110100100)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第2ステップから検出されるコード列が(1110100100)となり、第2ステップの次ステップ(第3ステップ)のコード列(1110100110)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3eに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、この場合にも、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0035】
D8信号を出力する検出素子3hが故障して検出素子3hから常に“0”の信号が出力されるようになった場合、第1ステップから検出されるコード列は、第0ステップのコード列(1110101000)と同一になるので、データ判定部4bは直ちに検出素子に故障が発生したと判定できないが、回転ディスク1を1.5度回転したときに第2ステップから検出されるコード列が(1110100000)となり、第0ステップの次ステップ(第1ステップ)のコード列(1110101100)と異なるので、この段階でデータ判定部4bは検出素子3eに故障が発生したと判定でき、信号処理部4から故障信号に応じた信号を出力することができる。つまり、この場合にも、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度は、1ステップ分の角度である1.5度になる。
【0036】
これらのことから、本例の絶対角検出装置に係る循環型グレイコードは、コード列中の符号“1”の数が「5」であるステップについても、「6」であるステップについても、絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度を、1ステップ分の角度である1.5度にすることができる。図4に、240ステップの全てについての絶対角検出装置のイニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な各ステップ毎の回転ディスク1の最大の回転角度を示す。この図から明らかなように、実施形態に係る絶対角検出装置は、イニシャライズするとき、及びイニシャライズ後の絶対角検出装置の故障検知に必要な回転ディスク1の回転角度を、1ステップ分の角度にすることができるので、従来例に係る絶対角検出装置に比べて、信頼性及び使い勝手の良さを高めることができる。
【0037】
なお、前記実施形態においては、偶数ビット(10ビット)のコード列をもって循環型グレイコードを構成したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、奇数ビットのコード列をもって循環型グレイコードを構成した場合にも、コード列のビット数をNとしたとき、各ステップ毎のコード列中に含まれる符号“1”の数を(N+1)/2又は(N−1)/2のいずれか、若しくは(N+1)/2又は(N+3)/2のいずれかにすることにより、前記実施形態に係る絶対角検出装置と同じ効果が得られる。
【0038】
また、前記実施形態においては、10ビットのコード列をもって循環型グレイコードを構成したが、コード列のビット数については特に制限はなく、要求される性能、例えば1セクタの角度や分解能などに応じて適宜増減することができる。但し、コード列のビット数を7よりも小さくすると、高分解能の循環型グレイコードを構成することが困難になるので、絶対角検出装置の小型化及び低コスト化が困難になる。したがって、コード列のビット数は、7以上とすることが特に望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態に係る絶対角検出装置に備えられる回転ディスクの構成と回転ディスクからコード列を検出する検出素子群の配列とを示す平面図である。
【図2】実施形態に係る絶対角検出装置に備えられる制御部の構成図である。
【図3】実施形態に係る絶対角検出装置に適用される循環型グレイコードのコード列表である。
【図4】実施形態に係る絶対角検出装置の検出素子のうちのひとつが故障したときの各角度位置(ステップ)における故障判定に要する最大の回転角度を示すグラフ図である。
【図5】従来例に係る絶対角検出装置に適用される循環型グレイコードのコード列表である。
【図6】従来例に係る絶対角検出装置の検出素子のうちのひとつが故障したときの各角度位置(ステップ)における故障判定に要する最大の回転角度を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0040】
1 回転ディスク
2 コードパターン列
3a〜3j 検出素子
4 信号処理部
4a データ判定部
4b 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号“1”と符号“0”の組み合わせからなるNビットの循環型グレイコードが記憶され、コードパターンに沿って配列されたN個の検出素子から出力されるNビットのコード列を前記Nビットの循環型グレイコードと照合することにより、回転体の絶対角を検出する絶対角検出装置において、
前記循環型グレイコードは、前記Nが偶数であるときには、各ステップ毎のコード列中に含まれる符号“1”の数がN/2又は(N+2)/2であり、
Nが奇数であるときには、各ステップのコード列中に含まれる符号“1”の数が(N+1)/2又は(N−1)/2、若しくは(N+1)/2又は(N+3)/2のであることを特徴とする絶対角検出装置。
【請求項2】
前記Nが、7以上であることを特徴とする請求項1に記載の絶対角検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−275541(P2008−275541A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121822(P2007−121822)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】