説明

絶縁検査装置および絶縁検査方法

【課題】プローブと配線パターンとの間の接触状態を検出して検査精度を向上させる。
【解決手段】配線パターン3の2つの端点に接触可能なプローブ5,7と、配線パターン4の2つの端点に接触可能なプローブ6,8と、電圧印加部9による絶縁検査電圧Veの印加時に配線パターン3,4間に流れる漏れ電流Imを測定する電流測定部10と、この電流Imによって配線パターン3,4間に発生するパターン間電圧Vm1を検出する電圧検出部11と、配線パターン3に対するプローブ5,7の接触状態を検出する接触状態検出部12と、配線パターン4に対するプローブ6,8の接触状態を検出する接触状態検出部13と、接触状態検出部12,13の各検出結果に基づいて各配線パターン3,4と各プローブ5,7,6,8との接触状態を判別し、パターン間電圧Vm1と漏れ電流Imに基づいて配線パターン3,4間の絶縁状態を検査する処理部14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の配線パターン間に直流電圧を印加したときに流れる漏れ電流の電流値に基づいてこの一対の配線パターンの絶縁状態を検査する絶縁検査装置および絶縁検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の絶縁検査装置として、本願発明者は下記特許文献1に開示された絶縁検査装置を提案している。この絶縁検査装置は、回路基板に形成された一対の配線パターン間の絶縁検査を実行するものであって、各配線パターンに接続される一対のプローブと、一対のプローブ間に直流電圧を印加する電源部と、直流電圧の印加状態において一対のプローブに流れる漏れ電流の電流値を測定する電流測定部と、測定された漏れ電流の電流値と予め規定された閾値とに基づいて検査対象体の絶縁状態を検査する処理部とを備えている。
【0003】
この絶縁検査装置では、各プローブと各配線パターンとが未接続状態のときにおいて一対のプローブ間に直流電圧が印加されたときにプローブに流れる漏れ電流の定常値を測定し、一対のプローブに各配線パターンを接続して絶縁状態の検査を実行する際に、直流電圧の印加状態での漏れ電流の電流値を測定しつつこの電流値から定常値を減算し、減算によって得られた電流値と閾値とを比較して、各配線パターン間の絶縁状態を検査する。したがって、この絶縁検査装置によれば、定常値を予め測定しておくことにより、各配線パターン間に絶縁不良が発生していないときには、定常値を減算した分だけ漏れ電流が閾値に早く達するため、検査対象体の絶縁状態が良好であることを一層短時間に検査可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−216528号公報(第4−7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の絶縁検査装置には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、この絶縁検査装置では、各配線パターン間の絶縁状態が不良のとき(絶縁抵抗が基準の抵抗値よりも低い抵抗値のとき)であっても、各配線パターンと対応するプローブとの間の接触状態が不良な状態のとき(接触抵抗が大きいとき)には、一対のプローブ間に流れる電流(漏れ電流)の電流値が閾値以下となる場合があり、この場合には各配線パターンの絶縁状態が良好であると誤判別するおそれがあるという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、プローブと配線パターンとの間の接触状態を検出して検査精度を向上させ得る絶縁検査装置および絶縁検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の絶縁検査装置は、回路基板に形成された一対の配線パターンのうちの一方の配線パターンにおける2つの端点に接触可能な第1プローブおよび第2プローブと、前記一対の配線パターンのうちの他方の配線パターンにおける2つの端点に接触可能な第3プローブおよび第4プローブと、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブ、並びに前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブを介して前記一対の配線パターン間に絶縁検査電圧を印加する電圧印加部と、前記絶縁検査電圧の印加に起因して前記一対の配線パターン間に流れる漏れ電流を測定する電流測定部と、前記漏れ電流が流れることに起因して前記一対の配線パターン間に発生するパターン間電圧を、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブと、前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブとを介して検出する電圧検出部と、前記第1プローブおよび前記第2プローブ間に第1検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第1プローブ間電圧を検出することにより、前記一方の配線パターンに対する当該第1プローブおよび当該第2プローブの接触状態を検出する第1接触状態検出部と、前記第3プローブおよび前記第4プローブ間に第2検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第2プローブ間電圧を検出することにより、前記他方の配線パターンに対する当該第3プローブおよび当該第4プローブの接触状態を検出する第2接触状態検出部と、前記第1接触状態検出部および前記第2接触状態検出部の各検出結果に基づいて前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態と前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態とを判別する接触判別処理、並びに前記パターン間電圧と前記漏れ電流とに基づいて前記一対の配線パターン間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行する処理部とを備えている。
【0008】
また、請求項2記載の絶縁検査装置は、請求項1記載の絶縁検査装置において、前記第1接触状態検出部は、前記第1検出電流として第1交流電流を供給すると共に、当該第1交流電流の供給時における前記第1プローブ間電圧に基づいて前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態を検出し、前記第2接触状態検出部は、前記第2検出電流として前記第1交流電流と周波数の異なる第2交流電流を供給すると共に、当該第2交流電流の供給時における前記第2プローブ間電圧に基づいて前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態を検出し、前記処理部は、前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態の検出が前記第1接触状態検出部によって実行され、かつ前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態の検出が前記第2接触状態検出部によって実行されている状態において、前記絶縁検査処理と並行して前記接触判別処理を実行する。
【0009】
また、請求項3記載の絶縁検査方法は、回路基板に形成された一対の配線パターンのうちの一方の配線パターンにおける2つの端点に第1プローブおよび第2プローブを接触させると共に、当該一対の配線パターンのうちの他方の配線パターンにおける2つの端点に第3プローブおよび第4プローブを接触させ、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブ、並びに前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブを介して前記一対の配線パターン間に絶縁検査電圧を印加しつつ、当該絶縁検査電圧の印加に起因して当該一対の配線パターン間に流れる漏れ電流を測定すると共に、当該一対の配線パターン間に発生するパターン間電圧を、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブと、前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブとを介して検出して、当該漏れ電流および当該パターン間電圧に基づいて前記一対の配線パターン間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行し、前記第1プローブおよび前記第2プローブ間に第1検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第1プローブ間電圧を検出することにより、前記一方の配線パターンに対する当該第1プローブおよび当該第2プローブの接触状態を検出する第1接触判別処理を実行し、かつ、前記第3プローブおよび前記第4プローブ間に第2検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第2プローブ間電圧を検出することにより、前記他方の配線パターンに対する当該第3プローブおよび当該第4プローブの接触状態を検出する第2接触判別処理を実行する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の絶縁検査装置および請求項3記載の絶縁検査方法では、回路基板に形成された一対の配線パターンのうちの一方の配線パターンにおける2つの端点に第1プローブおよび第2プローブを接触させると共に、この一対の配線パターンのうちの他方の配線パターンにおける2つの端点に第3プローブおよび第4プローブを接触させ、第1プローブおよび第2プローブのうちの一方のプローブ、並びに第3プローブおよび第4プローブのうちの一方のプローブを介して一対の配線パターン間に絶縁検査電圧を印加しつつ、絶縁検査電圧の印加に起因して一対の配線パターン間に流れる漏れ電流を測定すると共に、一対の配線パターン間に発生するパターン間電圧を、第1プローブおよび第2プローブのうちの一方のプローブと、第3プローブおよび第4プローブのうちの一方のプローブとを介して検出して、漏れ電流およびパターン間電圧に基づいて一対の配線パターン間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行する。また、第1プローブおよび第2プローブ間に第1検出電流を供給すると共にこの両プローブ間に発生する第1プローブ間電圧を検出することにより、一方の配線パターンに対する第1プローブおよび第2プローブの接触状態を検出する第1接触判別処理を実行し、かつ、第3プローブおよび第4プローブ間に第2検出電流を供給すると共にこの両プローブ間に発生する第2プローブ間電圧を検出することにより、他方の配線パターンに対する第3プローブおよび第4プローブの接触状態を検出する第2接触判別処理を実行する。
【0011】
したがって、この絶縁検査装置および絶縁検査方法によれば、第1プローブおよび第2プローブと一方の配線パターンとの間の接触状態、および第3プローブおよび第4プローブと他方の配線パターンとの間の接触状態の少なくとも一方が不良のときには、絶縁検査処理を最初から新たに実行し直すことができ、これによって、一方の配線パターンに対する第1および第2プローブの接触状態および他方の配線パターンに対する第3および第4プローブの接触状態が良好なときに絶縁検査処理を実行することができるため、絶縁抵抗の算出(測定)精度の向上、ひいては絶縁検査処理の検査精度の向上を図ることができる。
【0012】
また、請求項2記載の絶縁検査装置によれば、絶縁検査処理において一対の配線パターン間に絶縁検査電圧(直流電圧)を印加したときの漏れ電流(直流電流)を検出するのに対し、第1接触状態検出部および第2接触状態検出部が交流定電流である第1および第2検出電流を供給して、一方の配線パターンに対する第1および第2プローブの接触状態および他方の配線パターンに対する第3および第4のプローブの接触状態を検出する構成のため、絶縁検査処理と並行して(絶縁検査処理と同時に)接触判別処理を実行することができる。したがって、この絶縁検査装置によれば、接触判別処理の完了後に絶縁検査処理を実行する構成と比較して、絶縁検査処理の完了までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】絶縁検査装置1の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、絶縁検査装置および絶縁検査方法の実施の形態について説明する。
【0015】
まず、絶縁検査装置1の構成について、図1を参照して説明する。
【0016】
絶縁検査装置1は、回路基板2に形成された検査対象体としての一対の配線パターン3,4間の絶縁状態を検査する(一例として絶縁抵抗Rを測定して検査する)装置であって、第1プローブ5、第3プローブ6、第2プローブ7、第4プローブ8、電圧印加部9、電流測定部10、電圧検出部11、第1接触状態検出部(以下、「接触状態検出部」ともいう)12、第2接触状態検出部(以下、「接触状態検出部」ともいう)13、処理部14、記憶部15および出力部16を備えている。
【0017】
第1プローブ5および第2プローブ7は、不図示の移動機構によって移動させられて、一対の配線パターン3,4のうちの一方の配線パターン3における互いに離間している2つの端点(ランド)3a,3bに接触可能に構成されている。第3プローブ6および第4プローブ8も同様にして不図示の移動機構によって移動させられて、一対の配線パターン3,4のうちの他方の配線パターン4における互いに離間している2つの端点(ランド)4a,4bに接触可能に構成されている。本例では、一例として、図1に示すように、第1プローブ5はランド3aに、第2プローブ7はランド3bに、第3プローブ6はランド4aに、第4プローブ8はランド4bにそれぞれ移動させられる。
【0018】
電圧印加部9は、処理部14によって制御されて、一対の出力端子(不図示)間に絶縁検査電圧(直流電圧)Veを出力する。また、電圧印加部9の一対の出力端子のうちの一方の出力端子が第1プローブ5および第2プローブ7のうちの一方のプローブ(本例では、一例として第1プローブ5)に接続され、他方の出力端子が第3プローブ6および第4プローブ8のうちの一方のプローブ(本例では、一例として第3プローブ6)に接続されている。この構成により、電圧印加部9は、絶縁検査電圧Veを一対のプローブ5,6を介して、一対の配線パターン3,4間に印加可能に構成されている。
【0019】
電流測定部10は、絶縁検査電圧Veの印加に起因して一対の配線パターン3,4間に流れる漏れ電流Imを測定する。本例では、一例として、電流測定部10は、電圧印加部9の他方の出力端子と第3プローブ6との間に介装されて、漏れ電流Imを測定する。また、電流測定部10は、測定した漏れ電流Imの電流値を示す電流データDiを処理部14に出力する。
【0020】
電圧検出部11は、差動増幅器、ローパスフィルタおよび電圧測定回路(いずれも図示せず)を備えて構成されている。また、電圧検出部11は、一対の入力端子(不図示)のうちの一方の入力端子が第1プローブ5および第2プローブ7のうちの一方のプローブ(本例では、一例として第2プローブ7)に接続され、他方の入力端子が第3プローブ6および第4プローブ8のうちの一方のプローブ(本例では、一例として第4プローブ8)に接続されている。この構成により、電圧検出部11は、配線パターン3,4間に漏れ電流Imが流れることに起因して配線パターン3,4間に発生する電圧(パターン間電圧)Vm1を一対のプローブ(本例では上記したようにプローブ7,8)を介して差動増幅器で検出し、電圧Vm1に含まれている交流成分(後述する周波数f1,f2成分を含む)をローパスフィルタで除去し、検出した電圧Vm1の電圧値を示す電圧データDvを電圧測定回路で生成して処理部14に出力する。
【0021】
接触状態検出部12は、交流定電流源12a、差動増幅器およびロックインアンプ(いずれも図示せず)を用いて構成された電圧検出部12b、およびコンパレータ(図示せず)を用いて構成された電圧比較部12cを備えている。交流定電流源12aは、両出力端子が第1プローブ5と第2プローブ7とに接続されている。また、交流定電流源12aは、処理部14によって制御されて、第1プローブ5と配線パターン3(具体的には、ランド3a)との間、および第2プローブ7と配線パターン3(具体的には、ランド3b)との間の接触状態を検出するための検出電流(第1検出電流)Iaを両プローブ5,7間に供給可能に構成されている。この場合、この検出電流Iaとして、周波数f1の交流定電流が出力される。また、交流定電流源12aは、出力している検出電流Iaの周期に同期した同期信号Ssy1を生成して出力する。
【0022】
電圧検出部12bは、一対の入力端子(差動増幅器の一対の入力端子)が第1プローブ5と第2プローブ7とに接続されて、両プローブ5,7間に発生する電圧(第1プローブ間電圧)Va1を入力して増幅し、ロックインアンプがこの増幅した電圧Va1を同期信号Ssy1で同期検波することにより、他の接触状態検出部13から出力される後述の検出電流Ibの影響を受けることなく電圧Va1の電圧値に対応した電圧レベルの直流電圧信号Va2を検出して出力する。電圧比較部12cは、この直流電圧信号Va2と予め規定された基準電圧とを比較して、直流電圧信号Va2が基準電圧以上のときに接触異常信号Saを処理部14に出力する。
【0023】
この場合、上記したように交流定電流源12aから各プローブ5,7間に出力される検出電流Iaが交流定電流であるため、本例では電圧検出部12bに入力される電圧Va1の電圧値(振幅)は、第1プローブ5と配線パターン3との間の接触抵抗(接触状態によって抵抗値変化する抵抗)、配線パターン3自体の抵抗(抵抗値が一定の抵抗)、および第2プローブ7と配線パターン3との間の接触抵抗(接触状態によって抵抗値変化する抵抗)の合計抵抗値に比例する。また、上記の基準電圧は、上記の2つの接触抵抗が変化して上記合計抵抗値が上限抵抗値に達したとき(各プローブ5,7と配線パターン3との間の接触状態が異常となるとき)の電圧Va1に基づいて電圧検出部12bが出力する直流電圧信号Va2と同一電圧に予め規定されている。この構成により、電圧比較部12cは、各プローブ5,7と配線パターン3との間の接触状態が異常となるときに、接触異常信号Saを出力する。
【0024】
接触状態検出部13は、交流定電流源13a、差動増幅器およびロックインアンプ(いずれも図示せず)を用いて構成された電圧検出部13b、およびコンパレータ(図示せず)を用いて構成された電圧比較部13cを備えている。交流定電流源13aは、両出力端子が第3プローブ6と第4プローブ8とに接続されている。また、交流定電流源13aは、処理部14によって制御されて、第3プローブ6と配線パターン4(具体的には、ランド4a)との間、および第4プローブ8と配線パターン4(具体的には、ランド4b)との間の接触状態を検出するための検出電流(第2検出電流)Ibを両プローブ6,8間に供給可能に構成されている。この場合、この検出電流Ibとして、周波数f2(周波数f1とは異なる周波数)の交流定電流が出力される。また、交流定電流源13aは、出力している検出電流Ibの周期に同期した同期信号Ssy2を生成して出力する。
【0025】
電圧検出部13bは、一対の入力端子(差動増幅器の一対の入力端子)が第3プローブ6と第4プローブ8とに接続されて、両プローブ6,8間に発生する電圧(第2プローブ間電圧)Vb1を入力して増幅し、ロックインアンプがこの増幅した電圧Vb1を同期信号Ssy2で同期検波することにより、他の接触状態検出部12から出力される検出電流Iaの影響を受けることなく電圧Vb1の電圧値に対応した電圧レベルの直流電圧信号Vb2を検出して出力する。電圧比較部13cは、この直流電圧信号Vb2と予め規定された基準電圧とを比較して、直流電圧信号Vb2が基準電圧以上のときに接触異常信号Sbを処理部14に出力する。
【0026】
この場合、上記したように交流定電流源13aから各プローブ6,8間に出力される検出電流Ibが交流定電流であるため、本例では電圧検出部13bに入力される電圧Vb1の電圧値(振幅)は、第3プローブ6と配線パターン4との間の接触抵抗(接触状態によって抵抗値変化する抵抗)、配線パターン4自体の抵抗(抵抗値が一定の抵抗)、および第4プローブ8と配線パターン4との間の接触抵抗(接触状態によって抵抗値変化する抵抗)の合計抵抗値に比例する。また、上記の基準電圧は、上記の2つの接触抵抗が変化して上記合計抵抗値が上限抵抗値に達したとき(各プローブ6,8と配線パターン4との間の接触状態が異常となるとき)の電圧Vb1に基づいて電圧検出部13bが出力する直流電圧信号Vb2と同一電圧に予め規定されている。この構成により、電圧比較部13cは、各プローブ6,8と配線パターン4との間の接触状態が異常となるときに、接触異常信号Sbを出力する。
【0027】
処理部14は、CPUで構成されて、接触判別処理および絶縁検査処理を実行する。処理部14は、この接触判別処理では、接触状態検出部12の検出結果(接触異常信号Saの出力の有無)に基づいて、配線パターン3に対する第1プローブ5および第2プローブ7の接触状態を判別し、接触状態検出部13の検出結果(接触異常信号Sbの出力の有無)に基づいて、配線パターン4に対する第3プローブ6および第4プローブ8の接触状態を判別する。また、処理部14は、この絶縁検査処理では、電圧Vm1と漏れ電流Imとに基づいて一対の配線パターン3,4間の絶縁状態を検査する。具体的には、処理部14は、電圧Vm1の電圧値を示す電圧データDvと測定電流Imの電流値を示す電流データDiとに基づいて各配線パターン3,4間の絶縁抵抗(絶縁抵抗値)Rを測定し、この絶縁抵抗Rと後述する基準値Aとに基づいて配線パターン3,4間の絶縁状態を検査する。
【0028】
記憶部15は、ROMおよびRAMで構成されて、処理部14のための動作プログラム、および絶縁抵抗Rに対する基準値(基準抵抗値)Aが予め記憶されている。また、記憶部15は、処理部14のワークメモリとしても機能する。出力部16は、一例として表示装置で構成されて、処理部14が実行した接触判別処理および絶縁検査処理の結果を表示する。
【0029】
次に、絶縁検査装置1の動作について、絶縁検査方法と併せて図1を参照して説明する。なお、各プローブ5,6,7,8は移動機構によってそれぞれ移動させられて、第1プローブ5は配線パターン3のランド3aに、第3プローブ6は配線パターン4のランド4aに、第2プローブ7は配線パターン3のランド3bに、第4プローブ8は配線パターン4のランド4bに接触しているものとする。
【0030】
絶縁検査装置1では、作動状態において、処理部14が、電圧印加部9、交流定電流源12aおよび交流定電流源13aに対する制御を実行して、これらを作動させる。これにより、電圧印加部9が、第1プローブ5および第3プローブ6を介して一対の配線パターン3,4間に絶縁検査電圧Veを印加する動作を開始する。また、交流定電流源12aが、交流定電流源12aから第1プローブ5、配線パターン3および第2プローブ7を介して交流定電流源12aに戻る電流経路への検出電流Iaの出力を開始すると共に、同期信号Ssy1の出力を開始する。また、交流定電流源13aが、交流定電流源13aから第3プローブ6、配線パターン4および第4プローブ8を介して交流定電流源13aに戻る電流経路への検出電流Ibの出力を開始すると共に、同期信号Ssy2の出力を開始する。
【0031】
絶縁検査電圧Veが印加されることにより、電圧印加部9から第1プローブ5、配線パターン3、両配線パターン3,4間の絶縁抵抗R、配線パターン4および第3プローブ6を介して電圧印加部9に戻る電流経路に漏れ電流Imが流れる。この電流経路内に配設されている電流測定部10は、この漏れ電流Imを検出してその電流値を測定する動作と、測定した漏れ電流Imの電流値を示す電流データDiを処理部14に出力する動作とを開始する。また、漏れ電流Imが絶縁抵抗Rに流れることに起因して両配線パターン3,4間に電圧Vm1が発生し、電圧検出部11は、この電圧Vm1を検出する動作と、電圧Vm1に含まれている交流成分(周波数f1,f2成分を含む)を除去して、電圧Vm1の電圧値を示す電圧データDvを処理部14に出力する動作とを開始する。
【0032】
また、接触状態検出部12では、電圧検出部12bが、第1プローブ5と配線パターン3のランド3aとの間の接触抵抗、配線パターン3の抵抗、および配線パターン3のランド3bと第2プローブ7との間の接触抵抗に検出電流Iaが流れることに起因して発生する電圧Va1を両プローブ5,7を介して検出して直流電圧信号Va2を出力する動作を開始する。また、電圧比較部12cが、直流電圧信号Va2と基準電圧とを比較する動作を開始する。
【0033】
また、接触状態検出部13では、電圧検出部13bが、第3プローブ6と配線パターン4のランド4aとの間の接触抵抗、配線パターン4の抵抗、および配線パターン4のランド4bと第4プローブ8との間の接触抵抗に検出電流Ibが流れることに起因して発生する電圧Vb1を両プローブ6,8を介して検出して直流電圧信号Vb2を出力する動作を開始する。また、電圧比較部13cが、直流電圧信号Vb2と基準電圧とを比較する動作を開始する。
【0034】
続いて、この状態において、処理部14は、接触判別処理を開始すると共に、絶縁検査処理についても開始する。この絶縁検査処理では、処理部14は、電圧Vm1の電圧値を示す電圧データDvと測定電流Imの電流値を示す電流データDiとに基づいて、具体的には、電圧データDvによって特定される電圧値および電流データDiによって特定される電流値に基づいて絶縁抵抗Rを測定する。この場合、処理部14は、この絶縁検査処理の実行と並行して、接触判別処理を繰り返し実行する。
【0035】
この接触判別処理では、処理部14は、各接触状態検出部12,13から接触異常信号Sa,Sbが出力されるか否かに基づいて、第1プローブ5および第2プローブ7の配線パターン3との接触状態、並びに第3プローブ6および第4プローブ8の配線パターン4との接触状態が良好な状態か不良な状態かを判別する。具体的には、処理部14は、接触状態検出部12から接触異常信号Saが出力されているときには、この接触状態検出部12において検出している各プローブ5,7のうちの少なくとも一方と配線パターン3との間の接触状態が不良であると判別し、接触状態検出部12から接触異常信号Saが出力されていないときには各プローブ5,7と配線パターン3との間の接触状態が良好であると判別する。また、接触状態検出部13から接触異常信号Sbが出力されているときには、この接触状態検出部13において検出している各プローブ6,8のうちの少なくとも一方と配線パターン4との間の接触状態が不良であると判別し、接触状態検出部13から接触異常信号Sbが出力されていないときには各プローブ6,8と配線パターン4との間の接触状態が良好であると判別する。
【0036】
この場合、絶縁検査処理の実行中に実施した接触判別処理において、プローブ5,7のうちの少なくとも一方と配線パターン3との間の接触状態、およびプローブ6,8のうちの少なくとも一方と配線パターン4との間の接触状態の少なくとも一方が不良であると処理部14が判別したときには、絶縁抵抗Rの測定に使用する電圧データDvが異常な値である可能性が高く、このような電圧データDvを絶縁検査処理において使用して絶縁抵抗Rを算出(測定)したとしても、正確な絶縁抵抗Rが算出されない可能性が高い。このため、処理部14は、現在実行している絶縁検査処理を中止して、絶縁検査処理を再度、最初から実行し直す。
【0037】
一方、絶縁検査処理の実行中に実施した接触判別処理において、各プローブ5,7と配線パターン3との間の接触状態、および各プローブ6,8と配線パターン4との間の接触状態が良好であると判別したときには、この絶縁検査処理を続行して、絶縁抵抗Rを算出(測定)し、算出した絶縁抵抗Rを記憶部15に記憶させると共に、出力部16に表示させる。これにより、絶縁検査処理が完了する。
【0038】
このように、この絶縁検査装置1では、一対の配線パターン3,4のうちの一方の配線パターン3における2つのランド3a,3bに接触可能な第1プローブ5および第2プローブ7と、他方の配線パターン4における2つのランド4a,4bに接触可能な第3プローブ6および第4プローブ8と、第1プローブ5および第2プローブ7間に検出電流Iaを供給すると共にこの両プローブ5,7間に発生するVa1を検出することにより、配線パターン3に対する両プローブ5,7の接触状態を検出する接触状態検出部12と、第3プローブ6および第4プローブ8間に検出電流Ibを供給すると共に両プローブ6,8間に発生する電圧Vb1を検出することにより、配線パターン4に対する両プローブ6,8の接触状態を検出する接触状態検出部13とを備え、処理部14が、両接触状態検出部12,13の各検出結果に基づいて配線パターン3に対する両プローブ5,7の接触状態と配線パターン4に対する両プローブ6,8の接触状態とを判別する接触判別処理を、各配線パターン3,4間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理と共に実行する。
【0039】
したがって、この絶縁検査方法および絶縁検査装置1によれば、各プローブ5,7と配線パターン3との間の接触状態、および各プローブ6,8と配線パターン4との間の接触状態の少なくとも一方が不良のときには、絶縁検査処理を最初から新たに実行し直すことができ、これによって、配線パターン3に対する両プローブ5,7の接触状態および配線パターン4に対する両プローブ6,8の接触状態が良好なときに絶縁検査処理を実行することができるため、絶縁抵抗Rの算出(測定)精度の向上、ひいては絶縁検査処理の検査精度の向上を図ることができる。
【0040】
また、この絶縁検査装置1によれば、絶縁検査処理において一対の配線パターン3,4間に絶縁検査電圧(直流電圧)Veを印加したときの漏れ電流Im(直流電流)を検出するのに対し、接触状態検出部12および接触状態検出部13が交流定電流である検出電流Ia,Ibを供給して、配線パターン3に対する両プローブ5,7の接触状態および配線パターン4に対する両プローブ6,8の接触状態を検出する構成のため、絶縁検査処理と並行して(絶縁検査処理と同時に)接触判別処理を実行することができる。したがって、この絶縁検査装置1によれば、接触判別処理の完了後に絶縁検査処理を実行する構成と比較して、絶縁検査処理の完了までの時間を短縮することができる。
【0041】
なお、絶縁検査処理と並行して接触判別処理を実行する構成を採用しているが、接触判別処理を完了した後に絶縁検査処理を実行する構成を採用することもできる。また、この構成を採用した場合には、接触状態検出部12,13が交流定電流である検出電流Ia,Ibを対応するプローブ間に出力する構成に代えて、検出電流Ia,Ibとして直流定電流を出力する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 絶縁検査装置
2 回路基板
3,4 配線パターン
5 第1プローブ
6 第3プローブ
7 第2プローブ
8 第4プローブ
9 電圧印加部
10 電流測定部
11 電圧検出部
12,13 接触状態検出部
14 処理部
Im 漏れ電流
R 絶縁抵抗
Va1,Vb1 電圧
Ve 絶縁検査電圧
Vm1 電圧(パターン間電圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に形成された一対の配線パターンのうちの一方の配線パターンにおける2つの端点に接触可能な第1プローブおよび第2プローブと、
前記一対の配線パターンのうちの他方の配線パターンにおける2つの端点に接触可能な第3プローブおよび第4プローブと、
前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブ、並びに前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブを介して前記一対の配線パターン間に絶縁検査電圧を印加する電圧印加部と、
前記絶縁検査電圧の印加に起因して前記一対の配線パターン間に流れる漏れ電流を測定する電流測定部と、
前記漏れ電流が流れることに起因して前記一対の配線パターン間に発生するパターン間電圧を、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブと、前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブとを介して検出する電圧検出部と、
前記第1プローブおよび前記第2プローブ間に第1検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第1プローブ間電圧を検出することにより、前記一方の配線パターンに対する当該第1プローブおよび当該第2プローブの接触状態を検出する第1接触状態検出部と、
前記第3プローブおよび前記第4プローブ間に第2検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第2プローブ間電圧を検出することにより、前記他方の配線パターンに対する当該第3プローブおよび当該第4プローブの接触状態を検出する第2接触状態検出部と、
前記第1接触状態検出部および前記第2接触状態検出部の各検出結果に基づいて前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態と前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態とを判別する接触判別処理、並びに前記パターン間電圧と前記漏れ電流とに基づいて前記一対の配線パターン間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行する処理部とを備えている絶縁検査装置。
【請求項2】
前記第1接触状態検出部は、前記第1検出電流として第1交流電流を供給すると共に、当該第1交流電流の供給時における前記第1プローブ間電圧に基づいて前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態を検出し、
前記第2接触状態検出部は、前記第2検出電流として前記第1交流電流と周波数の異なる第2交流電流を供給すると共に、当該第2交流電流の供給時における前記第2プローブ間電圧に基づいて前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態を検出し、
前記処理部は、前記一方の配線パターンに対する前記第1プローブおよび前記第2プローブの接触状態の検出が前記第1接触状態検出部によって実行され、かつ前記他方の配線パターンに対する前記第3プローブおよび前記第4プローブの接触状態の検出が前記第2接触状態検出部によって実行されている状態において、前記絶縁検査処理と並行して前記接触判別処理を実行する請求項1記載の絶縁検査装置。
【請求項3】
回路基板に形成された一対の配線パターンのうちの一方の配線パターンにおける2つの端点に第1プローブおよび第2プローブを接触させると共に、当該一対の配線パターンのうちの他方の配線パターンにおける2つの端点に第3プローブおよび第4プローブを接触させ、
前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブ、並びに前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブを介して前記一対の配線パターン間に絶縁検査電圧を印加しつつ、当該絶縁検査電圧の印加に起因して当該一対の配線パターン間に流れる漏れ電流を測定すると共に、当該一対の配線パターン間に発生するパターン間電圧を、前記第1プローブおよび前記第2プローブのうちの一方のプローブと、前記第3プローブおよび前記第4プローブのうちの一方のプローブとを介して検出して、当該漏れ電流および当該パターン間電圧に基づいて前記一対の配線パターン間の絶縁状態を検査する絶縁検査処理を実行し、
前記第1プローブおよび前記第2プローブ間に第1検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第1プローブ間電圧を検出することにより、前記一方の配線パターンに対する当該第1プローブおよび当該第2プローブの接触状態を検出する第1接触判別処理を実行し、かつ、前記第3プローブおよび前記第4プローブ間に第2検出電流を供給すると共に当該両プローブ間に発生する第2プローブ間電圧を検出することにより、前記他方の配線パターンに対する当該第3プローブおよび当該第4プローブの接触状態を検出する第2接触判別処理を実行する絶縁検査方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−112408(P2011−112408A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266900(P2009−266900)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】