説明

絶縁層形成用感放射線性樹脂組成物、それから得られる硬化膜およびそれを使用する多層配線板の製造方法

【課題】良好な解像性、アルカリ水溶液による現像性を有し、得られる硬化物は耐めっき液性および耐熱性に優れるとともに、導体配線との密着性に優れ、現像処理後に熱ダレが起こり難い絶縁層を形成することのできる感放射線性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記のA成分〜D成分を含有することを特徴とする絶縁層形成用感放射線性樹脂組成物。
〔A成分〕アルカリ可溶性樹脂、
〔B成分〕エポキシ化合物、
〔C成分〕分子内にオキセタニル基及びチイラニル基からなる群から選ばれる基を有する化合物、および
〔D成分〕溶剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性樹脂組成物に関し、特に、積重して配置される2つの導体配線の間に介在させる絶縁層を形成するための絶縁層形成材料として好適な感放射線性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、プリント配線板の高密度化が要請され、複数の導体配線層が絶縁層を介して積重された多層配線板の需要が高まっている。この多層配線板を製造する方法として、導体配線が基材上に形成されてなる配線板の複数を、例えば、プリプレグと呼ばれる熱硬化性樹脂含浸シートを介して積重し、その状態でプレス成形することにより多層の積層構造とし、この多層積層体に、当該積層体の全体を貫通するスルーホールと呼ばれる貫通孔をドリルなどによって形成し、このスルーホールの内壁面にめっき処理を施して、積重配置された2つの導体配線を導通させるめっき層を形成することにより製造する方法(以下、積層プレス方式ともいう。)が知られている。
【0003】
しかし、この積層プレス方式では、配線パターンの微細化が進むに従って、複数の配線板の位置合わせが困難なこと、配線板の基材の収縮により配線の位置ずれが発生すること、微細なパターンに応じたスルーホールの小径化が困難なこと及び製造工程が煩雑になることなどの問題がある。
【0004】
一方、導体配線が形成された配線板上に絶縁層を形成し、この絶縁層上に前記導体配線と導通する別の導体配線を形成する工程を繰り返すことにより、目的とする多層配線板を製造する方法(以下、積み上げ方式ともいう。)が提案されている。この積み上げ方式により多層配線板を製造する場合に、絶縁層を介して積重された2つの導体配線を導通させるためには、積層プレス方式の場合と同様にスルーホールを形成してめっき処理を施す手法のほか、一部の絶縁層のみを貫通するビアホールとも呼ばれる孔をドリルによって形成し、この孔内にめっき処理を施す手法がある。
【0005】
また、絶縁層におけるスルーホールまたはビアホールの形成方法として、エキシマレーザを利用する方法、加工用レジストを用いて所定のパターンを形成し、絶縁層を適宜の溶剤によりエッチングする方法などが知られている。しかしながら、これらの方法は、複数の孔を同時に形成することができなかったり、多くの工程が必要となるなど生産性の点から好ましい方法ではなく、加工精度の点からも満足し得る方法ではない。
【0006】
かかる不都合を克服する手段として、導体配線層の間に介在させる絶縁層を形成する材料として感光性樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィーによって当該絶縁層に貫通孔を形成する方法が提案されている。この方法によれば、複数の貫通孔を同時に形成することができるので多層配線板の製造において高い生産効率が得られ、しかも、従来の方法に比べて高い精度で貫通孔を形成することができるので、微細な配線パターンを有する多層配線板を製造する上で有利である。
【0007】
このような多層配線板に関して、感光性樹脂組成物よりなる絶縁層に形成され、後にめっき処理が施されて電気的な接続を達成するためのフォトビアホールと呼ばれる貫通孔を形成させる多層配線板を積み上げ方式により製造する方法が提案されている(特開平4−148590号公報参照)。また、このような絶縁層を形成するための感光性樹脂組成物として、感光性エポキシ樹脂を用いた応用例も提案されている(特開平5−273753号公報参照)。
【0008】
このように、絶縁層の形成に感光性樹脂組成物を用い、積み上げ方式により多層配線板を製造する方法によれば、プレス処理を行うことなく多層の積層構造を得ることができると共に、フォトリソグラフィーにより十分に小径のフォトビアホールを高い精度で形成することができるため、微細な配線パターンを有する多層配線板を好適に製造することができる。
【0009】
しかして、積み上げ方式により多層配線板を製造する場合の絶縁層の形成に用いられる感光性樹脂組成物には、以下のような性能が要求される。
(1)得られる絶縁層が優れた解像性を有していること。これにより、微細なパターンに応じた小径のフォトビアホールを高い精度で形成することができる。
(2)得られる絶縁層が、導体配線の形成に使用される物質、例えば無電解銅めっき液に対して十分に高い耐性(耐めっき液性)を有すること。
(3)得られる絶縁層は、その表面に、例えば無電解銅めっき処理により十分な密着性で導体配線を形成し得るものであること。ここに、銅めっきによる導体配線の密着性を向上させるためには、当該絶縁層の表面が粗面化されることが有効であり、粗面化された表面を有する絶縁層は、そのアンカー効果により、導体配線の絶縁層に対する密着性が大きなものとなる。
(4)フォトビアホールを形成するための現像液としてアルカリ水溶液の使用が可能であること。アルカリ水溶液を現像液として使用できれば、人体や環境に与える悪影響を抑制することができる。
(5)得られる絶縁層は、十分な電気的絶縁性を有するものであって高い信頼性が得られ、かつ高い耐熱性を有すること。これにより、小型軽量化が進められている電子機器の製造に有利に適用することが可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、例えば小径のフォトビアホールを高い精度で形成することができる優れた解像性を有し、アルカリ水溶液により現像することができ、耐めっき液性および耐熱性が高く、しかも導体配線が優れた密着性で形成される絶縁層を形成することのできる感放射線性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記のA成分〜C成分を含有する感放射線性樹脂組成物を提供する。
〔A成分〕アルカリ可溶性樹脂
〔B成分〕エポキシ化合物
〔C成分〕分子内にオキセタニル基及びチイラニル基からなる群から選ばれる基を有する化合物
本発明において、感放射線とは、放射線に感応して硬化し得る性質をいう。放射線には、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線などを包含する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る感放射線性樹脂組成物は、小径のフォトビアホールを高い精度で形成することができる優れた解像性を有し、アルカリ水溶液により現像することができ、耐めっき液性および導体配線の密着性に優れた絶縁層を形成することができる。特に現像処理後の絶縁層の熱ダレが起こりがたいので高精度のパターンが得られる。従って当該組成物を使用することにより、信頼性の高い多層配線板を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物について詳細に説明する。
〔A成分〕
このA成分のアルカリ可溶性樹脂として代表的なものとしては、例えば、ゲルパーミエイションクロマトクラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が200以上、好ましくは2,000以上であるポリビニルフェノール、および同様のポリスチレン換算の重量平均分子量が200以上、好ましくは2000以上であるポリビニルフェノール以外のフェノール樹脂(以下、特定のフェノール樹脂という。)を挙げることができる。
【0014】
A成分として用いられるポリビニルフェノールとしては、ビニルフェノール単量体を常法により重合させて得られるもの、あるいはフェノール性水酸基を保護基により保護した状態で重合した後、当該保護基を除去することによって得られるものなど、各種の製法により得られるものを挙げることができる。また、ビニルフェノール単量体に各種の置換基が導入された単量体、例えばビニルクレゾール、2,4−ジメチルビニルフェノール、フッ素化ビニルフェノール、クロル化ビニルフェノール、臭素化ビニルフェノールなどから得られる各種の置換ポリビニルフェノールも使用することができる。
【0015】
このポリビニルフェノールの分子量は特に制限されるものではないが、得られる絶縁層における解像性、現像性、耐めっき液性などの観点から、重量平均分子量が2000以上、特に2000〜20000の範囲のものが好ましい。
【0016】
A成分として用いられる特定のフェノール樹脂の代表例としては、ノボラック樹脂を挙げることができる。
【0017】
ノボラック樹脂は、例えばフェノール化合物とアルデヒド化合物とを、好ましくはフェノール化合物1モルに対してアルデヒド化合物0.7〜1モルの割合で酸触媒を用いて付加縮合させることにより得られる。ここに、フェノール化合物の具体例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、3,6−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、p−フェニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、没食子酸、没食子酸エステル、α−ナフトール、β−ナフトールなどを挙げることができる。
【0018】
アルデヒド化合物の具体例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒドなどを挙げることができる。酸触媒としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、蓚酸、酢酸などが使用される。
また、特定フェノール樹脂として好ましいものは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾールから選ばれるフェノール化合物とホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドから選ばれるアルデヒド化合物とを反応させて得られるものである。
【0019】
A成分として用いられる特定のフェノール樹脂は、得られる絶縁層の解像性、現像性、耐めっき液性などの観点から、重量平均分子量が200以上であることが必要であり、特に200〜20000の範囲ものが好ましい。
【0020】
本発明において、A成分であるアルカリ可溶性樹脂は、前記のポリビニルフェノールまたは特定のフェノール樹脂の1種を単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併用することもできるが、特にポリビニルフェノールと特定のフェノール樹脂とを併用することが好ましい。
本発明の組成物において、A成分は、得られる絶縁層が十分なアルカリ可溶性を示す含有割合で使用される。その含有割合は、通常、A成分〜C成分の合計量に基づいて、30〜95重量%の範囲である。含有率が少なすぎると得られる組成物による薄膜がアルカリ水溶液による十分な現像性を有しないものとなり、一方、多すぎると相対的に他の成分の割合が制限される結果、得られる絶縁層が靱性、耐熱性および耐めっき液性が不十分となり不都合である。好ましい含有量は、40〜90重量%であり、特に、実用上50〜85重量%が好ましい。
【0021】
〔B成分〕
B成分のエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヒキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート並びにこれらの重合体またはこれらと他の重合性重結合を有する化合物との共重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等に代表されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂類、芳香族グルシジルアミン型エポキシ樹脂類、脂環式エポキシ樹脂類、複素環式エポキシ樹脂類、液状ゴム変性エポキシ樹脂類、エポキシ基により化学的に変性処理された架橋重合体(以下、該架橋重合体をエポキシ変性粒子状ゴムという)等のオキシラン環含有化合物等が挙げられ、好ましくはエポキシ変性粒子状ゴムである。
【0022】
このエポキシ変性粒子状ゴムを添加すると、後述の、本発明の組成物から得られる絶縁層の粗面化処理工程において絶縁層表面が十分に粗面化処理されたものとなり、当該絶縁層上に形成される導体配線の密着性が大きなものとなる。
【0023】
このB成分とされるエポキシ変性粒子状ゴムは、エポキシ基と反応する官能基、例えばカルボキシル基を有する粒子状ゴム材を、適宜のエポキシ化合物によって化学的に変性処理することによって得られる、平均粒子径が0.01〜20μm、好ましくは0.01〜5.0μmのものである。このエポキシ変性粒子状ゴムの詳細は、例えば特開平4−15830号公報に記載されている。
【0024】
B成分のエポキシ変性粒子状ゴムを得るための粒子状ゴム材は、例えば下記(イ)〜(ハ)の単量体を含有する単量体組成物を共重合させて得られる、カルボキシル基を有する架橋重合体よりなるものである。
(イ)1分子内に複数の重合性二重結合を有する多官能単量体
(ロ)多官能単量体(イ)と共重合可能な、カルボキシル基を有する単量体(以下「カルボキシル基含有単量体」という。)
(ハ)多官能単量体(イ)と共重合可能な、上記(ロ)以外の共重合性単量体
1分子内に複数の重合性二重結合を有する多官能単量体(イ)としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどを挙げることができる。これらの多官能重合性単量体は、その1種を単独であるいは2種以上を併用することができる。
【0025】
多官能単量体(イ)は、粒子状ゴム材を得るための単量体組成物の全体に対して0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%の割合で用いられる。この割合が0.1モル%未満の場合には、組成物において粒子状ゴムの形状が十分に保持されないために絶縁層の表面の粗面化を十分に達成することができず、また絶縁層の現像性が劣ったものとなる。一方、この割合が20モル%を超える場合には、粗面化処理において確実に溶解しないために粗面化を十分に達成することができず、また得られる粒子状ゴムの他の成分に対する親和性が低くなって得られる組成物の加工性が悪化し、光硬化処理後の絶縁層の強度が著しく低下し、形成されるめっき層の密着性が不十分なものとなる。
【0026】
カルボキシル基含有単量体(ロ)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸;コハク酸、フマル酸などのジカルボン酸と付加重合性基を有する不飽和アルコールとのハーフエステルなどを挙げることができる。
【0027】
これらのカルボキシル基含有単量体(ロ)は、得られる組成物の具体的な用途に応じて、任意のものを1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0028】
上記のカルボキシル基含有単量体(ロ)は、粒子状ゴム材を得るための単量体組成物全体に対して0.1〜30モル%、好ましくは0.5〜20モル%の割合で用いられる。この割合が0.1モル%未満の場合には、エポキシ変性処理によって得られるエポキシ変性粒子状ゴムが表面エポキシ基の少ないものとなるため、当該エポキシ変性粒子状ゴムの組成物に対する親和性が低くて組成物中に均一に分散させることが困難となり、その結果良好な粗面化を達成することができず、また得られる絶縁層は靭性および解像性が乏しいものとなり、一方、この割合が30モル%を超える場合には、得られる絶縁層が硬く脆いものとなり、いずれも好ましくない。
【0029】
上記の多官能単量体(イ)およびカルボキシル基含有単量体(ロ)と共に用いられる共重合性単量体(ハ)としては、目的に応じて種々のラジカル重合性単量体を用いることができる。
【0030】
この共重合性単量体としては、例えばブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、クロロプレンなどを挙げることができ、更にスチレン、αーメチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、nープロピル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0031】
粒子状ゴム材は、ラジカル開始剤を用いた乳化重合法または懸濁重合法によって、直接的に粒子状共重合体として製造することができるが、粒子のサイズおよびその均一性が高いことから乳化重合法を用いるのが好適である。
【0032】
乳化重合法による場合には、上記の多官能単量体(イ)と、カルボキシル基含有単量体(ロ)と、共重合性単量体(ハ)とをラジカル乳化重合し、公知の方法に従って、塩析、洗浄、乾燥すればよい。この場合に、各単量体、ラジカル開始剤などの重合薬剤は、反応開始時に全量を一括して添加してもよいし、任意に分けて順次に添加してもよい。重合反応は温度0〜80℃において酸素を除去した反応器中で行われるが、反応の途中で温度や攪拌などの操作条件を任意に変更することができる。重合方式は連続式、回分式のいずれでもよい。
【0033】
しかし、電子部品の層間絶縁層を形成するための組成物の粒子状ゴムとしては、例えば特開平4−15830号公報に示されている方法によって得られる、イオン含有割合の低い、具体的には、ナトリウム、カリウム等の金属イオン含有量が200ppm以下の粒子状ゴムを用いることが好ましく、これにより、良好な電気絶縁性を有する絶縁層を形成することができる。
【0034】
上記の乳化重合法において、ラジカル開始剤としては、ベンゾイルペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、パラメンタンハイドロペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルで代表されるジアゾ化合物、過硫酸カリウムで代表される無機化合物、有機化合物−硫酸鉄の組合せで代表されるレドックス系触媒などが用いられる。
【0035】
上記のようにして得られる粒子状ゴム材は、その表面にカルボキシル基が存在するものであり、このカルボキシル基がエポキシ化合物によってエポキシ化されることにより、本発明のB成分として用いられるエポキシ変性された粒子状ゴムが得られる。
【0036】
エポキシ変性のためには、例えば粒子の表面にカルボキシル基を有する粒子状ゴム材を、1分子内に複数のエポキシ基を含有するエポキシ化合物、例えばエポキシ樹脂と加熱して反応させることにより、粒子状ゴム材の粒子表面に存在するカルボキシル基をエポキシ基に変換することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基を有する粒子状ゴム材とエポキシ樹脂とを、例えば臭化テトラブチルアンモニウムなどの触媒を用いて、温度40〜100℃の反応溶媒中で反応させればよい。ここに反応溶媒としては、当該反応に関与せず、反応系を均一に保つことのできるものであれば特に限定されず、用いるエポキシ化合物が液状である場合には反応溶媒は不要である。
【0037】
粒子状ゴム材のエポキシ化合物による処理においては、粒子状ゴム材をエポキシ化合物と混合し熱反応させればよい。この反応における粒子状ゴム材とエポキシ化合物の割合は、それぞれ10〜30重量%および90〜70重量%であることが好ましい。粒子状ゴム材の割合が30重量%を超える場合には、エポキシ変性の程度が低くなるために粒子状ゴムを組成物中に均一に分散させることが困難となる。ここに使用されるエポキシ化合物としてはエポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂は特に制限されるものではなく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、(クレゾール)ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などの各種エポキシ樹脂を使用することができ、臭素化エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂などの各種変性エポキシ樹脂を使用することもできる。
【0038】
ここに、エポキシ化合物の使用割合は、組成物の全体における15重量%以下であることが好ましく、15重量%を超える場合には、得られる絶縁層のアルカリ現像性が低下し、良好なプロファイルを得ることが困難となる。
【0039】
また、粒子状ゴム材の表面に存在するカルボキシル基の全部がエポキシ基によって変性されることは必要ではなく、その一部のみが変性され、他のカルボキシル基はそのままの状態で残存するものであってもよく、これにより良好な現像性が得られる可能性がある。
【0040】
上記のエポキシ変性粒子状ゴムよりなるB成分は、本発明の組成物において均一に分散された状態で存在し、当該組成物より形成される絶縁層の表面を粗面化処理する工程において、強酸化性の粗面化処理液によって選択的に反応されて溶解し、これにより、絶縁層の表面の粗面化が達成される。
【0041】
すなわち、当該粒子状ゴムは、エポキシ変性されていることにより、他の成分に対して良好な親和性を有するために本発明の当該組成物中に十分均一に分散された状態で存在するようになる。そして、粗面化処理において、強酸化性を有する粗面化処理液が絶縁層の表面に存在するエポキシ変性粒子状ゴムに接触することにより、当該エポキシ変性粒子状ゴムを構成する共重合体の二重結合が切断されて当該共重合体が当該粗面化処理液に溶解する結果、当該エポキシ変性粒子状ゴムが絶縁層から消失しあるいは除去され、これにより絶縁層の表面に微小な凹凸が形成されて粗面化される。
【0042】
これに対し、エポキシ変性されていない粒子状ゴムを用いると、組成物において均一な分散状態が得られないことから、結局、絶縁層の粗面化処理において、その粗面化状態が均一とならず、ムラが生じた状態となる。
【0043】
なお、粒子状ゴムのエポキシ変性に用いられるエポキシ樹脂などのエポキシ化合物を単独成分として使用した場合にも、粒子状ゴムが十分均一に分散させることができない。
【0044】
また、本発明の組成物から得られる絶縁層の内部においては、上記のエポキシ変性粒子状ゴムが均一に分散された状態で存在することから、当該絶縁層において露光や熱処理によって生じる収縮応力、基材との熱膨張係数の差によって生じる熱応力などが緩和され、その結果、多層配線板の寸法精度および絶縁層として高い信頼性が得られる。さらに、エポキシ変性粒子状ゴムを含有する組成物によれば、得られる絶縁層の靱性が向上し、クラックの発生を防止することができる。
【0045】
本発明の組成物において、B成分の割合は、A成分〜C成分の合計量に対して通常1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%で、さらに好ましくは、10〜30重量%である。この割合が少なすぎると、十分な粗面化処理を達成することができず、得られる絶縁層が靱性、耐熱性および耐めっき液性が不十分なものとなるおそれがあり、一方、この割合が多すぎると、得られる組成物による薄膜が十分な現像性を有しないものとなるおそれがある。
【0046】
〔C成分〕
本発明におけるC成分は、1分子内にオキセタニル基及びチイラニル基から選ばれる基を有するオキセタンまたはチイラン化合物である。代表的なものは、分子内にオキセタニル基を有する化合物及びチイラニル基を有する化合物である。
【0047】
オキセタニル基含有化合物
オキセタニル基を分子内に1個以上有する化合物の例としては、下記の式(A)、式(B)および式(C)で示される化合物を挙げることができる。
【0048】
【化1】


〔式(A)、(B)および(C)の各々において、
1はメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基であり、
2は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基であり、
3は、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、キシリル基等のアリール基;式:
【0049】
【化2】


(ここで、xは0〜50の整数である)
で表わされるジメチルシロキサン残基、R2に関して例示したと同様のアルキレン基、フェニレン基、または下記の式(1)〜(5)で表わされる基を示し、
【0050】
【化3】


(ここでyは1〜50の整数である)、
【0051】
【化4】


(ここで、xは単結合または−CH2−、−C(CH32−、−C(CF32−、もしくは−SO2−で示される2価の基である)、
【0052】
【化5】


nは、R3
の価数に等しく、1〜4の整数である。〕
これらの式(A)〜式(C)で表わされる化合物の具体例としては、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン(商品名「XDO」東亜合成社製)、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕メタン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕エーテル、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕プロパン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕スルホン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕ケトン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル−フェニル〕ヘキサフロロプロパン、トリ〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、テトラ〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、並びに下記の化学式(D)〜(H)で示される化合物を挙げることができる。
【0053】
【化6】


以上の他、高分子量の多価オキセタン環を有する化合物も用いることができ、その具体例としては、例えばオキセタンオリゴマー(商品名「Oligo−OXT」東亞合成社製)並びに下記の化学式(I)〜(K)で示される化合物などを挙げることができる。
【0054】
【化7】


〔これらの式中、p、qおよびsは、1〜10,000の整数である。〕
チイラニル基含有化合物
チイラニル基含有化合物は、分子中にチイラニル基を1個以上有する化合物である。該化合物は分子中にチイラニル基以外の官能基を有していてもよい。また、その分子量は、特に限定されないが、通常、70〜20,000の範囲である。
【0055】
チイラニル基含有化合物は、専ら、オキシラン含有化合物中のオキシラン環の酸素原子を硫黄原子に置換することにより合成されるが、その方法は、例えば、 J.M.Charlesworth J. Polym. Sc. Polym.Phys. 17 329 (1979)に示される方法等によりチオシアン酸塩を用いて、また、 R. D. Schuetz et al., J. Org. Chem. 26 3467 (1961) に示される方法などによりチオ尿素を用いて合成することができる。また、環状カーボネートからの合成方法も、S.Seales et al. J. Org. Chem., 27 2832 (1962) 等に示されている。
【0056】
本発明に用いられるチイラン化合物の例として、M. Sander, Chem. Rev. 66 297 (1966)中の Table-Iに示されているチイラン化合物および、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、並びにこれらの重合体または他の重合性2結合を有する化合物と共重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等に代表されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂類、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂類、脂環式エポキシ樹脂類、複素環式エポキシ樹脂類、液状ゴム変性エポキシ樹脂類等のオキシラン環含有化合物のオキシラン環中の酸素原子を硫黄原子に置換したチイラン化合物を挙げることができる。良好な架橋構造を得るためには、これらのチイラン化合物うち分子中に2個以上のチイラニル基を有する化合物が好ましく用いられる。中でも特に好ましいチイラニル基含有化合物の例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等に代表されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂類や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂類、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂類、オキシラン環含有化合物のオキシラン環中の酸素原子を硫黄原子に置換したチイラン化合物が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物において、C成分であるオキセタニル基含有化合物及びチイラニル基含有化合物から選ばれる化合物の配合の割合は、通常、A成分〜C成分の合計に対して0.5〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。C成分は、光暴露時に速やかに重合する成分であり、露光部分の形状保持に効果を発揮する。特に、ビアホール形成後の後ベーク時に樹脂が軟化する事により発生する熱ダレ現象の防止に効果がある。したがって、C成分の割合が少なすぎると、熱ダレ防止に効果が無い。また、このC成分は、硬化後の吸水性の低下ならびに硬化時の硬化収縮の抑制にも効果があるが、得られる絶縁層は吸水性が十分に低いものとならず、また得られる硬化収縮の程度が十分に小さいものとならない。一方、この割合が多すぎると、得られる組成物による薄膜が十分な現像性を有するものとならないおそれがある。
【0058】
〔その他の成分〕
本発明の組成物には、前記A成分ないしC成分のほかに、必要に応じて種々の任意的な成分を配合することができる。いずれの配合成分の場合も本発明の目的を損なわない範囲で配合される。
【0059】
架橋剤
本発明の組成物はA成分のアルカリ可溶性樹脂と反応して架橋構造を形成する架橋剤を含むことが好ましい。
【0060】
該架橋剤として代表的なものは、1分子内に複数の活性メチロール基を有するアミノ樹脂である。このようなアミノ樹脂として、例えば、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレアなどの、1分子内に複数個の活性メチロール基を有する含窒素化合物を挙げることができる。そのメチロール基は、水酸基の水素原子がメチル基やブチル基などのアルキル基によって置換された化合物であってもよく、またはそのような置換化合物の複数を混合した混合物であってもよい。また、該架橋剤は、これらの化合物が一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含むものであってもよい。
【0061】
該アミノ樹脂の具体例としては、ヘキサメトキシメチル化メラミン(三井サイアナミッド(株)製「サイメル300」)、テトラブトキシメチル化グリコールウリル(三井サイアナミッド(株)製「サイメル1170」)などのサイメルシリーズの商品、マイコートシリーズの商品、UFRシリーズの商品、その他を用いることができる。これらのアミノ樹脂は、一種単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。特に好ましいB成分は、ヘキサメトキシメチル化メラミンである。
【0062】
本発明の組成物において、架橋剤の含有量は、当該組成物による薄膜が光重合開始剤および熱の作用によって十分に硬化する範囲が好ましい。通常、A成分〜C成分の合計量に対して1〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%である。
【0063】
液状ゴム
好ましい配合成分として、数平均分子量が1,000〜100,000、好ましくは、1,000〜60,000である。この液状ゴムを含有することにより、本発明の組成物は、めっき処理によって形成される導体配線の絶縁層に対する密着性が良好となり、特に高温下でも十分に大きな密着性が得られる。
【0064】
該液状ゴムは、A成分、B成分及びC成分との相溶性または親和性が高いものであることが必要であり、これらとの相溶性または親和性が低いものを用いると、得られる組成物は粘着性が高いものとなって取扱いにくくなることがある。
【0065】
好適な液状ゴムとしては公知の各種合成ゴムを挙げることができるができ、A成分などに対して高い相溶性が得られることから、アクリルゴム(ACM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル・アクリレート・ブタジエンゴム(NBA)が好ましく、さらに必要に応じて、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基より選ばれる少なくとも1種の官能基を有するものも使用することができる。実際上、エポキシ基、カルボキシル基または水酸基を有するものが好ましく、特にカルボキシル基または水酸基を有するブタジエン系共重合体よりなる液状ゴムが好ましい。
【0066】
液状ゴムはいずれの方法で製造されたものであってもよく、その製造には乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合などの各種の方法を用いることができ、重合方式もバッチ式、回分式、連続式のいずれでもよい。液状ゴムは、これに含有されるイオン成分の割合が低いことが好ましく、これにより、得られる絶縁層は十分な絶縁性を有するものとなる。液状ゴムを得るための単量体組成物にジエン系単量体が含有される場合には、当該組成物の重合は乳化重合法によって容易に実行することができるが、特に特開昭62−74908号公報に示された方法により、イオン成分の含有割合の低い液状ゴムを得ることができる。
【0067】
本発明の組成物における該液状ゴムの割合は、通常、A成分〜C成分の合計量に基づいて1〜40重量%、好ましくは5〜25重量%である。
【0068】
放射線重合開始剤
本発明の組成物には通常放射線重合開始剤が配合される。該放射線重合開始剤としては、一般に光カチオン重合開始剤としてして知られているものが好ましく、具体的には、ジアゾニウム塩である「アデカウルトラセットPP−33」〔旭電化工業(株)製〕、スルホニウム塩である「OPTOMER SP−150」、「OPTOMER SP−170」、「OPTOMER SP171」〔旭電化工業(株)製〕、メタロセン化合物である「IRGACURE261」〔チバガイギー社製〕、トリアジン化合物である「トリアジンB」、「トリアジンPMS」、「トリアジンPP」〔日本シイベルヘグナー(株)製〕などを挙げることができる。
【0069】
本発明の組成物における放射線重合開始剤の配合割合は、A成分〜C成分の合計に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.02〜2重量%である。この割合が0.01重量%未満である場合には、得られる絶縁層は酸素などの周囲の環境の影響による感度低下が著しいものとなり、一方、5重量%を超えると他の成分との相溶性に劣り、組成物の保存安定性が低下する。
【0070】
その他の任意成分
本発明の組成物には、当該組成物が適用される基材に対する接着性を向上させるための接着助剤を含有させることができる。この接着助剤としては、官能性シランカップリング剤が有効である。ここで、官能性シランカップリング剤とは、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤を意味し、その例としてはトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができ、その配合割合は、A成分〜C成分の合計量に対して2重量%以下が好ましい。 本発明の組成物には、必要に応じて充填材、着色剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、その他の添加剤を含有させることができる。充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、ジルコニウムシリケート、粉末ガラスなどを挙げることができる。着色剤としては、アルミナ白、クレー、炭酸バリウム、硫酸バリウムなどの耐湿顔料;亜鉛華、鉛白、黄鉛、鉛丹、群青、紺青、酸化チタン、クロム酸亜鉛、ベンガラ、カーボンブラックなどの無機顔料;ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッド6B、パーマネントレッドR、ベンジジンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機顔料;マゼンタ、ローダミンなどの塩基性染料;ダイレクトスカーレット、ダイレクトオレンジなどの直接染料;ローセリン、メタニルイエローなどの酸性染料、その他を挙げることができる。粘度調整剤としては、ベントナイト、シリカゲル、アルミニウム粉末などを挙げることができる。レベリング剤としては、各種シリコーン系化合物、ポリアルキレンオキシド系化合物などを挙げることができる。消泡剤としては、表面張力の低いシリコーン系化合物、フッ素系化合物などを挙げることができる。これらの添加剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、好ましくはA〜C成分の合計の50重量%以下の量で使用される。
【0071】
〔組成物の調製〕
本発明の組成物を調製するためには、充填材、顔料を添加しない場合には各成分を通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、充填材、顔料を添加する場合にはディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合すればよい。また、必要に応じて、メッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過することもできる。
【0072】
本発明の組成物には、粘度調整を目的として、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、乳酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテート、メトキシメチルプロピオネート、エトキシエチルプロピオネート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテルなどの高沸点溶剤を添加することもできる。
【0073】
これらの溶剤の使用量は、組成物の用途や用いる塗布の方法に応じて変更することができ、組成物を均一な状態とすることができれば特に限定されるものではないが、得られる液状組成物において5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%となる量である。
【0074】
〔組成物の使用〕
本発明の組成物を基材に塗布するための塗布方法は特に限定されるものではなく、一般的な感光性材料の塗布方法を利用することができる。具体的には、スクリーン印刷法、ロールコート法、バーコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。また、本発明の組成物をフィルム状に成形した後、これをラミネーターを用いて基材に密着させて用いることもできる。
【0075】
本発明の組成物は上記のような方法により基材に塗布された後、乾燥し、紫外線を照射し、さらに加熱することにより、硬化膜とすることができる。ここで、乾燥条件、紫外線照射条件、加熱条件は、後述する(1)薄膜形成工程、(2)露光処理工程および(3)反応促進用加熱工程にそれぞれ記載された条件と同様である。
【0076】
本発明の硬化膜はアルカリ水溶液に不溶である。ここでアルカリ水溶液に不溶とは、20℃の0.75重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に180〜300秒間浸漬した後の残膜率が90%以上であることを意味する。
【0077】
本発明の組成物を用いて多層配線板を製造する場合には、導体配線が表面に形成された配線板の当該表面に、本発明の組成物よりなる薄膜を形成し、この薄膜に露光処理および現像処理を施すことにより、例えば前記導体配線に至る貫通孔が形成されてこれにより当該導体配線が露出された状態の絶縁層を形成し、この絶縁層の表面に、前記導体配線と導通する新たな導体配線を形成する一連の工程を1回または複数回繰り返せばよい。すなわち、n番目の導体配線が表面に形成された配線板に、本発明の組成物による絶縁層を形成し、この絶縁層の表面に、n番目の導体配線と導通する(n+1)番目の導体配線を、めっき処理などによって形成する工程が含まれる。ここに、nは1以上の整数である。本発明の組成物によれば、このような方法により、信頼性の高い、高密度で高精度の耐熱性多層配線板を高い効率で製造することができる。
【0078】
以下に、本発明の組成物を用いて多層配線板を製造する方法について、工程順に具体的に説明する。
【0079】
(1)薄膜形成工程
この薄膜形成工程においては、例えば導体配線が基板の表面に形成されてなる配線板の当該表面上に、当該導体配線が覆われるように本発明の組成物を塗布し、乾燥処理して組成物中の溶剤を加熱除去することにより薄膜を形成する。
【0080】
ここに、導体配線が形成される基板の材質は特に限定されるものでなく、例えばガラスエポキシ樹脂、紙補強フェノール樹脂、セラミック、ガラス、シリコンウエハなどを挙げることができる。塗布方法としては、例えばスピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法などを採用することができる。
【0081】
また、本発明の組成物を基体フィルム上に製膜し乾燥させて、いわゆるドライフィルムを作製し、これをラミネーターなどによって基板に貼り合わせることにより薄膜を形成してもよい。この基体フィルムとしては、透光性を有する、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム、延伸ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン系フィルムを使用することができる。ここに、基体フィルムが透光性を有するものである場合には、当該基体フィルムを通して光照射して当該薄膜を光硬化させることが可能となる。
【0082】
塗布後における乾燥の条件は、本発明の組成物に含まれる各成分の種類、配合割合、膜厚などによっても異なるが、通常、70〜130℃の温度で1〜40分間程度である。乾燥が不十分であると、残留する溶剤によって薄膜の表面にべとつきが生じ、また、基板に対する絶縁層の密着性が低下する。一方、乾燥が過度になされると、熱かぶりによって解像性の低下を招く。この薄膜の乾燥は、オーブンやホットプレートなどの通常の装置を用いて行われる。
【0083】
上記の薄膜形成工程において形成される薄膜の乾燥後の膜厚は、例えば5〜100μmであり、10〜70μmであることが好ましい。膜厚が過少であると十分な絶縁性を有する絶縁層を形成することができず、一方、膜厚が多すぎると解像性の低下を招く。
【0084】
(2)露光処理工程
この露光処理工程においては、薄膜形成工程によって配線板上に形成された薄膜に所定のパターンのマスクを介して波長200〜500nmの紫外線または可視光線を照射して、薄膜の光照射領域(露光領域)を光硬化させる。露光処理装置としては、フュージョン、コンタクトアライナー、ステッパー、ミラープロジェクターなどを使用することができる。また露光処理に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザ、X線発生装置、電子線発生装置などを挙げることができる。薄膜に対する露光量は、薄膜を構成する組成物における各成分の種類、配合割合、膜厚などによっても異なるが、例えば高圧水銀灯を使用する場合において100〜2000mJ/cm2 である。
【0085】
(3)反応促進用加熱工程
この反応促進用加熱工程においては、露光処理工程の後の当該薄膜を、通常、温度70〜130℃で1〜20分間程度加熱し、これにより、露光処理工程における光反応による硬化に加えて、熱反応による薄膜の硬化を促進させる。この加熱が過度であると熱かぶりによって解像性の低下を招く。この加熱は、オーブンやホットプレートなどの通常の装置を用いて行われる。ただし、本発明の組成物は、光硬化速度が大きく、しかも硬化性が優れているので、この工程を省略することも可能である。
【0086】
(4)現像処理工程
この現像処理工程においては、非露光領域における組成物を、アルカリ水溶液よりなる現像液に溶解させて除去し、露光領域における組成物のみを残存させることにより、パターン形成を行う。
【0087】
ここに、現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメタノール・エタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕−5−ノナンなどのアルカリ化合物の水溶液を用いることができる。また、上記のアルカリ類の水溶液にメチルアルコール、エチルアルコールなどの水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液、または本発明の組成物を溶解する各種有機溶剤を現像液として使用することができる。好ましい現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの、濃度0.1〜6.0重量%の水溶液、特に0.5〜3.0重量%の水溶液が好ましい。
【0088】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー、シャワー現像法などを挙げることができる。現像処理後には、例えば流水洗浄を行い、エアーガンなどを用いてあるいはオーブン内において乾燥させる。この現像処理工程によって薄膜の一部が除去されて例えば貫通孔が形成され、基板表面の導体配線の一部が露出される結果、フォトビアホールを有する絶縁層が形成される。
【0089】
(5)熱硬化・後露光工程
本発明の組成物は光硬化性および熱硬化性の両方の性質を有しており、この熱硬化・後露光工程において熱硬化処理および/または後露光処理が行われることにより、フォトビアホールを有する絶縁層の硬化が更に促進される。従って、この熱硬化・後露光工程は、絶縁層が十分な硬化状態にあるときは不要となる工程である。熱硬化処理は、ホットプレート、オーブン、赤外線オーブンなどを用いて、絶縁層が熱劣化を起こさない温度条件、好ましくは120〜180℃で30分間〜5時間程度の適当な時間が選択されて行われる。また、後露光処理は、露光処理工程で使用されるものと同様の光源および装置を用いて、例えば100〜4000mJ/cm2 の露光量で行うことができる。
【0090】
(6)平坦化処理工程
この平坦化処理工程は、例えば平坦でない基板上に形成された絶縁層を研磨処理することによって平坦化するための任意の工程であり、平坦化されることによって、当該絶縁層の表面に導体配線を形成する場合における回路加工の精度を向上させることができる。ここに、研磨手段としては、例えばバフロール、ナイロンブラシ、ベルトサンダーなどの研磨手段を使用することができる。
【0091】
(7)スルーホール形成工程
このスルーホール形成工程は、部品の挿入や他の配線板との接続すなわち層間接続を達成するためにスルーホールが必要とされる場合において、数値制御型ドリルマシンなどを用いて機械的に穿孔加工を行う工程である。なお、本発明の組成物を用いた製造方法によれば、フォトビアホールによって層間接続を行うことができるので、このスルーホール形成工程は必要がある場合にのみ行われる任意の工程である。
【0092】
(8)粗面化処理工程
この粗面化処理工程においては、上記の絶縁層の表面に形成される導体配線の密着性を向上させるために、当該絶縁層の表面が粗面化処理液によって粗面化される。
【0093】
粗面化処理液としては、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムとの混合水溶液などのアルカリ性の処理液、無水クロム酸と硫酸との混酸、その他の強酸化性を有するものが用いられる。これらのうち、過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムとの混合水溶液が特に好ましい。処理方法としては、50〜90℃に加温した処理液中に5〜130分間絶縁層を浸漬させればよい。なお、粗面化処理後においては、必要に応じてシュウ酸などの弱酸水溶液により中和した後、流水洗浄を十分に行うことが必要である。
【0094】
この粗面化処理工程によって、絶縁層の表面、フォトビアホールの側壁面およびスルーホールの側壁面は、例えば0.01〜10μmの凹凸形状を有する粗面状態となり、アンカー効果によって導体配線を構成する銅めっき層に対して強固な密着力が発揮される。
【0095】
(9)触媒処理工程
この触媒処理工程は、絶縁層の表面およびホールの内壁表面に、次工程において無電解銅めっき処理を行う際の析出核となるめっき触媒を担持させる工程である。ここに、めっき触媒としては、例えばパラジウムなどの金属コロイドを使用することができ、当該金属コロイドが媒体中に分散されてなる各種公知の処理液中に絶縁層を浸漬させることにより、触媒の担持は達成される。なお、本発明の組成物中には、めっき触媒を含有させることができ、この場合には、この工程を省略することができる。
【0096】
(10)新たな導体配線の形成工程
この新たな導体配線の形成工程は、例えば無電解銅めっき処理を行うことにより、フォトビアホールおよびスルーホールを介して、基板表面に既に形成されていた導体配線(第1の導体配線)との電気的接続を実現しながら、絶縁層の表面に新たな導体配線(第2の導体配線)を形成する工程である。新たな導体配線の形成方法としては、例えば以下に示す方法a〜cを挙げることができる。
【0097】
方法a
触媒が担持された絶縁層表面の全域に無電解銅めっき処理を行って銅めっき層を形成し、必要に応じて、当該銅めっき層を電極とする電解銅めっき処理により所望の厚みを有する銅金属層を形成し、この銅金属層上にレジストパターンを形成し、次いで銅金属層をエッチングして導体パターンを形成する。ここで、レジストパターンは、第2の導体配線が形成される領域のほかに、第1の導体配線と第2の導体配線と間の層間接続用導体が形成される層間接続用フォトビアホールの位置、すなわち導体ランドが形成されるべき領域にも形成される。この導体ランドの径は、位置ずれ誤差を考慮してフォトビアホールの径よりも大きくすることが好ましい。レジストパターンは、通常、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィーによって形成される。また、銅金属層のエッチングは、過硫酸アンモニウム水溶液やアンモニア錯体系のエッチング液により行われる。銅金属層のエッチングが行われた後、レジストパターンは所定の方法で剥離除去される。フォトレジストは、必要な解像性およびエッチング液に対する耐性を有し、後に除去できるものであればよい。このようにして、基板の表面の第1の導体配線と導通する第2の導体配線が絶縁層の上に形成される。
【0098】
方法b
触媒が担持された絶縁層表面における新たな導体配線を形成すべき領域以外の領域にレジストパターンを形成した後、無電解銅めっき処理および必要に応じて電解銅めっき処理を行うことにより、絶縁層表面における新たな導体配線を形成し、かつフォトビアホールの内壁表面に銅めっき層を形成して、レジストパターンを剥離除去する。この方法においても、導体配線の幅をフォトビアホールの径よりも大きくすることが好ましい。
【0099】
方法c
触媒が担持された絶縁層の表面全面に、めっき触媒を含有していない感光性樹脂組成物を塗布して被覆層を形成し、この被覆層をパターンマスクを通して露光して現像することにより、当該被覆層にフォトビアホールを形成すると共にそれに連続する第2の導体配線となる個所の被覆層部分を除去し、その上で無電解銅めっきのみを行う。この方法においても、導体配線の幅をフォトビアホールの径よりも大きくすることが好ましい。また、被覆層の厚さは、銅めっきによる銅金属層の厚さと同じか、やや大きめであることが好ましい。この方法によれば、形成される第2の導体配線は、被覆層の除去部分に形成されると共に、残存被覆層による絶縁膜が絶縁層の上に残存し、しかもこの残存被覆層と銅金属層の厚さが、通常近似したものとなるため、外表面を平坦性に優れたものとすることができる。なお、以上の被覆層を形成するための感光性樹脂組成物として、本発明の組成物を用いることができる。
【0100】
以上の工程(1)〜(10)を繰り返すことにより、さらに多層化することができる。この場合において、新たな導体配線の形成工程(10)を実施する際には、方法a〜方法cを組み合わせて多層化することもできる。
【0101】
なお、多層配線板の最上層となる絶縁層の表面に導体配線を形成した後に、当該絶縁層と導体配線との密着性を向上させる観点から、ポストベークを行うことが好ましい。最上層となるもの以外の絶縁層およびそれに係る導体配線に対しては、その後の絶縁層の形成における加熱工程において加熱されるため、特に単独の工程としてポストベークを行う必要はない。
【実施例】
【0102】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、特に明示する場合を除き、「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を示す。
【0103】
〔A成分〕次の7種を用意した。
A1:クレゾールノボラック樹脂〔m−クレゾール:p−クレゾール=6:4(モル比)、重量平均分子量Mw=11000〕
A2:クレゾールキシレノールノボラック樹脂〔m−クレゾール:p−クレゾール:3,5−キシレノール=6:3:4(モル比)、重量平均分子量Mw=8000〕
A3:フェノールノボラック樹脂〔重量平均分子量Mw=6000〕
A4:ポリ(p−ビニルフェノール)〔丸善石化製、重量平均分子量Mw=3000〕
A5:ポリ(臭素化p−ビニルフェノール)〔丸善石化製「マルカリンカーMB」、重量平均分子量Mw=4000〕
A6:ポリ(m−ビニルフェノール)〔重量平均分子量Mw=3000〕
【0104】
〔B成分〕次の3種のエポキシ変性粒子状ゴムB1〜B3を製造した。
粒子状ゴムB1
ブタジエンと、メタクリル酸メチルと、メタクリル酸と、ジビニルベンゼンとを重量比で70:25:4:1の割合で混合してなる単量体組成物を乳化重合することにより、平均粒径が0.058μmのカルボキシル基を有する架橋重合体よりなる粒子状ゴム材M1を調製し、この粒子状ゴム材10部に対して、エポキシ樹脂「エピコート828」(油化シェルエポキシ(株)製)100部を、変性反応触媒として粒子状ゴム材に対して1%のトリフェニルフォスフィンと共に添加し、90℃で約2時間混合・攪拌することにより、エポキシ変性処理された粒子状ゴムB1を得た。
【0105】
なお、この粒子状ゴムB1をテトラヒドロフランに溶解し、残存カルボキシル基(カルボン酸)をフェノールフタレインを指示薬とした酸−塩基滴定法により定量したところ、カルボン酸は検出されず、当該粒子状ゴムB1は表面のカルボキシル基がすべてエポキシ基に変換されているものであった。
【0106】
粒子状ゴムB2
ブタジエンと、アクリロニトリルと、メタクリル酸と、ジビニルベンゼンとを重量比で67:30:2:1の割合で混合してなる単量体組成物を乳化重合することにより、平均粒径が0.070μmのカルボキシル基を有する架橋重合体よりなる粒子状ゴム材を調製し、この粒子状ゴム材15部に対して、エポキシ樹脂「EP−4100E」(旭電化工業(株)製)100部を、変性反応触媒として粒子状ゴム材に対して1%のトリフェニルフォスフィンと共に添加し、90℃で約2時間混合・攪拌することにより、エポキシ変性処理された粒子状ゴムB2を得た。
【0107】
粒子状ゴムB3
ブタジエンと、アクリロニトリルと、メタクリル酸と、ジビニルベンゼンとを重量比で77:19:3:1の割合で混合してなる単量体組成物を乳化重合することにより、平均粒径が0.062μmのカルボキシル基を有する架橋重合体よりなる粒子状ゴム材を調製し、この粒子状ゴム材10部に対して、エポキシ樹脂「EP−4100E」(旭電化工業(株)製)100部を、変性反応触媒として粒子状ゴム材に対して1%のトリフェニルフォスフィンと共に添加し、90℃で約2時間混合・攪拌することにより、エポキシ変性処理された粒子状ゴムB3を得た。
【0108】
〔C成分〕
オキセタニル基含有化合物として次の2種類を用意した。
C1:1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン
C2:3−メチル−3−グリシジルオキシメチルオキセタンと3−フェニル−3−グリシジルオキシメチルオキセタンのアニオン共重合物(数平均分子量Mn=10000)
【0109】
チイラニル基含有化合物として次の1種類を用意した。
C3:2,2‘−[(1−メチルエチリデン)ビス(4,1−フェニレンオキシメチレン)]ビスチイラン
【0110】
〔D成分〕次のアミノ樹脂2種を用意した。
D1:ヘキサメトキシメチル化メラミン
D2:テトラメトキシメチル化グリコールウリル
【0111】
〔E成分〕次の液状ゴム3種を用意した。
E1:ブタジエン−アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体〔ブタジエン:アクリロニトリル:メタクリル酸=60:35:5(モル比)、数平均分子量Mn=6000、ガラス転移点Tg−39℃〕
E2:ブタジエン−アクリロニトリル−ヒドロキシエチルアクリレート−メタクリル酸共重合体〔ブタジエン:アクリロニトリル:ヒドロキシエチルアクリレート=55:30:15(モル比)、数平均分子量Mn=8000、ガラス転移点Tg−25℃〕
E3:ブタジエン−アクリロニトリル−ヒドロキシエチルアクリレート−メタクリル酸共重合体〔ブタジエン:アクリロニトリル:ヒドロキシエチルアクリレート:メタクリル酸=60:25:10:5(モル比)、数平均分子量Mn=4500、ガラス転移点Tg−30℃〕
【0112】
〔F成分〕次の光重合開始剤3種を用意した。
F1:2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシフェニル)−6−トリアジン
F2:2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン
F3:ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセンスルホネート
【0113】
〔溶剤〕次の有機溶剤4種を用意した。
MMP:3−メトキシプロピオン酸メチル
DAA:ジアセチルアセトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
EEP:3−エトキシプロピオン酸エチル
【0114】
<実施例1〜10、比較例1〜7(組成物の調製)>
下記表1または表2に示す処方に従って、上記のA成分〜F成分並びに必要に応じて溶剤を配合し、得られた配合物の各々を、ヘンシェルミキサーにより混合・攪拌を行うことにより、各例の感光性樹脂組成物を調製した。
【0115】
<組成物の性能評価および多層配線板の製造>
(1)感光特性評価テスト基板の作製および評価
銅金属層が一面に形成されたガラスエポキシ樹脂よりなる板状体をテストピースとして用い、その当該一面上に、実施例1〜10および比較例1〜7により調製された組成物の各々をスピンコータを用いて塗布し、熱風オーブン内において90℃で10分間乾燥することにより、乾燥後の膜厚が約50μmの薄膜を形成した。
【0116】
ここに得られたテストピースの各々について、その薄膜に対し、直径がそれぞれ25μm、50μm、75μm、100μm、150μmおよび200μmの穿孔パターンが形成されたテスト用フィルムマスクを介して露光を行った。露光処理は、オーク製作所製HMW321B型露光装置を用い、コンタクトで1000mJ/cm2 の露光量で行った。
【0117】
露光処理後のテストピースを120℃で5分間加熱処理した後、0.75%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に表3または表4に示す時間浸漬して揺動させることにより現像処理を行い、銅金属層に至る貫通孔すなわちフォトビアホールを有する絶縁層を形成した。その後、当該絶縁層が形成されたテストピースの各々を水洗し乾燥した。
【0118】
解像性
ここに得られたテストピースの各々について解像性の評価を行った。解像性の評価は、種々の大きさの径のフォトビアホールが形成されるようにフォトリソグラフィーを実行し、その結果、銅金属層が露出されていることが確認されたフォトビアホールのうち最小のものの直径(これを「貫通孔最小径」という。)を測定することにより行った。この貫通孔最小径の値が小さいものほど解像性に優れていることを意味する。結果を表3および表4に示す。
【0119】
熱ダレ・粗面状態
次に、絶縁層が形成されたテストピースの各々を、熱風オーブン内において温度150℃で60分間加熱することにより硬化させた。この時のフォトビアホールの縁の形状変化を電子顕微鏡にて観察し、熱ダレの有無を確認した。その後、熱硬化したテストピースを、温度65℃に維持された過マンガン酸カリウム−水酸化ナトリウム水溶液(過マンガン酸カリウム濃度3%、水酸化ナトリウム濃度2%)中に10分間浸漬することにより、絶縁層の表面に対して粗面化処理を行い、その後、濃度5%のシュウ酸水溶液中に室温で5分間浸漬することにより中和処理し、さらに十分に水洗した。
【0120】
このテストピースの各々について、絶縁層の表面状態を走査型電子顕微鏡により観察してその粗面化処理の状態を評価した。結果を表3および表4に示す。評価の方法は、当該表面が十分に粗面化されて微細な凹凸が形成されている場合を「良好」とし、それ以外を「不良」とした。
【0121】
ピール強度
また、テストピースの各々を塩化パラジウム系の触媒液中に室温下6分間浸漬することにより、粗面化された絶縁層の表面および貫通孔の内面にめっき触媒を担持させ、さらに触媒活性化液中に室温で8分間浸漬してめっき触媒を活性化させた。その後、テストピースの各々を水洗した後、室温で20分間にわたって無電解銅めっき処理を行った。この処理では、触媒液、触媒活性化液および無電解銅めっき液として「OPCプロセスMシリーズ」(奥野製薬(株)製)のものを用いた。次に、硫酸銅−硫酸水溶液(硫酸銅濃度210g/L、硫酸濃度52g/L、pH=1.0)よりなる電解銅めっき液を用い、3.0mA/dmの電流密度で電解銅めっき処理を行い、合計の厚みが約20μmの銅金属層を絶縁層の表面全体にわたって形成し、その後、当該テストピースを150℃で1時間加熱処理した。
【0122】
これらのテストピースの表面に1cm間隔の切り込みを形成し、端面から、ピールテスターで剥離させることにより、銅金属層のピール強度(JIS C 6481)を測定した。このピール強度は、10cm引き剥がした中での最頻値である。結果を表3および表4に示す。
【0123】
(2)ガラス転移点の測定
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一面に離型剤を塗布し、その一面上に上記(1)と同様の方法により厚さ50μmの薄膜を形成し、この薄膜の全体に対して1000mJ/cm2 の露光量で露光処理した後、150℃で2時間加熱して硬化させて本発明の組成物によるフィルムを形成し、ポリエチレンテレフタレートフィルムから剥離してテストフィルムを得た。
【0124】
このテストフィルムについて、弾性率測定装置「レオバイブロンRHEO−1021」(オリエンテック社)により周波数10Hzにて弾性率変化を測定し、tanδのピークトップをガラス転移点の値として求めた。結果を表3および表4に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
【表3】

【0128】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA成分〜D成分を含有することを特徴とする絶縁層形成用感放射線性樹脂組成物。
〔A成分〕アルカリ可溶性樹脂、
〔B成分〕エポキシ化合物、
〔C成分〕分子内にオキセタニル基及びチイラニル基からなる群から選ばれる基を有する化合物、および
〔D成分〕高沸点溶剤。
【請求項2】
前記B成分がエポキシ変性粒子状ゴムである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物を硬化してなる硬化膜からなる絶縁層。
【請求項4】
導体配線が表面に形成された配線板の当該表面に、請求項1または2に記載の組成物よりなる薄膜を形成し、この薄膜に露光処理および現像処理を施すことにより前記導体配線が一部露出された状態の絶縁層を形成し、この絶縁層の表面に前記導体配線と導通する新たな導体配線を形成することを含む一連の工程を1回または複数回繰り返すことを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項5】
導体配線が表面に形成された配線板の当該表面に、
〔A成分〕アルカリ可溶性樹脂、
〔B成分〕エポキシ化合物、および
〔C成分〕分子内にオキセタニル基及びチイラニル基からなる群から選ばれる基を有する化合物
を含有する組成物よりなる薄膜を形成し、この薄膜に露光処理および現像処理を施すことにより前記導体配線が一部露出された状態の絶縁層を形成し、この絶縁層の表面に前記導体配線と導通する新たな導体配線を形成することを含む一連の工程を1回または複数回繰り返すことを特徴とする多層配線板の製造方法。

【公開番号】特開2006−124712(P2006−124712A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326238(P2005−326238)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【分割の表示】特願平9−243335の分割
【原出願日】平成9年8月25日(1997.8.25)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】